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原因不明の慢性腰痛は姿勢制御の障害が原因か

 慢性腰痛は成人の12~33%にみられるが、腰痛が慢性化する原因はまだ明らかになっていない。リスク因子として、これまでにも姿勢制御の変化が可能性として示唆されていたが、決定的な研究報告はなかった。ブラジル・サンパウロ大学のRene Rogieri Caffaro氏らは、非特異的慢性腰痛患者を対象に重心動揺測定を行い評価した結果、同患者では足圧中心動揺が増加しており、姿勢制御が障害されていることを明らかにした。とくに不安定な床面での視覚遮断(閉眼)時において顕著であったという。European Spine Journal誌2014年4月号(オンライン版2014年2月26日号)の掲載報告。 研究グループは、非特異的慢性腰痛の有無による静止立位時姿勢制御の差異を検討することを目的とした。 対象は、非特異的慢性腰痛を有する患者21例および有していない対照者23例であった。 フォースプレート(Balance MasterⓇ、NeuroCom社)を用いてModified Clinical Test of Sensory Interaction and Balance(mCTSIB)を、視覚アナログスケールにより疼痛強度を、SF-36を用いてQOLを、ローランド・モリス障害質問票を用いて機能障害を評価した。 主な結果は以下のとおり。・非特異的慢性腰痛群(cLBP)と対照群(CG)とで年齢、体重、身長、BMIに差はなかった。・cLBP群はCG群と比較し、足圧中心動揺の計測パラメータより、不安定な床面での閉眼時安静立位における姿勢動揺が大きいことが認められた(p<0.05)。・cLBP群 vs CG群の計測パラメータは、足圧中心動揺は1,432.82(73.27)vs 1,187.77(60.30)、RMS矢状面は1.21(0.06)vs 1.04(0.04)、平均振動速度は12.97(0.84)vs 10.55(0.70)であった。

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アトピー性皮膚炎に紫外線療法は有効な選択肢

オランダ・アムステルダム大学のF M Garritsen氏らは最新のシステマティックレビューを行い、アトピー性皮膚炎に対する紫外線療法は有効な治療オプションとなりうることを発表した。また著者は、今回のレビュー結果に基づき、紫外線(UV)A1およびナローバンド(NB)-UVBが有用であると述べている。一方で、今後さらによりよくデザインされた、検出力が十分な無作為化試験の必要性についても 言及した。紫外線療法はアトピー性皮膚炎患者において一般的に行われているが、その効果のエビデンスについて、直近の系統的なレビューは行われていなかった。British Journal of Dermatology誌2014年3月号の掲載報告。 本レビューは、アトピー性皮膚炎患者の紫外線療法の有効性を評価すること、エビデンスベースに基づく治療勧告を提言することを目的に行われた。 MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、Global Resource of EczemA Trials(GREAT)の電子的文献検索と、前向き試験レジスター、さらにPubMed検索で直近の試験を検索した。 アトピー性皮膚炎治療としての紫外線療法に関するすべての無作為化試験を、データ抽出対象とみなし評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・検索の結果、19試験・被験者905例が包含された。・無作為化試験は概して、臨床的および質的に不均一なものであった。そのため、正式なメタ解析はできなかった。・包含されたエビデンスに基づき(サンプルサイズが小さく、試験の質にばらつきがあり、直接比較は小数ではあったが)、UVA1、NB-UVBは、臨床的徴候および症状の減少に最も有効な治療法と思われた。・高用量UVA1と、中程度UVA1には差がみられなかった。・UVABは、UVAおよびブロードバンドUVBよりも、臨床的症状改善について、より効果的であることが示唆された。なおUVA1との比較は行われていなかった。・その他有効な治療オプションとしては、フルスペクトラムライト、ソラレン+UVA、balneophototherapyなどがあった。・重篤な副作用は報告されていなかった。

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Vol. 2 No. 2 transcatheter aortic valve implantation(TAVI)現状と将来への展望

