血液内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:9

週1回の投与で血友病に効果を発揮する新しい血液凝固第VIII因子製剤/サノフィ

 サノフィは2023年3月7日、米国食品医薬品局(FDA)が血液凝固第VIII因子製剤efanesoctocog alfaを承認したと発表した。米国におけるefanesoctocog alfaの適応症は、血友病Aの成人患者と小児患者における定期補充療法、出血管理を目的とする出血時補充療法、ならびに周術期管理。  血友病Aは、生涯続く希少疾患であり、血液凝固因子が欠乏する。その結果、血液凝固能の低下による関節での出血によって、関節障害や慢性疼痛が引き起こされ、生活の質(QOL)が低下する恐れがある。

2つの血友病遺伝子治療、durability(耐久性)とanti-AAV5 capsid antibodiesがポイント(解説:長尾梓氏)

NEJM誌2023年2月23日号に血友病Aと血友病Bの遺伝子治療の結果が同時に掲載され、「NEJM、粋なことをするなぁ」と世界中が思っているはずだが、注目ポイントはdurability(耐久性)とanti-AAV5 capsid antibodiesの存在だ。valoctocogene roxaparvovecはBioMarin Pharmaceuticalが開発したAAV5ベースの血友病Aの遺伝子治療で、2022年に欧州医薬品庁(EMA)に承認されRoctavianという商品名で販売許可を得ている。残念ながら2023年3月11日時点では米国食品医薬品局(FDA)からの承認は得ていない。

DOAC時代のVTE診療の国内大規模研究、再発リスクの層別化評価と出血リスク評価の重要性が明らかに/日本循環器学会

 日本では過去に静脈血栓塞栓症 (肺塞栓症および深部静脈血栓症、以下VTE)の患者を対象とした多施設共同の大規模観察研究:COMMAND VTE Registry(期間:2010年1月~2014年8月、対象:3,024例)が報告されていた。しかしながら、同研究はワルファリン時代のデータベースであり、抗凝固薬の88%がワルファリンであった。現在はVTE患者の治療には直接経口抗凝固薬(DOAC)が広く普及しており、そこでDOAC時代における日本のVTE診療の実態を明らかにすることを目的としたCOMMAND VTE Registry-2が実施され、3月10~12日に開催された第87回日本循環器学会学術集会の「Late Breaking Cohort Studies Session」にて、同研究班の金田 和久氏(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)が、その主解析の結果を報告した。

米FDA、男性同性愛者の献血の制限緩和に向けた指針を提案

 同性愛者やバイセクシュアルの男性からの献血は長年にわたって制限されてきたが、近い将来、よりきめ細かな方針に変わる可能性がある。米食品医薬品局(FDA)は1月27日、輸血によるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染のリスクを軽減するための献血者の評価方法を、これまでのように時間を基準にしたものから、性差別的ではない、個人のリスクに基づく質問へと変更することを提案した。  具体的には、パートナーと一夫一婦制の関係を築いている同性愛者の男性は、献血前に性行為を控える必要は一切なくなりそうだ。1980年代以降に施行された規則では、採取された血液のHIV汚染リスクを理由に、同性愛者などが献血をする場合には、定められた期間、性行為を控えることが要求されていた。しかし、LGBT組織からの圧力や、血液スクリーニング技術の向上、血液バンクや米国医師会からの情報提供などを受け、FDAはその規則の再検討を行っていた。

化学療法、女性は午後に受けると効果が高い

 体内時計機能を勘案し、投薬時間を調節するクロノセラピー(時間治療)の考え方は以前より提唱されており、大腸がんなどにおいて一定の効果が報告されている。しかし、その後の試験に一貫性がないため、日常臨床を変えるには至っていない。今回、造血器腫瘍の成人患者におけるクロノセラピーの効果を検討した、韓国科学技術院のDae Wook Kim氏らによる研究結果が JCI Insight誌2022年12月号に掲載された。

