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CYP2D6阻害SSRI、タモキシフェンの有効性を低下せず/BMJ

 タモキシフェンと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の併用において、CYP2D6を強力に阻害するSSRIのパロキセチンまたはfluoxetineは、他のSSRIと比較し死亡リスクを増加させないことが確認された。米国ハーバード・メディカル・スクールのMacarius M Donneyong氏らが、5つの国内医療保険データベースを用いたコホート研究の結果、明らかにした。乳がん女性の半数近くはうつ病や不安症を抱えており、タモキシフェンを使用している女性の約4分の1はSSRI薬を服用しているという。タモキシフェンはCYP2D6によって代謝され活性型となるため、CYP2D6の強力な阻害作用を持つSSRI薬との併用は、理論上、活性代謝物が減少し有効性が低下する可能性が示唆されていた。BMJ誌2016年9月30日号掲載の報告。CYP2D6阻害作用を有するSSRI vs.その他SSRIの死亡率を比較 研究グループは、米国の個人または公的な健康保険プログラム5つのデータベースを用い、1995~2013年のデータを解析した。 対象は、タモキシフェン服用中にSSRI内服を開始した女性(コホート1)、およびタモキシフェン開始時すでにSSRIを内服していた女性(コホート2)。各コホートの全死因死亡率を、CYP2D6阻害作用を有するSSRI(パロキセチン、fluoxetine)使用者と、他のSSRI薬(シタロプラム、エスシタロプラム、フルボキサミン、セルトラリン)使用者とで比較した。CYP2D6阻害SSRI内服例と他のSSRI内服例で死亡率に差はなし タモキシフェン新規使用者は、コホート1が6,067例、コホート2が8,465例で、全体の平均年齢は55歳であった。 コホート1では、追跡期間中央値2.2年(四分位範囲0.9~4.5)で死亡991例(死亡率64.3/1,000人年)、コホート2では同2.0年(0.8~3.9)で死亡1,014例(死亡率53.3/1,000人年)であった。 コホート1と2を合わせた全死亡率は、CYP2D6阻害SSRI内服例で58.6/1,000人年、他のSSRI内服例で57.9/1,000人年であり、他のSSRI併用に対するCYP2D6阻害SSRI併用全例の死亡ハザード比は0.96であった(95%信頼区間:0.88~1.06)。感度解析においても結果は一貫していた。 なお、著者は研究の限界として、死因に関する情報不足、喫煙や肥満といった潜在的な交絡因子を除外できないこと、平均追跡期間が短いこと、処方箋どおりに内服されていたかは不明であることなどを挙げている。

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非小細胞肺がん脳転移に対する全脳照射追加の意義

 著者らは、非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の脳転移において、生存率とQOLへ悪影響を及ぼすことなく全脳照射(以下、WBRT)が省略できるかを評価するために、QUARTZ(The Quality of Life after Treatment of Brain Metastases)研究を実施した。Paula Mulvenna氏らによるLancet誌オンライン版9月4日号の掲載の報告。 同試験は非劣性、第III相無作為化比較試験。手術切除または定位放射線照射不適応の脳転移NSCLC患者を無作為にWBRT+デキサメタゾン含む最適サポーティブ・ケア(Optimal Supportive Care、以下OSC)群とOSC単独群に割り付けた。主要評価項目は質調整生存年(QALY:quality adjusted life-years)である。OSC群の非劣性は、WBRT群から7QALY日以内の短縮とした。副次的評価項目は全生存期間(OS)およびQOL。 主な結果は以下のとおり。・538例の患者が登録され、WBRT+OSC群269例、OSC単独群269例に無作為に割り付けられた。・QALYはWBRT+OSC群で平均46.3日、OSC単独群41.7日、差は4.7日であった。・OSはWBRT+OSC群9.2週、OSC単独群8.5週(HR:1.06、95%CI:0.90~1.26、p=0.8084)。・QOLは4、8、12週の評価で両群に有意な差はみられなかった。・眠気、脱毛、嘔気、頭皮の乾燥と掻痒がWBRT+OSC群で報告された。 主要評価項目は事前に設定した非劣性マージン内であり、WBRTの追加による臨床的ベネフィットは証明されなかった。

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ショック未発症の重症敗血症にヒドロコルチゾンは有用か/JAMA

 ショックを発症していない重症敗血症患者に対し、ヒドロコルチゾンを用いた補助療法を行っても、2週間以内の敗血症性ショック発症リスクは減少しないことが示された。集中治療室(ICU)内および院内死亡リスクや、180日時点の死亡リスクについても減少しなかった。ドイツ・シャリテ大学のDidier Keh氏らが、380例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、「検討の結果は、ショック未発症の重症敗血症患者に対するヒドロコルチゾン補助療法の適用を支持しないものだった」とまとめている。同療法は「Surviving Sepsis Campaign」において、難治性敗血症性ショックに対してのみ推奨されており、ショック未発症の重症敗血症に対する同療法については議論の的となっていた。JAMA誌オンライン版2016年10月3日号掲載の報告。14日以内の敗血症性ショックを比較 研究グループは、2009年1月13日~2013年8月27日にかけて、ドイツ国内34ヵ所の医療機関を通じて、重症敗血症で敗血症性ショック未発症の成人380例について、無作為化二重盲検試験を開始した。追跡期間は180日間で、2014年2月23日まで行った。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(190例)にはヒドロコルチゾン200mgを5日間注入し、11日目までに徐々に減量・中止し、もう一方の群(190例)にはプラセボを投与した。 主要評価項目は、14日以内の敗血症性ショック。副次的評価項目は、同ショック発症までの期間、ICU内または院内の死亡率、180日死亡率、2次感染症発症率、ウィーニング失敗、筋力低下の発生率、高血糖症(血糖値>150mg/dL)発症率などだった。敗血症ショック発症率は、いずれの群も21~23% ITT(intention-to-treat)解析対象者は353例。平均年齢65.0歳、男性が64.9%だった。 敗血症性ショックの発症率は、ヒドロコルチゾン群が21.2%(36/170例)で、プラセボ群が22.9%(39/170例)と、両群で同等だった(群間差:-1.8%、95%信頼区間[CI]:-10.7~7.2、p=0.70)。 敗血症性ショック発症までの期間やICU内・院内死亡率も、有意差はみられなかった。28日死亡率は、ヒドロコルチゾン群8.8%、プラセボ群8.2%(差:0.5%、95%CI:-5.6~6.7、p=0.86)、90日死亡率はそれぞれ19.9%と16.7%(3.2%、-5.1~11.4、p=0.44)、180日死亡率は26.8%と22.2%(4.6%、-4.6~13.7、p=0.32)と、いずれも同等だった。 2次感染の発症率は、ヒドロコルチゾン群21.5% vs.プラセボ群16.9%、ウィーニング失敗は8.6% vs.8.5%、筋力低下30.7% vs.23.8%、高血糖症90.9% vs.81.5%だった。

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心筋梗塞後の平均余命、病院パフォーマンスで格差/NEJM

