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Dr.民谷「最強の国試塾」

国試に向き合って15年。これが合格への結論こんにちは! CareNetプログラムディレクター民谷 健太郎です。医師国家試験対策予備校講師の経験、国試対策書籍の出版などを通じて、臨床医を続けながら15年以上医師国家試験と向き合っています。2024年度は、CareNetで『サマーセミナー』『医学生お悩み相談ラヂオ』『ケアネットまつり』『動画カフェ』『十分の一コクシ』などのコンテンツを医学生にお届けしました。いずれも大好評でしたので、2025年度はより本格的な国試対策に踏み出します。まず第1弾として、face to faceで双方向性のある直接指導のサービスを開始します。その名もDr.民谷の「最強の国試塾」です。学習習慣づくりの仕掛けから、効率を追求した演習カリキュラム、そしてWeb個別指導など、私“民谷”だからできる“最高の学習環境”を提供。4月から国試直前までしっかり伴走します。第120回受験生の皆様、是非とも一緒に来年の合格を目指しましょう!!国試に向き合って15年。これが合格への結論こんにちは! CareNetプログラムディレクター民谷 健太郎です。医師国家試験対策予備校講師の経験、国試対策書籍の出版などを通じて、臨床医を続けながら15年以上医師国家試験と向き合っています。2024年度は、CareNetで『サマーセミナー』『医学生お悩み相談ラヂオ』『ケアネットまつり』『動画カフェ』『十分の一コクシ』などのコンテンツを医学生にお届けしました。いずれも大好評でしたので、2025年度はより本格的な国試対策に踏み出します。まず第1弾として、face to faceで双方向性のある直接指導のサービスを開始します。その名もDr.民谷の「最強の国試塾」です。学習習慣づくりの仕掛けから、効率を追求した演習カリキュラム、そしてWeb個別指導など、私“民谷”だからできる“最高の学習環境”を提供。4月から国試直前までしっかり伴走します。第120回受験生の皆様、是非とも一緒に来年の合格を目指しましょう!!「最強の国試塾」であなたが走り続けるために1.Dr.民谷との過去問徹底演習5カ年分の過去問を徹底的に演習します。何周回も演習を重ねることになりますが、これこそが合格への王道です。効率的に周回し、かつ各周回で確かな成長を感じられる独自のカリキュラムと講義設計で、受講生の皆様が実感できる学力の向上をお約束します。2.“ちょっとだけ先の”先輩医師によるチュータリング日々の学習の進み具合、その時その時の気持ち…そういった日常の小さなモヤモヤ、少し先に同じ経験をした先輩医師チューターと一対一で分かち合う時間を提供します。3.オンラインでも孤独にさせない学習環境「最強の国試塾」は講義開催日以外も受講生に付き添います。オンラインだからこそ、同じように学習している他の受講生やそれを見守るスタッフの存在を感じられる仕組みを提供します。「最強の国試塾」であなたが走り続けるために1.Dr.民谷との過去問徹底演習5カ年分の過去問を徹底的に演習します。何周回も演習を重ねることになりますが、これこそが合格への王道です。効率的に周回し、かつ各周回で確かな成長を感じられる独自のカリキュラムと講義設計で、受講生の皆様が実感できる学力の向上をお約束します。2.“ちょっとだけ先の”先輩医師によるチュータリング日々の学習の進み具合、その時その時の気持ち…そういった日常の小さなモヤモヤ、少し先に同じ経験をした先輩医師チューターと一対一で分かち合う時間を提供します。3.オンラインでも孤独にさせない学習環境「最強の国試塾」は講義開催日以外も受講生に付き添います。オンラインだからこそ、同じように学習している他の受講生やそれを見守るスタッフの存在を感じられる仕組みを提供します。講義スケジュール全てのコースは、原則毎月月曜日に講義を行います。月次の講義に加え、夏冬模試後の特別回も月曜日に開催となります。最終的な開催日・講義時間の確定は受講者の決定後となりますので、検討にあたってはこの件ご留意ください。※9月以降の講義日は8月に決定となります。コース紹介「最強の国試塾」は、個別指導コースと少人数ライブ指導コースの2パターンで開講します。お申し込みご興味を持たれた方はまずはお気軽にメールでお問い合わせください。お問い合わせいただいた方に対して、説明会や本申込みのご案内をお送りいたします。メールアプリが起動します。うまく動作しない場合は、別途igakusei-prj@carenet.co.jpまで件名に「国試塾」と記載して送信してください。\医学生専用LINEからもご相談受け付けています/https://lin.ee/2HPJ6jf送信元のメールアドレスは、株式会社ケアネットからDr.民谷の「最強の国試塾」に関する案内を送るためにのみ利用します。株式会社ケアネットの個人情報保護方針は以下のページをご参照ください。https://www.carenet.com/info/personal.html

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肺聴診による成人急性肺疾患の診断精度は限定的【論文から学ぶ看護の新常識】第2回

肺聴診による成人急性肺疾患の診断精度は限定的肺聴診による成人の急性肺疾患への診断精度は、感度が37%と低いことから、診断能力が限定的であることが示された。Luca Arts氏らの研究で、Scientific Reports誌の2020年4月30日号に掲載された。急性肺疾患を有する成人患者における肺聴診の診断精度:メタアナリシス研究グループは、成人の呼吸器症状を対象に肺聴診の診断精度をメタアナリシスで評価した。34件の研究から総計1万4,814例のデータを解析。主要アウトカムは、異なる肺病変および呼吸音に対する感度と特異度、尤度比、肺聴診の曲線下面積(AUC)の統合再解析値。観察された不均一性を低減するためにメタ回帰分析が実施された。34の研究全体で再解析された肺聴診の感度は37%(95%信頼区間[CI]:30~47%)、特異度は89%(95%CI:85~92%)だった。うっ血性心不全、肺炎、閉塞性肺疾患に対する尤度比とAUCは低かったが、陰性尤度比と特異度は許容できるものだった。異常呼吸音は、外傷患者における血気胸の診断に対して高い特異度を示した。結果は有意な不均一性により限定的であるが、肺聴診はもとより異なる臨床環境や患者集団で感度が低く、臨床での有用性が妨げられている。精度の高い診断手段が利用可能な場合には、肺聴診に代わるべきである。ただし、資源が限られ、疾患の有病率が高く、経験豊富な医師が行う場合には、肺聴診は依然として一定の役割がある。急性肺疾患が疑われる成人患者における肺聴診の診断精度を評価したメタアナリシスの結果です。今回の論文では、肺聴診の感度は37%、特異度は89%という値が示されました。つまり、肺聴診は、異常がない人を「異常なし」と比較的的確に判断できる一方で、疾患を抱える人を「見逃す」可能性が高いことを示唆しています。さらに、うっ血性心不全や肺炎、閉塞性肺疾患などに対する尤度比やAUCも低めであったため、これらの疾患の有無を肺聴診だけで判断することにはリスクがあると考えられます。外傷患者における(血)気胸など、明らかな異常呼吸音が高い特異度を示したという報告もありましたが、全体的に研究ごとの不均一性が大きく、結果を単純に一般化するには注意が必要とされています。そもそも肺聴診は、聴診器を用いて呼吸音を確認する基本的かつ伝統的な方法であり、その他の医療機器を必要としない点が強みです。一方で、それだけで判断するには情報が足りない場合があります。これらの結果から、肺聴診は、患者の訴えや、症状発現までの経過、検査結果などさまざまなデータとともに、患者の状態を把握する上での情報の一つとして位置付けるのがよいでしょう。今回のメタアナリシスで示された感度の低さを念頭に置き、安易に「聴診で異常がなかったから大丈夫」とするのではなく、症状の推移やバイタルサイン、追加の検査などを総合的に活用することが大切です。論文はこちらArts L, et al. Scientific Reports. 2020;10(1):7347.

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市中肺炎、ステロイドを検討すべき患者は?

