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末梢動脈疾患の在宅での歩行運動導入、歩行距離を改善/JAMA

 間欠性跛行を呈する末梢動脈疾患(PAD)成人患者において、在宅での歩行運動行動変容介入は通常ケアと比較し、3ヵ月時点での歩行距離を改善することが示された。英国・ロンドン大学のLindsay M. Bearne氏らが、多施設共同無作為化評価者盲検比較試験「Motivating Structured Walking Activity in People With Intermittent Claudication trial:MOSAIC試験」の結果を報告した。PAD患者に対し在宅での歩行運動介入が推奨されているが、その有効性に関するエビデンスはさまざまであった。JAMA誌2022年4月12日号掲載の報告。PAD患者190例、理学療法士による歩行運動行動変容介入の有効性を通常ケアと比較 研究グループは、2018年1月~2020年3月の期間に英国の病院6施設において、50歳以上の間欠性跛行を呈するPAD患者190例を、動機付けアプローチを用いるよう訓練を受けた理学療法士による歩行運動行動変容介入を受ける群(介入群)または通常ケア群に、1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間追跡した(最終追跡調査日は2020年9月8日)。評価者および統計解析者は、解析完了まで盲検化した。 主要評価項目は、3ヵ月後の6分間歩行距離(6MWT)(臨床的に意義のある最小変化量:8~20m)、副次評価項目は8項目で、そのうち3項目はWalking Estimated Limitation Calculated by History(WELCH)質問票(範囲:0[最も良好]~100)、簡易版疾患認識尺度(Brief Illness Perceptions Questionnaire:BIPQ)(範囲:0~80[80は疾患に対して否定的認識])、計画的行動理論(Theory of Planned Behavior)質問票(範囲:3~21[21が最高の態度、主観的規範、行動統制感、意図])であり、これらの尺度については臨床的に意義のある最小変化量は定義されなかった。3ヵ月後の6分間歩行距離、介入群で有意に改善 無作為化された190例(平均年齢 68歳、女性30%、白人79%、ベースラインの平均6MWT 361.0m)のうち、148例(78%)が3ヵ月間の追跡調査を完遂し、6MWTは介入群ではベースライン352.9mから3ヵ月後380.6mに増加したが、通常ケア群では369.8mから372.1 mへの変化にとどまった(変化量の補正後平均群間差:16.7m、95%信頼区間[CI]:4.2~29.2、p=0.009)。 副次評価項目8項目中、5項目は統計学的有意差が認められなかった。WELCHスコアの変化はベースライン→6ヵ月後で、介入群18.0→27.8、通常ケア群20.7→20.7(変化量の補正後平均群間差:7.4、95%CI:2.5~12.3、p=0.003)、BIPQスコアの変化は同様に介入群45.7→38.9、通常ケア群44.0→45.8(-6.6、-9.9~-3.4、p<0.001)、TPB質問票の構成項目である「態度」のスコアの変化は介入群14.7→15.4、通常ケア群14.6→13.9(1.4、0.3~2.5、p=0.02)であった。 重篤な有害事象は、介入群で13例、通常ケア群で3例報告されたが、すべて試験との関連性はない、または可能性は低いと判断された。

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第108回 小児の原因不明の重症肝炎が欧州や米国で増えている

肝炎の主な原因ウイルスが見当たらない原因不明の重症肝炎が欧州や米国の10歳頃までの幼い小児に増えています1)。英国で主に10歳までの74例(49例がイングランド、13例がスコットランド、残りはウェールズと北アイルランド)、スペインで13歳までの3例が4月8日までに見つかっています2,3)。また、米国のアラバマ州で1~6歳の9例が見つかっており1,4)、デンマークとオランダでも似た病状が報告されています。英国とスペインのそれら小児に4月12日時点で死亡例はありませんが全員が入院を要し、何人かは非常に重篤であり、7例は肝臓移植を受けています。米国アラバマ州でも9例中2例が肝臓移植を必要としました4)。風邪を引き起こすウイルスの一員として知られるアデノウイルスがそれら重症肝炎の原因かもしれません。Scienceのニュースによると英国ではアデノウイルスが多ければ半数から検出されています1)。また、アラバマ州の9例では全員からアデノウイルスが検出されました。英国でのそれら急な重症肝炎の最初の10件は健康な小児に発生したものでした3)。ほんの一週間前まではいたって健康だった小児に発生しうる重症肝炎は深刻な事態だと英国イングランドのBirmingham Children’s Hospitalの小児肝臓研究医師Deirdre Kelly氏は言っています1)。ただし同氏によると幸いほとんどは自ずと回復しています。先週14日には英国スコットランドでの原因不明の小児重症肝炎流行の詳細がEurosurveillance誌に掲載されました5)。同地でのその流行は3~5歳の原因不明重症肝炎小児5人がわずか3週間にグラスゴーの小児病院で認められたことを受けて先月末3月31日に察知されました。スコットランドでのそのような肝炎の通常の発生数は年間4例未満ですが、流行察知後の調査の結果、今年に入ってから4月12日までに10歳以下の小児13人が原因不明の急な肝炎で入院していました。それら13例のうち1例以外は今年3~4月に生じています。飲食物の毒あたりやおもちゃなどの有害物質が原因かと当初は考えられましたが、今ではウイルスに目が向けられています。肝炎の主な原因であるA、B、C、E型肝炎ウイルスは英国やスペインの小児から見つかっていません。一方、ワクチン非接種の何人かからは入院の少し前か入院時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が検出されました。また、多ければ半数からは肝炎の原因となることは通常稀なはずのアデノウイルスが検出されました。アデノウイルスは呼気中の液滴に含まれるかそれらが付着した表面や感染者に触れることで伝染し、嘔吐・下痢・結膜炎・風邪症状を引き起こすことが知られます。現時点ではそういうアデノウイルス絡みの原因が有力視されています。肝炎の原因となることがおよそ稀なアデノウイルスの仕業であるならそうさせる何らかの事態を背景にしているのでしょう。これまでとは一線を画す症候群と紐づく新たな変異株が発生しているかもしれないし、免疫が未熟な幼い小児をすでにありふれた変異株が酷く害しているのかもしれないとスコットランドの研究者はEurosurveillance誌で述べています5)。SARS-CoV-2感染(COVID-19)流行で足止めを食らった幼い小児はいつもなら接しているはずのアデノウイルスなどのウイルスの面々といまだ馴染めず免疫が頼りないままで未熟である恐れがあります。ノッティンガム大学のウイルス学者Will Irving氏によるとロックダウン明けの小児にいつものウイルス感染が増えており、アデノウイルス感染もその一つに含まれます1)。全員からアデノウイルスが検出された米国アラバマ州の9例のうち5例にはもっぱら胃腸炎の原因として知られる41型アデノウイルスが認められ、どうやら関連があるらしいとアラバマ州保健部門は言っています4)。アデノウイルス原因説が有力とはいえそれ以外の要因の検討もなされています1)。たとえば先立つCOVID-19の免疫への影響が他の感染を生じやすくしているのかもしれません。あるいはCOVID-19の長期の後遺症の一つと考えられなくもありません。それに未知の毒物に端を発している可能性もあります。参考1)Mysterious hepatitis outbreak sickens young children in Europe as CDC probes cases in Alabama / Science2)Increase in hepatitis (liver inflammation) cases in children under investigation / UK Health Security Agency3)Acute hepatitis of unknown aetiology - the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland / WHO4)Investigations of nine young children with adenovirus are underway / Alabama Department of Public Health (ADPH)5)Investigation into cases of hepatitis of unknown aetiology among young children, Scotland, 1 January 2022 to 12 April 2022 / Eurosurveillance

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朝食にタンパク質で筋力維持、何を食べるのがベスト?