 急性心筋梗塞の入院30日死亡率が低い(高パフォーマンス)病院に入院した患者は、同死亡率が高い(低パフォーマンス)病院に入院した患者に比べ、平均余命が0.74~1.14年長いことが明らかにされた。米国・ボストン小児病院のEmily M. Bucholz氏らが、患者約12万例を17年間追跡したデータを分析し明らかにしたもので、NEJM誌2016年10月6日号で発表した。病院の質を評価する際に、心筋梗塞入院患者の30日リスク標準化死亡率が用いられるが、今回の検討により、同指標が患者の長期生存率にも関連することが示された。病院を混在患者症例の重症度に応じ5群に分類 検討は、メディケア受給者で1994~96年に急性心筋梗塞の入院歴があり、17年間のフォローアップデータが入手できた「共同心血管プロジェクト(Cooperative Cardiovascular Project)」の参加者データを解析して行われた。 病院を、混在する患者症例の重症度に基づいて5群(1:より健康な患者が多い~5:より重症患者が多い)に分類。各群内で、高パフォーマンス病院に入院していた患者と低パフォーマンス病院に入院していた患者とで余命を比較。病院パフォーマンスは、リスク標準化30日死亡率で定義し、Cox比例ハザードモデルを用いて余命を算出した。生存曲線は30日までに分離、その後は平行線 試験対象となったのは、1,824ヵ所の病院に急性心筋梗塞で入院した患者計11万9,735例だった。 患者の推定平均余命は、病院のパフォーマンスが低くなるほど短かった。患者の生存曲線は、病院のパフォーマンスの高低により入院から30日までに分離がみられ、そのままの平行状態が、その後17年の追跡期間中、維持されていた。平均余命は、5群間の病院リスク標準化死亡率の増大とともに低下がみられた。 平均すると、高パフォーマンス病院で治療を受けた患者の余命は、低パフォーマンス病院で治療を受けた患者に比べ、混在症例でみた場合は0.74~1.14年長かった。なお、入院30日時点で生存していた患者のみについて比較すると、病院のパフォーマンスに応じた患者の余命には、ほとんど有意差はみられなかった。

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今のところ順調なapo(a)アンチセンス療法(解説:興梠 貴英 氏)-599

 2015年に、心血管イベントおよび石灰化大動脈弁狭窄症のリスク因子であるLp(a)の血中濃度を低下させる、アンチセンス薬(IONIS-APO[a] Rx)の第I相試験の結果が報告された1)。本試験は、その続き(第II相試験)および元の薬剤にリガンドを結合させて特異的に肝細胞に取り込まれるように改変したもの(IONIS-APO[a]-LRx)の第I/IIa相試験の報告である。 ちなみに、リポ蛋白(a)(Lp[a])の構成成分であるアポリポ蛋白(a)は、サル目の進化途上で約4,000万年前にプラスミノーゲン遺伝子のコピーとして生まれたと考えられている。その生理的な役割はよくわかっていないが、プラスミノーゲンのKringleIV類似ドメインを12~50コピー、KringleV類似ドメインと活性を持たないタンパク質分解ドメインをそれぞれ1コピー持ち、さらにapoB100と共有結合してLp(a)となる。こうした構造からプラスミノーゲンを競合的に阻害し、線溶系の活性化を阻害すると考えられており、Lp(a)は心血管イベントおよび石灰化大動脈弁狭窄症のリスク因子であることが疫学研究の結果報告されている2)。 ところで、2015年にはISIS Pharmaceuticalsという会社名で、いわゆるイスラム国と間違えられそうだといらぬ心配をしていたところ、それが原因とは明言しないものの、Ionis Pharmaceuticalsと改名したようである。 さて、IONIS-APO(a) Rxの第II相試験の結果は元記事にあるように、第I相試験と同様に空腹時血漿Lp(a)を十分下げることができ、また安全性にも大きな問題は認められないというものであった。ただし、インフルエンザ様症状の一部を示す被験者が約10%おり、1例の被験者においては注射部において中等度の副作用が出現したため参加を中止した。ところで、第I相試験では47例中女性は1例もおらず、女性に関する情報は得られていなかったが、本試験では61例中28例が女性で、とくに性別による差は報告されていない。 一方、IONIS-APO(a)-LRxの第I/IIa相試験においても用量依存性に空腹時血漿Lp(a)濃度を下げることができたが、特異的に肝細胞に取り込まれるため、より少ない用量でより大きな低下率をもたらすことができるという結果であった。また、IONIS-APO(a)Rxで認められたインフルエンザ様症状の一部は認められず、注射部の大きな問題も認められなかった。 これらの結果は、Ionis社のアンチセンス薬が有効に安全に血漿Lp(a)濃度を下げられることを示しており、このまま問題が起きなければより後期のフェーズの治験へ進んでいくと思われる。しかし、臨床的に重要なのは本当にLp(a)を下げることによって心血管イベントや石灰化大動脈弁狭窄症のリスクを低下させられるか、ということである。そうした結果が出るにはまだかなり時間がかかりそうである。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決! 一問一答 質問1

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決! 一問一答質問1 p値は小さければ小さいほど差がある(よく効いた)といえるのか?はじめに「p値」について簡単に復習してみましょう。詳しくは『わかる統計教室 第3回 セクション10 p値による仮説検定』をご参照ください。■仮説検定とは薬剤の効果を調べる場合、その薬を必要とするすべての人に薬剤を投与してみれば効果はわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬を投与して、そこで得られたデータが、世の中の多くの人たちにも通じるかどうかを検証するわけです。具体的には、「解熱剤である新薬は母集団において解熱効果がある」という仮説を立て、統計的手法を用いてこの仮説が正しいかどうかを確認します。確認する方法を「仮説検定(hypothesis test)」といいます。仮説検定は、「母集団仮説検定」「統計的検定」ともいわれています。■帰無仮説、対立仮説とは(母平均の差の検定)具体例として、解熱剤である新薬Yの投与前体温平均値と投与後体温平均値についてみてみましょう。帰無仮説(統計学観点から立てる仮説)母集団における、新薬Yの投与前後の体温平均値は等しい。対立仮説(結論とする仮説)母集団における、新薬Yの投与前後の体温平均値は異なる。あるいは母集団における、新薬Yの投与前後の体温平均値は投与後のほうが投与前より低い。■p値、有意水準とは調査データに公式を当てはめ、帰無仮説が成り立つとしたときに出現する確率を求める。具体例では、新薬Y投与前後の体温平均値は同じという帰無仮説の下で、実際に起こる確率はX%である。この確率X%をp値という。仮説検定は統計が定めた値とp値を比較して結論を導く。統計学が定めた値を有意水準という。有意水準は5%、1%が用いられる(通常は5%)。このように仮説検定の公式によって求められた「p値」と統計学が決めた基準の値「有意点」を比較します。有意点は通常は0.05が用いられます。体をそらしてバーをくぐるリンボーダンスを例にすると、体の高さがp値、バーの高さが有意点。バーをくぐればセーフ、くぐれなければアウトです(図1)。検定では、p値が有意点0.05を下回れば、2群の平均値に違いがあると判断します。図1 有意点とp値のイメージ■信頼度とはp値が、有意点5%よりも小さいときは、「母集団における、新薬Yは投与前と投与後の体温平均値が異なる」を採択し、投与前後で体温平均値に違いがあったと判断します。この判断はもしかしたら間違っているかもしれませんが、この判断が間違いである確率は5%以内ということになります。信頼度(statistics confidence)は有意点の逆で、この判断が当たる確率(通常95%)のことです(図2)。図2 信頼度と有意点のイメージ■p値は、小さければ小さいほど差がある(よく効いた)といえるのか?p値が、小さければ小さいほど差があるとはいえません。つまり、p値が小さいことを理由にして、大きな効果があったと結論付けることはできません。p値の比較として、表の解熱効果を比較し、データでみてみましょう。表 各薬剤の解熱効果の比較新薬Yは、既存薬Xや新薬Zと比較し、体温低下の平均値は2.2と最も大きく熱を下げています。そして、新薬Zも既存薬Xに比べて有意に熱を下げています。既存薬Xと新薬Yの検定から得られるp値は0.041、既存薬Xと新薬Zのp値は0.009でした。仮にp値の大きさが小さいからという理由で薬剤を選択したら、新薬Zのほうが効果が大きい(良い結果)ことになってしまいます。つまりp値の大きさによって薬剤を選ぶと、効果の低い薬剤を選んでしまうという間違った判断をしてしまいます。p値は信頼度の強さの指標であって、効果の大きさの指標ではありません。単一のp値もしくは統計的有意性は、その結果である効果や重要性の大きさを測るものではないのです。実際に新薬Yも被験者数をもっと多くの人数で実施していたとしたら、p値は0.041よりも、もっと小さな値になるかもしれません。値が非常に小さければ、それだけで何かが証明されるわけではなく、p値は5%程度でもいいから、きちんと計画された追試がいくつか行われて、一貫して同じ結果が得られるほうが重要だというわけです。p値は目安ですので統計的には,次のようにおおまかな範囲を * 印の数で示すことがあります。*0.01<p≦0.05**0.001<p≦0.01***p≦0.001また、p>0.05 を有意でないという意味で n.s.(not significant)と書くことがあります。■よくある誤った解釈p<0.05であった場合、「有意差がある」といいます(図3)。図3 有意差があるとは?では、p>0.05の場合はどうでしょうか。「有意差がなかった」というのは正しい表現ですが、A群とB群は「有意差がなかったので同じである」とはいえません。「有意差がなかった」というのは、「A群とB群で違いがみられなかった」あるいは、「A群とB群で違いがあるかどうかが、わからなかった」というのが正しい表現です。●Topics2016年3月7日に「p値や有意性にこだわり過ぎるな、p<0.05かどうかがすべてを決める時代はもう終わらせよう」という米国統計学会の声明が発表されています。 ご興味のある方は下記をご参照ください。AMERICAN STATISTICAL ASSOCIATION RELEASES STATEMENT ON STATISTICAL SIGNIFICANCE AND P-VALUESProvides Principles to Improve the Conduct and Interpretation of Quantitative ScienceThe ASA's statement on p-values: context, process, and purpose今回のポイント1)p値は、信頼度の強さの指標であって、効果の大きさの指標ではない。2)単一のp値もしくは統計的有意性は、その結果の効果や重要性の大きさを測るものではない。3)p値が非常に小さいだけで何かが証明されるわけではなく、p値は5%程度でもよいから、きちんと計画された追試がいくつか行われて、一貫して同じ結果が得られるほうが重要である。インデックスページへ戻る

