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事例045 糖尿病治療でカナグル錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説糖尿病患者にSGLT2阻害薬カナグリフロジン(商品名:カナグル錠、以下「同錠」)を投与したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。査定理由を調べるために、添付文書を参照しました。適応症は、「2型糖尿病」です。レセプトには「糖尿病」のみが表示されています。効能または効果に関する注意には、「1型糖尿病には投与しないこと」と記載がありました。病型記載漏れが原因ではないかと考えましたが、事由「D」の適用に対して疑問を持ち、さらに読み進めました。2型糖尿病であっても「eGFR30mL/分/1.73m2未満の中等度以上の腎機能障害患者または透析中の末期腎不全患者には、同錠の血糖低下作用が期待できない」との記載もありました。同錠の投与にあたり、妥当性のある検査値の表示がレセプトに必要であると解釈ができます。さらに、同錠には「投与開始にあたっては、診療報酬明細書の摘要欄に、投与開始時のeGFRの値及び検査の実施年月日を記載すること」との2022年6月20日発の厚生労働省通知がありました。これらの点から事由「D」が適用されたものと推測しました。医師には、同錠を投与する場合を含めて「糖尿病には必ず病型」を表示いただくとともに、同錠投与の場合には、レセプトへ検査値の記載をお願いして査定対策としました。なお、同錠にも関連することとして、自由診療で「GLP-1ダイエット」に対して2023年9月20日に留意事項が発信されていることにもご留意願います。

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ジャディアンス、CKD適応追加の意義/ベーリンガーインゲルハイム・リリー

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)に、2024年2月、慢性腎臓病(CKD)の適応が追加された。この適応追加に関連して日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、3月29日に都内でプレスセミナーを共同開催した。セミナーでは、CKDの概要、エンパグリフロジンのCKDに対するEMPA-KIDNEY試験の結果などについて講演が行われた。CKDの早期発見、早期介入で透析を回避 はじめに「慢性腎臓病のアンメットニーズと最新治療」をテーマに岡田 浩一氏(埼玉医科大学医学部腎臓内科 教授)が講演を行った。 腎炎、糖尿病、高血圧、加齢など腎疾患の原因はさまざまあるが、終末期では末期腎不全となり透析へと進展する。この腎臓疾患の原因となる病気の発症から終末期までを含めてCKDとするが、CKDの診療には次の定義がある。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか(とくに蛋白尿)(2)GFR<60mL/分/1.73m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続した場合にCKDと診断 また、重症度分類として18区分でヒートマップ化したものがあり、個々の患者の病態に応じ早期に治療介入することが必要だという。 最近の研究では、心血管死へのCKDの影響も解明されつつあり、厚生労働省の調査班の研究では、喫煙、糖尿病、高血圧、CKDが心血管死の主要因子とされ、とくにCKDの頻度は高血圧44.3%に次いで高く20.4%、人口寄与危険割合も高血圧26.5%に次いで10.4%と2番目に高いリスクであると説明した。また、わが国のCKD患者は、2005年時に推定1,328万人から2015年には推定1,480万人に増加しており、そのうち2022年時点で透析患者は約35万人、年間で約1.63兆円の医療費が推計されている。この対策に厚生労働省は、腎疾患対策検討会などを設置し、「2028年までに新規透析導入患者数を3万5千人以下に減少させる(10年で10%以上減少)」などの目標を示し、さまざまな調査と対策を打ち出している。 CKDの治療では、減塩や蛋白質制限などの食事療法、禁煙などの生活習慣改善のほか、RA系阻害薬を中心とした降圧療法、スタチンを用いた脂質異常症の治療など個々の患者の病態に合わせた多彩な治療が行われている。先述の対策委員会の中間報告では、診療ガイドラインの推奨6項目以上を達成すると予後が良好となりCKDの進展抑制が可能との報告もあり、「個別治療を1つでも多く達成することが重要」と岡田氏は指摘する。また、CKD患者への集学的治療は、患者のeGFRの低下を有意に遅らせる可能性があり、初期段階を含めて原疾患に関係なく有効である可能性があると示唆され、とくにステージ3〜5の患者には集学的治療が推奨されるという研究結果も説明した1)。 今後の課題として、わが国の新規透析導入患者は、2020年をピークに減少傾向にあるが、高齢男性では依然として増加傾向にあること、主な透析導入の原因として、第1位に糖尿病、第2位に高血圧・加齢、第3位に慢性腎炎が報告されている(日本透析医学会「わが国の慢性透療法の現況」[2022年12月31日現在])ことに触れ、第3位の慢性腎炎の疾患の1つである腎硬化症に焦点を当て解説を行った。腎硬化症は、蛋白尿を伴わず、進行も遅いためになかなか治療対象として認知されておらず、また、現在は根治療法がなく、診療エビデンスも少ないと今後解決すべきアンメットニーズであると説明した。 岡田氏は最後に「CKDは早期発見と介入が何よりも重要であり、eGFR>30である間に、かかりつけ医から専門医への紹介を推進することが大切」と語り講演を終えた。ジャディアンスがCKD患者の心血管死リスクを低下させる 次に「慢性腎臓病に対する新しい治療選択肢としてジャディアンスが登場した意義」をテーマに門脇 孝氏(虎の門病院 院長)が、エンパグリフロジンのCKDへの適応追加の意義や臨床試験の内容について説明を行った。 糖尿病などの代謝性疾患、心血管疾患、CKDは相互に関連し、どこか1つのサイクルが壊れただけでも負のスパイラルとなり、身体にさまざまな障害を引き起こすことが知られている。 2014年に糖尿病治療薬として承認されたSGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、当初から心臓、腎臓への保護作用の可能性が期待され、2021年には慢性腎不全に追加承認が、本年にはCKDへ追加承認がされた。その追加承認のベースとなった臨床試験がEMPA-KIDNEY試験である。 EMPA-KIDNEY試験は、8ヵ国で行われた第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、目的は「CKD患者にエンパグリフロジンが腎疾患の進行または心血管死のリスクを減少させるかを検討すること」、対象範囲は糖尿病ではない患者、低蛋白尿を呈する患者を含む、腎疾患進行リスクを有する幅広いCKD患者である。 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンのCKDへの追加承認のベースとなったEMPA-KIDNEY試験の概要は以下の通り。〔試験デザインとアウトカムなど〕・腎疾患進行リスクのあるCKD患者6,609例(うち9%が日本人)を、エンパグリフロジン10mg/日+標準治療(3,304例)とプラセボ+標準治療(3,305例)に割り付けた。・主要評価項目:心血管死または腎疾患の進行・副次評価項目:心不全による初回入院または心血管死までの期間など・患者背景は糖尿病患者と非糖尿病患者が半々だった。・eGFR<30mL/分/1.73m2の低下例も組み入れたほか、微量アルブミン尿患者も組み入れた。〔主な結果〕・主要評価項目では2.5年の追跡期間で腎臓病進行または心血管死の初回発現について、エンパグリフロジン群で432例(13.1%)、プラセボ群で558例(16.9%)だった(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.64~0.82、p<0.001)ことから初回発現までの期間が有意に抑制された2)。・ベースラインから最終フォローアップ来院までの全期間のeGFRスロープ(年間変化率)は、プラセボ群の-2.92に対してエンパグリフロジン群が-2.16で、その差は0.75だった。・2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院までの慢性期のeGFRスロープは、プラセボ群の-2.75に対してエンパグリフロジン群が-1.37で、その差は1.37だった。・安全性については、有害事象発現率はエンパグリフロジン群で43.9%、プラセボ群で46.1%であり、エンパグリフロジン群では骨折、急性腎障害、高カリウム血症などが報告されたが重篤なものはなかった。 門脇氏は、本試験の特徴について、「蛋白尿が正常な患者を初めて組み入れたCKDを対象としたSGLT2阻害薬の臨床試験であること」、「幅広いeGFR値のCKD患者に対し、糖尿病罹患の有無にかかわらず、腎疾患の進行または心血管死の発現リスクの有意な低下を示したこと」、「有害事象発現率がプラセボよりも低かった」とまとめ、レクチャーを終えた。 今後、微量アルブミン尿患者などを含め、ジャディアンスが幅広く使用される可能性があり、CKDへの有効な治療手段となることが期待されている。

