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心房細動検出機能を搭載したシングルチャンバ植込みICDを販売開始:メドトロニック

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区、 代表取締役社長:島田隆)は、 2017年3月1日、 心房細動(AF)検出の診断機能を搭載したシングルチャンバの植込み型除細動器(以下ICD)「Visia AF MRI ICDシリーズ(ヴィジア エーエフ エムアールアイ アイシーディーシリーズ)」(以下「Visia AF」)の販売を開始した。 Visia AFは、 シングルチャンバのICDに心房細動検出の診断機能を搭載した製品である。 脳梗塞の主な原因の1つである心原性脳塞栓症のうち70%は心房細動が原因といわれており、 脳梗塞の発症予防は重要である。Visia AFでは、 従来のICDのシステムに心房細動検出のアルゴリズムを追加し、 従来製品からの除細動リードの構造を変更することなく長期の信頼性を維持しながら、 心房細動の把握を可能にした。 Visia AFの心房細動検出アルゴリズムは、 感度95.0%、 特異度99.6%で心房細動を検出することができると論文において報告されている。 Visia AFの特徴・T波オーバーセンシングを回避できるなど、 不適切作動防止のための独自のアルゴリズムSmartShock(スマートショック)テクノロジー2.0を搭載。不適切作動の頻度を年間2.5%まで低減し、 高い精度で致死性不整脈を検出することを可能した。 ・条件付きMRI対応テクノロジーSureScan(シュアスキャン)を採用している。 また、 MRI装置が1.5テスラおよび3テスラという条件下で、 全身のどの部位についても、 MRI撮像を可能とした。 ・体の表面と同じように曲線を描き、 植込み部の圧迫を軽減する滑らかなデバイス形状PhysioCurve(フィジオカーブ)デザイン、 高い耐久性を実現したSprint Quattro(スプリント クアトロ)ICDリード(販売名:Sprint クアトロ MRI スクリューインリード)などで低侵襲性を実現している。

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HER2陽性早期乳がんに対するトラスツズマブ投与は1年間が依然として標準である(解説:下井 辰徳 氏)-655

 トラスツズマブは、増殖因子であるHER2をターゲットとしたモノクローナル抗体薬である。早期乳がん患者全体の15~20%を占めるとされるHER2陽性乳がん患者に対しては、周術期治療にトラスツズマブを追加することで無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)ともに改善できることが、いくつものランダム化比較試験の結果で示されている。術後トラスツズマブの追加に関しては、その投与期間や投与スケジュールは試験により異なるものの、コクランにおけるメタアナリシスでは、DFS(HR:0.60、95%CI:0.50~0.71)、OS(HR:0.66、95%CI:0.57~0.77)ともに改善することが示されている1)。このように、現在の乳がん診療においてトラスツズマブは欠くことができない治療薬の1つとなっている。 術後トラスツズマブ追加について検証した試験の多くは、トラスツズマブの投与期間は1年とされていたが、むしろ至適投与期間について検討した試験は多くはない。とくに1年以上(2年間)と1年間投与とを直接比較した試験としては、本論文で報告されているHERA試験が唯一である。HERA試験はもともと、HER2陽性の早期乳がん患者で、術前または術後化学療法や必要に応じた放射線治療を終了した患者を対象として、トラスツズマブ1年間投与の経過観察に対する、トラスツズマブ2年間投与の経過観察に対する優越性をそれぞれ比較したオープンラベルの試験である。さらに、追加の解析として、ランダム化から12ヵ月時点に無再発で生存してトラスツズマブを投与されていた3,105例を対象に、以後2年投与群と1年投与群に分け、トラスツズマブ2年間投与の1年間投与に対する、無病生存期間の優越性も比較された。これまでに1年、2年、4年、8年フォローアップの報告がなされてきたが、今回がもともと予定されていた、フォローアップ中央値11年に基づく最終報告であった。 HERA試験は、2001年から2005年までの間に、5,102例(経過観察群1,698例、トラスツズマブ1年投与群1,703例、2年投与群1,701例)の患者が登録、割り付けされた。今回の最終解析の結果、DFSに関して、1年投与群、2年投与群ともに、経過観察群に比較してそれぞれ(HR:0.77、95%CI:0.69~0.87)、(HR:0.76、95%CI:0.68~0.86)と、有意に良好な結果であった。10年目時点でのDFSはトラスツズマブ投与群1年間も2年間投与もいずれも69%であり、経過観察群63%であった。同様に、OSに関しては、1年投与群、2年投与群ともに、経過観察群に比較してそれぞれ(HR:0.72、95%CI:0.62~0.83)、(HR:0.74、95%CI:0.64~0.86)と、こちらも有意に良好な結果であった。12年目時点でのOSはトラスツズマブ1年投与群79%、2年投与群80%であり、経過観察群73%であった。 過去の報告では、1年目と4年目の解析では、1年間トラスツズマブ投与の経過観察群に対するOSの優越性が示されていない結果が認められたが、今回の最終解析では、トラスツズマブ投与によるOSの優越性が示されている。ただし、死亡リスク減少の絶対リスク減は27%から21%の6%と限定的であるが、Table2をみると、トラスツズマブ追加による再発割合の低下は、主に遠隔転移再発の抑制によってなされており、これがOS改善につながっていることが推測される。また、10年間の再発はトラスツズマブ投与症例でも3割程度と、再発割合が高い。この理由として、本試験の対象患者がリンパ節転移を有する症例が7割弱と、大部分は再発リスクが高い患者を対象としており、35~59歳が8割弱を占めるなど、若年患者が対象である。 それに対して、周術期化学療法としてアンスラサイクリン系抗がん剤を受けている患者は97%に上るものの、アンスラサイクリン系とタキサン系薬剤が使用されている患者は、そのうち26%に限られているなど、現在の治療方針と若干異なる点が存在する。これが、再発割合の高さに影響していることは否めない。さらに、現在はトラスツズマブの投与に関しては、化学療法、とくにタキサンと同時投与を開始することが多い。過去のHERA試験の結果を含めた前出のコクランのメタアナリシスでも1)、トラスツズマブの追加に関しては逐次投与よりも同時投与のほうでOSの利益がより明確に示されており、同時投与が標準的な現在の診療においては、本試験結果より良い成績が期待される。 ホルモン受容体別の解析においては、Figure2で、ホルモン受容体陰性症例のほうが再発しやすく、早期に再発が多いことも示された。さらに、Figure3では、ホルモン受容体の有無によるトラスツズマブの効果は差がなく、いずれにせよ上乗せ効果は認められた。Table2では、ホルモン受容体の状況別に転移部位は示されているが、遠隔再発病変としてホルモン受容体陽性症例では骨転移が多く、陰性症例では内臓転移がより多い結果となっていた。 トラスツズマブ2年間投与の1年間投与に対するDFSとOSの解析については、ランドマーク解析が行われた。この結果、トラスツズマブ2年投与群の1年投与群に対するDFS(HR:1.02、95%CI:0.89~1.17)およびOS(HR:1.01、95%CI:0.84~1.21)の優越性はいずれも示されなかった。 この解析自体は、試験の主要評価項目や副次評価項目などとは別に予定されており、検定の多重性の問題がどのように解消されているかについては、プロトコルにも記載はされていなかった。統計学的には解析の妥当性が保証されているとして、この結果はこれまでに報告されてきたHERA試験の結果2) と変わりはなかった。さらに、PHARE試験やHORG試験の結果3)4)5)を踏まえ、6ヵ月のトラスツズマブの投与期間が1年間投与に対する非劣性を示すことができておらず、現状では術後トラスツズマブ投与期間は1年間が標準である。トラスツズマブの1年以上の継続に関しては今回の試験では否定的であったが、成績向上のための試みとして、近年、新規薬剤の追加が検証されている。APHYNITY試験ではトラスツズマブ術後併用療法に対するペルツズマブの上乗せが6)、また、ExteNET試験7) では、トラスツズマブ併用療法後のNeratinibの1年間の維持療法により浸潤性乳がんの無再発生存を改善させることが示されている。今後のHER2陽性乳がんの治療開発としては、トラスツズマブの投与期間延長よりは、新規薬剤の追加やHER2発現以外の、より有効なバイオマーカーに基づく治療開発など、precision medicineの推進が期待される。 本試験は、もともと左室駆出率55%以上の症例を対象としていた。重篤な心臓イベント(New York Heart Associationに定義される心不全ClassIII-IV、左室収縮率が50%未満へ低下し、10%以上の低下、心臓死)については経過観察群で0.1%、トラスツズマブ1年投与群で1%、トラスツズマブ2年投与群で1%と、いずれも低頻度であった。心毒性の頻度(無症状ないし軽度症状で左室駆出率がベースラインより10%以上低下、または左室駆出率50%以下となること)は経過観察群で0.9%、トラスツズマブ1年投与群で4.4%、トラスツズマブ2年投与群で7.3%と、長期間の投与でより高い頻度であった。 今回のHERA試験のように、治療終了後も長期間、定期的な心機能フォローアップがなされた試験はなかった8)。心毒性の頻度については、Figure4をみても、トラスツズマブ投与期間が終了までで心臓に関連したイベントはほぼプラトーに達している。過去のトラスツズマブの術後治療の試験をみても、心機能低下の出現時期は投与期間中がほとんどであるとされている9)。今回の結果はより詳細な心機能フォローアップの結果、これまでの知見が再現されていた。実臨床での心機能フォローアップをいつまで行うのかに関しては、さらなるデータの集積を待ちたいと思う。 以上より、今回のHERA試験の結果により、術後トラスツズマブ療法は1年が最適であり、長期間フォローアップにおいても、心毒性を含めた追加の有害事象の懸念がないことが示された。参考文献1)Moja L, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Apr 18:CD006243.2)Goldhirsch A, et al. Lancet. 2013;382:1021-1028.3)Pivot X, et al. Lancet Oncol. 2013;14:741-748. 4)Pivot X, et al. Eur J Cancer. 2015;51:1660-1666.5)Mavroudis D, et al. Ann Oncol. 2015;26:1333-1340.6)F. Hoffmann-La Roche, Ltd.:メディアリリース(英語)7)Chan A, et al. Lancet Oncol. 2016;17:367-377. 8)de Azambuja E, et al. J Clin Oncol. 2014;32:2159-2165.9)Pondé NF, et al. ESMO Open. 2016;1:e000073.