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悪性黒色種、発見者による予後の違いが明らかに

 悪性黒色種(メラノーマ)は早期診断が重要であるが、患者は疾患が進行してから受診することが多い。悪性黒色種を最初に誰が発見するかによって予後にどのような影響があるかは明らかになっていなかったが、スペインのグレゴリオ・マラニョン大学総合病院 Jose Antonio Aviles-Izquierdo氏らの調査によって、皮膚科医が発見したほうが患者自ら発見した場合よりも、予後は良好であることが明らかとなった。ただし皮膚科医の発見は80%が偶発的であったことも判明した。また、本人自ら発見した患者においては、とくに70歳超で男性より女性のほうが予後良好であった。著者は「この集団が、悪性黒色種発見のための教育を行う論理的なターゲットになるだろう」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年9月16日号掲載の報告。 研究グループは、誰が最初に悪性黒色種に気付いたか、患者が受診した理由など悪性黒色種の発見パターンが予後に及ぼす影響を検討する目的で、1996~2012年に診断された皮膚悪性黒色種患者783例を対象に、誰が最初に悪性黒色種に気付いたか(例:本人、親族、医療従事者、皮膚科医)、疫学、臨床症状、組織学および予後について調査し、それらの関連を解析した。 主な結果は以下のとおり。・患者本人が気付いた場合が多かった(53%)。・これらの患者のうち、32%は、出血、そう痒/痛みまたは小結節増大のために受診した。・患者本人による発見は、男性より女性に多く、男性より女性のほうが予後良好であった。・男性は女性より、簡単には見えない部位の悪性黒色種が有意に多かった。・皮膚科医が発見した悪性黒色種は、80%は偶発的な発見であった。・患者本人が発見した悪性黒色種は、より厚く、潰瘍化や転移の頻度が高く、悪性黒色種による死亡と関連していた。

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気管支喘息への新規抗IL-5受容体抗体の治療効果は?(解説:小林 英夫 氏)-598

 気管支喘息の有病率は減少していないが、本邦での年間死亡数は20年前に7千人を超えていたものが近年は2千人以下と減じた。その最大の理由として、吸入ステロイド薬の普及が挙げられる。しかし、高用量の吸入ステロイド薬ないし吸入ステロイド+長時間作用型β2刺激薬でもコントロールに難渋する重症・難治性気管支喘息が約1割でみられる。そこで、さらなる治療効果を求め、抗IgE抗体や抗interleukin-5(IL-5)抗体が臨床に登場した。新規抗IL-5抗体benralizumabは、Il-5のアルファサブユニット(IL-5Rα)を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、受容体結合により抗体依存性細胞障害作用を発揮し、ナチュラル・キラー細胞を介し好酸球のアポトーシスを誘導する。すでに、第II相試験で好酸球性喘息の増悪を改善する効果が得られている。本論文では、benralizumabがプラセボ群に比して年間喘息増悪を有意に抑制すると報告している。 本第III相試験(CALIMA試験)の対象は、年齢が12~75歳、中から高用量の吸入ステロイド+長時間作用性β2刺激薬治療が必要、12ヵ月以上継続、試験前12ヵ月間に2回以上の増悪、などを条件とした。Benralizumab 30mgを4週間に1回投与(Q4W群)、または8週間に1回投与(Q8W群)、プラセボ群に1対1対1の割合でランダムに割り付け、治療は56週間継続し、吸入薬はそれまで通り併用した。エントリー症例は、Q4W群425例、Q8W群441例、プラセボ群440例、脱落症例は149例(11%)であった。主要評価項目はベースライン血中好酸球数300/μL以上での、プラセボ群と比較したbenralizumab群の年間増悪率比とし、2次評価項目は気管支拡張薬投与前FEV1とtotal asthma symptom scoreとした。 結果は、プラセボ群年間増悪は0.93回(95%信頼区間0.77~1.12回)に対し、Q4W群年間増悪0.60回(0.48~0.74回)で、プラセボと比較した率比は0.64(0.49~0.85)、Q8W群年間増悪0.66回(0.54~0.82回)で率比は0.72(0.54~0.95)、といずれも有意だった。気管支拡張薬投与前FEV1のベースラインから56週までの変化量は、benralizumab群で有意に大きかった。56週時点のtotal asthma symptom scoreは、プラセボ群ではベースラインから1.16ポイント低下、Q4W群で1.28ポイント、Q8W群は1.40ポイント低下し、Q8W群で改善が有意だった。ベースラインの好酸球数はQ4W群が中央値470/μL、Q8W群は480/μLだったが、4週時にはいずれも中央値0個/μLに、56週時も0個/μLだった。著者らは、benralizumabはコントロール困難な好酸球性喘息の年間増悪率を有意に減少させたので、この治療が最も効果的な患者群を特定していきたいと結論している。 筆者の読後感として、本薬剤が8週間ごとの投与でも有効性を発揮していた点を評価したい。しかし本論文だけでは、すでに導入されている抗IL-5抗体との優劣が不明、治療レスポンダーの抽出項目が不明、薬価はどうなるのかなど、今後解明すべき問題は残されている。また、ほぼ同時かつ同一条件でbenralizumabを評価するSIROCCO試験がLancet上に掲載されているが、両試験を一括報告できていれば、より説得力のある論文になったであろうことが惜しまれる。

