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清掃・消毒の改善で医療関連感染は減らせるか~クラスターRCTで検証

 医療器具の清掃・消毒の改善によって、医療関連感染(HAI)を減らすことは可能であろうか。この疑問に関して、オーストラリア・Avondale University のBrett G. Mitchell氏らは、ステップウェッジデザインを用いたクラスター無作為化比較試験「CLEEN試験」を実施した。その結果、清掃・消毒の改善によって、HAIの発生率を低下させることが可能であることが明らかになった。本研究結果は、Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年8月13日号に掲載された。 本研究は、オーストラリアの単一の公立病院の10病棟を対象として実施した。研究期間は2023年3月20日~11月24日の36週間とした。ステップウェッジデザインを用いたクラスター無作為化の手法により、10病棟を5つのクラスターに割り付けた。ベースライン時はすべての病棟が共有医療器具(移動式便器、血圧計、点滴スタンド、輸液ポンプ)を通常どおり清掃・消毒し、割り付けられたクラスターごとに改善された清掃・消毒へ順次移行した。改善された清掃・消毒期では、専任の清掃スタッフを追加し、週5日3時間追加の清掃・消毒を実施した。主要評価項目は、入院患者におけるHAIの発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は5,002例(男性2,478例、女性2,524例、年齢中央値75歳[四分位範囲:63~83])。・適切に清掃された共有医療器具の割合は、通常の清掃・消毒期が18.2%(168/925個)であったのに対し、改善された清掃・消毒期では56.6%(487/861個)であった。・HAIの発生率は、通常の清掃・消毒期が17.3%(433/2,497例)であったのに対し、改善された清掃・消毒期では12.0%(301/2,508例)であった。・調整後のHAIの相対変化率は-34.5%(オッズ比:0.62、95%信頼区間:0.45~0.80)であり、改善された清掃・消毒期で有意にHAIの発生率が低下した。

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子宮移植、成功率は70%で全例生児出産/JAMA

 子宮移植は技術的に可能であり、移植子宮生着後の生児出産率は高かった。米国・ベイラー大学医療センターのGiuliano Testa氏らが、「Dallas Uterus Transplant Study:DUETS試験」の結果を報告した。有害事象は一般的で、医学的および外科的リスクはドナーだけでなくレシピエントにも影響を及ぼしたが、現在までのところ出生児に先天異常や発育遅延は発生していないという。絶対的子宮性不妊症は500人に1人の割合で発生し、生殖医療における障壁となっているが、子宮移植により妊娠・出産できる可能性が示されている。JAMA誌オンライン版2024年8月15日号掲載の報告。少なくとも1回の生児出産を伴う移植子宮生着と安全性を評価 研究グループは、2016年9月14日~2019年8月23日に子宮移植を行った。レシピエントの適格基準は、絶対的子宮性不妊症で、少なくとも1つの卵巣は機能しており、体外受精を受ける意思があり、医学的・心理学的基準を満たした20~40歳の女性であった。ドナーは、25~65歳で少なくとも1回の正期産の出産経験があり、医学的・心理学的合併症がないこととした。 ドナー子宮の摘出は、生体ドナー18例のうち最初の13例は開腹手術、5例は低侵襲ロボット支援経膣的子宮摘出術、死亡ドナー2例は開腹手術にて行われた。 レシピエントは、移植前に良質な正倍数性受精卵を2個以上(11例目以降のレシピエントは4個)得ている必要があった。 子宮移植は、子宮静脈と両側外腸骨血管の血管吻合を行い、同所的に行われた。移植後は、1~2回の生児出産後まで、または移植が失敗し移植された子宮が摘出されるまで免疫抑制薬を投与した。 主要アウトカムは、子宮移植の有効性(少なくとも1回の生児出産を伴う移植子宮生着)、副次アウトカムは安全性とした。20例中14例、70%で子宮移植に成功 移植を希望した701例中、適格基準を満たした20例(年齢中央値30歳[範囲:20~36]、アジア人2例、黒人1例、白人16例)がレシピエントとして登録された。うち18例は先天性子宮欠損症、2例は良性疾患による子宮摘出の既往であった。生体ドナー18例の年齢中央値は37歳(範囲:30~56)であった。 20例中14例(70%)で子宮移植が成功し、14例全例が少なくとも1回、生児出産した。移植に失敗した6例(死亡ドナー2例中1例、生体ドナー18例中5例)のうち、1例は移植後数時間以内の動脈出血による出血性ショックが原因で、5例は血管吻合部の血栓、あるいは子宮微小血管系の既存のアテローム性動脈硬化性変化に起因し、いずれも移植後2週間以内に生じた。 レシピエント20例中11例に少なくとも1件の合併症がみられた。母体および/または産科合併症は、成功した妊娠の50%で発生し、主なものは妊娠高血圧(Gestational hypertension)、子宮頸管無力症、早産(各2例[14%])であった。出生児16例に先天性奇形は認められなかった。生体ドナー18例中4例にGrade3の合併症がみられた。

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ポケジェリ―AGS高齢者診療マニュアル

あなたのポケットにジェリアトリクス(老年医学)を!本書は、米国老年医学会(American Geriatrics Society)が刊行する、“Geriatrics At Your Fingertips”の翻訳版です。日本の超高齢社会において、すべての医師は老年医学のマインドセットを身につける必要があります。すなわち、内科学、総合診療を根幹におき、高齢者一人ひとりの尊厳を大切にする視点、特有の問題や複雑な症状を見極める洞察力、最適な薬剤・治療法を選択する判断力を加えた老年医学の考え方です。翻訳では全面的な薬剤監修も実施し、丁寧な日本化を試みました。実践で使いこなしながら学べる1冊になっています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するポケジェリ―AGS高齢者診療マニュアル定価6,930円(税込)判型B6変判頁数472頁発行2024年8月編著者山田 悠史(Brookdale Department of Geriatrics and Palliative Medicine, Icahn School of Medicine at Mount Sinai)原田 洸(Brookdale Department of Geriatrics and Palliative Medicine,  Icahn School of Medicine at Mount Sinai)榎本 貴一(練馬光が丘病院 薬剤室)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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アルツハイマー病、生存期間・悪化速度・入院/入所までの期間は?【外来で役立つ!認知症Topics】第20回