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患者の性格と認知症タイプでBPSDを予測可能:旭川医大

 レビー小体型認知症(DLB)とアルツハイマー型認知症(AD)における患者の発症前の性格特性とBPSD(behavioral and psychological symptoms in dementia:認知症の行動・心理症状)との関連について、旭川医科大学の田端 一基氏らが検討を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2017年2月8日号の報告。 対象は、DLB患者41例、AD患者98例。対象患者のBPSD評価には、NPI(Neuropsychiatric Inventory)を用いた。各患者の中年期の性格特性は、NEO-FFI(NEO Five-Factor Inventory)を用いて、患者家族より評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・DLB患者の重回帰分析において、NPI総スコアおよび不安と病前の開放性、妄想と病前の協調性、興奮と病前の勤勉性が有意に関連していた。・AD患者のうつ症状と病前の情緒不安定性、興奮、無関心、過敏性と病前の協調性が有意に関連していた。 著者らは「病前性格は、DLBおよびADにおいて、BPSDに異なった影響を及ぼしていることが示された。BPSDに対する病前性格の影響差を考慮すると、これら症状を軽減するための介入を開発するには、さらなる研究が必要である」としている。関連医療ニュース 認知症者のせん妄、BPSDにより複雑化 たった2つの質問で認知症ルールアウトが可能 統合失調症患者の性格で予後を予測

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白斑と甲状腺がんは有意に関連:韓国の住民ベース研究

 白斑は、自己免疫性甲状腺疾患および甲状腺がんと有意に関連していることが、韓国・カトリック大学校のJung Min Bae氏らによる、国民健康保険支払データベースを用いた調査研究の結果、報告された。これまでにも繰り返し白斑と甲状腺疾患の関連については報告があるが、今回研究グループは、全国的な住民ベース研究にて両者の関連について調査を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年2月23日号掲載の報告。 調査はデータベースにおいて2009~13年に、主病名診断が白斑で4人以上の医師の受診記録がある患者を白斑患者と定義し、年齢および性別で適合した非白斑患者を対照患者(白斑患者1例に対し対照2例)として、バセドウ病と橋本病の併発(対象患者は至適薬物による治療中)、甲状腺がんについて評価した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、白斑患者7万3,336例、対照患者14万6,672例が登録された。・白斑患者は対照患者と比較して、バセドウ病(オッズ比[OR]:2.610、95%信頼区間[CI]:2.319~2.938)、橋本病(OR:1.609、95%CI:1.437~1.802)、甲状腺がん(OR:1.127、95%CI:1.022~1.242)のいずれの評価項目についてもリスク増加が認められた。・関連性は、男性、若年患者で、一貫してより強かった。・今回の研究では個々の患者の臨床的情報を入手しておらず、また均一性集団という点で、結果の一般化可能性は限定的なものである。

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RAS阻害薬によるクレアチニン値増加、30%未満でもリスク/BMJ

 RAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)服用開始後のクレアチニン値の上昇は、ガイドラインで閾値とされる増大幅が30%未満であっても、末期腎不全や心筋梗塞などの心・腎臓有害イベントや死亡リスクが漸増する関連があることが明らかにされた。クレアチニン値10%未満との比較で、10~19%の増加で死亡リスクは約1.2倍に、20~29%の増加で約1.4倍に増大することが示されたという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学校のMorten Schmidt氏らが、RAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB)の服用を開始した12万例超について行ったコホート試験の結果、明らかにした。BMJ誌2017年3月9日号掲載の報告。RAS阻害薬と末期腎不全、心筋梗塞、心不全、死亡との関連を検証 研究グループは1997~2014年の、英国プライマリケア医の電子診療録を含むデータベース「Clinical Practice Research Datalink」(CPRD)と病院エピソード統計「Hospital Episode Statistics」(HES)を基に、RAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の服用を開始した12万2,363例を対象に、ACE・ARB開始後のクレアチニン値上昇と、心・腎臓アウトカムとの関連を調べた。 ポアソン回帰分析法を用いて、クレアチニン値30%以上の増加や10%増加ごとと、末期腎不全、心筋梗塞、心不全、死亡との関連についてそれぞれ検証した。解析では、年齢、性別、歴期間、社会経済状況、生活習慣、CKD、糖尿病、心血管の併存疾患、その他の降圧薬、NSAIDsの使用で補正を行った。RAS阻害薬服用後のクレアチニン値増加に伴い心・腎イベントリスクも段階的に増加 RAS阻害薬服用後にクレアチニン値が30%以上増加したのは、被験者の1.7%にあたる2,078例だった。クレアチニン値の30%以上の増加は、評価項目としたすべての心・腎イベントの発症と関連が認められた。 クレアチニン値の増加30%未満での発生と比較した補正後罹患率比は、末期腎不全については3.43(95%信頼区間[CI]:2.40~4.91)、心筋梗塞は1.46(同:1.16~1.84)、心不全は1.37(1.14~1.65)、死亡は1.84(1.65~2.05)だった。 クレアチニン値の増加幅に応じた心・腎アウトカムについて調べたところ、10%未満、10~19%、20~29%、30~39%、40%以上と段階的にすべての評価アウトカムについてリスクが増加する傾向が認められた(いずれも傾向のp<0.001)。 死亡に関する補正後罹患率比は、クレアチニン値10%未満の増加との比較で、10~19%の増加で1.15(1.09~1.22)、20~29%の増加で1.35(1.23~1.49)だった。 これらの結果は、歴期間、サブグループ、服用継続の有無などで検討した場合も一貫して認められた。