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禁煙を助ける道具を上手に使おう

禁煙がうまくいかないときのチェックポイント確認しよう 5つの E② EQUIPMENT(道具)道具(Equipment)を上手に使おう! 禁煙補助薬(飲み薬、貼り薬など)を上手に活用。 スマートフォンなどのアプリも便利です。 昆布やガムなどもタバコの代替品として有効なアイテムです。・禁煙チャレンジに、“素手”で闘う必要はありません!・タバコの代わりになる嗜好品や、禁煙を後押しするアイテムをうまく取り入れながら、最終的には禁煙を達成しましょう。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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小児科医はポケモンGOの悪影響を懸念すべき?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第76回

小児科医はポケモンGOの悪影響を懸念すべき? >FREEIMAGESより使用 いわゆる健康アプリは、健康的になりたいという人に向けて開発されたものです。しかし、今はやりのポケモンGOは、健康を目的にしたアプリではありません1)。ただ、かなりの距離を歩くことになるため、健康的な側面がマスメディアにも取り沙汰されています。 そういうこともあり、ポケモンGOの論文がそろそろチラホラ出てくる時期だろうと思いますが、さすがに医学的なアウトカムを設定した研究は、2016年9月時点ではまだ見当たりません。ポケモンGOをプレイすると、減量や身体活動性に良好なアウトカムが出そうですね。 Serino M, et al. Pokémon Go and augmented virtual reality games: a cautionary commentary for parents and pediatricians. Curr Opin Pediatr. 2016;28:673-677. この短報は小児科医に向けて書かれたものです。ポケモンGOの普及によって、それをプレイする小児にどのような影響が出るのか早期に議論を促しています。とはいえ、世界的にも今は大人のプレイヤーがかなり多いように見受けられますが…。レアモンスターが出たという情報で公園に殺到しているのも、ほとんどが大人ですよね。ポケモンGOの利点は、運動の機会が増えること、また社会的活動や野外活動が増えることです。一方、欠点としてケガや事故、誘拐、不法侵入、暴力、過度の課金などが挙げられます。実際に日本でも交通事故がニュースになっています。筆頭著者のSerino医師は、子供を守るために、親や小児科医がポケモンGOのことを知り、過度にゲームにはまらないよう緩衝材となるべきだと警鐘を鳴らしています。その一方で日本では、車や自転車を運転しながらポケモンGOをプレイするマナーの悪い大人もます(マナーの問題どころではありませんが)。良識のある大人が、子供の手本となるべきだと常々思います。ちなみに私は時間がもったいないのでポケモンGOはプレイしていません。参考資料1)McCartney M. BMJ. 2016;354:i4306.インデックスページへ戻る

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アンチセンスオリゴヌクレオチド、リポ蛋白(a)濃度低下を第II相で確認/Lancet

 低比重リポ蛋白(LDL)にアポリポ蛋白(a)(apo[a])が結合したリポ蛋白(a)(Lp[a])の増加は、心血管疾患および石灰化大動脈弁狭窄症の遺伝的リスク因子であることが知られている。現在、apo(a)を標的としたオリゴヌクレオチドのIONIS-APO(a)Rxと、肝細胞に高度かつ選択的に取り込まれるようデザインされたリガンド結合アンチセンスオリゴヌクレオチドのIONIS-APO(a)-LRxが開発中であるが、とくに後者がLp(a)濃度を低下させる有効かつ忍容性のある新しい治療薬として有望であることが明らかとなった。米国・Ionis PharmaceuticalsのNicholas J Viney氏らが、IONIS-APO(a)Rxの第II相試験とIONIS-APO(a)-LRxの第I/IIa相試験の2件の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。IONIS-APO(a)Rxの健常成人を対象とした第I相試験では、用量依存的に血漿Lp(a)濃度が減少することが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2016年9月21日号掲載の報告。IONIS-APO(a)Rxの100~300mg投与でLp(a)濃度が約70%低下 まずIONIS-APO(a)Rxの第II相試験は、カナダ、オランダ、ドイツ、デンマーク、英国の13施設で実施された。2014年6月25日~2015年11月18日に、Lp(a)濃度が異なる2つのコホート(A[125~437nmol/L]51例、B:[≧438nmol/L]13例)の計64例を、IONIS-APO(a)Rx皮下投与用量漸増群(4週間ごとに週1回100mg、200mg、300mgと増量)またはプラセボ(生理食塩水)投与群(週1回12週間)に、コホートAは1対1、コホートBは4対1の割合で無作為に割り付けた(IONIS-APO(a)Rx群計35例、プラセボ群計29例)。 主要評価項目であるper-protocol集団(6回以上治験薬の投与を受けた被験者)における85日または99日時点での空腹時血漿Lp(a)濃度のベースラインからの平均変化率(平均±標準偏差[SD])は、IONIS-APO(a)Rx群のコホートAで-66.8±20.6%、コホートBで-71.6±13.0%であった(いずれもp<0.0001 vs.プラセボ(コホートA+B)群)。IONIS-APO(a)-LRx 40mg投与でLp(a)濃度が約90%低下 次にIONIS-APO(a)-LRxの第I/IIa相ヒト初回投与試験は、カナダ・トロントのBiopharma Servicesの第I相部門で実施された。2015年4月15日~2016年1月11日に、健常者(Lp[a]≧75nmol/L)58例が登録され、単回投与試験でIONIS-APO(a)LRx皮下投与群(10mg、20mg、40mg、80mg、120mg)またはプラセボ群に3対1の割合で、反復投与試験(第1・3・5・8・15・22日の6回投与)でIONIS-APO(a)LRx皮下投与群(10mg、20mg、40mg)またはプラセボ群に8対2の割合で、それぞれ無作為に割り付けた(単回投与試験計28例:10mg群3例、20mg群3例、40mg群3例、80mg群6例、120mg群6例、プラセボ群7例/反復投与試験計30例:10mg群8例、20mg群8例、40mg群8例、プラセボ群6例)。 主要評価項目の解析対象集団は、無作為化されかつ治験薬の投与を最低1回以上受けた被験者であった。結果、単回投与試験では、IONIS-APO(a)-LRxのすべての用量群で主要評価項目である30日時点の平均Lp(a)濃度の用量依存的な有意な減少が認められた。一方、反復投与試験では、主要評価項目である36日時点での平均Lp(a)濃度のベースラインからの平均変化率が10mg群-66±21.8%、20mg群-80±13.7%、40mg群-92±6.5%であった(p=0.0007、IONIS-APO(a)-LRx全体 vs.プラセボ群)。 安全性については、どちらのアンチセンスオリゴヌクレオチドでも確認された。第II相試験において重篤な有害事象(心筋梗塞)がIONIS-APO(a)Rx群で1例、プラセボ群で1例確認されたが、治験薬に関連するものではないと判断された。注射部位反応がIONIS-APO(a)Rxでは12%に認められたが、IONIS-APO(a)-LRxでは確認されなかった。

