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1.

既治療のHER2変異陽性NSCLC、zongertinibは有益/NEJM

 既治療のHER2変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、経口不可逆的HER2選択的チロシンキナーゼ阻害薬zongertinibは臨床的有益性を示し有害事象は主に低Gradeであったことが、米国・University of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのJohn V. Heymach氏らBeamion LUNG-1 Investigatorsによる第Ib相試験の結果で報告された。HER2変異陽性NSCLC患者には、革新的な経口標的療法が求められている。zongertinibは第Ia相試験で進行または転移を有するHER2異常を認める固形がん患者への有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年4月28日号掲載の報告。複数コホートで用量探索および安全性・有効性を評価 第Ia/Ib試験はヒト初回投与試験で、現在も進行中である。進行または転移を有するHER2異常を認める固形がん患者(Ia相)および進行または転移を有するHER2変異陽性NSCLC患者(Ib相)を登録した複数コホートでzongertinibの用量探索および安全性・有効性が評価された。 本論ではIb相から既治療の患者が登録された3つのコホートにおけるzongertinibの主要解析の結果が報告された。3コホートは、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異陽性NSCLC患者(コホート1)、TKD変異陽性かつHER2標的抗体薬物複合体による治療歴のあるNSCLC患者(コホート5)、非TKD変異陽性NSCLC患者(探索的コホート3)である。 コホート1の患者は、zongertinib 1日1回120mgまたは240mgで投与を開始し、コホート3および5の患者は、同240mgで投与を開始した。コホート1の用量選択の中間解析の結果を受けて、その後は全コホートが120mgの投与を受けた。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定で評価(コホート1、5)または治験担当医師判定で評価(コホート3)した奏効率(ORR)であった。副次評価項目は、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間などであった。zongertinib 1日1回120mg投与群の71%で奏効 2023年3月8日~2024年11月29日に、オーストラリア、欧州、アジア、米国の74施設で、コホート1は132例、コホート5は39例、コホート3は25例の患者が治療を受けた。 データカットオフ(2024年11月29日)時点で、コホート1では計75例がzongertinib 1日1回120mgの投与を受けており、そのうち奏効を示したのは53例で(ORR:71%[95%信頼区間[CI]:60~80]、p<0.001)、DOR中央値は14.1ヵ月(95%CI:6.9~未到達)であった。Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は13例(17%)に発現した。 コホート5(31例)では、ORRは48%(95%CI:32~65)であった。Grade3以上のTRAEは1例(3%)に発現した。 コホート3(20例)では、ORRは30%(95%CI:15~52)であった。Grade3以上のTRAEは5例(25%)に発現した。 全3コホートにおいて、薬剤性間質性肺疾患の発現は報告されなかった。

2.

飲酒に起因するがんの死亡者数、20年で51%増

 アルコールに起因するがんによる死亡について、2000~21年で年齢調整死亡率(ASDR)は減少した一方、死亡者数は51%増加したことが、米国・Texas Tech University Health Sciences CenterのPojsakorn Danpanichkul氏らの研究により明らかになった。この傾向は社会人口統計学的指数(SDI)やがんの種類によってばらつきがみられた。Alimentary Pharmacology & Therapeutics誌オンライン版2025年4月27日号に掲載。 本研究では、Global Burden of Disease Study 2021を分析し、アルコールに起因するがんによる死亡者数とASDR、それらの2000~21年の年変化率(APC)を、SDIに基づく地域/国別、国の開発状況別に調べた。 主な結果は以下のとおり。・2021年における世界全体のアルコールに起因するがんによる死亡者数は34万3,370例で、2000年と比べ51%増加した。・アルコールに起因するがんは、すべてのがん死亡の3.5%であった。・アルコールに起因するがんのうち、がん死亡率が最も高いのは肝臓がん(27%)で、次いで食道がん(24%)、大腸がん(16%)の順となった。・2000~21年に、アルコールに起因するがんによるASDRは減少した(APC:-0.66%)。・地域別では、南アジアが最も急速にアルコールに起因するがんによるASDRが増加し、SDI別では低SDI国(APC:0.33%)と低~中SDI国(APC:1.58%)で上昇傾向を示した。・がんの種類別では、早期発症(15~49歳)の口唇がんおよび口腔がんのアルコールに起因するがんによるASDRが増加した(APC:0.40%)が、他のがんでは減少した。

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第243回 ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連

ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連勃起不全(ED)薬としてよく知られるタダラフィルやシルデナフィル使用と死亡、心血管疾患、認知症の減少との関連がテキサス大学医学部(UTMB)のチームの研究で示されました1,2)。タダラフィルとシルデナフィルはどちらもPDE5阻害薬であり、血流改善・血圧低下・内皮機能向上・抗炎症作用により心血管の調子をよくすると考えられています。それら成分は肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療にも使われ、タダラフィルは前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の治療薬としても発売されています。UTMBのDietrich Jehle氏らの今回の研究は世界中の2億7,500万例超の臨床情報を集めるTriNetXに収載の米国男性5千万例の記録を出発点としています。それら5千万例から、ED診断後のタダラフィルかシルデナフィル処方、または下部尿路症状診断後のタダラフィル処方があった40歳以上の男性が同定されました。3年間の経過を比較したところ、タダラフィルかシルデナフィルが処方されたED患者は、非処方患者に比べて死亡、心血管疾患、認知症の発生率が低いことが示されました。具体的には50万例強の解析で以下のような結果が得られており、血中でより長く活性を保つタダラフィルがシルデナフィルに比べて一枚上手でした。全死亡率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは24%低下心臓発作発生率タダラフィルは27%低下、シルデナフィルは17%低下脳卒中発生率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは22%低下静脈血栓塞栓症(VTE)発生率タダラフィルは21%低下、シルデナフィルは20%低下認知症発生率タダラフィルは32%低下、シルデナフィルは25%低下下部尿路症状患者のタダラフィル使用は一層有益でした。40歳以上の下部尿路症状患者100万例超のうち、タダラフィル使用群の死亡、心臓発作、脳卒中、VTE、認知症の発生率はそれぞれ56%、37%、35%、32%、55%低くて済んでいました。やはり米国のED男性を調べた別の観察試験3,4)でもPDE5阻害薬やタダラフィルと死亡や心血管疾患の減少の関連が示されています。今春2月にClinical Cardiology誌に結果が掲載されたその1つ3)ではEDと診断されてタダラフィルが処方された男性8千例強(8,156例)とPDE5阻害薬非処方の2万例強(2万1,012例)が比較され、タダラフィル使用群の心血管転帰(心血管死、心筋梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症、心不全、脳卒中)の発生率がPDE5阻害薬非使用群に比べて19%低いことが示されました。また、タダラフィル使用患者の死亡率は44%低くて済んでいました。タダラフィルと心血管転帰の発生率低下の関連は用量依存的らしく、同剤の使用量が上位4分の1の患者は心血管転帰の発生率が最小でした。有望ですがあくまでもレトロスペクティブ試験の結果であり、次の課題として男性と女性の両方でのプラセボ対照無作為化試験が必要だと著者は言っています3)。参考1)Jehle DVK, et al. Am J Med. 2024 Nov 10. [Epub ahead of print]2)Study finds erectile dysfunction medications associated with significant reductions in deaths, cardiovascular disease, dementia / The University of Texas Medical Branch 3)Kloner RA, et al. Clin Cardiol. 2024;47:e24234.4)Kloner RA, et al. J Sex Med. 2023;1:38-48.

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第238回 妊娠はウイルス様配列を目覚めさせて胎児発育に必要な造血を促す

妊娠はウイルス様配列を目覚めさせて胎児発育に必要な造血を促す体内の赤ちゃんを育てるにはいつもに比べてかなり過分な血液が必要で、赤血球は妊娠9ヵ月の終わりまでにおよそ2割増しとなって胎児や胎児を養う胎盤の発達を支えます1)。その赤血球の増加にホルモンが寄与していますが、ヒトやその他の哺乳類が妊娠中に赤血球をどういう仕組みで増やすかはよくわかっていませんでした。先週24日にScienceに掲載された研究で、哺乳類ゲノムにいにしえより宿るウイルス様要素が妊娠で目覚め、免疫反応を誘発して血液生成を急増させるという思いがけない仕組みが判明しました2,3)。それらのウイルス様配列はトランスポゾンや動く遺伝子(jumping gene)としても知られます。トランスポゾンは自身をコピーしたり挿入したりしてゲノム内のあちこちに移入できる遺伝配列で、ヒトゲノムの実に半数近くを占めます。哺乳類の歴史のさまざまな時点でトランスポゾンのほとんどは不活性化しています。しかしいくつかは動き続けており、遺伝子に入り込んで形成される長い反復配列や変異はときに体を害します。トランスポゾンは悪さをするだけの存在ではなく、生理活性を担うことも示唆されています。たとえば、トランスポゾンの一種のレトロトランスポゾンは造血幹細胞(HSC)を助ける作用があるらしく、炎症反応を生み出すタンパク質MDA5の活性化を介して化学療法後のHSC再生を促す働きが先立つ研究で示唆されています4)。妊娠でのレトロトランスポゾンの働きを今回発見したチームははなからトランスポゾンにあたりをつけていたわけではありません1)。University of Texas Southwestern Medical Centerの幹細胞生物学者Sean Morrison氏とその研究チームは、妊娠中に増えるホルモン・エストロゲンが脾臓の幹細胞を増やして赤血球へと発達するのを促すことを示した先立つ取り組みをさらに突き詰めることで今回の発見を手にしました。研究チームはまず妊娠マウスとそうでないマウスの血液幹細胞の遺伝子発現を比較しました。その結果、幹細胞はレトロトランスポゾンの急増に応じて抗ウイルス免疫反応に携わるタンパク質を生み出すようになり、やがてそれら幹細胞は増え、一部は赤血球になりました。一方、主だった免疫遺伝子を欠くマウスは妊娠中の赤血球の大幅な増加を示しませんでした。また、レトロトランスポゾンが自身をコピーして挿入するのに使う酵素を阻止する逆転写酵素阻害薬を投与した場合でも妊娠中に赤血球は増えませんでした。研究はヒトに移り、妊婦11人の血液検体の幹細胞が解析されました。すると妊娠していない女性(3人)に比べてレトロトランスポゾン活性が高い傾向を示しました。HIV感染治療のために逆転写酵素阻害薬を使用している妊婦6人からの血液を調べたところヘモグロビン濃度が低下しており、全員が貧血になっていました。逆転写酵素阻害薬を使用しているHIV患者は妊娠中に貧血になりやすいことを示した先立つ試験報告5)と一致する結果であり、逆転写酵素阻害薬使用はレトロトランスポゾンがもたらす自然免疫経路の活性化を阻害することで妊婦の貧血を生じ易くするかもしれません。より多数の患者を募った試験で今後検討する必要があります。他の今後の課題として、妊娠がどういう仕組みでレトロトランスポゾンを目覚めさせるのかも調べる必要があります。レトロトランスポゾンを目覚めさせる妊娠以外の要因の研究も価値がありそうです。たとえば、細菌が皮膚細胞(ケラチノサイト)の内在性レトロウイルスを誘って創傷治癒を促す仕組みが示されており6)、組織損傷に伴って幹細胞のレトロトランスポゾンが活性化する仕組みがあるかもしれません。また、組織再生にレトロトランスポゾンが寄与している可能性もあるかもしれません。参考1)Pregnancy wakes up viruslike ‘jumping genes’ to help make extra blood / Science 2)Phan J, et al. Science. 2024 Oct 24. [Epub ahead of print]3)Children’s Research Institute at UT Southwestern scientists discover ancient viral DNA activates blood cell production during pregnancy, after bleeding / UT Southwestern 4)Clapes T, et al. Nat Cell Biol. 2021;23:704-717.5)Jacobson DL, et al. Am J Clin Nutr. 2021;113:1402-1410.6)Lima-Junior DS, et al. Cell. 2021;184:3794-3811.

