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網膜の血管から心臓病リスクを予測可能か

 「目は心の窓」とよく言われるが、新たな研究によると、目は心臓の健康状態を知るための窓としても機能する可能性があるようだ。新たな研究で、網膜の血管から心臓病のリスクや老化の加速の有無を予測できる可能性のあることが明らかになった。マクマスター大学(カナダ)医学部のMarie Pigeyre氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に10月24日掲載された。研究グループは、「将来的には、医師は定期検診の一環として網膜スキャンを実施するようになるかもしれない」と述べている。 Pigeyre氏は、「網膜スキャン、遺伝学、血液バイオマーカーを結び付けることで、われわれは、老化が血管系にどのような影響を与えるかを説明する分子経路を発見した」と語っている。また同氏は、「目は、体内の循環器系を非侵襲的に観察できるという点で他に類を見ない。網膜血管の変化は、全身の微小血管に起こる変化を反映することが多い」と付け加えている。 網膜の血管の複雑性は血管老化の指標とされており、眼底写真から網膜血管のフラクタル次元(Df)を測定することで評価できる。Dfの値が大きいほど、血管構造の複雑性が高いことを示す。Pigeyre氏らはこのことを踏まえて、カナダ、スコットランド、英国の3つの大規模コホート研究のいずれかに参加した7万4,434人を対象に、マルチモーダル手法に基づいて、Dfに関するゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。 その結果、Dfの値と心血管疾患リスクとの間に負の関連が認められ、Dfの値が低いほど心血管疾患、脳卒中、および炎症のリスクは上昇することが明らかになった。一方、Dfの高値は寿命が長いことと関連していた。 次に、Prospective Urban and Rural Epidemiological(PURE)コホート研究参加者から得られた1,159種類の血中タンパク質を対象に、プロテオーム全体にわたるメンデルランダム化解析を行い、血管の老化に因果的に関与する可能性のあるタンパク質を探索した。その結果、8つの因果的媒介因子が特定された。その中でも、MMP12とIgG-Fc receptor IIbは、炎症が強いほどDfが低下し、心血管疾患リスクが上昇し、寿命が短くなることに関係していた。 Pigeyre氏は、「この研究結果は、MMP12とIgG-Fc receptor IIbの2つのタンパク質が、血管の老化を遅らせ、心血管疾患の負担を軽減し、最終的には寿命を延ばすための潜在的な薬剤ターゲットとなり得ることを示唆している」と話している。

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へき地の在宅医療の利用実態が判明/頴田病院・横浜市立大

 わが国では、急激な高齢化と地方での医療者の不足により医療の地域偏在が問題となって久しい。では、実際にこの偏在、とくに在宅医療の利用について、地域格差はどの程度あるのであろうか。この問題について、柴田 真志氏(頴田病院)と金子 惇氏(横浜市立大学大学院データサイエンス研究科)の研究グループは、レセプトデータを用いて、在宅医療利用の地域格差を調査した。その結果、日本全国で在宅医療の利用率に数十倍の地域格差が存在することがわかった。この結果は、Journal of General Internal Medicine誌オンライン版2025年10月30日号で公開された。 研究グループは、2019~20年度のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)から全国335の二次医療圏の在宅医療利用の実態を分析した。分析では、「訪問診療、緊急往診、死亡診断書、終末期ケア」の4指標を設定し、年齢・性別を調整した標準化レセプト出現比(SCR)を算出し、「へき地度」を表す尺度である「Rurality Index for Japan」(RIJ)との相関を分析した。 主な結果は以下のとおり。・SCRの最大値と最小値の比率は、訪問診療で82.0、緊急往診で210.3、死亡診断書で33.2、終末期ケアで29.5と顕著な地域格差が確認された。・SCRとRIJのスピアマンの順位相関係数は、訪問診療で-0.619、緊急往診で-0.518、死亡診断書で0.225、終末期ケアで-0.541だった(すべてp<0.001)。 研究グループは、この結果から「全国で在宅医療の利用率に数十倍の地域格差が存在し、へき地ほどほとんどのサービス利用率が低い。これらの結果は、地理的障壁が在宅医療へのアクセスに重大な影響を与えることを示唆し、RIJがこうした医療格差を特定・是正する有効な指標として有用であることを示している。わが国のへき地における在宅医療への公平なアクセス改善に向け、対象を絞った政策介入の指針となる」と結論付けている。

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第269回 2026年度改定の主戦場は外来診療 かかりつけ医機能報告制度が“新たな物差し”に/財務省