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試験登録されたRCTはポジティブな結果となるのか?/BMJ

 無作為化比較試験の臨床試験レジストリへの登録の有無と、試験結果が肯定的であるかどうかについては、ほとんど関連がないとの研究結果が示された。登録時期の違いでみた場合も関連は認められないという。また、試験の資金提供が企業か非企業かの違いによる推定相対リスクは不明確であった。英国・オックスフォード大学のAyodele Odutayo氏らが、約600件の無作為化比較試験について調査した結果で、BMJ誌2017年3月14日号で発表した。593例のレジストリ登録無作為化試験について調査 検討は、2012年12月までに発表され、2013年11月までにPubMedに索引付けされた主要無作為化比較試験を対象に行われた。 試験の臨床試験レジストリへの登録と、肯定的な試験結果との関連について、横断研究にて検証した。試験レジストリは、発表論文ベースで登録番号を確認、または試験登録検索で識別して確認。番号が明記されていない場合でも、世界保健機関臨床試験レジストリ(WHO ICTRP)や、欧州連合(EU)臨床試験レジスター、clinicaltrials.govなどで検索を行い、登録有無について確認した。登録については事前、事後で分けての検討も行った。 適格であった無作為化試験は1,122例で、そのうち登録試験は593例(52.9%)、非登録試験は529例(47.1%)であった。事前・事後登録で層別化後も、試験結果と登録有無の関連見られず 全体的に、試験登録と肯定的な試験結果の関連は、統計的に有意だがわずかであった(補正後リスク比:0.87、95%信頼区間[CI]:0.78~0.98)。試験実施以前または以後の登録で層別化した場合にも有意差はみられなかった(それぞれ、補正後リスク比:0.87[0.74~1.03]、0.88[0.78~1.00])。 全体的に試験登録と資金源の相互作用は、わずかであるが統計的に有意であることが認められた(相互作用のp=0.046)。資金源が非企業の試験についてみると、登録された試験は非登録試験に比べ、試験結果が肯定的である傾向は低かった(補正後リスク比:0.75、同:0.63〜0.89)。一方で、資金源が企業の試験で、登録試験と肯定的試験結果との関連は認められず(1.03、0.79~1.36)、推定相対リスクは不明確であった。

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循環器内科 米国臨床留学記 第19回

第19回 点滴に1日数百万円!? 拝金主義にまつわるアメリカのダークサイド先日、1本の電話が薬剤部からかかってきました。「この薬は一晩で数百万以上かかるのですぐにやめてほしい」。日本でもよく使用している薬だったので、まさに寝耳に水でした。その薬とは、イソプロテレノールという点滴です。日本ではプロタノールとして販売されています。事の成り行きはこうです。心拍数30前後の洞不全症候群の患者が入院してきました。心拍数が継続的に30以下になり、めまいを訴えたため、日本でもよく使用していたイソプロテレノールの点滴静脈注射を開始しました。患者の心拍は上昇し、朝まで問題なく経過したのですが、翌日の昼になり薬剤部から上記の苦情が入り、ドパミンに切り替えました。なぜ、そんな値段になるのか半信半疑で計算してみました。イソプロテレノールを、体重50Kgの患者に対し0.2μg/kg/min(最大投与速度)で1日使用したとすると、1時間当たり0.6mg必要となり、0.2mg入りのバイアルが3A必要となります。日本では、1バイアル226円ですから、時間当たり678円となります。これを一晩12時間使用しても8,136円です。ところがアメリカでは、0.2mg/mLの1mLの価格が1,766ドル(20万円!!)で、日本の約1,000倍近い値段です(「UpToDate」記載の価格による)。したがって、12時間使用すると確かに6万3,576ドル (724万円)となります。薬剤部と製薬会社との交渉で多少ディスカウントがあるようですが、それでも数百万はかかります。数年前までは1A当たり 44.5ドルで、現在の日本の価格の4倍程度でした。ところが、Marathon Pharmaceuticals社が権利を買収し、218.3ドルまで値段を釣り上げます。さらに、この会社はValeant Pharmaceuticals社に買収されます。この会社はなんと1A当たりの値段を1,200ドルまで値上げします。つまり、たった数年の間に30倍にまで値段が上昇したわけです。実は、このことは米国不整脈学会(HRS)でも問題視されています。HRSはロビー活動を行い、製薬会社に対し、必要な薬を常識的な価格で供給するよう働きかけています。ご存じかも知れませんが、このようなことは、他の薬でも起きています。少し前の話になりますが、コルヒチンもその一つです。古代ギリシャ時代から3,000年以上も使用されているコルヒチンですが、1ドル10セント程度だったのが、突然5ドルに値段が引き上げられました(詳細は、Aaron Kesselheim医師によるNew England Journal of Medicineの論文をご参照ください)。日本でもニュースになっていましたが、マラリアやトキソプラズマ症などの寄生虫感染症治療薬であるダラプリム(商品名:ピリメタミン)もその一つです。Turing Pharmaceuticalsという2015年に新しく作られた製薬会社は、ダラプリムの権利を買い占めます。その後、1錠当たり13.5ドルだったダラプリムは、一晩で750ドル、50倍以上に釣り上げられました。Martin ShkreliというCEOは批判を浴びますが、「Aston Martinを自転車の値段で売っている会社があれば、その会社を買収し、Toyotaの値段をつける。これが罪になるとは思えない」と主張しています。彼は投資家であり、最初からこのスキームで売り上げを上げるために会社を買収しているわけですから、悪いとも思っていないでしょう。消費者から反感を買ったMartin Shkreliは、結局、証券取引にまつわる詐欺容疑で逮捕され、CEOを辞めることになりました。Turing社も一度は値下げをすると発表しましたが、いまだに1錠750ドルのままです。日本と違い、米国では製薬会社が薬剤の値段を自由に決められます。複数の製薬会社が同じ薬剤を製造しているのなら、競争原理が働くため問題はありませんが、これらの会社はそういった複数の会社を買収することで、その薬の販売権利を独占します。そのようなCEOや会社は、いかにお金を稼ぐかしか考えていませんから、患者や国にどのような負担が増えるかは気にしていません。悲しいことですが、これが米国の拝金主義の現実です。医師としては、使用する前に薬の値段をチェックすればよかったと反省しています。拝金主義者の常識はずれな値段決定と比べると、厚生労働省が価格を決定する日本のような価格統制のほうが好ましいように感じます。【訂正のお知らせ】本文内に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2017年5月23日)。

