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帝王切開術後のMRSA感染症で重度後遺障害が残存したケース

産科・婦人科最終判決平成15年10月7日 東京地方裁判所 判決概要妊娠26週、双胎および頸管無力症、高位破水と診断されて大学病院産婦人科へ入院となった25歳女性。感染兆候がみられたため抗菌薬の投与下に、妊娠28週で帝王切開施行。術後39℃以上の発熱があり抗菌薬を変更したが、術後5日目に容態が急変し、集中治療室へ搬送し気管内挿管を行った。羊水の培養検査でMRSA(+)のためアルベカシン(商品名:ハベカシン)を開始したものの、術後6日目に心肺停止、MRSA感染症による多臓器不全と診断された。バンコマイシン®投与を含む集中治療によって全身状態は改善したが、低酸素脳症から寝たきり状態となった。詳細な経過患者情報25歳女性、2回目の妊娠、某大学病院産婦人科に通院経過平成8年6月19日妊娠26週検診で双胎および頸管無力症と診断され同日入院となる。高位破水、子宮収縮がみられ、CRP上昇、白血球増加などの所見から子宮内細菌感染を疑う。6月20日羊水移行性の高い抗菌薬セフォタキシム(同:セフォタックス)を開始。6月28日頸管無力症で子宮口が開大したため、シロッカー頸管縫縮術施行。6月30日感染徴候の悪化を認め、原因菌を同定しないままセフォタックス®をイミペネム・シラスタチン(同:チエナム)に変更(帝王切開が行われた7月12日まで)。7月1日子宮口からカテーテルを挿入して羊水を採取し細菌培養検査を行うが、このときはMRSA(-)。7月10日体温36.5℃、脈拍84回/分、白血球12,300、CRP 0.3以下膣内に貯留していた羊水を含む分泌物を細菌培養検査へ提出。7月11日(木)脈拍102回/分、CRP 0.9。7月12日(金)緊急帝王切開手術施行。検査室では7月10日に提出した検体の細菌分離、純培養を終了。白血球10,800、脈拍96回/分、CRP 0.7、体温37.3~38.3℃。術後にチエナム®からアスポキシシリン(同:ドイル)に変更(7月12日~7月15日まで)。第3世代セフェム系抗菌薬であるセフォタックス®やチエナム®などかなり強い抗菌薬の使用をやめて、ドイル®を使用し感染状態の変化を見きわめることを目的とした。7月13日(土)病院休診日(検査室は当直体制)。脈拍80回/分、体温36.5~37.6℃、顔面紅潮あり。7月14日(日)検査室では菌の同定・感受性検査施行。前日には部分的であった発疹が全身へ拡大、白血球20,600、CRP 24.1へと急上昇。BUN 24.8mg/dL、Cr 1.3mg/dLと腎機能の軽度低下。発疹および発熱は抗菌薬によるアレルギーを疑い、ドイル®を中止してホスホマイシン(同:ホスミシン)、チエナム®、セフジニル(同:セフゾン)に変更。血液培養では陰性。このときは普通に話ができる状態であった。7月15日(月)検査室では夕刻の段階でMRSAを確認し感受性テストも終了。白血球24,000、CRP 24、血小板73,000、DICを疑いガベキサートメシル(同:エフオーワイ)投与開始。夜の段階で羊水の細菌培養検査結果が病棟に届くが、担当医には知らされなかった。7月17日(水)白血球34,600、CRP 30.4、血圧80/40mmHg、体温37.7~37.9℃、朝から換気不全、意識レベルの低下などがみられARDSと診断し、気管内挿管などを行いつつICUに入室。この直前に羊水細菌培養検査でMRSA(+)を知り、ARDSはMRSAによる感染症(敗血症)に伴うものと考え、パニペネム・ベタミプロン(同:カルベニン)、免疫グロブリン、MRSAに対しハベカシン®を投与。AST、ALT、LDH、アミラーゼ、BUN、Crなどの上昇が認められMOFと診断。7月18日03:00突然心停止となり、ただちに心肺蘇生を開始して心拍は再開した。ところが低酸素脳症による昏睡状態へと陥る。白血球31,700、CRP 1509:30ハベカシン®に代えてバンコマイシン®の投与を開始。8月5日腹部CTでダグラス窩に膿瘍形成。8月6日切開排膿ドレナージを施行。その後感染症状は軽快。8月23日MRSAは完全に消滅。平成9年1月18日症状固定:言葉を発することはなく、意思の疎通はできず、排便・排尿はオムツ管理で、常時要介護の状態となる。当事者の主張患者側(原告)の主張7月14日に39℃に近い高熱と悪寒、脈拍も86回/分、全身に細菌感染徴候がみられたので、遅くとも7月15日(月)には羊水の細菌培養検査を問い合わせるか、急がせる義務があり、遅くとも7月16日(火)正午までには感受性判定の結果が得られ、その段階から抗MRSA薬バンコマイシン®を早期に適量投与することができたはずである。ところがバンコマイシン®の投与を開始したのは7月18日午前9:30と2日も遅れた。もっとも早くて7月14日、遅くて7月16日夕刻までにMRSA感染症治療としてバンコマイシン®の投与を開始していれば、7月18日の心停止を回避できた可能性は十二分にある。病院側(被告)の主張出産の2週間前から破水した長期破水例のため、感染症のことは当然念頭にあり、毎日CRP、白血球数を検査し、帝王切開手術後も引き続き感染症を念頭において対応していた。しかし、急激に容態が悪くなったのは7月16日の夜からである。患者側は7月10日に採取した羊水の細菌培養検査結果の報告を急がせるべきであったと主張するが、7月16日午後6:30の呼吸苦出現までは感染症はそれほど重症ではなく、検査結果を急がせるような状況にはない。細菌培養の検体提出後、菌の同定、感受性の試験まで行うには5日間は要するが、本件では7月13日、7月14日と土日の当直体制であったため、結果的に報告まで7日かかったことはやむを得ない。担当医は7月16日夜に病棟に届いていた羊水の細菌培養検査結果MRSA(+)を、翌7月17日朝に知ったが、その時点でうっ血性心不全、意識低下と病態急変し、ICU(集中治療室)への収容、気管内挿管、人工換気などに忙殺された。そして、同日午後5:00に抗MRSA薬ハベカシン®を投与し、さらに翌18日からはバンコマイシン®を投与した。したがって、MRSAに対する薬剤投与が遅れたということはない。MRSAを知ってからハベカシン®を投与するまでの約6時間は緊迫した全身状態への対応に追われていた。仮に羊水培養検査結果の報告が届いた7月16日夜にハベカシン®またはバンコマイシン®を投与したとしても、すでにDIC、ARDSがみられ、MOFが進行している病態の下で、薬効の発現に2日ないし4日を要するとされていることを考えると、その後の病態を改善できたかは不明で心停止を回避することはできなかった。裁判所の判断被告病院における細菌培養の検査体制について羊水を分離培養するために要した時間は48時間。自動細菌検査システムVITEK® SYSTEMによれば、MRSA(グラム陽性菌=GpC)の同定に要する時間は4~18時間、感受性試験に要する時間は3~10時間、検査の結果が判明するのに通常要する期間は5日程度であった。被告病院では検査結果が判明したら、検査伝票が検査部にある各科のボックスに入れられ、各科の看護補助員が随時回収し、各科の病棟事務員に渡し、病棟事務員から各担当医師に渡されるという方法がとられている。院内感染対策委員会において策定したMRSA院内感染予防対策マニュアルによれば、MRSA陽性の患者が発生した場合、検査部は主治医へ連絡する、主治医および婦長は関係する職員に情報を伝達するものとされていた。ARDS、DIC、MOFに陥った原因、時期について7月14日(日)には39.8℃、翌7月15日(月)にも39℃の発熱、脈拍数120回/分とSIRSの基準4項目のうち2項目以上を満たし、白血球20,600、CRP 24.1などの所見から、7月15日午前9:00の段階でSIRS、セプシス(敗血症)の状態にあった。原因菌として、7月10日に採取した羊水の細菌培養検査、7月12日の帝王切開手術当日に採取された咽頭、便、胎脂からもMRSAが検出されていること、入院後から帝王切開手術までの間、スペクトラムが広く、抗菌力の強い抗菌薬チエナム®やセフォタックス®が継続使用され、菌交代現象が生じる可能性があったこと、抗菌薬ドイル®、チエナム®が無効であったことなどから、セプシスの原因菌はMRSAである。MRSA感染症治療としてバンコマイシン®をどの時点で投与する義務があったか細菌培養に提出された羊水の検体は、7月10日(水)に採取され、7月12日(金)の午後には分離培養は完了、7月15日(月)に細菌同定、感受性検査を開始、7月16日夕刻にはその結果を報告し合計7日間を要した。細菌検査の結果が判明するのに通常の5日ではなく7日も要したのは、被告病院において土曜・日曜が休診日であったという、人の生命・身体に関する医療とはまったく次元を異にする偶然的な事情によるものであった。一方術後患者は、ショック症状やMOFを経て死亡する場合もあり、早期治療を開始すればするほど治療効果は高くなり、通常の黄色ブドウ球菌感染の治療中に抗菌薬が効かなくなってきた場合は、MRSAと診断される前でも有効な抗菌薬に変更する必要がある。被告病院は高度医療の推進を標榜し、これを期待される医科系総合大学の附属病院であり、病院としてMRSA感染症対策を行っていた。仮に菌の同定を7月13日の作業開始時間である午前9:00から開始したとしても、遅くとも、細菌の同定その後の感受性の判定結果を、その28時間後の7月14日(日)午後1:00には培養検査結果を終了させておく義務があった。その結果、各科の看護補助員が出勤しているはずの7月15日(月)午前9:00頃には細菌培養検査結果の伝票を看護補助員が回収し各科の病棟事務員に渡され、担当医は遅くとも7月15日(月)午前中にはMRSA感染症を知り得たはずである。そして、MRSA感染症治療として被告病院が投与すべきであった抗菌薬は、各種感受性検査からバンコマイシン®であったので、遅くとも7月15日午後7:00頃にはバンコマイシン®を投与する義務があった。ところが、被告病院が実際にバンコマイシン®を投与したのは7月18日午前9:30であり大幅に遅れた。重症敗血症の時点でバンコマイシン®を投与した場合と敗血症性ショックを生じた後にバンコマイシン®を投与した場合について比較すると、重症敗血症の場合の死亡率は約10~20%にとどまるのに対し、敗血症性ショックの場合のそれは約46~60%と、その死亡率は高い。7月15日午後7:00頃の時点では、MRSAを原因菌とするセプシスあるいはそれに引き続いて敗血症に陥っているにとどまっている段階であり、まだ敗血症性ショックには至っていなかったので、遅くとも7月15日午後7:00頃バンコマイシン®を投与していれば、ARDSやDICを発症し、MOF状態となり、心停止により低酸素脳症に陥るという結果を回避することができた高度の蓋然性が認められる。原告側1億5,752万円(プラス死亡するまで1日介護料17,000円)の請求に対し、1億389万円(プラス死亡するまで1日介護料15,000円)の判決考察この判決は、われわれ医師にとってはきわめて不条理な内容であり、まさに唖然とする思いです。病態の進行が急激で治療が後手後手とはなりましたが、あとから振り返っても診療上の明らかな過失はみいだせないと思います。にもかかわらず、結果が悪かったというだけで、すべての責任を医師に押しつけたこの裁判官は、まるで時代のヒーローとでも思っているのでしょうか。この患者さんは出産の2週間前から破水した長期破水例であり、当然のことながら担当医師は感染症に対して慎重に対応し、初期から強力な抗菌薬を使用しました。にもかかわらず敗血症性ショックとなり、低酸素脳症から寝たきり状態となってしまったのは、大変残念ではあります。しかし、経過中にきちんと血液検査、細菌培養を行い、はっきりとした細菌は同定されなかったものの、さまざまな抗菌薬を投与するなど、その都度、そのときに考えられる最良の対応を行っていたことがわかります。けっして怠慢であったとか、大事な所見を見落としていたわけではありません。もう一度振り返ると、平成8年6月19日妊娠26週、高位破水。6月20日セフォタックス®開始。6月30日セフォタックス®をチエナム®に変更。7月1日羊水培養、MRSA(-)7月10日羊水培養提出。7月12日緊急帝王切開、チエナム®をドイル®に変更。7月13日休診日(検査室は当直体制)。7月14日休診日(検査室は当直体制)。 裁判所は検体提出の5日後、日曜日の13:00には感受性検査が終了できたであろうと認定。7月15日検査室で菌の同定・感受性検査施行。 抗菌薬のアレルギーを考えてドイル®を中止、ホスミシン®、チエナム®、セフゾン®に変更。 裁判所は7月15日の朝にはMRSA(+)がわかりバンコマイシン®投与可能と認定。7月16日夜にMRSA(+)の結果が病棟に届く。7月17日容態急変で集中治療室へ。羊水細菌培養検査でMRSA(+)を知り夕方からハベカシン®開始。7月18日ハベカシン®に代えてバンコマイシン®の投与を開始。われわれ医療従事者であれば、細菌培養にはある程度時間がかかることを知っていますから、結果が出次第、担当医師に連絡するように依頼はしても、培養の作業時間を短縮させたり、土日まで担当者を呼び出して感受性検査を急ぐことなどしないと思います。ましてや、土日の当直検査技師は緊急を要する血液検査、尿検査、髄液検査、輸血のクロスマッチなどに追われ、しかもすべての検査技師が培養検査に習熟しているわけでもありません。ここに裁判官の大きな誤解があり、培養検査というのを細菌感染症に対する万能かつ唯一無二の手段と考えて、土日であろうとも培養結果を出すため対応すべきものと勝手に思いこみ、「細菌検査の結果が判明するのに通常の5日ではなく7日も要したのは、被告病院において土曜・日曜が休診日であったという、人の生命・身体に関する医療とはまったく次元を異にする偶然的な事情によるものでけしからん」という判決文を書きました。たしかに、培養検査は治療上きわめて重要であるのはいうまでもありませんが、抗菌薬使用下では細菌が生えてこないことも多く、原因菌不明のまま抗菌薬を投与することもしばしばあります。ここで裁判官はさらに無謀なことを判決文に書いています。「術後患者は、ショック症状やMOFを経て死亡する場合もあり、早期治療を開始すればするほど治療効果は高くなり、通常の黄色ブドウ球菌感染の治療中に抗菌薬が効かなくなってきた場合は、MRSAと診断される前でも有効な抗菌薬に変更する必要がある!」と明言しています。この意味するところは、通常の抗菌薬を使っても発熱が続く患者には予防的にMRSAに効く抗菌薬を使え、ということでしょうか?今回の症例はMRSAが判明するまでは、細菌感染が疑われるものの発熱原因が特定されない、いわば「不明熱」であって、けっして「通常の黄色ブドウ球菌感染の治療中」ではありませんでした。そのため担当医師は抗菌薬(ドイル®)によるアレルギーも考えて抗菌薬を別のものに変更しています。このような不明熱のケースに、予防的にバンコマイシン®を投与しなければならないというのは、結果を知ったあとだからこそいえる行き過ぎの考え方だと思います。ところが「公平な判断を下す」はずの裁判官たちは、ほかにも多数の裁判事例を抱えて多忙らしく、誤解や勉強不足による間違った判決文を書いても、あとから非難を受ける立場には置かれません。そのため、結果責任は医師に押しつければよいという、「一歩踏み込んだ判断」を自負する傾向が非常に強くなっていると思います。残念ながら、このような由々しき風潮を改善するのは非常に難しく、われわれにできることは自己防衛的な対策を講じることくらいでしょう。今回のように、土日をはさんだ細菌培養検査にはどうしても結果が出るまでに時間がかかります。この点はやむを得ないのですが、被告病院の感染症対策マニュアルにも書いてあるとおり、「MRSA(+)の患者が発生した場合、検査部は主治医へ連絡する、主治医および婦長は関係する職員に情報を伝達する」という原則を常に遵守することが大事だと思います。本件では、7月16日夕刻の段階でMRSA(+)が判明しましたが、検査部から担当医師へダイレクトな連絡はありませんでした。通常のルートに乗って、7月16日夜には検査結果を記した伝票が病棟まで届きましたが、その結果を担当医師が確認したのは翌朝11:00頃であり、12時間以上のロスがあったことになります。このような院内体制については改善の余地がありますので、スタッフ同士の院内コミュニケーションを十分にはかることがいかに重要であるか、改めて痛感させられるケースです。産科・婦人科

