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ステント留置後DAPTの至適期間は?/Lancet

 薬剤溶出ステント留置後1年超の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、心筋梗塞およびステント塞栓症のリスクは低いが、死亡リスクは増大することが明らかにされた。同群の死亡増大は、心臓死の減少分よりも非心血管死の増大分が大きかったためであった。イタリア・ボローニャ大学のTullio Palmerini氏らがネットワークメタ解析の結果、報告した。直近の試験報告でも、ステント留置後DAPTの至適期間は不明なままであった。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告より。短期vs. 長期、6ヵ月以下vs. 1年vs. 1年超について評価 研究グループは異なるDAPT戦略の死亡およびその他アウトカムを、ペアワイズおよびベイジアン・ネットワークメタ解析で調べた。2014年11月20日時点でMedline、Embase、Cochraneデータベース、国際会議録を対象に、薬剤溶出ステント留置後、異なるDAPT期間を比較している無作為化試験を検索した。試験デザイン、包含・除外基準、サンプルの特色、臨床的アウトカムを抽出し、試験ごとにDAPT期間群を短期群vs. 長期群、6ヵ月以下群vs. 1年群vs. 1年超群に分類して比較した。 分析は、頻度論的(frequentist)法とベイジアン法の両アプローチで行った。長期DAPTは死亡リスクを増大するが、一概に否定はできない 2011年12月16日~2014年11月16日に発表された10試験を特定した。無作為化を受けた患者3万1,666例が含まれていた。 頻度論的ペアワイズメタ解析の結果、短期DAPT群のほうが長期DAPT群よりも、全死因死亡が有意に低下した(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.69~0.98、p=0.02、治療必要数[NNT]=325例、試験全体で有意な不均一性なし)。 短期DAPT群の死亡抑制には、非心臓死の有意な減少が寄与していた(同:0.67、0.51~0.89、p=0.006、NNT=347例)。心臓死は同程度であった(同0.93、0.73~1.17、p=0.52)。 また、短期DAPT群は重大出血リスクを低下したが、心筋梗塞およびステント塞栓症のリスクは高かった。 同様の結果は、事前情報なしフレームワークのベイジアン分析でもみられた。 ネットワークメタ解析では、6ヵ月以下および1年DAPT群は、1年超DAPT群よりも、心筋梗塞およびステント塞栓症のリスクは高く、死亡リスクは低かった。 なお6ヵ月以下DAPT群は、1年DAPT群と比べて、死亡、心筋梗塞、ステント塞栓症の発生率は同程度であった。重大出血リスクは低かった。 これらの結果について著者は、長期DAPTを一概に否定するものではなく、「われわれは、患者個別のベネフィット-リスクに十分注意して行うことを推奨する」とまとめている。さらに、「今後の研究で、長期DAPTのベネフィットvs. リスクバランスの影響を、人口統計学的、検査ベースおよび遺伝子変異でモデル化することが求められる」と述べている。

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DAPT試験を再考、より長期間(30ヵ月)のDAPTは必要か?(解説:中川 義久 氏)-299

 薬物溶出性ステント(DES)植込み後の患者には、アスピリン+チエノピリジン系抗血小板薬によるDAPT(Dual Antiplatelet Therapy)を用いることが通常である。しかし、そのDAPTを継続する期間については見解が一致していない。 とはいえ、議論は続いているものの、一定の方向に意見が一致してきていた。その収束の方向とは、DAPT期間を延長することにより出血性合併症の発症リスクは増加し、虚血性イベントの明確な抑制は認められない、というものである。1年間または6ヵ月間のDAPTで十分であり、むしろ論点は3ヵ月間などいっそう短いDAPT期間を模索する方向に推移していた。 しかし、その収束に向けての方向を逆転するような驚きの結果が、2014年11月にAHAで発表された。その名も、DAPT試験である。詳細は同日にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。 その試験は、DES後の患者9,961人で、DAPT期間12ヵ月と30ヵ月を比較する、無作為割付、プラセボ対照、多施設試験である。その結果では、30ヵ月DAPT 群でステント血栓症および主要有害複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)が有意に低かった。出血性合併症(GUSTO基準による中等度~重度)の発症リスクは30ヵ月DAPT 群で有意に高かった。 この発表を受けてDAPTの至適期間をいかに考えるかについて議論が再燃している。米国食品医薬品局(FDA)も、本発表を受けて臨床試験の詳細な検証が行われるまでは、現在の処方を変更すべきではないとの声明を発表した。 ここで、このDAPT試験に内在する問題点について考えてみたい。 まず、本試験のデザインは、DES植込み直後にDAPT期間12ヵ月と30ヵ月に割り付けた訳ではなく、植込み当初の1年間のDAPT期間に出血を含めイベントなく経過した患者のみを対象としている。背景にいるDES植込み患者は2万2,866人おり、そのうちの44%にすぎない9,961人が無作為化試験に参加している。この44%の患者を選択する過程でバイアスが生じている可能性が十分にある。この除外された半数を越える56%の患者に、本試験の結果を敷衍できるのかは不明である。 また、この試験の結果では30ヵ月DAPT 施行による主要有害の抑制は、心筋梗塞イベントの抑制に依存している。心筋梗塞が増せば死亡が増えることが自然に思えるが、心臓死・非心臓死ともに30ヵ月DAPT群において有意差はないが実数として多く発生している。本試験で報告されている心筋梗塞サイズは不明であるが、心筋梗塞イベントが臨床的に持つ意味合いについても考える必要がある。 筆者は、本試験の結果を考えたうえでも、少なくとも1年間のDAPT期間で十分であるものと考えている。出血リスクが低く心血管イベントの発生するリスクが非常に高い患者でDAPT期間の延長も考慮する、テーラーメードの選択を行うことが現実的であろう。

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DAPT長期継続で死亡リスク変わらず/Lancet

 抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の長期継続は、アスピリン単独療法または短期(6ヵ月以下)のDAPTと比べて、全死因死亡・心血管死亡・非心血管死亡のリスクにおいて差はみられないことが示された。米国・マサチューセッツ総合病院のSammy Elmariah氏らが、無作為化試験14試験・6万9,644例を対象に、DAPT継続の死亡率への影響を検討したシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまで、心血管疾患患者に一般的に用いられるアスピリンおよびP2Y12阻害薬の全死因死亡への影響については不明であった。Lancet誌オンライン版2014年11月16日号掲載の報告より。DAPT継続の死亡への影響をシステマティックレビューとメタ解析で評価 先行研究の「Dual Antiplatelet Therapy:DAPT」試験において、冠動脈ステント留置後12ヵ月を超えたDAPTの継続は、予想に反して、非心血管死亡の増大と関連していたことが報告されている。研究グループは、あらゆる心血管疾患、治療期間について検討している無作為化対照試験についてメタ解析を行い、DAPT継続の死亡への影響を評価した。 2014年10月1日時点でMedline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを検索し、DAPTの継続vs. アスピリン単独療法または短期(6ヵ月以下)投与を検討した無作為化試験を特定。ベイズランダム効果モデルを用いて結果をプールし、メタ解析を行った。 主要アウトカムは、全死因、心血管、非心血管の死亡率を比較したハザード比(HR)とした。アスピリン単独/DAPT短期(6ヵ月以下)と比較し、死亡について有意差みられず 検索により、前述のDAPT試験を含む14試験に参加した6万9,644例を特定し分析に組み込んだ。8試験がアスピリン単独療法との比較試験、6試験が継続vs. 短期を検討したものであった。 結果、アスピリン単独または短期DAPT群と比較して、DAPT継続群の全死因死亡リスクに有意な差はみられなかった(HR:1.05、95信頼区間[CI]:0.96~1.19、p=0.33)。 同様に、心血管死亡リスク(同:1.01、0.93~1.12、p=0.81)、非心血管疾患リスク(同:1.04、0.90~1.26、p=0.66)についても有意差はみられなかった。

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【医療ニュース トップ100】2014年、最も読まれた「押さえておくべき」医学論文は?