アルツハイマー病(AD)者に関わる臨床医なら、自分の治療は本当にうまくいっているのかと、時に心配になるのではなかろうか? 少なくとも筆者はそうである。たとえば「どんどん進行している」とか「一向に良くならないばかりか悪化した」などの訴えがあると、「むむっ!」と口元がゆがむ。ご家族は、医療者が思うような認知機能テストやADLなど数値化できるものの変化でなく、暴言・暴力、幻覚や妄想、衝動性、BPSDなど出れば、ひどく悪化したと思いがちだ。だから、その訴えと医師側の評価とが乖離することは稀でない。とはいえ、何が臨床経過の客観的な指標であり、それぞれの指標はどの程度の率で変化するかを知っていることは、認知症治療者にとっての素養かもしれない。そこで成書やレビューなどに当たってみた。結果として、生存期間、認知機能の悪化速度、そして入院・入所までの期間が3大ポイントと考えた。認知症と生存期間認知症性疾患全体の生命予後のメタアナリシス1)によれば、認知症全体としての死亡率は、認知症のない者に比べて5.9倍も高い。認知症全体の平均では、発症年齢が68.1±7.0歳で、診断された年齢は72.7±5.9歳。そして、初発から死亡まで7.3±2.3年で、診断から死亡まで4.8±2.0年との由。ADでは、初発から死亡まで7.6±2.1年、診断から死亡までが5.8±2.0年とされる。注目すべきは、いわゆる4大認知症性疾患の中で、ADの生命予後が一番良いことだ。もっともメタアナリシスの対象は、私が対応する患者さんの年齢より、少し若いかなという印象がある。それはさておき、ADの診断がついた患者さんやその家族から、余命は何年か?の質問を筆者が受けたなら、以上のメタアナリシスの結果を参考にして4~8年程度と答える。MMSEやADAS-cogで認知症の進行速度を評価認知機能の評価尺度として、ミニメンタルステート(MMSE:30点満点)が最もよく研究されている。ある教科書2)によると、年間の点数変化は1.8から4.2と幅が大きい。その理由は、観察開始時の重症度がどうだったかによる。つまり開始時に軽度なら点数変化は小さく、重度なら大きい。最近の研究で、MMSE、ADAS-cogについて大人数(開始時769例)のMCI者を対象にした報告を読んだ3)。開始時のMMSE得点は平均で27.3±1.9であった。これが3年後には、対象が473例になり、そのMMSE得点は25.3±4.8になった。3年で300例ものドロップアウトがあるが、以上の結果を分析して、MMSEについて低下が小さい群では年間2~3点の低下、中程度低下群では年間6~7点としている。この結果は従来の報告をほぼ支持すると思われる。次にADAS-Cogが注目される。このオリジナル版は11項目により、総合的にADの認知機能を評価する70点満点の尺度であり、問題なしが0点、最重度が70点である。従来のAD治療薬の治験においては、一番よく用いられてきた。ADAS-Cogが公表された頃の中等度のADを対象にした研究によれば、本尺度の年間変化は平均8点前後とまとまっている。なお上記したMCI者を対象にしてMMSE、ADAS-cogを詳細に検討した研究3)では、ADAS-Cogの研究開始時の平均得点は14.1±8.8である。3年の追跡結果から、ADAS-Cogについて、小変化群で年間2点の増加、中程度の群で年間3~4点の増加としている。はじめはゆっくり、途中で加速、再びゆっくり以上より、MMSEとADAS-Cogの成績推移では、当初ADが軽度なら両者における得点変化も少ないが、進行すれば大きくなるとまとめられる。これに関して2点の追記が欠かせない。まずこれらの経時的な変化の仕方(形状)は直線的なものではない。図に示すようなシグモイド、すなわち当初ゆっくりと、途中から直線的に加速し、末期は再度ゆっくりと変化する形状と考えられている。次に臨床経過を考えるとき、Rapid Declinerと言われる悪化速度の速いAD患者の一群が存在することは以前から注目されてきた。そのような患者を捉えるうえで、たとえばMMSEが半年で3点(年間6点)以上の低下をしていくことと提案したものがある。このような進行の予測因子を知ることは、臨床家が患者・家族にアドバイスするうえで重要である2)。まず教育年数が高いと進行が速いと考えられている。次に幻覚や妄想など神経精神医学的な症状があると進行が速くなるとする意見が多い。もっとも、こうした症状自体ではなく症状に対して処方される抗精神薬等が問題ではないかという意見がある。一方で、発症年齢が若いほど進行も速いと考えられがちだが、これは確立していない。性別も確立したものではない。アポリポ蛋白E4(APOE4)があるとAD発症のリスクが高くなり、発症年齢も早まることは有名だが、進行予測の要因としては確立していない。また合併症の脳血管障害も確立していない。なお錐体外路徴候も以前は検討されたが、今日ではレビー小体型認知症(DLB)の疾患概念が浸透してADと鑑別がかなり正確になった。それだけに従来の知見はADとDLBの進行の差異を論じていたのかもしれない。入院・入所までの期間は?入所予測因子について80の報告をレビューしたものによれば、施設入所を予測する因子として、患者要因では認知機能の重篤度、日常生活動作の自立と依存の度合い、BPSD、そしてうつ病が重要であった4)。介護者要因として、情緒的ストレスの高さが指摘されている。系統的な報告ではないが、失禁、焦燥、歩行困難、徘徊と過活動そして夜間の不穏などが、介護者が述べる入所の決定要因として最も多いと述べた報告があった。この意見は臨床の場でわかりやすく、筆者は大いに頷く。参考1)Liang CS, et al. Mortality rates in Alzheimer's disease and non-Alzheimer's dementias: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2021 Aug;2(8): e479-e488.2)Fleisher AS, Corey-Bloom J. The natural history of Alzheimer’s disease. In Ames D, Burns A, O’Brien J. Dementia 4th ed. Boca Raton:CRC Press;2010.p.405-416.3)Lansdall CJ, et al. Establishing Clinically Meaningful Change on Outcome Assessments Frequently Used in Trials of Mild Cognitive Impairment Due to Alzheimer's Disease. J Prev Alzheimers Dis. 2023;10:9-18.4)Gaugler JE, et al. Predictors of nursing home admission for persons with dementia. Med Care. 2009;47:191-198.

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難聴者の聞きたい意図を汲み取る技術搭載の補聴器/デマント・ジャパン