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非造影CT評価の広範囲脳梗塞、血栓除去術併用は優越性示せず/JAMA

 発症後24時間以内で非造影CTにより広範囲脳梗塞が認められた患者では、内科的治療のみと比較し血栓除去術の併用は90日時の機能的アウトカム改善に関して優越性は示されなかった。米国・Texas Stroke InstituteのAlbert J. Yoo氏らTESLA Investigatorsが、米国47施設で実施された非盲検評価者盲検、ベイジアン・アダプティブ・デザインの第III相無作為化試験「Thrombectomy for Emergent Salvage of Large Anterior Circulation Ischemic Stroke:TESLA試験」の結果を報告した。最近の広範囲脳梗塞の血栓除去術に関する臨床試験は、患者の選択に関して画像診断法や時間枠が不均一であった。非造影CTは最も一般的な脳卒中画像診断法であるが、発症後24時間以内に非造影CTのみで確認された広範囲脳梗塞に対する血栓除去術の有効性は不明であった。JAMA誌オンライン版2024年9月23日号掲載の報告。90日時の機能的アウトカムを内科的治療のみと比較 研究グループは、症状発現から24時間以内で、NIHSSスコアが6以上、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメントの閉塞を認め、修正Rankinスケール(mRS)スコアが0~1、非造影CTでASPECTSスコア2~5の大きな梗塞を呈する18~85歳の患者を、血栓除去術+内科的治療群(介入群)または内科的治療単独群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、効用加重修正Rankinスケール(UW-mRS、範囲:0[死亡または重度障害]~10[症状なし]、臨床的に意義のある最小変化量0.3)の平均スコアを用いて測定した90日時の機能的アウトカムの改善で、事前に規定した優越性の事後確率閾値は片側0.975以上とした。 安全性の主要エンドポイントは90日死亡率、副次エンドポイントは症候性頭蓋内出血および画像による頭蓋内出血であった。 2019年7月16日~2022年10月17日に302例が無作為化された(最終追跡調査は2023年1月25日)。UW-mRSスコア平均値は2.93 vs.2.27で有意差なし 無作為化された302例のうち、同意撤回などにより治療前に2例が除外され、解析対象は300例(介入群152例、対照群148例)で、女性が138例(46%)、年齢中央値は67歳であった。297例が90日間の追跡調査を完了した。 90日時のUW-mRSスコア平均値(±SD)は、介入群2.93±3.39、対照群2.27±2.98で、補正後群間差は0.63(95%信用区間[CrI]:-0.09~1.34、優越性の事後確率0.96)であった。 90日死亡率は、介入群35.3%(53/150例)、対照群33.3%(49/147例)であり、両群で同程度であった。24時間以内の症候性頭蓋内出血は、介入群で4.0%(6/151例)、対照群で1.3%(2/149例)に発現した。また、脳実質内出血タイプ1が介入群で9.5%(14/148例)、対照群で2.7%(4/146例)、脳実質内出血タイプ2がそれぞれ9.5%(14例)、3.4%(5例)、くも膜下出血が16.2%(24例)、6.2%(9例)に認められた。

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医師の共感スキルが高いほど患者の腰痛が改善

 医師の共感と慢性腰痛患者の長期的アウトカムとの関連を調査したコホート研究の結果、患者評価による医師の共感度が高いほど12ヵ月にわたる患者の痛み、機能、健康関連QOL(HRQOL)が良好であったことを、米国・University of North Texas Health Science CenterのJohn C. Licciardone氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年4月11日号掲載の報告。 対象は、2016年4月1日~2023年7月25日にThe Pain Registry for Epidemiological, Clinical, and Interventional Studies and Innovation(PRECISION)に登録された21~79歳の慢性腰痛(3ヵ月以上継続)患者で、12ヵ月間追跡された。医師の共感度は、CARE Measure(患者の視点で医師の共感度を評価するツール)を用いて評価された。10項目を1(poor)~5(excellent)点で評価し、合計スコアが30点以上の場合は「非常に共感的」、29点以下の場合は「わずかに共感的」な医師に分類された。主要アウトカムは、患者報告による痛み、機能、HRQOLで、データは登録時および3ヵ月ごとの診察で収集した。時間的傾向を測定し、ベースラインおよび長期的な共変量を調整するための多変量モデルを含む一般化推定方程式を用いて解析された。 主な結果は以下のとおり。●解析には、1,470例が組み込まれた。平均年齢は53.1(SD 13.2)歳、女性は1,093例(74.4%)であった。医師を「非常に共感的」と評価した患者群と「わずかに共感的」と評価した患者群のベースライン特性はおおむね同等であった。●医師の共感度が高いほど、患者の12ヵ月後のアウトカムが良好であった。 ・痛みの強さ β=-0.014、95%信頼区間[CI]:-0.022~-0.006、p<0.001 ・腰痛関連障害 β=-0.062、95%CI:-0.085~-0.040、p<0.001 ・HRQOL障害(例:痛みによる生活障害) β=-0.080、95%CI:-0.111~-0.049、p<0.001)●わずかに共感的と評価した群と比較して、非常に共感的と評価した群の患者では、痛みの強さや腰痛関連障害、HRQOL障害の平均スコアが有意に低かった。●医師の共感は、非薬物療法やオピオイド療法、腰椎手術よりも良好なアウトカムと関連していた。

7.