 市中肺炎(CAP)は、過剰な炎症反応が死亡と関連することから、ステロイドの併用が有効である可能性が指摘されている。そこで、複数の無作為化比較試験(RCT)やシステマティックレビュー・メタ解析が実施されているが、ステロイドの併用による死亡率への影響については議論が続いている。そのような背景から、オランダ・エラスムス大学医療センターのJim M. Smit氏らの研究グループは、CAPによる入院患者を対象としたRCTの個別患者データ(IPD)を用いたメタ解析を実施し、ステロイドの併用の30日死亡率への影響を評価した。その結果、ステロイドの併用により30日死亡率が低下し、とくにCRP高値の患者集団で有用である可能性が示された。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2025年1月29日号に掲載された。 CAPにより入院した患者を対象に、ステロイド併用の有用性を検討した8つのRCTを抽出した。これらのRCTのIPDを用いてメタ解析を実施した。主要評価項目は30日死亡率とし、抗菌薬にステロイドを併用した群(ステロイド群)と抗菌薬にプラセボを併用した群(プラセボ群)を比較した。CRPや肺炎重症度(PSI)スコアなどによる治療効果の異質性も検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、8つのRCTの対象患者3,224例であった。・30日死亡率は、ステロイド群6.6%(106/1,618例)、プラセボ群8.7%(140/1,606例)であり、ステロイド群が有意に低かった(オッズ比[OR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.94)。・CRP 204mg/L以下の集団における30日死亡率は、ステロイド群13.0%(46/355例)、プラセボ群13.2%(49/370例)であり、両群間に差はみられなかった(OR:0.98、95%CI:0.63~1.50)。・CRP 204mg/L超の集団における30日死亡率は、ステロイド群6.1%(20/329例)、プラセボ群13.0%(39/301例)であり、ステロイド群が低かった(OR:0.43、95%CI:0.25~0.76)。・PSIスコア(クラスI~III vs.クラスIV/V)による治療効果の差はみられなかった。・ステロイド群では、高血糖の発現(OR:2.50、95%CI:1.63~3.83、p<0.0001)、再入院(OR:1.95、95%CI:1.24~3.07、p=0.0038)が多かった。 本研究結果について、著者らは「CAPによる入院患者において、CRP高値の場合はステロイドの併用を考慮すべきであることが示唆された」と考察した。

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混合性うつ病の精神運動興奮に対するトラゾドンIVの有効性

 精神運動興奮は、混合性うつ病の困難な症状であり、多くの場合、臨床アウトカムを悪化させ、治療を複雑化させる。イタリア・シエナ大学のPietro Carmellini氏らは、混合性うつ病患者を対象に、トラゾドン静脈内投与(IV)の有効性および忍容性を評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年1月13日号の報告。 対象は、混合性うつ病入院患者97例。症状重症度は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)を用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・治療初期において、興奮、不安、易怒性の有意な低減が観察された。・相関分析では、トラゾドンIVの投与量とMADRS(r=−0.23、p<0.05)、GAD-7の項目5(r=−0.27、p<0.001)、CGI-S(r=−0.22、p<0.05)のスコア改善との間に有意な負の相関が認められた。・治療期間においても、GAD-7の項目5(r=−0.29、p<0.001)、CGI-S(r=−0.27、p<0.001)のスコア改善と負の相関が認められ、これは治療期間が長くなると効果が低減する可能性を示している。・回帰分析では、投与量ではなく治療期間がGAD-7の項目5およびCGI-Sのスコア改善に有意な影響を及ぼすことが示唆された。・トラゾドンは、忍容性が良好であり、軽度の副作用が11.3%の患者でみられた。 著者らは「混合性うつ病の興奮および関連症状の低減に対するトラゾドンIV治療、とくに初期段階での治療が有効であることを示唆しており、併せて治療期間を最適化することの重要性が示された。今後の研究において、個別化された投与戦略や長期アウトカムを調査する必要がある」としている。

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自己免疫性皮膚疾患は心臓病のリスク増加につながる

 一部の皮膚疾患患者は心臓病の早期スクリーニングを受ける必要があるかもしれない。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター皮膚科のHenry Chen氏らの最新の研究によると、免疫システムが自己を攻撃する自己免疫性皮膚疾患患者では動脈硬化を発症するリスクが対象群と比べて72%増加することが、明らかになった。同氏らによる研究結果は、「JAMA Dermatology」に12月4日掲載された。 全身性エリテマトーデス(SLE)は全身に炎症を引き起こし、皮膚、関節、臓器に損傷を与える疾患である。米疾病対策センター(CDC)の報告によれば、米国にはSLE患者が約20万4,000人存在し、そのうちの少なくとも80%が皮膚症状を発症している。一方、皮膚のみに症状が現れることもあり、この病態は皮膚エリテマトーデス(CLE)と診断される。これまでに、SLEや乾癬のような自己免疫疾患の患者では、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが高まることが報告されている。しかし、CLE患者では、メタボリックシンドロームやがんのリスクが高まることは報告されてはいるものの、ASCVDのリスクについてはこれまで検証されてこなかった。 この研究では、IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseの2018年から2020年までの保険請求データが後ろ向きに解析された。具体的には、CLE患者群8,138人、SLE患者群2万4,675人、乾癬患者群19万2,577人を無病対照群8万1,380人と比較し、ASCVDの有病率および発症リスクを検証した。無病対照群はSLE、CLE、乾癬を発症していない人と定義し、年齢、性別、保険の種類などをCLE患者群とマッチングさせた。ASCVDは冠動脈疾患、心筋梗塞または脳血管障害の既往と定義。ASCVDの有病率と発症リスクの比較には、多変量ロジスティック回帰分析とCox比例ハザードモデルが用いられた。 多変量ロジスティック回帰分析によるASCVDの有病率は、無病対照群と比較してCLE患者群で72%(オッズ比1.72、95%信頼区間1.45~2.02)、SLE患者群で141%(同2.41、2.14~2.70)有意に高くなっていた(いずれもP<0.001)。 Cox比例ハザードモデルによるASCVDの発症リスクは、無病対照群と比較してSLE患者群(ハザード比2.23、95%信頼区間2.05~2.43)、CLE患者群(同1.32、1.13~1.55)で、有意な増加が認められた(いずれもP<0.001)。一方、乾癬患者群(同1.06、0.99~1.13)では統計学的有意性は認められなかった。 これらの結果を受けて研究グループは、「SLEやCLEはASCVDのリスク増加と関連しており、これらの患者の担当医には、適切なスクリーニング検査の実施と専門医への紹介が求められる可能性がある。また担当医は、心臓によい生活習慣(健康的な食事、適度な運動、喫煙の見直しなど)の重要性について患者にアドバイスを行う必要があるのではないか」と述べている。また、「これらの患者には、血圧とコレステロールの定期的なモニタリング、迅速な治療が必要になるかもしれない。喫煙を始めとしたASCVDのリスク因子についても今後の検証が必要である」と付言している。

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第253回 米国バイオテックの遺伝子編集ブタ腎臓の2例目移植が成功