 世界的な医療機器メーカーのデマントグループのオーティコン補聴器は、新製品の補聴器の発売に合わせ、都内でメディアセミナーを開催した。 今回発売された新製品「オーティコン インテント」は、聞き取りの意図を補聴器ユーザーから汲み取る技術を世界で初めて搭載した補聴器。特徴として脳の自然な働きに必要な360度の音の全体像を脳に届け、さらにユーザー個々人の意図に基づき、最も聞きたいと思われる音を優先的に脳に届ける補聴器機能を備えている。 当日は、わが国の難聴診療の現状とその対策、同社から新製品の概要などが説明された。補聴器装用が認知機能低下を予防する可能性 難聴が日常生活に及ぼす影響は重大であり、予防しうる認知症の最大のリスク要因は難聴であるとの報告もあり、近年注目を集めている。また、聞こえに問題がある際に聞き取ろうと頑張ることで、「聞き取り努力(LE:リスニングエフォート)」が続き、「疲労」につながるとも考えられている。このような負の影響を軽減するために、補聴器による早期介入の必要性が重要視されている。 では、現在の難聴の現状、その対策はどのようにされているのであろうか。 「難聴対策の重要性-疲労、認知機能低下を防ごう-」をテーマに大石 直樹氏(慶應義塾大学病院 聴覚センター センター長)が講演を行った。 難聴の中で最も多い「加齢性難聴」は、高齢化社会とリンクする疾患であり、世界保健機関(WHO)のレポートでは全世界で患者は15億人と推定され、2050年にはさらに1.5倍になるとの予測がある。わが国の65歳以上の難聴有病者は約1,500万人に上ると推定され、男性のほうが早く到来する。難聴がもたらす不利益としては、聞こえないことによる「孤立」「認知症」「うつ」「疲れ」「生産性低下」「離職」「運転能力低下」などコミュニケーション障害と社会活動の減少がある。一方でわが国は、難聴に寛容な社会であり、対策が遅れている可能性があると大石氏は課題を提起した。 難聴と認知症について、認知症の危険因子として中年期以降では難聴(8%)、外傷(3%)、高血圧(2%)の順で1番高く、早期に介入すれば認知症を予防できる可能性を説明した。また、厚生労働省の認知症対策でも危険因子として「難聴」が明記され、防御因子として活発な精神活動のサポートに「補聴器」が登場するなど広く対策が定められていることにも触れた。実際、高齢者に難聴があると脳容積の減少が報告され、とくに右側頭葉に聴力低下群では有意な容積減少を認めたという1)。 同様に米国の60代605例について、Digit Symbol Substitution Test (DSST)の知能検査で知能評価と聴力の関係を研究したところ、聴力レベルの悪化とDSTT低値に有意に関連があり、25dBの聴力低下に伴う認知機能の低下は7年経年変化と等価であるとの試算がなされ、その一方で補聴器使用者では、年齢、性別、重症度などの調整をしてもDSSTスコアが高い結果となった2)。 続いて大石氏が自院での補聴器装用と認知機能の関係を研究した結果を述べた。研究では、55歳以上かつ両側の平均聴力閾値25dBHL以上の患者を補聴器未装用者55例と装用者62例に分け、Symbol Digit Modalities Test(SDMT)で認知機能検査を実施した。その結果、47.5dB以上の補聴器未装用者ではSDMTスコアと聴力閾値に有意な関連を認め、補聴器装用が認知機能低下を予防する可能性が示唆されたという。なぜ補聴器はわが国では普及しないのか 補聴器の装用は生活の質を向上させ、LEを軽減させるメリットがある反面、わが国では補聴器の普及のハードルが高い。たとえば、「高価なわりに聞こえない」「聞き取れない」など機能に関するものが多く、そのせいか補聴器の普及率比較でわが国は諸外国と比べ15%と下位の方にある。また、使用者の全体的な満足度は50%とあまり高くない。 その理由として、補聴器はメガネと違い、数ヵ月程度、聞こえに脳が慣れる訓練(聴覚リハビリテーション)が必要であり、初めの導入で止めてしまう人が多いのが要因の1つとなっている。 聴覚リハビリテーションでは、小さい音からはじめ、大きな音が聞こえる訓練を約3ヵ月かけて行っていく。その結果、1対1の会話はしやすくなり、テレビの音量もよく聞こえるようになり、生活の質は向上する。ただ、レストランなどで複数の会話は難しく、パーティーでは周囲の音を拾ってしまい、肝心な会話の音が聞き取れないという課題もあり、今後の技術革新が待たれるという。 最後に大石氏は、「今後も聴覚障害に対する診療科横断的、全人的アプローチにより、わが国の聴覚診療のレベルを上げていきたい」と展望を語り、講演を終えた。装用者の意図を理解し、聞きたい音声が聞ける補聴器インテント 「オーティコン インテント」(インテント)について、渋谷 桂子氏(デマント・ジャパン プロダクトマネジメント部長)が製品の特長を説明した。 インテントは、同社独自の技術である“ブレインヒアリング”に基づいて研究開発された製品で、脳の自然な働きに必要な360度の音の情景とともに、装用者個人が最も聞きたい音を際立たせ、騒音下でも聞き取り能力を向上させる。また、人が無意識に行う頭や体の動き、会話活動、周囲の音環境の4つの側面を感知する“自分センサー”の実現により、装用者の意図を瞬時に汲み取り、聞きたい音声が聞けるようにサポートする。 そして、インテントは、入力された音を学習プロセスにより調整し、正解のデータと比較して出力の重みにズレがあれば修正、複雑な環境に対応できる仕組みも持っている。 本器はリチウム充電式で1日を通して利用でき、本体をタップすることで電話の操作やiPhoneとのハンズフリー通話も対応、スピーカーは人間工学に基づきフィット感があるものになっている。 前世代の補聴器と比較し、最大10%の音の向上と聞き心地の向上と最大13%の音の情景の中で多くのニュアンスを届けることができる補聴器となっている。 本器はオープン価格で、全9色、耳かけ型で、軽度~重度難聴まで対応する。機器の認証日は2024年3月27日、同年6月6日から受注受付を行っている。

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第222回 結核薬ベダキリンを米国と欧州が本承認

結核薬ベダキリンを米国と欧州が本承認欧米で10年以上前にひとまず許可されたJohnson & Johnsonの結核薬ベダキリン(商品名:サチュロ錠)がそれら地域で本承認にこぎ着けました1,2)。第II相試験で良い結果が得られたことを受けて、米国FDAは10年以上前の2012年に同剤を取り急ぎ承認(accelerated approval)しました。欧州はその2年後の2014年にやはり第II相試験結果に基づいてFDAと同様に同剤を条件付き承認(conditional approval)しています。米国での2012年の承認の際の同剤使用は成人に限られていました。2019年になって12歳以上の小児への使用も許可され、その翌年2020年には5歳以上の小児への使用も認められました。そして今回第III相STREAM Stage 2試験でベダキリンを含む経口薬治療の臨床的有用性(clinical benefit)が示されたことを受けて、米国と欧州の両方で本承認に至りました。2022年にLancet誌に結果が報告されたSTREAM Stage 2試験は7ヵ国の13の病院で実施され、15歳以上のリファンピシン耐性結核患者588例が参加しました3)。76週時点で結核菌が見当たらず(培養検査陰性)、それまでを死なずに無事に過ごした経過良好患者の割合の比較で、ベダキリンを含む経口薬治療群が対照の注射薬治療群に勝りました。経過良好の患者割合は、ベダキリンを含む経口薬治療群では83%、同剤を含まない対照群では71%でした。米国と欧州のどちらも、少なくともリファンピシンとイソニアジドに耐性のある結核菌が原因の肺結核の併用療法(combination therapy)の一環としてベダキリンを使うことを認めています。日本では2018年1月に承認され、同年5月に発売されました4)。いまやベダキリンは世界保健機関(WHO)が推奨する薬剤耐性結核治療の要となっており、ベダキリンを含む経口薬のみの投与が多剤耐性結核患者4例に3例の治療を担っています。昨年Johnson & Johnsonは結核治療普及の取り組みであるStop TB Partnershipがベダキリンの後発医薬品を世界のほとんどの低~中所得国(LMIC)に提供するのを許可しました。また、134のLMICでベダキリンの特許を行使しないとの意向も同社は示しています。参考1)Johnson & Johnson Receives Approval from U.S. FDA and European Commission for SIRTURO? (bedaquiline) / J&J2)FDA Roundup: June 25, 2024 / PRNewswire3)Goodall RL, et al. Lancet. 2022;400:1858-1868.4)新規抗結核薬「サチュロ錠100mg」新発売のお知らせ/ヤンセン

