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DPP-4阻害薬、糖尿病の虚血性イベント増減せず/NEJM

 DPP-4阻害薬サキサグリプチン(商品名:オングリザ)は、心血管イベント既往またはリスクを有する2型糖尿病患者の治療において、心不全入院率は上昇するが虚血性イベントは増大も減少もしなかったことが、米国・ハーバードメディカルスクールのBenjamin M. Scirica氏らによるSAVOR-TIMI 53試験の結果、示された。著者は「サキサグリプチンは糖尿病患者において、血糖コントロールを改善するが、心血管リスクを低下させるにはその他のアプローチが必要である」と結論している。本研究は、2013年9月2日、オランダ・アムステルダム市で開催された欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日付けのNEJM誌オンライン版に掲載された。1万6,492例を対象にサキサグリプチンの有効性と安全性を評価 SAVOR-TIMI 53試験は、心血管イベントリスクを有する患者の心血管アウトカムについてサキサグリプチンの有効性と安全性を評価する第4相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は、HbA1c 6.5~12.0%で心血管イベントの既往またはリスクを有する2型糖尿病患者であった。 26ヵ国788施設において1万6,492例の被験者が1対1の割合で、サキサグリプチン(5mg/日、eGFR≦50mL/分の患者は2.5g/日)を投与される群(8,280例、平均年齢65.1歳、女性33.4%、2型糖尿病罹病期間中央値10.3年、HbA1c 8.0%、BMI平均値31.1)またはプラセボを投与される群(8,212例、65.0歳、32.7%、10.3年、8.0%、31.2)に割り付けられ、中央値2.1年間(最長2.9年間)追跡を受けた。なお担当医は、血糖降下薬を含むその他の薬物を調整することが許されていた。 主要エンドポイントは、心血管死・心筋梗塞・脳梗塞の複合であった。心不全による入院は増大するが、その他の虚血性イベントは増減せず 主要エンドポイントの発生は、サキサグリプチン群613例、プラセボ群609例であった。発生率は2年時Kaplan-Meier推定値で7.3%対7.2%、サキサグリプチンのハザード比は1.00(95%信頼区間[CI]:0.89~1.12)だった(優越性p=0.99、非劣性p<0.001)。この結果は、治療継続(投与を中止しなかった)患者における解析でも同様であった(ハザード比:1.03、95%CI:0.91~1.17、p=0.60)。 主要副次複合エンドポイント(心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症入院・冠動脈再建術・心不全)の発生は、サキサグリプチン群1,059例、プラセボ群1,034例だった。発生率は2年時Kaplan-Meier推定値で12.8%、12.4%で、サキサグリプチンのハザード比は1.02(95%CI:0.94~1.11)だった(p=0.66)。 個別にみた副次エンドポイントでは、心不全による入院について有意差がみられ、プラセボ群よりもサキサグリプチン群のほうがより発生が多かった(3.5%対2.8%、ハザード比:1.27、95%CI:1.07~1.51、p=0.007)。 急性膵炎(サキサグリプチン群0.3%、プラセボ群0.2%)および慢性膵炎(両群とも0.1%)と診断された割合は、両群で同程度であった。 以上の結果から著者は、「DDP-4阻害薬サキサグリプチンは、心不全による入院を増大したが、虚血性イベントは増大も減少もしなかった。サキサグリプチンは血糖コントロールを改善するが、2型糖尿病の患者において心血管リスクを低下させるには、その他のアプローチが必要である」と結論している。

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喘息マネジメントの穴埋めるチオトロピウム(ERS2013)

 2013年9月7~12日、スペインのバルセロナで行われたERS(European Respiratory Society:欧州呼吸器学会)Annual Congressにて、標題テーマが議論された。 簡便な評価ツールや新たな薬剤の登場などにもかかわらず、コントロール不良の喘息(Uncontrolled asthma)の頻度は50%以上といまだ高い1)。デンマークUniversity of Southern DenmarkのSoren Pedersen氏は、「10年前と比較するとわずかに改善しているものの、依然として状況は変わらない。また、これは多くの国で同じ状況である」と述べた。同氏はまた「このようなケースでは、吸入ステロイド(以下ICS)や吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬合剤(以下ICS/LABA)を吸入していてもコントロール不良であり、これを補う薬物療法として現在の選択肢以外にも有効な手段が望まれる」と述べた。 そのような中、新たな治療選択肢として、COPD治療薬として広く用いられている抗コリン薬チオトロピウム(商品名:スピリーバ2.5μレスピマット)の喘息に対する有効性が注目されている。チオトロピウムの喘息への使用については、重症例のICS/LABAや軽症・中等症例でのICSへのアドオンなど、いくつかの試験でその有効性が示されてきた2)3)。なかでもICS/LABAコントロール不良の重症持続型喘息でのチオトロピウムの有効性を示す大規模二重盲検試験PrimoTinATMの結果が昨年(2012年)発表されているが4)(http://www.carenet.com/news/journal/carenet/31588)、今回のERSでは、中用量のICSでコントロールが得られない中等症持続型喘息に対する第3相試験Mezzo-TinATMの結果が、オランダUniversity of GroningenのHuib Kerstjens氏から発表された。 MezzoTinA-asthma 試験は、チオトロピウムレスピマット5μg群(以下チオトロピウム5μg群)、チオトロピウムレスピマット2.5μg群(以下チオトロピウム2.5μg群)、それにLABAであるサルメテロール(商品名:セレベント)50μg(50μgx2回/日投与)群を合わせた3つのActive treatment群とプラセボ群間で行われた。試験はダブルブラインド、ダブルダミーの並行群間比較で、中用量ICSの維持療法を継続しながら、24週にわたり各群の薬剤を追加投与し、その後3週間フォローアップするというものだ。プライマリエンドポイントは呼吸機能改善評価として24週後のピークFEV1*、同時期のトラフFEV1、そして臨床的評価として同時期のACQ*(asthma controlled questionnaire:喘息管理質問表)スコアの改善で、Trial1および2の2つの試験結果から解析されている。 患者条件は ・中等量ICS(ブデソニド換算400~800mg)単独、またはICS/LABAの使用にもかかわらずコントロール不良の中等症持続型喘息(LABAは試験期間中は中止) ・年齢18歳~75歳の男女 ・非喫煙者または過去に喫煙歴(10pack-years以下)がある非喫煙者 ・サルブタモール(短時間作用性β2刺激薬)400mg投与前の%FEV1*60%~90% ・気道可逆性(サルブタモール400mg投与後のFEV1の改善)12%以上かつ200mL以上など。試験期間中のロイコトリエン受容体拮抗薬、去痰剤、抗アレルギー薬などの使用は許可された。呼吸器疾患、心血管疾患を含む喘息以外の明らかな併存症のあるもの、試験開始前に内服ステロイド治療を受けた患者は除外された。 試験患者数は、Trial1 1,070例、Trial2 1,030例の総計2,100例。4群間の患者バックグラウンドは同様で、平均年齢43.1歳、平均ACQスコア2.18、気道可逆性22.4%、1秒率*(FEV1/FVC)65.8%、罹病期間は21.8年と長期にわたっていた。使用薬剤は、ICS以外ではLABAが60%と最も多く、その他はロイコトリエン受容体拮抗薬が10%、テオフィリンが4%であった。 試験結果は、 ・24週後のピークFEV1:チオトロピウム5μg群247mL、同2.5μg群285mL、サルメテロール群258mL、プラセボ群62mL。プラセボからの増加はそれぞれ、185mL、223mL、196mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・24週後のトラフFEV1:チオトロピウム5μg群119mL、同2.5μg群152mL、サルメテロール群87mL、プラセボ群 -27mL。プラセボからの増加はそれぞれ、146mL、182mL、114mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・ACQスコアの改善:ACQレスポンダー(ACQスコア0.5点以上改善)の割合は、チオトロピウム5μg群64.3%、同2.5μg群64.5%、サルメテロール群66.5%、プラセボ群 57.7%。対プラセボORはそれぞれ1.32、1.33、1.46で、p値はそれぞれ0.035、0.031、0.039といずれの群ともプラセボに比べ有意に改善していた。 ・有害事象発現率は、チオトロピウム5μg群57.3%、同2.5μg群58.2%、サルメテロール群54.3%、プラセボ群59.1%。重篤な有害事象の発現はそれぞれ2.1%、2.3%、2.0%、2.7%と各群ともプラセボと同等であった。 Kerstjens氏は、「チオトロピウムについてのわれわれの疑問は、喘息に対する効果は重症持続型に限られるか?LABAとの効果比較は?などであった。今回の試験で、チオトロピウムレスピマットは、プラセボと比較し、両用量ともピークFEV1、トラフFEV1を有意に増加させ、ACQレスポンダーを有意に増加させていた。この結果から、チオトロピウムレスピマットは、ICS/LABAおよび高用量ICSの適応である重症持続型だけではなく、中等量ICS単独の適応である中等症持続型喘息への追加投与も効果的であることが示された。また、以前の試験結果と同じく、われわれの試験データでもチオトロピウムレスピマットの効果はサルメテロールと同等であることが示された。今回の試験結果は、チオトロピウムの追加投与によって、ガイドラインに則った治療をしても症状が改善しない多くの喘息患者にとって、意義ある結果だといえる」と述べた。※チオトロピウムの効能・効果は、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)に基づく諸症状の緩解」であり、気管支喘息は承認外ですのでご注意ください。*FEV1:最大努力呼気の際に呼出開始から最初の1秒で呼出される肺気量。ピークFEV1は薬剤投与後、最も呼吸機能が上がった時点での数値、トラフFEV1は最も呼吸機能の下がった時点での数値。*ACQ:喘息管理質問表スコアasthma control questionnaire。7つの質問から構成され、0~6点の7段階で評価される(0をトータルコントロール、0.75未満をウェルコントロール)。治療後に1.5以上上昇した場合を“著明改善”、1.0以上を“中等度改善”、0.5以上を“やや改善”と定義した。スコアが大きいほど重症となる。*1秒率(FEV1/FVC):FEV1と努力肺活量(FVC)の比率。閉塞性喚気障害の診断指標。FEV1/FVC<70%が閉塞性喚気障害の基準となる。*%FEV:FEV1実測値/FEV1予測値(FEV1予測値=性別、身長、年齢から算出)1) Demoly P et al. Eur Respir Rev. 2012;21:66-74.2) Perters SP et al. N Engl J Med. 2010;363:1715-1725.3) Kerstjens HA et al. J Allergy Clin Immunol. 2011;128:308-314.4) Kerstjens HA et al. N Engl J Med. 2012;367:1198-1207.

