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【GET!ザ・トレンド】ステントで脳血栓を回収 脳血管内治療はここまで来た

脳血管内治療がさらに進歩している。今回は、同治療の第一人者である神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科部長 坂井 信幸氏に、その最新情報を聞いた。坂井氏によれば、脳動脈瘤や頸動脈などを含め脳血管内治療は、いまや年間2万件以上実施されているという。また、脳血管内治療専門医として認定された医師はおよそ950人だが、毎年100人程度増加しており、多くの医師が取り組み始めていることがわかる。脳血管内治療の進化脳の血管は細く屈曲蛇行し、なおかつデリケートで破れやすい。当然、挿入機器は細く柔らかく長いものになる。柔らかいものは押し込みにくいため、技術導入初期ではカテーテルの誘導そのものに苦労していたそうだ。その後の機器の開発は著しく、マイクロカテーテルは細く、滑りやすく、安全に脳血管に届くよう改良され、同時にガイドワイヤーなどの機器も大きく進化した。さらに、心臓などで用いられるステントも脳内に適用できるようになった。注目される局所線溶(再開通)療法この脳内ステントの登場により、さらに注目を浴びているのが局所線溶(再開通)療法だ。急性虚血性脳血管障害では、従来tPAで詰まった血栓を溶かすしか手段がなく、tPAの適応外症例や無効例には対応できなかった。tPAで対応できないこうした血栓を、血管内から挿入したワイヤー型やステント型のデバイスで回収し、再開通させるのが局所線溶(再開通)療法である。本邦では、中心循環系塞栓除去用カテーテル(Merciリトリーバー)が2010年に、ステント型血栓除去用カテーテル(Solitaire FR)が昨年(2014年)保険適用となっている。坂井氏の経験では、どちらも非常に速く血栓を確保し再開通できるという。この血管内カテーテル追加治療の有用性を確認すべく、いくつかの比較試験が最近行われている。まず昨年(2014年)12月にMR CLEAN1)試験が発表された。次いで本年(2015年)2月、ESCAPE2)、EXTEND-IA3)というSolitaire FRを用いた2つの無作為化比較試験の結果が発表された。ESCAPE試験においては、Solitaire FR追加群の機能的自立率はtPA単独群に比べ統計学的にも有意に改善(53%vs. 29%)。脳卒中による死亡率もtPA単独群に比べ2分の1近くとなり(10%vs. 19%)、統計学的にも有意に低減していた。(血管内治療の追加で脳梗塞の予後改善)。EXTEND-IA試験においては、tPA単独群に比べ機能的自立回復率が有意に改善(71% vs 40%)した。この両試験の結果は3月の日本脳卒中学会(STROKE2015)でも非常に大きな話題となったという。すべての適応患者に行われるべき局所線溶(再開通)療法これらの試験から局所線溶(再開通)療法の有用性が明らかとなった。可能な限り多くの適応患者にこの治療を受けてもらうため、日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会は3学会の合同で所定の適正使用指針を定め、脳血管内治療専門医および、それに準じる経験を有する医師に対しても広く情報提供している。とはいえ、tPA自体もすべての適応患者に用いられているわけではなく、おのずと次段階で用いられる局所線溶(再開通)療法を受けられる患者はさらに少なくなってしまうのが現状である。急性期の脳梗塞患者を診療する医師は、まずtPA適応患者を見極めて、必要であれば速やかに専門施設に送っていただきたいと坂井氏は述べる。機器の開発により、脳血管内治療の適応は今後ますます拡大していくと予想される。これらの疾患に関わるすべての医療者は、脳血管内治療の最新情報を収集し診療に実践していく必要があるだろう。脳血管障害の医療を担う若手医師へのメッセージ1)Berkhemer OA, et al. N Engl J Med. 2015;372:11-20.2)Goyal M, et al. N Engl J Med. 2015;372:1019-1030.3) Campbell BC, et al. N Engl J Med. 2015;372:1009-1018.

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【第41回】水泳は気管支喘息の子供の運動耐容能や呼吸機能を改善

【第41回】水泳は気管支喘息の子供の運動耐容能や呼吸機能を改善 >足成より使用 水泳は気管支喘息のリスクでもあり、一方で気管支喘息の呼吸リハビリテーションにもなりうるという二面性を持っています。といっても運動誘発性気管支攣縮は別に水泳に限ったことではないため、後者の利益を重視する研究者のほうが多いように感じます。 Beggs S, et al. Swimming training for asthma in children and adolescents aged 18 years and under. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 4: CD009607. この報告は、18歳以下の気管支喘息患者さんに対する、水泳の訓練の効果と安全性を調べたシステマティックレビューです。水泳の訓練と他のケアを比較した試験を集め、メタアナリシスを行いました。その結果、8試験・262人が組み込まれました。安定した患者さんから重症の患者さんまで気管支喘息の重症度はさまざまでした。水泳の訓練はおおむね30~90分で、週2~3回、期間としては6~12週継続されました。水泳の比較対象としては、通常ケアが7試験、ゴルフが1試験でした。結果として、水泳は通常のケアやゴルフと比較してQOL、喘息発作、副腎皮質ステロイドの使用というアウトカムに対して統計学的に有意な効果をもたらしませんでした。ただし、水泳は通常のケアと比べて最大酸素消費量、すなわち運動耐容能に効果がみられました。また、呼吸機能検査のパラメータにもわずかながら効果があったと報告されています。プールに使用されている塩素の有無によって、これらのアウトカムに変化がみられるのかどうかはわかりませんでしたが、少なくとも水泳が気管支喘息の患者さんにとって悪さをするものではないだろうと結論付けられました。ただし、他の運動療法と比較して水泳がベストかどうかという点は、不明といわざるを得ません。この研究では塩素について触れられていましたが、とくに室内プールにおける塩素は小児の気管支喘息を悪化させるのではないかとする意見もあります(Immunol Allergy Clin North Am. 2013; 33: 395-408.)。水泳に運動耐容能を増加させる可能性があるにもかかわらず、塩素が気管支喘息を悪化させるのであれば本末転倒ですね。インデックスページへ戻る

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Vol. 3 No. 3 経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI) 手技と治療成績