 朝食でのタンパク質摂取量は、筋力を維持するために重要であることが示唆されているが、朝食で取るタンパク質の『質』による影響は不明なままである。そこで、国立長寿医療研究センター研究所フレイル研究部の木下 かほり氏、老化疫学研究部の大塚 礼氏らは、朝食時のタンパク質の質と筋力低下の発生率の関連について縦断的研究を行った。その結果、タンパク質の摂取量とは独立して、朝食のタンパク質の質が高いほど高齢者の筋力低下抑制に関連していることが示唆された。この結果はJournal of the American Medical Directors Association誌2022年1月7日号オンライン版に掲載された。朝食のタンパク質の質と筋力低下との関連を健康な高齢者701例で調査 筋力の低下は、将来の健康障害や死亡を予測する重要な指標であることから、サルコペニアの診断では握力の評価が筋肉量の評価よりも優先されている。本研究は、国立長寿医療研究センターが行っている地域住民対象の長期縦断疫学研究(NILS-LSA)のデータを用いて行われ、ベースライン時点で脳血管疾患、関節炎、パーキンソン病、筋力低下のない60〜83歳の健康な高齢者701例を対象として朝食のタンパク質の質と筋力低下(weakness)との関連を調査した。最大追跡期間は9.2年、最大参加回数は5回だった。 Weaknessは改定アジアサルコペニア診断基準(AWGS*2019)を基に定義(握力は男性:28kg未満・女性:18kg未満)。朝食のタンパク質の質については、3日間の食事記録から計算したタンパク質消化性補正アミノ酸スコア(PDCAAS)を用いて評価を行った。PDCAASはスコアが高いほどタンパク質の質が高いことを示す。参加者は朝食PDCAASの性別三分位で分類された(低グループ、中グループ、高グループの3群)。PDCAASとweaknessとの関連は、一般化推定方程式(GEE:generalized estimating equation)を用いて分析し、性別、フォローアップ期間、およびベースライン時の年齢、握力、BMI、身体活動、認知機能、教育歴、喫煙歴、経済状況、病歴、昼食と夕食のPDCAAS、3食(朝・昼・夕)のエネルギーとタンパク質摂取量で調整した。*AWGS:Asian Working Group for Sarcopenia朝食のタンパク質のPDCAASが高いほどweaknessは発生しない 朝食のタンパク質の質と筋力低下との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・分析された701例のうち男性は53.5%(375例)だった。・平均追跡期間±SDは 6.9±2.1年、参加した追跡調査の平均回数は3.1±1.1回。累積参加者数は3,019例で282例が weaknessになった。・PDCAAS低グループを参照にした場合、中グループおよび高グループでのweakness発生の調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は、それぞれ0.71(95%CI:0.43~1.18)および0.50(同:0.29~0.86)だった。・昼食、夕食、1日の総摂取量においても同様にPDCAASを解析したが、朝食のタンパク質のみが有意な関連を示した。・朝食の食品群を比較すると、朝食PDCAASが高いグループほど、豆類、魚介類、牛乳・乳製品、卵を多く摂取しており、低いグループほど砂糖・甘味料、油脂類を多く摂取していた。 研究者らは、「今回の発見は、高齢者の筋力維持、すなわち高齢者のQOL維持のための栄養学的アプローチに対して価値ある識見を提供するかもしれない」としている。

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バリシチニブ、円形脱毛症の毛髪再生に有効か/NEJM

 円形脱毛症は、頭髪、眉毛、睫毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患であるが、治療法は限定的である。米国・イェール大学医学大学院のBrett King氏らは、重症円形脱毛症の治療におけるヤヌスキナーゼ(JAK)1とJAK2の阻害薬バリシチニブの有用性を検討し、本薬はプラセボと比較して、36週時に臨床的に意義のある毛髪再生を達成した患者の割合が高く、安全性も劣らないことを「BRAVE-AA試験」で示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年3月26日号で報告された。10ヵ国169施設の2つのプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む10ヵ国169施設が参加した2つの二重盲検プラセボ対照無作為化試験(BRAVE-AA1試験、BRAVE-AA2試験)である(Incyteのライセンスの下でEli Lillyの助成を受けた)。 この試験では、BRAVE-AA1試験の第III相部分(参加者登録期間:2019年3月~2020年6月)とBRAVE-AA2試験(同:2019年7月~2020年5月)のデータが用いられた。 対象は、年齢18~60歳の男性と18~70歳の女性で、Severity of Alopecia Tool(SALT)のスコア(0[頭髪の脱毛なし]~100[頭髪の完全脱毛]点)が50点以上の患者であった。 被験者は、バリシチニブ4mg、同2mg、プラセボを、1日1回、経口投与する群に、3対2対2の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、36週の時点におけるSALTスコア20点以下(意義のある治療アウトカム)の達成であった。より長期の試験が必要 1,200例が解析に含まれた。内訳は、BRAVE-AA1試験が654例(バリシチニブ4mg群281例、同2mg群184例、プラセボ群189例)、BRAVE-AA2試験は546例(234例、156例、156例)であった。 円形脱毛症の平均(±SD)罹患期間は、BRAVE-AA1試験が3.6±3.9年、BRAVE-AA2試験は4.3±4.9年だった。全体の53.2%が超重症(SALTスコア95~100点)の円形脱毛症で、90.6%が少なくとも1回の円形脱毛症の治療歴を有していた。また、主要および副次アウトカムのデータには、約10~15%の欠測が認められたため、多重代入法による解析が行われた。 36週時のSALT 20点以下の達成割合は、BRAVE-AA1試験ではバリシチニブ4mg群が38.8%、同2mg群が22.8%、プラセボ群は6.2%で、BRAVE-AA2試験では、それぞれ35.9%、19.4%、3.3%であった。 BRAVE-AA1試験では、バリシチニブ4mg群とプラセボ群の差は32.6ポイント(95%信頼区間[CI]:25.6~39.5)、バリシチニブ2mg群とプラセボ群の差は16.6ポイント(9.5~23.8)であり(プラセボ群との比較で2つの用量ともp<0.001)、BRAVE-AA2試験では、それぞれ32.6ポイント(25.6~39.6)および16.1ポイント(9.1~23.2)であった(プラセボ群との比較で2つの用量ともp<0.001)。 10項目の主な副次アウトカムは、全般的にバリシチニブ4mg群ではプラセボ群よりも良好であった(BRAVE-AA1試験は10項目すべて、BRAVE-AA2試験は7項目で有意差あり)が、同2mg群ではとくにBRAVE-AA2試験でプラセボ群との差がない項目が多かった(BRAVE-AA1試験は8項目、BRAVE-AA2試験は1項目で有意差あり)。 治療期間中に発現または悪化した有害事象は、BRAVE-AA1試験ではバリシチニブ4mg群59.6%、同2mg群50.8%、プラセボ群51.3%に認められ、BRAVE-AA2試験ではそれぞれ66.1%、68.4%、63.0%でみられた。重篤な有害事象は、BRAVE-AA1試験でバリシチニブ4mg群2.1%、同2mg群2.2%、プラセボ群1.6%、BRAVE-AA2試験ではそれぞれ3.4%、2.6%、1.9%で発現した。死亡例はなかった。 プラセボ群に比べバリシチニブ群で頻度の高い有害事象として、ざ瘡(BRAVE-AA1試験:バリシチニブ4mg群5.7%、同2mg群5.5%、プラセボ群0.5%、BRAVE-AA2試験:4.7%、5.8%、1.9%)、クレアチンキナーゼ値上昇(5.7%、1.6%、1.6% / 3.0%、0%、1.3%)、LDLコレステロール値≧130mg/dL(27.7%、20.5%、14.4% / 30.3%、24.8%、17.7%)、HDLコレステロール値≧60mg/dL(41.7%、42.3%、13.5% / 43.0%、35.6%、13.3%)が認められた。 著者は、「円形脱毛症に対するバリシチニブの安全性と有効性を確立するには、より長期の試験が必要である。本試験は、有害事象の長期的な観察が求められたため継続試験が進行中であり、最長で200週まで盲検下に継続する予定である」としている。

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英語で「快方に向かう」は?【1分★医療英語】第20回

第20回 英語で「快方に向かう」は?I am still feeling exhausted, Doctor...(先生、まだ倦怠感があるのですが…)I understand your concern, but you are making it.(ご心配はわかります。でも快方に向かっていますよ)《例文1》医師The blood test this morning looks good, and you are already sitting on the chair. You are making it.(血液検査の結果も良いですし、もう椅子に座っていますね。快方に向かっていますよ)患者Thank you so much!(ありがとうございます!)《例文2》Look at you! You are making it.(すごいですね!良くなっていますよ)《解説》“make it”は、ぱっと見だと意味が取りにくい表現ですが、病状が良くなっているのかどうか不安な患者さんに対し、「快方に向かっている」ということを伝えて励ますときに使える表現です。非常に簡潔で発音も簡単なので、使いやすいでしょう。似た意味の“You are getting better”という表現との違いとしては、“You are making it”のほうが「励ますニュアンス」が含まれることです。“make it”はいろいろな場面で使われますが、基本的な概念は「困難な状況を乗り越える」というもので、「ビジネスを成功させる」「時間に間に合う」などの意味でも使われます。アクション映画では、銃で撃たれた人物の“I’m not gonna make it”(俺はもう助からない)というセリフがよく出てきます。そして、病院においては、「病気/手術を乗り越える/克服する」という意味になります。ちなみにこの表現に、「両手の親指を立てるジェスチャー=“Thumbs up”」を付けるとさらに励ますトーンが高まります。医療者である皆さんからの励ましは、想像以上にポジティブな力を患者さんに与えますよ。講師紹介

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日本人がん患者の心血管疾患、発生しやすいがん種などが明らかに/日本循環器学会

