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1型糖尿病の臓器障害に、RA系阻害薬は有効か?(解説:石上友章氏)-776

 糖尿病は、特異的な微小血管障害をもたらすことで、腎不全、網膜症、神経障害の原因になる。糖尿病治療のゴールは、こうした合併症を抑制し、健康長寿を全うすることにある。RA系阻害薬に、降圧を超えた臓器保護効果があるとされた結果、本邦のガイドラインでは、糖尿病合併高血圧の第1選択にRA系阻害薬が推奨されている。しかし、臨床研究の結果は、必ずしもRA系阻害薬の降圧を超えた腎保護効果を支持しているわけではない。ONTARGET試験・TRANSCEND試験1,2)を皮切りに、最近ではBMJ誌に掲載された報告3)(腎保護効果は、見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~)も、観察研究ではあるが、否定的な結果に終わっている。 1型糖尿病の腎保護については、ミネソタ大学のMauerらのRASS試験4)が、決定的な結果を報告している。本研究では、ARB(ロサルタン)、ACEI(エナラプリル)とplaceboの3群に分けた対象で、腎保護作用を検討している。本研究の特筆すべき点は、腎保護効果について、腎生検標本を用いて、厳密に評価していることにある。その結果は、メサンギウム分画容積をはじめとした、すべての病理学的評価指標に、3群間で差が認められなかった。 この結果を受けて、NKF(米国腎臓財団)によるKDOQI Clinical Practice Guideline For Diabetes And CKD/2012 Updateには、6章の6.1として、“We recommend not using an ACE-I or an ARB for the primary prevention of DKD in normotensive normoalbuminuric patients with diabetes.(1A)”とされた5)。この一文には、RA系阻害薬の糖尿病性腎障害抑制作用は、病理学的な変化をもたらすほどの効果はなく、微量アルブミン尿のような不正確な指標で評価された、見かけ上の効果でしかないとの意味が込められている。 英国・ケンブリッジ大学のM Loredana Marcovecchioらが行い、NEJM誌2017年11月2日号に掲載されたAdDIT試験は、スタチンとACE阻害薬を試験薬とし、2×2要因デザインで行われたRCTである。結果は、両試験薬ともに、primary endpointを達成することはできなかった。副次評価項目である、微量アルブミン尿の累積発症率には有意差が認められたが、EBMの原則に従って、著者らはこの結果を採用しなかった。しかしながら、“Many secondary outcomes in the published protocol were exploratory but considered to be clinically relevant in this population of adolescents.”とは、「夢の続きを見ていたい」という著者らの率直な心情の吐露なのかもしれない。

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競技スポーツ中の突然の心停止の頻度は?/NEJM

 競技スポーツ中における突然の心停止の発生率は、運動選手10万人年当たり0.76件であり、競技中の構造的心疾患による突然の心停止の頻度は低いことが、カナダ・トロント大学のCameron H. Landry氏らの調査で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年11月16日号に掲載された。スポーツ活動中の突然の心停止の予防を目的とする事前スクリーニング・プログラムにより、リスクを有する運動選手の同定が可能と考えられるが、これらのプログラムの有効性に関しては議論が続いている。心停止データベースを用い、後ろ向きに検討 研究グループは、カナダの特定地域でスポーツ活動中に発生した突然の心停止をすべて同定し、その原因を調査した(米国国立心臓・肺・血液研究所[NHLBI]などの助成による)。 Rescu Epistry心停止データベース(ネットワーク地域内で、救急医療隊員が対処したすべての心停止の記録が含まれる)を用いて、2009~14年に12~45歳の集団でスポーツ中に発生したすべての院外心停止を後ろ向きに同定した。 患者に関する複数の情報源の記録(救急車の要請の報告、剖検報告、入院データ、患者・家族との直接面談の記録など)に基づき、突然の心停止(心原性)または非心原性の原因によるイベントの判定を行った。 2009~14年の推定総フォローアップ期間は1,850万人年であった。試験期間中に、院外心停止を起こした2,144例が解析の対象となった。スポーツ中の突然の心停止は74件で発生し、競技スポーツ中が16件、競技以外のスポーツ中が58件であった。事前スクリーニングで同定の可能性ありは16件中3件 競技スポーツ中の突然の心停止16件の競技別の内訳は、レース競技(マラソン、バイアスロン、トライアスロンなど)とサッカーが4件ずつ、バスケットボール、アイスホッケー、柔術が2件ずつ、野球、ラグビーが1件ずつであった。競技以外のスポーツ中では、ジム練習(12件)、ランニング(9件)が多かった。 競技スポーツ中の突然の心停止を年齢別でみると、12~17歳が4件、18~34歳が9件、35~45歳は3件で、全体の発生率は運動選手10万人年当たり0.76件であった。退院時の生存率は競技スポーツ中が43.8%、競技以外のスポーツ中は44.8%とほぼ同じだった。 競技スポーツ中の突然の心停止の原因は、35歳未満では原発性不整脈(6件)と構造的心疾患(肥大型心筋症、冠動脈奇形:5件)が多く、35~45歳では全例が冠動脈疾患であった。肥大型心筋症による死亡は2件で、不整脈原性右室心筋症による死亡は認めなかった。 競技スポーツ中の突然の心停止のうち3件は、事前スクリーニングを受けていれば同定が可能であったと考えられた。 著者は、「競技スポーツ参加中の突然の心停止はまれで、原因は多岐にわたり、体系的な臨床的事前スクリーニングや、これを心電図ベースの事前スクリーニングと併用しても、患者の80%以上は同定されない可能性がある」と指摘している。

