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MediTalking(メディトウキング)終了のお知らせ

CareNetからのお知らせみなさまにご愛顧いただきました「MediTalking(メディトウキング)」は、7月23日に予定しておりますCareNet.comサイトリニューアルに伴い、誠に勝手ながら2012年7月19日にてサービスを停止させていただきました。「エキスパートに質問(臨床、経営、特別企画)」に掲載のコンテンツは、以下のリンクよりご覧いただけます。エキスパートに質問(臨床)戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」准教授 長谷部光泉 先生「すべては病気という敵と闘うために 医師としての強い気持ちを育みたい」教授 福島統 先生「国民のための医者をつくる大学 この理念の下に医師を育成する」教授 富田剛司 先生「全身の疾患が眼に現れることは明確 眼を診るのは診断の第一歩である」教授 川合眞一先生「関節リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした生物学的製剤」部長 中山優子 先生「がん治療における放射線治療医は多くの可能性をもつ魅力ある分野」副院長 教授 加藤良二 先生「人を助けるために何かをしたい。その動機が医師の原点となる」教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」准教授 高橋 寛先生「人と交わり、先端を目指せ!-ある整形外科医の挑戦-」講師 斎藤充先生「骨粗鬆症治療「50%の壁」を打破する「骨質マーカー」」教授 尾﨑重之先生「弁膜症治療の歴史を変える「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」」主任教授 森田峰人先生「産科婦人科最先端治療は患者個々への対応が決め手」教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」教授 中村正人先生「カテーテルの歴史とともに30年、最先端治療の場で」准教授 平山陽示先生「全人的医療への入り口」准教授 小早川信一郎先生「白内障手術の光と影」エキスパートに質問(経営)守屋文貴「やりがいと誇りをもって働ける組織を創るには?(前編)」守屋文貴「やりがいと誇りをもって働ける組織を創るには?(後編)」西岡 篤志氏「税務3回目 交際費の必要経費化・損金化のポイント」院長 井出広幸先生「医師に必要な経営能力、マネジメント能力を身につけるために」事務局長 三谷博明「患者さんに情報を正しく伝える、インターネット時代の広告のあり方」西岡 篤志氏「税務2回目 開業医に対する税務調査の実態と対応術」企画広報室長 宇佐美 脩氏「医師と患者の架け橋 -病院広報の現場」西岡 篤志氏「税務1回目 新医療法人のデメリット・誤解の解明」エキスパートに質問(特別企画)座長:岩田健太郎先生「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる:CareNet+Style連携特別企画」PubMed CLOUD作りました、「時間がない人」専用のPubMed

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「Breaking up with Diabetes」にむけて ~第55回日本糖尿病学会年次学術集会 レポート~

 参加者が約1万3千人と、過去最大の規模となった今回の学術集会。演題数は2,284題と過去最高となり、「糖尿病領域」の盛り上がりを肌で感じられる学会であった。【依然、注目度の高い糖尿病領域】 実際、4月1日から実施となったHbA1c国際標準化や「糖尿病治療ガイド2012-2013」の発行など、今春も糖尿病領域の話題は豊富だ。理事長声明においても、理事長の門脇氏がHbA1c国際標準化に触れ、「糖尿病臨床・研究・治験のさらなる国際化を目指す」とともに、「診療におけるHbA1cの認知向上につなげたい」と述べた。 また、エビデンス構築の一環としてJ-DOIT3の概要が発表された。本試験では、強力な治療介入が糖尿病患者の健康寿命やQOLをどれだけ改善するかを検討する。門脇氏は、「重症低血糖は2例のみでありACCORD試験の200分の1にとどまっている」点から「過去の大規模臨床試験とは異なる新しい結論がみえてくるのでは」と期待を語った。【インクレチン関連薬の演題が急増】 注目が集まる糖尿病領域だが、やはりその引き金は「インクレチン関連薬」ではないだろうか。発売から一定期間を経て多くの臨床成績が集積され、インクレチン関連薬の演題はこの3年で格段に増加したという。 昨年までは各薬剤の「有効性」「安全性」の演題がほとんどであったが、今年は「1年間にわたる長期投与試験」「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」「DPP-4阻害薬間の切り替え症例」など一歩踏み込んだ切り口でのインクレチン関連薬の口演、ポスター発表を目にした。【見えてきた、2次無効例の存在】 長期投与試験の結果で印象的だったのは、一部で2次無効例の存在がみられたことであった。集積途中のデータとはいえ、期待のインクレチン関連薬でも、長期の血糖コントロールは一筋縄ではいかないという事実に、糖尿病治療の難しさを再認識させられた。患者自身の生活習慣の悪化という根本原因に、歯止めをかける治療が求められているのかもしれない。「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」は、昨年よりは踏み込んだ研究であったものの、残念ながら、「今後の長期的検討が必要」「多くの症例蓄積が必要」というまとめに変化はなく、今後予定される大規模臨床試験に期待がかかる。【インスリンからの切り替え・離脱例の増加】 一部の適応追加が影響したのかGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬ともに「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」がみられた。インスリン分泌能の保持された患者での順調な離脱例の報告もあったが、症例によってはやや危険と思われる離脱報告もあり、適正使用が重要と感じた。とくに、インスリン使用者のDPP-4阻害薬への切り替えについては血糖コントロールの点からも慎重さが求められるのではないだろうか。【次世代の薬 :SGLT2選択的阻害薬】 さて、インクレチン関連薬に続く新しい波、として期待される薬剤がある。「SGLT2選択的阻害薬」だ。原尿からのブドウ糖の再吸収を減らし、ブドウ糖を尿から排泄させる、という新規作用機序をもつ薬剤でありポスター、演題で取り上げられた。新薬セッションでは各開発メーカー担当者が座長より質問を受ける一幕もみられ、注目度の高さがうかがわれる。 現在開発中のSGLT2選択的阻害薬には、イプラグリフロジン(アステラス製薬/寿製薬)、ダパグリフロジン(米ブリストル・マイヤーズスクイブ/英アストラゼネカ)、トホグリフロジン(中外製薬)、カナグリフロジン(田辺三菱製薬)、ルセオグリフロジン(大正富山)、エンパグリフロジン(日本ベーリンガーインゲルハイム/リリー)等がある。【新規超持効型インスリン:デグルデクへの期待】 インスリンのトピックスとしては、開発中の新規超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)に注目したい。 デグルデクは、皮下でマルチヘキサマー(インスリン6量体の長鎖)を形成し、その後、亜鉛(Zn)の解離とともに端から1つずつモノマーとなって血中へ移行する。これにより緩徐に血中に吸収され、長時間にわたる作用を示す。今回、インスリン グラルギン(以下、グラルギン)に対する非劣性試験結果においてグラルギンと同等の血糖改善と低血糖のリスク低下が報告された。低血糖をきたしにくいインスリン製剤として期待される。【まとめ】 インクレチン関連薬発売から一定期間を経過し、臨床データは増加傾向にある。とはいえ、解明されていない事は多い。かたや、糖尿病有病率については依然増加し続けている。 門脇氏は「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」こそが糖尿病治療の最終目標である、と述べる。目標達成のためには根本的な糖尿病の予防・治療法の開発に継続して取り組む必要がありそうだ。【編集後記】 インクレチン関連薬発売を経て、糖尿病領域はにわかに活性化している。今がまさに過渡期であり、近い将来、新しいエビデンスや新薬、画期的な治療が現れ、「糖尿病治療を取り巻く現況」は大きく変化していくのかもしれない。今回はその前触れを感じさせる学会であった。 変化を迎えようとしているこの時代に糖尿病の予防・治療に関わる最新情報を発信できることは医療情報を発信する側の人間として幸運なことといえよう。 「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」の実現にむけ、我々も、タイムリーで適切な医療情報の伝達に努めていきたい。

