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アジアにおけるCOVID-19うつ病とそのリスク因子~メタ解析

 アジア太平洋地域におけるCOVID-19パンデミックに伴ううつ病の有病率やそのリスク因子について、マレーシア・マラヤ大学のVimala Balakrishnan氏らは、文献報告のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年11月18日号の報告。 2021年1月~3月30日までの文献をPubMed、Google Scholar、Scopusより検索した。PRISMAガイドラインに従ってシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。スクリーニングの結果、82文献(20万1,953人)が抽出された。 主な結果は以下のとおり。・プールされたうつ病の有病率は34%(95%信頼区間[CI]:29~38%、I2=99.7%)であった。コホート、タイムライン、地域間での有意な差は認められなかった(p>0.05)。・主なリスク因子は、COVID-19感染に対する恐怖(13%)、女性(12%)、基礎疾患の悪化(8.3%)であり、グループ間での差は認められなかった。・COVID-19感染に対する恐怖は、一般集団(研究数:14)および医療従事者(研究数:8)において最も報告されたリスク因子であった。・リスク因子として、医療従事者では女性(研究数:7)、作業負荷の増加(研究数:7)が報告されたのに対し、学生では教育の混乱(研究数:7)が報告された。・なお、今回のレビューは、3つの電子データべースからの論文に限定されている。 著者らは「COVID-19パンデミックは、アジア太平洋地域の一般集団、医療従事者、学生のうつ病発症に影響を及ぼしていることが示唆された。この問題に対処するためにも、関係当局による迅速な対応や介入が求められる」としている。

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第92回 英国でもオミクロン株入院リスクが低いと判明

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株感染者の入院リスクはデルタ株感染者に比べて20~25%低いとの英国データ解析結果(Report 50)を同国の大学Imperial College Londonが先週22日水曜日に発表しました1,2)。その入院の定義はPCR検査でのSARS-CoV-2感染(COVID-19)が判明してから14日以内の事故/救急科(Accident and Emergency department;A&E)受診を含む来院記録があることです1)。オミクロン株感染者の1泊以上の入院リスクはより小さく、デルタ株感染者を40~45%下回りました。今月中旬16日の報告(Report 49)の段階ではオミクロン株感染者の入院全般(hospitalisation attendance)や症状のデルタ株との差は認められていませんでした3)。オミクロン株感染者の入院リスクがデルタ株感染者に比べてより低いことは英国政府の保健安全保障庁(UKHSA)の解析でも示されています4)。UKHSAの報告によると今月20日までのイングランドのオミクロン株感染者数は5万6,066人で、そのうち132人が病院で治療(admitted or transferred from emergency department)を受けました。14人がオミクロン株感染判明から28日以内に死亡しました。UKHSAの報告でのオミクロン株感染者の入院リスクはImperial College Londonの解析結果よりどうやらさらに小さく、デルタ株感染者より62%(95%信頼区間では50~70%)低いことが示されました。オミクロン株感染者は救急も含む入院(emergency department attendance or admission)にも至りにくく、デルタ株感染者より38%(95%信頼区間では31~45%)少ないという結果も得られています。オミクロン株感染者の入院リスクが他の変異株感染者に比べて低いらしいことは好ましい兆候だがひとまずの結果であって更なる検討が必要だとUKHSAの長Jenny Harries氏は言っています5)。オミクロン株感染がどうやら軽症らしいのはワクチン接種の普及または先立つ感染で備わった免疫のおかげかもしれません。またはウイルス自体の変化が軽症で済むようにさせている可能性もあります6)。参考1)Report 50 - Hospitalisation risk for Omicron cases in England / Imperial College London2)Some reduction in hospitalisation for Omicron v Delta in England: early analysis / Imperial College London3)Report 49 - Growth, population distribution and immune escape of Omicron in England. MRC Centre for Global Infectious Disease Analysis / Imperial College London4)SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England / UKHSA5)UKHSA publishes updated Omicron hospitalisation and vaccine efficacy analysis / UK Health Security Agency (UKHSA) 6)Omicron cases at much lower risk of hospital admission, UK says / Reuters

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第91回 オミクロン株がより広まりやすいことに寄与しうる特徴

治療で除去されたヒト組織を使った香港大学の研究の結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株は去年2020年のSARS-CoV-2元祖やデルタ株に比べておよそ70倍も早く気管支で増えることができました1)。オミクロン株が人から人により広まりやすいゆえんかもしれません。一方、肺でのオミクロン株の複製はよりゆっくりでSARS-CoV-2元祖の10分の1足らずでした。もしオミクロン株感染がより軽症であるとするなら肺で増え難いことがその一因かもしれません。スパイクタンパク質に無数の変異を有するオミクロン株の感染しやすさが他のSARS-CoV-2を上回ることにはヒト細胞のACE2との相性の良さも寄与しているようです。SARS-CoV-2代理ウイルス(pseudovirus)を使った実験の結果、SARS-CoV-2がヒト細胞に感染するときの足がかりとなる細胞表面受容体であるACE2へのオミクロン株スパイクタンパク質の結合はデルタ株やSARS-CoV-2元祖のどちらにも勝りました2,3)。著者によるとオミクロン株代理ウイルスの感染しやすさは調べた他のSARS-CoV-2変異株のどれをも上回りました。重症度はどうかというと、南アフリカ最大の保険会社の先週14日の発表を含む同国からの一連の報告ではオミクロン株感染入院率がデルタ株に比べて一貫して低く、オミクロン株感染は比較的軽症らしいと示唆されています4)。その保険会社Discovery Healthの解析ではオミクロン株感染が同国で急増した先月11月中旬(15日)から今月12月初旬(7日)のおよそ8万件近くを含む21万件超のSARS-CoV-2感染症(COVID-19)検査情報が扱われ、オミクロン株感染者の入院率は同国での昨年2020年中頃のD614G変異株流行第一波に比べて29%低いことが示されました5,6)。それに、入院した成人がより高度な治療や集中治療室(ICU)に至る傾向も今のところ低く5)、入院後の経過も比較的良好なようです。とはいえ、他国の状況を鑑みるにオミクロン株感染は軽症で済むとまだ断定はできないようです。英国の大学インペリアル・カレッジ・ロンドンの先週16日の報告7,8)によると、同国イングランドでのオミクロン株感染の重症度はデルタ株と異なってはおらず、南アフリカからの報告とは対照的に入院が少なくて済んでいるわけではありません4)。ただしイングランドでの入院データはまだ十分ではありません。いずれにせよオミクロン株感染の重症度はまだ症例数が少なすぎて結論には至っておらず4)、さらなる調査が必要なようです。オミクロン株感染の増加が医療を圧迫する恐れ今後の研究で幸いにしてオミクロン株感染の重症化や死亡のリスクが低いと判明したとしてもその感染数が莫大ならとどのつまり重症例も多くなります。その結果医療への負担は大きくなり、他の病気の治療に差し障るかもしれません4)。たとえば英国バーミンガム大学が率いた研究では、オミクロン株流行で入院が増えることで同国イングランドのこの冬(今年12月~来年4月)の待機手術およそ10万件が手つかずになりうると推定されました9,10)。待機手術を受け入れる余力を残しておく必要があると著者は言っています。参考1)HKUMed finds Omicron SARS-CoV-2 can infect faster and better than Delta in human bronchus but with less severe infection in lung / University of Hong Kong 2)mRNA-based COVID-19 vaccine boosters induce neutralizing immunity against SARS-CoV-2 Omicron variant. medRxiv. December 14, 2021 3)Preliminary laboratory data hint at what makes Omicron the most superspreading variant yet / STAT4)How severe are Omicron infections? / Nature5)Discovery Health, South Africa’s largest private health insurance administrator, releases at-scale, real-world analysis of Omicron outbreak based on 211 000 COVID-19 test results in South Africa, including collaboration with the South Africa / Discovery Health6)Covid-19: Omicron is causing more infections but fewer hospital admissions than delta, South African data show / BMJ7)Report 49 - Growth, population distribution and immune escape of Omicron in England. MRC Centre for Global Infectious Disease Analysis8)[Summary] Report 49 - Growth, population distribution and immune escape of Omicron in England. MRC Centre for Global Infectious Disease Analysis9)COVIDSurg Collaborative.Lancet. December 16, 2021 [Epub ahead of print] 10)Omicron may cause 100,000 cancelled operations in England this winter / Eurekalert