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腰痛改善に地域薬局が重要なポジション

 腰痛に対するプライマリ・ケアの玄関口として、地域の薬局が重要な役割を担えることが明らかとなった。オーストラリア・カーティン大学のHelen Slater氏らによるクラスター無作為化比較試験において示されたもので、地域薬局を利用している腰痛患者のうちパンフレットを提供された患者は職業性腰痛に関する考え方が改善していたという。地域薬局はエビデンスに基づいた情報を提供するのに適しており、こうした簡単な介入が治療の一部として有用であることが示唆されたと報告している。PLoS One誌オンライン版2013年8月20日の掲載報告。 研究グループは、地域薬局を利用する腰痛患者の腰痛に対する考え方を改善できるかどうかについて、エビデンスに基づいた情報提供(パンフレット)による介入の有効性を検討した。 地域薬局35施設が、パンフレット提供とともに患者教育を行う(PE)群(11施設)、パンフレット提供のみを行う(PO)群(11施設)、通常ケア(対照)群(13施設)の3群に無作為に割り付けされ、それぞれの薬局において割り付けに即した介入が行われた。研究に参加した患者は、現在腰痛のために薬局を利用している18~65歳の317例であった。 検討では、介入前、介入2週後および8週後に、腰痛に対する考え方を評価する質問票(BBQ:Back Pain Beliefs Questionnaire)、恐怖回避思考質問票(FABQ:Fear Avoidance Beliefs Questionnaire)などを用いて評価した。なお、研究代表者、評価者および統計学者は盲検化され、薬局のスタッフおよび患者は非盲検であった。 主な結果は以下のとおり。・BBQスコアは、介入2週後および8週後のいずれも、パンフレット提供群(PE群+PO群)と対照群との間で有意差はなく、PE群とPO群との間も有意差は認められなかった。・FABQの職業関連の恐怖心に関するスコアは、パンフレット提供群(PE群+PO群)で対照群より有意に低かった(群間差:-2.3、95%CI:-4.4~-0.2)。PE群とPO群との間に有意差は認められなかった。・パンフレットの有効性に関する全般的印象度は、PE群がPO群より高値であった(群間差:0.9、95%CI:0.0~1.8)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?

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酒さは片頭痛持ちの女性に多い

 スイス・バーゼル大学病院のJulia Spoendlin氏らは、住民ベースコホート研究の結果、片頭痛を有する女性において、わずかだが酒さ発症のリスクの増大が観察されたことを報告した。とくに50歳以上の重度の片頭痛を有する女性でリスク増大が認められたという。酒さは一般によくみられる皮膚疾患であり、神経性炎症や神経血管性調節障害を伴う。片頭痛は、血管性変化と無菌性炎症を伴う。両疾患の関連は数十年にわたり示唆されているが、エビデンスは不足している。Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年9月号(オンライン版2013年5月1日号)の掲載報告。 研究グループは本検討において、片頭痛と片頭痛薬のトリプタン(商品名:イミグランほか)、ならびに酒さの発症リスクとの関連について調べた。トリプタンは、血管収縮性および抗炎症作用を有するが、このクラスの薬剤による酒さへの潜在的影響については調べられていなかった。 そこで研究グループは、片頭痛またはトリプタン曝露と酒さ発症リスクとの関連について分析するため、英国のGeneral Practice Research Databaseを基に症例対照研究を行った。同データベースから1995~2009年の酒さ患者を特定し(症例群)、1症例につき1人の非酒さ対照被検者を適合し、多変量条件付きロジスティック回帰分析法を用いて、症例群と対照群の、初回酒さ診断前の片頭痛有病率とトリプタン曝露について比較した。 主な結果は以下のとおり。・症例群5万3,927例、対照群5万3,927例のうち女性の被験者において、全体的にわずかだが酒さと片頭痛の関連が認められた(補正後オッズ比:1.22、95%信頼区間[CI]:1.16~1.29)。男性では両者の関連はみられなかった。・同関連は、50~59歳の女性の片頭痛患者において、やや関連性が明確であった(同:1.36、1.21~1.53)。・また、トリプタン服用女性においても、年齢が高くなるほどわずかだがリスクの増大が認められた。オッズ比は、60歳以上の女性が最も高く、1.66(95%CI:1.30~2.10)であった。・本検討は、後向きの症例対照研究であり、特定のバイアスおよび交絡の程度を除外できない点で限界があった。・以上から著者は、「女性の片頭痛患者において、酒さを呈するリスクがわずかだが増大することが認められた。とくに50歳以上の重度の片頭痛女性患者にみられた」と報告した。

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肥満、メタボと健康に関する記事 まとめ

 肥満は心疾患や脳血管疾患、糖尿病のリスクが高くなるだけでなく、上肢痛や喘息を引き起こしやすいというデータもあるようだ。医学誌にもたびたび論文が掲載されているが、今回はそれらに関する記事をまとめて紹介する。母乳での哺乳で学童期の肥満リスクが低下~全国縦断調査データより これまでの研究では母乳での哺乳が子供の肥満を予防することが示唆されているが、社会経済的な状況や子供の生活習慣による交絡の可能性があるため、決定的なエビデンスはない。また、これまではほとんどが欧米先進国の子供での研究であったため、他の対象における研究が待たれている。岡山大学の山川路代氏らは、日本における母乳での哺乳と学童期の過体重・肥満との関連について、潜在的な交絡因子を調整して検討し、その結果をJAMA pediatrics誌オンライン版2013年8月12日号に報告した。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35907メタボは上肢痛のリスク因子か 内臓脂肪は上肢痛のリスク因子であるようだ。フィンランド労働衛生研究所のTapio Vehmas氏らが、コホート研究の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究にて、そのメカニズムを解明し、減量が疼痛管理に有用かどうかを明らかにすることが必要だ」とまとめている。Pain Medicine誌2013年7月号(オンライン版2013年5月3日号)の掲載報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35872肥満期間が長いと冠動脈心疾患リスクは増大する?/JAMA 若年期から肥満がみられ肥満期間が長いほど、冠動脈石灰化(CAC)が促進され、中年期の冠動脈心疾患リスクの増大につながることが、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)のJared P Reis氏らの検討で示された。米国では過去30年間に肥満率が成人で2倍、青少年では3倍に上昇しており、若年の肥満者ほど生涯を通じて過剰な脂肪蓄積の累積量が多く、肥満期間が長くなるが、肥満の長期的な転帰に関する研究は少ないという。また、脂肪の蓄積量にかかわらず、全身肥満の期間が長期化するほど糖尿病罹患率や死亡率が上昇することが示されているが、肥満期間が動脈硬化の発症や進展に及ぼす影響については、これまで検討されていなかった。JAMA誌2013年7月17日号掲載の報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/35682メタボリックシンドローム患者は喘息を発症しやすいのか? メタボリックシンドロームや、その診断項目である基準以上の腹囲や高血糖・糖尿病があると成人喘息発症のリスクが高くなることが、ノルウェー科学技術大学のBen Michael Brumpton氏らにより報告された。The European respiratory journal誌オンライン版2013年7月11日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/risk/carenet/35630アリピプラゾールと気分安定薬の併用、双極性障害患者の体重増加はどの程度? 双極I型障害(BPD)患者は多くの場合太りすぎか肥満であり、メタボリックシンドロームを合併している可能性が高い。いくつかのBPD治療薬では、体重増加や代謝パラメータの悪化が認められる。米国・ケースウエスタンリザーブ大学のDavid E. Kemp氏らは、アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)と気分安定薬を併用した際のメタボリックシンドロームの発生率および代謝パラメーターの変化を調べた。Journal of affective disorders誌2013年5月15日号の報告。http://www.carenet.com/news/head/carenet/35009メタボ予防にコーヒーが有効か?―本邦での報告― 日本人において、コーヒーの消費量は、NCEP ATP III基準でメタボリックシンドロームと診断された場合の有病率と負の相関関係があることが、徳島大学大学院 高見栄喜氏らの研究で示された。Journal of Epidemiology誌オンライン版2012年10月6日付の報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/32383