 近年、がん患者の生存率向上により治療の副作用の1つである心毒性が問題視されている。ところが、アジア圏のなかでもとくに日本国内のそのような研究報告が乏しい。今回、村田 峻輔氏(国立循環器病センター予防医学・疫学情報部)らが、国内がん生存者における心血管疾患の全国的な発生率に関する後ろ向きコホート研究を行い、不整脈、心不全(HF)、および急性冠症候群(ASC)の100人年当たりの発生率(IR)は、それぞれ2.26、2.08、0.54 で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高いことが明らかになった。本結果は2022年3月11~13日に開催された第86回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies2で報告された。 本研究では、がん患者の心血管疾患発症に関し「HBCR(Hospital-based cancer registry)を用いてがん患者における心血管疾患の発生状況を説明する」「年齢・性別による発症頻度の違いを比較」「がん患者の心不全予防調査」の3つを目的として、対象者を1年間追跡して各心血管疾患の年間発生率を調査した。2014~2015年のDPCデータから対象のがん患者(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)の心血管疾患発生状況を、HBCRデータからがん種、病期、1次治療に関する情報を抽出し、不整脈、HF、ASC、脳梗塞(CI)、脳出血(ICH)、静脈血栓塞栓症(VTE)の6つの発生率を調査した。各心血管疾患について、全がん患者、がん種別、年齢・性別のサブグループで100人年当たりのIRと95%信頼区間を算出した。また、各がん種で各心血管疾患のIRを比較、HF発生に対する潜在的な予測因子を調べるためにロジスティクス回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象者は、2014~15年にがん診療連携拠点病院495施設でがん(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)と診断された者から外来のみまたは18歳未満の患者を除外した54万1,956例だった。・患者の構成は、乳がんと子宮頸がん患者では若年者が多く、いずれも1次治療には外科的治療の選択が多かった。一方、肝臓がんと肺がんはいずれも40%超が1次治療として化学療法を実施していた。・不整脈、HF、およびACSの100人年当たりのIRは、それぞれ2.26、2.08、0.54で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高かった。これは年齢・性別で比較しても明らかであった。・不整脈とHF、ACSの発生率を年齢・性別でみると、高齢者かつ男性で多かった。・がん種ごとにIRをみたところ、肺がん、肝臓がん、結腸がん、そして胃がん患者では不整脈の頻度が高かった。・肺がんと肝臓がん患者ではHFのIRも高く、化学療法や外科的治療が関連していた。その予測因子として、肺がんのオッズ比(OR)は、病期stage2で1.23(95 %信頼区間[CI]:1.08~1.40、p=0.001)、stage3で1.26(同:1.13~1.41、p

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TAVR後の心房細動へのエドキサバン、日本人での解析(ENVISAGE-TAVI AF)/日本循環器学会

 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)成功後の心房細動患者に対するエドキサバンとビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を比較したENVISAGE-TAVI AF試験の日本人サブ解析の結果、臨床アウトカムにおけるエドキサバンとビタミンK拮抗薬の違いはごくわずかだったことを、帝京大学の渡邊 雄介氏が第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11~13日)のLate Breaking Clinical Trialsで報告した。 ENVISAGE-TAVI AF試験は、日本を含む14ヵ国173施設が参加した非盲検無作為化比較試験。TAVR成功後の心房細動患者においてエドキサバン(60mg/日もしくは30mg/日)とビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を最大3年間比較した。有効性に関する主要アウトカムは有害臨床イベント(全死因死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中、全身性塞栓イベント、人工弁血栓症、大出血)の複合、安全性に関する主要アウトカムは大出血だった。全体集団ではエドキサバン群がビタミンK拮抗薬群に対し非劣性を示すこと、および大出血発生率が高いことが報告されているが、わが国ではTAVRを受ける患者は小柄な女性が多く、抗血栓療法による出血リスクに影響する可能性がある。そこで、日本人においても全体の結果と一致するか評価するべくサブ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は159例(エドキサバン群82例、ビタミンK拮抗薬群77例)で、エドキサバン群とビタミンK拮抗薬群における平均年齢は84.3±4.7歳と83.4±4.0歳、体重は53.8±10.1kgと53.1±10.3kg、BMIは22.1±3.4と22.3±3.2、投与量を減量した患者の割合は85.4%と85.7%であった。・有害臨床イベントの累積発生率は日本人集団のほうが全体集団より低かった。エドキサバンのビタミンK拮抗薬に対するハザード比(HR)は、全体集団が1.05(95%CI:0.85~1.31)、日本人集団が0.85(同:0.38~1.90)と同様だった。・大出血の累積発生率は全体集団と日本人集団で同程度だった。エドキサバンのビタミンK拮抗薬に対するHRは、全体で1.41(95%CI:1.03~1.91)、日本人集団で1.17(同:0.45~3.05)と日本人集団で若干低かった。・消化管の大出血は、全体集団ではエドキサバン群で多かったが(5.4%/人年vs.2.7%/人年、HR:2.03、95%CI:1.28~3.22)、日本人集団ではエドキサバン群3例(2.8%/人年)、ビタミンK拮抗薬群4例(4.1%/人年)だった。 これらの結果から、渡邊氏は「エドキサバンがTAVR施行後の日本人心房細動患者に対するビタミンK拮抗薬の代替治療となりうることが示唆される」とまとめた。

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第103回 実は存在するらしいデルタ株とオミクロン株の融合株

今年1月、キプロス大学のウイルス学者Leondios Kostrikis氏が率いるチームはデルタ株とオミクロン株の両方の変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ゲノムを見つけたと報告し1)、Deltacron(デルタクロン)と名付けたそれら配列をゲノム情報データベースGISAIDに登録しました。即座に反応した世界の専門家からの風当たりはきついものでした。Kostrikis氏らがGISAIDに登録した52の配列は新たな変異株を意味するものではないし、ましてや異なるウイルスがそれぞれ手持ちの遺伝情報を融合させて生じたものでもなく、実験での不手際による混入が招いたものであろうと多くの専門家はツイッターなどのソーシャルネットワークやら記者会見などで言い散らしたのです。たとえば世界保健機関(WHO)のCOVID-19チームのメンバーKrutika Kuppalli氏などはツイッターにオミクロン株とデルタ株が混じった超変異株などない(“#Omicron and #Delta did NOT form a super variant.”)と当時断言しました2)。研究の過程でオミクロン株がうっかり混じってしまったデルタ株検体の配列を読んでしまったことが原因だろうと同氏は推察しています。キプロスのKostrikis氏が配列をデルタクロンと呼んでしまったせいでデルタ株とオミクロン株が融合したウイルス配列が見つかったと幾つかのニュースは報じました。しかし配列はデルタ株であってデルタ株とオミクロン株の融合配列とは言っていないと同氏は釈明しています。とはいえ針のむしろのKostrikis氏はすっかり気が引けてしまったらしく、せっかくGISAIDに登録した“デルタクロン”の配列を72時間後には更なる調査が必要と言って引っ込めてしまいました。そんなこんなでもはやデルタクロンは幻として忘れ去られると思いきやさにあらず、デルタ株とオミクロン株の融合と思しきゲノムの報告は先月2月に入って相次ぎ、その月末27日までに融合産物らしいどれも非常に似通った配列がGISAIDに15も登録されています。そしてとうとう先週8日のmedRxiv掲載報告3)でフランスの研究者がその尻尾を捕まえたことを明らかにしました。デルタ株とオミクロン株のそれぞれに特有の変異を併せ持つSARS-CoV-2株・デルタミクロン(Deltamicron)を感染者の1人から培養で単離していわば生け捕りにし、そのゲノム配列を読み取ることに成功したのです。SARS-CoV-2感染は世界に広まってすでに数年が経ち、複数の変異種が時にあいまみえつつ入れ代わり立ち代わり跋扈しています。ウイルス2種がそれぞれ手持ちのゲノムを融合させるにはそれらがあいまみえている期間に同じ細胞に一緒に感染することを必要とします。デルタ株とオミクロン株の感染流行は数週間ほど重なっており、一つの細胞にそれらが共存して果てはそれぞれのゲノムを共有する機会は確かにありました。実際、デルタ株とオミクロン株の同時感染の報告は幾つか存在しますし、WHOのKuppalli氏のツイッター投稿とは裏腹にコロナウイルスがそれぞれ手持ちのゲノム情報を共有するのはよくあることです3)。フランスの研究報告の4日後の先週土曜日(12日)には米国の遺伝研究企業Helix社もデルタ株とオミクロン株の同時感染とゲノム情報の共有を裏付ける解析結果を発表しています4,5)。同社は米国でデルタ株流行とオミクロン株流行がかぶっていた去年11月から今年2月の感染例検体およそ3万件を解析し、同時感染20件を同定しました。そのうちの1つではウイルスゲノムの共有の痕跡が認められ、さらには、デルタ株とオミクロン株のゲノムが融合したウイルスが感染者2人から見つかりました。それらのSARS-CoV-2ゲノムは両端の一方(5‘末端)がデルタ株、もう一方(3’末端)がオミクロン株からのものでした。Helix社の研究で示唆されているようにデルタ株とオミクロン株の融合はどうやら稀であり、それら融合株がオミクロン株に比べて人から人により伝染しやすいという謂れは今の所ありません。ただしフランスの研究チームのスパイクタンパク質解析によると気味が悪いことにデルタミクロンは細胞膜への結合にうってつけ(optimization of virus binding to the host cell membrane)になっているようです3)。フランスの研究チーム曰く世界で初めてデルタミクロン株が今や単離されたことで細胞への結合のほどが実際にはどうなのかの検討が早速始まるでしょう。加えて、細胞各種でのその増えやすさ、先立つ感染やワクチン接種で備わった中和抗体の効き具合、遺伝的変化の様子なども今後調べることができます3)。ちなみにデルタ株とオミクロン株の融合などないと断言した件のKuppalli氏のツイッターには「今はどう考える?(So, what do you have to say about this now?)」といった問いかけがあり、また最近のニュースでも言及されました。それに対して同氏は先週11日に以下のように回答しています。“This is a perfect example of media taking a tweet out of context. I wrote that tweet in December in relation to a preprint that reported “Deltacron” that tweet was relevant to that story at the time. Using a tweet from three months ago when things have evolved is inappropriate(ニュースが状況を無視してツイートを取り上げる良い例だ。私のツイートはデルタクロンを報告したプレプリントに関する去年12月のものだ[筆者注:ツイートされたのは今年1月10日。それにツイートで引用されているのはプレプリントではなくCNBCのニュース]。3ヵ月前[筆者注:2ヵ月前が妥当でしょう]のツイートを状況が変化した今になって取り上げるのは不適切だ)。この言い分はちょっと的外れと思うのはわたしだけでしょうか。参考1)Deltacron: the story of the variant that wasn’t. Nature.2)Krutika Kuppalli氏ツイッター投稿3)Culture and identification of a “Deltamicron” SARS-CoV-2 in a three cases cluster in southern France. medRxiv. March 08, 20224)Evidence for SARS-CoV-2 Delta and Omicron co-infections and recombination. medRxiv. March 12, 20225)"Deltacron" with genes of Delta and Omicron found Reuters.