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MRSA陽性の皮膚・軟部組織感染症患者、4分の1がMSSAに移行

 皮膚・軟部組織感染症(SSTI)でかつメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)陽性患者のうち、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)に移行する患者が顕著な頻度で存在することが、米国・オレゴン健康科学大学のAnisha B. Patel氏らによる外来・入院該当患者の後ろ向き調査研究の結果、明らかになった。215例のうち25.6%がMSSAに移行していたという。JAMA Dermatology誌2013年10月号の掲載報告。 外来でのMRSA感染患者の増加は、MRSAに対する経験的抗菌薬治療のさらなる増加をもたらしているが、有効な経口抗菌薬は限られていること、またさらなる耐性菌への懸念から、同治療傾向については議論の的となっている。 そこで研究グループは、MRSA SSTI患者のMSSAへの移行率を調べることを目的とし、同大学病院およびクリニックの入院・外来患者の医療記録を後ろ向きにレビューした。 2000年1月1日~2010年12月31日の間に、MRSA陽性SSTIであったが、その後1ヵ月以降に黄色ブドウ球菌の SSTIが培養で証明されていた患者のデータを対象とした。社会人口統計学的制限は設けなかった。本調査は最低200例を被験者とすることを条件とした。 主要評価項目は、SSTI患者がMRSA陽性のままであったかMSSAに移行したかどうかであった。 主な結果は以下のとおり。・データベースを遡って1,681例の患者の医療記録をレビューした。そのうち215例が試験基準を満たした。・215例のうち64例(29.8%)が、少なくとも1回はMSSAに移行していた。移行後の試験期間中MSSAであった患者は55例(25.6%)であった。・MSSAへの移行を増減する因子についても調べた結果、侵襲的処置ありが唯一、MRSA陽性のままとする、統計的に有意なリスク因子であった(相対リスク:1.20、95%CI:1.02~1.41、p=0.03)。・以上から、MRSA SSTI患者は、その後MSSA SSTIに顕著な頻度で移行する能力を有していることが示された。・MRSAリスク因子に関するさらなる検討と、それらリスク因子のその後の感染への影響が、経験的治療を行う際に役立つ可能性がある。・MRSA陽性であった患者において新たな感染を認めた場合は、黄色ブドウ球菌は変化するということを認識しながらの治療戦略を慎重に行う必要がある。

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ICUの耐性菌感染率、手袋とガウン常用を義務づけても低下せず/JAMA

 ICUにおいて、患者と接する際には常に手袋とガウンを着用することを義務づけても、処置や手術時に着用する通常ケアの場合と比べて、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の感染率について有意な差は認められなかったことが、米国・メリーランド大学のAnthony D. Harris氏らによる無作為化試験の結果、報告された。これまでICUでのユニバーサルな対応が耐性菌の感染を抑制するかどうかは不明であったという。JAMA誌2013年10月16日号掲載の報告より。通常ケアとユニバーサルな着用義務づけ介入とを多施設で比較検討 試験は、ICUにおいて、全患者に対して手袋とガウンの着用を義務づける介入が、通常ケアと比較してMRSAやVREの感染を抑制するかを評価することを目的とした。2012年1月4日~2012年10月4日の間、全米20病院のICUにて行われたクラスター無作為化試験であった。 介入群では、医療従事者は全員、ICUに入室する際に、接触する患者を問わず手袋とガウンを着用することが要求された。 主要アウトカムは、MRSAまたはVREの感染率で、入院時およびICU退出時のサーベイランス培養に基づいて評価した。副次アウトカムとして、VRE、MRSAそれぞれの感染率、医療従事者が入室した回数、手指消毒コンプライアンス、医療従事者が関連した感染、有害イベントなども評価した。MRSA感染率単独では減少みられたが、限定的な結果とみるべき 試験期間中の患者2万6,180例から、主要アウトカムの解析に9万2,241件のスワブが集まった。 介入群の感染率は、ベースライン時1,000患者・日当たり21.35(95%信頼区間[CI]:17.57~25.94)から、試験期間中は同16.91(同:14.09~20.28)に低下していた。一方、対照群も、同19.02(同:14.20~25.49)から16.29(同13.48~19.68)に低下しており、両群に統計的な有意差は認められなかった(1,000患者・日当たりの感染格差:-1.71、95%CI:-6.15~2.73、p=0.57)。 また、副次アウトカムでは、VRE感染率は差がみられなかったが(格差:0.89、95%CI:-4.27~6.04、p=0.70)、MRSA感染率はわずかに減少がみられたが有意差はなかった(同:-2.98、-5.58~-0.38、p=0.46)。 介入群では、医療従事者の入室回数が有意に減り(1時間につき4.28回vs.5.24回、格差:-0.96、95%CI:-1.71~-0.21、p=0.02)、入退室時の手指消毒コンプライアンス率が上昇した(78.3%vs.62.9%、格差:15.4%、95%CI:8.99~21.8、p=0.02)。しかし、有害イベントへの統計的に有意な効果はみられなかった(有害イベント発生率は1,000患者・日当たり58.7件vs. 74.4件、格差:-15.7、95%CI:-40.7~9.2、p=0.24)。 著者は、「ICUにおいて手袋とガウンの常用が通常ケアと比べて、主要アウトカムのMRSAまたはVRE感染率の差には結びつかなかった。MRSA単独では感染率の低下がみられたが、有害イベント発生率には差はみられず、これらの結果は限定的なものであり、さらなる検証が求められる」と結論している。

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MRSA感染症が原因で心臓手術から6日後に死亡したケース

