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【日本癌治療学会2012】わが国における泌尿器内視鏡の発展

 第50回日本癌治療学会学術集会(2012年10月25日~27日)のシンポジウム「泌尿器がん治療の過去と未来」にて、西松寛明氏(東京大学医学部泌尿器科)は、「わが国における泌尿器内視鏡の発展」と題して、日本における泌尿器内視鏡の進歩と今後の展望について講演を行った。●膀胱鏡の進歩 日本で最初に国産の膀胱鏡が開発されたのは1919年であり、1963年にはカラーモニターを備えた膀胱鏡が、1973年にはファイバースコープが導入された。その後、近年の膀胱鏡の開発の方向性は、ハイビジョンによる画像の向上のほか、Photodynamic Diagnosis(PDD)やNarrow Band Imaging(NBI)、STORZ Professional Image Enhancement System(SPIEs)などの診断精度の向上、そして膀胱鏡で観察している部位を明確にするため、磁気チップを用いたマッピングやナビゲーション・システムに焦点があてられている。 PDDとは、がんに親和性のある蛍光試薬を内服し、がん組織に選択的に蓄積させた後、特定波長の光を照射して発せられる蛍光色を観察して、がんの部位を特定する診断方法である。NBIは、血液の中に含まれるヘモグロビンに吸収されやすい2つの波長の光を照射することにより、腫瘍組織の新生血管や粘膜の微細模様を強調して表示する画像強調技術であるが、狭帯域光を用いるため画像が暗いという欠点があった。それに対し、SPIEsでは600nm以上の白色光を照射してコンピューターで解析するため、光量を落とさずに観察ができ、診断能の向上も期待される。 内視鏡手術を行う際のアクセス方法としては、経尿道的、経皮的、腹腔鏡手術のように腹式があり、最近では侵襲性の低い経管腔的内視鏡手術(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery: NOTES)が注目を集めている。●腹腔鏡手術の進歩 次いで、西松氏は腹腔鏡手術の進歩について概説した。1983年に虫垂炎の腹腔鏡手術が行われ、主に産婦人科領域で腹腔鏡手術は進歩してきた。1992年にバルーンが開発され、レトロアプローチによる腹腔鏡手術が安全に行えるようになった。日本では、1992年に腹腔鏡による精索静脈瘤切除術が行われ、1997年にはドナー腎摘術が腹腔鏡下で行われた。1998年に海外で前立腺全摘除術が腹腔鏡下で行われ、日本でも広く普及していった。 2001年には海外でda Vinciシステムが承認され、ロボット支援手術が注目を集めた。その後、内視鏡の性能の進歩と相まって、2007年には単孔式腹腔鏡手術(LESS)が行われ、ポート減数手術(RPS)などの低侵襲で整容性に優れた手技が開発されている。 日本でも、2012年にda Vinciシステムが保険承認され、今後、腹腔鏡下のロボット支援手術の普及が予想されるが、医療コストの高騰が懸念されることを西松氏は指摘した。 こうした泌尿器内視鏡学の普及と進歩を反映して、1987年に日本泌尿器内視鏡学会が設立された。●Engineering-based Medicine 最後に、西松氏は東京大学医学部における内視鏡手術の進歩を振り返り、もうひとつのEBMである「Engineering-based Medicine」の考え方を紹介した。 東京大学医学部では、1949年に日本で最初の胃カメラを開発し、また1971年に世界で最初に光ファイバーの腎盂尿管鏡について発表している。これらの成果は、医療機器メーカーの技術者との長年のパートナーシップに基づく技術の進歩によるものであり、こうした医療を西松氏は「Engineering-based Medicine」と称した。 現在もこのEngineering-based Medicineの一環として、東京大学医学部附属病院泌尿器科では、血管や尿管の薬剤溶出ステント(Drug-Eluting Stent: DES)の開発やヘルペスウイルスG47デルタの腫瘍内注入による前立腺がんの遺伝子治療などの研究が進んでいる。また西松氏は、da Vinciシステムを使わずとも腹腔鏡手術ができるよう、2重のベベルギア・ワイヤ機構で自由に動く持針器の開発なども行っていることを紹介した。「他の演題はこちら」