多くのニュースで取り上げられた米国のマサチューセッツ総合病院での世界初のブタ腎臓のヒトへの移植成功からおよそ1年が過ぎ、同病院で2例目のその試みが主執刀医の河合 達郎氏らの手によって先月1月25日に無事完了しました1,2)。昨春2024年3月の最初の移植も河合氏らに手によるものでした3)。移植されたのは、河合氏が勤めるマサチューセッツ総合病院があるボストンの隣のケンブリッジを拠点とするバイオテクノロジー企業eGenesis社が開発している遺伝子編集ブタ腎臓です。EGEN-2784と呼ばれるそのブタ腎臓はよりヒトに順応するようにし、感染の害が及ばないようするための69のCRISPR-Cas9遺伝子編集を経ています。具体的には、主要な3つの糖鎖抗原が省かれており、7つのヒト遺伝子(TNFAIP3、HMOX1、CD47、CD46、CD55、THBD、EPCR)を盛んに発現し、ブタ内在性レトロウイルスが働けないように不活性化されています。EGEN-2784はヒトへの最初の移植例となった62歳の末期腎疾患患者Rick Slayman氏の体内ですぐに機能し始め、11.8mg/dLだった血漿クレアチニン濃度が移植後6日目までに2.2mg/dLに下がりました。Slayman氏は透析が不要になるほどに回復しました4)。しかし腎機能維持にもかかわらず、Slayman氏は移植から2ヵ月ほど(52日目)で呼吸困難に陥って急逝しました。持病の糖尿病や虚血性心筋症によって生じたとされる冠動脈疾患を伴う心肥大、左室線維化、後壁梗塞が剖検で見受けられました。移植腎臓の拒絶反応や血栓性微小血管症の所見は認められませんでした。移植したブタ腎臓のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)障害に起因しうる血液量(intravascular volume)の頻繁な変動がSlayman氏の不整脈リスクを高めた可能性はありますが、同氏はどうやら重度の虚血性心筋症と関連するリズム障害で突然心臓死(SCD)したようです。Slayman氏は生きるために移植を必要とする数千もの人々が希望を持てることを願ってEGEN-2784の移植を決めました5)。Slayman氏の遺志が引き継がれることを願う同氏の家族の期待を背に、河合氏らは66歳の男性Tim Andrews氏への2例目となるEGEN-2784移植手術を先月1月25日に無事終えました。2月7日のマサチューセッツ総合病院の発表によると、移植した腎臓は見込みどおり機能しており、Andrews氏は手術の1週間後の2月1日には早くも退院して透析いらずの生活を送っています1,2)。日本での開発も進むほかでもない日本のバイオテクノロジー企業のポル・メド・テックがeGenesis社と提携しており、昨年2月にはEGEN-2784の遺伝子編集技術を利用した移植医療用のブタを日本で生産できたことが発表されています6)。その9ヵ月ほど後の11月24日には、そうして作られた遺伝子改変ブタ腎臓のサルへの移植が実施されました7)。ことはさらに進み、先週5日にポル・メド・テックは実用化に向けた取り組みのための資金5億1千万円を調達したことを発表しています。ポル・メド・テックの遺伝子改変ブタ生産力は今のところ1年間あたり50頭です。2年後には1年間に数百頭生産できるようにし、移植実施医療機関への円滑な臓器の供給を目指します8)。参考1)Massachusetts General Hospital Performs Second Groundbreaking Xenotransplant of Genetically-Edited Pig Kidney into Living Recipient / Massachusetts General Hospital 2)eGenesis Announces Second Patient Successfully Transplanted with Genetically Engineered Porcine Kidney / BUSINESS WIRE3)World’s First Genetically-Edited Pig Kidney Transplant into Living Recipient Performed at Massachusetts General Hospital / Massachusetts General Hospital 4)Kawai T, et al. N Engl J Med.2025 Feb 7. [Epub ahead of print] 5)An Update on Mr. Rick Slayman, World’s First Recipient of a Genetically-Modified Pig Kidney / Massachusetts General Hospital6)eGenesis and PorMedTec Announce Successful Production of Genetically Engineered Porcine Donors in Japan / BUSINESS WIRE7)霊長類への遺伝子改変ブタ腎臓移植試験の実施について / PorMedTec8)第三者割当増資による資金調達実施のお知らせ / PorMedTec

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適切な感染症管理が認知症のリスクを下げる

 認知症は本人だけでなく介護者にも深刻な苦痛をもたらす疾患であり、世界での認知症による経済的損失は推定1兆ドル(1ドル155円換算で約155兆円)を超えるという。しかし、現在のところ、認知症に対する治療は対症療法のみであり、根本療法の開発が待たれる。そんな中、英ケンブリッジ大学医学部精神科のBenjamin Underwood氏らの最新の研究で、感染症の予防や治療が認知症を予防する重要な手段となり得ることが示唆された。 Underwood氏によると、「過去の認知症患者に関する報告を解析した結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬の使用は、いずれも認知症リスクの低下と関連していることが判明した」という。この研究結果は、同氏を筆頭著者として、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に1月21日掲載された。 認知症の治療薬開発には各製薬企業が注力しているものの、根本的な治療につながる薬剤は誕生していない。このような背景から、認知症以外の疾患に使用されている既存の薬剤を、認知症治療薬に転用する研究が注目を集めている。この方法の場合、薬剤投与時の安全性がすでに確認されているので、臨床試験のプロセスが大幅に短縮される可能性がある。 Underwood氏らは、1億3000万人以上の個人、100万症例以上の症例を含む14の研究を対象としたシステマティックレビューを行い、他の疾患で使用される薬剤の認知症治療薬への転用可能性について検討を行った。 文献検索には、MEDLINE、Embase、PsycINFOのデータベースを用いた。包括条件は、成人における処方薬の使用と標準化された基準に基づいて診断された全原因認知症、およびそのサブタイプの発症との関連を検討した文献とした。また、認知症の発症に関連する薬剤(降圧薬、抗精神病薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)と認知症リスクとの関連を調べている文献は除外した。 検索の結果、4,194件の文献がヒットし、2人の査読者の独立したスクリーニングにより、最終的に14件の文献が抽出された。対象の文献で薬剤と認知症リスクとの関連を調べた結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬が認知症リスクの低減に関連していることが明らかになった。一方、糖尿病治療薬、ビタミン剤・サプリメント、抗精神病薬は認知症リスクの増加と関連していた。また、降圧薬と抗うつ薬については、結果に一貫性がなく、発症リスクとの関連について明確に結論付けられなかった。 Underwood氏は、「認知症の原因として、ウイルスや細菌による感染症が原因であるという仮説が提唱されており、それは今回得られたデータからも裏付けられている。これらの膨大なデータセットを統合することで、どの薬剤を最初に試すべきかを判断するための重要な証拠が得られる。これにより、認知症の新しい治療法を見つけ出し、患者への提供プロセスを加速できることを期待する」と述べた。 また、ケンブリッジ大学と共同で研究を主導した英エクセター大学のIlianna Lourida氏は、ケンブリッジ大学のプレスリリースの中で、「特定の薬剤が認知症リスクの変化と関連しているからといって、それが必ずしも認知症を引き起こす、あるいは実際に認知症に効くということを意味するわけではない。全ての薬にはベネフィットとリスクがあることを念頭に置くことが重要である」と付け加えている。

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ATTR心アミロイドーシス患者においてCRISPR-Cas9を用いた生体内遺伝子編集治療であるnex-zは単回投与にて血清TTR値を持続的に減少させた(解説:原田和昌氏)

 ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチン(TTR)がアミロイド線維として各種組織に沈着することで引き起こされる疾患であり、非遺伝性で加齢に伴うATTRwtアミロイドーシスと遺伝子異常に由来するATTRvアミロイドーシスに分けられる。ATTR心アミロイドーシス(ATTR-CM)は心筋症や心不全が進行し、診断後は中央値2~6年で死に至る。治療薬としてTTR安定化薬のタファミジスが承認されており、siRNA静脈注射剤のパチシラン(3週に1回)は患者のQOLを維持し、皮下注射製剤のブトリシラン(3ヵ月に1回)は全死亡を低下させたことから、適応追加承認を申請中である。しかし、これらの治療でも長期間かけて疾患は徐々に進行する。 より完全なTTRのノックダウンを期待して、CRISPR-Cas9による生体内遺伝子編集治療が考案された。これは、肝臓に集積するようデザインされた脂質ナノ粒子、TTRに対するシングルガイドRNA(crRNA-tracrRNAキメラ)、化膿性レンサ球菌のCas9 mRNAからなる。動物実験でnex-z(NTLA-2001)は1回の静脈内投与にて血清TTR値を95%以上低下させ、効果は持続的であった。 英国のFontana氏らはATTR-CM患者に固定用量のnex-zを1回静脈注射し、安全性と薬力学、血清TTR値を評価する第I相オープンラベル試験を行った。副次エンドポイントはNT-proBNP値、高感度心筋トロポニンT値、6分間歩行距離、NYHA心機能分類の変化であった。心不全既往または併存のATTR-CM患者36例を対象とし、追跡期間は18ヵ月であった。NYHA III群が50%、ATTRv心アミロイドーシスが31%であった。血清TTR値は急速に低下し28日で89%、12ヵ月で90%減少した。有害事象は34件で、注入反応5例、AST上昇が2例、重篤な有害事象14例(39%)はすべてATTR-CMの症状であった。副次エンドポイントのNT-proBNP値、高感度心筋トロポニンT値に変化なく、6分間歩行距離は12ヵ月で5m延長したが有意ではなかった。92%の患者のNYHA心機能分類が改善ないしは変化なしであった。 CRISPR-Cas9システムを用いることで、容易にノックアウトやノックインといったゲノム編集を行うことができるようになった。本試験のnex-zはATTR-CMに対する生体内遺伝子編集治療であるが、すでにβサラセミア、鎌状赤血球症に対する遺伝子編集治療も試みられている。ATTR-CMのトランスサイレチンはほとんど肝臓で作られているためあまり問題にならないが、類似した他の配列を切断してしまうオフターゲット効果などへの懸念や、応用範囲が広いだけに倫理的な問題も想定されるため、今後の動向に注視する必要がある。