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デュピルマブ、中等症~重症喘息児の急性増悪を抑制/NEJM

 コントロール不良の中等症~重症喘息児の治療において、標準治療にデュピルマブ(インターロイキン-4受容体のαサブユニットを遮断する完全ヒトモノクローナル抗体)を追加すると、標準治療単独と比較して、急性増悪の発生が減少し、肺機能や喘息コントロールが改善することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのLeonard B. Bacharier氏らが行った「Liberty Asthma VOYAGE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年12月9日号で報告された。追加効果を評価する国際的な第III相試験 研究グループは、コントロール不良の中等症~重症喘息の小児の治療におけるデュピルマブの有効性と安全性の評価を目的に、国際的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験を実施した(SanofiとRegeneron Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢6~11歳で、Global Initiative for Asthma(GINA)ガイドラインに基づき、コントロール不良の中等症~重症の喘息と診断された患児であった。 被験者は、デュピルマブ(体重≦30kgは100mg、>30kgは200mg)またはプラセボを、2週ごとに52週間、皮下投与する群に無作為に割り付けられた。すべての患児が、一定の用量の標準的な基礎治療を継続した。 主要エンドポイントは、重度の急性増悪の年間発生率。副次エンドポイントは、12週時の気管支拡張薬投与前の予測1秒量の割合(ppFEV1)と、24週時の質問者記入式の喘息管理質問票7(ACQ-7-IA)のスコアのベースラインからの変化などであった。 エンドポイントは、次の2つの主要有効性解析集団で評価された。(1)喘息の表現型が2型炎症(ベースラインの血中好酸球数≧150/mm3または呼気中一酸化窒素濃度≧20ppb)の患者、(2)ベースラインの血中好酸球数≧300/mm3の患者。有害事象プロファイルは許容範囲 408例が登録され、デュピルマブ群に273例、プラセボ群に135例が割り付けられた。2型炎症の集団は、デュピルマブ群236例(平均年齢8.9±1.6歳、男児64.4%)、プラセボ群114例(9.0±1.6歳、68.4%)であり、好酸球数≧300/mm3の集団は、それぞれ175例(8.9±1.6歳、66.3%)および84例(9.0±1.5歳、69.0%)であった。追跡期間中央値は365日だった。 2型炎症の集団における重度急性増悪の補正後年間発生率は、デュピルマブ群が0.31(95%信頼区間[CI]:0.22~0.42)と、プラセボ群の0.75(0.54~1.03)に比べ有意に低かった(デュピルマブ群の相対リスク減少率:59.3%、95%CI:39.5~72.6、p<0.001)。また、好酸球数≧300/mm3の集団でも、重度急性増悪の補正後年間発生率はデュピルマブ群で良好であった(0.24[95%CI:0.16~0.35]vs.0.67[0.47~0.95]、デュピルマブ群の相対リスク減少率:64.7%、95%CI:43.8~77.8、p<0.001)。 ppFEV1のベースラインから12週までの変化の平均値(±SE)は、デュピルマブ群は10.5±1.01ポイントであり、プラセボ群の5.3±1.4ポイントに比し有意に大きく(平均群間差:5.2ポイント、95%CI:2.1~8.3、p<0.001)、肺機能の改善が認められた。この効果は、2型炎症の集団(プラセボ群との最小二乗平均の差:5.2、95%CI:2.1~8.3)と好酸球数≧300/mm3の集団(同5.3、1.8~8.9)でほぼ同程度であった。 24週時におけるACQ-7-IAスコア(減少幅が大きいほど喘息コントロールが良好)のベースラインからの変化の最小二乗平均(±SE)は、2型炎症の集団ではデュピルマブ群は-1.33±0.05、プラセボ群は-1.00±0.07(プラセボ群との最小二乗平均の差:-0.33、95%CI:-0.50~-0.16)、好酸球数≧300/mm3の集団ではそれぞれ-1.34±0.06および-0.88±0.09(同-0.46、-0.67~-0.26)であり、いずれもデュピルマブ群で有意に優れた(双方ともp<0.001)。 52週の試験期間中に、有害事象はデュピルマブ群83.0%、プラセボ群79.9%で発現した。頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎(デュピルマブ群18.5%、プラセボ群21.6%)、上気道感染症(12.9%、13.4%)、咽頭炎(8.9%、10.4%)、インフルエンザ(7.4%、9.0%)などであり、注射部位反応による紅斑がそれぞれ12.9%および9.7%で認められた。重篤な有害事象の発現率は両群で同程度だった(4.8%、4.5%)。喘息の増悪による入院が、デュピルマブ群の4例(1.5%)でみられた。 著者は、「この年齢層における生物学的製剤の上乗せ治療に関する無作為化試験はほとんど行われていないが、今回の研究で、デュピルマブは臨床的に意義のある肺機能の改善効果をもたらすとともに、バイオマーカー主導型のアプローチの効用性が明らかとなった」としている。

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マスク・手洗いでコロナ発症率がどの程度下がるのか~メタ解析/BMJ

 新型コロナウイルスへの感染、発症、死亡に関して、感染対策はどの程度有効だったのだろうか。オーストラリア・Monash UniversityのStella Talic氏らの系統的レビューとメタ解析から、手洗い、マスク着用、対人距離保持などがCOVID-19発症率の減少と関連することが示唆された。BMJ誌2021年11月17日号に掲載。マスク着用効果を35報の論文からメタ解析 本研究では、Medline、Embase、CINAHL、Biosis、Joanna Briggs、Global Health、World Health Organization COVID-19データベース(プレプリント)において、COVID-19発症率、SARS-CoV-2感染率、COVID-19死亡率の減少における感染対策の有効性を評価した観察研究と介入研究の論文を検索した。主要評価項目はCOVID-19発症率、副次評価項目はSARS-CoV-2感染率とCOVID-19死亡率などであった。マスク着用、手洗い、対人距離保持がCOVID-19発症率に及ぼす影響をDerSimonian Lairdのランダム効果メタ解析で評価した。 マスク着用などの効果をメタ解析した主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした論文72報中35報が個別の感染対策を評価し、37報が複数の感染対策を「介入パッケージ」として評価していた。・35報中8報をメタ解析した結果、手洗い(相対リスク:0.47、95%信頼区間:0.19〜1.12、I2=12%)、マスク着用(0.47、0.29〜0.75、I2=84%)、対人距離保持(0.75、0.59〜0.95、I2=87%)がCOVID-19発症率の減少と関連していた。・検疫・隔離、ロックダウン、国境・学校・職場の封鎖による有効性は、研究の不均一性からメタ解析は不可能だった。

