消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:62

原因不明の小児急性肝炎、英国44例の臨床像/NEJM

 2022年1月~3月に、英国・スコットランドの中部地域で小児の原因不明の急性肝炎が10例報告され、世界保健機関(WHO)は4月15日、Disease Outbreak Newsでこれに言及した。WHOはさらに、4月5日~5月26日までに33ヵ国で診断された同疾患の可能性例が少なくとも650例存在するとし、このうち222例(34.2%)は英国の症例であった。同国・Birmingham Women’s and Children’s NHS Foundation TrustのChayarani Kelgeri氏らは、今回、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎44例の臨床像、疾患の経過、初期のアウトカムについて報告した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年7月13日号に掲載された。

生物学的製剤未使用の中等症から重症の活動性を有するクローン病患者における寛解導入および維持療法としてのウステキヌマブとアダリムマブの第III相比較試験(解説:上村直実氏)

近年、クローン病の治療において5-アミノサリチル酸塩(5-ASA)、免疫調整薬、ステロイドなどを用いた従来の治療法が無効な場合に、抗TNFα阻害薬(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなど)、インターロイキン(IL)阻害薬(ウステキヌマブ)、抗インテグリン抗体薬(ベドリズマブ)といった生物学的薬剤が使用されることが多くなっている。新たに開発された生物学的製剤の有用性と安全性を検証するための臨床試験は薬事承認を目的としたものが多く、既存の治療において有効性に乏しい患者を対象としたプラセボ対照の無作為化比較試験(RCT)が常套手段となっており、実際のクローン病診療現場で治療方針に迷うことのある生物学的製剤同士を直接比較した検討は見当たらなかった。今回、18ヵ国121施設が参加した国際共同研究として、過去に生物学的製剤が使用されていない中等症〜重症活動期のクローン病患者を対象として、世界市場の売上高が第1位のアダリムマブ(ヒュミラ)と第4位のウステキヌマブ(ステラーラ)の単剤療法の有効性を直接比較した二重盲検RCT(SEAVUE試験)の結果が、2022年6月のLancet誌に報告された。結果として、本試験の主要評価項目である試験開始から52週時の臨床的寛解率(クローン病活動指数:CDAIの低下)および、種々の副次的評価項目(内視鏡的有効性、入院率の低下率、ステロイドフリー率、腸管切除の減少率などクローン病の長期的な予後の改善に強く関連する項目)について、アダリムマブ群とウステキヌマブ群の両群間に有意な差は認められなかった。安全性に関しても既知のプロファイルと変化なく、両群間での差はなかった。

fazirsiran、進行性肝疾患の原因物質を強力に抑制/NEJM

 α1アンチトリプシン(AAT)欠乏症は、SERPINA1“Z”変異のホモ接合体(プロテイナーゼ阻害因子[PI]ZZ)に起因する。Zアレルは変異型ATT蛋白質(Z-AATと呼ばれる)を生成し、Z-AATは肝細胞に蓄積して進行性の肝疾患や線維症を引き起こす可能性があるという。RNA干渉治療薬fazirsiranは、血清中および肝内のZ-AAT濃度を強力に低下させるとともに、肝内封入体や肝酵素濃度の改善をもたらすことが、ドイツ・アーヘン工科大学病院のPavel Strnad氏らが実施したAROAAT-2002試験で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年6月25日号で報告された。

DPP-4阻害薬で胆嚢炎リスク増、とくに注意が必要な患者は/BMJ

 2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬は胆嚢炎リスクを増大することが、中国・北京連合医科大学病院のLiyun He氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果、示された。無作為化試験の被験者で、とくに医師の注意がより必要となる治療期間が長期の患者でその傾向が認められたという。先行研究で、GLP-1は胆嚢の運動性の障害に関与していることが示唆されており、主要なGLP-1受容体作動薬であるリラグルチドが、胆嚢または胆道疾患リスクとの増大と関連していることが報告されていた。また、GIPも胆嚢の運動性に影響を及ぼすことが報告されていた。BMJ誌2022年6月28日掲載の報告。

大腸がんのFOLFIRI+パニツムマブ、休薬期間で皮膚毒性を軽減(IMPROVE)/ASCO2022

 RAS/BRAF野生型の転移のある大腸がん(mCRC)に対するFOLFIRI+パニツムマブ併用療法において、計画的な休薬期間を入れることで毒性を抑えつつ、継続療法と比較して同等以上の有効性があることが新たな試験で示された。イタリアのFondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのAntonio Avallone氏が第II相IMPROVE試験について、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。