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新型インフルエンザ対策の最前線

 2017年11月5日、厚生労働省は都内において、「新型インフルエンザ対策に関する研修」を開催した。当日は、新型インフルエンザの疫学、治療ガイドライン、感染対策、行政の動向について4名の演者による講演が行われた。急がれるH7N9ワクチン はじめに「鳥インフルエンザの疫学について」をテーマに小田切 孝人氏(国立感染研インフルエンザウイルス研究センター WHOインフルエンザ協力センター センター長)が、鳥インフルエンザの動向、最新の知見を解説した。 インフルエンザAタイプは人獣共通感染症であり、野生のツルやカモなどの水禽類が宿主となっている。このタイプは、ヒト、トリ、ブタ間でも感染し、現在トリではH5N1、H5N6、H7N9、H9N2が、ブタではH1N2v、H3N2vがヒトに感染することがわかっている。とくに患者数が多かったH5N1は、その数が減少する傾向にあるものの、高病原性ゆえに致命率は53%と高いという。 問題は、突然変異によるパンデミックポテンシャルをウイルスが持っていることであり、トリがこうしたウイルスを獲得していないかどうか、常に監視する必要があると警告する。 ワクチンについては、世界保健機関(WHO)がインフルエンザウイルスのリスト化とワクチン株の保存を行い、日本、米国、英国の施設で新型インフルエンザワクチン製造株を作製・提供を実施しており、中国でも開発中であるという。 その中国では、2013年より鳥インフルエンザ H7N9が流行。2017年8月31日時点で、1,531例の感染例(うち死亡604例)と高い致命率(39.5%)が報告された。また、旅行など人の移動が感染拡大を助長したこと、高齢者の感染例が多いことも報告された(H5N1は青年に多かった)。 H7N9は、飛沫感染する例も動物実験で報告され、ワクチンの開発が急がれているが、予防接種の免疫獲得が低いことや免疫細胞に認識されないなどの問題があり、現在も研究が続けられている。 最後に、日本で中国のようなアウトブレイクが起きるかどうかについて、「わが国の検疫対応をみると発生しないだろう」と現状からの予測を語り、レクチャーを終えた。新型インフルエンザには抗ウイルス薬の使用をためらわない 次に川名 明彦氏(防衛医科大学校 感染症・呼吸器内科 教授)が、「成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン改訂の方向性について」をテーマに解説を行った。 2014年3月に現在の治療ガイドラインが発行され、現在は改訂(第2版)の最終段階であり、12月中には最新のガイドラインが発行されるとの見通しを述べた。 ガイドラインで示される治療の範囲は、入院診療の治療がメインとなり、とくに意識障害、肺炎の有無別による治療にページが割かれるという。また、予想される新型インフルエンザの臨床像は、過去のインフルエンザの事例、鳥インフルエンザの重症例、季節性インフルエンザの重症例などから検討され、インフルエンザ肺炎の中でも原発性、混合性、二次性の大きく3つに分けた治療が記されるという。 現在、日本で使用できる抗ウイルス薬には、オセルタミビル(商品名:タミフル)、ザナミビル(同:リレンザ)、ラニナミビル(同:イナビル)、ペラミビル(同:ラピアクタ)の4種がある。治療では、米国疾病管理予防センター(CDC)の原則に沿い、早期投与が勧められているほか、入院患者、2歳以下の小児、65歳以上の高齢者、循環器や代謝異常などの既往症、免疫抑制状態、妊婦(出産後2週間以内も含む)、病的肥満(BMI 40以上)、長期療養施設に入所など、ハイリスク患者には可能な限り早期に投与するとしている。 症状が、軽症、中等症、肺炎合併がない場合の新型インフルエンザの治療では、季節性インフルエンザと同じ治療としつつ、肺炎を合併した場合は、できるだけ早く抗ウイルス薬の投与を示している。とくに重症例ではペラミビルの選択、増量や投与期間の延長、ファビピラビル(同:アビガン)との併用も考慮するとしている(ただしファビピラビルは妊婦または妊娠している可能性のある婦人へは投与しない)。 新型インフルエンザ肺炎への細菌感染の合併例については、頻度の高いものとして肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などのウイルス細菌混合性肺炎と、緑膿菌、アシネトバクターなどの二次性細菌性肺炎を挙げ、入院を要する症例ではただちに抗菌薬療法を開始する。そして抗菌薬の選択はガイドラインを参考に行い、病原体確定後に、より適切な抗菌薬へde-escalationすることとしている。その他の薬物療法として副腎皮質ステロイド薬は、ウイルス性肺炎では喘息合併に限り重症化を抑制するほか、細菌性肺炎では敗血症性ショック時の相対的副腎不全に低容量で有効とされている。また、マクロライド系薬は、細菌性肺炎の重症化例で予後を改善するとの報告がある。 肺炎時の呼吸管理では、人工呼吸を躊躇しないで使用するほか、悪化または改善がみられない場合は、特殊な人工呼吸法(ECMO)の導入やより専門的な施設への転送をするとしている。 インフルエンザ肺炎の重症度評価では、PSI、A-DROP、CURB-65などの市中肺炎の重症度評価法よりも、重症度が過小評価されることに注意が必要と指摘する。 最後に、川名氏は「“新型インフルエンザ”の病態は未知であるが、病原性の高いインフルエンザの出現を想定し、準備する必要がある。ガイドラインも、出現時にはウイルスの特徴に応じてただちに再検討する必要がある」とまとめ、レクチャーを終えた。感染対策は手指衛生と予防接種が大事 次に加藤 康幸氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター国際感染症対策室 医長)が、「感染対策について」をテーマに解説を行った。 インフルエンザの院内感染の特性は、新型も季節性も、新生児、骨髄移植患者、長期療養型病棟で致死率の高い流行を起こすことがあり、医療従事者においては患者からの感染と患者の感染源になるという2つのリスクがあると説明する。そして、新型インフルエンザ流行時には、感染被害の軽減と封じ込めの同時進行が必要であり、過去の拡大例を検証すると、医療従事者から患者への飛沫感染対策は重要であるという。 そして、医療機関における具体的な感染対策としては、「感染源対策」「患者・職員の健康管理」「感染経路の遮断」の3つが必要とされ、CDCの推奨でも予防接種、患者との接触を減らす、標準予防策の順守、飛沫予防策の順守、訪問者の制限なども掲げられ、実践されることが期待される。 とくに飛沫感染対策・咳エチケットとして、医療機関の入口での注意の掲示、1m以上の距離を隔てた待合用の座席、待合室の手近な場所への手指衛生設備の設置などが必要となる。同様に、医療スタッフへの指導では、個人防護具(手袋、ガウン、シールド付きサージカルマスクなど)の装着・脱着の研修は有効であるという。 最後に加藤氏は「院内感染対策では、手指衛生と(患者、医療従事者の)予防接種の2つが有効とされている。新型インフルエンザの対策も、季節性インフルエンザの延長にあると考え、流行に備えてもらいたい」と語り、解説を終えた。新型インフルエンザではWeb情報も活用を! 最後に、厚生労働省の海老名 英治氏(健康局結核感染症課 新型インフルエンザ対策推進室 室長)が「行政動向について」をテーマに、新型インフルエンザ対策の法令、ワクチンの備えに関して説明を行った。 新型インフルエンザへの対策は、水際での侵入阻止と早期封じ込めによる感染拡大の抑制と流行規模の平坦化、それと同時にワクチンの開発、生産、接種によって流行のピークを下げること、医療への負荷を減らすことであるという。 2012年5月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が公布され(施行は2013年6月)、流行時の各種対策の法的根拠が明確化された。具体的には、体制整備として国・地方公共団体の行動計画や訓練、国民への啓発のほか、流行発生時の対策本部の設置、特定接種の指定などが決められ、「新型インフルエンザ等緊急事態」発生の際の措置では、外出自粛要請、興行場等の制限などの要請・指示、住民への予防接種の実施、医療提供体制の確保、緊急物資の運送の要請・指示などの規定が挙げられる。 また、国のインフルエンザ対策として、時間軸で海外発生期、国内発生早期、国内感染期、小康期の4つに区切り、各段階で(1)実施体制、(2)サーベイランス・情報収集、(3)情報提供・共有が行われると説明を行った。 現行の被害想定はいずれも最大数で、罹患者を人口の25%、医療機関受診者を約2,500万人、入院者を約200万人、死亡者を約64万人、欠勤者を従業員の約40%とし、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄は人口の45%を目標としている(2017年7月時点の有識者会議で、全人口の25%が罹患するとして再検討されている)。また、「これら抗ウイルス薬の備蓄方針、季節性インフルエンザとの同時流行時の規模や重症患者への倍量・倍期間治療、予防投与についても、省内の厚生科学審議会で継続的に審議されている」と説明する。 最後に海老名氏は、「審議会などの新しい情報も厚生労働省のウェブサイトなどを通じて日々発信しているので、新型インフルエンザの対策ではこれらも参考に準備をしていただきたい」と述べ、説明を終えた。■参考厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ)内閣官房 新型インフルエンザ等対策厚生労働省 セミナー当日の配布資料

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派手さはないが重要な研究(解説:野間 重孝 氏)-767

 急性心筋梗塞患者の急性期の治療において、酸素の使用が初めて報告されたのは古く1900年までさかのぼり、以来今日までごく当たり前のように行われてきた。血液酸素飽和度を上昇させることにより、より効率的に虚血心筋に酸素を供給することができるだろうという発想から生まれた治療法で、この理屈には大変説得力があったことから、疑われることなく長く行われ続けた。80年代になってパルスオキシメータによるモニターが容易に行えるようになっても、この考え方の根本が見直されることはなかった(パルスオキシメータの発明は1974年で、わが国で行われた)。 実際JCS 2008でも心筋梗塞発症後6時間以内の酸素投与が積極的に勧められており、救急現場の対応の項ではMONAなどという懐かしい言葉が現在も登場している(ちなみにM:モルヒネ、O:酸素、N:nitrate、A:アスピリン)。これはわが国だけのことではなく、2012年のESCガイドラインでも酸素投与は推奨されており、2016年の改訂でも大きく改められてはいない。つまりガイドラインの世界では程度の差こそあれ、急性心筋梗塞患者の急性期治療に酸素を用いることにはまだ疑義が呈されていないといえる。 しかし実際の臨床の現場では、低酸素血症、心不全のない急性心筋梗塞の患者に対して酸素投与が行われる機会は、かなり減っているという印象を受けている。このような問題に対するアンケート調査が行われたことはないので、評者自身、学会の運営委員会などで各施設の先生方に片っ端から質問してみたのだが、低酸素血症のない患者に対する酸素投与は確かにいつのころからか行われなくなっているというのが大勢だった。読者は「いつのころから」とか「何となく」といった表現に対し「何といい加減な」と反発される向きも多いのではないかと推察するが、これこそが医学界の現実であり、EBM運動が起こった理由なのである。なお付け加えれば、そうした先生方も酸素飽和度が95%を切るような症例に対しては酸素を投与すると答えており、これには急性心不全治療のプロトコールの影響があるのではないかと推察した。 一方で今世紀に入るころから、低酸素血症のない急性心筋梗塞患者に対する酸素投与には、疑義が呈されるようにもなっていた。それらは、不必要な酸素投与は冠動脈抵抗を上げることにより、かえって血液供給の効率を悪くするのではないか、酸素投与による酸化ストレスが考慮されるべきではないかなど、確かに考慮されるべき疑義だった。現在最も信頼されているEBMレビューの1つであるCochrane reviewが、初めて急性心筋梗塞に対する酸素投与には確かな研究的根拠がないのではないかと疑義を呈したのは2010年のことであり、2016年のreviewでははっきり根拠薄弱と断じるに及んだ。そんな中、はっきり反対とのデータを提出したのが2015年に発表されたAVOID studyだった。対象患者は638名と小さな研究ではあったが、低酸素血症のない急性心筋梗塞患者に酸素を投与することは、かえって梗塞サイズを大きくするのではないかとのデータを提出し、波紋を呼んだ。 このような流れの中で、大規模data baseを使用して行われた調査研究が本研究である。彼らはスウェーデンの全国レジストリデータを用いて、低酸素血症のない急性心筋梗塞患者6,629名を酸素投与群と非酸素投与群により分けた。低酸素血症の定義はSpO2 90%未満としたから、かなり思い切った振り分けといえる。SpO2 90%が酸素分圧60Torrに当たるからだ。この結果彼らは、酸素投与が1次エンドポイントである1年以内の全死亡に影響を与えないだけでなく、再入院率にも影響を与えないことを示した。この研究は非盲検研究ではあるが、酸素投与という問題がそれほど臨床医の関心や利害の対象ではない以上、盲検研究とほぼ同じ信頼性があるとしてよいものであると考えられる。この研究結果は、ガイドラインに訂正を迫るのに十分な重みのあるものであったと評価されよう。 評者は、こうした派手さはないが、誰もが疑問に感じつつもはっきりした根拠が得られない分野に確かな一歩を進める研究こそが、医師主導型研究の有るべき姿であると考えているものであり、今回の研究を高く評価するものである。実際、この研究はこの分野の静かなmilestoneとなる研究ではないかと考える。

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摂食障害プログラム、オランザピンの使用は

 顕著な障害や発育への影響に関連する摂食障害である回避性・制限性食物摂取症(ARFID)に対する薬理学的治療についての情報はほとんどない。米国・サウスカロライナ医科大学のTimothy D. Brewerton氏らは、ARFIDに対する薬物療法に関して臨床報告を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2017年10月25日号の報告。 オランザピンの補助的投与と摂食障害(ED)プログラム(在宅、部分的入院、集中外来ケア)で治療されたARFID患者9例について、レトロスペクティブチャートレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン平均初回投与量は0.9+0.63mg/日、オランザピン平均最終投与量は2.8+1.47mg/日であった。・オランザピン投与前後の体重増加(3.3±7.3lb対13.1±7.9lb[2.99±6.62lb SI対11.88±7.17lb SI])に、有意な差が認められた(対応t検定:p<0.04、t=-2.48)。・オランザピンの補助的投与は、体重増加だけでなく、不安、抑うつ、認知機能の改善に有用であった。・オランザピンの補助的投与を行った患者では、臨床全般印象評価尺度(CGI)スコアの改善が認められた。 著者らは「ARFID患者に対する低用量オランザピン補助的投与は、食生活の改善や体重増加、および不安、抑うつ、認知機能の改善が期待できる。将来、ARFID患者を対象とした無作為化プラセボ対照試験が望まれる」としている。■関連記事オランザピン誘発性体重増加のメカニズム摂食障害への薬物療法、最新知見レビュー小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析