病室ベッド横に椅子、医師の着席増え患者満足度アップ/BMJ

 米国・University of Texas Southwestern Medical SchoolのRuchita Iyer氏らによる無作為化二重盲検試験の結果、病室内の椅子の配置を工夫することで、ベッドサイドでの診察中に医師が着席する可能性が有意に高くなり、患者の満足度も高くなることが明らかになった。著者は、「椅子の配置は、簡単でコストがかからずローテクな介入であり、医師に不利益を与えることはない。医療現場でのケアの提供を改善するため、今後は行動的介入戦略を活用すべきである」とまとめている。BMJ誌2023年12月15日クリスマス特集号「MARGINAL GAINS」掲載の報告。椅子をベッドサイドに置くvs.キャビネット内に置いたまま、無作為化試験 研究グループは2022年4月~2023年2月に、米国テキサス州ダラスの郡立病院パークランド記念病院において、病院総合診察医51人による入院患者の診療について観察した。参加患者はオリエンテーションの4つの質問に正しく回答できた者とし、適格者125人の診療を介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群(60人)では、病室内の椅子を患者のベッドサイド(ベッドから0.9m以内でベッドに向かって)に配置し、対照群(65人)では通常の位置(病室のキャビネット内)とした。 盲検化するため、本研究の目的を、病院総合診察医には診療のばらつきを観察するため、研究チームの医学生には入院患者の内科診療の経験を広げる機会を提供するため、患者には医師の診療パターンと患者の満足度を調査するためと説明し、椅子については言及しなかった。 主要アウトカムは診療中の医師の着席の有無、副次アウトカムはTAISCH(Tool to Assess Inpatient Satisfaction with Care from Hospitalists)質問票およびHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)質問票で評価した患者の満足度とし、探索的アウトカムとして医師の実際の在室時間、在室時間に関する医師と患者の認識を事前に規定した。介入群で医師が着席する確率は20倍、患者の満足度も向上 診療中に着席した医師は、介入群が60人中38人に対し、対照群は65人中5人であり、オッズ比(OR)は20.7(95%信頼区間[CI]:7.2~59.4、p<0.001)、介入群と対照群の絶対リスク差は0.55(95%CI:0.42~0.69)であった。全体として、医師が着席するために1.8脚の椅子を配置する必要があった。 平均TAISCHスコアは、介入群88.0%(標準偏差8.9%)、対照群84.1%(9.1%)であり、介入によりTAISCHスコアは3.9%改善した(効果推定値:3.9、95%CI:0.9~7.0、p=0.01)。また、HCAHPSの医師スコアが満点であった患者の割合は、介入群97%、対照群85%で、介入により満点のオッズは5.1%(95%CI:1.06~24.9、p=0.04)増加した。 介入は、実際の在室時間(介入群10.6分vs.対照群10.6分)、在室時間に関する医師(9.4分vs.9.8分)および患者(13.1分vs.13.5分)の認識とは関連していなかった。

8.

レンバチニブ+ペムブロリズマブの腎がん1次治療、4年超でも生存改善を維持(CLEAR)/ASCO2023

 進行期腎細胞がんの1次治療における、レンバチニブ・ペムブロリズマブ併用療法の生存期間延長効果は、長期追跡期間を経ても維持されていたというデータが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・Texas OncologyのThomas E. Hutson氏より発表された。 国際共同非盲検第III相CLEAR試験(KEYNOTE-581)試験の追跡期間中央値4年超の最終結果報告である。・対象:全身薬物治療未実施の進行期淡明細胞型腎細胞がん・試験群:レンバチニブ+ペムブロリズマブ(LenPem群:355例)、レンバチニブ+エベロリムス(357例)・対照群:スニチニブ4週投与2週休薬(Suni群:357例)・評価項目:[主要評価項目]独立画像判定(IIR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性など 2021年、LenPem群の良好なPFS、OSの結果が論文発表されている。今回はLenPem群とSuni群のOS最終解析結果の報告である(追跡期間中央値:LenPem群49.8ヵ月、Suni群49.4ヵ月)。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はLenPem群53.7ヵ月、Suni群が54.3ヵ月、ハザード比(HR)は0.79(95%信頼区間[CI]:0.63~0.99、p=0.0424)と両群間の有意な差を保っていた。24ヵ月OS率はLenPem群が80.4%、Suni群が69.6%、36ヵ月OS率はLenPem群66.4%、Suni群60.2%であった。・試験後の治療として、抗VEGF抗体がLenPem群の45.9%に、Suni群の45.4%に投与されていた。また抗PD-1/PD-L1抗体が使用されていたのはLenPem群15.8%、Suni群54.6%であった。・この後治療の影響を調整したOS中央値は、LenPem群は未到達、Suni群が32.0ヵ月で、HRは0.55(95%CI:0.44~0.69)であった。・IMDCリスク分類別にみたOSのHRは、Favorable risk群で0.94(95%CI:0.58~1.52)、Intermediate+Poor risk群で0.74(95%CI:0.57~0.96)であった。・PFS中央値はLenPem群が23.9ヵ月でSuni群9.2ヵ月、HRは0.47(95%CI:0.38~0.57、p<0.0001)であった。24ヵ月PFS率は、それぞれ49.0%と23.4%、36ヵ月PFS率は37.3%と17.6%であった。・IMDCリスク分類別にみたPFSのHRは、Favorable risk群で0.50(95%CI:0.35~0.71)、Intermediate+Poor risk群で0.43(95%CI:0.34~0.55)であった。・奏効期間(DOR)中央値は、LenPem群が26.7ヵ月、Suni群が14.7ヵ月、HRは0.57であった。・LenPem群において完全奏効(CR)を達成した症例のDOR中央値は43.7ヵ月であった。・LenPem群における新たな安全性シグナルは報告されなかった。

9.