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ACC 2012 速報

2012年3月24日~27日まで米国・シカゴで『第61回米国心臓病学会(ACC.12)』が開催されます。Late-Breaking Clinical Trialsの発表を含めた主要トピックスの中から、事前投票で先生方からの人気の高かった上位6演題のハイライト記事をお届けします。ACC2012 注目の演題一覧2012年3月28日掲載現地時間:3月27日発表CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II現地時間:3月25日発表経カテーテル的腎除神経術、降圧作用は3年間持続:Symplicity HTN-12012年3月27日掲載現地時間:3月26日発表「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005現地時間:3月26日発表"On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験2012年3月26日掲載現地時間:3月24日発表自己骨髄単核球移植、虚血性心疾患例の心機能を改善せず:FOCUS-CCTRN試験現地時間:3月24日発表動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

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ACC 2012 速報 自己骨髄単核球移植、虚血性心疾患例の心機能を改善せず:FOCUS-CCTRN試験

虚血性心不全〔左室機能障害〕に対する薬物治療の限界を受け、自己骨髄単核球(BMC)移植の有用性に期待が寄せられている。しかし残念ながら、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告された第II相無作為化試験 "FOCUS-CCTRN" では、心内膜への投与による虚血改善、心機能改善のいずれも確認されなかった。ただし、有用性が期待できるサブグループも示唆されており、米国テキサス・ハート・インスティチュートのEmerson C Perin氏は、今後に期待するとの姿勢を示した。本試験の対象は、症候性の左室機能低下(左室駆出率≦45%〕を認める安定冠動脈疾患92例である。全例、最大用量での薬物治療を受けている。平均年齢は63歳、NYHA心不全分類II度とIII度が90%以上を占めた。CCS狭心症分類は、Class IIが分類者の40%強と最も多かった。これら92例は、BMC群(61例)とプラセボ群(31例)に無作為化され、二重盲検法にて6か月間追跡された。BMC群では、腸骨上縁から採取した骨髄を自動化されたプロセス(Sepax)で純化し、100×106を心内膜に注入した。注入箇所は15箇所。いずれも、電気機械的マッピング(NOGAシステム)を用いて、"viable"と判断された部位である。6か月後、3つ設定されていた一次評価項目──「左室収縮末期容積(LVESV)」、「心筋酸素消費量(MVO2)」と「心筋SPECT上虚血」──はいずれも、BMC群とプラセボ群の間に有意差を認めなかった。ただし、試験前から定められていたサブ解析から、BMCが有用であるサブグループが浮かび上がった。すなわち、血管内皮前駆細胞(Endothelial Colony Forming Cell)濃度が中央値よりも高い群において、MVO2の有意な改善が認められた。また後付け評価項目だが「左室駆出率(LVEF)」も、CD34陽性細胞、CD133陽性細胞の血中濃度と有意な正の相関を示した。いずれも、内皮前駆細胞のマーカーとなり得る細胞だという。このような患者ではBMC移植が有用な可能性があると、Perin氏は述べた。ただし、年齢の中央値である「62歳未満」でもEFは有意に改善していたため、年齢とこれら細胞数の相関が気になる。しかしその点に関するデータは、現時点では持ち合わせていないとのことだった。なお、パネルディスカッションでは、採取骨髄の自動純化プロセスに問題はなかったのかとの指摘もあった。本試験は、今後、より詳細なデータが報告される予定だという。

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ACC 2012 速報 動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

経口プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗剤は、「トロンビンによる血小板凝集」の抑制という、新たな機序を持つ抗血小板剤である。しかし、動脈硬化性疾患例全般に対する有用性は、TRA 2°P-TIMI 50試験の結果、疑問符がついた。ブリガム・アンド・ウィミンズ病院(米国)のDavid A. Morrow氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。なお、本試験は2月7日、米国Merck社から概要が公表されている。本試験の対象は、心筋梗塞(MI)、虚血性脳血管障害(iCVD)あるいは末梢動脈疾患(PAD)の既往を有する26,449例。全例、病態は安定しており、標準的薬物治療を受けていた。既往歴はMIが最多で67%、次いでiCVDの19%、PADの14%だった。チエノピリジン系を含む抗血小板薬併用(DAPT)は、MI既往例の80%弱、PADの28%、iCVDの8%に認められた。これら26,449例は、PAR-1拮抗剤 "vorapaxar" 2.5mg/日群(13,225例)とプラセボ群(13,224例)に無作為化され、二重盲検法で追跡された。しかし試験開始1年後、PAR-1拮抗剤群におけるiCVD既往例の頭蓋内出血増加を、安全性監視委員会から指摘される。iCVD例(4,883例)の追跡はこの時点で中止され、残り21,556例が、最終的に2.5年間〔中央値〕追跡された。ただし、評価項目の解析には、iCVD例も含めた。その結果、有効性の一次評価項目である「心血管系死亡、心筋梗塞、脳卒中」は、PAR-1拮抗剤群でプラセボ群に比べ有意に減少していた(9.3%/3年 vs 10.5%/3年、ハザード比 [HR]:0.87、95%信頼区間 [CI]:0.80~0.94、p<0.001)。iCVD例を除外しても同様で、PAR-1拮抗剤群におけるHRは0.84だった(p<0.001)。一方、PAR-1拮抗剤群では、出血も有意に増加していた。安全性一次評価項目である「GUSTO分類中等度~重度出血」(要輸血・血行動態著明増悪 [含む頭蓋内出血])発生率は、プラセボ群の「2.5%/3年」に対し「4.2%/3年」だった〔HR:1.66、p<0.001)。iCVD例を除外して解析しても同様だった(HR:1.55、p=0.049)。そこで、上記「有効性一次評価項目」と「安全性一次評価項目」を併せ、「全般的有効性」として発生リスクを比較した。その結果、PAR-1拮抗剤群とプラセボ群に有意差は認められなかった(HR:0.97、95%CI:0.90-1.04、vsプラセボ群)。iCVD例を除いて解析しても、同様の結果だった(HR:0.96、95%CI:0.88~1.05) 。この結果を受けMorrow氏は、PAR-1拮抗剤が全ての動脈硬化性疾患例に適しているとは思わないとした上で、有用性が期待できる患者群の特定が重要だと述べた。本試験のサブ解析からは、体重60kg以上でiCVD既往のないMI患者における、有用性が示唆されている。

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ACC 2012 速報 「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005

急性冠症候群(ACS)診断が疑われる低~中等度リスク患者を対象に、マルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)を用いてACSを除外した場合、除外例における30日間「死亡・心筋梗塞」発生率は1%未満と極めて低いことが、無作為化試験 "ACRIN PA 4005" の結果、明らかになった。米国ペンシルバニア大学のHarold Litt氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。同氏は「CCTAを用いたACS除外は安全で効率的だ」と結論している。本試験の対象は、ACSを疑う症状がありながら、心電図上虚血性変化を認めない救急外来(ER)受診1,370例である。全米5施設から登録された。ACSを除外し得た例は含まれておらず、全例、TIMIリスクスコアは2以下だった。平均年齢は50歳弱、男女ほぼ半数ずつだった。これら1,370例が、即時CCTA施行群(908例)と、通常の診療を行う対照群(462例)に無作為化された。CCTA群では64列以上のモダリティを用い、狭窄が50%未満であれば加療せず帰宅、対照群では各施設の判断にゆだねた。Litt氏によれば米国の「通常診療」では、ER受診時に心電図検査と血中マーカーを検査し、それでACSが除外できない場合、入院または日を改めての「負荷試験」というのが一般的だという。30日間追跡した結果、CCTA所見に基づくACS除外の安全性が確認された。すなわち、CCTAにより「狭窄率<50%」とされ、加療せず帰宅した患者は83%に上ったが、それらの「30日以内の心臓死・心筋梗塞」(第一評価項目)発生リスクは、0%(95%信頼区間[CI]:0.00~0.57%)。95%CI上限が、当初仮説で設定した「1%」を下回った。「30日以内の重篤イベント発生率<1%」は、米国ガイドラインが「低リスク」とする基準だという。加えて、全CCTA群と対照群の「死亡・心筋梗塞」、「冠血行再建術施行」発生率にも有意差はなかった。CCTAを用いた鑑別はまた、医療経済的にも好ましいと考えられた。ERからの退院率は、CCTA群で50%と、対照群の23%に比べ有意に高い。院内滞在時間も、CCTA群で有意に短かった。一方、心臓カテーテル検査、ER再受診、再入院、心臓専門医受診──はいずれも、両群の頻度に差はなかった。現在、Litt氏らは、CCTAによるACS除外の安全性・経済性が長期間維持されるか、1年間の追跡を継続中だという。