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FFRジャーナルClub 第7回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第7回目の今回は、多枝疾患(multi vessel disease:MVD)におけるPCIとCABGを比較したSYNTAX studyの流れを継承し、FFR/iFR guide PCIが採用されたSYNTAX II studyにおける1年予後の結果報告を読みたいと思います。第7回 多枝疾患、左主幹部病変へのPCIはCABGに追いついたのか?SYNTAX II studySYNTAX studyは、多枝疾患、左主幹部病変を対象とし、PCIとCABGをランダム化し比較した試験である。薬剤溶出ステントを用いても、解剖学的に複雑な要素を持つ3枝疾患に関しては、依然CABGの優越性が示されていた。SYNTAX II studyでは、ハートチームによりPCI/CABGの治療選択の際の判断基準として、解剖学的複雑性とともに手術のリスクとなる臨床的患者背景を評価するSYNTAX score IIが採用された。さらにPCIの技術的進歩、これには、(1)薄いstrut/bio-resorbable polymerを有する新世代DES(SYNERGY stent)を用い、(2)ステントの植え込み時(留置前および留置後のoptimize)にIVUS guideを用い、(3)慢性完全閉塞(CTO)に対しては最新の手技を取り入れ、(4)抗血小板薬DAPTも最新のものを使う、これらに加え、(5)PCIの適応決定をphysiology guideにて行う、という最新のPCIテクノロジーを集結させることにより、MVDに対するPCI後の予後を改善させるかを検討することが、目的である。Escaned J, et al. Clinical outcomes of state-of-the-art percutaneous coronary revascularization in patients with de novo three vessel disease: 1-year results of the SYNTAX II study. Eur Heart J. 2017 Aug 26. [Epub ahead of print]Mohr FW, et al. Coronary artery bypass graft surgery versus percutaneous coronary intervention in patients with three-vessel disease and left main coronary disease: 5-year follow-up of the randomised, clinical SYNTAX trial. Lancet 2013;381:629-638.SYTAX II studyは、多施設共同、all comers、非盲検、単群試験である。前述したSYNTAX II strategyを行い、1年間のMACCE(全死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠血行再建)を観察し、SYNTAX I trialから抽出したPCI cohort、CABG cohortと予後を比較した。708例がハートチームで討議され、PCIが適切と判定された454例が登録された。このSYNTAX II strategyによる1年時の予後は、SYNTAX I PCI cohortよりも良好であった(MACCE 10.6% vs.17.4%、HR:0.58、95%CI:0.39~0.85、p=0.006)。その2群間の差は、心筋梗塞発症の低下(HR:0.27、95%CI:0.11~0.70、p=0.007)と、血行再建の低下(HR:0.57、95%CI:0.37~0.9、p=0.015)であった。全死亡、脳卒中発生に差はなかった。ステント血栓症(definite)は有意に少なかった(HR:0.26、95%CI:0.07~0.97、p=0.045)。本研究の主たる結果をまとめると、1)SYNTAX II strategyによって治療されたPCI後の予後は、SYNTAX I trialのPCI群よりも良好な予後を得ることができた。そのMACCE低下に寄与したのは、MI、血行再建、ステント血栓症の減少であった。画像を拡大する2)SYNTAX II scoreアルゴリズムによる中等度リスク(SYNTAX score 23~32)に対するPCIの短期予後は、低リスク群(SYNTAX score 22以下)と差がなかった。画像を拡大する3)機能的評価(iFR/FFR)は75.5%の病変で施行可能であった。またその結果、25.0%の病変でPCIがdeferされた。4)ステント後の評価にIVUSをsystematicに使用することにより、30.2%の病変で後拡張などの手技が追加された。5)Contemporary CTO techniqueにより、手技の予後が格段に改善した。CTOの108病変中初期成功率は87.0%であった。6)SYNTAX II strategyによるPCI後の臨床的予後は、SYNTAX I CABG cohortの予後と同等であった。画像を拡大する機能的評価は75.5%の病変で行われたが、その平均iFRは0.77±0.21であった。造影上は1,559病変の治療が予定されたが(3.49病変/患者)、機能的に有意であったものは74.6%(2.64病変/患者)であった。機能的評価により396病変(25.0%)がPCIをdeferされたことになる。本研究ではiFR-FFR hybrid approachが使用されているが、最近報告されたDEFINE FLAIR試験に採用されたiFRのPCI施行閾値である0.89を用いると、FFRによる虚血判定と異なり非虚血と判定された病変が35%に及んでいることが、supplementにて報告されている。画像を拡大する私見昨今のPCI技術・デバイスの進歩は著しく、その成績は安定し、治療手技としてはかなり成熟していると感じることが多い。しかしSYNTAX studyに代表される大規模な研究結果が報告されるたびに、まだCABGに届かないのか、と落胆する術者も多いことと思う。本研究SYNTAX IIの研究者は、まさにその考えに基づき、最新のPCI技術をもってすれば、CABGの成績を凌駕しているのではないか、という点を証明すべく行われた研究である。SYNTAX II strategyにはいくつかのポイントが挙げられるが、PCIの適応決定にphysiological guidanceを用いた点、およびPCI手技のoptimizationにIVUS guidanceを用いた点で、日本の日常臨床でわれわれが目指しているインターベンションにより近いものであることを感じる。その結果、多くの研究でみられるPCI手技関連のMIなど初期イベントは減少し、1年後までの予後もSYNTAX I PCI cohortよりも良好であり、CABGと同等の成績であることが証明された。ただしCABGとの比較では、死亡、MIが経過中徐々に増加し、初期のPCIの優越性は徐々に減少している点が気になる。われわれの日常臨床ではPCI後のMIや死亡というMajor eventは非常に少ないことから、まだ乖離があるのかもしれない。PCI後の評価としてIVUSの読影が十分に行えていたのか、PCI後のmedication、とくに抗血小板薬DAPTに対する反応性の相違などが気になる点である。また個人的には、ステント後のFFRを評価することにより、ステント後のoptimizationの精度を上げることができたのではないかと思う。最近、海外でもようやくステント後のFFRに注目が集まりはじめたが、ステント後のFFRは、ステントの拡張状態、ステントedgeのトラブル(解離、血腫、大量の残されたプラークなど)、ステント外の残存病変の重症度など、さまざまな情報を与えてくれる。IVUSを使用していれば、その多くはすでに認識することが可能であるが、IVUSの読影自体に経験が必要なこと(とくに外国の術者にとって)、IVUSにて注目していなかった部分に偶発的に存在する病変・解離などの発見、その重症度の定量的評価を可能とするので、せっかくFFRワイヤーがカテ台上に出ているのであれば、post stent FFRを計測しない理由はない。今回、FFR/iFR guideが使用された意義は大きい。しかし多施設で行う場合、どの程度その計測が正確に行われているか、得られた値の判断に従っているか、施設ごとの温度差が重要である。本研究でも、iFR-FFR hybrid approachのアデノシンゾーン外であってもFFRを計測されている症例、それらの虚血判断とは異なる治療適応決定がなされている症例などが散見された。画像を拡大するiFR positive(iFR<0.86)であってもFFRにて確認した症例は少数(16例、2.7%)であったが、iFR negative(iFR>0.93)でありFFRを確認した症例は42例(14.8%)であり、結局PCIが行われた症例は25例(8.8%)存在した。FFR、さらにはiFRに従うstrategyが十分には確立されていない状況が存在するものと予想される。CVITで行ったCVIT-DEFER trialにても、FFRの結果と異なる最終判断が行われた症例が19%存在した。FFR陽性であってもPCI手技のリスクを勘案しdeferされる症例、FFR陰性であっても自覚症状・他のモダリティー結果との総合判断からPCIが選択される症例、FFR自体があまり理解されていない場合など、さまざまな状況が考えられる。もちろんFFRがすべて正しいわけではないと思うが、FFRを十分に理解したうえでの慎重な判断が望まれる。FFRの臨床的、また経済的効果を最大限に引き出すためには、その使用適応、使用後の判断までしっかりと考えて行わなければならない。CABGとの比較においては、直接の比較試験の結果が必要であるが、現在FAME 3 studyが進行中であり、その結果が待たれるところである。