林田 健太郎 氏慶應義塾大学医学部循環器内科はじめに経カテーテル的大動脈弁留置術 (transcatheter aortic valve implantation:TAVI)は、周術期リスクが高く外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)の適応とならない患者群、もしくは高リスクな患者群に対して、より低侵襲な治療として開発されてきた。2002年にフランスのRouen大学循環器内科のCribier教授によって第1例が施行されて以後1)、2007年にヨーロッパでCEマーク取得、2011年にはEdwards社のSapien valveがアメリカでFDA認可を受けている。現在までにヨーロッパ、アメリカを中心に世界中で7万例以上が治療されており、世界的に急速に進歩、普及しつつある治療法である。現在ヨーロッパでは2種類のTAVIデバイスが商業的に使用可能である(本誌p.16図を参照)。フランスでは2010年にすでにTAVIの保険償還がされており、現在では33施設がTAVI施行施設として認可を受けている。またTAVI症例はnational registryに全例登録が義務づけられている2)。TAVIにおける周術期死亡率の低下TAVIの歴史は合併症の歴史であるといっても過言ではない。2006、2007年のTAVIプログラム開始当初は多くの重篤な合併症を認め、低侵襲な経大腿動脈TAV(I TF -TAVI)においても20%を超える30日死亡率を認めていた。しかし、年月とともに術者・施設としての経験の増加、知見の蓄積、さらにデバイスの改良により徐々に合併症発生率は低下し、それに伴って死亡率は低下していった(図1)。特に最近では、transfemoral approachにおいては30日死亡率が5%以下まで低下しており、この数字が今後日本におけるTAVI導入においてわれわれが目指していく基準になっていくであろう。それではどのように合併症を減らしていくのか?図1 30日死亡率の推移(Institut Cardiovasculaire Paris Sudにおけるデータ)画像を拡大する2006年のTAVI開始当初は非常に高い周術期死亡率であったが、その後経験の蓄積やデバイスの改良により、現在では5%程度まで低下している。欧米のデータをいかに日本の患者さんに応用するか?私がヨーロッパにいる間は、日本の患者さんに対していかに安全にTAVIを導入するかということを常に考えて研究を行っていた。フランスにいながらにして体の小さな日本人におけるTAV Iの結果をいかにsimulateするかというのが課題であったが、われわれは体表面積(BSA)をフランスにおけるTAVIコホートの中央値である1.75をcutpointとし、small body size群とlarge body size群に分けて比較を行った(表1)。するとsmall body size群では有意に大動脈弁輪径が小さく(21.3±1.58 vs. 22.8±1.86mm, p< 0.01)、大腿動脈径も小さかった(7.59±1.06 vs. 8.29±1.34mm, p<0.01)。それに伴って弁輪破裂も増加する傾向があり(2.3 vs. 0.5%, p=0.11)、重大な血管合併症(major vascular complication)も増加した(13.0% vs. 4.3%, p<0.01)3)。われわれはsmall body size群で十分日本人のデータを代表できるのではと考えていたが、2012年の日本循環器学会で発表された日本人初のEdwards Sapien XTを用いたTAVIのtrialであるPREVAIL Japanのデータを見ると、われわれの想像をはるかに超え、日本人の平均BSAは1.4±0.14m2であり、われわれのコホートにおけるsmall body size群(1.59±0.11m2)よりさらに小さく、それに伴って大動脈弁輪径も小さかった(表1)。幸いPREVAIL Japanでは弁輪破裂は1例のみに認められ、また重大な血管合併症は6.3%であった。今後日本においてTAVIが普及していく過程において、体格の小さい日本人特有の合併症を予防することがたいへん重要であると考えられる。ではどのようにこのような合併症を低減していくことができるのか?表1 small body size群とlarge body size群の比較画像を拡大する大動脈弁輪径の計測の重要性まず弁輪破裂(もしくはdevice landing zone rupture)は心タンポナーデにより瞬時に血行動態の破綻をきたすため、致死率の高いたいへん重篤な合併症である(図2)4, 5)。Sapien valveでより頻度が高いが、CoreValveでも理論上は前拡張や後拡張時に起きうるため注意が必要である。TAVIにおいては外科手術と異なり直接sizerをあてて計測することができないため、事前に画像診断による詳細な弁輪径やバルサルバ洞径の計測、石灰化の評価とそれに最適なデバイス選択が必要である。この合併症を恐れるがあまり小さめのサイズの弁を選択すると、逆にparavalvular leakが生じやすくなり、30日死亡率6)、1年死亡率7)を増加させることが報告されている。さらには近年、中等度のみならず軽度(mild)のparavalvular leakも予後を悪化させる可能性が示唆されており8)、われわれも同様の結果を得ている(本誌p.19図を参照)9)。弁輪の正確な計測には、その構造の理解が重要である。弁輪ははっきりとした構造物ではなく、3枚の弁尖の最下部からなる平面における“virtual ring”で構成される部分であり(本誌p.19図を参照)、正円ではなく楕円であることが知られている(図3左)。この3次元構造の把握には2Dエコーに比べCTが適しているという報告があり10-12)、エコーに比べTAVIにおける後拡張の頻度を低下させたり13)、弁周囲逆流を減少させたりする14, 15)ことが報告されている。われわれもCT画像における弁輪面積より算出される幾何平均を平均弁輪径として使用し(図3右)、弁逆流量の低下を達成している16)。3Dエコーは3次元構造の把握には優れているものの、低い解像度、石灰化などによるアーティファクトの影響が除外しきれないため、現在のところ弁輪計測のモダリティとしてはガイドライン上勧められていないが17)、造影剤を必要としないなどのメリットもあり、今後の発展が期待される。図2 Sapien XT valve 留置後弁輪破裂を認めた1例画像を拡大する急速に進行する心タンポナーデに対し心嚢穿刺を行い、救命しえた1例。大動脈造影上左冠動脈主幹部の直下にcontrast protrusionを認め、弁輪破裂と考えられた。図3 CTにおける弁輪径の計測画像を拡大する大動脈弁輪は、ほとんどの症例において正円ではなく楕円である。この症例の場合、短径24.2mm、長径31.7mm、長径弁輪面積より幾何平均(geometric mean)は26.7mmと算出される。血管アクセスの評価TAVIにおいてmajor vascular complicationは周術期死亡リスクを増加させることが示唆されており18, 19)、特に骨動脈破裂は急速に出血性ショックをきたし致命的であるため、血管アクセスの評価もたいへん重要である。ほとんどの施設ではより低侵襲な大腿動脈アプローチ(transfemoral approach)が第一選択とされるが、腸骨大腿動脈アクセスの血管径や性状が適さない、もしくは大動脈にmobile plaqueが認められるなどの要因があると、その他のalternative approach、例えば心尖部アプローチ(transapical approach)、鎖骨下アプローチ(transsubclavian approach)などが適応となる。われわれはmajor vascular complicationの予測因子として、経験、大腿動脈の石灰化とともにシース外径と大腿動脈内径の比(sheath to femoral artery ratio:SFAR)を同定しており(本誌p.20表を参照)19)、そのSFARのcut pointは1.05であった(本誌p.20図を参照)。大腿動脈が石灰化していない場合は1.1であり、石灰化があると1.0まで低下していた。つまり、大腿動脈の石灰化がなければシース外径は大腿動脈内径より少し大きくなっても問題ないが、石灰化がある場合は、シース外径は大腿動脈内径を超えないほうがよいと考えられる。後にバンクーバーからも同様の報告がされており、われわれの知見を裏づけている20)。heart team approachの重要性以上、弁輪径の評価と血管アクセスなどの患者スクリーニングについて述べてきたが、いずれも画像診断が主であり、imaging specialistと働くことはたいへん重要である。またTAVIにおいては、デバイス自体がいまだ発展途上でサイズも大きく(18Frほど)、また治療対象となる患者群が非常に高齢・高リスクであることから、一度合併症が生じるとたいへん重篤になりやすく致命的であるため、PCI以上に外科医のバックアップが重要かつ必須である。特にearly experienceでは重篤な合併症が起きやすいため、経験の豊富な術者の指導のもと、チームとしての経験を重ねていくべきである。またエコー、CTなどイメージング専門医、外科医、麻酔科医との緊密な連携に基づいた集学的な“heart team approach”がたいへん重要である。TAVIのSAVR件数に与える影響2004年から2012年までの、MassyにおけるSAVRとTAVI件数の推移を図4に示す。TAVI導入以前は年間SAVRが180例ほどであったが、2006年に導入後急速に増加し、2011年には350例以上と倍増している。このように、TAVIは従来の外科によるSAVRを脅かすものではなく、今まで治療できなかった患者群が治療対象となる、まさに内科・外科両者にとって“win-win”の手技である。またSAVRに対するTAVI件数の割合も増加しており、2011年にはSAVRの半分ほどに達している。現時点では弁の耐用年数などまだ明らかになっていない点があるものの、TAVIの重要性は急激に増加している。TAVIは内科・外科が“heart team”として共同してあたる手技であり、冠動脈疾患の歴史を繰り返すことなく、われわれの手で両者にとっての共存の場にしていくことが重要であろう。図4 Institut Cardiovasculaire Paris SudにおけるTAVI導入後の外科的大動脈弁置換術とTAVI症例数の推移画像を拡大するTAVI導入後、外科的大動脈弁置換術の症例数は倍増している。将来への展望筆者が2009年から3年間留学していたフランスのMassyという町にあるInstitut Cardiovasculaire Paris Sud(ICPS)という心臓血管センターでは2006年よりTAVIを開始している。当初は22-24Frの大口径シースを用いた大腿動脈アクセスに対し外科的なcutdownを用いていたが、2008年からは穿刺と止血デバイス(Prostar XL)を用いた“true percutaneous approach”に完全移行している(図5)。 また2009年からは挿管せず全例局所麻酔と軽いセデーションのみでTF -TAVIを行っており、現在は“true percutaneous approach”と局所麻酔の両方を併せた“Minimally invasive TF -TAVI”として、良好な成績を収めている21)。このように局所麻酔とセデーションを用い、穿刺と止血デバイスを用いた“true percutaneous approach”は、経験を積めば安全で、高齢でリスクの高い大動脈弁狭窄症患者に対し、非常に低侵襲に大動脈弁を留置することができるたいへん有用な方法である。離床も早く、合併症がない場合の平均入院期間は1週間以下であるため、従来のSAVRに比べ大幅に入院期間を短縮でき、ADLを損なう可能性も低い。手技自体も、穿刺、止血デバイスを用いることから合併症がなければ1時間以内で終了し、通常の冠動脈インターベンション(PCI)のイメージと近くなっている。しかし、経験の初期は全TAVIチームメンバーのlearning curveを早く上げることが先決であり、無理をして最初から導入する必要はないが、次世代TAVIデバイスであるEdwards Sapien 3は14Frシースであるため、この方法が将来主流となってくる可能性が高い。筆者が2010年に参加したスイスで行われているCoreValveのtraining courseでは止血デバイスの使用法が講習に含まれており、特に超高齢者におけるメリットは大きく、今後日本でもわれわれが目指していくべき方向である。今年2013年でfirst in man1)からいまだ11年というたいへん新しい手技であり、弁の耐久性など長期成績が未確定であるものの、今後急速に普及しうる手技である。日本においてはEdwards Lifesciences社のSapien XTを用いたPREVAIL Japan trialが終了し、早ければ2013年度中にも同社のTAVIデバイスの保険償還が見込まれている。また現在、Medtronic社のCoreValveも治験が終了しようとしており、高リスクな高齢者に対するより低侵襲な大動脈弁治療のために、早期に使用可能となることが望まれる。現在ヨーロッパを中心とした海外では、Sapien、CoreValveなどの第1世代デバイスの弱点を改良した、もしくはまったく新しいコンセプトの第2世代デバイスが続々と誕生し、使用されつつある。いくつかのデバイスはすでにCEマークを取得しているか、もしくはCEマーク取得のためのトライアル中であり、今後急速に発展しうるたいへん楽しみな分野である。図5 18Fr大口径シースに対する止血デバイス(Prostar XL)を用いたtrue percutaneous approach画像を拡大するA:造影ガイド下に総大腿動脈を穿刺する。B:シース挿入前に止血デバイス(Prostar XL)を用い、糸をかける(preclosure technique)。C:弁留置後シース抜去と同時にknotを締めていく。D:非常に小さな傷しか残らず終了。おわりに本稿ではTAVIの現状と将来への展望について概説した。TAVI適応となるような高リスクの患者群ではminor mistakeがmajor problemとなりうるため、綿密なスクリーニングと経験のあるインターベンション専門医による丁寧な手技による合併症の予防がたいへん重要である。また、ヨーロッパではすでに2007年にCEマークが取得され、多くの症例が治療されているが、いまだこの分野の知識の発展は激しく日進月歩であり、解明すべき点が多く残っている。日本におけるTAVI導入はデバイスラグの問題もあり遅れているが、すでに世界で得られている知見を生かし、また日本人特有の繊細なスクリーニング、手技により必ず世界に誇る成績を発信し、リードすることができると確信している。そのためには“Team Japan”として一丸となってデータを発信していくための準備が必要であろう。文献1)Cribier A et al. Percutaneous transcatheter implantation of an aortic valve prosthesis for calcific aortic stenosis: first human case description. Circulation 2002; 106: 3006-3008. 2)Gilard M et al. Registry of transcatheter aorticvalve implantation in high-risk patients. N Engl J Med 2012; 366: 1705-1715. 3)Watanabe Y et al. Transcatheter aortic valve implantation in patients with small body size. Cathether Cardiovasc Interv (in press). 4)Pasic M et al. Rupture of the device landing zone during transcatheter aortic valve implantation: a life-threatening but treatable complication. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 424-432. 5)Hayashida K et al. Successful management of annulus rupture in transcatheter aortic valve implantation. JACC Cardiovasc Interv 2013; 6: 90-91. 6)Abdel-Wahab M et al. Aortic regurgitation after transcatheter aortic valve implantation: incidence and early outcome. Results from the German transcatheter aortic valve interventions registry. Heart 2011; 97: 899-906. 7)Tamburino C et al. Incidence and predictors of early and late mortality after transcatheter aortic valve implantation in 663 patients with severe aortic stenosis. Circulation 2011; 123: 299-308. 8)Kodali SK et al. Two-year outcomes after transcatheter or surgical aortic-valve replacement. N En gl J Me d 2 012; 36 6: 1686-1695. 9)Hayashida K et al. Impact of post-procedural aortic regurgitation on mortality after transcatheter aortic valve implantation. JACC Cardiovasc Interv 2012 (in press). 10)Schultz CJ et al. Cardiac CT: necessary for precise sizing for transcatheter aortic implantation. EuroIntervention 2010; 6 Suppl G: G6-G13. 11)Messika-Zeitoun D et al. Multimodal assessment of the aortic annulus diameter: implications for transcatheter aortic valve implantation. J Am Coll Cardiol 2010; 55: 186-194. 12)Piazza N et al. Anatomy of the aortic valvar complex and its implications for transcatheter implantation of the aortic valve. Circ Cardiovasc Interv 2008; 1: 74-81. 13)Schultz C et al. Aortic annulus dimensions and leaflet calcification from contrast MSCT predict the need for balloon post-dilatation after TAVI with the Medtronic CoreValve prosthesis. EuroIntervention 2011; 7: 564-572. 14)Willson AB et al. 3-Dimensional aortic annular assessment by multidetector computed tomography predicts moderate or severe paravalvular regurgitation after transcatheter aortic valve replacement a multicenter retrospective analysis. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 1287-1294. 15)Jilaihawi H et al. Cross-sectional computed tomographic assessment improves accuracy of aortic annular sizing for transcatheter aortic valve replacement and reduces the incidence of paravalvular aortic regurgitation. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 1275-1286. 16)Hayashida K et al. Impact of CT-guided valve sizing on post-procedural aortic regurgitation in transcatheter aortic valve implantation. EuroIntervention 2012; 8: 546-555. 17)Zamorano JL et al. EAE/ASE recommendations for the use of echocardiography in new transcatheter interventions for valvular heart disease. Eur Heart J 2011; 32: 2189-2214. 18)Genereux P et al. Vascular complications after transcatheter aortic valve replacement: insights from the PARTNER (Placement of AoRTic TraNscathetER Valve) trial. J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1043-1052. 19)Hayashida K et al. Transfemoral aortic valve implantation: new criteria to predict vascular complications. J Am Coll Cardiol Intv 2011; 4: 851-858. 20)Toggweiler S et al. Percutaneous aortic valve replacement: vascular outcomes with a fully percutaneous procedure. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 113-118. 21)Hayashida K et al. True percutaneous approach for transfemoral aortic valve implantation using the Prostar XL device: impact of learning curve on vascular complications. JACC Cardiovasc Interv 2012; 5: 207-214.