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ACC 2012 速報 "On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験

わが国の冠動脈バイパス術(CABG)において、off-pump CABGの施行数はon-pumpをしのぐ。一方、off-pumpの予後改善作用がon-pumpを超えるとのエビデンスはない。Late Breaking Clinical Trialsセッションで報告されたCORONARY試験(CABG Off or On Pump Revascularization Study)もまた、off-pumpとon-pumpを比較した過去最大の試験ながら、off-pumpの優越性は証明されなかった。カナダ・マクマスター大学のAndré Lamy氏が報告した。CORONARY試験の対象は、正中胸骨切開によるCABGの適応がある4,752例。いずれも、「末梢血管疾患」、「腎機能低下」、「70歳以上」、「70歳未満だが危険因子保有」などのリスクを有する。試験開始時の平均年齢は68歳、男性が80%を占めた。EuroSCOREは「0~2」〔低リスク〕が3割弱、「3~5」〔中等リスク〕が半数強だった。また、40%弱は緊急手術例である。さらに、60%近くが3枝病変、20%弱が2枝病変例だった。これら4,752例が、”Off-pump”CABG群(2,375例)と"On-pump"CABG群(2,377例)に無作為化された。CABG術者は、off-pump、on-pumpともそれぞれ100例以上の経験がある、2年以上のキャリアを有する心臓外科医である。この点は、先に報告されているROOBY試験と大きく異なる。30日間追跡後、一次評価項目である「死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全」発生率は、off-pump群:9,8%、on-pump群:10.3%で両群間に有意差はなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、p=0.59)。内訳を比較しても、いずれかの群で有意に減少していたイベントはなかった。ただし、血行再建術再施行は、off-pump群で有意に多かった。一方、輸血の必要、急性腎傷害はon-pump群で有意に多かった。Lamy氏は上記から、「熟練者が行う限り、off-pump、on-pumpいずれのCABGも合理的な選択肢」と結論した。これに対し壇上のパネリストからは「本試験はoff-pumpの優越性を証明できなかっただけであり、off-pumpとon-pumpの同等性は証明されているのか」との疑問の声があがった。確かに、当初仮説は「off-pump群で28%のリスク減少が見られる」というものである。これに対しLamy氏は、両群の結果の類似性を強調していた。なお、本試験には、もう一つの一次評価項目、「5年間の死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全と冠血行再建術再施行」が設定されている。長期追跡によりoff-pumpとon-pumpの予後に差がつく可能性は否定できない。公表予定は2016年。結果が待たれる。

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ACC 2012 速報 CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II

最終日のLate Breaking Clinical Trialsセッションでは、昨日のACRIN PA 4005試験に続き、急性冠症候群(ACS)鑑別におけるマルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)の有用性が示された。1,000例登録の無作為化試験 "ROMICAT II" である。CCTAを用いた結果、転帰を増悪させることなく、救急外来受診例の院内滞在時間は有意に短縮した。米国マサチューセッツ総合病院(MGH)のUdo Hoffmann氏が報告した。ROMICAT IIの対象は、ACRIN PA 4005と同じく「救急外来にて胸痛を訴え、ACSを確定も除外もできない」1,000例である。心電図上で虚血が確認された例、血中トロポニンT濃度上昇例、冠動脈疾患既往例などは除外されている。平均年齢は54歳、女性が45%強を占めた。これら1,000例は、501例がCCTA群に、499例が「通常診断」群に無作為化された。CCTA群では64列(以上)CCTAを施行、通常診断群ではストレステストなど、各施設が必要と判断した検査が行われた。ACSの有無は、参加施設が独自に判断する。なお参加9施設に、救急外来でCCTAをACS鑑別に用いた経験はない。CCTA読影者は本試験のために新たに教育を受けた。その結果、一次評価項目である「院内滞在時間」は。CCTA群:23.2時間、通常診断群:30.8時間と、CCTA群で有意(p=0.0002)に短縮していた。内訳を見ると、最終的にACSと診断された75例では両群間の滞在時間に有意差はなく、確定診断でACSが除外された例で著明に低値となっていた(CCTA群:17.2時間、通常診断群:27.2時間、p<0.0001)。背景には、CCTA群の46.7%が救急外来からそのまま帰宅したという事実がある(通常診断群:12.4%)。ちなみに、冠動脈造影を施行された患者は、CCTA群の12.0%、通常診断群の8.0%に過ぎなかった。さらに、CCTAによるACS除外の正確性も示唆された。全例の記録を研究グループが検証したところ、ACS偽陰性例は両群とも1例も認めなかった。また、診断後28日間の「死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、緊急血行再建術施行」の発生率は、CCTA群で0.4%、通常診断群で1.0%と、有意差はなかった。本試験は米国国立心肺血液研究所(NHLBI)により実施された。