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古代人にも動脈硬化、ミイラの調査で判明

 心臓病といえば現代生活の副産物だと思われがちだ。しかし、4,000年以上に及ぶ7つの異なる文化圏の成人のミイラのCT画像を調査した結果、3分の1以上のミイラに動脈硬化の痕跡が見つかり、心臓病が何世紀にもわたって人類を苦しめてきた疾患であることが明らかになった。米セントルークス・ミッドアメリカ心臓研究所のRandall Thompson氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に5月28日掲載された。 この研究では、世界中の成人のミイラのCT画像データを用いて、動脈硬化の有無を調べた。動脈硬化は、動脈と予測される場所にカルシウムの沈着が見られる場合を「ほぼ確実な動脈硬化」、識別可能な動脈の壁にカルシウムの沈着が見られる場合を「確実な動脈硬化」と見なした。調査対象のミイラは、古代エジプト人(161体)、低地の古代ペルー人(54体)、ボリビア高地の古代アンデス人(3体)、19世紀のアリューシャン列島のアレウト族(4体)、16世紀のグリーンランドのイヌイット(4体)、古代プエブロ族(5体)、中世のゴビ砂漠の牧畜民(4体)の7つの文化圏に由来するものに、19世紀のアフリカ系米国人(1体)とオーストラリアの先住民(1体)も加えた計237体であった。これらのミイラの死亡時の平均年齢は40±11.6歳で、58.6%(139体)が男性だった。 調査の結果、全ての文化圏に属する89体(37.6%)のミイラで「確実な動脈硬化」、または「ほぼ確実な動脈硬化」が確認されることが明らかになった。動脈硬化が認められる場所を多い順に並べると、大動脈(51体、21.5%)、腸骨-大腿動脈(49体、20.7%)、膝窩-脛骨動脈(38体、16%)、頸動脈(33体、14%)、冠動脈(9体、0.4%)であった。一方、男性と女性の間(38.1%対38.5%、P=0.36)や、エジプト人と非エジプト人(上流階級に属さない者が多い)との間(39.1%対38.5%、P=0.48)には、動脈硬化が見つかったミイラの割合に有意な差は認められなかった。 Thompson氏は、「古いものでは紀元前2,500年以前に遡る全ての時代、全ての文化圏のミイラにおいて、男女ともに、上流階級の人物であるか否かにかかわりなく、動脈硬化が認められた」とし、「これは、動脈硬化が現代の生活習慣により引き起こされる症状ではないという、われわれが以前の研究で得た知見をさらに裏付ける結果だ」と述べている。 研究グループは、「この結果は、人間には生まれつき動脈硬化のリスクがあることを示している」との見方を示している。またThompson氏は、「この研究は、喫煙、座位で過ごすことの多い生活、栄養バランスの悪い食事などの現代人の抱える心血管系のリスク因子が、加齢による自然なリスク増加に上乗せする形で動脈硬化の程度と影響を増大させる可能性があることを示している。だからこそ、コントロール可能なリスク因子をきちんとコントロールすることが重要なのだ」と話している。

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世界の平均寿命、2050年までに4年以上の延長を予測/Lancet

 今後30年間に世界の平均寿命(出生時平均余命)は男性では5年近く、女性で4年以上延長することが予測されるとの最新の分析結果を、世界疾病負担研究(GBD)の研究者らが、「The Lancet」5月18日号に発表した。こうした平均寿命の延長は、一般的に平均寿命が短い国々で顕著だという。研究グループは、「このような変化は、心臓病や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に加え、感染症や出産、栄養に関連するさまざまな健康問題の予防と発見、治療の改善をもたらした公衆衛生対策によるところが大きい」と説明している。 米ワシントン大学保健指標・評価研究所(IHME)所長のChristopher Murray氏らは、204の国と地域、21のGBD地域、7つのスーパーリージョン(GBDが疫学的類似性と地理的近接性に基づき設定した地域区分)、および世界全体の2022年から2050年までの原因別死亡率、損失生存年数(YLL)、障害生存年数(YLD)、障害調整生存年数(DALY)、平均寿命、および健康寿命(HALE)を予測した。 その結果、世界全体で平均寿命は2022年から2050年にかけて73.6歳から78.2歳へ延びると予測された。男女別に見ると、男性では71.1歳から76.0歳へ4.9年の増加、女性では76.2歳から80.5歳へ4.2歳の増加であった。また、同期間に健康な状態で生きる年数(HALE)は、男性では62.6歳から66.0歳へ、女性では64.7歳から67.5歳へ延びると予測された。さらに、全体的な平均寿命の延長に加え、地域間の平均寿命の格差が縮小することも予測された。Murray氏はこの点について、「サブサハラ(サハラ砂漠以南)のアフリカ地域で最大の平均寿命の延長が予測されており、高所得地域と低所得地域の間の健康格差が縮小傾向にあることを示している」とIHMEのニュースリリースの中で説明している。 一方で、平均寿命に影響を与える疾患に変化が起きていることも明らかになった。今後、平均寿命の長さには、感染症よりも心臓病や糖尿病、がん、肺疾患などの慢性疾患が与える影響の方が強まることが予測されたのだ。そのため、肥満や高血圧、偏った食事、運動不足、喫煙などのリスク因子が次世代の病気や寿命に最も大きな影響を与えることになる。 Murray氏は、「これらの増加しつつある代謝や食事のリスク因子、特に高血糖や高BMI、高血圧などの行動要因および生活習慣要因に関連するリスク因子に先手を打つことは、世界の人々の健康の未来に影響を与える絶好の機会となる」と話す。 なお、米国立保健統計センター(NCHS)の最近の報告書によれば、米国における平均寿命は2021年から2022年までの1年間に76.4歳から77.5歳に延びた。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、米国で平均寿命が延びたのはこの年が初めてだが、パンデミック前の平均寿命である78.8歳を下回った状態が続いているとNCHSは指摘している。

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せん妄に対するアリピプラゾール治療〜システマティックレビュー

 せん妄は、医療現場、とくに高齢者において一般的に見られる神経精神疾患である。せん妄の第1選択の薬理学的介入としてハロペリドールが挙げられるが、強力なエビデンスが存在しているわけではなく、その副作用は重篤となる可能性があり、ドパミンおよびセロトニンを標的とした代替治療薬(非定型抗精神病薬)の使用が検討される。非定型抗精神病薬の中でも、アリピプラゾールは、最も良好な安全性プロファイルを有する薬剤であると考えられる。イタリア・Mental Health Center of FrosinoneのStefano Maddalena氏らは、せん妄に対する薬理学的介入としてのアリピプラゾールに関する研究について、最新の研究を含めたシステマティックレビューを実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2024年4月30日号の報告。 2002年1月〜2023年9月の査読付きジャーナルに掲載された研究を、MedLine、PubMed、Cochrane、Embase、ScienceDirectよりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・最終的に6件の研究(130例)が抽出された。・アリピプラゾール治療を行った患者の73.8%は、7日間でせん妄の改善が認められた。 著者らは「現在入手可能な限られたデータではあるものの、せん妄に対するアリピプラゾールの効果は、少なくともハロペリドールと同等であることは間違いなく、最大のベネフィットは、忍容性および安全性プロファイルが優れている点であろう。とはいえ、本レビューの限界として、サンプルサイズが非常に小さい、認知症患者の割合が低い、多くの研究で特異性の低い尺度が使用された点が挙げられる。より説得力のあるデータを提供するためには、最小有効用量に関するより正確な表示とともに、さらなる研究が必要である」としている。