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統合失調症患者の口腔ケア、その重要性は:東医大

 統合失調症患者は抗精神病薬で治療されるが、多くの場合、抗不安薬の併用が行われている。東京医科大学の岡本 彩子氏らは、定型、非定型抗精神病薬、抗不安薬、非向精神薬を服用中の統合失調症患者における口腔内乾燥症を評価するため、口腔水分計を用いて調査を行った。Journal of clinical pharmacy and therapeutics誌オンライン版2016年9月24日号の報告。 患者は、北里大学東病院および関連病院の精神科において、ICD-10基準に従って、統合失調症と診断された。すべての患者に向精神薬が処方されていた。一次性シェーグレン症候群のような口腔乾燥症に関連する疾患を有する患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・127例が登録された。・平均口腔水分値は、27.81±2.27%(正常値:30.0%以上)であった。・客観的な口腔水分値と主観的な口渇との間に有意な関連が認められた。・多変量解析では、抗精神病薬、とくに抗不安薬の数と口腔水分の程度との間に負の相関が認められた。・薬物投与量自体には、口渇との有意な相関は認められなかった。 著者らは「客観的な口腔水分測定では、向精神薬服用中の統合失調症患者は、口腔水分の減少が認められ、口腔水分の程度は、向精神薬の投与量ではなく、数と負の相関を示した」ことから、「歯科医は、統合失調症患者が来院した場合、口腔水分を評価し、薬が服用されているか判断すべきである。そして、口腔乾燥と多剤併用の関連性の知見に基づき、積極的な口腔乾燥症管理を行うよう、精神科医に情報提供すべきである」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は 抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響 統合失調症への支持療法と標準的ケア、その差は

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最も近い眼科まで車で何分?

 米国・ワシントン大学のCecilia S. Lee氏らは、人口調査をベースとしたアプローチを用いて、走行ルートと走行時間を計算して、“近場の眼科”を定量化する検討を行った。結果、地域によって差はあるが、概して、米国のメディケア受給者集団の90%以上が、眼科医まで車で30分、検眼士まで15分以内のところに住んでいることが明らかになったという。Ophthalmology誌オンライン版2016年9月12日号掲載の報告。 研究グループは、2010年米国人口調査における65歳以上の回答者を対象に断面調査を行った。評価項目は、最も近い検眼士および眼科医までの走行時間と走行距離であった。 検討方法は、2012年Medicare Provider Utilization and Payment Dataおよびメディケア・メディケイドセンター(CMS)の支払いデータから、開業しているすべての眼科医と検眼士の住所を得るとともに、2010年の米国人口調査データを用いて区画ごとでの住民の地理位置情報および各位置における65歳以上の高齢者数を算出。また、米国におけるあらゆる道路の形状と走行制限速度を、OpenStreetMapプロジェクトから入手し、最も近い検眼士および眼科医までの正確な走行時間および走行距離を算出した。 主な結果は以下のとおり。・CMSに名前が登録されている検眼士2万5,508人および眼科医1万7,071人に関して、3.79×107人の走行時間が計3.88×107の道路を用いて計算された。・全国的に最も近い検眼士および眼科医までの走行時間中央値は、それぞれ2.91分および4.52分であった。・最も近い検眼士および眼科医まで、90%の住民がそれぞれ13.66分および25.21分の距離に住んでいた。

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FRISC-II試験:死ぬまで大規模臨床試験!(解説:中野 明彦 氏)-597

【はじめに:非ST上昇ACSに対する治療法の変遷】 現在日本の循環器専門施設において、非ST上昇といえどACS患者に冠動脈造影(必要ならPCIやCABG)を行わないところはまずないであろう。しかし、FRISC-II試験が登録された1990年代後半には、その是非は賛否両論だった。 血行再建術が成熟していなかった影響も大きいが、不安定狭心症を対象としたVA studyや非Q波心筋梗塞・不安定狭心症で比較したVANQWISH・TIMI-IIIB試験では、早期侵襲的治療群(侵襲群)の非侵襲的治療群(非侵襲群)に対する優位性は示せなかった。 FRISC-II試験は、侵襲群の優位性を示した最初のランダム化試験で、TACTICS-TIMI18・RITA-3・ISAR-COOLなどがこれに続き、最新のガイドラインにも反映されている。その優位性はACS再発による再入院にとどまらず、死亡・心筋梗塞といった重大イベント抑制に及び、patient riskが高いサブグループほど絶対リスクの差が大きい。また、原則的にそうしたhigh risk群ほど早い介入が望まれる。【FRISC-II試験と本論文について】 FRISC-II試験は、1996~98年に登録された。当然ベアメタルステントの時代である。侵襲群において、その後の一連の試験に比して、冠動脈造影まで要した時間は最も長く(中央値96時間)、ステントやスタチン併用が最も少ない。一方、非侵襲群からのクロスオーバーは最も少なく(14%)、これが侵襲群の優位性を際立たせ、血行再建の遅れによるマイナス面を相殺したと考えられる。総死亡+非致死性心筋梗塞を1次エンドポイントとして、6ヵ月・1年・2年・5年の結果が報告されている。 そして、本論文は15 年の集大成である。 15年間に血行再建術が施行された患者は82% vs.58%だったが、最終的な心臓死の割合は14.5% vs.16.3%(p=0.292)で有意差がなかった。 総じて、侵襲群では当初の3~4年間、心臓死や心筋梗塞発症が抑制されたものの、5年後には予後に関するアドバンテージは消失4)、新たな心筋梗塞発症も以降平行線を辿っている。つまり、急性期積極的血行再建の賞味期限は3~4年ということらしい。【15年経つ、15年観る、ということ】 誰が決めたか知らないが、循環器系の(も?)大規模臨床試験の観察期間は長くて5年である。企業主導であろうが医師主導であろうが、多くの症例を厳密にfollow-upする努力・モチベーション・予算は5年が限界なのかもしれない。また、その頃には別なテーマやデバイスが浮上し、人々の興味も次へとシフトする。 つまり、本論文で特筆すべきはその観察期間の長さである。さらにデータ回収率が高く、生死および死因に関する情報は99%、イベントに関する情報も89%の症例で確認されている。それを裏支えしているのは、スカンジナビア諸国で行われている公衆衛生の登録制度である。個人識別番号と疾病・負傷、入退院、死亡(死因)、処方薬などのさまざまな医療情報をリンクさせ、それを関係者で共有することにより、人・金・施設などの限られた資源を有効活用し、包括的で質の高い医療を目指そうという国家的プロジェクトである。 FRISC-II試験の登録症例の年齢(中央値)は66歳、スカンジナビア諸国の平均寿命は78~81歳。つまり、15年というのは半数の患者が平均寿命に達する期間である。割り付けられた介入の影響がどんどん薄まっていき、原疾患たる冠動脈疾患や心疾患、さらには高齢者故の心臓以外の疾患により予後やQOLが損なわれていくのは当然である。逆にいえば、平均寿命まで追跡することによって、その介入が患者の一生にどう関わるかを判定しようという壮大な視点が垣間みえる。 ノルディックモデルと称される社会民主主義的福祉レジームによる制度的再配分福祉を整備するスカンジナビア諸国では、高い租税率を代償として国営に近い形で医療が遂行されている。だからこそ可能になった登録制度を、医療制度・文化の異なる他国に当てはめるのは現実的ではないが、一方日本の現状を顧みると、個人情報保護の高い壁と相次ぐ医療不信により大規模臨床試験の未来はあまり明るくはない。 対象疾患のリスクで異なるであろうが、大規模臨床試験の適切な観察期間はどのくらいなのか? ガイドラインで示される治療介入が長期的にみて本当に有効なのか? またその賞味期限はどの程度なのか? ―今後さらに発信されるであろうスカンジナビアからの情報を、遠くからしっかり見守りたいと思う。