今年も、4大医学誌の論文を日本語で紹介する『ジャーナル四天王』をはじめ、1,000本以上の論文をニュース形式で紹介してきました。その中で、会員の先生方の関心の高かった論文は何だったのでしょう? ここでは、アクセス数の多いものから100本を紹介します。 1位 日本男性の勃起硬度はアレと関連していた (2014/11/13) 2位 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学 (2014/1/7) 3位 子供はよく遊ばせておいたほうがよい (2014/3/28) 4位 思春期の精神障害、多くは20代前半で消失/Lancet (2014/1/27) 5位 なぜコーヒーでがんリスクが低下? (2014/7/31) 6位 メロンでかゆくなる主要アレルゲンを確認 (2014/4/15) 7位 新たな輸液プロトコル、造影剤誘発急性腎障害の予防に有効/Lancet (2014/6/9) 8位 体幹を鍛える腹部ブレーシング、腰痛に効果 (2014/5/7) 9位 コーヒーを多く飲む人は顔のシミが少ない (2014/8/7) 10位 スタチンと糖尿病リスク増大の関連判明/Lancet (2014/10/9) 11位 スルピリドをいま一度評価する (2014/5/16) 12位 米国の高血圧ガイドライン(JNC8)のインパクト/JAMA (2014/4/16) 13位 インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet (2014/6/16) 14位 新規経口抗凝固薬4種vs.ワルファリン-心房細動患者のメタ解析-/Lancet (2013/12/25) 15位 アルコール依存症、薬物治療の減酒効果は?/JAMA (2014/5/29) 16位 SGLT2阻害薬「トホグリフロジン」の日本人への効果 (2014/2/28) 17位 大人のリンゴ病 4つの主要パターン (2014/7/29) 18位 脳動脈瘤、コイルvs. クリッピング、10年転帰/Lancet (2014/11/12) 19位 ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM (2014/9/8) 20位 アルツハイマーに有用な生薬はコレ (2014/11/14) 21位 塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM (2014/8/25) 22位 スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA (2014/4/14) 23位 食後血糖によい食事パターンは?(低脂肪vs低炭水化物vs地中海式) (2014/3/27) 24位 成人ADHDをどう見極める (2014/5/21) 25位 各種ダイエット法の減量効果/JAMA (2014/9/16) 26位 牛乳1日3杯以上で全死亡リスクが2倍/BMJ (2014/11/13) 27位 腰痛持ち女性、望ましい性交体位は? (2014/11/21) 28位 ロマンチックな恋愛は幸せか (2014/3/26) 29位 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 (2014/5/8) 30位 下肢静脈瘤、ベストな治療法は?/NEJM (2014/10/10) 31位 せん妄管理における各抗精神病薬の違いは (2014/9/18) 32位 降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA (2014/9/11) 33位 深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ (2014/3/20) 34位 StageII/III大腸がんでのD3郭清切除術「腹腔鏡下」vs「開腹」:ランダム化比較試験での短期成績(JCOG 0404) (2014/2/26) 35位 たった1つの質問で慢性腰痛患者のうつを評価できる (2014/2/21) 36位 スタチン時代にHDL上昇薬は必要か/BMJ (2014/8/7) 37位 就寝時、部屋は暗くしたほうがよいのか:奈良医大 (2014/8/29) 38位 認知症のBPSD改善に耳ツボ指圧が効果的 (2014/10/28) 39位 統合失調症患者の突然死、その主な原因は (2014/4/18) 40位 うつ病と殺虫剤、その関連が明らかに (2014/7/9) 41位 帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ (2014/5/26) 42位 慢性のかゆみ、治療改善に有用な因子とは? (2014/7/1) 43位 女性の顔の肝斑、なぜ起きる? (2014/5/8) 44位 DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet (2014/7/30) 45位 駆出率が保持された心不全での抗アルドステロン薬の効果は?/NEJM (2014/4/23) 46位 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は (2014/10/30) 47位 アトピー性皮膚炎患者が避けるべきスキンケア用品 (2014/2/6) 48位 タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究 (2014/6/18) 49位 世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見 (2014/10/17) 50位 円形脱毛症とビタミンDに深い関連あり (2014/4/10) 51位 不眠の薬物療法を減らすには (2014/7/23) 52位 オメプラゾールのメラニン阻害効果を確認 (2014/11/6) 53位 タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA (2014/1/16) 54位 ICUでの栄養療法、静脈と経腸は同等/NEJM (2014/10/15) 55位 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット (2014/3/17) 56位 COPDにマクロライド系抗菌薬の長期療法は有効か (2014/1/13) 57位 座りきりの生活は心にどのような影響を及ぼすか (2014/5/12) 58位 PSA検診は有用か:13年後の比較/Lancet (2014/8/22) 59位 気道感染症への抗菌薬治療 待機的処方 vs 即時処方/BMJ (2014/3/17) 60位 血圧と12の心血管疾患の関連が明らかに~最新の研究より/Lancet (2014/6/19) 61位 マンモグラフィ検診は乳がん死を抑制しない/BMJ (2014/2/21) 62位 機能性便秘へのプロバイオティクスの効果 (2014/8/14) 63位 超高齢の大腸がん患者に手術は有用か:国内での検討 (2014/2/14) 64位 糖尿病予防には歩くよりヨガ (2014/8/4) 65位 乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet (2014/3/31) 66位 75歳以上でのマンモグラフィ検診は有効か (2014/8/11) 67位 大腸がん術後の定期検査、全死亡率を減少させず/JAMA (2014/1/23) 68位 「歩行とバランスの乱れ」はアルツハイマーのサインかも (2014/5/13) 69位 食事由来の脂肪酸の摂取状況、国によって大きなばらつき/BMJ (2014/4/28) 70位 心房細動合併の心不全、β遮断薬で予後改善せず/Lancet (2014/9/19) 71位 薬剤溶出ステントの直接比較、1年と5年では異なる結果に/Lancet (2014/3/24) 72位 ピロリ除菌、糖尿病だと失敗リスク2倍超 (2014/8/21) 73位 認知症にスタチンは有用か (2014/7/25) 74位 RA系阻害薬服用高齢者、ST合剤併用で突然死リスク1.38倍/BMJ (2014/11/20) 75位 腰痛へのアセトアミノフェンの効果に疑問/Lancet (2014/8/6) 76位 食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究 (2014/9/12) 77位 うつになったら、休むべきか働き続けるべきか (2014/9/16) 78位 英プライマリケアの抗菌治療失敗が増加/BMJ (2014/10/1) 79位 総胆管結石疑い 術前精査は必要?/JAMA (2014/7/21) 80位 歩くスピードが遅くなると認知症のサイン (2014/10/8) 81位 前立腺がん、全摘vs.放射線療法/BMJ (2014/3/10) 82位 緑茶が認知機能低下リスクを減少~日本の前向き研究 (2014/6/3) 83位 高力価スタチンが糖尿病発症リスクを増大させる/BMJ (2014/6/16) 84位 乳がんの病理学的完全奏効は代替エンドポイントとして不適/Lancet (2014/2/27) 85位 Na摂取増による血圧上昇、高血圧・高齢者で大/NEJM (2014/8/28) 86位 抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与か (2014/8/15) 87位 歩数を2,000歩/日増加させれば心血管リスク8%低下/Lancet (2014/1/8) 88位 肩こりは頚椎X線で“みえる”のか (2014/3/19) 89位 地中海式ダイエットと糖尿病予防 (2014/4/7) 90位 閉塞性睡眠時無呼吸、CPAP vs. 夜間酸素補給/NEJM (2014/6/26) 91位 揚げ物は肥満遺伝子を活性化する?/BMJ (2014/4/3) 92位 6.5時間未満の睡眠で糖尿病リスク上昇 (2014/9/4) 93位 セロトニン症候群の発現メカニズムが判明 (2014/3/14) 94位 日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究 (2014/6/20) 95位 肥満→腰痛のメカニズムの一部が明らかに (2014/8/8) 96位 低炭水化物食 vs 低脂肪食 (2014/8/7) 97位 認知症患者の調子のよい日/ 悪い日、決め手となるのは (2014/3/21) 98位 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか (2014/7/2) 99位 血糖降下強化療法の評価―ACCORD試験続報/Lancet (2014/8/20) 100位 小児BCG接種、結核感染を2割予防/BMJ (2014/8/21) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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ステント留置後の2剤併用抗血小板療法、1年超は有用か/NEJM

 薬剤溶出ステント(DES)留置後に、チエノピリジン系薬とアスピリンによる2剤併用抗血小板療法を1年を超えて行うことは、ステント血栓症発症率や心血管イベント発生率を有意に減少するが、中程度~重度出血率も増大することが明らかにされた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLaura Mauri氏らが、DESを留置した1万例弱について行った無作為化比較試験「DAPT」の結果、報告した。冠動脈ステント留置後には、血栓性合併症予防のため2剤併用抗血小板療法が推奨されているが、1年を超えて行うことのベネフィットやリスクについて不明であった。NEJM誌2014年12月4日号(オンライン版2014年11月16日号)掲載の報告より。術後12~30ヵ月のステント血栓症と主な有害心血管・脳血管イベントを比較 試験は、DESを留置した9,961例を対象に行われた。被験者全員に対し、2剤併用抗血小板療法(チエノピリジン系薬+アスピリン)を12ヵ月間行った後、無作為に2群に分け、一方の群にはさらに18ヵ月間にわたり同治療を継続し(チエノピリジン継続群)、もう一方の群にはプラセボ+アスピリン(プラセボ群)を投与した。 主要有効性評価項目は2つで、術後12~30ヵ月のステント血栓症と主な有害心血管・脳血管イベントのそれぞれの発生率だった。安全性に関する主要評価項目は、中程度~重度出血だった。1年超継続群、ステント血栓症リスクは約7割減だが 結果、ステント血栓症発生率は、プラセボ群1.4%に対し、チエノピリジン継続群で0.4%と、有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.29、95%信頼区間[CI]:0.17~0.48、p<0.001)。 また、主な有害心血管・脳血管イベントの発生率も、プラセボ群5.9%に対し、チエノピリジン継続群で4.3%と低率だった(HR:0.71、95%CI:0.59~0.85、p<0.001)。なかでも心筋梗塞発生率が、プラセボ群4.1%に対しチエノピリジン継続群2.1%と、有意に低かった(HR:0.47、95%CI:0.37~0.61、p<0.001)。 一方で中程度~重度出血率は、プラセボ群で1.6%に対し、チエノピリジン継続群で2.5%と、有意に増大した(p=0.001)。 全死因死亡の発生率は、プラセボ群1.5%、チエノピリジン継続群2.0%で、プラセボ群で有意に低かった(HR:1.36、95%CI:1.00~1.85、p=0.05)。