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うつ病スクリーニングがたった2つの質問で可能

 高齢者に対するうつ病のスクリーニングは推奨されている。中国・香港中文大学のKelvin K F Tsoi氏らは、高齢者における2項目スクリーン(Two-Question Screen)の診断精度を評価し、ほかのうつ病スクリーニング法と比較した。2項目スクリーンの質問項目は、「過去1ヵ月間で、気持ちが落ち込んだり、憂鬱な気分、絶望的な気分になりましたか」および「過去1ヵ月間で、しばしば小さなことに悩まされたり、何をしても楽しくないと感じますか」である。The British journal of psychiatry誌オンライン版2017年2月16日号の報告。うつ病スクリーニングにおいて、2項目スクリーンが診断精度良好 高齢者における、うつ病スクリーニング法の診断精度を評価した研究の、文献検索を行った。主要アウトカムは、感受性と特異性を含む総合的な診断精度とした。潜在的なバイアスリスクと研究の質についても評価した。 うつ病スクリーニング法の診断精度評価の主な結果は以下のとおり。・133件の研究において、4万6,651例が16種類のスクリーニング法により評価されていた。・大部分の研究(64/133件)において、さまざまなバージョンの老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale:GDS)が使用されており、2項目スクリーンは6件で使用されていた。・2項目スクリーンの総合感受性と特異性は、91.8%(95%CI:85.2~95.6)と67.7%(95%CI:58.1~76.0)であった。また、診断精度のAUCは90%であった。・2項目スクリーンは、臨床医評価尺度を含むほかの尺度と同等の精度を示した。・1項目スクリーンは、AUCが78%であり、診断精度が最も低かった。・サブグループ解析においても、うつ病のスクリーニングにおいて、2項目スクリーンの良好な診断精度が示された。 著者らは「2項目スクリーンは、うつ病スクリーニングのためのシンプルかつ簡便な診断法である。その診断精度は、ほかの診断法と同等であり、高齢者のスクリーニングプログラムに使用することが好ましい」としている。

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エボロクマブFOURIER試験、心血管アウトカム2年で有意に改善

 エボロクマブ(商品名:レパーサ)の心血管イベントの大規模研究であるFOURIER試験の結果が、米国心臓病学会(ACC.17)のLate Breaking Clinical Trialセッションで発表された。PCSK9阻害薬の追加による、主要心血管有害事象(MACE)の抑制を初めて示したこの結果は、同時にNew England Journal of Medicineにも掲載された。実臨床を反映し、高リスク患者を対象にした2万7千例の試験 FOURIERは、エボロクマブの効果と安全性を評価した無作為化プラセボ対照二重盲検第III相試験。対象は、アテローム性心血管病変を有し、LDL70mg/dL以上でスタチン治療を受けている患者2万7,564例。81.1%に心筋梗塞、19.4%に非出血性脳卒中、13.2%に症候性の末梢動脈病変の既往があり、69.3%は高強度のスタチン療法を受けているなど高リスク集団である。患者は無作為にエボロクマブ(140mg/2週間または420mg/月 )+最適スタチン群(1万3,784例)と、プラセボ+最適スタチン群(1万3,780例)の2群に無作為に割り付けられた。この研究はイベント・ドリブン型であり、主要副次的評価項目のイベント想定数1,630例を超えた時点で解析され、試験期間の中央値は2.2年である。評価委員会はTIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)試験グループで、データは試験スポンサーとは独立して解析された。2.2年で20%のMACEリスク低減 LDL-C中央値は、エボロクマブ群でベースラインの92mg/dLから48週目に30mg/dLまで低下し、その効果は試験期間を通して持続した。この2.2年の試験期間において、主要複合評価項目である心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈再建術のイベント発生は、エボロクマブ群9.8%、プラセボ群11.3%と、エボロクマブで15%有意に減少した(HR:0.85、95%CI:0.79~0.92、p<0.001)。また、一般的なMACEの指標で、試験の主要副次的複合評価項目である、心臓血管死、心筋梗塞または脳卒中の発症は、エボロクマブ群5.9%、プラセボ群7.4%と、エボロクマブ群で20%有意に減少した(HR:0.80、95% CI:0.73~0.88、p<0.001)。単独の評価項目でも確認されたリスク抑制 イベント抑制は個別の評価項目でも確認され、心筋梗塞では27%(p<0.001)、脳卒中では21%(p=0.01)、冠動脈血行再建については22%(p<0.001)、エボロクマブ群で有意な相対リスク減少がみられた。また、日本人患者429例を含む、Asia/Pacificサブグループでもイベント抑制が確認されており、主要評価項目は27%、副次的評価項目は33%、エボロクマブ群で相対リスク減少がみられた。また、このリスク低下は時間と共に増加し、Amgen社の発表によれば、致命的・非致死的心筋梗塞または脳卒中の相対リスク減少は1年目の19%(p=0.003)から1年目以降は33%(p<0.00001)に増加していた。 試験を主導したTIMI試験グループのChairで論文筆頭著者のMarc S. Sabatine氏(ブリガム&ウィメンズ病院)は、ACCのインタビューで「この結果は、イベントリスクが高いアテローム性動脈硬化症患者にとっては非常に良いニュースであり、患者がLDL-Cを現在の目標値以上に低下させることで、より利益を得ることを強く示唆している」と述べている。(ケアネット 細田 雅之)参考ACC News StorySabatine MS, et al. N Engl J Med. 2017 Mar 17. [Epub ahead of print]Amgen社(米国):ニュースリリースFOURIER試験(Clinical Trials.gov)

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膠芽腫〔GBM: glioblastoma multiforme〕