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タンパク質摂取量とアルツハイマー病との関連

 医療技術の進歩に伴い、疾患の構造は、急性疾患からアルツハイマー病(AD)などの慢性疾患に移行しつつある。その結果、疾患の発症だけでなく、健康寿命への潜在的な影響についての評価の必要性が高まっている。味の素株式会社のKazuki Fujiwara氏らは、ADの障害調整生存年(AD-DALY)率とタンパク質摂取量との関連を、性別および年齢グループごとに評価した。Nutrients誌2024年4月19日号の報告。 1990〜2019年の世界の疾病負担研究および日本の国民健康・栄養調査の公開データより抽出した、60代および70代以上の男女の代表値を分析に使用した。AD-DALY率とタンパク質摂取量との関連性を評価するため、相関分析を行い、重回帰モデルを層別化した。さらに、層別重回帰モデルを用いて、タンパク質摂取量の変化に伴うAD-DALY率の変化をシミュレートした。 主な結果は以下のとおり。・AD-DALY率とタンパク質摂取量は、すべての性別および年齢グループにおいて、有意な負の相関を示した。・層別重回帰モデルでは、女性において、タンパク質摂取量の増加とAD-DALY率の低下との間に有意な関連が認められた。・シミュレートでは、タンパク質摂取量が1.5g/kg/日まで増加すると、AD-DALY率は2019年と比較し、5〜9%減少した。・しかし、動物および植物性タンパク質の摂取量とAD-DALY率との関連性は、性別および年齢グループにより異なることが示唆された。 著者らは、「平均タンパク質摂取量を推奨範囲内で増加させることにより、AD-DALY率を改善可能であることが示唆された」としている。

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ワクチン接種、50年間で約1億5,400万人の死亡を回避/Lancet

 1974年以降、小児期の生存率は世界のあらゆる地域で大幅に向上しており、2024年までの50年間における乳幼児の生存率の改善には、拡大予防接種計画(Expanded Programme on Immunization:EPI)に基づくワクチン接種が唯一で最大の貢献をしたと推定されることが、スイス熱帯公衆衛生研究所のAndrew J. Shattock氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年5月2日号に掲載された。14種の病原菌へのワクチン接種50年の影響を定量化 研究グループは、EPI発足50周年を期に、14種の病原菌に関して、ワクチン接種による世界的な公衆衛生への影響の定量化を試みた(世界保健機関[WHO]の助成を受けた)。 モデル化した病原菌について、1974年以降に接種されたすべての定期および追加ワクチンの接種状況を考慮して、ワクチン接種がなかったと仮定した場合の死亡率と罹患率を年齢別のコホートごとに推定した。 次いで、これらのアウトカムのデータを用いて、この期間に世界的に低下した小児の死亡率に対するワクチン接種の寄与の程度を評価した。救われた生命の6割は麻疹ワクチンによる 1974年6月1日~2024年5月31日に、14種の病原菌を対象としたワクチン接種計画により、1億5,400万人の死亡を回避したと推定された。このうち1億4,600万人は5歳未満の小児で、1億100万人は1歳未満であった。 これは、ワクチン接種が90億年の生存年数と、102億年の完全な健康状態の年数(回避された障害調整生存年数[DALY])をもたらし、世界で年間2億年を超える健康な生存年数を得たことを意味する。 また、1人の死亡の回避ごとに、平均58年の生存年数と平均66年の完全な健康が得られ、102億年の完全な健康状態のうち8億年(7.8%)はポリオの回避によってもたらされた。全体として、この50年間で救われた1億5,400万人のうち9,370万人(60.8%)は麻疹ワクチンによるものであった。生存可能性の増加は、成人後期にも 世界の乳幼児死亡率の減少の40%はワクチン接種によるもので、西太平洋地域の21%からアフリカ地域の52%までの幅を認めた。この減少への相対的な寄与の程度は、EPIワクチンの原型であるBCG、3種混合(DTP)、麻疹、ポリオワクチンの適応範囲が集中的に拡大された1980年代にとくに高かった。 また、1974年以降にワクチン接種がなかったと仮定した場合と比較して、ワクチン接種を受けた場合は、2024年に10歳未満の小児が次の誕生日まで生存する確率は44%高く、25歳では35%、50歳では16%高かった。このように、ワクチン接種による生存の可能性の増加は成人後期まで観察された。 著者は、「ワクチン接種によって小児期の生存率が大幅に改善したことは、プライマリ・ヘルスケアにおける予防接種の重要性を強調するものである」と述べるとともに、「とくに麻疹ワクチンについては、未接種および接種が遅れている小児や、見逃されがちな地域にも、ワクチンの恩恵が確実に行きわたるようにすることが、将来救われる生命を最大化するためにきわめて重要である」としている。

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気候変動により脳卒中による死者数が増加か

 気候変動による気象の激しい変化は、脳卒中による死者数の増加につながっているようだ。新たな研究で、2019年には、厳寒をもたらす寒冷前線や灼熱の熱波が年間50万人以上の脳卒中による死亡に関係していた可能性のあることが示された。中南大学湘雅医院(中国)のQuan Cheng氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月10日掲載された。 Cheng氏は、「近年の劇的な気温の変動は、人間の健康に影響を及ぼし、広範な懸念を引き起こしている」と述べ、「われわれの研究では、このような気温の変動は世界中で脳卒中の負担を増加させ、特に高齢者や医療格差の大きい地域においてその影響が強い可能性が示唆された」と同誌のニュースリリースの中で述べている。 研究グループは、「気温は、高過ぎても低過ぎても、脳卒中のリスクを高め得る」と説明する。気温が低いと血管が収縮して血圧が上昇する。高血圧は脳卒中の主なリスク因子である。一方、気温が高いと脱水症状が引き起こされ、血液が濃くなったり血流が悪くなったりする。米国心臓協会(AHA)のデータによると、米国における脳卒中による死者数は、2011年から2021年の間に26%増加している。研究グループは、「この増加の一部は、気候変動と関連している可能性がある」との見方を示している。 今回の研究では、204の国や地域の30年間(1990〜2019年)の健康記録と気象情報のデータを用いて、非至適気温に起因する脳卒中による負荷(死亡、障害)について検討した。気象情報は、0.5度ごとの経線と緯線に囲まれた範囲の気温データを入手し、国や地域ごとの夏と冬の月単位の平均気温、平均最高気温、平均最低気温を計算した。 その結果、2019年には、非至適気温に起因する脳卒中による死者数は52万1,031人、非至適気温に起因する脳卒中による障害調整生存年(DALY)は942万3,649と推計された。この死者数は、AHAが提示している2019年の世界全体での脳卒中に起因する総死者数(660万人)のかなりの部分を占めている。特に、低い気温に起因する脳卒中による死者数は47万4,002人と推定され、高い気温よりもはるかに影響の大きいことがうかがわれた。また、死者数には男女による違いも見られ、年齢標準化死亡率(10万人当たり)は、男性で7.7であったのに対し女性では5.9であった。地理的に見て非至適気温に起因する脳卒中による死亡率が最も高かったのは中央アジアであった。 Cheng氏は、「気温の変動が脳卒中に及ぼす影響を明らかにし、健康格差に対処するための解決策を見つけ出すためには、さらなる研究が必要だ。今後の研究で、化石燃料の燃焼、森林伐採、工業プロセスなど、気候変動の潜在的な原因に対処する効果的な健康政策を特定し、それによりこの脅威の軽減を目指すべきだ」と述べている。