<先週の動き> 1.2026年度改定の主戦場は外来診療 かかりつけ医機能報告制度が“新たな物差し”に/財務省 2.インフルエンザ12週連続増加 5県で警報レベル、過去2番目の早さで流行拡大/厚労省 3.医師少数区域を再定義、へき地尺度の導入で支援対象を拡大/厚労省 4.大学病院の医師処遇改善へ、給与体系見直しと研究時間確保に向け取りまとめ/政府 5.12月2日からマイナ保険証へ全面移行 期限切れ保険証は3月末まで有効に/厚労省 6.高齢者3割負担拡大も議論加速へ、金融所得の保険料反映が本格化/政府 1.2026年度改定の主戦場は外来診療 かかりつけ医機能報告制度が“新たな物差し”に/財務省2026年度の診療報酬改定に向け、財務省が「診療所・調剤薬局の適正化」を強く打ち出し、開業医を巡る環境が一段と厳しくなりつつある。焦点は、今年度スタートした「かかりつけ医機能報告制度」を土台に、機能を十分に果たしていない診療所の報酬を減算し、機能を発揮する診療所に評価を集中させる方向性だ。具体的には、報告制度上の「1号機能」を持たない医療機関の初診・再診料を減算し、【機能強化加算】【外来管理加算】は廃止、【地域包括診療料・加算】は認知症地域包括診療料などと統合し、発展的改組という案が財政制度等審議会で示されている。かかりつけ医機能報告制度では、研修修了や総合診療専門医の有無、17診療領域・40疾患の1次診療対応、患者からの相談対応などを「1号機能」として毎年報告し、時間外診療・在宅・介護連携などを「2号機能」として申告する。かかりつけ医機能報告制度は今年度始まったばかりで、初回報告が2026(令和8)年1月頃に予定されている。その結果が今後の加算要件・減算判定の「物差し」となる可能性が高い。これにより、機能強化加算と地域包括診療料などの加算要件が報告制度と整合的に整理される可能性がある。財務省は、診療所は過去に「高い利益率を維持してきた」とし、物価・賃上げ対応は病院に重点配分すべきと主張する一方、無床診療所などの経常利益率は中央値2.5%、最頻値0~1%と低水準であり、インフレ下で悪化しているとの日本医師会のデータも示されている。日本医師会の松本 吉郎会長は、開業医の高収入イメージを強調する財務省資料は「恣意的」と強く批判し、補助金終了後の厳しい経営実態を踏まえた「真水」の財源確保と十分な改定率を求めている。開業医にとって当面の実務ポイントは、「報告制度への対応」ならびに「収益構造の見直し」となる。まず、報告制度は、自院がどの診療領域・疾患まで1次診療を担うか、相談窓口としてどこまで責任を負うか、時間外・在宅・介護連携をどう位置付けるかを棚卸しするツールと捉えたい。1号機能の対応領域が限定的であれば、今後の診療報酬上の評価が縮小しかねない。研修修了者の配置や、地域包括診療料・生活習慣病管理料・在宅医療の組み合わせも含め、自院の「かかりつけ医像」を描き直す必要がある。同時に、機能強化加算・外来管理加算への依存度が高いクリニックは要注意となる。これらが縮小・廃止された場合に備え、地域包括診療料・加算への移行、逆紹介の受け皿としての役割強化、連携強化診療情報提供料や在宅関連の評価、オンライン診療(D to P with Nなど)の活用など、収益を強化する戦略が求められる。今年度始まったばかりの「かかりつけ医機能報告制度」、どのように対応するかが、次期改定以降の経営戦略の出発点になりそうだ。 参考 1) かかりつけ医機能報告制度にかかる研修(日本医師会) 2) かかりつけ医「未対応なら報酬減」 財務省、登録制にらみ改革提起(日経新聞) 3) 日医・松本会長 財政審を批判「医療界の分断を招く」開業医の高給与水準は「恣意的にイメージ先行」(ミクスオンライン) 4) 機能強化加算と地域包括診療料・加算を「かかりつけ医機能報告制度」と対応させ整理か(日経メディカル) 2.インフルエンザ12週連続増加 5県で警報レベル、過去2番目の早さで流行拡大/厚労省インフルエンザの感染拡大が全国で続いており、厚生労働省が発表した最新データでは、11月3~9日の1週間の患者数が1医療機関当たり21.82人と、前週の約1.5倍で12週連続の増加となった。注意報レベル(10人)を大きく上回り、宮城県(47.11人)、埼玉県(45.78人)など5県で警報レベル(30人)超。東京都も都独自基準で警報を発表した。全国で3,584校が休校・学級閉鎖となり、前週比1.5倍以上の増加と、教育現場での感染も拡大している。今年の流行は例年より1ヵ月以上早く、過去20年で2番目の早さ。近畿地方・徳島県でも注意報レベルに達する地域が急増し、地域差を超えて全国的に拡大している。クリニックでもワクチン接種希望者が急増しており、現場からは「1~2ヵ月早い流行」との声が上がる。流行の背景には、近年のインバウンドの増加に加え、各地で開催されるイベントや大阪万国博覧会など国際的な催事により、海外からのウイルス流入が増えた可能性が指摘されている。一方、新型コロナウイルスは全国で1医療機関当たり1.95人と前週比14%減で減少傾向にあるが、感染症専門家は「別系統のインフルエンザ流行やコロナ再増加もあり得る」とし、 来年2月までの警戒を継続すべきと警鐘を鳴らしている。厚労省でも引き続き、「手洗い・マスク・換気」など基本的感染対策の徹底を呼びかけている。 参考 1) 2025年 11月14日 インフルエンザの発生状況について(厚労省) 2) インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移(同) 3) インフルエンザ感染者が前週の1.46倍、感染拡大続く…新型コロナは減少(読売新聞) 4) インフルエンザ患者数は8.4万人に 万全な感染予防を(ウェザーニュース) 5) インフルエンザ流行警報、全国6自治体が発令…首都圏・東北で拡大(リセマム) 3.医師少数区域を再定義、へき地尺度の導入で支援対象を拡大/厚労省厚生労働省は、11月14日に開かれた「地域医療構想・医療計画等に関する検討会」で、次期医師確保計画(2025年度以降)で用いる医師偏在指標の見直し案を提示した。現行指標が抱える「地理的条件を十分に反映できない」という課題を踏まえ、人口密度、最寄り2次救急医療機関までの距離、離島・豪雪地帯といった条件を数値化し「へき地尺度(Rurality Index for Japan:RIJ)」を併用し、医師少数区域を再定義する方針。具体的には、現行の医師偏在指標で下位3分の1に該当する区域に加え、中位3分の1のうちへき地尺度が上位10%の区域を「医師少数区域」に追加する案が示された。RIJは(1)人口密度、(2)2次救急病院への距離、(3)離島、(4)特別豪雪地帯の4要素により構成され、へき地度の高い地域では、医師が対応すべき診療範囲が広がる傾向が明確になっている。構成員からは、地理的要素を反映できる点についておおむね評価が示され、一方で「算定式が複雑で現場への説明が難しい」との懸念も上がった。また、全国の医師数自体は増加しているため、偏在指標の下位3分の1基準を固定的に運用すると、多くの都道府県が基準外となる可能性も指摘された。厚労省は、次期計画では医師偏在指標とへき地尺度の双方を踏まえ、都道府県が「重点医師偏在対策支援区域」を設定し、医師確保に向けた重点支援を行う仕組みを強化する方針である。支援対象医療機関の選定においても、へき地医療・救急医療・在宅医療など地域の医療提供体制上の役割を考慮し、地域医療対策協議会および保険者協議会の合意を前提とする。医師偏在は、都市部と地方の医療格差を生み、地域住民のライフラインに影響するため政策課題である。今回の指標見直しは、「人数ベースの偏在」から「地理的ハンディキャップを加味した偏在」へと視点を転換する試みといえ、へき地を抱える地域にとっては実態に即した区域指定につながる可能性が高い。今後は、新指標の丁寧な説明と自治体の運用力が問われる局面となる。 参考 1) 医師確保計画の見直しについて(厚労省) 2) 医師偏在指標に「へき地尺度」併用へ 地域医療構想・医療計画検討会(CB news) 4.大学病院の医師処遇改善へ、給与体系見直しと研究時間確保に向け取りまとめ/政府高市 早苗総理大臣は11月10日の衆院予算委員会で、大学病院勤務医の給与水準や研究時間の不足が深刻な問題となっている現状を受け、「年度内に大学病院教員の処遇改善と適切な給与体系の方針をまとめる」と表明した。自民・維新の連立合意書に基づくもので、教育・研究・診療を担う大学病院の機能強化を社会保障改革の重要項目として位置付ける。質疑では、日本維新の会の梅村 聡議員が、53歳国立大学外科教授の手取りが33万円という給与明細を示し「収入確保のため土日や平日昼にアルバイトせざるを得ず、研究・教育に時間を割けない」と窮状を訴えた。医局員12人中常勤4人、非常勤8人で外来・手術を回す実態も示され、高市首相は「このままでは人材流出につながる」と強い危機感を示した。松本 洋平文部科学大臣は、国公私立81大学病院の2024年度の経常赤字が508億円に達し、診療偏重で教育・研究が圧迫されている現状を説明。大学病院の本来的な機能が損なわれているとの認識を共有した。大学の研究力低下も指摘され、自然科学系上位10%論文数が20年前の世界4位から13位へ後退したこと、医療関連貿易赤字が1990年の約2,800億円から2023年には4兆9,664億円に拡大したとのデータも示された。高市総理はこれらを受け、「大学に対する基盤的経費は必要な財源を確保する」とし、研究開発と人材育成は国の成長戦略そのものであると強調した。さらに、社会保障改革の議論の中で、高齢者層が多く負担する税(例:相続税)を含む財源の再設計についても「1つの提案として受け止める」と前向きな姿勢を見せた。今回の議論は、大学病院の経営改善だけでなく、診療・教育・研究の三位一体機能を再建し、医師の働き方・キャリア形成、ひいてはわが国の医学研究力の立て直しに直結する政策課題として位置付けられつつある。 参考 1) 高市首相、大学病院教員の処遇改善「年度内に方針」人材流出の懸念も表明(CB news) 2) 高市首相 「大学病院勤務医の適切な給与体系の構築含む機能強化」に意欲 経営状況厳しく(ミクスオンライン) 5.12月2日からマイナ保険証へ全面移行 期限切れ保険証は3月末まで有効に/厚労省12月2日から従来の健康保険証が廃止され「マイナ保険証」へ完全移行する中、厚生労働省は移行期の混乱回避を目的に、2026年3月末まで期限切れ保険証の使用を認める特例措置を全国の医療機関に通知した。昨年12月に保険証の新規発行が停止され、最長1年の経過措置が終了するため、12月1日をもって協会けんぽ・健保組合加入者約7,700万人の従来の保険証は形式上すべて期限切れとなるが、資格確認さえできれば10割負担を求めない。すでに7月に期限切れとなった後期高齢者医療制度・国保加入者に続き、今回の通知で全加入者が特例の対象となった。厚労省は医療機関に対し、期限切れ保険証を提示した患者がいた場合、保険資格の確認後、通常の負担割合でレセプト請求するよう要請。一方で、特例は公式な一般向け周知は行わず、原則は「マイナ保険証」または自動送付される「資格確認書」で受診する体制へ移行する方針は変わらない。資格確認書は保険証の代替として使用可能だが、「資格情報のお知らせ」とは異なり、後者では受診できない点を現場で説明する必要がある。背景には、周知不足による混乱リスクがある。国保で期限切れ直後の8月、18.5%の医療機関が「期限切れ保険証の持参が増えた」と回答しており、12月以降は同様の事例が増加することが確実視されている。さらに、マイナ保険証の利用率は10月時点で37.1%にとどまり、若年層や働き盛り世代では周知が届いていない。「期限を知らない」「カードを持ち歩かない」「登録方法を把握していない」といった声も多く、受診機会の確保には医療機関による実務的な対応が不可欠となる。マイナ保険証は、診療・薬剤情報の参照、限度額適用の自動反映、救急現場での活用など医療的メリットが期待される一方、制度への不信も根強く利用が伸びない。完全移行の初動は、現場負担の増加が避けられないが、厚労省は年度末までの特例運用を「移行期の安全策」と位置付けている。医療機関は、資格確認の確実な運用、窓口の説明強化、患者への資格確認書の案内など、年末から春にかけての実務準備が求められる。 参考 1) マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行について(厚労省) 2) 「マイナ保険証」完全移行へ、26年3月末までは従来保険証でも使える特例措置…厚労省が周知(読売新聞) 3) 従来の健康保険証、期限切れでも10割負担にならず 26年3月まで(毎日新聞) 4) 12月1日で使えなく…ならない「紙の保険証」 政府が「特例」認めて来年3月末まで使用OK 周知不足で混乱必至(東京新聞) 6.高齢者3割負担拡大も議論加速へ、金融所得の保険料反映が本格化/政府政府・与党内で社会保障制度改革の議論が一気に加速している。最大の論点は、医療・介護保険料の算定に「金融所得」を反映させる新たな仕組みの導入である。現行制度では、上場株式の配当や利子収入などの金融所得は、確定申告を行った場合のみ保険料に反映される。一方、申告を行わない場合は算定から完全に外れ、金額ベースで約9割が把握されない状況だ。厚生労働省や各自治体は確定申告されていない金融所得を把握する手段がなく、「同じ所得でも申告の有無で負担が変わるのは不公平」との指摘が続いていた。これを受け、厚労省は証券会社などが国税庁へ提出する税務調書を活用し、市町村が参照できる「法定調書データベース(仮称)」を創設する案を提示。自民党および日本維新の会も協議で導入の方向性に一致しており、年末までに一定の結論をまとめる見通しだ。上野 賢一郎厚生労働大臣も「前向きに取り組む」と明言しており、制度化に向けた動きが本格化している。同時に議論が進むのが高齢者の医療費自己負担(現役並み所得の3割負担)の拡大である。現行では、単身年収383万円以上などの比較的高所得層が対象だが、高齢者の所得増や受診日数減少を踏まえ、基準の見直しを求める意見が厚労省部会で相次いだ。一方で「高齢者への過度な負担増」への懸念も根強く、慎重な検討が必要との声も大きい。加えて、自民・維新協議では「OTC類似薬」の保険適用見直しも初期の重要論点となっている。湿布薬や風邪薬など市販薬と効果が重複する医薬品を保険給付外とする案だが、利用者負担の増加や日本医師会などの反対もあり調整は難航が予想される。超高齢社会において、医療・介護費の伸びを抑え現役世代の負担をどう軽減するかは避けて通れない課題である。金融所得の把握強化と高齢者負担の見直しという2つの柱は、今後の社会保障制度改革の中核テーマとなり、年末に向けて政策の具体像が示される見込みだ。 参考 1) 社会保障(2)(財務省) 2) 社会保障制度改革 “新たな仕組み導入へ検討進める” 厚労相(NHK) 3) 金融所得、保険料に反映 厚労省検討 税務調書を活用(日経新聞) 4) 社会保障改革めぐる自民・維新の協議 どのテーマでぶつかる? OTC類似薬、高齢者の負担増、保険料引き下げ(東京新聞)

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野菜くずを捨ててはいけない――捨てる部分は思っている以上に役立つ可能性

 これまで食卓に上ることなく捨てられてきた、野菜の皮や芯などの「野菜くず」が、近い将来、食糧生産の助けになったり、人々の健康のサポートに使われたりする可能性のあることが、新たな研究で示された。米化学会(ACS)が発行する3種類の学術誌に掲載された4報の研究論文で科学者らは、テンサイのパルプからココナッツの繊維に至るまで、幅広い食品廃棄物を農業および栄養源の貴重な素材として利用する方法を提案している。 「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に9月15日に掲載された研究によると、テンサイ(サトウダイコン)のパルプ(砂糖を抽出した後に残る副産物)が、化学合成農薬の代替品として使える天然素材である可能性が示された。研究者らは、パルプに豊富に含まれているペクチンという繊維を、小麦の一般的な病気である「うどんこ病」に対する抵抗力を高める働きを持つ炭水化物に変えることに成功した。この方法を用いることで、合成農薬の散布量を減らすことができるという。 「ACS Omega」に9月13日に掲載された別の研究では、ヤスデによってココナッツ繊維の分解を促すことで作り出す資材が、植物の苗を育成させる際に必要な苗床の資材として広く使われているピートモスの代替になり得ることが報告された。ピートモスは脆弱な生態系から採取される希少性の高い資材で、採取に伴う環境負荷が懸念されている。新たに開発された資材は、ピーマンの苗の育成において、ピートモスと同等の性能を持つことが示された。研究者らは、この資材の利用によって、地下水の保全に重要な役割を果たすピートの使用量を減らすことができ、種苗生産の持続可能性向上に寄与できるのではないかと述べている。 1番目の報告と同じ「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に、9月1日に掲載された別の論文では、使わずに捨てられることの多いダイコンの葉は、人々が普段食べている根よりも栄養価が高い可能性が報告されている。食物繊維および抗酸化作用を持つ生理活性物質などを豊富に含むダイコンの葉が、試験管内の研究や動物実験において、腸内細菌叢の健康をサポートすることが確認された。これらの結果から、将来的にはダイコンの葉を、腸の健康を促進する食品やサプリメントの開発に活用できる可能性があるという。 さらに、「ACS Engineering Au」に9月10日に掲載された4番目の論文では、やはり廃棄されることの多い、ビートの葉に含まれる栄養素の保存に焦点を当てている。この研究では、抗酸化作用を有するビートの葉の抽出物を、特殊な乾燥処理でマイクロ粒子として、微小なカプセルのように加工し、化粧品や食品、医薬品に利用する技術の開発が進められている。このような加工によって、抽出物の安定性を高め、かつ有効性も高められるという。