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うつ病+認知障害への有効な治療介入は

 うつ病と認知障害を有する高齢者に対しては、抗うつ薬の効果は限定的である。また、心理社会的介入の効果はこれまで十分に検討されていなかった。このような患者に対し、問題適応療法(problem adaptation therapy:PATH)が、認知障害支持療法(ST-CI)よりも、病状の低減に有効であることが、米国・ウェイル・コーネル・メディカル大学のDimitris N. Kiosses氏らによる無作為化試験の結果、報告された。JAMA Psychiatry誌オンライン版2014年11月5日号の掲載報告。 試験は同大研究所で2006年4月~2011年9月に行われた。被験者は、大うつ病、中等度認知症レベルの認知障害を有している65歳以上の74例で、無作為にPATH群とST-CI群に割り付けられ、週1回12週間にわたる介入を自宅で受けた。検討ではミックス効果モデルを用いて、12週間介入の両群の効果を比較した(途中離脱者は14.8%)。主要アウトカムは、うつ病(モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度[MADRS]で評価)および障害(World Health Organization Disability Assessment Schedule II[WHODAS 2.0]で評価)の改善であった。 PATHは、代替戦略、環境適応、介護者支援を統合した問題解決アプローチで、患者の感情調節を図る。一方のST-CIは、情動、理解、共感の表出にフォーカスを当てた介入の方法である。 主な結果は以下のとおり。・12週間介入において、PATH群のほうがST-CI群よりも、うつ病(Cohen d:0.60、95%信頼区間[CI]:0.13~1.06、治療×期間 F1,179=8.03、p=0.005)、障害(同:0.67、0.20~1.14、F1,169=14.86、p=0.001)ともに有意に大きく改善した。・さらに副次アウトカムのうつ病寛解率も、PATH群のほうがST-CI群よりも有意に高値であった(37.84% vs. 13.51%、χ2=5.74、p=0.02、NNT=4.11)。 今回の結果を踏まえて、著者らは「PATHは、うつ病と認知障害を有する、治療選択肢がほとんどない高齢者の大規模集団に好影響をもたらす可能性がある」とまとめている。関連医療ニュース 認知症の精神症状、さらなる評価が必要 高齢者への向精神薬投与、認知症発症リスクと強く関連 若年双極性障害への治療効果を高めるには  担当者へのご意見箱はこちら

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DES後のDAPT継続期間は短期間をベースに、高リスクの患者では症例ごとのオーダーメイド医療か(解説:中川 義久 氏)-241

 薬剤溶出ステント(DES)留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)を継続する期間については、いまだ明確な基準はない。今回、この問題に1つエビデンスが加えられた。 フランスのJean-Philippe Colletらが、ARCTIC-Interruptionという無作為化比較試験の結果をLancet誌に報告した。2010年1月から2012年3月の間に、中断群624例と継続群635例に割り付けた。DES留置後1年間にイベントが起きなかった場合に割り付けが行われ、中断群はチエノピリジン系薬剤(クロピドグレル)が中断されアスピリンを継続している。継続群は、アスピリン+チエノピリジン系薬剤の2剤投与である。割り付け後の追跡期間の中央値は17ヵ月である。 その結果では、全死亡、心筋梗塞、脳梗塞や一過性脳虚血性発作、再血行再建術、ステント血栓症で定義される主要エンドポイント発生は、ITTで評価すると中断群4%、継続群4%と差は無かった。 一方、STEEPLE大出血イベントで定義される安全性エンドポイントは、中断群<0.5%、継続群1%と有意差はないものの継続群で頻度が高かった。大出血または小出血イベントでは、中断群1%、継続群2%と継続群で有意に頻度が高かった(p=0.04)。 要約すれば、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後も継続して行うことに明白な有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増し有害であることが示された。 この試験だけでなく、PRODIGY、REAL-LATE/ZEST-LATE、DES LATE、EXCELLENT、RESET、OPTIMIZEなどの試験でも、長期間のDAPTは心血管イベントを減らすことはなく、出血性合併症を増加させるという結果が一貫性を持って示されている。 このようなエビデンスがあるものの、日本における日常臨床の現場においては、1年を超えてDAPTが継続されている症例も少なくないのが現状であろう。これらの無作為化試験においては、試験除外基準によりステント血栓症の高リスク症例は解析に加えられていないことに注意が必要である。 また、DESの進化、新規の抗血小板薬剤の登場など現場の変化もある。日常臨床において各担当医が悩むのは、複雑な病変背景や植込み手技の症例、PSSやステント・フラクチャを持つことが既知の症例などである。標準的な症例については、DAPT期間についてガイドラインが今後改訂される可能性はあるが、高リスク症例については明確な基準を提示することは困難であろう。 ステント血栓症の危険因子を解析した報告は多い。これらの因子の集積度について症例毎に配慮して各個人に最適な医療を提供するオーダーメイド医療が求められる分野なのであろう。

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DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet

 薬剤溶出ステント(DES)留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の継続について、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後も継続して行うことに明白な有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増し有害であることが示された。フランス・INSERMのJean-Philippe Collet氏らが、無作為化試験ARCTIC-Interruptionの結果を分析し報告した。冠動脈ステント留置後のDAPTの至適な継続期間はいまだ明らかになっていない。著者は今回の結果について、「高リスク患者が除外された試験であり、同患者については結論を出すことはできない」としつつ、「同様に中断した試験すべての所見が、冠動脈ステント留置後のDAPTの治療期間について短縮する方向でガイドラインを再検討する必要があることを示唆している」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年7月16日号掲載の報告より。DES留置1年後、DAPT中断群と継続群に割り付け検討 ARCTIC-Interruptionは、既報の無作為化試験ARCTIC-Monitoring(ARCTIC第I相試験、2,440例が参加)で予定されていた延長試験(ARCTIC第II相試験)であった。フランスの38施設でDES埋め込み手術が予定されていた18歳以上の患者が参加して行われた。 ARCTIC-Interruptionは、第I相試験の被験者で追跡1年後、DAPT中断への禁忌(糖尿病、末梢動脈疾患、ADPに対する血小板反応が高いなど)を有さなかった患者を適格とし、コンピュータ無作為化シーケンスにより施設単位で1対1の割合で、中断群と継続群に割り付けて6~18ヵ月治療が行われた。中断群はチエノピリジン系薬(クロピドグレル[商品名:プラビックス])が中断されアスピリンの投与は継続した。 主要エンドポイントは、死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・脳卒中・緊急血行再建術の複合で、intention to treat分析にて評価した。主要複合エンドポイント発生は両群で有意差なし、大出血イベントは継続群で多い 2011年1月4日~2012年3月3日の間に、1,259例がARCTIC-Interruption試験の適格基準を満たし、各治療群に無作為に割り付けられた(中断群624例、継続群635例)。 追跡期間中央値は17ヵ月であった(IQR:15~18ヵ月)。その間の主要エンドポイント発生は、中断群27例(4%)、継続群24例(4%)だった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.68~2.03、p=0.58)。 一方、安全性のエンドポイントでは、STEEPLE大出血イベントが、中断群(1例、0.5%未満)と比べて継続群(7例、1%)のほうが発生する頻度が高かった(HR:0.15、95%CI:0.02~1.20、p=0.073)。また、大出血または小出血イベントも、中断群(3例、1%)と比べて継続群(12例、2%)のほうがより頻度が高かった(同:0.26、0.07~0.91、p=0.04)。

129.