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多発性骨髄腫〔MM : multiple myeloma〕

1 疾患概要■ 概念・定義多発性骨髄腫(MM)は、Bリンパ球系列の最終分化段階にある形質細胞が、腫瘍性、単クローン性に増殖する疾患である。骨髄腫細胞から産生される単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)を特徴とし、貧血を主とする造血障害、易感染性、腎障害、溶骨性変化など多彩な臨床症状を呈する疾患である。■ 疫学わが国では人口10万人あたり男性5.5人、女性5.2人の推定罹患率であり、全悪性腫瘍の約1%、全造血器腫瘍の約10%を占める。発症年齢のピークは60代であり、年々増加傾向にある。40歳未満の発症はきわめてまれである。■ 病因慢性炎症や自己免疫疾患の存在、放射線被曝やベンゼン、ダイオキシンへの曝露により発症頻度が増加するが成因は明らかではない。MMに先行するMGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)や無症候性(くすぶり型)骨髄腫においても免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子や13染色体の異常が認められることから、多くの遺伝子異常が関与し、多段階発がん過程を経て発症すると考えられる。■ 症状症候性骨髄腫ではCRABと呼ばれる臓器病変、すなわち高カルシウム血症(Ca level increased)、腎障害(Renal insufficiency)、貧血(Anemia)、骨病変(Bone lesion)がみられる(図1)。骨病変では溶骨性変化による腰痛、背部痛、脊椎圧迫骨折などを認める。貧血の症状として全身倦怠感・労作時動悸・息切れなどがみられる。腎障害はBence Jones蛋白(BJP)型に多く、腎不全やネフローゼ症候群を呈する(骨髄腫腎)。骨吸収の亢進による高カルシウム血症では、多飲、多尿、口渇、便秘、嘔吐、意識障害を認める。正常免疫グロブリンの低下や好中球減少により易感染性となり、肺炎などの感染症を起こしやすい。また、脊椎圧迫骨折や髄外腫瘤による脊髄圧迫症状、アミロイドーシス、過粘稠度症候群による出血や神経症状(頭痛、めまい、意識障害)、眼症状(視力障害、眼底出血)がみられる。画像を拡大する■ 分類骨髄にクローナルな形質細胞が10%以上、または生検で骨もしくは髄外の形質細胞腫が確認され、かつ骨髄腫診断事象(Myeloma defining events)を1つ以上認めるものを多発性骨髄腫と診断する。骨髄腫診断事象には従来のCRAB症状に加え、3つの進行するリスクの高いバイオマーカーが加わった。これらはSLiM基準と呼ばれ、骨髄のクローナルな形質細胞60%以上、血清遊離軽鎖(Free light chain: FLC)比(M蛋白成分FLCとM蛋白成分以外のFLCの比)100以上、MRIで局所性の骨病変(径5mm以上)2個以上というのがある。したがって、CRAB症状がなくてもSLiM基準の1つを満たしていれば多発性骨髄腫と診断されるため、症候性骨髄腫という呼称は削除された1)。くすぶり型骨髄腫は、骨髄診断事象およびアミロイドーシスを認めず、血清M蛋白量3g/dL以上もしくは尿中M蛋白500mg/24時間以上、または骨髄のクローナルな形質細胞10~60%と定義された。MGUSは3つの病型に区別され、その他、孤立性形質細胞腫の定義が改訂された1)(表1)。表1 多発性骨髄腫の改訂診断基準(国際骨髄腫ワーキンググループ: IMWG)■多発性骨髄腫の定義以下の2項目を満たす(1)骨髄のクローナルな形質細胞割合≧10%、または生検で確認された骨もしくは髄外形質細胞腫を認める。(2)以下に示す骨髄腫診断事象(Myeloma defining events)の1項目以上を満たす。骨髄腫診断事象●形質細胞腫瘍に関連した臓器障害高カルシウム血症: 血清カルシウム>11mg/dLもしくは基準値より>1mg/dL高い腎障害: クレアチニンクリアランス<40mL/分もしくは血清クレアチニン>2mg/dL貧血: ヘモグロビン<10g/dLもしくは正常下限より>2g/dL低い骨病変: 全身骨単純X線写真、CTもしくはPET-CTで溶骨性骨病変を1ヵ所以上認める●進行するリスクが高いバイオマーカー骨髄のクローナルな形質細胞割合≧60%血清遊離軽鎖(FLC)比(M蛋白成分のFLCとM蛋白成分以外のFLCの比)≧100MRIで局所性の骨病変(径5mm以上)>1個■くすぶり型骨髄腫の定義以下の2項目を満たす(1)血清M蛋白(IgGもしくはIgA)量≧3g/dLもしくは尿中M蛋白量≧500mg/24時間、または骨髄のクローナルな形質細胞割合が10~60%(2)骨髄診断事象およびアミロイドーシスの合併がない(Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.)■ 予後治癒困難な疾患であるが、近年、新規薬剤の導入により予後の改善がみられる。生存期間は移植適応例では6~7年、移植非適応例では4~5年である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査血清および尿の蛋白電気泳動でβ-γ域にM蛋白を認める場合は、免疫電気泳動あるいは免疫固定法でクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)とタイプ(κ、λ)を決定する。BJP型では血清蛋白電気泳動でMピークを認めないので注意する。血清FLCはBJP型骨髄腫や非分泌型骨髄腫の診断に有用である。血液検査では、正球性貧血、白血球・血小板減少と塗抹標本で赤血球連銭形成がみられる。骨髄ではクローナルな形質細胞が増加する。生化学検査では、血清総蛋白増加、アルブミン(Alb)低下、CRP上昇、ZTT高値、クレアチニン、β2-ミクログロブリン(β2-MG)の上昇、赤沈の亢進がみられる。染色体異常としてt(4;14)、t(14;16)、t(11;14)や13染色体欠失などがみられる。全身骨X線所見では、打ち抜き像(punched out lesion)や骨粗鬆症、椎体圧迫骨折を認める。CTは骨病変の検出に、全脊椎MRIは骨髄病変の検出に有用である。PET-CTは骨病変や形質細胞腫の検出に有用である。■ 診断診断には、前述の国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)による基準が用いられる1)(表1、2)。また、血清Alb値とβ2-MG値の2つの予後因子に基づく国際病期分類(International Staging System:ISS)は予後の推定に有用である。最近、ISSに遺伝子異常とLDHを加味した改訂国際病期分類(R-ISS)が提唱されている2)(表3)。ISS病期1、2、3の生存期間はそれぞれ62ヵ月、44ヵ月、29ヵ月である。ただし、これは新規薬剤の登場以前のデータに基づいている。表2 意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)と類縁疾患の改訂診断基準■非IgG型MGUSの定義血清M蛋白量<3g/dL骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%形質細胞腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)およびアミロイドーシスがない■IgM型MGUSの定義血清M蛋白量<3g/dL骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%リンパ増殖性疾患に伴う貧血、全身症状、過粘稠症状、リンパ節腫脹、肝脾腫や臓器障害がない■軽鎖型MGUSの定義血清遊離軽鎖(FLC)比<0.26(λ型の場合)もしくは>1.65(κ型の場合)免疫固定法でモノクローナルな重鎖を認めない形質細胞腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)およびアミロイドーシスがない骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%尿中のM蛋白量<500mg/24時間■孤立性形質細胞腫の定義骨もしくは軟部組織に生検で確認されたクローナルな形質細胞からなる孤立性病変を認める骨髄にクローナルな形質細胞を認めない孤立性形質細胞腫以外に全身骨単純X線写真やMRI、CTで骨病変を認めないリンパ形質細胞性腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)がない■微小な骨髄浸潤を伴う孤立性形質細胞腫の定義骨もしくは軟部組織に生検で確認されたクローナルな形質細胞からなる孤立性病変を認める骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%孤立性形質細胞腫以外に全身骨単純X線写真やMRI、CTで骨病変を認めないリンパ形質細胞性腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)がない(Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療方針IMWGではCRAB症状を有するMMのほか、CRAB症状がなくてもSLiM基準を1つでも有する症例も治療の対象としている。この点について、わが国の診療指針では慎重に経過観察を行い、進行が認められる場合に治療を開始することでもよいとしている3)。MGUSやくすぶり型MMは治療対象としない。初期治療は、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(HDT/AHSCT)が実施可能かどうかで異なる治療が行われる3、4)。効果判定はIMWGの診断基準が用いられ、CR(完全奏効:免疫固定法でM蛋白陰性)達成例は予後良好であることから、深い奏効を得ることが、長期生存のサロゲートマーカーとなる5)。■ 大量化学療法併用移植適応患者年齢65歳以下で、重篤な感染症や肝・腎障害がなく、心肺機能に問題がなければHDT/AHSCTが行われる。初期治療としてボルテゾミブ(BOR、商品名:ベルケイド)やレナリドミド(LEN、同: レブラミド)などの新規薬剤を含む2剤あるいは3剤併用が推奨される3、4)(図2)。わが国では初期治療に保険適用を有する新規薬剤は現在BORとLENであり、BD(BOR、デキサメタゾン[DEX])、BCD(BOR、シクロホスファミド[CPA]、DEX)、BAD(BOR、ドキソルビシン[DXR]、DEX)、BLd(BOR、LEN、 DEX)、Ld(LEN、DEX)が行われる。画像を拡大する寛解導入後はCPA大量にG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を併用して末梢血幹細胞が採取され、メルファラン(MEL)大量(200mg/m2)後にAHSCTが行われる。BORを含む3剤併用による寛解導入後にAHSCTを行うことにより、60%以上の症例でVGPR(very good partial response)が得られる。自家移植後にも残存する腫瘍細胞を減少させる目的で、地固め・維持療法が検討されている。新規薬剤による維持療法は無増悪生存を延長させるが、サリドマイド(THAL)による末梢神経障害や薬剤耐性、レナリドミドによる二次発がんの問題が指摘されており、リスクとベネフィットを考慮して判断することが求められる3、4)。■ 大量化学療法併用移植非適応患者65歳以上の患者や65歳以下でもHDT/AHSCTの適応条件を満たさない患者が対象となる。これまでMELとプレドニゾロン(PSL)の併用(MP)が標準治療であったが、現在は新規薬剤を加えたMPT(MP、THAL)、MPB(MP、BOR)、LDが推奨されている3、4)(図3)。わが国でもLd、MPBが実施可能であり、BORの皮下投与は静脈投与と比較し、神経障害が減少するので推奨されている。画像を拡大する■ サルベージ療法初回治療終了6ヵ月以後の再発では、初回導入療法を再度試みてもよい。移植後2年以上の再発では、AHSCTも治療選択肢に上がる。6ヵ月以内の早期再発や治療中の進行や増悪、高リスク染色体異常を有する症例では、新規薬剤を含む2剤、3剤併用が推奨される3、4)。新規薬剤として、2015年にポマリドミド(同: ポマリスト)、パノビノスタット(同: ファリーダック)、2016年にカルフィルゾミブ(同: カイプロリス)が導入され、再発・難治性骨髄腫の治療戦略の幅が広まった。■ 放射線治療孤立性形質細胞腫や、溶骨性病変による骨痛に対しては、放射線照射が有効である。■ 支持療法骨痛の強い症例や骨病変の抑制にゾレドロン酸(同: ゾメタ)やデノスマブ(同: ランマーク)が推奨される。長期の使用にあたっては、顎骨壊死の発症に注意する。腎機能障害の予防には、十分量の水分を摂取させる。高カルシウム血症には生理食塩水とステロイドに加え、カルシトニン、ビスホスホネートを使用する。過粘稠度症候群に対しては、速やかに血漿交換を行う。4 今後の展望有望な新規薬剤として、第2世代のプロテアソーム阻害剤(イキサゾミブなど)のほか、抗体薬(elotuzumab、daratumumab、pembrolizumabなど)が開発中である。これらの薬剤の導入により、多くの症例で微少残存腫瘍(MRD)の陰性化が可能となり、生存期間の延長、ひいては治癒が得られることが期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本骨髄腫学会(医療従事者向けの診療、研究情報)患者会情報日本骨髄腫患者の会(患者と患者家族の会の情報)1)Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.2)Palumbo A, et al. J Clin Oncol.2015;33:2863-2869.3)日本骨髄腫学会編. 多発性骨髄腫の診療指針 第4版.文光堂;2016.4)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン.金原出版;2013.p.268-307.5)Durie BGM, et al. Leukemia.2006.20:1467-1473.公開履歴初回2013年12月17日更新2016年10月04日