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帯状疱疹後神経痛、発症しやすい人の特徴

 帯状疱疹を発症すると、帯状疱疹の皮疹や水疱消失後に帯状疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia:PHN)と呼ばれる合併症を伴う場合があり、3ヵ月後で7~25%、6ヵ月後で5~13%の人が発症しているという報告もある1)。今回、中国・Henan Provincial People's HospitalのJing Wang氏らは、PHNの独立した危険因子となる患者背景を明らかにした。Frontiers in Immunology誌2025年10月1日号掲載の報告。 本研究は、PHN高リスク患者の早期発見と予防戦略の最適化支援を目的として、PHNの独立した危険因子を特定するため、PubMed、Embase、Cochrane Libraryを検索。メタ解析にて人口統計学的特徴、臨床症状、治療計画、合併症、ウイルス学的因子などの評価を包括的に分析し、結果の堅牢性を検証するための感度分析も実施した。なお、研究間の異質性はI2統計量とコクランのQ検定を用いて評価し、閾値は低異質性(I2<30%)、中等度の異質性(I2=30~60%)、高異質性(I2>60%)と定義した。 主な結果は以下のとおり。・本システマティックレビューにて36件(前向き研究15件、症例対照研究5件、後ろ向き研究13件、システマティックレビュー3件)が特定され、そのうち24件をメタ解析した。・PHNの独立した危険因子として、以下のものが主に特定された。 ●60歳以上:オッズ比(OR) 1.16(95%信頼区間[CI]:1.15~1.17、高異質性) ●喫煙やアルコール摂取などの生活歴:OR 1.13(95%CI:1.07~1.20、高異質性) ●免疫抑制薬による治療:OR 1.94(95%CI:0.16~23.44、異質性なし) ●糖尿病:OR 1.29(95%CI:1.05~1.60、高異質性) ●慢性閉塞性肺疾患:OR 1.70(95%CI:1.23~2.35、異質性あり) ●高血圧症:OR 1.82(95%CI:1.28~2.58、異質性なし) ●悪性腫瘍:OR 1.99(95%CI:1.07~3.70、異質性なし) ●慢性腎臓病:OR 1.08(95%CI:0.99~1.17、異質性なし)・このほか、重度の発疹、前駆症状としての疼痛、アルコール乱用、検出ウイルス量の高さなども危険因子の可能性を示していた。・一方、性差および社会経済的地位はPHNの発症と有意な関連を示さず、十分なエビデンスが認められなかった(I2>50%、p>0.05)。 研究者らは「帯状疱疹の重症度が急性疼痛の強さとともにPHNの重要な危険因子であり、また、上記の危険因子以外にも新型コロナウイルスが潜在的な危険因子となる可能性があるため、さらなる調査が必要である」としている。

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高齢者の内服薬がわからないとき、避難所の医師が迫られる判断【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第4回

災害現場の声「薬を自宅に忘れた、どうすれば?」大規模災害発生から2日目。避難所では、生活環境が破壊され、多くの高齢者が「普段飲んでいる薬がない」と訴えていました。お薬手帳もなく、内服薬の種類も不明。病院も被災し、通常受診は困難です。被災者からは「せめて、普段飲んでいる薬を少しでも欲しい」と切実な声が聞かれました。近年、大規模地震や水害など、インフラが寸断される自然災害が頻発しています。こうした災害時には医薬品の供給が滞り、とくに高齢者は被災ストレスに加え、普段から内服する薬を失うことで健康被害のリスクと不安が著しく高まります。このような切迫した状況下で、医療者はどう対応すべきなのか、以下に対応例と、その際に知っておくと役立つかもしれない内容を解説します。実際にどう対応したか? 限られた情報で判断高齢者の多くは慢性疾患を抱え、日常的な内服薬が必要ですが、大規模災害発生時には、避難するのが精一杯で、内服薬を持参する余裕がなく、自宅に忘れることがあります。実際の現場では、電子お薬手帳を使いこなす高齢者はまれで、紙のお薬手帳なしでは飲んでいる薬剤名を特定することが困難です。こうした被災者の状況を理解し、「薬がないので、薬が欲しい」という訴えに対応するため、内服薬の特定と代替薬の検討を進める必要があります。お薬手帳や口頭で薬剤名が特定できれば代替薬の調整は容易ですし、内服薬が不明でも、既往症が判明した場合(高血圧、糖尿病、心疾患など)、応急的に代替薬を提供することができます。しかし、内服薬・既往症ともに不明なことが大半です。糖尿病や高血圧の既往、ステロイド服用などは生命に直結する可能性もあるため、かかりつけ医に連絡を取るなど、情報を得る努力が必要です。災害時特有のストレスによるリスクと薬剤選択の原則災害時には、薬の中断により急性増悪のリスクがあることに加え、災害時特有のストレスが加わるため、いくつかの注意点があります。循環器系疾患では、災害発生後には急性心不全やたこつぼ型心筋症など、交感神経の活性化によるストレス誘発性の疾患が増加します1~3)。また、糖尿病患者においては、米国での2005年のハリケーン・カトリーナ後の調査でHbA1c上昇が報告されており4)、避難所の炭水化物中心の食事により高血糖が起こりやすくなることが指摘されています。さらに、食欲低下によるシックデイも想定され、血糖管理には注意が必要です5,6)。次に、災害時の薬剤選択も重要です。処方や在庫、服薬管理の煩雑化を防ぐため、可能な限り単純な治療計画を立て、多剤併用を避ける必要があります。長時間作用型で安全性の高い薬を選ぶことも重要です。たとえば高血圧に対しては、頻回服薬が困難な避難所環境に適した、長時間作用型カルシウム拮抗薬が有用です。そして、物資が限られる中では、「少ない薬で最大の効果を狙う」処方が求められるため、薬剤の種類は絞り、個別の患者状態を見ながら調整が必要です。災害時の慢性疾患管理、限られた状況下での判断力と実践力災害時の慢性疾患管理は、日本に限らず世界的にも共通の課題です。薬を忘れて避難した高齢者への対応は、災害発生後の緊急状況における医療者の判断と具体的な行動が重要になります。災害時には物資の供給が滞るため、薬剤不足は命に直結するリスクがあることを留意しておく必要があります。だからこそ、限られた資源の中で最大限の対応ができるよう、目の前の患者から得られる情報に基づき、迅速かつ実践的な判断を下す能力が、災害対応を担う医療者には不可欠です。日常から、外来に通う患者さんには、お薬手帳と内服薬は災害時に必ず一緒に持って避難するように指導し、可能ならば数日分の備蓄を避難用バッグに入れておくように勧めるのもよいでしょう。 1) 循環器病研究振興財団. 災害時における循環器病~エコノミークラス症候群とたこつぼ心筋症~. 2) 坂田泰彦, 下川宏明. 災害と心不全. 心臓. 2014;46:550-555. 3) Babaie J, et al. Cardiovascular Diseases in Natural Disasters; a Systematic Review. Arch Acad Emerg Med. 2021;9:e36. 4) Fonseca VA, et al. Impact of a natural disaster on diabetes: exacerbation of disparities and long-term consequences. Diabetes Care. 2009;32:1632-1638. 5) 日本糖尿病教育・看護学会. 改訂版 災害時の糖尿病看護マニュアル. 2020年. 6) 日本糖尿病協会. インスリンが必要な糖尿病患者さんのための災害時サポートマニュアル. 2012年.

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輸液選択、乳酸リンゲル液vs.生理食塩水/NEJM

 日常的に行われている静脈内輸液投与に関して、乳酸リンゲル液のほうが生理食塩水よりも臨床的に優れているかは不明である。カナダ・オタワ大学のLauralyn McIntyre氏らCanadian Critical Care Trials Groupは、病院単位で期間を区切って両者を比較した検討において、乳酸リンゲル液を使用した場合に、初回入院後90日以内の死亡または再入院の発生率は有意に低下しなかったことを示した。NEJM誌オンライン版2025年6月12日号掲載の報告。カナダの7病院で試験、12週間ずつ使用をクロスオーバー 研究グループは、カナダのオンタリオ州にある7つの大学および地域病院で、非盲検、2期間、2シークエンス、クラスター無作為化クロスオーバー試験を実施した。静脈内輸液を病院全体で12週間ずつ乳酸リンゲル液または生理食塩水に割り付け、アウトカムを比較した。乳酸リンゲル液または生理食塩水使用への切り替えは、ウォッシュアウト後に行った。 主要アウトカムは、初回入院後90日以内の死亡または再入院の複合とした。副次アウトカムは、主要アウトカムの各項目、入院期間、初回入院後90日以内の透析導入、90日以内の救急外来受診、自宅以外の施設への退院とした。 アウトカムデータは、保健行政データベースから入手した。解析は病院単位で行い、主要アウトカムは、参加病院全体で平均化した乳酸リンゲル液使用と生理食塩水使用の効果を比較推算した。初回入院後90日以内の死亡または再入院の複合発生率は同等 試験は2016年8月~2020年3月に行われ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより試験が中断される前に、7病院が12週間ずつ2期間の試験を完了した。 主要アウトカムに関するデータは、4万3,626例の適格患者から入手できた(乳酸リンゲル液群2万2,017例、生理食塩水群2万1,609例)。 初回入院後90日以内の死亡または再入院の複合発生率は、乳酸リンゲル液群20.3±3.5%、生理食塩水群21.4±3.3%であった(補正後群間差:-0.53%ポイント、95%信頼区間:-1.85~0.79、p=0.35)。 副次アウトカムの結果もすべて、主要アウトカムの結果と一致していた。重篤な有害事象は報告されなかった。

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帯状疱疹ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第17回

