産婦人科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

化学療法の副作用にVRが有効か、婦人科がん患者のRCTで有効性を示唆

 婦人科がんの治療に使われる化学療法は、吐き気や気分の落ち込みなどの副作用が大きな課題となっている。今回、無作為化比較試験で、患者が没入型VRを用いることで副作用の悪化を防ぎ、制吐剤の追加を減らせる可能性が示された。研究は大阪大学大学院薬学研究科医療薬学分野の仁木一順氏、大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室の上田豊氏、中川慧氏らによるもので、詳細は「Journal of Medical Internet Research(JMIR)」に8月14日掲載された。  卵巣がんの第一選択化学療法であるパクリタキセル/カルボプラチン(TC)療法または、TC+ベバシズマブ(TC+Bev)療法は、悪心や倦怠感、筋肉痛、関節痛などの副作用を伴い、患者の不安や治療中断につながることがある。薬剤追加による副作用増加や医療費の上昇も課題であり、安全で経済的な非薬物的手段が求められている。近年、デジタルセラピューティクス(DTx)が注目される中で、VRは疼痛や不安、抑うつの軽減に有効性が示されてきたが、従来の評価は単回使用による一時的な効果に限られていた。本研究では、婦人科がんの患者に対し、TCまたはTC+Bev療法中に7日間連続でVRを用い、その持続的効果を無作為化比較試験で検証した。

搾乳した母乳は採乳時間に合わせて授乳すべき

 母親が朝に搾乳した母乳を乳児に夕方に与えると、母乳が持つ本来のリズムと異なる合図を乳児に与えてしまう可能性があるようだ。母乳の中には、乳児の睡眠・覚醒リズムに関与すると考えられるホルモンや免疫因子なども含まれているが、それらは日内で変動することが、新たな研究で明らかにされた。このことから研究グループは、午前中に搾乳して保存した母乳を午後や夕方に与えると、意図せず乳児の休息を妨げる可能性があると警告している。米ラトガース大学栄養科学分野のMelissa Woortman氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Nutrition」に9月5日掲載された。

早期梅毒に対するペニシリンの1回投与、3回投与と同等の効果を示す

 早期梅毒に対するペニシリンの1回投与は、現在、臨床現場で広く行われている3回投与と同等の治療効果を有することが、新たな臨床試験で示された。ベンザチンペニシリンG(BPG)の3回投与は、早期梅毒の治療に追加的な効果をもたらさないことが示されたという。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の資金提供を受けて米アラバマ大学バーミンガム校のEdward Hook III氏らが実施したこの研究結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に9月3日掲載された。

性的マイノリティ女性は乳がん・子宮頸がん検診受診率が低い、性特有の疾患における医療機関の課題

 性的マイノリティ(SGM)の女性は、乳がんや子宮頸がんの検診受診率が非SGM女性に比べて低いことが全国調査で明らかになった。大腸がん検診では差がみられず、婦人科系がん特有の課題が示唆されたという。研究は筑波大学人文社会系の松島みどり氏らによるもので、詳細は「Health Science Reports」に8月4日掲載された。  がん検診は、子宮頸がんや乳がんの早期発見と死亡率低下に重要な役割を果たしている。先進国と途上国を含む10カ国以上では、平均的なリスクを持つ全年齢層で20%の死亡率低下が報告されている。しかし、日本では2022年時点での子宮頸がん・乳がんの検診受診率はそれぞれ43.6%、47%にとどまっている。この受診率の低さの背景として、教育や所得の問題が議論されてきたが、日本ではSGMの問題という重要な視点が欠けていた。

低用量ピルを使用している日本人女性、孤独感や鎮痛薬使用過多と関連

 孤独感は月経困難症や薬剤の使用と関連している。また、孤独感と疼痛は関連しており、鎮痛薬の使用に影響を及ぼす可能性がある。慶應義塾大学の藤本 卓磨氏らは、低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEP)製剤を使用している日本人女性における鎮痛薬の併用および使用過多の状況を調査し、孤独感や鎮痛薬の使用過多に関連する因子を明らかにするため本研究を実施した。BMC Women's Health誌2025年9月2日号の報告。  調査会社(マクロミル)のWebパネルより20〜30代の日本人女性をランダムに抽出し、LEP製剤使用者をスクリーニングした。本調査には、1ヵ月当たりの鎮痛薬併用日数と3項目の孤独感尺度(TIL)を含めた。TILの高スコア(6点以上)および1ヵ月当たり10日以上の鎮痛薬使用を目的変数として、ロジスティック回帰分析を行った。