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低線量CT画像上の肺結節のがん確率を正確に推定するモデル開発/NEJM

 低線量CTスクリーニングで検出された肺結節が悪性腫瘍である確率を正確に予測する方法として、カナダ・バンクーバー総合病院のAnnette McWilliams氏らが開発した患者の背景因子や結節の特性に基づくモデルが有用なことが示された。低線量CTによる肺がんスクリーニングの主要課題は、陽性の定義および検出された肺結節の管理とされる。また、初回スクリーニングで20%以上に再検査を要する肺結節がみつかり、1万人に4.5人の割合で重篤な合併症が発現するとされ、全米肺検診試験(NLST)では外科的に切除された結節の25%が良性であったことから、結節が悪性腫瘍である確率を正確に予測する実用的なモデルの構築が求められている。NEJM誌2013年9月5日号掲載の報告。2つのデータセットを解析、すべての肺結節の転帰を追跡 研究グループは、低線量CTによる初回スクリーニングで検出された肺結節が、悪性腫瘍である確率またはフォローアップで悪性腫瘍であることが判明する確率を予測する因子を確立するために、地域住民ベースのコホート試験を行った。 低線量CTスクリーニングを受けた2つのコホートのデータを解析した。開発用データセットにはPan-Canadian Early Detection of Lung Cancer Study(PanCan)の参加者が含まれ、妥当性検証用データセットには米国国立がん研究所(NCI)の助成を受けBritish Columbia Cancer Agency(BCCA)が行った化学予防試験の参加者が含まれた。ベースラインの低線量CTスキャンで検出されたすべてのサイズの結節を追跡して最終的な転帰を確認した。 多変量ロジスティック回帰分析による2つの予測モデル、簡略モデルと完全モデルを構築し検討した。高齢、女性、結節の大きさ・部位・数などを予測因子とするモデルで高い的中能 PanCanのデータセットでは、1,871例に7,008個の結節がみつかり、そのうち102結節が悪性腫瘍であった。BCCAのデータセットでは、1,090例の5,021結節のうち42個が悪性腫瘍だった。結節を有する者のうち、がんと診断された者の割合は、PanCanが5.5%、BCCAは3.7%であった。 このモデルのがんの予測因子は、高齢、女性、肺がん家族歴、肺気腫、結節が大きい、結節の部位が上葉、一部充実型結節、結節数が少ない、棘形成などであった。 最終的な簡略および完全モデルは、きわめて良好な識別性とキャリブレーション(モデルと実際に観察された確率のマッチ度)を示した。妥当性検証用データセットではきわめて優れた予測的中能が達成され(ROC曲線下面積0.94以上)、臨床管理の決定が困難とされる10mm以下の結節でもROC曲線下面積が0.90を超えていた。 著者は、「患者の背景因子および結節の特性に基づく予測法は、ベースラインの低線量CTスクリーニングで検出された肺結節が悪性腫瘍である確率を正確に推定できると考えられる」と結論し、「再画像検査を行う前にリスクを正確に評価することは肺がんスクリーニングにおいて重要な意味を持つ。結節のリスク特異的なモデルは実臨床や公共保健医療の改善をもたらすと期待される」と指摘している。

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~プライマリ・ケアの疑問~  Dr.前野のスペシャリストにQ!【循環器編】

第1回「Q.救急外来でACSを見逃さないためには?」第2回「Q.拡張期血圧が高い…早朝血圧が高い…等々、どういう病態なのか?」第3回「Q.血圧の評価はどうすればいいのか?外来血圧?自宅で測ってもらう?」第4回「Q.降圧薬の選択がわからない。薬がありすぎる!」第5回「Q.胸痛でどこまで虚血性心疾患を疑うか?」第6回「Q.主訴が胸痛の患者さんにホルター心電図をつけたが症状が出ない。どうアプローチすべき?」第7回「Q.急性心筋梗塞のST上昇と早期再分極のST上昇の見分け方?」第8回「Q.これは絶対ACSという心電図所見はあるか?」第9回「Q.Poor r progression はどこまで精査しますか?」第10回「Q.小さいq波と異常Q波の鑑別は?」第11回「Q.虚血性心疾患例の安静時の心電図異常とは?」第12回「Q.ST-Tの異常は様々あるが、よく理解できない」第13回「Q.精査すべき脚ブロックとは?」第14回「Q.どこで判断する?精査に迷う心電図異常」第15回「Q.精査・治療の必要な心室期外収縮とは?」第16回「Q.抗不整脈薬使用の最近のトレンドは?」 あなたの悩みを5分で解決!一問一答Q&A番組!研修医、家庭医、総合医の疑問に、一問一答で回答する、1回5分のQ&A番組!「この診断で良かったのか?」「もっと検査をすべきだった?」「専門医に送るタイミングは?」プライマリ・ケア医から集めた循環器疾患の診察、検査、治療に関する16の質問を、番組MCの前野哲博先生が経験豊富なスペシャリスト・渡辺重行先生にぶつけます!第1回「Q.救急外来でACSを見逃さないためには?」1)胸部症状が定型的なのに心電図、CPK、トロポニンに異常が出ていないACS2)胸部症状以外の症状で来るACSでは見逃さないポイントとは何なのでしょうか?第2回「Q.拡張期血圧が高い…早朝血圧が高い…等々、どういう病態なのか?」血圧は何がどのように規定しているのか?DBP上昇のメカニズムなど病態ごとの血圧変動の特徴を復習しましょう。第3回「Q.血圧の評価はどうすればいいのか?外来血圧?自宅で測ってもらう?」測る度に、タイミングによって変動することも多い血圧。では一体いつ測ることが良い血圧評価につながるのでしょうか?心血管イベントと発症率や発症時間などのエビデンスを交え紐解いていきます。第4回「Q.降圧薬の選択がわからない。薬がありすぎる!」例えば、糖尿病患者に糖尿病の悪化や腎症の予防効果のあるRA系抑制薬を選択したが、降圧は今ひとつ…このような患者にはどうアプローチすべきか?2009年高血圧治療ガイドラインを復習しながら、推奨される選択薬や合剤、考え方を学びます。第5回「Q.胸痛でどこまで虚血性心疾患を疑うか?」患者さんに「胸が痛い」と言われるとドキッとする循環器非専門医の先生も多いと思います。そもそも主訴が胸痛の患者に見つかる器質的疾患はどれくらいなのでしょうか?また虚血性心疾患の兆候はどんなところにあるのでしょうか?第6回「Q.主訴が胸痛の患者さんにホルター心電図をつけたが症状が出ない。どうアプローチすべき?」主訴が胸痛の患者にホルター心電図で検査するも特異的な所見は見つからないケース。今後どうマネジメントすべきか?今回は病態からアプローチして、何が起こり、何の可能性があるのか、着目すべき点を学びます。第7回「Q.急性心筋梗塞のST上昇と早期再分極のST上昇の見分け方?」急性心筋梗塞の早期発見に欠かせない心電図。STの上昇に注目します。しかし、早期再分極を示す心電図でもSTの上昇、そしてJ波が表れます。症例心電図をとおして、急性心筋梗塞と早期再分極の見分け方を学びます。第8回「Q.これは絶対ACSという心電図所見はあるか?」渡辺先生曰く、「ACSで注意すべきはSTのわずかな上昇とT terminal inversion」。そのロジックを心筋梗塞の患者さんの心電図をみながら考えていきます。第9回「Q.Poor r progression はどこまで精査しますか?」 Poor r progression とはR波の伸びが足りないこと。R波が伸びない裏には重要な疾患が隠れているのでしょうか?またどの様な所見に注意すべきなのでしょうか?第10回「Q.小さいq波と異常Q波の鑑別は?」 異常Q波とは、幅が1mm(0.04秒)以上で深さがR波の1/4以上のQ波。特に注意すべきは1mmの幅があるかどうか、逆にいうと1mmに満たない心電図所見は正常とみてよいであろう。しかし、一見正常な所見に見えて、前下行枝狭窄である手がかりが隠れている。それは一体どんな所見なのでしょうか?第11回「Q.虚血性心疾患例の安静時の心電図異常とは?」循環器内科医は負荷心電図のⅡ、Ⅲ、aVFなどから虚血性心疾患を診断します。渡辺先生曰く「安静時の心電図所見から8割は陽性の兆候がみえる」とは渡辺先生。それはどんな所見なのでしょうか?注目はS−T波。第12回「Q.ST-Tの異常は様々あるが、よく理解できない」 STーTの異常は様々ですが、形をパターン認識することで診断がみえてくるようになります。今回はSTーT所見を大きく4つにわけ、パターンの特徴と症例をとおして見極めのコツを解説します。第13回「Q.精査すべき脚ブロックとは?」とくに自覚症状もないが健康診断や検診の心電図所見でみられる脚ブロック。ではこの脚ブロックを確認した場合どのようなコンサルティングが必要なのでしょうか?今回は心室の再分極、脱分極をおさらいしながら右脚ブロックと左脚ブロックの原理と対処を学んでいきます。第14回「Q.どこで判断する?精査に迷う心電図異常」前回の心電図所見が脚ブロックの場合の対応につづき、今回はどんな心電図所見を確認したらより精査が必要なのか考えていきます。健康診断で非特異的ST-T異常はよく見受けられますが、「他に疾患のない30歳女性」と「高血圧を有する45歳男性」ではその対応どうなるのでしょうか?第15回「Q.精査・治療の必要な心室期外収縮とは?」健康診断などでも見かけることも多い心室期外収縮。基本的には様子をみることで良いのですが、中には治療を要する重篤な疾患が隠れているケースもあります。渡辺先生が推奨する要コンサルティングのケースは3つです。1つは、心疾患ゆえに心室期外収縮を生じているとき。この判定は、心電図が正常なら心疾患なしと考えて良いということになります。残り2つはどんなケースでしょうか?一つずつ、確認していきましょう。第16回「Q.抗不整脈薬使用の最近のトレンドは?」様々にある抗不整脈薬ですが、プライマリ・ケア医が治療で使うにはどの薬がよいのでしょうか?衝撃的な試験結果となったCAST試験からPVC、SVPCに対して抗不整脈を投与する時代ではなくなりましたが、他の不整脈に対してはどうでしょうか。不整脈の種類ごとに現在本流になりつつある治療法(アブレーション、除細動器など)をふまえながら、抗不整脈薬の適応は、どのような不整脈の時なのか考えていきます。

