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「1日でも長く生きたい…」ある乳がん患者の想い

第6回日本HBOCコンソーシアム学術総会 市民公開講座のシンポジウムにパネリストとして参加した塩崎 良子氏に乳がん治療に対する想いと今後について話を伺った。 まず家族歴などの背景と乳がん診断までのプロセスについて教えてください。親族の中で乳がんになったのは祖母だけですが、それ以外の親族も40代でがんを発症するケースが多く、いわゆる「がん家系」であると漠然と思っていました。ただ、遺伝子についてとくに意識したことはなく、食生活など生活習慣に原因があるのかなと思っていました。私自身が乳がんの診断を受けたのは4年前、33歳の時です。リンパ節にも転移が認められ、サブタイプ分類はトリプルネガティブでした。その後どのような診療プロセスを経ましたか?2種類の抗がん剤治療を行いましたが、2つ目の抗がん剤の効果が不十分だったため、化学療法を中止し、右胸の全摘手術を行いました。そこで、いったん治療は終了し、経過観察となりましたが、無治療の状態に不安を感じ、1日でも長く生きるために何かできることはないかと自分で治験情報を探していました。その中でPARP阻害薬の情報を見つけ、主治医に依頼して治験を実施している聖路加国際病院への紹介状を書いてもらいました。治験に参加するために遺伝子検査を行ったところ、検査結果はBRCA遺伝子変異陰性だったので、治験には参加できず、放射線治療を行った後、再び経過観察となりました。遺伝子検査の結果を聞いてどのように思いましたか?その時は何か治療をしたいという気持ちだったので、治験に参加できないことにがっかりしました。乳がん診断当時は、乱れた生活習慣のせいではないかと自分を責めたこともあり、がんの原因が遺伝子にあるのなら自分を責める気持ちも軽くなったのにと考えたこともあります。もしかすると、BRCA遺伝子以外の変異があるのかもしれません。ただ、改めて考えてみるとBRCA遺伝子変異陽性でも陰性でも良いことも悪いこともあり、どちらの場合もできることをやるだけだと思い直しました。現在はどのような生活を送られていますか?今は経過観察中ですが、骨が痛むと骨転移を、記憶力の低下を感じると脳転移を疑うなど、転移に対する不安は常にあります。ただ、時間が経つにつれて徐々に不安との付き合い方がわかってきました。また、治験への参加を希望していたPARP阻害薬オラパリブが卵巣がんに対して承認を取得したことはとても前向きなニュースで、未来への希望を与えてくれました。現在は、自ら立ち上げたケア・介護用品事業を軌道に乗せるために忙しい日々を送っています。どのような経緯で事業を立ち上げられたのでしょうか?もともとおしゃれが大好きで、がんになる前はアパレル業を営んでいました。がん発症後は、自分を取り巻く環境や外見の変化に戸惑い、ときには将来への不安や死への恐怖に襲われ、自分自身についても見つめなおす日々が続きました。そんな中、主治医から、乳がん患者が登壇するファッションショー開催の勧めがありました。ショー開催にあたっては色々な不安がありましたが、ランウェイで堂々と歩くがん患者の女性たちの姿に、表面的ではない真の美しさを見た気がしました。そこから「自分が本当にやりたいことは何か?」を模索する中で、既存のケア・介護用品は、ワンパターンでいかにも病人といったデザインが多いことに気付きました。闘病中でも自分らしく輝いて生きていくためのお手伝いをしたいと考え、おしゃれなケア・介護用品ファッションブランド「KISS MY LIFE」を立ち上げました。また病院内でも買い物を楽しむ事ができ、コミュニティーの場所にもなる、院内店舗やワゴンショップの運営事業もあわせて行っています。最後にHBOCを診療する先生へメッセージをお願いします。治療中の患者にとって、主治医はとても大きな存在のため、治験のために転院したいと申し出ることはとても勇気が必要でした。お世話になっている先生の元から自ら離れることは寂しく、葛藤もありました。やりとりを重ね、最終的には転院をすることになりましたが、そのハードルが下がるといいなという気持ちがあります。また、病院の外来はいつもとても混んでいて、多くの患者さんが順番を待っている中で聞きたいことをなかなか聞けなかった経験があるので、気軽に質問したり、不安なことを相談できるような窓口があるといいなと思います。【インタビューを終えて】朗らかで柔らかい雰囲気を持つ塩崎さんだが、言葉の端々に「1日でも長く生きるためにできることは何でもする」という命への強い思いを感じた。機能性が重視されがちな闘病生活に、輝きや美しさといった新しい概念を持ち込んだのは、アパレル業と闘病生活の両方を経験した塩崎さんならではの視点によるものである。今回のインタビューを通じて、自分の強みを生かしてほかの人の役に立ちたいと行動する塩崎さんの前向きな姿勢に勇気づけられた。■参考リンクTOKIMEKU JAPAN