PCOSの妊娠合併症、ミオイノシトールで軽減せず/JAMA

 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を有する女性の妊娠時におけるミオイノシトールサプリメントの摂取は、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症や早産の複合発生率を低下しなかった。オランダ・Amsterdam University Medical Center location AMCのAnne W. T. van der Wel氏らが無作為化試験の結果を報告した。PCOSの女性は妊娠時の合併症リスクが高いことが知られる。先行研究で、ミオイノシトールサプリメントの摂取は、これらのリスクを軽減する可能性があるとされていた。JAMA誌オンライン版2025年9月8日号掲載の報告。  研究グループは、PCOSの女性における妊娠時のミオイノシトールの毎日の服用が、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症、早産の複合アウトカムのリスクを軽減するかどうかを評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。

日本女性、出産意欲の向上に関連する要素は?/神奈川県立保健福祉大学

 少子化が進む日本では、合計特殊出生率が2024年に1.15と過去最低を記録し、社会保障制度や労働力維持への影響が深刻化している。女性の就労率は上昇しているものの、長時間労働や不十分な育児支援のため、キャリアと出産・育児の両立は依然として課題である。こうした中、東京・丸の内エリアの企業に勤務する女性を対象に、キャリア志向と妊娠意欲の関連を明らかにする大規模調査が行われ、その結果がBMC Women’s Health誌2025年9月2日号に掲載された。

日本の乳がんサバイバーにおける子宮体がんリスク

 日本の乳がんサバイバーの子宮体がんリスクは、乳がんではない女性と比べて7.71倍高いことが、筑波大学の河村 千登星氏らによるマッチドコホート研究で示された。また内分泌療法別にみると、タモキシフェン投与患者では5.67倍、内分泌療法なしの患者で3.56倍リスクが高かった。Breast Cancer誌オンライン版2025年8月27日号に掲載。  本研究は、複数の健康保険組合のレセプトおよび健診データによるJMDC Claims Databaseを用いたマッチドコホート研究である。2005年1月~2019年12月に登録された乳がんサバイバー2万3,729人と、年齢とデータベース登録時期で1:4でマッチさせた乳がんではない女性9万5,659人における子宮体がんリスクを、層別化Cox回帰分析を用いて比較した。さらに、マッチングから1年後に追跡を開始し、非層別化Cox回帰分析を用いて内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、内分泌療法なし)別のリスクを評価した。

最低賃金上昇へは診療報酬の期中改定対応を要望/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、8月20日に定例記者会見を開催した。会見では、「最低賃金の上昇を受けた期中改定の必要性」と、10月に開催される「女性のがん」に関するシンポジウムの概要が説明された。  はじめに会長の松本氏が「賃上げに関する指標が軒並み高水準で上がってきている中で、人員配置の制約もあり、医療職1人当たりの労働生産性を上げて、全体の員数を減らすといったような対応は難しく、人員を確保し続ける必要がある。また、診療報酬は固定価格であり、医療機関は賃上げにはとても対応できるような経営状況にはない。

男性部下の育休に対する上司の怒り、背景に職場の不公平感とストレス

 男性が育児休業(育休)を取りにくい職場の空気はどこから生まれるのか。今回、男性の育休に対する上司の怒りは、業務負担や部下に対する責任感といった職場ストレスが原因となり、不公平感を介して生じている可能性があるとする研究結果が報告された。研究は筑波大学人間系の尾野裕美氏によるもので、詳細は「BMC Psychology」に7月1日掲載された。  日本では男性の育児休業制度は国際的にみても手厚く整備されており、法的には長期間の取得が可能で、一定の所得補償も用意されている。しかし現実には、男性の育休取得率やその取得期間は依然として低く、制度が十分に活用されているとは言いがたい。従来の研究では、育休取得によるワークライフバランスの向上や仕事満足度の向上といった肯定的側面に主に焦点が当てられてきた。一方で、制度活用が職場内で生じさせる不公平感や、上司が感じる感情的な負担といった側面には、これまで十分な検討がなされてこなかった。そこで本研究では、男性部下の長期育休取得に対する上司の否定的感情が、職場におけるストレッサー(不明確な役割や能力を超えた業務など)を通じてどのように形成されるのかを明らかにすることを目的とした。不公平感が怒りの媒介要因となるという仮説モデルに基づき、その相互関係を検証するためのオンライン調査を実施した。