髙木 健督 氏新東京病院心臓内科治療手技Edwards SAPIEN(Edwards Lifesciences Inc, Irvine, CA)は、経大腿動脈、経心尖部アプローチが可能である(本誌p.27図1を参照)。(1) 経大腿動脈アプローチ(transfemoral:TF)(図1)現在、Edwards SAPIENの留置は16、18FrのE-Sheathを用いて行っている。E-Sheath挿入は、外科的cutdown、またはpunctureで行う2つの方法があり、どちらの場合も術前の大動脈造影、造影CTを用いて石灰化の程度、浅大腿動脈と深大腿動脈の分岐位置を確認することが大切である。TAVIに習熟している施設では、止血デバイス(パークローズProGlideTM)を2~3本使用し、経皮的に止血するケースも増えてきている。しかしながら、血管の狭小化、高度石灰化を認める場合、またTAVIを始めたばかりの施設ではcutdownのほうが安全に行うことができる。E-Sheathは未拡張時でも5.3~5.9mmあり、通常ExtrastiffTMのような固いワイヤーを用いて、大動脈壁を傷つけないよう慎重に進める。ガイドワイヤーの大動脈弁通過は、Judkins Right、Amplatz Left-1、Amplatz Left-2カテーテルを上行大動脈の角度に応じて使い分ける。また、ストレートな形状(TERUMO Radifocus、COOK Fixed Core wire)を用いると通過させやすい。ガイドワイヤーを慎重に心尖部に進めたあと、カテーテルも注意深く左室内に進める。その後、通常のコイルワイヤーを用いてPigtailカテーテルに入れ替える。さらに、Pigtailの形を用いながら、心尖部にStiffワイヤーを進める。StiffワイヤーはAmplatz Extra Stiff Jカーブを用いることが多い。左室の奥行きを十分に観察するため、RAO viewで可能な限りガイドワイヤーの先端を心尖部まで進めるが、経食道エコーを用いるとより正確に心尖部へ進めることが可能である。Edwards SAPIEN23mmには20/40mm、26mmには23/40mmのバルーンが付随しており、通常はこれを使用する。バルーン内の造影剤は15%程度に希釈すると粘度が下がり、バルーン自体の拡張、収縮をスムーズにする。バルーンを大動脈弁まで進め、一時的ペースメーカーにて180~200ppmのrapid pacingを行い、血圧を50mmHg以下にし、バルーンをinflation、そしてdeflationする。Rapid pacingは、血圧が50mmHg以下になるように心拍を調整する。一時pacingが1:2になるときは、160〜180ppmの低めからスタートし徐々に回数を上げるとよい。Pigtailカテーテルからの造影は、バルーンinflationの際に、冠動脈閉塞の予測、valveサイズの決定に有用である(図2a)。大動脈内にデリバリーシステムを進め、E-Sheathから出たところで、バルーンを引き込み、ステントバルブをバルーン上に移動させる。デバイスのalignment wheelを回転させバルーンのマーカー内にステントバルブの位置を調整する(図2b)。大動脈弓でデバイスのハンドルを回し、デバイスを大動脈に添わせるように進めていく(LAO view)。デバイスを左室内に進めたあと、システムの外筒をステントバルブから引き離し、Pigtailからの造影剤で位置を確認し、rapid pacing下で留置する(図2c, d)。留置後、経食道エコー、大動脈造影でparavalvular leakがないことを確認し、問題なければE-Sheathを抜去、止血を行う。図1 経大腿動脈アプローチ画像を拡大する(1)画像を拡大する(2)画像を拡大する(3)画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する図2 経大腿動脈アプローチの画像a 画像を拡大するb 画像を拡大するc 画像を拡大するd 画像を拡大する(2) 経心尖部アプローチ(transapical:TA)(図3)左胸部に5~7cmの皮膚切開をおき、第5、6肋間にて開胸を行う。ドレーピング後に清潔なカバーをした経胸壁エコーを用いてアクセスする肋間を決定する。心膜越しに心尖部をふれ、心尖部であることを経食道エコーで確認する。心尖部の心膜を切開し、心膜を皮膚に吊り上げる。穿刺部位を決定したら、その周囲にマットレス縫合またはタバコ縫合をかける。縫合の中央より穿刺し、透視下にガイドワイヤーを先行させる。その後、Judkins Rightを用いて下行大動脈まで進め、Stiffワイヤーに変更する。さらに、24Frデリバリーシースに変更し、20mmバルーンで拡張したあとにスタントバルブを留置する(図4a, b)。図3 経心尖部アプローチ画像を拡大する(1)画像を拡大する(2)画像を拡大する(3)画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する図4 経心尖部アプローチの画像a 画像を拡大するb 画像を拡大する治療成績症候性重症大動脈弁狭窄症(symptomatic severe AS:s AS)に対して、効果的な薬物療法がないため、保存的治療を選択した患者の予後が悪く、手術可能である患者には、外科手術(sAVR)が標準治療となっている1-3)。しかしながら、30%以上のs ASは、さまざまな理由で、sAVRは見送られているのが現状である4,5)。TAVIは、ハイリスクs ASに対して、sAVRの代替治療として2002年にDr. Alain CribierによってFirst In Man(FIM)が施行され6)、現在はヨーロッパを中心に10万例以上の治療が施行されている。TAVIは、balloon expandableタイプのEdwards SAPIEN、self expandableのCoreValve system(Medtronic, Minneapolis, MN)といった2つのシステムが、欧州を中心に用いられている。(1) Edwards' Registries現在までにEdwards SAPIENを用いたregistryでは、さまざまな報告がなされているが、有害事象が施設ごとに異なり統一された基準を用いていなかった。そうした状況を踏まえ、2011年には統一評価基準を定めたValve Academic Research Consortium (VARC)guidelines7)が発表され、その後はVARCを用いた治療成績が発表されるようになった。2012年に報告されたFrance 2 registryでは、3,195例の初期成績と1年成績が報告された(平均82.7歳、logistic EuroSCORE 21.9±14.3%、STS score 14.4±12.0%)。Edwards SAPIENが66.9%で用いられ、CoreValveは33.1%であった。アプローチはTF 74.6%、TS 5.8%、TA 17.8%であり、手技成功は96.9%で得られた。また、30日全死因死亡率9.7%、1年死亡率24.0%、30日心血管死亡率7.0%、1年心血管死亡率13.6%であり、手術ハイリスクであるs ASに対してTAVIは妥当な治療法であることが示された8)。また、長期予後に関しては、Webbら9)が、84人のTAVI施行後5年成績を発表しており、5年間で3.4%の中等度valve dysfunctionを認めたものの重篤なvalve dysfunctionを引き起こした症例は認めず、SAPIEN valveの長期耐久性が優れていることを証明した。またそのなかで、生存率は1年83%、2年74%、3年53%、4年42%、5年35%であり、COPD、中等度以上のmoderate paravalvular aortic regurgitation(PR)が全死因死亡に与える影響が大きいことを示した。(2) 無作為化比較試験PARTNER試験(Placement of AoRtic Tra-NscathetER Valves)はs ASにおけるハイリスク手術、手術不適応症例において、TAVIと標準治療(バルーン拡張術+薬物療法)、外科手術を比較した初めての多施設無作為試験である。Cohort Aは、手術ハイリスクのs AS患者をTAVIとsAVRに割りつけ、cohort Bにおいては手術適応がないと判断されたs AS患者をTAVIと標準治療(バルーン拡張術)に割りつけた。手術ハイリスクとは、(1) STSスコアが10%以上、(2)予想30日死亡率が15%以上、(3)予測30日死亡率が高く、また50%以上の死亡率の併存疾患がある状態、と考えられた。除外基準は、2尖弁、非石灰化大動脈弁、クレアチニン3.0mg/dLまたは透析の重症腎不全、血行再建が必要な冠動脈疾患、左室機能低下(EF 20%以下)、大動脈弁径18mm以下または25mm以上、重症僧帽弁逆流症(>3+)、大動脈弁逆流症(>3+)、そして6か月以内に起きた一過性脳虚血発作または脳梗塞であった。2つのコホートの主要エンドポイントは研究期間中の全死亡であり、全死亡、再入院を合わせた複合イベントも検討された。PARTNER trial -cohort A-PARTNER trial cohort Aでは、手術ハイリスク(STS平均スコア11.8%)と判断されたs AS患者(25施設、699例)をTAVIとsAVRに割りつけ、術後1年時(中央値1.4年)の全死因死亡、心血管死亡、NYHA分類のクラス、脳卒中、血管合併症、出血を比較した。TA 104人に対しsAVRから103人、TF 244人に対しsAVRから248人が割りつけられた。30日全死因死亡率はTAVI群全体で3.4%、sAVR群で6.5%(p=0.07)であった。またTF群3.3%に対しsAVR群は6.2%(p=0.13)、TA群3.8%に対しsAVR群は7.0%(p=0.32)で有意差は認めなかった。主要エンドポイントに設定された1年時死亡率は、TAVI群24.2%とsAVR群26.8%(p=0.44)であり、TAVIの非劣性が確認された(非劣性のp=0.001)。TF、TAに分けて分析しても、sAVRと比較し非劣性が確認された。脳卒中または一過性脳虚血発作の発生率はTAVI群で高かった(30日TAVI 5.5% vs. sAVR 2.4% p=0.04、1年時8.3% vs. 4.3% p=0.04)。しかしながら、重症の脳卒中(修正Rankinスケールが2以上)では、有意差はみられなかった(30日TAVI 3.8% vs. sAVR 2.1% p=0.20、1年5.1% vs. 2.4% p=0.07)。全死因死亡または重症脳卒中を合わせた複合イベントの発生率に差はなかった(30日TAVI 6.9% vs. sAVR 8.2% p=0.52、1年26.5% vs. 28.0% p=0.68)。主要血管合併症は、TAVI群に有意に多かったが(11.0% vs. 3.2% p<0.001)、大出血と新規発症した心房細動はsAVR群で多かった(出血9.3% vs. 19.5% p<0.001、心房細動8.6% vs. 16.0% p=0.006)。TAVI群では、sAVR群より多くの患者が30日時点で症状の改善(NYHA分類でクラスII以下)を経験していたが、1年経つと有意差がなくなった。TAVI群のICU入院期間、全入院期間はsAVR群より有意に短かった(3日 vs. 5日 p<0.001、8日間 vs. 12日間 p<0.001)。以上のように、PARTNER trial -cohort A-より、1年全死因死亡率においてTAVIはsAVRに劣らないことが証明された10)。PARTNER trial -cohort B-PARTNER trial cohort Bでは、手術不適応と判断されたs AS患者(21施設、358例)を、バルーン大動脈弁形成術を行う標準治療群(control群)と、TAVI群に無作為に割りつけ比較検討を行った。1年全死因死亡率はTAVI群30.7%、control群50.7%であり(p<0.001)、全死因死亡または再入院の複合割合は、TAVI群42.5%、control群71.6%であった(p<0.001)。1年生存は、NYHA分類でⅢ/Ⅳ度を示した症例はTAVI群のほうが有意に少なかった(25.2% vs. 58.0% p<0.001)。しかし、TAVI群はcontrol群と比較して30日での脳卒中(5.0% vs. 1.1% p=0.06)と血管合併症(16.2% vs. 1.1% p<0.001)を多く発症した。血管、神経合併症が多いものの、全死因死亡率、全死因死亡または再入院の複合割合は有意に低下し、心不全症状は有意に改善した10)。その後、2年成績も報告され、2年全死因死亡(TAVI群43.3% vs. control群68.0% p<0.001)、心臓関連死(31.0% vs. 68.4% p<0.001)はTAVI群で著明に少なく、TAVIで得られたadvantageは2年後も継続していることが示された11)。上記2つの試験により、現時点では手術不適応、手術がハイリスクであるs AS患者に対するTAVIはsAVRの代替療法になることが示されたが、中等度リスク患者においては、未だエビデンスが不十分である。そのため、中等度手術リスクのs AS患者に対する、TAVIの有効性、安全性を証明するには、TAVIとsAVRを比較したPARTNER2 trialの結果が待たれるところである。TAVIに関連する特記事項血管合併症(vascular complication)血管合併症はTFアプローチのTAVIの大きな問題であり、大口径カテーテルを用いること、治療対象がハイリスク症例であることから高率に発生する。小血管径、重篤な動脈硬化、石灰化、蛇行した血管はTAVIにおける血管合併症の主な原因である。最新の報告であるFrance 2 registryでは、デバイスは18Fr Edwards SAPIEN XTを含んではいるものの、全体で4.7%、TF群で5.5%と主要血管合併症の発生頻度は減少している8)。主要血管合併症、または主要出血と生存の関係は、何人かの著者によって証明されており、この合併症を予防するために、十分なスクリーニングが最も重要である。脳卒中(stroke)TAVIにおける有症状の脳梗塞は、致命的合併症である(1.7~8.3%)10-17)。脳梗塞発症の機序ははっきりしていないが、大口径のカテーテルが大動脈弓を通過するとき、高度狭窄した大動脈弁を通過させるとき、大動脈弁拡張時、rapid pacing中の血行動態に伴うもの、デバイス留置など、手技中のさまざまな因子によって引き起こされている可能性が示唆されている。現在のTAVI症例は、高齢であり心房細動、そして動脈硬化病変の割合が高く、脳梗塞イベントを増加させている。Diffusion-weighted magnetic resonance imaging(DW-MRI)を用いた2つの研究において、TFアプローチTAVI後に、新規に発症した脳梗塞が70%以上の患者に発生していたことが報告された18,19)。また、Rodés-CabauらはDW-MRIによってTAで71%、TFでも66%と同じように、脳梗塞を発症していることを報告した20)。しかしながら、ほとんどの症例が症状を伴わないため、臨床的なインパクトを決定するにはさらなる研究が必要である。脳梗塞予防デバイスが開発中であり、TAVI後の無症候性、症候性脳梗塞を減少させると期待されていたが、満足できる結果は報告されていない。また、術後の抗血小板療法については、抗血小板薬2剤併用療法を3か月以上行うのが主流だが、はっきりとした薬物療法の効果については報告されておらず、議論の余地がある。調律異常(rhythm disturbance)文献により新規ペースメーカー植え込み率は異なっているものの(CoreValve 9.3~42.5% vs. Edwards SAPIEN 3.4~22%)、CoreValveは、左室流出路深くに留置し、長期間つづく強いradial forcesを生じることから、Edwards SAPIENよりも新規ペースメーカー留置を必要とする頻度が高いと報告されている。持続する新しい左脚ブロックの新規発現は、TAVI後の最も明らかな心電図上の所見であると報告されており、CoreValve留置後1か月の55%の症例で、そしてSAPIEN留置後1か月の20%の症例において認められ21)、その出現は全死因死亡の独立した因子であることが報告されている22)。一方で、TAVI後の完全房室ブロックの予測因子は、右脚ブロック、低い位置での弁の留置、植え込まれた弁と比較して小さな大動脈弁径、手技中の完全房室ブロック、そしてCoreValveと報告されており23,24)、一般的に心電図モニター管理は最低72時間、TAVI後の患者すべてに行われるが、この合併症の高リスク患者は退院するまでのモニター管理が必要である。弁周囲逆流(paravalvular regurgitation)Paravalvular regurgitation(PR)は、TAVI後に一般的にみられる。多くの症例では、mild PRを認め、7~24%の患者でmoderate以上のPRが観察される12,25-28)。SAPIEN Valveにおいて、moderate以上のPRの割合に経年的変化は認められない12,28)。一方、CoreValveは強いradial forcesによりPRが改善したと報告があるが25)、はっきりとしたコンセンサスは得られていない。TAVI後のmoderate PRは(PARTNER試験ではmild PRであっても)長期成績に影響を与えることがわかっており29-31)、PRを減らすことが非常に重要な問題となっている。PRを減らすためには、より大きなvalve sizeを選択する必要があるが32,33)、致命的な合併症である大動脈弁破裂を引き起こす可能性が増える。そのため、慎重なCT、エコーでの大動脈弁径、石灰化分布の評価が必要である。冠動脈閉塞(coronary obstruction)左冠動脈主幹部閉塞は稀であるが、BAV、TAVIの最中に起こりうる重篤な合併症である。急性冠動脈閉塞に対して迅速なPCI、またはバイパス手術で救命されたという報告がされている34-36)。大動脈弁輪と冠動脈主幹部の距離は、分厚い石灰化弁と同様に重要な予測因子となり、3Dエコー、CTでの正確な評価がこの致命的な合併症を避けるために必要である37)。ラーニングカーブTAVIにはラーニングカーブがあり、正確な大動脈弁径、腸骨大腿動脈径の測定、リスク評価、適切な症例選択、手技の習熟により、治療成績は劇的に改善することが報告されている。Webbらは168例の成績を報告し、初期の30日死亡率がTF 11.3%、TA 25%から、後半でTF 3.6%、TA 11.1%と改善したことを示し、TAVIにおけるラーニングカーブの重要性を明らかにした38)。おわりに本邦でも、Edwards SAPIEN XTを用いたPREVAIL JAPAN試験の良好な成績が発表され、2013年から保険償還され、本格的なTAVIの普及が期待されている。しかしながら、現在の適応となる患者群のTAVI治療後の1年全死因死亡率は20%以上であり、TAVIの適応については、議論の余地がある。特にADLの落ちている高齢者、frailtyの高い患者は、ブリッジ治療としてBAVを行い、心機能だけでなくADLが改善することを確認したうえで、TAVI治療を選択するといったstrategyも考慮する必要があるのではないだろうか。文献1)Bonow RO et al. 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384.