1 疾患概要 ■ 概念・定義 膠芽腫(glioblastoma multiforme: GBM)は、悪性脳腫瘍の中で最も頻度が高く、かつ生物学的にもっとも未分化な予後不良の悪性新生物(brain cancer)である。高齢者の大脳半球、ことに前頭葉と側頭葉に好発し、浸潤性増殖を特徴とする。 病理学的に腫瘍細胞は異型性が強く、未分化細胞、類円形細胞、紡錘形細胞、多角細胞および多核巨細胞より構成され、壊死を取り囲む偽柵状配列を特徴とする(pseudopalisading necrosis)。 WHO grade IVに分類され5年生存率は10%、平均余命は15ヵ月。分子生物学的特徴から2型に分類される。イソクエン酸脱水素酵素(IDH1: isocitrate dehydrogenase 1)遺伝子のコドン132のアルギニン(R)がヒスチジン(H)に点変異を有することにより、分化度の高いWHO grade II、IIIの星細胞腫から悪性転換(malignant transformation)した続発性膠芽腫(secondary GBM)とIDH1の変異を伴わない原発性膠芽腫(primary GBM)とに区別される。両者ともGBMとしての予後に差異はなく、半年から1年程度である(表)。 前者では、TP53 mutation(>65%)、ATRX mutation(>65%)に続いてLOH 19q(50%)、LOH 10q(>60%)、TERT mutation(30%)が引き起こされる。一方、後者の遺伝子異常とその頻度はTERT mutation(70%)、EGFR amplification(35%)、TP53 mutation(30%)、PTEN mutation(25%)、LOH 10p(50%)、LOH 10q(70%)である。 画像を拡大する Grade Iは、小児に多い分化型腫瘍で予後が良い(10年生存は80%以上)。 Grade II、IIIは、1年から数年でGrade IVに悪性転換する。これとは別に、初発から神経膠芽腫として発症するタイプがある。いずれの神経膠芽腫も予後はきわめて悪い(5年生存率10%)。 BRAF: B-Raf proto-oncogene、serine/threonine kinaseでRAS/RAF/MEK/MAPKシグナル伝達の主要な役割を担う。 TP53: p53をコードする遺伝子 G-CIMP: CpG island methylation phenotype DNA修復酵素MGMTのプロモーター領域のメチル化を示す表現型。この表現型ではMGMTの蛋白発現は抑制されるため、予後良好のマーカーとなる。GBM患者でCIMP+は若年者、腫瘍の遺伝子表現型がproneural typeに多く全生存期間の延長に寄与する。 ATRX: alpha-thalassemia/mental retardation syndrome x-linked geneで、この遺伝子の変異は、テロメアの機能異常からテロメアの伸長(alternative lengthening of telomeres: ATL)を来す。 なお、遺伝子表現型とグリオーマ予後との関連は、次の文献を参考にした。Siegal T. J Clin Neurosci. 2015;22:437-444. 欧州で施行された臨床試験においてテモゾロミド(TMZ[商品名:テモダール])併用群(2年生存率26.5%、平均全生存期間14.6ヵ月)が、放射線治療(RT)単独治療群(2年生存率10.4%、平均全生存期間12.1ヵ月)に比して、有意差をもって生存期間の延長が認められ、TMZ + RTがGBMの標準治療とされている。 GBMは、このように予後不良で“がんの中のがん”といい得るため、創薬の対象となり、さまざまな臨床試験や新規治療薬が開発されている。GBMの根本治療の創出が今後の大きな課題である。 ■ 疫学 国内における原発性脳腫瘍患者(年間2万人、人口10万人につき14人)のうち、GBMは2,220人で、悪性脳腫瘍の中で最も多く、11.1%を占める。 大脳半球白質に好発し(前頭葉35%、側頭葉25%、頭頂葉18%、後頭葉6%)、時に脳梁を介して対側半球へ浸潤する。平均発症年齢は60歳、45~75歳の中高年に多く、 原発性膠芽腫が9割を占め、その平均発症年齢は62歳、続発性膠芽腫は平均45歳と若い。男性が女性の1.4倍多く、小児ではまれであり、成人と異なり脳幹部、視床、基底核部に好発する。 ■ 病因 発生起源細胞の同定および腫瘍形成の分子機構は解明されていない。 BaileyとCushing(1926年)は、組織発生を念頭に起源細胞に基づいた組織分類を提唱し、脳腫瘍を16型に分類し、glioblastomaの起源細胞をbipolar spongioblast(双極性突起を持つ紡錘型細胞)とした。 WHO脳腫瘍分類に貢献した群馬大学の石田陽一は、膠芽腫を星細胞腫とともに星形グリアの腫瘍と定義した1)。石田の正常な星形グリアとグリオーマの電顕像での詳細な観察によると、 血管壁まで伸び足板を壁におく太い細胞突起には、8~9nmの中間径フィラメントと少量の20~25nmの微小管とグリコーゲン顆粒を有する星形グリアとしての形質が、分化型の星細胞種でよく保たれており、膠芽腫でも保持されていることから、グリオーマを腫瘍性グリアと考察した。さらに星芽細胞腫(astroblastoma)は、腫瘍細胞が血管を取り囲んで放射冠状に配列されていることから、血管足が強調された腫瘍型とした。このように多くの病理学者が、星細胞腫をアストロサイトの脱分化した腫瘍と定義している。 発生学的には、げっ歯類の観察から、成体脳においても脳室周囲の脳室下帯(SVZ)や海馬歯状回(DG)において、neural stem cell/glial progenitorの活発な嗅球や顆粒細胞層へのmigrationが確認されていた。James E Goldmanらは、グリオーマ細胞の特性である高い遊走能は、neural stem cell/glial progenitorの特性を反映していると推察している2)。Fred H Gageらは、ブロモデオキシウリジンをヒトに投与することで、高齢者においてもSVZとDGではDNA合成するNeuN陽性細胞を同定し、neural stem cell/neural progenitorの存在を確認したと報告した3)。Sanai Nらは、ヒトSVZ生検材料を用いた培養系の研究から、脳室壁ependyma直下のastrocyteが、neural progenitorであると判定した4)。状況証拠的には、 現時点で直接証明はなされていないがneural stem cell/glial progenitorが、グリオーマ細胞の起源細胞の有力な候補であると思われる。さらに原発性GBMと続発性GBMでは、前述したように遺伝子異常のパターンが異なるため、起源細胞が異なる可能性も示唆される5、6)。 以上のほか、歴史的にグリオーマの病因としては、グリア(アストロサイト)の脱分化とする考えと、前駆細胞のmaturation arrestとする説がある。 近年、携帯電話の普及に伴い、公衆衛生学的観点からは、ラジオ波電磁界の発がん性の懸念が提起されている。山口によると7)、携帯電話と神経膠腫に関する疫学調査では、デンマークの前向きコホート調査が実施されたが、10年以上の長期契約者でもリスクの上昇を認めなかった。スウェーデンにおける症例対照研究では、10年を超えて携帯電話端末を使用した群では、非使用群と比較して2.6倍のリスクが指摘された。日本も参加した国際共同研究「INTERPHONE研究」では、累積使用時間が1,640時間以上でオッズ比1.4倍と、有意な上昇を示した。 以上から、携帯電話は人にがんを生じさせる可能性があると判定されている。 ■ 症状 腫瘍塊周囲に脳浮腫を伴いながら急速に浸潤性に増殖するため、早ければ週単位で、少なくとも月単位で症状が進行する。初発症状としては頭痛(31%)が最も多く、次いで痙攣(18%)、性格変化(16%)や運動麻痺(13%)などの巣症状が多い。 症状は、腫瘍の発生した場所の脳機能の障害を反映するのが基本である。また、病変が進行し、広範に浸潤すると症状は顕著となる。たとえば両側前頭葉に浸潤する症例では、性格変化、意欲低下、尿失禁、下肢の麻痺が出現する。一側では、初期には徴候は目立たず、徐々に腫瘍塊を形成し、脳浮腫が顕著になると具現化する。側頭葉腫瘍では、優位半球の病変では失名詞などの失語症状や4分の1半盲などが出現しやすい。また、視野症状に、患者自身が気付いていないことが多い。 前述したように、腫瘍局在に応じた神経学的局在症状の出現が基本であるが、たとえば前頭葉に局在する腫瘍でも神経回路網(frontal-parietal networks)を介して、頭頂葉の症候が認められることがあるので注意しなければならない。 具体例として、右側前頭葉病変ではいつも通りに職場へ通勤できなくなるなどの空間認知能の低下や、左側前頭葉腫瘍では失書・失算や左右失認など優位半球頭頂葉症状としてのゲルストマン症状が認められるなどの例が挙げられる。このような症例では、画像検査で大脳白質を介する脳浮腫が顕著である場合が多い。 小児や若年者では、ひとたび頭痛や吐気などの頭蓋内圧亢進症状が出現すると、急速に脳ヘルニアへと進行し、致命的な事態になるので、時期を逸せず迅速に対応することが重要となる。時として脳腫瘍患者は、内科・小児科、精神科において感冒、インフルエンザ、下痢・嘔吐症、認知症、精神疾患として誤診されている場合もある。たまたま下痢・嘔吐症が、流行する時期に一致すると、症状のみの診断では見逃される可能性が高くなりやすい。 そのため、器質的疾患が強く疑わしい症例に限定して画像検査(MRI)を施行するのではなく、症状が軽快せず、進行・悪化している場合には、致命的な見逃しをなくすため、また、器質的な疾患をスクリーニングするためにも、脳画像検査を診療の早期に取り入れる視点が大切であろう。これによりカタストロフィックな見逃しは回避でき、患者の生命および機能予後の改善につなげることができるからである。強く疑わしい症例でなくとも、鑑別診断をするために、脳神経外科を紹介しておく心がけも重要である。 ■ 予後 標準治療、すなわち外科的な切除後にTMZを内服併用した放射線化学療法施行患者の全生存期間(OS)は、15ヵ月程度である。IDH1野生型で9.9ヵ月、IDH1変異型で24.0ヵ月である。ヒト化モノクロナール抗体のベバシズマブ(商品名: アバスチン)やインターフェロンの併用は、OSには寄与しない。組織学的にglioblastoma with oligodendroglioma component、giant cell GBM、 cystic GBMは悪性だが、古典的なGBMよりやや予後が良い傾向にある。分子基盤に基づいてMGMT非メチル化症例やIDH1野生型の予後不良例では、TMZに反応を示さない場合が多く、今後免疫療法や免疫チェックポイント阻害剤の応用が取り入れられるであろう。これらの治療には、腫瘍ペプチドワクチン療法WT1やさらに百日咳菌体をアジュバントしたWT1-W10、抗PD-1 (Programmed cell deah-1) 抗体療法などT細胞の免疫応答にかけられたブレーキを解除することでT細胞の活性化状態を維持し、がん細胞を細胞死に追いやる試みである。 同じくT細胞の表面に発現する抑制性因子CTLA (Cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4 ) に対する抗体の併用も期待されている。 2 診断 (検査・鑑別診断も含む) ■ 検査 造影MRI、 脳血管撮影、 MRS、 PET(methionine、FDG)などの検査と合わせ、総合的に判断する。 ■ 鑑別診断 造影MRIや造影CTでは、不規則なリング状の造影効果を示す。GBM、転移性脳腫瘍、脳膿瘍との鑑別が必要である。GBMでは、造影部分は壊死を取り囲む血管新生を反映するので、より不規則なリング状になる。それに比べ脳膿瘍のリングは、円形でよりスムースである。転移性脳腫瘍は、GBMと脳膿瘍の中間を取るので目安になるが、さらに拡散強調MRIやMRスペクトルスコピーなど多種類の検査で、総合的に判断することが重要である。 術中迅速診断では、壊死を取り囲む偽柵状配列が明らかでないとHGG(high grade glioma)と診断されるので、確定診断は永久標本によることになる。摘出腔内にカルムスチン(脳内留置用徐放性製剤: BCNUウェハー[商品名: ギリアデル])の使用を予定するときは、時に悪性リンパ腫との鑑別が問題となる。 悪性リンパ腫では、血管中心性の腫瘍細胞の集簇に注目して診断するが、LCA、GFAP、MIB-1など免疫組織学的検査では、迅速標本の作成が必要となる症例もある。 転移性脳腫瘍との組織上の鑑別は容易であるが、きわめてまれにadenoid glioblastomaの症例で腺腔形成や扁平上皮性分化を示すので、注意が必要である。 3 治療 (治験中・研究中のものも含む) ■ 基本治療 腫瘍容量の減圧と確定診断を目的に、まず外科治療を行う。近年、ナビゲーションと術中MRIを用いた画像誘導による外科手術が、一般的となってきている。グリオーマの外科手術の目標は、機能を損なうことなく最大限の摘出をすることにある。 MRI Gd(Gadolinium)-DTPAにて造影された腫瘍塊が、全部摘出された症例の予後では期待でき、腫瘍摘出度が高いほど予後の改善に結び付くと、複数の報告がなされている。 次いで確定診断後には、TMZ併用の化学放射線療法が標準治療である。放射線療法は、拡大局所にtotal 60Gy(2Gy×30 fractions)を週5回、6週間かけて行うのが標準である。 最近は、周囲脳の保護を目的に強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)を行うことが多い。 初期治療終了後には、TMZの内服を月5日間行う。再発時にはインターフェロンβの併用や、血管内皮増殖因子に対するベバシズマブの併用などが行われている。 ■ その他の治療 手術前日にタラポルフィンナトリウム(商品名: レザフィリン)を投与し、病巣部位に集積させ、手術により最大限の摘出後にレーザー光を照射する摘出断端の浸潤部位に対する光線力学的療法やカルムスチンの摘出腔留置などがある。 4 今後の展望 陽子線、炭素線やホウ素中性子補足療法などの、新しい線源を用いた悪性脳腫瘍への応用やウイルス療法、脳内標的部位への薬剤分布を高める技術として開発されたconvection-enhanced delivery(CED)、免疫療法などがある。 免疫療法には、がん免疫に抑制性に働くものに対する解除を目的とする、T細胞活性化抑制抗原に対する抗PD-1抗体による治療やがん遺伝子WT1(Wilms tumor 1)を抗原標的として、自己のTリンパ球にがん細胞を攻撃させるWT1ペプチドワクチン療法がある。後者は、脳腫瘍の最新治療法として安全性や有効性が確立されつつあり、ランダム化比較試験の結果が期待される。 5 主たる診療科 脳神経外科 ※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。 6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など) 診療、研究に関する情報 国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報) 一般社団法人 日本脳神経外科学会、日本脳神経外科コングレス 脳神経外科疾患情報ページ (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報) 1)石田陽一. 北関東医. 1990;40:355-361.2)Cayre M, et al. Prog Neurobiol. 2009;88:41-63.3)Eriksson PS,et al. Nat Med. 1998;4:1313-1317.4)Sanai N, et al. Nature. 2004;427:740-744.5)Louis DN, et al. WHO Classification of Tumours of the Central Nervous System. Revised 4th Edition.Lyon;IARC Press:2016.pp52-56.6)Louis DN, et al. Acta Neuropathol. 2016;131:803-820.7)Yamaguchi N. Clin Neurosci. 2013;31:1145-1146.公開履歴初回2015年02月27日更新2017年03月21日