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メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる

 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、ドパミンおよびノルアドレナリン作動性神経伝達を介する前頭前皮質の変化に伴う神経発達障害である。神経ステロイド(アロプレグナノロン、デヒドロエピアンドロステロンなど) は、さまざまな神経伝達物質の分泌を調節する。スペイン・Complejo Hospitalario GranadaのAntonio Molina-Carballo氏らは、小児ADHD患者を対象とし、神経ステロイドの濃度ならびにメチルフェニデート服薬による臨床症状への効果および神経ステロイド濃度への影響を検討した。その結果、ADHDのタイプにより神経ステロイドはそれぞれ異なったベースライン濃度を示し、メチルフェニデートに対して異なる反応を呈することを報告した。Psychopharmacology誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 本研究は、小児ADHDにおけるアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度と日内変動を明らかにするとともに、メチルフェニデート継続服薬による臨床症状への効果およびこれら2種類の神経ステロイドの濃度への影響を明らかにすることを目的とした。対象は、5~14歳の小児148例で、DSM-IV-TR分類でADHDと診断され、“attention deficit and hyperactivity scale”によるサブタイプと“Children's Depression Inventory”によるサブグループが明らかになっているADHD群(107例)と対照群(41例)であった。両群とも20時と9時に血液サンプルを採取し、ADHD群では治療開始4.61±2.29ヵ月後にも血液を採取しアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロン濃度を測定した。Stata 12.0を用いて年齢と性別で調整した因子分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・メチルフェニデートの投与により、うつ症状を伴わないinattentiveサブタイプのADHD患者においてアロプレグナノロン濃度が2倍に増加した(27.26 ± 12.90 vs. 12.67 ±6.22ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うADHDサブタイプではデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度が高く、メチルフェニデート投与後はわずかな増加を認めたが統計学的有意差はなかった (7.74 ± 11.46 vs. 6.18 ±5.99 ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うinattentiveサブタイプのADHD患者において、デヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度は低かったが、メチルフェニデート投与後にはさらに減少した。・ADHDサブタイプおよびサブグループによって、神経ステロイドはその種類によりベースライン濃度が異なり、メチルフェニデートに対して異なる反応を示す。これらの異なる反応性は、ADHDサブタイプや併存症の臨床マーカーになる可能性がある。関連医療ニュース ADHDに対するメチルフェニデートの評価は 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か

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海水温泉浴+ナローバンドUVBが乾癬治療に有用

 乾癬治療として、アイスランド大学のJenna Huld Eysteinsdottir氏らは、海水温泉浴+ナローバンドUVB(NB-UVB)療法とNB-UVB単独療法を比較する無作為化試験を行った。同治療として、海水浴+NB-UVB療法はすでに知られている。今回の検討では、海水温泉浴併用について標準療法と強化療法を設定し、NB-UVB単独を含め3つのUVB療法について比較することが目的であった。Photodermatology Photoimmunology & Photomedicine誌2014年2月号(オンライン版2013年12月10日号)の掲載報告。 研究グループは、乾癬外来患者を、海水温泉浴+NB-UVB標準療法、海水温泉浴+NB-UVB強化療法、NB-UVB単独療法の3群に無作為化し、6週間にわたり治療を行い、その効果について比較する検討を行った。標準療法群は週3回、強化療法群は毎日、NB-UVB単独群は週3回治療を行った。 疾患重症度(PASI、Lattice System Physician's Global Assessmentスコア)、QOL(皮膚状態に関連する生活の質:DLQI)、治療前・中・後に評価した組織学的変化を評価した。主要エンドポイントは、6週時点のPASI 75達成患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・被験者は68例であった。・6週時点のPASI 75およびPASI 90の達成患者の割合は、海水温泉浴併用療法の標準療法(週3回)群で68.1%と18.2%、強化療法(毎日)群で73.1%と42.3%と、いずれもNB-UVB単独群の16.7%と0%と比べて有意に多かった(すべての比較についてp<0.05)。・臨床的改善は、QOLの改善、組織学的スコア、NB-UVB用量の減少と連動していた。・これらの結果を踏まえて著者は、「乾癬患者について、NB-UVBと海水温泉浴の組み合わせは、速やかな臨床的および組織学的改善をもたらし、寛解期を長期に維持し、NB-UVB単独療法よりも低用量のNB-UVB治療を可能とする」とまとめている。

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アルツハイマー病の焦燥性興奮にシタロプラムは有効か/JAMA

 アルツハイマー病とみられ焦燥性興奮(agitation)を呈し心理社会的介入を受けている患者に対して、SSRI薬のシタロプラムの追加治療は、焦燥性興奮および介護者の負担を有意に減少することが、米国・ロチェスター大学医歯学部のAnton P. Porsteinsson氏らによるプラセボ対照の無作為化試験の結果、示された。ただし、認知機能や心臓への有意な有害作用もみられ、臨床で用いることが可能な用量には限界があることも判明した。先行研究でシタロプラムは、認知症の焦燥性興奮や攻撃性に対する有効性が示唆されていたが、エビデンスは限定的であり、著者らは有効性および安全性、忍容性の検討を行った。JAMA誌2014年2月19日号掲載の報告より。186例を+シタロプラム群、+プラセボ群に無作為化し9週間治療 研究グループは、アルツハイマー病患者における焦燥性興奮に対するシタロプラムの有効性評価を主要目的とする、無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験「Citalopram for Agitation in Alzheimer Disease Study(CitAD)」を行った。試験には副次目的としてシタロプラムの、「機能」「介護者負担」「安全性」「認知機能的安全性」「忍容性」をキーとした各影響を調べることも含まれた。 CitAD試験には、2009年8月~2013年1月に米国とカナダの8つの大学病院から、アルツハイマー病とみなされ臨床的に焦燥性興奮がみられた186例の患者が登録。被験者は、心理社会的介入+シタロプラムを受ける群(94例)またはプラセボを受ける群(92例)に割り付けられ、9週間治療を受けた。シタロプラムの投薬量は開始時10mg/日から、治療反応と忍容性に基づき3週間で30mg/日まで増量された。 主要評価項目は、18点評価のNeurobehavioral Rating Scale agitation subscale(NBRS-A)および修正版Alzheimer Disease Cooperative Study-Clinical Global Impression of Change(mADCS-CGIC)のスコア評価であった。その他のアウトカムとして、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)のスコア、日常生活動作(ADL)、介護者負担、認知機能安全性(MMSEの30点評価による)、有害事象についても評価した。焦燥性興奮と介護者負担は有意に軽減、しかし認知機能と心臓に有意な有害作用も 被験者は、平均年齢78~79歳、女性46%、89%が地域居住者で、直近5年間に認知症と診断された患者であった。 両群とも90%超が9週間の治療を完了した。またシタロプラム群で投薬量30mg/日を受けた被験者は78%、20mg/日は15%だった。 結果、NBRS-AとmADCS-CGICいずれのスコアも、シタロプラム群がプラセボ群と比べて有意な改善を示した。9週時点でのNBRS-Aスコアの推定両群差は-0.93(95%信頼区間[CI]:-1.80~-0.06、p=0.04)だった。mADCS-CGICによる評価では、シタロプラム群はベースライン時から40%の中等度~顕著な改善を示した。プラセボ群は同26%で、シタロプラムの推定治療効果(特定CGIC項目の改善オッズ比[OR])は2.13倍(95%CI:1.23~3.69、p=0.01)とされた。 シタロプラム群は、CMAIと総NPIのスコア、介護者負担も有意に改善したが、NPIサブスケールの焦燥性興奮、ADLの改善、またロラゼパム(商品名:ワイパックスほか)の緊急投与の低減については有意差はみられなかった。 さらに、シタロプラム群では、認知機能の悪化が有意で(-1.05点、95%CI:-1.97~-0.13、p=0.03)、QT間隔延長が有意であった(18.1ms、95%CI:6.1~30.1、p=0.01)。 著者は、「アルツハイマー病とみられる焦燥性興奮のある患者において、心理社会的介入に加えてシタロプラム治療を行うことは、プラセボとの比較で焦燥性興奮と介護者負担を有意に軽減した。ただし、認知機能および心臓への副作用から投与量は30mg/日が限度であると思われる」とまとめている。

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レストレスレッグス症候群におけるプレガバリンの可能性/NEJM