エボロクマブ追加でLDL-Cが長期に減少/NEJM

 脂質異常症の標準治療に新規のLDLコレステロール(LDL-C)低下薬であるエボロクマブ(承認申請中)を追加し約1年の治療を行うと、標準治療単独に比べLDL-C値が有意に減少し、心血管イベントが抑制されることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S Sabatine氏らOSLER試験の研究グループの検討で明らかとなった。エボロクマブは、前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であり、短期的な臨床試験でLDL-C値を約60%減少させることが確認されていた。NEJM誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。12件の親試験の第II、III相別の延長試験を統合解析 OSLER試験は、エボロクマブに関する12の親試験(parent study、第II相:5件[日本のYUKAWA-1試験を含む]、第III相:7件)を完遂した患者を対象とする延長試験であり、本薬の長期的な有用性の評価を目的に、OSLER-1試験(第II相試験)とOSLER-2試験(第III相試験)に分けて検討が行われた(Amgen社の助成による)。親試験には、脂質異常症治療薬未使用例、スタチン±エゼチミブ投与例、スタチン不耐容例、ヘテロ型家族性高コレステロール血症例などが含まれた。 被験者は、親試験での割り付けとは別に、標準治療+エボロクマブまたは標準治療のみを施行する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。エボロクマブは、OSLER-1試験では2週ごとに140mgが皮下投与され、OSLER-2試験では2週ごと140mgと月1回420mgのいずれかを患者が選択した。 脂質値、安全性および事前に規定された探索的解析として心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建術、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全)の評価を行い、2つの試験の統合解析を実施した。 2011年10月~2014年6月までに4,465例(OSLER-1試験:1,324例、OSLER-2試験:3,141例)が登録され、エボロクマブ群に2,976例(平均年齢57.8歳、男性50.1%、LDL-C中央値120mg/dL)、標準治療単独群には1,489例(58.2歳、51.4%、121mg/dL)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は11.1ヵ月であった。LDL-C値が61%減少、心血管イベントは53%減少 12週時のLDL-C値は、エボロクマブ群が48mg/dLであり、標準治療単独群の120mg/dLと比較した減少率は61%であった(p<0.001)。OSLER-1とOSLER-2試験の間に減少率の差はなかった。また、このエボロクマブ群のLDL-C値の減少は48週まで持続した(24週の減少率:59%、36週:54%、48週:58%、いずれもp<0.001)。 12週時に、エボロクマブ群の90.2%がLDL-C値≦100mg/dLとなり、73.6%が≦70mg/dLを達成した。標準治療単独群はそれぞれ26.0%、3.8%だった。 12週時の非HDL-C、アポリポ蛋白B、総コレステロール、トリグリセライド、リポ蛋白(a)は、LDL-Cと同様にエボロクマブ群で有意に減少した(いずれもp<0.001)。また、HDL-Cとアポリポ蛋白A1は有意に増加した(いずれもp<0.001)。 有害事象はエボロクマブ群の69.2%、標準治療単独群の64.8%に認められ、重篤な有害事象はそれぞれ7.5%、7.5%に発現した。神経認知障害(せん妄、認知/注意障害、認知症、健忘症など)はエボロクマブ群で多くみられた(0.9 vs. 0.3%)が、治療期間中のLDL-C値とは関連がなかった。 エボロクマブによる治療中止は2.4%、注射部位反応は4.3%に認められ、そのほか関節痛や頭痛、四肢痛、疲労感が標準治療単独群よりも多くみられた。 1年時の心血管イベントの発症率は、エボロクマブ群が0.95%であり、標準治療単独群の2.18%に比し有意に低かった(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.28~0.78、p=0.003)。 著者は、「61%というLDL-C値の減少率は、既報の短期的な試験と一致しており、48週にわたる効果の持続はより小規模な試験(DESCARTES試験)の結果と一致した。他の脂質に対する効果にも既報との一貫性が認められた」としている。

385.