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低所得者、腎機能低下・透析開始リスクが1.7倍に/京都大学

 これまでの研究により、慢性腎臓病(CKD)の発症や進行には社会経済要因(所得、教育歴、居住地など)との関連がみられ、社会経済的地位の低い人ほどリスクが高いことが示されてきた。しかし、皆保険制度のある日本での状況はわかっていなかった。 京都大学の石村 奈々氏らは全国健康保険協会(協会けんぽ)の生活習慣病予防健診および医療レセプトのデータ(約560万人分)を用いて、収入と腎機能低下の関連を調査した。本研究の結果は、JAMA Health Forum誌オンライン版2024年3月1日号に掲載された。 本研究は、日本の現役世代人口の約40%(加入者数3,000万人)をカバーする協会けんぽに加入する、34~74歳の成人を対象とした全国規模の後ろ向きコホート研究だ。2015~22年に推定糸球体濾過量(eGFR)を2回以上測定した参加者を解析の対象とした。主なアウトカムは2015年度の月額収入を10分位に分けた所得水準別にみた、急速なCKD進行(年間eGFR低下量>5mL/分/1.73m2)のオッズ比、腎代替療法(透析・腎移植)開始のハザード比だった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった559万1,060例は平均年齢49.2[SD 9.3]歳、33.4%が女性であった。女性は最も所得の低い群の71.1%を占め、男性は最も所得の高い群の90.7%を占めた。・潜在的交絡因子を調整後、所得が最も低い群(平均月収13万6,451円)は最も高い群(平均月収82万5,236円)と比較して、急速なCKD進行のリスクが高く(オッズ比:1.70、95%信頼区間[CI]:1.67~1.73)、腎代替療法開始のリスクも高かった(ハザード比:1.65、95%CI:1.47~1.86)。・急速なCKD進行との負の関連は、男性および糖尿病のない人でより顕著であった。 研究者らは「本研究は、健康保険や毎年の健康診断など手厚い医療制度がある日本においても、所得による腎機能低下リスクの差が男女ともに存在することを明らかにしたもので、低所得労働者に対する包括的なCKD予防・管理戦略の重要な役割を強調している」としている。

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日本人中年男性の飲酒量と糸球体過剰濾過の関係~関西ヘルスケアスタディ

 糸球体濾過量(GFR)は低値だけでなく、その数値が著しく高い糸球体過剰濾過についてもその後の腎機能低下や心血管疾患との関連が報告されている。大阪公立大学の柴田 幹子氏らは、健康な中年男性における飲酒パターンと糸球体過剰濾過リスクとの関連を評価した前向きコホート研究の結果を、Journal of Epidemiology誌2024年3月5日号に報告した。 本研究では、腎機能が正常で蛋白尿や糖尿病がなく、登録時に降圧薬使用のない日本人中年(40~55歳)男性8,640人を前向きに6年間追跡調査。飲酒量に関するデータはアンケートによって収集され、週当たりの飲酒頻度(1~3日、4~7日)および1日当たりの飲酒量(エタノール量0.1~23.0g、23.1~46.0g、46.1~69.0g、≧69.1g)で層別化された。糸球体過剰濾過は推定糸球体濾過量(eGFR)≧117mL/min/1.73m2と定義され、この値はコホート全体における上位2.5thパーセンタイル値に相当した。 主な結果は以下のとおり。・4万6,186人年の追跡期間中に、330人が糸球体過剰濾過に該当した。・多変量モデルにおける非飲酒者との比較で、週に1~3日飲酒する男性では、エタノール量≧69.1g/日(参考:アルコール度数5%のビール500mL缶のエタノール量が約20g)の摂取が糸球体過剰濾過のリスクと有意に関連していた(ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[CI]:1.18~4.74、p=0.015)。・週に4~7日飲酒する男性では、飲酒日当たりの摂取エタノール量が多いほど、糸球体過剰濾過のリスクが高くなった(46.1~69.0g/日のHR:1.55[95%CI:1.01~2.38、p=0.046]、≧69.1g/日のHR:1.78[95%CI:1.02~3.12、p=0.042])。 著者らは、週に4~7日飲酒する中年男性においては1日当たりの飲酒量が多いほど糸球体過剰濾過のリスク増加と関連していたが、週に1~3日飲酒する中年男性では1日当たりの飲酒量が≧69.1gと非常に多い場合にのみ糸球体過剰濾過のリスク増加と関連していたと結論付けている。

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ドライバー遺伝子陰性NSCLC、CGP検査で20%超にドライバー遺伝子異常を検出