急性心筋梗塞後にも心房細動患者にはCKDのステージに関わらずワルファリンを投与すべき!でも、日本でも同じ?(コメンテーター:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(190)より-

ワルファリンは、心房細動患者で心原性脳梗塞や全身性塞栓症を予防するには有効な薬剤で、出血のリスクはあっても、Net Clinical Benefitの点からCHADS2スコアを考慮して使用すべきとされている。しかし、CKDのステージが進行するにつれ出血のリスクが増加することから、ワルファリン投与についてはControversialであった。 Carreroらはスウェーデン国内のすべての病院から急性期心疾患の登録研究を用いて、急性心筋梗塞後に退院した心房細動患者でワルファリン治療の効果を検討した結果、CKDのステージに関係なくワルファリン投与が優れていることを示した。また同時に、本論文においては急性心筋梗塞であっても抗血小板薬よりワルファリンの投与を優先すべきであることも示唆した。 しかし、この結論をすぐにわが国における実臨床の場に適応できるかというと、2つの問題点をあげておかなければならない。 まず、ワルファリンのコントロール状況を示すTime in Therapeutic Range(TTR)は、スウェーデンでは実臨床において70%以上である。TTRが低下すれば、よりイベントは塞栓症の発症も出血も多くなることが知られている。わが国では循環器専門病院でも50~60%と報告されていることから考えれば、さらに実際は低いと考えられるので、スウェーデンと同等のワルファリンの効果が得られるかは疑問である。 次に、急性心筋梗塞の治療でのPCIを含めた血行再建の頻度である。この登録研究では、PCIとCABGを含めた血行再建の頻度が30%程度である。おそらく90%以上に血行再建が行われ、しかもステントがPCIのほとんどに使用されているわが国の状況では、アスピリンとチエノピリジン系の2剤の抗血小板療法(Dual Antiplatelet Therapy:DAPT)が通常処方されている。心房細動があれば、ワルファリンを加えた3剤投与(Triple therapy)が必要となり、さらに出血のリスクが増加すると予測される。 WOEST試験でもTriple therapyには疑問が出されている。この論文でも、DAPTの頻度がワルファリン使用群で16.8%であるのに比べ、ワルファリン非使用群では52.6%であることを考えれば、直ちにすべての患者、とくに出血リスクの高い進行したCKD患者で、しかも実臨床で厳密なTTRのコントロールが困難なわが国において、同様なアウトカムを出せるかは疑問である。 今後CKDを合併した心房細動を有する心筋梗塞患者は、わが国でも増加すると考えられる。これらの患者にどのような抗凝固・抗血栓療法を行うかは、われわれが解決しなければならない問題である。

130.

われわれはOPIMIZE試験の結果を日本の実臨床にオプティマイズできるか?(コメンテーター:中川 義久 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(161)より-

2013年10月末に米サンフランシスコで開催されたTCTで、OPIMIZE試験の結果が発表された。さらにJAMA誌にも結果が掲載された。このOPIMIZE試験は、ゾタロリムス溶出ステント(ZES)留置術後患者3,119例を対象として、留置後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の至適期間を検討することを目的とした臨床研究である。この至適期間の『至適』が本研究のOPIMIZEという名の意味するところと思われる。結果として、DAPT継続期間3ヵ月と12ヵ月の比較で、イベントリスクが増加することはなく3ヵ月の非劣性が示された。ステント血栓症のリスク増加もなかったという。 ここで日本の状況を考えてみよう。ステント血栓症への懸念からDES留置後1年以上のDAPTが高率に施行されている。日本の実地臨床において施行されたRESET試験では、90%の患者において1年以上のDAPTが施行されていた。DES留置後の重篤な心血管イベントの発症を抑制するという確証がないまま、漠然とした不安感に対して、1年以上にわたる長期のDAPTが継続されている可能性がある。DAPTを長期間継続することによる脳出血などの重篤な出血性合併症は、患者の不利益ともなる。本試験名の『OPIMIZE』という言葉の意味を辞書で調べると、『最高に活用する、できるだけ能率的に活用する』と記されている。この研究結果を、日本の実臨床の現場にオプティマイズする必要があろう。 もちろん、そのためには日本人でのエビデンスに基づくことが必要である。OPIMIZE試験の結果が発表されたTCT2013では、日本人での研究結果であるOPERA試験の結果も報告された。Endeavorステント留置後の1,200例を対象にDAPT継続期間3ヵ月と12ヵ月で比較し、3ヵ月の非劣性が示された。また、エベロリムス溶出性コバルトクロムステント留置後のDAPT継続期間を3ヵ月に短縮することの安全性を探索的に評価するSTOPDAPT試験が本邦において進行中である。平成25年12月現在、すでに1,500例の患者登録が終了し観察期間に入っており、結果が待たれる。これらのデータを蓄積し、日本人での至適DAPT期間を確立することを期待する。

131.

薬物溶出ステント後のDAPTの投与期間は何ヵ月?/JAMA

 ゾタロリムス溶出ステント(エンデバー)留置術後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の実施期間について、3ヵ月実施が12ヵ月実施に対して非劣性であることが実証された。ブラジル・Instituto Dante Pazzanese de CardiologiaのFausto Feres氏らが、3,000例超について行った多施設共同オープンラベル無作為化比較試験で明らかにした。薬剤溶出性ステント留置後の2剤併用抗血小板療法は現在、12ヵ月間とすることが推奨されている。しかし一部の薬剤溶出性ステントについては、2剤併用抗血小板療法の最適な期間が判明していなかった。JAMA誌オンライン版2013年10月31日号掲載の報告より。純臨床・脳有害イベントと主要有害心イベントの発生率を比較 Feres氏らは、2010年4月~2012年3月にかけて、ブラジル国内33ヵ所の医療機関で、ゾタロリムス溶出ステント留置術を行った患者3,119例について非劣性試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方の群には術後2剤併用抗血小板療法[アスピリン100~200mg/日とクロピドグレル(商品名:プラビックス)75mg/日]を3ヵ月投与、もう一方の群には12ヵ月投与し、3ヵ月群の非劣性を検証した。術後1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月時点で追跡評価を行った。 被験者は、安定型冠動脈疾患または低リスク急性冠症候群の病歴があった。 主要エンドポイントは、純臨床・脳有害イベント(NACCE:全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、重大出血のいずれか)の発生だった。副次エンドポイントは、主要有害心イベント(MACE:全死因死亡、心筋梗塞、緊急冠動脈バイパス術、標的病変血行再建術のいずれか)の発生などとした。主要エンドポイント発生、3ヵ月群6.0%、12ヵ月群5.8% 結果、NACCEの発生が認められたのは、3ヵ月群93例(6.0%)、12ヵ月群90例(5.8%)であり、3ヵ月群の非劣性が確認された(リスク格差:0.17、95%信頼区間[CI]:-1.52~1.86、非劣性p=0.002)。 1年MACE発生率のKaplan-Meier分析推定値は、3ヵ月群が8.3%(128例)、12ヵ月群が7.4%(114例)だった(ハザード比[HR]:1.12、95%CI:0.87~1.45)。 術後91~360日の間、NACCE発生率(2.6%対2.6%、HR:1.03、p=0.91)、MACE発生率(5.3%対4.3%、HR:1.22、p=0.23)、ステント血栓症発症率(0.3%対0.1%、HR:3.97、p=0.18)ともに両群で有意差はなかった。

132.

この抗血小板薬、中止してもよいですか?レジストリデータからみたリスクの可視化(コメンテーター:香坂 俊 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(137)より-

唐突ではあるが、みなさんは下記のようなコンサルトにどのようにお答えになるだろうか? 今度内視鏡を行うことになりました。先生の患者さんは以前PCIを行っており、アスピリンやプラビックスを服用されていますが、少しの期間休薬してもよろしいでしょうか?A 2剤休薬:これは仕方がない。内視鏡の先生にはたびたびお世話になっているし、こういうことは持ちつ持たれつ也。B 1剤休薬:たしか抗血小板薬は内視鏡ではとくに休止する必要がないはず。しかし、記憶が定かではない。まあ確かに2剤は多いので、プラビックスだけは休薬する也。C 休薬せず:この抗血小板薬二剤(Dual Antiplatelet Therapy; DAPT)を中止することで、どれだけこの患者さんが危険にさらされると思っているのか。言語道断とはこのこと也。 近くの医師数名に意見を求めたところ、Aが圧倒的多数の指示を得た。和をもって尊しとなす。なるほど、ここは日本である。 Cのような強硬な意見でもって循環器内科医が消化器内科医や外科医に対応すると、「貴様はわかっていない」という感情論になったり、「安全性が担保できないのでは、この手技は中止せざるを得ない」という悲観論になったり、たしかに面倒なことになることが多い。 こうした状況で今回のPARIS研究の結果は非常に参考になる。5,031名のPCI施行患者のうち2年間で57.3%が何らかの理由でDAPTの休止をおこなっている。内訳は患者側の事情(出血やコンプライアンスの問題等)が14%、医療者側の事情(手術等)が10%であった。双方とも中断によるMACE(心血管系イベント)のリスク上昇は1.5倍程度であり(1剤休止でも)、したがって上記のようなケースでもこの程度のリスクを覚悟し、DAPTを中止するか否かを選択する必要がある。 さらにPARIS研究では、ここから時間軸での個別解析を行っており、その内容は、とくにPCI施行後30日以内の期間で中止しなくてはならなかった患者群のMACEのリスクは高く、通常の2~7倍にも至るというものであった。この部分のデータのもつ意味は大きく、PCI施行後30日以内にDAPTを中止する、あるいは中止せざるを得ないようなイベントが起きるということは、非常に心血管系リスクが高くなることを意味している。 さて、このようにPARISは超急性期や急性期のDAPTの中止は「結果的に」非常なリスクの上昇をもたらすことを示したわけであるが、もう数点注意事項を付け加えなくてはならない。DAPTの効果は病変の複雑さ(単純な病変であればDAPTの期間は1年で良いとするデータは存在する1))や人種(アジア人で出血系の副作用は多い)にもよると考えられている。現実にはDAPTの中止は、このあたりを考えたうえで、現場での裁量ということになるであろう。

133.