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クローン病のタイトコントロールは有益/Lancet

 中等症~重症の早期クローン病患者において、臨床症状とバイオマーカーの組み合わせに基づく抗腫瘍壊死因子療法の適時escalation戦略は、症状のみで治療方針を決定するよりも、臨床的および内視鏡的アウトカムを改善することが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のJean-Frederic Colombel氏らが、22ヵ国74施設で実施した無作為化第III相試験「CALM試験」の結果を報告した。便中カルプロテクチン(FC)やC反応性蛋白(CRP)など腸炎症のバイオマーカーは、クローン病患者のモニタリングに推奨されてきたが、これらを用いた治療方針の決定がクローン病患者の予後を改善するかどうかは不明であった。Lancet誌オンライン版2017年10月31日号掲載の報告。臨床症状+バイオマーカーに基づくクローン病の治療決定の有効性を評価 CALM試験の対象は、内視鏡的活動期(クローン病内視鏡的活動指数[CDEIS]>6、1つ以上の区域でのCDEISサブスコア合計>6、ベースラインのprednisone投与量に応じたクローン病活動指数[CDAI]150~450、免疫調整薬や生物学的製剤の治療歴がない)にある18~75歳の中等症~重症クローン病患者で、タイトコントロール群または標準コントロール群に1対1の割合で無作為に割り付けられた(喫煙状況、体重および罹患期間で層別化)。割り付け時期は、prednisone導入療法8週後、または疾患活動期の場合は早期に導入とした。 両群とも治療は、未治療→アダリムマブ導入→アダリムマブ隔週→アダリムマブ毎週→アダリムマブ毎週+アザチオプリン2.5mg/kg/日の連日投与へ、段階的に増量さらに免疫調整剤との併用療法を行った。このescalation戦略は、治療失敗基準(treatment failure criteria)に基づき両群で異なった。タイトコントロール群は、便中カルプロテクチン≧250μg/g、CRP≧5mg/L、CDAI≧150、または前週のprednisone使用に基づき、標準コントロール群は、ベースライン時と比較したCDAI減少<100点/CDAI≧200、または前週のprednisone使用に基づいた。また、アダリムマブ毎週+アザチオプリン投与、もしくはアダリムマブ単独を毎週投与の患者で、治療失敗基準を満たさない場合はde-escalation(いずれもアダリムマブ投与を毎週→隔週に)が可とした。 主要エンドポイントは、無作為化後48週間の深部潰瘍を伴わない粘膜治癒(CDEIS<4)とし、intention-to-treat解析にて評価した。クローン病のタイトコントロール群で粘膜治癒率は改善、有害事象は有意差なし 2011年2月11日~2016年11月3日の期間に、244例(平均[±SD]罹患期間:標準コントロール群0.9±1.7年、タイトコントロール群1.0±2.3年)が登録され、両群に122例ずつ無作為に割り付けられた。標準コントロール群29例(24%)およびタイトコントロール群32例(26%)が、有害事象等により試験を中断した。 48週時に深部潰瘍を伴わない粘膜治癒(CDEIS<4)に達した患者の割合は、タイトコントロール群が標準コントロール群よりも有意に高かった(56例[46%]vs.37例[30%])。Cochran-Mantel-Haenszel検定法を用いた補正後リスク差は16.1%(95%信頼区間[CI]:3.9~28.3、p=0.010)であった。 治療関連有害事象は、タイトコントロール群で105例(86%)、標準コントロール群で100例(82%)に認められた。治療関連死は発生しなかった。主な有害事象は、タイトコントロール群では悪心21例(17%)、鼻咽頭炎18例(15%)、頭痛18例(15%)、標準コントロール群ではクローン病の悪化35例(29%)、関節痛19例(16%)、鼻咽頭炎18例(15%)であった。 著者は、「CALM試験は、早期クローン病患者において、臨床症状とバイオマーカーの組み合わせに基づく抗腫瘍壊死因子療法の適時escalationが、症状のみの治療方針の決定よりも、良好な臨床的および内視鏡的アウトカムに結び付くことを示した初の試験である。さらなる試験を行い、腸損傷、手術、入院、障害などの長期アウトカムへの適時escalation治療戦略の効果を評価する必要がある」とまとめている。

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うつ病と双極性障害、自殺企図リスクが高いのは

 自殺企図は主な気分障害と関連しており、成人における自殺企図のリスクは、うつ病よりも双極性障害で高いといわれている。この関係は、若者でも同様かもしれないが、システマティックかつ定量的に検討したエビデンスはない。イタリア・Catholic University of the Sacred HeartのFranco De Crescenzo氏らは、小児または青年の双極性障害およびうつ病患者の自殺企図について、ランダム効果メタ解析を実施した。Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry誌2017年10月号の報告。 双極性障害またはうつ病と診断された小児または青年における、自殺企図の割合を比較した研究報告を検索し、ランダム効果メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・1995~2017年までの研究報告は6件であった。・対象は、米国および韓国の気分障害と診断された2,303例(3~18歳)。・自殺企図の割合は診断により有意に異なっており、双極性障害(31.5%)>うつ病(20.5%)>軽躁または躁病のみ(8.49%)であった。・メタ解析では、双極性障害>うつ病で自殺企図のリスクは有意に異なっており(OR:1.71、CI:1.33~2.20、p<0.0001)、自殺企図と自殺念慮を有する研究を除外した場合でも同様であった(OR:1.64、CI:1.26~2.15、p<0.0001)。 著者らは「若年気分障害患者における自殺企図のリスクは、双極性障害>うつ病>>軽躁または躁病のみ>>一般の若年集団であった」としている。■関連記事双極性障害患者の自殺、治療パターンを分析双極性障害の自殺企図、“だれ”よりも“いつ”がポイント双極性障害に対する抗けいれん薬の使用は、自殺リスク要因か

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血小板機能検査に基づく抗血小板療法の調節は意味がない?(解説:上田恭敬氏)-751

 本試験(TROPICAL-ACS)は、急性冠症候群(ACS)に対してPCIを施行した症例(2,610症例)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の2剤目の薬剤を、プラスグレル(添付文書およびガイドラインに従って10mgまたは5mg/日)12ヵ月間とする対照群(control group)と、プラスグレル1週間、その後クロピドグレル(75mg/日)1週間、さらにその後は血小板機能検査の結果に基づいてプラスグレルかクロピドグレルを選択する調節群(PFT-guided de-escalation group)に無作為に割り付け、12ヵ月間の心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、BARC分類class 2以上の出血を主要評価項目として比較して、調節群の非劣性を検討している多施設試験である。 血小板機能検査としては、Multiplate analyser(ロシュ・ダイアグノスティックス社、スイス)によって、抗血小板効果不十分を意味するhigh on­treatment platelet reactivity(HPR)であるかどうかを判定し、HPRであればクロピドグレルからプラスグレルへ戻すとしている。実際、調節群の39%の症例でHPRを認め、その99%の症例でプラスグレルに戻されている。また、プラスグレルの投与量については、FDAの添付文書では体重60kg未満では5mgを考慮することと記載されている。 結果は、群間にイベントの有意な差はなく、非劣性が証明されている。著者らは、統計的な差はないものの、調節群でイベントがやや少なく見えることも考慮して、血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を減弱させることは、通常のDAPTに対して代替的治療手段となりうると結論している。 確かに、理論的には、血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を調節することがイベントを減少させる可能性はあると思われるが、これまでの各種試験では、その有用性は証明されておらず、本試験でもその有用性は示されなかった。労力をかけて調節しても、決まった量を投与しても、アウトカムに影響しないのであれば、調節する意味はないという結論になる。 本試験で抗血小板療法を調節することの優位性が示されなかった1つの理由として、クロピドグレルへ変更(減弱)したままの症例が調節群の60%程度しかなかったことが挙げられているが、抗血小板効果が強過ぎるものも弱過ぎるものも、血小板機能検査に基づいて適切に調節するようなプロトコールであれば優位性が示されたのかもしれない。また、クロピドグレルの効果が常にプラスグレルよりも弱いわけでもなく、各薬剤の投与量が抗血小板効果に影響することは言うまでもない。各群で抗血小板効果が、実際どの程度に調節されていたかの比較も必要であろう。そもそも日本ではプラスグレルの標準投与量が日本人向けに設定されているため、本試験のデザインも結果も日本人には当てはまらない。「血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を調節すること」の有用性を証明して、各個人に最適な治療を届けるという夢は、まだ夢のままである。

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アリピプラゾール維持治療の52週RCT結果

 米国・Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らは、若年統合失調症外来患者の維持療法におけるドパミンD2受容体パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールの有効性、安全性、忍容性の評価を行った。Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry誌2017年9月号の報告。 多施設二重盲検プラセボ対照無作為化治療中止試験。13~17歳の統合失調症(DSM-IV-TR)と診断された患者を対象に、他の経口抗精神病薬(4~6週)から経口アリピプラゾール10~30mg/日(7~21週)で安定させ、経口アリピプラゾール継続群またはプラセボ切り替え群に2:1に無作為に割り付け、52週目までフォローアップを行った。主要エンドポイントは、無作為化後の精神症状の悪化、再燃までの期間とした。安全性、忍容性も併せて評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者201例のうち、無作為化に至った146例は、アリピプラゾール群98例、プラセボ群48例に無作為化された。・アリピプラゾール群は、プラセボ群と比較し、精神症状の悪化、再燃までの期間を有意に延長した(HR:0.46、95%CI:0.24~0.88、p=0.016)。・アリピプラゾール群では、プラセボ群と比較し、治療中の重篤な有害事象(3.1% vs. 12.5%、p=0.059)、重度の有害事象(2.0% vs. 10.4%、p=0.039)の発生率が低かった。・アリピプラゾール群は、プラセボ群と比較し、治療中の有害事象による中止率が低かった(20.4% vs. 39.6%、p=0.014、NNH=5.1)。・アリピプラゾール群は、プラセボ群と比較し、錐体外路症状、体重増加、傾眠の発生率が同等以下であり、血清プロラクチン上昇に関連する有害事象は報告されなかった。・タナーステージングにおいては、アリピプラゾール群の27.6%、プラセボ群の16.7%はバースラインから1、2段階進行した。 著者らは「アリピプラゾールは、若年統合失調症患者の維持治療に対し、安全かつ有効であることが認められた」としている。■関連記事統合失調症に対する短期治療、アリピプラゾール vs.リスペリドン高プロラクチン血症、アリピプラゾール切り替えと追加はどちらが有効か日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの効果は