ワクチンで予防できる疾患帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の初感染後、脊髄後根神経節、脳神経節に潜伏感染しているVZVが再活性化によって、支配神経領域に疼痛を伴う水疱が集簇して出現する疾患である。合併症として発症後3ヵ月以上にわたり痛みが持続する帯状疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia:PHN)のほかに髄膜炎、脳炎、ラムゼイ・ハント症候群といった生命の危険や神経学的後遺症を来す疾患が知られている。国内で実施されている大規模疫学調査にて、1997~2020年の間で帯状疱疹は年々増加傾向を認め、罹患率は50代から上昇し、70代(2020年度10.45/千人・年)でピークを示した。別の調査では、50歳以上の帯状疱疹患者の19.7%がPHNを発症し、年齢別では80歳以上で32.9%と高齢になるほど発症しやすい傾向を認めた。ワクチンの概要帯状疱疹ワクチン接種の目的は、「帯状疱疹発症率を低減させ、重症化を予防すること」である。国内で2つのワクチンを使用することができるので表に概要を示す。表 帯状疱疹ワクチンの概要画像を拡大する2025年度から、65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンの予防接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象となった。接種の対象者は、以下に該当する方である。65歳を迎える方60~64歳で対象となる方(※1)2025~29年度までの5年間の経過措置として、その年度内に70、75、80、85、90、95、100歳(※2)となられる方※1ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方※2100歳以上の方については、2025年度に限り全員対象となる。帯状疱疹発症、年齢以外のリスク因子帯状疱疹は、前述した年齢のほかに罹患率を上げるリスクが知られている。HIV/AIDS(相対リスク[RR]3.22)、悪性腫瘍(RR2.17)、SLE(RR2.08)などの免疫不全疾患だけではなく、慢性疾患としての心血管疾患(RR1.41)、COPD(RR1.41)、糖尿病(RR1.24)。他にも精神的ストレス(RR1.47)、身体的外傷(RR2.01)、家族歴(RR2.48)もリスク要因としてあげられる。リスク因子のある方に帯状疱疹が発症した場合は、生命を脅かす疾患となってくるため、ワクチン接種を推奨する意義は高い。免疫不全状態では、生ワクチンは接種不適当であり、シングリックスが推奨される。今後の課題・展望2025年4月からすべての国民で65歳時以降に定期接種として帯状疱疹ワクチンを接種する機会を得ることになった。喜ばしいことではあるが、任意接種としてでも接種を勧めたい対象者が65歳まで接種を待ってしまう可能性が出てくる。前述した高リスク群の方々(とくに免疫不全疾患)には、定期接種を待つことのデメリットを伝え、適切な時期に接種を勧めることも重要である。近年、帯状疱疹と水痘の流行様式に変化がみられる。2014年に小児水痘ワクチンが定期接種となり、水痘患者数の減少と罹患年齢の上昇傾向がある。水痘は罹患年齢が上がるほど重症化する。妊婦が水痘に罹患すると流産や先天性水痘症候群になるリスクがある。接種率の低い任意接種期間でかつ低年齢期に水痘に罹患しなかった若者が、重症化リスクの高い年齢になってきている。2021年9月の国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所)の報告によると入院水痘患者は成人割合が71.2%となっており、もはや水痘は麻疹・風疹と同じく成人疾患として重要になりつつある。留意すべきは感染経路であり、水痘感染源として帯状疱疹の割合が増加傾向を認める。増加する帯状疱疹患者から重症水痘患者を発生させないためには、小児期に水痘に罹患せずかつ水痘ワクチン接種も受けていない若者に対する水痘ワクチンのキャッチアップ推奨と中高齢者に対しては今後も帯状疱疹ワクチンを推奨していくことが、今後しばらくの間のVZV感染症対策として必要である。参考となるサイト1)帯状疱疹ワクチンファクトシート 第2版2)こどもとおとなのワクチンサイト 帯状疱疹ワクチン3)乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」添付文書4)シングリックス筋注用 添付文書5)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化~感染症発生動向調査より・2021年第26週時点~講師紹介

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帯状疱疹、発生率が高まる時期は?/MDV

 帯状疱疹ワクチンの65歳以上への定期接種が2025年4月よりスタートした。同年3月に「帯状疱疹診療ガイドライン2025」の初版が発刊されたほか、海外での新たな研究では、帯状疱疹ワクチン接種による認知症リスクの低下1,2)や心血管疾患リスク抑制3)も示唆されており、今注目されている疾患領域である。 その帯状疱疹の国内患者推移について、メディカル・データ・ビジョンは自社の保有する国内最大規模の診療データベースから抽出した317施設の2019年1月~2025年3月のデータを対象に調査を行い、7月15日にプレスリリースを公表した。7~10月、患者増の可能性 調査結果によると、毎年2月は患者数が減少し、3月から春先にかけて増加する傾向がみられた。また、7月から10月にかけても患者数が増加する傾向にあり、夏から秋にかけて発症が増える季節性が認められた。一方、11月から翌年1月にかけては患者数がやや横ばい、あるいは減少傾向であった。同社はこれらの理由として、気温や湿度の変化、夏季の疲労蓄積、免疫力の低下などとの関連を挙げた。さらに男女・年齢別の傾向としては、年齢とともに増加傾向となり、70代の患者数が最も多く、女性のほうがやや多い結果を示した。PHNの発症率、治療薬の処方動向 帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia:PHN)の発症率については、年齢とともに増加する傾向がみられ、とくに80代が最も高く、全体を通じて男性でわずかに高い傾向であった。治療薬は、アシクロビル、バラシクロビルの順に処方量が多かったが、全体的には各薬剤とも大きな変動はなく安定した使用状況を維持。アシクロビルに関しては2021年以降やや増加傾向であったという。

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新たな病院で「構造的心疾患治療」への挑戦がスタート 【臨床留学通信 from Boston】第13回

新たな病院で「構造的心疾患治療」への挑戦がスタート7月はアメリカの病院にとって新学期です。私は引っ越しはせず病院を変わりましたが、日々の仕事はまったく別物になりました。複数の建物を行き来し、右往左往する毎日です。初日から電子カルテを使うためにパスポートが必要と言われ、往復80分の移動を余儀なくされました。また、施設のメール、健康保険、各種画像アクセスなど、すべて自分でセットアップしなければならず、業務やシステムに慣れるのに1~2週間かかりました。現在勤務しているのは、ハーバード大学の関連病院であるBeth Israel Deaconess Medical Centerです。ニューヨークで勤務していたMount Sinai Beth Israelと同じ系列かと思われるかもしれませんが、以前とは違う病院です。ここでは、マサチューセッツ総合病院(MGH)ほど業務内容が整理されておらず、ナースプラクティショナー(Nurse Practitioner)などのサポートも少ないため、フェローはかなり忙しいです。年間でTAVR(経カテーテル大動脈弁留置術)が500件以上、M-TEER(マイトラクリップなど)が130件以上行われます。TAVRは2列で時間差で実施するため、ほとんど休む暇がなく、かなり疲弊します。TAVRの中でも、electrosurgeryといってTAVR弁を植え込む前に弁に切開を入れる特殊技術や、左心耳閉鎖、PFO(卵円孔開存)閉鎖、三尖弁治療、Apollo trial(経カテーテル僧帽弁置換術)なども経験しています。この構造的心疾患カテーテル治療の領域においては、全米のトップに位置していると実感しています。渡米して7年、正直なところ、フェローという立場での冠動脈や血管内治療の臨床業務には余裕がありました。しかし、構造的心疾患インターベンション(structural heart intervention)の領域はまったくの初めてで、毎日が新鮮な反面、まるで研修医に戻ったかのような感覚で働いています。夜間のオンコールはありませんが、それでも朝5時に起きて7時前に病院へ行き、夜6~7時まで集中して働くと、かなりの疲労でぐったりしています。デバイスに慣れるのが鍵だと感じているため、インターネットでさまざまな動画を見て日々勉強しています。当面の目標は、業務と手技に慣れること。そして、可能であれば来年(2026年)7月からこの施設に残れるよう、働きかけたいと思っています。ColumnMGHの見慣れた風景も、見納めとなった時の写真です。工事中だったのは残念ですが、憧れの病院に来た初日と、1年を終えた時の風景はまったく違って見えました。見える景色が一つ変わったような気がします。画像を拡大する

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けいれんや痛み、麻痺の治療に新たな電極パッドが有用か

 背中に貼り付けたグリッド電極が近い将来、痛みやけいれん、麻痺の治療に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示された。この電極を通じて皮膚の上から低電圧の電気刺激を与えることで、脊髄内の神経の機能を短期間、変化させることができたという。米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センター物理療法学・リハビリテーション医学教授のYasin Dhaher氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Neural Engineering」に4月7日掲載された。 論文の上席著者であるDhaher氏は、体の外側に設置した電極を使って脊髄神経の興奮性を調整できるこの方法は、「侵襲的な脊髄刺激療法を受けられない患者や希望しない患者にとって、有望な代替手段になり得る」とUTのニュースリリースの中で述べている。 研究グループによると、これまでの研究では、体内に埋め込むタイプの電極が脊髄損傷患者の立つ能力や歩く能力の回復を促すなど、麻痺の治療で大きな可能性を持っていることが示されてきた。こうした埋め込み型デバイスは電気で脊髄神経を刺激することで作用するが、埋め込むにはリスクのある手術が必要となり、回復にも時間がかかるという。一方、皮膚に貼り付けた電極で電気刺激を与える試みも以前から行われてきたが、貼り付けた電極パッドが背中全体に電流を広く分散させてしまい、十分な刺激を脊髄に届けられなかったため、効果は限定的であったとDhaher氏らは述べている。 今回報告された新たなアプローチでは、電流を脊髄に対して直線または斜め方向に流せるような配置で4インチ(約10cm)四方の電極パッドを作った。脊髄神経はさまざまな方向に走っているため、このような配置にすることで電気パルスをさまざまな神経の走行パターンに合わせやすくなるとDhaher氏らは考えたのだ。 Dhaher氏らは、健康な17人を対象に胸郭下部の椎骨(T10-T11)の皮膚の上にこの電極パッドを配置して効果を調べた。この部分は、足首を引き上げるなどの足関節の動きに関与する筋肉である前脛骨筋を制御している。実験では、スマートフォンの懐中電灯を点灯させるのに必要な電力の約半分に相当する40mAの低電流を20分間流した。 その結果、この電圧は前脛骨筋を収縮させるほどの刺激にはならないものの、神経細胞の興奮性を変化させることは確認された。その後、最長で30分間、神経の興奮性が低下し、被験者はそれまでよりも足首を曲げるのが難しくなったと感じたという。また、電流を脊髄に対して斜めに流したときの方が、直線的に流したときよりも抑制作用が強くなったこともDhaher氏らは報告している。こうした抑制作用は、筋肉のけいれんの治療や痛みのシグナルの軽減に役立つ可能性があると同氏らは説明している。 一方で、この新たな電極パッドは神経の興奮性を高めるような電気パルスを送ることもできる可能性があり、それによって筋肉をより動かしやすくする効果も期待されている。例えば、足首を曲げる動きを改善するために同じ神経群を刺激することで、歩行時に足のつま先を引きずってしまう「下垂足」と呼ばれる症状の治療に役立つ可能性があるという。 Dhaher氏らはこの新たなデザインの電極パッドについて特許を出願済みであり、今後もその潜在的な使用法について研究を続けていく予定だとしている。

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既治療のEGFR陽性進行NSCLC、sacituzumab tirumotecanがORR改善/BMJ