血友病A、遺伝子治療のvaloctocogene roxaparvovecが有効/NEJM

 アデノ随伴ウイルスベクターを用いてBドメイン欠損第VIII因子のコード配列を送達し、重症血友病A患者の出血を予防するとされるvaloctocogene roxaparvovecについて、安全性と有効性を検証した第III相非盲検単群試験「GENEr8-1試験」の結果が、南アフリカ共和国・ウィットウォーターズランド大学のJohnny Mahlangu氏らにより示された。本薬投与から2年の時点で治療を要する出血の発生率は大幅に低下し、52週以降に新たな安全性シグナルの発現は認められなかったという。研究の成果は、NEJM誌2023年2月23日号に掲載された。

血友病B、AAV5ベクターを用いた遺伝子治療が有効/NEJM

 血友病Bの成人患者において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療薬etranacogene dezaparvovecは、年間出血率に関して第IX因子定期補充療法に対する優越性が認められ、安全性プロファイルは良好であることが、米国・ミシガン大学のSteven W. Pipe氏らが実施した非盲検第III相試験「Health Outcomes with Padua Gene; Evaluation in Hemophilia B:HOPE-B試験」の結果、示された。中等症~重症の血友病Bに対しては、出血予防のため生涯にわたり血液凝固第IX因子を補充する治療を継続する。血友病Bの遺伝子治療は、第IX因子活性を維持することで、第IX因子の補充療法なしで出血を予防できる可能性があった。著者は、「遺伝子治療が血友病B患者の治療の負担を軽減し、QOLを改善する可能性がある」とまとめている。NEJM誌2023年2月23日号掲載の報告。

CAR-T ide-cel、再発・難治性多発性骨髄腫への第III相試験結果(KarMMa-3)/NEJM

 2~4レジメンの前治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるイデカブタゲン ビクルユーセル(idecabtagene vicleucel:ide-cel)は標準治療と比較して、無増悪生存期間を約7ヵ月有意に延長するとともに深い奏効をもたらし、安全性プロファイルは先行研究と一致し新たな安全性シグナルは認められないことが、スペイン・Clinica Universidad de NavarraのPaula Rodriguez-Otero氏らが実施した「KarMMa-3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年2月10日号で報告された。

米FDAが慢性リンパ球性白血病と小リンパ球性リンパ腫の新薬を承認

 米食品医薬品局(FDA)は1月19日、慢性リンパ球性白血病(CLL)と小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療薬として、次世代のBTK阻害薬であるzanubrutinib(ザヌブルチニブ、商品名Brukinsa)を承認したことを発表した。  今回の承認は、2件の第3相ランダム化比較試験の結果に基づくもの。1件目の試験(SEQUOIA試験)では、染色体17p欠失のない未治療のCLL/SLL患者479人が、zanubrutinibの投与、またはベンダムスチンとリツキシマブの併用療法を6サイクル受ける群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。その結果、無増悪生存期間中央値は、zanubrutinib群では未到達、併用療法群では33.7カ月であった。また、同試験でランダム化されなかったがzanubrutinibの投与を受けた17p欠失のある未治療のCLL/SLL患者110人では、独立評価委員会(IRC)の判定による全奏効率(ORR)が88%であり、追跡期間中央値25.1カ月時点での奏効持続期間(DOR)中央値は未到達だった。

血友病A治療は新時代へ、スーパーイロクテイトの発売間近(解説:長尾梓氏)

BIVV001の名前で知られているefanesoctocog alfa(エフアネソクトコグ アルファ、国内で承認申請中)の第III相試験であるXTEND-1試験の結果がNEJM誌2023年1月26日号に掲載された。注目ポイントは、50 IU/kg週1回の定期投与で投与から約4日間は第VIII因子活性が40%を上回っており、7日目のトラフも15%(平均)と非常に高いこと。その結果、もちろんABRは低く抑えられ、試験開始前の定期補充療法への優越性が示されたこと(p<0.001)。さらに、出血イベントは74%がオンデマンド群でみられたが、出血の97%がefanesoctocog alfa(50 IU/kg)の1回の注射により消失したことである。