 肺がんにおいては、診断時にマルチ遺伝子検査によってドライバー遺伝子が調べられることが一般的である。しかし、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるドライバー遺伝子の種類は年々増加しており、長期生存例などでは十分に調べられていない可能性もある。遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング[CGP]検査)が2019年に保険適用となり実施され始めているが、診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった患者のCGP検査でのドライバー遺伝子異常の検出状況は明らかになっていない。そこで、診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった進行NSCLC患者におけるCGP検査の結果が解析され、24.5%にドライバー遺伝子異常が認められた。本研究結果は、京都府立医科大学の石田 真樹氏らによってCancer Science誌オンライン版2024年3月7日号で報告された。 本研究は、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録されたデータを用いて、2019年8月~2022年3月にCGP検査を受けた進行NSCLC患者986例を対象として実施した。対象患者のCGP検査におけるドライバー遺伝子異常の頻度を調査した。また、診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった330例(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E遺伝子変異がすべて陰性であった患者)のCGP検査におけるドライバー遺伝子異常の頻度も調査した。 主な結果は以下のとおり。・CGP検査は765例(77.6%)が組織検体、221例(22.4%)が血液検体を用いて実施した。・CGP検査において986例中451例(45.7%)にドライバー遺伝子異常が認められた。主な遺伝子はEGFR遺伝子(16.5%)、KRAS遺伝子(14.5%)であった。・腺がんでは、CGP検査において764例中417例(54.6%)にドライバー遺伝子異常が認められた。・診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった患者では、CGP検査において330例中81例(24.5%)にドライバー遺伝子異常が認められた。そのうち20例(6.1%)にはEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、BRAF V600E遺伝子変異が認められた。KRAS G12C遺伝子変異は23例(7.0%)、HER2遺伝子変異は20例(6.1%)、MET exon14スキッピングは14例(4.2%)、RET融合遺伝子は4例(1.2%)に認められた。 本研究結果について、著者らは「診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった進行NSCLC患者においてもCGP検査は有用であることが示された」とまとめた。

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慢性腎臓病に対する心不全の因果関係

 心不全と慢性腎臓病(CKD)との間に因果関係のあることが、メンデルランダム化解析の結果として示された。この関係は、糖尿病と高血圧の影響を調整した後でも、依然として有意だという。湖南中医薬大学(中国)のJunyu Zhang氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に12月11日掲載された。 肥満や糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、および遺伝的素因が心不全やCKDのリスク上昇と関連のあることは、多くの疫学研究の結果として示されている。ただし、それらの因果関係については未解明の点が多く残されており、特に心不全が腎機能低下やCKDのリスクを押し上げるか否かは不明。Zhang氏らはこれらの点を明らかにするため、双方向2サンプルメンデルランダム化(2SMR)解析を行った。 2SMRには欧州で行われた2件の研究データを用いた。そのうち1件の研究では4万7,309人の心不全患者群と93万14人の対照群が設定され、他の1件は5万1,256人のCKD患者群と73万6,396人の対照群が設定されていた。解析には、逆分散加重(IVW)法、加重中央値推定(WME)法、MR-Egger法など、5種類の手法を用いて、結果の正確性や一般化可能性を高めた。 2SMR解析の結果、心不全の遺伝的素因を持つ人はCKDリスクが高いことが明らかになった。具体的には、IVW法ではオッズ比(OR)1.12(95%信頼区間1.03~1.21)であり(P=0.009)、WME法ではOR1.14(同1.03~1.26)であって(P=0.008)、いずれも有意な関連が確認された。この関連は糖尿病と高血圧の影響を調整した2SMR解析においても、IVW法ではOR1.13(1.03~1.23)、WME法ではOR1.15(1.04~1.27)であって、引き続き有意だった。なお、MR-Egger法では、糖尿病と高血圧の影響の調整前〔OR1.09(0.82~1.44)〕および調整後〔OR1.12(0.85~1.48)〕ともに非有意だった。 一方、CKDの結果としての心不全という、逆方向の因果関係に関する解析の結果は、IVW法ではOR1.01(0.97~1.06)、WME法ではOR1.03(0.97~1.10)であり、有意な関連が示されなかった。検討に用いた5種類の解析手法のうち、MR-Egger法のみが有意な関連を示していた〔OR1.13(1.01~1.26)〕。また、腎機能(eGFR)低下と心不全の関連については、5種類の解析手法の全てで有意な関連が示されなかった。 著者らは、「われわれの研究結果は、CKDの進行における心不全の重要性を実証するものであり、CKDの治療および新たな介入法の開発につながる有意義なものと言える。さまざまな集団で心不全とCKDの関連を検討し、その相互関係についてより深く理解して、かつ因果関係のメカニズムを解明することで、個別化医療の道が開けるのではないか」と述べている。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法の第2回OS中間解析(FLAURA2)/ELCC2024

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法とオシメルチニブ単剤を比較する国際共同第III相無作為化比較試験(FLAURA2試験)が実施されており、主解析の結果、併用群で無増悪生存期間(PFS)が改善したことが報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79)1)。欧州肺がん学会(ELCC2024)において、本試験の全生存期間(OS)に関する第2回中間解析の結果と、主解析時点をデータカットオフとした病勢進行後の治療成績が、ペルー・Instituto Nacional de Enfermedades NeoplasicasのNatalia Valdiviezo氏により報告された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)でStageIIIB、IIIC、IVの未治療の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OS、PFS2(2次治療開始後のPFS)、最初の後治療または死亡までの期間(TFST)、2つ目の後治療または死亡までの期間(TSST)など 主な結果は以下のとおり。・OSは第2回中間解析でも未成熟(成熟度:41%)であった。データカットオフ時点(2024年1月8日)のOS中央値は、併用群が未到達、単独群が36.7ヵ月であった(HR:0.75、95%CI:0.57〜0.97、p=0.0280)。なお、第2回中間解析での有意水準はp≦0.000001に設定されており、有意差は示されなかった。・1年、2年、3年時のOS率は、併用群がそれぞれ89%、80%、64%であり、単独群がそれぞれ92%、72%、50%であった。・OSに関するサブグループ解析では、ほとんどのサブグループで併用群のHRが0.8を下回り、併用群が良好な傾向にあったが、中国人を除くアジア人のサブグループのHRは1.04(95%CI:0.70~1.54)であった。・PFS2中央値は、併用群が30.6ヵ月、単独群が27.8ヵ月であった(HR:0.70、95%CI:0.52~0.93、成熟度:34%)。・TFST中央値は、併用群が30.7ヵ月、単独群が25.4ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.56~0.94、成熟度:42%)。・TSST中央値は、併用群が未到達、単独群が33.2ヵ月であった(HR:0.69、95%CI:0.51~0.93、成熟度:32%)。・併用群では1次治療が中止となった患者の46%(57例)が後治療を受け、その内訳として多かったのはプラチナ製剤を含まない化学療法(37%)、プラチナ製剤を含む化学療法(32%)であった。同様に、単独群では60%(91例)が後治療を受け、そのうち81%がプラチナ製剤を含む化学療法であった。 本試験結果について、Valdiviezo氏は「EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対するオシメルチニブ+化学療法の併用療法は、初回増悪後も臨床的に意義のあるベネフィットを示した。OSに関する第2回中間解析において、OSの有望な傾向が認められた」とまとめた。

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成人心臓移植待機患者の移植到達前死亡を予測するリスクスコアの開発と検証(解説:小野稔氏)