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬および化学療法後に病勢進行が認められた、EGFR遺伝子変異陽性局所進行または転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、sacituzumab tirumotecan(sac-TMT)はドセタキセルと比較して、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)に関して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能なものであることが、中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らが行った第II相の多施設共同非盲検無作為化対照試験の結果で示された。sac-TMTは、栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)を標的とする新規開発中の抗体薬物複合体。既存の抗TROP2抗体薬物複合体は、遺伝子変異の有無を問わないNSCLCで研究が行われてきたが、生存ベネフィットは示されていなかった。BMJ誌2025年6月5日号掲載の報告。主要評価項目は、BIRC評価に基づくORR 試験は2023年9月1日~2024年12月31日に、中国の48施設で行われた。対象者は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬およびプラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行が認められた、EGFR遺伝子変異陽性局所進行または転移のある成人(18~75歳)NSCLC患者であった。 研究グループは被験者を、sac-TMT(5mg/kg)を4週間サイクルの1日目と15日目に投与する群、またはドセタキセル(75mg/m2)を3週間サイクルの1日目に投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けた。 ドセタキセル群の患者は、病勢進行時にsac-TMT治療への切り替えが許容されていた。 主要評価項目は、盲検下独立評価委員会(BIRC)の評価に基づくORRであった。副次評価項目は、試験担当医師の評価に基づくORR、BIRCまたは試験担当医師の評価に基づく病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、およびOS、安全性などであった。sac-TMT群でORRが有意に改善、PFS、OSも改善 137例がsac-TMT(91例)群またはドセタキセル(46例)群に無作為化された。 EGFR変異のサブタイプを除けば、両群のベースライン特性はバランスが取れていた。137例の年齢中央値は56歳、男性が44%、98%がStageIVで20%が脳転移を有していた。37%が3ライン以上の前治療を受けており、93%が第III世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の投与を受けていた(58%が初回治療による)。 データカットオフ時点(2024年12月31日)で、割り付け治療を継続していたのはsac-TMT群で25%(23/91例)、ドセタキセル群で4%(2/46例)であった。治療薬投与中止の最も多い理由は病勢進行(sac-TMT群76%、ドセタキセル群91%)であった。ドセタキセル群44例においてsac-TMTへの切り替えを行った患者は16例(36%)であった。 追跡期間中央値12.2ヵ月において、BIRC評価に基づくORRは、sac-TMT群45%(41/91例)、ドセタキセル群16%(7/45例)であり、群間差は29%(95%信頼区間[CI]:15~43、片側のp<0.001)であった。 PFS中央値は、BIRC評価(6.9ヵ月vs.2.8ヵ月、ハザード比[HR]:0.30[95%CI:0.20~0.46]、片側のp<0.001)および試験担当医師の評価(7.9ヵ月vs.2.8ヵ月、0.23[0.15~0.36]、片側のp<0.001)いずれにおいても、sac-TMT群でドセタキセル群より有意に延長したことが示された。 12ヵ月OS率は、sac-TMT群73%、ドセタキセル群54%であった(HR:0.49、95%CI:0.27~0.88、片側のp=0.007)。RPSFTM(rank-preserving structural failure time model)を用いて治療薬の切り替えについて補正後、sac-TMT群のOS中央値は未到達、ドセタキセル群は9.3ヵ月で、sac-TMT群では死亡リスクが64%抑制されたことが示された(HR:0.36、95%CI:0.20~0.66)。 Grade3以上の治療関連有害事象は、sac-TMT群でドセタキセル群より発現頻度が少なく(56%vs.72%)、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。

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外国人がやってきた【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第7回

外国人がやってきたPoint自らの偏見を自覚しよう。医師である前に、人間であれ。家族の支援を上手に活かそう。外国人を迎える環境を整えよう。症例「先生、患者さんのトリアージをしてきたのですが…」と、看護師さんが険しい表情で報告に来た。何でも患者さんはブラジル出身の労働者らしく、まったく日本語が話せないという。職場の友人が付き添いに来ているが、その人の日本語も覚束ない。身振り手振りを交え、辛うじて頭痛が主訴であることを突き止めたとのことだった。それを聞いた研修医は、俄然燃えてきた。「ブラジルの人ならサッカーの話とか盛り上がるだろうな。ちょうどブラジル代表のユニフォームが手元にあるから着ていこう。そして、ブラジルといえばサンバ! 故郷の音楽で迎えればきっと喜ぶぞ。問題はポルトガル語だけど、翻訳アプリもあるし、まぁ何とかなるだろう」。準備万端で患者さんを診察室へ案内すると、面食らった様子を見せたのも束の間、すぐに悲壮な表情で何かを叫び出した。ど、どうしたんだ? 早速翻訳アプリを起動! えーっと、何々? 「片頭痛の私にどぎつい色を見せたり、騒音を聞かせたり。一体何の嫌がらせだ!」なるほどねぇ…。おさえておきたい基本のアプローチ法務省出入国在留管理庁の統計によると、2020年6月現在でわが国に居住する外国人は289万人。日本の人口の2.3%を占める。100人とすれ違えば2人は外国人という割合だから、今やどの医療機関でも外国人の診療は避けては通れぬ課題だろう。そして、必ずといっていいほど立ちはだかるのがコミュニケーションの障壁だ。しかし、そもそもなぜわれわれはコミュニケーションがとれないとストレスを感じるのだろうか? それはとりもなおさず、良質な医療を提供できないからだ。すでに多くの研究で、理解度や満足度のような短期的効果から、意思決定や自己管理のような長期的効果、さらには費用対効果に至るまで、コミュニケーションは医療の質と密接に関連することが示されている。つまり、日々外国人の診療にストレスを感じているあなたは偉い! なぜなら、それは常に良質な医療を提供しようと努めている証拠だからだ。そして、そんな課題を克服すべく、外国語や異文化を積極的に学ぼうとしているあなたは、もっと偉い!とはいえ、独りよがりな学習に陥っていないかどうか注意が必要だ。Curtisらによると、安易な異文化学習はかえって偏見を助長するという。本来、患者一人ひとりには個別の対応が必要であるにもかかわらず、付け焼刃の知識をつけてしまうと、過度に単純化した見方をしてしまうためだ。外国人診療でも、患者中心の医療を忘れてはならないとの戒めと受け止めたい。何よりもまず大事なことは、1人の人間として患者を扱うことだ。患者の立場に立って考えてみよう。すると、患者も試行錯誤を重ねていることに思い至る。まず、異国の病院という未知の空間に勇気を振り絞って足を踏み入れる。そこで症状を伝えようとするが、今ひとつニュアンスが伝わらない。身振り手振りでようやく伝わったかと安堵する間もなく、母国の慣習とは相容れない対処法を提案されて仰天する。しかし、そこをこらえて甘んじて受け入れることもあるだろう。まして入院が必要となれば、煩雑な手続きに目を回しながら、職場にどう報告したものかと悩むことになり、そのストレスたるや想像するに余りある。このような患者の煩悶に注意を払い、理解に努め、解決に向かって適切に導こうと勤しむ姿勢こそが最も重要だ。患者の努力に無頓着では、信頼関係の構築など望むべくもない。診療とは、価値観が異なる患者と医療者の歩み寄りの過程である。そこに正解もゴールもない。相互理解へのたゆまぬ努力こそが意味ある治療体験へつながる鍵なのだ。外国人のケアは骨が折れるが、素晴らしくも喜びに満ちた得難い経験にもなりうる。ぜひとも前向きに取り組んでみよう。落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「あの外国人、何を説明してもいちいち異論を挟むんだよ。まったく、清濁併せ呑む寛容さがあってほしいよね」はたして、寛容さが足りないのはどちらだろう。異文化に臨む態度や考え方の総体を、異文化適応力(cultural competency)という。その異文化適応力に最も必要なのは、異文化に関する知識でもなければ技術でもない。自らに内在する先入観や思い込みに気付き対処する力だ。考えてみれば、われわれは沢山の「当たり前」のなかで生きている。ただでさえ察しと思いやりの文化といわれ、数々の「当たり前」を求めることの多い日本社会。まして医療現場では、医療界独特のさまざまな「常識」を患者に強要していることは、外国人相手でなくても日々痛感していることだろう。せっかく身につけたコミュニケーション能力も、手前勝手な「当たり前」を患者に押しつけるための手段になっているようでは残念だ。患者は耐え難きを耐えながら、異国の医療と何とか折り合おうと必死なのだ。そこへ医療者が片務的な努力を押しつけているようでは相互尊重など夢のまた夢。素人の患者と専門家の医療者では、どうしても患者側の立場が弱くなりがちなのだから、医療者側がより多く譲歩すべきなのはいうまでもない。異文化よりもまず、自分の文化が及ぼす影響力を自覚すべきだ。そのためには、徹底的に自身を客観視する必要がある。自分自身が偏見を抱いていないか常に問いかけ、無自覚な「当たり前」の構造に敏感になろう。この現在進行形の内省過程が異文化適応力を醸成するのだ。Pointまず、自らの偏見に批判的であるべし「え、娘さんが近々ご結婚なさる? そんなことより、治療について説明させてください」異文化コミュニケーションで次に大事なのは、人間性だ。親切さや真摯さといった、人間として基本的な態度が欠かせない。患者を人として見ず、病のみに注目しているようでは逆効果。患者をかけがえのない1人の人間として敬い接するならば、あいさつはもちろん、笑顔を絶やさず、何気ない雑談にも共感し、文化の違いに触れた際には驚きと関心をもって傾聴したり質問したりすることになるだろう。些細な経験も共有し、患者のために時間を使い、積極的に患者から学ぼうとする。そんな医療者の心意気に触れたとき、患者は真剣に治療してもらえていると感じるものだ。Point医師である前に、人間であれワンポイントレッスン言語能力当然ながら、言語能力はコミュニケーションの重要な位置を占める。その言語能力でとくに注目すべき要素は、正確さ、明瞭さ、巧みさの3つだ。流暢に思えても内容が支離滅裂な場合もあるため、TOEFLなどの実力判定試験で客観的に正確さを評価しておくことが望ましい。明瞭さでは、ゆっくりと簡潔に話すことを心がけよう。巧みさとは、専門用語を使わずに話す、問題点を整理して説明する、さまざまな角度から表現するといった技術だ。スマホアプリの翻訳ツールを活用しようやっぱりきちんと会話したいよね。情報技術の長足の進歩により、今や手軽に翻訳ツールを利用できるようになった。スマホアプリの「Google翻訳」は100種類以上の言語を瞬時に翻訳できる代物だが、これが無料でインストールできるからありがたい。早口だったり複雑な文章だったりすると誤訳も起こりやすいが、前項で述べた明瞭さを心がければ、さほど問題なく使用できるだろう。Google翻訳話しかけてもよいし、カメラで言語に照らし合わせるだけで翻訳してくれるVoiceTra話しかけるだけで翻訳してくれる視聴ツール視聴覚に訴えるのも有効な手段だ。その場でイラストを描いて説明するのもよいし、今やインターネットを開けば、患者教育目的に有志が作成したパンフレットや動画が簡単に手に入る。これらを利用しない手はないだろう。非言語コミュニケーション表情や身振り手振りも情報伝達に欠かせない要素だ。ただ、同じ動作でも文化によって意味合いが異なることがあるので注意。たとえば適切な言葉が思い浮かばないときに宙を見上げたり手をグルグル回したりするのはわれわれ日本人にありがちな仕草だが、会話の内容と全く関係ないこれらの挙動は、外国人の目にはとても奇怪に映るという。場数を重ねて何度でも失敗しながら、少しずつ学んでは修正していきたい。teach-back患者の理解度を確かめる方法として、よく推奨されるのがteach-backだ。患者に、理解できたことを自分の言葉で説明してもらう。もし誤解があれば、その都度修正して説明し直してもらう。時間はかかるものの、効果は絶大だ。IAT(Implicit Association Test:潜在連合テスト)無意識の先入観を自覚するためのツールとして、異文化適応力の分野でしばしば取り上げられるのがIATだ。日本語版の無料サイトもあり、1テーマ当たり10分程度で判定できる。時間のあるときにでも挑戦してみてはいかが?チェックリスト残念ながら現段階では、異文化適応力のガイドラインもなければ、標準的な評価法も存在しない。しかしながら、独自のチェックリストを発案した論文があったので表に示した。ただし、これらすべてを完璧に実行するのは難しく、あくまでも努力目標だ。状況に応じて参照し、1つでも多く実践できるように頑張ろう。表 異文化適応力向上のためのチェックリスト1.まず、手を洗おう2.患者を1人の人間として扱おう3.自分自身が抱く無意識の先入観に気付こう4.患者に、自分の言葉で理解したことを説明してもらおう5.患者が自分自身の病状をより深く理解できるように支援しよう6.患者の家族・友人を歓迎しよう7.当該言語のキーフレーズを学ぼう8.可能な限り良質の翻訳をしよう9.流暢さよりも正確さを重視しよう10.翻訳者とともに働き学んでいこう11.患者の理解力に配慮しよう12.患者の権利と責任を知ろう13.質問を励行しよう14.患者の不満には真摯に向き合おう15.セカンドオピニオンを提案しよう16.異文化適応力に長けた施設環境を維持しよう17.患者満足度や転帰のデータを解析し、具体的な行動につなげよう18.患者満足度アンケートを漏れなく記入するよう励行しようWhite AA 3rd, Stubblefield-Tave B. J Racial Ethn Health Disparities. 2017;4:472-479. より作成知らなかったは落とし穴! こんな仕草はNGだところ変われば、ジェスチャー1つとっても大きく意味が変わる。誤解を生まないように、外国人との会話では、ジェスチャーは控えたほうがいいかもね。ブラジルでは親指を人差し指と中指の間にはさむ握りこぶしは「幸運を」という意味だけど、日本では性的な意味になってしまい、どっちもどっちなんだけどね。ピースサイン・逆ピースサイン「高校生か!」とツッコミを入れたくなるような写真の嬉しそうなポーズのピースサイン。日本や米国では平和のサインだけど、ギリシャでは「くたばれ!」という意味。掌を自分に向けた逆ピースサインは、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドでは「侮辱」の意味なんだ。いいねサイン親指をあげるサインはFacebookなどでも使われる「いいね」サイン。でも中南米、ギリシャ、イタリア、中東、西アフリカなどの一部では、中指を立てるのと同じ「侮辱」の意味になっちゃうのでやらないほうがいい。中東では「おまえの肛門に突っ込んでやる」という非常に下品な意味になっちゃう。親指を下向きにするのは、ブーイングのときにする侮辱の意味がある。元々は競技場で敗者を殺せの意味だったというから恐ろしい。OKサイン米国でのOKサインは、日本ではOKのみならず、お金を意味することがあるよね。ところが、ブラジル、スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコ、ロシアなどでは、性的な侮辱になる。フランスでは「役立たず、価値がない」という意味になる。そんなぁ、知らないよねぇ。小指を立てるサイン日本では「彼女」や「恋人」の意味になるが、中国では「出来の悪い奴」という意味になってしまう。それと対比して親指は「立派な人」という意味になる。手をあげる「おーい」、「はーい」など手をまっすぐあげる動作は日本ではよくするものの、ドイツではナチスドイツを想起させるため、子供のころから絶対やってはいけないポーズなんだ。勉強するための推奨文献自治体国際化協会. 多言語指さしボード.多言語指差しボードを置いておけば、外国人がどの言語を話すのか確認できる。英語、中国語(簡体字)、韓国語、ベトナム語、ネパール語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、タガログ語、インドネシア語、中国語(繁体字)、タイ語、ミャンマー語に対応。ピクトグラムもありわかりやすい。A4用紙にプリントアウトしておくと便利。厚生労働省. 「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」について.厚生労働省. 外国人向け多言語説明資料 一覧.厚生労働省, メディフォン. 外国人患者受け入れ情報サイト.Filler T, BMC Public Health. 2020;20:1013.Elana Curtis, et al. Int J Equity Health. 2019;18:174.Degrie L, et al. BMC Medical Ethics. 2017;18:2.White AA, Stubblefield-Tave B. J Racial Ethn Health Disparities. 2017;4:472-479.執筆