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突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード集 第2回

第2回 外国人患者の本人確認は保険証では不十分?提出を拒まれたら?<Case2>ある日、肌の色や体形、服装などから、インド系の方と見受けられる患者さんが都内の医療機関へ来院。患者さんは流暢な日本語を話し、コミュニケーションに困ることはありませんでした。ところが、院内の外国人患者受付ルールに従い在留カード※の提示を求めたところ、「私は日本人です。在留カードは持っていません」の一点張りで、受付ができず…。※在留カード:適法な在留資格を有し、在留期間が3ヵ月を超える中長期滞在者に対して交付される証明書(入国管理局)対談相手NTT東日本関東病院 医療連携室 外国人向け医療コーディネーター 海老原 功氏澤田:今回は、院内で最初に患者さんの対応をする受付でのエピソードです。海老原さんの病院にも、さまざまな国籍の患者さんが来院されますよね? 受付での本人確認ルールは、どのように整備されていますか?海老原:当院では、受付における本人確認の方法を段階的に定めています。まず提示をお願いするのは、在留カード※です。外国人旅行者など、在留カードをお持ちでない場合は、写真付きの身分証明書であるパスポートの提示をお願いします。それ以外のケースとしては、外交・公用を目的とした在住と駐留米軍の在住がありますが、それぞれお持ちの公的な身分証明書(IDカード)がありますので、その提示をお願いしています。澤田:今回のケースでも、在留カードがないということで、写真付きの身分証明書の提示を何とかお願いしたそうです。その結果、最終的に患者さんのバッグから出てきたのは見慣れた赤いパスポート…なんと帰化された正真正銘の日本人の患者さんだった、ということです。見かけだけで判断せず、患者さんの話を丁寧に聞く必要もありますね。ところで、日本在住の外国人の方でしたら保険証を持っていることもありますよね。保険証を確認するだけでは、本人確認にはならないのでしょうか。海老原:はい。保険証のみでは本人確認には不十分と考えます。澤田:受付でそこまで厳密に本人確認をすることが重要である理由は何でしょうか。海老原:本人確認の一番の目的は医療事故を防ぐことです。とくに最近は、他人の保険証を利用する“なりすまし”のケースも出てきているため、万が一、当院に来院歴がある患者さんの保険証が使い回された場合、なりすまし患者と、病院に登録されている保険証の持ち主の血液型やアレルギーなどに関する情報に相違がありますので、それにより問題が発生するリスクがあります。また、患者さんの名前や住所が一致していないと、帰宅後に何か問題が発覚した際、迅速に対処することができません。澤田:なるほど。本人確認書類を提示してもらった後の流れは、どのようになりますか。海老原:患者さんから許可をいただいたうえでコピーを取り、在留カードの場合は入国管理局のシステムを利用して照会し、有効であるかを確認します。それにより、不法滞在であることが発覚する場合もありますね。澤田:不法滞在者の場合は、どのような対処をされているのでしょうか?海老原:患者さんの状態をみて、緊急性が高いと判断した場合は、医療優先で対応をします。緊急性がない場合には、有効な身分証明書がない限り当院では診察出来ないことを伝え、しかるべき手続きをしたうえで、再来院するようお願いしています。 澤田:本人確認の方法も、患者さんの状況や状態に合わせて行われるのですね。海老原:はい。患者さんが適切な医療を受けられるようにすることが目的ですので、患者さんに寄り添えるだけ寄り添うようにしています。しかし最終的には、医療機関として譲らないラインを設定しておくことが、患者さんの安全のために重要だと思います。澤田:患者さん自身には想定できないリスクも多いですので、おっしゃるとおりですね。ありがとうございました。<本事例からの学び>受付では本人確認ルールの徹底を! 患者さんの安全のためには譲らない姿勢で