 レストレスレッグス症候群(RLS、むずむず脚症候群、Willis–Ekbom病)の治療薬として、プレガバリン(商品名:リリカ)はプラセボよりも有意に治療アウトカムを改善し、プラミペキソール(同:ビ・シフロールほか)に比べ症状の増強(augmentation)が少ないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のRichard P Allen氏らの検討で確認された。RLSの症状はプラミペキソールなどの短時間作用型ドパミン作動薬によって軽減するが、長期間投与すると医原性の悪化(症状の増強)の原因となる可能性がある。プレガバリンは、鎮痛作用および抗痙攣作用を有する非ドパミン作動性の薬剤であり、最近、無作為化試験でRLSに対する効果が示されている。NEJM誌2014年2月13日号掲載の報告。プレガバリンの有用性を無作為化試験で評価 研究グループは、RLSに対するプレガバリンの有用性を評価する二重盲検無作為化試験を実施した。対象は、年齢18歳以上、国際RLS(IRLS)研究グループ判定基準で中等度~重度のRLSと診断され、主に夜間に発現する症状が月に15日以上みられ、6ヵ月以上持続している患者とした。 これらの患者が、プレガバリン300mg/日(52週)群、プラミペキソール0.25mg/日(52週)群、プラミペキソール0.5mg/日(52週)群、またはプラセボを12週間投与後に無作為に割り付けた実薬を40週投与する群のいずれかに無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、1)12週投与後のプレガバリンとプラセボのIRLS研究グループ評価スケール(0~40点、スコアが高いほど症状が重度)、2)改善度の臨床全般印象(Clinical Global Impression of Improvement; CGI-I)の「きわめて大きく改善(very much improved)」または「大きく改善(much improved)」の割合、3)プレガバリンとプラミペキソールの40週または52週投与後の症状増強の発現であった。主要評価項目がすべて改善、長期投与の制限因子も 2008年12月~2011年6月に、欧米の102施設から719例が登録され、プレガバリン群に182例、プラミペキソール0.25mg群に178例、同0.5mg群に180例、プラセボ群には179例が割り付けられた。ベースラインの患者背景や治療完遂率は、各群間に差はみられなかった。 12週の投与後のIRLSスケールの平均スコアは、プレガバリン群がプラセボ群に比べ4.5点低下し、有意な改善効果が認められた(p<0.001)。プラミペキソール0.5mg群も、プラセボ群より3.2点低下したが(p<0.001)、0.25mg群では改善効果はみられなかった(p=0.36)。 CGI-Iで症状が「きわめて大きく改善」「大きく改善」の患者の割合も、プレガバリン群がプラセボ群よりも有意に良好であった(71.4 vs. 46.8%、p<0.001)。プラミペキソール0.5mg群も、プラセボ群に比べ有意に改善したが(p=0.002)、0.25mg群では改善効果は認めなかった(p=0.439)。 40週または52週投与後の全体の症状増強率は、プレガバリン群がプラミペキソール0.5mg群よりも有意に低かったが(2.1 vs. 7.7%、p=0.001)、0.25mg群との間には有意差はなかった(2.1 vs. 5.3%、p=0.08)。 治療中止の理由となった有害事象の発現率は、プレガバリン群(27.5%)がプラミペキソール群(0.25mg群18.5%、0.5mg群23.9%)よりも高かった。頻度の高い有害事象として、プレガバリン群でめまい(21.4%)、眠気(17.6%)、疲労(12.6%)、頭痛(12.1%)が、プラミペキソール群では頭痛、悪心、疲労、鼻咽頭炎が認められた。 有害事象の94.0%が軽度~中等度であり、重篤な有害事象は37例(50件)にみられた(プレガバリン群11件、プラミペキソール0.25mg群20件、0.5mg群12件、プラセボ群7件)。また、自殺念慮が11例に認められた(プレガバリン群6例、プラミペキソール0.25mg群3例、0.5mg群2例)。 著者は、「プレガバリンは、プラセボに比べ治療アウトカムを有意に改善し、症状増強率はプラミペキソール0.5mgよりも有意に低かった」とまとめ、「自殺念慮や眩暈、眠気が、プレガバリンの長期投与の制限因子となる可能性もある」と指摘している。

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治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ

 韓国・高麗大学校のChangsu Han氏らは、初回抗うつ薬治療に部分的反応もしくは反応しなかった大うつ病性障害(MDD)患者について、患者の選択により、(1)アリピプラゾール増強(AT群)、(2)他の抗うつ薬を追加(AC群)、(3)異なる抗うつ薬に切り替える(SW群)の3つの中から選択をしてもらい、有効性、忍容性を検証した。その結果、ATを選択した患者が最も多く、臨床的有益性も同群が最も大きかったことを報告した。このような検討は、これまで行われていなかったという。Journal of Psychiatric Research誌2014年2月号の掲載報告。 本検討は多施設共同にて行われた。初回抗うつ薬治療に部分的反応もしくは反応しなかったMDD患者について、患者の選択により、AT、AC、SWを選択してもらい評価を行った。主要有効性評価項目は、8週後に、Clinical Global Impression-Clinical Benefit(CGI-CB)スコアの改善を示した患者の割合とした。副次有効性評価項目は、CGI-CBの変化、CGI重症度(CGI-S)の変化、および主観的な満足度スコアの変化などであった。また、寛解および治療反応の分析も行われた。 主な結果は以下のとおり。・合計295例の患者が登録された。・患者が最も好んだ治療戦略は、ATであった(156例、52.9%)。続いてAC(93例、31,5%)、SW(46例、15.6%)であった。・スコア改善者は、AT群が74.1%と、AC群の48.1%と比べて有意に高く(p<0.001)、SW群(73.5%)とは同程度であった(p=0.948)。一方、AC群とSW群の間に有意差はみられなかった。・同様の結果は、副次エンドポイントの大半においてもみられ、ATのACに対する優位性、およびATとSWの間に差はないことが示された。・忍容性プロファイルは、3群全体で類似していた。しかしながら、平均体重増加量はSW群(-0.1kg)が、AC群(1.3kg)よりも有意に少なかった(p<0.05)。・以上のように、大うつ病性障害患者は抗うつ薬治療の効果が得られなかったとき、ACまたはSWよりもATを選択した。これら3つの治療戦略において、全体的にATは、ACまたはSWよりも臨床的な有益性が大きかった。・今回の知見について著者は、「方法論的に限界があった。強固な確証を得るには、検出力が適切であり管理が良好な臨床試験が望まれる」とまとめている。■関連記事難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用かうつ病に対するアリピプラゾール強化療法、低用量で改善SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

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時間外受診の急性心筋梗塞、死亡率上昇/BMJ

 診療時間外に受診した急性心筋梗塞(AMI)患者は、時間内受診患者に比べて短期的な死亡率が高く、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は病院到着から初回バルーン拡張までの時間(door to balloon time)が延長することが、米国・メイヨークリニック予防医学フェロー・反田 篤志氏らが行ったメタ解析で示された。週末や夜間などの診療時間外に受診したAMI患者は、死亡率が高くなる可能性が指摘されている。時間外診療の場合、エビデンスに基づく治療や適切な再灌流療法が行われにくくなり、病院スタッフの数や専門性の問題で治療の質を保持するのが困難になることが一因だという。BMJ誌オンライン版2014年1月21日号掲載の報告。時間外受診と死亡の関連をメタ解析で評価 研究グループは、AMI患者の時間外受診と、door to balloon timeおよび死亡との関連を評価するために、関連文献の系統的レビューとメタ解析を実施した。 複数のデータベースを検索し、2013年4月までに公表された、医療機関の受診時間と死亡、door to balloon timeとの関連を評価した関連文献を選定した。 患者背景およびアウトカムの関連データを抽出し、試験の質はNewcastle-Ottawaスケールで評価した。異質性(heterogeneity)の評価にはCochraneのQ統計量とI2を用いた。死亡率の差が大きくなる傾向に 日本の1試験(STEMI患者1,974例)を含む48試験に登録された189万6,859例がメタ解析の対象となった。36試験(189万2,424例)がAMI患者の死亡アウトカムを、30試験(7万534例)がSTEMI患者のdoor to balloon timeを報告していた。 時間外受診患者は、院内または30日以内の死亡率が有意に高かった(オッズ比[OR]:1.06、95%信頼区間:1.04~1.09)。時間外受診したSTEMI患者は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の90分以内施行率が有意に低く(OR:0.40、95%CI:0.35~0.45)、door to balloon timeが14.8分長かった。 サブグループ解析では、STEMI患者(vs. 非STEMI、p<0.01)および北米以外の国(vs. 北米、p<0.01)は、時間外受診AMI患者の院内または30日死亡率が高かった。最近は、診療時間外受診と時間内受診で死亡率の差が大きくなる傾向が認められた(p=0.03)。 これらの結果を踏まえ、著者は「受診の時間帯の違いに起因するアウトカムの差を明らかにし、治療の質を適切に評価するには、標準化30日死亡リスクなど、value-based purchasing(医療の質に応じて報酬を付与するシステム)に基づく医療機関の能力評価が必要かもしれない」と指摘している。

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サッカーファンの肥満男性のために英プレミアリーグが動く/Lancet

 肥満男性は年々増加しているが、多くの男性が減量プログラムに消極的である。そこで英国・グラスゴー大学のKate Hunt氏らは、スコットランド・プレミアリーグ傘下のサッカークラブに依頼をして、各地域でクラブのコーチが指導を行う減量プログラムを開発し、“サッカーファンの肥満男性”に参加してもらい効果を検証した。実践的無作為化比較試験にて行われた本検討の結果、参加被験者の体重が減少し臨床的効果が認められたという。Lancet誌オンライン版2014年1月20日号掲載の報告より。プレミアリーグクラブのコーチが指導する減量プログラムを開発 研究グループは、サッカーファンのための減量・健康生活プログラム(Football Fans in Training:FFIT)の効果を評価することを目的に、2群比較の実践的無作為化試験を行った。13のスコットランドのプロサッカークラブから、35~65歳でBMI 28以上のサッカーファンの男性747例を集めた。被験者はクラブごとに階層化され、毎週開催の12のセッション(各クラブのコーチによる減量プログラム)に参加するよう介入群(374例)と対照群(374例)に無作為に割り付けられた。 介入群には、3週間以内に減量プログラムが開始され、対照群は、12ヵ月間待機するよう指示された。被験者には全員、体重管理の小冊子が配布された。 主要アウトカムは、12ヵ月時点の両群の体重減少の平均差であった。評価は、絶対体重とパーセンテージ(減量率)で評価した。なお主要アウトカムは、マスキングされ、解析はintention to treatにて行われた。12ヵ月後、介入群と対照群とで有意な体重減少の差 12ヵ月時点の評価を受けたのは、介入群89%(333例)、対照群95%(355例)だった。 12ヵ月時点での両群間の体重減少の平均差は、ベースライン時体重とクラブで補正後、4.94kg(95%信頼区間[CI]:3.95~5.94)だった。減量率は、同様の補正後4.36%(同:3.64~5.08)で、いずれにおいても介入の有意性が認められた(p<0.0001)。 重大有害イベントは8件報告された。介入群では5例(既往狭心症の服薬による意識喪失、胆嚢切除、心筋梗塞疑いの入院、消化管破裂、アキレス腱断裂)、対照群は3例(一過性脳虚血発作、2例の死亡)だった。これらのうち、プログラムに関連していたのは、胆囊切除とアキレス腱断裂の2つだった。 以上を踏まえて著者は、「FFITプログラムは、多くの男性の臨床的に有意義な減量に役立つ可能性がある。男性肥満への効果的なチャレンジ戦略である」とまとめている。