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ADHD児の家庭学習パフォーマンス向上のために

 注意欠如・多動症(ADHD)児は、急性で長期的な学習障害や家庭学習の明らかな困難さを含む成績不振を示す。Brittany M Merrill氏らは、家庭学習完遂の問題に対し、行動療法や精神刺激薬による治療、それらの併用治療の効果が、長期的な学業成績を予測するかを検討した。Journal of consulting and clinical psychology誌オンライン版2016年9月12日号の報告。 ADHD児75例(年齢:5~12歳、男児率:83%、ヒスパニック、ラテン系率:83%)およびその家族は、行動療法群(家庭学習にフォーカスしたペアレントトレーニング[BPT]と日報カード[DRC]の組み合わせ)または対照群(治療待機)にランダムに割り付けられた。対象児は、夏季治療プログラムに参加し、精神刺激薬と並行したクロスオーバー試験に参加した。子供の客観的な家庭学習完遂と精度および子供の家庭学習行動に対する親の報告、子育てスキルも測定した。 主な結果は以下のとおり。・BPT+DRC療法は、家庭学習完遂と精度に大きな影響を及ぼした(Cohen's ds:1.40~2.21、ps:0.01)。・その他の治療結果では、単一薬治療、増分併用治療の利点は、有意ではなかった。・行動療法は、子供の家庭学習完遂や精度に対する問題に明確な利点を示したが、長時間作用型刺激薬は限定的で、急性影響は大部分において認められなかった。関連医療ニュース 学校でのADHD児ペアレンティング介入の実現性は 2つのADHD治療薬、安全性の違いは ADHD児への乗馬療法の可能性