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てんかんにVNSは有効、長期発作抑制効果も

 現在、12歳以上のてんかん部分発作に対する補助療法として承認されている迷走神経刺激療法(VNS)。Aurora Epilepsy CenterのGeorge L. Morris III氏らは、VNSに関する一連のエビデンスを評価した。その結果、VNSは小児の発作、レノックス・ガストー症候群(LGS)関連発作、成人てんかんの気分障害の改善に効果が期待できること、また治療継続により発作抑制効果が高まることが示唆され、これらをエビデンスレベルCとして推奨した。Neurology誌オンライン版2013年8月28日号の掲載報告。 本研究では、VNSの有効性と安全性に関する1999年以降のエビデンスを評価することを目的とした。文献レビューを行い代表的な試験を選出し、米国神経学会(American Academy of Neurology)のevidence-based methodologyに従って分類した。 主な結果は以下のとおり。・VNSにより、部分てんかんまたは全般てんかんを有する小児470例の55%(95%信頼区間[CI]:50~59%)において、50%超の発作減少が認められた(13試験:Class III)。・VNSにより、LGSを有する患者113例の55%(95%CI:46~64%)において、50%超の発作減少が認められた(4試験:Class III)。・VNS装置の植込手術後1~5年の間に、発作が50%以上減少する患者の割合が7%増加した(2試験:Class III)。・成人てんかん患者31例において、VNSにより気分障害の指標であるstandard mood scaleの有意な改善が認められた(2試験:Class III)。・小児におけるVNS植込手術部位の感染リスクは、成人に比べ増加した(オッズ比:3.4、95%CI:1.0~11.2)。・VNSは、小児の発作(部分および全般)、LGS関連発作、成人てんかんの気分障害に対して有効な可能性がある。・VNSにより長期の発作抑制効果が期待される。・以上のことから、次の推奨が示された。「VNSは、小児の発作、LGS関連発作、成人てんかんの気分障害の改善に考慮されうる」(Level C)「VNSは長期発作抑制効果が期待できる」(Level C)「小児に対するVNS植込手術後は、局所感染を注意深くモニターすべきである」関連医療ニュース 難治性の部分発作を有する日本人てんかん患者へのLEV追加の有用性は?/a> 抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証 セロトニンが重要な役割を果たす!うつ病合併側頭葉てんかん

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高齢の皮膚疾患患者におけるうつ病の有病率とリスク因子は

 皮膚疾患は、他の慢性疾患の罹患やそれに伴う精神的苦痛と同様に、高齢者におけるうつ病の原因のひとつとなることがある。韓国・カトリック大学校のEun Kyung Kim氏らは、高齢皮膚疾患患者のうつ病の有病率と、そのリスク因子を特定するため、調査を実施した。 その結果、高齢の皮膚疾患患者におけるうつ病の有病率は一般集団より顕著に高率であること、身体の健康、教育レベル、併存疾患の存在がリスク因子であることを報告した(Annals of dermatology誌2013年8月25日掲載報告)。 調査の対象は60歳以上の皮膚疾患患者。高齢者うつ病評価尺度(GDS:The Geriatric Depression Scale )による質問票を用い、うつ病の判定を実施した。さらに、人口統計学的情報や病歴を収集した。 主な結果は以下のとおり。・GDS質問票を完遂したのは313例であった。そのうち男性が39.94%、平均年齢は69.04歳、平均罹患期間は3.23年であった。・高齢皮膚疾患患者の平均GDSスコアは、30点満点中12.35点であり、皮膚疾患は、全体としてうつ病に有意な影響を及ぼしていた(χ2=177.13、p<0.0001)・高齢皮膚疾患患者のうち、中等度~重度のうつ病と評されるGDSスコア10点以上であったのは62.3%であった。一方、一般集団でGDSスコア10点以上であったのは、22.22%であった。・単変量解析によると、高齢皮膚疾患患者のうつ病のリスク因子は、身体の健康、教育レベル、併存疾患の存在であった。・しかし、うつ病の独立した予測因子となる人口統計学的変数および疾患関連の変数を特定するまでには至らなかった。

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脊椎手術研究の有害事象報告、4割にバイアス

 最近、企業主導型の脊椎手術研究における報告記事について、有害事象の報告に関する懸念が生じている。対策として独立した臨床事象判定委員会(CEC)による評価が行われることがあるが、これまで、有害事象の報告にどの程度研究者バイアスが存在しているか、CECがバイアス削減にどう影響するかを検討した報告はなかった。米国・アルバート・アインシュタイン医科大学のJoshua D Auerbach氏らは、脊柱管狭窄症および脊椎すべり症の治療に用いられるデバイスの臨床試験においてこの問題に取り組んだ。その結果、治験担当医が報告した有害事象の約4割がCECでは重症度や治療との関連性が高まるほうへ再判定されたことを明らかにした。著者は「治療デバイスの安全性の正確な評価を促すことから、臨床試験にはCECが必要である」とまとめている。Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年8月21日の掲載報告。 脊柱管狭窄症および脊椎すべり症患者を対象に、非固定式の脊椎インプラントであるcoflex(Paradigm Spine社)の有効性および安全性について、腰椎固定術と比較した前向き無作為化対照試験(治験用医療機器に対する適用免除試験として実施)が行われた。 治験担当医による有害事象の重症度判定(軽度、中度、重度)ならびに手術/デバイスとの関連性判定(関係なし、たぶん関係なし、関係があるかもしれない、たぶん関係あり、明らかに関係あり)を、3人の脊椎外科医で構成される独立したCECにおいて再評価した。 主な結果は以下のとおり。・CECにおいて、報告された有害事象1,055件中394件(37.3%)の判定が見直された。・再判定された有害事象の割合は、coflex群と固定術群で類似していた(37.9% vs 36.0%、p=0.56)。・再判定は、有害事象の重症度が上がる可能性が5.3倍高かった(95%信頼区間[CI]:2.6~10.7)。・同様の傾向は、手術あるいはデバイスとの関連性においてもみられ、それぞれ7.3倍(95%CI:5.1~10.6)および11.6倍(同:7.5~18.8)であった。・企業と治験担当医の経済的利害関係は、有害事象の再判定にほとんど影響しなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?