親の年齢とADHDリスク

 親の年齢と精神障害との関連性を示す研究が増加しているが、注意欠如/多動症(ADHD)との関連については矛盾した結果が出ている。今回、フィンランド・トゥルク大学Roshan Chudal氏らは、出生時の親の年齢がADHDと関連しているかどうかをコホート内症例対照研究で検討した。その結果、ADHDは出生時の父親または母親の年齢が若いことと関連していた。著者らは「医療者は若い親と協力し、子供のADHDのリスク増加に注意すべき」としている。Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry誌オンライン版2015年3月26日号に掲載。 本研究では、全国の集団ベースの登録から、1991~2005年にフィンランドで生まれ、1995~2011年にADHDと診断された1万409人と、性別・誕生日・出生地でマッチさせた対照3万9,125人を同定した。出生時の親の年齢と子供のADHDとの関連性について、条件付きロジスティック回帰を用いて調べた(親の精神疾患の既往、母親の社会経済的地位、婚姻状況、妊娠中の母親の喫煙状況、過去の出産回数、妊娠週数に対する出生時体重を潜在的な交絡因子として調整)。 主な結果は以下のとおり。・子供の出生時に父親の年齢が20歳未満だった場合、25~29歳の場合と比較して、子供のADHDリスクは1.5倍増加した(OR 1.55、95%CI:1.11~2.18、p=0.01)。同様に母親ではリスクが1.4倍増加した(OR 1.41、95%CI:1.15~1.72、p=0.0009)。・出生時の母親の年齢が高いほどADHDは少なかった(OR 0.79、95%CI:0.64~0.97、p=0.02)。

386.

経カテーテル大動脈弁置換術の5年転帰/Lancet

 高リスク大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、標準治療である外科的大動脈弁置換術(SAVR)とほぼ同等の臨床転帰をもたらすことが、米国・Baylor Scott & White HealthのMichael J Mack氏らが実施したPARTNER 1試験で示された。本試験では、TAVRの1年死亡率は、非手術例では標準的非手術療法よりも優れ、手術を行った高リスク例ではSAVRに対し非劣性であり、これらの知見は2年、3年時も維持されていた。研究グループは今回、高リスク例における5年時の臨床転帰の解析を行い、Lancet誌オンライン版2015年3月15日号で発表した。5年転帰を外科的置換術と比較 PARTNER 1試験は、欧米の25の病院(カナダ2施設、ドイツ1施設、米国23施設)が参加した無作為化対照比較試験(Edwards Lifesciences社の助成による)。対象は、重度の症状を呈する大動脈弁狭窄症で、専門医チームにより、SAVRでは施術後30日以内の死亡のリスクが15%以上と判定された患者であった。 被験者は、TAVRまたはSAVRを施行する群に無作為に割り付けられた。TAVR群の患者には、バルーン拡張型ウシ心嚢膜弁が経大腿動脈または経心尖アプローチで留置された。主要評価項目は施術後1年時の死亡であり、5年時の転帰の解析を行った。5年全死因死亡率:67.8 vs. 62.4%、弁周囲逆流が問題 699例が登録され、TAVR群に348例、SAVR群には351例が割り付けられた。TAVR群のうち244例に経大腿動脈アプローチ、104例には経心尖アプローチが行われた。TAVR群の4例が実際にはTAVRを受けず、5例がフォローアップ不能となり、4例は施術後に試験から脱落した。 全例の平均年齢は84.1歳、94%がNYHA心機能分類3/4であり、平均Society of Thoracic Surgeons Predicted Risk of Mortality(STS PROM)スコアは11.7%であった。フォローアップ期間中央値は3.14年だった。 5年時の全死因死亡率は、TAVR群が67.8%、SAVR群は62.4%であり、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.86~1.24、p=0.76)。 脳卒中/一過性脳虚血発作、脳卒中/一過性脳虚血発作/死亡、心筋梗塞、心内膜炎、腎不全、新規ペースメーカー留置の頻度に差はなかったが、TAVR群では重篤な血管合併症(11.9 vs. 4.7%、p=0.0002)が多く、大出血(26.6 vs. 34.4%、p=0.003)が少なかった。 外科的弁置換を要する構造的弁劣化は両群ともにみられなかった。中等度~重度の大動脈弁逆流が、TAVR群の14%(40/280例)、SAVR群の1%(2/228例)にみられ(p<0.0001)、TAVR群の5年死亡率の上昇に関連していた(軽度以下の逆流による死亡率56.6%に対し中等度~重度の逆流の死亡率は72.4%、p=0.003)。大動脈弁逆流のほとんどの原因が弁周囲逆流であった。 著者は、「5年後の両法の死亡および脳卒中の発症率はほぼ同等であったが、TAVRでは弁周囲逆流の頻度が高く、それが軽度の場合でも死亡率の上昇と関連した」とまとめ、「本研究は第1世代のデバイスに関する最初の試験である。第2、3世代は小型化が進み、弁周囲逆流の予防策も講じられているため、転帰が改善されている可能性がある。また、臨床経験の積み重ねにより、患者選択もより適切に行われている」と考察している。中等度リスクの2,000例を対象とする第2世代デバイスの臨床試験(PARTNER II試験)が進行中だという。

387.

PROMISE試験:冠動脈疾患に対する解剖的評価と機能評価検査の予後比較(解説:近森 大志郎 氏)-328

 安定した胸部症状を主訴とする患者に対する診断アプローチとして、まず非侵襲的検査によって冠動脈疾患を鑑別することが重要である。従来は運動負荷心電図が日常診療で用いられてきたが、その後、負荷心筋シンチグラフィ(SPECT)検査、負荷心エコー図検査が臨床に応用され、近年では冠動脈CT(CTCA)も広く実施されるようになっている。しかしながら、これらの検査の中でいずれを用いればよいか、という検査アプローチを実証する大規模臨床試験は実施されてはいなかった。 今回、San Diegoで開催された米国心臓病学会(ACC.15)のLate-Breaking Clinical Trialsの先頭を切って、上記に関するPROMISE試験が報告され、同時にNew England Journal of Medicine誌の電子版に掲載された。なお、ACCで発表される大規模臨床試験の質の高さには定評があり、NEJM誌に掲載される比率では同じ循環器分野のAHA、ESCを凌いでいる。 Duke大学のPamela Douglas氏らは、従来の生理機能を評価する運動負荷心電図・負荷心筋SPECT・負荷心エコー図に対して、冠動脈の解剖学的評価法であるCTCAの有効性を比較するために、有症状で冠動脈疾患が疑われる10,003例を無作為に2群(CTCA群対機能評価群)に割り付けた。試験のエンドポイントは従来のほとんどの研究で用いられた冠動脈疾患の診断精度ではなく、全死亡・心筋梗塞・不安定狭心症による入院・検査による重大合併症からなる、複合エンドポイントとしての心血管事故が設定されている。対象症例の平均年齢は61歳で、女性が52~53%と多く、高血圧65%、糖尿病21%、脂質異常症67%という冠危険因子の頻度であった。なお、症状として胸痛を訴えてはいるが、狭心症としては非典型的胸痛が78%と高率であることは銘記すべきであろう。 実際に機能評価群で実施された非侵襲的検査については、負荷心筋SPECT検査67.5%、負荷心エコー図22.4%、運動負荷心電図10.2%、と核医学検査の比率が高かった。また、負荷心電図以外での負荷方法については、薬剤負荷が29.4%と低率であった。そして、これらの検査法に基づいて冠動脈疾患が陽性と診断されたのは、CTCA群で10.7%、生理機能評価群では11.7%であった。3ヵ月以内に侵襲的心臓カテーテル検査が実施されたのはCTCA群で12.2%、生理機能検査群では8.1%であった。この中で、有意狭窄病変を認めなかったのはCTCA群で27.9%、生理機能検査群で52.5%であったため、全体からの比率では3.4%対4.3%となりCTCA群で偽陽性率が低いといえる(p=0.02)。なお、3ヵ月以内に冠血行再建術が実施されたのはCTCA群で6.2%と、生理機能検査群の3.2%よりも有意に高率であった(p<0.001)。 1次エンドポイントである予後に影響する内科的治療ついては、β遮断薬が25%の症例で使用されており、RAS系阻害薬・スタチン・アスピリンについても各々約45%の症例で投与されていた。そして、中央値25ヵ月の経過観察中の心血管事故発生率についてはCTCA群で3.3%、生理機能評価群では3.0%と有意差を認めなかった。 本研究は循環器疾患の治療法ではなく、冠動脈疾患に対する検査アプローチが予後に及ぼす影響から検査法の妥当性を評価するという、従来の臨床試験ではあまり用いられていない斬新な研究デザインを用いている。そして、1万例に及ぶ大規模な臨床試験データを収集することによって、日常臨床に直結する重要な結果を示したという意味で特筆に値する。 しかしながら、基本的にはnegative dataである研究結果の受け止め方については、同じDuke大学の研究チームでも異なっていた。ACCの発表に際してDouglas氏は、PROMISE試験の結果に基づき、狭心症が疑われる患者に対して、CTCAはクラスIの適応となるようにガイドラインが修正されるエビデンスであることを主張していた。これに対して、PROMISE試験の経済的評価を発表したDaniel Mark氏は、イギリスの伝説である「アーサー王物語」を引き合いに出して、CTCAは長年探し求めていたHoly Grail(聖杯)ではなかった、と落胆を隠さなかった。 循環器の臨床において、対象とする患者の冠動脈病変の情報があれば、最適な医療が実施できるという考え方は根強い。しかし、PROMISE試験が準備された時期には、狭心症の生理機能として重要な心筋虚血が、予後改善の指標として重要であることを実証したFAME試験が報告されている。その後、FAME 2試験においても同様の結果が報告されている。さらに、重症心筋虚血患者に対する介入治療の有無により予後の改善が実証されるか否かについて、ISCHEMIA試験という大規模試験が進行中である。今後はこれらの大規模試験の結果を評価することによって、冠動脈疾患の治療目標は「解剖か、虚血か」という議論に決着がつくかもしれない。それまでは、日常臨床において狭心症が疑われる患者に対しては、まず本試験の対象群の特徴を十分に把握したうえで、CTCAあるいは生理機能検査を実施する必要があると思われる。

388.

