サイト内検索|page:194

検索結果 合計:10313件 表示位置:3861 - 3880

3861.

脳卒中再発予防のためには、一過性脳虚血発作(TIA)症状をどこまで広くとらえるべきか?(解説:森本悟氏)-1372

 日本脳卒中学会(2019)や国際疾病分類(ICD-11)により、一過性脳虚血発作(TIA)とは、“局所脳または網膜の虚血に起因する神経機能障害の一過性のエピソードであり、急性梗塞の所見がないもの。かつ、神経機能障害のエピソードは、長くとも24時間以内に消失すること。”と定義されている。また、1975年の米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)による報告では、突然発症の“複視、構音障害、眩暈、失調、感覚低下、両側の視覚障害”といった非進行性かつ単発の症状は、TIAとしては典型的ではないとしている(Stroke. 1975;6:564-616.)。2017年にLavallee氏らが、これらの症状をisolated atypical transient symptomsとして、1年後の脳卒中再発率を検討したところ、典型的なTIA患者と比較しても差は認められなかった(Lavallee PC, et al. Stroke. 2017;48:1495-1500.)。 そこで筆者らは、これらのTIAとして非典型的といわれる症状を“non-consensus TIA”と定義し、典型的なTIA患者(n=1,021)およびnon-consensus TIA患者(n=570)の再発リスクについて前向きに検討を行った。初回イベントの後、いずれの群の患者も適切な2次予防介入が実施されている。 筆者らは、典型的なTIA患者と同様に、non-consensus TIA患者も脳卒中の初期(90日間)および長期(10年間)再発リスクが高く、主要血管イベントについても同様であるとしている。そして、non-consensus TIAについて治療介入を要するTIAとして見直せば、TIAの診断数が約50%増加するという結果であった。本研究では、患者背景として、non-consensus TIA患者群はより若年であり、心房細動および冠動脈疾患の有病率、脳卒中の既往が半分程度であること、後方循環系の動脈狭窄(50%以上)が有意に多いという特徴を有していたことも、間接的には筆者らの結論を補強するものとなっている。 ただし、本結果にはいくつか考慮すべき点がある。まず、典型的なTIAを運動症状タイプと非運動症状タイプに分類した場合、非運動症状タイプのTIAおよびnon-consensus TIA患者群と比較して、運動症状タイプのTIA患者群では明らかに脳卒中再発リスクが高い傾向にある点、non-consensus TIA症状の中でも、眩暈/失調や構音障害単独群と比較し、複視単独群では脳卒中の再発リスクがより低い割合で長期間留まっている点、が挙げられる。 確かに、non-consensus TIAにおいても典型的なTIAと同様に、全体として経時的な脳卒中再発および主要血管イベントの増加が認められたものの、症状のタイプ別に明確なリスクの差があることは否定できない。本研究により、実際的なTIA(予防治療介入を要する群)の診断範囲を拡大することが、脳卒中予後に対して好ましい影響を与えることが示されたことは非常に重要な点である。しかしながら、non-consensus TIAの2次予防を行ううえで、除外診断を含めた臨床診断精度および症状の層別化によるリスク分析、抗血栓薬導入に伴う有害事象のリスクについては十分考慮する必要がある。

3862.