 2018年10月に、米国において6段階に分けた新しい心臓移植待機患者への臓器配分モデルが適用された。これは登録時に受けている治療の濃厚さに応じて階層化されたもので、待機中死亡を減少させ、かつ移植後の予後を最適化するという目的を有している。この臓器配分モデルが適用されて5年が経過したが、すでに適切性に疑問が呈され始めていて、より公正な新しい配分モデルの策定が議論されている。本論文は新たな配分モデルに適用されうる可能性を念頭に置いて、フランスで運用されているFrench Candidate Risk Score (French-CRS)にヒントを得て、心不全重症度を反映した血液検査データと機械的循環補助(MCS)状態を因子として用いて開発されたUS-CRSの優れた移植登録患者の待機死亡予測精度を報告している。 2019年1月~2022年12月までに米国で心臓移植登録された1万9,680例のうち、18歳以上の成人1万6,905例を解析対象とした。70%に相当する1万2,362例(97病院)を分析対象、30%に相当する4,543例(分析コホートと地理的分布等を一致させた41病院)を検証対象として、移植登録後6週以内の移植未到達死亡の予測モデルを構築した。US-CRSに組み込むパラメータは感度分析に基づいて最終的に、血清アルブミン、ビリルビン、eGFR、血清ナトリウム、LVADの有無、短期MCSの既往、BNP(またはNT-ProBNP)となった。移植登録後6週以内の移植未到達死亡の予測精度のROC解析を行ったところ、US-CRSのAUC 0.79、French-CRSでは0.72、現行の6段階モデルでは0.68であった。C-indexについては、US-CRS 0.76、French-CRS 0.69、6段階モデル0.67であり、US-CRSが最も優れた移植待機中6週以内死亡の予測精度を示した。なお、短期MCSにIABPやカテーテル型VADを含めると予測効果量が54%低下する結果となった。 現在、米国OPTN(臓器摘出・移植ネットワーク)では臓器配分を新しい配分システムに移行しつつある。このシステムでは、個々のドナーと移植候補者の組み合わせに医学的緊急度や移植後生存期待値などから導かれた複合連続数スコアを当てはめることを目指している。本論文で提案されたUS-CRSは現行の6段階配分モデルより医学的重症度(つまり移植の必要性)の識別力が優れており、今後開発される新たなドナー配分モデルのための医学的緊急度評価指標として検討されるべきであると結論されている。

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心不全へのARNI、日本人での安全性が明らかに(REVIEW-HF)/日本循環器学会

 急性・慢性心不全診療―JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版が2020年に発表され、国内における心不全(HF)治療も変化を遂げている。とくにアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)発売の影響は大きいが、そのサクビトリル・バルサルタン(商品名:エンレスト)の治療を受ける国内患者の特徴、忍容性、臨床転帰は明らかにされていない。そこで、金岡 幸嗣朗氏(国立循環器病研究センター)らが全国多施設観察研究の分析を行い、その結果を第88回日本循環器学会年次学術集会 Late Breaking Cohort Studies1にて報告した。 同氏らはHF管理のためにサクビトリル・バルサルタンの新規処方患者の特徴と臨床転帰を評価するため、国内のリアルワールドエビデンス研究であるREVIEW-HF試験よりサクビトリル・バルサルタンに関連する有害事象(AE)を分析した。処方90日以内に発生したAEとして、血圧低下、腎機能低下、高カリウム血症、血管浮腫の発生について解析し、AEと転帰との関連についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・993例を解析、男性は702例(70.2%)、平均年齢は69.6歳だった。・HFrEFは549例(55.3%)、HFmrEFは218例(22.0%)、HFpEFは226例(22.7%)だった。・サクビトリル・バルサルタンの開始用量は、82.6%が100mg/日であった。・HFrEF患者の27.3%はベースライン時点で収縮期血圧(SBP)<100mmHgだった。・サクビトリル・バルサルタンに関連する90日以内のAEは、22.5%で観察された。・400mg/日まで増量できたのは、HFrEF群で38.9%、HFmrEF群で42.1%、HFpEF群で39.1%であった。中止理由としては血圧低下が最も多かった。・調整後、ベースラインのNYHA心機能分類IIIまたはIV、SBP<100mmHg、eGFR<30mL/min/1.73m2は、AEの発生とARNIの中止の両方と統計学的に有意に関連しており、AEがみられた患者では、AEがなかった患者よりも心血管死または心不全による入院のリスクが高かった。 同氏は「国内では高齢者、LVEF機能分類を問わず、そしてSBP<100mmHgや腎機能が低下している患者にもサクビトリル・バルサルタンが処方されているのが現状である。今回の研究より、治療開始直後に比較的高い割合でAEを認め、低血圧、腎不全などのリスクを有する患者への処方の際は、とくに有害事象の発生に配慮する必要がある」とコメントした。

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悪性褐色細胞腫の治療に、スニチニブが有望/Lancet

 本試験(FIRSTMAPPP試験)以前に、転移のある褐色細胞腫および傍神経節腫(パラガングリオーマ)患者を対象とした無作為化対照比較試験は行われていないという。フランス・パリ・サクレー大学のEric Baudin氏らが、この腫瘍の治療において、プラセボと比較してスニチニブ(VEGFR、PDGFR、RETを標的とする受容体チロシンキナーゼ阻害薬)は、1年無増悪生存率を有意に改善し安全性に差はないことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月22日号で報告された。欧州4ヵ国のプラセボ対照無作為化第II相試験 FIRSTMAPPP試験は、欧州4ヵ国(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ)の14施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2011年12月~2019年1月に、年齢18歳以上、散発性または遺伝性の転移を有する進行性褐色細胞腫およびパラガングリオーマの患者78例(年齢中央値54歳、男性59%)を登録した(フランス保健省などの助成を受けた)。 これらの患者を、スニチニブ(37.5mg/日、39例)またはプラセボ(39例)を経口投与する群に無作為に割り付けた。プラセボ群からスニチニブ群へのクロスオーバーは許容した。 主要評価項目は、中央判定による12ヵ月の時点での無増悪生存患者の割合とし、Simon two-step designに基づき解析を行った。69%で前治療、1年無増悪生存率は36% 78例中25例(32%)が生殖細胞系SDHx遺伝子変異を有しており、54例(69%)は前治療を受けていた。 12ヵ月の時点での無増悪生存は、プラセボ群が39例中7例(19%、90%信頼区間[CI]:11~31)であったのに対し、スニチニブ群は39例中14例(36%、23~50)であり、スニチニブ群の有効性に関する仮説の妥当性が確証された。 また、無増悪生存期間中央値は、スニチニブ群8.9ヵ月、プラセボ群3.6ヵ月、全生存期間中央値はそれぞれ26.1ヵ月および49.5ヵ月、奏効率は36.1%および8.3%(両群とも完全奏効例はなく、すべて部分奏効例)であり、スニチニブ群の奏効期間中央値は12.2ヵ月だった。有害事象の多くはGrade1/2 両群とも有害事象の多くはGrade1または2であった。最も頻度の高いGrade3または4の有害事象は、無力症(スニチニブ群7例[18%]、プラセボ群1例[3%])、高血圧(5例[13%]、4例[10%])、背部痛/骨痛(1例[3%]、3例[8%])だった。 スニチニブ群で3例(呼吸不全、筋萎縮性側索硬化症、直腸出血)が死亡し、直腸出血の1例は試験薬関連死と考えられた。プラセボ群では2例(誤嚥性肺炎、敗血症性ショック)が死亡した。 著者は、「この希少がんの初めての無作為化試験は、本症における抗腫瘍効果に関して、最も高い水準のエビデンスを持つ治療選択肢としてスニチニブの使用を支持するものである」と結論し、「スニチニブは、今後、他のすべての治療選択肢と比較すべき標準的な全身療法としての役割を果たす可能性がある」と指摘している。

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EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、治験不適格患者へのオシメルチニブの効果は?