ミズイボに、一酸化窒素放出ゲル剤の有効性・安全性を確認

 伝染性軟属腫(MC)の治療として、新規塗布薬の一酸化窒素(NO)放出薬である10.3%berdazimerゲル剤が、良好な有効性と安全性を示し有害事象の発現頻度は低率だったことを、米国・Texas Dermatology and Laser SpecialistsのJohn C. Browning氏らが第III相無作為化試験の結果、報告した。MCは伝染性軟属腫ウイルス(molluscipoxvirus)によって引き起こされる、日常診療でよくみかける持続性で伝染性の高い皮膚感染症で、自然治癒することが多いとされる一方、数ヵ月から数年続く可能性も否定できない。米国では年間約600万人が症状に悩まされ、1~14歳の子供の発生が最も多いと報告されているが、米国FDA承認薬はいまのところないという。わが国でも同様に子供に多く、治療方針は自然治癒を待つものから冷凍凝固療法など外科的処置まで柔軟に選択されている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年7月13日号掲載の報告。 研究グループは、MC治療としての10.3%berdazimerゲル剤の有効性と安全性を評価する第III相多施設共同溶剤対照二重盲検無作為化試験「B-SIMPLE4試験」を、2020年9月1日~2021年7月21日に米国内55クリニック(大半が皮膚科と小児科)で行った。適格被験者は、月齢6ヵ月以上で、3~70個の病変を有するMC患者。性感染によるMCやMCが眼周囲のみに認められる患者は除外した。 患者は、10.3%berdazimerゲル剤または溶剤の塗布治療を受ける群に無作為に割り付けられ、すべての病変表面薄層に1日1回、12週間塗布を受けた。 主要有効性エンドポイントは、12週時点の全MC病変の完全消失であった。安全性と忍容性の評価には、有害事象の頻度と重症度、および局所皮膚反応と瘢痕の評価が含まれた。データ解析は2021年8月31日~9月14日に行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は計891例で、berdazimer群に444例(平均年齢6.6歳[範囲:0.9~47.5]、男性228例[51.4%]、白人種387例[87.2%])、溶剤群に447例(平均年齢6.5歳[範囲:1.3~49.0]、女性234例[52.3%]、白人種382例[85.5%])が無作為に割り付けられた。・12週時に、intention-to-treat(ITT)集団において病変カウントを行ったのは、berdazimer群88.5%(393例)、溶剤群88.8%(397例)であった。・12週時にMCの完全消失が認められたのは、berdazimer群は32.4%(144例)、溶剤群19.7%(88例)であった(絶対群間差:12.7%、オッズ比[OR]:2.0、95%信頼区間[CI]:1.5~2.8、p<0.001)。・12週時点で、MC消失により治療を中断していた被験者割合は、berdazimer群14.4%(64例)、溶剤群8.9%(40例)であった。・有害事象の発現頻度は低率であった。最も頻度の高い有害事象は、塗布部の痛みと紅斑であったが、大半が軽症であった。・治療中断につながった有害事象の発現頻度は、berdazimer群4.1%(18例)、溶剤群0.7%(3例)であった。・最も多かった局所皮膚反応は、軽症~中等症の紅斑であった。

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ribociclib+レトロゾールが乳がん1次治療のOSを改善(MONALEESA-2)/ESMO2021

 HR陽性HER2陰性の転移を有する乳がん(mHRBC)に対するCDK4/6阻害薬ribociclibとレトロゾールの併用療法による1次治療は、レトロゾール単独療法より全生存期間(OS)を延長することが示された。国際共同の大規模臨床試験であるMONALEESA-2試験の最終解析で、米国The University of Texas MD Anderson Cancer CenterのGabriel N. Hortobagyi氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 本試験は二重盲検無作為化第III相試験であり、ribociclibは本邦では未発売である。・対象:閉経後のmHRBCで、転移・再発に対する治療歴のない症例 668例(ホルモン剤による術前または術後療法は許容)・試験群:ribociclib+レトロゾール群 334例(Ribo群)・対照群:プラセボ+レトロゾール群 334例(Pla群)ribociclibは 600mg/日を3週間投与1週間休薬。レトロゾールは2.5mg/日を連日投与。・評価項目[主要評価項目]主治医評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OS、奏効率、クリニカルベネフィット率、安全性、QOL 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目のPFSについては、すでにRibo群の有意な延長が報告されている(中央値25.3ヵ月vs.16.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.568、p=9.63×10-8)。・今回のOS最終解析のデータカットオフ時(2021年6月)の観察期間中央値は80ヵ月(最短75ヵ月)であり、この時点ではRibo群の30例(9.0%)、Pla群の17例(5.1%)が投薬継続中であった。・OS中央値はRibo群63.9ヵ月、Pla群51.4ヵ月で、HRは0.76(95%信頼区間[CI]:0.63~0.93)、p=0.004と有意にRibo群で良好であった。・4年OS率はRibo群が60.9%、Pla群が55.2%、5年OS率はRibo群が52.3%、Pla群が43.9%、6年OS率はRibo群が44.2%、Pla群が32.0%と、期間が延びるほど両群の差は大きくなっていた。・試験投薬終了後に後治療を受けていたのはRibo群が87.8%、Pla群が90.2%で、何らかのCDK4/6阻害薬の投与を受けていたのは、Ribo群21.7%(パルボシクリブが16.1%)、Pla群34.4%(パルボシクリブが31.5%)であった。・探索的解析である化学療法施行までの期間中央値は、Ribo群50.6ヵ月、Pla群38.9ヵ月で、HRは0.74(95%CI:0.61~0.91)であった。・安全性に関する新たな徴候は見られなかった。Grade3/4の主な有害事象は好中球減少症(Ribo群63.8%、Pla群1.2%)、肝機能障害(14.4%、4.8%)、QT延長(4.5%、2.1%)などであった。 Hortobagyi氏は最後に、「Ribo群のOS中央値は5年を超え、さらにPla群に比し臨床的にも意義のある12ヵ月のOS延長を示した本試験の結果と、これまでのribocilcibの試験(MONALEESA-3、MONALEESA-7)の結果から、ribociclibとホルモン剤の併用療法は、治療ラインを問わずmHRBC治療の重要な治療選択肢となり得る」と述べた。