循環器疾患合併COVID-19入院患者の予後規定因子を検討/日本循環器学会

 循環器疾患およびリスク因子を合併している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の臨床的背景や転帰を明らかにすることを目的としたレジストリ研究「CLAVIS-COVID」の結果の一部について、第85回日本循環器学会学術集会(2021年3月26日~28日)で松本 新吾氏(東邦大学医療センター大森病院)が発表した。循環器疾患やリスク因子の合併の有無にかかわらず、年齢の上昇に伴い死亡率が増加していることから、年齢が独立した非常に強い予後規定因子であることが示唆された。 COVID-19患者の予後については、昨年、中国から循環器疾患合併かつトロポニン陽性の患者の予後が悪いとの報告がJAMA Cardiology誌に掲載され、米国からは年齢・性別に加えて冠動脈疾患・心不全・不整脈などの循環器疾患合併患者で予後が悪いという論文がNEJM誌に掲載された。このような中、松本氏らは昨年3月時点で、わが国で進行しているレジストリ研究が見当たらなかったことから、循環器疾患およびリスク因子(CVDRF)合併COVID-19入院患者に関する多施設共同観察研究であるCLAVIS-COVIDを立ち上げ、日本循環器学会の公式なレジストリ研究として実施している。 本研究は後ろ向き観察研究で、2020年1月1日~5月31日にCOVID-19により入院した患者のうち、循環器疾患およびリスク因子(高血圧、糖尿病、高脂血症)を合併した患者を対象とし、主要エンドポイントは院内死亡とした。 最終的に国内49施設の1,518例のデータが解析対象となり、平均年齢は57±19歳、男性が58%、全体の死亡率は9.2%、CVDRF合併症例は693例(45.7%)であった。生存退院群(1,378例)と院内死亡群(140例)で比較すると、患者背景については、年齢、男性比率、ECMO使用、ICU入室、挿管管理で有意に院内死亡群が高かった。カプランマイヤー曲線は、CVDRF合併症例が非合併症例に比べて有意に死亡率が高く、海外と同様の傾向がみられた。 CVDRF合併症例について、生存退院例(585例、84.4%)と院内死亡例(108例、15.6%)で比較すると、患者背景については、院内死亡例でより高齢で、転院・介護/療養型施設からの入院が多かった。入院時に認められた合併症については、院内死亡例では慢性/急性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、中等度以上の弁膜症、不整脈、COPD、慢性腎臓病、がんの合併割合が有意に高かった。入院時の自覚症状については、全体で一番多かったのは咳嗽(52.0%)で、息切れ/呼吸困難、悪寒、心不全症状(末梢浮腫、肺うっ血)の発現割合が院内死亡例で有意に高い一方、咽頭痛、嗅覚異常、頭痛の発現割合は生存退院例で有意に高かった。バイオマーカーについては、CRP、D-ダイマー、プロカルシトニン、KL-6、トロポニンもしくは高感度トロポニン陽性、BNP、NT-proBNPが院内死亡例で有意に高かった。このバイオマーカーの結果について松本氏は、「日本のように日常臨床で細かく繰り返し数値を取得できる国は珍しいため、貴重なデータである」と述べた。 本研究の最終的な解析結果の論文は現在レビュー中で、まずは年齢に着目して報告をまとめているという。その中でもインパクトのある結果として松本氏は、循環器疾患やリスク因子の合併の有無にかかわらず、年齢の上昇に伴い死亡率が急増しているグラフを示し、年齢が独立した非常に強い予後規定因子であることを指摘した。

3863.