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第6回HBOCコンソーシアム学術総会レポート 後編

本年(2018年)1月21日(日)、第6回日本HBOCコンソーシアム学術総会(会長:山内 英子氏/聖路加国際病院副院長)が、「実戦! THE NEXT STEP HBOC診療」をテーマに、聖路加国際大学で開催された。今回は、後編として、シンポジウム2「リスク低減手術」、同3「サーベイランス」、同4「前立腺がん」の概要を紹介する。リスク低減手術…RRSOとRRMリスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)について野村 秀高氏(がん研究会有明病院)、塩田 恭子氏(聖路加国際病院)が、リスク低減乳房切除術(RRM)については山内 清明氏(北野病院)、吉田 敦氏(聖路加国際病院)が、それぞれ発表した。野村氏は、自施設にてRRSOを施行した55例を報告した。同氏によると、オカルトがんおよびSTIC(漿液性卵管上皮内がん)はMRIを含む術前検査でも指摘できず、p53シグネチャーを含めて病理学的に異常を認めた症例はすべて50歳以上であり、無症状の進行卵巣がんも経験したという。塩田氏は、BRCA1/2変異保因者の卵巣がんの発症リスクおよびRRSOのベネフィットとリスクについて概説し、卵巣がんのリスク低減エビデンスが確立しているのはRRSOのみだが、RRSO後の腹膜がんの増加などの問題があるため、術後のフォローアップが必要だと述べた。山内氏は、より高い整容性とより少ない残存乳腺組織量を目指したRRMの解剖学的な至適切除範囲を考察した。また、HBOC診療のnext stepとして、薬物、ゲノム改編治療の可能性について期待を示し、臨床試験やさらなる技術革新の必要性を強調した。吉田氏からは、BRCA遺伝子変異陽性例へのRRMの施行状況が紹介され、整容、残存リスク、患者の意思決定などの問題点が提示された。そして、患者自身による選択を導き出すためには、患者の理解力や経済的な状況なども考慮し、十分なコミュニケーションをとることが重要であると言及した。サーベイランス…乳房MRI、卵巣がん、Li-Fraumeni症候群HBOCやほかの遺伝性腫瘍のサーベイランスについて、戸崎 光宏氏(相良病院附属ブレストセンター)、秋谷 文氏(聖路加国際病院)、舩戸 道徳氏(長良医療センター)らが発表し、討論がなされた。その中で、課題として、NCCNガイドラインで推奨されているMRIによるサーベイランスがあまり知られていないこと、それを実施できる施設・人材が限られていること、経済的負担、患者・家族の精神的な負担などが挙げられた。前立腺がん…HBOCとの関連従来、前立腺がんとBRCA遺伝子に関連はないとされてきたが、最近になって、その関連を示唆するデータが報告され注目を集めている。この点に関し、前立腺がん専門医の立場からみたHBOCについて、新保 正貴氏(聖路加国際病院)と大家 基嗣氏(慶應義塾大学)が発表した。新保氏は、家族歴および原因遺伝子からみたHBOCと前立腺がんの関連について概説した。現在のところ、HBOCと強く関連する前立腺がんの頻度は、前立腺がん全体の中ではおそらく1%程度ではないかと予想されるが、実際にBRCA1/2遺伝子変異例も見つかるため、HBOCと診断された家族へは前立腺がんの注意喚起をすべきだとした。また、同氏は、「今後は、前立腺がんを発端としてHBOCの可能性を疑っていくというアプローチも必要かもしれない」と述べた。大家氏は『遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き2017年版』への執筆を依頼された時、初めてHBOCに注目したという。BRCA1/2遺伝子変異保因者は、通常より若い40歳でのPSA検査と、より低いPSA値(3.0ng/mL以上)での生検が推奨される。BRCA1/2変異を原因とした前立腺がん発症は、人種差が大きく罹患率と死亡率を一般化することが難しいため、全国的な調査が必要だという。また、BRCA1/2遺伝子変異陽性の転移性前立腺がんでは、今後、PARP阻害薬(未承認)が有効となる可能性がある。コメント…医師の視点から(ケアネットCMO 宮本 研)HBOCは乳腺外科や婦人科の疾患と考えがちであるが、今回の学術総会を聴講し、泌尿器科や消化器内科・外科、小児科も連携すべき遺伝性疾患と再認識した。患者のみならず親族のBRCA1/2遺伝子変異が確認されたり、疑われたとき、かかりつけ医も最新の知識に基づき発症予防策を提案すべきだ。世代を超えた家族歴の聴取が改めて重要視されるだろう。

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高齢者に不向きな抗うつ薬の使用とその後の認知症リスクとの関連

 効果に比べ有害事象のリスクが高い薬剤は高齢者に向いているといえず、これらの薬剤はPIM(Potentially Inappropriate Medication)と呼ばれている。一部の抗うつ薬はPIMであると考えられるが、抗うつ薬とその後の認知症との関連については、これまでの研究で明らかになっていない。ドイツ・ボン大学のKathrin Heser氏らは、抗うつ薬(とくにPriscusリスト[ドイツ版のビアーズリスト]でPIMとみなされている抗うつ薬)の服用が、認知症発症を予測するかについて検討を行った。Journal of affective disorders誌2018年1月15日号の報告。 非認知症のプライマリケア患者3,239例(平均年齢:79.62歳)におけるプロスペクティブコホート研究のデータを用いて、Cox比例ハザードモデルの計算を行った。12年間で8回以上のフォローアップにおけるその後の認知症リスクは、抗うつ薬服用および共変量に応じて推定した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬服用は、その後の認知症リスク増加と関連が認められた(HR:1.53、95%CI:1.16~2.02、p=0.003[年齢、性別、教育で調整後])。・年齢、性別、教育、うつ症状で調整したモデルにおいて、PIMとみなされている抗うつ薬は、その後の認知症リスク増加と関連が認められた(HR:1.49、95%CI:1.06~2.10、p=0.021)。一方、その他の抗うつ薬は、関連が認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.66~1.66、p=0.863)。・ベースライン時に全体的な認知機能がコントロールされた場合、有意な関連は消失した。 著者らは「選択バイアスや自己報告による薬物評価など、方法論的な限界が本結果に影響を及ぼした可能性がある」としながらも、「PIMとみなされる抗うつ薬だけが、その後の認知症リスク増加と関連していた。これは、抗コリン作用が、原因の可能性がある。そして、この関連は、ベースライン時の全体的な認知機能を統計学的にコントロールした後に消失した。そのため、医師は可能な限り、高齢者へのPIMとみなされる抗うつ薬使用を避けるべきである」としている。■関連記事注意が必要、高齢者への抗コリン作用抗コリン薬は高齢者の認知機能に悪影響うつ薬の適応外処方、普及率はどの程度