PCI後の抗血小板薬2剤併用中止・休薬によって心血管イベント増加/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と心血管リスクとの関連について観察研究にて検証したPARISの結果が発表された。米国・マウントサイナイ医科大学のRoxana Mehran氏らによる報告で、心血管イベントの発生は、DAPT中断時の臨床状態、中断した理由に依拠し、中断時期が遅いほどリスクは低下することが明らかになった。また、イベントの大半はDAPT継続群で発生していたこと、中断群での早期イベントリスクは留置したステントタイプを問わないことも明らかになった。これまで、DAPT中断はPCI後の重大イベントリスクを増大することは知られていたが、中断までの時間や中断理由によりリスクが変動するかについては明らかではなかった。Lancet誌オンライン版2013年8月30日号掲載の報告より。DAPTの異なる中断モードとPCI後の心血管リスクとの関連を評価 PARIS(Patterns of Non-Adherence to Anti-Platelet Regimens in Stented Patients)レジストリは、2009年7月1日~2010年12月2日の間に欧米5ヵ国から15施設が参加して行われた前向き観察研究であった。被験者は、多枝冠動脈へのステント留置が成功し、退院時にDAPTを継続していた18歳以上成人患者であった。 本検討において研究グループは、DAPTの異なる中断モードとPCI後の心血管リスクとの関連について調べることを目的とし、被験者を留置後1、6、12、24ヵ月にフォローアップした。 DAPT中断被験者について、事前に規定していた「医師の判断による離脱」「休薬(手術のため)」「中止(コンプライアンス不良または出血のため)」の中断モード別に階層化して評価を行い、またDAPT中断によるすべての重大イベントまたはエピソードについて個別の評価も行った。評価は、時間経過Coxモデルを用いて、主要重大イベント(MACE:心臓死・疑い例を含むステント血栓症・心筋梗塞・標的病変血行再建の複合)へのDAPT中断の影響を調べた。DAPT中断と重大イベントの発生率を、初回イベントまでの時間についてKaplan-Meier法にて算出した。MACE発生の大半は継続例だが、休薬・中止例で増大、離脱例は低下 本研究の被験者には5,031例が登録され、最終試験集団は5,018例であった。 2年間の全DAPT中断発生率は57.3%だった。離脱例は40.8%、休薬例は10.5%、中止例は14.4%であった。 2年間のMACE発生率は11.5%で、その大半(74%)は、DAPT継続例での発生だった。 MACE発生率についてDAPT継続例と比較した結果、休薬例で1.41倍(ハザード比[HR]:1.41、95%信頼区間[CI]:0.94~2.12、p=0.10)、中止例で1.50倍(同:1.50、1.14~1.97、p=0.004)と増大した一方で、離脱例は0.63倍(同:0.63、0.46~0.86、p=0.004)と低下した。 また中止例のリスクについて、中止時期が7日以内のHRは7.04(95%CI:3.31~14.95)、8~30日は同2.17(0.97~4.88)、30日以降は同1.3(0.97~1.76)と時間に伴い低下することも明らかとなった。 これらの結果は、ベアメタルステントを用いた患者を除外し、標的病変血行再建を除いたMACEの評価においては同程度であった。

134.

血小板反応性とステント血栓症発生との関連が明確に/Lancet

 米国・コロンビア大学医療センターのGregg W Stone氏らは、冠動脈への薬剤溶出性ステント留置が成功した患者への、アスピリンとクロピドグレル(商品名:プラビックス)併用療法時の血小板反応性と臨床転帰との関連について調べた。その結果、アスピリン、クロピドグレルそれぞれの高い血小板反応性とステント血栓症などの発生との違いについて明らかにした。ステント血栓症の発生は心筋梗塞や死亡の高率な発生と関係しているが、留置後の血小板反応性とステント血栓症や大出血、その他の重大事象との関連については明確にはされていなかった。今回の結果を受けて著者は、「より高い抗血小板のベネフィットが得られるよう、安全な薬剤あるいは強力な薬剤使用のテーラーメイド戦略を開発しなければならない」と提言している。Lancet誌オンライン版2013年7月26日号掲載の報告より。アスピリン/クロピドグレル併用療法の血小板反応性と臨床転帰との関連を調査 冠動脈への薬剤溶出性ステント留置が成功した患者へのアスピリン/クロピドグレル併用療法について、血小板反応性と臨床転帰との関連を検討した試験「ADAPT-DES」は、米国およびヨーロッパの複数(10~15)施設にて、前向き多施設レジストリ研究の手法にて行われた。 経皮的冠動脈介入(PCI)成功後に、VerifyNow(血小板活性簡易測定キット)にて高い血小板反応性を特定し評価を行った。 主要エンドポイントは、確定または未確定を含むステント血栓症の発生とした。その他のエンドポイントは、全死因死亡、心筋梗塞、臨床関連の出血であった。 血小板反応性と有害事象との関連は、傾向補正した多変量解析にて確定した。クロピドグレル、アスピリンで異なる関連の特徴が明らかに 2008年1月7日~2010年9月16日の間に米国とドイツの11施設で8,665例が前向きに登録され、そのうち適格条件を満たした8,583例を解析に組み込んだ。 追跡期間1年時点のステント血栓症の発生は、70例(0.8%)だった。心筋梗塞は269例(3.1%)、臨床関連の出血は531例(6.2%)、死亡は161例(1.9%)であった。 クロピドグレルの高い血小板反応性は、ステント血栓症(補正後ハザード比[HR]:2.49、95%信頼区間[CI]:1.43~4.31、p=0.001)、心筋梗塞(同:1.42、1.09~1.86、p=0.01)と強い関連がみられた。一方、出血については逆相関が認められ(同:0.73、0.61~0.89、p=0.002)、また死亡との関連はみられなかった(同:1.20、0.85~1.70、p=0.30)。 アスピリンの高い血小板反応性は、ステント血栓症(同:1.46、0.58~3.64、p=0.42)、心筋梗塞、死亡との関連は有意ではなかった。出血については逆相関が認められた(同: 0.65、0.43~0.99、p=0.04)。 著者は、「今回の検討において、ステント留置後の出血性および虚血性合併症のカウンターバランスの影響が明確になった」と結論。「より高い抗血小板のベネフィットが得られるよう安全な薬剤あるいは強力な薬剤使用のテーラーメイド戦略を開発しなければならないことが示された」とまとめている。

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Vol. 1 No. 1 ACSの治療-2次予防を考えた長期治療