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急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は

 急性期統合失調症患者に対し、ハロペリドールの最適な投与量はどの程度なのか。英国・NHS LothianのLorna Donnelly氏らは、この疑問を明らかにするため、無作為化比較試験に関する文献レビューを行った。その結果、>3~7.5mg/日において有効性に関する明確なベネフィットは示されなかったものの、7.5mg/日以上では錐体外路症状の発現を高めることが示されたと報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年8月28日号の掲載報告。 ハロペリドールは、新規治療薬の有効性を評価する際に基準とされる、利用しやすい抗精神病薬である。研究グループは、急性期統合失調症に対するハロペリドールの最適な用量を明らかにすることを目的としてレビューを行った。2010年2月現在のCochrane Schizophrenia Group Trials Registerを基に、CINAHL、EMBASE、MEDLINE、PsycINFOを用いて検索を行った。急性期統合失調症に対し、ハロペリドール(非デポ製剤)の2用量以上を無作為化試験にて検討し、臨床的に意味のあるアウトカムが報告されている試験を選択した。妥当な選択を行うため、すべての引用を調査するとともに、引用サンプルについても独自に再調査した。議論で同意が得られなかったことについては解決を図り、疑問が残る場合はさらに調査するためフルテキストの文献を入手した。論文を取り寄せてから確実な再調査をし、全文の質を評価した後にデータを抽出した。解析は、intention-to-treat(ITT)にて行い、2つのデータに対するリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。早期の脱落例または追跡不能例はアウトカム不良とみなした。また、ITT解析における連続変数の平均差(MD)、last observation carried forward (LOCF)データを算出し、観察期間の50%以上が追跡不能であった例のデータは除外した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化試験19件を選択し解析に組み込んだ。各試験に用いられた用量はすべて異なり19種類が比較検討されていた。・いずれの試験も再発率あるいはQOLの報告はなかった。1試験でハロペリドール低用量 (>1.5~3mg/日)と高用量の比較が行われていた。・標準低用量(>3~7.5mg/日)と標準高用量(>7.5~15mg/日)の比較検討(1試験、被験者48例)において、標準低用量を用いることによる有効性(臨床的に重要な全体的症状の改善)の低下は認められなかった(RR:1.09、95%CI:0.7~1.8、エビデンスの質きわめて低い)。・また、標準低用量(>3~7.5mg/日)と高用量(>15~35mg/日)との比較検討(2試験、81例)でも、標準低用量を用いることによる有効性の低下はみられなかった(RR:0.95、95%CI:0.8~1.2、エビデンスの質きわめて低い)。・ハロペリドール用量「>3~7.5mg/日」は、臨床的に有意な錐体外路の有害事象の発現が、高用量群に比べ低かった。…vs.標準高用量(2試験、64例、RR:0.12、95%CI:0.01~2.1、エビデンスの質きわめて低い)。…vs.高用量(3試験、144例、同:0.59、0.5~0.8、エビデンスの質きわめて低い)。…vs.超高用量(>35mg/日)(2試験、86例、同:0.70、0.5~1.1、エビデンスの質きわめて低い)。・その他の用量比較において、有意な相違は認められなかった。なお、特定の低用量において、臨床的に意味のある差異の検出力が不足していた。・いずれの結果も最終的な結論には至らなかった。母集団が小さく、試験期間が短期であり質的に限界があった。・以上を踏まえて著者は、「合併症のない急性期統合失調症患者に対するハロペリドール処方を7.5mg/日以上とすることに医師が慎重になること、また統合失調症患者がより高用量の服用を躊躇することは、容易に理解できる。低用量レジメンの有効性と忍容性(とくに>1.5~3mg/日)について、さらなる研究が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える 統合失調症の急性増悪期、抗精神病薬の使用状況は?:国立精神・神経医療研究センター 抗精神病薬の等価換算は正しく行われているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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爪真菌症治癒の再定義を

 米国・University Hospitals Case Medical CenterのM. Ghannoum氏らは、爪真菌症治癒の定義について、菌類学的アウトカムと臨床試験期間の解釈を再検証した。その結果、現状の臨床試験期間は見直す必要があり、爪真菌症治癒の定義は、十分なウォッシュアウト後の臨床所見が、KOH直接鏡検法が陰性か否かにかかわらず、培養検査が陰性であることでみなすべきであると報告した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年8月19日号の掲載報告。 研究グループは、「現在の爪真菌症外用薬の当局による承認は、完全治癒には、罹患した爪の除去と菌類学的な治癒を含むというあまりにも厳しい定義のため、ネガティブな影響をもたらしている可能性がある」として本検討を行った。 7件の国際共同研究での爪真菌症試験のデータをレビューした。試験には、スクリーニング時にKOH陽性、培養検査陽性で、その後48週間の治療を受けた被験者が登録されていた。さらに研究グループは、94例のKOH陽性/培養検査陰性で52週間追跡を受けた検体について形態学的な菌糸損傷について調べた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ52週時点で集められた3,054例の検体のうち、2,360例が培養検査陰性であった。・しかしながら、そのうち1,857例(78.7%)がKOHは陽性のままであった。・形態学的変化について調べたサブセット検体からは、56例(60%)の塗抹鏡検検体に、菌糸の生育不能を示すと思われる菌糸の破損やねじれを認めた。・以上から、著者は「爪真菌症治癒定義の再評価が必要である。外用薬の臨床試験について、治療期間を再考すべきである」と結論している。また、培養検査が陰性でも塗抹鏡検検体の陽性率が高率であったことや、形態学的な菌糸損傷の所見は偽陽性を示す可能性があることなどに触れ、「十分なウォッシュアウト後の臨床症状の消失は培養検査陰性と結びつけて考え、鏡検が陰性か否かにかかわらず爪真菌症治癒の定義とみなすべきである」とまとめている。