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第6回HBOCコンソーシアム学術総会レポート 前編

本年(2018年)1月21日(日)、第6回日本HBOCコンソーシアム学術総会(会長:山内 英子氏/聖路加国際病院副院長)が、「実戦! THE NEXT STEP HBOC診療」をテーマに、聖路加看護大学アリスホールで開催された。ここでは、4つのシンポジウムで構成された当総会を2回に分けてレポートする。今回は、前編として、シンポジウム1「チーム医療」の概要を紹介する。HBOCのチーム医療の現況…6施設の報告から当シンポジウムでは、6施設が、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)のチーム医療の現況を報告した。引き続き、来場者参加型の投票システムを用いて、HBOC診療に関する質問への回答を即座に集計してスクリーンに掲示することで、HBOC診療の現状を広く共有し、議論を深める試みがなされた。最初に報告を行った関西ろうさい病院(兵庫県尼崎市)では、臨床遺伝専門医、遺伝カウンセラー、各種専門看護師を中心とした遺伝カウンセリング外来を設置して遺伝性腫瘍の診療を行っている。また、乳腺科や婦人科などとの連携を常に意識して診療に当たっている。臨床試験に頼らずにHBOCの拾い上げを行うことが今後の課題であり、日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)の基幹施設になることが目標だという。東京医療センター(東京都目黒区)では、HBOC診療において、乳腺科・婦人科との連携から、臨床遺伝センターでの遺伝カウンセリング、遺伝学的検査、各科のサーベイランス、予防切除術まで、一貫して行える体制を整備してきた。HBOC疑い例の拾い上げには、問診票を用いているが、かかりつけ医からの紹介なども重要だという。そのため、かかりつけ医を対象とする講演会を実施し、リーフレットを作製して保健所や福祉センター、区役所に送付するなど、地域連携を積極的に進めている。北野病院(大阪府大阪市)では、遺伝性疾患サポートチームを中心に、複数の診療科などが連携している。HBOC疑い例の拾い上げを重視し、乳腺外科では初診患者に対し初診問診票を用いて、婦人科では卵巣がんと診断された患者に対し遺伝性腫瘍に特化した問診票を用いて家族歴を聴取している。最近、消化器内科と乳腺外科との連携による、膵がんへの取り組みも開始した。また、地域の他施設医療者への遺伝性腫瘍セミナーや、市民公開講座を開催し、院外からの遺伝カウンセリングや、リスク低減手術の依頼にも応じている。今後は、HBOC診療に関わる診療科を増やすとともに、人材育成、保険診療の実現に向けた学会からの働きかけを推進する予定だという。名古屋市立大学病院(愛知県名古屋市)では、臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラーから成る臨床遺伝医療部が、他科との連携のもとで遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリングを行っている。今後は、消化器内科、外科、泌尿器科との連携を強化し、認定遺伝カウンセラーの雇用条件の改善と増員、遺伝子パネル検査の導入を進める予定だ。新潟大学医歯学総合病院(新潟県新潟市)は、新潟県立がんセンター新潟病院(新潟県新潟市)との共同でHBOC niigata meetingを組織した。両施設の連携のもと、症例の拾い上げからカウンセリング、BRCA遺伝子検査、リスク低減手術、サーベイランスまで、包括的なHBOC診療の取り組みを開始している。当面の課題として、県内のほかの地域の施設との連携強化、リスク低減手術を含めたHBOC診療の県内での完結、とくに乳がんからの拾い上げ基準の確立などを目指している。四国がんセンター(愛媛県松山市)では、遺伝性がん診療科を中心にHBOC診療を進めている。最近、看護師や遺伝カウンセラーが、卵巣がん患者、子宮体がん患者から家族歴を聴取し、家系図の作成に取り組んだ。この経験を踏まえ、HBOCを考慮した問診票を作成し、家系図の作成に活用する試みを開始している。今後は、このアプローチをよりよく継続するための工夫を重ね、HBOC診療に関わる多職種の連携の円滑化を図りたいという。来場者参加型アンケート調査の結果来場者参加型の投票システムを用いたアンケート調査の主な結果は、以下のとおりであった。同一施設所属者が複数いること、HBOC診療に興味を示す者であること、誤操作した可能性などがあり、一般調査結果とは異なると予想されるが、参考値として紹介する。質問1)拾い上げの基準はどのように設定しているか?NCCNガイドラインに準拠:18%NCCNガイドラインを参考に一部改変して使用:40%NCCNガイドライン以外の基準を参考にしている:3%施設内で検討した基準を使用:14%検討中:24%質問2)一次拾い上げをする人は主に誰か?主治医:62%臨床遺伝専門医:1%外来看護師:12%病棟看護師:2%認定遺伝カウンセラー:16%その他:6%質問3)主治医がどのくらい遺伝カウンセリングに関わっているか?主治医が遺伝カウンセリングをしている:18%主治医はまったく関わっていない:36%状況に応じて:46%質問4)RRM(リスク低減乳房切除術)は実施しているか?実施している:29%実施していない:25%準備中:28%導入する予定はない:8%その他:10%質問5)RRSO(リスク低減卵巣卵管切除術)は実施しているか?実施している:48%実施していない:17%準備中:19%導入する予定はない:6%その他:9%質問6)リスク低減手術の合併症の治療は保険か自費か?保険:14%自費:29%症例に応じて:12%準備中:45%

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コーヒーと大腸がんの関連、日本の8研究をプール解析

 コーヒーは、がん発症を抑制する可能性のある生物活性化合物が豊富な供給源だが、大腸がんとの関連は不明であり、がんの部位別に調べた研究はほとんどない。今回、わが国の「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」の研究班が、日本の8つのコホート研究のプール解析により、コーヒーと大腸がんの関連を検討した。その結果、女性において1日3杯以上のコーヒー摂取が結腸がんリスクを低下させる可能性が示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2018年2月15日号に掲載。 本研究では、32万322人の参加者における450万3,276人年の追跡調査の結果、6,711件の大腸がんが確認された。Cox比例ハザードモデルを用いて、研究ごとのハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定し、ランダム効果モデルを用いて統合した。 主な結果は以下のとおり。・男女とも、コーヒー摂取は大腸がんリスクに実質的に関連していなかった(男性における統合HR:0.92、95%CI:0.82~1.03、女性における統合HR:0.90、95%CI:0.76~1.07)。・部位別の解析においては、1日3杯以上コーヒーを飲む女性で結腸がんリスクが低下した(統合HR:0.80、95%CI:0.64~0.99)が、男性ではこのような関連はなかった。・男女ともコーヒー摂取は直腸がんリスクに関連していなかった。・非喫煙者でも、頻回のコーヒー摂取で直腸がんリスクが高いことを除き、結果は事実上同様であった。

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チョコが大好きな患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第15回