大倉 宏之 氏川崎医科大学循環器内科はじめに急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の慢性期治療には、責任病変での再発防止と非責任病変の新規発症防止、すなわち2次予防が含まれる。責任病変の再発予防には、薬剤溶出ステント(DES)による再狭窄抑制と、適切な抗血小板療法によるステント血栓症の予防が重要である。一方、非責任病変の新規発症を防ぐには、抗血小板薬を含むさまざまな薬物による長期にわたる2次予防が必要である。ACSの予後:欧米と日本の違いACS患者の予後は不良である。欧米のデータでは、その20%は1年以内に再入院し、男性の18%、40歳以上の女性の23%が死亡するとの報告がある1)。また、心筋梗塞(AMI)後の患者は退院後1年以内にその8~10%がAMIを再発するとも報告されている2)。ただ、その再発率は保有するリスクによって異なる。Finnish studyでは、糖尿病例(年率7.8%)は非糖尿病例(年率3%)と比較して心筋梗塞再発が高率であることが示されている3)。ランダム化試験のデータでは、AMIの再発率は1~5%程度とおおむねレジストリーよりも低めである。AMIに対するDESと金属ステント(BMS)を比較したランダム化試験のメタ解析によると、AMI再発はDES留置例で3.1%、BMS留置例で3.3%であった4)。日本のデータでも非ACS症例と比較すると、ACS例の予後は不良であるが(図:本誌p21参照)5, 6)、ACS発症後のAMI再発率は、日本や韓国では1%以下と欧米と比較すると低率である7, 8)。もともとAMIの発症自体が少ないことに加えて、急性期に速やかに経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)による治療がなされていることと、その後も主治医によるきめ細やかな2次予防が行われていることがその理由かもしれない。至適薬物療法によるACSの2次予防欧米では、ACSの予後は経年的に改善していることが示されている。The Global Registry of Acute Coronary Events(GRACE)レジストリーに登録されたACS患者約4万例のデータ(図:本誌p21参照)において、入院中の死亡や心不全、6か月後のAMI新規発症が2000年から2005年にかけて有意に減少していることが示された9)。これは、エビデンスに基づいた薬物治療の浸透と、急性期のPCI施行率が高くなってきた結果である(図:本誌p22参照)。ACS後の2次予防を目指した薬物療法についてはガイドラインに詳細に述べられており10-15)、β遮断薬、ACE阻害薬(またはARB)、アルドステロン阻害薬、スタチン等の有用性が示されている。これらの薬物療法が、日本の臨床の現場にどの程度浸透しており、その結果、日本人のACS患者の予後が実際に改善しているのかどうかについては今後検証すべき課題である。ACS患者では、非責任病変の血管内超音波所見によって、ハイリスク病変を予測可能との報告がなされている16)。もともとイベント発生率の低い日本人でも、同様の予測が可能であるのかについても明らかにすべきである。抗血小板薬によるACSの2次予防薬物による2次予防のうちでも、特に重要な役割を果たしているのが抗血小板療法である。表に日本、米国、欧州の各ガイドライン10-15)に記載されている抗血栓療法の推奨をまとめた(Class I、Class IIaのみ記載)(表:本誌p23参照)。アスピリンが第1選択である点はすべてのガイドラインに共通である。欧州、米国のガイドラインでは、アスピリンに加えてクロピドグレル(または他のP2Y12阻害薬)を12か月間投与することが推奨されている。日本のガイドラインにはその期間は特定されていない11)。抗血小板薬2剤併用療法の至適期間抗血小板薬2剤併用療法(dual anti-platelet therapy: DAPT)の至適投与期間は、ステントの種類(BMSかDESか)と病型(安定狭心症かACSか)により異なる。一般に、DESの場合は12か月間以上のDAPTが推奨されているが20)、至適期間についてのエビデンスは十分ではない。j-Cypherレジストリーでは、ACS例において6か月以上DAPTを継続していた例と、DAPTを6か月時点で中止していた例との間には、その後2年間のイベント発生率に差を認めなかったことが示されている5)。日本では、患者背景や病変背景を考慮した至適な抗血小板薬療法が行われていることが反映されているのかもしれない。ACSの研究ではないが、韓国からはステント留置後12か月以上イベントのなかった2,701例を、DAPT群とアスピリン単剤群にランダム化した試験が報告されている18)。2年間の観察期間中、両群間に心筋梗塞+心臓死の頻度に差はなく、ステント血栓症にも差はなかった(図:本誌p24参照)。EXCELLENT試験は、CypherもしくはXience/Promusステント留置例1,443例のDAPT期間を、6か月間と12か月間にランダム化したものである19)。12か月後のTVF(target vessel failure)や死亡もしくは心筋梗塞の発生には両群間に差を認めなかったが、ステント血栓症はDAPT6か月間群で多い傾向にあった。ただし、6か月間群のステント血栓症発症例6例中5例は6か月以内の発生であり、DAPTの期間が影響した可能性は低い。Prolonging Dual Antiplatelet Treatment after Grading Stent-induced Intimal Hyperplasia study(PRODIGY)では、ステント留置例約2,000例を対象にランダム化し、DAPTの期間を6か月間と24か月間で比較したものである。2年間の追跡期間中に全死亡+心筋梗塞+脳血管障害+ステント血栓症の頻度は6か月間群と24か月間群は同等であったが(10.0% vs. 10.1%, p=0.91)、出血は6か月間群で少なかったとの結果であった(ESC2011で報告)。The Dual Antiplatelet Therapy(DAPT)study20)は、15,000例のDES留置例と5,400例のBMS留置例を登録し、DAPTの投与期間を12か月間と30か月間にランダム化して両者を比較する大規模臨床試験である。すでに患者登録は終了し、現在フォローアップが進行中である。本邦においても、Optimal Duration of DAPT Following Treatment with Endeavor in Real-world Japanese Patients: A Prospective Multicenter Registry (OPERA) studyやNobori Dual antiplatelet therapy as appropriate duration (NIPPON) studyが現在進行中である。これらの研究にはACSも含まれており、日本人独自のエビデンスが得られるものと期待される。抗血小板薬投与と出血性合併症抗血小板薬投与に関連した問題点には出血性合併症がある。ACSに出血性合併症を発生した場合には、その長期予後は不良である21)。DAPT継続にあたっては、そのベネフィットのみならず出血のリスクも考慮せねばならない。ACSにおいて、出血のリスクが特に問題となるのが心房細動合併例である。欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン22)では、心房細動合併例に対するステント留置術後の抗血栓療法は表のごとく推奨されている(Class IIa)(表:本誌p25参照)。注目すべき点は、塞栓症のリスクを有する心房細動例では最後的には抗血小板薬は中止し、ワルファリンのみを一生継続することが推奨されている点である。日本でも、心房細動合併ACS例に対する至適抗血栓療法をいかにすべきかは重要な検討課題である。おわりにACSの予後改善には、急性期治療に加えて、抗血小板薬を中心とした長期にわたる2次予防が重要な役割を演じている。ただし、これら多くは欧米のデータに基づいたものであるため、今後、日本人における検証はぜひとも行われるべきである。文献1)Menzin J et al. 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Vol. 1 No. 1 ACSの治療-急性期のPCI/薬物療法