 オシメルチニブはFLAURA試験(未治療のEGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん[NSCLC]患者を対象に、オシメルチニブと他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を比較した試験)の結果1)に基づき、EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移NSCLC患者の1次治療に広く用いられている。実臨床においては、臨床試験への登録が不適格となる患者にも用いられるが、その集団における治療成績は明らかになっていない。そこで、カナダ・BC Cancer AgencyのJ. Connor Wells氏らがリアルワールドデータを用いて解析した結果、半数超の患者がFLAURA試験への登録が不適格であり、不適格の患者は適格の患者と比較して大幅に全生存期間(OS)が短かったことが示された。本研究結果は、Lung Cancer誌オンライン版2024年3月4日号で報告された。 本研究は、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学附属バンクーバー総合病院において、1次治療でオシメルチニブが投与されたEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異、L858R変異)陽性の進行・転移NSCLC患者311例を対象に実施した。FLAURA試験への登録の適否で対象患者を2群に分類し(適格群/不適格群)、OSを比較した。なお、ECOG PS2以上、症候性またはステロイド治療を必要とする脳転移を有する、ヘモグロビン値90g/L未満、血小板数100×109/L未満、クレアチニンクリアランス50mL/min未満のいずれかを満たす患者をFLAURA試験への登録が不適格と定義した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の44%が適格群、56%が不適格群に分類された。・追跡期間中央値26.5ヵ月時点における全体集団のOS中央値は27.4ヵ月であった。・FLAURA試験への登録の適否別にみたOS中央値は、適格群が34.2ヵ月であったのに対し、不適格群では15.8ヵ月と有意に短かった(p<0.001)。 本研究結果について、著者らは「FLAURA試験への登録が不適格であった患者が半数以上を占めたことから、本研究におけるOS中央値は27.4ヵ月であり、FLAURA試験の結果(38.6ヵ月)と比較して約1年短かった。しかし、適格群のOS中央値は34.2ヵ月であり、FLAURA試験の結果と同様であった。不適格群の患者は、ベースライン時の疾病負荷が高く、予後不良となった可能性がある。これらの患者の予後を改善するためには、さらなる研究が必要である」とまとめた。

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添付文書改訂:ジャディアンスに慢性腎臓病の適応が追加【最新!DI情報】第10回

添付文書改訂:ジャディアンスに慢性腎臓病の適応が追加<対象薬剤>エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス錠10mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)<改訂年月>2024年2月<改定項目>[追加]効能・効果慢性腎臓病(末期腎不全または透析施行中の患者を除く)[追加]効能・効果に関連する注意eGFRが20mL/min/1.73m2未満の患者では、本剤の腎保護作用が十分に得られない可能性があること、本剤投与中にeGFRが低下することがあり、腎機能障害が悪化する恐れがあることから、投与の必要性を慎重に判断すること。<ここがポイント!>エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス錠)は、2014年に「2型糖尿病」の効能・効果で承認され、2021年には「慢性心不全」の適応が追加されていましたが、2024年2月、「慢性腎臓病(末期腎不全または透析施行中の患者を除く)」に対する適応も新たに追加承認されました。慢性腎臓病は、腎機能低下や蛋白尿などの尿異常が慢性的に持続する疾患です。慢性腎臓病が進行すると、腎移植や透析療法が必要となるため、腎機能の低下を抑えて末期腎不全への進行を遅らせることが重要です。SGLT2阻害薬は糖尿病治療薬として開発されましたが、腎イベントを抑制することが明らかとなり、慢性腎臓病に対しても適応が拡大されました。国内では2021年8月にダパグリフロジン(同:フォシーガ錠)が慢性腎臓病(末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の効能・効果の追加承認を取得し、2022年6月にカナグリフロジン(同:カナグル錠)が2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の追加承認を取得しました。エンパグリフロジンは2型糖尿病の合併有無にかかわらずに使用できるダパグリフロジンと同様の適応です。腎疾患進行のリスクのある慢性腎臓病患者を対象とした国際共同第III相試験(EMPA-KIDNEY試験)において、腎疾患進行または心血管死が発現した患者の割合は、本剤群(430/3,292例、13.1%)でプラセボ群(553/3,289例、16.8%)より低く、エンパグリフロジンにより腎疾患進行または心血管死の発現リスクはプラセボに比べて有意に低下しました(ハザード比:0.73、99.83%信頼区間:0.59~0.89)。また、ベースラインの糖尿病合併の有無別では、糖尿病合併の有無にかかわらず本剤群とプラセボ群の間で有意な差が認められました(糖尿病合併のハザード比:0.64、p<0.0001、糖尿病非合併のハザード比:0.83、p=0.0443、Cox回帰モデル)。