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転移TN乳がん、GEM/CBDCAにtrilaciclib追加でOSが大きく改善/ESMO2019

 強力なCDK4/6阻害薬であるtrilaciclibは、その作用機序および前臨床試験から骨髄毒性の抑制および抗腫瘍作用の改善効果が期待されている。今回、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する多施設無作為化非盲検第II相試験において、ゲムシタビン/カルボプラチン(GEM/CBDCA)にtrilaciclibを追加することにより、全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告された。一方、主要評価項目である好中球減少症の有意な抑制効果は示されなかった。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Texas Oncology-Baylor Sammons Cancer CenterのJoyce O'Shaughnessy氏が発表。なお、本試験結果はLancet Oncology誌オンライン版9月28日号に同時掲載された。・対象:再発/転移乳がんに対して0~2レジメンの化学療法を受けたmTNBC患者・試験群:以下の3群に無作為に割り付け グループ1:GEM/CBDCA(Day1、8) 34例 グループ2:GEM/CBDCA(Day1、8)+trilaciclib(Day1、8) 33例 グループ3:GEM/CBDCA(Day2、9)+trilaciclib(Day1、2、8、9) 35例 病勢の進行(PD)もしくは不耐の毒性発現まで21日ごとに投与・評価項目: [主要評価項目]GEM/CBDCAによる好中球減少症の抑制(1サイクル目におけるGrade4の好中球減少症の期間、治療期間におけるGrade4の好中球減少症の発症) [副次評価項目]奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、OSなど 主な結果は以下のとおり。・52.0%がECOG PS 0、37.3%が化学療法を受けていた。・追跡期間中央値は10.5ヵ月(範囲:0.1~25.8ヵ月)であった。・薬物曝露期間の中央値は、グループ1(3.3ヵ月、4サイクル)に比べ、グループ2(5.3ヵ月、7サイクル)およびグループ3(5.5ヵ月、8サイクル)で延長した。・1サイクル目のGrade4の好中球減少症の平均日数、治療期間におけるGrade4の好中球減少症の患者割合とも有意な差がみられず、trilaciclibによる骨髄抑制の有意な改善は認められなかった。・ORRは、グループ1の33.3%に対して、グループ2(50.0%)、グループ3(36.7%)とも有意な差はなかった。・PFSは、グループ1に対してグループ2(HR:0.60、95%信頼区間[CI]:0.30~1.18、p=0.13)およびグループ3(HR:0.59、95%CI:0.30~1.16、p=0.12)で有意な改善は認められなかったが、グループ2と3の合計では改善傾向がみられた(HR:0.59、95%CI:0.33~1.05、p=0.063)。・OSは、グループ1に対してグループ2(HR:0.33、95%CI:0.15~0.74、p=0.028)、グループ3(HR:0.34、95%CI:0.16~0.70、p=0.0023)、グループ2と3の合計(HR:0.36、95%CI:0.19~0.67、p=0.0015)とも有意に改善した。・trilaciclib関連の重篤な有害事象はみられなかった。

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アルコールの入手のしやすさと心疾患発生の関連/BMJ

 法的なアルコール入手環境の違いという観点から心疾患との関連を検討した、米国・カリフォルニア大学のJonathan W Dukes氏らの研究成果が発表された。入手がしやすい地域の住民では心房細動が有意に多く、心筋梗塞およびうっ血性心不全は有意に少なかった。しかし規制が緩和されると短期間でうっ血性心不全のリスクの増大がみられたという。アルコールと心疾患の関連は複雑で相反する結果が報告されている。これまでの関連を検討した観察研究は、アルコール摂取について自己申告に基づいたもので、交絡因子がアウトカムに関連していた可能性があり、研究グループは、1州におけるアルコール販売規制の郡ごとの違いに着目して観察コホート研究を行った。BMJ誌オンライン版2016年6月14日号掲載の報告。テキサス州の各群の法規制の違いと心疾患発生との関連を調査 米国テキサス州の病院をベースに、Texas Inpatient Research Data Fileを用いて、2005~10年の間に入院した、法的なアルコール販売規制のない郡と厳しく販売が規制されている郡に住む21歳以上の患者110万6,968例を特定し、心疾患との関連を調べた。 主な心血管アウトカムは、心房細動、急性心筋梗塞、うっ血性心不全であった。検証解析として、アルコール乱用(alcohol misue)、アルコール性肝疾患の有病率(%)と罹患率(1,000人年当たり)についても調べた。規制なし郡住民は心房細動が有意に多い 規制なし郡住民のほうが、アルコール乱用、アルコール性肝疾患はより多くみられた。アルコール乱用の有病率は2.6 vs.2.5%、罹患率は3.6 vs.2.5例であり、アルコール性肝疾患は0.7 vs.0.4%、1.4 vs.0.8例であった。 多変量(年齢、人種、性別等)補正後、心房細動については、規制なし郡住民のほうが有意に多いことが認められた。有病率のオッズ比(OR)は1.05(95%信頼区間[CI]:1.01~1.09、p=0.007)、罹患率のORは1.07(同:1.01~1.13、p=0.014)であった。一方で、心筋梗塞については、規制なし郡住民が有意に少なかった。有病率ORは0.83(同:0.79~0.87、p<0.001)、罹患率ORは0.91(0.87~0.99、p=0.019)。うっ血性心不全も有意に少なく、有病率ORは0.87(0.84~0.90、p<0.001)であった。 また、規制ありから規制なしに変わった郡では、アルコール乱用、アルコール性肝疾患、心房細動、うっ血性心不全の発生が統計的に有意に高率となった。心筋梗塞については差は検出されなかった。転換前後各15ヵ月間の発生を比較したORは、アルコール乱用1.31(95%CI:1.19~1.43、p<0.001)、アルコール性肝疾患1.61(1.35~1.91、p<0.001)、心房細動1.07(1.03~1.12、p=0.001)、うっ血性心不全1.07(1.04~1.11、p<0.001)、心筋梗塞は0.99(0.91~1.07、p=0.746)であった。