石井 秀樹 氏名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学はじめに急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)に対する急性期の治療として血栓溶解療法と経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の出現、それらの技術向上は、患者の予後改善に大きく寄与している。東京都CCUネットワーク(http://www.ccunet-tokyo.jp/)の統計では、急性心筋梗塞の死亡率は1982年には20.4%であったものが、2010年にはわずか6.0%にまで低下している(図:本誌p15参照)。安静が治療の主体であった冠動脈の再疎通療法以前の院内死亡率が3割強であったことを考えると、治療法の変遷と治療成績には極めて密接な関連があることがわかる。わが国では、医療保険制度をはじめとし、交通網や救急搬送システムなどの点で欧米とは異なることから、ACS、特に急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)の治療法としてPCIを第1選択とする施設が多い。10年ほど前のデータではあるが、欧米のデータベースのよる統計ではAMIに対するprimary PCI施行率は5.5~49.6%であったが、わが国では日本の施行率は75~94%と高率であり、さらに年間施行件数の少ない施設においてもPCIを選択することが多いという特徴がある1)。これは欧米では広大な医療圏内の中にPCIを行える施設が限られているため、AMI患者には血栓溶解療法が行われることが多いが、わが国ではかなりの地域でPCIを行うことができる施設に収容可能であることにも起因する。そして、このことはわが国のACS患者の予後改善に対して大きな貢献をしている要因と考えられている。これまでの知見で、ST上昇型のAMI(STEMI)に対するPCIの有効性は確立している。しかしながら、現在でも非ST上昇型AMIや不安定狭心症では、早期のPCIを含む侵略的戦術がよいのか、保存的加療を経てから症例を選んで冠動脈造影などの処置を行うのがよいのか、一定の見解は得られていない。わが国ではそのような症例に対してもSTEMI症例同様に侵略的戦術にシフトしていると考えられている。PCIなどによる再灌流は非常に有用な手段であるが、再灌流自体が再灌流障害という新たな心筋障害を生じさせることも知られており、薬物の併用などが検討されるべきである。急性心筋梗塞に対する再灌流療法ACS、特にAMIの治療において、冠血流の途絶を早期に開通、すなわち再灌流を得ることが重要なことである。このことにより、梗塞心筋の縮小効果や、左室リモデリングを抑制し、結果として長期的な予後改善効果が得られる。再灌流の手段としては、PCIが確実な方法であるが、PCIを行う施設まで搬送時間がかかる場合またはPCIまでに時間がかかると判断される場合には、血栓溶解療法単独あるいは血栓溶解療法とPCIのハイブリッド治療法であるfacilitated PCIを選択肢とするべきであるとされる2)。現在ACSに対して行うPCIは、血栓吸引のみあるいはバルーン単独での治療で終了することは少なく、ステントによる治療がほとんどの場合に行われており、PCI後の急性閉塞の低減や、再狭窄率の減少など心血管イベントの低減に貢献している。その際に考慮すべき問題として、ACSに対してbare metal stent(BMS)を使用するか、drug eluting stent(DES)を使用するのかという問題がある。ACSに対しても、安定狭心症症例同様に、本邦ならず世界的に見てもDESの使用が増加している。一時、ACSに対するDES使用は、血栓閉塞のリスクが高まるのではないかと論議されたものの、近年はDES留置も安全であるとする報告が相次いでいる3)。確かにDESは再血行再建術などに対してはBMSよりも有用であることは間違いない。しかしながら、DESが内皮障害やspasm発生に関与していることを示唆する報告があり4, 5)、spasmが多いと考えられる日本人の使用に対しては、今後も有効性と副作用の十分な検討を行うべきである。また筆者は、DES留置後の長期の予後改善が未だ不明であり、2剤併用抗血小板療法(dual anti-platelet therapy:DAPT)をいつまで行うかがまだ確立されていないことや、ACSという緊急の対応が必要ななかで出血の素因があるのかどうかを判断したり、近いうちに手術が必要なのかどうかなど確認することが困難な状況のなかで、DESを安易に使用すべきではないと考えている。加えて、近い将来に吸収性ステントや薬剤溶出性バルーンなどが日常診療において使用可能になりそうな状況において、特に年齢が若い症例に対しては、急性閉塞などには十分な注意を払いながら、バルーン単独でのPCIも考慮するべきとも考えている。再灌流療法と再灌流障害再灌流療法により、梗塞心筋の縮小効果や、左室リモデリングを抑制し、結果として長期的な予後改善効果が得られる。しかしその一方で、再灌流自体が新たな心筋障害を生じさせる。これを再灌流障害といい、PCIなどによる再灌流療法のメリットを減弱させてしまうものである。最近の知見では、1.no-reflow phenomenon:no-reflow現象(血管内皮などの障害による血管性障害)→TIMI flow grade、TIMI frame countなどによる造影所見からの判断、myocardial blush grade(造影剤による心筋染影度)、心電図によるS Tresolution(ST上昇の改善の程度)などで判断可能2.reperfusion arrhythmia:再灌流性不整脈→心電図によるモニターで判断可能3.lethal reperfusion injury:致死的心筋障害(不可逆的な細胞障害)→核医学検査法などによりにより評価可能4.Myocardial stunning:心筋スタンニング(虚血解除後に生存心筋で認められる機能低下で気絶心筋ともいわれる)→核医学検査法などにより評価可能6)に分類される。再灌流障害の発生を抑えるため、PCIの際に工夫することや、薬物を追加で使用することが重要と考えられる。特に虚血プレコンディショニング、ポストコンディショニングのメカニズムを応用することが近年注目されている(図)。虚血プレコンディショニングとは、本格的な虚血に先行して起きる短時間の虚血が心筋ダメージを軽減することであり、臨床の場でも、梗塞前に狭心症がある患者ではそれがなかった患者と比較して予後が良いことが知られている7)。また、ポストコンディショニングとは、心筋梗塞症例に対して、冠動脈再灌流直後に虚血と再灌流を短時間・複数回繰り返すことで、梗塞範囲の縮小効果など再灌流障害による心筋ダメージが軽減する現象のことをいう8)。図 プレコンディショニングとポストコンディショニングの概念画像を拡大する再灌流障害に対する戦略1.段階的再灌流 一気に再灌流するのではなく、虚血と再灌流を複数回繰り返すことで細胞内Ca2+ overloadを予防し、再灌流障害が低減する。臨床試験で良好な結果が認められているが、数十秒から数分間での冠動脈内におけるバルーンのinflation、deflationが必要で、血栓吸引療法が行われた場合にはこの機序による心筋保護は難しい可能性がある。2.血栓吸引カテーテル、末梢保護デバイス ACSの発症のほとんどに血栓が関与している。血栓のある冠動脈病変をバルーンで拡張した場合、破砕された血栓が微小循環において塞栓を生じ、再灌流障害の原因になることがある。そのため、バルーン拡張の前にあらかじめ血栓を吸引する方法や、末梢で血栓やデブリスをtrapする方法が開発された。 早い時期に発表されたEMERALD研究では、末梢保護デバイスの有用性が示されなかったが、2008年発表のわが国から報告されたVAMPIRE trialでは、TVAC™による血栓吸引をSTEMI患者に対して行うことにより、行わない群と比較して、brush gradeの有意な改善と8か月後のMACEの有意な低下を示した9)。また、TAPAS研究でも血栓吸引カテーテルがmyocardial blush gradeの有意な改善が示された。 わが国では血栓吸引療法は他国と比較しても汎用されている手技と考えられ、以下に示すような薬物の追加療法を行うことで、より質の高い再灌流が得られるものと考えられる。3.再灌流障害に対する薬物による追加的保護療法 再灌流障害に対して、さまざまな薬剤がこれまで試みられてきた10)。アデノシンはプレコンディショニング作用を持つ薬物として海外から多くの報告がなされている。また、ポストコンディショニング作用を持つ薬物もさまざまある(表)。 近年、わが国からも再灌流障害の予防、慢性期の左室リモデリング抑制と予後改善を目的とし、さまざまな検討がなされている。そのなかでもニコランジルとカルペリチドは本邦で開発、臨床の場で幅広く使用され、それらを使用した研究成果報告はわが国からの報告が極めて多い。以下一部を紹介する。表 RISK pathwayの活性化とmPTP開口阻害(文献6, 10より)画像を拡大するa.ニコランジル ニコランジルは、低血糖治療薬であるジアゾキサイドなどのK-ATPチャネル開口薬とは異なる、NOドナーである点が大きな特徴である。K-ATPチャネルは先に述べた虚血プレコンディショニングに関与しており、K-ATPチャネル開口薬であるニコランジルが薬理学的プレコンディショニングを生じるということがIONA試験などで証明されてきた。 AMIにおける再灌流障害に関する研究として、コントラストエコーによるno reflow現象の抑制効果や、左室梗塞部位における壁運動改善効果が1999年に発表され11)、その後もACSをはじめとした虚血性心疾患に対するニコランジルの有用性が数多く発表された。我われは、STEMI患者に対してPCIによる再灌流を行う直前にニコランジルを静注で約30分かけて12mg投与することにより、PCI後の微小循環障害予防、慢性期の左室リモデリング抑制と心不全発症予防などの効果があることを報告した12)。その後、J-WIND-KATP研究(ニコランジル0.067mg/kgボーラス投与後、24時間1.67μg/kg/min静注)13)では、ニコランジルの有効性は示されなかったものの、用量や投与法などのさらなる検討が必要であると考えられる。また、現在は、ニコランジルは急性心不全の適応が認められ、用量もより高用量の使用が可能となっている。 また、冠動脈内注(冠動脈注は緩やかな投与が重要!)による冠微小血管抵抗指数改善作用も報告されており14)、slow flow等の改善などに対しても臨床的に幅広く使用されている。筆者の見解であるが、ACSまた待機的な症例に対してもニコランジルはPCI前から投与しておくことがコツであり、再灌流障害やslow flowを発症しないためには、予防的な投与が極めて重要であると考えている。 最近のニコランジルのトピックとして、2011年のAHAで、岐阜大学より造影剤腎症の予防効果が発表され、世界的にも注目を集めた15)。b.カルペリチド(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド:hANP) カルペリチドは血管拡張作用、利尿作用があり、急性心不全に対する治療薬として広く使用されているが、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の抑制効果、交感神経系の拮抗作用、そして虚血プレコンディショニング、ポストコンディショニング効果と同様の作用をすると考えられているreperfusion injury salvage kinase(RISK)を活性化させる作用もあることが報告されている。この効果により、再灌流障害や左室リモデリングが抑制され、急性心筋梗塞に対して有効であるとする報告が数多く報告されている。J-WIND-ANP(AMI患者にカルペリチド0.025μg/kg/minで3日間投与)13)では、AMI患者の梗塞サイズがプラセボ投与群に比べ、14.7%の有意な減少と、慢性期の左室駆出率で、プラセボ群と比較して5.1%の有意な増加が見られ、長期にわたって心臓死・心不全による再入院も、有意に減少させることが報告されている。また、カルペリチドにも造影剤腎症予防効果の報告もある16)。c.その他 スタチンの中には、ポストコンディショニング様の作用があることがわかっている。海外のARMYDA-ACS研究では、PCI前のアトルバスタチンの投与により心筋障害が予防できることがわかっていた。本邦からは弘前大学より、AMI患者に対するdirect PCIの直前にプラバスタチンを投与することで再灌流障害が予防されたとする大変興味深い結果が報告されている17)。 また、本邦で開発され、脳梗塞治療薬として使用されているフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンが、direct PCIに伴う再灌流障害を抑制したとする報告がある18)。4.ACS患者に対する抗血小板療法の重要性 ACSの急性期では、血小板活性・凝固能の亢進と線溶能低下が起こっているため、血栓が非常に形成されやすい状況である。血小板が活性化すると膜表面の糖蛋白が発現し、血小板からADP、トロンボキサンA2などの生理活性化物質が放出され、血栓形成がさらに強まる。本邦では使用できないが、GP IIb/III阻害薬はその流れのなかで効果を示す薬剤である。 急性期ではアスピリン162-200mgの咀嚼投与が行われているが、PCIでステント治療となる場合には治療直前からチエノピリジンの投与が推奨される。特にクロピドグレルの場合には初期にローディングとして300mgの投与、以降75mgの投与が必要である2)。韓国からのデータではあるが、DESを用いたPCIを施行したSTEMI患者の検討では、抗血小板薬3剤(アスピリン+クロピドグレル+シロスタゾール)の投与が、2剤群(アスピリン+クロピドグレル)と比較して、8か月における主要心血管イベントを有意に低下させた(図:本誌p19参照)19)。ACSによる入院30日以内の消化管出血があると予後が悪化することも知られているが20)、わが国においても、出血に注意をしながら抗血小板剤の3剤投与も検討されてもよいかもしれない。おわりに日本ではSTEMIをはじめとするACS症例に広くPCIが行われている。特にSTEMI症例に対しては、ガイドラインでdoor-to-balloon timeは90分以内にすることが求められているが、わが国全体でもかなりの割合でそれがクリアされているものと考えられる。ACS治療が海外と比較して、日本で良好な成績を上げているのもそれが大きく起因していることは間違いない。また、多くの施設が24時間体制で緊急カテーテル・PCIに対応し、夜間や休日でも質の高いPCIを常に心がけており、循環器医療に携わるわが国の医師・パラメディカル・関係者の意識が高いことも寄与しているものと考えられる。さらに、薬物の使用においても、急性期には症例ごとにきめ細かな対応がなされ、慢性期にはエビデンスが構築された薬剤が高い比率で投与されているものと考えられる。これらのことはACSに限ったことでなく、わが国の医療レベルが非常に高い要因とも考えられる(図:本誌p19参照)21)。最近ACS症例に対しては、PCIや薬剤のみでなくremote ischemic conditioningや、再生医療に関する話題も豊富である。わが国からACS患者の予後改善に関する新たなエビデンスが構築されることが期待される。文献1)Ui S, Chino M, Isshiki T. 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〔CLEAR! ジャーナル四天王(78)〕 大規模臨床試験で試される新規抗血小板薬はわが国で必要か?