ナトリウム利尿ペプチド、急性心不全診断に有効/BMJ

 2012年に欧州心臓病学会(ESC)が示した、血中B型(脳性)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、NTproBNP、MRproANPの心不全除外診断の推奨閾値は、急性心不全について優良な診断能を有することが明らかにされた。英国・モーズレイ病院のEmmert Roberts氏ら研究グループGuideline Development Group for Acute Heart Failureが、急性期治療設定の試験データについてシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。ただし特異度はばらつきがみられ画像診断による確定が必要だと考察している。また、BNPとNTproBNPの診断精度には統計的な差はみられなかった。これらを踏まえて著者は「急性心不全が疑われる患者を対象とした、ナトリウム利尿ペプチド測定による試験を行うことで、より迅速で正確な除外診断が可能となるだろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年3月4日号掲載の報告より。メタ解析でBNPとNTproBNP、MRproANPの診断精度を評価 研究グループは、心不全に関する2012ESCの推奨閾値を用いて、急性期治療設定での急性心不全患者について、BNP、NTproBNP、MRproANPそれぞれの診断精度を調べて比較するため、システマティックレビューとメタ解析を行った。 2014年1月28日時点で、Medline、Embase、Cochrane central register of controlled trials、Cochrane database of systematic reviews、database of abstracts of reviews of effects、NHS economic evaluation database、Health Technology Assessmentをデータソースに、心不全とナトリウム利尿ペプチドに関連する表題、項目を組み合わせて論文を検索した。適格としたのは、急性期治療設定で、連続的にまたは無作為に選択した成人患者を対象に、急性心不全の診断で標準資料と比較して1種以上のナトリウム利尿ペプチドを評価している試験とした。陽性率、偽陽性率、偽陰性率、陰性率、あるいは年齢非依存のナトリウム利尿ペプチドを抽出または算出するデータが不十分な試験は除外した。また英語以外で書かれた試験も除外した。BNPとNTproBNPの診断精度は有意差なし 試験報告42件が検索され37の特徴的な試験コホートが解析に組み込まれた。評価は総計48件、評価結果は1万5,263件であった。 急性心不全の診断精度について、最低推奨閾値であるBNP 100ng/LとNTproBNP 300ng/Lの感度はそれぞれ0.95(95%信頼区間[CI]:0.93~0.96)と0.99(同0.97~1.00)、陰性適中率は0.94(0.90~0.96)と0.98(0.89~1.0)であった。MRproANPの最低推奨閾値120pmol/Lについては、感度は0.95(0.90~0.98)から0.97(0.95~0.98)にわたり、陰性適中率は0.90(0.80~0.96)から0.97(0.96~0.98)にわたった。 感度は閾値が高くなるほど低下したが、特異度はばらついたままであった。 BNPとNTproBNPの診断精度について、統計的に有意な差はなかった。

389.

フォンダパリヌクス、NSTEMIの日常診療に有効/JAMA

 フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)は、非ST上昇心筋梗塞(NSTEMI)の日常診療において、低分子量ヘパリン(LMWH)に比べ院内および180日後の大出血イベントや死亡の抑制効果が優れることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のKarolina Szummer氏らの検討で示された。フォンダパリヌクスは第Xa因子を選択的に阻害する抗凝固薬。同国では、欧州心臓病学会(ESC)と保健福祉庁が第1選択薬として本薬を推奨して以降、NSTEMIの日常診療においてLMWHからの転換が急速に進んだが、臨床試験以外の非選択的な患者集団における評価は行われていなかった。JAMA誌2015年2月17日号掲載の報告。日常診療での治療転帰を前向きコホート研究で比較 研究グループは、スウェーデンのNSTEMI患者においてフォンダパリヌクスとLMWHの治療転帰を比較するプロスペクティブな多施設共同コホート試験を実施した。 対象は、“Swedish Web-System for Enhancement and Development of Evidence- Based Care in Heart Disease Evaluated According to Recommended Therapies(SWEDEHEART)”と呼ばれる同国のレジストリから選出した。 2006年9月1日~2010年6月30日までに、入院中にフォンダパリヌクスまたはLMWHの投与を受けたNSTEMI患者4万616例のデータが収集された。最終フォローアップは2010年12月31日であった。 主要評価項目は、院内における重度出血イベントと死亡、30日および180日時の死亡、MIの再発、脳卒中、大出血イベントの発生とした。院内出血イベントが46%減少、腎機能低下例、PCI施行例でも同様 フォンダパリヌクス群が1万4,791例(36.4%)、LMWH群は2万5,825例(63.6%)であった。ベースラインの年齢中央値はフォンダパリヌクス群が2歳若かった(72 vs. 74歳)。女性がそれぞれ36.5%、37.6%で、糖尿病が25.4%、26.9%、高血圧が56.5%、55.3%、喫煙者が21.0%、20.0%含まれた。 また、フォンダパリヌクス群でMIの既往歴のある患者(28.2 vs. 32.2%)およびうっ血性心不全の診断歴のある患者(14.5 vs. 18.7%)が少なかったが、出血イベントや出血性脳卒中の既往歴は両群間に差はなかった。入院中のPCI施行率は、フォンダパリヌクス群のほうが高率であった(46.4 vs. 38.9%)。 治療開始後の院内出血イベント発生率は、フォンダパリヌクス群が1.1%(165例)と、LMWH群の1.8%(461例)に比べ有意に低かった(補正オッズ比[OR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.42~0.70)。また、院内死亡率は、それぞれ2.7%(394例)、4.0%(1,022例)であり、フォンダパリヌクス群で有意に良好であった(0.75、0.63~0.89)。 大出血イベントのORは、30日時(1.4 vs. 2.1%、OR:0.56、95%CI:0.44~0.70)と180日時(1.9 vs. 2.8%、0.60、0.50~0.74)で類似し、死亡率のORも30日(4.2 vs. 5.8%、0.82、0.71~0.95)と180日(8.3 vs. 11.8%、0.76、0.68~0.85)でほぼ同等であり、いずれもフォンダパリヌクス群で有意に良好であった。 再発MIのORは、30日時(9.0 vs. 9.5%、OR:0.94、95%CI:0.84~1.06)と180日時(14.2 vs. 15.8%、0.97、0.89~1.06)のいずれにおいても両群間に差はなく、脳卒中のORも30日(0.5 vs. 0.6%、1.11、0.74~1.65)と180日(1.7 vs. 2.0%、0.98、0.79~1.22)の双方で両群間に差を認めなかった。 著者は、「腎機能が低下した患者でも、フォンダパリヌクス群のLMWH群に対する出血のオッズが低く、試験全体の結果と一致していた。PCI施行例でも同様の傾向がみられ、フォンダパリヌクス群の出血のオッズが低かったが有意差はなかった」としている。

390.

