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脂肪性肝疾患の診療のポイントと今後の展望/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第68回年次学術集会(会長:金藤 秀明氏[川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授])が、5月29~31日の日程で、ホテルグランヴィア岡山をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「臨床と研究の架け橋 ~translational research~」をテーマに、41のシンポジウム、173の口演、ポスターセッション、特別企画シンポジウム「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 近年登場する糖尿病治療薬は、血糖降下、体重減少作用だけでなく、心臓、腎臓、そして、肝臓にも改善を促す効果が報告されているものがある。 そこで本稿では「シンポジウム2 糖尿病治療薬の潜在的なポテンシャル:MASLD」より「脂肪性肝疾患診療は薬物療法の時代に-糖尿病治療薬への期待-」(演者:芥田 憲夫氏[虎の門病院 肝臓内科])をお届けする。脂肪性肝疾患の新概念と診療でのポイント 芥田氏は、初めに脂肪性肝疾患の概念に触れ、肝疾患の診療はウイルス性肝疾患から脂肪性肝疾患(SLD)へとシフトしていること、また、SLDについても、近年、スティグマへの対応などで世界的に新しい分類、名称変更が行われていることを述べた。 従来、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれてきた疾患が、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD)へ変わり、アルコールの量により代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MASLD and increased alcohol intake:MetALD)、アルコール関連肝疾患(alcohol-associated[alcohol-related] liver disease:ALD)に変更された。 MASLDの診断は、3つのステップからなり、初めに脂肪化の診断について画像検査や肝生検で行われる。次に心代謝機能の危険因子(cardiometabolic risk factor:CMRF)の有無(1つ以上)、そして、他の肝疾患を除外することで診断される。CMRFでは、BMIもしくは腹囲、血糖、血圧、中性脂肪、HDLコレステロールの基準を1つ以上満たせば確定診断される。とくに腹囲基準の問題については議論があったが、腹囲はMASLD診断に大きく影響しないということで現在は原典に忠実に「男性>94cm、女性>80cm」とされている。 肝臓の診療で注意したいのは、肝臓だけに注目してはいけないことである。エタノール摂取量別に悪性腫瘍の発症率をみるとMASLDで0.05%、MetALDで0.11%、ALDで0.21%という結果だった。アルコール摂取量が増えれば発がん率も上がるという結果だが、数字としては大きくないという。現在は4人に1人が脂肪肝と言われる時代であり、いずれSLDが肝硬変の1番の原因となる日が来ると予想されている。 また、MASLDで実際に起きているイベントとしては、心血管系イベントが多いという。自院の統計では、MASLDの患者で心血管系イベントが年1%発生し、他臓器悪性疾患は0.8%、肝がんを含む肝疾患イベントが0.3%発生していた。以上から「肝臓以外も診る必要があることを覚えておいてほしい」と注意を促した。 その一方で、わが国では心血管系イベントで亡くなる人が少ないといわれており、その理由として健康診断、保険制度の充実により早期発見、早期介入が行われることで死亡リスクが低減されていると指摘されている。「肝臓に線維化が起こっていない段階では、心血管系リスクに注意をする必要があり、線維化が進行すれば肝疾患、肝硬変に注意する必要がある」と語った。 消化器専門医に紹介するポイントとして、FIB-4 indexが1.3以上であったら専門医へ紹介としているが、この指標により高齢者の紹介患者数が増加することが問題となっている。そこで欧州を参考にFIB-4 indexの指標を3つに分けてフォローとしようという動きがある。 たとえばFIB-4 indexが1.3を切ったら非専門医によるフォロー、2.67を超えたら専門医のフォロー、その中間は専門・非専門ともにフォローできるというものである。エコー、MRI、採血などでフォローするが、現実的にはわが国でこのような検査ができるのは専門医となる。 現在、ガイドライン作成委員会でフローチャートを作成しているところであり、大きなポイントは、いかにかかりつけ医から専門医にスムーズに紹介するかである。1次リスク評価は採血であり、各段階のリスク評価で専門性は上がっていき、最後に専門医への紹介となるが、検査をどこに設定するかを議論しているという。MASLDの薬物治療の可能性について 治療における進捗としては、MASLDの薬物治療薬について米国で初めて甲状腺ホルモン受容体β作動薬resmetirom(商品名:Rezdiffra)が承認された。近い将来、わが国での承認・使用も期待されている。 現在、わが国でできる治療としては、食事療法と運動療法が主流であり、食事療法についてBMI25以上の患者では体重5~7%の減少で、BMI25未満では体重3~5%の減少で脂肪化が改善できる。食事療法では地中海食(全粒穀物、魚、ナッツ、豆、果物、野菜が豊富)が勧められ、炭水化物と飽和脂肪酸控えめ、食物繊維と不飽和脂肪酸多めという内容である。米国も欧州も地中海食を推奨している。 自院の食事療法のプログラムについて、このプログラムは多職種連携で行われ、半年で肝機能の改善、体重も3~5%の減少がみられたことを報告した。すでに1,000人以上にこのプログラムを実施しているという。また、HbA1c、中性脂肪のいずれもが改善し、心血管系のイベント抑制効果が期待できるものであった。そして、運動療法については、中等度の運動で1日20分程度の運動が必要とされている。 基礎疾患の治療について、たとえば2型糖尿病を基礎疾患にもつ患者では、肝不全リスクが3.3倍あり、肝がんでは7.7倍のリスクがある。こうした基礎疾患を治療することで、これらのリスクは下げることができる。 そして、今注目されている糖尿病の治療薬ではGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬がある。 GLP-1受容体作動薬セマグルチドは、肝炎の活動性と肝臓の線維化の改善に効果があり、主要評価項目を改善していた。このためにMASLDの治療について、わが国で使われる可能性が高いと考えられている。 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは、第II相試験でMASLDの治療について主要評価項目の肝炎活動性の改善があったと報告され、今後、次の試験に進んでいくと思われる。 SGLT2阻害薬について、自院では5年の長期使用の後に肝生検を実施。その結果、「肝臓の脂肪化ならびに線維化が改善されていた」と述べた。最大の効果は、5年の経過で3 point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)がなかったことである。また、これからの検査は肝生検からエコーやMRIなどの画像検査に移行しつつあり、画像検査は肝組織をおおむね反映していたと報告した。 おわりに芥田氏は、「MASLDの診療では、肝疾患イベント抑制のみならず、心血管系のイベント抑制まで視野に入れた治療の時代を迎えようとしている」と述べ、講演を終えた。

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2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(前編)【心不全診療Up to Date 2】第1回

2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(前編)Key Point予防と早期介入の重視:心不全リスク段階(ステージA)に慢性腎臓病(CKD)を追加し、発症前の予防的アプローチを強化薬物療法の進展:SGLT2阻害薬が左室駆出率を問わず基盤治療薬となり、HFpEF/HFmrEFや肥満合併例への新薬(フィネレノン、インクレチン関連薬など)推奨を追加包括的・患者中心ケアへの転換:地域連携・多職種連携、急性期からのリハビリテーション、患者報告アウトカム評価、併存症管理を強化し、より統合的なケアモデルを推進はじめに心不全(Heart Failure:HF)は、本邦における高齢化の進展とともに患者数が増加し続け、医療経済的にも社会的にも大きな課題となっている1)。日本循環器学会(JCS)および日本心不全学会(JHFS)は、これまで2017年改訂版および2021年フォーカスアップデート版の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」を策定してきたが、近年の国内外における新たなエビデンスの集積などを踏まえ、この度、2025年版としてガイドラインが7年ぶりに全面的に改訂された1)。本改訂では、治療アプローチの一貫性と包括性を重視し、患者の生活の質(Quality of Life:QOL)の向上を目指すとともに、本邦の診療実態、とくに高齢化社会における心不全診療の課題や特異性にも配慮がなされている。実臨床において質の高い心不全診療を提供するための指針となることを目的としており、本稿では、その主要な改訂点について概説する。主な改訂領域は、ガイドライン名称の変更、心不全の定義・分類の更新、左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)別心不全に対する薬物療法、原疾患治療、特殊病態、診断・評価法、社会的側面への対応(地域連携・包括ケア)、急性非代償性心不全の管理、急性期リハビリテーション、併存症管理の強化など多岐にわたる。主な改訂点1. ガイドライン名称の変更とその背景今回の改訂における最も象徴的な変更点の1つは、ガイドラインの名称が従来の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」から「心不全診療ガイドライン」へと変更されたことである。この変更の背景には、2つの重要な臨床的観点が存在する。第一に、心不全診療においては、急性増悪期から安定期、さらには終末期に至るまで、切れ目のない継続的な治療・管理が極めて重要であるという認識の高まりがある。第2に、臨床現場では心不全の急性期と慢性期を明確に区別することが困難な場合が多く、両者を一体のものとして捉えるほうが実態に即しているという判断がある。この名称変更は、単なる表題の変更に留まらず、心不全を急性期と慢性期という二分法で捉えるのではなく、患者の生涯にわたる連続的な病態(スペクトラム)として認識し、その各段階に応じたシームレスな管理戦略を志向する、より統合的なアプローチへの転換を示唆している。臨床医には、入院加療から外来管理、在宅ケアまでを見据えた、より長期的かつ包括的な視点での患者管理が求められる。2. 心不全の定義・分類の更新心不全の定義と分類に関して、国際的な整合性を図るため、2021年に発表された「心不全の普遍的定義と分類(Universal Definition and Classification of Heart Failure)」が全面的に採用された2)(図1)。図1. 心不全ステージの治療目標と病の軌跡画像を拡大するステージA(心不全リスク At Risk for HF)心不全のリスク因子(高血圧、糖尿病、肥満、心毒性物質曝露、心筋症の家族歴など)を有するが、器質的心疾患や心筋バイオマーカー異常、心不全症状・徴候を認めない段階。ステージB(前心不全 Pre-HF)器質的心疾患(心筋梗塞後、弁膜症、左室肥大など)、心機能異常(LVEF低下、拡張機能障害など)、または心筋バイオマーカー(Na利尿ペプチド、心筋トロポニン)上昇のいずれかを認めるが、現在および過去に心不全症状・徴候がない段階。ステージC(心不全 HF)器質的心疾患を有し、現在または過去に心不全症状・徴候を有する段階。ステージD(進行性心不全 Advanced HF)安静時にも重度の心不全症状があり、ガイドラインに基づいた治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)にもかかわらず再入院を繰り返す、治療抵抗性または不耐容であり、心臓移植、機械的補助循環、緩和ケアなどの高度治療を要する段階。今回の改訂では、心不全への進展予防や早期介入の重要性が強調され、ステージAおよびステージBに関する記載が大幅に充実した。とくに注目すべきは、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)がステージAを定義する独立したリスク因子として明確に追加された点である。具体的には、推算糸球体濾過量(eGFR)が 60mL/min/1.73m2未満、またはアルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比[UACR]30mg/g以上)がCKDの基準として挙げられている。これは、心不全発症前の段階からCKDを重要なリスクとして認識し、早期介入を促す意図がある。ステージA/Bへの注力とCKDの明確な位置付けは、心不全管理における戦略的な重点が、発症後の治療のみならず、発症前の予防へと大きくシフトしていることを示している(図2)。心血管リスク因子、とくにCKDを早期に特定し、心臓への構造的・機能的ダメージが生じる前、あるいは症状が出現する前に介入することの重要性が強調されている。CKDの追加は、心腎連関の重要性を再認識させ、腎臓専門医との連携や、心腎双方に有益な治療法(例:SGLT2阻害薬)の早期導入を促進する可能性がある。これにより、臨床現場ではリスク因子の系統的なスクリーニングと、より早期からの予防的治療介入(血圧管理、CKD/糖尿病合併例でのSGLT2阻害薬など)が求められることになる。図2. 心不全予防アルゴリズム画像を拡大する3. LVEF別心不全に対する薬物療法のアップデートLVEFに基づいた薬物療法アルゴリズムは、2021年のフォーカスアップデート以降に発表された大規模臨床試験の結果を反映し、大幅に更新された(図3)。とくに、HFmrEF/HFpEFにおけるSGLT2阻害薬、MRAの推奨を追加、肥満合併心不全に対するインクレチン関連薬の推奨が追加された。図3 心不全治療のアルゴリズム画像を拡大するこれらの改訂の中で特筆すべきは、SGLT2阻害薬がHFrEFのみならず、HFmrEF、HFpEFにおいてもClass I推奨となった点である。これは、SGLT2阻害薬がLVEFや糖尿病の有無によらず、心不全の予後を改善する可能性を示唆しており、心不全薬物療法の基盤となる薬剤として位置付けられたことを意味する。一方で、HFpEFにおいては、SGLT2阻害薬Class I推奨に加え、特定の表現型(フェノタイプ)に基づいた治療戦略の重要性も示唆されている。とくに、肥満合併例に対するインクレチン関連薬(GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬)のClass IIa推奨は、HFpEFの多様性を考慮し、個々の患者の背景にある病態生理や併存疾患に応じた個別化治療へと向かう流れを示している。表1:肥満合併心不全に対するインクレチン関連薬(GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬)の推奨画像を拡大する次回は、本ガイドライン改訂における特殊病態や新規疾患概念とその治療や評価法、社会的側面への対応、急性非代償性心不全の管理などのポイントについて解説する。 1) Kitai T, et al. Circ J. 2025 Mar 28. [Epub ahead of print] 2) Bozkurt B, et al. J Card Fail. 2021;27:387-413. 3) Kosiborod Mikhail N, et al. N Engl J Med. 2023;389:1069-1084. 4) Packer M, et al. N Engl J Med. 2025;392:427-437.