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行において、ステントを使用することが標準となった現在では、急性期および亜急性期の血栓性閉塞を予防するために、アスピリンとADP受容体阻害薬であるチエノピリジン系の抗血小板薬の2剤併用(Dual Antiplatelet Therapy:DAPT)の使用が標準とされ、後者の標準薬としてはクロピドグレルが使用されている。 しかし、クロピドグレルはプロドラッグで、肝臓で代謝されて初めて効果が発現するため早期の抗血小板抑制作用が弱いこと、さらに、CYP2C19の遺伝子多型による代謝が遅延する症例があることが欠点とされていた。 この点を補うべく、経静脈的に投与可能で、直接血小板のADP受容体を阻害する薬剤であるカングレロールが、早期のイベント予防に役立つであろうと期待され、CHAMPION PHOENIX試験が計画された。 カングレロールを使用することで、48時間以内の死亡、心筋梗塞、ステント血栓症が、通常のクロピドグレル使用群に比べ有意に減少したことが示された(クロピドグレル群5.9% vs. カングレロール群4.7%: 補正後オッズ比:0.78、95%信頼区間:0.66~0.93、p=0.0005)。また、出血を含めた安全性にも差はなかった。 この結果からカングレロールが優れているように思われるが、ほとんどのイベントがPCI施行後2時間に発生しており、その頻度もクロピドグレル群で5.9%と、わが国では考えられないほどの高率である。心筋梗塞が4.7%、ステント血栓症1.4%であり、心筋梗塞はCPKの3倍の上昇と定義されているために高率となっている可能性もあるが、ステント血栓症の1.4%はわが国では非現実的な値である。本邦で施行された安定型狭心症を対象としたJ-SAP研究はもとより、急性心筋梗塞が対象でも本邦での急性期イベント発症は1%未満である。 本試験が急性冠症候群を対象にしているのでなく、50%以上が待機症例であること、しかもカングレロールが非急性冠症候群で有効であることを考えれば、PCI後高率に血管イベントが発症している本試験のデータをそのままわが国に適応して、カングレロールがクロピドグレルに代わることはないであろう。ただ、可逆的であることは、緊急的なCABGに移行した場合に出血リスクを減少させることは利点であり、今後の検討が必要である。

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ペースメーカー 「インジェニオ」発売

 ボストン・サイエンティフィック ジャパンは7日、新型のペースメーカー「インジェニオ」を発売した。 インジェニオはペースメーカーとしての先進的な機能に加え、変時性不全等の心拍数の上がりにくい疾患に対して、生理的な心拍数を提供するためにデザインされたライトレート ペーシングテクノロジーを有している。ライトレートは、同社のミニッツ ベンチレーションセンサーの新しい呼称であり、従来機種よりもその設定を簡略化し、診療時間の短縮が期待できるという。さらに、不必要な心室ペーシングを低減させるリズミック機能を搭載したことで、従来に比べてよりよい生理的なペーシングを提供することができるようにもなったという。同社ではこの2機能を併用したペーシング方法をLife Adaptive Pacingと称している。詳細はプレスリリースへhttp://www.bostonscientific.jp/NewsEvents/NewsRelease.bsci?method=DETAIL&id=10179252&navRelId=1006.1017

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抗凝固療法下の抗血小板療法DAPTよりもクロピドグレル単剤が出血リスクが低い:WOEST試験

心房細動(AF)など、抗凝固療法が必要な患者にステント留置を行う場合、抗血小板療法はアスピリン・クロピドグレル併用(DAPT)よりもクロピドグレル単剤のほうが、心血管系イベントを増加させることなく出血性合併症を有意に抑制することを、WOEST (What is Optimal antiplatelet and anticoagulant therapy in patients with oralanticoagulation and coronary stenting) 試験が明らかにした。この点を検討した初の無作為化試験である。8月28日の「ホットラインIII」セッションにて、聖アントニオ病院(オランダ)のWillem Dewilde氏が報告した。WOEST試験の対象は、抗凝固療法を1年以上継続し、無作為化後すぐに経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が予定されていた18歳以上の563例である。重篤な出血既往例は除外されている。平均年齢は70歳、約8割が男性だった。抗凝固療法を必要とする疾患の70%近くをAFが占めた。また抗凝固薬は7割がワルファリンだった。PCIの内訳は、薬物溶出ステントDES(ベアメタルステント [BMS]との併用含む )が70%弱、BMS単独が30%となっていた。これら563例は抗凝固療法を継続のうえ、DAPT群(284例)とクロピドグレル単剤群(279例)に無作為に割り付けられた。DAPT群ではアスピリン80mg/日+クロピドグレル75mg/日、クロピドグレル単剤群では75mg/日を服用した。抗血小板薬の服用期間は、BMS留置例では最低1ヵ月間(最大でも1年間)、DES留置例では最低1年間とした。その結果、一次評価項目である「1年間の全TIMI出血」は、DAPT群:44.9%に対しクロピドグレル単剤群では19.5%と有意に低値となっていた(ハザード比:0.36、95%信頼区間:0.26~0.50;p

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抗血小板薬の投与期間と超遅発型ステント血栓症の発症:J-Cypher

現在、薬剤溶出ステント(DES)留置後のデュアル抗血小板療法(DAPT)が超遅発型ステント血栓症(VLST)を減少させるというエビデンスは明らかに欠如している。しかし、臨床現場ではVLST発症を懸念し、DES留置後1年以上にわたりDAPT療法が広く行われている。この点に関して、京都大学の木村氏らは、J-Cypherステントレジストリの解析結果を発表した。その発表によると、シロリムス溶出ステント(SES)留置後1年を超えたチエノピリジンの長期使用は、VLSTリスクや、死亡、心筋梗塞または脳卒中を含む重篤な心血管イベントリスクの減少と有意な関連性を認めなかった。Cardiovasc Interv Ther誌オンライン版6月14日号掲載。研究対象集団は、少なくとも1本のシロリムス溶出ステント(SES)で治療されたJ-Cypherステントレジストリ内の12,812例。主な結果は以下のとおり。 ・ステント留置後1年で心筋梗塞、ステント血栓症や脳卒中を発症しなかった11,713例のうち、7,414例(63%)がチエノピリジンを継続し、4,299例(37%)が1年未満で中止していた。・チエノピリジン継続群の患者は、チエノピリジン中止群の患者よりも複雑な特性を有していた。・明らかなVLSTリスクやVLSTの累積発症率において、チエノピリジン継続群は、チエノピリジン中止群に比較し、有意な差を示さなかった [0.9 vs 1.2%、p=0.1、調整HR(95%CI):0.71 (0.47~1.06)、p=0.11]。・死亡、心筋梗塞、脳卒中リスクやそれら疾患の累積発症率において、チエノピリジン継続群は、チエノピリジン中止群に対し有意な差を示さなかった [15.3 vs 14.3%、p=0.15、調整HR(95%CI):0.99 (0.89~1.11)、p=0.89]。(ケアネット 鈴木 渉)

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