ネオアンチゲンT細胞受容体遺伝子治療 転移性膵がんでの有効性(解説:宮嶋哲氏)

免疫治療など、さまざまな薬物療法が進歩を続ける一方で、膵がんはいまだに悪性腫瘍の中で最も致死率の高いがん種である。わが国においてもがん遺伝子パネル検査が日常診療にも導入され、ゲノム診療が本格化しつつある。膵がんでも遺伝子異常が数多く検出されているものの、BRCA遺伝子変異やマイクロサテライト不安定性の頻度は低く、治療薬に結び付く遺伝子異常はいまだに数少ないのが現状である。膵がんの免疫治療に対する耐性機序の1つにネオアンチゲン反応性TILの不足が示唆されている。膵がんはKRASにホットスポット変異を含むことが多いため、変異KRASに対する同種異系T細胞受容体(TCR)遺伝子治療の有効性が期待される。本論文では、同種HLA-C*08:02制限KRAS G12Dに反応性を持つTCRを発現するよう設計された自己T細胞で治療施行した転移性膵がん症例について報告されている。

抗菌縫合糸の使用でSSI発生率低減~日本人大腸がん患者での大規模研究

 外科手術後の閉鎖創におけるトリクロサンコーティング縫合糸の非コーティング糸と比較した手術部位感染症(SSI)予防効果について、ランダム化比較試験やメタ解析などでその有用性について検討されてはいるが、各種ガイドラインでも条件付き推奨でとどまるものが多い。大阪大学の三吉 範克氏ら大阪大学消化器外科共同研究会大腸疾患分科会は、開腹/腹腔鏡下大腸がん手術における予防効果を評価するため、多施設共同前向き研究を実施。Journal of the American College of Surgeons誌2022年6月号に報告した。

抗体-薬物複合免疫賦活薬(iADC)の創製で戦略的提携/アステラス・Sutro

 アステラスは2022年06月28日、Sutro Biopharma, Inc.(Sutro)と、抗体-薬物複合免疫賦活薬(immunostimulatory Antibody-Drug Conjugates、iADC)の共同研究・開発に関する全世界における戦略的提携およびライセンスに関する契約を締結した。  Sutroの抗体-薬物複合技術と、アステラス製薬のがん領域におけるグローバルな研究開発ケイパビリティを組み合わせ、次世代モダリティiADCの治療薬創製を目指す。  免疫チェックポイント阻害薬を含む主要ながん免疫療法の課題は、免疫細胞が浸潤しづらいがん微小環境にある非炎症性腫瘍に対して効果を得にくいことである。

テストステロン低下が肥満のない非アルコール性脂肪性肝疾患の要因か/日本抗加齢医学会

 テストステロン欠乏により生じる病態と言えば男性更年期(疲れやすい、肥満、うつ、性欲低下…)をまず思い浮かべるが、実は、加齢による骨格筋量の減少(サルコペニア)の原因の1つであり、脂肪肝の発症にも深いかかわりがあるというー。6月17~19日に大阪で開催された日本抗加齢医学会総会のシンポジウム「男性医学」において、濱口 真英氏(京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学助教)が『脂肪肝とテストステロン』と題し、骨格筋量の低下とテストステロン欠乏、そして脂肪肝への影響について講演した。

熱ショックタンパク90阻害薬pimitespib 、GISTに承認/大鵬

 大鵬薬品は 2022年6月20日、経口HSP(Heat Shock Protein)90阻害薬pimitespib(製品名:ジェセリ)について、「がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍」の効能・効果での製造販売承認取得を発表した。  同剤は、大鵬薬品が創製した化合物で、HSP90を阻害することによりがんの増殖や生存などに関与するKIT、PDGFRA、HER2やEGFRなどのタンパクを不安定化し、減少させることで抗腫瘍効果を示す。  今回の承認は、標準治療薬に不応または不耐と判断されたGIST患者を対象に、同剤とプラセボの有効性および安全性を比較した第III相臨床試験(CHAPTER-GIST-301試験)の結果に基づいたものである。同試験においてpimitespibは主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、有害事象は管理可能であった。試験の結果は、Annals of Oncologyに掲載された。