「家族で食事」はやはり大切だった

 頻繁に家族で食事を取ることは、小児および青年にとって心理社会的によい効果を示し、その効果は女性のほうが大きいことが、カナダ・オタワ大学 Megan E Harrison氏らによって明らかにされた。Canadian Family Physician誌、2015年2月号より掲載報告。 Harrison氏らは、頻繁に家族で食事を取ることが小児および青年の心理社会的効果に影響を及ぼすかどうか、また、その影響は性別で差があるかどうかを明らかにするため、システマティックレビューを行った。 調査は、Ovid社のデータベースを使用し、MEDLINE(1948年から2011年6月5週目まで)とPsycINFO(1806年から2011年7月1週目まで)の検索で文献を特定した。単独または組み合わせて使用した見出しとキーワードは、(1)family、 (2)meal、(3)food intake、(4)nutrition、(5)diets、(6)body weight、(7)adolescent attitudes、(8)eating behaviour、(9)feeding behaviour、(10)eating disordersであった。なお、関連する参考論文についても検討を行った。 検索により得られた1,783編の論文について、以下の基準を満たすことが求められた結果、14編の論文が基準に合致した。なお。調査・分析は2人の独立した調査員によって行われた。1.査読のある英語論文雑誌に掲載されている2.小児および青年を含んでいる3.小児および青年の心理社会的アウトカム(薬物使用、摂食障害、抑うつなど)に対する家族の食事の役割を検討している4.データ解析の統計方法を含む試験デザインが適切である 主な結果は以下のとおり。・頻繁な家族での食事と、青年での摂食障害、飲酒、薬物使用、暴力的な行動、抑うつ、自殺企図は負の相関関係を示した。・頻繁な家族での食事と、自尊心の向上や学校での成功は正の相関関係を示した。・男女別の結果には有意差があり、女性のほうがより顕著な結果を示した。 Harrison氏らはこれらの結果により、「定期的に家族が食事を一緒に取ることのメリットをすべての医療従事者が指導すべきだ」とまとめた。

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血管内治療の追加で脳梗塞の予後改善/NEJM

 急性期虚血性脳卒中の患者に対し、標準治療に加えステント型血栓回収デバイスによる迅速血管内治療を行うと、身体機能や死亡率が改善され、QOLも良好であることが、カナダ・カルガリー大学のMayank Goyal氏らが行ったESCAPE試験で示された。前方循環の動脈近位部閉塞に起因する脳卒中では、t-PA(アルテプラーゼ)治療を行っても患者の60~80%が発症後90日以内に死亡または機能的自立が回復されない。これまでの試験からは、閉塞の部位が動脈近位部であることを証明し、迅速かつ効果的な画像法で梗塞巣が大きい患者を除外し、効率のよい作業手順で迅速な再疎通と高い再灌流率を達成することが重要であり、血栓の回収には前世代よりもステント型デバイスのベネフィットが優れることが知られている。NEJM誌オンライン版2015年2月11日号掲載の報告。迅速血管内治療の追加をPROBEデザインの試験で評価 ESCAPE試験は、急性期虚血性脳卒中に対する標準治療への迅速血管内治療の追加の有用性を評価する多施設共同前向き無作為化非盲検アウトカムブラインド試験(PROBEデザイン)(Covidien社などの助成による)。対象は、発症前は機能的に自立し(Barthelインデックス[0~100点、点が高いほど日常生活動作が良好]≧90)、梗塞巣が小さく、前方循環の動脈近位部閉塞に起因し、側副血行が中等度~良好の虚血性脳卒中で、発症後12時間以内の患者とした。 被験者は、標準治療を施行する群(対照群)または標準治療に加え血管内治療を行う群(介入群)に無作為に割り付けられた。血管内治療はステント型血栓回収デバイスが推奨され、血栓回収時にはバルーン付きガイディングカテーテルによる吸引が勧められた。両群とも発症後4.5時間以内の場合はアルテプラーゼの静脈内投与が行われた。 主要評価項目は、90日時の修正Rankinスケール(mRS)のスコア(0~6点、点が高いほど機能障害が高度)とし、比例オッズモデルを用いて介入群のmRSスコアが対照群よりも低くなる尤度を測定し、共通オッズ比(mRSスコアの1点の改善のオッズを示す)を算出した(シフト解析)。 オランダのMR CLEAN試験により、ステント型血栓回収デバイスのベネフィットが報告された時点で計画にはない中間解析を行ったところ、事前に規定された有効性の境界値を超えており、介入群における有効性の有意な改善効果が確認されたため、データ・安全性監視委員会の勧告に基づき本試験は早期中止となった。mRS共通オッズ比2.6、死亡率は19.0%が10.4%に 2013年2月~2014年10月までに、カナダ、米国、韓国、アイルランド、英国の22施設に315例が登録され、介入群に165例、対照群には150例が割り付けられた。年齢中央値は介入群が71歳、対照群は70歳、女性がそれぞれ52.1%、52.7%で、アルテプラーゼの投与は120例(72.7%)、118例(78.7%)で行われた。介入群のCT検査開始から初回再灌流達成までの期間中央値は84分(四分位範囲:65~115分)であった。 90日mRSスコアの共通オッズ比は2.6(95%信頼区間[CI]:1.7~3.8)であり、介入群で有意に良好であった(p<0.001)。90日mRSスコアの中央値は介入群が2であり、対照群の4に比べ有意に優れていた(p<0.001)。90日mRSが0~2の患者の割合も、介入群が53.0%と対照群の29.3%に比し有意に高率であった(率比:1.8、95%CI:1.4~2.4、p<0.001)。 90日死亡率は、介入群が10.4%であり、対照群の19.0%よりも有意に改善された(率比:0.5、95%CI:0.3~1.0、p=0.04)。症候性の頭蓋内出血の発生率は、介入群が3.6%、対照群は2.7%であり、両群間に差はなかった(p=0.75)。介入群のデバイス関連/手技関連合併症は18例に認められ、そのうち重篤例は4例だった。 90日時のBarthelインデックスが95~100点の患者の割合は、介入群が57.7%、対照群は33.6%(率比:1.7、95%CI:1.3~2.2)、NIH脳卒中スケール(NIHSS、0~42点、点が高いほど脳卒中の重症度が高度)が0~2点の患者はそれぞれ51.6%、23.1%(率比:2.2、95%CI:1.6~3.2)、EQ-5D視覚アナログスケールのスコア(0~100点、点が高いほどQOLが良好)の中央値は80点、65点(β係数:9.4、95%CI:3.5~15.2)であり、いずれも介入群で良好であった。 著者は、「迅速な血管内治療は急性期虚血性脳卒中患者の身体機能を改善し、死亡率の低減をもたらした」とまとめ、「本試験の知見は、MR CLEAN試験で示された血管内治療のベネフィットを確証するものである」と指摘している。

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腰痛に対する植物薬の実力は?

 非特異的腰痛に対する植物薬(herbal medicine)の有効性を検討する目的で、米国・ミシガン大学のHanna Oltean氏らはシステマティックレビューを行った。その結果、トウガラシはプラセボに比べ疼痛軽減に有効であることを報告した。また、デビルズクロー、セイヨウシロヤナギ、ヒレハリソウおよびラベンダー精油もプラセボより有効である可能性が示唆されたが、エビデンスの質が低~中であったという。今後、適切にデザインされた大規模試験による検討が必要だと指摘している。Cochrane Database of Systematic Reviews誌2014年12月23日号の掲載報告。 研究グループは、MEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CINAHL、Clinical Trials.gov、WHO国際臨床試験登録(WHO ICTRP)およびPubMedなどのデータベースから、2014年9月までに発表された論文、ガイドラインなどを検索し、18歳以上の急性・亜急性・慢性の非特異的腰痛患者を対象に植物薬を用いた無作為化比較試験を選択した。 主要評価項目は疼痛と機能で、2人の研究者がバイアスリスク、エビデンスの質(GRADE)、CONSORT声明の遵守について評価した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化試験14件、計2,050例が解析対象となった。・Solidago chilensis Meyen(Brazilian arnica)含有ゲル1日2回塗布は、プラセボと比較して疼痛を軽減し可動性も改善した(RCT:1件、20例、エビデンスの質:非常に低い)。・Capsicum frutescens(キダチトウガラシ)のクリームや膏薬については、慢性腰痛患者においてプラセボより良好な結果が得られた(RCT:3件、755例、エビデンスの質:中)。一方、急性腰痛患者におけるトウガラシクリームの有効性は明らかではなかった(RCT:1件、40例、エビデンスの質:低)。また、キダチトウガラシクリームの効果はホメオパシー軟膏と同等という報告もあったが、エビデンスの質が非常に低かった(RCT:1件、161例)。・Harpagophytum procumbens(デビルズクロー)については、ハルパゴシドとして50mgまたは100mg/日服用によりプラセボと比べ疼痛の短期的な改善効果が良好であり、鎮痛薬のレスキュー使用量を減少できる可能性が示唆された(RCT:2件、315例、エビデンスの質:低)。デビルズクローの効果はロフェコキシブ12.5mg/日と同程度という報告もあったが、エビデンスの質が非常に低かった(RCT:1件、88例)。・Salix alba(セイヨウシロヤナギの樹皮)については、サリシンとして120mgまたは240mg/日服用によりプラセボに比べ疼痛が短期的に改善し、鎮痛薬のレスキュー使用量が減少することが示唆された(RCT:2件、261例、エビデンスの質:中)。ロフェコキシブ12.5mg/日と相対的に同等という報告もあったが、エビデンスの質が非常に低かった(RCT:1件、228例)。また、アセチルサリチル酸の心保護的用量に対して、血小板血栓症への影響がわずかであった(RCT:1件、51例)。・Symphytum officinale L(ヒレハリソウ、コンフリー)については、エキス含有軟膏がプラセボより疼痛の短期的な改善が良好である(RCT:1件、120例、エビデンスの質:低)。・ラベンダーアロマオイル(精油)を用いた指圧は、非治療者と比べて疼痛の軽減、腰椎屈曲ならびに歩行時間の改善が示された(RCT:1件、61例、エビデンスの質:低)。・顕著な有害事象は、解析に含んだ試験においてみられなかった。