■外来NGワード「チョコは食べないようにしなさい!」(理想論の提示)「甘いものは食べないようにしなさい!」(あいまいな食事指導)「チョコは、これから買わないようにしなさい!」(無理な食事指導)■解説 最近、女性から男性だけでなく、女性から女性、さらには自分にチョコレートを贈るようになったバレンタインデー。バレンタインデーのシーズンになると、チョコレートはバカ売れで、消費量はチョコレートの年間消費量の1割強にもなるそうです。また、チョコレートが大好きな人は、他人に渡す分だけでなく、自分で食べる分も買っていたりします。ダークチョコレートには、ポリフェノールが含まれていることから、チョコレートには健康効果が高いとテレビや雑誌などで喧伝されています。しかし、そのエビデンスは限られています。確かに、観察研究を集めたメタ解析では、適度のチョコレートには心血管リスクを低下させる可能性があるのではないかと推察されています。しかし、肥満者を対象とした介入研究では、エネルギー制限をしていてもチョコレートだけでは、残念ながら脂質の改善は認められていません。患者さんの中には現在の食事にプラスして、チョコレートを食べることが健康につながると勘違いしている人がいます。介入研究では、チョコレート分のカロリーを減らして食べるように指導されたりしています。それらのチョコレートに関する研究情報を、患者さんに正しく伝えておくことが大切ですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ患者コレステロールの値は大丈夫ですか? 卵を食べないようにして、食事には気を付けているのですが…。医師卵は控えられているということですか。実は、食事の中では卵というよりは「飽和脂肪酸」がコレステロールを上げないキーワードとなります。患者飽和脂肪酸って、どんなものに含まれているんですか?医師バター、マーガリンやショートニングなどに多く含まれていますので、お菓子や菓子パンには注意が必要ですね。患者あっ、それ大好きです。菓子パンがコレステロールを上げる原因だったんですね。医師あと、気を付けて欲しいのがチョコレート。チョコレートには飽和脂肪酸がたっぷり含まれていますからね。患者えっ、チョコレートは、健康にいいんじゃないんですか?医師確かに、苦いダークチョコにはポリフェノールが入っているので、コレステロールを上げないと期待されていたのですが、肥満の人ではあまり効果がないようです。患者えっ、そうなんですか。健康にいいと思って頑張って食べていたのに。医師それに、チョコを食べたら、その分のカロリーを減らさないといけないのですが、プラスされている人も多いですね。そのため、健康にいいと思って食べていて、体重が増えたという人もいますよ(第三者の話として伝える)。患者たとえば、どのくらいが適量なんですか?医師そうですね。難しいところですが、1枚=5gのチョコ5個で150kcalくらいありますから、ご飯軽く1杯分は減らさないといけないですね。患者それなら、私、チョコの食べすぎですね(気付きの言葉)。医師チョコは、頑張ったご褒美として食べてくださいね。患者わかりました。これからは、チョコは、チョコっとだけにします。■医師へのお勧めの言葉「チョコを食べるだけでは健康になりませんよ。ダークチョコレートを食べた分のカロリーを減らしておかないと、逆に、体重が増えてしまいますよ」1)Gianfredi V, et al. Nutrition.2018;46:103-114.2)Shah SR, et al. J Community Hosp Intern Med Perspect.2017;7:218-221.3)Lee Y, et al. J Am Heart Assoc.2017;12.

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急性増悪期の薬物療法に関するエビデンスレビュー

 救急部での精神症状の急性増悪の管理における抗精神病薬使用の主な目的は、過鎮静を起こすことなく急速に静穏を図り、患者が自身のケアに携われるようにすることである。しかし、比較研究は不足しており、とくに新規の急速鎮静を示す第2世代抗精神病薬の研究が不足している。米国・Chicago Medical SchoolのLeslie S. Zun氏は、急性増悪期の薬物療法に関するエビデンスのレビューを行った。The Journal of emergency medicine誌オンライン版2018年1月17日号の報告。 この構造化されたエビデンスベースのレビューでは、PubMedデータベースの文献検索により抽出されたランダム化比較試験のデータを用いて、急性増悪に対する抗精神病薬治療の有効性について比較検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・28件の盲検ランダム化比較試験が抽出された。・ziprasidone、オランザピンの筋注製剤投与後は、共に15~30分で有効性が確認された。ハロペリドールの筋注製剤とロラゼパムとの組み合わせは30~60分、アリピプラゾールの筋注製剤は45~90分であった。・経口投与の場合、最初の評価時点において、オランザピンは15~120分、リスペリドンは30~120分、アセナピン舌下錠は15分で有効性が確認された。・loxapine吸入剤では、10~20分以内で有意な効果が認められた。・ドロペリドール静注は、約5~10分以内にはっきりした効果が認められた。・効果発現は、ベンゾジアゼピンよりも、第2世代抗精神病薬のほうがより速かったが、データは限られていた。 著者らは「このレビューに含まれる試験の患者集団は、救急部の実情を反映しているとは言えないが、今回の結果によって救急部に急性増悪患者の治療のための第2世代抗精神病薬の急速な有効性に関する情報を提供することができる」としている。■関連記事統合失調症の急性増悪期、抗精神病薬の使用状況は?:国立精神・神経医療研究センター急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は

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リファキシミンの腸内細菌叢への調整作用で肝性脳症を抑える

 2018年1月31日、あすか製薬株式会社は、同社が販売する経口難吸収性抗菌薬リファキシミン(商品名:リフキシマ)の処方制限が昨年12月に解除され、長期投与が可能となったことを機に、都内において肝性脳症に関するプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、「『肝性脳症』診断・治療の最新動向 腸内細菌への働きかけによる生存率向上への兆し」をテーマに、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学 内科学第三講座 教授)を講師に迎え、レクチャーが行われた。原因不明の認知症10%に潜む肝性脳症 はじめに、認知症の概要が語られた。2025年には、認知症患者が推定730万人になると予想される。そして、認知症の原因ではアルツハイマー型が一番多く、次いで脳血管性型、レビー小体型と続き、そのほか原因不明も全体の1割(70万人以上)を占めるという。現在の『認知症疾患診療ガイドライン』では、認知症と鑑別が必要な疾患として、「ビタミン欠乏症」「甲状腺機能低下症」「神経梅毒」「肝性脳症」「特発性正常圧水頭症」の5つが規定されている。なかでも「肝性脳症」では、認知症やうつ病と同じように睡眠異常、指南力低下、異常行動、物忘れなど共通する症状がみられ、正確に診断されていない例もあると指摘した。 肝性脳症は、肝臓の線維化によりアンモニアの分解能が落ちることで、アンモニアが体内に蓄積され、さまざまな認知機能を障害する。その原因となる肝細胞障害、とくに肝硬変はC型肝炎ウイルスによるものが多く、そのウイルス保菌者数は年齢に比例して増加することから、肝性脳症が発症した場合、認知症と診断されている例もあると示唆した。服薬アドヒアランスを上げるリファキシミン 肝性脳症の症状は、人格・行動の微妙な変化から始まり、判断力の低下、睡眠の不規則、見当識障害、興奮・せん妄、昏睡状態へと進展する。典型的な患者の訴えでは、「頭がボーッとする」「足がつまずく」「手が震える」などが聞かれ、家族の訴えでは「目つきがおかしい」「おかしなことを言う」「食事を摂らない」などがある。 本症の診断では、身体所見など一般的な診断のほかに、認知症との鑑別のためナンバーコネクション、ブロックデザインテストなども行われ、「本症を疑った場合、アンモニア値の検査も重要」と吉治氏は述べる。 本症の治療では、これまで合成二糖類、カルニチン・亜鉛、BCAA製剤などの治療薬が使われてきたが、服用のしにくさや副作用などでアドヒアランスは決して良好とはいえなかった。 そこで、今回長期投与が可能になったリファキシミンは、こうした問題に対応し、他の治療薬の減量・削減の可能性、全身症状の改善、医療コストの削減などで期待されている。リファキシミンの作用機序は腸管内でのアンモニアの産生を防ぐことで、血中濃度が低下し、脳へのアンモニア移行を減少、肝性脳症を改善し、便と共に排泄される作用を持つ。リファキシミンは欧米では30年以上前より使用されてきたが、わが国では2016年に保険適用となった。 エビデンスでは、リファキシミンは使用群とプラセボ群との比較で、本症の再発を0.42ポイント有意に軽減したほか1)、5年間の長期投与でも肝硬変患者の生存率を改善したことが報告されている2)。リファキシミンの腸内細菌叢の調整機能 次に、わが国で増えている肥満型の肝硬変患者に触れ、現在1,000万人と推定される非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者のうち、約200万人が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に移行すると考えられ、今後の肝硬変の患者数増加に警鐘を鳴らした。 さらに最近の話題として、腸内細菌叢について語った。この細菌叢のバランスの崩れから起こる疾患として、NAFLD、NASH、肝硬変、炎症性腸疾患などを挙げ、近年この腸内細菌叢の構成に注目が集まっているという。 肝硬変患者に、実際にリファキシミンを投与した前後で腸内細菌叢を調べた結果、細菌叢の多様性に変化はなかったものの、属レベルでは、肝硬変患者で増加するとされていた細菌が減少したと自験例を報告した3)。また、リファキシミンは、腸内細菌モジュレーターとして、肝硬変患者の予後を改善することが示唆されると期待を寄せた。 最後に吉治氏は、「今後、リファキシミンの腸内細菌叢の調整機能も踏まえ、日本人の長期投与効果の研究を行い、日本発のエビデンスを出していきたい」と今後の展望を語り、セミナーを終了した。