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エキスパートに聞く!「プライマリケア医が診るがん」

プライマリケア医として、どういった基準(タイミング)で専門医へ紹介するべきでしょうか?がんの既往があるか、ないかで分ける必要があります。がんの既往がない患者さんの場合は、諸検査を行い、がんの疑いがある時に、紹介してくださると思います。時々、腫瘍マーカー高値で紹介してくださることがあります。腫瘍マーカーというのは、がんのスクリーニングには推奨されておりませんが、一般検診などで取入れられている場合があります。その場合は、偽陽性であることがありますが、まずは、専門医に紹介してくださってかまいません。がんの既往がある患者さんの場合には、治療後の場合と、治療中の場合に分けられます。手術などの治療後、つまり経過観察している場合には、再発の有無を見極める必要があります。患者さんは、ちょっとした症状で「再発ではないか?」と不安になることが多いのですが、実際患者さんの自覚症状・特に痛みなどの症状から再発が発見されるケースは稀です。がんの再発の多くは無症状のことが多いです。表在リンパ節腫大で発見されることもありますので、身体所見を取っていただきたいです。実際のところ、2~3日で軽快する症状であれば、がんの再発の症状とは考えにくいです。がんの再発を疑う自覚症状としては、持続する症状、徐々に悪化する症状かという2点だと思います。現在がんの治療中の場合:放射線治療を行っている患者さんは、放射線肺臓炎などの放射線有害事象、薬物治療を行っている方では抗がん剤有害事象に注意する必要があります。抗がん剤有害事象では、発熱性好中球減少症が最も注意すべき副作用です。発熱性好中球減少症は、エマージェンシーとなります。また、抗がん剤の最も頻度が高い副作用は、悪心・嘔吐ですが、まずは、一般的な吐き気止めで対処していただければよいと思います。嘔吐が強く脱水が懸念される場合などが紹介のタイミングといえるかも知れません。肺がんの低線量CTを検診に用いると発見率が上がるとの報告を聞きますが、エビデンスはあるでしょうか?ドラフトの段階ではあるもののUS Preventive Task Force(USPSTF:米国予防医学専門委員会)で、Grade Bのrecommendation を出しており、おそらく日本でも推奨グレードは上がってくると思われます。しかしながら、低線量CTが、全ての人に推奨されるのではありません。低線量CTを推奨するきっかけとなった、ランダム化比較試験の対象は、年齢が、55~74歳、喫煙歴が30 pack-year以上(1日喫煙本数x 喫煙年数 ÷20)、または、15年以内に止めているが、それまで喫煙歴があるような、ハイリスクの方に対してのみに有効であったということは覚えておいていただきたいと思います。スパイラルCTのデメリットは偽陽性が出やすいことです。偽陽性が出てしまうとさらなる無駄な検査のみしてしまうことになるという訳です。今後もこの点については検討が必要だと思います。遺伝子検査はなぜ普及しないのでしょうか? 最近話題の乳がんのBRCA1/2遺伝子など一部の遺伝性がんの検査について、欧米諸国では保険適応となっています。この点は、日本は欧米諸国に比べ遅れている点と思います。この背景には認可の問題もあると思いますが、がん遺伝子カウンセラーの育成など体制が整っていないこともあげられるでしょう。在宅医療におけるネットワーク構築について、有効な手段とは?急性期病院と在宅ケアとで密な連携をはかっていくことは、今後のがん診療で最も重要なことと思います。がん緩和ケアの領域では、海外では、ホスピスや緩和ケア病棟は、急性期の症状緩和を担当する緩和ケアのICUのような役割を果たし、症状緩和が得られた時点で、地域の在宅ホスピスと連携をとっています。日本では、在宅で最期を迎える確率は10%、ホスピスが7%ですが、欧米先進諸国での、70~80%(在宅+ホスピスで死亡する割合)と比べると圧倒的に低い数字です。日本では、まだまだ急性期病院で終末期を迎える患者さんが多いことを意味しています。今後、急性期病院と在宅ケア、ホスピスとのさらなるネットワーク作りが必要になってくると思われます。最近の流れとしては、余命告知は行う方向へ向かっているのでしょうか。がんの診断を伝えることに関しては、我が国でもかなりの割合で、診断を伝えるようになってきたと思います。余命告知とは、がんの診断の告知とは大きく異なるものということを認識しなければなりません。余命告知で大きな問題は、多くの医者が、median survival(生存期間中央値)の値を余命と勘違いし、あなたの余命は○ヵ月ですと言っている場合が多いように思います。この数値については大いに注意するべきです。中央値とはご存知の通り、データを小さい順に並べたとき中央に位置する値であり、100人患者さんがいたら、50番目に亡くなった方の生存期間です。がんの生存期間は、患者さんによって非常にバラつきが大きく、正規分布をなさないために平均値ではなく、中央値を使っているだけです。裏を返せば、ある患者集団の生存期間中央値が6ヵ月であった場合、数ヵ月で亡くなる患者さんもいれば、ある患者さんは数年経過しても生きておられるということです。従って、生存期間中央値を患者さん個人の“余命”として当てはめることは、医学的にも間違っているのです。それだけでなく、患者には相当な誤解を与えます。余命6ヵ月と言われれば、患者さんは6ヵ月で自分は死んでしまうと考えます。ある患者さんは、自分は、死亡宣告をされたと、死亡推定日まで、自分の余命はあと、○日と指折り数えていました。中央値ではなく、最悪値としての余命を言う臨床医もいますが、やはり数字を言うことは、患者さんはかなり数字にとらわれてしまいがちですし、誤解も生じやすいため、数字を言うことは慎重にすべきです。可能性・確率を言わない断定的な余命告知することは患者さんを傷つけるだけだと思います。残念ながら、未だがん専門施設でも断定的な余命告知をしている現状があります。大切なことは余命告知ではありません。海外では、余命告知ということはあまり議論にはなっていません。余命というものが、不正確であり、予測不可能なことが多いからです。余命を患者さんに告げることよりも、end of life discussionと言って、どのように最後を迎えるか、どのように生きるかということについて、医療者と患者が話し合いをすることを、ASCO(米国臨床腫瘍学会)でも勧めています。日本でも、このことが必要だと思います。参考:腫瘍内科医 勝俣範之のブログ がん患者さんの食事について。生ものを避けるようにいわれますが、実際にはどのようにアドバイスしたらよいでしょうか?生ものについてのエビデンスなどはあるのでしょうか?生ものを摂取して感染症の発症率が上昇するというエビデンスはありません。ASCOでも、抗がん剤の最中に生ものを避ける必要はないと述べています。血液腫瘍など抗がん剤による強力な免疫抑制が懸念されるのでない限り、生ものでもなんでも好きなものを食べてください、と患者さんへアドバイスすべきでしょう。生ものを避けるより、口腔内に発生する細菌を考慮した口腔ケアの方が重要だと思います。なお、マスクの着用に関しても実はエビデンスはありません。自分の病原菌を周囲に散布しないようにすることはできますが、他人からの感染を予防できるというエビデンスはないのです。

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トラスツズマブ術後治療1年投与と2年投与の比較-ランドマーク解析-(コメンテーター:勝俣 範之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(129)より-

乳がん治療は、ここ10年間で大きく変革した。それは、乳がんの増殖因子であるHER2に対する抗体治療薬であるトラスツズマブの登場による。従来の抗がん剤治療は、殺細胞薬といって、がん細胞も正常細胞も見境なく殺してしまうものしかなく、患者は副作用に苦しむことを余儀なくされていた。1990年代後半から、がん細胞に特異的に発現しているさまざまな分子に対する分子標的治療薬の開発が行われ、分子標的治療薬は、副作用が少ない治療薬ということで注目を浴びた。血液腫瘍ではグリベックが開発され、固形腫瘍で最初に開発された薬剤が、トラスツズマブである。 トラスツズマブは、HER2陽性転移性乳がんのRCT(ランダム化比較試験)で全生存期間の改善を証明し1)、乳がん治療の歴史を変えた。続いて、術後補助療法のRCTでも無病生存率の改善を示し2), 3)、乳がん治療のスタンダードとなった。本論文は、乳がん術後補助療法のRCTのHERA study3)の追跡結果の報告である。 追跡期間の中央値8年での結果であるが、トラスツズマブ1年間投与群と、2年間投与群の比較をランドマーク法を用いて解析している。ランドマーク法とは、経過観察中のある時点(ランドマーク)までにイベントが発生したかどうかにより対象症例を群分けし、その時点から生存曲線を描く手法である4)。治療開始から1年の時点を起算日(ランドマーク)にして解析を行った結果、1年と2年での無病生存期間には差はなかった(HR 0.99, 95%CI 0.85-1.14, P=0.86)。ランドマーク解析はITT解析ではなく、本来のITT populationから、それぞれの群で、147例、150例除外されて解析されている(Figure 1)ので、バイアスがかかるのではないか?という懸念がある。この試験は、RCTであるので、わざわざランドマーク解析を行わなくてよいと思われる。実際には、最初の1年間は、トラスツズマブを同様に投与されるので、バイアスがかかる余地はほとんどないと思われるが、ITT解析の結果も示して、同様の結果になったといって欲しかったところである。 この試験のもう1つのポイントは、8年のフォローアップ後、トラスツズマブ1年投与群と投与しなかった群と比べて、全生存期間でトラスツズマブ群が優っていたという点である。実は、セカンダリーエンドポイントである全生存期間については、これまでに、追跡期間中央値で1年、2年、4年の時点の3回の報告がある3), 5), 6) 。全生存期間のHR(ハザード比)は、1年、2年、4年、今回の8年のフォローアップ時点で、それぞれ、0.76, 0.66, 0.85, 0.76とかなり変動していて、1年時3)と、4年時6)では、P値がそれぞれP=0.26, P=0.1087と、有意差がない状況になっている。4年時に全生存期間に有意差がなかったことに対する解釈としては、トラスツズマブ投与なし群の患者が、かなりクロスオーバーしてトラスツズマブを受けたことによるのであろうと考察されていた。しかし、8年時の今回の解析では、有意差がついた結果(P=0.0005)となった。 本論文では、クロスオーバーがあったとしてもやはり、トラスツズマブが有効であり、早く治療することが良かったのであろうと考察されている。8年時の今回の解析が行われず、4年時の解析で終わっていたとすれば、トラスツズマブが全生存期間を改善することはできなかったと解釈されていた恐れがある。また、今後さらなる長期フォローアップがなされたら、データが変わってくる可能性も考えられる。 臨床試験のセカンダリーエンドポイントやサブグループ解析の解釈や、生存解析を何度も行っている場合の解釈には慎重でなければならない。臨床試験の解析は、基本的には、プライマリーエンドポイントに対する解析のみ統計学的に正当化される。サブグループ解析を繰り返すと、多重解析となり、偽陽性や偽陰性を引き起こすことが多くなるため、注意が必要である。Japanese Journal of Clinical Oncology投稿に際しての統計解析結果のレポートに関するガイドラインhttp://www.oxfordjournals.org/our_journals/jjco/for_authors/jap.guideline.pdf参考文献1) Slamon DJ et al. N Engl J Med. 2001; 344: 783-792.2) Romond EH et al. N Engl J Med. 2005; 353: 1673-1684.3) Piccart-Gebhart MJ et al. N Engl J Med. 2005; 353: 1659-1672.4) Anderson JR et al. J Clin Oncol. 1983; 1: 710-7195) Smith I et al. Lancet. 2007; 369: 29-36.6) Gianni L et al. Lancet Oncol. 2011; 12: 236-244勝俣 範之先生のブログはこちら