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認知症の精神症状に対する薬理学的治療~メタ解析

 認知症では精神症状が頻繁に認められ、疾患アウトカムの不良や実質的な機能障害を引き起こす可能性がある。どの治療薬を用いるべきかを議論するためには、薬物療法の直接的または間接的な比較が必要とされるが、これまで十分に行われていなかった。中国・復旦大学のYu-Yuan Huang氏らは、認知症患者に対する薬理学的治療の有効性および忍容性アウトカムを調査するため、システマティックレビューおよびペアワイズネットワークメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌2022年3月号の報告。 2020年8月末までに報告された研究を、MEDLINE、Cochrane Library、EMBASE、PubMedより検索した。米国FDAより最終承認されているコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)、メマンチン、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬を含む試験を検索した。すべての薬剤について対プラセボの比較効果をランク付けするため、SUCRA(surface under the cumulative ranking)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・34試験より、15種の薬物療法にランダムに割り付けられた1万415例を分析対象とした。・ネットワークメタ解析において、プラセボよりも大きなベネフィットが認められ、忍容性が良好であった薬剤は以下の3剤であった。【ドネペジル】標準平均差(SMD):-0.30、95%信頼区間(CI):-0.50~-0.12、SUCRA:0.85【メマンチン】SMD:-0.20、95%CI:-0.34~-0.07、SUCRA:0.68【アリピプラゾール】SMD:-0.17、95%CI:-0.32~-0.02、SUCRA:0.62・リスペリドン(SMD:-0.16、95%CI:-0.28~-0.05、SUCRA:0.60)は、プラセボと比較し、より効果的ではあったが、忍容性が低かった(オッズ比[OR]:1.50、95%CI:1.06~2.26)。・ドネペジル、メマンチン、ハロペリドール、アリピプラゾール、リスペリドンは、クエチアピンと比較し、より効果的であった(SMDの範囲:-0.36~-0.22)。・ドネペジル、メマンチン、ミルタザピンは、セルトラリンと比較し、より効果的であった(SMDの範囲:-0.47~-0.36)。・結果の多くは、低~非常に低いと評価された。 著者らは「本結果は、メタ解析の限界と大多数の研究における方法論的質の低さから、慎重に解釈すべきである」としながらも「認知症の精神症状に対しては、いくつかの効果的な治療選択肢が利用可能であるが、中でもドネペジル、メマンチン、アリピプラゾールは、薬理学的治療が必要な場合に検討すべき適切な選択肢であると考えられる」としている。

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薬物療法中の双極性障害患者における運転パフォーマンス

 双極性障害治療で用いられる薬物は、患者の認知機能に影響を及ぼす可能性がある。双極性障害患者は、寛解状態でも神経認知機能障害が認められる場合が少なくない。名古屋大学の山口 亞希子氏らは、薬物治療中の安定期双極性障害外来患者の日常機能、とくに運転パフォーマンスについての検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年1月17日号の報告。 対象は、実臨床で薬物療法中の双極性障害外来患者58例および性別、年齢がマッチした健康対照者80例。ドライビングシミュレーターを用いて3つの運転タスク(道路追跡、車両フォロー、急ブレーキ)および3つの認知機能タスク(Continuous Performance Test、Wisconsin Card Sorting Test、Trail-Making Test)で評価した。症状評価には、ヤング躁病評価尺度、構造化ハミルトンうつ病評価尺度、BDI-IIベック抑うつ質問票、自記式社会適応度評価尺度、スタンフォード眠気尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者の道路追跡、車両フォローの運転パフォーマンスは、人口統計学的因子で調整した後、健康対照者と比較し、有意な低下が認められた。これらのパフォーマンスは、一般的に重なり合っていた。・双極性障害患者の広範な神経認知機能は、健康対照者と比較し、有意に低かった。車両フォローの運転パフォーマンスと注意力の持続との負の相関のみが認められた。・多くの患者は単剤療法ではなく、併用療法がおこなわれていたが、運転パフォーマンスとの関連は認められなかった。 著者らは「薬物療法中の安定期双極性障害患者は、健康対照者と比較し、運転パフォーマンスが損なわれていることが示唆されたが、運転パフォーマンスの重なり合う部分は、双極性障害患者の運転パフォーマンスが常に悪い状態であることを示しているわけではない。双極性障害患者の運転適性を判断するうえで、注意力は有用な臨床的特徴であると考えられる」としている。

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パニック障害の治療に有効なSSRI、最も効果的なのは?/BMJ

 パニック障害の治療において、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は寛解率が高く有害事象のリスクは低いことが、タイ・マヒドン大学のNatasha Chawla氏らのメタ解析で示された。SSRIの中ではセルトラリンとエスシタロプラムで良好な結果が得られた。しかし、著者は、「これらの知見は、研究内バイアス、不一致、および報告された所見の不正確さによりエビデンスレベルが『非常に低い』~『中程度』の研究に基づいているため、注意して解釈する必要がある」とまとめている。BMJ誌2022年1月19日号掲載の報告。パニック障害の薬物療法に関する87件の臨床試験を評価 研究グループは、広場恐怖症を伴うパニック障害の治療において、寛解率が高く有害事象のリスクが低い薬剤クラス、ならびに個々のSSRIを特定する目的で、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を行った。 Embase、Medline、ClinicalTrials.govを用いて2021年6月17日までに公表された研究を検索した。適格研究は、パニック障害と診断された18歳以上の成人患者を対象に、薬物を用いた介入による寛解、脱落、有害事象などを、無治療(プラセボや待機)または実薬と比較した無作為化試験とした。 改訂版コクランバイアスリスクツールを用いて各試験のバイアスリスクを評価し、ランダム効果モデルを用いて直接メタ解析を行うとともに、SUCRA(Surface under the cumulative ranking curve)を用いた2段階法のネットワークメタ解析により、薬剤クラスと個々のSSRIの効果の比較を推定した。 計1万2,800例、12の薬剤クラスを含む87件の臨床試験が解析に組み込まれた。SSRIの有益性が示されたが、ほとんどの試験はバイアスリスクが高かった ほとんどの試験は、いくつかの懸念があるかバイアスリスクが高く、バイアスリスクが低いと見なされたのは1試験のみであった。 寛解に関するネットワークメタ解析では、プラセボと比較し、三環系抗うつ薬(リスク比:1.39、95%信頼区間[CI]:1.26~1.54)、ベンゾジアゼピン系抗うつ薬(1.47、1.36~1.60)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)(1.30、1.00~1.69)、SSRI(1.38、1.26~1.50)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)(1.27、1.12~1.45)で、一貫して有意に高い寛解率が得られた。 SUCRAでは、ベンゾジアゼピン系抗うつ薬(84.5%、平均ランク=2.4)、三環系抗うつ剤(68.7%、3.8)、SSRI(66.4%、4.0)が寛解のための治療薬ベスト3であった。しかし、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗うつ薬、SSRIは、プラセボと比較して有害事象のリスクも有意に増加し、リスク比はそれぞれ1.79(95%CI:1.47~2.19)、1.76(1.50~2.06)、1.19(1.01~1.41)であった。 介入に関連した有害事象のリスク増加については、ネットワークメタ解析で当初一貫性に欠けることが示されたが、女性患者あるいは広場恐怖症を有する患者の割合が高いことが不一致の原因と特定され、これらの試験を除外すると一貫性に欠けることは改善されたもののまだ不一致が存在する可能性が示唆された。 寛解と有害事象の両方を考慮した全薬剤クラスのSUCRAクラスターランキングプロットでは、SSRIは寛解率が高く有害事象のリスクが低いことが示された。個々のSSRIについては、セルトラリンとエスシタロプラムで寛解率が高く、有害事象のリスクは容認可能であった。