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太り過ぎのリスクは、血圧、脂質、血糖のコントロールによってかなり解消できる/Lancet

 高BMIにより冠動脈心疾患や脳卒中のリスクが増大した集団では、血圧、コレステロール、血糖を低下させることで、リスクの増分が大幅に減少することが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のGoodarz Danaei氏らGlobal Burden of Metabolic Risk Factors for Chronic Diseases Collaboration(BMI Mediated Effects)の調査で示された。この30年間で、世界的にBMIが上昇し糖尿病罹患者数が増加しているのに対し、全体的な平均血圧やコレステロールは低下または横ばいの状況だという。これら3つのメタボリック・リスク因子を改善することで、高BMIによる有害な作用をどの程度軽減できるかは、重要な臨床的かつ公衆衛生学的な課題であった。Lancet誌オンライン版2013年11月22日号掲載の報告。総計約1,800万人、冠動脈心疾患5万7,000件、脳卒中3万1,000件につき解析 研究グループは、冠動脈心疾患や脳卒中の発症に及ぼすBMIの影響が、どの程度血圧やコレステロール値、血糖値に依存しているかを定量化し、これらの因子の依存度を評価する調査を行った。 1948~2005年までに発表された97件(東・東南アジア33件、西ヨーロッパ32件、北米15件、オーストラリア・ニュージーランド10件、南米・中央/東ヨーロッパ・北アフリカ・中東7件)の前向きコホート試験(総参加者数約1,800万人)のデータをプールした。イベント発生数は、冠動脈心疾患が5万7,161件、脳卒中は3万1,093件だった。個々のコホートから、18歳未満、BMI値20未満の参加者、および冠動脈心疾患、脳卒中の既往歴のある参加者を除外した。 BMIの冠動脈心疾患および脳卒中に対するハザード比(HR)を、血圧、コレステロール値、血糖値のすべての組み合わせで調整した場合としない場合に分けて推算。ランダム効果モデルを用いてHRをプールし、3つのメディエーターで調整後の増分リスクの減少を算出した。冠動脈心疾患の増分リスクの約3分の1、脳卒中の約3分の2を血圧が占める BMI値が5増加するごとに、交絡因子調整済みのHRが冠動脈心疾患で1.27(95%信頼区間[CI]:1.23~1.31)、脳卒中で1.18(同:1.14~1.22)に上昇した。 3つのメタボリック・リスク因子で調整したところ、HRは冠動脈心疾患が1.15(95%CI:1.12~1.18)へ、脳卒中は1.04(同:1.01~1.08)へと低下し、BMIによる冠動脈心疾患の増分リスクの46%(同:42~50)、また脳卒中の増分リスクの76%(同:65~91)が、高血圧や高血糖、高コレステロールによって誘導されることが示唆された。 血圧が最も重要なメディエーターであり、BMIによる冠動脈心疾患のリスクの増分の31%(95%CI:28~35)、脳卒中の場合はその65%(同:56~75)を占めた。これら3つのメディエーターによって誘導されるリスクの増分の割合は、アジアと西欧(北米、西ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド)との間で差は認めなかった。 正常体重(BMI:20~25未満)に比べ、過体重(同:25~30未満)および肥満(同:30以上)によって冠動脈心疾患および脳卒中のリスクが有意に増大し、3つのメディエーターによって誘導された過体重によるリスクの増分は50%(95%CI:44~58)、肥満による増分は44%(同:41~48)だった。脳卒中の発症に占める過体重のリスクは98%(同:69~155)、肥満のリスクは69%(64~77)だった。 著者は、「血圧、コレステロール、血糖を低下させる介入により、高BMIによる冠動脈心疾患の増分リスクが約半分に減少し、脳卒中の増分リスクは約4分の3にまで低下した。肥満よりも過体重でリスクが大きかった」とまとめ、「3つのメディエーターを低下させる介入により、高BMIが心血管疾患に及ぼす影響のかなりの部分が解消される可能性がある。すべてのベネフィットを達成するには最適な体重の維持が必要である」と指摘している。

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レベチラセタムの神経活性阻害、新たな機序が判明:熊本機能病院

 抗てんかん薬レベチラセタム(LEV)はユニークな作用機序を有するが、その機序は完全には解明されていない。熊本機能病院の脇田 真仁氏らは、LEVの作用機序を詳細に解明するため、ラットを用いてLEVが海馬苔状線維-CA3ニューロンのグルタミン作動性伝達に及ぼす影響を検討した。その結果、LEVはZn2+誘発性のGABA A を介したシナプス前抑制の阻害を解除し、グルタミン酸を介した興奮性シナプス伝達を低下させることを示した。Journal of Pharmacology Experimental Therapeutics誌オンライン版2013年11月20日号の掲載報告。 研究グループは、ラットから単離した神経シナプスボタンを材料とし、海馬苔状線維-CA3ニューロンのグルタミン作動性伝達に及ぼすLEVの作用を検討した。活動電位誘発性の興奮性シナプス後電流(eEPSCs)を、従来の全細胞記録によるパッチクランプ法を用い、電位固定による電流記録(ボルテージクランプ)により波形を記録した。 主な結果は以下のとおり。・抗てんかん薬フェニトインは、電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流を阻害し、濃度依存的にグルタミン作動性eEPSCs を減少させた。・一方LEVは、eEPSCsおよび電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流に影響を及ぼさなかった。・神経終末部のGABA A 受容体の活性化は、神経伝達物質の1つであるムッシモールによるeEPSCs阻害の結果、苔状線維終末部を脱分極させた。・eEPSCsおよび電位依存性Na+およびCa2+チャネル電流に影響を及ぼさない低濃度Zn2+は、ムッシモールに誘発されるシナプス前抑制を低下させた。・LEVを1μM濃度のムッシモールおよび1μM濃度のZn2+に持続的に曝露すると、Zn2+のeEPSCsに対する修飾を回復させた。・LEVのZn2+誘発性のシナプス前GABA A 受容体阻害に対する拮抗的作用は、Zn2+キレート、Ca-EDTAおよびRhodozin-3においても観察された。・以上のことから、LEVはZn2+誘発性のGABA A を介したシナプス前抑制の阻害を解除し、グルタミン酸を介した興奮性シナプス伝達を低下させることが明らかとなった。これは、LEVが神経活性を阻害する新たなメカニズムを示唆する知見である。■関連記事難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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Vol. 2 No. 1 これからの血管内治療(EVT)、そして薬物療法