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MSI-H/dMMR進行大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブvs.ニボルマブ単剤の中間解析/Lancet

 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の転移を有する大腸がん患者において、ニボルマブ単剤療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、治療ラインを問わず無増悪生存期間が有意に優れ、安全性プロファイルは管理可能で新たな安全性シグナルの発現はないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年2月1日号で報告された。23ヵ国の無作為化第III相試験 CheckMate 8HW試験は、(1)1次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法と化学療法との比較、および(2)すべての治療ラインにおけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法とニボルマブ単剤療法との比較を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に日本を含む23ヵ国128病院で患者を登録した(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。(1)の結果はすでに発表済みで、本論では(2)の中間解析の結果が報告されている。 年齢18歳以上、切除不能または転移を有する大腸がんと診断され、各施設の検査でMSI-HまたはdMMR(あるいはこれら両方)の患者を対象とした。これらの患者を、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法、ニボルマブ単剤療法、化学療法(±標的治療)を受ける群に、2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 (2)の主要評価項目は、中央判定でもMSI-H/dMMRであった患者におけるすべての治療ラインの無増悪生存とし、盲検下独立中央判定によって評価した。奏効率も良好 (2)の2つの治療群に707例を登録し、ニボルマブ+イピリムマブ群に354例(年齢中央値62歳[四分位範囲[IQR]:52~70]、女性192例[54%]、未治療例202例[57%])、ニボルマブ群に353例(63歳[51~70]、163例[46%]、201例[57%])を割り付けた。それぞれ296例(84%)および286例(81%)が、中央判定でもMSI-H/dMMRであり、主要評価項目の評価の対象となった。データカットオフ日(2024年8月28日)の時点における追跡期間中央値は47.0ヵ月(IQR:38.4~53.2)だった。 中央判定でMSI-H/dMMRであった集団では、ニボルマブ群と比較してニボルマブ+イピリムマブ群は、無増悪生存期間が有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.48~0.81、p=0.0003)。無増悪生存期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群が未到達(95%CI:53.8~推定不能)、ニボルマブ群は39.3ヵ月(22.1~推定不能)であった。また、12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月時の推定無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群がそれぞれ76%、71%、68%、ニボルマブ群は63%、56%、51%だった。 盲検下独立中央判定による奏効率(完全奏効+部分奏効)は、ニボルマブ群が58%であったのに対しニボルマブ+イピリムマブ群は71%と有意に優れた(p=0.0011)。奏効期間中央値は両群とも未到達で、奏効までの期間中央値は両群とも2.8ヵ月だった。Grade3/4の治療関連有害事象は22%で 併用療法の安全性プロファイルは管理可能で、新たな安全性シグナルの発現は認めなかった。全Gradeの治療関連有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群で352例中285例(81%)、ニボルマブ群で351例中249例(71%)に、Grade3または4の治療関連有害事象はそれぞれ78例(22%)および50例(14%)に発現した。最も頻度の高い治療関連有害事象はそう痒(ニボルマブ+イピリムマブ群26%、ニボルマブ群18%)で、投与中止に至った治療関連有害事象の頻度(14%、6%)も併用群で高かった。 最も頻度の高いGrade3または4の免疫介在性有害事象は、下痢または大腸炎(ニボルマブ+イピリムマブ群3%、ニボルマブ群2%)、下垂体炎(3%、1%)、副腎機能不全(3%、<1%)であった。治療関連死は3例に認め、ニボルマブ+イピリムマブ群で2例(それぞれ心筋炎および肺臓炎による死亡)、ニボルマブ群で1例(肺臓炎)であった。 著者は、「これらの結果は、1次治療において化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ併用療法で優れた無増悪生存期間を示した結果と併せて、この免疫療法薬の2剤併用療法が転移を有するMSI-H/dMMR大腸がん患者に対する新たな標準治療となる可能性を示唆する」としている。

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あなたのプロテインは安全? 重金属汚染の可能性

 米国のプロテイン・サプリメント市場規模は、2023年に97億ドル(1ドル155円換算で約1兆5000億円)を突破した。しかし、広く消費される市販のプロテインパウダーは、あなたが思っているほど健康的ではないかもしれない。 米国の非営利組織Clean Label Project(CLP)は最新の調査結果の中で、「ポピュラーなプロテインパウダー(特に植物性の製品、オーガニック製品、チョコレート風味の製品)には、高レベルの鉛とカドミウムが含まれている可能性がある」と報告した。鉛には人体に安全な濃度はなく、カドミウムは発がん性物質であることが知られている。 今回の調査では、市場シェアの83%を占めるトップブランド70社の160製品を検査した(ブランド名は非公開)。これらの製品について、重金属やビスフェノールA(BPA)のような内分泌かく乱物質を含む汚染物質258項目、3万5,862件の検査を行った。 その結果、製品全体の47%がカリフォルニア州の厳格な化学物質規制法であるプロポジション65(CA Prop 65)を含む、連邦または州の安全性規制値のいずれか一つを超えていた。さらに対象製品の21%に、CA Prop 65での規制値の2倍以上の鉛が含まれていた。 製品のカテゴリー別の検査結果を比較すると、次のことが明らかになった。・大豆などを原料とする植物性プロテインパウダーは、チーズ製造の副産物である乳清(ホエイ)を原料とする製品と比べ、鉛が約3倍、カドミウムが約5倍多く含まれていた。・オーガニックのプロテインパウダーには、非オーガニック製品に比べて、鉛が3倍、カドミウムが2倍多く含まれていた。・チョコレート味のプロテインパウダーには、バニラ味の製品に比べて、鉛が4倍、カドミウムが110倍も多く含まれていた。 植物は本来、土壌や水から重金属を吸収するが、産業廃棄物や鉱業、特定の農薬や肥料によって汚染された土壌で栽培された場合、重金属含有量がさらに増加する可能性がある。豊富なフラボノイドと抗酸化物質で知られるダークチョコレートも、鉛やカドミウムを含む重金属の濃度が高くなりやすい。 一方で、今回の調査では良いニュースも報告された。2018年に行われた調査では、調査対象製品の5%からBPAとその類似物質のビスフェノールS(BPS)が検出されたが、今回検査された160製品では、これらの物質が検出されたのは、わずか3製品(約1.9%)のみにとどまった。これは、消費者の要望とこの化学物質をめぐる論争に対する業界の対応が反映された結果といえる。 今回の調査では、内分泌かく乱物質で汚染されている製品は少なかったものの、重金属については、植物由来のプロテインパウダーでの汚染レベルが最も高く、乳清ベースの製品の汚染レベルは植物由来のプロテインパウダーよりも一貫して低いことが明らかになった。CLPのエグゼクティブディレクターJaclyn Bowen氏は、今回の調査結果について、「消費者が有害な汚染物質を避けながらプロテインパウダーを選択する際の参考になるかもしれない」と述べた。 また、Bowen氏は、「消費者は健康とパフォーマンスのためにプロテインやサプリメント製品を購入しており、その製品が安全であることを期待している。食品業界はその原材料の安全性について、透明性のある情報を消費者に示す義務がある」とも述べている。