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非弁膜症性心房細動、早期カルディオバージョンで死亡リスク軽減/BMJ

 非弁膜症性心房細動で脳卒中リスク因子が1つ以上ある成人に対し、早期カルディオバージョンの実施率は約15%と低いものの、同実施を受けた患者の死亡リスクは有意に低いことが示された。また、直流カルディオバージョンの実施率は薬物的カルディオバージョンの約2倍に上ったが、主要アウトカムは両者で同等であることも示された。ノルウェー・オスロ大学のMarita Knudsen Pope氏らが、5万例超の患者情報が前向きに収集されていたレジストリデータ「GARFIELD-AF(Global Anticoagulant Registry in the FIELD-AF)」を解析し明らかにした。BMJ誌2021年10月27日号掲載の報告。35ヵ国1,317ヵ所からの5万例超の患者データを解析 GARFIELD-AFレジストリデータには、35ヵ国1,317ヵ所を通じて、6週間以内に非弁膜症性心房細動の診断を受け、1つ以上の脳卒中リスク因子が認められた成人患者5万2,057例のデータが登録されていた。 研究グループは、同レジストリデータを基にベースラインにおけるカルディオバージョンの実施者と非実施者、直流カルディオバージョン実施者と薬物的カルディオバージョン実施者について、それぞれアウトカムを比較する観察試験を行った。 臨床エンドポイントは、全死因死亡、非出血性脳卒中または全身性塞栓症、大出血で、Cox比例ハザードモデルによるオーバーラップ傾向スコア加重法で比較した。ベースラインのリスクと患者選別で補正を行った。カルディオバージョン群の死亡リスク、1年後まで0.74倍、1~2年後は0.77倍 カルディオバージョン実施群と非実施群の比較解析には、4万4,201例が包含された。そのうち、ベースラインでカルディオバージョンを実施した被験者は、6,595例(14.9%)だった。 カルディオバージョン群の傾向スコア加重後の全死因死亡に関するハザード比(HR)は、ベースラインからの1年間のフォローアップ期間中が0.74(95%信頼区間[CI]:0.63~0.86)、1~2年のフォローアップ期間中が0.77(0.64~0.93)だった。 ベースラインでカルディオバージョンを実施した6,595例のうち、299例が登録後48日を超えてから再度カルディオバージョンを受けていた。 直流または薬物的カルディオバージョンの比較解析には、7,175例が包含された。そのうち直流カルディオバージョンを受けたのは4,748例(66.2%)、薬物的カルディオバージョンを受けたのは2,427例(33.8%)だった。フォローアップ1年間の全死因死亡率は、直流カルディオバージョン群が1.36/100患者年(95%CI:1.13~1.64)、薬物的カルディオバージョン群が1.70/100患者年(1.35~2.14)だった。

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第76回 過労自殺の半数はうつ病発症から6日以内/過労死等防止対策白書

<先週の動き>1.過労自殺の半数はうつ病発症から6日以内/過労死等防止対策白書2.12月開始の3回目ワクチン、接種対象者は限定せず/厚労省3.新型コロナワクチンの接種率、日本は人口の7割に到達4.制度にそぐわないDPC病院に是正か退出を/中医協5.研修医マッチング、昨年に続き6割以上が大学病院外で内定1.過労自殺の半数はうつ病発症から6日以内/過労死等防止対策白書政府は、「過労死等防止対策白書」を10月26日に閣議決定した。これは2014年に成立した過労死等防止対策推進法に基づいて国会に毎年報告を行っており、過労死等の概要や政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況を取りまとめたもの。今回の白書によれば、うつ病など精神障害で労災認定された過労自殺者は、発症から6日以内と短期間で亡くなる人が半数に上るとの調査結果が明らかとなっており、より一層の対策を求めている。(参考)コロナ影響の悩み、ストレスチェックで気付きを 厚労省が過労死等防止対策白書を公表(CBnewsマネジメント)過労自殺の半数、うつなど発症から6日以内 厚労省報告(日経新聞)資料 令和3年版過労死等防止対策白書の概要(厚労省)2.12月開始の3回目ワクチン、接種対象者は限定せず/厚労省厚生労働省は、10月28日に厚生科学審議会予防接種を開催し、新型コロナウイルスワクチンの追加接種(3回目)の対応方針をめぐって議論を行った。国内外の感染動向やワクチン効果の持続期間、諸外国の対応状況から、追加接種の必要があるとした。また、追加接種の時期は2回目接種完了からおおむね8ヵ月以上経過後に実施、使用するワクチンは、原則1・2回目に用いたワクチンと同一のものを用いることとされる。3回目接種の実施対象者は、高齢者や重症化リスクのある人に限定せず、2回目接種が完了したすべての人とする方針で一致した。(参考)“3回目接種”12月から順次開始へ 気になる副反応は(NHK)3回目ワクチン接種、対象者を限定せず 2回目終えた全員に、厚科審・分科会(CBnewsマネジメント)資料 新型コロナワクチンの接種について(厚労省)3.新型コロナワクチンの接種率、日本は人口の7割に到達政府は10月26日に、新型コロナウイルスワクチンの2回目接種を終えた人が、全人口の70.1%である8,879万人に到達したと発表した。アメリカは全人口の57%、フランス68%、イギリス67%、ドイツ66%であり、G7では2位のイタリア(71%)とほぼ肩を並べ、1位のカナダ74%に次ぐトップ水準となった。(参考)新型コロナワクチンについて(内閣府)ワクチン2回接種終えた人、人口の7割超える…海外より高水準(読売新聞)人口7割がワクチン完了 G7でトップ水準(産経新聞)Which countries are on track to reach global COVID-19 vaccination targets?(Our World in Data)4.制度にそぐわないDPC病院に是正か退出を/中医協厚労省は10月27日に中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会を開催し、2022年度診療報酬改定に向けて検討結果の取りまとめを行った。そこでDPC病院において、診療密度や在院日数が平均から外れている病院も認められ、DPC制度にそぐわない可能性があると指摘があったことから、調査報告について、支払い側の委員から「イエローカードを出し、それでも是正がなければレッドカードを出すべきだ」と意見が出された。今後、DPC制度にそぐわない病院をどのように対処するか仕組みの検討がなされるだろう。(参考)DPC外れ値病院、当面は「退出ルール」設定でなく、「診断群分類を分ける」等の対応検討しては―入院医療分科会(Gem Med)DPC外れ値病院へ、「是正なければレッドカードを」中医協・小委で支払側委員(CBnewsマネジメント)資料 第206回 中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会(厚労省)5.研修医マッチング、昨年に続き6割以上が大学病院外で内定厚労省は10月28日に、2021年度「医師臨床研修マッチング」の結果を発表した。新医師臨床研修制度が2004年4月に導入され、その翌年から大学病院以外の研修病院で研修を受ける医師が半数を超えている。今回、大学病院の内定割合36.7%(前年度38.1%)に対し、大学病院以外の臨床研修病院での内定割合は63.3%(前年度61.9%)と、大学病院以外での研修がさらに浸透してきていることが明らかとなった。(参考)2022年4月からの臨床研修医、都市部6都府県以外での研修が59.2%、大学病院以外での研修が63.3%に―厚労省(Gem Med)医師臨床研修の内定者数が増加 厚労省が2021年度のマッチング結果公表(CBnewsマネジメント)資料 令和3年度 研修医マッチングの結果(医師臨床研修マッチング協議会)資料 2021年度 研修プログラム別マッチング結果(同)