中村 正人 氏東邦大学医療センター大橋病院循環器内科はじめに冠動脈インターベンションの歴史はデバイスの開発と経験の蓄積の反映であるが、末梢血管の血管内治療(endovascular treatment: EVT)も同じ道を歩んでいる。対象となる血管が異なるため、冠動脈とは解剖学的、生理学的な血管特性は異なるが、問題点を解決するための戦略の模索は極めて類似している。本稿では、末梢血管に対するインターベンションの現況を総括しながら、今後登場してくるnew deviceや末梢閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法について展望する。EVTの現況EVTの成績は治療部位によって大きく異なり、大動脈―腸骨動脈領域、大腿動脈領域、膝下血管病変の3区域に分割される。個々の領域における治療方針の指標としてはTASCIIが汎用されている。1.大動脈―大腿動脈 この領域の長期成績は良好である。TASCⅡにおけるC、Dは外科治療が優先される病変形態であるが、外科治療との比較検討試験で2次開存率は外科手術と同様の成績が得られることが示されている1)。解剖学的外科的バイパス術は侵襲性が高いこともあり、経験のある施設では腹部大動脈瘤の合併例、総大腿動脈まで連続する閉塞病変などを除き、複雑病変であってもEVTが優先されている(図1、2)。従って、完全閉塞性病変をいかに合併症なく初期成功を得るかが治療の鍵であり、いったん初期成績が得られると長期成績はある程度担保される。図1 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢画像を拡大するDistal bypass術により救肢を得た透析例が数年後、膝部の難治性潰瘍で来院。腸骨動脈から大腿動脈に及ぶ完全閉塞を認めた(a)。ガイドワイヤーは静脈bypass graftにクロスし(b)、腸骨動脈はステント留置、総大腿動脈はバルーンによる拡張術を行った。Distal bypass graftの開存(黒矢印)と大腿深動脈の血流(白矢印)が確認された(c)図2 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢(つづき)画像を拡大する2.大腿動脈領域 下肢の閉塞性動脈硬化症の中で最も治療対象となる頻度が高い領域である。このため、関心も高く、各種デバイスが考案されている。大腿動脈は運動によって複雑な影響を受けるため、EVTの成績は不良であると考えられてきた。しかし、ナイチノールステントが登場し、EVTの成績は大きく改善し適応は拡大した。EVTの成績を左右する最も強い因子は病変長であり、バルーンによる拡張術とステントの治療の比較検討試験の成績を鑑み、病変長によって治療戦略は大別することができる。(1)5cm未満の病変に対する治療ではバルーンによる拡張術とステント治療では開存性に差はなく、バルーンによる拡張を基本とし、不成功例にベイルアウトでステントを留置する。(2)病変長が5cm以上になると病変長が長いほどバルーンの成績は不良となるが、ステントを用いた拡張術では病変長によらず一定の成績が得られる。このためステントの治療を優先させる。(3)ステントによる治療も15cm以上になると成績が不良となりEVTの成績は外科的バイパス術に比し満足できるものではない2)。開存性に影響する他の因子には糖尿病、女性、透析例、distal run off、重症虚血肢、血管径などが挙げられる。また、ステント留置後の再狭窄パターンが2次開存率に影響することが報告されている3)。3.膝下動脈 この領域は、長期開存性が得難いため跛行肢は適応とはならない。現状、重症虚血肢のみが適応となる。本邦では、糖尿病、透析例が経年的に増加してきており、高齢化と相まって重症虚血肢の頻度は増加している。重症虚血肢の血管病変は複数の領域にわたり、完全閉塞病変、長区域の病変が複数併存する。本邦におけるOLIVE Registryでも浅大腿動脈(SFA)単独病変による重症虚血肢症は17%にとどまり、膝下レベルの血管病変が関与していた(本誌p.24図3を参照)4)。この領域はバルーンによる拡張術が基本であり、本邦では他のデバイスは承認されていない。治療戦略で考慮すべきポイントを示す。(1)in flowの血流改善を優先させる。(2)潰瘍部位支配血管すなわちangiosomeの概念に合わせて血流改善を図る。(3)末梢の血流改善を創傷部への血流像(blush score)、または皮膚灌流圧などで評価する。従来、straight lineの確保がEVTのエンドポイントであったが、さらに末梢below the ankleの治療が必要な症例が散見されるようになっている(図4)。創傷治癒とEVT後の血管開存性には解離があることが報告されているが5)、治癒を得るためには複数回の治療を要するのが現状である。この観点からもnew deviceが有用と期待されている。治癒後はフットケアなど再発予防管理が主体となる。図4 足背動脈の血行再建を行った後に切断を行った、重症虚血肢の高齢男性画像を拡大する画像を拡大する新たな展開薬剤溶出性ステントやdrug coated balloon(DCB)の展開に注目が集まっており、すでに承認されたものや承認に向け進行中のデバイスが目白押しである。いずれのデバイスも現在の問題点を解決または改善するためのものであり、治療戦略、適応を大きく変える可能性を秘めている。1.stent 従来のステントの問題点をクリアするため、柔軟性に富みステント断裂リスクが低いステントが開発されている。代表はLIFE STENTである。ステントはヘリカル構造であり、RESILIENT試験の3年後の成績を見ると、再血行再建回避率は75.5%と従来のステントに比し良好であった6)。リムス系の薬剤を用いた薬剤溶出性ステントの成績は通常のベアステントと差異を認めなかったが、パクリタキセル溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に良好であることが示されている7)。Zilver PTXの比較検討試験における病変長は平均7cm程度に限られていたが、実臨床のレジストリーでも再血行再建回避率は84.3%と比較検討試験と遜色ない成績が示されている8)。Zilver PTXは昨年に承認を得、市販後調査が進行中である。内腔がヘパリンコートされているePTFEによるカバードステントVIABAHNは柔軟性が向上し、蛇行領域をステントで横断が可能である。このため、関節区域や長区域の病変に有効と期待されている9)。これらのステントの成績により、大腿動脈領域治療の適応は大きく変化すると予想される。膝下の血管に対しては、薬剤溶出性ステントの有効性が報告されている10)。開存性の改善により、創傷治癒期間の短縮、再治療の必要性の減少が期待される。2.debulking device 各種デバイスが考案されている。本邦で使用できるものはないが、石灰化、ステント再狭窄、血栓性病変に対する治療成績を改善し、non stenting zoneにおける治療手段になり得るものと考えられている。3.drug coated balloon(DCB) パクリタキセルをコーティングしたバルーンであり、数種類が海外では販売されている。ステント再狭窄のみでなく、新規病変に対しバルーン拡張後に、またステント留置の前拡張に用いられる可能性がある。膝下の血管病変は血管径が小さく長区域の病変でステント治療に不向きである上に開存性が低いためDCBに大きな期待が寄せられている。このデバイスも開存性を向上させるデバイスである。成績次第ではEVTの主流になり得ると推測されている。4.re-entry device このデバイスは治療戦略を変える可能性を秘めている。現在、完全閉塞病変に対してはbi-directional approachが多用されているが、順行性アプローチのみで手技が完結できる可能性が高くなる。薬物療法の今後の展開薬物療法は心血管イベント防止のための全身管理と跛行に対する薬物療法に分類されるが、全身管理における治療が不十分であると指摘されている。また、至適な服薬治療が重要ポイントとなっている。1.治療が不十分である 本疾患の生命予後は不良であり、5年の死亡率は15~30%に及ぶと報告され、その75%は心血管死である。このことは全身管理の重要性を示唆している。しかし、2008年と2011年に、有効性が期待できるスタチン、抗血小板薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の投薬が、虚血性心疾患の症例に比し末梢動脈閉塞性症の症例では有意に低率であると米国から相次いで報告された11, 12)。この報告によると、虚血性心疾患を合併しているとわかっている末梢閉塞性動脈硬化症ではスタチンの無投薬率が42.5%であったのに対し、虚血の合併が不明の末梢閉塞性動脈硬化症では81.7%が無投薬であった12)。本邦においても同様の傾向と推察される。本疾患の無症候例も症候を有する症例と同様に生命予後が不良であるため、喫煙を含めた全身管理の重要性についての啓発が必要である。2.いかに管理すべきか? PADを対照に薬物療法による予後改善を検討した研究は少なくサブ解析が主体であるが、スタチンは26%、アスピリンは13%、クロピドグレルは28%、ACE阻害薬は33%リスクを軽減すると報告されている13)。さらに、これら有効性の高い薬剤を併用するとリスクがさらに低減されることも示されている12)。冠動脈プラークの退縮試験の成績は末梢閉塞性動脈硬化症を合併すると退縮率が不良であるが、厳格にLDLを70mg/dL以下に管理すると退縮が得られると報告されており14)、PADでは厳格な脂質管理が望ましい。 抗血小板薬に関しては、最近のメタ解析の結果によると、アスピリンは偽薬に比しPAD症例で有効性が認められなかった15)。一方、CAPRIE試験のサブ解析では、PAD症例に対しクロピドグレルはアスピリンに比しリスク軽減効果が高いことが示されている16)。今後、新たなチエノピリジン系薬剤も登場してくるが、これら新たな抗血小板薬のPADにおける有効性は明らかでなく、今後の検討課題である。また、本邦で実施されたJELIS試験のサブ解析では、PADにおけるn-3系脂肪酸の有効性が示されている17)。 このように、サブ解析では多くの薬剤が心血管事故防止における有効性が示唆されているが、単独試験で有効性が実証されたものはない。さらには、本邦における有効性の検証が必要になってこよう。3.再狭窄防止の薬物療法 シロスタゾールが大腿動脈領域における従来のステント留置例の治療成績を改善する。New deviceにおける有用性などが今後検証されていくことであろう。おわりにNew deviceでEVTの適応は大きく変わり、EVTの役割は今後ますます大きくなっていくものと推測される。一方、リスク因子に関しては、目標値のみでなくリスクの質的な管理が求められることになっていくであろう。文献1)Kashyap VS et al. The management of severe aortoiliac occlusive disease Endovascular therapy rivals open reconstruction. J Vasc Surg 2008; 48: 1451-1457.2)Soga Y et al. Utility of new classification based on clinical and lesional factors after self-expandable nitinol stenting in the superficial femoral artery. J Vasc Surg 2011; 54: 1058-1066.3)Tosaka A et al. Classification and clinical impact of restenosis after femoropopliteal stenting. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 16-23.4)Iida O et al. Endovascular Treatment for Infrainguinal Vessels in Patients with Critical Limb Ischemia: OLIVE Registry, a Prospective, Multicenter Study in Japan with 12-month Followup. Circulation Cardiovasc Interv 2013, in press.5)Romiti M et al. Mata-analysis of infrapopliteal angioplasty for chronic critical limb ischemia. J Vasc Surg 2008; 47: 975-981.6)Laird JR et al. Nitinol stent implantation vs balloon angioplasty for lesions in the superficial femoral and proximal popliteal arteries of patients with claudication: Three-year follow-up from RESILIENT randomized trial. J Endvasc Ther 2012; 19: 1-9.7)Dake MD et al. Paclitaxel-eluting stents show superiority to balloon angioplasty and bare metal stents in femoropopliteal disease. Twelve-month Zilver PTX Randomized study results. Circ Cardiovasc Interv 2011; 4: 495-504.8)Dake MD et al. Nitinol stents with polymer-free paclitaxel coating for lesions in the superficial femoral and popliteal arteries above the knee; Twelve month safety and effectiveness results from the Zilver PTX single-arm clinical study. J Endvasc Therapy 2011; 18: 613-623.9)Bosiers M et al. Randomized comparison of evelolimus-eluting versus bare-metal stents in patients with critical limb ischemia and infrapopliteal arterial occlusive disease. J Vasc Surg 2012; 55: 390-398.10)Saxon RR et al. Randomized, multicenter study comparing expanded polytetrafluoroethylene covered endoprosthesis placement with percutaneous transluminal angioplasty in the treatment of superficial femoral artery occlusive disease. J Vasc Interv Radiol 2008; 19: 823-832.11)Welten GMJM et al. Long-term prognosis of patients with peripheral artery disease. A comparison in patients with coronary artert disease. JACC 2008; 51: 1588-1596.12)Pande RL et al. Secondary prevention and mortality in peripheral artery disease: national health and nutrition exsamination study, 1999 to 2004. Circulation 2011; 124: 17-23.13)Sigvant B et al. Asymptomatic peripheral arterial disease; is pharmacological prevention of cardiovascular risk cost-effective? European J of cardiovasc prevent & rehabilitation 2011; 18: 254-261.14)Hussein AA et al. Peripheral arterial disease and progression atherosclerosis. J Am Coll Cardiol 2011; 57: 1220-1225.15)Berger JS et al. Aspirin for the prevention of cardiovascular events in patients with peripheral artery disease. A mata-analysis of randomized trials. JAMA 2009; 301: 1909-1919.16)CAPRIE Steering Committee. A randomized, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischemic events(CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.17)Ishikawa Y et al. Preventive effects of eicosapentaenoic acid on coronary artery disease in patients with peripheral artery disease-subanalysis of the JELIS trial-. Circ J 2010; 74: 1451-1457.