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PCI後ACSの抗血小板薬、de-escalationしても非劣性/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた急性冠症候群(ACS)患者において、抗血小板治療を血小板機能検査(PFT)のガイド下でプラスグレル(商品名:エフィエント)からクロピドグレルへと早期に変更(de-escalation)しても、1年時点のネット臨床的ベネフィットは、プラスグレルを継続する標準治療に対して非劣性であることが示された。ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのDirk Sibbing氏らが、欧州の33施設で行った無作為化非盲検試験「TROPICAL-ACS試験」の結果、報告した。現行のガイドラインでは、PCIを受けたACS患者に対しては12ヵ月間、プラスグレルまたはチカグレロル(商品名:ブリリンタ)による抗血小板療法が推奨されている。これらの抗血小板薬はクロピドグレルよりも作用が強力で、速やかに最大の抗虚血ベネフィットをもたらすが、長期にわたる治療で出血イベントを過剰に引き起こすことが指摘されていた。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。プラスグレルからクロピドグレルに切り替える戦略の安全性と有効性を検証 研究グループは、急性期には強力な抗血小板薬を投与し、維持期にはクロピドグレルに変更するという段階的治療戦略が、現行の標準治療に替わりうるかを明らかにするため、PFTガイド下でプラスグレルからクロピドグレルに変更する抗血小板療法の安全性と有効性を検証した。 TROPICAL-ACS試験は研究者主導、評価者盲検化にて、ACSのバイオマーカーが陽性でPCIに成功し、12ヵ月間の2剤併用抗血小板療法(DAPT)が予定されていた患者を登録して行われた。登録患者は、プラスグレル投与を12ヵ月間受ける標準治療群(対照群)、またはステップダウンレジメン群(退院後、第1週はプラスグレル[10mgまたは5mg/日]を投与、第2週はクロピドグレル[75mg/日]を投与し、14日目からはPFTに基づきクロピドグレルかプラスグレルの投与による維持期治療を行う:ガイド下de-escalation群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、無作為化後1年時点のネット臨床的ベネフィット(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、BARC出血基準Grade2以上の出血の複合)で、intention to treat解析で評価した。非劣性マージンは30%であった。プラスグレルからクロピドグレルへの早期変更で複合リスク増大は認められなかった 2013年12月2日~2016年5月20日に、患者2,610例が無作為化を受けた(ガイド下de-escalation群1,304例、対照群1,306例)。 主要エンドポイントの発生は、ガイド下de-escalation群95例(7%)、対照群118例(9%)であった(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.62~1.06、非劣性のp=0.0004、優越性のp=0.12)。 早期にプラスグレルから作用が弱い抗血小板薬クロピドグレルに切り替えたにもかかわらず、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合リスクについて、ガイド下de-escalation群での増大は認められなかった(32例[3%] vs.対照群42例[3%]、非劣性のp=0.0115)。BARC出血基準Grade2以上の出血イベントは、ガイド下de-escalation群64例(5%)、対照群79例(6%)であった(HR:0.82、95%CI:0.59~1.13、p=0.23)。 結果を踏まえて著者は、「試験の結果は、PCIを受けたACS患者において、抗血小板治療の早期de-escalationが代替アプローチになりうることを示すものであった」とまとめている。

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心血管イベント抑制薬、肺がん発症も抑制/ESC2017

 IL-1βは炎症性アテローム性動脈硬化症の継続的な進行に関与することで知られているが、がんの微小環境においても、その増殖や転移に関与しているという仮説がある。そのような中、IL-1β阻害薬canakinumab(ACZ885)が、炎症を軽減することによって心血管疾患および肺がんリスクのリスクを低下させるという、最新の試験結果が2017年8月27日、ESC(欧州心臓病学会)2017で発表された。 これは、炎症性アテローム性動脈硬化症患者における、canakinumabの第III相試験CANTOS(Canakinumab Anti-inflammatory Thrombosis Outcomes Study)の探索的研究の結果である。CANTOSは、心筋梗塞の既往があり、がんの診断歴がなく、炎症マーカー高感度であるC反応性蛋白(hsCRP)が2mg/L以上のアテローム性動脈硬化症患者1万61例において、canakinumabによる心血管イベント抑制を評価した無作為比較試験。患者は、プラセボまたは3用量(50mg、150mg、300mg)のcanakinumabに無作為に割り付けられ、探索的研究では、がんの発症について追跡調査された。 3.7年の追跡期間中、canakinumabはプラセボと比較して、hsCRPの濃度を26~41%、IL-6の濃度を25~43%、用量依存的に減少した(いずれもp<0.0001)。全がん発症率はcanakinumab群とプラセボ群で有意差はなかった(p=0.31)。全がん死亡率は、canakinumab群でプラセボ群よりも有意に低かった(p=0.0007)。用量別にみると300mg群でプラセボ群に比べ有意であった(HR:0.49、95%CI:0.31~0.75、p=0.0009)。また、肺がん発症率は、プラセボ群に対し300mg群(HR:0.33、95%CI:0.18~0.59、p<0.0001)および150mg群(HR:0.61、95%CI:0.39~0.97、p=0.034)で有意な低下が見られた。肺がん死亡率は、プラセボ群に対し300mg群で有意に低下した(HR:0.23、95%CI:0.10~0.54、p=0.0002)。 ノバルティスは、canakinumabがIL-1βを標的とするがん免疫療法としての可能性を示したとし、規制当局と肺がんに対する仮説についての議論を行い、追加の第III相試験の実施を検討する予定。この結果は発表と同時にLancet誌にも掲載されている。■参考ECSプレスリリースノバルティス株式会社メディアリリースRidker, PM, et al.Lancet. 2017 Aug 25. [Epub ahead of print]CANTOS(Clinical Trials.gov)

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海外学会開催地オススメ情報「バルセロナ」

ケアネットでは、学会に参加しながらバルセロナ(スペイン)を十分にお楽しみいただくため、会員の方々から現地の名所、おすすめのレストラン情報などを募集しましたので、ここでご紹介します。※掲載されている情報は2017年8月時点のものです。ガウディ建築おすすめスポットとして会員の先生方から最も多く挙がったのは、やはりサグラダ・ファミリア。続いてグエル公園やカサ・ミラなど、ガウディ建築が圧倒的に人気でした。いずれもチケットは当日購入できますが、休暇シーズンは混雑が予想されるため、オンラインで事前購入しておくのがおすすめです。ちなみにガウディ以外にもバルセロナには個性的な近・現代建築が多く、学会会場となることの多いFira Gran Viaは伊藤豊雄氏が手掛けています。サグラダ・ファミリア Sagrada Familia1882年に着工され、以前は「完成まで数百年かかる」ともいわれていましたが、IT技術の進歩により、現在では2026年の完成を目指して建設中です。チケットは割引もあるオンライン購入がおすすめですが、予約は見学の時間帯が細かく設定されているのでご注意を。[アクセス] 地下鉄L2/L5線Sagrada Familia駅カサ・バトリョ Casa Batlloガウディが増改築した、実業家バトリョ氏の元邸宅。長らく非公開でしたが、2002年から一般公開されるようになりました。ステンドグラスに陽の光が差し込む日中も、ライトアップされる夜もどちらも魅力的です。チケットはオンライン購入でき、日時指定の有無や、優先入場可能なFAST PASSオプションなど、予定に応じて選べます。[アクセス] 地下鉄L2/L3/L4線Passeig de Gracia駅カサ・ミラ Casa Milaガウディによる最後から2番目の作品で、現在も住民が暮らす集合住宅。彫刻が施された屋上が特徴的です。チケットはオンライン購入でき、日時指定のないオープンチケットは「プレミアムチケット」です。カサ・バトリョ、カサ・ミラともグラシ通りにあり、旧市街のゴシック地区の近くです。ジョギングがてら行ってみるのもよいと思います。[アクセス] 地下鉄L3/L5線Diagonal駅グエル公園 Park Guell庭園式住宅地として設計されたもので、約15ヘクタールの広大な敷地は有料ゾーンと無料ゾーンに分けられています。主な見どころは有料ゾーンに集中しており、1時間程度で見て回ることができます。チケットは事前のオンライン購入がおすすめですが、予約時間から30分以上遅れると入場できなくなるので注意が必要です。最寄りの地下鉄駅からはいずれも徒歩15分ほどかかるため、タクシーを利用してもいいかもしれません。[アクセス] 地下鉄L3線Vallcarca駅あるいはLesseps駅名所サン・パウ病院 Hospital de la Santa Creu i Sant Pauガウディの師であり、ライバルともいわれる建築家、ルイス・ドメネク・イ・モンタネールの代表作。「世界一美しい病院」ともいわれ、2009年までは実際に使われていました。世界遺産に登録され、(設備等はすでに撤去・改修されていますが)手術棟や入院棟などを見て回ることができます。チケットはオンライン購入も可能です。サグラダ・ファミリアから徒歩10分ほどの距離なので、併せて見学するのはいかがでしょうか。[アクセス] 地下鉄L5線Sant Pau Dos de Maig駅カンプ・ノウ Camp Nouメッシやイニエスタを擁するFCバルセロナのホームスタジアム。試合のチケットは公式サイトで購入できます。観戦以外にも、「Camp Nou Experience」というスタジアムツアーに申し込めば、ミュージアムや更衣室などのバックヤードを見学でき、欧州最大規模のスタジアムの雰囲気を味わえます。[アクセス] 地下鉄L5線Collblanc駅あるいはL3線Palau Reial駅考える牛 El toro assegut & キリンのマハ La girafa coquetaロダンの「考える人」とゴヤの「裸のマハ」を牛&キリンで表現。カサ・ミラやカサ・バトリョの近く、カフェや土産物店が立ち並ぶカタルーニャ通りを散策していると遭遇できる、クスっと笑える彫刻です。[アクセス] 地下鉄L3/L5線Diagonal駅モンセラット Montserratバルセロナ郊外では、Espanya駅からカタルーニャ鉄道(FGC)で1時間ほどの、モンセラットが人気でした。登山鉄道やロープウエーで巡る、円筒状の不思議な形をした岩が連なる景色は、一見の価値ありです。[アクセス] カタルーニャ鉄道Aeri de Montserrat駅あるいはMonistrol de Montserrat駅レストランバルセロナはどこに行っても美味しい食事が味わえます。地元の料理であっても日本人の舌に合った味付けです。どのお店でも突き出しにオリーブのオイル漬けがでてきますが、これが癖になるほど美味です。他にもパンにトマトを擦り付けたパンコントマテ、シシトウのような野菜を調理したピミエントデパドロン、パエリアなどどれもおすすめですが、生ハムはお忘れなく。手ごろな価格で日本では考えられないくらいの量がでてきます。ワインと一緒にいかがでしょうか。ボケリア市場(サン・ジョセップ市場)日曜・祝日を除く毎日、朝8時から開いているバルセロナで一番大きな市場。ランブラス通り沿いにあります。フレッシュジュースやカットフルーツ、生ハムやシーフードのフライなどを食べ歩きながら散策できます(日本では高価なカラスミもリーズナブルなお値段で手に入ります)。また、市場内にはレストラン・バルも何軒かあり、小皿料理(タパス)やワインも楽しめます。なかでも老舗のバルPintxo barはいつもにぎわっています。小さなお店ですがさまざまなメニューがあり、地元のビジネスマンが必ず仕事前にテイクアウトするのが写真のパン。クロワッサンと言っていたかと思いますが、この写真を見せればわかってくれると思います。[アクセス] 地下鉄L3線Liceu駅Cal pep(地中海料理)行列必至、大人気のレストラン・バル。スペイン風オムレツのトルティーヤ、マグロのタルタルなどの魚介料理が評判のお店。開店時間前(ディナーは19時半~)に並んでおくと、比較的待ち時間少なく入れます。とくにマテ貝はおすすめです。メニューに載っていたらお試しください。[アクセス] 地下鉄L4線JaumeI駅Rocambolesc(アイスクリーム)ミシュランガイド3つ星の常連レストラン「El Celler de Can Roca」のパティシエがオープンしたアイスクリームショップ。バルセロナ店はスペインで4軒目の店舗です。ブリオッシュ生地にアイスクリームを挟んで焼いた「パネット」がおすすめ。[アクセス] 地下鉄L3線Liceu駅Koy Shunka(日本食)日本人シェフ松久秀樹氏が経営する和食レストラン。2013年にミシュランガイド1つ星を獲得しています。系列店に寿司Shunkaなどもあります。いずれも旧市街大聖堂のあるカタルーニャ広場からすぐのところにお店を構えています。[アクセス] 地下鉄L4線JaumeI駅あるいはL1/L4線Urquinaona駅RAMEN-YA HIRO(ラーメン)日本人オーナーによるバルセロナ初のラーメン店。醤油・味噌味のほか、海鮮ラーメンや餃子もあります。ラーメンが恋しくなったら、ぜひどうぞ。[アクセス] 地下鉄L4/L5線Verdaguer駅