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ハッチンソン・ギルフォード早老症候群〔HGPS:Hutchinson-Gilford progeria syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ハッチンソン・ギルフォード早老症候群(Hutchinson-Gilford progeria syndrome:HGPS)は、1886年にJonathan Hutchinsonと1897年にHasting Gilfordが報告したことから命名された疾患である。遺伝性早老症の中でも、とくに症状が重篤な疾患であり、出生後半年頃より著しい成長障害、皮膚の強皮症様変化、禿頭、脱毛、小顎、老化顔貌、皮下脂肪の減少、四肢関節の拘縮を呈する。精神運動機能や知能は正常である。脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、心血管系合併症により平均寿命は14.6歳と報告されている。■ 疫学全世界で350~400例の典型HGPS患者が報告されており、米国NPO法人のProgeria Research Foundationには、2024年12月末の時点で151例の典型HGPS患者が登録されている。また、2024年9月30日時点でアメリカのHGPS有病率は約2,000万人に1人と報告されている。中国からの論文では調査した17省の有病率(中央値)は5,300万人に1人で、最も頻度の高い海南省は約2,300万に1人と報告されている。筆者らが2023年に全国調査した結果ではわが国のHGPS有病率は約1,667万人に1人であった。■ 病因ラミンAは核膜を物理的に支える枠組みを構成する。ラミン分子が核構造を物理的に安定化させることでクロマチン構造を維持し、また、安定的な転写因子との共役が機能的にも重要である。変異ラミンAタンパクであるプロジェリン(またはファルネシル化プレラミンA)が蓄積すると核膜構造に異常を来し、物理的影響による損傷を受けやすくなる。また、ヘテロクロマチンの分布や量に変化が生じ、異常なテロメアが形成されることで染色体の機能が変化する。このエピジェネティックな変化はすべての遺伝子発現に大きな影響を与える。ラミンAは発生過程のさまざまな転写調節因子に結合し、種々の遺伝子発現に関与するため、プロジェリンは組織構築の過程に重要なNotchシグナル伝達経路の下流で機能する複数の因子の発現量を変化させ、胎児期から成人期まで細胞と臓器の機能分化に大きな影響を与える。また、HGPS患者において臨床的に最も重篤な合併症は小児期早期からの脳心血管障害である。これはプロジェリンの発現が血管平滑筋細胞に小胞体ストレスや炎症を引き起こし、その結果、アテローム性動脈硬化が進行すると報告されている。■ 病態:プロジェリン産生のメカニズムLMNA遺伝子の典型的変異c.1824C>Tは潜在的なスプライス部位ドナーを活性化することにより異常スプライシングを引き起こし、ラミンAタンパク質の中間部分に50アミノ酸が欠失した変異型プレラミンAが産生される。この変異はC末端CAAXモチーフに影響を与えないため、ZMPSTE24によりカルボキシル末端の3アミノ酸は切断され、末端のシステインはカルボキシメチル化される。ZMPSTE24が認識し切断する配列(RSYLLG)は、異常スプライシングにより欠失した50アミノ酸内に含まれるためエンドペプチダーゼZMPSTE24で切断されない。その結果、恒久的にファルネシル化とカルボキシメチル化された変異型プレラミンA、すなわちプロジェリンが産生される。同様にZMPSTE24が認識するプレラミンA内の配列(RSYLLG)内のミスセンスバリアントによりZMPSTE24で切断を受けない分子病態が報告されている。また、ZMPSTE24遺伝子異常により正常なZMPSTE24が産生されないため、プレラミンAの内部切断が起こらずプロジェリンが産生され、その結果、下顎末端異形成症を発症する。■ 症状正常新生児として出生するが、乳児期から著明な成長障害と皮膚の萎縮・硬化を呈する。乳幼児期から脱毛、前額突出、小顎などの早老様顔貌、皮膚の萎縮・硬化、関節拘縮が観察される。動脈硬化性疾患による重篤な脳血管障害や心血管疾患は加齢とともに顕在化し、生命予後を左右する重要な合併症である。悪性腫瘍は10歳以上の長期生存例に認められる重要な合併症である。■ 分類1)プロジェリンを産生する典型遺伝型を保有するHGPS(典型HGPS)LMNA遺伝子のエクソン11内の点突然変異c.1824C>T(p.Gly608Gly)が原因である。特徴的な臨床表現型のHGPS患者の約9割がこの病的バリアントを保有する。この変異によりスプライシング異常が生じ、変異ラミンAタンパク(プロジェリン)が合成される。2)プロジェリンを産生する非典型遺伝型を保有するHGPS(非典型HGPS)非典型HGPSの臨床的な特徴は典型HGPに類似する。LMNA遺伝子の典型病的バリアント(c.1824C>T)以外でプロジェリンを産生するエクソン11またはイントロン11の病的バリアントが原因である。c.1821G>A(p.Val607Val)、c.1822G>A(p.Gly608Ser)、c.1968+5G>C、c.1968+1G>A、c.1968+2T>A、c.1968+1G>Aなどが報告されている。3)プロセシング不全性のプロジェライド・ラミノパチー(PDPL)LMNA遺伝子内の特定の位置の病的ミスセンスバリアントによりZMPSTE24の認識部位を喪失するため、プレラミンAが内部切断されない。c.1940T>G(p.L647R)が報告されている。また、ZMPSTE24遺伝子のホモ接合性または複合ヘテロ接合性機能喪失型病的バリアント(ZMPSTE24欠損)によりプレラミンAが内部切断されない。いずれもプロジェリンが産生される。■ 予後典型HGPSは10歳代でほぼ全例が死亡し、生命予後は極めて不良である。一方で、非典型HGPSでは40歳以上の長期生存例も報告されているが、動脈硬化性疾患に加え、がんの発生(とくに多重がん)に留意する必要がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)特徴的な臨床症状とLMNA遺伝子検査による。c.1824C>T(p.Gly608Gly)がヘテロ接合性に確認されれば、典型HGPSと診断される。過去にプロジェリン産生が証明されている病的バリアントがヘテロ接合性に確認されれば、非典型HGPSと診断される。ホモ接合性または複合ヘテロ接合性ZMPSTE24の機能喪失型バリアントによりZMPSTE24遺伝子異常と診断する。わが国の指定難病「ハッチンソン・ギルフォード症候群(告示番号333)」では、臨床症状と遺伝学的検査の組み合わせにより「Definite」と「Probable」を分けて診断する(令和7年に改訂が予定されている)。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)プロジェリンが原因であるHGPSに対して、ファルネシル転移酵素阻害薬ロナファルニブ(商品名:ゾキンヴィ)の臨床的効果が証明され、米国食品医薬品局(FDA)は2020年11月に世界で初めてロナファルニブを医薬品として承認した。以降、欧州やオーストラリア、中国でも承認され、わが国においても2024年1月に厚生労働省に薬事承認され同年5月より販売が開始されている。なお、本剤は、典型HGPS、非典型HGPSに加え、プロセシング不全性のプロジェロイド・ラミノパチーも適応症となる。Gordonらは、本剤の内服治療により有意な死亡率の低下を認めたと報告している。4 今後の展望■ 診断法プロジェリンに対する特異的モノクロナル抗体を用いた血漿中プロジェリンの免疫測定法がGordon らの研究グループから報告されている。国内でもLC-MS/MSを用いたラミンAタンパク質バリアントの測定系の確立とその実用化に向けた準備が進められている。■ 治験プロジェリンとラミンAの結合阻害作用を有する低分子化合物Progerininの国際共同治験(Phase I)が2020年より進められている。ほかの国際治験の進捗については、Progeria Research Foundationのホームページで随時公開されている。5 主たる診療科小児科、皮膚科、整形外科、循環器内科、遺伝科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報令和6年度 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「早老症のエビデンス集積を通じて診療の質と患者QOLを向上する全国研究」研究班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)NPO法人 Progeria Research Foundation(英語のホームページで詳細な情報・資料を公開/一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Progeria Clinical Care Handbook(プロジェリアの子どもたちの家族と医療従事者のためのガイド第2版)(日本語版のガイドが無料ダウンロードできる/医療従事者向けのまとまった情報)1)Hutchinson J. Med Chir Trans. 1886;69:473-477.2)Gilford H. Med Chir Trans. 1897;80:17-46:25.3)Gordon LB, et al. GeneReviews [Internet]; 1993-2024.4)Wang J, et al. Pediatr Res. 2024;95:1356-1362.5)Gordon LB, et al. Circulation. 2023;147:1734-1744.公開履歴初回2025年2月7日

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食物アレルギーの原因食物

食物アレルギーの原因として多いのは?マカデミア ソバナッツ1.1%1.1%0歳大豆 1.3%キウイ1.3%エビ3.0%年齢別にみると…ピスタチオ0.8%1~2歳その他鶏卵 61.8%鶏卵10.6%牛乳 20.9%クルミ 19.6% イクラ 14.1%小麦 13.1%イクラ鶏卵26.7%カシューナッツ4.6%28.7% クルミ 34.5%13.0% 落花生 11.6%カシューナッツ落花生 7.4%9.2%カシューナッツ6.5%7~17歳イクラ5.7%小麦18.9%エビエビ16.5%大豆9.1%12.4%クルミイクラ 7.9%7.0%15.2%カシューナッツ 6.3%※各年齢群で5%以上を占めた原因食物※初発例のみ(n=3,981人)小麦n=6,033人※初発および誤食例を含む18歳以上クルミ 18.7%落花生8.1%3~6歳牛乳13.4%消費者庁「令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」掲載「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」から「即時型食物アレルギーの原因食物(品目別)」・「年齢群別原因食物(初発例)」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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医師介入が死亡率に影響?がん患者診療のための栄養治療ガイドライン発刊