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日本を含む主要国の喫煙率の最新情報を発表~国際肺がん連盟による21ヵ国同時調査

 がんはわが国の死因の約3割を占め、その中でも肺がんが約2割と最も多い。肺がんの7割は喫煙が原因とされ、禁煙によって肺がんの発症を大幅に減らせることは確実である。 このたび、喫煙率と肺がん初期症状の認知度について、肺がん患者支援団体の国際組織である国際肺がん連盟(Global Lung Cancer Coalition:GLCC)が、2013年6月~8月、世界同時にアンケート調査を実施した結果が報告された。その中で、日本では男性の喫煙率が高く、また喫煙者における肺がん初期症状の認知度が低いことが示された。11月22日(金)、都内で開催された日本肺癌学会主催プレスセミナーにて、GLCC日本代表の澤 祥幸氏(岐阜市民病院診療局長)が報告した。日本では喫煙率の男女差が大きい GLCCの調査は今回が2回目(1回目は2010年)である。今回は2013年6月2日~8月16日に21ヵ国(文末の【試験概要】を参照)の成人に対して、喫煙状況(喫煙者率)と肺がん初期症状の認知度について、電話または対面での聞き取り調査を行った。わが国では、7月5日~15日に1,204人に対して、電話により聞き取り調査を実施した。 その結果、現喫煙者(現在習慣的に喫煙している)の割合は、ブルガリア(41%)、スペイン(33%)、フランス(30%)が高く、スウェーデン(12%)とオーストラリア(13%)は低かった。日本は24%と、21ヵ国中7番目に多く、既喫煙者(以前習慣的に喫煙していたが現在喫煙していない)の割合は21%であった。非喫煙者(習慣的に喫煙した経験がない)の割合は、エジプト(70%)が最も高く、次いでメキシコ(66%)、イタリア(60%)で、日本は55%であった。既喫煙者の割合が高かったのは、2010年からタバコ規制を強く推進しているカナダ(31%)、ノルウェー(29%)、スウェーデン(29%)であった。 喫煙者率の男女差は顕著であり、ほとんどの国で女性と比較して男性の喫煙者率が高かった(現喫煙者率:女性18%に対し男性28%、既喫煙者率:女性17%に対し男性26%、非喫煙者率:女性64%に対し男性46%)。日本の現喫煙者率は、女性10%に対し男性38%と、男女差がとくに大きかった。澤氏は、「喫煙者率の男女差が大きいということは、たとえば家庭内で、非喫煙者である女性が受動喫煙により肺がんになる危険があるということ」と懸念する。GLCCでもこれを非常に問題視しているという。 一方、WHOによると、男性の喫煙者率が減少しているのに対して、欧州では女性の喫煙者率が上昇傾向にあり、カナダ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイスでは喫煙者率の男女差がなかった。日本では喫煙者のほうが肺がん症状の認知度が低い 肺がん初期症状の認知度については、呼吸困難(40%)と非特異的な咳嗽(39%)が他の症状を大きく上回った。咳嗽関連の症状や疲労の認知度は10%以上であったが、ばち状指(1%)と頸部リンパ節腫脹(2%)の認知度は低かった。日本では、非特異的な咳嗽の認知度が50%と最も高いが、それに比較して呼吸困難の認知度が22%と低いことが特徴的である。 また、肺がんの初期症状をまったく知らない回答者の割合は全体で23%であったが、国による違いが大きく、エジプト(48%)、アルゼンチン(42%)で高いのに対し、フランス(7%)、アイルランド(9%)では低かった。このように国による認知度の違いが大きいことから、認知度の向上にはキャンペーンが有効と考えられた。 さらに、現喫煙者、既喫煙者、非喫煙者ごとに肺がん初期症状の認知度をみたところ、日本では、非喫煙者、既喫煙者、現喫煙者の順で低くなっており、澤氏は「喫煙者のほうが肺がんを心配していないと考えられる」と指摘した。【調査概要】●調査期間:2013年6月2日~8月16日●調査対象(カッコ内は人数):オーストラリア(1,000)、アルゼンチン(500)、ブルガリア(1,148)、カナダ(1,005)、デンマーク(650)、エジプト(1,009)、フランス(953)、英国(957)、ドイツ(1,073)、アイルランド(1,000)、イタリア(510)、日本(1,204)、メキシコ(600)、オランダ(1,004)、ノルウェー(529)、ポルトガル(1,203)、スロベニア(580)、スペイン(500)、スウェーデン(550)、スイス(510)、米国(1,000)計21ヵ国の成人(成人年齢は各国の定義による)●調査方法:電話または対面による聞き取り●調査内容:喫煙状況と肺がん初期症状の認知度の2項目-喫煙状況現喫煙者(現在習慣的に喫煙している)、既喫煙者(以前習慣的に喫煙していたが現在喫煙していない)、非喫煙者(習慣的に喫煙した経験がない)の3群に分類した。-肺がん初期症状の認知度回答者に初期症状を思いつく限り挙げさせ、それを「非特異的な咳嗽」「継続する咳嗽」「悪化していく咳嗽」「血痰」「咳嗽または呼吸時の痛み」「呼吸困難」「嗄声」「嚥下困難または嚥下痛」「体重減少」「食欲減退」「疲労・エネルギー低下」「胸部感染症持続」「胸部・肩部痛」「頸部リンパ節腫脹」「指先の肥大化(ばち状指)」「その他」「肺がん初期症状を知らない」の17種の回答に分類した。●結果解析:年齢、性別とともに集計し、各国の成人人口で重み付けして解析

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やはり女の子にとってアトピーは大問題:健康関連QOLに及ぼす影響

 アトピー性皮膚炎を有する思春期前(9~12歳)の女児では、主観的健康感が損なわれている一方、男児ではその影響が見られなかったことが、スウェーデン・カロリンスカ環境医学研究所のNatalia Ballardini氏らにより調査、報告された。Acta dermato-venereologica誌オンライン版2013年10月24日掲載の報告。 試験の目的は、アトピー性皮膚炎が健康関連QOLに及ぼす影響を調査することであった。対象は、住民ベースの出生コホート研究「BAMSE」に登録された、思春期前の小児2,756人であった。すべての小児が主観的健康感に関する3つの質問に回答した。質問内容は、(1)気分はどうか、(2)自分自身をどのくらい健康だと思っているか、(3)今の自分の生活にどのくらい満足しているか、であった。また、アトピー性皮膚炎を有する小児は、小児皮膚疾患QOL評価尺度(CDLQI)にも回答した。 主な結果は以下のとおり。・アトピー性皮膚炎を有する小児は350例(12.7%)で、平均CDLQI値は3.98(95%信頼区間:3.37~4.58)であった。・アトピー性皮膚炎を有する女児では、主観的健康感が損なわれていた。3つの質問の補正後オッズ比はそれぞれ、(1)1.72(95%CI:1.16~2.55)、(2)1.89(95%CI:1.29~2.76)、(3)1.69(95%CI:1.18~2.42)であった。・一方で、アトピー性皮膚炎を有する男児では、主観的健康感への影響が見られなかった。 著者は、「思春期前の女児の20%近くがアトピー性皮膚炎に罹患するため、これらの結果は、医療提供者および社会全体にとっても意味がある」と述べている。

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うつ病患者の予後を予測するセロトニン関連遺伝子多型

 セロトニン経路は、抗うつ薬が効果を発揮する際にきわめて重要な役割を担っており、セロトニン受容体およびトランスポーター遺伝子の多型が重要な因子として特定されてきた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のJulia Staeker氏らは、うつ病患者の臨床アウトカムの予測に有用な遺伝子多型を明らかにするため、自然的臨床試験のデータを用いて検討を行った。その結果、セロトニン経路の受容体およびトランスポーター多型が、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果ならびに副作用と関連していることを報告した。Genetic Testing and Molecular Biomarkers誌オンライン版2013年11月5日号の掲載報告。 研究グループは、臨床アウトカムの予測に有用な遺伝子多型を明らかにするため、自然的臨床試験において検討を行った。精神科入院患者273例の効果と副作用に関して、5-hydroxytryptamine transporter(5-HTT)の縦列反復変数(variable number of tandem repeats:VNTR)、5-HTTLPR/rs25531、5-HTR2A intron 2 SNPの影響を調べた。Clinical Global Impression(CGI)、Paranoid-Depression Scale (PD-S)、自己評価尺度およびDosage Record, and Treatment Emergent Symptoms(DOTES)Scaleなどの尺度を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。・SSRIによる治療を受けている患者100例において、5-HTTLPR/rs25531 S/LGアレルと効果および副作用との間に有意な関連が認められた(CGI-I≦2:0%vs. 19%、p=0.037/DOTES cluster c:0.76 vs. 0.19、p=0.0005)。・5-HTT VNTRおよび5-HTR2A intron 2 多型は、選択的および非選択的SRIの治療を受けている患者の副作用と有意に関連していた(5-HTT VNTR 12/12:170例、副作用発現率:51% vs. 19%、p=0.0001/rs7997012[A/A]:50例、副作用発現率:43% vs. 11%、p=0.020)。・ミルタザピン治療に関しては、遺伝子多型の影響はみられなかった。・セロトニン経路の受容体およびトランスポーターの遺伝子多型が、SSRIの効果と副作用に影響を及ぼすことが確認された。今回の結果は、さまざまな試験デザインで実施されたこれまでの試験の結果を支持するものであった。今回のような自然的研究でも明確な結果が臨床的に確認されたが、遺伝子多型の状況を治療前にスクリーニングすることの臨床的有用性に関しては、無作為化対照試験により明らかにする必要があると、著者は最後にまとめている。関連医療ニュース 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学 うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学 抗うつ薬の効果発現を加速するポイントは