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DNRを救急車で運んだの?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第5回

DNRを救急車で運んだの?PointDNRは治療中止ではない。終末期医療の最終目標は、QOLの最大化。平易な言葉で理知的に共感的に話をしよう。適切な対症療法を知ろう。症例91歳男性。肺がんの多発転移がある終末期の方で、カルテには急変時DNRの方針と記載されている。ところが深夜、突如呼吸困難を訴えたため、慌てて家族が救急要請した。来院時、苦悶様の表情をみせるもののSpO2は97%(room air)だった。研修医が家族に説明するが、眠気のせいか、ついつい余計な言葉が出てしまう。「DNRってことは、何も治療を望まないんでしょ? こんな時間に救急車なんて呼んで、もし本物の呼吸不全だったら何を期待してたんですか? 大病院に来た以上、人工呼吸器につながれても文句はいえませんよ。かといって今回みたいな不定愁訴で来られるのもねぇ。なんにもやることがないんだから!」と、ここまでまくしたてたところで上級医につまみ出されてしまった。去り際に垣間見た奥さんの、その怒りやら哀しみやら悔しさやらがない交ぜになった表情ときたらもう…。おさえておきたい基本のアプローチDo Not Resuscitation(DNR)は治療中止ではない! DNRは意外と限定的な指示で、「心肺停止時に蘇生をするな」というものだ。ということはむしろ、心肺停止しない限りは昇圧薬から人工呼吸器、血液浄化法に至るまで、あらゆる医療を制限してはならないのだ。もしわれわれが自然に想像する終末期医療を表現したいなら、DNRではなくAllow Natural Death(AND)の語を用いるべきだろう。ANDとは、患者本人の意思を尊重しながら、医療チーム・患者・家族間の充分な話し合いを通じて、人生の最終段階における治療方針を具体的に計画することだ。それは単なる医療指示ではなく、患者のQuality of Life(QOL)を最大化するための人生設計なのである。落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「延命しますか? しませんか?」と最後通牒を患者・家族につきつけるのはダメ医療を提供する側だからこそ陥りやすい失敗ともいえるが、「延命治療を希望しますか? 希望しませんか?」などと、患者・家族に初っ端から治療の選択肢を突きつけてはならない。家族にしてみれば、まるで愛する身内に自分自身がとどめを刺すかどうかを決めるように強いられた心地にもなろう。患者は意識がないからといって、家族に選択を迫るなんて、恐ろしいことをしてはいないか? 「俺が親父の死を決めたら、遠くに住む姉貴が黙っているはずがない。俺が親父を殺すなんて、そんな責任追えないよぉ〜」と心中穏やかならぬ、明後日の方向を向いた葛藤を強いることになってしまうのだ。結果、余計な葛藤や恐怖心を抱かせ、得てして客観的にも不適切なケアを選択してしまいがちになる。家族が親の生死を決めるんじゃない。患者本人の希望を代弁するだけなのだ。徹頭徹尾忘れてはならないこと、それはANDの最終目標は患者のQOLの最大化だということだ。それさえ肝に銘じておけば、身体的な側面ばかりでなく、患者さんの心理的、社会的、精神的側面をも視野に入れた全人的ケアに思い至る。そして、治療選択よりも先にたずねるべきは、患者本人がどのような価値観で日々を過ごし、どのような死生観を抱いていたのかだということも自ずと明らかになろう。ANDを実践するからには、QOLを高めなければならないのだ。Point最終目標はQOLの最大化。ここから焦点をブレさせない「患者さんは現在、ショック状態にあり、昇圧剤および人工呼吸器を導入しなければ、予後は極めて厳しいといわざるを得ません」いきなりこんな説明をされても、家族は目を白黒させるばかりに違いない。情報提供の際は専門用語を避けて、できるだけ平易な言葉遣いで話すべきだ。また、人生の終末を目前に控えた患者・家族は、とにかく混乱している。恐怖、罪悪感、焦り、逃避反応などが入り組んだ複雑な心情に深く共感する姿勢も、人として大切なことだ。だが、同情するあまりにいつまでも話が進まないようでは口惜しい。実は、患者家族の満足度を高める方法としてエビデンスが示されているのは、意外にも理知的なアプローチなのだ。プロブレムを浮き彫りにするためにも、言葉は明確に、1つ1つの問題を解きほぐすように話し合おう。逆に、心情を慮り過ぎて言葉を濁したり、楽観的で誤った展望を抱かせたり、まして具体的な議論を避ける態度をとったりすると、かえって信頼を損なうことさえある。表現にも一工夫が必要だ。すがるような思いで病院にたどり着いた患者・家族に開口一番、「もはや手の施しようがありません」と言おうものなら地獄へ叩き落された心地さえしようというもの。何も根治を望んで来たわけではないのだから、「苦痛を和らげる方法なら、できることはまだありますよ」と、包括的ケアの余地があることを伝えられれば、どれだけ救いとなることだろう。以上のことを心がけて、初めて患者・家族との対話が始まるのだ。こちらにだって病状や治療方針など説明すべきことは山ほどあるのだが、終末期医療の目的がQOLの向上である以上、患者の信念や思いにしっかりと耳を傾けよう。もし、その過程で患者の嗜好を聞き出せたのならしめたもの。しかしそれも、「うわー、その考え方にはついていけないわ」などと邪推や偏見で拒絶してしまえば、それまでだ。患者の需要に応えられたときにQOLは高まる。むしろ理解と信頼関係を深める絶好の機会と捉えて、可能な限り患者本人の願いを実現するべく、家族との協力態勢を構築していこう。気持ちの整理がつくにつれ、受け入れがたい状況でも差し引きどうにか受容できるようになることもある。そうして徐々に歩み寄りつつ共通認識の形成を試みていこう。その積み重ねが、愛する人との静かな別れの時間を醸成し、ひいては別離から立ち直る助けともなるのだ。Point平易かつ明確な言葉で語り掛け、患者・家族の願いを見極めよう「DNRでしょ? ERでできることってないでしょ?」より穏やかな死の過程を実現させるためにも、是非とも対症療法の基本はおさえておこう。訴えに対してやみくもに薬剤投与と追加・増量を繰り返しているようでは、病因と戦っているのか副作用と戦っているのかわからなくなってしまうので、厳に慎みたい。その苦痛は身体的なものなのか、はたまた恐怖や不安など心理的な要因によるものなのか、包括的な視点できちんと原因を見極めるべきだ。対症療法は原則として非薬物的ケアから考慮する。もし薬剤を使用するなら、病因に対して適正に使用すること。また、患者さんの状態に合わせて、舌下錠やOD錠、座薬、貼付剤など適切な剤型を選択しよう。続くワンポイントレッスンと表で、使用頻度の高い薬剤などについてまとめてみた。ただし、終末期の薬物療法は概してエビデンスに乏しいため、あくまでも参考としていただけるとありがたい。表 終末期医療でよく使用する薬剤PointERでできることはたくさんある。適切な対症療法を学ぼうワンポイントレッスン呼吸困難呼吸困難は終末期の70%が経験するといわれている。自分では訴えられない患者も多いので、呼吸数や呼吸様式、聴診所見、SpO2などの客観的指標で評価したい。呼吸困難は不安などの心理的ストレスが誘因となることも多いため、まずは姿勢を変化させたり、軽い運動をしたり、扇風機で風を当てたりといった環境整備を試すとよいだろう。薬剤では、オピオイドに空気不足感を抑制する効果がある。経口モルヒネ30mg/日未満相当ならば安全に使用できる。もし不安に付随する症状であれば、ベンゾジアゼピンが著効する場合もある。口腔内分泌物口腔内の分泌物貯留による雑音は、終末期患者の23〜92%にみられる。実は患者本人にはほとんど害がないのだが、そのおぞましい不協和音は死のガラガラ(death rattle)とも呼ばれ、とくに家族の心理的苦痛となることが多い。まずは家族に対し、終末期に現れる自然な経過であることを前もって説明しておくことが重要だ。どうしても雑音を取り除く必要がある場合は、アトロピンの舌下滴下が分泌物抑制に著効することがある。ただし、すでに形成した分泌物には何の影響もないため、口腔内吸引および口腔内ケアも並行して実践しよう。せん妄せん妄も終末期患者の13〜88%に起こる頻発症状だ。ただし、30〜50%は感染症や排尿困難、疼痛などによる二次的なものである。まずは原因の検索とその除去に努めたい。薬剤投与が必要な場合は、ハロペリドールやリスペリドンなどの抗精神病薬を少量から使用するとよいだろう。睡眠障害睡眠障害はさまざまな要因が影響するため、慎重な評価と治療が不可欠である。まずは昼寝の制限や日中の運動、カフェインなどの刺激物を除去するといった環境の整備から取り掛かるべきだろう。また、睡眠に悪影響を及ぼす疼痛や呼吸困難などのコントロールも重要である。薬物は健忘、傾眠、リバウンドなどの副作用があるため、急性期に限定して使用する。一般的には非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロンやラメルテオンなどが推奨される。疼痛疼痛は終末期患者の50%が経験するといわれている。必ずしも身体的なものだけではなく、心理的、社会的、精神的苦痛の表出であることも多いため、常に包括的評価を心掛けるべきだ。このうち、身体的疼痛のみが薬物療法の適応であることに注意しよう。まずは潜在的な原因の検索から始め、その除去に努めよう。終末期の疼痛における環境整備やリハビリ、マッサージ、カウンセリングなどの効果は薬物療法に引けを取らないため、まずはこのような支持的療法から試みるとよいだろう。薬物療法の際は、軽度ならば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン、そうでなければオピオイドの使用を検討する。ちなみに、かの有名なWHOの三段階除痛ラダーは2018年の時点でガイドラインから削除されているから注意。現在では、患者ごとに詳細な評価を行ったうえで、痛みの強さに適した薬剤を選択することとなっている。たしかに、あの除痛ラダーだと、解釈次第ではNSAIDsと弱オピオイドに加えて強オピオイドといったようなポリファーマシーを招きかねない。末梢神経痛に対しては、プレガバリンやガバペンチン、デュロキセチンなどが候補にあがるだろう。勉強するための推奨文献日本集中治療医学会倫理委員会. 日集中医誌. 2017;24:210-215.Schlairet MC, Cohen RW. HEC Forum. 2013;25:161-171.Anderson RJ, et al. Palliat Med. 2019;33:926-941.Dy SM, et al. Med Clin North Am. 2017;101:1181-1196.Albert RH. Am Fam Physician. 2017;95:356-361.執筆