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遊び半分のからかい行動、類人猿にも

 子どもが誰かをつついたり髪を引っ張ったりして互いをからかい合う場面は誰もが見かけたことがあるはずだが、このような遊び半分のからかい行動を見せるのはヒトだけではないようだ。オランウータンやチンパンジーなどの類人猿も、さまざまな形のからかい行動を行い、そのような行動はヒトと同様、挑発的で繰り返される傾向があり、驚きや遊びの要素を含んでいることが、マックス・プランク研究所(ドイツ)のIsabelle Laumer氏らによる研究から明らかになった。この研究の詳細は、「Proceedings of the Royal Society B」2月14日号に掲載された。  研究論文の上席著者で米インディアナ大学人類学教授のErica Cartmill氏は、「類人猿のからかい行動としてよく見られたのは、からかう相手の視界の真ん中で体の一部や物を繰り返し振ったり揺すったりする、相手を叩いたりつついたりする、至近距離から相手の顔をじっと見つめる、相手の動きを邪魔する、相手の毛を引っ張るといった、無視することが極めて難しいものだった」と言う。 今回の研究の背景情報によると、人類の発達において、遊び半分のからかい行動は本格的な冗談やユーモアの前段階として知られている。また、研究グループの説明によれば、ヒトの赤ちゃんも、初めて言葉を発する前の生後8カ月という早い段階で、母親におもちゃを渡すそぶりを見せながら渡さないことを楽しんだり、他の乳児の行動を面白がって邪魔することで注意を自分に引き寄せようとするなど、遊び半分のからかい行動を見せる。 そこで研究グループは、こうしたヒトの行動が類人猿(オランウータン、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ)にも見られるのかどうか調べることにした。その理由についてLaumer氏は、「類人猿はヒトに近縁で、社会的な遊びを行い、笑うことがあり、他者の期待に対して比較的鋭敏に理解を示すことなどから、遊び半分のからかい行動について調べる対象として最適であるため」と説明している。 観察の中で認められた遊び半分のいたずら、あるいは挑発と感じられる自発的な社会的交流を分析した結果、類人猿のからかい行動は、つつく、ボディスラム(抱投げ)を行う、体の部位を引っ張る、何かを盗むなど18種類に分類された。そのような行動のほとんどは、相手の反応を得たり注意を引き寄せたりすることを目的としていた。そしてヒトと同様、からかい行動はいくつかの点で遊び行動とは異なっていたという。Laumer氏は、「子どものからかい行動と同じように、類人猿の遊び半分のからかい行動にも一方的な挑発やからかった後に相手の顔を見て反応を待つといった行動、繰り返しや驚きの要素が含まれていた」とマックス・プランク研究所のニュースリリースの中で説明している。 研究グループによると、著名な霊長類学者であるジェーン・グドール(Jane Goodall)もチンパンジーが似たような行動を取ることを指摘していたが、からかい行動について体系的に研究したのは今回の研究が初めてだという。Laumer氏は、「4種類の類人猿全てに、ヒトの幼児に見られる遊び半分のからかい行動やいたずらと類似した行動が存在していた。そのため、進化の観点から見ると、これらの行動とその認知的前提条件は、少なくとも1300万年前に生息していた人類の共通祖先において、すでに獲得されていた可能性がある」と話す。 Laumer氏は、「今回の研究がきっかけとなって、多面的な行動の進化の解明に向けて、より多くの種でのからかい行動について研究されるようになることを願っている」と述べる。また同氏は、「この研究によって、ヒトに最も近縁な類人猿とわれわれが共有している類似性について、そして絶滅の危機に瀕しているこれらの動物を守る重要性について、人々の認識が高まることを期待している」と話している。

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うつ病発症リスクと犬の散歩のタイミング~女性看護師調査

 朝の散歩を行うことは、体内時計を調節するうえで重要であり、夜型のクロノタイプにとって有益であると考えられる。オーストリア・ウィーン医科大学のMagdalena Zebrowska氏らは、犬の飼育や犬との朝の散歩は、うつ病リスクを低下させる可能性があるとの仮説を立て、女性看護師を対象に犬の飼育、朝の散歩とそのタイミングや期間とうつ病リスクとの関連を調査し、クロノタイプによる効果の違いを検討した。PLOS ONE誌2024年1月31日号の報告。 Nurses' Health Study 2(NHS2)に参加した53~72歳のうつ病でない米国女性2万6,169人を対象に、2017~19年にプロスペクティブフォローアップ調査を実施した。年齢および多変量で調整したロジスティック回帰分析を用いて、犬の飼育、犬との朝の散歩、時間、タイミングに応じて、うつ病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、犬の飼育、犬との朝の散歩、持続時間、タイミングとうつ病リスクとの関連は認められなかった。【犬の飼育】vs.犬を飼っていない、OR:1.12(95%CI:0.91~1.37)【犬との朝の散歩】vs.行っていない、OR:0.87(95%CI:0.64~1.18)【散歩の持続時間】30分超vs.15分以下、OR:0.68(95%CI:0.35~1.29)【散歩のタイミング】午前9時以降vs.午前7時前、OR:1.06(95%CI:0.54~2.05)・犬の飼い主のクロノタイプが、これらの関連性を修正することが示唆された。・ペットを飼っていない同じクロノタイプの女性と比較すると、夜型クロノタイプの犬の飼い主では、うつ病リスクの有意な増加が認められたが、朝型クロノタイプの場合では認められなかった。【夜型クロノタイプの犬の飼い主】OR:1.60(95%CI:1.12~2.29)【朝型クロノタイプの犬の飼い主】OR:0.94(95%CI:0.71~1.23)・さらに、夜型クロノタイプは、朝型クロノタイプよりも、朝自分で犬の散歩をすることで、より多くのベネフィットが得られる可能性が示唆された(OR:0.75、95%CI:0.46~1.23、Pintx=0.064)。 著者らは「犬の飼育とうつ病リスクは、全体として関連が認められなかったものの、夜型クロノタイプの人では、うつ病リスクの増加がみられた。これには、朝の犬の散歩が、夜型クロノタイプの人のうつ病リスクを低下させるのに寄与する可能性を示唆しており、今後のさらなる研究により、この関連がより明らかになることが望まれる」としている。

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骨髄異形成症候群に伴う貧血にルスパテルセプト承認/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは2024年1月18日、ルスパテルセプト(商品名:レブロジル)について、骨髄異形成症候群(MDS)に伴う貧血を効能又は効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得した。  ルスパテルセプトは、赤血球成熟促進薬として造血幹細胞から赤血球への分化過程の後期段階における分化を促進し、成熟した赤血球数の増加を誘導する新規作用機序の治療薬である。  今回の承認は、低リスクMDS患者を対象とした国際共同第III相試験(COMMANDS試験)、海外第III相試験(MEDALIST試験)、および赤血球輸血非依存の低リスクMDS患者を対象とした国内第II相試験(MDS-003試験)の結果にもとづいている。これらの試験から、ルスパテルセプトは赤血球造血刺激因子製剤の治療歴の有無ならびに赤血球輸血依存・非依存に関わらず、低リスクMDS患者の貧血の治療として、臨床的意義の高い効果を示した。安全性については、いずれの試験でも低リスク MDS患者に対して忍容性があり、 十分に管理可能な安全性プロファイルであることが示された。

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経口GLP-1受容体作動薬の処方された患者さんへの服薬指導【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第44回