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抗血小板薬の診断時と周術期の2回に分ける分割投与/NEJM

 待機的経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受ける非ST上昇型(NSTE)急性冠症候群患者へのプラスグレル(本邦では承認申請中)投与について、診断時に投与する前治療の有意な有効性、安全性は認められなかったことが、フランス・ピティエ-サルペトリエール病院のGilles Montalescot氏らによるACCOAST試験の結果、示された。P2Y12受容体阻害薬プラスグレルは、第三世代の新規抗血小板薬で、NSTE急性冠症候群患者への有効性が示されている。しかし、投与のタイミングによる影響は不明であった。著者は、今回の結果は、プラスグレルの治療戦略は冠血管造影後とすることを支持するものであったと結論している。NEJM誌オンライン版2013年9月1日号掲載の報告より。診断時投与と冠血管造影後投与の有効性を比較 ACCOAST試験は、待機的PCIを要する患者へのプラスグレル投与について、診断時投与と冠血管造影後投与の有効性を比較することを目的とした無作為化二重盲検試験であった。 試験には、トロポニン陽性を示し、無作為化後2~48時間以内に冠動脈造影が予定されていたNSTE急性冠症候群患者4,033例が登録された。被験者は、2,037例がプラスグレル前治療群(負荷量30mg)に、1,996例がプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。前治療群は、PCI時にプラスグレル30mgが追加投与され、プラセボ群にはPCI時にプラスグレル60mgが投与された。前治療は30日間の重大虚血性イベントを減少しない 結果、有効性についての主要複合エンドポイント(無作為化後7日間の、心血管系の原因による死亡・心筋梗塞・脳卒中・緊急血行再建術・GP IIb/IIIa阻害薬の緊急投与の必要性の複合)の発生は、両群間で有意差はみられなかった(前治療に対するハザード比:1.02、95%信頼区間[CI]:0.84~1.25、p=0.81)。 安全性についてのキーエンドポイント(無作為化後7日間の、冠動脈バイパス術[CABG]関連あり・なしにかかわらないあらゆるTIMI重大出血エピソード)の発生は、前治療群で有意に増大した(ハザード比:1.90、95%CI:1.19~3.02、p=0.006)。個別にみると、非CABG関連のTIMI重大出血は3倍(同:2.95、1.39~6.28、p=0.003)、非CABG関連の命に関わる出血は6倍(同:5.56、1.63~19.0、p=0.002)の増大であった。 前治療について、PCIを受けた患者のみの解析においても(PCI施行率68.7%、前治療後中央値4.3時間)、7日時点の主要アウトカムは減少せず、TIMI重大出血発生の増大がみられた。 以上の結果は、30日時点の評価においても、すべて確認された。 著者は、「入院後48時間以内のPCI施行が予定されたNSTE心筋梗塞患者において、診断時にプラスグレルを投与する前治療は、30日間の重大虚血性イベントを減少せず、重大出血合併症を増大した。結果は、PCIを実際に施行された患者における解析でも一致がみられ、プラスグレルの治療戦略は冠動脈解剖学的所見の分析後に行うことを支持するものである」と結論している。

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睡眠障害は痛覚過敏を誘発する

 慢性疼痛患者では睡眠障害が非常によくみられることから、睡眠障害や睡眠不足と疼痛知覚との関連の解明が重要な研究課題となっているが、これまでのところヒトにおける研究で一貫した結果は得られていない。ドイツ・ハイデルベルグ大学のSigrid Schuh-Hofer氏らは、健常人において、全断眠(TSD)は全般的な痛覚過敏を誘発するとともに状態不安を高めることを示した。TSDは睡眠障害の痛覚過敏作用の病理学的機序を解明する疼痛モデルとして役立つ可能性がある、とまとめている。Pain誌2013年9月号(オンライン版2013年5月11日号)の掲載報告。 健常者14人(女性6人、男性8人、平均23.5±4.1歳)を対象に、クロスオーバー法により、全断眠(TSD)と通常睡眠後の体性感覚プロファイルについて網羅的感覚機能評価を用い比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・一晩のTSD後は、眠気のレベルが有意に上昇し(p<0.001)、状態不安検査スコアも有意に増加した(p<0.01)。・熱(p<0.05)および鈍的圧力(p<0.05)に対する痛覚過敏に加え、寒冷に対する痛覚過敏(p<0.01)や、針を刺すといった機械的痛覚感受性(p<0.05)も増加したが、時間的加重による変化はなかった。・矛盾熱感または動的アロディニアはみられなかった。・非侵害受容器の検出閾値に変化はなく、TSDは侵害受容器を選択的に変化させた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?

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ERS2013でTIOSPIR試験の全容を発表

 COPD治療の標準薬となっているチオトロピウム(商品名:スピリーバ)はハンディへラー(ドライパウダー製剤)とレスピマット(MDI:定量噴霧型製剤)の2つの吸入製剤を持つ。しかしながら、近年レスピマットにおいて死亡率増加の可能性を指摘するpooled analysisが発表された。そのため、COPD患者を対象としたチオトロピウムレスピマットの安全性および有効性に関する大規模試験TIOSPIR(TIOtropium Safety and Performance In Respimat)が行われた。New England Journal of Medicine誌にて報告されたその結果(http://www.carenet.com/news/head/carenet/36078)について、9月8日、2013年欧州呼吸器学会(ERS)にて、米国ジョンズ・ホプキンス大学のRobert A.Wise氏より発表された。 TIOSPIR試験は無作為二重盲検、スピリーバレスピマット2.5μgおよび5μg vsスピリーバハンディヘラー18μg の3アーム、ダブルダミーで行われた(レスピマット2.5μgは試験用量)。各群とも治療開始後6週目と12週目に評価し、その後は12週ごと2~3年間にわたり評価した。 プライマリエンドポイントは、死亡率(スピリーバレスピマット2.5μgおよび5μgのハンディヘラー18μgに対する非劣性)。および初回COPD増悪リスク(レスピマット5μgのハンディヘラー18μgに対する優越性)であった。患者条件は ・40歳以上の男女 ・10pack-years以上の喫煙歴を有する ・COPDと診断されている ・FEV1/FVC 70%以下 ・予測FEV1 70%以下 ・ハンディヘラー、レスピマットとも吸入可能などであった。また、実臨床に近い状況とするため、抗コリン薬以外のCOPD基礎治療薬は許可された。 一方、COPD以外の肺疾患、4週間以内の増悪、不安定な心臓疾患を有する患者(6ヵ月以内心臓発作、心筋梗塞、1年以内の致死的なうっ血性心不全、不整脈)、不定期なステロイドの使用例などは除外された。 2010年5月から2011年4月までの期間に患者登録され、50ヵ国1,200施設以上の医療機関で実施された。無作為割り付け対象は、17,183例で、治療17,135例であった。3群間の患者背景に差はなかった。治療期間の中央値は835日(約2.3年)と長期にわたった。<結果> 全死亡率はレスピマット2.5μg群 7.7%、レスピマット5μg群 7.4%、ハンディヘラー18μg群 7.7%で、対ハンディヘラー18μg群のHRはレスピマット2.5μg群 1.00(0.87~1.14)、レスピマット5μg群 0.96(0.84~1.09)であった。レスピマットはいずれの用量でもハンディヘラーとの非劣性が認められた(inferiority margin 1.25)。  死亡例のうち心血管系による死亡は、レスピマット2.5μg群 2.1%、レスピマット5μg群 2.0%、ハンディヘラー18μg群 1.8%で、対ハンディヘラー18μg群のHRはレスピマット2.5μg群 1.17(0.90~1.53)、レスピマット5μg群 1.11(0.85~1.45)であった。なお、不整脈の既往のある患者の死亡は、レスピマット2.5μg群 13.1%(HR 1.02)、レスピマット5μg群 10.6%(HR 0.81)、ハンディヘラー18μg群 12.9%で、対ハンディヘラー18μg群のHRはレスピマット2.5μg 1.02(0.74~1.39)レスピマット5μg群 0.81(0.58~1.12)であった。 増悪については、レスピマット2.5μg群49.4%、レスピマット5μg群47.9%、ハンディヘラー8μg群48.9%で、レスピマット5μg群対ハンディヘラー18μg群のHRは 0.98(0.93~1.03)、p=0.42と同等の結果であった(2.5μg群は49.4%、HR 1.02 [0.96~1.07])。 以上の結果から、チオトロピウムレスピマット2.5μgと5μgはチオトロピウムハンディヘラー18μgと同等の安全性と有効性プロファイルを有する事が示されたとWise氏は述べた。 また、テキサス大学のAntonio Anzueto氏は、期間中に開催されたプレスセミナーにて、以下のようにコメントした。「過去のPooled Analysisは期間が長くなく、対象患者数も十分とはいえない。今回の1万7千例を超える患者を2年以上追跡したTIOSPIRの結果は、過去の報告結果とは一線を画すものだといえる。さらに、世界50ヵ国、1,200施設という非常に多様な患者を対象にした点はCOPDの多様性を反映しており、また実臨床の薬剤の使用も許可したという点で、Real Worldを反映している試験だといえよう。レスピマットの簡便性は患者にとっても恩恵であり、今回の試験結果で使用の障壁は下がる可能性がある。ただし、この試験結果がすべての患者をカバーできるわけではない、医師は各々の患者のリスクを評価して薬剤を使用すべきである」。