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低Na塩の利用で血管イベント・全死亡が減少/NEJM

 脳卒中の既往者または60歳以上の高血圧症の患者において、通常の塩の代わりに、塩化ナトリウムの成分含有が75%の代替塩を使うことで、脳卒中率や主要心血管イベント率、および全死因死亡率が低下したことが示された。オーストラリア・George Institute for Global HealthのBruce Neal氏らが、中国農村部600村に住む2万例超を対象に行った、非盲検クラスター無作為化試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2021年8月29日号で発表した。代替塩は、ナトリウム値を低下させ、カリウム値を上昇させ、血圧を低下させることが示されている。しかし、心血管への有効性や安全性アウトカムへの影響は明らかになっていなかった。中国600村を無作為に分け、代替塩使用と通常塩使用を比較 研究グループは2014年4月~2015年1月にかけて、中国農村部の600村を対象に、脳卒中の既往者または60歳以上で高血圧症の患者2万995例を対象に試験を開始した。 試験対象村を無作為に2群に分け、一方の村の被験者は代替塩(質量で塩化ナトリウム75%、塩化カリウム25%)を、もう一方の村の被験者は通常塩(塩化ナトリウム100%)を、それぞれ使用した。 主要アウトカムは脳卒中、副次アウトカムは主要心血管イベント、全死因死亡で、安全性アウトカムは臨床的高カリウム血症だった。 被験者2万995例の平均年齢は65.4歳、女性が49.5%、脳卒中既往者72.6%、高血圧症既往者は88.4%だった。平均追跡期間は4.74年。 脳卒中の発生率は、代替塩群29.14/1,000人年、通常塩群33.65/1,000人年で、代替塩群が低かった(率比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96、p=0.006)。 同様に、主要心血管イベント発生率(49.09 vs. 56.29/1,000人年、率比:0.87[95%CI:0.80~0.94]、p<0.001)、死亡率(39.28 vs. 44.61/1,000人年、0.88[0.82~0.95]、p<0.001)は代替塩群が低かった。 高カリウム血症による重篤有害イベントの発現頻度は、代替塩群3.35/1,000人年、通常塩群3.30/1,000人年で同程度だった(率比:1.04[95%CI:0.80~1.37]、p=0.76)。

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第77回【特集・第6波を防げ!】相マスクが濃厚接触者の感染を予防/有観客試合で感染は広まらず

大学でのマスク着用が濃厚接触者の感染を予防デルタ変異株をまだ見ず、ワクチン接種がこれからという今年1~5月の米国の大学で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者との濃厚接触者を一律に隔離するのではなくマスク着用の状況に応じてそうするかしないかを決める取り組みが検証され、マスクをお互いに着用することでどうやら感染の連鎖がほぼ完全に断ち切れていました1,2)。米国のセントルイス大学では感染者と濃厚接触(24時間に2人が約2m以内で15分以上接触)しても感染者と濃厚接触者のどちらもマスクを着用していればそれら濃厚接触者の隔離は不要という対応が今年1月から実行され、その対応の成果を判定すべく同大学の学生およそ1万2,000人のその後5ヵ月間の感染状況が調べられました。その5ヵ月間に265人が感染し、それら感染者の申告で濃厚接触者378人が同定されました。感染者と濃厚接触者がどちらもマスクをしていた場合(相マスク)の濃厚接触者は毎日健診を受けて症状があればすぐに申告するよう指示され、ワクチン非接種で非相マスクの濃厚接触者のみ隔離されました。相マスクでの濃厚接触者は26人で、そのうち感染に陥ったのは僅か2人(7.7%)のみでした。一方、残りの多数(352人)の非相マスク濃厚接触者は3人に1人(32.4%)が感染に至っており、相マスク濃厚接触者の感染率はそうでない場合の5分の1ほどで済んでいました。相マスクにもかかわらず感染した濃厚接触者2人は感染判明後すぐに隔離され、それら2人から別の人への感染は9人との濃厚接触があってそれら濃厚接触者を隔離しなかったにもかかわらず一切認められませんでした。ワクチンはごく少数にしか接種されていませんでしたがその効果も伺え、接種済みの濃厚接触者18人は全員感染を免れました。一方、ワクチン接種一部完了(Partially vaccinated)の濃厚接触者24人は5人(20.8%)、ワクチン非接種の濃厚接触者336人は111人(33%)が感染に至っています。ワクチン接種が普及した現在において、直接会う授業がある大学はワクチン接種がまだ済んでいない濃厚接触者を隔離と検査観察のどちらに振り分けるかの判断材料にマスク着用状況を含めうると著者は言っています1)。アメフト有観客試合の開催地でCOVID-19増加はみられずマスク着用を含む感染対策が一箇所に大勢が集うイベントからの感染の広がりを防ぎうることが米国のアメリカンフットボール(アメフト)の有観客試合のデータ解析試験で示されました3,4)。試験では去年2020年8月末(29日)からその年末(12月28日)までに観客有りのアメフトの試合が実施された郡とそれらと同様の日程で観客なしの試合が開催された郡が検討されました。その結果、有観客試合が実施された郡での住民10万人当たりの1日のSARS-CoV-2感染数の一貫した増加は認められず、少なめな観客数でのアメフトの試合の開催はその開催地のCOVID-19増加を生じやすくはしないと示唆されました。マスク着用、少なめな観客数、野外開催がどうやらCOVID-19の広がりを防いだようであり、観客同士の距離を十分に保てば有観客試合は安全に実行できそうです。今はワクチンが出回っていますが、それだけに頼ることはできません。そもそも全員がワクチン接種済みとは限りませんし、ワクチンで感染を100%防げるわけではありません。より伝播しやすいデルタ株のような変異株の心配もあり、アメフトの試合のような大規模な集いでのCOVID-19伝播はマスクを着用しなければ依然として発生する恐れがあります。ワクチン接種が可能になったとはいえ今後もしばらくは行動の制限が続きそうですが、アメフトの試合ではマスク着用の観客を十分に離した席に招じ入れてよさそうだと試験の著者は結論しています4)。参考1)Rebmann T,et al.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Sep 10;70:1245-1248.2)CDC Report Finds Masks Curb Spread of COVID-19 on Campus / Inside Higher Ed3)No indication of COVID-19 spread from pro football events with limited attendance / Eurekalert4)Toumi A, et al. JAMA Netw Open. 2021 Aug 2;4:e2119621.