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チルゼパチド72週の投与で体重が5%以上減少/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、4月11日に発売された持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド[皮下注アテオス])について、プレスセミナーを開催した。プレスセミナーでは、肥満症の基礎情報や肥満症の要因、社会的課題とともに、チルゼパチドの臨床試験であるSURMOUNT-J試験の概要が説明された。肥満症治療は薬物治療・外科治療という新しいアプローチに 「複合的な要因からなる慢性疾患『肥満症』のアンメットニーズ」をテーマに、脇 裕典氏(秋田大学大学院医学系研究科 代謝・内分泌内科学講座 教授)が、肥満症の病態や関係する諸課題について説明した。 過体重およびBMI25以上の肥満者は、全世界で約25億人、わが国では約2,800万人と推計され、成人男性のとくに40~50代で割合が高く、最近では小児の肥満も増加している。 肥満の問題としては、BMI30以上40未満の人では、BMI23以上25未満を基準(ハザード比=1)としたときの全死因の死亡リスクが男性1.36および女性1.37という男女別のコホート研究もある1)。また、肥満はメタボリックドミノの上流に位置し、将来的に慢性腎臓病や糖尿病など重大な健康障害を来すとされている。 肥満および肥満症の要因としては、遺伝的、生理的、環境などさまざまな要因が複合的に関与しているにもかかわらず「自己管理の問題」と考えられがちで、肥満・肥満症のある人は、職場や教育現場のみならず、医療現場においても「スティグマ(偏見や差別)」に直面することがある。また、肥満者自身が自分自身の責任と考えてしまう「セルフ・スティグマ」も指摘されている。 肥満症の定義は、肥満(BMIが25以上)かつ、(1)肥満による耐糖能異常、脂質異常症、高血圧などの11種の健康障害(合併症)が1つ以上ある、または(2)健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に肥満症と診断される。わが国の肥満症の特徴として内臓脂肪蓄積型の肥満が多く、BMIが高値でなくても肥満関連健康障害を伴いやすいという。 肥満症治療の目的は、「減量により健康障害・健康障害リスクを改善し、QOLの改善につなげること」であり、治療では、減量目標を設定し、食事・運動・行動療法を行ったうえで3~6ヵ月を目安に各治療成果を評価する。そして、減量目標が未達成の場合に肥満症治療食の強化や薬物療法、外科療法の導入を考慮するとガイドラインでは明記されている。 ただ、課題としてLook AHEAD研究から集中的な生活習慣介入で短期的に減量しても、長期的に減量した体重を維持できたのは半数未満で、元の体重より増加した例も認められたことから、生活習慣の改善のみで減量した体重を維持するのは困難であることが示唆されている2)。 これは、食欲抑制作用の低下により、満腹感が低下した結果、食欲が亢進すること、基礎代謝が低下し、エネルギー消費量が減少することが指摘され、生活習慣への介入だけでは不十分な可能性もある。 最後にまとめとして、脇氏は「肥満症治療の目標は、減量ではなく、肥満に関連する健康障害の改善とそのリスクの低減であり、QOLの改善である。新たな治療選択肢の登場によって肥満症治療はアプローチや支援を見直すときを迎えている」と従来の治療介入だけではない肥満症治療の選択肢を語り、説明を終えた。72週時点のチルゼパチド投与群は体重が5%以上減少 「第III相臨床試験結果からみる持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」登場の肥満症市場における意義」をテーマに門脇 孝氏(虎の門病院 院長)が、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの特徴、作用機序、SURMOUNT-J試験の概要について説明を行った。 チルゼパチドは、2024年12月27日に国内製造販売承認を取得し、2025年4月11日に発売された。対象者は、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られないBMI27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害(高血圧、脂質異常症など)を有する者またはBMI35以上の者。 用法・用量について成人では、週1回10mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回10mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量できる。ただし、最大用量は週1回15mgまでとなっている。 この作用機序は、中枢神経系における食欲調節と脂肪細胞における脂質などの代謝亢進により、体重減少作用を示すとされている。 今回の適応承認のために行われたSURMOUNT-J試験は、2型糖尿病を有しない日本人肥満症患者を対象としたプラセボ対照、二重盲検比較試験。主要評価項目は投与72週時点のベースラインからの体重減少であり、チルゼパチド10mg/15mgを週1回投与したときのプラセボ投与に対する優越性を検討した。 対象者は、BMIが27以上35未満で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者、またはBMIが35以上で1つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者225例。 その結果、主要評価項目である体重ベースラインから投与72週時までの変化率および投与72週時点の体重について5%以上減少していた患者の割合は、チルゼパチド10mg群および15mg群において、プラセボ群に対し優越性が検証された。投与後72週時の体重のベースラインからの平均変化率は、プラセボ群1.7%減(n=75)に対して、チルゼパチド10mg群17.8%減(n=73)、15mg群22.7%減(n=77)だった。 副次評価項目である投与72週時点の体重が7%以上、10%以上、15%以上、または20%以上減少した患者の割合は、いずれのチルゼパチド群でもプラセボ群と比較し、有意に高かった。 また、ベースラインから投与72週時点のBMIの変化量では、チルゼパチド10mg群では-5.8、15mg群では-7.7、プラセボ群では-0.6だった。そのほか、“Impact of Weight on Quality of Life-Lite Clinical Trials Version”(肥満に関連する生活の質を評価するために開発された20項目)では、チルゼパチド10mg群、15mg群のいずれもプラセボ群と比較し、改善していた。 安全性に関しては、ほかのGLP-1受容体作動薬と同様に、便秘、発熱、悪心、下痢、嘔吐、食欲減退など、主な有害事象は消化器系の症状であった。試験中に確認されたすべての有害事象の割合は、プラセボ群69.3%(n=75)に対し、チルゼパチド10mg群83.6%(n=73)、15mg群85.7%(n=77)であり、死亡などの重篤なものは報告されなかった。

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第242回 糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA