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EGFR exon20挿入変異陽性NSCLC、amivantamab+化学療法の日本人データ(PAPILLON)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR exon20挿入変異は非小細胞肺がん(NSCLC)のEGFR変異のうち3番目に多く、12%を占めるという報告もある1)。しかし、既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬はEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCに対する効果が乏しい。そこで、EGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCを対象とした国際共同第III相無作為化比較試験(PAPILLON試験)において、EGFRおよびMETを標的とする完全ヒト型二重特異性抗体amivantamabと化学療法の併用の有用性が検証され、化学療法単独と比べて主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が報告された2)。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、小野 哲氏(静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科)がPAPILLON試験の日本人サブグループの結果を報告した。・試験デザイン:国際共同非盲検無作為化比較第III相試験・対象:未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLC患者・試験群:amivantamab+化学療法(amivantamab+化学療法群:153例[日本人:19例])・対照群:化学療法(化学療法群:155例[日本人:15例])※・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、PFS2(2次治療開始後のPFS)、安全性など※:化学療法群は病勢進行時にamivantamab単剤療法へのクロスオーバーが許容された(全体集団の65例、日本人集団の11例がクロスオーバー)。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値はamivantamab+化学療法群15.6ヵ月、化学療法群20.1ヵ月であった。・日本人集団において、ベースライン時に脳転移を有していた患者の割合は、amivantamab+化学療法群21%(全体集団:23%)、化学療法群33%(同:23%)であった。・日本人集団におけるBICRに基づくPFS中央値は、amivantamab+化学療法群15.5ヵ月(全体集団:11.4ヵ月)、化学療法群5.6ヵ月(同:6.7ヵ月)であった(ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.09~0.53)。・日本人集団におけるORRはamivantamab+化学療法群72%(全体集団:73%)、化学療法群67%(同:47%)であった。 ・日本人集団におけるOS中央値は、amivantamab+化学療法群では未到達(全体集団:未到達)、化学療法群25.5ヵ月(同:24.4ヵ月)であった(HR:0.79、95%CI:0.17~3.62)。・日本人集団におけるPFS2中央値は、amivantamab+化学療法群18.6ヵ月(全体集団:未到達)、化学療法群13.9ヵ月(同:17.3ヵ月)であった(HR:0.44、95%CI:0.15~1.34)。・日本人集団における治療継続期間中央値は、amivantamab+化学療法群13.2ヵ月(全体集団:9.7ヵ月)、化学療法群5.1ヵ月(同:6.7ヵ月)であった。・日本人集団におけるGrade3以上の有害事象は、amivantamab+化学療法群90%(全体集団:75%)、化学療法群53%(同:54%)に発現し、全治療薬の中止に至った有害事象は、amivantamab+化学療法群11%(同:8%)に認められ、化学療法群では0例(同:8%)であった。・日本人集団における安全性プロファイルは全体集団と同様であり、安全性に関する新たなシグナルは認められなかった。 本研究結果について、小野氏は「amivantamabと化学療法の併用は、有効性・安全性が日本人集団でも全体集団と同様であり、安全性に関する新たなシグナルも認められなかった。これらの結果は、未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLC患者において、本レジメンが新たな標準治療となることを支持するものである」とまとめた。

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EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、ラムシルマブ+エルロチニブのOS最終解析結果(RELAY)/日本臨床腫瘍学会

 未治療のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験(RELAY)において、VEGFR-2阻害薬ラムシルマブとEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)エルロチニブ併用の有用性が検証されている。エルロチニブへのラムシルマブの上乗せは、エルロチニブ単剤と比較して主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが報告され1)、実臨床でも本レジメンが用いられている。本試験は対象患者の約半数が日本人であり、日本人集団の有効性が良好で、とくにEGFR exon21 L858R変異を有するサブグループでさらに有効である可能性が報告されており2)、全生存期間(OS)の解析結果が期待されていた。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、中川 和彦氏(近畿大学病院 がんセンター長)が世界に先駆け本試験のOSの最終解析結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR変異陽性(exon19del、exon21 L858R)StageIV NSCLC患者・試験群:ラムシルマブ(10mg/kg、隔週)+エルロチニブ(150mg/日)を病勢進行または中止基準に該当するまで投与(併用群:224例[日本人:106例])・対照群:エルロチニブ(同上)を病勢進行または中止基準に該当するまで投与(単剤群:225例[日本人:105例])※・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]OS※、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、安全性・データカットオフ日:2023年10月20日※:OSの解析は約300例のイベント発生時に実施することが事前に規定され、データカットオフ時点で297例にイベントが発生した。検出力は設定されなかった。 主な結果は以下のとおり。・ITT集団におけるPFSの改善は、OS解析時(追跡期間中央値45.1ヵ月)まで一貫していることが確認された(層別ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.53~0.83、p=0.0002)。・日本人集団におけるPFS中央値は、併用群19.4ヵ月(ITT集団:19.6ヵ月)、単剤群11.2ヵ月(同:12.4ヵ月)であった(HR:0.69、95%CI:0.51~0.93)。・日本人集団におけるOS中央値は、併用群54.3ヵ月(ITT集団:51.1ヵ月)、単剤群46.0ヵ月(同:46.0ヵ月)であり(HR:0.91、95%CI:0.65~1.26)、OS中央値の差は8.3ヵ月(同:5.1ヵ月)であった。・日本人集団における4年OS率は併用群57.6%(ITT集団:52.8%)、単剤群48.0%(同:48.3)であった。・日本人集団におけるL858R変異患者のOS中央値は、併用群54.3ヵ月(ITT集団:51.6ヵ月)、単剤群43.2ヵ月(同:45.8ヵ月)であり(HR:0.63、95%CI:0.40~0.99)、OS中央値の差は11.0ヵ月(同:5.9ヵ月)と、併用群が良好な傾向にあった。・日本人集団におけるexon19del変異患者のOS中央値は、併用群53.9ヵ月(ITT集団:49.0ヵ月)、単剤群62.1ヵ月(同:51.4ヵ月)であり(HR:1.40、95%CI:0.65~1.26)、OS中央値の差は-8.2ヵ月(同:-2.4ヵ月)と、単剤群が良好な傾向にあった。・病勢進行時のEGFR exon20 T790M変異の発現率は、治療群によって違いはみられなかった(日本人集団の併用群52.0%[ITT集団:47.0%]、単剤群51.0%[同:46.0%])。・日本人集団において、試験薬による治療終了後にEGFR-TKIによる治療を受けた患者の割合は併用群85.8%、単剤群85.7%であり、オシメルチニブによる治療を受けた割合はそれぞれ60.4%、55.2%であった。・日本人集団におけるGrade3以上の有害事象は、併用群81.9%(全体の安全性解析対象集団:76.0%)、単剤群61.9%(同:56.4%)に発現し、全治療薬の中止に至った治療関連有害事象は、それぞれ18.1%(同:16.3%)、21.9%(同:11.1%)に認められた。・安全性プロファイルは、既報と同様であった。 本研究結果について、中川氏は「OSの検出力の設定はなされていなかったが、ラムシルマブとエルロチニブの併用により、臨床的意義のあるOS中央値の数値的な延長がITT集団と日本人集団で示された。OS中央値の数値的な延長は、日本人患者および日本人のL858R変異を有する患者で顕著であった。この結果から、これらの患者集団にはエルロチニブとラムシルマブの併用療法がベネフィットをもたらすことが示唆された」とまとめた。