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ここがポイント!第76回日本循環器学会学術集会

2012年3月16日(金)~18日(日)の3日間、第76回日本循環器学会学術集会(JCS)が開催される。開催に先立ち2月29日(水)に都内でプレスカンファレンスが行われ、会長の鄭 忠和氏(鹿児島大学大学院 循環器・呼吸器・代謝内科学 教授)が今回の学術集会のみどころを語った。【大筋でつかむ、本学会のみどころ】新幹線が全線開通し、全県に空港も整備される九州はアジアの交流拠点として急速に活性化している。今回の学会は、そんなアジアの窓口、福岡で開催される。『愛と情熱: アジアから世界へ』をメインテーマに掲げるだけに各国との交流が期待される。【4つの会長特別企画】会長特別企画は以下の4つを予定。 1.第16回アジア太平洋ドップラー・心エコー図学会との同時開催2.久山町研究50周年記念シンポジウム3.東南アジア諸国12カ国の若手医師による症例発表「Asian Joint Case-Conference」4.日野原重明氏の100歳記念講演:『後輩へのメッセージ‐私が生涯を通して学んだこと‐』中でも久山町研究50周年記念シンポジウムでは、半世紀にわたる偉大な研究成果を確認できると期待される。また若手医師による症例発表ではアジア各国の医師の間で活発な交流が実現するだろう。【今年の真下記念講演・美甘レクチャーは?】17日午前には2010年のノーベル化学賞受賞者、鈴木章氏による真下記念講演も予定。研究者である鈴木氏の話に注目が集まりそうだ。鈴木氏の講演の後に予定される、心エコー図学の世界的権威であるPravin M. Shah氏(Hoag Heart Valve Center,米国) による美甘レクチャーも必見である。【「特別講演」では海外の一流医師が発表 】海外の一流医師が行う特別講演にも注目だ。ハーバード大学(米国)のEugene Braunwald博士の衛星中継(16日午前)や、ブルガダ症候群で知られるバルセロナ大学(スペイン)Josep Brugada教授の特別講演(17日午後)など、海外の一流医師の講演を聴く機会が設けられる。【東日本大震災を受けた発表も予定】また、東日本大震災の経験を踏まえ、震災と循環器疾患の関係についての発表も予定されている。Late Breaking Clinical Trials 3 (18日午前)では、東北大学 下川氏による「The East Japan Earthquake Disaster and Cardiovascular Diseases」 が予定されるほか、18日午後のセッションでも「震災時の心血管イベントへの対応」が取り上げられる予定である。【新研修医制度の抱える問題点をクローズアップ】そのほか変わり種だが、17日の午後に予定されるMeet the Expert6 「新研修医制度による地方医療の崩壊」では、厚生労働省 医政局医事課医師臨床研修推進室の植木氏が講演する。厚生労働省職員である植木氏の講演は、質疑応答も含め注目したい。このように今回も、魅力的な演題が多数予定されている。メインテーマの『愛と情熱』にふさわしい、熱く刺激的な学術集会が期待できそうである。【JCS参加者は、こちらの情報もチェック】今回の学会から「電子抄録アプリ」が採用されている。会場には無線LANコーナーがあり、スマートフォンやタブレット端末を用いれば、会場内でも気になるセッションや演題の検索ができる。登録セッションの10分前にアラームメールが送信されるので、聴き逃す心配はなくなりそうだ。なお、抄録集は今年から冊子ではなくCD-ROMでの販売になる。その場で内容を確認したい方にはCD-ROM再生用のデバイスを持参することをお勧めする。【鹿児島グルメと会場間の移動手段について】3月16日(金)~18日(日)の3日間、マリンメッセ福岡では、主催校がある鹿児島の味を提供する「鹿児島グルメ横丁」が開催される。本場の鹿児島食文化をリーズナブルに体験する機会となるだろう。「鹿児島グルメ横丁」のあるマリンメッセ福岡と福岡国際会議場とは少々距離があるが、開催期間中は参加者専用移動サービスとして無料ベロタクシーが用意される。ベロタクシーとは環境に優しい自転車タクシーのこと。運用台数に限りはあるがシャトルバス以外の移動手段として利用可能だ。【参加登録は前日がお勧め】初日の参加登録は混雑が予定されるが、会期前日の3月15日(木)14:00~21:00であれば、博多駅10FのJR博多シティ会議室でも参加受付が可能 (ただし、日本循環器学会会員、非会員医師および医療関係者のみの受付)。前日の夜に早めの受付を済ませておくことで、初日から時間を有効に使えるのではないだろうか。第76回日本循環器学会学術集会(JCS)を開催初日から満喫し、会場で有意義な時間を過ごすための手段としてご提案したい。 《関連コンテンツ》「ケアネットフラッシュ」3月16日~開催!第76回JCSの見どころhttp://www.carenet.com/utility/carenetflash/movie/04.html(ケアネット 佐藤寿美)

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成人とは異なる小児の肺高血圧症の臨床的特徴が明らかに

小児の肺高血圧症では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)が多く、その半数以上を特発性(IPAH)や家族性(FPAH)が占めるなど、成人とは異なる臨床的特徴を示すことが、オランダ・フローニンゲン大学のRolf M F Berger氏らの検討で明らかとなった。肺血管抵抗増加をともなう肺高血圧症は、高い合併症罹患率や死亡率を示す重大な疾患だが、その臨床的特徴は十分には知られていない。成人と小児では病理生物学的、臨床的特徴が類似する部分もあるが、たとえばIPAHやFPAHは小児のほうが予後不良であり、成人に比べ治療法の開発も遅れているため、分けて考える必要があるという。Lancet誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月11日号)掲載の報告。19ヵ国31施設が参加する国際的レジストリー研究Tracking Outcomes and Practice in Pediatric Pulmonary Hypertension(TOPP)は、小児肺高血圧症の人口学的背景、治療、アウトカムに関する情報の提供を目的とする国際的な前向きレジストリー研究。2008年1月31日の開始から2010年2月15日までに、19ヵ国31施設から肺高血圧症または肺血管抵抗増加と診断された18歳未満の患者が登録された。患者背景および疾患特性として、診断時と登録時の年齢、性別、人種、主症状、肺高血圧症分類、併存疾患、病歴、家族歴、血行力学的指標、WHO機能分類クラスなどが記録された。フォローアップの決定は、個々の患者の医療ケアの必要性に応じて主治医が行った。88%がPAH、その57%がIPAHまたはFPAH、特定疾患によるものは先天性心疾患が多数456例が登録され、362例(79%)が肺高血圧症と確定された。317例(88%)がPAHと診断され、そのうち182例(57%)が特発性(IPAH)または家族性(FPAH)で、他の特定の疾患に起因した135例(43%)のうち115例(85%)は先天性心疾患が原因であった。42例(12%)は呼吸器疾患あるいは低酸素症に起因する肺高血圧症で、その多くに気管支肺異形成がみられた。慢性血栓塞栓性肺高血圧症あるいは他の原因による肺高血圧症は3例のみであった。染色体異常(主に21トリソミー)は47例(13%)で報告された。診断時年齢中央値は7歳(IQR:3~12)、59%(268/456例)が女児であった。呼吸困難と疲労が最も頻度の高い症状だったが、IPAHまたはFPAHの31%(57/182例)と、手術を受けた先天性心疾患患者の18%(8/45例)に失神が認められた。手術を受けていない先天性短絡性心疾患患者では失神はみられなかった。362例中230例(64%)は、重篤な肺高血圧症にもかかわらずWHO機能分類クラスI/IIであり、右心機能は一貫して保持されていた。著者は、「TOPP研究によって、小児肺高血圧症に特有の重要な臨床的特徴が同定された。これは、成人の試験のデータを外挿するよりも、小児特有のデータの必要性に関心を促すものだ」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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中東からの帰還兵に多い呼吸器障害の原因とは

1990年代に配備され最近帰国したイラク、アフガニスタンからの帰還兵では、呼吸器症状の報告が一般的になっているという。米国、英国、オーストラリアで行われた疫学的研究では、他地域配備と比べて中東配備兵での呼吸器障害の発生率増大が報告され、2009年の報告ではイラク内陸部への配備との関連が示されたが、配備中に吸入性傷害を負ったことは明らかになったものの病理学的な検証はなされていない。そこで米国・Meharry医科大学のMatthew S. King氏らは、帰還後に労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例について症例記述研究を行った。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例を評価King氏らが研究対象としたのは、フォート・キャンベル(ケンタッキー)の陸軍病院から運動耐容能評価のため、2004年2月~2009年12月の間に大学病院に紹介されてきた80例の帰還兵であった(配備先:イラクのみ62例、イラクとアフガニスタン17例、アフガニスタンのみ1例)。いずれも配備前は健康であったが、帰還後は呼吸困難のため2マイルランテストの米陸軍基準を達成することができなくなってしまっていた。帰還兵に対し、病歴、曝露歴、身体検査、肺機能検査、CT検査が行われ、非侵襲性評価では症状について説明がつかなかった49例には、さらにバイオプシー検査が行われ、心肺運動負荷検査および肺機能検査データについて、これまで集積されてきた陸軍データ(対照群)との比較が行われた。説明のつかなかった49例はびまん性狭窄性細気管支炎バイオプシー検査が行われたのは49例で、全例に異常が認められ、うち38例は狭窄性細気管支炎であった。残る11例は、その他の診断で呼吸困難の説明がついた。被験者が配備期間中、イラクのモスルで2003年夏に大規模な硫黄鉱山火災があった。その曝露歴は被験者に一般的で、全例には及ばなかったものの、狭窄性細気管支炎と診断された38例では28例に曝露歴が確認された。検査所見については、38例全例が胸部X線所見は正常であったが、胸部CTでは約4分の1に、モザイク状のエアートラッピングまたは小葉中心性結節が確認された。肺機能検査および心肺運動負荷検査の結果は、概して正常範囲内であったが、対照群データよりも劣っていた。King氏は、「説明のつかなかった49例は、バイオプシー検査によりびまん性狭窄性細気管支炎であることが判明した。38例については、おそらく吸入性曝露によるものと思われる」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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自民族密度の高い地域への居住が、イギリスの少数民族の精神障害を軽減