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ESC 2017開催地、バルセロナのおすすめスポット

ケアネットでは、会員の先生方への事前アンケートでバルセロナの観光名所、レストランなどの情報をお寄せいただきましたので、ここにご紹介します。ESC 2017 注目の演題はこちらバルセロナ中心部から学会会場への移動学会会場のFira Gran Viaは、バルセロナ・エルプラット国際空港から地下鉄(L9 Sud)で約20分(4.50ユーロ)、タクシーを利用する場合は15分ほど(20ユーロ前後)のところにあります。最寄りはFira駅(会場直結)あるいはEuropa Fira駅(徒歩5分)。市内中心部のCatalunya駅から会場へ向かう場合、地下鉄(L1)でEspanya駅へ、Espanya駅で地下鉄(L8)に乗り換えて、Europa Fira駅で下車します(所要時間約20分)。中心部からタクシーを利用する場合は15~20分ほどです。ただし、朝夕のラッシュアワーは、かなり渋滞しますので、時間に余裕をもってお出かけください。ガウディ建築おすすめスポットとして会員の先生方から最も多く挙がったのは、やはりサグラダ・ファミリア。続いてグエル公園やカサ・ミラなど、ガウディ建築が圧倒的に人気でした。いずれもチケットは当日購入できますが、8月は休暇シーズンで混雑が予想されるため、オンラインで事前購入しておくのがおすすめです。ちなみにガウディ以外にもバルセロナには個性的な近・現代建築が多く、学会会場のFira Gran Viaは伊藤豊雄氏が手掛けています。サグラダ・ファミリア Sagrada Familia1882年に着工され、以前は「完成まで数百年かかる」ともいわれていましたが、IT技術の進歩により、現在では2026年の完成を目指して建設中です。チケットは割引もあるオンライン購入がおすすめですが、予約は見学の時間帯が細かく設定されているのでご注意を。[アクセス] 地下鉄L2/L5線Sagrada Familia駅カサ・バトリョ Casa Batlloガウディが増改築した、実業家バトリョ氏の元邸宅。長らく非公開でしたが、2002年から一般公開されるようになりました。ステンドグラスに陽の光が差し込む日中も、ライトアップされる夜もどちらも魅力的です。チケットはオンライン購入でき、日時指定の有無や、優先入場可能なFAST PASSオプションなど、予定に応じて選べます。[アクセス] 地下鉄L2/L3/L4線Passeig de Gracia駅カサ・ミラ Casa Milaガウディによる最後から2番目の作品で、現在も住民が暮らす集合住宅。彫刻が施された屋上が特徴的です。チケットはオンライン購入でき、日時指定のないオープンチケットは「プレミアムチケット」です。カサ・バトリョ、カサ・ミラともグラシ通りにあり、旧市街のゴシック地区の近くです。ジョギングがてら行ってみるのもよいと思います。[アクセス] 地下鉄L3/L5線Diagonal駅グエル公園 Park Guell庭園式住宅地として設計されたもので、約15ヘクタールの広大な敷地は有料ゾーンと無料ゾーンに分けられています。主な見どころは有料ゾーンに集中しており、1時間程度で見て回ることができます。チケットは事前のオンライン購入がおすすめですが、予約時間から30分以上遅れると入場できなくなるので注意が必要です。最寄りの地下鉄駅からはいずれも徒歩15分ほどかかるため、タクシーを利用してもいいかもしれません。[アクセス] 地下鉄L3線Vallcarca駅あるいはLesseps駅その他のおすすめ名所サン・パウ病院 Hospital de la Santa Creu i Sant Pauガウディの師であり、ライバルともいわれる建築家、ルイス・ドメネク・イ・モンタネールの代表作。「世界一美しい病院」ともいわれ、2009年までは実際に使われていました。世界遺産に登録され、(設備等はすでに撤去・改修されていますが)手術棟や入院棟などを見て回ることができます。チケットはオンライン購入も可能です。サグラダ・ファミリアから徒歩10分ほどの距離なので、併せて見学するのはいかがでしょうか。[アクセス] 地下鉄L5線Sant Pau Dos de Maig駅カンプ・ノウ Camp Nouメッシやイニエスタを擁するFCバルセロナのホームスタジアム。試合のチケットは公式サイトで購入できます。観戦以外にも、「Camp Nou Experience」というスタジアムツアーに申し込めば、ミュージアムや更衣室などのバックヤードを見学でき、欧州最大規模のスタジアムの雰囲気を味わえます。学会開催日の8月26日にDeportivo Alavesとの試合がありますが、残念ながらこの日はカンプ・ノウではなくアウェーのようです。[アクセス] 地下鉄L5線Collblanc駅あるいはL3線Palau Reial駅考える牛 El toro assegut & キリンのマハ La girafa coquetaロダンの「考える人」とゴヤの「裸のマハ」を牛&キリンで表現。カサ・ミラやカサ・バトリョの近く、カフェや土産物店が立ち並ぶカタルーニャ通りを散策していると遭遇できる、クスっと笑える彫刻です。[アクセス] 地下鉄L3/L5線Diagonal駅モンセラット Montserratバルセロナ郊外では、Espanya駅からカタルーニャ鉄道(FGC)で1時間ほどの、モンセラットが人気でした。登山鉄道やロープウエーで巡る、円筒状の不思議な形をした岩が連なる景色は、一見の価値ありです。[アクセス] カタルーニャ鉄道Aeri de Montserrat駅あるいはMonistrol de Montserrat駅市場・レストランバルセロナはどこに行っても美味しい食事が味わえます。地元の料理であっても日本人の舌に合った味付けです。どのお店でも突き出しにオリーブのオイル漬けがでてきますが、これが癖になるほど美味です。他にもパンにトマトを擦り付けたパンコントマテ、シシトウのような野菜を調理したピミエントデパドロン、パエリアなどどれもおすすめですが、生ハムはお忘れなく。手ごろな価格で日本では考えられないくらいの量がでてきます。ワインと一緒にいかがでしょうか。ボケリア市場(サン・ジョセップ市場)日曜・祝日を除く毎日、朝8時から開いているバルセロナで一番大きな市場。ランブラス通り沿いにあります。フレッシュジュースやカットフルーツ、生ハムやシーフードのフライなどを食べ歩きながら散策できます(日本では高価なカラスミもリーズナブルなお値段で手に入ります)。また、市場内にはレストラン・バルも何軒かあり、小皿料理(タパス)やワインも楽しめます。なかでも老舗のバルPintxo barはいつもにぎわっています。小さなお店ですがさまざまなメニューがあり、地元のビジネスマンが必ず仕事前にテイクアウトするのが写真のパン。クロワッサンと言っていたかと思いますが、この写真を見せればわかってくれると思います。[アクセス] 地下鉄L3線Liceu駅Cal pep(地中海料理)行列必至、大人気のレストラン・バル。スペイン風オムレツのトルティーヤ、マグロのタルタルなどの魚介料理が評判のお店。開店時間前(ディナーは19時半~)に並んでおくと、比較的待ち時間少なく入れます。とくにマテ貝はおすすめです。メニューに載っていたらお試しください。[アクセス] 地下鉄L4線JaumeI駅Rocambolesc(アイスクリーム)ミシュランガイド3つ星の常連レストラン「El Celler de Can Roca」のパティシエがオープンしたアイスクリームショップ。バルセロナ店はスペインで4軒目の店舗です。ブリオッシュ生地にアイスクリームを挟んで焼いた「パネット」がおすすめ。[アクセス] 地下鉄L3線Liceu駅Koy Shunka(日本食)日本人シェフ松久秀樹氏が経営する和食レストラン。2013年にミシュランガイド1つ星を獲得しています。系列店に寿司Shunkaなどもあります。いずれも旧市街大聖堂のあるカタルーニャ広場からすぐのところにお店を構えています。学会期間中はお休みかもしれませんので、お電話で確認の上いらしてください。[アクセス] 地下鉄L4線JaumeI駅あるいはL1/L4線Urquinaona駅RAMEN-YA HIRO(ラーメン)日本人オーナーによるバルセロナ初のラーメン店。醤油・味噌味のほか、海鮮ラーメンや餃子もあります。ラーメンが恋しくなったら、ぜひどうぞ。[アクセス] 地下鉄L4/L5線Verdaguer駅