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ダパグリフロジンは低アルブミン尿のCKD進行にも有効か

 わが国では、2021年に慢性腎臓病(CKD)にSGLT2阻害薬ダパグリフロジンが保険適用となり、糖尿病治療と同様に広く使用されている。ダパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬は、主に高アルブミン尿患者を対象とした大規模臨床試験で、CKDの進行を遅らせる効果が確認されている。しかし、低アルブミン尿のCKD患者へのダパグリフロジンの実際の使用状況や有効性についてはデータが不足していた。この課題に対し、カナダ・マニトバ大学内科のNavdeep Tangri氏らの研究グループは、ダパグリフロジンがCKDに対して承認された後に投与対象となった患者について検討した結果、アルブミン/クレアチニン比(UACR)<200mg/gのCKD患者にダパグリフロジンが有効であることが示唆された。Advances in Therapy誌オンライン版2024年1月19日号の報告。ダパグリフロジンの使用でeGFR勾配は減弱 本研究では、日本と米国のレセプトデータを用い、CKDに対する承認後にダパグリフロジン10mgの投与対象となった、UACR<200mg/gのCKD患者(投与開始患者と非投与患者)について検討した。推定糸球体濾過量(eGFR)勾配へのダパグリフロジン10mg投与開始と非投与の影響を評価するため、傾向スコアをマッチさせたコホートでprevalent new user designを用いて分位点回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ダパグリフロジンの投与開始者2万407例のほとんどがステージ3~4のCKDだった(データベース全体の69~81%)。・最も一般的な併存疾患は2型糖尿病、高血圧、心血管疾患だった。・ベースライン時には53〜81%の患者でレニン・アンジオテンシン系阻害薬が処方されていた。・適格であったが非投与だった患者は、投与開始患者より年齢が高く、eGFRが高値、併存疾患の負担が低かった。・ダパグリフロジンの投与開始後、投与開始患者と非投与患者のeGFR勾配の中央値の差は、UACR<200mg/gのすべての患者で1.07mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:0.40~1.74)、2型糖尿病のないUACR<200mg/gの患者で1.28mL/分/1.73m2/年(95%CI:-1.56~4.12)だった。 以上から研究グループは「UACR<200mg/gの患者では、ダパグリフロジンの投与開始は非投与と比較し、臨床的に意義のあるeGFR勾配の減弱と関連していた。これらの所見は、ダパグリフロジンの利用可能な臨床的有効性エビデンスを補足するものであり、その有効性がUACR<200mg/gのCKD患者にも及ぶ可能性を示唆する」と結論付けている。

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心臓移植候補者の順位付け、より有用なリスクスコアモデル開発/JAMA

 米国・シカゴ大学のKevin C. Zhang氏らは、米国の心臓移植候補者約1万7,000例を対象としたレジストリベースの研究を行い、医学的緊急性に基づく心臓移植候補者の順位付けの連続多変数割り当てスコアモデルを開発した。現行の6段階システムに比べ、心臓分配の医学的緊急性の要素に関して、より有用である可能性があるという。米国の心臓分配システムは、移植をしなければ死亡するリスクが高い医学的緊急性がある候補者を優先しているが、現行の治療ベースの6段階システムは操作がされやすく、順位付けに限界があるとされている。JAMA誌2024年2月13日号掲載の報告。事前定義の予測因子セット+仏モデルで開発 研究グループは、2019年1月1日~2022年12月31日に米国心臓分配システムに登録された18歳以上の心臓移植候補者を対象に、レジストリベースの観察試験を行い、医学的緊急性の指標となる新たな米国候補者リスクスコア(US-CRS)モデルを開発した。開発のトレーニング用に97施設(70%)、検証用に41施設(30%)を無作為に割り当てた。 US-CRSモデルは、事前定義した予測因子セットを、現行のフランス候補者リスクスコア(French-CRS)モデルに追加して開発した。感度分析では、短期の機械的循環補助(MCS)に大動脈内バルーンポンプ(IABP)、経皮的心室補助装置(VAD)の使用も含めた。 US-CRSモデル、French-CRSモデル、現行の6段階モデルを、テストデータセットを用いて評価。モデルの予測能は、6週間以内の移植なしの死亡に関する時間依存型ROC曲線下面積(AUC)、全生存一致度(C統計量)で評価した。登録6週間以内の死亡、総C統計量ともに予測能改善 総計1万6,905例の成人心臓移植候補者が対象となった(平均年齢53歳[SD 13]、男性73%、白人58%)。移植を受けずに死亡した患者は796例(4.7%)だった。 最終的なUS-CRSには、短期のMCS(VA-ECMOまたはtemporary VAD)や、ビリルビンの対数値、推算糸球体濾過量(eGFR)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の対数値、アルブミン値、ナトリウム値、植込み型補助人工心臓(LVAD)の情報を盛り込んだ。 テスト用データセットでは、登録後6週間以内の死亡に関するAUCは、US-CRSモデル0.79(95%信頼区間[CI]:0.75~0.83)、French-CRSモデル0.72(0.67~0.76)、現行の6段階モデル0.68(0.62~0.73)だった。 総C統計量は、US-CRSモデル0.76(95%CI:0.73~0.80)、French-CRSモデル0.69(0.65~0.73)、現行6段階モデル0.67(同:0.63~0.71)だった。 IABPと経皮的VADを短期のMCSとして分類すると、効果量は54%減少した。

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十代の肥満は若年成人期の腎臓病のリスク

 十代に肥満であることが、若年成人期の腎臓病発症リスク因子である可能性を示すデータが発表された。ヘブライ大学(イスラエル)のAvishai Tsur氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Pediatrics」に12月11日掲載された。BMIが基準範囲内ながら高値の場合も、リスク上昇が認められるという。 成人後の肥満が中高年期の慢性腎臓病(CKD)のリスク因子であることは知られている。CKDは腎不全のリスクであるだけでなく、心血管疾患のリスクも高めることから、早期発見と早期治療が必要とされる。しかし近年、小児や未成年の肥満が世界的に増加しているにもかかわらず、未成年の肥満がCKDのリスク因子なのか否かは明らかにされていない。そこでTsur氏らは、十代でのBMIと若年成人期(45歳未満)における初期のCKDとの関連をイスラエルの医療データを用いて検討した。 解析対象は、1975年以降に生まれ、16~20歳時点でのBMIの記録と、徴兵検査時の腎機能関連データがそろっている59万3,660人(ベースラインの平均年齢17.2±0.5歳、男性54.5%)。ベースライン時に腎臓病、アルブミン尿、高血圧、血糖異常の記録がある人は除外されている。肥満の有無と肥満の程度の判定は、米疾病対策センター(CDC)の基準に従い、年齢と性別が一致する集団でのパーセンタイルによって判定した。早期CKDは、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2以上で、中程度から重度のアルブミン尿が見られるステージ1~2のCKDと定義した。 男性は13.4±5.5年、女性は13.4±5.6年の追跡で、1,963人(0.3%)が早期CKDを発症した。交絡因子を調整後、男性・女性ともに、BMIが正常高値のカテゴリーであっても、以下のように早期CKD発症ハザード比の有意な上昇が認められた。男性では正常高値BMIで1.8(95%信頼区間1.5~2.2)、過体重で4.0(同3.3~5.0)、軽度肥満で6.7(5.4~8.4)、重度肥満で9.4(6.6~13.5)。女性は正常高値BMIで1.4(1.2~1.6)、過体重で2.3(1.9~2.8)、軽度肥満で2.7(2.1~3.6)、重度肥満で4.3(2.8~6.5)。なお、追跡期間中に糖尿病や高血圧を発症した人を除外した解析でも、結果は同様だった。 論文の結論は、「十代後半のBMIが高いことと、若年成人期の早期CKDとの有意な関連が認められた。肥満による早期CKDのリスクは、BMI高値以外のリスク因子がない、一見すると健康そうな人でも上昇し、かつ肥満度がより高い場合によりハイリスクになるという関連があった。これらのデータは、BMIが高い未成年者の肥満を抑制し、腎臓病のリスク因子を管理することの重要性を強調するものと言える」と総括されている。 なお、研究グループによると、体重が過剰であることが、なぜ腎臓にダメージを与えるのかというメカニズムの詳細はまだ明らかにされておらず、現時点では高血圧やコレステロール値の上昇、肥満に関連するホルモン分泌の乱れなどの関与が原因として考えられているという。