イギリスに住む少数民族においては、自民族密度の高い地域に居住することで、一般的な精神障害が低減し、社会的支援の改善や差別体験の減少がもたらされることが、イギリスKing’s College London精神医学研究所のJayati Das-Munshi氏らの研究で示された。差別の経験は精神的健康に有害な影響を及ぼすのに対し、社会的支援やネットワークは保護的に作用することが示されている。自分と同じ民族の密度が高い地域で生活する人々は人種差別を経験する機会が減少し、このような生活環境は、イギリスに居住する少数民族にとって精神的、身体的な健康リスクの低減につながる可能性があるという。BMJ誌2010年10月23日号(オンライン版2010年10月21日号)掲載の報告。国の調査データを多層的に解析本研究は以下の問題の評価を目的に行われた。(1)同じ民族の人々の居住率が高い地域で生活することが、一般的な精神障害に対し保護的に作用し、差別の経験を低減して社会的支援を改善する、(2)民族密度の保護効果は、人種差別の経験の低減や社会的支援の改善によってもたらされる。イギリスの892地域から無作為に抽出された16~74歳の4,281人(アイルランド系、黒人カリブ系、インド系、パキスタン系、バングラディシュ系、白人イギリス系)を対象に、国の調査データに関して多層ロジスティック回帰モデルを用いた解析を行った。一般的精神障害は構造的面接で評価し、差別や社会的支援、ネットワークは構造的質問票で評価した。民族密度の保護効果は完全には説明できない民族密度が高い地域のほとんどが最貧地区であったが、交絡因子を補正すると、自民族密度が10%増加するごとに、一般的な精神障害のリスクが全少数民族(オッズ比:0.94、95%信頼区間:0.89~0.99、p=0.02)、アイルランド系(同:0.21、0.06~0.74、p=0.01)、バングラディシュ系(同:0.75、0.62~0.91、p=0.005)において有意に低減するとのエビデンスが得られた。いくつかの人種では、自民族密度が高い地域に住むことで差別体験の報告が減少し、社会的支援やネットワークが改善されたが、これらの因子が民族密度の保護効果をもたらすことはなかった。著者は、「イギリスに住む少数民族では、自民族密度の高い地域への居住による一般的精神障害に対する保護効果が確認された。自民族密度が高い地域で生活する人々は、社会的支援が改善され、人種差別体験が減少する可能性が示唆されるが、これらの関連性によって密度効果が完全に説明できるわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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鳥谷部俊一先生の答え