中等~重症アトピー性皮膚炎、abrocitinib vs.デュピルマブ/NEJM

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者において、abrocitinibは1日1回200mgまたは100mgのいずれの用量でも、プラセボと比較し12週および16週時の所見および症状を有意に改善した。デュピルマブに対しては、abrocitinib 200mgは2週時のそう痒の改善に関し優越性が認められたが、同100mgは認められなかった。ドイツ・ボン大学病院のThomas Bieber氏らが行った無作為化二重盲検第III相試験「JADE COMPARE試験」で示された。インターロイキン(IL)-4およびIL-13のシグナル伝達を抑制する経口ヤヌスキナーゼ1(JAK1)阻害薬abrocitinibは、アトピー性皮膚炎の治療薬として検討されているが、デュピルマブのようなIL-4受容体を阻害するモノクローナル抗体とJAK1阻害薬を比較検証したデータには限りがあった。NEJM誌2021年3月25日号掲載の報告。中等症~重症AD患者約840例を対象に試験 研究グループは、外用薬の効果が不十分または全身療法が必要なアトピー性皮膚炎患者を、abrocitinib 200mg(1日1回経口投与)群、100mg(同)群、デュピルマブ300mg(負荷投与量600mg、隔週皮下投与)群、またはプラセボ群に、2対2対2対1の割合で無作為に割り付けた。全例に対し、外用療法も行った。 主要評価項目は、12週時点における医師による皮膚症状重症度の全般評価(Investigator's Global Assessment:IGA、スコア範囲:0~4点)での奏効率(IGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]、かつベースラインから2点以上改善と定義)、ならびに湿疹面積・重症度指数(Eczema Area and Severity Index:EASI、スコア範囲:0~72点)がベースラインから75%以上改善した患者の割合(EASI-75達成率)であった。 主な副次評価項目は、2週時点におけるそう痒(Peak Pruritus Numerical Rating Scale:PP-NRS、スコア範囲:0~10点)の改善(4点以上改善と定義)、16週時点でのIGA奏効、EASI-75達成率とした。 2018年10月29日~2019年8月5日に1,234例がスクリーニングを受け、838例が無作為化された(abrocitinib 200mg群226例、abrocitinib100mg群238例、デュピルマブ群243例、プラセボ群131例)。abrocitinib 200mg群のみ2週時のかゆみをデュピルマブより改善 12週時点におけるIGA奏効率は、abrocitinib 200mg群48.4%、abrocitinib 100mg群36.6%、デュピルマブ群36.5%、プラセボ群14.0%であった(両abrocitinib群のプラセボ群に対するp<0.001)。また、12週時点におけるEASI-75達成率は、それぞれ70.3%、58.7%、58.1%および27.1%であった(両abrocitinib群のプラセボ群に対するp<0.001)。 2週時点におけるそう痒の改善(PP-NRSがベースラインから4点以上改善した患者の割合)については、abrocitinib 200mg群(49.1%)はデュピルマブ群(26.4%)に対して優越性が認められたが、abrocitinib 100mg群(31.8%)では認められなかった。また、abrocitinib両用量群は、16週時のほとんどの副次評価項目に関してデュピルマブ群と有意差はなかった。 有害事象は、悪心がabrocitinib 200mg群11.1%、abrocitinib 100mg群4.2%に、ざ瘡がそれぞれ6.6%、2.9%に認められた。

3864.

なぜあえてCa拮抗薬にフェロジピン?【処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)なぜあえてCa拮抗薬にフェロジピン?講師:眞弓 久則氏 / 眞弓循環器科クリニック院長動画解説68歳の男性患者に処方されたCa拮抗薬はフェロジピン。ACE阻害薬やサイアザイド系、β遮断薬も併用されており、複雑な患者背景が予想されます。Ca拮抗薬の中で現場でなかなか目にすることの少ないフェロジピンが選ばれたのはどのような経緯があるのでしょうか。

3865.

Ca拮抗薬をアムロジピンからニフェジピンに変更した理由【処方まる見えゼミナール(大橋ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(大橋ゼミ)Ca拮抗薬をアムロジピンからニフェジピンに変更した理由講師:大橋 博樹氏 / 多摩ファミリークリニック院長動画解説30歳、女性。降圧薬がアムロジピン+エナラプリルマレイン酸塩からメチルドパに変更されました。しかし、メチルドパだけでは血圧コントロールができなかったのか、増量したうえで、ニフェジピンも追加されました。この女性には、どのような臨床背景があったのでしょうか。

3866.

アムロジピンをエナラプリルに変更した理由は?【処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)アムロジピンをエナラプリルに変更した理由は?講師:三澤 美和氏 / 大阪医科大学附属病院 総合診療科動画解説入院を機にCa拮抗薬からACE阻害薬に変更された患者さん。この変更には、高血圧関連の理由ではない、意外な狙いが2つありました。薬剤の機序を利用した薬物選択のほか、高齢者において使用開始を検討しないといけない治療の考え方などを解説します。

3867.

Ca拮抗薬使用中の患者にPPIが処方されたら…?【ママに聞いてみよう(2)】

ママに聞いてみよう(2)Ca拮抗薬使用中の患者にPPIが処方されたら…?講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説高血圧症の患者さんにプロトンポンプ阻害薬が追加になり、服用中のCa拮抗薬が関係しているのかどうか考える正隆さん。Ca拮抗薬が胃食道へどのように影響するのか、また起こりうる症状や注意すべき患者について美智子先生が教えます。

3868.