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ブースター接種こそ感染対策の要 -コロナワクチンブースター接種がコロナ死亡を90%減らす-(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 現在、日本でも世界でもオミクロン株の猛威により急激な新型コロナウイルス感染症の感染者が増加しているような状況である。米国や欧州の一部では感染拡大のピークを越え、収束傾向になっている地域もあるようだが、2022年1月中旬現在においてWHO(世界保健機関)でも各国の警戒を呼び掛けているような緊迫した状況が続いている。 本邦のコロナワクチン接種は2022年1月20日の時点で2回目接種終了者が全国民の約79%にあたる9,963万人を超えている状況である。ただし2021年末から始まったコロナワクチンの3回目接種、いわゆるブースター接種は194万人(日本全国民の約1.5%)にとどまっており、2回目接種終了後から時間が経過した高齢者や基礎疾患を持つ者、新型コロナウイルスやCOVID-19症例と接触する機会の多い医療従事者はブースター接種を待ち望んでいるところである。 コロナワクチンの3回目の接種、いわゆるブースター接種が日本でも粛々と進められているところである。一般的にワクチンの有効性、コロナの発症予防効果はデルタ株に比べてオミクロン株は低いとされている。さらにワクチン2回接種後の期間が長くなるとさらに効果が低下することがいわれており、接種直後はオミクロン株に対して約60%程度の発症予防効果を認めていたところ、5~6ヵ月が経過すると約10%に低下してしまうことが示されている(United Kingdom Health Security Agency, UKHSA 2021.12.31)。イスラエルの医療従事者に対するBNT162b2によるブースター接種の効果を検討した報告では、約1ヵ月の短い追跡期間ではあるものの、ブースター接種群はブースター非接種群に比べ90%以上もコロナ感染リスクを低下させる結果が示された(Spitzer A, et ai. JAMA. 2022 Jan 10. [Epub ahead of print])。この報告では症例の観察期間が2021年8~9月で行われており、オミクロン株が感染拡大する前の状況であることは注意が必要である。また先に示した英国からの報告では、ファイザー製コロナワクチンBNT162b2やモデルナ製コロナワクチンmRNA-1273のブースター接種後のオミクロン株に対する効果についても検討されており、BNT162b2では約70%、mRNA-1273では約80%まで発症予防効果が回復するとされた(United Kingdom Health Security Agency, UKHSA 2021.12.31)。 米国からの中和抗体価を測定した研究ではコロナワクチン2回接種後3ヵ月以内では高い中和抗体価を示したが、6~12ヵ月経過すると大幅に低下してしまうことが示されている。またオミクロン株に対しては2回接種後3ヵ月以内でも50%以上の方で中和抗体が消失するような結果であり、野生株に対する中和抗体価と比較するとBNT162b2接種群で122倍低く、mRNA-1273接種群では43倍低い結果となった。この報告ではブースター接種での中和抗体価の上昇も検討されており、野生株やデルタ株のブースター接種による中和抗体価の上昇は1~9倍にとどまっていたのに対し、オミクロン株はBNT162b2接種群で27倍、mRNA-1273接種群で19倍中和抗体価が上昇することが示され(Garcia-Beltran WF, et al. Cell. 2022 Jan 6. [Epub ahead of print])、オミクロン株に対抗するためにブースター接種が極めて重要であることが示唆された。 本論評で取り上げたイスラエルのRonen Arbelらの論文(Arbel R, et al. N Engl J Med. 2021;385:2413-2420.)は、BNT162b2を2回接種した約84万人を対象にブースター接種の効果を検証した報告である。この研究の調査対象者は2021年8月調査開始時に年齢が50歳以上で、5ヵ月以上前に2回目接種を完了した方で、約2ヵ月間に3回目接種を受けたブースター接種群75万8,118例と非ブースター接種群8万5,090例で比較検討された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡が主要評価項目とされ、ブースター接種群で65例(10万人あたり0.16人/日)、非ブースター接種群で137例(10万人あたり2.98人/日)という結果が示された。背景因子や併存症による調整を行った後の両群のCOVID-19による死亡ハザード比は0.10であり、ブースター接種群では死亡率が90%低かった。65歳で区切った年齢や男女別でもブースター接種群がCOVID-19による死亡率が低かった。また副次評価項目として規定された新型コロナ感染者もブースター接種群で2,888例、非ブースター接種群で1万1,108例であり、ブースター接種群で83%低かった。 過去にはブースター接種の有効性として発症予防効果や感染予防効果、そして中和抗体価を評価した報告が主であったが、本研究からはブースター接種が死亡率の低下を示すという心強い結果と捉えることができる。 ただし本研究は50歳以上に限定した報告であり、50歳未満の若年者に当てはめることはできないことは注意が必要である。また解析期間は2021年8~9月の約2ヵ月間という短い時間での検討であることや、その時期には現在世界でも日本でも猛威を振るっているオミクロン株ではなく、B.1.617.2系統、いわゆるデルタ株がメインであったことは差し引いて解釈する必要がある。そして多くの方が懸念しているコロナワクチンの有害事象についての検討はなされておらず、今後のデータの集積に期待したいというのは筆者のRonen Arbelらも懸念されているところである。 この研究に含まれる対象者は約84万例が全例ワクチン2回接種者ということになる。ワクチン接種完了者における新規感染を、ワクチン接種を突破して発生した感染であることから「ブレークスルー感染」と一般的に呼称しているが、本研究でのコロナ感染者は全例ブレークスルー感染の範疇であるものと考える。ブレークスルー感染を惹起したウイルスの種類は、その国や地域のその時点で流行している背景ウイルスに規定される(山口,田中. ケアネット論評1422)が、もはや3回目のブースター接種を行っているか否かで死亡率が大きく異なっている現状では、ブレークスルーかどうかは少し意味合いが薄れていると考えざるを得ない。本邦でも全国民の約8割が2回目を接種完了している状況においては、今後の新型コロナウイルスとの戦いに打ち勝つためには変異ウイルスの違いはあれど、ブースター接種をいかに早く推し進めるかどうかにかかっているのではないか。オミクロン株の感染拡大で多くの医療機関で厳しい状況を目の当たりにしていると思われるが、そのような大変な状況下でもできる限りワクチン接種体制を整備していくことが望まれる。

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コロナワクチン有効性、年齢・併存疾患による低下の差は/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンであるChAdOx1-S(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製)とBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)について、2回接種後20週以上の時点で、COVID-19関連の入院および死亡への有効性の低下は、限定的であることが示された。英国保健安全庁(United Kingdom Health Security Agency)のNick Andrews氏らによる調査の結果で、「高齢者と臨床的にリスクのある成人集団では、有効性の低下が大きかった」とまとめている。英国では、2020年12月からワクチン接種を開始。COVID-19の重症化や死亡への高い効果が実臨床データとして示されているが、2回目接種以降は時間経過とともに効果が低下する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月12日号掲載の報告。ChAdOx1-SとBNT162b2の2回目接種以降の有効性を評価 研究グループは、test-negativeデザイン法を用いた症例対照研究で、イングランドにおける症候性COVID-19および関連する入院と死亡へのワクチンの効果を推定した。 ChAdOx1-SとBNT162b2の2回目接種以降の有効性を、参加者の年齢(16歳以上[全体]、65歳以上[高齢者]、40~64歳、BNT162b2については16~39歳も設定)および併存疾患等で分類し評価し、B.1.1.7(アルファ)変異株とB.1.617.2(デルタ)変異株に分けて有効性の低下を調べた。年齢や併存疾患等で低下に差、入院・死亡に対する有効性は維持 デルタ変異株による症候性COVID-19へのワクチンの有効性は、全体では、2回目接種後の早期の週にピークに達し(ChAdOx1-S群:2~9週目に67.6%、BNT162b2群:1週目92.3%)、その後20週目までにChAdOx1-S群44.3%(95%信頼区間[CI]:43.2~45.4)、BNT162b2群66.3%(65.7~66.9)に低下した。 有効性の低下は、65歳以上が40~64歳よりも大きかった。65歳以上では、ピークはChAdOx1-S群が1週目で62.0%、BNT162b2群は2~9週目で79.6%であったが、20週目までにそれぞれ38.0%、54.9%に低下していた。40~64歳は、ピークはChAdOx1-S群は2~9週目で62.0%、BNT162b2群は1週目87.7%であったが、20週目までにそれぞれ56.7%、69.2%に低下していた。 接種後20週目以降時点で、入院、死亡に対する有効性はいずれもあまり低下していなかった。同評価時点で、入院に対する有効性はChAdOx1-S群80.0%(95%CI:76.8~82.7)、BNT162b2群91.7%(90.2~93.0)であり、死亡に対する有効性はそれぞれ84.8%(76.2~90.3)、91.9%(88.5~94.3)であった。 また、入院に対するワクチンの有効性の低下は、健康な成人と比べて、65歳以上で臨床的にきわめて脆弱な人および40~64歳で基礎疾患を有する人で大きかった。