ラップ療法の患者家族への説明方法患者さんを自宅で介護している家族の方へ、ラップがガーゼよりも有効である旨を説明するときに上手く伝える方法はあるのでしょうか?また先生のご経験で、このように伝えると上手くいく。というノウハウがございましたら是非教えて頂きたいと考えております。宜しくお願いします。このような場合は、モイスキンパッドをお勧めします。「ガーゼの替わりにバンドエイド、キズパワーパッドを貼るのが時代の先端。治りも早く、痛くない。モイスキンパッドをよく見てください、巨大なバンドエイドですよ」。こんなふうに説明してください。モイスキンパッドで良くなってきたら、床ずれパッドを見せて、「そっくりでしょ。しかも安いんです」とお話しましょう。アトピー性皮膚炎のラップ療法アトピー性皮膚炎でもラップ療法が有効であるとか有効でないとか、賛否両論のようですが、先生はどのようにお考えでしょうか?また、有効である場合に、どのような点に気をつければ宜しいでしょうか?ご教示宜しくお願いします。ラップ療法は、床ずれの治療法です。「アトピー性皮膚炎にドレッシング療法が有効か」という質問にお答えできる立場ではありません。アトピー性皮膚炎に対するドレッシング療法の可能性の問題は興味深く、論議が深まることを期待します。モイスキンパッドはじめまして。日々、「皮膚・排泄ケア認定看護師」とともに床ずれの診療をさせていただいている一皮膚科医です。以前、形成外科の先生が手作りで、「モイスキンパッド」と同様なものを使用されていました。「皮膚・排泄ケア認定看護師」は、あまりいい顔をしていませんでした。実際、ある程度褥瘡は改善するものの、その周囲にかぶれを起こしたり、体部白癬に罹患する患者さんが後を立ちませんでした。結局、ラップ療法を中止することとなりました。これについて、先生はどのようにお考えになりますか?どのようにすれば、こうした皮膚トラブルを避けられますか?改善点はありますでしょうか?ご教示いただけるとありがたいと思います。ご質問ありがとうございます。いろいろ工夫してラップ療法を試みたことに敬服します。ラップ療法や、モイスキンパッド処置では、抗真菌剤を塗布して真菌症を簡単に治療することができます。2000年の医師会雑誌に書いたラップ療法の論文では、合併した「カンジダ症2例を抗真菌剤で治療した」と明記しております。夏など暑い季節には、予防的に抗真菌剤を塗ります。クリーム類がお勧めです。ラップ療法や、モイスキンパッド処置ではドレッシングを絆創膏で固定しないで毎日交換するので、外用薬を毎日塗るのが容易です。真菌は湿潤環境で増殖しますので、吸水力の高いモイスキンパッドを使って皮膚を乾燥させることをお勧めします。手作り「モイスキンパッド」の吸水力についてはデータがありませんのでコメントできません。既成のドレッシングや軟膏ガーゼの治療の場合も真菌感染を生ずるのですが、なぜか話題になることが少ないようです。高齢者の足をみると、ほとんどの方の爪が白く濁って変形しております。白癬症です。爪白癬がある人をよく観察すると、全身に角化した皮疹が見られます。掻痒感があれば、爪で引っかいた痕跡や、体を捩って背中を擦り付ける動作があるでしょう。足ユビ、足底、足背、下腿、膝、臀部、背部、後頭部、手、上肢などをよく調べれば、白癬菌が検出されます。皮膚を湿潤環境にすると、真菌類(カンジダ、白癬)が増殖しやすくなります。抗真菌外用薬(クリーム)を積極的に使用して治療します。基礎疾患が重篤な場合は?現場の知恵を洗練していく先生に敬意を持っております。通常の免疫能がある患者さんにおいては、水道水による洗浄と湿潤環境で軽快するというのはわかりますが、がん治療に伴い免疫不全状態にある患者さん、糖尿病のコントロールがうまくなくこれも免疫不全のある患者さん等、表在の細菌、真菌に弱いと考えられる患者さんにも同様に適応し、効果を期待できるのでしょうか。こうした患者さんにはある程度の消毒なり軟膏治療が必要になるのではないでしょうか。困難な症例に取り組むご様子に敬服します。基礎疾患が重篤な症例に対するラップ療法の有効性は確立しておりません。よって、このような症例には、「ガイドライン」に従った治療をするのが安全であると考えます。ただし、「こうした患者さんに消毒・軟膏治療が有効である」というエビデンスが無いのが現状です。また、「基礎疾患が重篤な患者にこそ、消毒や軟膏による有害事象が生じ易いのではないか」という観点からの検討も必要です。床ずれに対するラップ療法の治癒の機序床ずれはもともと血流障害ですが、これがラップ療法で治癒する機序は何でしょうか。創傷治療の本質に迫るご質問、ありがとうございます。既存の軟膏ガーゼ処置は、「厚い小さなドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を床ずれに加えるため、血流障害をおこして治癒を遷延させます。ラップ療法は、「薄い大きななドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を打ち消すことにより、血流を改善して治癒を促進する湿潤療法です。床ずれの原因は、「外力による血流障害」です。一方、下腿潰瘍などの末梢動脈疾患(PAD)は、「外力によらない血流障害」です。床ずれは、外力(圧力/ずれ力)を取り去ることにより血流が改善して治癒に向かいます。例えば、仙骨部の床ずれは、「腹臥位」で圧迫を防ぐことにより治癒した、という報告があります。要するに、「圧迫さえ無ければ床ずれは普通の切り傷と同じような治り方をする」ということです。圧迫を減らすための工夫が、体圧分散マットレス、体位変換、ポジショニングなどです。ラップ療法は、外力を分散するドレッシング療法・湿潤療法です。感染がある 虚血がある感染症があれば、抗菌作用のパスタ剤や、感受性のある抗菌軟膏やソフラチュールなどは一定期間必要じゃないでしょうか。血流を高めるPG剤も必要では。また、化学的デブリードメントにあたるプロメラインなども必要ではないでしょうか。ラップ療法を実践している医療者の多くは、感染症は抗生剤全身投与で、血流改善は(必要に応じて)PG剤全身投与で治療しております。デブリードメントは、外科的デブリードメントと湿潤療法による自己融解を行なっており、化学的デブリードメント剤は使っておりません。「学会ガイドライン」を参照したところ、ご指摘の外用剤はガーゼとの組み合わせでエビデンスが証明されているようですが、ラップ療法やモイスキンパッドとの組み合わせによるエビデンスはございません。今後、エビデンスが集積されてから併用されることをお勧めします。ラップで治療困難な症例の判別皮膚所見をみた当初から、外科治療、皮弁手術が必要かどうかは、判別可能でしょうか。ある程度ラップしたあとで、考慮するのでしょうか。もちろん他の疾患の管理をし栄養、感染など評価をした場合として。ラップ療法は床ずれの保存療法です。外科治療、皮弁手術を考慮される場合は、「学会ガイドライン」に従った治療をお勧めします。2010年の日本褥瘡学会での議論を拝見した限りでは、外科治療、皮弁手術の適応症例は減っているようでした。感染症に対して抗生剤と抗真菌薬の外用と全身投与について感染症には抗生剤の全身投与は理解できるのですが、表在真菌感染症に抗真菌薬の外用が効くのはどうしてでしょうか?抗生剤の外用はなぜ不適切なのでしょうか?ご教授よろしくお願いします。一部の領域(皮膚科、耳鼻科、歯科など)を除き、細菌感染症の治療は抗生剤全身投与が標準治療です。創感染に対する抗生剤外用は、耐性菌誘発リスクなどの理由から、CDCガイドラインなどは推奨しておりません、「学会ガイドライン」にも推奨の記載が見当たりません。表在真菌感染症は、表皮が感染の舞台なので、抗真菌外用剤がよく効きます。抗生剤の外用は無効です。細菌感染の舞台は真皮や皮下組織、あるいはさらに深部の組織です。閉鎖療法の場合は、創を閉鎖して組織間液が深部組織に逆流する結果抗菌薬が感染部位に到達すると想像されますが、ラップ療法・開放性湿潤療法では、創を開放するので組織間液の逆流は起きず、抗菌剤は感染部位に到達しないと考えます。全身投与された抗生物質は、血流を通じて感染部位に到達します。糖尿病性神経症、ASO合併の下肢壊疽80歳、女性、糖尿病で血液透析の患者です。3年前 右足趾を壊疽で切断。今回は左下足に足趾を中心に踵まで、壊疽、深い、汚染の褥瘡様潰瘍があります、悪臭がします。切断は拒否しています。ラップ療法は有効でしょうか?ラップ療法は、床ずれの治療法です。よって、この症例はラップ療法の適応外です。PADのガイドラインに従った治療をお勧めします。血管治療、デブリドマン後のドレッシング材としてモイスキンパッドが有効であったとの報告があります。このような処置は、ラップ療法とではなく、ドレッシング療法、湿潤療法と呼称すべきです。病院皮膚科形成外科との調整病院内科勤務医です。当院では褥瘡ケアは皮膚科の褥瘡ケアチームが回診しています。形成外科は陰圧吸引療法の高価な機械を使いますが患者の一部費用負担はあるものの病院としては赤字になるようです。どのようにして病院全体の褥瘡ケアを統一改善していったらよいでしょうか。アドバイスをお願い申し上げます。かつて同様の立場にあった内科医として、同情申し上げます。1999年に日本褥瘡学会でラップ療法の発表をして12年になりますが、2009年の学会シンポジウムで「ラップ療法と学会ガイドラインは並立する」と(私が)宣言したことが、「在宅のラップ療法を条件付で容認する」という2010年の学会理事会見解につながったようです。「褥瘡ケアの統一」は、学会ガイドラインで統一するか、ラップ療法で統一するかの選択問題ですが、未だ結論が出ておりません。より多くの方がラップ療法を支持するようになれば、学会がラップ療法を受容する日がいずれ来るでしょう。皆様のお働きを期待申し上げます。総括医学の歴史を紐解くと、新しい考え方が「専門領域の侵害」と受け止められ、いろいろな形で抵抗を受けてきたことが分かります。ゼンメルヴァイスの「消毒法」が医学界で受け入れられたのは、ゼンメルワイスの死後のことです。ラップ療法はインターネットの時代に遭遇して、学会よりも一般社会で先に普及しました。情報化社会では、権威者よりも一般社会が先に一次情報を入手することができます。そうした中にあって、情報の真贋を見抜く力(情報リテラシー)が必要であり、そうした能力が専門家と呼ばれる人々に求められております。MediTalkingという場でラップ療法の議論が深められたのはこうした時代の反映であり、有意義なものと考えます。顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

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左室機能不全や重度冠動脈疾患へのPCI前IABP挿入、術後アウトカムを改善せず

左室機能不全や重度冠動脈疾患に対する、経皮的冠動脈血管形成術(PCI)前の大動脈内バルーンパンピング(IABP)は、術後アウトカムの改善にはつながらないことが報告された。英国King's College London循環器部門のDivaka Perera氏らが、前向きオープン多施設共同無作為化試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。これまでの観察研究では、PCIに先立つIABPは、術後アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。退院時までの主要有害心・心血管イベントをエンドポイントに同研究グループは、2005年12月~2009年1月にかけて、英国内17ヵ所の心臓医療センターでPCIを行った301人を対象に試験を行った。被験者は、左室機能不全(駆出分画率30%以下)で、危険度スコア8/12以上の重度冠動脈疾患だった。被験者は無作為に、PCI実施前にIABPを実施する群(IABP群)と、IABPなしでPCIを実施する群(対照群)に割り付けられた。主要エンドポイントは、退院時(最大28日)までの死亡、急性心筋梗塞、脳血管イベント、血行再建術の再実施のいずれかと定義した、主要有害心・心血管イベント(MACCE)だった。また副次エンドポイントには、6ヵ月時点の全死因死亡、主要術中合併症、出血、穿刺部位合併症が含まれた。MACCEリスクは両群同等、術中合併症リスクはIABP群が0.11倍結果、MACCEはIABP群151人中23人(15.2%)に対し、対照群は150人中24人(16.0%)と、その発症率に両群で有意差はなかった(P=0.85、オッズ比:0.94、95%信頼区間:0.51~1.76)。また、6ヵ月時点の全死因死亡率も、IABP群4.6%に対し、対照群7.4%で、有意差は認められなかった(P=0.32、オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.24~1.62)。一方、主な術中合併症発生率については、対照群が10.7%に対しIABP群が1.3%と、IABP実施群で有意に低率だった(P