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地球温暖化により増加している死亡とは?(解説:有馬久富氏)

 疾患の発生には季節変動があることが知られている。最近も滋賀県全体で行なっている脳卒中登録事業より、脳卒中が気温の低い冬に増加することが報告されている(文献1)。逆に気温の高い夏に増加する疾患もある。このように、寒い気候も暑い気候も特定の疾患の発生に影響を与えうる。 Global Burden of Disease Studyの成績と気象データを結びつけて、寒い気候と暑い気候が死亡に及ぼす影響を検討した結果がLancet誌に掲載された(文献2)。その結果は、寒い気候と暑い気候により、世界で毎年約170万人が死亡しているというものであった。 寒い気候は、肺炎などの呼吸器疾患死亡や脳心血管死亡を引き起こしていたが、過去20年でその影響は減少する傾向にあった。一方、暑い気候は、溺死・自殺など外因死の増加と関連しており、その数は地球温暖化の影響で増加する傾向にあった。地球温暖化は、気候だけでなく、人々の健康にも影響を与えている可能性がある。健康面からも地球温暖化対策は急務といえよう。

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アントラサイクリンベース化療中の乳がん、心保護薬の併用でLVEF低下を予防

 イタリア・フィレンツェ大学Lorenzo Livi氏らがアントラサイクリンベースの化学療法で治療を受けている乳がん患者の無症候性の心臓損傷を軽減できるかどうかを調査した結果、β遮断薬のビソプロロールやACE阻害薬のラミプリル(日本未承認)を投与することで、がん治療に関連するLVEF低下や心臓リモデリングから保護する可能性を示唆した。JAMA Oncology誌2021年8月26日号オンライン版ブリーフレポートでの報告。 本研究であるSAFE試験は、イタリアの8施設の腫瘍科で実施された多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験で、12ヵ月で心臓評価を完了した最初の174例に関する中間分析。対象者の募集は2015年7月~2020年6月の期間で、中間分析は2020年に実施された。対象者はアントラサイクリンベースのレジメンを使用し、一次または術後の全身療法を受ける兆候があった患者で、事前に心血管疾患の診断を有していた患者は除外された。心臓保護薬としてビソプロロール、ラミプリル、ラミプリルとビソプロロール併用に割り付け、プラセボ群と比較。化学療法の開始から1年間、またはERBB2陽性者はトラスツズマブ療法の終了まで投与を行った。全グループの用量について、ビソプロロール(1日1回5mg)、ラミプリル(1日1回5mg)、プラセボを可能な範囲で体系的に漸増した。 主要評価項目は、無症状(10%以上悪化)の心筋機能(左心室駆出率[LVEF])と歪み(長軸方向の歪み[GLS:global longitudinal strain])で、2Dおよび3Dの心エコー法で検出した。 主な結果は以下のとおり。・対象者は174例の女性(年齢中央値48歳、範囲24〜75歳)だった。・12ヵ月間の3D心エコーでLVEFの低下状況を確認したところ、プラセボ群で4.4%、ラミプリル群、ビソプロロール群、併用群でそれぞれ3.0%、1.9%、1.3%の低下だった(p=0.01)。・全体的な長軸方向の歪みは、プラセボ群で6.0%、ラミプリル群とビソプロロール群でそれぞれ1.5%と0.6%悪化したが、併用群では変化しなかった(0.1%の改善、p<0.001)。・3D心エコーでLVEFが10%以上低下した患者数は、プラセボ群で8例(19%)、ラミプリル群で5例(11.5%)、ビソプロロール群で5例(11.4%)、併用群で3例(6.8%)だった。 ・プラセボ群15例(35.7%)は、ラミプリル群(7例:15.9%)、ビソプロロール(6例:13.6%)、および併用群(6例:13.6%)と比較して、GLSが10%以上も悪化を示した(p=0.03)。

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小児マラリア、ワクチン+化学予防で入院・死亡を大幅抑制/NEJM

 合併症のない臨床的に軽症の小児マラリアの予防治療において、季節性のRTS,S/AS01Eワクチン接種は化学予防に対し非劣性であり、RTS,S/AS01Eワクチンと化学予防の併用はワクチン単独および化学予防単独と比較して、軽症マラリア、重症マラリアによる入院、マラリアによる死亡を大幅に抑制することが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のDaniel Chandramohan氏らが西アフリカで行った臨床試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月25日号で報告された。ブルキナファソとマリの無作為化対照比較試験 研究グループは、西アフリカのブルキナファソとマリの小児を対象に、RTS,S/AS01Eを用いた季節性ワクチン接種の季節性化学予防に対する非劣性と、RTS,S/AS01Eワクチンと化学予防の併用は、このうち一方による単独療法と比較して優越性を有するかを検証する目的で、二重盲検無作為化対照比較試験を実施した(英国・Joint Global Health Trialsと米国・PATH Malaria Vaccine Initiativeの助成を受けた)。 2017年4月1日の時点で、生後5~17ヵ月の小児がいる試験地域内の全世帯が対象となった。6,861例の小児が登録され、このうち2,287例がsulfadoxine/pyrimethamine+amodiaquine(年4回投与)とRTS,S/AS01Eワクチンのプラセボの接種を受ける群(化学予防単独群)、2,288例がRTS,S/AS01Eワクチン接種と化学予防薬のプラセボの投与を受ける群(ワクチン単独群)、2,286例が化学予防+RTS,S/AS01Eワクチン接種を受ける群(併用群)に無作為に割り付けられた。RTS,S/AS01Eワクチンは、5回(2017年4月、5月、6月、2018年6月、2019年6月)接種された。 5,920例(化学予防単独群1,965例、ワクチン単独群1,988例、併用群1,967例)が、割り付けられた介入の初回投与を受け、3年間のフォローアップが行われた。2020年3月31日の時点で、それぞれ1,716例(87.3%)、1,734例(87.2%)、1,740例(88.5%)がフォローアップを終了した。接種後の熱性痙攣は回復、髄膜炎の発現はなかった 合併症のない臨床的マラリア(体温37.5℃以上または直近48時間以内の発熱の既往、かつ熱帯熱マラリア原虫[Plasmodium falciparum]による原虫血症[≧5,000/mm3])は、1,000人年当たり化学予防単独群で305イベント、ワクチン単独群で278イベント、併用群で113イベント認められた。 ワクチン単独群の、化学予防単独群との比較における予防効果のハザード比は0.92(95%信頼区間[CI]:0.84~1.01)であり、事前に規定された非劣性マージン(1.20)を満たしたため、3年間を通じたワクチン接種の化学予防に対する非劣性が確認された。 一方、併用群では、化学予防単独群との比較における臨床的なマラリアの予防効果は62.8%(95%CI:58.4~66.8)であり、世界保健機関(WHO)の定義による重症マラリアに伴う入院の予防効果は70.5%(41.9~85.0)、マラリアによる死亡の予防効果は72.9%(2.9~92.4)であった。 また、併用群では、ワクチン単独群との比較における臨床的なマラリアの予防効果は59.6%(95%CI:54.7~64.0)、WHO定義の重症マラリアによる入院の予防効果は70.6%(42.3~85.0)、マラリアによる死亡の予防効果は75.3%(12.5~93.0)だった。 ワクチン接種後に熱性痙攣が5例(ワクチン単独群3例、併用群2例、初回接種[プライミング]後3例、追加接種[ブースター]後2例)で発現したが、いずれも回復し、後遺症は認められなかった。8例(化学予防単独群4例、ワクチン単独群3例、併用群1例)で臨床的に髄膜炎が疑われたが、いずれも確定されなかった。また、RTS,S/AS01Eワクチン接種者で、入院や死亡が男児よりも女児で多いとの証拠は得られなかった。 著者は、「アフリカの季節性マラリアがみられる広範な地域では、マラリアのコントロールが現在も不十分であるため、季節性の化学予防と季節性のRTS,S/AS01Eワクチン接種の併用は有望な予防法となる。サヘル地域やサブサヘル地域のマラリアの負担が大きい地方では、今後、これらの併用の最適な方法を検討する必要があるだろう」としている。