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第94回 喫煙者はより孤立して孤独になっていく

英国イングランドを代表する50歳以上の8,780人を12年間追跡したところ喫煙者は齢を重ねるほどに非喫煙者に比べてより社会的に孤立して孤独になっていました1,2)。孤立して孤独な人ほど喫煙することが先立つ試験で示されていますが、今回の試験は喫煙のせいで孤立や孤独の度合いがどうやら深まっていくことを初めて明らかにしました1)。喫煙は社交の助けになるとの主張を今回の結果は支持していません。むしろその逆で、非喫煙者に比べて喫煙者は家族や友人との交流をより失っていき、近所付き合いや趣味がより乏しくなり、一人で住むことが多くなります。そのような傾向は年齢、性別、貧困や社会的地位を考慮しても認められました。推移を追った今回の観察試験では喫煙と孤立や孤独の関連の原因を突き止めることはできていませんが、喫煙で身体が傷むことで出不精になってしまうことがその一因かもしれません。喫煙は息切れ、肺や心臓などの病気を生じやすくし、その結果社交が途絶えがちなる恐れがあります。または、喫煙で生じ易くなる不安やうつなどの精神の不調が人との関わりを減らしているとも考えられます。あるいは、喫煙者の友人もまた喫煙者であることが多く、ゆえに早く死んでしまって寂しくなっていくのかもしれません。社会が喫煙を相容れなくなりつつあること、とくに間接喫煙の害を減らすための禁煙の決まりが広がっているなどの環境要因の寄与もありそうです。今後の試験で喫煙が孤立/孤独を招く原因を調べる必要がありますが、ともあれ喫煙が社交を促すという考えはおよそ正しくないようです2)。すでに判明している身体への数々の悪影響に加えて喫煙が気の持ちようや社会生活も害しうることを示唆した今回の試験結果が新年に際して禁煙を誓う人のそのいっそうの動機づけとなることを研究者は望んでいます1)。参考1)New findings suggest smoking increases social isolation and loneliness / Imperial College London2)Philip KE, et al.Lancet Reg Health Eur. 2022 Jan 2. [Epub ahead of print]

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英語で「予約しましょう」は?【1分★医療英語】第9回

第9回 英語で「予約しましょう」は?I’ll make you an appointment with a physiotherapist for next week.(来週、理学療法士の予約を取っておきましょう)Do you have anything open next Wednesday?(水曜日に空きはありますか?)《例文1》I’d like to make an appointment with Dr. Green at 11am tomorrow.(グリーン先生との予約を明日の11時に取りたいです)《例文2》I’d like to schedule an appointment for my regular check-up.(定期診察のために予約を取りたいのですが)《解説》日本語で「予約」と訳される英単語には、“appointment”“booking”“reservation”などがあります。人と会うことを「予約(=約束)」する場合には“appointment”、場所や物、たとえばレストランの席や飛行機のチケットを「予約」する場合には“booking”や“reservation”を使います。病院での「予約」は、「医師やその他の医療従事者と会うための予約」だと考えられるため、“appointment”が使われます。「予約をする」は“make an appointment”というフレーズを用いますが、もっと具体的に日程や時間を決めるような状況では、“schedule an appointment”という表現も使われます。希望の日にちで予約が取れるかを聞くときには、“Do you have anything open?(空いている時間はありますか?)”と患者さんから聞かれることもあるかもしれません。“Let’s schedule your next appointment for 5:30.(次の予約は5時半にしましょう)”といったやりとりで予約時間を確定します。講師紹介

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第93回 サイケデリック薬による精神疾患治療の開発が去年大いに前進

いわゆる麻薬の類・サイケデリック薬のものの見方を変えさせる作用が精神疾患の治療に役立つのではないかと期待されてきましたが、その効果を示した説得力のある試験はここ最近までほとんどありませんでした1)。しかし昨春2021年5月に発表された第III相試験でエクスタシーとして知られるMDMAの心的外傷後ストレス障害(PTSD)治療効果が示され、サイケデリック薬による精神疾患治療の開発は昨年大いに前進しました。俳優の沢尻エリカ氏や押尾学氏の事件で広く報じられたMDMAは主に神経のシナプス前セロトニン輸送体への結合を介してセロトニン放出を誘発します2)。MDMAは恐怖記憶の解消を促して社交的な振る舞いを支えること等が動物実験で示されています。また、合計105人が参加した6つのプラセボ対照第II相試験をまとめて解析したところMDMAを利用した治療を受けた患者の半数超(54.2%)がPTSD診断基準を脱していました3)。そして去年発表された第III相試験では42人のうち7割近い28人(67%)がMDMA投与込みの治療でPTSD診断基準を脱していました2)。プラセボ投与群37人でのその割合はMDMA使用群の半分以下の32%(12人)でした。非常に有望な結果ですがその効果の判定には注意が必要なようです。MDMAの明確な向精神作用は患者の期待感に影響を及ぼすかもしれず、そういう期待感を治療の一部として受け入れるとするなら効果の評価を根本的に見直す必要があるだろうとの見解をトロント大学の精神/神経専門家は最近のNature Medicine誌に寄稿しています1,4)。ともあれMDMAやその他のサイケデリック薬によるうつ病、不安症、依存などの精神疾患治療の検討は企業でも研究機関でも盛んになっています。2ヵ月ほど前の昨年11月初めには、マジックマッシュルームの成分として有名なサイロシビン(シロシビン;psilocybin)のうつ病治療効果が被験者数233人の無作為化試験で示されたことを英国ロンドンの企業COMPASS Pathwaysが発表しています5)。同社はさらに大規模な試験を計画しています。また、PTSDへのMDMAのもう1つの第III相試験が進行中であり、開発を担う非営利組織Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(MAPS)は来年2023年にその治療が米国FDA承認に漕ぎ着けることを目指しています6)。参考1)A psychedelic PTSD remedy / Science2)Mitchell JM, et al. Nat Med. 2021 Jun;27:1025-1033.3)Mithoefer MC,et al.. Psychopharmacology.2019 Sep;236:2735-2745.4)Burke MJ, et al. Nat Med. 2021 Oct;27:1687-1688.5)COMPASS Pathways announces positive topline results from groundbreaking phase IIb trial of investigational COMP360 psilocybin therapy for treatment-resistant depression / globenewswire6)MAPS’ Phase 3 Trial of MDMA-Assisted Therapy for PTSD Achieves Successful Results for Patients with Severe, Chronic PTSD / MAP

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血管造影に基づく定量的冠血流比 によるPCIは有効か?/Lancet

 血管造影に基づき血流予備量比を推定する新しい方法である定量的冠血流比(QFR)を用いて経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の標的病変を選択することで、標準的な血管造影ガイドに比べて1年転帰が改善されることが、中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのBo Xu氏らによる無作為化試験「FAVOR III China」で示された。圧センサー付きガイドワイヤーに基づく生理学的評価は、目視による血管造影画像評価と比較して、冠動脈疾患患者における血流制限病変をより正確に特定する。それにもかかわらず、PCIのガイド方法としては、依然として血管造影が最も広く使用されている。Lancet誌2021年12月11日号掲載の報告。患者および評価者盲検にてQFRと血管造影ガイドを比較 FAVOR III Chinaは、中国の病院26施設で実施された無作為化盲検シャム対照比較試験である。研究グループは、18歳以上で、安定/不安定狭心症患者、またはスクリーニングの72時間以上前に心筋梗塞を発症し、血管造影の目視評価で基準血管径が2.5mm以上の冠動脈に50~90%の狭窄病変が少なくとも1つある患者を、QFR群(QFR≦0.80の場合のみPCI施行)と血管造影群(標準的な目視による血管造影評価に基づきPCIを施行)に無作為に割り付けた。被験者と臨床評価者は、治療の割り付けについて盲検化された。 主要評価項目は、1年時の主要有害心血管イベント(全死因死亡、心筋梗塞、虚血による血行再建術の複合)の発現率で、intention-to-treat解析で評価した。QFR群で主要有害心血管イベントリスクが35%低下 2018年12月25日~2020年1月19日の期間に3,847例が登録された。PCIを受けないことを選択した/または医師により撤回された患者22例を除く3,825例が、intention-to-treat解析集団に組み込まれた(QFR群1,913例、血管造影群1,912例)。平均年齢は62.7歳(SD 10.1)、2,699例(70.6%)が男性、1,126例(29.4%)が女性で、1,295例(33.9%)が糖尿病を有しており、2,428例(63.5%)が急性冠症候群であった。 主要評価項目のイベントは、QFR群で110例(Kaplan-Meier推定率:5.8%)、血管造影群で167例(8.8%)に確認された。群間差は-3.0%(95%信頼区間[CI]:-4.7~-1.4)、ハザード比は0.65(95%CI:0.51~0.83、p=0.0004)であり、血管造影群と比較してQFR群が有意に良好であった。これは、QFR群で心筋梗塞や虚血による血行再建術が少なかったことによる。 なお、著者は研究の限界として、QFR法の精度と再現性は技術と血管造影画像法に依存すること、PCI実施者の盲検化は困難であること、追跡期間が1年のみであることなどを挙げている。