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Rosiglitazone Associated with Increased Stroke, Heart Failure, and Death Compared to Pioglitazone in Elderly Patients

The thiazolidinediones rosiglitazone (Avandia) and pioglitazone (Actos) have become popular drugs for type 2 diabetes in recent years for their potential to improve glycemic control by increasing insulin sensitivity. Concern over the safety of rosiglitazone was raised by a 2007 meta-analysis of 42 trials associating the drug with increased risk of myocardial infarction (MI) and cardiovascular death (N Engl J Med 2007 Jun 14;356(24):2457).A new, large cohort study compared the safety of rosiglitazone vs. pioglitazone in 227,571 elderly patients (mean age 74 years) with diabetes who began taking 1 of the 2 drugs between July 2006 and June 2009. During a follow-up period of up to 3 years, there were 8,667 events of MI, stroke, heart failure, or death. The incidence rate per 100 person-years for the composite of these outcomes was significantly higher for rosiglitazone than for pioglitazone (9.1 vs. 7.42, p < 0.05) (level 2 [mid-level] evidence). The number needed to harm (NNH), calculated as the number of patients treated for 1 year to generate 1 excess event, was 60 for the composite outcome. Rosiglitazone was also associated with increased incidence rates of stroke (1.27 vs. 0.95, p < 0.05, NNH 313), heart failure (3.94 vs. 3, p < 0.05, NNH 106), and death (2.85 vs. 2.4, p < 0.05, NNH 222). Incidence rates of acute MI were not significantly different (1.83 vs. 1.63) (JAMA 2010 Jun 28 early online).Also recently published was an update of the 2007 meta-analysis with 14 additional trials comparing treatment with vs. without rosiglitazone. Rosiglitazone was associated with increased risk of MI (odds ratio 1.28, 95% CI 1.02-1.63), but there was no significant difference in cardiovascular death (Arch Intern Med 2010 Jun 28 early online).For more information, see the Rosiglitazone topic in DynaMed. Published by DynaMedCopyright(c) 2010 EBSCO Publishing. All rights reserved.DynaMedは、信用できる最新エビデンスを簡潔にまとめた診療サポート・EBM実践ツールです。DynaMed Weekly Updateは、毎週DynaMedに採用される記事の中から、医師にとって重要で臨床上の判断に影響を与え得ると思われる1~5つの記事を集めたニュースレターです。●問合せ先EBSCO Publishing (エブスコ・パブリッシング)〒166-0002 東京都杉並区高円寺北2-6-2 高円寺センタービル8FTEL: 03-5327-5321, FAX: 03-5327-5323, E-MAIL: medical@ebsco.co.jpHP: http://www.ebsco.co.jp/medical/dynamed

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ツタンカーメン、死因は骨壊死とマラリアが重なってか!?

 古代エジプトのツタンカーメン王の死因は、無血管性骨壊死と熱帯熱マラリアによる可能性が高いことが判明した。また、ツタンカーメン王の両親のミイラについても、特定された。エジプト考古最高評議会のZahi Hawass氏らが「King Tutankhamun Family Project」の中で、エジプト新王国時代の16体のミイラについて遺伝子指紋法やCTスキャンなどによる詳細な調査を行った結果、明らかにしたもの。JAMA誌2010年2月17日号で発表した。遺伝子指紋法でツタンカーメン王直系の5世代特定 同研究グループは、2007年9月~2009年10月にかけて、紀元前1410~1324年頃のツタンカーメン王の家系のものと考えられるミイラ11体と、紀元前1550~1479年頃のミイラ5体について、人類学、放射線学、遺伝学のそれぞれの視点から詳しい調査を行った。 遺伝子指紋法によって、ツタンカーメン直系の5世代(娘2人、両親、祖父母、曽祖父母(そうそふぼ)が特定された。その中で、KV55ミイラ(アクエンアテン王;Akhenaten)とKV35YLミイラ(名前は不特定)が、ツタンカーメンの両親であることが判明した。ツタンカーメンに先天性異常の蓄積や第2ケーラー病 また、ツタンカーメン家には、いくつかの先天性異常の蓄積が認められた。ただし、女性化乳房や頭蓋骨融合といったアントレー・ビクスラー症候群の兆候や、マルファン症候群の兆候はみられなかった。 CTスキャンによる調査では、ツタンカーメン王に、第2ケーラー病を含むいくつかの病理学的所見が認められた。ただし、いずれも致死性のものではなかった。 一方で、ツタンカーメン王を含む4体のミイラから、熱帯熱マラリア(plasmodium falciparum)が診断された。こうした結果を総合し、研究グループは、ツタンカーメン王は無血管性骨壊死と熱帯熱マラリアによって死亡したのではないかと推測、「歩行障害やマラリアに罹っていたことは、彼の墓から、杖や死後の世界で使うための薬が発見されていることからも支持される」としている。

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退職は健康の素?

現役期間中の主観的に不良な健康状態は、退職によって実質的に改善されることが、スウェーデンStockholm大学ストレス研究所のHugo Westerlund氏らが行ったGAZELコホートに関する調査で明らかとなった。人口の高齢化が進み、多くの先進国政府は定年延長による労働力人口の増加を模索しているが、低年齢化の傾向にある引退年齢を逆行させるのは難しく、特に健康状態が不良で退職後の健康的な生活に期待を寄せながら働いている高齢の労働者の場合はそうである。「健康意識」は罹病率や死亡率とともに早期退職率の強力な予測因子であるが、仕事と退職が高齢勤労者の健康意識に及ぼす影響についてはほとんど知られていないという。Lancet誌2009年12月5日号(オンライン版2009年11月9日号)掲載の報告。退職の前後で自己評価による健康状態を調査研究グループは、高齢労働者において仕事および退職が自己評価による主観的な健康に及ぼす影響について検討する縦断的なコホート研究を実施した。1989~2007年まで毎年、GAZELコホートの労働者1万4,714人を対象に、最長で退職前7年~退職後7年までの14年にわたって自己評価による健康状態を調査した。GAZELコホートは、フランス電力・ガス公社(EDF-GDF)の労働者で構成される。彼らは公務員に準じる地位にあり、典型的には20歳代に雇用されて定年まで勤める終身雇用である。参加者の健康やライフスタイル、家族や仕事の背景に関する情報はフランス国立衛生研究所(INSERM)によって収集された。解析には、一般化推定方程式(GEE)による反復測定ロジスティック回帰を用いた。退職により不良な健康状態が有意に5%低減、労働生活を再設計すべき全体として、自己評価による不良な健康状態は加齢とともに増加した。一方、退職前後の8~10年間で主観的な健康が増進し、退職前と退職後では不良な健康状態の推定有病率が19.2%から14.3%へと低減した。この退職による主観的な健康の改善は男女ともに、また職能等級の高い者、低い者ともに有意であり、その効果は退職後7年間を通じて持続した。退職前の劣悪な労働環境および健康上の愁訴は、不良な健康状態有病率の急峻な年次増加を現役期間中持続的に促進し、退職による健康改善効果はさらに増大した。その一方で、職能等級が高くて需要が低く、かつ仕事に対する満足度の高い労働者においては、このような退職関連の改善効果は示されなかった。これらの知見は、「主観的な健康問題に関しては、理想的な就労環境にある者は別にして、すべての労働者が退職によって実質的に不健康の負担から解放されることを示唆する」と著者は結論し、「労働力人口を増やすには、高齢勤労者がより高度な労働市場へ参画できるよう、労働生活(working life)を再設計する必要がある」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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認知症は失明よりも身体障害の重大な要因:低~中所得国の高齢者