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OCT手術顕微鏡の臨床での有用性は

 近年、眼科手術中に光干渉断層撮影(OCT)画像を確認できる一体型のOCT手術顕微鏡(iOCT)が登場した。米国・Cole Eye InstituteのJustis P. Ehlers氏らは、3年間にわたりiOCTの実行可能性および有用性を評価する「DISCOVER研究」を行い、眼科外科医の手術手技に関する意思決定への影響などに基づき、iOCTは概して実行可能で有用であると結論づけた。今回の大規模研究の結果は、眼科手術に対するiOCTの潜在的な価値と影響を検討した他の研究の結果と相違はなかったという。Ophthalmology誌オンライン版2018年2月3日号掲載の報告。 DISCOVER研究は、単一施設において複数の眼科外科医により、施設内倫理委員会の認可を得て行われた前向き研究である。本研究への参加に同意した切開を伴う眼科手術が予定されている成人の連続症例を登録し、3つのiOCT試作モデル(カールツァイスRESCAN 700、ライカ EnFocus、Cole Eye iOCT systems)のうち1つを用い、前眼部または後眼部の手術を施行した。 iOCTは執刀医が操作し、手術後に各眼科外科医は、iOCTの有用性を評価するアンケートに記入した。また、臨床所見も記録した。 評価項目は、iOCTの実行可能性(撮影成功率)と、医師の報告に基づく有用性であった。 主な結果は以下のとおり。・837眼(前眼部244眼、後眼部593眼)が登録され、このうち820眼(98.0%、95%信頼区間[CI]:96.8~98.8%)でiOCT画像の撮影に成功した。・前眼部手術の106眼(43.4%、95%CI:37.1~49.9%)、ならびに後眼部手術の173眼(29.2%、95%CI:25.5~33.0%)で、iOCT画像の情報に基づき手術手技が変更された。

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アトピー性皮膚炎への抗IL-13抗体薬、ステロイドと併用では改善

 インターロイキン(IL)-13は、2型炎症反応において重要な役割を果たしており、アトピー性皮膚炎における新たな病原性メディエーターとされる。中等症~重症アトピー性皮膚炎に対し、ヒト化抗IL-13モノクローナル抗体であるlebrikizumab 125mgの4週ごと投与は、局所作用性コルチコステロイドとの併用において、重症度を有意に改善し忍容性は良好であることが認められた。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが、無作為化プラセボ対照二重盲検第II相臨床試験(TREBLE試験)の結果を報告した。なお著者は、「単独療法としてのlebrikizumabの有効性は不明であり、今回は研究期間が短く長期投与の有効性および安全性は評価できない」と付け加えている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年1月15日号掲載の報告。 TREBLE試験の目的は、局所作用性コルチコステロイドとの併用投与におけるlebrikizumabの有効性および安全性を検討することであった。対象は、中等症~重症アトピー性皮膚炎成人患者209例で、2週間の局所作用性コルチコステロイド導入期の後、lebrikizumab 125mg単回投与群、250mg単回投与群、125mgを4週ごと投与(Q4W)群またはプラセボ(Q4W)群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、12週間治療した。 主要評価項目は、12週時に湿疹面積重症度指数(Eczema Area and Severity Index:EASI)スコアが50%低下した患者の割合(EASI-50達成率)であった。 主な結果は以下のとおり。・12週時のEASI-50達成率は、プラセボ群62.3%に対し、lebrikizumab 125mg Q4W群は82.4%で有意に高かった(p=0.026)。・プラセボ群と、lebrikizumab単回投与群の2群とは差がなかった。・有害事象の発現頻度は、lebrikizumab(全投与)とプラセボ群で類似しており(66.7% vs.66.0%)、有害事象の多くは軽症もしくは中等症であった。

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チカグレロル、心筋梗塞発症から1年以上の多枝病変のイベントを減少

 アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ)は2018年2月7日、第III相PEGASUS-TIMI54試験の新たなサブ解析結果を発表した。心筋梗塞の既往があり、さらに2本以上の多枝病変(以下、MVD)を有する患者において、チカグレロル(商品名:ブリリンタ)60mgと低用量アスピリンの併用療法により、MACE(心血管死、心筋梗塞あるいは脳梗塞からなる複合リスク)リスクが19%(HR:0.81、95%CI:0.7~0.95)、冠動脈疾患死のリスクが36%(HR:0.64、95%CI:0.45~0.89)低減した。 この既定のサブ解析はJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。MVDは、初回の心筋梗塞発症時に2本以上の冠動脈に50%を超える異常狭窄が存在する病態と定義された。本試験に参加した患者2万1,162例の59.4%(1万2,558例)がMVDを呈していたことから、本結果は、イベント発症から12ヵ月後以降も、抗血小板治療を続けることで、心筋梗塞の既往歴がある高リスク患者集団にベネフィットをもたらす可能性が示すものとしている。 重大な出血事象については、アスピリン単剤治療と比較して、チカグレロル・アスピリン併用療法で多かったが、これはPEGASUS-TIMI 54試験で確認された結果全体と一貫していた。また、頭蓋内出血あるいは致死的出血リスクの増大はなかった。