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『COPD研究』厳選Pick Up ~海外と日本の見解を比較~

厚生労働省の「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針{健康日本21(第2次)}」では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の認知度を2011(平成23)年の25%から2022(平成34)年度には80%まで向上させることを目標に掲げている。これにより、今後、国を挙げてCOPDの診断と治療を推し進める方針が示されたといえるであろう。COPD関連の大規模試験は欧米主体のものが多いのは事実であるが、国内でもCOPD関連の研究が集積されつつある。そこで今回、国内外におけるCOPD関連の興味深いテーマをいくつかピックアップし、紹介する。COPDには合併症や併存症が潜んでいるこれまで肺の疾患とされてきたCOPDだが、近年は、全身性の炎症性疾患と考えられており、さまざまな合併症や併存症との関係が報告されている(Fabbri L.M, et al. Eur Respir J. 2008; 31: 204-212.)。米国で行われたCOPDと臨床的に関連のある併存症の有病率の横断的大規模調査であるNHANES(米国全国健康・栄養調査) 1999-2008 (Schnell K, et al. BMC Pulm Med .2012; 12: 26.)においても、COPD患者は、COPDではない患者と比較し、循環器疾患や骨粗鬆症、がんなどを併存する割合が有意に高いことが示された。以下の論文は、そのなかでも、COPDと同様、労作時の息切れが主訴であるため、COPDが見逃される可能性のある“心不全”について取り上げている。【海外】2003年3月から2004年12月までの間に米国の259施設より登録された心不全患者のうち、左心収縮機能障害の患者は2万118例で、このうち25%にあたる5,057例がCOPDを併存していた。Mentz RJ, et al. Eur J Heart Fail. 2012; 14: 395-403.【日本】労作時の息切れの鑑別あるいは手術前検診にて、心エコー検査と呼吸機能検査を同時期に施行された患者1,699例において後ろ向きに検討を行ったところ、左室拡張機能障害を有する患者では26%で閉塞性換気障害を認めた。Onishi K, et al. Therapeutic Research. 2009; 30: 807-812.簡便にCOPD患者の健康状態を把握するには?COPD患者のマネジメントを行ううえで、健康状態を常に把握することは重要である。これまでも、COPD患者に対する質問表はあったが、手間や時間を必要とするものも多かった。このような背景の中、開発されたのがCOPD Assessment TestTM(CAT)である。CATは全8項目の短く簡便な質問票であり、より的確な治療や管理を受けられることを目的に開発された。すでに日本語版(http://adoair.jp/disease_info/cat/index.html)もリリースされている。従来の質問票と比べて、CATに妥当性はあるのか。その検証結果を紹介する。【海外】米国の安定期のCOPD患者において、CATとCOPDに特異的な健康関連QOLの評価指標の一つとして広く用いられてきたSGRQ-C(St George's Respiratory Questionnaire for COPD patients)との間に良好な相関関係が認められた(r=0.80, p<0.0001)。Jones PW, et al. Eur Respir J. 2009; 34: 648-654.【日本】相澤氏はJones氏にCATとSGRQ-Cの提供を依頼し、日本人の安定期のCOPD患者についてもCATとSGRQ-Cの関係を検討したところ、同様に相関性が認められた(r=0.82, p<0.001)。相澤久道ほか. 呼吸. 2010; 29: 835-838.気腫型のCOPDは非気腫型より1秒量(FEV1)の経年的低下が大きいCOPDにおいて、FEV1の経年的低下量はアウトカムを判定するうえで重要な指標となる。しかしながら、気腫型のCOPDか非気腫型のCOPDかで、FEV1の経年的低下量に違いがあるかについては、あまり検討されていなかった。【海外】COPD患者について3年間にわたり気管支拡張薬でマネジメントを行い、FEV1の変化を調べた。その結果、胸部CT検査により気腫型(低吸収領域が10%未満)とされた群では、非気腫型の群と比較して、FEV1が平均で327±21mL低く、経年的低下量も13±4mL低かった。Vestbo J, et al. N Engl J Med. 2011; 365: 1184-1192.【日本】北海道大学病院を中心とした多施設共同のCOPD前向きコホート研究では、COPDのFEV1の経年的変化は必ずしもすべての症例で一様に進行・悪化していなかった。さらに、肺気腫の重症度による病型(気腫型/非気腫型)は呼吸機能検査でみた重症度とは独立して、FEV1の経年的変化に影響を与えていた。Nishimura M, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2012; 185: 44-52.西村 正治ほか. 日内会誌. 2013; 102:463-470.3次元胸部CTでCOPDの診断や治療効果を判断できる可能性COPDを診断する場合や治療の経過をみる場合、呼吸機能の数値や臨床症状から判断することが多かった。しかし、3次元胸部CT で気管支壁厚を計測することも、COPDの診断や経過観察を行ううえで有用であることが報告されている。これまで気管支径の測定は各CTスライスに対して手動による抽出が行われてきた。3次元胸部CTは早期から、わが国で積極的に研究が行われてきた分野であり、早期の臨床応用が期待されている。【海外】気道のリモデリングは喘息やCOPDでは一般的な特徴である。しかし、両者を鑑別することが難しいケースが存在する。このような場合に、気道壁の変化やエアートラッピングの量を3次元胸部CTで測定することにより、潜在的な喘息やCOPDの複雑な病理を明らかにし、治療効果を評価するうえでの手助けとなるかもしれない。Dournes G, et al. Pulm Med. 2012;2012:670414.【日本】COPD患者の気流制限は吸入抗コリン薬により改善されることが知られているが、どの部分の気管支拡張が呼吸機能を改善させているのかについてはあまり知られていなかった。そこで吸入抗コリン薬を投与した後、気道内腔のどの部分で変化が起こり、呼吸機能が改善されるのかを3次元胸部CTにより検討した。その結果、抗コリン薬による気管支拡張はFEV1の改善と比例しており、近位の気道より、遠位の気道の拡張のほうが呼吸機能の改善への寄与が大きいことがわかった。Hasegawa M, et al. Thorax. 2009; 64: 332-338.(ケアネット 鎌滝真次)

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アリピプラゾール治療を見極めるタイミングは何週目か

 抗精神病薬の治療効果を見極めるタイミングは難しい。韓国・全北大学医学部のPark Jong-Il氏らは、初回エピソード精神疾患におけるアリピプラゾール治療の有効性および安全性を確認するとともに、同治療の3週時点の反応が2週時点の反応よりもその後の反応を正確に予測することが示されたことを報告した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年8月21日号の掲載報告。 研究グループは、初回エピソード精神疾患の治療について、アリピプラゾールの有効性と安全性を調べること、また同治療の早期反応と後発反応の関連について調べる、6週間の非盲検多施設共同試験を行った。被験者は、DSM-IV診断分類で、統合失調症様障害、統合失調情動障害、統合失調症、あるいはその他の特定できない精神障害を有した59例であった。主要評価尺度は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、Clinical Global Impression-Severity(CGI-S)尺度であった。安全性の評価は、薬物関連有害事象、体重、脂質関連変数の測定にて行った。また、2週時点、3週時点の反応がその後の6週時点の反応をどの程度予測するかについて感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・被験者59例のうち、38例が6週間の試験を完了できた。・アリピプラゾール治療は、PANSSとCGIスコアにおいて、時間とともに有意な改善を示した。・治療反応率(ベースラインから最終観察までのPANSS総スコアの減少が30%以上と定義)は、69.1%であった。・後発反応を最も正確に予測した(陰性適中率と特異度による)のは、ベースラインから3週時点のPANSS総スコア20%以上の減少であった。・アリピプラゾールの副作用による負荷はわずかであった。体重および代謝への副作用に関しては安全なプロファイルの特徴が示された。・以上から、アリピプラゾールは初回エピソード精神疾患の治療において有効かつ安全であることが示された。治療反応は3週時点のほうが2週時点よりも、その後の反応を正確に予測した。関連医療ニュース 抗精神病薬の効果をどのタイミングで見極めるべきか? どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与 維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か

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