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シノバック製ワクチン、ガンマ株蔓延下のブラジルで有効性検証/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のγ変異株(ブラジル型)が広くまん延している状況下で、70歳以上の集団における不活化全粒子ワクチンCoronaVac(中国Sinovac Biotech製)の2回接種者は非接種者と比較した場合、2回目接種から14日以降における症候性の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症に対するワクチン有効率は47%であり、COVID-19関連の入院に対する有効率は56%、死亡に対する有効率は61%との研究結果が、スペイン・ISGlobalのOtavio T. Ranzani氏らによって報告された。研究の詳細は、BMJ誌2021年8月20日号に掲載された。サンパウロ州で、診断陰性例コントロール試験 研究グループは、γ変異株まん延下のブラジル・サンパウロ州(地方自治体数645、人口4,600万人、70歳以上人口323万人)の高齢者を対象に、CoronaVacワクチン接種の有効性を評価する目的で、診断陰性例コントロール試験(negative case-control study)を行った(外部からの研究助成は受けていない)。 対象は、サンパウロ州の居住者で、COVID-19の症状がみられる70歳以上の集団であった。2021年1月17日~4月29日の期間に、4万4,055人が逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)によるSARS-CoV-2の検査を受け、2万6,433人が陽性(症候性COVID-19)、1万7,622人はCOVID-19の症状がみられるものの陰性(コントロール)であった。 年齢、性別、自己申告の人種、居住する地方自治体、COVID-19様疾患の既往、RT-PCR検査日(±3日)に関して、症例(陽性者)1人に対しコントロール(陰性者)を最大で5人までマッチさせた(症例1万3,283人、コントロール4万2,236人)。 マッチング集団のCoronaVacワクチン接種者と非接種者で、症候性COVID-19(RT-PCR検査で確定)と、これに伴う入院および死亡の比較が行われた。年齢層が高いほど有効率が低下 CoronaVacワクチン非接種者との比較における、2回接種者の症候性COVID-19に対する調整後のワクチン有効率(発症予防効果)は、2回目の接種から0~13日が24.7%(95%信頼区間[CI]:14.7~33.4、p<0.001)、14日以降は46.8%(38.7~53.8、p<0.001)であった。 また、COVID-19関連入院に対するワクチン有効率は、2回目の接種から0~13日が39.1%(95%CI:28.0~48.5、p<0.001)、14日以降は55.5%(46.5~62.9、p<0.001)であり、死亡に対するワクチン有効率はそれぞれ48.9%(34.4~60.1、p<0.001)および61.2%(48.9~70.5、p<0.001)であった。 2回目接種から14日以降のワクチン有効率は、最も若い年齢層(70~74歳)で優れており、年齢層が高くなるに従って低下した。すなわち、症候性COVID-19のワクチン有効率は70~74歳が59.0%(43.7~70.2)、75~79歳が56.2%(43.0~66.3)、80歳以上は32.7%(17.0~45.5)であり、入院のワクチン有効率はそれぞれ77.6%(62.5~86.7)、66.6%(51.8~76.9)、38.9%(21.4~52.5)、死亡のワクチン有効率は83.9%(59.2~93.7)、78.0%(58.8~88.3)、44.0%(20.3~60.6)だった。 著者は、「COVID-19の流行に対応した集団予防接種キャンペーンの一環としてCoronaVacを使用する場合は、ワクチンの供給を優先し、2回接種完了者数を最大限に増やす必要がある」としている。

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異常気温、世界中で死亡リスクに影響/Lancet

 米国・ワシントン大学のKatrin G Burkart氏らは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、欧州中期気象予報センター(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts:ECMWF)が作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値と死亡との関連について解析。異常低温や異常高温への曝露は多様な死因による死亡リスクに影響し、ほとんどの地域では低温の影響が大きいが、気温が高い地域では低温の影響をはるかに上回る高温の影響がみられることを明らかにした。著者は、「高温リスクの曝露が着実に増加していることは、健康への懸念が高まっている」とまとめている。気温の高低と死亡率および罹患率の増加との関連はこれまでにも報告されているが、疾病負担の包括的な評価は行われていなかった。Lancet誌2021年8月21日号掲載の報告。気候変動監視のERA5再解析データを用い、気温と死亡の関連を解析 研究グループは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、パート1として、ECMWFが作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値を用い、死亡との関連を解析した。 ベイジアンメタ回帰の2次スプラインを用い、1日平均気温と23の平均気温帯に従い、個人の死因176疾患に関して死因別相対リスクをモデル化した後、日間死亡率データが入手可能な国について、死因別および全気温に起因する負担を算出した。また、パート1で得られた死因別相対リスクを世界のすべての場所に適用した。 曝露-反応曲線と日平均気温を組み合わせ、「世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study)」による疾病負担に基づき、1990~2019年の死因別負担を算出した。異常低温・異常高温による死者は2019年では169万人 パート1では、1980年1月1日~2016年12月31日の、9ヵ国(ブラジル、チリ、中国、コロンビア、グアテマラ、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、米国)における6,490万人の死亡データを用いた。評価対象となった死因176疾患のうち、有意差の基準を満たした17の死因が解析対象となった。 虚血性心疾患、脳卒中、心筋症/心筋炎、高血圧性心疾患、糖尿病、慢性腎臓病、下気道感染症、慢性閉塞性肺疾患は、日平均気温とJ字型の関連性を示したが、外因(例えば、殺人、自殺、溺死、および災害やその他の不慮の事故に関連するもの)リスクは、気温とともに単調に増加した。 理論的な最小リスク曝露レベルは、基本的な死因の構成の機能として、場所と年によって異なっていた。非最適気温に関する推定値は、ブラジルにおける死亡数7.98人/10万人(95%不確実性区間[UI]:7.10~8.85)、人口寄与割合(PAF)1.2%(95%UI:1.1~1.4)から、中国における死亡数35.1人/10万人(95%UI:29.9~40.3)、PA F4.7%(95%UI:4.3~5.1)の範囲であった。 2019年には、データが得られたすべての国で、低温に関連した死亡率が高温による死亡率を上回った。低温の影響が最も顕著だったのは、中国(PAFは4.3%[95%UI:3.9~4.7]、寄与率は10万人当たり32.0人[95%UI:27.2~36.8])、およびニュージーランド(それぞれ3.4%[95%UI:2.9~3.9]、26.4人[95%UI:22.1~30.2])、高温の影響が最も顕著だったのは、中国(0.4%[95%UI:0.3~0.6]、3.25人[95%UI:2.39~4.24])、およびブラジル(0.4%[95%UI:0.3~0.5]、2.71人[95%UI:2.15~3.37])であった。 これらの結果を世界のすべての国に適用した場合、2019年に世界で非最適気温に起因する死者は169万人と推定された。暑さに起因する負担が最も高かったのは、南・東南アジア、サハラ以南のアフリカ、北アフリカ・中東、寒さに起因する負担が最も高かったのは東・中央ヨーロッパ、中央アジアであった。