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米国の胎児性アルコール・スペクトラム障害の有病率は?/JAMA

 胎児性アルコール・スペクトラム障害(fetal alcohol spectrum disorders:FASD)の有病率は、米国の古いデータでは小児1,000人当たり10人とされるが、大規模かつ多様なサンプルに基づく最近のデータはないという。そこで、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のPhilip A. May氏らは、国内4地域の小学1年生におけるFASDの推定有病率について検討した。JAMA誌2018年2月6日号掲載の報告。active case ascertainment法でFASDを評価、有病率を推定 本研究は、米国の4地域(ロッキーマウンテン、中西部、南東部、太平洋岸南西部)におけるFASD(胎児性アルコール症候群、部分的胎児性アルコール症候群、アルコール関連神経発達障害)の有病率を推定する横断的研究である(国立アルコール乱用・依存症研究所[NIAAA]の助成による)。 2010~16年の期間に、小学1年生の小児と、その両親または保護者が登録され、active case ascertainment法を用いて小児におけるFASDの検討を行った。FASDに寄与する4領域(形態異常の特性、身体発育、神経行動発達、出生前のアルコール曝露)について系統的に評価した。 主要アウトカムは4地域のFASD有病率であり、小学1年生人口を母集団として、控えめに見積もられたFASDの有病率の推定値と95%信頼区間(CI)を算出した。少なくとも小児1,000人当たり11.3~50.0人と推定 1万3,146人の小学1年生(男児:51.9%、平均年齢:6.7歳[SD 0.41]、白人の母親:79.3%)の集団のうち、6,639人が参加者として選出された。 222人のFASD児が同定された。FASDの有病率は、少なくとも小児1,000人当たり11.3(95%CI:7.8~15.8)~50.0(95%CI:39.9~61.7)人の範囲と推定された。また、すべての項目が評価された小児のみのデータによる、加重推定有病率は、小児1,000人当たり31.1(95%CI:16.1~54.0)~98.5(95%CI:57.5~139.5)人であった。 著者は、「これらの知見は、以前の研究に比べ正確な推定有病率を表している可能性はあるものの、あらゆる地域への一般化はできないだろう」としている。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第53回

第53回:AJCCがんStaging Manual今年から適用開始キーワード肺がんメラノーマ動画書き起こしはこちらこんにちはダートマス大学腫瘍内科の白井敬祐です。2018年になって、(ダートマス大学の)がんセンターで、まだちょっと慣れずにあたふたしているのが、AJCCのがんステージングマニュアルversion8(第8版)の導入が始まったということです。実はこれ、去年(2017年)の1月1日に発表されたのですが、実際の臨床に適用するのが、2018年の1月1日から、ということになっています。病理の報告の仕方、あるいはtumorボードで発表するときも、このAJCCの8に準拠してやるようにすることが勧められてるいのですけども、大きく変わったとこもあれば、まったく変わってないとこともあって。今ハチャメチャしているところです。AJCCステージングというのは、基本的には予後をクリアに分けるために行われるので、たとえば肺がんであれば、今回から、単一臓器の転移のみの場合はM1bですね。肝臓とか肺とか脳とかいろいろなところに転移がある場合はM1cですけれども。このM1bに関しては、転移のある臓器に局所治療することで、明らかにM1cよりは予後が良くなる。いうことが最近のがん統計の解析でわかったということです。有名なところでは乳がんですね。HER2レセプター陽性・陰性が、がんのステージングに加わって。こういうふうに、予後に大きな影響を与える因子が出たときに改訂されます。たとえば、メラノーマでは(第7版では)小数点2桁まで報告してたんですが、第8版からは小数点1桁までで良いということになったので、今まで0.75mmと記載していたのが0.8mmになるということですね。そこもまだ慣れないので、病理医はレポートでcorrected…訂正を何回も出してます。臨床試験の登録も。(今あるプロトコルはほとんどがAJCC7のステージングですけど)、新しく出てきたプロトコルではAJCC8を使うようになってきています。実際のところ、まだ僕が専門にしてる免疫療法に関しては免疫チェックポイントインヒビターの恩恵を受けた統計ではないので、必ずしも5年生存率に劇的な改善があるという訳ではないんですけれども、今後そこも変わってくるところだと思います。Implementation of AJCC 8th Edition Cancer Staging System

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心房細動とがんは関連するのか

 心房細動(AF)とがんリスクとの関連について、前向きコホート研究を含むいくつかの研究で示唆されているが、関連の大きさと時間性は不明である。今回、イスラエル・Lady Davis Carmel Medical CenterのWalid Saliba氏らが2つの大規模研究のデータを用いて検討した結果、AF直後の90日間ではがんリスクは増加したが、90日を超えると新規がん診断のオッズが低下した。この研究結果から、先行研究でみられた関連が、因果関係よりもむしろがんの診断や検出バイアスの関連による可能性が示唆された。PLoS One誌2018年1月11日号に掲載。 著者らは、集団ベースでの2つの大規模前向き症例対照研究、すなわちMolecular Epidemiology of Colorectal Cancer(MECC、n=8,383)とBreast Cancer in Northern Israel Study(BCINIS、n=11,608)のデータを用いて、がん診断とその前後におけるAFイベントとの潜在的関連性の特徴と時間性を検討した。がんの危険因子としてAFを評価するために症例対照研究を用い、AFの危険因子としてがん発症を評価するためにコホート研究を用いた。 主な結果は以下のとおり。・症例対照研究において、AFによりがんのオッズが有意に低下した(調整OR:0.77、95%CI:0.65~0.91)。一方、コホート研究において、がんはAFリスク上昇の間に有意な関連はみられなかった(調整HR:1.10、95%CI:0.98~1.23)。・AFイベント直後の期間(90日)はがんリスクが1.85倍増加し、がん診断直後の期間はAFリスクが3.4倍増加していた。これらの結果は、新規のがん診断に関連した急性で一過性のコンディションの影響と検出バイアスを反映していると考えられる。・大腸がんと乳がん症例において、同様の結果が確認された。 なお、著者らは「本研究には、関連を歪めるサンプリングの偏りと残存交絡が存在する可能性がある」としている。