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ESC 2017 注目の演題

2017年8月26~30日、スペイン・バルセロナでESC(欧州心臓病学会)2017が開催されます。ケアネットでは、聴講スケジュールを立てる際の参考にしていただけるよう注目演題に関するアンケートを実施しましたので、その結果を学会開催前にご紹介します。ESC2017開催地、バルセロナのおすすめスポットはこちら※演題名および発表順は、8月10日時点でESC 2017ウェブサイトに掲載されていたものです。当日までに発表順などが変更となる可能性がございますのでご注意ください。Late-Breaking Science in PCI 1Chairpersons: Michael HAUDE, William WIJNS8月26日(土)13:30 - 15:00 Dali - The Hub1.Comparison of titanium-nitride-oxide-coated versus everolimus-eluting stents in acute coronary syndrome2.A Multicenter, Randomized-Controlled, Blinded Trial of Drug-Eluting vs. Bare Metal Stents in De Novo Saphenous Vein Graft Lesions3.Early strut coverage in patients receiving new-generation drug-eluting stents and its implications for dual antiplatelet therapy: a randomized controlled trial4.Coronary Artery Bypass Grafting Versus Percutaneous Coronary Intervention and Survival in Patients with Type 1 Diabetes Mellitus5.Five-year Outcome of a Trial Comparing Second Generation Drug-eluting Stents Using Either Biodegradable Polymer or Durable Polymer6.Clinical outcomes of State-of-the-Art percutaneous coronary revascularization in patients with de novo three vessel disease: Results of the SYNTAX II trial7.BIOFLOW-V: A Prospective Randomized Multicenter Study to Assess the SaFety and Effectiveness of the Orsiro SiroLimus Eluting Coronary Stent System in the Treatment Of Subjects With up to Three De Novo or Restenotic Coronary Artery LesionsQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するHot Line: Late-Breaking Clinical Trials 1Chairpersons: Jeroen BAX, Barbara CASADEI8月27日(日)11:00 - 12:35 Barcelona - Main Auditorium1.Routine versus aggressive upstream rhythm control for prevention of early atrial fibrillation in heart failure, the RACE 3 study2.Catheter ablation versus standard conventional treatment in patients with left ventricular dysfunction and atrial fibrillation: the CASTLE-AF trial3.Cardiovascular OutcoMes for People using Anticoagulation StrategieS (COMPASS) trial: Primary Results4.Cardiovascular OutcoMes for People using Anticoagulation StrategieS (COMPASS) trial: Results in Patients with Coronary Artery Disease and in patients with Peripheral Artery Disease5. CANTOS - The Canakinumab Anti-Inflammatory Thrombosis Outcomes StudyQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するLate-Breaking Science in PCI 2Chairpersons: Lene HOLMVANG , Patrick SERRUYS8月27日(日)14:00 - 15:30  Spotlight Stage1.The Bivalirudin versus Heparin in non-ST and ST-segment elevation myocardial infarction in patients on modern antiplatelet therapy in SWEDEHEART2.Efficacy and Safety of a Pharmaco-Invasive Strategy versus Primary Angioplasty in ST-Elevation Myocardial Infarction: The EARLY-MYO Trial3.Testing Responsiveness to Platelet Inhibition on Chronic Antiplatelet Treatment for Acute Coronary Syndromes - TROPICAL-ACS – Trial4.RE-DUAL PCI : Dual Antithrombotic Therapy with Dabigatran After Percutaneous Coronary Intervention in Patients with Atrial Fibrillation5.Have we reached the bottom line in mortality after Acute Myocardial Infarction? Changes over 20 years in patient characteristics, management, and 6-month outcomes in the FAST-MI programme: 1995-20156.Improvement in FFR predicts 2 years outcome after PCI. A FAME 2 Sub-AnalysisQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するLate-Breaking Science in Heart FailureChairpersons: Frank RUSCHITZKA, Milton PACKER8月28日(月)08:30 - 10:00 Warsaw - Village 91.Heart failure and death in new users of SGLT2 inhibitors vs other glucose-lowering drugs - consistent risk reduction across patient groups in 4 countries and >270,000 patients: The CVD-REAL Study2.Efficacy of beta-blockers in heart failure according to left ventricular ejection fraction: An individual patient level analysis of double-blind randomised trials3.Marked variation in the efficacy of beta-blockers across cardiovascular health: A Global systematic assessment of mortality, myocardial infarction and stroke4.Heart Failure-Wii study5.Does the risk for heart failure (HF) modulate the effectiveness of empagliflozin on HF hospitalisation or CV death in patients with type 2 diabetes without HF? Insights from EMPA-REG OUTCOME6.Predicting right heart failure after implantation of continuous flow left ventricular assist devices (EUROMACS-RHF) score: analysis of the EUROMACS dataQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するHot Line: Late-Breaking Clinical Trials 2Chairpersons: Stephan ACHENBACH , Sarah Catherine CLARKE8月28日(月)11:00-12:48 Barcelona - Main Auditorium1.SPYRAL HTN OFF-MED Study2.Apixaban vs conventional therapy in anticoagulation-naive patients with atrial fibrillation undergoing cardioversion: The EMANATE Trial3.An international multicenter clustered randomized trial to IMProve treatment with oral AntiCoagulanTs in Atrial Fibrilation4.The Viborg Vascular randomised screening trial5.Impact of a single or two dose regimen of inclisiran, a novel siRNA inhibitor to PCSK9 on time averaged reductions in LDL-C over 1 year. ORION 16.DETermination of the role of OXygen in suspected Acute Myocardial InfarctionQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するHot Line: Late-Breaking Clinical Trials 3Chairpersons: Frans VAN DE WERF , Evgeny SHLYAKHTO8月28日(月)14:00 - 15:30 Barcelona - Main Auditorium1.A Naturally Randomized Trial Comparing the Effect of Genetic Variants that Mimic CETP Inhibitors and Statins on the Risk of Cardiovascular Disease2.Effect of Sildenafil on Clinical Outcomes in Patients with Corrected Valvular Heart Disease and Residual Pulmonary Hypertension3.The PRECISION-ABPM (Prospective Randomized Evaluation of Celecoxib Integrated Safety versus Ibuprofen or Naproxen Ambulatory Blood Pressure Measurement) - Trial4.Protection of the brain on occasion of planned open heart surgery by surgical closure of the left atrial appendage. A randomized study5.Airway management during cardiopulmonary resuscitation: Tracheal intubation versus bag valve mask ventilationQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するHot Line: Late-Breaking Clinical Trials 4Chairpersons: Michel KOMAJDA, Hector BUENO8月29日(火)08:30 - 10:00 Barcelona - Main Auditorium1.Clinical effects of anacetrapib in people with established vascular disease: Results of the Randomized EValuation of the Effects of Anacetrapib through Lipid-modification (HPS3/TIMI55-REVEAL) trial2.Does intensive treat-to-target LDL-C lowering therapy using statin in patients of diabetic retinopathy reduce cardiovascular events?: the EMPATHY study3.Exercise training in diastolic heart failure (Ex-DHF): a multicenter, prospective, randomized, controlled, parallel group trial4.Catheter Ablation compared with optimized Pharmacological Therapy for Atrial Fibrillation, a randomized multicentre study of quality of life and implantable cardiac monitoring after 12 month follow-up5.Assessment of REmote HEArt Rhythm Sampling using the AliveCor heart monitor to scrEen for Atrial Fibrillation (The REHEARSE-AF study)Q. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大する

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母親の体格がADHD、自閉症リスクと関連か

 ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)のリスクは、妊娠前の母親の肥満などの環境的要因の影響を受ける可能性がある。これらの関連を調査したこれまでの研究では、異なる見解が得られている。デンマーク・オーフス大学病院のChristina Hebsgaard Andersen氏らは、これらの関連をさらに調査するためADHD、ASDおよびADHDとASDが併存した小児における大規模出生コホートを行った。European child & adolescent psychiatry誌オンライン版2017年7月15日号の報告。 対象は、デンマーク国民出生コホート(DNBC:Danish National Birth Cohort)に参加している母子8万1,892人。妊娠前の体重および身長に関する情報は、妊娠16週目に収集し、BMIに基づき分類し、分析した。ADHD、ASDまたは併存の臨床診断を受けた小児は、デンマークヘルスレジストリにおいて平均年齢13.3歳で確認された。ハザード比(HR)は、時間事象分析(time-to-event analysis)を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・正常体重の母親と比較し、過体重(HR:1.28、95%CI:1.15~1.48)、肥満(HR:1.47、95%CI:1.26~1.71)、重度の肥満(HR:1.95、95%CI:1.58~2.40)の母親は、ADHD児を有するリスクが有意に増加した。・ADHDとASDが併存した患者でも、同様なパターンが認められた。・ASDに関しては、低体重(HR:1.30、95%CI:1.01~1.69)および肥満(HR:1.39、95%CI:1.11~1.75)の母親で、リスク増加が認められた。・サブグループ解析では、ADHDにおける関連は、主に過活動グループに起因する可能性があることが明らかとなった。 著者らは「妊娠前の母親の肥満は、小児ADHDの危険因子である。また、母親の肥満および低体重は、ASDリスク増加と関連している可能性がある」としている。■関連記事妊娠中の抗うつ薬使用、自閉スペクトラム症への影響は自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較小児ADHDの合併症有病率と治療成績