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硬膜外ステロイド注射は慢性腰痛に効果あり?

 特定のタイプの慢性腰痛患者において、痛みや障害の軽減を目的とした硬膜外ステロイド注射(epidural steroid injection;ESI)の効果は限定的であることが、米国神経学会(AAN)が発表した新たなシステマティックレビューにより明らかになった。このレビュー結果は、「Neurology」に2月12日掲載された。 ESIは、脊柱の硬膜外腔と呼ばれる部分にステロイド薬や局所麻酔薬を注入して炎症を抑え、痛みを軽減する治療法である。このレビューの筆頭著者である米ロマリンダ大学医学部のCarmel Armon氏は、「慢性腰痛は一般的だが、動作や睡眠、日常的な活動を困難にして、生活の質(QOL)に悪影響を及ぼし得る」とAANのニュースリリースで述べている。 今回のシステマティックレビューでは、2005年1月から2021年1月の間に発表された90件のESIに関するランダム化比較試験を対象に、神経根症および脊柱管狭窄症に対するESIの痛み軽減効果に焦点を当てて分析が行われた。神経根症は、主に頸椎や腰椎の変性により神経根が圧迫されることで、脊柱管狭窄症は脊柱管(背骨の中の神経の通り道)が狭くなって脊髄や神経が圧迫されることで生じ、いずれも痛みやしびれなどが生じる。分析結果は、研究ごとに有効性の指標が大きく異なるため、短期的(治療後3カ月まで)および長期的(治療後6カ月以上)に見て、ESIを受けた患者(ESI群)において治療により良好な転帰を達成した割合がESIを受けていない対照群と比べてどの程度多いか(success rate difference;SRD)に基づき報告された。 その結果、頸部または腰部神経根症の場合、ESI群では対照群と比較して短期的に痛みが軽減した人の割合が24%(SRD −24.0%、95%信頼区間−34.9〜−12.6)、障害が軽減した人の割合が16%(同−16.0%、−26.6〜−5)多いことが示された。また長期的に見ても、ESI群では障害が軽減した人の割合が対照群より約11%多い可能性が示された(同−11.1%、−25.3〜3.6)。ただし、対象研究の多くは腰部神経根症の人が中心であり、頸部の疾患に対する治療については十分な研究がなかった。そのため、頸部の神経根症に対するESIの効果は不明であるという。 一方、脊柱管狭窄症の場合、ESI群では対照群と比較して、短期的にも長期的にも障害が軽減した人の割合が、それぞれ26%(SRD −26.2%、95%信頼区間−52.4〜3.6)と12%(同−11.8%、−26.9〜3.8)多い可能性が示唆されたが、統計学的な有意性は確認されなかった。また、短期的に痛みを軽減する効果については、統計学的に有意な差は確認されず(同−3.5%、−12.6〜5.6)、長期的に痛みを軽減する効果については、エビデンスが十分ではなく不明とされた。全ての研究が腰部脊柱管狭窄症の人を対象にしていたため、頸部脊柱管狭窄症に対するESIの効果は不明であった。 共著者の1人である、米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのPushpa Narayanaswami氏は、「われわれの研究は、特定の慢性腰痛に対するESIの短期的な効果は限定的であることを裏付けている」とニュースリリースで述べている。同氏はまた、「治療を繰り返すことの有効性や、治療が日常生活や仕事復帰に及ぼす影響について検討した研究は見当たらなかった。今後の研究では、こうしたギャップを解消する必要がある」と付言している。

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構造的心疾患の手技と研究ができる最高の環境へ【臨床留学通信 from Boston】第9回

構造的心疾患の手技と研究ができる最高の環境へボストンの冬は-15度を記録する日が続き、雪も週に1、2回降るため、屋外での運動は難しい状況です。幸い、借りているアパートには各住戸専用の地下物置があり、そこに運動用のバイクを置いて運動不足を解消しようとしています。さて、私の2025年7月からの進路が決まりましたので、ご報告いたします(アメリカの病院は7月始まり、6月終わりの1年をAcademic Yearと呼びます)。2025年7月からは、同じボストンのBeth Israel Deaconess Medical Center(BIDMC)/Harvard Medical Schoolに移り、Structural Heart Disease(構造的心疾患)のフェローをすることになりました。実はこの決定には相当な葛藤がありました。そもそも、私が渡米した理由の1つはStructural Heart Disease Interventionを学ぶことでした。日本でもこの分野の技術は確立されつつありますが、私が渡米を決意した2010年前後は欧米に遅れをとっている状況でした。現在でも、新しいデバイス、とくに三尖弁閉鎖不全症のカテーテル治療は米国では認可されているものの、日本では未認可の状況です。そのため、米国で学ぶメリットがあると考えました。また、冠動脈の治療はすでに成熟しており、新たな伸びしろが少ないとも思いました。ただ、フェローとしての安月給のまま、さらに1年を費やすことへの迷いもありました。実際、MGH(Massachusetts General Hospital)のカテーテル治療部門ではフェローより上位のアテンディングポジションに空きがあり、採用される可能性がありました。そのため、MGHのStructural Heart Diseaseのフェローの応募締め切りが8月下旬だったこともあり、フェローには応募せずに、他の場所も含めてアテンディングポジションにアプライしていました。ただし、以前BIDMCのStructural Heart Diseaseフェローの担当者と6月にやりとりしていた際、私は応募を考えており、その時は12月の締め切りに間に合えばよいと認識していました。ところが、締め切りが実際には10月であったことを後から知り、再び迷いが生じました。締め切りは過ぎていましたが、「12月が締め切りと聞いていました」と主張し、急遽面接を受けることになりました。幸い、BIDMCには25名ほどの応募者がいたものの、同じハーバード関連病院ということもあり、応募さえすれば私を採用する意向だったようです。平日にMGHを抜け出して車で20分ほどの距離にあるBIDMCへ面接に行くと、病院の概要説明と簡単な質疑応答がありました。その際、MGHのアテンディングポジションと迷ってることも正直に伝え、理解を得ました。決定まで5日の猶予をいただき、家族と相談した結果、最終的に2025年7月からの1年間、さらなる研修を受けることに決めました。BIDMCでは、TAVR 450件以上、MitraClip 120件以上、左心耳閉鎖や三尖弁閉鎖不全症に対するクリップ術・弁置換術、ASDやPFOといった先天性心疾患の治療を学ぶ予定です。また、研究面でもBIDMCは非常に活発で、NCDR(National Cardiovascular Data Registry)の統計解析施設の1つとなっています。一方、MGHのインターベンション部門の研究はそれほど活発ではなく、一部の医師がBIDMCと共同研究をしている程度です。そのため、フェローとしての最終年を迎えるに当たり、最適な場所を見つけたと感じています。

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多枝病変STEMI、完全血行再建術の最適なタイミングは?~ネットワークメタ解析/JACC

 多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、完全血行再建術(CR)は責任血管のみの治療より有益であることが、これまでの研究で報告されている。米国・エモリー大学の上山 紘生氏らの研究チームは、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析にて、多枝病変を有するSTEMI患者における最適な血行再建術のタイミングを検証した。その結果、CRは責任血管のみの治療より良好な転帰を示し、即時CRが段階的CRより有利な可能性が示された。Journal of the American College of Cardiology誌2025年1月7日号に掲載。 本研究では、PubMedとEmbaseにて2024年7月までに登録されたSTEMIと多枝病変を有する患者における血行再建戦略を評価したランダム化試験を検索した。CRと責任血管のみの血行再建の比較試験、およびCRのタイミング(即時CRと段階的CR)の比較試験を、ネットワークメタ解析で分析した。また、血行再建術が即時的か段階的か、血管造影ガイド下か機能的ガイド下かに基づいて、4つのCR戦略で転帰が評価された。主要アウトカムは主要有害心血管イベント(MACE)であった。 主な結果は以下のとおり。・1万5,902例の患者が登録された合計26件のランダム化試験が対象となった。平均追跡期間は25.2±15.7ヵ月であった。・血管造影ガイド下または機能的ガイド下のいずれの場合も、CRは即時CRと段階的CRの両方で、責任血管のみの治療と比較してMACEが減少した(即時CRのリスク比[RR]:0.48[95%信頼区間[CI]:0.36~0.64]、段階的CRのRR:0.65[95%CI:0.52~0.82])。・即時CRは、段階的CRと比較してMACEの減少と関連していた(RR:0.74[95%CI:0.56~0.97])。これはCRが血管造影ガイド下か機能的ガイド下でも認められた(血管造影ガイド下のRR:0.77[95%CI:0.61~0.99]、機能的ガイド下のRR:0.49[95%CI:0.27~0.89])。MACEの減少は、とくに心筋梗塞(MI)の減少によるものだった。・ただし、すべてのMIと非手技的MI(non-procedural MI)の両方を報告した研究に解析を限定した場合、段階的CRと比較した即時CRのMI減少の有益性は、手技的MI(procedural MI)を除外すると減少した(手技的MIありのRR:0.44[95%CI:0.27~0.71]に対し、手技的MIなしのRR:0.65[95%CI:0.36~1.16])。 本結果について著者らは、多枝病変を有するSTEMI患者では、血管造影ガイド、機能的ガイドにかかわらず、責任血管のみの治療と比較して、即時または段階的CRのほうが転帰が良好だったとまとめている。