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アビラテロン、⽇本⼈の内分泌未治療ハイリスク前⽴腺がんでも有効性⽰す(LATITUDE)

 ヤンセン リサーチ&ディベロップメントは2018年2月9日、第III相ピボタル試験であるLATITUDE試験のサブグループ解析において、アンドロゲン除去療法(ADT)+アビラテロンおよび低用量プレドニゾン併用療法(以下、アビラテロン群)が、ADT+プラセボ(以下、プラセボ群)と比較して、内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がんの日本人患者の全生存期間(OS)と画像上の無増悪生存期間(rPFS)を延長させ、良好な臨床的有効性を示したと発表。 LATITUDE試験は第III相ランダム化二重盲検比較試験。内分泌療法未治療のハイリスクの前立腺がんと診断された患者1,199例が参加し、欧州、アジアパシフィック、中南米、およびカナダの34ヵ国235施設で行われた。このうち597例がアビラテロン群に、602例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。 日本人は70例(アビラテロン群35例、プラセボ35例)であった。プラセボ群との比較におけるアビラテロン群のOSのハザード比(HR)は0.635(95%CI:0.152~2.659)、rPFS のHRは0.219(95%CI:0.086~0.560)であった。 有害事象の発現率は両群とも97%(34/35例)あった。プラセボ群と比較して、アビラテロン群の発現率が10%以上であった有害事象は、高血圧、低カリウム血症、肋骨骨折、血尿、高ビリルビン血症であった。Grade3/4の有害事象発現率は、アビラテロン群が66%、ADT 群が20%だった。 アビラテロンは2018年2月16日、本邦において「内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がん」の効能・効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得した。■参考LATITUDE試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ホルモン療法未治療の前立腺がん、ADTにアビラテロンの併用は?/NEJMアビラテロン+ADT、転移前立腺がんのOSを38%改善/ASCO2017アビラテロンの早期追加でホルモン未治療前立腺がんの予後改善/NEJM

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うつ病および自殺に関連する遺伝学的治療標的

 うつ病患者の自殺リスクは、他の精神疾患よりも高いといわれている。うつ病と自殺には、共通の原因を有する可能性もあるが、その根拠を特定するための研究は行われていない。イラン・Iran University of Medical SciencesのAli Bozorgmehr氏らは、文献レビューを行い、うつ病と自殺行動に関連する遺伝子および遺伝学的薬物治療について検討を行った。Journal of affective disorders誌オンライン版2018年1月8日号の報告。 関連文献の幅広いレビューを行い、大うつ病と自殺行動に関連するほぼすべての遺伝子を調査し、2つの条件で共通遺伝子を分離した。次いで、3つの遺伝子セット内におけるすべての物理的または機能的相互作用を調査し、遺伝子ネットワークを構築した。すべてのネットワークは、トポロジー的に分析され、機能的に強化された。最後に、既存薬再利用(drug repurposing approach)により、自殺行動とうつ病との間で最も重要な共通遺伝子と相互作用する主要な利用可能薬物を調査した。 主な結果は以下のとおり。・最も基本的な共通遺伝子は、BDNF、SLC6A4、CREB1、TNFであった。・主要な共有欠損経路(shared deficient pathway)は、一般的なドパミン作動性経路、セロトニン作動性経路、神経突起の免疫学的経路であった。・主要な治療標的遺伝子は、SLC6A4とSLC6A2の2つであり、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と三環系抗うつ薬(TCA)が、自殺リスクを有するうつ病患者に最も有効な薬物であることが示唆された。 著者らは「本結果は、うつ病と自殺の統合された分子学的機序に焦点を当てたことに加え、自殺リスクの高いうつ病患者に対する新規治療標的を提案し、将来の前臨床および臨床研究の道を開拓することができた。しかし、統合システム生物学的基礎研究は、既存のデータや関連データベースに大きく依存しており、将来の新規実験データソースの登場により、現在の結果に影響を及ぼす可能性がある」としている。■関連記事うつ病患者の自殺企図、遺伝的な関連性はうつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大遺伝子で抗うつ効果を予測可能か

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Twitterでカンファレンスする時代?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第109回

Twitterでカンファレンスする時代? いらすとやより使用 「Twitterの何が楽しいの?」と友人に聞くと、「リスナーのことを気にせずに1人でラジオ放送しているような感じ」と言っていました。理解できるような、できないような。 Chapman SJ, et al.Twitter can enhance the medical conference experience.BMJ. 2016;354.この論文は、Twitterがカンファレンスにおいて有用であるというレターですが、私も同じ意見です。Twitterを見ていると、たとえば有名な国際学会なんかでは、参加者がこぞってツイートを投稿しています。これは、日本では考えられない現象です。Twitterの発祥がアメリカだから、ということもあるのかもしれませんが、先日のアメリカ胸部学会(ATS)の総会を見てみると、多くの参加者がSNSを使って世界中のドクターと情報交換をしていました(図)。私も、そのTwitterの情報を使って、自身のFacebookページで速報ニュースを発信していました。図. 学会に参加している医師のTwitterのタイムライン日本では、感染症の分野などでメーリングリスト活動が活発です。しかし、SNSが話題になることはあまりありません。アカデミアとSNSは相いれないもの、と考えられているからでしょうか。SNSによるオンラインカンファレンスでは、患者さんの個人情報を出すわけにはいきません。しかし、多くの医師の意見を集約できるうえ、発信者の匿名性が選択できますから、気軽に発言するようなカンファレンスに適していると思います。とはいえ、今後TwitterがSNSの王者で居続けられるかどうかはわかりませんから、世界中の医師からの情報が集まるほかのSNSが出てくるようなら、私はそちらに乗り換えるつもりです。

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薬剤誘発遅発性ジスキネジアを有する統合失調症患者へのアリピプラゾール切り替え