 日本人がん患者の栄養管理は、2022年より周術期栄養管理加算や外来栄養食事指導料が算定できるようになったことで、その管理体制は改善傾向にある。しかし、栄養治療が必要な患者に十分届いているとは言い難く、適切な栄養管理によってより良い予後をもたらすことが日本栄養治療学会(JSPEN)としての喫緊の課題になっている。そんな最中、2024年10月に『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 2024年版 総論編』が発刊されたため、作成ワーキンググループのガイドライン委員会前委員長である小谷 穣治氏(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野 教授)にがん患者の栄養管理の実際やガイドラインで押さえておくべき内容について話を聞いた。がん患者への栄養管理の意味 がん患者の場合、がんの病状変化や治療により経口摂取に支障が生じ、体重減少を伴う低栄養に陥りやすくなるため、「食事摂取量を改善させる」「代謝障害を抑制する」「筋肉量と身体活動を増加させる」ことを目的として栄養治療が行われる。 国内におけるがん治療に対する栄養治療は、食道癌診療ガイドラインや膵癌診療ガイドラインなど臓器別のガイドラインではすでに示されているが、海外にならって臓器横断的な視点と多職種連携を重要視したガイドラインを作成するべく、今回、JSPENがその役割を担った。本書では、重要臨床課題として「周術期のがん患者には、どのような栄養治療が適切か?」「放射線療法を受けるがん患者には、どのような栄養治療が適切か?」といった事柄をピックアップし、Minds*方式で作成された4つのClinical Question(CQ)を設定している。本書の大部分を占める背景知識では現況のエビデンス解説が行われ、患者団体から集まった疑問に答えるコラムが加わったことも特徴である。*厚生労働省委託業務EBM普及推進事業、Medical Information Distribution Service なお、がん患者に対する栄養治療が「がん」を増殖させるという解釈は、臨床的に明らかな知見ではないため、“栄養治療を適切に行うべき”と本書に記されている。医師に求められる栄養治療 医師が栄養治療に介入するタイミングについて、p.39~40に記された医師の役割の項目を踏まえ、小谷氏は「(1)診断時、(2)治療開始前、(3)治療中、(4)治療終了後[入院期間中、退院後]と分けることができるが、どの段階でも介入が不足しているのではないか。とくに治療開始前の介入は、予後が改善されるエビデンスが多数あるにもかかわらず(p.34~35参照)、介入しきれていない印象を持っている。ただし、入院治療が始まる前から食欲低下による痩せが認められる場合には、微量元素やビタミン類を含めた血液検査がなされるなどの介入ができていると見受けられる」とコメントした。 介入するうえでの臨床疑問はCQで示されており、CQ1-1(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療を行うことは推奨されるか?[推奨の強さ:弱い、エビデンスの確実性:弱い])については、日本外科感染症学会が編集する『消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン』のCQ3-4(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療[経口・経腸栄養、静脈栄養]を行うことは推奨されるか?)と同様に術前介入について言及している。これに対し同氏は「両者に目を通す際、日本外科感染症学会で評価されたアウトカムはSSI※であり、本ガイドラインでの評価アウトカム(術後合併症数、術後死亡率、術後在院日数など)とは異なることに注意が必要」と述べた。※Surgical Site Infectionの略、手術部位感染 また、CQ1-2(頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、周術期に免疫栄養療法を行うことは推奨されるか?[推奨の強さ:強い、エビデンスの確実性:中程度])で触れられている免疫栄養療法については、「アルギニン、n3系脂肪酸、グルタミンが用いられるが、成分ごとに比較した評価はなく、どの成分が術後合併症の発生率低下や費用対効果として推奨されるのかは不明」と説明しながら、「今回の益と害のバランス評価において、免疫栄養療法を実施することによって術後合併症が22%減少、術後在院日数が1.52日短縮することが示された。また、術後の免疫栄養療法では術後の非感染性合併症も減少する可能性が示された(p.135)」と説明した。<目次>―――――――――――――――――――第1章:本ガイドラインの基本理念・概要第2章:背景知識 1. がん資料における代謝・栄養学 2. 栄養評価と治療の実際 3. 特定の患者カテゴリーへの介入第3章:臨床疑問 CQ1-1:頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、術前の一般的な栄養治療(経口・経腸栄養、静脈栄養)を行うことは推奨されるか? CQ1-2:頭頸部・消化管がんで予定手術を受ける成人患者に対して、周術期に免疫栄養療法を行うことは推奨されるか? CQ2:成人の根治目的の癌治療を終了したがん罹患経験者(再発を経験した者を除く)に対して、栄養治療を行うことは推奨されるか? CQ3:根治不能な進行性・再発性がんに罹患し、抗がん薬治療に不応・不耐となった成人患者に対して、管理栄養士などによる栄養カウンセリングを行うことは推奨されるか?第4章:コラム――――――――――――――――――― 最後に同氏は、「現代は2人に1人はがんになると言われているが、もともとがん患者は栄養不良のことが多い。また、その栄養不良ががんを悪化させ、栄養不良そのもので亡くなるケースもある。周術期や治療前にすでに栄養状態が悪くなっている場合もあることから、栄養管理の重要性を理解するためにも、がんに関わる医療者全員に本書を読んでいただきたい」と締めくくった。

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コロナとインフル、臨床的特徴の違い~100論文のメタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの鑑別診断の指針とすべく、中国・China-Japan Union Hospital of Jilin UniversityのYingying Han氏らがそれぞれの臨床的特徴をメタ解析で検討した。その結果、患者背景、症状、検査所見、併存疾患にいくつかの相違がみられた。さらにCOVID-19患者ではより多くの医療資源を必要とし、臨床転帰も悪い患者が多いことが示された。NPJ Primary Care Respiratory Medicine誌2025年1月28日号に掲載。 著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19はインフルエンザと比較して、男性に多く(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.23~1.74)、肥満度が高い人に多かった(平均差[MD]:1.43、95%CI:1.09~1.77)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、現在喫煙者の割合が低かった(OR:0.25、95%CI:0.18~0.33)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、入院期間(MD:3.20、95%CI:2.58~3.82)およびICU入院(MD:3.10、95%CI:1.44~4.76)が長く、人工呼吸を必要とする頻度が高く(OR:2.30、95%CI:1.77~3.00)、死亡率が高かった(OR:2.22、95%CI:1.93~2.55)。・インフルエンザ患者はCOVID-19患者より、上気道症状がより顕著で、併存疾患の割合が高かった。