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肺炎球菌ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第11回

ワクチンで予防できる疾患:肺炎球菌感染症肺炎球菌感染症とは肺炎球菌の感染による疾病の総称であり、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎などが含まれる。肺炎球菌は主に鼻腔粘膜に保菌され、乳幼児では40〜60%と高頻度に、成人ではおよそ3〜5%に保菌されている1)。感染経路は飛沫感染であり、小児の細菌感染症の主な原因菌の1つである。また、成人の市中肺炎の起因菌では38%と最も多い2)。肺炎球菌が髄液や血液などの無菌部位に侵入すると、菌血症を伴う肺炎、髄膜炎、敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:以下「IPD」)を引き起こす。治療は抗菌薬投与および全身管理であるが、近年は薬剤耐性菌の出現も問題となっている3)。わが国の成人IPDの好発年齢は60~80代で4,5)、基礎疾患があることは発症や重症化のリスクとなる3,6)。65歳以上の成人(以下「高齢者」)の罹患率はおよそ5/10万人・年であり、致命率は6%台と高い1)。成人の肺炎球菌感染症とりわけIPDの発症や重症化の予防には、日常診療における基礎疾患の管理とともに肺炎球菌ワクチンの接種が重要である3,6)。ワクチンの概要肺炎球菌の病原因子の中で最も重要なものは、菌の表層全体を覆う莢膜である。この莢膜は多糖体からなり、97種類の型が報告されている3)。ある莢膜型の肺炎球菌に感染するとその型に対する抗体が獲得され、同じ型には感染しなくなるが、別の型には抗体がないため感染が成立し、発症する7)。そのため肺炎球菌による発症や重症化を予防するには、さまざまな莢膜型の抗体をあらかじめ獲得しておく必要があり7)、肺炎球菌ワクチンは莢膜多糖体を抗原としている。国内では以下の2つのワクチンが承認されているが、それぞれカバーする莢膜型の数や種類、免疫応答の方法などが異なる(表)。以下に2つのワクチンの特徴を述べる。1)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)〔商品名:ニューモバックスNP〕23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(以下「PPSV23」)は、莢膜多糖体からなる不活化ワクチンで、23種類の莢膜型を有する。PPSV23接種による免疫応答では、T細胞を介さないため免疫記憶は獲得されず、B細胞の活性化によりIgG抗体のみが獲得される。IgG抗体は経年的に減弱し、減弱するとワクチン血清型の菌に対して予防効果は期待できなくなる3)。PPSV23の予防効果としては、接種により高齢者のワクチン血清型のIPDを39%減少させ8)、すべての肺炎球菌による市中肺炎を27.4%、ワクチン血清型の肺炎球菌による市中肺炎を33.5%減少させたと国内より報告されている9)。PPSV23は2006年に販売開始となり、2014年から5年間限定で65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳になる人を対象に定期接種となった。2019年度以降はさらに5年間の期限で、同年齢を対象に定期接種が継続されている10)。初回接種後の予防効果は3〜5年で低下する11)。再接種による予防効果について明確なエビデンスは報告されていないが、再接種後の免疫原性は初回接種時と同等であり、初回接種時と同等の予防効果が期待されている12)。また、再接種時の局所および全身性の副反応の頻度は初回接種時より高いことに注意が必要だが、いずれも軽度で許容範囲と考えられている12)。以上より症例によっては追加接種を繰り返してもよいと考えられ、接種後5年以上の間隔をおいて再接種することができる12)。2)沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)〔同:プレベナー13水性懸濁注〕沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(以下「PCV13」)は、莢膜多糖体に無毒化したジフテリア蛋白を結合させた蛋白結合型の不活化ワクチンで、13種類の莢膜型を有する。PCV13接種による免疫応答は、T細胞とB細胞を介している。まず、樹状細胞に抗原が提示されてT細胞の活性化を誘導する(T細胞依存型)。ついで活性したT細胞とB細胞の相互作用によりB細胞が活性化する。その後、形質細胞によるIgG抗体の産生とメモリーB細胞による免疫記憶が獲得される。そのため記憶された莢膜型の菌が侵入すると速やかにIgG抗体産生能が誘導(ブースター効果)され免疫能が高まる3)。小児に対する7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)は2010年より販売開始となり、同年に接種費用の公費助成が開始された。2013年4月より定期接種となり、同年11月よりPCV13に切り替えられた。予防効果として、PCV7・PCV13の導入により小児のIPD、とくに髄膜炎は87%も激減したと報告されている4)。一方、2014年より高齢者に対しても適応が拡大され、任意接種することが可能となった。PCV13接種により高齢者のワクチン血清型のIPDを47〜57%減少させ、ワクチン血清型の肺炎(非侵襲型)を38〜70%、すべての原因の肺炎を6〜11%減少させたとの予防効果が諸外国より報告されている13)。さらに2020年5月からは、高齢者のみならず全年齢に適応が拡大され、全年齢の「肺炎球菌感染症に罹患するリスクが高い人」に接種が可能となった。また、PCV13接種には集団免疫効果が認められており、小児へのPCV7およびPCV13接種の間接効果(集団免疫)により、成人IPD症例のPCV13血清型(莢膜型)は劇的に減少した3)。その一方で、PCV13に含まれない血清型が増加するなど血清型置換が報告されている3)がこの問題は後述する。表 肺炎球菌ワクチン(PPSV23とPCV13)の比較画像を拡大する接種のスケジュール1)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)〔商品名:ニューモバックスNP〕【定期接種】これまでにPPSV23を1回も接種したことがなく、以下(1)(2)にあてはまる人は定期接種として1回接種できる。(1)2019年度から2023年度末までの5年間限定で65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳になる人。なお、2023年度以降は65歳になる年度に定期接種として1回接種できる見込みである。(2)60〜64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限されている人。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)で免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人。【任意接種】2歳以上で上記以外の人。接種後5年以上の間隔をおいて再接種することができる12)。2)沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)〔同:プレベナー13水性懸濁注〕【定期接種】小児(2ヵ月以上5歳未満)以下のように接種開始時の月齢・年齢によって接種間隔・回数が異なることに注意する。(〔1〕1回目、〔2〕2回目、〔3〕3回目、〔4〕4回目)[接種開始が生後2ヵ月~7ヵ月に至るまでの場合(4回接種)]〔1〕〔2〕〔3〕の間は 27 日以上(27~56日)、〔3〕〔4〕の間は 60日以上の間隔をあけて(12~15ヵ月齢で)接種する 。[接種開始が生後7ヵ月~12ヵ月に至るまでの場合(3回接種)]〔1〕〔2〕の間は 27日以上(27~56日)、〔2〕〔3〕の間は 60日以上の間隔をあけて(12ヵ月齢以降で)接種する。[接種開始が12ヵ月~24ヵ月に至るまでの場合(2回接種)]〔1〕〔2〕の間は 60日以上の間隔をあけて接種する。[接種開始が24か月-5歳の誕生日に至るまでの場合(1回接種)]1回のみ接種する。【任意接種】5歳以上の罹患するリスクが高い者:1回1回のみ接種する。日常診療で役立つ接種ポイント1)PPSV23の推奨(1)2歳以上の脾臓を摘出した患者肺炎球菌感染症の発症予防として保険適用されるが、より確実な予防のためには摘出の14日以上前までに接種を済ませておくことが望ましい。(2)2歳以上の脾機能不全(鎌状赤血球など)の患者(3)高齢者(4)心臓や呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏などの基礎疾患がある患者(5)免疫抑制作用がある治療が予定されている患者。治療開始の14日以上前までに接種を済ませておくことが望ましい。2)PCV13の推奨(1)乳幼児(生後2ヵ月~5歳未満:定期接種)IPDは、とくに乳幼児でリスクが高く、5歳未満の致命率はおよそ1%と報告され14)、後遺症を残す危険性もある。そのため乳児であっても、接種が可能となる生後2ヵ月以上ではワクチン接種をされることを強く勧める。(2)基礎疾患がある5〜64歳の人2017年時点のIPDの致命率は、6〜44歳で6.2%、45〜64歳で19.5%と高く、基礎疾患を有することがリスクとなることが報告されている6)。基礎疾患(先天性心疾患、慢性心疾患、慢性肺疾患、慢性腎疾患、慢性肝疾患、糖尿病、自己免疫性疾患、神経疾患、血液・ 腫瘍性疾患、染色体異常、早産低出生体重児、無脾症・脾低形成、脾摘後、臓器移植後、髄液漏、人工内耳、原発性免疫不全症、造血幹細胞移植後など6,15)がある人には、本人・保護者と医師との話し合い(共有意思決定)に基づいてワクチン接種をされることを勧める。詳しくは「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日)を参照。(3)基礎疾患がある高齢者、高齢者施設の入所者 基礎疾患(慢性的な心疾患、肺疾患、肝疾患、糖尿病、アルコール依存症、喫煙者など)がある高齢者では、本人・家族と医師との話し合い(共有意思決定)に基づいてワクチン接種することを勧める11)。とくに、髄液漏、人工内耳、免疫不全(HIV、無脾症、骨髄腫、固形臓器移植など)の患者には接種を勧める11)。高齢者施設の入所者も医師と相談して接種することを勧める11)。3)高齢者に対するPPSV23とPCV13の接種に関する考え方これまで高齢者に対するPPSV23とPCV13の接種について国内外で議論されてきたが、現時点での日本呼吸器学会・日本感染症学会の合同委員会による「考え方」16)を紹介する。【PPSV23未接種者に対して】(1)まず定期接種としてPPSV23の接種を受けられるようにスケジュールを行う。(2)PPSV23とPCV13の両方の接種をする場合には(1)を考慮しつつPCV13→PPSV23の順番で接種し、PCV13接種後6ヵ月〜4年以内にPPSV23を接種することが適切と考えられている。この順番の利点は、成人ではPCV13接種後に、被接種者に13の血清型の莢膜抗原特異的なメモリーB細胞が誘導され、その後のPPSV23接種により両ワクチンに共通した12の血清型に対する特異抗体のブースター効果が期待されることである。ただし、この連続接種については海外のデータに基づいており、日本人を対象とした有効性、安全性の検討はなされていない。【PPSV23既接種者に対して】PPSV23接種から1年以上あけてからPCV13接種を行う。詳細は以下の図1と「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版)」を参照。図1 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(2019年10月)(日本感染症学会/日本呼吸器学会 合同委員会)画像を拡大する今後の課題・展望小児へのPCV7およびPCV13接種の間接効果(集団免疫)により、成人IPD症例のPCV13血清型(莢膜型)は劇的に減少したが、一方でPCV13に含まれない血清型が増加し、血清型置換が報告されている3)(図2)。図2 小児へのPCVs導入後のIPD由来株の莢膜型変化画像を拡大する2018年の厚生労働省の予防接種基本方針部会では、国内のIPDや肺炎原因菌の血清型分布などを検討しPCV13を高齢者に対する定期接種に指定しないと結論された17)。また、米国予防接種諮問委員会(ACIP)において、PPSV23はこれまで同様に推奨されたが、小児へのPCV13定期接種の集団免疫効果により高齢者の同ワクチン血清型の感染が劇的に減少したことから費用対効果も考慮し、高齢者へのPCV13の定期接種や一律のPCV13-PPSV23の連続接種は推奨しない方針に変更され、患者背景を考慮してPCV13接種を推奨することとされた13)。PCV13は高齢者の定期接種には指定されていないものの、接種しないことが勧められているわけではなく、その効果や安全性は確認されており13)、患者背景を考慮して接種する必要があることに注意する。とくに基礎疾患がある高齢者、高齢者施設の入所者には積極的に接種を勧めたい。また、2016年時点の高齢者のPPSV23接種率は40%ほど1)に留まっており、接種率のさらなる向上が必要である。基礎疾患を有することはIPDの重症化のリスクであり、日常診療における基礎疾患の管理とともに、適切にPPSV23やPCV13の接種を勧め、被接種者と共有意思決定を行い(shared decision making)、接種を実施し患者や地域住民をIPDから守りたい。わが国では成人IPDの調査・研究に限界があるが、前述の通りIPD症例の莢膜型の変化が報告4)されており、将来的にはさらに多くの血清型をカバーするワクチンやすべての肺炎球菌に共通する抗原をターゲットとした次世代型ワクチンの開発が望まれ、今後の動向にも注目したい3,6,18)。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)1)23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライド ワクチン(肺炎球菌ワクチン) ファクトシート. 平成30(2018)年5月14日.国立感染症研究所.2)13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(成人用)に関するファクトシート. 平成27年7月28日.国立感染症研究所. 3)65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版 2019-10-30)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会4)「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日).日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会.5)こどもとおとなのワクチンサイト1)国立感染症研究所. 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライド ワクチン(肺炎球菌ワクチン) ファクトシート. 平成30(2018)年5月14日. 2018.(2021年8月9日アクセス)2)Yoshii Y, et al. Infectious diseases. 2016;48:782-788.3)生方公子,ほか. 肺炎球菌感染症とワクチン. 2019.(2021年8月10日アクセス)4)Ubukata K, et al. Emerg Infect Dis. 2018;24:2010-2020.5)Ubukata K, et al. J Infect Chemother. 2021;27:211-217.6)Hanada S, et al. J Infect Chemother. 2021;27:1311-1318.7)生方公子, ほか. 肺炎球菌. 重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析、その診断・治療に関する研究.(2021年8月10日アクセス)8)新橋玲子, ほか.成人侵襲性肺炎球菌感染症に対する 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンの有効性. 2018; IASR 39:115-6.(2021年8月10日アクセス) 9)Suzuki M, et al. Lancet Infect Dis. 2017;17:313-321.10)厚生労働省. 第27回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料. 2019.(2021年8月10日アクセス)11)World Health Organization. Releve epidemiologique hebdomadaire. 2008;83(42):373-384.12)肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会. 肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版). 感染症誌. 2017;9;:543-552.(2021年8月10日アクセス)13)Matanock A, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2019;68:1069-1075.14)国立感染症研究所. 資料3 13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(成人用)に関するファクトシート. 平成27年7月28日. 第1回厚生科学審議会予防接種・ワクチン文科会予防接種基本方針部会ワクチンに関する小委員会資料. 2015.(2021年8月9日アクセス)15)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会. 「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日). (2021年8月9日アクセス)16)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版 2019-10-30). 2019.(2021年8月9日アクセス)17)厚生労働省. 第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料 2018.(2021年8月9日アクセス)18)菅 秀, 富樫武弘, 細矢光亮, ほか. 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)導入後の小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の現状. IASR Vol. 39 p112-113. 2018.(2021年8月10日アクセス)講師紹介