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統合失調症患者の10年間にわたる心血管リスク

 統合失調症患者は、平均寿命が短く、その主な死因は心血管疾患となっている。精神症状、認知機能、心血管疾患との関連は十分に明らかになっておらず、性差に関する研究も不十分である。中国・天津医科大学のXiaoying Jin氏らは、統合失調症の男性および女性患者の特徴と10年間の心血管リスクとの関連を調査した。Journal of Neural Transmission誌オンライン版2024年10月10日号の報告。 対象は、慢性期統合失調症患者802例。すべての患者より空腹時の静脈血を採取し、関連する糖脂質代謝指標を測定した。精神症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、認知機能の評価には、神経心理検査アーバンズ(RBANS)、10年間の心血管リスクの推定には、フラミンガムリスクスコア(FRS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者における10年間の平均心血管リスクは、11.76±8.99%であった。・10年間の心血管リスクが中程度以上の患者の割合は、52.8%であった。・多変量線形回帰分析では、FRSは、BMI、血圧、血糖、総コレステロール、トリグリセライドの上昇とともに増加し、HDLレベルとの逆相関が示唆された。・一般的な精神病理学的スコアとFRSとの負の相関が認められた(男性:B=−0.086、p=0.013、女性:B=−0.056、p=0.039)。・男性において、陰性症状(B=−0.088、p=0.024)とPANSS合計スコア(B=−0.042、p=0.013)は、FRSとの負の相関が認められた。・60歳以上の患者では、一般的な精神病理(B=−0.168、p=0.001)とPANSS合計スコア(B=−0.057、p=0.041)は、FRS低下と関連し、即時記憶(B=0.073、p=0.025)は、FRS上昇と関連していた。 著者らは「統合失調症患者は、心血管疾患の発症リスクが高く、10年間の心血管リスクは、女性よりも男性で高くなることが確認された。FRSと精神症状との関連は、性差が大きく、陰性症状は男性のみでFRSとの負の相関が認められた」と結論付けている。

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耐性菌が出ているけど臨床経過のよい腎盂腎炎に遭遇したら【とことん極める!腎盂腎炎】第8回

耐性菌が出ているけど臨床経過のよい腎盂腎炎に遭遇したらTeaching point(1)耐性菌が原因菌ではないことがあり、その原因について考える(2)多くが検体採取時のクリニカルエラーであるため採取条件の確認を行う(3)尿中の抗菌薬は高濃度のため耐性菌でも効いているように見えることがある(4)診断が正しいかどうか再確認を行うはじめに尿培養結果と臨床症状が合わない事例は、たまに遭遇することがある。“合わない”事例のうち、耐性菌が検出されていないのに臨床経過が悪い場合と、耐性菌が検出されているが臨床経過はよいものがある。今回は後者について解説していく。培養検査は原因菌のみ検出されるわけではなく、尿中に一定量の菌が存在する場合はすべて陽性となる。そのため、培養検査で検出されたすべての微生物が原因菌ではなく、複数菌が同時に検出された場合では、原因菌以外の菌が分離されていたことになる。それは耐性菌であっても同じであり、耐性菌が検出されているが臨床経過がよい場合、以下の2点が考えられる。1.検出された耐性菌が原因菌ではない場合膀胱内に貯留している尿は一般的に無菌であるが、尿路感染症を引き起こした場合、尿には菌が確認されるようになる。尿培養では尿中の菌量が重要になるが、採取条件が悪くなることで、周辺からの常在菌やデバイス留置による定着菌の混入を最小限におさえて検査を行うことで正しい検査結果が得られる。【採取条件が悪い場合(図)】尿は会陰や腟、尿道周囲の常在菌が混入しやすいため、採取条件が悪い場合は不正確な検査結果を招く恐れがある。画像を拡大する中間尿標準的な採取法で通常は無菌的に採取できるが汚染菌が混入するシチュエーションを把握しておく。女性は会陰や腟、尿道の常在菌が混入しやすいため、採取時は尿道周囲や会陰部を洗浄した後に採尿する。男性は外尿道口を水洗するだけで十分であるが、包茎であれば皮膚常在菌が混入しやすいので包皮を剥いてから採尿する。間欠導尿による採尿で汚染菌の混入を減らすことができる。尿道留置カテーテルからの採尿入れ替え直後のカテーテルを除き、通常カテーテルには細菌がバイオフィルムを形成しているため、検出された細菌が膀胱に停留しているものかどうかはわからない。もし、採尿する場合は、ポートを消毒後に注射器を使い採取をする。また、採尿バッグから採取を行うと室温で自然に増殖した細菌が検出されて不適切であるため行わないこと。尿バッグからの採尿乳児の場合は中間尿の採取は技術的に難しいため、粘着テープ付き採尿バッグを装着する。女児や包茎の男児では常在菌の混入が免れないため、不必要な治療や入院が行われる原因となる。回腸導管からの採尿回腸に常在菌は多く存在しないが、回腸導管やストーマ内は菌が定着しているため採取した尿は解釈が難しくなる。【保存条件が悪い場合】尿を採取後はできるだけ早く培養を開始しないといけないが、院外検査であったり、夜間休日で搬送がスムーズにできなかったりするなど、検査をすぐに開始できない場合が考えられる。尿の保存条件が悪い場合は、少量混入した汚染菌や定着菌が増え、原因菌と判別がしにくくなるほど尿培養で検出されてしまう。尿は採取後2時間以内に検査を開始するか、検査がすぐに開始できない場合は冷蔵庫(4℃)に保管をしなければならない。【複数菌が同時に検出されている場合】原因菌以外にも複数菌が同時に検出され、主たる原因菌が感受性菌で、汚染菌や定着菌、通過菌が耐性菌として検出された可能性がある。たとえば、尿道留置カテーテルが長期挿入されている患者や回腸導管でカテーテル挿入患者からの採尿で観察される。【常在菌の混入や定着菌の場合】Enterococcus属やStreptococcus agalactiae、Staphylococcus aureus、Corynebacterium属、Candida属については汚染菌や定着菌のことが多く、菌量が多くても原因菌ではないこともある(表1、2)1,2)。画像を拡大する画像を拡大する【検査のクリニカルエラーが原因となる場合】検体の取り違え(ヒューマンエラー)別患者の尿を誤って採取し提出した。別患者の検体ラベルを誤って添付した。別患者の検体で誤って培養検査を行った。培養時のコンタミネーション別患者の検体が混入してしまった。環境菌の汚染があった。感受性検査のエラー(テクニカルエラー)感受性検査を実施したところ、誤って偽耐性となった。感受性検査の試薬劣化。感受性検査に使用する試薬が少なかった。感受性試験に使用した菌液濃度が濃かった。2.検出された耐性菌が原因菌の場合【疾患の重症度が低い場合】入院適用がなく、併存疾患もなく、血液培養が陰性で、経口抗菌薬が問題なく服用ができる患者であれば外来で治療が可能な場合がある。その後の臨床経過もよいが、初期抗菌薬に耐性を認めた場合であってもそのまま治療が奏功する症例も経験する。しかし、耐性菌が検出されているため、抗菌薬の変更や治療終了期間の検討は慎重に行わなければならない。【抗菌薬の体内動態が原因となる場合】抗菌薬は尿中へ排泄されるため、尿中の抗菌薬は高濃度となる。尿中に排泄された抗菌薬濃度は血中濃度と平衡状態になく高濃度で貯留するため、たとえ耐性菌であっても感受性の結果どおりの反応をみせないことがある3)。抗菌薬のなかでも、濃度依存性のもの(ニューキノロンやアミノグリコシドなど)では効果が期待できると思うが、時間依存性のもの(β-ラクタム)でも菌が消失することを経験する。しかし、耐性菌であるため感受性菌に比べると細菌学的に効果が劣ることから、感受性の抗菌薬への変更も検討が必要になる。【診断は正しくされているのか】尿路感染症を診断する場合、鑑別疾患から尿路感染症が除外される条件が必要になる。たとえば、細菌が確認されない、膿尿が確認されない、尿路感染症に特徴的な所見が確認されないことが条件になる。尿は、汚染菌や定着菌が同時に検出されやすい検査材料になるため、検出菌の臨床的意義を再度検討し、診断が正しいのか確認することも求められる。おわりに感染症診療がnatural courseどおりにいかないことは、苦しいことであり、診療のうえで楽しみでもある。投与している抗菌薬に感受性の菌しか検出されていないのに、治りが悪いということはたまに遭遇するが、耐性菌が検出されているのにもかかわらず治療経過がよいというのは、どこかにピットフォールが隠れていないか疑心暗鬼になりがちである。治療経過がよいので、わざわざ抗菌薬を変更しないといけないのか、そもそも治療は必要なのか答えはみつからないことが多い。看護師に指示をして結果だけ待つのではなく、採取した尿を確認し、検査結果がどのように報告されているのか一度確認を行うことは、今後の感染症診療をステップアップする足がかりになるため、1つ1つ解決していきたいものである。1)Hooton TM, et al. N Engl J Med. 2013;369:1883-1891.2)Chan WW. Chapter 3 Aerobic Bacteriology. Urine Culture. Clinical Microbiology Procedures Handbook 4th Ed. ASM Press. 2016.3)Peco-Antic A, et al. Srp Arh Celok Lek. 2012;140:321-325.

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lupus(全身性エリテマトーデス)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第12回

言葉の由来“lupus”は自己免疫疾患の1つであるSLE(systemic lupus erythematosus:全身性エリテマトーデス)の別名として知られています。この病名は、ラテン語で「オオカミ」を意味する“lupus”に由来しています。“lupus”(ループス)という言葉が医学的に使用された起源は、中世欧州にさかのぼります。12世紀に活躍したイタリアの医師、ルッジェーロ・フルガルドが、下肢の皮膚病変を「オオカミに噛まれたような」と表現した、という記録が残っています。当時、欧州ではオオカミは身近な存在であり、オオカミに襲われた人の傷痕と、SLEの皮膚症状が類似していたことから、このような表現が用いられたと考えられています。1850年ごろから“lupus erythematosus”という言葉で顔面の蝶形紅斑が定義されるようになり、さらにその後、近代医学の父であるウィリアム・オスラー医師が皮膚の病変を全身性の症状と関連付けたことで、病気の理解がより深まりました。1971年に米国リウマチ学会が提唱した分類基準で、“systemic lupus erythematosus”(全身性エリテマトーデス)という病名が正式に採用され、現在の疾患概念が確立されました。併せて覚えよう! 周辺単語蝶形紅斑malar rash光線過敏症photosensitivity多発関節炎polyarthritis心膜炎pericarditis胸水pleural effusionこの病気、英語で説明できますか?Lupus is an autoimmune disease where the immune system attacks healthy tissues, leading to inflammation and damage in various parts of the body, including the skin, joints, kidneys, and heart. Symptoms can range from mild to severe and may include fatigue, joint pain, skin rashes, and fever.講師紹介

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