 認知症は、低~中所得国の高齢者の身体障害に寄与する最大の要因であることが、イギリスKing’s College London精神研究所精神保健センターのRenata M Sousa氏らによる地域住民ベースの調査で明らかとなった。2004年の世界疾病負担(Global Burden of Disease)の推計では、身体障害を伴う生存年(YLD)は全世界で7億5,100万年であり、その68%は非伝染性の慢性疾患によるものだが、この慢性疾患に起因する身体障害の負担の84%は低~中所得国で発生している。しかし、特に低~中所得国の高齢者の身体障害について検討した調査はほとんどないという。Lancet誌2009年11月28日号掲載の報告。7ヵ国11地域に居住する高齢者1万5,000人を対象とした横断的調査 研究グループは、身体的、精神的、認知的な疾患が身体障害に及ぼす影響を評価し、健康に関する社会人口学的な特性によって身体障害の地理的分布の差をどの程度説明できるかについて検討するために横断的な調査を実施した。 低~中所得の7ヵ国(中国、インド、キューバ、ドミニカ、ベネズエラ、メキシコ、ペルー)の11地域に居住する65歳以上の高齢者1万5,022人が対象となった。身体障害の評価には、12項目からなるWHOの身体障害評価スケジュール2.0を使用した。認知症、うつ、高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を確認するための臨床評価として、種々の疾患について自己申告に基づく診断を行った。 人口寄与有病率分画(population-attributable prevalence fraction; PAPF)を算出するために、負の2項分布回帰およびPoisson回帰分析によって、身体障害スコアに対する独立の要因の評価を行った。認知症のPAPFが最も高い、慢性的な脳や心の疾患は優先順位を高くすべき インドとベネズエラの農村部を除き、身体障害に寄与する最大の要因は認知症であった(PAPF中央値:25.1%)。それ以外の実質的な要因としては、脳卒中(同:11.4%)、四肢障害(同:10.5%)、関節炎(同:9.9%)、うつ(同:8.3%)、視力障害(同:6.8%)、消化器障害(同:6.5%)が確認された。 身体障害の地域間差は、健康に関する社会人口学的な特性の構造的な差によるところが大きかった。 著者は、「世界疾病負担の解析では、低~中所得国の高齢者における身体障害の最大の要因は失明とされていたが、今回の実証的な調査では認知症の寄与が最も大きかった」と結論し、「慢性的な脳や心の疾患は優先順位を高くすべきである。身体障害に加え、介護者への依存にともない、ストレスの多い複雑で長期的な課題を介護者にもたらすことから、社会的なコストが膨大なものになる」と指摘する。

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プライマリ・ケアでのがん兆候症状と非がん診断

英国King’s College London School of Medicine一般診療/プライマリ・ケア部門のRoger Jones氏らは、プライマリ・ケアでのがん兆候症状と非がん診断に関するコホート研究を行った。兆候症状を呈している患者の大半が臨床的に意味ある診断を下されていると報告している。BMJ誌2009年8月29日号(オンライン版2009年8月13日号)掲載より。15歳以上の762,325例が参加Jones氏らは、プライマリ・ケアで定められている非がん・がん診断のための兆候症状の適中率を評価した。一般診療(GP)調査データベース(1994~2000年、GP128人から提供)を用いて行われたコホート研究は、15歳以上の762,325例が参加し行われた。主要転帰尺度は、事前に15の兆候症状を定めたうえで、非がん診断と4つの兆候症状(血尿、喀血、嚥下障害、直腸出血)との関連について、90日時点、最初の兆候症状が記録されてから3年後時点で調査した。各転帰の解析は、time to eventで別々に行われた。データは、患者が死亡・診療から外れた・試験期間終了に達したいずれかの時点で検閲された。血尿、喀血、嚥下障害、直腸出血のファーストエピソード例について解析血尿(11,108例)、喀血(4,812例)、嚥下障害(5,999例)、直腸出血(15,289例)のファーストエピソード例のデータについて解析が行われた。結果、兆候症状を呈した患者での非がん診断は、ごく普通に見られた。また、がんあるいは非がんいずれの診断率は、一般に年齢とともに増加していた。血尿症状がある患者の90日以内での、がん・非がん診断率は、女性で17.5%(95%信頼区間:16.4%~18.6%)、男性で18.3%(17.4%~19.3%)だった。その他の症状については、喀血例では、同25.7%(23.8%~27.8%)、24%(22.5%~25.6%)。嚥下障害例では、同17.2%(16%~18.5%)、22.6%(21%~24.3%)。直腸出血例では、同14.5%(13.7%~15.3%)、16.7%(15.8%~17.5%)だった。Jones氏は、「兆候症状を呈している患者では、高い割合で臨床的に意味ある診断を下されている。血尿、喀血、嚥下障害または直腸出血の症状を呈している患者群での合同診断評価には患者4~7人が必要である。また90日以内に1人の患者は、臨床的に意味ある診断が下されているようである」と結論している。

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インターフェロンγ1bは特発性肺線維症に無効

特発性肺線維症に対するインターフェロンγ1b治療は生存率を改善しないことが、アメリカCalifornia大学San Francisco校のTalmadge E King Jr氏らが実施した無作為化試験(INSPIRE試験)で示された。特発性肺線維症は、呼吸困難の増悪、肺容量の減少、ガス交換障害を特徴とする原因不明のびまん性実質性肺疾患で、診断後の生存率は2~5年と予後不良である。390例のメタ解析では、インターフェロンγ1bが重症例の死亡率を低減することが示唆されているという。Lancet誌2009年7月18日号(オンライン版2009年6月30日号)掲載の報告。9ヵ国から826例を登録、中間解析時の全生存率を評価INSPIRE試験の研究グループは、軽度~中等度の肺機能障害がみられる特発性肺線維症患者に対するインターフェロンγ1bの効果を評価する無作為化対照比較試験を行った。対象は、40~79歳、直近の48ヵ月以内に診断を受け、努力性肺活量予測値が55~90%、ヘモグロビン値で補正した一酸化炭素拡散能予測値が35~90%の患者とした。ヨーロッパ7ヵ国とアメリカ、カナダの81施設から特発性肺線維症患者826例が登録され、インターフェロンγ1b 200μgを週3回皮下投与する群(551例)あるいはプラセボ群(275例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、死亡率が予測の75%に達した時点で実施される第2回目の中間解析で算出された割り付け時からの全生存率とした。以前の試験のサブグループ解析に反する結果第2回中間解析におけるインターフェロンγ1b群のプラセボ群に対する死亡率のハザード比は1.15(p=0.497)で、最低限のベネフィットが達成されなかったため試験は中止すべきとされた。治療期間中央値は64週であり、インターフェロンγ1b群の80例(15%)、プラセボ群の35例(13%)が64週以降に死亡した。ほぼ全例が1回以上の有害事象を報告し、インターフェロンγ1b群では全身性の徴候や症状(インフルエンザ様疾患、疲労感、発熱、悪寒)がプラセボ群に比べ高頻度にみられた。重篤な有害事象(肺炎、呼吸不全など)の頻度は両群で同等であった。アドヒアランスは良好で、両群とも早期の治療中止例はほとんどなかった。著者は、「軽度~中等度の生理学的な肺機能障害を有する特発性肺線維症の治療では、インターフェロンγ1bは生存率を改善しないため推奨されない」と結論し、「以前に実施された試験のサブグループ解析では、インターフェロンγ1bは生存率を改善するとの知見が得られているが、本試験の結果はこれに反するものである。サブグループ解析や探索的検討の結果を検証する作業の重要性が改めて確認された」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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