抗LAG-3抗体relatlimab+二ボルマブ、未治療の黒色腫の主要評価項目PFSを達成(RELATIVITY-047)/BMS

 ブリストルマイヤーズスクイブは、2021年3月25日、未治療の切除不能な悪性黒色腫を対象に抗LAG-3抗体relatlimabとニボルマブの固定用量配合剤とニボルマブ単剤を比較した第II/III相RELATIVITY-047(CA224-047)試験の主要結果を発表。relatlimabと二ボルマブの併用療法は、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を達成した。副次評価項目である全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。固定用量の併用療法の忍容性は良好で、併用療法群およびニボルマブ単剤療法とも新たな安全性シグナルは報告されなかった。これらは、抗LAG-3抗体を評価した試験で報告された初めての第III相データである。 リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、エフェクターT細胞および制御性T細胞(Treg)に発現する細胞表面分子である。LAG-3は、T細胞の活性を制限する抑制性免疫チェックポイント経路を制御し、がん細胞を攻撃する能力を低下させる。LAG-3とPD-1は、エフェクターT細胞上で相乗的に作用し、T細胞を疲弊させる可能性がある。抗LAG-3抗体であるrelatlimabは、T細胞上のLAG-3と結合し、疲弊したT細胞のエフェクター機能を回復させる。 ブリストル マイヤーズ スクイブは、今後の学会で本試験の結果を発表するとともに、規制当局と結果について協議する予定。

3869.

ICU入室COVID-19へのエノキサパリン、中等量vs.標準量/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対し、予防的抗凝固療法としてエノキサパリンの中等量(1mg/kg/日、クレアチニン・クリアランス値により調整)の投与は同標準量(40mg/日)の投与と比べ、30日以内静脈または動脈血栓症・体外式膜型人工肺(ECMO)の使用・死亡の複合アウトカムについて、有意差は認められなかった。イラン・Iran University of Medical SciencesのParham Sadeghipour氏ら「INSPIRATION無作為化試験」研究グループが約600例の患者を対象に行った試験結果を報告した。COVID-19重症患者において、血栓性イベントの報告頻度は高い。抗血栓予防療法の強度を高めることに関するデータは限定的であり、今回の検討が行われた。研究グループは、「結果は、ICU入室COVID-19患者に対して非選択的に中等量の予防的抗凝固療法をルーチン投与することを支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2021年3月18日号掲載の報告。イラン10ヵ所の医療センターで試験 研究グループはイランの大学医療センター10施設を通じて、ICUに入室したCOVID-19患者を対象に、2×2要因デザインを用いて多施設共同無作為化試験を行った。 本試験で被験者は、エノキサパリン中等量(体重120kg未満でクレアチニン・クリアランス値30mL/分超に対し、1mg/kg/日)または同標準量(40mg/日)による予防的抗凝固療法と、スタチンまたはプラセボ(第2の仮説、本論では結果報告なし)を、それぞれ投与(両群の投与量について、体重とクレアチニン・クリアランス値に応じて調整)。割り付け治療は、30日間のフォローアップ完遂まで行うよう計画された。 被験者の募集期間は2020年7月29日~11月19日で、主要アウトカムの30日間フォローアップの最終日は2020年12月19日だった。 有効性の主要アウトカムは、30日以内の静脈または動脈血栓症・ECMOの使用・死亡の複合だった。試験の適格基準を満たし割り付け試験薬を1回以上投与された被験者を対象に分析を行った。 事前に規定した安全性に関するアウトカムは、BARCによる大出血(タイプ3または5)の非劣性評価(非劣性マージン:オッズ比[OR]1.8)、重症血小板減少症(血小板数:20×103/μL未満)などだった。大出血発生率も非劣性示せず 600例が無作為化を受け、主要解析には562例(93.7%)が含まれた(年齢中央値62歳[範囲:50~71]、女性は237例[42.2%])。 主要有効性アウトカムの発生は、中等量群126例(45.7%)、標準量群126例(44.1%)だった(絶対リスク差:1.5%[95%信頼区間[CI]:-6.6~9.8、OR:1.06[95%CI:0.76~1.48]、p=0.70)。 大出血の発生は、中等量群7例(2.5%)、標準量群4例(1.4%)で、ORは1.83(片側97.5%CI:0.00~5.93)と非劣性は示されなかった(非劣性のp>0.99)。重症血小板減少症の発生は、中等量群でのみ6例(2.2%)で認められた(6 vs.0、リスク差:2.2%[95%CI:0.4~3.8]、p=0.01)。

3870.