感染症最終判決判例時報 1689号109-118頁概要心臓カテーテル検査で冠状動脈3枝病変が確認され、心臓バイパス手術が予定された63歳男性。手術前に咳、痰、軽度の咽頭痛が出現し、念のため喀痰を培養検査に提出したが、検査結果を待たずに予定通り手術が行われた。術後から38℃以上の発熱が続き、喀痰やスワンガンツカテーテルの先端からはMRSAが検出された。集中治療にもかかわらずまもなくセプシスの状態となり、急性腎不全が原因で術後6日目に死亡した。なお、術後に問題となったMRSAは術前の喀痰培養で検出されたものと同一であった。詳細な経過患者情報既往症として脳梗塞、心筋梗塞を指摘されていた63歳男性経過1991年1月近医の負荷心電図検査で異常を指摘された。2月18日某大学病院外科を紹介受診。ニトロールRを処方され外来通院開始(以後手術まで胸痛はなく病態は安定)。3月4日~3月6日心臓カテーテル検査のため入院。■冠状動脈造影結果左冠状動脈前下行枝完全閉塞左回旋枝末梢の後側壁枝部分で閉塞右冠状動脈50~75%の狭窄心拍出量3.84L左心室駆出率56%左室瘤および心尖部の血栓(+)以上の所見をもとに、主治医はACバイパス手術を勧めた。患者は仕事が一段落するのを待って手術を承諾(途中で海外出張もこなした)。5月28日大学病院外科に入院、6月12日に手術が予定された。6月4日頭部CT検査で右大脳基底核、右視床下部の脳梗塞を確認。神経内科の診察では右上下肢の軽度知覚障害、右バビンスキー反射陽性が確認された。6月8日(手術4日前)咳と喉の痛みが出現。6月9日(手術3日前)研修医が診察し、咳、痰、軽度の咽頭痛などの所見から上気道炎と診断し、イソジンガーグル®、トローチなどを処方。6月10日(手術2日前)研修医の指示で喀痰の細菌培養を提出(研修医から主治医への報告なし)。6月12日09:00~18:00ACバイパス手術施行。6月13日00:00~4:00術後の出血がコントロールできなかったため再開胸止血術が行われた。09:00体温38.7℃、白血球5,46013:00手術前に提出された喀痰培養検査でMRSA(感受性があるのはゲンタマイシン、ミノマイシン®のみ)が検出されたと報告あり。主治医は術後の抗菌薬として(MRSAに感受性のない)パンスポリン®、ペントシリン®を投与。6月14日体温38.6℃、白血球12,900、強い腹痛が出現。6月15日体温38.9℃、白血球11,490、一時的な低酸素によると思われる突然の心室細動、心停止を来したが、心臓マッサージにより回復。6月16日体温39.5℃と高熱が続く。主治医はMRSA感染をはじめて疑い、感受性のあるゲンタマイシンを開始。再度喀痰培養を行ったところ、術前と同じタイプのMRSAが検出された。6月17日顔面、口角を中心としたけいれんが出現し、意識レベルが低下。また、尿量が減少し、まもなく無尿。カリウムも徐々に上昇し最高値8.1となり、心室細動となる。スワンガンツカテーテル先端からもMRSAが検出されたが、血液培養は陰性。6月18日12:30腎不全を直接死因として死亡(術後6日目)。当事者の主張患者側(原告)の主張1.培養検査の結果を待たずに手術を行った過失今回の手術は緊急性のない待機的手術であったのに、喀痰検査の結果を確認することなく、さらにMRSAの除菌を完全に行わずに手術に踏み切ったのは主治医の過失である2.術後管理の過失手術直後からMRSA感染が疑われる状況にありながら、MRSAに効果のある薬剤を開始するのが4日も遅れたために適切な治療を受ける機会を逸した3.死亡との因果関係担当医の過失によりMRSA感染症による全身性炎症反応症候群からショック状態となり、腎不全を引き起こして死亡した病院側(被告)の主張1.培養検査の結果を待たずに手術を行った点について入院病歴から判断して狭心症重症度3度に該当する労作性狭心症であり、左冠状動脈前下行枝完全閉塞、右冠状動脈75%狭窄、心筋虚血のある状態ではいつ何時致命的な心筋梗塞が発症しても不思議ではなかったので、速やかに手術を行う必要があったまた、一般にすべての心臓手術前に細菌培養検査を実施する必要はないので、本件でも術前に行った喀痰培養の結果が判明するまで手術を待つ必要はなかった。確かに術前の喀痰検査でMRSAが陽性であったが、術前はMRSAの保菌状態にあったに過ぎず、MRSA感染症は発症していない2.術後管理について心臓手術後は通常みられる術後急性期の経過をたどっており、MRSA感染症を発症したことを考えるような臨床所見はなかった。そして、MRSAを含めた感染症の可能性を考えて、各種培養検査を行い、予防的措置として広域スペクトラムを持つ抗菌薬を投与するとともに術前の喀痰培養で検出されたMRSAに感受性を示す抗菌薬も開始した3.死亡との因果関係死亡に至るメカニズムは、元々の素因である脳動脈硬化性病変によりけいれん発作が出現し、循環動態が急激に悪化して急性腎不全となり、心停止に至ったものである。MRSAは喀痰およびスワンガンツカテーテルの先端から検出されたが、血液培養ではMRSAが検出されていないのでMRSA感染症を発症していたとはいえず、死亡とMRSA感染症は関係ない裁判所の判断緊急性のない心臓バイパス手術に際し、上気道炎に罹患していることに気付かず、さらに喀痰培養の検査中であることも見落として検査結果を待つことなく手術を行ったのは主治医の過失である。さらに術後高熱が続いているのに、術前の喀痰培養でMRSA、が検出されたことを知った後もMRSA感染症を疑わず、MRSAに感受性のある抗菌薬を投与したのは症状がきわめて悪化してからであったのは術後管理の明らかな過失である。その結果MRSA感染症からセプシスとなり、急性腎不全を併発して死亡するという最悪の結果を迎えた。原告側合計3億257万円の請求に対し、1億5,320万円の判決考察MRSAがマスコミによって大きく取り上げられ社会問題化してからは、多くの病院で「院内感染症対策マニュアル」が整備され、感染症対策委員会を設けて病院全体としてMRSAをはじめとする院内感染に細心の注意を払うようになったと思います。今回の大学病院でも積極的に院内感染症対策に取り組み、緊急の場合を除いて感染症の所見があれば(たとえ軽症であっても)MRSA感染の有無を確認し、もしMRSA感染が判明すれば侵襲の大きい手術は行わないという原則が確立していました。こうしたMRSAに対する十分な配慮が行われていたにもかかわらず、なぜ今回のような事故が発生したのでしょうか。その答えとして真っ先に思い浮かぶのが、「院内のコミュニケーション不足」であると思います。今回の手術に際して、患者さんと頻繁に接していたのはネーベンである研修医であったと思います。その研修医が患者さんから手術の3日前に「喉が痛くて咳や痰がでる」という症状の申告を受けたため、イソジンガーグル®によるうがいを励行するように指導し、トローチを処方しました。そして、「念のため」ではあると思いますが、痰がでるという症状に対し細菌感染を疑って喀痰培養を指示しました。以上の対応は、研修医としてはマニュアル化された範囲内でほぼ完璧であったと思います。ところが、この研修医はオーベンである主治医に培養検査を行ったことを報告しなかったうえに(実際には報告したのにオーベンが忘れていたのかもしれません)、おそらく培養検査を提出したこと自体を失念したのでしょうか、検査結果がでるのを待たずに予定通り手術が行われてしまいました(通常の培養検査は結果が判明するまでに3~4日はかかりますので、手術の2日前に培養検査を提出したのであれば、培養結果の報告は早くても手術当日か手術直後になることを当然予測しなければなりません)。その背景として、複数の患者を受け持つ一番の下働きである研修医は、日常のオーダーを出すだけでもてんてこ舞いで、寝る時間も惜しんで働いていたであろうことは容易に想像できます。そのためにたかが風邪に対する喀痰培養検査に重きを置かなかったことは、同じ医師としてやむを得ない面はあると理解はできます。一方で、研修医に間違いがないかどうかをチェックするのがオーベンの重要な仕事であるのに、今回のオーベンは術前に喀痰培養検査が行われたことなどつゆ知らず、ましてや手術の翌日に「術前喀痰培養でMRSA陽性」と判明した後も何ら対策をとりませんでした。おそらく、「MRSAが検出されたといっても、院内に常在する細菌なので単なる「保菌状態」であったのだろう、術前には大きな問題はなかったのでまさかMRSA感染症にまで発展するはずはない」と判断したのではないかと思います。つまり本件では、「術前に喀痰培養を行ったので、手術をするにしても培養結果がでてからにしてください」とオーベンにいわなかった研修医と、「研修医が術前に喀痰培養を行った」ことをまったく知らなかった(普段から研修医の出す指示をチェックしていなかった?)オーベンに問題があったと思います(なお裁判では監督責任のあるオーベンだけが咎められて、研修医は問題になっていません)。心臓手術のように到底一人の医師だけではすべてを担当できないような病気の場合には、チームとして治療に当たる必要があります。つまり一人の患者さんに対して複数の医師がかかわることになりますので、医師同士のコミュニケーションをなるべく頻繁にとり、たとえ細かいことであってもできる限り情報は共有しておかなければなりません。そうしないと今回の事例のような死角が生じてしまい、結果として患者さんはもちろんのこと、医師にとってもたいへん不幸な結果を招く可能性があるという、重要な教訓に与えてくれるケースであると思います。感染症

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ICUでのMRSA感染症を防ぐために有効な方法とは?(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(117)より-

MRSAは、医療関連感染(Healthcare Associated Infections)の中で最も重要な微生物といっても過言ではなく、とくにICUでは問題になることが非常に多い。米国ではスクリーニングとして、ICU入室時に鼻腔のMRSAを調べ、接触感染予防策を徹底するよう義務づけている州がある。鼻腔にMRSAを保菌しているキャリアーからの伝播を防ぐ方法として、(1)抗菌薬であるムピロシンの鼻腔内塗布や、(2)消毒薬のクロルヘキシジンをしみ込ませた布での患者清拭を行って、除菌decolonizationできるかどうか検討され、それぞれ有効性が示されてきたが、誰にいつの時点で行えばよいかは不明であった。 そこで米国43病院、74箇所のICUを対象として、以下の3群に割りつけた。●グループ1:入室時に鼻腔のMRSAスクリーニングを行い、陽性者や過去にMRSA感染症の既往があった者は接触感染予防策を行う。●グループ2:グループ1と同様のスクリーニングを行うが、保菌・感染が判明した患者はムピロシンと2%クロルヘキシジンによる除菌と接触感染予防策を行う。●グループ3:スクリーニングは行わないで、入室者全例に除菌と接触感染予防策を行う。 この3群において、MRSA検出率と血流感染発生率を比較した。 全く対策を行わなかった時期と比べると、MRSA検出率はグループ1で8%、グループ2で25%、グループ3で36%減少し、血流感染率はグループ1で1%、グループ2で22%、グループ3で44%減少し、全例除菌の効果が最も著しかった。なお、血流感染では、MRSAによるものとその他の微生物によるものの両方が減少し、減少幅はグループ3で最も大きかった。 ムピロシンにより鼻腔の保菌が少なくなったこと、クロルヘキシジン清拭により皮膚の細菌数が少なくなったこと、さらに入室時から対策を開始できたことがグループ3での効果に結びついたと考えられる。対象を絞った対策よりも、ユニバーサルな除菌が効果的であったというのは、培養でとらえきれない(培養感度以下である)MRSAの存在や、多くの人が接し、患者・スタッフ間で伝播が生じやすいICUの環境を考えると理にかなっているといえよう。 日本ではかつてクロルヘキシジンによるアレルギー例が報告され、それ以来その使用に対して慎重であり、用いられている濃度も低い。今回の検討では、クロルヘキシジンの使用後に7例で局所の掻痒や発疹が出現したが、いずれも中止により改善したという。 本邦で通常行われている、対象を絞った方法では限りがあることも示されたわけであるが、今回の検討では、その後にMRSAの検出率が増加しなかったかも気になるところである。これまで、ユニバーサルなムピロシン使用は1年以内の短期的な抑制効果にとどまっていた例が報告されている。感染予防に対する職員個人の意識が持続できなければ、除菌を行っても早期に破綻してしまう。その意識をどのように維持させていくかが、最も重要かつ工夫しなければならない課題である。

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ICU内の感染症対策、標的患者除菌よりも全患者除菌が有効/NEJM

 ICU内における標的患者除菌または全患者除菌は、いずれも院内感染症の予防において、とくにMRSAに対しては有望な戦略である。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のSusan S. Huang氏らは、プラグマティックなクラスター無作為化試験を行い、いずれの方法がルーチンなICUケアとして有効であるかを検討した。その結果、全患者除菌が、より有効であったことを報告した。NEJM誌オンライン版2013年5月29日号掲載の報告より。3つの予防戦略法についてクラスター無作為化試験で比較 研究グループは、ICU内感染予防戦略策定のために、次の3群を設定し試験を行った。グループ1はMRSAスクリーニングと隔離を実施する群、グループ2は標的患者除菌を実施する群(スクリーニングと隔離、MRSAキャリア患者の除菌の実施など)、グループ3は全患者を一律に除菌する群(スクリーニングをせず全患者の除菌の実施など)で、成人患者を被験者とし、病院ICU単位で無作為化を行った。 比例ハザードモデルを用いて3グループの病院単位での感染症減少の差異を評価した。ルーチンの全患者除菌が、MRSAの臨床発生およびあらゆる血流感染の減少に有効 16地点45病院のうち43病院(ICU 74室)が無作為化を完了した。介入期間中(2010年4月8日~2011年9月30日の18ヵ月間)の被験患者は7万4,256例だった。 ベースライン期間(2009年1月1日~12月31日の12ヵ月間)と比べた介入期間中の、MRSA臨床分離株のモデル化ハザード比は、グループ1(スクリーニング&隔離群)は0.92(介入期間vs. ベースライン期間の粗率:3.2vs.3.4分離株/1,000日)、グループ2(MRSA患者除菌)は0.75(同:3.2vs. 4.3分離株/1,000日)、グループ3(全患者除菌)は0.63(同:2.1vs. 3.4分離株/1,000日)だった(全グループ同等性検定のp=0.01)。 また、同比較による、あらゆる病原体の血流感染のハザード比は、グループ1は0.99(粗率:4.1vs. 4.2件/1,000日)、グループ2は0.78(同:3.7vs. 4.8件/1,000日)、グループ3は0.56(同:3.6 vs.6.1件/1,000日)だった(全グループ同等性検定のp<0.001)。 全患者除菌はあらゆる血流感染の発生率を、標的患者除菌やスクリーニング&隔離よりも有意に大きく減少した。 1例の血流感染予防のために必要な全患者除菌件数は54例だった。 MRSA血流感染の発生率の減少と全血流感染の発生率減少は同程度で有意差はみられなかった。 有害事象は7例でみられたが軽度であり、クロルヘキシジン(商品名:ヒビテンほか)に関連するものであった。 これらの結果を踏まえて著者は、「ICUのルーチンケアにおいて、全患者除菌は、標的患者除菌やスクリーニング&隔離よりも、MRSA臨床分離株発生率の減少やあらゆる血流感染の減少において、より有効であった」と結論した。