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コロナ感染経路不明者、リスク高い行動の知識が不足/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株による感染拡大の勢いが止まらない。 感染の主役は、COVID-19ワクチン接種を終えた高齢者にとって代わり、50代以下の若年・中年層へと拡大している。 こうした働き盛り、遊び盛りのこれらの年代の陽性者が、どこで、どのように感染しているのか。「感染経路不明」とされる事例の解明は、感染の封じ込め対策で重要な要素となる。 国立国際医療研究センターの匹田 さやか氏(国際感染症センター)らの研究グループは、入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行い、その結果をGlobal Health & Medicine誌に発表した。親しき仲にもマスクはあり!方法:2021年5月22日~6月29日に同センター病院に入院したCOVID-19患者のうち、入院時に感染経路が明確であった、意思疎通が困難であった患者を除いた者を対象として、インタビュー調査を実施。結果:有効回答の得られた22例のうち、男性が17例(77%)、女性が5例(23%)、年齢の中央値(四分位範囲)は52.5歳(44~66)、日本人が19名(86%)。22例のうち14例(64%)において既知の感染リスクの高い行動歴(室内飲食、室内ライブ参加、トレーニングジムなど)があった。また、行動歴/接触歴を解析し、既知の感染リスクが高い場面がのべ24あった。そのうちの21(88%)がラーメン店やそば屋など飲食関連であり、22(92%)ではマスクが着用されていなかった。また、感染に関与しうると考えられた患者の考えや信念に関して、「仕事の後であれば職員同士でマスクなしで話しても大丈夫だろう」、「外食が感染のリスクだとは知らなかった」などが挙げられた。 以上から匹田氏らは、「新たな感染経路が明らかになったわけではなく、むしろ感染には飲食がやはり多くの事例で関係していることがわかった。感染防止に対する意識付けや十分な知識が不足していることがわかり、これらが感染拡大を助長する可能性がある」と今後解決すべき課題を示唆した。

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妊婦への新型コロナワクチン、有効性と安全性/JAMA

 妊婦において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ワクチン非接種と比較してSARS-CoV-2感染リスクを有意に低下させることが確認された。イスラエル・テルアビブ大学のInbal Goldshtein氏らが、妊婦を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。妊婦におけるBNT162b2ワクチンの有効性と安全性については、第III相試験において妊婦が除外されたためデータが不足していた。JAMA誌オンライン版2021年7月12日号掲載の報告。ワクチン接種妊婦vs.非接種妊婦、各7,530例でSARS-CoV-2感染を比較 研究グループは、イスラエルの健康保険組織Maccabi Healthcare Servicesのデータベースを用い、2020年12月19日~2021年2月28日に、妊娠中に1回目のBNT162b2 mRNAワクチン接種を受けた妊婦を特定し、2021年4月11日まで追跡した。また、ワクチン接種妊婦と年齢、妊娠週数、居住地域、民族、経産歴、インフルエンザ予防接種状況などについて1対1の割合でマッチングさせたワクチン非接種妊婦を対照群とした。 主要評価項目は、初回ワクチン接種後28日以降におけるPCR検査で確定したSARS-CoV-2感染であった。 解析対象はワクチン接種群7,530例、対照群7,530例で、妊娠第2期が46%、妊娠第3期が33%、年齢中央値は31.1歳(SD 4.9)であった。初回ワクチン接種後28日以降のSARS-CoV-2感染が約80%低下 主要評価項目の追跡期間中央値は37日(四分位範囲:21~54、範囲:0~70)であった。ワクチン接種群で追跡期間が21日以上の妊婦は、ほとんどが追跡期間終了までに2回目の接種を受けていた。 追跡期間終了時までのSARS-CoV-2感染者は、合計でワクチン接種群118例、対照群202例であった。感染者で症状を有していたのは、ワクチン接種群で105例中88例(83.8%)、対照群で179例中149例(83.2%)であった(p≧0.99)。 初回ワクチン接種後28~70日にSARS-CoV-2感染が確認されたのは、ワクチン接種群10例、対照群46例であった。感染のハザードはそれぞれ0.33%および1.64%、絶対群間差は1.31%(95%信頼区間[CI]:0.89~1.74)であり、ワクチン接種群は対照群と比較して統計学的に有意にハザード比が低下した(補正後ハザード比:0.22、95%CI:0.11~0.43)。 ワクチン接種群におけるワクチン関連有害事象は68例報告され、重篤な副反応はなかった。68例中3例は、ワクチン接種の直近にSARS-CoV-2に感染しており、症状はワクチンではなく感染に起因する可能性が示唆された。主な症状は、頭痛(10例、0.1%)、全身の脱力感(8例、0.1%)、非特異的な疼痛(6例、<0.1%)、胃痛(5例、<0.1%)であった。

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第70回 Pfizerワクチン2回目接種後に自然免疫が大幅増強

インドで見つかって世界で広まるデルタ変異株にもPfizer/BioNTechの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2が有効なことが先週21日にNEJM誌に掲載された英国Public Health Englandの試験で示されました1)。その効果を得るには決まりの2回接種が必要であり、デルタ変異株感染の発症の予防効果はBNT162b2接種1回では僅か36%ほどでした。2回接種の予防効果は大幅に上昇して88%となりました。一方、イスラエル保健省の先週木曜日の発表によると、デルタ変異株が広まる同国でのBNT162b2のここ最近1ヵ月程のCOVID-19発症予防効果は心配なことに約41%(40.5%)に低下しています2)。ただし、被験者数が少なくて対象期間も短いためかなり不確実な推定であり、今後更なる慎重な解析が必要です3)。仮に感染予防効果が落ちているとしても重症化は防げており、COVID-19入院の88%と重度COVID-19の91%を予防しました。BNT162b2はデルタ変異株感染による重症化を予防する効果も恐らく高く、先月発表された英国Public Health Englandの報告によるとデルタ変異株COVID-19入院の96%を防いでいます4)。BNT162b2は中国の武漢市で見つかったSARS-CoV-2元祖株を起源とするにも関わらず少なくとも変異株感染重症化を確かに防ぎ、2回接種すると効果が跳ね上がるのはなぜなのか? 抗体やT細胞などの標的特異的な免疫反応のみならず感染源に素早く手当たり次第より広く攻撃を仕掛ける自然免疫を引き出す力がその鍵を握るのかもしれません。SARS-CoV-2への免疫の研究やニュースといえば主に抗体で、T細胞がたまに扱われるぐらいです。スタンフォード大学の免疫学者Bali Pulendran氏のチームはそういう免疫のパーツではなくそれらを含む免疫系全体に目を向け、BNT162b2が接種された56人の血液検体を調べてみました。その結果、抗体やT細胞の反応が他の研究と同様に認められたことに加え、強力な抗ウイルス防御を担うにもかかわらずワクチン開発で見過ごされがちな効果・自然免疫の増強が判明しました5)。自然免疫の大幅な増強は2回目の接種後のことであり、インターフェロン応答遺伝子(ISG)を発現する単球様の骨髄細胞の一群・C8細胞が1回目接種1日後には血液細胞の僅か0.01%ほどだったのが2回目接種1日後には100倍多い1%ほどに増えていました。2回目接種1日後の血中インターフェロンγ(IFN-γ)濃度は高く、C8細胞の出現と関連しており、C8細胞の誘導にはIFN-γが主たる役割を担っているようです。SARS-CoV-2のみならず他のウイルスの防御にも働きうるC8細胞は新型コロナウイルス感染自体ではどうやら生じないようです5,6)。C8細胞を引き出すためにも1回のBNT162b2接種で十分とは思わず、他の多くの試験でも支持されている通り2回目も接種すべきでしょう7)。ModernaのワクチンもBNT162b2と同様にmRNAを中身とします。Modernaのワクチンも恐らくはBNT162b2と同様の反応を引き出すと想定されますが定かではありません。実際のところどうかを調べるべくPulendran氏はそれらワクチン2つの比較研究を始めています7)。参考1)Lopez Bernal J,et al.N Engl J Med. 2021 Jul 21. [Epub ahead of print] 2)Concentrated data on individuals who have been vaccinated with two vaccine (HE) doses before 31.1.2021 and follow up until 10.7.2021 / gov.il 3)Israeli Data Suggests Possible Waning in Effectiveness of Pfizer Vaccine / New York Times4)Effectiveness of COVID-19 vaccines against hospital admission with the Delta (B.1.617.2) variant / PHE5)Arunachalam PS, et al.. Nature . 2021 Jul 12. [Epub ahead of print]6)Study shows why second dose of COVID-19 vaccine shouldn't be skipped / Eurekalert.7)How the Second mRNA Vaccine Bolsters Immunity / TheScientist