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第42回

第42回:新たな肺がんレジメン、カルボ・ペム・ペムとは?キーワードペムブロリズマブMSI-H固形がん肺がんNSCLC1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法の追跡結果/ASCO2017Langer CJ,et al.Carboplatin and pemetrexed with or without pembrolizumab for advanced, non-squamous non-small-cell lung cancer: a randomised, phase 2 cohort of the open-label KEYNOTE-021 study.Lancet Oncol.2016;17:1497-1508.MERCK社 KEYTRUDA prescribing information

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【JSMO2017見どころ】AYA世代のがん治療

 2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。 このうち、「AYA世代のがん治療」については嶋田 明氏(岡山大学病院 小児血液・腫瘍科 准教授)が登壇した。以下、嶋田氏のコメントと注目演題を紹介する。【嶋田 明氏コメント】 Adolescent and Young Adult(AYA)世代とは、15~30歳前後(欧米では15~39歳の定義もある)の高校生・大学生・若年成人を含み、AYA世代のがん治療は、成人がん、小児がんとは異なった問題点が存在する。たとえば、小児に多いがん(白血病、脳腫瘍、骨軟部腫瘍など)と成人に多いがん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんなど)が混在してみられ、国内では毎年5,000人ときわめて稀ではあるが、就学、就職、結婚、出産などのライフイベントが集中する時期に起こるため、社会的問題も多くみられる。また5年生存率が、ほかの世代に比べて低く、最適で効果の高い治療方針は十分に確立しているといえない状況である。 小児慢性特定疾患などの公的な補助制度は最長20歳までであり、40歳以上が給付対象となる介護保険からも外れており、社会的支援が乏しいこと、診療科が小児科、血液内科、脳神経外科、乳腺内分泌科、整形外科、放射線科など多科にまたがり、患者さんも多病院、多病棟に分散している。国内では、AYA病棟の取り組みはまだ数えるほどしかない。こうした流れを踏まえて、国の第3期がん対策推進基本計画に小児・AYA世代のがん、希少がん対策が盛り込まれた。 そこで今年度のJSMOでは、主に高校生・大学生のがん患者について取り上げることとし、2つのシンポジウムを企画した。シンポジウム8においては、「AYA 世代がんの治療の現状と展望」と題して6名の演者に各種がんの治療の現況を、シンポジウム18においては、「AYA 世代がん患者の治療・療養支援を考える」と題して、同じく6名の演者にAYA 世代のがん診療の現状と課題、療養環境、教育問題、就労問題など、この世代のがん患者が抱える種々の問題点について発表いただく予定である。【注目演題】シンポジウム 8「AYA 世代がんの治療の現状と展望」日時:7月27日(木)9:00~11:00 場所:Room 13(神戸国際会議場5F 501会議室)シンポジウム 18「AYA 世代がん患者の治療・療養支援を考える」日時:7月28日(金)8:20~10:20 場所:Room 14(神戸国際会議場5F 502会議室)【第15回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2017年7月27日(木)~29日(土)■会場:神戸コンベンションセンター、Junko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)■会長:谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科学講座)■テーマ:最適のがん医療— いつでも、何処でも、誰にでも —第15回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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日本脳炎に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。今回は日本脳炎を取り上げたいと思います。「日本脳炎なんて昔の病気でしょうがよ。今さら取り上げる意味なんてないでしょうがよ」と思われた方…それは間違いですッ! 日本脳炎は再興感染症として今も日本、そして世界における脅威として我々の前に立ちはだかっているのですッ!「日本脳炎」とは何だ?なぜ「日本脳炎」は日本という名前が付いているのかッ? まさか日本だけで流行している感染症だと言うのかッ? いえ、そうではなく、これは最初にウイルスが分離されたのが日本だからです。1935年に、脳炎で亡くなった方から日本脳炎ウイルスが分離されています。そして、その後1950年代に日本国内における調査の結果、渡り鳥、コガタアカイエカ、ブタ、そして偶然宿主であるヒトという日本脳炎ウイルスの生活環が明らかとなったのですッ! まず、媒介蚊であるコガタアカイエカについてですが、特徴としては田舎の田んぼ、沼地、水たまりに産卵し、おもに夕方~夜間に刺咬する蚊です。都会に多く、日中に刺咬するヒトスジシマカ(デング熱、ジカウイルス感染症などを媒介)とはこの点で異なります。活動範囲(飛行距離)は、8km程度移動したという報告もありますが、おおむね2km前後とされています。図1は、私が「いらすとや」を駆使して作った「日本脳炎ウイルスの生活環」です。画像を拡大する日本脳炎ウイルスは、おもにブタや渉禽(ツル、サギなど)などの動物をリザーバーとしてサイクルしています。とくに豚舎などがある田舎では、ブタでウイルスが増幅されサイクルしており、人への感染リスクが高いのですッ! ブタ注意ッ! 人は偶然宿主かつ最終宿主であり、人から蚊を介して人に感染することはありません。ですので、デング熱などと異なり、患者が蚊に血を吸われることで流行が広がることはないというわけですね。日本脳炎の流行地域は日本だけではないッ!日本脳炎は日本で最初に分離されたウイルスですが、日本以外でも流行しています。それどころか、東南アジアや南アジアのほうが日本よりも断然多い感染者を出しているのです(図2)。画像を拡大するしたがって、これらの地域への渡航者のうち、長期間渡航する方、田園地帯にもいく予定の方、予定がまったく決まっていない方、などは日本脳炎ワクチンの接種が推奨されています。さて、日本での流行状況についてですが、近年は年間10例未満の報告に留まっております。第2次世界大戦後、日本国内では年間5,000例を超える症例が報告されていましたが、1954年からの日本脳炎ワクチン勧奨接種開始、1976年の平常時臨時接種、1989年の北京株導入などにより1990年代前半には報告数が年間10例未満にまで減っています。1994年には定期接種のワクチンにもなり、国内における日本脳炎対策は順調に進んでいました…しかしッ! 2005年、マウス脳由来の日本脳炎ワクチンとADEM(急性散在性脳脊髄炎)との因果関係が否定できないということで、積極的勧奨の差し控えの通知が出されました。「積極的勧奨の差し控え」と言われても何のことかよくわかりませんが、つまり「絶対打ったほうが良いってわけじゃありません」ということです。これでもわかりにくいですね。まあとにかく、これによって日本脳炎ワクチンの接種率は2005年以降、激下がりしています。当然、日本脳炎に対する免疫を持たない子供たちも増えたことになります。2010年には新しいVero細胞由来ワクチンによる積極的勧奨が再開され、接種率は改善しています。しかし、2005~10年までの間に本来接種すべきであった子供たちが接種できていないという問題があるため、この対策として厚生労働省は平成7年4月2日~平成19年4月1日生まれの人は、20歳未満までの間いつでもワクチン接種をキャッチアップできるという措置を取っています(詳細はこちらをご覧ください)。この「積極的勧奨の差し控え」によって、日本脳炎の症例が増加することが懸念されましたが、幸いなことに報告数の増加は見られず、現在も年間10例未満の報告数となっています。それでは日本脳炎ウイルスは国内からほとんど消えてしまっているのかッ? 日本の日本脳炎ワクチン接種スケジュールはこのままでいいのかッ!? そして、まさかのアフリカで日本脳炎ッ!?次回はその辺のことについてお話したいと思います。1)BUESCHER EL, et al. Am J Trop Med Hyg. 1959;8:719-722.

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小児ADHDの合併症有病率と治療成績

 ADHDの合併症は広く研究されているが、いくつもの問題点が解決していない。イタリア・IRCCS-Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario NegriのLaura Reale氏らは、新規に診断された未治療の小児の臨床サンプル(ADHDの有無にかかわらず)における併存精神疾患を調査し、合併症のタイプに基づいて治療有効性を比較するため、多施設共同研究を行った。European child & adolescent psychiatry誌オンライン版2017年5月19日号の報告。 2011~16年にADHDセンター18施設より登録されたADHDレジストリデータベースを用い、特定した患者の医療記録を分析した。 主な結果は以下のとおり。・ADHDの診断基準を満たした患者は2,861例中1,919例(67%)であった。そのうちADHD単独の患者は650例(34%)、併存精神疾患を有する患者は1,269例(66%)であった(学習障害:56%、睡眠障害:23%、反抗挑発症[ODD]:20%、不安障害:12%)。・複合型で重度の障害(CGI-S:5以上)を有するADHD患者は、併存疾患を呈しやすかった。・724例中382例(53%)は、治療1年後改善が認められた。・合併症を伴うADHDは、併用療法またはメチルフェニデート単独で治療することにより、より大きな改善を示した。・具体的には、併用療法は、学習障害を伴うADHD(ES:0.66)およびODDを伴うADHD(ES:0.98)に対し有意な優位性を示し、睡眠障害または不安障害を伴うADHDでは優位性が低かった。・トレーニング介入のみでは、ADHDおよび学習障害に対し中程度の有効性しか得られなかった(ES:0.50)。 著者らは「本研究は、イタリアにおけるADHDと併存精神疾患との関連を検討した最初の研究であり、複数の臨床現場において、ADHDが複雑な疾患であることが確認された。適正かつ均一なADHDの管理を幅広く行うためには、診断や治療、サービス制度が非常に重要である」としている。■関連記事自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのかADHDに対する集中治療プログラムの効果:久留米大

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