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皮膚科外来施設でのMRSA、過去3年間で17.0%増

 Zabielinski M氏らが米国マイアミ大学病院の皮膚科外来施設において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の相対的な検出割合の動向などを調べた結果、MRSAが2008~2010年の3年間で17.0%増加していたことが明らかになった。また、MRSAはシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンほか)への感受性が増していた一方で、MSSAはシプロフロキサシン、クリンダマイシン(同:ダラシン)、ゲンタマイシン(同:ゲンタシン)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤、同:バクタほか)への耐性が増大していたことも報告した。JAMA Dermatology誌2013年4月号(オンライン版2013年1月16日号)の掲載報告。 本調査は、皮膚科外来施設でのMRSA、MSSAの検出割合の変化、および黄色ブドウ球菌分離株の抗菌薬感受性プロファイルを調べることを目的とした。  2005年1月1日~2010年12月31日の各年データ、および2011年1月1日~6月30日までの半年間の各月データから、皮膚培養組織分離株データをそれぞれ後ろ向きに集め分析した。 主な結果は以下のとおり。・2005年1月1日~2011年6月30日の間、成人から小児の患者にわたる合計387例から分離した黄色ブドウ球菌株について分析した。・全体におけるMRSAの相対的割合は35.7%、MSSAは64.3%であった。・試験終了前の6ヵ月間では、MRSAは33.3%、MSSAは66.7%であった。・MRSAの相対的割合は、2008年1月1日~2010年12月31日が、2005年1月1日~2007年12月31日と比べて有意に高かったことが明らかになった(45.3%対28.3%、p=0.001)。・抗菌薬感受性プロファイルについては、MRSAのシプロフロキサシンへの感受性が増加していた一方で、MSSAではシプロフロキサシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、ST合剤への耐性が増していた。

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Dr.清水のおいしい栄養療法

第1回 「栄養療法のスゴイところ!」第2回 「病院はガイコツだらけ!」第3回 「問診と身体診察でできる低栄養の評価」第4回 「アルブミンを使いこなそう!」第5回 「どうする?必要エネルギー量」第6回 「栄養の中身に気を配ろう!」第7回 「栄養の経路の考え方!」第8回 「栄養の経路の実例」第9回 「末梢静脈栄養の考え方(1)」第10回「末梢静脈栄養の考え方(2)」第11回「中心静脈栄養     メニューを決めるステップ」 このDVDは、これから「栄養療法をやってみよう」という方が入門編として気楽に学べる分かりやすい内容になっています。第1回「栄養療法のスゴイところ!」栄養療法は、低栄養の解消だけが目的ではありません。“褥瘡”や“MRSA”が治りやすい体を作ったり、NSTの活動により病院経営を増収させる、といった効果もあります。第1回では薬物療法とは違う、栄養療法の「スゴイところ」を紹介します。第2回「病院はガイコツだらけ!」たった一日の禁食がどれほど患者さんの体に影響するかご存知ですか?実は、太っていても低栄養になっている患者さんがいます。見た目だけでは判断しにくい低栄養。自分の担当患者さんを“隠れガイコツ”にしたくない方は、必見です。第3回「問診と身体診察でできる低栄養の評価」患者さんの栄養状態は、「誰でも、簡単に」評価できます。今日からできる、問診と身体診察での栄養状態の評価を紹介します。第4回「アルブミンを使いこなそう!」アルブミンを使いこなすと、栄養状態だけではなく、他の疾患を診断する力もつきます。「低アルブミンだけど低栄養ではない」という鑑別疾患を見分けるコツと、誤りがちな「アルブミンの落とし穴」を紹介。アルブミンを、徹底的に使いこなしましょう !第5回「どうする?必要エネルギー量」個々の患者さんに合った「一日分の必要エネルギー量」の算出方法を解説。最初は大変ですが、数をこなすうちに慣れてゆくので、まずは自分が担当している患者さんに実践してみましょう !第6回「栄養の中身に気を配ろう!」実は、ブドウ糖だけの点滴では、栄養補給は不十分です。ブドウ糖、つまり糖質だけの栄養だと、人体には何がおこるのか?どんな栄養を、どんな配分で患者さんに供給するのか?栄養の「中身」を組み立てる基本を解説します。第7回「栄養の経路の考え方!」ところで・・・「経口」「経鼻チューブ」「経腸チューブ」「末梢静脈(点滴)」・・・はたして、どの経路を選択することが、目の前の患者さんにとって最善なのでしょうか。患者さんの状態にあった経路選択の考え方と、目指すべき目標について解説。第8回「栄養の経路の実例」臨床現場では、さまざまな患者さんに栄養を投与していかなくてはいけません。「嘔吐や下痢がある患者さん」「脳梗塞で意識はないが胃は正常に活動している患者さん」等、具体的な5つの症例を元に、リスクを避けた的確な投与経路の選択の仕方を学びます。第9回「末梢静脈栄養の考え方(1)」病気が治った時すぐに退院できる“体”を作っておくためには、末梢静脈栄養をどのように組み立てたら良いのか。「考え方(1)」では、4つの構成要素のうち2つ、「糖質」「タンパク質(アミノ酸)」についてを、製剤名や投与量も含めて具体的に解説 !第10回「末梢静脈栄養の考え方(2)」脂肪乳剤を点滴しないと、たった2週間で大変なことに・・ ? 点滴による栄養補給、「考え方(2)」では、「脂質」「ビタミン」について。末梢静脈栄養を効果的に使って、患者さんを必須脂肪酸欠乏や乳酸アシドーシスから守るコツ、教えます ! 番組の最後に、清水先生はこの製剤をこの量で投与していますよ、という“メニュー例”があります。要チェック !第11回「中心静脈栄養 メニューを決めるステップ」どんな時に、中心静脈栄養に踏み切るの ? どのようにメニューを決めていくの ? さあ、考え方はもう勉強済みです。これまで学んできたことをもとに、中心静脈のメニューをつくってゆきましょう !

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もしも先生自身に”万が一”のことがあったら…延命治療、どうしますか?