<先週の動き> 1.糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA 2.百日咳患者が前年比3倍に急増、ワクチン接種と耐性菌対応が急務に/厚労省 3.国立大学病院の6割が赤字見通し、医師の働き方改革と物価高が直撃/国立大学病院長会議 4.子どもの数、過去最少に 出生数減少が深刻化/総務省 5.地方公務員の医師が無許可で副業、2,740万円報酬で免職/静岡県 6.「逆子」施術で医療事故、書類送検の医師に謝罪なし/京都府 1.糖尿病薬の適正使用について、医師と患者に注意喚起/PMDA近年、2型糖尿病治療薬として承認されているGLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)およびGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(同:マンジャロなど)を、痩身や美容目的で適応外使用するケースが急増しており、重大な健康被害も報告されている。これを受け、製薬企業各社および医薬品医療機器総合機構(PMDA)、日本糖尿病学会が相次いで注意喚起を行っている。これらの薬剤は、本来「2型糖尿病」に限定して承認されたものであり、減量や美容目的での使用は認められていない。また、肥満症の適用を取得しているGLP-1受容体作動薬セマグルチド(ウゴービ皮下注)についても、適用患者はBMI27以上で、2つ以上の肥満に関連する合併症(高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患など)を有する、またはBMI35以上の成人の肥満症に対して、6ヵ月以上の食事療法・運動療法を行い、効果不十分の患者に処方可能とされている。実際、ダイエット目的で処方された患者が、嘔吐・下痢・意識喪失などの副作用を訴える事例も相次いでいる。オンライン診療や美容クリニックにおいて「簡単に痩せる薬」として紹介されて処方されるケースが多く、安易な使用が健康リスクを高めている。日本糖尿病学会は、適用外使用によって本来の患者への供給が妨げられる問題も深刻だとし、2023年11月に見解を改訂。不適切な広告や処方を厳しく戒め、医師による慎重な対応を求めている。また、PMDAは、承認効能外での使用を助長する広告や診療が確認された場合には、速やかに規制当局へ報告する体制をとると発表した。さらに、GLP-1作動薬を肥満症治療に用いるには、セマグルチドのように、厚生労働省が定めた適正使用推進ガイドラインに基づいて、施設側には専門医の所属あるいは専門医が所属する施設と適切な連携体制の確立のほか、常勤の管理栄養士による適切な栄養指導ができることが条件になっており、適切な処方が求められている。製薬会社、医療機関、学会のいずれもが「安全性と有効性が確認された範囲での適正使用」を強調しており、医療関係者および患者に対し、安易なダイエット目的での使用を控えるよう改めて強く呼びかけている。 参考 1) GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(PMDA) 2) GLP-1受容体作動薬及び GIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について(同) 3) 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(厚労省) 4) GLP-1受容体作動薬および GIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(糖尿病学会) 5) 糖尿病治療薬の「ダイエット薬」としての使用の危険性を改めて強調、医療関係者・患者ともに「適正な使用」に協力を!-PMDA(Gem Med) 6) GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(ノボ) 7) 【GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬】ダイエット目的での使用に関する注意喚起について(リリー) 2.百日咳患者が前年比3倍に急増、ワクチン接種と耐性菌対応が急務に/厚労省国立健康危機管理研究機構(JIH)によれば、百日咳の感染が全国的に拡大していることが明らかになった。今年の累計患者数は5月初旬時点で1万1,921人に達し、前年(4,054人)の約3倍に上っている。4月21~27日の1週間だけで2,176人の新規患者が報告され、5週連続で過去最多を更新した。新潟県では感染者が全国最多となるなど、各地で過去に例のない規模で流行が続いている。百日咳は細菌による呼吸器感染症で、激しい咳が長期間続き、とくに生後6ヵ月未満の乳児が感染すると重症化して肺炎や脳症、死亡のリスクもある。主な感染経路は飛沫感染で、家庭や学校などでの拡大が指摘されている。今シーズンは、抗菌薬が効きにくい「耐性菌」の感染例も報告されており、治療が難航するケースもある。各自治体では手洗いやマスク着用など基本的な感染対策の徹底を呼びかけており、日本小児科学会は、生後2ヵ月以降の定期接種ワクチンの速やかな実施を推奨。宮城県では追加接種や妊婦へのワクチン接種で母子の抗体を高める対策も紹介されている。10代や小学生を中心とした感染の広がりが目立ち、学校などでの集団感染の可能性も懸念されている。大型連休明けの今後、さらなる拡大を防ぐには、予防接種と日常的な感染対策の両立が鍵となる。 参考 1) 百日せきの累計患者1万人超、5週連続最多…治療薬効きにくい耐性菌が広がったか(読売新聞) 2) 都内の百日咳報告数 連休で前週比3割減 132人、累計は1千人に迫る(CB news) 3) 百日せき ことしの患者が1万人超える 去年1年間の倍以上に(NHK) 4) 百日せき 症状や注意点は? 2025年は流行中 乳児は特に注意を 患者増加で過去最多5週連続に(同) 5) 百日せき感染状況MAP(同) 3.国立大学病院の6割が赤字見通し、医師の働き方改革と物価高が直撃/国立大学病院長会議国立大学病院長会議は2025年5月9日、全国42の国立大学病院のうち6割に当たる25病院が、2024年度決算で赤字になる見通しであると発表した。赤字総額は、前年度の約26億円から大幅に膨らみ、213億円に達する。国立大病院全体として赤字となるのは2年連続となり、経営の悪化が深刻化している。赤字の主な要因は、物価やエネルギー価格の上昇と、「医師の働き方改革」や人事院勧告対応に伴う人件費の急増。2023年度と比較して人件費は284億円増加した一方、診療報酬改定などによる増収は111億円に止まり、コスト増を賄いきれていない。診療材料や医薬品費も20~40%上昇し、高度な医療を提供すればするほど赤字が膨らむ構造となっている。加えて、診療報酬は公定価格で柔軟な調整が難しく、物価高騰に制度が追いついていない状況。赤字幅は一部基金による支援で抑えられたが、根本的な改善には至っていない。大鳥 精司会長(千葉大学病院長)は「診療数を増やしても材料費が高騰しており、やればやるだけ赤字になる」と語り、報酬の引き上げと財政支援の必要性を訴えている。現場ではすでに節約努力が限界に達しており、「あと1~2年で資金が枯渇する病院も出る」との懸念も示された。病院の経営悪化は大学本体の財政にも波及しかねず、国立大病院全体の存続に関わる危機として注視が必要だ。 参考 1) 国立大病院の6割が赤字見通し 2024年度「働き方改革」による人件費増や物価高影響(産経新聞) 2) 国立大病院213億円の赤字、24年度収支 6割の病院が赤字(CB news) 3) 国立大病院、6割が赤字 前年度を大幅に上回る 24年度決算(毎日新聞) 4.子どもの数、過去最少に 出生数減少が深刻化/総務省総務省が子どもの日にあわせて公表した統計によると、今年4月1日時点の15歳未満の子どもの数は1,366万人で、前年より35万人減少し、過去最少を更新した。減少は44年連続で、総人口に占める割合も11.1%と過去最低を記録している。1975年以降、51年連続で割合が低下しており、少子化の進行に歯止めがかかっていないことが鮮明になった。年齢別では、0~2歳が222万人(全体の1.8%)、3~5歳が250万人(2.0%)と、年少層ほど人口が少ない構造が続いている。将来的な労働力や社会保障の担い手が着実に減少していることがうかがえる。都道府県別でもすべての地域で子どもの数が前年を下回り、割合が最も高かったのは沖縄県の15.8%、最も低かったのは秋田県の8.8%だった。少子化は医療や社会保障、教育など多方面に影響を及ぼす。とくに医療では、出生数の減少とともに産婦人科や小児科の診療体制の維持が課題となっており、地方では分娩施設そのものが減少している現状がある。出生率は近年1.3%前後で推移しており、同時に65歳以上の高齢者が総人口の29%を超える中、医療ニーズの変化への対応も急務となっている。地域における出産医療の体制は、今後さらに集約・再編が進むとみられ、自治体による子育て支援や住環境整備といった包括的な政策とあわせて、医療資源の再配分と効率的な活用が要望されている。また、医療関係者にも、地域の実情を踏まえた持続可能な体制構築への関与が求められている。 参考 1) 我が国のこどもの数-「こどもの日」にちなんで-(総務省) 2) 15歳未満の子ども数は44年連続、人口に占める子どもの割合は51年連続で減少-総務省(Gem Med) 3) 子どもの数1,366万人、44年連続減で最低更新 1,400万人割る(日経新聞) 4) 15歳未満の子ども、人口の11.1%に 日本で進む人口危機(CNN) 5) 「世界一安全」な医療が崩れる!? 少子化に苦しむ“産婦人科”「出産費用の保険適用化」がもたらす“負”のシナリオとは(弁護士JPニュース) 6) 地元の病院で産めない…なぜ?いま何が?(NHK) 7) 子どもの数 44年連続減少 手厚い住宅支援に取り組む自治体も(同) 5.地方公務員の医師が無許可で副業、2,740万円報酬で免職/静岡県静岡県は2025年5月9日、健康福祉部の男性理事(62)を、地方公務員法に違反する無許可の兼業行為により懲戒免職とした。部長級職員の懲戒免職は県政史上初めてとなる。理事は、2019年10月~2024年12月までの約5年間、県外の複数の医療機関で診療業務に従事し、25の医療法人から計約2,740万円の報酬を得ていた。理事は県職員であることを伏せ、有給休暇などを使って少なくとも310日勤務。内部通報により発覚し、県が調査を進めたが、本人は一貫して否定。しかし、医療機関への聞き取りなどで事実が判明した。理事は2021年にも同様の無許可診療で文書訓告を受けていたが、再発し、反省もみられなかったことから、最も重い懲戒免職処分とされた。医師は医療提供体制や災害医療、医師確保事業の中核を担っており、県庁内では「県民への裏切り」との批判とともに「穴は大きい」との懸念も出ている。県は税務署や警察にも情報提供し、後任には地域医療課技監を専任配置した。地方公務員についても兼業を原則容認する国の方針はあるが、現状、地方公務員法第38条では今も営利活動には許可が必要であり、無許可の副業は懲戒対象となる。今回の事例は制度の運用とモラル両面での課題を浮き彫りにしている。 参考 1) 兼業許可得ず診療 医師免許持つ静岡県幹部職員を懲戒免職(NHK) 2) 静岡県理事を無許可兼業で懲戒免職…県外の医療機関に勤務、部長級の懲戒免職処分は県政史上初(読売新聞) 3) 副業で計2,740万円あまりの収入…医師免許を持つ県幹部が兼業許可を受けずに県外の医療機関で診療業務に従事し報酬得る 複数の医療法人から給与の受領も 事情聴取に事実を否定も懲戒免職(テレビ静岡) 4) 地方公務員の兼業について(総務省) 5) 地方公務員の兼業・副業促す 総務省が自治体に基準明示(日経新聞) 6.「逆子」施術で医療事故、書類送検の医師に謝罪なし/京都府京都第一赤十字病院(京都市東山区)で、「逆子」の胎児に対して行われた医療行為に関して、施術を担当した50代の男性医師が業務上過失傷害の疑いで京都府警に書類送検された。医師は2020年12月、当時妊娠中だった女性(当時37歳)に対し、腹部を圧迫して胎児を正常な向きに戻す「外回転術」を2度実施。その際、胎児が低酸素状態に陥ったにもかかわらず、緊急帝王切開などの適切な処置を怠った疑いが持たれている。その後、女性は別の医師による帝王切開で出産したが、生まれた男児(現在4歳)は脳の大部分に損傷を受け、脳性麻痺などの重度障害が残った。母親は2023年7月、医師を刑事告訴。京都府警が捜査を進めていた。病院側は「医療過誤があった」と認め、再発防止に取り組むとしているが、医師個人からの謝罪はなく、すでに同病院を退職し、他の医療機関に勤務しているという。母親は「息子の人生にどれほど重いものを残したか。正面から受け止めてほしい」「この件が医療の在り方を見直すきっかけになれば」とコメントしている。今回の事案は、出産医療におけるリスク対応と説明責任のあり方を問い直す事例となっている。 参考 1) 逆子の治療で重い障害負わせた疑い、医師を書類送検(朝日新聞) 2) 「逆子矯正」で胎児に障害、適切な処置怠った疑いで医師を書類送検(読売新聞) 3) 逆子の胎児を回転処置で低酸素状態に 帝王切開せず脳性まひなど障害残す 医師を書類送検(産経新聞)

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チルゼパチドが「肥満症」を効能または効果として4月11日に発売/イーライリリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド皮下注アテオス)について、3月19日に「肥満症」を効能または効果として薬価収載されたことを受け、4月11日に発売すると発表した。チルゼパチドは週1回皮下注射で投与 チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子が、GLP-1受容体にも結合するように改変され、選択的に長時間作用するため週1回投与が可能。 チルゼパチドは、1回使い切りのオートインジェクター型注入器アテオスにより、週1回皮下注射で投与される。あらかじめ取り付けられている注射針が、注入ボタンを押すことで自動的に皮下にささり、1回量が充填されている薬液が注入される。患者さんが注射針を扱ったり、用量を設定したりする必要はない。 また、チルゼパチドの用量は2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgの6規格が用意され、患者さんの状態に応じ使い分けができる。通常、成人にはチルゼパチドとして週1回2.5mgの用量から開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。なお、患者さんの状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、または4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる。<製品概要>一般名:チルゼパチド販売名:ゼップバウンド皮下注 2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス効能または効果:肥満症。ただし、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上用法および用量:通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、または4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる。薬価:ゼップバウンド皮下注2.5mgアテオス 0.5mL1キット 3,067円同5mgアテオス 同 5,797円同7.5mgアテオス 同 7,721円同10mgアテオス 同 8,999円同12.5mgアテオス 同 10,180円同15mgアテオス 同 11,242円製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日:2025年3月19日発売予定日:2025年4月11日製造販売元:日本イーライリリー株式会社販売元:田辺三菱製薬株式会社

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第254回 肥満症治療薬の販売が絶好調!おかげで販売元は豊満に?