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ロボット支援脊椎手術は有用か

 転移性または原発性脊椎腫瘍患者の治療において、外科手術は重要な役割を果たしている。近年、手術支援ロボットなどの新しい技術が開発され、正確なインストゥルメンテーションの設置や合併症の減少など有望な結果が示されている。米国・Texas Health Presbyterian Hospital PlanoのXiaobang Hu氏らは、ロボット支援脊椎手術の自験例について評価し、転移性または原発性脊椎腫瘍の治療においてロボット支援システムは安全かつ有用であることを報告した。著者は、「多数例におけるさらなる検討の実施を支持する結果である」とまとめている。International Journal of Spine Surgery誌オンライン版2015年2月3日号の掲載報告。 研究グループは、脊椎腫瘍の治療において生検、椎弓根スクリュー設置または椎体形成術(vertebral augmentation)にロボット支援システムを用いた症例(第1例目から連続9例)について、診療記録のデータを解析した。 評価項目は、手術時間、推定出血量、周術期および術後合併症、背部痛および下肢痛(視覚的アナログスケールによる)などであった。 主な結果は以下のとおり。・評価対象9例の背景は、女性7例、男性2例、平均年齢60歳(範囲47~69歳)、全例に胸椎または腰椎の椎体圧潰や脊髄症を認めた。・後方固定術は全例で成功した。・椎体形成術は4例で行われ、椎体レベルの平均数は5であった。・手術時間(skin to skin)は平均4時間24分、推定出血量は平均319mLであった。・周術期および追跡調査期間を通して合併症はみられなかった。・9例中7例は最終追跡調査時に背部痛または下肢痛が改善した(2例は追跡不能)。

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高齢肺炎入院患者へのアジスロマイシン、心イベントへの影響は?/JAMA

 高齢の肺炎入院患者へのアジスロマイシン(商品名:ジスロマックほか)使用は他の抗菌薬使用と比較して、90日死亡を有意に低下することが明らかにされた。心筋梗塞リスクの増大はわずかであった。肺炎入院患者に対して診療ガイドラインでは、アジスロマイシンなどのマクロライド系との併用療法を第一選択療法として推奨している。しかし最近の研究において、アジスロマイシンが心血管イベントの増大と関連していることが示唆されていた。米国・VA North Texas Health Care SystemのEric M. Mortensen氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で、JAMA誌2014年6月4日号掲載の報告より。65歳以上入院患者への使用vs. 非使用を後ろ向きに分析 研究グループは、肺炎入院患者におけるアジスロマイシン使用と、全死因死亡および心血管イベントの関連を明らかにするため、2002~2012年度にアジスロマイシンを処方されていた高齢肺炎入院患者と、その他のガイドラインに則した抗菌薬治療を受けていた患者とを比較した。 分析には、全米退役軍人(VA)省の全VA急性期治療病院に入院していた患者データが用いられた。65歳以上、肺炎で入院し、全米臨床診療ガイドラインに則した抗菌薬治療を受けていた患者を対象とした。 主要評価項目は、30日および90日時点の全死因死亡と、90日時点の不整脈、心不全、心筋梗塞、全心イベントの発生とした。傾向スコアマッチングを用い、条件付きロジスティック回帰分析で既知の交絡因子の影響を制御した。使用患者の90日死亡オッズ比は0.73 対象患者には118病院から7万3,690例が登録され、アジスロマイシン曝露患者3万1,863例と非曝露の適合患者3万1,863例が組み込まれた。適合群間の交絡因子について有意差はなかった。 分析の結果、90日死亡について、アジスロマイシン使用患者について有意な低下が認められた(曝露群17.4%vs. 非曝露群22.3%、オッズ比[OR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.70~0.76)。 一方で曝露群では、有意なオッズ比の増大が、心筋梗塞について認められた(5.1%vs. 4.4%、OR:1.17、95%CI:1.08~1.25)。しかし、全心イベント(43.0%vs. 42.7%、1.01、0.98~1.05)、不整脈(25.8%vs. 26.0%、0.99、0.95~1.02)、心不全(26.3%vs. 26.2%、1.01、0.97~1.04)についてはみられなかった。 結果について著者は、「肺炎入院患者に対するアジスロマイシン使用は、リスクよりも有益性が上回る」とまとめている。

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慢性虚血性心不全に対する自己骨髄単核細胞の経心内膜注入、改善効果は?