突然やってくる死、徐々に視界に入ってくる死、目の前をかすめて通り過ぎた死…と、医師の日常診療には様々な形の「死」があります。患者のもとに訪れる死に"一時停止"を出せるのが医師という立場。意識のない患者さん、取り巻く家族の嘆きを目にしながら、どうするのが正しいのか悶々とする先生方も多いのではないでしょうか。ではもし先生ご自身がその立場になったら?今回の「医師1,000人に聞きました!」では、"医師ならでは"の死生観があるのか、それを外部に表明しているのかを伺ってみました。コメントはこちら結果概要医師の7割が「自分の延命治療は控えてほしい」と回答"自分自身の延命治療"について70.8%の医師が「控えてほしい」と回答。『自分で思考できて初めて、"生きている"と考えている』『だんだん状態が悪くなる姿をさらしたくない』といった、自らの生き方に関する考えのほか、『家族の精神的・経済的負担が大きすぎるのを普段から見ているため』『(回復が見込めないなら)お金と医療資源は必要な人のために使わなければいけない』など、現場に立つ医師ならではの声が上がった。そのほか『救命救急センターで働いていた時は"延命治療をやめる基準"があったが、一般の病院でも広めるべき』といった意見も寄せられた。「家族の判断に任せたい」とする医師、『家族が納得することが重要』22.3%の医師が「家族の判断に任せたい」と回答。『死を家族が受け容れられるかどうかにかかっているから』『死は自分の問題ではなく、生者にとっての問題だから』といった意見のほか、『負担がかかるのは家族なので判断を任せたい』とする声も上がった。そのほか『家族の意思を尊重しないと、担当医が後で何を言われるか分からないので』など、日常診療で遭遇するケースから感じている意見も寄せられた。約半数の医師が、自分の延命治療に関する希望を外部に表明している延命治療に対する自分の考えについて、「希望はあるが表明していない」と回答したのは全体の43.4%。一方「書面に残している」医師は全体の6.4%、「家族に口頭で伝えている」医師は40.0%と、約半数が何らかの形で外部に表明しているという結果となった。年代別で見ても顕著な差はなく、30代以下の若手医師でも6.4%が書面にしていると回答。設問詳細延命治療についてお尋ねします。2007年、日本救急医学会の 「救急医療における終末期医療のあり方に関する特別委員会」にて救急医療の現場で延命治療を中止する手順についてのガイドライン案がまとめられています。一方「自分らしい最期を迎えたい」として、リビング・ウィルやエンディングノートといわれる文書に延命治療に関する希望を事前に書いておく取り組みも広がりつつあります。11月11日の朝日新聞によると『全国の救命救急センターの6割以上が、過去1年間に高齢者に対して人工呼吸器や人工心肺などの装着を中止したり、差し控えたりした経験のあることが、朝日新聞社の調査でわかった。救命医療で「最後の砦(とりで)」とされる救命センターでも、回復が見込めない患者に対し、家族や本人の希望があれば、延命治療を控える動きが広がっていた。最も重症の患者を診る3次救急を担う全国254の救命救急センターに10月、高齢者への終末期医療の実態を聞いた。57%の145施設から回答があった。この1年に救急搬送された65歳以上の高齢者に、人工呼吸器や人工心肺、人工透析などの積極的な治療を中止したり差し控えたりした経験の有無と件数を尋ねた。この結果、63%にあたる91施設が「ある」と回答した。呼吸器の中止・差し控えは計302件あり、このうち、患者の年齢や病気名など具体的データを挙げた中止例は14件あった。人工心肺の差し控え・中止は37件あった』とのこと。そこでお伺いします。Q1. 万が一先生ご自身が事故・病気などで判断力・意思疎通能力を喪失し、回復が見込めないとされた場合、延命治療についていかがお考えですか。延命治療は控えてほしい家族の判断に任せたい医師の判断に任せたい積極的治療をしてほしいわからないその他(          )Q2. Q1のお考えについて、当てはまるものをお選び下さい。書面に残している家族に口頭で伝えている希望はあるが表明していない考えたことがないQ3. コメントをお願いします(Q1・2のように考える理由やきっかけ、考えを表明している方はその理由、医師として日常診療で遭遇した具体的な場面など、どういったことでも結構です)2012年11月15日(木)~16日(金)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「延命処置をして、後日家族から「こんなに苦しいのならやめておけばよかった」と言われたことがある」(50代,内科,一般診療所勤務)「本人には苦痛を理解する能力もなくなっていると思われる。であれば、家族の満足が重要。」(40代,循環器科,病院勤務)「判断力・意思疎通能力を喪失したらあとは家族に任せます。家族がどんな形でも生きていてほしいと望めば生かしてくれればいいし、延命を望まないならそれもいい。」(50代,外科,病院勤務)「身寄りの無い方がそういった状況に陥った場合、非常に困ることがよくある」(30代以下,内科,一般診療所勤務)「延命を家族の希望でのみ行うことがあるが、本人の希望は本当はどうであったか悩むことも多い。自分にはして欲しくない。」(60代以上,内科,病院勤務)「日常診療中、回復の見込めない患者の家族に延命治療について説明を行いながら、自分自身も毎回毎回受身になって考えている」(40代,腎臓内科,病院勤務)「医療費が大幅に上昇している現在、医師として自身の治療においては延命治療は遠慮したい。」(50代,外科,病院勤務)「心臓動いている=生きている とは思わない。 そう思う、思いたい家族の気持ちはわからないでもないが、心臓を動かすためだけに、安らかな最期を迎えられないケースを数多く診てきたので。」(30代以下,総合診療科,病院勤務)「延命した結果、家族関係が悪くなることをよく見る」(40代,総合診療科,病院勤務)「個人的には拒否したいのですが家族と相談していないので」(30代以下,消化器科,病院勤務)「お金と医療資源は必要な人のために使わないといけないと常に周囲に言っているので。この考え方がないと医療費の増大につながる。これは信念なので自ら実践したい」(50代,脳神経外科,病院勤務)「生まれてくる時は意思を発現出来ないのだから、 死ぬ時はせめて意思を尊重されたい」(50代,内科,一般診療所勤務)「回復不能な患者に,家族の希望で延命を行ったが,長期化し,家族が疲弊した上に,さんざん文句を言われた.」(40代,呼吸器科,病院勤務)「高齢患者を中心に多くの患者を看取った経験から、意思疎通不能でただ胃ろうやIVHで生かされているだけの寝たきり患者には自分自身はなりたくないし、そのような状況で家族に迷惑もかけたくない。」(40代,内科,病院勤務)「意味がなくても、残される家族が納得するまで頑張るのも、見送られる側の務めだと思います。 人と人とのつながり(まして家族間の絆など)は、意味があるないだけでは計り知れないはず。」(30代以下,呼吸器科,病院勤務)「医療経済面で悪影響。 ベジになった際の家族の負担。」(30代以下,血液内科,病院勤務)「控えてほしい。センチメンタルになっても仕方ない。医師なら冷静に考えたら、結果はこうなる。」(50代,消化器科,一般診療所勤務)「延命の期間は人生にとって何の意味もなく、意義があるとしたら家族が受け入れるための時間が必要なことがある場合だけでしょう。最初からそのような時の受け入れを家族が出来るのなら不必要でしょう。」(40代,内科,病院勤務)「延命治療を希望して、途中で中止する事は難しいから。」(50代,内科,病院勤務)「高齢者と若年者では異なるが、高齢者の場合は積極的治療は控えたい。」(40代,形成外科,病院勤務)「未来のことは正確には予測できません。文書を残すことはマイナスになることもあるので、家族にまかせます。」(50代,内科,一般診療所勤務)「点滴や呼吸器でつながれても短時間に抜去できれば社会復帰も可能であるが、時間の経過とともに「これは無理だな」という病態は救命医を経験したものなら判る。無理と思いながら患者さんのため、家族のためと言い聞かせながら延命を図ることが度々あった。もし自分がその様な状態になった場合延命処置は望まない。」(60代以上,循環器科,一般診療所勤務)「自分自身が何も分からなくなった場合、死を家族が受け容れられるかどうかにかかっていることから、家族の意向に任せたい。多分しばらく苦しんでから、納得したところで延命はしないと選択するとは思う。患者さんをみても、その死を家族が受け容れられるかどうかで処置が変わる。いずれ受け容れることにはなるが、本人意思だからと延命を全く行わないと、家族は受け容れる間もなく死と直面してしまう。本人が苦しむことはわかるが、残されることになる家族の考えは大事だと思う。」(40代,神経内科,病院勤務)「日々,そのような患者を面前にしているが,患者本人も浮かばれないし,家族も辛く,連れて帰ることもできず,病院のベッドも無駄に埋まっているのを黙って見ている。私自身はそういう患者に呼吸器などはつけずに看取っているが,病院全体では全く看取れず,寝たきり呼吸器+胃ろうが増えていっている。こういう状況はおかしいと思うので。」(50代,小児科,病院勤務)「眠るように死にたい。いつも疲れているので最後くらいは眠らせてほしい。」(40代,外科,病院勤務)「積極的な治療がかえって家族の負担になることを経験しているため」(40代,内科,一般診療所勤務)「書面に残している。判断できるときにしておく、 無駄なことはしない。いつかは死ぬのだから」(50代,内科,一般診療所勤務)「自分のことだけを考えれば延命治療は希望しないが 家族にとって自分が生きていること(心臓が動いていること)に意味があるなら延命してもらってもかまわない」(40代,内科,一般診療所勤務)「患者や家族の意思を尊重しないと、後で何を言われるか分からない。特に殆ど面会にすら来てない親族が後から文句を言って来る場合が多いので要注意である。」(40代,内科,一般診療所勤務)「その人の意思を無視して、ただ生きてて欲しいと願うのは家族のエゴだと思う。」(40代,泌尿器科,一般診療所勤務)「以前救命救急で働いていましたが、高齢者の場合、御家族に聞くとほぼ「もうこのまま楽に・・・」という答えが多く、 若くして突然となると、「やはり出来る限りのことは・・・」という答えが多い気がします。 私自身は、回復がみこめないのであれば、家族に負担をかけずにという思いが強いです。」(30代以下,消化器科,病院勤務)「死は自分にとっての問題ではなく、生者にとっての問題だから、他人の意思にゆだねるしかない。」(40代,産婦人科,病院勤務)「植物状態でいることは、初めのうちは少しでも長く生きてほしいという希望がかなえられるが、長期化することで家族も疲弊してくることがほとんどなので、延命治療は希望しない。」(30代以下,代謝・内分泌科,病院勤務)「命そのものの重大さについては言うまでもないが、その一方、いわゆる「生ける屍」として生き長らえることに「人間」としての尊厳があるのかどうか、疑問に思う」(50代,その他,その他)「本人が意思を失っていれば、家族が代役を務めるしかない。負担がかかるのは家族なので家族の判断を尊重したい。」(30代以下,整形外科,病院勤務)「長期療養型病院に15年勤務していますが、入院患者さんの平均年齢がこの15年で80代から90代に。認知症、経管栄養で寝たきり、意志の疎通が図れなくなった多くの患者さんの最期に立ち会う際、お元気に通院されていた姿を思い出し、自分は長生きしたくない、と切に感じる今日この頃です」(40代,循環器科,病院勤務)「自身が高齢となり長患いをしていた場合は延命治療を控えていただきたいが、突然の事故などの場合は家族に判断してもらいたい。」(40代,循環器科,病院勤務)「研修病院で延命治療をした経験から、延命をして喜ぶ結果になった人は(患者の)年金などを目当てにした人以外見たことがないから。医師、本人、家族とも負担になるだけだったから。」(30代以下,総合診療科,病院勤務)「呼吸器を外すと警察やマスコミにたたかれる可能性があるので、積極的に行うことを避けなければ仕事を続けることができないと思う。」(40代,内科,病院勤務)「積極的治療をしてほしい。どんな姿でも命は大切。」(50代,内科,病院勤務)「寝たきり10年以上、MRSAなどの感染も加わり、体も固まって、胃ろうになってボロボロになって、死んでいく高齢者が多いです。人間らしい生活が送れないなんてみじめ!です。そのころには周囲の親戚に『まだ死んでいなかったの?』なんて言われてしまうかも?実際、90歳の自分の祖母が一番年上の孫に言われていましたが・・・『税金泥棒』とも・・・葬式もなくなってしまいました。」(30代以下,代謝・内分泌科,病院勤務)「(書面に残しているが)今でも悩んでいます。今後方針が変わるかもしれません。」(40代,耳鼻咽喉科,病院勤務)「回復の見込みがなく、延命のみを目的とする自分の生には(自分としては)意義を感じられない」(40代,精神・神経科,その他)「実際その状態の患者を診ていて、延命治療のある意味残酷さが見えてきたから。」(40代,外科,病院勤務)「親と同居のため、 親の分の意思確認時に、自分のことについても同時に伝えた」(40代,産業医,その他)「自分の父がそうであったように、惨めな姿を見せたくない、家族に負担をかけたくない、そして残された者がそういう思いにいたったので。」(40代,泌尿器科,一般診療所勤務)「回復の見込みがなくても移植臓器を提供できれば良い。その為には延命は不都合」(40代,内科,病院勤務)「家族の希望で延命処置をすることがあるが、患者本人にとっては何もメリットはなく、家族が死を受け入れるまでの時間稼ぎでしかない。いつまでも生きていてほしいという心情は十分理解できるが、死を受け入れることは患者のためでもあることを理解してほしい」(50代,外科,病院勤務)「本当に、家族も延命治療を望んでいるのか疑わしいのにも関わらず、延命治療が行われている場面が多々ある。」(40代,産婦人科,病院勤務)「救命救急センターで働いていた時は延命をやめる基準というのがあったが、そういった基準を一般の病院でも広めるべきである。」(40代,整形外科,病院勤務)「胃ろう患者を毎日見ており、 家族を含め 無理な延命治療を避けるよう書面にしました」(50代,内科,病院勤務)「経済的な理由で苦しんでいる家族もある。杓子定規に判断基準があっても困る」(40代,内科,一般診療所勤務)「意識のない状態で点滴や呼吸器で治療されている方をたくさん見てきて、自分ではそういう治療は希望しないと判断した」(40代,内科,一般診療所勤務)「日常の診療でいつも以下の内容を患者家族に説明している。『いつまでも病院へは入院出来ない。いずれは自宅で家族が看なければならない。意思疎通も出来ない、寝たきりの患者の介護は非常に大変で、介護サービスを利用しても夫や妻だけでは必ずと言いよい程破綻する。子供も協力して、自分たちで介護出来る覚悟が無ければ安易に延命措置を望まないで欲しい。そうでなければ患者にも家族にとっても不幸である。 また、現在医療費は毎年増加し、膨大な額になっている。 そのため社会全体の考え方も、出来るだけ医療費を効率的に使う方向であり、将来性の見込めない方への多大な配分は望まれていない。 このような考えを踏まえて総合的に判断してほしい』」(40代,神経内科,病院勤務)「『回復の見込みのない患者』に対する積極的な治療は、本人だけでなく家族、親戚も不幸にしてしまうような気がする。自分自身は、回復の見込みがないのなら、そのまま看取ってもらいたい。(家族が延命を希望したとしても・・・)」(40代,小児科,病院勤務)「無駄な延命治療(ほとんどは家族が希望)のために、本人の意思に沿わないと思われる悲惨な症例をたくさん見てきたため。 自分の配偶者は医療従事者ではないので、どこまで理解しているか甚だ疑問です。 書面に残す必要性も感じていますが、具体的にはその時その時の状況で判断すべきことが多いため、なかなか難しいと感じています。」(50代,内科,一般診療所勤務)「医学的には延命治療は行うべきではないと考えるが、実臨床では関わっている家族などの人たちの考えを無視できない。」(50代,外科,病院勤務)「自分自身は長生きしようと思わないが、死とは周りの人が受け入れる過程も大切なので、結局家族の意向にそった治療にならざるを得ないのではないだろうか。」(40代,小児科,病院勤務)「延命だけで長く生きておられる人をたくさん見ているが、意味のない延命は自分のためにも、社会のためにも無駄な時間に感じる」(50代,代謝・内分泌科,病院勤務)「胃ろう、気管切開して延命を図っている人を見かけるが、その患者さん本人のためになっているのか疑問。自分が、そうなった場合は、少なくともこれらの処置はお断りします。」(40代,外科,病院勤務)「やはり自己で思考できて初めて意義ある人生と思うので。また、自分に意識や思考能力がない回復の見込みのない状態で、家族に負担のみかけさせるのには耐えられないから。」(50代,外科,病院勤務)「その状態では意識もなく自分自身の人生としてはすでに終わっている。もし、年金等の条件や心の準備のために家族が延命させて欲しいと望めばそれでもよいので任せたい」(40代,内科,病院勤務)「無駄な延命は人間の尊厳を害し、無駄な介護を発生させ、無駄な医療費をかけ、若い世代に負担をかけるのみ、だと思います。日常的に現場を見ていて、少しでも回復の見込みがあれば全力を尽くす価値を感じますが、回復の見込みがないのに挿管、人工呼吸器などつないで意識のない患者をひたすら輸液で栄養して…という場面を見るたびに、やるせない気持ちになります。徒労感も倍に感じます」(30代以下,代謝・内分泌科,病院勤務)「かつての延命と言われる処置を行っていたとき、患者の家族から「いつまでこんな状態が続くのか」と恨み節のように言われたことがあった。自分でも本当に必要な処置なのかと考えるきっかけになった」(40代,内科,一般診療所勤務)「積極的治療をしてほしい。回復が見込めないという判断が早計なことがあるので、とりあえず、全力を尽くすのが医師としての義務である。」(60代以上,産婦人科,病院勤務)「回復の見込みがないのであれば肌の色艶のいい時に死んでしまいたい」(40代,脳神経外科,病院勤務)「今や高齢者が、「胃ろう」「気切」「ポート」を持つのが、施設に入る条件になっていたりするのを見ると、そこまでして生かされるよりも、寿命と思って死んでいきたいと思う」(30代以下,神経内科,病院勤務)「患者本人としても、無駄に回復の見込みがないのに苦しみたくないと思うが、書面に残すような形で意思表示することまでは考えていなかった。」(40代,精神・神経科,病院勤務)「自分としては延命治療は望まない。しかし家族がどんな形でも生きていることを望む(もしくは何らかの精神的支えになりうる)場合は家族の判断にまかせたい。」(40代,腎臓内科,病院勤務)「私と家内は、生命末期には無駄な延命措置(治療ではない)をしないように書面に残し、家族にも伝えてあります。延命措置をするかしないかはあくまで本人の意思で、リビング・ウイル をきちんとしておくべきでしょう。延命措置を望む人はそれで結構でしょう。」(60代以上,整形外科,一般診療所勤務)「自分の祖母が認知症のある状態で昏睡状態になり、経鼻胃管からの栄養剤注入と酸素投与で生命を保ったまま、心臓の限界に達するまで生命を維持していたが、果たしてそれが本当に良かったのか7年経った今でもわからないので、自分は同じようにはしたくないから。」(30代以下,小児科,病院勤務)「面会などもなく、ただただ心肺が活動しているだけというのをたくさんみてきたから」(40代,消化器科,病院勤務)「通常自分でも経管などしますが、最後は結構悲惨です。高齢化進む中でこれらはもう一度考えてみる必要があります。両手を挙げて賛成ではありませんが、個人の意志を尊重した最期も必要かもしれません」(50代,内科,病院勤務)「伯母がくも膜下出血で植物状態になり、二年間見舞い、看病していた母の精神的負担をみていたから。」(50代,精神・神経科,病院勤務)「延命治療でだんだん状態が悪くなる姿を家族にさらしたくない。できるだけ自然な状態で亡くなりたい。」(50代,小児科,病院勤務)「一度延命治療を始めてしまうと、それを中止するのが家族も医師も難しい判断をせまられるから」(50代,小児科,一般診療所勤務)「『悲しいけど仕方ない』と惜しまれながら最期を迎えられたら幸せかと思っています。『やっと終わった』と思われての最期は避けたいです」(30代以下,内科,病院勤務)「延命治療を行い,した甲斐があったという症例が非常に少ない印象」(30代以下,外科,病院勤務)「父の死の直前、同じような状況になった。無理な延命は、かえって父を苦しめているような気がした」(50代,眼科,一般診療所勤務)「カルテに書く事はあるが、専用の用紙はない状態です。 トラブルなどが多い為、残した方が良いです」(30代以下,内科,一般診療所勤務)「そういう状況になったとき、自分の体はもう自分のものではなく、家族など残される人のものかと思いますので、家族に決めてもらえば十分です。 葬式なんかも故人のものではなく、生きている人のためのものだと考えていますし」(50代,泌尿器科,一般診療所勤務)「現状では、家族からの希望により途中で延命治療を中止すると、あとでややこしいことになる可能性があるから」(30代以下,消化器科,病院勤務)「10年前は、新生児集中治療室NICUに勤務で、超未熟児を必死で治療し、後遺症なき生存をめざして心血を注ぐ日々でした。 一生懸命救命しえた幼い命ですが、脳出血や脳性麻痺など後遺症も多く、一生人工呼吸器が必要だったり、よくても車椅子、寝たきりの状態の子も少なくありません。苦労や愚痴も口にせず、我が子のために一生介護する親御さんたちを数多くみてきましたが、やはり家族の負担はあまりに大きかったのを間近でみていたので、自分の時には延命を望まない思いが強いです」(30代以下,小児科,一般診療所勤務)「自身では控えてほしいと考えているが、家族とは相談していないので、急にこのような状態になったら現状では家族の判断通りになると思う。」(30代以下,外科,病院勤務)「やはり主治医がベストと思われる方法を選択してもらえればよいと考えます」(50代,消化器科,一般診療所勤務)「三次救急の現場を数年経験し、本人の意思と家族の意思の違いに悩むことが多かった」(30代以下,消化器科,病院勤務)