海外企業の多くは12月末が決算である。このため5月以降に佳境を迎える日本と違い、すでに主要企業の決算はほぼ出そろっている。医療に関係する企業で言うならば、やはり一番大きいのが製薬業界である。2023年実績で世界ランキング20位までの製薬企業のうち、日本企業ゆえにまだ決算が発表されていない武田薬品、大塚ホールディングスと非上場のためまだ発表されていない独・ベーリンガー・インゲルハイム以外の17社はすでに決算を発表済みだ。これら各社の決算結果では当然、各社の主要製品の売上高も公表されている。この各社発表の医療用医薬品の売上高をランキング化すると、改めて近年の傾向が見えてくる。そのトップ10を見ていきたい。なお、売上高はドル換算だが、各薬剤を円換算に表示すると、やや読みづらいと思うので、100億ドル=約1兆5,000億円を軸に各読者が概算で捉えていただければと思う。売上高トップ5、2024年で変わったことまず、2024年の売上高トップの医薬品は抗PD-1モノクローナル抗体のペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の294億8,200万ドルである。近年、免疫チェックポイント阻害薬ががん治療の主流を占める中で、2023年からこの薬が世界売上高トップにつけている。第2位が抗凝固薬のアピキサバン(同:エリキュース)の206億9,900万ドル(併売するブリストル・マイヤーズスクイブとファイザーの合算)。以下順に第3位がGLP-1受容体作動薬のセマグルチドの注射薬(同:オゼンピック)の176億4,200万ドル、第4位が抗IL-4/13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ(同:デュピクセント)の139億4,700万ドル、第5位が抗HIV薬のビクテグラビルナトリウム・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドフマル酸塩の配合剤(同:ビクタルビ)の134億2,300万ドル。このトップ5は2023年とほぼ順位は同じなのだが1点だけ異なる点がある。2023年は第3位に抗TNFαモノクローナル抗体のアダリムマブ(同:ヒュミラ)がランクインしていた。同薬は免疫疾患に広く使われ、ペムブロリズマブが同年にトップになるまで、医療用医薬品売上高の王座だった。で、2024年にはどうなったのかというと、売上高89億9,300万ドルでトップ10圏外の第11位までランクダウンした。それもこれも2023年に特許が失効し、バイオ医薬品版ジェネリックのバイオシミラーが登場し始めたからである。ちなみに特許失効前の2022年の売上高は212億3,700万ドル。実に過去2年間で57.7%の減収である。製薬業界ではこの特許失効時期を境に該当製品の売上が急減することを「パテントクリフ」、日本語で直訳すると「特許の崖」と評するが、まさにその状況である。もっともこれでもアダリムマブはまだましなほうである。というのも、低分子の経口薬ならば、特許失効後半年程度で売上高の6割がジェネリック医薬品に置き換わるからである。ご存じのように低分子の経口薬と違い、培養が必要なバイオ医薬品では完全に同一条件で製造ができないため、バイオシミラーは先発のバイオ医薬品の同一成分ではなく同等・同質の成分。この結果、経口薬のジェネリック医薬品に比較的寛容な欧米の医師でも処方には慎重になりがちだ。6~10位にもある変化がさて第6位以降はどうだろう。第6位が抗IL-23p19モノクローナル抗体のリサンキズマブ(同:スキリージ)の117億1,800万ドル、第7位が抗CD38モノクローナル抗体のダラツムマブ(同:ダラザレックス)の116億7,000万ドル、第8位が持続性GIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチド(同:マンジャロ)の115億4,000万ドル、第9位が抗IL-12/23p40モノクローナル抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)の103億6,100万ドル、第10位が抗PD-1モノクローナル抗体のニボルマブ(同:オプジーボ)の93億400万ドル(ブリストル・マイヤーズスクイブ分のみの売上高)だった。第6~10位を2023年と比べると、トップ5と同じくある医薬品がトップ10外にランクダウンしている。それは一般人にとってはもはや喉元過ぎた熱さと言えるかもしれない、ファイザーの新型コロナウイルス感染症ワクチンのコミナティである。2023年には112億2,000万ドルの売上高だったが、2024年は53億5,300万ドルで52.3%の減収となった。もっとも新型コロナに限らず、感染症ワクチンはある種季節もの的な側面はあるため、取り立てて驚くような話でもない。一方、アダリムマブとコミナティのランクダウンに代わって2024年に新たにトップ10入りしたのが第6位のリサンキズマブと第8位のチルゼパチドである。前者はアダリムマブの製造販売元のアッヴィが戦略上、アダリムマブの後継品の1つに位置付けている医薬品である。現状、両薬で共通する適応症は乾癬と炎症性腸疾患だが、今後、新規患者では企業側自体がリサンキズマブに注力する可能性が高いため、アダリムマブの後退に代わって、より伸長していく可能性が高いだろう。そして第8位のチルゼパチドは前年比2.24倍という驚異的な売上伸長で初めてトップ10入りした。もともとは2型糖尿病治療薬として発売(同:マンジャロ)され、2025年4月11日に肥満症治療薬(同:ゼップバウンド)として発売が決定している。ちなみに第3位のセマグルチドも商品名としてのオゼンピックは2型糖尿病が適応だが、同一成分で肥満症を適応とするウゴービがある。ただ、以前の本連載でも触れたが、オゼンピック、マンジャロとも純粋に2型糖尿病治療薬として使われているとは言い難く、実際にはいわゆるダイエット目的の自由診療で相当程度使われ、今回の両製品の公式売上高もその分が相当含まれていると思われる。そして公式の肥満症治療薬としての2024年の製品売上高は、ウゴービが85億3,300万ドル、ゼップバウンドが49億2,600万ドルだった。それぞれ2023年比で1.86倍、24.6倍も売上高が伸長している。この調子だとウゴービ、ゼップバウンドともに2025年もかなりの売上伸長となりそうだ。ウゴービの場合は今回の集計では第12位で、2025年売上高はトップ10にGLP-1受容体作動薬関連が4製品もランクインする事態が現実味を帯びている。もちろんこれが適応症に沿って医学的に正しく使われているのならば何も問題はないが、そうではないことを否定できる人は誰もいないはずだ。もはや世界的に“なんだかなあ?”と言いたくなるような状況なのである。

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「肥満症」というスティグマが診療を遅らせる/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、2024年12月に持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)について、「肥満症」を効能・効果として国内製造販売承認を取得した。この新たな効能・効果の取得につき、両社の合同で「『肥満症』-正しい理解と治療の重要性」をテーマとしたプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、肥満症の基礎情報、要因、社会的スティグマ(偏見や差別)や診療についてのレクチャーのほか、医療経済の観点から肥満症治療の社会的な意義について講演された。肥満症へのスティグマが診療を萎縮させる 「肥満症が正しく理解される未来に向けて-肥満症のアンメットニーズと現在地の理解-肥満症当事者、医師、一般消費者を対象とした意識調査の結果を受けて」をテーマに益崎 裕章氏(琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 教授)が、肥満症の疫学、定義と診療、アンケート調査結果の説明を行った。 世界中に18歳以上の過体重および肥満とされる人口は約25億例と推定され、わが国ではBMI≧25の肥満人口は約2,800万例とされ、男性や小児の肥満が増加傾向にある。また、わが国の肥満症の定義は、BMI≧25で、耐糖能障害(2型糖尿病など)、脂質異常症、高血圧などの11の疾患のうち1つ以上を併存している人とされている。 肥満症の発症には、環境因子や生活習慣因子に加え、遺伝的因子や心理的因子など、さまざまな要因が複合的に関与して発症する1)。肥満症では、内臓脂肪の過剰蓄積も肥満関連健康障害(糖尿病、脂質異常症および高血圧症など)のリスク因子となり、とくに東アジア人では肥満の有無にかかわらず内臓脂肪を蓄積しやすい傾向であり、日本人はBMIが高くなくても肥満関連健康障害を伴いやすい特徴がある。この余剰な脂肪蓄積から始まるメタボリックドミノはインスリン抵抗性や高血圧などのリスクとなる。 そこで、こうしたリスク回避には体重の減少が重要となるが、肥満を治療することで、肥満に起因ないし関連する健康障害の発症や進行を予防できる可能性があるとするさまざまな研究報告が出されている。 肥満症治療の基本は食事療法や運動療法であり、治療により肥満に起因ないし関連する健康障害の改善が期待できる。英国で行われた“DiRECT試験”は、BMI27~45で2型糖尿病を伴う20~65歳、306例を対象とした非盲検クラスターランダム化試験であり、食事療法・運動療法により24%の対象者が15kg以上の減量を達成。そのうちの86%が2型糖尿病の寛解に近い状態(HbA1c6.5%未満)を達成したとの報告がなされている2)。 一方で、人体には恒常性の維持機能があり、「ダイエットで、ある程度体重減少があっても、長期にわたり同じ体重を維持することは困難なケースもあり、生活習慣の介入だけでは不十分な可能性もある」と益崎氏は指摘する。 肥満や肥満症は、複合的な要因が関与するにもかかわらず、「食べ過ぎ」など個人の生活上の要因に帰せられる傾向にあり、「自己管理の問題」と考えられがちである。そして、肥満・肥満症のある人は、職場や教育現場のみならず、医療現場においてもスティグマに直面することがあるという。同時に、肥満・肥満症のある人が自分自身の責任であると考えてしまう「セルフ・スティグマ」もある。こうした肥満・肥満症のある人へのスティグマは、心理的負担や社会的不利益をもたらすだけでなく、適切な治療の機会までも奪ってしまう場合があり、医療者に相談するまで約3年必要だったという報告もある3)。同氏は「肥満や肥満症を持つ人が適切な治療を受け、QOLの改善を達成するためには、スティグマの解消が不可欠」と語る。肥満症患者の9割が「肥満は自己責任」と意識 肥満症の治療では、先述のように食事・運動・行動療法による減量を図り、改善が得られなかった場合に、薬物療法や外科療法の導入が検討される。その目的は、減量により健康障害・健康障害リスクを改善し、QOLの改善につなげることであり、このため「社会全体で取り組んでいく必要がある」と同氏は語る。 では、社会や医療者は肥満・肥満症の人をどのように見ているのか。日本イーライリリーと田辺三菱製薬が共同で行った「肥満症患者・医師・一般の人を対象にした肥満・肥満症に関する意識調査」の結果について説明を行った。この調査は、肥満症患者300人、医師300人、一般の人1,000人を対象に調査を行ったもので、結果の概要は以下のとおりだった(一部抜粋)。・一般の人の7割、肥満症患者の9割が「肥満は自己責任」と考えていた。患者の自己責任意識は一般の人よりも強かった。・科学的な根拠を示され「肥満や肥満症は複合要因で起こる」と知っても、肥満症患者3.4割、一般の人の4.1割が「自分の努力だけでは解決が難しい」に「同意」しなかった。・肥満症は「治療が必要」という人が肥満症患者・医師・一般の人ともに約7割以上いた。しかし、いざ保険診療で治療するとなると、一部の回答者には抵抗感がみられる結果だった。・肥満症患者も医師も、体重について「話したいが話題にしにくい」現状。話しにくさの根源にはスティグマが存在している。 終わりに同氏は、「肥満症は治療が必要な慢性疾患であること、オベシティ・スティグマ(肥満への偏見)の存在が適切な治療介入を妨げている可能性があること、新たな治療選択肢の登場により、肥満症治療はアプローチや支援を見直すとき」と述べ、レクチャーを終えた。治療のコストだけでない肥満症のコスト 「肥満症の疾病負担・疾病費用治療の価値は、どこにある?」をテーマに五十嵐 中氏(東京大学大学院薬学系研究科 医療政策・公衆衛生学 特任准教授)が、肥満症治療の社会的な意義について説明した。 肥満症の疾病負担は、世界の傾向とわが国の傾向は同一ではなく、独自の傾向をみせているという。その理由として、世界のレベルと比較すると高度な肥満者が少ないこと、非感染性疾患(NCD)が多いことなどが挙げられる。また、がん、希少疾病、認知症の財政影響を比較し、「患者数、投与期間によってコストは変化するが、認知症や肥満症などの慢性化する疾患では、患者数や治療薬の投与期間が長いので財政的な検討が必要」と同氏は今後の課題を提起した。 肥満症のコストについて、医療費が0.7~2.8兆円、生産性損失について就労の中断などで1.1兆円、業務の遅滞などで0.9兆円、死亡で2.8兆円と総額4.8兆円のコストを示すとともに、最近は患者などの介助者の負担も計算する傾向にあるという。そのほか、「こうした介助者の健康悪化も今後はコストの検討が必要であり、広くさまざまな価値をみていく必要がある」と同氏は指摘した。 肥満症当事者と医師によるトークセッションでは、患者さんの肥満になったきっかけやスティグマにより生活をしていくうえで苦しいこと、医療者の視点で今後の肥満症診療の在り方などが、先述のアンケート調査の内容を基に語られた。

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GIP/GLP-1受容体に作用する週1回の肥満症治療薬「ゼップバウンド皮下注」【最新!DI情報】第32回

GIP/GLP-1受容体に作用する週1回の肥満症治療薬「ゼップバウンド皮下注」今回は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、週1回投与の肥満症治療薬であり、食欲を調節すると同時に、脂質などの代謝を亢進させることによって体重を減少させることが期待されています。<効能・効果>肥満症を適応として、2024年12月27日に製造販売承認を取得しました。本剤は高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に使用されます。BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有するBMIが35kg/m2以上<用法・用量>通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射します。患者の状態に応じて適宜増減し、週1回5mgまで減量、または4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量することができます。なお、本剤は週1回投与する薬剤であり、同一曜日に投与します。<安全性>重大な副作用として、低血糖、胆嚢炎、胆汁うっ滞性黄疸、アナフィラキシー、血管性浮腫(いずれも頻度不明)、急性膵炎、胆管炎(いずれも0.1%未満)が報告されています。胃腸障害が現れた場合は急性膵炎の可能性を考慮し、必要に応じて画像検査などによる原因の精査が行われることがあります。また、下痢や嘔吐が続くことで脱水となり、急性腎障害を起こす恐れがあるため、適度な水分補給が必要です。その他の副作用は、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退、注射部位反応(紅斑、そう痒感、疼痛、腫脹など)(いずれも5%以上)、腹部膨満、胃食道逆流性疾患、おくび、鼓腸、疲労、浮動性めまい、脱毛症(いずれも1~5%未満)、心拍数増加、低血圧、血圧低下、胆石症、糖尿病網膜症、過敏症(湿疹、発疹、そう痒性皮疹など)、味覚不全、異常感覚、膵アミラーゼ増加、リパーゼ増加、体重減少(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は肥満症の患者さんのうち、高血圧や脂質異常症、または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない人に用いられます。2.この薬は食欲を調節すると同時に、脂質などの代謝を亢進させることによって体重を減少させる作用があります。3.美容やダイエットの目的で使用しないでください。4.この薬の使用中も食事療法・運動療法を継続してください。5.週1回の投与で効果が持続するように製剤的な工夫をした注射薬です。毎週、同じ曜日に注射してください。6.のどの渇きや立ちくらみなどの脱水症状が現れた場合は、十分な水分摂取を行い、速やかに主治医に相談してください。<ここがポイント!>ゼップバウンドは、持続性のグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)およびグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。本剤の成分であるチルゼパチドは、2023年4月より2型糖尿病の治療薬としてマンジャロの商品名で販売されていますが、今回新たに肥満症の治療薬として承認を取得しました。肥満症は個人の生活習慣のみによって引き起こされるという誤解がありますが、遺伝的、心理的、社会的なさまざまな要因が複合的に影響し発症する慢性疾患です。チルゼパチドは中枢神経系においてGIP/GLP-1受容体に作用して食欲を調節すると同時に、脂肪細胞のGIP受容体に作用して脂質などの代謝を亢進し、体重を減少させる効果があります。本剤は、食事療法や運動療法を行っても十分に効果が得られない高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有する患者を対象にしています。美容や痩身、ダイエットなど肥満症治療以外の目的で使用することはできません。投与には1回使い切りのオートインジェクター型注入器(商品名:アテオス)を使用し、週1回皮下注射します。適切な在宅自己注射教育を受けた患者または家族は自宅で自己注射が可能です。日本人肥満症患者を対象とした国内第III相試験(GPHZ試験:SURMOUNT-J)において、投与72週時の体重のベースラインからの平均変化率は、プラセボ群が-1.8%であったのに対し、チルゼパチド10mg群では-18.4%、チルゼパチド15mg群では-22.6%であり、チルゼパチド両群でプラセボ群に対する優越性が示されました。また、5%以上の体重減少を達成した試験参加者の割合は、プラセボ群が21.2%であったのに対し、チルゼパチド10mg群では94.9%、チルゼパチド15mg群では96.9%であり、チルゼパチド両群でプラセボ群に対する優越性を示しました。