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世界の小児期ワクチン接種率、直近10年は頭打ち/Lancet

 1980~2019年の世界の小児期ワクチン接種率の動向を分析した結果、2010年以降は頭打ち、もしくは後退の情勢が明らかになったという。米国・ワシントン大学のStephen S. Lim氏ら、世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study[GBD])2020共同研究グループが、世界や地域、各国における小児期予防接種実施率についてシステマティックに分析し報告した。Lancet誌オンライン版2021年7月15日号掲載の報告。204の国と地域の11ルーチン小児期予防接種実施率を推定 研究グループは、1980~2019年の国、コホート、実施年、ワクチンの種類、ワクチン投与量の別に、5万5,326のルーチン小児期予防接種の実施データを集めて解析した。時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、同期間の204の国と地域における、実施場所・年別の11ルーチン小児期予防接種の実施率を推算した。国が報告したデータは、在庫切れや供給停止の報告に基づき補正を行った。 世界・地域別のワクチン接種率や、DTP三種混合ワクチン未接種の“ゼロ接種児”の数の傾向、世界ワクチン接種行動計画(GVAP)の目標値への進捗、ワクチン接種率と社会人口学的発展との関連性について、それぞれ分析を行った。GVAP目標値達成は11ヵ国にとどまる 2019年までに、世界のDTPワクチンの3回目接種率は81.6%(95%不確実性区間[UI]:80.4~82.7)と、1980年の推定接種率39.9%(37.5~42.1)に比べ約2倍に増加した。同様に、麻疹ワクチン含有ワクチンの初回接種率も、1980年の38.5%(35.4~41.3)から2019年の83.6%(82.3~84.8)へと倍増した。 ポリオワクチン3回目接種率も、1980年の42.6%(95%UI:41.4~44.1)から2019年の79.8%(78.4~81.1)へと増加した。さらに、より新しい種類のワクチン接種率も、2000年から2019年にかけて急増が認められた。 “ゼロ接種児”の数は、1980年の5,680万児(95%UI:5,260万~6,090万)から2019年の1,450万児(1,340万~1,590万)へと、75%近く減少した。 一方で、直近10年の世界のワクチン接種率は頭打ちとなっており、94の国と地域ではDTPワクチン3回目接種率が2010年以降減少した。 GVAPの目標値である全評価済みワクチン接種率90%以上を達成していたのは、2019年時点で11の国と地域のみだった。 著者は、「今回の調査結果は、ルーチンの予防接種戦略とプログラムによるアプローチを再検討し、公平で十分なサービスを受けられていない人々にサービスを提供することの重要性を明らかにするものである」と分析し、GVAPと予防接種アジェンダ2030(Immunization Agenda 2030)が進行中であることを踏まえて「今後2030年に向けて、すべての子供がワクチンの恩恵を受けられるよう、ワクチンデータとモニタリングシステムを強化することが極めて重要だ」と述べている。

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脳卒中を発症する人としない人、過去10年間の軌跡

 脳卒中の兆候は10年前から表れているかもしれない。オランダ・Erasmus MC University Medical CenterのAlis Heshmatollah氏らが、脳卒中を起こした患者における発症前10年間の認知機能と日常生活動作(ADL)の軌跡、および脳卒中のない人の対応する軌跡を調査した。その結果、脳卒中を起こした患者は、そうでない人と比較して、過去10年間で認知機能とADLの急激な低下が見られた。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌2021年7月6日号に掲載。 研究者らは、1990~2016年の間、オランダの人口ベースのコホート「ロッテルダム研究」から、45歳以上の参加者1万4,712人を対象に、認知機能(MMSE、15-Words Learning、Letter-Digit Substitution、Stroop、Verbal Fluency、Purdue Pegboard)および基本的ADL・手段的ADL(BADL・IADL)を、4年おきに評価した。脳卒中の発症は、2018年までの医療記録を継続的に監視することで評価され、脳卒中のある者とない者を、性別および出生年に基づいて(1:3)でマッチングした。それぞれに対応する軌跡は、調整された線形混合効果モデルを使用して構築された。 主な結果は以下のとおり。・12.5±6.8年の平均追跡期間中に、計1,662例の参加者が、初めての脳卒中を経験した。・脳卒中を発症した患者は、脳卒中のない対照群よりもすべての認知機能テストで悪いスコアを示した。認知機能およびBADLは脳卒中が診断される8年前に、IADLは7年前に、脳卒中のない対照群の軌跡から逸脱し始めた。・各スコアで見られた有意な逸脱は、MMSEで脳卒中発症の6.4年前、Stroopは5.7年前、Purdue Pegboardは3.8年前、IADLは3年前、BADLは2.2年前だった。 研究者らは、「われわれの発見は、脳内病変の蓄積が脳卒中の発症前に、すでに臨床的影響を及ぼしている可能性を示唆している」と結論している。

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慢性片頭痛および併存するうつ病に対するフレマネズマブの効果

 カルシトニン遺伝子関連ペプチドを標的とした完全ヒトモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、成人の片頭痛に対する予防薬として承認されている。慢性片頭痛患者は、うつ病の合併率が高いといわれている。米国・アルバート・アインシュタイン医科大学のRichard B. Lipton氏らは、中等度~重度のうつ病を伴う慢性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性を評価した。Headache誌2021年4月号の報告。 12週間の第III相HALO試験を実施した。慢性片頭痛患者をフレマネズマブ四半期ごと投与群(675mg/プラセボ/プラセボ)、フレマネズマブ月1回投与群(675mg/225mg/225mg)、プラセボ群にランダムに割り付けた。事後分析では、中等度~重度のうつ病(ベースライン時のPHQ-9合計スコア10以上)を伴う片頭痛患者に対するフレマネズマブ投与による効果を評価した。評価項目は、1ヵ月当たりの中等度~重度の頭痛日数、1ヵ月当たりの片頭痛日数、Patient Global Impression of Change(PGIC)スコア、6-item Headache Impact Test(HIT-6)スコア、抑うつ症状とした。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に中等度~重度のうつ病を伴う片頭痛患者は、19.5%(1,121例中219例)であった。・フレマネズマブ投与は、プラセボと比較し、1ヵ月当たりの中等度~重度の頭痛日数の有意な減少との関連が認められた(各々、p<0.001)。 ●フレマネズマブ四半期ごと投与の最小二乗平均変化:-5.3±0.77 ●フレマネズマブ月1回投与の最小二乗平均変化:-5.5±0.72 ●プラセボの最小二乗平均変化:-2.2±0.81・フレマネズマブ投与は、プラセボと比較し、中等度~重度の頭痛日数が50%以上減少した患者の割合が高かった(各々、p<0.001)。 ●フレマネズマブ四半期ごと投与:39.7%(78例中31例) ●フレマネズマブ月1回投与:40.6%(96例中39例) ●プラセボ:13.4%(67例中9例)・フレマネズマブ投与は、プラセボと比較し、PGICおよびHIT-6スコアの改善が認められた。 著者らは「フレマネズマブは、慢性片頭痛の予防治療において有効性が示され、併発するうつ病の影響を軽減させることが示唆された」としている。

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