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12/11、第63回米国血液学会(ASH)スタート!注目演題は?

 12月11日(現地時間)から第63回米国血液学会(ASH)が米国アトランタとオンラインのハイブリッド形式で開催される。COVID-19の影響で昨年は完全オンライン開催だったが、今年はハイブリッド方式を選択。現地の参加者の交流を促すため、感染対策を行いながらウエルカムレセプションやオピニオンリーダーを囲む少人数セッションなどが企画されている。 既にAbstractが公開されており、Late-breakingには「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するポラツズマブ ベドチンとR-CHP療法併用vs.R-CHOP療法/POLARIX」「初回免疫寛容誘導(ITI)療法に対するrFVIIIFcの有効性」「B細胞非ホジキンリンパ腫2次治療としてのCAR-T細胞tisagenlecleucel vs.標準治療/BELINDA試験」などの演題が選ばれた。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」ではASHの特設カテゴリーを設置。横浜市立大学の山崎 悦子氏が選定した白血病、国立がん研究センター 東病院の山内 寛彦氏が選定したリンパ腫、群馬大学大学院医学系研究科の半田 寛氏が選定した骨髄腫を中心とした、計25の注目演題をコメント付きで紹介している。登録者向けのオンデマンド配信は2022年2月1日まで視聴可能となっている。

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英語で「利尿薬」は?【1分★医療英語】第1回

第1回 英語で「利尿薬」は?Are you taking a water pill?(利尿薬を服用していますか?)I used to, but not now.(以前は飲んでいましたが、今は飲んでいないです)《例文1》Don’t take a water pill at night.(利尿薬は夜に服用しないでください)《例文2》We will increase the dose of your water pill.(利尿薬の用量を上げます)《解説》「利尿薬」は正式には“diuretic”といいますが、患者と話す時は“water pill”を使うことがほとんどです。水分の排泄促進剤として、書いて字のごとく“water pill”のほうがわかりやすいですね。薬の名前は、日本語のカタカナと異なる場合があり、注意が必要です。thiazideは「サイアザイド」と発音し、ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)は「ハイドロクロロサイアザイド」と、LもRもThも交ざり、発音の難易度は高めです。また、薬を「飲む」の動詞は“drink”ではなく“take”を使います。たとえば、“What medications do you regularly take?(普段どのお薬を服用していますか?)”のように使います。講師紹介

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