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GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは、駆出率の保たれた心不全肥満患者に有効(解説:佐田政隆氏)

 左室駆出率が40%未満の心不全を「左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)」、左室駆出率が50%以上の心不全を「左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」、左室駆出率が40%以上50%未満の心不全は「左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されている。 HFrEFに対する薬物療法では、この30年ほどの間に著明な進歩があった。β遮断薬、ACE阻害薬/ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)もしくはARNI (アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、そして最近はSGLT2阻害薬の上乗せが予後をさらに改善することが証明された。現在、β遮断薬、ARNI、MRA、SGLT2阻害薬はfantastic fourと呼ばれ、HFrEF患者の予後改善のために1ヵ月以内に早期に導入することが強く推奨されている。 一方、HFpEFに対しては、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、ARNI、MRAを用いて各種大規模臨床研究が行われてきたが、いずれも予後を改善することは証明できなかった。近年、HFrEFよりHFpEFが増加しているという報告もあり、今後予想される心不全パンデミックに備えて、HFpEFに対する有効な治療法の開発が望まれていた。 この数年、SGLT2阻害薬がHFrEFのみでなくHFpEFに対しても有効性があることが証明され、ダパグリフロジンとエンパグリフロジンは糖尿病がなくても心不全治療薬として承認されている。しかし、HFpEF患者の予後改善のためには、さらなる追加の治療法が求められていた。 2023年、肥満を有するHFpEF患者において、セマグルチド2.4mgによる治療によって、プラセボと比較して、症状と身体的制限が軽減し、運動機能が改善し、体重が減少することがSTEP-HFpEF試験で報告された。 小腸から分泌されて膵臓に作用するインクレチン製剤としては長年GLP-1受容体作動薬が用いられてきたが、昨今、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが糖尿病治療薬として開発され、その強力な血糖降下作用と体重減少効果から、本邦でも急速に普及している。 本論文では、BMI 30以上の肥満をもったHFpEF患者(2型糖尿病患者はおよそ48%)に対するチルゼパチドの効果を検討した。主要評価項目である104週間での「心血管死と心不全増悪」を、チルゼパチドでプラセボと比較して有意に減少させた。また、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:スコア範囲は0~100で、数値が高いほど症状と身体的制限が少ないことを示す)と6分間歩行距離を改善した。体重減少は、チルゼパチド群で-13.9%、プラセボ群で-2.2%であった。注目すべきことには、高感度CRPがチルゼパチド群でなんと-38.8%低下し、プラセボ群では-5.9%であった。この抗炎症効果は、体重減少だけでは説明がつかないと思われ、膵臓以外の臓器へのチルゼパチドの多面的な作用の関与が大きいと思われる。 米国ではチルゼパチドは肥満症治療薬として2023年11月にすでに承認されているが、日本においてもセマグルチドに続いて2024年12月27日に承認された。肥満を有するHFpEF患者に対するチルゼパチドの効果のメカニズム、GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP-1受容体作動薬でHFpEFに対してどちらがより効果的なのか、肥満のないHFpEFにも有効なのかと疑問は尽きないが、今後の臨床研究、基礎研究で解明されていくことが期待される。

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『糖尿病治療ガイド2024』発刊、GIP/GLP-1受容体作動薬を追加/糖尿病学会

 日本糖尿病学会は、糖尿病診療で頻用されている『糖尿病治療ガイド』の2024年版を11月に発刊した。糖尿病治療ガイド2024は、糖尿病診療の基本的な考え方から最新情報までをわかりやすくまとめ、専門医だけでなく非専門の内科医、他科の医師、医療スタッフなどにも、広く活用されている。今回の糖尿病治療ガイド改訂では、GIP/GLP-1受容体作動薬の追加をはじめ、2024年10月現在の最新の内容にアップデートされている。糖尿病治療ガイド2024は糖尿病診療ガイドライン2024に準拠 【糖尿病治療ガイド2024の主な改訂ポイント】・「糖尿病診療ガイドライン2024」に準拠しつつ、診療上必要な専門家のコンセンサスも掲載。・GIP/GLP-1受容体作動薬の追加など、最新の薬剤情報にアップデート。・「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」に基づいた経口薬療法および注射薬療法の解説。・緩徐進行1型糖尿病の診断基準や糖尿病患者の脂質管理目標値、糖尿病性腎症の病期分類など、最新の基準・目標値の内容を反映。※アドボカシー活動の進展による言葉の変更は、いまだ適切な基準がないため、全面的な変更は見送った。 編集委員会は糖尿病治療ガイド2024の序文で「日々進歩している糖尿病治療の理解に役立ち、毎日の診療に一層活用されることを願ってやまない」と期待を述べている。

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肥満へのチルゼパチド、9割弱が5%以上の減量達成/JAMA

 中国の肥満または過体重成人を対象に行われた第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド10mgまたは15mgの週1回投与は、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある体重減少をもたらし、安全性プロファイルは許容できるものであったことを、中国・復旦大学のLin Zhao氏らが報告した。肥満は世界的な公衆衛生上の懸念事項であり、なかでも中国の肥満者の数は世界で最も多いとされる。JAMA誌オンライン版2024年5月31日号掲載の報告。10mg/15mg投与の52週時点の体重変化率、5%以上の体重減少を評価 肥満または過体重で体重に関連した疾患を有する中国成人を対象に、体重減少に対するチルゼパチド治療の有効性と安全性を評価するSURMOUNT-CN試験は、2021年9月~2022年12月に中国の29医療施設で行われた。BMI 28以上、またはBMI 24以上で少なくとも1つの体重に関連した疾患を有する、18歳以上の成人(糖尿病患者は除く)を対象とした。 研究グループは被験者を1対1対1の割合で、チルゼパチド10mgを投与する群、同15mgを投与する群、プラセボを投与する群に割り付け、全例に生活習慣の介入を行いながら週1回52週間皮下投与した。 主要エンドポイントは2つで、52週時点で評価したベースラインからの体重変化率(%)と少なくとも5%以上の体重減少とした。有効性および安全性の解析はITT集団で行われた。体重変化率、10mg群-13.6%、15m群-17.5%、プラセボ-2.3% 無作為化された被験者は210例(女性103例[49.0%]、平均年齢36.1[SD 9.1]歳、平均体重91.8[16.0]kg、平均BMI 32.3[3.8])で、チルゼパチド10mg群70例、同15mg群71例、プラセボ群69例であった。このうち201例(95.7%)が試験を完了した。 52週時点の平均体重変化率は、チルゼパチド10mg群-13.6%(95%信頼区間[CI]:-15.8~-11.4)、同15mg群-17.5%(-19.7~-15.3)、プラセボ群-2.3%であった。 チルゼパチドの両用量群ともプラセボより体重減少効果が優れており、対プラセボの推定治療群間差は10mg群が-11.3%(95%CI:-14.3~-8.3、p<0.001)、15mg群が-15.1%(-18.2~-12.1、p<0.001)であった。 5%以上の体重減少達成者は、チルゼパチド10mg群87.8%、同15mg群85.8%に対し、プラセボ群は29.3%であった(対プラセボのp<0.001)。 チルゼパチドの治療中に発現した有害事象で最も多くみられたのは消化器系イベントで、ほとんどが軽度~中程度であった。治療中止に至った有害事象はわずかであった(<5%)。

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GLP-1受容体作動薬の処方された患者さんへのライフスタイル指導【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第45回

■外来NGワード「きちんと注射しなさい!」(食事療法や運動療法については説明せず)「この注射をすれば、痩せますよ」(副作用について説明せず)■解説GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病治療薬であり、膵β細胞に作用して血糖依存的にインスリン分泌を促進するGLP-1(Glucagon-like peptide-1)に基づいています。このクラスの薬物は血糖改善だけでなく、減量効果も期待されます。わが国では2010年に初めてリラグルチド(商品名:ビクトーザ)が上市され、その後にエキセナチド(同:バイエッタ)、リキシセナチド(同:リキスミア)、デュラグルチド(同:トルリシティ)、セマグルチド(同:オゼンピック)など、現在では5つの注射製剤が利用可能です。あと、GIPも加えたGIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(同:マンジャロ)もあります。ただし、GLP-1受容体作動薬を使用する際には、開始直後に嘔気や嘔吐などの消化器症状がよくみられます。これらの症状は通常、時間が経つと軽減する傾向がありますが、患者さんに対しては、事前に十分な説明が必要です。なぜなら、突然の症状に驚いて治療アドヒアランスが低下する可能性があるからです。重大な有害事象としては、腸閉塞が挙げられます。腹部手術の既往がある患者さんや腸閉塞のリスクを抱える患者さんでは、慎重な投与と定期的なモニタリングが必要です。また、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(同:ウゴービ皮下注)は、肥満症治療薬としても認可されています。臨床試験では、セマグルチドを使用した群では平均で体重が13.2%減少したことが示され、その効果は脳の中枢を刺激して食欲を抑え、胃の運動を制御することによるものです。最大投与量が2.4mgまでできるため、強力な効果が期待される一方で、吐き気、下痢、便秘などの副作用には慎重に対処する必要があります。患者さんには副作用を十分に説明し、ライフスタイルの改善により最小限の用量で管理するように指導することが重要です。■患者さんとの会話でロールプレイ患者食事や運動に気を付けているんですが、血糖がなかなか下がりません。医師それでは、この週1回の注射薬を試してみましょうか。患者注射薬ですか、毎日、注射できるかな…(心配そうな顔)。医師大丈夫です。これは週に1回の注射なので、休みの日などゆっくりとした日に試してみてください。患者それなら、できそうです。医師この薬は血糖値が高いときには膵臓を刺激してインスリンを出して血糖値を改善するんですが、脳にも働いて食欲を抑えることで減量効果も高めます(薬の作用について説明)。患者えっ、それなら私にもピッタリですね。医師ただし、副作用については注意してください。注射してからすぐに、吐いてしまうことがあります。とくに、このくらいならいけると余分なものを食べたり、食べ過ぎたりするのは禁物です。患者了解しました。食べ過ぎは禁物ということですね。医師そうです。薬も少なめから徐々に増やしていこうと思っています。その方が、副作用がでにくいので…。患者それは安心です。それで、お願いします。医師この薬の効果を高めるには、朝晩体重計に乗ったり、お菓子類を目につかない所に置く、ヘルシープレートを使うなどのダイエット作戦を併用しておくといいですよ。ここにパンフレットがありますので、是非、試してみてください。患者はい。ありがとうございます(嬉しそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「この薬の副作用を予防するには、余分なものを食べない、食べ過ぎたり飲みすぎたりしないことが大切ですよ」「この薬の効果を高めるには、朝晩体重計に乗ったり(セルフモニタリング)、お菓子類を目につかない所に置く(刺激統制法)、ヘルシープレートを使う(ポーションコントロール、などのダイエット作戦を一緒にやるといいですよ!」 1)Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021;384:989-1002.2)Capehorn MS, et al. Diabetes Metab. 2020;46:100-109.