過体重・肥満へのセマグルチド、中断で体重リバウンド/JAMA

 過体重または肥満の成人に対し、20週間のセマグルチド皮下投与後、2.4mg/週を48週間継続投与した群はプラセボに切り替えた群と比べて、体重減少が維持されていたことが示された。米国・Washington Center for Weight Management and ResearchのDomenica Rubino氏らが、約800例を対象に行った68週間の第III相無作為化二重盲検試験「STEP 4試験」で明らかにした。過体重または肥満者へのGLP-1受容体作動薬セマグルチドの投与について、投与を継続した場合と中断した場合の影響については、これまで明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2021年3月23日号掲載の報告。10ヵ国73ヵ所の医療機関で試験 研究グループは2018年6月~2020年3月にかけて、10ヵ国73ヵ所の医療機関を通じて、BMI値30以上、または27以上で体重関連の併存疾患が1つ以上ある、非糖尿病成人を対象に試験を行った。 902例がrun-in期間中に週1回のセマグルチド皮下投与を受けた。20週間(16週は漸増投与、4週は維持投与)の実施後、803例(89.0%)が2対1の割合で無作為化され、2.4mg/週のセマグルチド継続投与(535例)またはプラセボへの切り替え投与(268例)を受け、体重減少効果などが検証された。両群ともに、専門家による毎月のカウンセリングを含む生活習慣への介入も行われた。 主要エンドポイントは、20週から68週の体重変化(%)だった。副次エンドポイントは、腹囲、収縮期血圧、身体機能(Short Form 36 Version 2 Health Survey, Acute Version[SF-36]を用いた評価)だった。セマグルチド継続群、対プラセボ群で腹囲-9.7cm、収縮期血圧-3.9mmHg 803例(平均年齢46歳[SD 12]、女性79%、平均体重107.2kg[SD 22.7])のうち、787例(98.0%)が試験を完了し、治療を完遂したのは741例(92.3%)だった。 20~68週の体重変化率は、プラセボ群は6.9%増加したのに対し、セマグルチド継続群は7.9%減少した(群間差:-14.8%、95%信頼区間[CI]:-16.0~-13.5、p<0.001)。 また、セマグルチド継続群はプラセボ群に比べ、腹囲(群間差:-9.7cm[95%CI:-10.9~-8.5])、収縮期血圧(-3.9mmHg[-5.8~-2.0])、SF-36身体機能スコア(2.5[1.6~3.3])のいずれも改善が認められた(すべてのp<0.001)。 なお、胃腸関連イベントの発生が、プラセボ群26.1%だったのに対しセマグルチド継続群では49.1%に認められた。有害事象による投与中断率は、セマグルチド継続群2.4%、プラセボ群2.2%で同程度だった。

3871.