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MRSA感染症、市中型も院内型も2005年以降は減少傾向

米国におけるMRSA感染症は、2005年以降は市中型・院内型ともに減少傾向にあることが報告された。MRSA起因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年以降は減少しているという。米国・San AntonioMilitary Medical CenterのMichael L. Landrum氏らが、米国国防総省の医療保険受給者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2102年7月4日号で発表した。これまでに、院内型MRSA感染症の発症率の減少傾向は報告されているものの、市中型MRSA感染症の動向については報告がなかった。延べ追跡期間5,600万人・年のうち、MRSA感染症は約2,600人、創部膿瘍感染は8万人超研究グループは、2005~2010年に、米国国防総省の医療保険「TRICARE」受給者について観察研究を行った。主要アウトカムは、10万人・年当たりのMRSAを起因とする感染症罹患率と、2005~2010年の年間罹患率の傾向とした。延べ追跡期間は5,600万人・年で、その間にMRSA感染症は2,643人、MRSAによる創部膿瘍感染は8万281人に、それぞれ発症した。MRSA感染症の年罹患率は3.6~6.0/10万人・年、MRSA皮膚軟部組織感染症は122.7~168.9/10万人・年だった。2010年のMRSA感染症年間罹患率、市中型1.2/10万人・年、院内型0.4/10万人・年追跡期間中の年間罹患率の変化についてみると、市中型MRSA感染症の発症率は、2005年の1.7/10万人・年から、2010年の1.2/10万人・年へと減少した(傾向p=0.005)。院内型MRSA感染症も、同期間に0.7/10万人・年から0.4/10万人・年へと減少した(傾向p=0.005)。また、MRSAが原因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年には創部膿瘍の62%を占めたのをピークに、2010年にはその割合は52%へと低下した(傾向p<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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国家的「手洗いキャンペーン」が医療従事者関連感染症を低減:英国

イングランドとウェールズでは2004年に、全国のNHS傘下病院の医療従事者に対し、「手洗いキャンペーン(Cleanyourhands campaign)」が開始された。背景には、MRSAやMRSSなどの感染症蔓延の報告に対する懸念、一方の医療従事者の手洗いコンプライアンスが低率という報告があったこと、それらの前提として医療従事者の手指を媒介として患者から患者への感染拡大の可能性があったことなどによるという。キャンペーンは、2008年までに3回にわたって発動され、その効果について、英国・University College London Medical SchoolのSheldon Paul Stone氏らが前向き調査にて評価をした。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月3日号)掲載報告より。病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率と感染症発生との関連について調査「手洗いキャンペーン」は、ベッドサイドへのアルコール手指消毒薬の供給、医療従事者に手洗いを想起させるポスターの配布、コンプライアンスについての定期的検査とフィードバック、医療従事者に手洗いを想起させるための患者への資料提供から成った。アルコール手指消毒薬および液状石鹸はNHS物品供給会社を通して購入することとされ品質は保証されたものだった。キャンペーンは保健省が資金を提供し、国家患者安全丁(NPSA)の調整の下で展開された。キャンペーンの全国展開開始は2004年12月1日で翌2005年6月まで全国の急性期NHS病院に対し介入が続けられた。その後、2006年6月末、2007年10月に一新やポスターの再作成などが図られた。Stone氏らは、病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率、特定の医療従事者関連感染の報告におけるキャンペーンの影響について評価し、2004年7月1日~2008年6月30日の間の感染症発生と調達率との関連について、前向き生態学的断続時系列の手法を用いて調査した。調達率3倍に、MRSAとC. difficileは減少に転じたがMSSAには影響認められず四半期ごとに調べられた病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率は、1患者・床・日当たり21.8mLから59.8mLへと約3倍に増えていた。調達率は各キャンペーン発動と関連して上昇していた。感染報告症例は1万床・日当たり、MRSA菌血症は1.88から0.91に減少、C. difficile感染症も16.75から9.49に減少した。しかしMSSA菌血症は減少に転じなかった(2.67からピーク時3.23に、試験終了時は3.0)。石鹸の調達は、C. difficile感染症低減と独立した関連が試験期間を通して一貫して認められた(1mL/患者・床・日増大に対する補正後発生率:0.993、95%信頼区間:0.990~0.996、P<0.0001)。アルコール手指消毒薬の調達は、MRSA菌血症低減と独立した関連が認められたが、それは試験最後の4四半期においてのみだった(同:0.990、0.985~0.995、P<0.0001)。2006年発動のキャンペーンが最も強くMRSA菌血症低減(同:0.86、0.75~0.98、P=0.02)、C. difficile感染症低減(同:0.75、0.67~0.84、P<0.0001)と関連していた。定期検査のための保健省改善チームのトラスト訪問も、MRSA菌血症低減(同:0.91、0.83~0.99、P=0.03)、C. difficile感染症低減(同:0.80、0.71~0.90、P=0.01)と強く関連し、訪問後少なくとも2四半期はその影響が認められた。結果を踏まえてStone氏は、「手洗いキャンペーンは、病院の手指消毒薬等の調達継続と関連しており、医療従事者関連の感染症低減に重要な役割を果たすことが示された。医療従事者関連の感染症低減には、人目を引く政治組織的な推進力の下で行う国家的介入の感染症コントロールが有効である」と結論している。

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ICUにおける耐性菌伝播を減らすには?

 MRSAとバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、医療施設における感染症の主要な要因であり、これら細菌に起因する感染症は通常、患者の粘膜や皮膚などへの保菌(colonization)後に発症がみられ、保菌は医療従事者の手指や汚染媒介物などを介した患者から患者への間接的な伝播や、保菌医療従事者からのダイレクトな伝播によって発生することが知られる。米国・メイヨークリニックのW. Charles Huskins氏らICUにおける耐性菌伝播を減らす戦略研究グループは、MRSA、VREの伝播リスクが最も大きいICUにおいては、積極的監視培養やバリア・プリコーション(ガウン、手袋着用による)の徹底により、ICUにおけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を低下すると仮定し、それら介入効果を検討する無作為化試験を実施した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。MRSA、VREの保菌および感染発生率を介入群と対照群で比較 研究グループは、MRSAやVREの保菌に対する監視培養とバリア・プリコーション徹底(介入)の効果について、ICU成人患者におけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を通常実践(対照)との比較で検討することで評価するクラスター無作為化試験を行った。 介入群に割り付けられたのは10ヵ所のICUで、対照群には8ヵ所のICUが割り付けられた。 監視培養(MRSAは鼻腔内検査、VREは便・肛囲スワブ)は、被験者全員に行った。ただしその結果報告は、介入ICU群にのみ行われた。 また介入ICU群で、MRSAやVREの保菌または感染が認められた患者は、コンタクト・プリコーション(接触感染に注意する)・ケア群に割り付け、その他すべての患者は、退院もしくは入院時に獲得した監視培養の結果が陰性と報告されるまで、ユニバーサル・グロービング(手袋着用の徹底)群に割り付けた。 介入による伝播減少の効果は認められず、医療従事者のプリコーション実行が低い 介入は6ヵ月間行われた。その間に、介入ICU群には5,434例が、対照ICU群には3,705例が入院した。 ICU入室患者にMRSA、VREの保菌または感染を認めバリア・プリコーションに割り付けた頻度は、対照ICU群(中央値38%)よりも介入ICU群(中央値92%)のほうが高かった(P<0.001)。しかし、介入ICU群の保菌または感染患者が、コンタクト・プリコーションに割り付けられた頻度は51%、ユニバーサル・グロービングに割り付けられた頻度は43%だった。 また介入ICU群における医療従事者の、滅菌手袋・ガウンテクニック・手指衛生の実行頻度は、要求レベルよりも低いものだった。コンタクト・プリコーション群に割り付けられた患者への滅菌手袋の実行頻度は中央値82%、ガウンテクニックは同77%、手指衛生は同69%で、またユニバーサル・グロービング群患者への滅菌手袋実行は同72%、手指衛生は同62%だった。 介入ICU群と対照ICU群で、MRSAまたはVREの保菌または感染イベント発生リスクに有意差は認められなかった。基線補正後の、MRSAまたはVREの保菌・感染イベントの平均(±SE)発生率は、1,000患者・日当たり、介入ICU群40.4±3.3、対照ICU群35.6±3.7だった(P=0.35)。 Huskins氏は、「介入による伝播減少の効果は認められなかった。そもそも医療従事者によるバリア・プリコーションの実行が要求されたものよりも低かった」と結論。医療施設における伝播減少を確実のものとするには、隔離プリコーションの徹底が重要であり、身体部位の保菌密度を減らしたり環境汚染を減らす追加介入が必要かもしれないとまとめている。

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急性期病院におけるMRSA伝播・感染の減少に「MRSA bundle」プログラムが寄与

米国・ピッツバーグ退役軍人病院は2001年より、同地方当局およびCDCとともに、米国の退役軍人病院およびその他で懸念が高まっていたMRSA施設感染を排除するため「MRSA bundle」プログラムに取り組み始めた。パイロット試験としての本取り組みは、4年間で外科病棟のMRSA感染を60%に、ICUは同75%に減少させた。その成功を踏まえ、2007年10月より全米の急性期退役軍人病院にプログラムは順次導入された。本論は、導入が完遂した2010年6月までの間の導入効果をまとめたもので、ピッツバーグ退役軍人病院MRSAプログラム事務局のRajiv Jain氏らが報告した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。「MRSA bundle」プログラムの導入効果を評価「MRSA bundle」は、鼻腔内検査によるユニバーサル・サーベイランス、MRSA保菌・感染患者に対するコンタクト・プリコーション、手指衛生、対応する全患者に対し感染管理を責務とする組織的文化の醸成から構成され、毎月、各施設の担当者により、中央データベースに、サーベイランス実行の厳守状況、MRSA保菌・感染の有病率、施設内伝播・感染率のデータが集積されていった。研究グループは、そのデータを基に、「MRSA bundle」プログラムのMRSA施設関連感染に関する導入効果を評価した。ICUにおける感染は62%減少、非ICUでは45%減少2007年10月~2010年6月に報告された入院・転院・退院は193万4,598件(ICU:36万5,139件、非ICU:156万9,459件)、患者総数は831万8,675人・日(ICU:131万2,840人・日、非ICU:700万5,835人・日)だった。期間中、入院時にスクリーニングが実施された患者の割合は82%から96%に上昇した。転院・退院時の実施は72%から93%へと上昇した。入院時MRSAの保菌・感染の平均(±SD)有病率は13.6±3.7%だった。ICUにおけるMRSA施設関連感染は、2007年10月より以前の2年間に変化はみられなかったが(傾向P=0.50)、プログラムの実施後は減少し、1,000人・日当たりの感染率は1.64(2007年10月)から同0.62(2010年6月)、62%減少した(傾向P<0.001)。非ICUにおいては、同0.47から0.26、45%の減少であった(傾向P<0.001)。Jain氏は、「退役軍人省が先導し全米の関連急性期病院に導入した『MRSA bundle』プログラムは医療施設関連のMRSA伝播や感染の減少に関連していた」と結論。本研究では費用対効果の評価は行われなかったが、他の研究者により積極的監視の費用対効果の有効性は示されていることに触れ、プログラムの長期にわたる実行、さらに外来導入の必要性についても言及している。(武藤まき:医療ライター)