 第2世代抗精神病薬アリピプラゾールは、ドパミンD2受容体パーシャルアゴニストとして作用する薬剤である。遅発性ジスキネジア(TD)を改善するためのアリピプラゾール治療に関するこれまでの研究は限られており、決定的ではなかった。中国・中原大学のChia-Hsiang Chan氏らは、TDを有する精神疾患患者におけるアリピプラゾール治療の有用性について検討を行った。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2018年1月10日号の報告。 本研究は、2009年1月~2010年2月に台湾北部の公立精神病院で実施された、24週間のオープンラベルプロスペクティブコホート研究である。精神疾患患者を対象に、これまでの抗精神病薬とアリピプラゾールのクロスタイトレーションを行い、TDの重症度について、ベースラインおよび2、4、8、12、16、20、24週目に評価を行った。主要評価項目は、AIMS(異常不随意運動評価尺度:Abnormal Involuntary Movement Scale)総スコアによって評価したTD重症度の変化とした。治療反応患者の定義は、ベースラインから試験終了時(24週目)までのAIMS総スコア50%以上減少とした。対象は、薬剤誘発性TDを有する精神疾患患者30例とした。 主な結果は以下のとおり。・AIMS総スコアは、ベースラインから試験終了時まで、有意な減少が認められた(-7.17±5.55)。・AIMS総スコアの有意な減少は、2週目より認められ(p<0.0001)、その変化は研究期間全体にわたり有意なままであった(p<0.0001)。・治療反応と有意な関連が認められたのは、ベースライン時にTDの重症度が高い患者(調整オッズ比:1.35、95%CI:1.04~1.76、p=0.03)またはパーキンソニズムの重症度が低い患者(調整オッズ比:0.78、95%CI:0.61~0.99、p=0.04)であった。 著者らは「本知見は、臨床医がTDを有する精神疾患患者の薬剤変更を検討する際、アリピプラゾールは有望な治療法であることを示唆している。この知見を裏付けるためには、さらに大規模なランダム化比較試験が必要である」としている。■関連記事クロザピン関連遅発性ジスキネジアへの低用量アリピプラゾール遅発性ジスキネジア治療に期待される薬剤は遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学

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大腸がん手術、精神疾患患者での特徴

 精神医学的状態が存在すると、複雑な臨床像や治療的考慮のため、大腸がんの外科的治療のアウトカムに影響を及ぼす可能性がある。今回、米国University Hospitals Cleveland Medical CenterのVanessa P. Ho氏らの研究により、精神医学的疾患(PSYCH)の診断を受けた患者において、閉塞、穿孔および/または腹膜炎の存在下で実施される手術(OPP手術)の割合が有意に高かったことがわかった。著者らは、PSYCH と診断された大腸がん患者において、診察時の進行した大腸がんについての臨床的意味をさらに明らかにするため、さらなる検討が必要であるとしている。Journal of Surgical Research誌2018年3月号に掲載。 著者らは、2007~11年のNational Inpatient Sampleのデータを用いて、大腸がんの診断を受け、手術を受けた患者を同定した。National Inpatient Sampleに記載されている身体的併存疾患に加えて、統合失調症、せん妄/認知症、発達障害、アルコール/薬物乱用、その他の精神医学的状態を含むPSYCH患者を同定するためにClinical Classification Softwareを使用した。本研究のアウトカムはOPP手術とした。記述的解析に加え、患者の人口統計および身体的併存疾患の調整後にPSYCH状態とOPP手術のそれぞれの独立した関連性を、多変量ロジスティック回帰分析により分析した。 主な結果は以下のとおり。・本研究集団において、手術を受けていた大腸がん患者は59万1,561例で、そのうち、65歳以上が60.6%、女性が49.4%、併存疾患を5つ以上有する患者が6.3%、PSYCH患者が17.9%であった。・OPP手術を受けた患者の割合は、研究集団においては13.9%であったが、統合失調症(19.3%)、せん妄/認知症(18.5%)、発達障害(19.7%)、アルコール/薬物乱用(19.5%)の患者では有意に高かった。・多変量解析では、統合失調症、せん妄/認知症、アルコール/薬物乱用は、それぞれOPP手術率の増加に関連していた。

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PTSDの悪夢、プラゾシンで改善せず/NEJM

 α1アドレナリン受容体遮断薬プラゾシンは、慢性心的外傷後ストレス障害(PTSD)に伴う悪夢を軽減することはなく、睡眠の質も改善しないことが、PTSDを抱えた退役軍人を対象とする多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「PACT試験」の結果、示された。米国・VA Northwest Network Mental Illness Research, Education and Clinical CenterのMurray A. Raskind氏らが報告した。プラゾシンは、これまでの無作為化試験で退役軍人のPTSDと関連する悪夢の軽減に有効であることが示唆されていたが、試験期間が15週未満と短く症例数も中規模であった。NEJM誌2018年2月8日号掲載の報告。患者約300例において、プラゾシンとプラセボで悪夢と睡眠の質を比較 研究グループは、退役軍人医療センター13施設において、慢性PTSDを抱え頻繁に悪夢をみるという退役軍人304例を、プラゾシン群あるいはプラセボ群に無作為に割り付け、26週間治療した(プラゾシン群152例、プラセボ群152例)。投与量は、最初の5週間で男性は最大20mg/日、女性は12mg/日まで漸増し、10週目まで投与した後、さらに16週間二重盲検下で投与を継続した。 主要評価項目は、10週時におけるPTSD臨床診断面接尺度(CAPS)のB2「繰り返しみる悪夢」(0~8点:スコアが高いほど頻度が多く苦痛が大きい)、およびピッツバーグ睡眠質問票(PSQI:0~21点、スコアが高いほど睡眠の質が低い)のスコアのベースラインからの変化量、ならびに臨床全般印象評価(CGIC:1~7点、スコアが低いほど改善が大きく、4点が変化なし)である。線形混合モデルを用い、修正intention-to-treat解析を行った。10週時および26週時とも、両群で評価項目に差はなし プラゾシン群とプラセボ群の主要評価項目(10週時)は、CAPS-B2(群間差:0.2、95%信頼区間[CI]:-0.3~0.8、p=0.38)、PSQI(群間差:0.1、95%CI:-0.9~1.1、p=0.80)、およびCGIC(群間差:0、95%CI:-0.3~0.3、p=0.96)であり、いずれも有意差は認められなかった。 副次評価項目である26週時におけるCAPS-B2およびPSQIの変化量、CGIC、ならびにほかの副次評価項目も、両群間で有意差は確認されなかった。 10週時における仰臥位収縮期血圧のベースラインからの変化量の、両群の平均差は-6.7mmHgであった。有害事象である自殺念慮の新規発生また増悪は、プラゾシン群で8%、プラセボ群では15%に確認された。 なお、著者は研究の限界として、問診やカルテ以外で睡眠時無呼吸または睡眠呼吸障害のスクリーニングがなされておらず、未診断の睡眠時無呼吸がプラゾシンの効果をマスクした可能性があることなどを挙げている。

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