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痩身目的のオンライン診療でのトラブルが急増/国民生活センター

 痩身目的での糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬)の不適切処方が問題視され、厚生労働省などから適正使用への注意喚起がなされている。さらに最近では、痩身をうたうオンライン診療でトラブルが急増し、国民生活センターが警鐘を鳴らしている1)。 同センターへ寄せられた年度別相談件数では、2021年度は49件、2022年度は205件、2023年度は10月31日までで169件と多く、21年から22年では約4.2倍も急増していた。 痩身目的などのオンライン診療に関する相談では、処方薬、副作用の説明や基礎疾患の問診が十分でないまま、初診時に数ヵ月分が処方されるなど、不適切なケースがあると同センターは報告している。こうした不適切処方では、副作用などのフォローが十分ではないために、処方を受け、不調を訴えて一般の医療機関へ来院する患者も散見され、センターでは消費者に注意を喚起している。キャンセルできない、処方薬で副作用などの事例 同センターに寄せられた相談事例としては、「オンライン診療後のダイエット用の薬が糖尿病治療薬だった」「基礎疾患の問診も不十分なまま糖尿病治療薬を勧められた」「他剤との相互作用、副作用の説明がなく、キャンセルもできない」などの事例があった。また、「既往があるが問診がなされず、処方薬を1ヵ月服用したところ、頭痛・吐き気・めまいなどの副作用が現れたため、解約を申し出たが拒否された」などの実害が生じている事例も報告されている。相談事例からみる特徴や問題点【処方薬、副作用の説明や基礎疾患の問診が不十分】 自由診療では、医師は施術に伴う副作用や合併症のほか、施術費用および解約条件、効果の個人差などを丁寧に説明することが求められているが、多くの事例でこれらの説明が不十分。 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(厚生労働省作成)2)では、初診の場合には、基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方を行わないこととされているが、初診で基礎疾患などの確認が不十分なまま数ヵ月分の処方がなされているケースがある。さらに、2型糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬)を痩身目的で処方(不適正使用)しているケースがあり、同指針が遵守されているとは考えにくい。【特定商取引法に基づく取消しや解約が難しいケースがある】 痩身目的の治療で契約期間が数ヵ月間の継続コース(処方薬の定期購入)を勧められ、数十万円の契約をしているケースが多くある。オンライン診療の結果、医師の判断で薬の処方の当否や薬の種類、数量を決めて処方している場合、契約申し込みのケースによっては「特定申込み」に該当せず、定期購入と同様の仕組みであっても、特定商取引法に基づく取消しができない場合がある。【運営事業者と医師の責任の所在がわかりにくい】 運営事業者と医師の責任の所在がわかりにくいケースがあるため、診察や処方薬などにかかる説明は誰が行うのか、誰が処方薬の販売者なのか、トラブルが生じた際、誰がどういった責任を負い、どこに問い合わせればいいのかなどについて、消費者にとってわかりにくくなっている。消費者への4つのアドバイス【痩身目的などのオンライン診療を受診するときは、処方薬も含め医師からしっかり説明を受ける】 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、医学的な必要性に基づかない体重減少目的に使用されうる糖尿病治療薬の処方など、不適正使用が疑われるような場合に処方することは不適切とされている。痩身目的などのオンライン診療を受診するときは、治療内容や処方薬、副作用などのリスク、万が一のときの対応などに関し、医師からしっかり説明を受ける。持病があり、通院や服薬をしている人は、主治医に相談するなど、とくに慎重に検討することが大切。【糖尿病治療薬は痩身目的の使用に関し、安全性と有効性は確認されていない】 糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬)が痩身目的で使われていることがあるが、これらの薬は2型糖尿病の治療を目的として承認されている。これらの薬に関する美容・痩身・ダイエットなどを目的とする不適正使用については、安全性と有効性は確認されていない。【解約条件などを申し込み前によく確認】 痩身目的などのオンライン診療の受診後に処方薬を購入する場合、定期購入になっているケースが多くある。解約できる場合でも条件が付されていることが多く、申し込み前によく確認する必要がある。解約の申し入れ先や副作用が出た場合の連絡先などについてもよく確認する。【トラブルにあった場合は、消費生活センターなどに相談】 契約に不安を感じたり、解約時にトラブルになったりした場合には、1人で悩まず最寄りの消費生活センターや消費者ホットラインの188(いやや!)へ相談。もし、副作用などの症状が出た場合、速やかに最寄りの医療機関を直接受診。

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事例038 C101 在宅自己注射指導管理料の導入期加算の算定漏れ【斬らレセプト シーズン3】

解説持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ皮下注2.5mgアテオス)の院内新規採用があったので、「C101 在宅自己注射指導管理料」(以下「同管理料」)の注3の処方変更時の導入初期加算(以下「同加算」)に漏れがないかを調べてみました。同加算の算定漏れを複数件みつけて返戻再請求を行いました。また、同様事例が他院でもありました。原因は次のとおりでした。同管理料注3には「処方内容に変更があった場合に、当該指導を行った日の属する月から起算して1月を限度として、1回限り」とあります。留意事項において「処方内容の変更とは、別表第9に掲げる注射薬に変更があった場合」と定義されています。この「注射薬の変更」の判断を、「日本標準商品分類番号」や「薬効分類名」ですると誤解されており算定漏れにつながっていました。「注射薬に変更があった場合」とは、「一般的名称に変更があった場合」であると2014年に疑義解釈が発出されています。2020年度の診療報酬改定にて「一般名」から「注射薬」に文言修正されましたが、この「一般的名称」で判断することには変わりありません。したがって、別表第9に示された分類の中で、「一般的名称」が異なる薬剤に変更した場合は、同加算が算定できます。なお、過去1年以内に使用したことのある一般的名称に変更した場合には、算定できません。薬剤変更暦が確認できる台帳や履歴表示の仕組みがないと誤算定につながりますので留意が必要です。算定漏れ防止対策として、同加算は「一般的名称」で判断することを院内連絡し、処方システムには前回処方と異なる場合に「同加算が算定可能」とアラート表示されるように改修をしました。

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第175回 研修医がGLP-1受容体作動薬を不正処方/東大病院

<先週の動き>1.研修医がGLP-1受容体作動薬を不正処方/東大病院2.5シーズンぶりのインフルエンザ警報、早期対策を/厚労省3.オンライン診療、メリットあるも要件の厳格化へ/厚労省4.処方箋なしで医薬品を販売する「零売薬局」、規制強化へ/厚労省5.レカネマブが保険適用、1年間で298万円/厚労省6.来年度診療報酬改定、医療従事者の賃上げに本体は0.88%引き上げ/政府1.研修医がGLP-1受容体作動薬を不正処方/東大病院東京大学医学部付属病院の臨床研修医2人が、病気ではないにも関わらず、互いに処方箋を発行し、GLP-1受容体作動薬を入手していたことが明らかになった。この報道に対して、病院側は「自己使用目的であって転売目的ではなく、常習性もなかった」と判断し、病院長から厳正な指導を行ったことを明らかにした。GLP-1受容体作動薬は、インターネット上で「やせ薬」として紹介されており、自由診療目的で処方を行う医療機関が急増している。一方、日本糖尿病学会は、11月28日に「2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」を発表しており、本来は糖尿病治療薬であるのに、美容、痩身、ダイエット目的での自由診療による処方が一部のクリニックで行われており、需要増加による供給不足が生じている。糖尿病治療薬の適切使用は重要であり、医療専門家による不適切な薬剤使用は、専門医の信頼を損なう行為であり、日本糖尿病学会はこれを厳しく警告している。参考1)GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(日糖会)2)研修医、病気装い糖尿病薬入手=供給不足の「やせ薬」-東大病院(時事通信)3)東大病院の研修医2人、病気装って糖尿病薬を入手 「やせ薬」と話題(朝日新聞)2.5シーズンぶりのインフルエンザ警報、早期対策を/厚労省厚生労働省は、2023年12月15日に全国約5,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの感染者数が1医療機関当たり33.72人となり、警報レベル(30人超)に達したことを発表した。警報は2019年1月以来、5シーズンぶりの事態で、とくに北海道では60.97人と最多。全国で33道県が警報レベルを超え、1週間で6,382ヵ所の保育所や学校が休校や学級閉鎖に追い込まれた。慶應義塾大学の菅谷 憲夫客員教授は、「新型コロナウイルス感染症の流行中にインフルエンザの流行が抑えられたことで、とくに子どもを中心に免疫が落ちている」と指摘。基本的な感染対策の継続と、症状があれば早期受診を呼びかけている。また、菅谷教授は、2つのタイプのA型インフルエンザウイルスが同時に流行していることや、約3年間に大規模な流行がなかったことを、早期警報の要因として挙げている。高齢者や妊婦、基礎疾患を持つ人は、とくに注意が必要であり、発熱などの異常を感じたら早期受診が推奨されている。冬休みに小児のピークが過ぎる可能性があるが、年末年始の休暇シーズンで全国的な感染拡大の恐れもあるため、手洗い、うがい、マスク着用などの基本的な感染対策の徹底が求められている。参考1)インフルエンザ、全国で「警報レベル」…コロナ禍の感染対策で識者「免疫落ちている」(読売新聞)2)インフルエンザ、今季初の警報レベル 1医療機関33.72人 厚労省(毎日新聞)3.オンライン診療、メリットあるも要件の厳格化へ/厚労省厚生労働省は、12月15日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、オンラインで患者を診療した際に医療機関が算定する初・再診料の要件を2024年度の診療報酬改定で厳格化する案を了承した。新たな要件には、「初診では向精神薬を処方しないこと」を医療機関のホームページに掲示することが含まれている。さらに、遠方の患者を多く診療する医療機関に対しては、対面診療の連携先を報告させることも検討されている。厚労省は、新型コロナウイルス禍を経て、オンライン診療は重要であるとして、保険診療だけでなく自由診療も対象にガイドラインを策定し、規制緩和を行なってきたが、初診時に向精神薬の処方を行ったり、メールやチャットだけで診察や薬の処方を行うなど、ガイドラインで認めていない方法で診療を行っている医療機関が問題視されてきた。今後、厚労省では、オンライン診療を行っている医療機関がガイドラインを遵守しているか実態調査を行うため、スケジュールや調査方法などを検討するほか、患者がオンライン診療を適切に行っている医療機関を選択できるよう、情報発信の強化に乗り出すことにした。一方、慶應義塾大学などの研究グループは、うつ病や不安症などの精神科診療において、オンライン診療が対面診療と同等の治療効果があることを発表した。この研究結果は、オンライン診療の普及に向けた政策的議論に貢献するもので、さらに、オンライン診療は、通院に要する時間の短縮や費用の削減といった副次的効果もあり、今後もデジタルトランスフォームを通して医療現場に浸透していくとみられる。参考1)オンラインの初・再診料要件、厳格化案を了承「向精神薬初診で処方せず」の掲示必須に(CB news)2)オンライン診療 不適切な医療機関の実態調査へ 厚労省(NHK)3)オンライン診療、対面と遜色なし 普及に弾み(日経新聞)4.処方箋なしで医薬品を販売する「零売薬局」、規制強化へ/厚労省厚生労働省は、処方箋なしで医療用医薬品を販売する「零売薬局」に対する規制を強化する方針を固めた。不適切な販売方法や広告が増加していることに対応するために打ち出されたもの。2022年時点で60店舗以上の零売薬局が存在し、例外的に処方箋なしで医療用医薬品を販売できるが、これまで大規模災害時など「正当な理由」がある場合に限られていた。しかし、一部の薬局が通知を逸脱し、やむを得ない状況ではないにも関わらず日常的に医療用医薬品を販売する薬局が増加していることや、不適切な広告などが確認されており、重大な疾患や副作用が見過ごされるリスクが高まっていた。厚労省は、処方箋に基づく販売を原則とし、やむを得ない場合に限って認めることを法令で明記する方針。また、医療用医薬品の販売を強調する広告も禁止する方向で調整している。厚労省は12月18日に開かれる医薬品の販売制度に関する検討会で取りまとめを行い、医薬品医療機器制度部会に報告した後、厚生労働省から正式に通知が発出される見込み。参考1)医薬品の販売制度に関する検討会(厚労省)2)「零売薬局」の販売規制へ 処方箋なしで医療用医薬品-認める条件明確化・厚労省(時事通信)3)特例のはずが…処方箋なし薬「零売」横行 副作用や疾患見逃す恐れ(毎日新聞)5.レカネマブが保険適用、1年間で298万円/厚労省厚生労働省は、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ(商品名:レケンビ)」を公的医療保険の適用対象とし、体重50kgの患者の1回当たりの価格を約11万4千円、年間約298万円と設定した。この薬は、アルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ(Aβ)」を取り除くことを目的とした初の治療薬で、軽度認知障害や軽度の認知症の人が対象。投与は2週に1度の点滴で行われる。レカネマブの投与は、副作用のリスクを考慮し、限られた医療機関でのみ行われる予定で、副作用には脳内の微小出血やむくみが含まれ、安全性を重視するため、認知症専門医が複数いる施設でMRIやPETを備えていることなどの条件に合致する限られた医療機関で処方される。臨床治験では、レカネマブを1年半投与したグループは、偽薬を投与したグループより病気の悪化を27%抑える結果が得られた。レカネマブの市場規模は、ピーク時に年間986億円に上ると予測されており、医療保険財政への影響が懸念されている。また、薬価の決定に際しては、社会的価値の反映が議論されたが、最終的には製造費や薬の新規性を考慮した通常の算定方法で算出された。専門家や関係者からは、新薬の保険適用により治療が前進することへの期待とともに、検査費用や治療に関する不安の意見も上がっている。また、効果が見込める患者の適切な選別や、新しい治療薬に対応できる認知症医療システムの構築が今後の課題とされている。参考1)新医薬品の薬価収載について(厚労省)2)認知症薬エーザイ「レカネマブ」 年298万円 中医協、保険適用を承認(日経新聞)3)見えぬ全体像、処方可能な医療機関は限定的 アルツハイマー病新薬(毎日新聞)4)アルツハイマー病新薬 年間約298万円で保険適用対象に 中医協(NHK)6.来年度診療報酬改定、医療従事者の賃上げに本体は0.88%引き上げ/政府政府は来年度の診療報酬改定において、医療従事者の人件費に相当する「本体」部分を0.88%引き上げる方針を固めた。今回の診療報酬の改定をめぐっては、各医療団体から物価高騰や医療従事者の賃上げに対応する意見が上がっていた。一方、薬の公定価格である「薬価」は約1%引き下げとなり、全体としてはマイナス改定となる見通し。岸田 文雄首相は、財務省と厚生労働省の間での議論を経て、賃上げ方針を医療従事者にも波及させるために、最終的に引き上げを決定した。診療報酬改定は原則2年に1度行われ、今回の改定は前回2022年度の0.43%引き上げを上回る水準となる。今回の改定により、医療従事者の処遇改善が期待される一方で、国民の保険料負担の増加が懸念される。また、診療所の利益剰余金の増加や医療費の抑制が課題となっており、国民負担の抑制が今後の大きな課題になっている。参考1)「本体」0.88%引き上げ=賃上げ対応、全体ではマイナス-24年度診療報酬改定(時事通信)2)診療報酬「本体」0.88%上げ、政府方針…「薬価」は1%引き下げで調整し全体ではマイナス改定(読売新聞)3)診療報酬改定 人件費など「本体」0.88%引き上げで調整 政府(NHK)