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小児クローン病の合併症予測モデル、治療選択肢も示唆/Lancet

 新規発症クローン病小児患者の合併症(狭窄や穿孔)リスクの予測モデルが、米国・エモリー大学のSubra Kugathasan氏らによって示された。小児および成人クローン病患者において狭窄や穿孔といった合併症を罹患する頻度は高く、医療コスト増の要因にもなっている。これまでに確証されたモデルはなく、合併症リスクへの有効な治療も知られていなかったが、今回のモデル開発で、抗TNFα治療の選択肢が有効であることも示されている。Lancet誌オンライン版2017年3月1日号掲載の報告。米国とカナダ28施設で913例の小児クローン病患者を包含し検証 試験は、米国およびカナダの28施設でクローン病と新規に診断された小児患者を前向きに追跡して行われた。 遺伝子型、血清中の抗体濃度、回腸の遺伝子発現、回腸・直腸および糞便微生物を評価し、独立した抽出群と検証群で、疾患合併症の比較リスクモデルを検証した。また傾向スコア適合法で、診断後90日以内の合併症リスクへの抗TNFα治療曝露の有効性についても調べた。 2008年11月1日~2012年6月30日の間に登録された913例が最終解析に組み込まれた。うち78例が合併症(狭窄54例、穿孔24例)を経験した。被験者の診断時年齢中央値は12.4歳、男子が62%、白人が75%であった。狭窄が認められた患者では、ASCA、CBir1、GM-CSF陽性との関連が認められた。また穿孔は、高年齢との関連が認められた。診断後90日以内で抗TNFα治療を受けていたのは191例(21%、180例がインフリキシマブ、11例がアダリムマブ)であった。合併症リスクに対し抗TNFα治療の選択が有効 年齢、人種、疾患部位、血清中抗体を包含した検証比較リスクモデルの感度は66%(95%信頼区間[CI]:51~82)、特異度は63%(55~71)で、陰性適中率は95%(94~97)であった。 また、抗TNFα治療を早期に受けた患者ほど、受けなかった患者との比較で、穿孔のリスクが低い傾向が認められた(ハザード比[HR]:0.30、95%CI:0.10~0.89、p=0.0296)。しかし、狭窄のリスクについては認められなかった(1.13、0.51~2.51、p=0.76)。 腸内細菌と合併症との関連では、Ruminococcusと狭窄、Veillonellaと穿孔の関連が認められた。診断時に調整し評価した細胞外基質産生を制御している回腸の発現遺伝子は、リスクモデルにおいて狭窄と関連していることが認められた(HR:1.70、95%CI:1.12~2.57、p=0.0120)。この遺伝子を包含したモデルでは、特異度が71%に改善された。 これらの結果を踏まえて著者は、「我々の開発したモデルは、小児のクローン病診断時のリスク層別化に有用であり、抗TNFα治療の選択を支持するものであった」とまとめている。

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大腿骨頚部骨折の再手術率は固定法で異なるか? /Lancet

 大腿骨頚部骨折の手術後に再手術となることが多いが、これは骨折部の固定法に関連しているのか。カナダ・マックマスター大学のMohit Bhandari氏らFAITH研究チームが、国際多施設共同無作為化試験にて、再手術のリスクとしてsliding hip screw法 vs.cancellous screws法の比較検討と、その他キーとなるアウトカムについて調べた。その結果、固定法の違いに有意差はなかったが、喫煙・転位または基部骨折の患者群ではsliding hip screw法を用いるほうがよい可能性が示されたという。Lancet誌オンライン版2017年3月2日号掲載の報告。初回手術後24ヵ月以内の再手術を評価 試験は8ヵ国81の医療センターから、50歳以上の加齢性の大腿骨頚部骨折で骨折固定法の施術を必要とした患者を集めて行われた。 被験者は、コンピュータによる最小化無作為法にて、sliding hip screw法(サイドプレート付きの1本の長尺スクリューを用いて固定)を受ける群と、現行標準法とされるcancellous screws法(複数の短尺の海綿骨ねじを用いて固定)を受ける群に割り付けられた。手術担当医と患者は盲検化を受けなかったが、データ解析者は、治療割り付けを知らされなかった。 主要アウトカムは、初回手術後24ヵ月以内の再手術(骨折治癒促進のため)、疼痛減、感染症の治療、機能改善とし、intention-to-treat法にて解析した。主要解析では有意差なし 2008年3月3日~2014年3月31日の間に、1,108例が無作為化を受けた(sliding hip screw群557例、cancellous screws群551例)。被験者は70~80歳代の女性が多く、骨折は転倒によるもの、孤立性、非転位性の患者が大半を占めた。 24ヵ月以内の再手術は、主要解析においては両群に差は認められなかった。sliding hip screw群は107/542例(20%)、cancellous screws群は117/537例(22%)であった(ハザード比[HR]:0.83、95%CI:0.63~1.09、p=0.18)。 大腿骨頭壊死症(AVN)は、sliding hip screw群がcancellous screws群よりも発生頻度が高かった(50例[9%] vs.28例[5%]、HR:1.91、1.06~3.44、p=0.0319)。しかしながら、医学的な有害事象の発生件数は、両群で有意差はみられなかった(p=0.82)。たとえば、肺塞栓症(2例[<1%] vs.4例[1%]、p=0.41)、敗血症(7例[1%] vs.6例[1%]、p=0.79)などで有意差がなかったことが報告されている。 また、サブグループ解析で、現在喫煙者(HR:0.39、p=0.02)、転位骨折群(0.57、p=0.04)、基部骨折群(0.24、p=0.04)でsliding hip screw群の優位性が示された。

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あの有名な汚染物質の発生源は…

あの有名な汚染物質の発生源は…ベンゼン鉛シアン化合物カドミウムヒ素ポロニウム……見つかれば大騒ぎになるこれらの物質。意外と近なところにありますが、どこにあるでしょう?豊洲(築地市場移転先)の地下水タバコに含まれる成分この事実を知っても、まだあなたはタバコを吸いたいですか?社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.