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太っていると高血圧になりやすいのか?-茨城県健康研究より-

40歳以上の日本人においてBMIが25kg/㎡の人は、19kg/㎡の人に比べ、高血圧発症のリスクが1.29~1.47倍高くなることが茨城県健康研究(Ibaraki Prefectural Health Study:IPHS)の結果より明らかにされた。筑波大学大学院人間総合科学研究科の辻本氏らは、1993年に茨城県の健康診断を受診した住民のうち、高血圧でなかった68,205名を2006年まで追跡し、ベースライン時のBMIと高血圧症の発症を検証した。追跡期間中の体重変化の影響を除外するために、時間依存性共変量Cox比例ハザードモデルを用いた。高血圧の発症は、140/90mmHg以上 and/or 降圧薬の服用と定義された。主な結果は下記のとおり。1) 平均観察期間3.9年において、30,982名(45.2%)が高血圧症を発症した。2) BMIが25kg/㎡の人の高血圧発症リスク(対照:BMI<19kg/㎡の人)   40-59歳男性:1.42倍(95%信頼区間:1.17-1.73)   60-79歳男性:1.34倍(95%信頼区間:1.19-1.51)   40-59歳女性:1.47倍(95%信頼区間:1.33-1.62)   60-79歳女性:1.29倍(95%信頼区間:1.18-1.41)

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中国の公的健康保険NCMSは、農村部医療危機を解消したか?

毛沢東主義下の中国農村部の保健医療システムは、集団農業共同体(コミューン)に対し助成金を出すシステムであったが、改革開放へと一転したことで1980年代初頭にコミューンが解散、加えて中央政府の医療財源が都市部に集中されたため、農村部住民6億4,000万人が事実上無保険者となった。数十万あった農村部病院も機能を失い、公的病院は医療価格を上昇させていったことで、農村部医療は私立の郷村医(医療補助員として知られるvillage clinicians)診療所が基盤となった。一方で医療政策は、専門医療や薬剤を処方するほど増益となる仕組みとしたため、結果として医療コストの増大と各家庭に金融リスク(財産譲渡や借金)をもたらすこととなった。そこで中国政府は2003年に農村部医療危機を解消すべく公的健康保険プログラム「NCMS」を導入した。本論は、米国カリフォルニア大学農業資源経済学のKimberly Singer Babiarz氏らによる、NCMSの影響についての調査報告で、BMJ誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月21日号)に掲載された。導入による郷村医診療所と村民への効果を調査NCMS(New Rural Cooperative Medical Scheme)は、導入後5年で農村部住民8億人をカバーするに至った世界最大規模の健康保険。世帯加入で保険料は10~20元/人、地方・中央政府からそれぞれ加入者1人当たり20~40元の助成金が拠出される。管理運営は県(county)レベルで行われ、入院費の一部償還以外は全国各地でカバーされる内容は異なる。県管理人にはカバー内容の施策(ベネフィットパッケージ)提言をすることが推奨されており、大きな地域差を生むこととなったが、2007年までに大半の群が、県立(または地区立)の病院、郷立の医療センター(医師と看護師が常駐し入院医療と複雑な外来診療を担う)、郷村医診療所(プライマリ・ケアと公衆衛生を担う)のそれぞれ外来診療までカバー領域を拡大した。また「医療費貯金」の口座開設(世帯口座)を義務付ける県もあり、預金の大方はプライマリ・ケアを担う郷村医診療所の外来診療に使われ、口座残高は翌年に繰り越す仕組みとなっている。こうした背景を踏まえBabiarz氏らは、2004年と2007年の、NCMSが個人および郷村医診療所にもたらした影響の変化について調査した。調査したのは5省(江蘇、四川、陝西、吉林、河北)、25の地方県の100村、160の郷村医診療所と村民8,339人だった。診療所のサービス利用と総収入は増大したが、純収入は増えていない郷村医診療所は、NCMSによって、週単位の患者受診者が26%増大、月総収入は29%増大していることが認められた。しかし、年間ネット総収入は変わっていなかった。また月総収入に占める薬剤収入の割合も変わっていなかった。一方NCMSに加入している村民は、郷村医診療所の利用が5%増大していたが、概して医療ケアの利用の変化は認められなかった。また、医療費の自己負担持ち出しが19%減少していた。医療ケアを利用するために財産を売ったり借金をすることのリスクも減っていた(24~63%)。こうした変化は、ベネフィットパッケージが最小の県でさえもみられた。Babiarz氏は、「NCMSは地方住民に多少なりとも金融リスクの回避をもたらし、地方の医療システムのゆがみの一部を是正した。しかし、補償のない新たな責務を郷村診療所に移行する計画もあり、診療所の財政状況をむしばんでいくようなら、それら利得は持続可能ではなくなるであろうことを強調しておく。政策立案者が再び関心を持ってプライマリ・ケアを強化すれば、NCMSの効果について、より大きな注目に値する」と結論している。