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喘息は睡眠時無呼吸の発症リスクを増大/JAMA

 喘息は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の新規発症リスク増大と関連していることが明らかにされた。米国・ウィリアム S. ミドルトン記念退役軍人病院のMihaela Teodorescu氏らが、ウィスコンシン州で行われている住民ベースの前向き疫学研究Wisconsin Sleep Cohort Studyの参加者を対象に、喘息とOSA発症との関係性を調べ報告した。OSAは喘息患者に多いことが知られている。しかしこれまで喘息とOSA発症との関連は検討されていなかったという。JAMA誌2015年1月13日号掲載の報告より。住民ベースの前向き試験で検討 Wisconsin Sleep Cohort Studyは1988年にスタートし、無作為抽出で集められたウィスコンシン州の成人労働者が、4年ごとに終夜睡眠ポリグラフ検査と健康関連のアンケート調査を受けていた。 研究グループは2013年3月までのデータを集めて、ベースライン時の2回の睡眠ポリグラフ検査で非OSAであった被験者(無呼吸低呼吸指数[AHI] 5回/時未満、治療歴なし)を適格とし評価の対象とした。 該当者が自己申告した医師に診断された喘息の罹患と罹病期間を入手し、その後の4年ごとの検査時点で認められたOSA(AHI 5回/時以上または持続陽圧呼吸療法を受けている)、または日中の傾眠を伴うOSAとの関連を評価した。喘息があると睡眠時無呼吸症候群の発症リスクは1.39倍 適格患者は547例(女性52%、ベースライン時平均年齢50[SD 8]歳)で、喘息を有していた被験者は81例、有していなかった被験者は466例であった。これら被験者が合計1,105件(喘息被験者167件、非喘息被験者938件)の4年ごとの追跡データを報告していた。 最初の4年時検査でOSA発症が認められたのは、喘息被験者群は22例(27%)、一方、非喘息被験者群は75例(16%)であった。 全追跡期間でのOSA発症の報告例は、喘息被験者群は45例(27%)、一方、非喘息被験者群は160例(17%)で、性別、年齢、ベースラインと追跡時変化のBMI、その他因子で補正後の喘息患者のOSA発症の相対リスク(RR)は1.39(95%信頼区間[CI]:1.06~1.82、p=0.03)であった。また、喘息は、傾眠を伴うOSAの新規発症とも関連していた。同発症報告は、喘息被験者群12例(7%)、非喘息被験者群21例(2%)で、RRは2.72(95%CI:1.26~5.89、p=0.045)だった。 喘息の罹病期間についても、OSA発症(喘息罹病期間が5年増大するごとのRR:1.07、95%CI:1.02~1.13、p=0.01)、傾眠を伴うOSA発症(同:1.18、1.07~1.31、p=0.02)との関連が認められた。 結果を踏まえて著者は、「この関連の基礎的メカニズムおよび喘息患者への定期的なOSA評価について調べる研究が求められる」と指摘している。

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重症アトピー性皮膚炎、血液浄化療法は有効か

 重症アトピー性皮膚炎の治療として、血液浄化療法に類する反復免疫吸着療法(Repetitive Immunoadsorption Cycles)が、臨床的改善をもたらすことが示された。ドイツ・グライフスヴァルト大学のGeorg Daeschlein氏らが、重症アトピー性皮膚炎患者では血清IgE値が高いことに着目し、その除去が臨床的に有効であるかを検討し報告した。Therapeutic Apheresis and Dialysis誌オンライン版2014年12月16日号の掲載報告。 検討は、重症アトピー性皮膚炎患者7例を対象に行われた。いずれの患者も、SCORADスコアの有意あるいは長期的な低下が示されておらず、また総血清IgE値が700IU/mL超であった。 患者は、月に1回、連続5回にわたって行うIA療法(Ig-Therasorb吸着カラム、ドイツ・Miltenyi Biotec社製)を1~5シリーズ受けた。 主な結果は以下のとおり。・全体では、IA療法1サイクルを受けた患者は1例、2サイクルは2例、3サイクルは1例、4サイクルは2例、5サイクルは1例であった。・IAは、全サイクル群の患者で忍容性は良好であり、治療期間中、SCORADおよびIgE値の有意な低下を認めた。・SCORADと血清IgE値の相対的低下は、5シリーズ群では11.1%、80%であった。以下、4シリーズ群では24.1%、83.6%、3シリーズ群は37.6%、75.9%、2シリーズ群は27.9%、74.2%、1シリーズ群は25.1%、74.8%であった。・5サイクルを受けた患者(1例)で、12ヵ月超にわたる長期持続的な臨床的ベネフィットが示された。・以上を踏まえて著者は、「血清IgE値が高い重症アトピー性皮膚炎患者について、反復IA法は、1ヵ月1回(4週間間隔)の2サイクル超が、血清IgE値を大きくかつ持続的に低下し、またSCORADを改善し顕著な臨床的有効性を示す」とまとめている。

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アリスミアのツボ Q19

Q19超高齢者の心房細動に対して、どこまで抗凝固療法を勧めるべきなのでしょう?基本的に平均寿命の上下で分けて考えますが、見た目年齢が一番「入口戦略」だけでよいのだろうか日本、欧米を含めたすべてのガイドラインで、心房細動患者の脳卒中予防を積極的に勧めています。心房細動による脳卒中の頻度と悲惨さを知れば、もちろん私はそれに大賛成です。しかし、進む高齢化社会を考えると、少し心もとない気もするのです。CHADS2スコア、あるいはCHA2DS2-VAScスコアで、脳卒中予防に対する抗凝固療法の守備範囲ばかりを広げていく……それで大丈夫なのでしょうか。「入口戦略」ばかりが討論され、「出口戦略」はほとんど表だって討論されません。「65歳未満で基礎疾患のない心房細動」以外はすべて抗凝固療法(新規抗凝固薬が望ましい)……というESCガイドラインにのっとり、まだCHA2DS2-VAScを用いない日本のガイドラインに近いカナダのガイドラインにはすぐに欧米からケチがつく……。高齢化社会の中で「入口戦略」の入口をただひたすらその範囲を広げていくことには不安を感じます。1次予防と2次予防の立場は異なるこの問題は、1次予防を担っている医師と2次予防を担っている医師では、たぶん大きく感覚は異なるでしょう。2次予防の現場ではいくら高齢であるからといっても抗凝固療法をしないという選択肢は考えにくいでしょう。患者や患者家族も一度痛い目にあっている立場では、考え方が異なるものです。しかし、1次予防の現場では、一度も痛い目にあっていない患者、患者家族を前に、心房細動による脳梗塞を教育することに奔走し、どれだけ理解してくれたのかもわからず、大出血率の高い高齢者にどんどん抗凝固療法を行えば、いずれ脳卒中の前に大出血に出会うでしょう。しかも、抗凝固療法による大出血が引き金となって死亡に至ることも知っていると、そう簡単に入口の間口だけをただ広げるというわけにもいかないと思うのです。「フレイル」という概念しかし、年齢だけでものを語ることができないのも事実です。見た目年齢が重要……これはけっこうその患者のクレアチニンクリアランスに反映されている気もします。高齢医学では、「フレイル」という概念があります。青信号を渡れない患者、認知症を有する患者、独居老人などが挙げられています。このフレイルに相当する患者に抗凝固療法をまっとうに行うことはかなり困難でしょう。これはあくまでも個人的な考えの医療となってしまいますが、基本的に平均寿命以下ならガイドライン通りに、それ以上のフレイルに相当する患者では抗凝固療法を行わないという選択肢も医療としてありうると思っています。もちろんこれは医療者が決定することではなく、むしろ家族や介護提供者の意思がより重要視されるべきでしょう。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q3

Q3整形外科医です。術後感染疑いの患者で高熱が3日間続いたため、創部を洗浄して検体採取したところ、グラム陽性球菌が少量検出されました。感染症専門医にコンサルトしてバンコマイシンを開始しています。このような場合、見切り発車でバンコマイシンというのはスタンダードな方法なのでしょうか? 整形外科医の頭では、セフェム系などを投与して、培養でMRSAが出たらバンコマイシンに切り替えるという方法が浮かんでしまいますが、それは間違いでしょうか?患者さんの重症度によると思います。抗菌薬を選択する際には、「どこの臓器」に「どのような微生物」が感染を起こしているのかを考えます。今回は、術後創部感染症(surgical site infection: SSI)について考えます。SSIは深さによってさらに表層切開創SSI、深部切開創SSI、臓器/体腔SSIに分類されます1)。整形外科手術後であれば、SSIの原因菌で頻度の高いものは、黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌が代表的)です。SSIに対してバンコマイシンを使用するのは、MRSAだけでなくコアグラーゼ陰性ブドウ球菌も考えてのことです。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌はβラクタム剤に耐性をもっていることが多いため、エンピリック治療としてはバンコマイシンが推奨されます。院内で検出される細菌のアンチバイオグラムにもよりますが、SSIという診断が正しそうで、病変部位からグラム陽性球菌が検出されているとなれば、バンコマイシンで治療を開始するのが理にかなっていると思います。そして、検出された細菌がβラクタム剤に感受性を有していることが確認できた後に変更します。これをde-escalation(ディ・エスカレーション)と呼びます。ただし、表層のSSIのみで、患者の状態が軽症で、適切にドレナージもされていて、仮に最初に使用した抗菌薬が外れていたとしても、後からやり直しが効きそうだという条件がそろっていれば、セファゾリンなどのβラクタム剤で開始することは完全な間違いとも言えないと思います。何が「スタンダード」かは、患者さんの状態によっても変わってくると思います。参考文献1)Anderson DJ. Infect Dis Clin North Am. 2011; 25: 135-153.