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ビタミンDは気管支喘息にも効果あり

 中等症から重症の気管支喘息の管理において、ビタミンDは標準治療の補助剤となることがインドのラオトゥーララム記念病院のMadhu Yadav氏らにより報告された。The Indian Journal of Pediatrics誌オンライン版2013年11月6日の掲載報告。 本研究の目的は、中等症から重症の気管支喘息を有する小児に対し、ビタミンDが標準治療の補助剤としてどのような治療的な役割を果たすのかを定義することである。 対象は、呼吸器または喘息のクリニックを受診した小児喘息の男女100例。喘息の診断は既往歴と臨床検査に基づき行い、割り付けは封筒法により無作為に行った。Global Initiative for Asthma(GINA)に基づいた治療に加え、一方のグループでは経口のビタミンD3製剤(コレカルシフェロール)60,000IU/月を6ヵ月間投与し、他方のグループでは、プラセボの粉末をオブラートに包み投与した(二重盲検)。 毎月の受診時に、重症度の変化、管理状況、最大呼気速度、ステロイドの投与量、増悪の回数、救急搬送の回数を調べた。 主な結果は以下のとおり。プラセボ投与群に比べて、ビタミンD投与群では・増悪の回数が有意に低かった(p=0.011)。・最大呼気速度が有意に増加した(p=0.000)。・ステロイドの使用と救急搬送が有意に低かった(それぞれ、p=0.013、p=0.015)。・より早期に症状が安定し、6ヵ月後の喘息重症度が有意に低下していた(p=0.016)。

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脳卒中の国別発症率:貧富の差が発症率の差に/Lancet

 過去20年間の脳卒中の疾患負荷について世界的および各国の状況を調べた結果、年齢標準化した死亡率は世界的に減少した一方で、脳卒中の発症者数、生存者数、関連死、および全身的な疾患負荷(障害調整生命年[DALY]損失)は大きく増大していることが報告された。国別では、高所得国で発生が減少した一方、低・中所得国では発生が増大し、とくに同国では小児~中高年(65歳未満)の増大が顕著であることも明らかにされた。ニュージーランド・オークランド工科大学のValery L Feigin氏らが、世界疾病負担研究(GBD)2010のデータおよび解析手法を基に1990~2010年に発表された研究調査論文119本のデータを分析して明らかにした。GBD 2010では、脳卒中が世界の死亡原因の第2位であることが明らかにされたが、大半の地域の発生率、有病率、死亡率、障害や疫学的傾向については評価されなかった。Lancet誌オンライン版2013年10月24日号掲載の報告より。1990年から2010年の世界各国の脳卒中の動向を分析 分析は、Medline、Embase、LILACS、Scopus、PubMed、Science Direct、Global Health Database、WHO libraryとWHOの関連地域データベース(1990~2012年)を検索し、1990~2010年に発表された関連研究を特定して行われた。GBD 2010の解析手法(DisMod-MR)を適用して、1990年、2005年、2010年時点の、地域および特定の国の脳卒中の発生率、有病率、死亡率、年齢ごと(75歳未満、75歳以上、全体)にみたDALYの損失、また国の所得レベル(高所得国、低・中所得国)について調べた。 解析には119本の研究報告が組み込まれた(高所得国報告58本、低・中所得国報告61本)。死亡率は低下、しかし疾患負荷は増大し、とくに低・中所得国の負荷が大きい 1990~2010年の間の脳卒中の年齢標準化発生率は、高額所得国では有意に12%(95%CI:6~17)減少した一方、低・中所得国では、有意ではなかったが12%(同:-3~22)増大していた。 死亡率は、全体で有意に25%低下し、高所得国(37%)、低・中所得国(20%)共に有意に低下していた。 しかし、1990年と比べて2010年では、初発脳卒中発症者(1,690万例、40%増)、脳卒中生存者(3,300万例、46%増)、脳卒中関連死(590万例、20%増)、DALY損失者(1億200万例、16%増)がいずれも有意に増大していた。また低・中所得国での負荷が大きい(脳卒中発生の68.6%、脳卒中罹患者の52.2%、脳卒中死の70.9%、DALY損失の77.7%)ことも明らかになった。 また、2010年における、小児(20歳未満)と若者・中高年(20~64歳)の脳卒中例は520万(31%)で、低・中所得国がその大半を占めていた。同国の小児発生例は7万4,000例(89%)、若者・中高年では400万例(78%)であった。 さらに、GBDでみた地域および国の間には、脳卒中の負荷に関する3~10倍の有意な地理的相違があることも認められた。 脳卒中新規発症者(62%)、脳卒中罹患者(69.8%)、脳卒中死(45.5%)、脳卒中によるDALY損失者(71.7%)は、75年未満者のほうが多かった。 今回の結果を踏まえて著者は「脳卒中の原因と負荷の理解を世界的に向上させること、また所得レベルが異なる国の間における脳卒中負荷の格差の原因と改善の要因を明らかにするために、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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ホルモン補充療法、慢性疾患予防として支持されず/JAMA

 閉経後女性に対するホルモン療法は、症状の管理に有効な場合があるものの、慢性疾患の予防法としては適切でないことが、Women’s Health Initiative(WHI)試験の長期的追跡の結果から明らかとなった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoAnn E Manson氏らが、JAMA誌2013年10月3日号で報告した。米国では、当初、ホルモン療法は主に血管運動症状の治療法として用いられていたが、次第に冠動脈心疾患(CHD)や認知機能障害など加齢に伴う多くの慢性疾患の予防法とみなされるようになったという。現在も日常臨床で施行されているが、慢性疾患の予防におけるリスクやベネフィットに関する疑問は解消されずに残されたままだった。ホルモン療法に関する2つの研究を統合解析 研究グループは、WHI試験のホルモン療法に関する2つの研究について、介入終了後に長期的な追跡調査を行い、包括的な統合解析を実施した。対象は、1993~1998年までに米国の40施設に登録された50~79歳の閉経後女性2万7,347人。 子宮が切除されていない女性は、結合型ウマエストロゲン(CEE、0.625mg/日)+酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA、2.5mg/日)を投与する群(8,506例)またはプラセボ群(8,102例)に、子宮切除術を受けた女性は、CEE(0.625mg/日)単独群(5,310例)またはプラセボ群(5,429例)に無作為に割り付けられた。 介入期間中央値はCEE+MPA試験が5.6年、CEE単独試験は7.2年で、通算13年のフォローアップが行われた(2010年9月30日まで)。有効性の主要評価項目はCHD、安全性の主要評価項目は浸潤性乳がんの発症とした。リスク、ベネフィットともに複雑なパターン示す CEE+MPA療法の介入期間中のCHDの発症数は、CEE+MPA療法群が196例、プラセボ群は159例であり、むしろプラセボ群で良好な傾向を認めたが有意な差はなかった(ハザード比[HR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.95~1.45、p=0.13)。また、浸潤性乳がんの発症数はそれぞれ206例、155例であり、プラセボ群で有意に良好だった(HR:1.24、95%CI:1.01~1.53、p=0.04)。 介入期間中にCEE+MPA療法群でリスクが増大した疾患として、脳卒中(p=0.01)、肺塞栓症(p<0.001)、深部静脈血栓症(p<0.001)、全心血管イベント(p=0.02)、認知症(65歳以上)(p=0.01)、胆嚢疾患(p<0.001)、尿失禁(p<0.001)、乳房圧痛(p<0.001)が挙げられ、ベネフィットは大腸がん(p=0.009)、大腿骨頸部骨折(p=0.03)、椎骨骨折(p=0.03)、糖尿病(p=0.005)、血管運動症状(p<0.001)、関節痛(p<0.001)などで認められた。 介入期間終了後には、ほとんどのリスクおよびベネフィットは消失したが、浸潤性乳がんの発症リスクは全期間を通じてCEE+MPA療法群で有意に高かった(HR:1.28、95%CI:1.11~1.48、p<0.001)。 一方、CEE単独療法群の介入期間中のCHDの発症数は204例、プラセボ群は222例(HR:0.94、95%CI:0.78~1.14)で、浸潤性乳がんの発症数はそれぞれ104例、135例(HR:0.79、95%CI:0.61~1.02)であり、いずれも両群間に有意な差は認めなかった。また、他の疾患のアウトカムはCEE+MPA療法群と類似していた。 2つのホルモン療法はいずれも全死因死亡には影響を及ぼさなかった(介入期間中:p=0.76、p=0.68、全期間:p=0.87、p=0.92)。CEE単独療法群では、全死因死亡、心筋梗塞、global indexが若い年齢層(50~59歳)で良好であった(傾向検定:p<0.05)。 CEE+MPA療法群における10,000人年当たりの有害事象の絶対リスク(global indexで評価)は、プラセボ群に比べ50~59歳で12件増えており、60~69歳では22件、70~79歳では38件増加していた。CEE単独群では50~59歳で19件低下したが、70~79歳では51件増加した。QOLのアウトカムは両治療群ともに一定の傾向はみられなかった。 著者は、「閉経後ホルモン療法のリスクおよびベネフィットは複雑なパターンを示した」と総括し、「一部の女性では症状の管理に有効であるが、慢性疾患の予防法としては支持されない」と結論づけている。

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健全な批判精神を評価(コメンテーター:野間 重孝 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(138)より-

この論文の要旨が掲載されてからかなり時間がたっていること、抄録の訳文には除外規定に関する言及がなかったこともあり、まずは本論文の要旨をまとめておきたい。1. 目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)治療に関してdoor-to-balloon timeの短縮が実際に患者の短期予後(院内死亡率・30日以内死亡率)の低下に繋がっているかを検討する。2. 方法 2005年7月~2009年6月までにCathPCIレジストリー参加施設から登録されたprimary PCI施行を施行されたSTEMI患者から次の除外規定を設けて患者を抽出し、結果として515施設9万6,738例の患者について検討を行った。 《除外規定》  1) 別の組織経由で搬送されてPCIが施行された患者  2) 非緊急PCI例  3) door-to-balloon timeが3時間を越えた患者  4) 登録期間中にコンスタントにデータ登録を行わなかったりデータに抜けのあった組織の取り扱い患者 さらにこの検討に加えて、高リスク群(75歳以上、前壁梗塞、心原性ショック)を抽出して別個に同様の検討を行った。3. 結果 1) door-to-balloon timeの中央値は初年度(05年7月~06年6月)の83分から、最終年(08年7月~09年6月)には67分と有意に低下した(p

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