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冠動脈疾患に、ヘテロ接合体LPL遺伝子変異が関与/JAMA

 リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子の稀有な機能障害性変異(ヘテロ接合体)は、トリグリセライド高値および冠動脈疾患(CAD)と有意に関連していることが、米国・マサチューセッツ総合病院のAmit V Khera氏らによる横断的研究の結果、明らかとなった。LPLの活性は、トリグリセライドが豊富なリポ蛋白が血中で代謝される際の律速段階に寄与する。そのためLPL遺伝子の機能障害性変異は、終生にわたり酵素活性不足をもたらし、ヒトの疾患に関与する可能性が推察されるが、両者の関連はこれまで確認されていなかった。著者は、「今後、ヘテロ接合体によるLPL欠損症がCADの原因となる機序があるかどうかをさらに検証する必要がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2017年3月7日号掲載の報告。CAD患者約1万4,000例、対照約3万3,000例でLPL遺伝子を解析 研究グループは、ヘテロ接合体のLPL欠損症をもたらすまれな機能障害性変異、ならびにLPLの高頻度変異が、血中脂質値や早発性CADの発症と関連しているかを検証した。2010~15年の間に、Myocardial Infarction Genetics Consortiumにおける10のCAD症例対照コホート(CAD患者1万138例、対照1万2,395例)、およびGeisinger Health SystemのDiscovEHRコホートにおけるコホート内CAD症例対照コホート(CAD患者4,107例、対照2万251例)について、LPLの遺伝子配列を解析した。 LPL遺伝子の機能障害性変異(マイナー対立遺伝子頻度<1%)には、機能喪失型変異やヒト遺伝子データベース(ClinVar)で病原性があるとアノテーション(注釈付け)されたもの、コンピュータ予測アルゴリズムによって障害性があると予測されたものなどが含まれた。LPL遺伝子の高頻度変異(マイナー対立遺伝子頻度>1%)は、2012~14年にGlobal Lipids Genetics Consortiumの最大30万5,699例、およびCARDIoGRAM Exome Consortiumの最大12万600例で解析され、独立して血中トリグリセライド値と関連していると同定された遺伝子型とした。 主要評価項目は、血中脂質値とCADで、メタ解析により併合した。変異遺伝子保有者でトリグリセライド値が高く、CADリスクは1.8倍 LPL遺伝子配列を解析した合計4万6,891例の患者背景は、平均(±SD)年齢50±12.6歳、女性が51%であった。 LPL機能障害性変異(ヘテロ接合体)保有者は、対照3万2,646例中105例(0.32%)、早発性CAD発症者1万4,245例中83例(0.58%)、合計188例(0.40%、95%信頼区間[CI]:0.35~0.46%)であった。 非保有者4万6,703例と比較し保有者188例は、血漿トリグリセライド値が高値(19.6mg/dL、95%CI:4.6~34.6mg/dL)、CADのオッズ比(OR)が有意に高かった(OR:1.84、95%CI:1.35~2.51、p<0.001)。LPL高頻度変異6種(マイナー対立遺伝子変異頻度1~29%)については、CADのオッズ比はトリグリセライド1 SD増加当たり1.51(95%CI:1.39~1.64、p=1.1×10-22)であった。

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甘い飲料とアルツハイマー病の関連~フラミンガム研究

 動物モデルでは、糖分の過剰摂取とアルツハイマー病(AD)との関連が報告されている。今回、米国・ボストン大学のMatthew P. Pase氏らは、フラミンガム心臓研究において、糖分の多い飲料の摂取量とADの発症前段階(preclinical AD)のマーカーが関連することを報告した。Alzheimer's & dementia誌オンライン版2017年3月5日号に掲載。 フラミンガム心臓研究において、糖分の多い飲料の摂取量と、ADの発症前段階および血管脳損傷(vascular brain injury:VBI)の神経心理学的マーカー(n=4,276)および磁気共鳴画像マーカー(n=3,846)との横断的関連を調べた。糖分の多い飲料の摂取量は食事摂取頻度調査票を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・糖分の多い飲料の摂取量が1日1杯未満と比較し、摂取量が多いほど総脳容積が少なかった(1日1~2杯:β±標準誤差[SE]=-0.55±0.14 mean percent difference、p=0.0002、1日2杯:β±SE=-0.68±0.18、p<0.0001)。また、エピソード記憶の検査結果はより劣っていた(すべてp<0.01)。・毎日のフルーツジュースの摂取は、総脳容積および海馬容積の減少、エピソード記憶の低下と関連していた(すべてp<0.05)。・糖分の多い飲料の摂取量は、どのアウトカムにおいてもVBIに関連していなかった。

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貨幣状湿疹

【皮膚疾患】貨幣状湿疹◆症状コインのように丸くもりあがった湿疹で、かゆみがあります。掻きこわしになるとジクジクして、離れた場所にも同様の湿疹ができることがあります(自家感作性皮膚炎)。◆原因肌の乾燥が原因のことが多いので、高齢者によくみられます。とくに冬季に多い湿疹です。アトピー性皮膚炎やかぶれが原因のこともあります。◆治療と予防・ステロイド外用薬で治療します。ジクジクしたら、包帯で保護します。・肌の乾燥を防ぐため、お風呂上りに保湿をしましょう。●一言アドバイス再発したらすぐにステロイド外用薬を塗るようにしましょう。監修:浅井皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.浅井 俊弥氏

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肉を多く食べる男性の大腸がんリスク1.3倍以上:高山スタディ

 肉を多く食べる男性は、そうでない人と比べて、大腸がんの発症リスクが有意に高いことが、岐阜大学の和田 恵子氏らによる研究で明らかになった。肉を多く食べ過ぎないことが、大腸がんの発症抑制につながるかもしれない。Cancer science誌オンライン版2017年3月3日号の報告。 日本人における肉の消費と大腸がんに関するエビデンスは、欧米人のそれと比較して限られている。そのため著者らは、日本において集団ベースの前向きコホート研究を実施し、食肉の消費と大腸がんリスクの関連について評価した。 対象は、1992年9月時点で35歳以上の男性1万3,957人、女性1万6,374人。食肉の消費は、食物摂取頻度調査票を用いて評価した。大腸がんの発症率は、地域集団ベースのがんレジストリおよび2つの主要病院で実施された大腸内視鏡検査における組織学的同定により調査した。 主な結果は以下のとおり。・1992年9月~2008年3月までに、男性429人、女性343人が大腸がんを発症した。・複数の交絡因子の調整後、男性の総食肉摂取量および赤肉摂取量の最高四分位群は、最低四分位群と比較して大腸がんの相対リスクが有意に上昇した。  総食肉(ハザード比:1.36、95%CI:1.03~1.79、p for trend=0.022)  赤肉(ハザード比:1.44、95%CI:1.10~1.89、p for trend=0.009)・男性の加工肉の摂取と結腸がんリスクとの間に正の関連性が認められた。・女性の大腸がんと食肉消費との間には有意な関連は認められなかった。

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2型糖尿病患者の動脈壁硬化に関わる因子

 2型糖尿病患者において、従来の心血管リスク因子や生活習慣は動脈壁硬化と関連するが、それらの因子を調整後も実際に動脈壁硬化と関連するかどうかは不明である。順天堂大学代謝内分泌学講座の研究グループが、日本人の2型糖尿病外来患者で、上腕足首間脈波伝播速度(baPWV)に関連する因子を調べたところ、従来の心血管リスク因子と生活習慣を調整後も、年齢、2型糖尿病の罹病期間、収縮期血圧、血清尿酸、尿中アルブミン排泄、睡眠の質の低下がbaPWVと関連していた。Journal of clinical medicine research誌2017年4月号に掲載。 本研究には心血管疾患の既往のない日本人の2型糖尿病の外来患者724例が参加し、自記式質問票を用いて生活習慣を分析した。従来の心血管リスク因子・生活習慣のbaPWVとの関連性を多変量線形回帰分析によって調べた。 以下の結果は以下のとおり。・被験者の平均年齢は57.8±8.6歳、62.8%が男性であった。・平均HbA1cは7.0±1.0%、2型糖尿病の罹病期間は9.9±7.2年であった。・年齢および性別を含む重回帰分析により、年齢および男性がbaPWVと正の関連が示された。・数多い従来の心血管リスク因子および生活習慣を調整後も、年齢、2型糖尿病の罹病期間、収縮期血圧、血清尿酸、尿中アルブミン排泄、睡眠の質の低下がbaPWVと正の相関を示した。一方、BMIはbaPWVと負の相関を示した。

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