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BIOSCIENCE試験:成熟期に入った金属製薬物溶出性ステント、今後の注目点は超長期的な成績か(解説:中川 義久 氏)-275

BIOSCIENCE試験より、スイス、バイオトロニック社の「Orsiro」ステントを使用したPCIは、Xience Prime/Xpeditionステントと比較し、12ヵ月の安全性・有効性複合アウトカムは非劣性であることが、スイスのBern大学のPilgrim氏により、ESC Congress 2014のHot Lineセッションで発表されLancet誌に内容が掲載された。 「Orsiro」ステントは生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントで、コバルトクロム合金製でストラット厚が60μmと極薄であること、生分解性ポリマーを使用していること、の2点が主な特徴である。普通の太さの毛髪は80μmとされるので、まさに髪の毛より薄いと言ってよい。一方の「Xience」ステントは、耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントと表現される。 金属製の薬物溶出性ステントの開発は、成熟期に入ったと言ってよいであろう。第一世代の薬物溶出性ステントのCypherが、ベアメタルステントと比較した臨床試験において、統計学的処理を要しないほどの圧倒的な優位性を示し認可されたことを思えば、隔世の感がある。現在認可されている第二世代薬物溶出性ステントに劣っていないことを証明する非劣性試験デザインが当然となっていることが、開発の熟成を物語っている。本ステントは、「生分解性ポリマー」を用いており、「耐久性ポリマー」との比較が論点となる。 サブ解析であるST上昇型心筋梗塞患者では、有意なアウトカム改善が認められたとされるが、その解釈において「生分解性ポリマー」と「耐久性ポリマー」の差異に理由を求めるには問題があろう。2剤併用抗血小板療法のアドヒアランスは80%以上と高く、ポリマーの差異はマスクされている可能性がある。また、この2種類のポリマーの差異は、より長期的な観察によって判断されるべきものであろう。 米国のFDAが冠動脈ステントの臨床試験において求める最長期のデータは5年であり、それ以上の期間のデータは求めていない。しかし、金属製ステントは生涯留置されるものであり、ポリマーが「生分解性」か「耐久性」か、などの特性は5年を超える成績によって評価されるべきものであろう。 本試験とは直接には関係しないが、生体吸収性ステント(スキャホールド)の開発も進行しており、この成績もベアメタルステント、薬物溶出性ステントの超長期的な予後との比較において議論されるべきものであろう。このような長期的なデータを緻密に集積し解析することは、本邦において実績のある分野である。この面で、今後日本からの一層の情報発信に期待したい。

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黄斑変性へのES細胞移植、安全性確認/Lancet

 ヒト胚性幹細胞(hESC、ヒトES細胞)由来の網膜色素上皮細胞で網膜下移植を行った患者について、約2年間追跡した結果が発表された。過剰増殖や拒絶反応などの有害事象は認められず、治療の安全性が確認されたという。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のSteven D Schwartz氏らが、同移植を行った18例について行った2件の第I・II相前向き臨床試験の結果で、Lancet誌オンライン版2014年10月15日号で発表された。 中央値22ヵ月追跡し、安全性を評価 Schwartz氏らは、スタルガルト病黄斑ジストロフィー(18歳超)と萎縮性加齢黄斑変性症(55歳超)の患者、それぞれ9例に対して、ヒトES細胞由来の網膜色素上皮細胞で網膜下移植を行い追跡、治療の安全性について評価を行った。被験者への移植細胞数は、5万、10万、15万のいずれかだった。 被験者について中央値22ヵ月追跡し、全身・眼科検査、画像検査を行った。視力関連QOL、術後3~12ヵ月で改善 結果、過剰増殖や拒絶反応、移植細胞に関連する目や全身性の重篤事象は認められなかった。 有害事象については、網膜硝子体手術と免疫抑制に関連するものが認められた。また被験者18例のうち13例(72%)で、網膜色素上皮細胞移植によると考えられる網膜色素の増大が確認された。 最高矯正視力については、10眼で改善、7眼で改善または維持が認められ、10文字超に相当する低下が報告されたのは1眼にとどまった。 視力関連QOLについて調べたところ、視力一般・周辺視覚、近点・遠点活動については、萎縮性加齢黄斑変性症の患者群で、移植後3~12ヵ月時点で16~25ポイント、スタルガルト病黄斑ジストロフィーの患者群では同8~20ポイントの改善が認められた。 研究グループはこれらの結果を受けて、「ヒトES細胞由来細胞を用いた治療が、いまだ細胞修復や交換を要する治療法がない疾患について、新たな安全な治療法となる可能性が示唆された」とまとめている。

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境界性パーソナリティ障害、精神症状の特徴は

 DSM-IV分類の境界性パーソナリティ障害(BPD)では精神病性症状の頻度が高いことが、従来の研究で示されているが、その発症率と特徴(タイプ、頻度、期間、部位など)に関しては現在のところコンセンサスは得られていない。同様に、精神的反応性について取り組んだ論文もほとんどなかった。イタリア・トリノ大学のFrancesco Oliva氏らは、BPDと統合失調症(SC)における思考および知覚障害の相違を検討し、それらと社会的機能との関連を評価した。その結果、BPD患者はSC患者と比べ、偽精神病性思考の頻度が高く、真性精神病性思考の頻度が低く、非妄想性パラノイアがより重症であること、人格・社会機能の程度が非妄想性パラノイアを有意に予測することを報告した。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年10月3日号の掲載報告。 精神的反応性はBPDを構成する重要な要素である。同時に、これはDSM-IV BPDで提示されている9項目の1つであり、DSM-IV-TRとDSM-5でも変わらず含まれている。本研究の目的は、DSM-IV分類のBPDとSCにおける思考および知覚障害の相違を検討するとともに、それらと社会的機能との関連を評価することであった。DSM-IV分類でBPD(28例)またはSC(28例)と診断された外来患者を対象とし、過去2年にわたる思考と知覚障害をDiagnostic Interview for Borderline Revised (DIB-R)を用いて、また社会機能をPersonal and Social Performance scale(PSP)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・BPD患者では、偽精神病性思考(すなわち一過性、制限的および非定型的精神行動) の頻度がより高かった(BPD=82.1%、SC=50%、p=0.024)。・一方、SC患者では、真性精神病性思考(すなわちシュナイダーの1級症状、遷延化、拡大、および奇異な精神病性症状)の頻度がより高かった(SC=100%、BPD=46.4%、p<0.001)。・ただし、BPD群、SC群のいずれにおいても、両方の精神病性特徴が広く認められた。・非妄想性パラノイア(すなわち過度の疑い深さおよび関係念慮)は散見されたが、SC患者に比べBPD患者でより重症であった(U(54)=203.5、p=0.001)。・BPD群では人格・社会機能と非妄想パラノイアの間に強い負の関連がみられ(τ(28)=0.544、p=0.002)、BPD群においてのみ人格・社会機能の程度が非妄想性パラノイアを有意に予測した(β=-0.16、t(23)=2.90、p=0.008)。・以上より、BPD患者はSC患者と比べ、偽精神病性思考の頻度が高く、真性精神病性思考の頻度が低く、非妄想性パラノイアがより重症であり、重度の精神病性経験がより少ないことがわかった。・BPD患者では、対人関係の機能が非妄想性パラノイアの予測につながると思われ、DSM-IV診断分類の9項目およびDSM-5分類のBPDに含まれるストレス関連パラノイドの妥当性が確認された。・BPD患者では精神病性経験サブスケールが高スコアであり、DSM-5のSection IIIで紹介されているthe Clinician-Rated Dimensions of Psychosis Symptom Severity など、思考と知覚障害の重症度を評価するツールの使用が支持される。関連医療ニュース 境界性パーソナリティ障害でみられる幻覚の正体は 境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為を減少させるには 境界性パーソナリティ障害患者の症状把握に期待!「BPDSI-IV」は有用か  担当者へのご意見箱はこちら

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心房細動患者PCI後の抗凝固療法と 抗血栓療法併用の現状と問題点

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。PCI後のステントでは血小板を主体とする動脈血栓、心房細動による血栓塞栓症では静脈血栓をケアする。では心房細動合併患者のPCI後はどうすべきか?永年にわたり議論を呼ぶこの話題について、本年9月の欧州心臓病学会(ESC2014)での発表内容を含め最新の情報を北里大学 循環器内科学 教授 阿古 潤哉氏がレビューする。 チャプター(順次公開)1.Af患者PCI後の血栓症2.Triple therapyは必要か?3.ワルファリンはどこまで効かせる?4.NOACは?5.BMS vs DES?6.1年後はOACのみか、OAC+APTか?

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