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肥満2型糖尿病患者に強化インスリン療法は必要か?(解説:住谷哲氏)

 本試験では基礎インスリンを投与しても、血糖コントロール目標が達成できない肥満2型糖尿病患者に対するチルゼパチド週1回投与と毎食前リスプロ投与による強化インスリン療法との有効性が比較された。結果は予想通り、HbA1c低下、体重減少、目標血糖値達成率、低血糖の回避のすべてでチルゼパチドが優れていた。 経口血糖降下薬のみでは血糖コントロール目標が達成できない場合の治療選択肢として、以前は基礎インスリンを併用するBOT basal-supported oral therapyが金科玉条であったが、現在では基礎インスリンを投与する前にGLP-1受容体作動薬(GIP/GLP-1受容体作動薬を含む)を追加投与することが推奨されている1)。しかし現在でもfirst injectionにGLP-1受容体作動薬ではなく基礎インスリンが選択されることが少なくない。その場合、まずは基礎インスリンを0.5U/kgまで増量する。それでも血糖コントロール目標が達成できない場合には、GLP-1受容体作動薬を併用しないのであれば、強化インスリン療法へ移行することになる。しかし肥満2型糖尿病患者における強化インスリン療法はもろ刃の剣であり、肥満の助長は避けては通れない。 本試験では、FBGはチルゼパチド群およびリスプロ群の両群で100-125mg/dLを目指してグラルギンを増量し、さらにリスプロ群では毎食前BG100-125mg/dLを目指してリスプロを増量するようにデザインされた。試験開始時のグラルギン投与量は両群で46U/日(0.5U/kg)であったが、チルゼパチド群ではグラルギン投与量は試験終了時52週後に13U/日(0.15U/kg)まで減少した。さらに15mg投与群では、19%の患者においてグラルギン投与が不要となった。一方、リスプロ群の52週でのグラルギン投与量は42U/日(0.45U/kg)、リスプロ投与量は62U/日(0.67U/kg)、1日総インスリン投与量は112U/日(1.2U/kg)となった。 筆者も強化インスリン療法で治療中の肥満2型糖尿病患者に、セマグルチドを併用することでインスリン投与から離脱した症例を経験したことがある。病態生理から考えても、高インスリン血症を伴っている可能性の高い肥満2型糖尿患者における強化インスリン療法には疑問がある。コストや有害事象などを考慮することが当然必要であるが、肥満2型糖尿病患者における強化インスリン療法は、基礎インスリンにGLP-1受容体作動薬を併用しても血糖コントロール目標が達成できない患者に対する最後の選択肢としての位置付けが適切だろう。

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2型糖尿病治療薬としてのGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutide(解説:住谷哲氏)

 筆者はこれまで、血糖降下薬多剤併用でも血糖管理目標が達成できない患者を少なからず経験したが、その多くは食欲がコントロールできない肥満合併患者であった。しかしGLP-1受容体作動薬の登場で、食欲抑制を介して体重を減少させることが可能となり、2型糖尿病治療は大きく前進した。最新のADA/EASDの血糖降下薬使用アルゴリズムにおいて、GLP-1受容体作動薬はSGLT2阻害薬と同様に臓器保護薬として位置付けられている1)。しかし、GLP-1受容体作動薬はcardiovascular disease dominoのより上流に位置する肥満を制御することが可能な薬剤であり、この点がSGLT2阻害薬とは異なっている。 本試験は、GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの血糖降下薬としての有効性を検証した第II相臨床試験であるが、肥満症治療薬としての有効性を検証した試験の結果がほぼ同時に報告されている2)。そこでは約1年(48週)投与後の体重減少率が24%と、驚くべき効果が示されている。これはセマグルチド、チルゼパチドの体重減少作用を凌駕している。GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)が登場するまでは、最強のGLP-1受容体作動薬はセマグルチド(同:オゼンピック)であった。しかしretatrutideが投与可能となれば、チルゼパチドは最強のGLP-1受容体作動薬の座をretatrutideに明け渡すことになるだろう。 開発企業のEli Lillyは、すでにretatrutideの臨床開発プログラムであるTRIUMPH programを開始しており、対象には肥満を合併した2型糖尿病だけではなく、睡眠時無呼吸症候群、変形性膝関節症の患者も含まれている。つまり、肥満を基礎とする広範な疾患に対する治療薬としての位置付けを目指しているようだ。 わが国で肥満症治療薬として認可されているGLP-1受容体作動薬はセマグルチド(同:ウゴービ)だけであるが、近い将来にチルゼパチドもretatrutideも認可されるだろう。わが国でも増加し続けている肥満症患者のすべてに、これらの薬剤を投与することが医療経済的に正当化されるか否かは議論が必要だろう。英国のNICEのガイダンスのように3)、対象患者、投薬期間を明確にして無制限な使用に歯止めをかけることも必要かもしれない。

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第162回 2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省