■外来NGワード「朝食前に飲みなさい」(正しい服用法を説明しない)「たっぷり水を飲んで服用しなさい」(間違った説明をする)■解説代表的なインクレチンであるGLP-1は、小腸下部のL細胞から分泌され、膵β細胞でのインスリン分泌を促進し、膵α細胞でのグルカゴン分泌を抑制します。同時に中枢での摂食抑制ホルモンとしても機能します。これまでGLP-1受容体作動薬はペプチドであり、経口投与しても消化酵素によって分解されてしまい吸収されませんでした。そのため、主に注射薬として使われていました。しかし、経口セマグルチドのリベルサス(商品名)は、吸収促進剤であるサルカプロザートナトリウム(SNAC)を添加することで、胃からの吸収が可能となりました。これが国内初の経口GLP-1受容体作動薬です。この薬は胃内で主に吸収され、SNACがもつ局所でのpH緩衝作用によりセマグルチドの酵素的分解が抑制され、吸収が促進されます。また、SNACによってセマグルチドのモノマー化も促進される仕組みです。薬物動態解析によれば、経口投与後のセマグルチドの絶対的なバイオアベイラビリティは、約1%と推定されています。セマグルチドの吸収を高めるためには、空腹時にコップ半分(120mL以下)の水で服用する必要があります。また、経口セマグルチドの吸収には食事が影響を与えることが確認されています。そのため、服用後は少なくとも30分間は飲食や他の薬剤の経口摂取を避ける必要があります。経口セマグルチドの適応は「2型糖尿病」で、用法用量は「1日1回3mgから始め、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する」ことが推奨されています。患者の状態により適宜増減させることも可能で、1日1回7mgを維持しても効果が不十分な場合は、1日1回14mgに増量することも考慮されています。服用は14mg錠を1錠摂取し、分割・粉砕・噛むことは避けなければなりません。さらに、湿気と光の影響を受けやすいので、服用直前に錠剤をシートから取り出す必要があります。また、ミシン目以外で切れないため、偶数日数で処方する際には、その点に留意する必要があります。患者さんの朝のルーチンに合わせ、服用後の30分間を有意義に過ごす工夫を一緒に考え、指導することが求められます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者食事や運動に気を付けているんですが、血糖値がなかなか下がりません。医師それでは、この薬を試してみましょうか。患者どんな薬なんですか?医師これは小腸から出るGLP-1というホルモンを模倣した薬で、普通は注射薬なんですが、この薬は特別な薬で…。患者特別って?医師吸収を高めるために、特許技術が採用されているんですよ。ですから服用方法を守らないと、ほとんど吸収されません。患者えっ、そうなんですか。どんな風に服用したらいいんですか?医師朝のルーチンを教えてもらえますか?患者7時頃に起きて、顔を洗って7時20分頃にパンとコーヒーの朝食を済ませて…。医師なるほど。この薬は、空腹時に服用します。食べたり、飲んだりすると薬の吸収率が下がるので、コップ半分の水(120mL以下)で飲んで、30分経ってから飲み物を飲んだり、食事をしたり、他の薬を飲んだりすることができます。患者そうすると、薬を飲んですぐにコーヒーはだめですね。医師そうですね。この薬は主に胃で吸収されるのですが、1%くらいしか吸収されないとも言われています。是非、この薬の高める朝のルーチンにして頂けますか。患者はい。わかりました(嬉しそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「この薬は、空腹時に服用します。食べたり飲んだりすると薬の吸収率が下がるので、コップ半分の水(120mL以下)で飲んで、30分経ってから飲み物を飲んだり、食事をしたり、他の薬を飲んだりすることができます」 1)Buckley ST, et al. Sci Transl Med. 2018;10:eaar7047.2)Bækdal TA, et al. Diabetes Ther. 2021;12:1915-1927.

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第197回 セマグルチドと自殺念慮は関連せず

セマグルチドと自殺念慮は関連せずGLP-1受容体作動薬の自殺リスクが取り沙汰されていますが、併せて180万例強の電子カルテ解析で幸いにもノボ ノルディスク ファーマのセマグルチド使用患者の自殺念慮はほかの糖尿病薬や抗肥満薬使用患者に比べて多くなく、むしろ少なめでした。今月5日にNature Medicine誌に掲載された解析結果です1)。2つの集団が解析され、その1つは2021年6月~2022年12月にセマグルチドかほかの抗肥満薬が処方された米国の肥満か太り過ぎの約24万例(24万618例)の医療記録の解析です2)。被験者の大半の23万2,771例は先立って自殺念慮を被ったことがなく、残り7,847例は過去に自殺念慮を生じたことがありました。自殺念慮の経験がなかった患者にセマグルチド処方後6ヵ月間に認められた自殺念慮の発生率、すなわち初発率は0.11%、自殺念慮の経験があった患者のセマグルチド処方後6ヵ月間のその再発率は7%ほどでした。一方、ほかの抗肥満薬処方患者の自殺念慮の初発率と再発率はどちらもより高く、それぞれ0.43%と14%でした。2017年12月~2021年5月にセマグルチドかほかの糖尿病薬が投与された2型糖尿病患者160万例弱(158万9,855例)の医療記録を使ったもう1つの解析も同様の結果となりました。セマグルチド投与群の自殺念慮の初発率と再発率はそれぞれ0.13%と10%、ほかの糖尿病薬投与群の自殺念慮の初発率と再発率はより高くそれぞれ0.36%と18%でした。2型糖尿病へのセマグルチド使用は2017年に米国で承認されているので、より長期の経過の比較が可能です。そこで最大3年間の経過を比較したところ、差は縮まってはいたもののセマグルチド投与群の自殺念慮初発率はやはりより低く保たれていました。セマグルチドと自殺念慮が生じ易くなることの関連をそれらの結果は支持していません。一方、セマグルチドが自殺念慮を生じ難くすると決めつけることはできなさそうですが、もしそうであるなら体重減少が心理的によい影響をもたらすことによるのかもしれませんし、まだ知られていないメカニズムによるのかもしれません3)。先週11日に米国FDAはセマグルチドなどのGLP-1作動薬と自殺念慮や自殺行為の関連の調査の途中経過を発表しました。幸い、Nature Medicine誌の報告と一致し、GLP-1作動薬と自殺念慮や自殺行為の因果関係は示されていないとひとまず判断されています4)。ただし若干のリスクの恐れ(small risk may exist)の払拭には至っておらず、FDAの検討は続いています。今後の課題としてより長期のセマグルチド使用と自殺念慮の関連を調べる必要があるとNature Medicine誌報告の著者は言っています2)。また、自殺念慮から一線を越えた自殺企図(suicide attempt)との関連の検討も必要です。参考1)Wang W, et al. Nature Medicine. 2024 January 5. [Epub ahead of print] 2)Semaglutide associated with lower risk of suicidal ideations compared to other treatments prescribed for obesity or type 2 diabetes / NIH3)No link between popular weight loss drugs and suicidal thoughts, health records suggest / Science4)Update on FDA’s ongoing evaluation of reports of suicidal thoughts or actions in patients taking a certain type of medicines approved for type 2 diabetes and obesity / FDA

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薬物相互作用を調べるのにChatGPT、Bard、Bing AI、どれがいい?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第246回