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認知症ケア、積極的介入でアウトカムに差はなし/JAMA

 認知症ケア専門家による医療システムを基盤とするケアとソーシャルワーカーや看護師による地域ケアのいずれにおいても、認知症患者の行動症状および介護者の負担に関して、積極的介入と通常ケア(介入なし)による有意な違いは認められなかった。米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDavid B. Reuben氏らが、米国の4施設で実施した無作為化試験の結果を報告した。認知症に対するさまざまなケアの有効性は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月29日号掲載の報告。医療システム型ケア、地域密着型ケア、積極的介入なしの3群に無作為化 研究グループは、地域居住の認知症患者とその介護者を、医療システムを基盤とするケア(医療システム型ケア)群、地域密着型ケア群、および積極的介入なし(通常ケア)群のいずれかに、7対7対1の割合で無作為に割り付けた。 医療システム型ケア群では、医療システム内の認知症ケア専門家がUCLAアルツハイマー病・認知症ケアプログラムに基づく包括的な認知症ケアを行った。地域密着型ケア群では、Benjamin Rose Institute on Aging(BRI)のケア相談モデルを用いてBRIケアコンサルタントとして認定されたソーシャルワーカー、看護師または認可セラピストが電話で包括的な認知症ケアを行った。通常ケア群では、追加の介入は行わなかった。 主要アウトカムは、介護者による認知症患者の神経精神目録-質問票(Neuropsychiatric Inventory Questionnaire:NPI-Q)の重症度スコア(範囲:0~36、高スコアほど行動症状の重症度が高い、臨床的に意義のある最小差[MCID]:2.8~3.2)、ならびに修正介護者負担指標(Caregiver Strain Index:CSI、範囲:0~26、高スコアほど負担が大きい、MCID:1.5~2.3)であった。また、副次アウトカムとして、介護者の自己効力感(範囲:4~20、高スコアほど自己効力感が高い)など3項目を評価した。 2019年6月28日~2022年1月31日に計2,176組(認知症患者とその介護者)が登録され、医療システム型ケア群1,016組、地域密着型ケア群1,016組、通常ケア群144組に無作為に割り付けられた。最終追跡調査日は2023年8月21日であった。積極的介入と介入なしでアウトカムに差はなし 認知症患者2,176例は平均年齢80.6歳、女性58.4%、黒人またはヒスパニック系20.6%、介護者2,176例は平均年齢65.2歳、女性75.8%、黒人またはヒスパニック系20.8%であった。主要アウトカムは参加者の99%以上で評価され、1,343例(登録者の62%、91%が生存しており、かつ試験を中止していなかった)が18ヵ月間の試験を完了した。 主要アウトカムに関して、医療システム型ケア群、地域密着型ケア群と通常ケア群との間に有意差は認められなかった。 NPI-Qスコアの最小二乗平均値(LSM)は、医療システム型ケア群9.8、地域密着型ケア群9.5、通常ケア群10.1であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は0.30(97.5%信頼区間[CI]:-0.18~0.78)、同通常ケア群との差は-0.33(-1.32~0.67)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は-0.62(-1.61~0.37)であった。 修正CSIのLSMは、医療システム型ケア群10.7、地域密着型ケア群10.5、通常ケア群10.6であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は0.25(97.5%CI:-0.16~0.66)、同通常ケア群との差は0.14(-0.70~0.99)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は-0.10(-0.94~0.74)であった。 副次アウトカムでは介護者の自己効力感のみが、両ケア群と通常ケア群を比較した場合に有意な改善が認められたが、ケア群間では有意差は認められなかった。介護者の自己効力感のLSMは、医療システム型ケア群15.1、地域密着型ケア群15.2、通常ケア群14.4であり、医療システム型ケア群の地域密着型ケア群との差は-0.16(95%CI:-0.37~0.06)、同通常ケア群との差は0.70(0.26~1.14)、地域密着型ケア群の通常ケア群との差は0.85(0.42~1.29)であった。

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ニンジンが糖尿病治療の助けになる?

 2型糖尿病の患者がニンジンを食べると、健康に良い効果を期待できるかもしれない。その可能性を示唆する、南デンマーク大学のLars Porskjaer Christensen氏らの研究結果が、「Clinical and Translational Science」に12月3日掲載された。同氏は大学発のリリースの中で、「われわれは、ニンジンが将来的には2型糖尿病の食事療法の一部として利用されるという、潜在的な可能性を秘めていると考えている」と記している。 この研究でChristensen氏らは、デンプン質の野菜に含まれる栄養素が生体に引き起こす代謝効果に着目し、マウスモデルを用いた実験を行った。特に、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)に対する作用を持つことが報告されている、ニンジンの可能性に焦点を当てた。なお、PPARγは、チアゾリジン薬という経口血糖降下薬の主要な作用標的でもある。 2型糖尿病を誘発させたマウスを3群に分けて、1群は低脂肪の餌を与えて飼育。他の2群は、非健康的な人の食習慣を模して、高脂肪の餌を与えた。さらに、高脂肪食群の一方の餌には、フリーズドライのニンジン粉末を10%の割合で混ぜて与えた。このような条件で16週間飼育して、その前後で糖負荷試験を行ったほか、腸内細菌叢の組成を比較検討した。 ベースラインの糖負荷後の血糖値の推移には有意な群間差はなかったが、16週後には、低脂肪食群の血糖変動が最も少なく、高脂肪食の2群では負荷後の血糖上昇が大きいという差が生じていた。しかし、高脂肪食の2群で比較した場合、ニンジン粉末を混ぜて飼育した群のほうが、糖負荷直後の血糖上昇幅が少なかった。腸内細菌叢の分析からは、ニンジン粉末を混ぜて飼育したマウスは細菌叢の多様性が高いことが明らかになった。 では、ニンジンはヒトの健康維持にも役立つのだろうか? 著者らは、本研究の結果を直ちにヒトに適用することには慎重な姿勢を示しながらも、ニンジンがヒトの健康にも影響を及ぼし得るかを検証するため、新たな研究資金の確保を目指しているとのことだ。もし、ニンジンに含まれている化合物が、ヒトに対してもマウスと同様の作用を発揮するとしたら、米国に住む膨大な数の2型糖尿病患者に恩恵をもたらす可能性がある。また、本研究で得られた知見から、糖尿病治療薬の効果をより高める手段が見つかるかもしれない。 なお、著者らは、ニンジンの健康効果を期待して摂取する場合には、調理の手をあまり加えずに食べることを勧めている。調理の工程で、健康へのプラス作用が期待される化合物が全く失われることはないものの、量が減ってしまう可能性があるとのことだ。

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日本人HER2+進行乳がんへのペルツズマブ再投与、OS最終解析結果(PRECIOUS)/JCO

 ペルツズマブ治療歴のある、HER2陽性局所進行/転移乳がんに対し、ペルツズマブ再投与(ペルツズマブ+トラスツズマブ+主治医選択による化学療法)はトラスツズマブ+主治医選択による化学療法と比較して治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが、第III相PRECIOUS試験の主要解析結果として報告されている。今回、熊本大学の山本 豊氏らは、同試験の全生存期間(OS)の最終解析結果をJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月24日号で報告した。 PRECIOUS試験では、局所進行/転移乳がんに対する1次または2次治療としてペルツズマブを含む治療歴を有する患者を、ペルツズマブ再投与群(PTC群)とトラスツズマブ+主治医選択による化学療法群(TC群)に1:1の割合で無作為に割り付けた(PTC群110例、TC群109例)。主要評価項目は治験責任医師評価によるPFS、重要な副次評価項目はOS、独立中央評価によるPFSであった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値25.8ヵ月において、PTC群ではTC群と比較してOS中央値を延長した(36.2ヵ月vs.26.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.73、片側95%信頼区間[CI]上限:0.97)。・治験責任医師評価によるPFS中央値のアップデート解析結果についても、PTC群で良好であった(5.5ヵ月vs.4.2ヵ月、HR:0.81、片側95%CI上限:1.02)。・独立中央評価によるPFS中央値については、両群間で差はみられなかった(4.4ヵ月vs. 4.4ヵ月、HR:1.03、片側95%CI上限:1.36)。 著者らは、ペルツズマブ+トラスツズマブによる二重HER2阻害療法が、ペルツズマブを含むレジメンによる治療歴を有するHER2陽性局所進行/転移乳がん患者においてOS改善に寄与する可能性が示唆されたと結論付けている。独立中央評価によるPFS中央値の改善が認められなかったことについては、解析対象集団やPFSイベントの評価方法の違いによる影響を指摘している。

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血中セロトニン低下は認知症や神経精神症状にどう影響しているか

 脳内のセロトニン調節不全は、認知症や神経精神症状と関連しているといわれている。しかし、機能低下、認知機能障害、軽度の行動障害、脳萎縮などの認知症前駆症状を検出するうえで、血中セロトニン濃度の有用性は、依然としてよくわかっていない。シンガポール国立大学のMing Ann Sim氏らは、高齢者における血中セロトニン濃度と認知症や神経精神症状との関連を評価するため、5年間のプロスペクティブ研究を実施した。Brain Communications誌2025年1月9日号の報告。 対象は、ベースライン時に認知機能障害のないまたは認知機能障害はあるものの認知症でない高齢者。対象患者の神経心理学的評価を毎年行った。認知機能の評価には、モントリオール認知評価、Global Cognition Z-scores、臨床的認知症尺度(CDR)を用いた(機能低下:ベースラインから0.5以上の増加)。軽度の行動障害は、ベースラインおよび毎年のNeuropsychiatric Inventory assessment(NPI)、脳萎縮はベースラインMRIから皮質および内側側頭葉の萎縮スコアを用いて評価した。その後、ベースライン時の血中セロトニン濃度と神経心理学的および神経画像的測定とを関連付け、横断的および縦断的に評価した。さらに、血中セロトニン濃度と横断的脳萎縮スコアとの関連性も評価した。 主な内容は以下のとおり。・対象は191人の高齢者(認知機能障害なし:63人[33.0%]、認知機能障害はあるが認知症でない:128人[67.0%])。・ベースライン時に軽度の行動障害が認められた高齢者は14人(9.0%)。・セロトニンレベルの最低三分位の高齢者は、最高三分位と比較し、皮質萎縮スコアが高かった(調整オッズ比[aOR]:2.54、95%信頼区間[CI]:1.22〜5.30、p=0.013)。・セロトニンレベルは、横断的神経心理学的スコアまたは軽度行動障害スコアとの有意な関連が認められなかった(各々、p>0.05)。・フォローアップ期間中央値60.0ヵ月にわたる長期調査を完了した181人のうち、56人(30.9%)で機能低下が認められた。軽度の行動障害は、119人中26人(21.8%)でみられた。・最高三分位と比較し、セロトニンレベルの低さは機能低下リスクが高く(最低三分位の調整ハザード比[aHR]:2.15、95%CI:1.04〜4.44、p=0.039)、軽度の行動障害の発生リスクが高かった(最低三分位のaHR:3.82、95%CI:1.13〜12.87、p=0.031、中間三分位のaHR:3.56、95%CI:1.05〜12.15、p=0.042)。・セロトニンレベルの最低三分位と機能低下との関連は、軽度の行動障害の発生を媒介していた(aOR:3.96、95%CI:1.15〜13.61、p=0.029)。 著者らは「血中セロトニンレベルの低下は、ベースラインでの皮質萎縮と関連している可能性があり、認知症でない高齢者における機能低下や軽度の行動障害の早期マーカーである可能性が示唆された」と結論付けている。