慢性虚血性心不全に対する自己骨髄単核細胞(BMC)の経心内膜注入手技について、左室収縮終末期容積(LVESV)や最大酸素消費量などの心機能の改善は認められなかったことが報告された。米国・Texas Heart InstituteのEmerson C. Perin氏らが行った、2つのプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月25日号で発表した。92人を無作為化、6ヵ月後のLVESVや最大酸素消費量などを比較研究グループは、2009年4月29日~2011年4月18日にかけて、慢性虚血性心不全で左室機能不全が認められる患者(NYHA心機能分類II~IIIまたはカナダ循環器学会分類法II~IV、LVEF<45%、SPECTで血流欠損認める)92人を無作為に2群に分け、一方の群(61人)には自己骨髄単核細胞(BMC)の経心内膜注入(1億BMC)を行い、もう一方の群(31人)にはプラセボを注入した。被験者は、CCTRN(Cardiovascular Cell Therapy Research Network)を後援する5つのNHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)で治療を受けている患者で、平均年齢63歳、男性が82人で、同治療法以外には血行再建の方法はなかった。主要エンドポイントは、6ヵ月後の、心エコーによるLVESV、最大酸素消費量、SPECTによる可逆性の所見だった。LVESV、最大酸素消費量、可逆性のいずれの変化にも両群で有意差なしその結果、LVESV指標の6ヵ月後の変化について、BMC群とプラセボ群で有意差はなかった(-0.9mL/m2、95%信頼区間:-6.1~4.3、p=0.73)。最大酸素消費量の平均値の変化量も、両群で有意差はなかった(1.0、同:-0.42~2.34、p=0.17)。さらに可逆性についても、その変化量は両群で同等だった(-1.2、同:-12.50~10.12、p=0.84)。副次エンドポイントとして評価した心筋梗塞欠損割合や総欠損量、臨床的改善なども、BMC群とプラセボ群で有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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米国高齢者の外来から入院への継続的ケア、過去10年で状況は悪化

米国で、高齢入院患者に対する、外来時からの継続的ケアの状況を調べたところ、過去10年間で悪化していることがわかった。入院前1年間に外来で診察をした医師が、入院時にも診察をしていた割合は、1996年の約5割から、2006年には約4割に減少していた。これは、米国Texas大学のGulshan Sharma氏らが明らかにしたもので、JAMA誌2009年4月22/29日号に発表した。入院中かかりつけ医の診察を受けた割合は、44%から32%に減少Sharma氏らは、公的高齢者向け医療保険メディケアのデータの中から、1996~2006年に入院した66歳超の患者302万770人について、後ろ向きに調査を行った。その結果、1996年の入院患者のうち、過去1年間に外来で診察を受けた医師のうち最低1人に、入院中も診察を受けた人は、全体の入院患者のうち50.5%(95%信頼区間:50.3~50.7%)。また、かかりつけのプライマリ・ケア医に入院中も診察を受けた人は、全体の入院患者の44.3%(44.1~44.6%)であったが、2006年には、同割合はそれぞれ39.8%(39.6~40.0%)と31.9%(31.6~32.1%)に、共に減少していた。継続ケアの割合は、週末入院や大都市圏で低率なかでも、週末に入院した患者では13.9%(12.9~14.7%)であり、大都市圏に住む人では11.7%(11.1~12.3%)、一方ニューイングランド地方に住む人では16.2%(14.4~18.0%)と、大都市圏でも著しく低率だった。また調査からは、1996~2006年にかけての、同割合の減少幅のおよそ3分の1に関しては、入院患者を担当する病院総合診察医(ホスピタリスト)の増加が原因だったことがわかったという。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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高リスク糖尿病患者に対する積極的降圧療法の有用性が示される:ADVANCE試験

心血管系高リスクあるいは既往を認める糖尿病患者では、血圧に関わりなくACE阻害薬+利尿薬を用いた降圧により血管系イベントが減少することが、 Lancet誌9月8日号に掲載されたADVANCE試験の結果より明らかになった。本研究は論文掲載に先立ち、欧州心臓病学会(ESC)において報告されている。高リスク糖尿病を対象、血圧は不問本試験の対象は55歳以上の2型糖尿病患者11,140例だが、心血管系イベント既往あるいは心血管系リスクを有する「心血管系高リスク」患者だった。心血管系リスクとされたのは「細小血管症」、「糖尿病性眼症」、「喫煙」、「脂質異常症」、「微量アルブミン尿」、「糖尿病歴10年以上」か「65歳以上」 ──である。試験参加に関し、血圧値は問われなかった。これら11,140例はACE阻害薬ペリンドプリルと利尿薬インダパミドの合剤を服用する「降圧薬群」(5,569例)と「プラセボ群」(5,571群)に無作為割り付けされ、二重盲検法で追跡された。試験開始時の背景因子は、平均年齢66歳、2型糖尿病発症平均年齢が58歳、32%に心血管系イベント既往を認めた。また降圧治療を受けていたのは69%、血圧平均値は145/81mmHgだった。1次評価項目は9%有意に減少4.3年間の平均追跡期間の血圧平均値は、「降圧薬群」で5.6/2.2mmHg有意に低かった。特に収縮期血圧は「降圧薬群」では試験開始6ヵ月後以降135mmHg前後が保たれていたのに対し、プラセボ群では常に140mmHg前後だった。その結果、1次評価項目である「大血管症(心血管系イベント)+細小血管症」の発生率は「プラセボ群」16.8%に対し「降圧薬群」では15.5%で、相対的に9%の有意な減少となった(95%信頼区間:0-17%、p=0.041)。年齢、試験開始時高血圧の有無や血管症既往の有無などで分けて検討しても、「降圧薬群」で1次評価項目が増加傾向を示すサブグループはなかった。また1次評価項目を大血管症と細小血管症に分けて比較すると「降圧薬群」における減少は有意差ではなくなるが、「主要冠動脈イベント」と「その他の冠動脈イベント(血行再建術施行や無症候性心筋虚血、不安定狭心症による入院)」を併せた「全冠動脈イベント」のリスクは相対的に14%、「降圧薬群」で有意に低下していた。同様に、「微量アルブミン尿出現」も「降圧薬群」において相対的に21%、有意にリスクが低下していた。これらより報告者らは、「ペリンドプリルとインダパミド合剤は、血圧の高低にかかわらず2型糖尿病患者の大血管症+細小血管症を減少させるだろう」と結論している。なお同号に掲載された「論評」ではUniversity of Texas(米国)のNorman M. Kaplan氏が、プラセボ群の83%が何らかの降圧薬(55%はペリンドプリル)を服用していたにもかかわらず5.6/2.2mmHgの血圧差があった点など、いくつか考慮すべきポイントを指摘している。(宇津貴史:医学レポーター)

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