薬物相互作用を調べるのにChatGPT、Bard、Bing AI、どれがいい?Unsplashより使用ChatGPT、Bard、Bing AIはそれぞれOpenAI社、Google(Alphabet社)、Mircosoft社が運営するAIチャットボットであり、それぞれ強み・弱みがあります。最近画像生成AIであるDALL・E 3がChatGPT、Bing AIに実装されたことから、私の子供もよく画像生成をして遊んでいます。こんなことができる時代になったんだなあと感動する一方、ある程度自然淘汰が進んでいくのではないか、とも感じています。さて、医療においてAIが活用できる領域はいろいろありますが、「薬物相互作用の確認」はその1つかもしれません。Al-Ashwal FY, et al.Evaluating the Sensitivity, Specificity, and Accuracy ofChatGPT-3.5, ChatGPT-4, Bing AI, and Bard Against Conventional Drug-Drug Interactions Clinical Tools.Drug Healthc Patient Saf. 2023 Sep 20:15:137-147.薬物相互作用の検索は、インターネット上でも可能ですが、AIに標準機能として付くようになると、処方時にアラートが出たり、AUCの変化が表示できたり、いろいろと夢が広がります。サブスクでそういうアプリケーションは出ていますが、ではそういうサービスと比べてAIチャットボットはどうだろうかという研究が行われました。合計255組の薬剤について、薬物相互作用予測における感度、特異度、精度を比較評価しました。薬物相互作用については有料サブスクMicromedexをリファレンスにして検証しています。最も特異度が低かったのはChatGPT-3.5でした(37.2%)。これは当然と言えば当然で、現在使用されている大規模言語モデルはGPT-4.0なので致し方ないところかもしれません。Bing AIは高い特異度を示しました(76.9%)。画像を拡大する表. 各AIの薬物相互作用を検出する能力(下段は欠損データを除去したもの)(文献より引用)この論文では「Bing AI推し」という結果になりました。上記すべてを使っていますが、中でもChatGPT-4.0の精度はかなり高くなってきている印象です。現在のデータをブラウジングできたり、画像データをアップロードして解析できたり、できることがどんどん増えています。反面、Bing AIはよくケンカになります(図)。聞き方が悪いのかな…。なので、ちょっと私の中では、「苦手な友達」になりつつあります。画像を拡大する図. Bing AIと喧嘩になる理由最近は、ChatGPTの対抗馬としてClaudeを使う頻度が増えており、個人的にはこちらもオススメです。

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早期アルツハイマー病へのgantenerumab、2件の第III相試験結果/NEJM

 早期アルツハイマー病患者において、完全ヒトモノクローナルIgG1抗体のgantenerumabは116週時点のアミロイド負荷をプラセボより減少させたものの、臨床症状の悪化を抑制しなかった。米国・ワシントン大学のRandall J. Bateman氏らGantenerumab Study Groupが、30ヵ国288施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第III相試験「GRADUATE I試験」および「GRADUATE II試験」(それぞれ15ヵ国156施設、18ヵ国152施設)の結果を報告した。アミロイドβ(Aβ)を標的とするモノクローナル抗体は、早期アルツハイマー病患者の認知機能や身体機能の低下を遅らせる可能性がある。gantenerumabは、Aβの凝集体に対して高い親和性を有しており、皮下投与のアルツハイマー病治療薬として開発が進められていた。NEJM誌2023年11月16日号掲載の報告。116週後の臨床認知症評価尺度6項目合計スコア(CDR-SB)を評価 研究グループは、陽電子放射断層撮影(PET)または脳脊髄液(CSF)検査でアミロイド斑が認められ、臨床認知症評価尺度(CDR)の全般的スコア(CDR-GS、範囲:0~3、スコアが高いほど認知障害が高度)が0.5または1、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが22以上(範囲:0~30、スコアが低いほど認知障害が高度)などのアルツハイマー病による軽度認知障害または軽度アルツハイマー型認知症を有する50~90歳の患者を登録し、gantenerumab群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 投与量は120mg(4週ごと、3回)より開始し、255mg(4週ごと、3回)、510mg(4週ごと、3回)と漸増した後、510mgを2週ごとに皮下投与した。 主要アウトカムは、116週時点のCDR6項目合計スコア(CDR-SB、範囲:0~18、スコアが高いほど認知障害が高度)のベースラインからの変化量であった。CDR-SBのベースラインからの変化量に有意差なし GRADUATE I試験に985例、II試験に980例が登録された。ベースラインのCDR-SBスコアは、それぞれ3.7、3.6であった。 116週時点のCDR-SBスコアのベースラインからの変化量は、GRADUATE I試験ではgantenerumab群3.35、プラセボ群3.65であり(群間差:-0.31、95%信頼区間[CI]:-0.66~0.05、p=0.10)、II試験ではそれぞれ2.82、3.01であった(-0.19、-0.55~0.17、p=0.30)。 116週時点の脳アミロイドPET画像におけるアミロイドのgantenerumab群とプラセボ群の差は、GRADUATE I試験では-66.44センチロイド、II試験では-56.46センチロイドであり、gantenerumab群でのアミロイド陰性状態の患者の割合はGRADUATE I試験で28.0%、II試験で26.8%であった。また2試験のいずれにおいても、gantenerumab群がプラセボ群と比較してCSF中のリン酸化タウ181濃度が低く、Aβ42濃度が高かったが、PETでのタウ凝集蓄積は両群で同程度であった。 浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA-E)は、gantenerumab群で24.9%に認められ、症候性ARIA-Eの発現率は5.0%であった。プラセボ群はそれぞれ2.7%、0.2%だった。

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過去30年間における世界の頭痛有病率~世界疾病負荷研究

 近年、頭痛は世界的な健康課題として大きく注目されている。この懸念は、とくに低~中所得国で顕著であり、青少年や若年成人における有病率の増加に現れている。このような頭痛の急増により、頭痛患者のQOLは常に低いものとなっている。しかし、世界的な影響にもかかわらず、若年層を対象に頭痛の影響を調査した包括的な研究は、いまだ十分ではない。中国・上海交通大学のXin-Yu Li氏らは1990~2019年の30年間にわたり、15~39歳における頭痛の世界的な有病率を定量化するため、本研究を実施した。結果を踏まえて著者らは、片頭痛と緊張性頭痛(TTH)は世界の健康において大きな課題であるとし、その影響の強さは国によって違いがあり、女性、30~39歳、社会人口統計学的指数(SDI)が高い集団においては、とくに影響が大きいと指摘している。The Journal of Headache and Pain誌2023年9月18日号の報告。 研究は、1990~2019年の30年間にかけて実施された。204の異なる国と地域を対象に、とくに片頭痛とTTHの影響を評価した。包括的な評価では、年齢、性別、年、地域性、SDIなどのさまざまな人口統計学的要因と、頭痛の罹患率、有病率、障害調整生存年(DALY)との関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・2019年の世界における片頭痛の推定患者数は5億8,176万1,847.2例(95%不確定区間[UI]:4億8,830万9998.1~6億9,629万1,713.7)であり、1990年から16%の増加が認められた。・2019年のTTHの推定患者数は、9億6,480万8567.1例(同:8億958万2,531.8~11億5,523万5,337.2)であり、1990年から37%の増加が認められた。・片頭痛の有病率は、南アジアで最も高く、1億5,449万169.8例(同:1億3,029万6,054.6~1億8,246万4,065.6)であった。・高SDI地域では、1990年(人口10万人当たり2万2,429例)と2019年(人口10万人当たり2万2,606例)のいずれにおいても、最も顕著な片頭痛有病率が示された。・SDI分類のうち、中SDI地域は、1990年(2億1,013万6,691.6例)と2019年(2億8,757万7,250例)のいずれにおいても、TTH患者数が最も高かった。・過去30年間で片頭痛患者数が最も顕著に増加したのは、東アジアであった。・全体として、片頭痛およびTTHの疾患負荷とSDIとの間に、正の相関が認められた。 著者らは「片頭痛とTTHのマネジメントを現代医療のパラダイムに組み込むことは不可欠であり、このような戦略的統合は、頭痛に関連するリスク因子や治療介入の重要性について一般集団が認識を深めることに寄与する可能性がある」としている。

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