<先週の動き>1.2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省2.新学期スタートでも学級閉鎖相次ぐ、新型コロナ感染者数が5類移行後で最多に/厚労省3.ワクチン接種後の副反応の解析用にデータベースを整備へ/厚労省4.30年ぶりの肥満症新薬の登場も、メディカルダイエットの流行が弊害に/厚労省5.生殖補助医療における課題の解決に向け、公的機関の設立を/日本産科婦人科学会6.2021年度の介護費用、過去最大の11兆円に、高齢化が影響/厚労省1.2022年度の医療費46兆円、2年連続過去最高/厚労省2022年度の日本の概算医療費が46兆円に達し、2年連続で過去最高を更新したことが厚生労働省から発表された。前年度に比べて4.0%増加しており、新型コロナウイルスの感染拡大と高齢化が主な影響因子とされている。厚労省によると、新型コロナウイルスのオミクロン株の流行が、とくに影響を与え、発熱外来などの患者数が大幅に増加した。コロナ患者の医療費は前年度の倍近い8,600億円に上った。また、75歳以上の人々が全体の医療費の約39.1%(18兆円)を占め、その1人当たりの医療費が95万6千円であり、75歳未満の24万5千円に比べ3.9倍だった。診療種類別では、医科が34.3兆円(4.5%増)、歯科が3.2兆円(2.6%増)、調剤が7.9兆円(1.7%増)といずれも増加。とくに、医科の外来や在宅などの入院外が16.2兆円(6.3%増)と目立つ伸びをみせた。診療所においては、不妊治療の保険適用が拡大したことで、産婦人科が前年度比41.7%増と大幅に伸びた。このような背景から、医療費の増加が持続している現状において、その抑制方法が課題となっている。とくに新型コロナウイルスの影響と高齢化が相まって、今後も医療費の増加が予想される。参考1)令和4年度 医療費の動向-MEDIAS-(厚労省)2)医療費が過去最大46兆円 4年度概算、コロナ影響(産経新聞)3)医療費1.8兆円増の46兆円 2年連続過去最高 新型コロナが影響(朝日新聞)4)22年度概算医療費46兆円、2年連続で過去最高 前年度比4%増(CB news)2.新学期スタートでも学級閉鎖相次ぐ、新型コロナ感染者数が5類移行後で最多に/厚労省厚生労働省によると、全国の新型コロナの患者数は前週比で1.07倍増となり、とくに岩手、青森、宮城の患者数が多い状況が明らかとなった。新たな入院者数は全国で1万3,501人と、前週よりは減少しているものの、重症患者数は増加している。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、学校における影響も顕著になっており、とくに新学期が始まった地域で学級閉鎖が相次いでいる。日本学校保健会によると、全国の小中高校と幼稚園、保育園で149クラスが閉鎖されている。長野県では、新学期が始まったばかりで31クラスが閉鎖され、これは5月以降で最多。感染症の専門家は、学校が再開されることで、子供たちでの感染がさらに広がる可能性を指摘している。また、ワクチン接種から時間が経過すると効果が下がるため、高齢者や基礎疾患のある人は、次の接種が必要になると警告している。自治体や学校は、発熱や倦怠感などがある場合には、無理に登校しないよう呼びかけており、基本的な感染対策の徹底を求めている。参考1)新型コロナで学級閉鎖相次ぐ 「5類移行」後、最多更新の地域も(毎日新聞)2)新型コロナ 全国の感染状況 前週の1.07倍 2週連続の増加(NHK)3)コロナ感染者数、2週続けて増加 前週比1.07倍 5類後最多に(朝日新聞)3.ワクチン接種後の副反応の解析用にデータベースを整備へ/厚労省厚生労働省は、9月1日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会を開き、自治体が管理している予防接種の記録や、国が保有する副反応の情報などをまとめた全国的なデータベースを作成する方針を明らかにした。これまでの手書きでの報告を改訂し、効率的に情報収集を行う予定。データベースには、接種記録や副反応疑い報告などが匿名化されて格納され、他のデータベースと連携し、予防接種の有効性・安全性の調査・研究が可能となるため、大学研究機関などに第三者提供も行われる予定。これらの取り組みで、ワクチン接種後の副反応や重篤な有害事象の発生について、副反応の情報と接種歴を結びつけて詳細な分析を可能になる見込み。また、データベースの情報は、レセプト(診療報酬明細書)とも結びつけられ、接種した人としていない人の間で副反応が疑われる症状が起きる割合に差があるかを調査することも計画されている。厚労省は、このデータベースを令和8年度中に稼働させ、ワクチンの有効性や安全性の分析に役立てる方針としている。参考1)予防接種データベースについて(厚労省)2)予防接種データベース「整備イメージ」提示 厚労省、報告様式改訂し情報収集を効率化(CB news)3)ワクチン分析 自治体や国保有の情報データベース作成へ 厚労省(NHK)4.30年ぶりの肥満症新薬の登場も、メディカルダイエットの流行が弊害に/厚労省今春、肥満症治療の新薬「セマグルチド(商品名:ウゴービ)」が承認され、1992年に承認されたマジンドール(同:マサノレックス)以来、約30年ぶりの肥満症治療の新薬の登場で、肥満症の治療は大きく進歩している。さらに糖尿病治療薬として承認された持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド(同:マンジャロ)」は20%の体重減少効果が確認されており、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬は、糖尿病の治療だけでなく、肥満症の治療としても注目されている。その一方、近年、痩せるために糖尿病薬を処方する「メディカルダイエット」が横行し、その弊害として欠品が問題となっている。厚生労働省は、この問題に対処するために、医療機関や卸業者に対してGLP-1受容体作動薬について「買い込みを控え適正使用」を呼びかけ、適正な使用と供給の優先を求めている。メーカー側は「医師の処方権」や「独占禁止法」により、適応外処方を厳しく規制することができないとしている。しかし、GLP-1受容体作動薬が適応外使用での処方や適応外でありながら大量に広告されていることから有害事象の発生など懸念が広がっている。参考1)GLP-1 受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(厚労省)2)30年ぶりの肥満症新薬と、「メディカルダイエット」が招く弊害(毎日新聞)3)“体重20%減”のダイエット効果があだに、糖尿病薬「空前の品不足」で診療に支障も(ダイヤモンド・オンライン)5.生殖補助医療における課題の解決に向け、公的機関の設立を/日本産科婦人科学会日本産科婦人科学会は、生殖補助医療の倫理的課題やデータ管理に対応するための公的機関設立の準備を始めたと発表した。医療技術の進展に伴い、第三者からの精子や卵子の提供など、新たな治療法が増加している一方で、倫理的な議論や法制度の整備が遅れている現状に対処するよう国側に強く働きかけたいとして同学会が決定した。1978年に世界で初めて体外受精が成功して以降、多くの国では親子関係や提供者の情報管理に関する法制度が整備されているのに対し、わが国では、生殖補助医療に関する法整備が世界に比べて遅れており、法整備が進まず、議論が始まったのは比較的最近であり、その結果としての法制度も不十分な状態が続いている。2020年には「生殖補助医療法」が成立し、一定の規定は確立されたが、提供者と子の「出自を知る権利」などがいまだに十分に考慮されていないのが現状。この法には2年以内に詳細を検討するという付則があったが、その期限が過ぎても議論は進展していない状態となっている。具体的には、新たな改正案で提案されている公的機関(独立行政法人)は、提供者の氏名や住所、生年月日などを100年間保存するよう求められている。しかし、この機関が情報を開示するかどうかは、提供者の同意に依存しており、その点が問題視されている。また、法案では提供を受けられるのは法律上の夫婦に限定されているなど、性的マイノリティーや代理出産に対する規定も不明確となっている。これらの課題を解決するためには、公的機関の設立だけでなく、広範な倫理的、法的議論が必要であり、産婦人科学会は国や関連団体に対して、専門の調査委員会を設けて、これらの課題に十分に議論を重ねることを求めている。参考1)“生殖補助医療の課題対応” 学会 公的機関の設立準備委(NHK)2)世界から遅れ 生殖補助医療法の必要性を指摘してきた識者の憂い(毎日新聞)3)生殖補助医療法、2年の改正期限過ぎるも議論混迷、次期国会どうなる(朝日新聞)6.2021年度の介護費用、過去最大の11兆円に、高齢化が影響/厚労省厚生労働省は、2021年度の介護費用(保険給付と自己負担を含む)が11兆2,838億円に達し、過去最大を更新したと発表した。この額は2年連続で11兆円を超え、高齢化に伴い、介護サービスの利用者が増加している。同時に、介護保険の給付費(利用者負担を除く)も前年度比2.0%増の10兆4,317億円となり、これもまた過去最高を更新した。介護や支援が必要とされる人々も、21年度末時点で前年度比1.1%増の690万人となり、うち601万人が75歳以上であることが明らかとなり、これも過去最多の数値。給付費の内訳については、訪問介護などの「居宅サービス」が4兆9,604億円で最も多く、次いで特別養護老人ホームなどの「施設サービス」が3兆1,938億円となっている。高齢化が進む中で、介護費用と給付費の増加は持続的な問題となっている。とくに、75歳以上の高齢者が多くを占めていることから、今後もこの傾向は続くと予想される。参考1)令和3年度 介護保険事業状況報告(厚労省)2)介護費、最大の11兆円 21年度(日経新聞)3)介護給付費、10兆4千億円 21年度、高齢化で更新続く(共同通信)

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経口セマグルチド(リベルサス)の最大投与量は50mgで決着か?(解説:住谷哲氏)

 現在(2023年8月)、わが国ではGLP-1受容体作動薬の注射製剤の供給に問題が生じており、使いやすい週1回製剤であるトルリシティ、オゼンピック、マンジャロ(厳密にはGIP/GLP-1受容体作動薬)の新規処方はできず、使用できるのは毎日注射製剤のビクトーザ、リキスミアとバイエッタのみとなっている。経口セマグルチドであるリベルサスに関しては処方制限の噂は聞かないので、当面は新規処方に問題は生じないと信じたい。 セマグルチド注射薬は血糖降下薬としての最大投与量は1.0mg/週であるが、肥満症治療薬としては2.4mg/週までの投与が、わが国でも製造承認されている。つまり、肥満症治療薬としては血糖降下薬よりも投与量を増やす必要があることになる。経口セマグルチドは現時点で血糖降下薬としてのみ承認されているが、同じセマグルチドなので当然肥満症治療薬として使用可能である。すでにそのための臨床試験であるOASIS 1の結果が報告されて、経口セマグルチド50mg/日が肥満症治療薬として有効であることが示された1)。 経口セマグルチドの第II相臨床試験では、経口セマグルチドの血糖降下作用には40mgまで用量依存性のあることが報告されている2)。しかしリベルサスの最大投与量は14mgに設定されて、40mgではない。それでは、なぜ今になって25mgと50mgとの有効性を検証する本試験が実施されたのだろうか? セマグルチドの血糖降下作用および体重減少作用は、注射薬および経口薬を問わず、達成されたセマグルチドの血中濃度に依存する3)。その論文では、経口セマグルチド14mg投与患者の血中セマグルチド濃度には最大で10倍程度の個人差があることが示されている。単純に言えば、14mg投与しても1.4mg投与したのと同様の効果しか出ない患者が存在することになる。したがって、血中セマグルチド濃度の上昇が少ない患者では50mg投与すれば、血中濃度の増加に伴って血糖降下作用および体重減少作用が増大することが期待される。それを証明するのが本試験の目的だったのだろうと筆者は推測している。 経口薬であれ注射薬であれ、GLP-1受容体作動薬の有用性は確立している。供給問題の一刻も早い収束を期待したい。

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GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの有効性・安全性/Lancet

 2型糖尿病患者の治療において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴンの3つの受容体の作動活性を有する新規単一ペプチドretatrutideは、プラセボと比較して、血糖コントロールについて有意かつ臨床的に意義のある改善を示すとともに、頑健な体重減少をもたらし、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬とほぼ同様であることが、米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月26日号で報告された。米国の無作為化プラセボ/実薬対照第II相試験 本研究は、米国の42施設が参加した二重盲検無作為化ダブルダミー・プラセボ/実薬対照第II相試験であり、2021年5月~2022年6月の期間に患者のスクリーニングと無作為化が行われた(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18~75歳、HbA1c値7.0~10.5%(53.0~91.3mmol/mol)、BMI値25~50の2型糖尿病患者が、スクリーニング前の少なくとも3ヵ月間、食事療法と運動療法のみの治療、または安定用量のメトホルミン(≧1,000mg、1日1回)による治療を受けた後、次の8つの群(いずれも週1回皮下投与)に、2対2対2対1対1対1対1対2の割合で無作為に割り付けられた。 (1)プラセボ、(2)デュラグルチド1.5mg、(3)retatrutide 0.5mg、(4)同4mg(開始用量2mg)、(5)同4mg(漸増せず)、(6)同8mg(開始用量2mg)、(7)同8mg(開始用量4mg)、(8)同12mg(開始用量2mg)。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点までのHbA1cの変化であり、副次エンドポイントには、36週時点までのHbA1cおよび体重の変化が含まれた。 281例が登録され、プラセボ群に45例、デュラグルチド1.5mg群に46例、retatrutide 0.5mg群に47例、同4mg漸増群に23例、同4mg群に24例、同8mg緩徐漸増群に26例、同8mg急速漸増群に24例、同12mg漸増群に46例が割り付けられた。全体の平均年齢は56.2(SD 9.7)歳、女性が156例(56%)で、平均糖尿病罹患期間は8.1(SD 7.0)年、白人が235例(84%)であり、平均HbA1cは8.3%(SD 1.1)、平均BMI値は35.0(SD 6.3)、平均体重は98.2kg(SD 21.1)であった。脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させる効果も 24週時におけるHbA1cのベースラインからの最小二乗平均変化は、プラセボ群が-0.01%(SE 0.21)、デュラグルチド1.5mg群が-1.41%(0.12)であったのに対し、retatrutide 0.5mg群は-0.43%(0.20)、4mg漸増群は-1.39%(0.14)、4mg群は-1.30%(0.22)、8mg緩徐漸増群は-1.99%(0.15)、8mg急速漸増群は-1.88%(0.21)、12mg漸増群は-2.02%(0.11)であった。 retatrutideによるHbA1cの低下は、プラセボ群と比較して0.5mg群を除く5つの群で有意に大きく(いずれもp<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較では8mg緩徐漸増群(p=0.0019)と12mg漸増群(p=0.0002)で有意に大きかった。36週時にも、これらと一致した知見が得られた。 また、体重は36週の時点でretatrutideの用量依存性に減少し、減少率は0.5mg群3.19%(SE 0.61)、4mg漸増群7.92%(1.28)、4mg群10.37%(1.56)、8mg緩徐漸増群16.81%(1.59)、8mg急速漸増群16.34%(1.65)、12mg漸増群16.94%(1.30)であった。プラセボ群の体重減少率は3.00%(0.86)、デュラグルチド1.5mg群は2.02%(0.72)だった。 体重減少は、プラセボ群と比較してretatrutideの用量が4mg以上の群ではいずれも有意に大きく(4mg漸増群:p=0.0017、これ以外のすべての群:p<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較でも4mg以上の群で有意に大きかった(いずれもp<0.0001)。 軽度~中等度の消化器系の有害事象(吐き気、下痢、嘔吐、便秘など)が、retatrutide群の35%(67/190例、0.5mg群の13%[6/47例]から8mg急速漸増群の50%[12/24例]までの範囲)、プラセボ群の13%(6/45例)、デュラグルチド1.5mg群の35%(16/46例)で発現した。試験期間中に重篤な低血糖の報告はなく、死亡例もなかった。 著者は、「同時に、retatrutideは脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させ、心代謝系のアウトカムを全般的に改善した」とし、「これら第II相試験の知見は、2型糖尿病および他の肥満関連合併症を有する肥満患者を対象とする第III相試験において、retatrutideの有効性と安全性をさらに検討することを支持するものである」と指摘している。

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