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顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

1979年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、鹿島台町国民健康保険病院内科科長を経て2004年4月より慈泉会相澤病院 統括医長を勤め、現職に至る。床ずれ治療「ラップ療法」の創案者。ラップで床ずれを治す!それが「ラップ療法」だ床ずれを治癒できるのがこのラップ療法です。しかも簡単な方法で治そうというのがラップ療法の考え方です。まず、ラップを用意していただきます。床ずれを水で洗い、ラップを当ててテープで貼るだけでいいのです。簡単でしょう?今まで外用薬を試す、体位変換をする、栄養管理をするなどの対応で治らなかった床ずれがラップを貼るだけで治ったということで、驚かれています。それも約3ヵ月で治癒するというデータが出ています。ラップ療法を創案する以前は、床ずれは治癒することなく悪化して死亡退院する患者さんを見ることが、ほとんどでした。しかし、この方法で患者はある程度快方に向かうことができます。ポイントは消毒と、ガーゼを貼布しないことです。特にガーゼを当てることで傷口とガーゼが固まってしまい、交換する際にまた傷口を作ってしまうという悪循環をなくすことです。このラップ療法は3ヵ月で治癒するということから患者さんのためにもなり、また看護する側も今まで以上の負担が少ないというのが一番の特徴です。そして、痛みもなく簡単にできるラップ療法は、患者、家族、看護師にも好評であることを実感しました。ラップ療法の効果を広く知ってもらうために、論文・雑誌で発表したり、全国に向けて講演で紹介するようになりました。在宅でも床ずれが治療できるラップ療法は「ラップを貼るだけの治療」という受け止め方をされがちですが、床ずれ治療の新しい考え方を提案しているのです。ラップ療法以前の床ずれ治療は、消毒してガーゼを貼り、またガーゼを貼り直すという処置の繰り返しでした。ラップ療法で入院患者の床ずれが治れば、次は在宅で治療されている患者さんの番です。訪問治療先で1年以上治らない床ずれの患者さんにラップ療法を試してもらうため、ご家族にお願いしました。まず、ラップと洗剤の空き容器を用意してもらいました。次にお湯で洗ってラップをテープで貼るということを毎日やってもらいました。だんだんと治ってくると、ご家族も喜んで続けてくださいます。これも3ヵ月で治りました。その評判に最も敏感だったのが訪問診療をしている開業医の先生方でして、ラップ療法の指導で往診を頼まれたり、勉強会を開催したりするようになりました。ラップ療法はこうして生まれた一見簡単そうなラップ療法ですが、学会に認められるまでは長い道のりでした。それまでは、軟膏を塗ってガーゼを当てるというのが治療の定番でした。ヨード系の外用薬が使えるようになって、床ずれのMRSAや緑膿菌感染は治療できるようになりましたが、床ずれが治るという手ごたえを実感できませんでした。1996年、看護師が床ずれの研修会に出席して、創傷被覆材のサンプルをもらってきました。看護師たちが試してみたいというので許可しました。パンフレットを読んでみると、「湿潤療法」という言葉が書いてあり、使ってみると少しずつ治ってくるんですね。治るまで使いたかったのですが、直径15センチもある床ずれが3ヵ所あって、1日の治療費が5000円、1ヵ月では15万円になる計算で、保険請求したら審査に引っかかるかもしれないし、そもそも3週間分しか請求できないというんですね。残念ながら当時は、病院経営の点から床ずれの治療は以前の軟膏とガーゼ治療に逆戻りしました。それから、創傷被覆材の代用品を探した末、たどり着いたのが食用品ラップでした。さっそく食用品ラップを買ってきて床ずれに貼ってみました。始めは軟膏も使っていました。すると、1週間たって、ずいぶん良くなることが実感。だいたい3ヵ月で治ってしまいました。他にも床ずれの患者さんに何人かラップ療法を試してみたところ、ほとんどみんな治ってしまいました。なぜ「ラップ療法」が話題なのか?軟膏を使い分けたり、創傷被覆材を使い分けたりと、苦労してもなかなか治らなかった床ずれが、水で洗ってラップを貼るだけの簡単なやり方で治ってしまう、というところに尽きます。学会や講演会でこの話をすると、はじめのうちはほとんど信用されませんでしたね。床ずれの写真を見せられて半信半疑でやってみた方からは、「目から鱗」という評価をいただきました。簡単で、病院でも、訪問診療先でも、どこでもできて、患者家族にわかりやすい、指導しやすいと評判を獲得することができました。実は床ずれが治ってくると家族の心が癒される、とよく言われます。ラップ療法は、そんな方々の手で育ってきたと思います。ラップ療法の普及には、インターネットの役割は大きかったですね。ホームページを立ち上げたのは、2001年のことでした。床ずれに関しては素人の内科医が思いついた治療法が、わずか10年余りで全国に普及したのは、インターネットで直接発信し続けたおかげだと思います。ラップ療法が衛生材料として商品化されたため、社会的認知が早まった台所用品を使うという手軽さがラップ療法の売りである反面、医療安全を第一に考える病院などでは、拒否反応というか、嫌悪感が強いですね。医療用ラップが使えれば、ラップ療法と同じ考え方で治療してもらうことができます。そこで、医療用ラップを商品化してもらうべく、食品用ラップのメーカーや、被覆材のメーカーに相談しましたが、どこからも相手にされませんでした。採算などを考えれば無理な相談だったと思います。2005年に、水切り袋と紙おむつを組み合わせた「床ずれパッド」を使い始めました。それまでのラップを使った治療法と比べたら格段の進歩でした。臭いは少ないし、かぶれも少ない、使用感もよくなりました。床ずれパッドを商品化しようと考えて、ガーゼ類のメーカーに相談しました。試作品を何度か作り直した末に完成したのが、「モイスキンパッド」です。衛生材料なので、ガーゼと同じようにどこの病院でも安心して使えます。入院中から退院後まで一貫してモイスキンパッドを使って治療するのは当然ですが、退院後は床ずれパッドを使うように指導すれば、患者の負担も少なくて済みます。ラップ療法に「食わず嫌い」だった方にはモイスキンパッドをお使いいただき、ラップ療法の治療の考え方(Open Wet-dressing Therapy; OpWT)の良さを実感していただければいいなと思います。OpWTという創傷治癒理論が、国内のみならず海外でも広く認められるようになることを願っております。編集部追記:ラップ療法の危険性への指摘があったため、鳥谷部先生より見解をいただき、2011年9月15日に追加記事を掲載しました。質問と回答を公開中!