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加糖飲料により毎年世界で数百万人が糖尿病や心血管疾患を発症

 加糖飲料の影響で、世界中で毎年200万人以上の人が2型糖尿病(T2DM)を発症し、120万人以上の人が心血管疾患(CVD)を発症しているとする論文が、「Nature Medicine」に1月6日掲載された。米ワシントン大学のLaura Lara-Castor氏らの研究によるもので、論文の筆頭著者である同氏は、「T2DMやCVDによる早期死亡を減らすためにも、加糖飲料消費量削減を目指したエビデンスに基づく対策を、世界規模で直ちに推し進めなければならない」と話している。 この研究では、184カ国から報告されたデータを用いた統計学的な解析により、加糖飲料摂取に関連して発症した可能性のあるT2DMとCVDの新規患者数を推定した。その結果、2020年において、約220万人(95%不確定区間200~230万)の新規T2DM患者、および、約120万人(同110~130万)の新規CVD患者が、加糖飲料摂取に関連するものと推定された。この数はそれぞれ、2020年の新規T2DM患者全体の9.8%、新規CVD患者の3.1%を占めていた。また、加糖飲料摂取に起因するT2DM患者の死亡が8万人、CVD患者の死亡が約26万人と推定された。 人口規模が上位30カ国の中で、加糖飲料摂取に関連する新規T2DM患者が多い国は、メキシコ(成人100万人当たり2,007人、新規T2DM患者全体に対して30%)、コロンビア(同1,971人、48.1%)、南アフリカ(1,258人、27.6%)などであり、新規CVD患者については、コロンビア(1,084人、23.0%)、南アフリカ(828人、14.6%)、メキシコ(721人、13.5%)などだった。なお、日本の加糖飲料摂取に関連する新規T2DM患者数は2万8,981人、新規CVD患者数は8,396人、死亡はそれぞれ158人、1,947人と推定されている。 加糖飲料がこれほどの害をもたらす理由の一つとして、栄養価が低いにもかかわらずカロリーは高く、また吸収が早いために満腹感を感じる前に飲み過ぎてしまいやすいことなどの影響が考えられている。長期にわたる加糖飲料の習慣的な摂取は、体重増加、インスリン抵抗性、そして、世界の死亡原因の上位を占めるT2DMやCVDの発症につながる。さらに加糖飲料は安価で、広く入手可能だ。論文の共著者である米タフツ大学のDariush Mozaffarian氏は、「低所得国や中所得国では加糖飲料が盛んに宣伝・販売されている。それらの国々では、長期的な健康への影響という視点での対策が十分講じられておらず、人々は健康に有害な食品を摂取してしまいやすい」と解説。また、著者らによると、国が発展し国民の所得が伸びるにつれて、加糖飲料がより入手しやすい飲み物になり、好まれるように変化していくという。 ソーダ税などの政策が、この問題の拡大を遅らせるかもしれない。米国の一部の地域で行われた研究は、そのような取り組みが効果的であることを示している。米ボストン大学公衆衛生大学院のデータによると、シアトルやフィラデルフィアといった米国内5都市で、課税に伴う加糖飲料の価格上昇による消費量減少が観察されたという。さらに最近の調査からは、カリフォルニア州の複数の都市で課税が導入された後、加糖飲料の売上減少とともに、若者のBMIの平均値が低下したことが明らかにされた。 課税を含む公衆衛生アプローチは、米国以外の国でも有効な可能性がある。また著者らは、課税などの戦略に加えて、人々の意識を高めるための公衆衛生キャンペーンや、広告の規制を求めている。現在すでに80カ国以上が、加糖飲料の消費削減を目的とした対策を実施しており、著者らによると「一部の国では介入効果が現れ始めている」という。

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飲酒は健康リスクに影響

 米国保健福祉省(HHS)は1月14日に発表した報告書の草案の中で、飲酒は早期死亡リスクを高める可能性があることを警告した。報告書によると、「米国では男女ともに1週間当たり7杯(米国の基準飲酒量〔ドリンク〕であるアルコール14g相当を1杯と表記)以上の摂取で1,000人中1人が飲酒に起因した死亡のリスクを負い、このリスクは1週間当たりの飲酒量が9杯以上になると100人中1人に高まる」という。 この報告書の目的は、健康リスクを最小限に抑えるための1週間当たりの飲酒量の基準値に関するエビデンスを得ることであった。ただし草案では、研究結果は要約されているが飲酒量に関する具体的な勧告は含まれていない。現行の米国のガイドラインでは、飲酒量に関して、男性は1日当たり2杯、女性は1杯を超えた量を飲むべきではないとの推奨が示されている。しかし、今回の報告書では、この基準を満たす量であってもリスクのある可能性が示唆されている。 この報告書は、飲酒と健康の関係に関する2つの補足文書のうちの1つで、HHSと米国農務省(USDA)が共同で『米国人のための食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans)2025-2030年版』を作成する際の参考情報となるものだ。報告書では、飲酒が特定の傷病にどのように影響しているのかについて調査した結果がまとめられている。以下はその一部だ。・がん:非飲酒者と比べると、1日1杯の飲酒でも食道がんリスクが男性で51%、女性で37%、肝硬変リスクはそれぞれ37%と133%上昇する。・外傷:1日1杯の飲酒時のリスク(相対リスク1.29)と比べて、1日3杯の飲酒により不慮の外傷のリスクは男女ともに68%程度増加する。・肝疾患:日常的な飲酒は肝疾患のリスクを有意に高め、特に、C型肝炎などの基礎疾患がある人ではリスク上昇が顕著である。 また、これまでの研究では、少量の飲酒が特定の脳卒中リスクを低下させる可能性が示唆されていたが、今回の報告書では1日わずか2杯の飲酒でそのような効果は消失することが明らかにされた。 米国の食事ガイドラインは、公衆衛生政策や食品および飲料の表示に影響を与える。専門家によれば、今回の調査結果は将来的にアルコールに関する勧告の厳格化につながる可能性があるという。カナダ物質使用障害研究所(CISUR)の所長で報告書の著者の一人であるTimothy Naimi氏は、研究で長期的な影響を測定する方法には限界があるため、今回の報告書では飲酒の危険性が過小評価されている可能性があると指摘。「多くの人々が『適度(moderate)』と考える量の飲酒は、実際には中程度のリスクを伴う場合があり、あるいは健康リスクという意味では中程度以上である可能性もある」と結論付けている。 一方で、この報告書に対する反発も見られる。アルコール生産者の団体である米国スピリッツ協会(DISCUS)は、先ごろ発表した声明で、「今回の報告書は、欠陥のある、不透明で前例のないプロセスを経て作られたものであり、バイアスと利益相反に満ちている。未成年者の飲酒防止に関する省庁間調整委員会(ICCPUD)の6人の委員のうち数名は国際的な反アルコール啓発団体に所属しており、委員会はそれらの啓発団体とつながりのある人々と緊密に協力している。議会はICCPUDや同委員会の活動のために資金を承認あるいは計上したことはなく、議会や産業界からの数多くの書簡で、このプロセスに対する深刻な懸念が表明されている」と主張している。

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