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2型糖尿病患者、若いほどGERDが多い

 日本人の2型糖尿病患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)の使用に関係なく、若年が独立して胃食道逆流症(GERD)に関連する可能性が示唆された。愛媛県内の関連病院による多施設共同研究である道後Studyにおける解析を愛媛大学の池田 宜央氏らが報告した。Digestive diseases and sciences誌オンライン版2016年9月22日号に掲載。 日本人の2型糖尿病患者における年齢とGERDの関連についてのエビデンスは少ない。今回の多施設横断研究では、被験者を年齢に応じて、19歳以上56歳未満、56歳以上64歳未満、64歳以上71歳未満、71歳以上89歳未満の四分位に分割して比較した。GERDは、Carlsson-Dentの自己記入式質問票(QUEST)でスコア4以上と定義した。 主な結果は以下のとおり。・GERD有病率は31.5%であった。・若年であることは、独立してGERDの高い有病率と関連していた。GERDの調整オッズ比(95%信頼区間)は、56歳未満、56歳以上64歳未満、64歳以上71歳未満、71歳以上でそれぞれ、3.73(2.16~6.53)、1.98(1.21~3.27)、1.66(1.05~2.68)、1.00(基準)であった(傾向のp=0.001)。・PPIまたはH2RAを使用している201例において、56歳未満は独立してGERDと相関していた。調整ORは5.68(1.55~22.18)(傾向のp=0.02)であった。

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禁煙の手始めは環境を整えること

禁煙がうまくいかないときのチェックポイント確認しよう 5つの E① ENVIRONMENT(環境)環境(Environment)を整えよう 灰皿が置きっぱなし ライターがいつでも使える 手の届く所にタバコがある……これではうまくいかないのが当たり前ですまずは身の回りからタバコに関連したものを遠ざけて吸いにくい環境をつくってみましょう!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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週1回の新規GLP-1受容体作動薬、心血管リスクを低下/NEJM

 心血管リスクが高い2型糖尿病患者において、プラセボと比較しsemaglutideの投与により心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中の発生リスクが26%有意に低下し、プラセボに対するsemaglutideの非劣性が確認された。米国・Research Medical CenterのSteven P. Marso氏らが「SUSTAIN-6試験」の結果、報告した。規制ガイダンスの規定によりすべての新規糖尿病治療薬は心血管系への安全性を立証する必要があるが、約1週間という長い半減期を持つGLP-1受容体作動薬semaglutideの心血管への影響はこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2016年9月15日号掲載の報告。心血管リスクの高い2型糖尿病患者3,297例を対象、プラセボと比較 SUSTAIN-6試験は、semaglutideの心血管安全性を評価する二重盲検無作為化比較対照並行群間試験で、20ヵ国230施設にて実施された。 対象は、50歳以上で心血管疾患(CVD)の既往のある慢性心不全または慢性腎疾患(CKD)ステージ3以上、または60歳以上で1つ以上の心血管リスク因子を有する、HbA1c 7.0%以上の2型糖尿病患者3,297例で、2013年2月~12月に、semaglutide(0.5mgまたは1.0mg)週1回皮下投与を標準治療(運動・食事療法、経口血糖降下薬、心血管系治療薬)に追加する群(semaglutide 0.5mg/週群および1.0mg/週群)と、プラセボ群(プラセボ0.5mg/週群および1.0mg/週群)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。治療期間は104週間、追跡期間は5週間であった。 主要評価項目は、心血管複合イベント(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中)の初回発生で、プラセボに対するsemaglutideの非劣性マージンは、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限1.8とした。心血管複合イベントのリスクは26%、非致死的脳卒中リスクは39%、有意に低下 観察期間中央値は2.1年で、ベースライン時の、2型糖尿病平均罹患期間は13.9年、HbA1c平均値は8.7%、2,735例(83.0%)がCVDまたはCKDの既往があった。 心血管複合イベントは、semaglutide群で1,648例中108例(6.6%)、プラセボ群1,649例中146例(8.9%)に発生した(HR:0.74、95%CI:0.58~0.95、非劣性p<0.001)。非致死的心筋梗塞の発症率はそれぞれ2.9%および3.9%(HR:0.74、95%CI:0.51~1.08、p=0.12)、非致死的脳卒中は1.6%および2.7%(HR:0.61、95%CI:0.38~0.99、p=0.04)であった。また、心血管死亡率はsemaglutide群2.7%、プラセボ群2.8%であり、両群で類似していた。 新規腎症発症または悪化率はsemaglutide群で低下したが、網膜症関連合併症(硝子体出血、失明、硝子体内注射または光凝固術などの治療を要する状態)は有意に高値であった(HR:1.76、95%CI:1.11~2.78、p=0.02)。semaglutide群では有害事象による投与中止(多くは胃腸障害)が多かったが、重篤な有害事象はみられなかった。 なお著者は、研究の限界として「他の患者集団や治療期間がより長期的になった場合にも今回の結果が当てはまるかどうかは不明で、semaglutide群で確認された血糖値の低下がどの程度心血管イベントの抑制に寄与しているかも不明である」と述べている。

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下肢関節置換術、包括支払制導入でどう変わる?/JAMA

 包括支払制度(Bundled Payments for Care Improvement:BPCI)導入後最初の21ヵ月間において、下肢関節置換術に関するメディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険)の支払い額は、対照病院との比較でBPCI参加病院で低下したが、医療の質に重要な変化はなかったことが示された。BPCIとは、エピソードごとに一連の医療行為(episode of care)として提供されるすべての治療やサービスの診療報酬を一括して支払う方法で、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)の自発的イニシアチブである。下肢関節置換術は、メディケア受給者で最も一般的な手術であることから、米国・Lewin GroupのLaura A. Dummit氏らは、BPCIの導入で医療の質を低下させることなく費用を削減できるかどうかを評価し、報告した。JAMA誌2016年9月27日号(オンライン版2016年9月19日号)掲載の報告。BPCI参加病院 vs.対照病院で検討 研究グループは、ベースライン期間(2011年10月~2012年9月)と介入期間21ヵ月(2013年10月~2015年6月)における下肢関節置換術を受けたメディケア受給者のアウトカムを、BPCI参加病院176施設およびマッチングした対照病院とで比較した。 主要評価項目は、入院期間中および退院後90日間における標準化メディケア支払い額、サービス利用および医療の質(計画外の再入院率、救急部受診率、死亡率)とした。 下肢関節置換術を施行した患者数は、BPCI参加病院ではベースライン期間中は2万9,441例、介入期間中は3万1,700例(平均年齢±SD:74.1±8.89歳、女性65.2%)、対照病院ではそれぞれ2万9,440例(768施設)および3万1,696例(841施設)(74.1±8.92歳、女性64.9%)であった。メディケア支払い額は約1,166ドル減少、医療の質に差はなし 平均メディケア支払い額は、BPCI参加施設でベースライン期間3万551ドル(95%CI:3万201~3万901)から介入期間2万7,265ドル(同:2万6,838~2万7,692)へと、3,286ドル減少した。対照施設は、それぞれ3万57ドル(2万9,765~3万350)から2万7,938ドル(2万7,639~2万8,237)へと、2,119ドルの減少であった。メディケア支払い額は、主に回復期ケア施設の利用減少により、対照群よりBPCI群で約1,166ドル有意に多く減少した。  退院後30日における予定外再入院率(-0.1%、95%CI:-0.6~0.4%)、退院後90日間における予定外再入院率(-0.4%、95%CI:-1.1~0.3%)、退院後30日救急部門受診率(-0.1%、95%CI:-0.7~0.5%)、退院後90日救急部門受診率(0.2%、95%CI:-0.6~1.0%)、退院後30日死亡率(-0.1%、95%CI:-0.3~0.2%)、退院後90日死亡率(-0.0%、95%CI:-0.3~0.3%)など、診療報酬請求データを基にした医療の質の評価に、統計的な差は認められなかった。 著者は今後の課題として、他の治療や、より長期間の追跡調査で評価する必要があると指摘している。

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