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プライマリ・ケアにおけるうつ病治療に、オンライン認知行動療法は有効か?

プライマリ・ケアにおけるうつ病治療では、セラピストがインターネット経由のオンラインでリアルタイムに実施する認知行動療法(cognitive-behavioural therapy; CBT)が有効であることが、イギリス国立ヘルス・リサーチ研究所(NIHR)プライマリ・ケア研究部のDavid Kessler氏らによる無作為化試験で明らかとなった。CBTは有効性に関する強力なエビデンスがあるにもかかわらずさほど普及していない。コンピュータ化されたプログラムによってCBTへの近接性(アクセスのしやすさ、accessibility)の改善が進められてきたが、これらの介入が個々の患者の必要性に対応するものか否かは明確でないという。Lancet誌2009年8月22日号掲載の報告。通常ケア+オンラインCBT群と通常ケア単独群を比較研究グループは、プライマリ・ケアにおいてセラピストがうつ病患者に対してオンラインで行うCBTの有効性について検討する無作為化対照比較試験を実施した。2005年10月~2008年2月までにブリストル市、ロンドン市、ウォリックシャー州の55の一般医(GP)施設から、ベックうつ評価尺度(Beck depression inventory; BDI)スコア≧14でうつ病の確定診断がなされた297例(18~75歳)が登録された。これらの患者が、GPによる通常のケアにセラピストによるオンラインCBTを併用する群(149例)あるいはオンラインCBTの待機中(8ヵ月間)にGPによる通常ケアのみを受ける群(148例)に無作為に割り付けられた。患者、登録に関係した研究者、セラピストには割り付けに関する情報は知らされなかった。主要評価項目は、4ヵ月後におけるうつ病の回復(BDIスコア<10)とした。回復率が有意に改善、効果は8ヵ月後も持続4ヵ月のフォローアップを完遂したのは、オンラインCBT併用群が113例、通常ケア単独群は97例であった。4ヵ月後におけるうつ病からの回復率は、通常ケア単独群の24%(23/97例)に対し、オンラインCBT併用群は38%(43/113例)と有意に優れていた(オッズ比:2.39、p=0.011)。8ヵ月後の回復率も、通常ケア単独群の26%(26/101例)に対し、オンラインCBT併用群は42%(46/109例)と有意差が認められた(オッズ比:2.07、p=0.023)。著者は、「プライマリ・ケアにおいてセラピストがオンラインでリアルタイムに実施するCBTは、うつ病治療として有効と考えられ、その効果は8ヵ月間にわたって持続した。インターネットを利用した方法は、CBTへのアクセスのしやすさを拡大する可能性がある」と結論している。また、「リアルタイムのオンラインCBTが実行可能でこれに魅力を感じる患者の増加が見込まれており、心理学的治療へのアクセスがしにくい地域や英語を母国語としない患者に対して有用となる可能性がある。対面方式のCBTの柔軟性や応答性も備えているため重症例にも適切な治療法と考えられ、さらなる効果の増強も期待できる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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