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肺がんコンパクトパネル、細胞診検体の精度は?

 2023年1月26日に遺伝子パネル検査「肺がん コンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システム」(肺がんコンパクトパネル)の一部変更申請が承認された。従来、4遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、MET)のマルチコンパニオン診断検査として用いられていたが、今回の承認により3遺伝子(BRAF、KRAS、RET)が追加され、7遺伝子が対象となった。その肺がんコンパクトパネルについて、細胞診検体(液体検体)を用いた遺伝子検査の精度を検討した結果が、國政 啓氏(大阪国際がんセンター 呼吸器内科)らによって、Lung Cancer誌オンライン版2月3日号で報告された。本研究において、気管支生検鉗子洗浄液の検体では、組織検体で検出された遺伝子変異との一致率が94.9%と高率であった。 本研究は、StageIVの非小細胞肺がん患者を対象とした。液体検体として、気管支生検鉗子洗浄液(鉗子洗浄コホート:79例)、胸水(胸水コホート:8例)、髄液(髄液コホート:9例)を用いて、肺がんコンパクトパネルによる遺伝子検査を実施した。組織検体についても遺伝子検査を実施し(オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステムまたはAmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルを使用)、鉗子洗浄コホートの液体検体の結果と比較した。 主な結果は以下のとおり。・鉗子洗浄コホートでは、組織検体で検出された変異との一致率は94.9%(75/79例)であった。・鉗子洗浄コホートの組織検体と液体検体でみられた相違は以下のとおり(下線部は相違点)。症例1:組織(EGFR L861Q、MET exon14スキッピング)、液体(EGFR L861Q)症例2:組織(KRAS Q61H)、液体(検出なし)症例3:組織(EGFR L858R)、液体(EGFR L858R、KRAS G12C)症例4:組織(EGFR L858R)、液体(EGFR L858R、EGFR A859D)・胸水コホートでは、GM管で8週間冷蔵保存した後でもDNA・RNAの質や量は低下しなかった。・髄液コホートでは、9例中8例で組織検体にドライバー遺伝子変異が認められた。髄液中に腫瘍細胞が認められた患者全例で、髄液検体で認められた変異と組織検体で認められた変異が一致していた。 本研究結果について、著者らは「組織検体の採取が困難な場合、治療につながるドライバー遺伝子変異の検索や治療抵抗性の解析に、細胞診検体を用いた肺がんコンパクトパネルによる遺伝子検査が利用可能と考えられる」とまとめた。

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肺がんコンパクトパネルにBRAF、KRAS、RET追加

 DNAチップ研究所は2024年1月26日、次世代シークエンス技術による遺伝子パネル検査「肺がん コンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システム」(肺がんコンパクトパネル)の承認事項一部変更を発表した。 今回の承認で、2022年12月16日に開示した従来の4遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、MET)に加え、3遺伝子(BRAF、KRAS、RET)が新たに承認されたことになる。 肺がんコンパクトパネルは、検体として生検採取のFFPE組織、未固定組織に加え、細胞診も対象となる。

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CKD患者の年間医療費はどの程度増加するのか/広島大学

 慢性腎臓病(CKD)の医療費負担は相当なものとなることはよく知られているが、実際、どのような所見がある場合に、年間でどの程度増加するかは知られていなかった。広島大学大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学の迫井 直深氏らの研究グループは、日本全国の健診データおよび医療費請求データを用いたコホート研究を実施し、健診での早期CKDの発見と関連する医療費増加の程度を解析した。その結果、健診受診者の5.3%が早期CKDを持つことが判明し、CKDがない人と比較し、腎機能低下者では1人当たり年間で2.6万円の医療費増加があることがわかった。JAMA Network Open誌2024年1月2日号に掲載。8万人のうち5.3%に早期CKD 本研究は全国規模の大規模健康医療データベースを用い、就労世代約8万人の健診データを分析した。データ解析は2021年4月~2023年10月まで実施。 ベースライン時のCKD病期(eGFRと蛋白尿により定義)は、eGFR60mL/分/1.73m2以上(蛋白尿なし)、eGFR60mL/分/1.73m2以上(蛋白尿あり)、eGFR30~59mL/分/1.73m2(蛋白尿なし)、eGFR30~59mL/分/1.73m2(蛋白尿あり)。 主要アウトカムは、超過医療費としてベースライン年(2014年)およびその後の5年間(2015~19年)におけるベースラインのCKDステージ(基準群:eGFR≧60mL/分/1.73m2、蛋白尿なし)に応じた医療費の絶対差と定義した。 主な結果は以下のとおり。・健診を受けた7万9,988人(平均年齢47.0[±9.4]歳、女性2万2,027人[27.5%])のうち、蛋白尿を伴うeGFR60mL/分/1.73m2以上の人は2,899人(3.6%)、蛋白尿を伴わないeGFR30~59mL/分/1.73m2の人は1,116人(1.4%)、蛋白尿を伴うeGFR30~59mL/分/1.73m2の人は253人(0.3%)だった。・ベースライン時、蛋白尿の有無とeGFRが60mL/分/1.73m2未満は、より大きな超過医療費と関連していた。・調整後差は、蛋白尿で2.4万円[99%信頼区間[CI]:900円~4.9万円]、eGFRが30~59mL/分/1.73m2で8.5万円[99%CI:3.2~13.7万円]、これらの組み合わせで17.6万円[99%CI:1.9~33.2万円]だった。・本研究では、その後5年間にわたり一貫して超過医療費増加が認められた。 以上の結果から、研究グループは「早期CKDは5年間の超過医療費と関連し、その関連は病期が進行するほど顕著だった」と結論付けている。(1ドル140円で換算)

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