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准教授 小早川信一郎先生の答え

アトピー性白内障手術時の注意点まだまだ駆け出しの眼科医なので、初歩的な質問で失礼します。アドピー性白内障手術の場合、網膜剥離を併発している可能性も念頭に入れて手術を行うことを指導されました。このような場合、小早川先生が特に意識していることや注意していること等がありましたら教えて頂きたく存じます。(1)術前に眼底が全く観察できない程度に白内障が進行していた場合、術前の超音波検査はもちろんですが、術中に網膜剥離の有無を直接観察することになると思います。私は術中に発見したことはありませんが、術後すぐに(1週間以内)剥離を起こされたことが出張中にありました。(2)手術においては、極力大きめのCCC(5.5-6ミリ程度)を狙います。レンズ選択は以前、PMMAでしたが、今はアクリルを入れています。1P、3Pは問いません。(3)若い方が当然多いので縫合します。私はすべての症例で基本的に上方強角膜切開、輪部後方からトンネルを1.5ミリ程度作成していますので、縫合は容易です。結膜は縫合したりしなかったりですが、終了時にうまく元に戻らなければ縫合します。(4)術前ムンテラはRDの話もします。(5)硝子体脱出は極力避けてください。脱出したらたぶん剥がれます。(6)予想外に炎症が強い時があります。そういう時はステロイドを点滴します(リンデロン4ミリ相当を2-3日間)。基本、入院して頂いています。眼内炎を疑うほどの炎症は経験ありません。加齢黄斑変性の研究動向加齢黄斑変性の治療方法についての最近の動向など、御存知でしたら教えて下さい。滲出型の場合は、第一選択ルセンティス、第二選択マクジェンを月一で3回投与し、経過を見て追加、維持療法が基本ではないでしょうか。蛍光眼底造影(必要ならICG造影)は必須と思います。OCTは治療効果判定に有用ですが、なくても視力やアムスラーチャートなどで大体把握できます。ドライタイプにアバスチンを試しましたが、効果はありませんでした。ドライタイプの方には、希望があればルセンティスをやっていますが、効果がない場合がほとんどなので、その時点でムンテラして止めています。レーザーは最近やっていません。レーザーはアーケード内ですと、暗点が出たり自覚的な見え方の質の低下を経験しています。硝子体手術は出血がなければしません。高齢者に手術を勧めるべきか在宅をやっている開業医です。白内障と思われる高齢者の方を見かけますが、90歳や100歳になる高齢者の方の場合、ご家族の心配もあり、白内障の手術を勧めるべきかどうか、よく悩みます。その辺の考え方を教えていただければと思います。3年ほど前までは、85歳以上の方の時は手術については積極的に勧めませんでした。もちろん過熟白内障の時はします。緑内障になるからです。最近は85歳以上の元気な方が増えてきて、本人の希望があり、家族も希望していればします。ただし、ムンテラとして、破嚢や核落下のリスクが上がること、感染リスクも高いこと、は必ず言います。それほど黄ばみの強くない核白内障であれば、たぶん勧めませんし、家族がやってくれと言っても最初は乗り気でない姿勢をみせます。90歳代は経験ありますが、100歳の方は手術の経験がありません。チン小体脆弱、前部硝子体膜剥離がある、は予測して手術に入ります。中には60-70代と変わらない方もいますが、弱い方がやはり多いと思います。また、きちんと手術が終了しても、0.7程度にとどまる方が多く、1.0はあまりいない印象です。レンズを選ぶ眼内レンズの種類が増えるにつれ治療後にピントが合わずに再手術をすることになる例が出ております。大森病院さんでは、レンズを選ぶ際の注意点、できれば個人の感覚に頼るのものではなく、科としてのガイドラインの様なものがあれば教えて頂きたいと思います。(1)-3.0D以上の近視がある方を除いて、基本的には-0.5から0Dを狙っています。乱視が強い場合、最近はトーリックです。以前は乱視の分を考慮して、少しプラス気味に球面を狙ったりして、等価球面ができるだけ-0.5から0程度になるようにしています。(2)中等度から高度近視の方の場合、コンタクトをしていて老眼鏡を使用という方は(1)と同じく狙います。(3)中等度から高度近視の方で術前眼鏡使用の場合、患者さんとお話をして、-2.5から3程度に等価球面がいくように選択します。必ずピントが合う距離が今よりも遠くなることをお話します。(4)(2)や(3)のような近視の方はメガネの必要性をお話しています。(5)一般の患者さんに多焦点の話はしていますが、自費で36万円ということを話すとその時点であきらめる方が多いです。ただ、考えてくると言った方の場合、一度手術の予約のみ取って、日を変えて多焦点IOLのお話を再度しています。乱視適応は原則1D以内です。80歳以上の方には積極的に勧めていません。(6)トーリックは、乱視が強いのでそれも少し治るようなIOLを入れますとだけ言い、過剰な期待は抱かせないようにしています。適応は積極的にしており、1D以上角膜乱視があればトーリックです。術後感染症差し支えなければ、眼科手術の術後感染症を防ぐために行っている貴院ならではの取組、工夫をご教授下さい。(1)術前に結膜嚢培養(2)(1)で腸球菌、MRSAが出たら告知して術前に抗菌薬点眼処方(3)全例、極力、術3日前からの抗菌薬点眼(クラビッド)(4)皮膚消毒したあと1分間放置(5)穴あきドレープをかけて洗眼したあともう一度露出した皮膚を消毒。(6)30秒間放置して、テガタームなどを皮膚に貼り付け、開瞼器をかける術後は極力(主治医が診察できない場合もあるので)、当日より眼帯を外して抗菌薬点眼を開始する。こんな感じです。糖尿病専門医との連携について眼科をやっている者です。糖尿病専門医との連携で気をつけているポイントがあれば教えて下さい。どこも同じ状況だとは思いますが、糖尿病白内障や糖尿病網膜症の患者さんが増えてきたため血糖コントロールなど、糖尿病専門医と連携をとる機会が増えてきました。宜しくお願いします。白内障は急ぎませんが、網膜症の場合、特に硝子体手術が必要な程度まで進行している場合は連携が必要と思います。急ぎでオペの時は、コントロールしながら、というスタイルとなります。どのぐらい急ぎなのか、をはっきり伝え、手術までの時間にレーザーは1週間に2回程度、同じ眼でもかけています。血糖コントロールを高めに、とか低めにとかそのような指示はしません。こちらの状況をはっきり伝えるのみです。コントロールは程ほどで手術に入るか、コントロール後手術なのかは一度話し合いを持たれた方がよいとおもいます。白内障手術前に行うリスク説明時に、何か工夫をされていることあればお教え下さい。実は最近、テレビや雑誌の影響なのか、「白内障手術は気軽で簡単!」「術後は、メガネなしで若い頃の視力が手に入る(レーシックと勘違いしているのでしょうか?)」とのイメージを持つ患者さんが増えてきたと感じます。このような場合、手術前にいくらリスクを説明しても、この先入観が邪魔しリスク内容を安易に捉えられてしまっているように感じます。実際、昔と比べて、術後に「こんなはずでは!」とのクレームが多くなったと感じます。小早川先生が術前のリスク説明時に何か工夫されていることがあれば是非教えて下さい。過度な期待は抱かせない、ということに留意はしています。ただし、眼内炎や核落下について必要以上にムンテラすることは避けています。手術ですからやってみるまでは分からない、という話もします。術者の技量、土地柄も影響していると思います。また特別な症例、水晶体揺れている、90歳以上、mature、ぶどう膜炎、などは自分でムンテラしています。通常の症例は主治医にお願いしています(白内障は入院ですので主治医が付きますので)。CCCのコツを伝授下さい先生も書いておられるように、手術時は局所麻酔で行うことが多く、こちらの動きが患者さんに伝わってしまいます。特に、CCCが上手く行かなかった時には大変焦ってしまい、「絶対患者さんが不安に思っているな。」と感じることがあります。上級医から、学会時に小早川先生からCCCでトラぶった時の対処方法を教えて頂いたと聞きました。もし宜しければそれを伝授願えないでしょうか。宜しくお願いします。(1)道具にこだわる セッシの積極的使用、いろいろなセッシを試してみる、針にこだわらない、(2)顕微鏡にこだわる ツァイスの一番新しいモデル、ルメラは見えます。視野の中心で見ることも忘れない(3)ビスコにこだわる ヒーロンVをすすめています。(4)染色 僕自身はめったにしませんが、見えなければ積極的に染めてもらっています。第一に前嚢が見えているかの確認です。次にヒーロンVを使用して確実に前房深度を保ちます。道具を厳選し、確実に前嚢を把持することに努めます。後は豚眼の練習通り、進めていきます。もし流れたらですが、下方で流れたら観音開きになるように逆回しでつなげるか、針を細かく動かしてカンオープナーにするか、を考えます。手前で流れたら、余分な前嚢を切除した後、前房虚脱に注意してオペを進めます。切開創の構築についてもセッシ使用の場合など考慮すべきでしょう。基本的には流さないように万全の準備をしてオペに臨み、流れたら、成書のごとく対処していくという指導をしています。糖尿病患者を診て頂く場合の注意点内科医です。糖尿病患者を眼科の先生に受診させる場合、どのような点に注意すべきでしょうか。また、東邦大学で内科・眼科の連携の際には、網膜症の分類をどのように使い分けていらっしゃいますか。白内障に関する質問でなくて恐縮ですが、よろしくお願いいたします。(1)血糖値、A1Cあたりがあれば十分と思います。通院歴がまじめ、ふまじめといった情報はさらにありがたいと思います。(2)網膜症は福田分類を使っています。AとBで大別し、レーザー治療は済でもう枯れてきた網膜症である、といった情報は内科に提供しています。逆に手術を急ぐべき、といったときはその旨明記します。コントロールについては原則お任せしています。海外留学について先生の記事、興味深く読ませて頂きました。現在初期研修中ですが、私も是非先生の様に研究発表もできる眼科医を目指したいと思っております。先生のプロフィールにも海外留学されたとありますが、やはり、基礎を習得するためには海外留学が必要なのでしょうか?症例の質問ではなくて恐縮ですが、実際に眼科の第一線で活躍されていて論文や発表も数多く出されている先生に伺う機会がないので教えて頂ければと願っています。また、大森病院のホームページには「積極的に海外留学も行えるようにしています。」とありましたが、具体的にどの様な支援をされていて、どの程度の方々が支援を受けているのでしょうか?色々と質問して申し訳ありませんがよろしくお願いします。海外留学で一番学んだことは問題解決能力でした。自分で解決する、その選択肢を多く持ったことです。基礎を習得するのは国内でも十分と思います。私は、知り合いの先生がいる微生物の教室で、実験をさせて頂いておりました。その後、眼内炎がやりたくなって、留学いたしました。日本でも実験はできますが、教室の垣根や動物センターの規約など、面倒くさいことが多いです。その点、システムがすでに出来上がったラボではそういった根回しにあまり力を入れなくて済みますので楽と思います。自分のやりたい研究ができる環境がアメリカだったとそのように考えてます。研究には臨床のような研修プログラムがなく、やりたい人間ができるようになればよい、というスタンスが多いと思います。もし、本気で考えていらっしゃるなら大学院という選択がよいと思います。眼内レンズの解析、微量検体の測定など、実験系を組むと費用がかかるものは企業のものも積極的に使用しています。SRL等、結構やってくれますし、仲良くなると研究員の方とお話しできることもあります。眼内レンズの解析は、旧メニコンにお願いすることも多いです。最近では電顕写真を外にお願いしたりもしています。わたくしたちの医局では、例えば大阪大学のように常に誰かがどこかに留学している状況ではないですから、留学希望者が順番待ちしているといったことはありません。研究が好きな人間や大学院生を中心に海外学会に連れて行って、雰囲気を味合わせ、少しやる気がある人に対しては、僕がもといたラボに連れて行って、ボスと話をさせたりします。で、行きたいとの希望が出れば、医局長に話をして人事面で考慮をしていくという状況です。僕は微生物でしたので、感染症のテーマでよいという人間を連れて出ています。東邦大学には給費留学制度(留学中助教の給料が保証)がありますので、教授とも話をしながら進めます。僕がもといたラボに行った人間はうちの医局からはまだいませんが、来年あたりに一人出せるかもしれない状況に来ています。海外留学は医局の責任者と十分に話し合い、穏便に行ける環境を作り、経済的な問題を解決してからが一番と思います。教室によっては定期的に人を出すシステムが作られているところもあるでしょうが、我々はまだまだです。なかなか、帝大クラスのようなシステムには到達できません。准教授 小早川信一郎先生「白内障手術の光と影」

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DNAマイクロアレイを用いた新たな敗血症アッセイの有効性を確認

新たに開発されたDNAマイクロアレイによる敗血症アッセイは、従来のgold standardである血液培養法に比べ、細菌の同定における感受性、特異度が優れるうえに、より迅速に結果が得られることが、フィンランド・ヘルシンキ大学病院検査部のPaivi Tissari氏らが行った観察試験で明らかとなった。細菌性敗血症は生命を脅かす疾患であり、世界的に罹患率、死亡率がともに高く、有効な抗生物質が利用可能な先進国でさえも重要な課題となっている。罹患率や死亡率増大の原因として、原因菌の種類を同定せずに不適切な広域スペクトラムの抗菌薬を使用したり、適切な治療の遅れが挙げられるという。Lancet誌2010年1月16日号(オンライン版2009年12月10日号)掲載の報告。培養陽性の2,107検体を、従来法と新規のアッセイで検査研究グループは、DNAマイクロアレイをプラットフォームとして新たに開発された敗血症アッセイ「Prove-it Sepsis」の感受性、特異度、所要時間の検討を行った。臨床的に敗血症が疑われる患者の3,318の血液検体のうち、血液培養で陽性を示した2,107の検体について、従来の培養法と新規の敗血症アッセイにより細菌の種類の同定を行った。アッセイに用いられた新たなPCR/マイクロアレイ法は、50種類のバクテリアのgyrB、parE、mecA遺伝子を増幅して検出するもの。検査アッセイを取り扱う検査員には培養結果は知らされなかった。臨床・検査標準協会(CLSI)の勧告に基づいて、感受性、特異度、所要時間が算出された。感受性94.7%、特異度98.8%、所要時間は従来法より18時間短縮培養陽性の2,107検体のうち1,807検体(86%)から、アッセイが検出対象とする病原菌が検出された。アッセイの感受性は94.7%、特異度は98.8%であり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感受性と特異度はともに100%であった。検出までの所要時間は、従来の培養法が実働日数で1~2日を要するのに対し、アッセイはこれより平均18時間早かった。3,284検体のうち34検体(1.0%)が、技術的な問題や検査員の誤操作のために除外された。著者は、「PCR/マイクロアレイを用いた敗血症アッセイは、細菌種の最終的な同定において高い感受性と特異度を示し、従来法よりも迅速な検査が可能である」と結論し、「本アッセイはプライマリ・ケアの日常診療に容易に導入できる。現在、先進国、開発途上国の双方で、このアッセイが患者の予後やマネジメント、さらに種々の病原菌のルーチンな迅速診断の実行にどの程度貢献するかについて、プロスペクティブな調査を行っている」としている。(菅野守:医学ライター)

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シャープ、プラズマクラスター技術による付着・浮遊MRSAの活動抑制効果を実証

シャープは、北里研究所 北里大学北里研究所メディカルセンター病院と共同で、高濃度プラズマクラスターイオンが代表的な院内感染菌である「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」の活動を、付着および浮遊両状態において抑制することを実証したことを発表した。今回、同社らが行った実験では、高濃度プラズマクラスターイオン(イオン濃度約2万5千個/cm3)が、付着MRSA(シャーレに滴下)の活動を8時間で約99.9%抑制、浮遊MRSA(容積1m3ボックス内に浮遊)の活動を20分で約99.9%抑制することを実証したとのこと。さらに、同じく院内感染菌である「浮遊多剤耐性緑膿菌(MDRP)の活動」および「浮遊コクサッキーウイルスの感染力」を約99.9%抑制する効果も実証したという。詳細はプレスリリースへhttp://www.sharp.co.jp/corporate/news/091113-a.html

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抗生物質「VIBATIVTM(テラバンシン)」米国で新発売

アステラス製薬株式会社は6日、米国テラバンス社より導入した抗生物質「VIBATIVTM(一般名:テラバンシン)」について、当社の米国子会社アステラス ファーマ US, Inc.が「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を含むグラム陽性菌に起因する複雑性皮膚・軟部組織感染症(cSSSI)」を適応症として新発売した。テラバンシンは、細菌の細胞壁合成を阻害するとともに細胞膜透過性の増大作用をあわせ持つ、1日1回投与の脂質化グリコペプチド系の注射剤。同剤については、2006年12月にテラバンス社がcSSSIの適応症で米国食品医薬品局(FDA)に申請しており、2009年9月に承認を取得している。また、追加適応の院内肺炎については、現在、FDAにおいて審査中とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/vibativtm-1.html

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抗生物質「テラバンシン」欧州にて承認申請へ

アステラス製薬株式会社は10月29日、米国テラバンス社(本社:カリフォルニア州サウス・サンフランシスコ)より導入した抗生物質「テラバンシン(一般名)」について、同社の欧州子会社アステラス ファーマヨーロッパB.V.が、成人における「人工呼吸器関連肺炎を含む院内肺炎」および「複雑性皮膚・軟部組織感染症(cSSTI)」を目標適応症として10月26日(現地時間)に欧州医薬品審査庁(EMEA)に承認申請を行ったと発表した。テラバンシンは、細菌の細胞壁合成を阻害するとともに細胞膜透過性の増大作用をあわせ持つ、1日1回投与の脂質化グリコペプチド系の注射剤。米国においては、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を含むグラム陽性菌に起因する複雑性皮膚・軟部組織感染症(cSSSI)」の適応症について9月に承認を取得しているほか、「院内肺炎」についても現在、申請中とのこと。また、日本では「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症」を目標適応症として第I相臨床試験段階にあるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/post-70.html

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抗生物質テラバンシン、米国で承認取得

アステラス製薬株式会社は14日、米国テラバンス社より導入し、同社が米国において申請していた抗生物質「VIBATIV(一般名:テラバンシン)」に関し、9月11日(現地時間)に「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を含むグラム陽性菌に起因する複雑性皮膚・軟部組織感染症(cSSSI)」の適応症について米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表した。テラバンシンは、細菌の細胞壁合成を阻害するとともに細胞膜透過性の増大作用をあわせ持つ、1日1回投与の脂質化グリコペプチド系の注射剤。同剤については、2006年12月にテラバンス社がFDAに申請していた。また、本剤の追加適応の院内肺炎については、現在FDAにおいて審査中とのこと。VIBATIVの販売は、同社の米国子会社アステラス ファーマ US, Inc.より、2009年中に開始される予定。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/vibativtm.html

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