高度狭窄なくても脆弱なプラークを持つ脆弱な患者を近赤外分光法‐血管内超音波検査で同定できる(解説:佐田政隆氏)-1373

 急性心筋梗塞の発症原因として、軽度な狭窄しか来さない動脈硬化病変の破裂やびらんに起因する急性血栓性閉塞が注目されている。破綻した病変では、脂質コアの増大、被膜の菲薄化、平滑筋細胞数の減少などが認められる。しかしプラーク不安定化の機序などに関しては不明な点が多く、急性冠症候群の発症を予知することは困難であった。 バイオマーカーとして高感度CRP、ペントラキシン3などが急性冠症候群の発症を予測する因子となることが報告されているが特異度が十分とはいえない。一方、冠動脈CT、血管内超音波、MRI、OCT(光干渉断層撮影)など不安定プラークを検出するイメージング技術は開発されてきたが、いまだゴールデンスタンダードとなる方法が存在しないのが現状であった。 本論文は、新しいイメージングモダリティである近赤外分光法‐血管内超音波検査(NIRS-IVUS)を用いた解析で、血管内腔の狭窄を伴わなくても、心血管イベントを起こしそうな「脆弱なプラークを持った脆弱な患者」を同定できたという画期的な研究成果である。NIRSは、近赤外線光を測定対象に照射し、吸光度の変化によって成分を算出する方法である。この近赤外分光法と従来の血管内超音波検査を併せたイメージング法がNIRS-IVUSで、米国のInfraredx社によって開発された。今までの血管内イメージングと違い、NIRSはreal timeに即座にプラークの性状を診断することが可能であり、臨床医学的意義が大きい。 本研究では、北欧の急性心筋梗塞患者898人を対象にして、3,629ヵ所の治療していない非責任病変がNIRS-IVUSでプラークの脂質含量とプラーク断面積が計測され、経過観察が行われた。4年間で被験者898人のうち13.2%の患者で心血管イベント(心不全・心筋梗塞・不安定狭心症・進行性狭心症)が発生したが、そのうちなんと半数以上の8.0%は未治療非責任病変が原因であった。そして、NIRS-IVUSで判定した高度脂質含有プラークと大きなプラークの存在は、非責任病変由来のイベント発症の独立した予測因子であった。 2019年11月の米国心臓病学会で「安定狭心症で中等度以上の心筋虚血が証明された症例に対して、経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)や冠動脈バイパス手術(CABG)などを行った血行再建群と薬物治療のみの保存的治療群で長期予後に差はなかった」というISCHEMIA試験の結果が発表され、循環器内科医、心臓外科医に、大きな衝撃をもたらしたことは記憶に新しい。虚血に関与する高度狭窄病変に血行再建術を施した後、狭窄を来すことはなくても急性冠症候群を起こす可能性の高い脆弱な病変をNIRS-IVUSで同定して、適切な積極的薬物療法を施すことでPCI、CABGの長期予後を改善することができると期待される。

3872.

第21回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その4【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第21回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その4前回は、自律神経ブロックとしてよく知られている星状神経節ブロックについて説明しました。今回は、知覚神経と交感神経を同時にブロックする、代表的な応用範囲の広い硬膜外ブロックについて解説します。硬膜外ブロックとは硬膜外腔は、硬膜と黄靭帯および椎弓板との間に存在する脊柱管の腔です(図1)。この腔は、中枢側では大後頭孔まで、末梢側では第2仙骨部まで存在します。従って、通常L5~S1よりも上部の脊椎の間から硬膜外腔に刺入する方法を硬膜外ブロックと呼んでいます(図2)。硬膜外腔における黄靭帯と硬膜の間の長さは、頸部が一番短く約1.5mmですが、腰部では4~6mmあります。硬膜外腔は、外気圧に比べ-1~-8mmHg程度の陰圧になっており、この圧差を利用してブロック針が硬膜外腔に侵入することを察知できます。画像を拡大する画像を拡大する硬膜外ブロックの適応疾患最も頻度が多く施行されているのが腰部硬膜外ブロックで、腰痛、坐骨神経痛への適応です。そのほか、交感神経ブロック効果が期待されて、下肢の血行障害を伴うレイノー病やバージャー病の痛みにも適応されます。腹部の内臓痛、術後痛などに利用されるほか、仙骨ブロックも仙骨部の硬膜外ブロックとして施行されます。硬膜外ブロックの実際患者さんは側臥位で、両足を抱えるようにして、エビをイメージして椎間を広げてもらいます(図3)。この時、痛みに左右差があれば痛いほうが下になるようにします。そして、痛い部位から責任神経を割り出し、その責任椎間からブロック針を挿入します。前述のとおり、硬膜外腔が陰圧であることから、すべりの良いガラスシリンジもしくは専用のプラスチックシリンジを使用し、パンピングしながら徐々に侵入していきます。黄靭帯を越えたあたりで突然抵抗がなくなりますが、針先が硬膜外腔に侵入したことを知らせるサインです。loss of Resistanceと呼ばれ、実にわかりやすいサインです(図4)。たまに硬膜外腔が炎症などにより癒着が生じ、loss of Resistanceがわかりにくいことがあります。その場合には、硬膜穿刺が生じることがありますので注意が必要です。硬膜外ブロックの1分節当たりの局所麻酔量は、頸部1mL、胸部1.5mL、腰部2mLと言われています。痛みの範囲から、必要な投与量を決めましょう。痛みを抑えるためには、0.5%塩酸メピバカイン注PBがよいでしょう。濃度が濃くなると運動神経の麻痺を生じ、休み時間が延長しますので気を付けてください。画像を拡大する画像を拡大する硬膜外ブロックの効果判定患者さんの痛みが楽になればよいのですが、VAS(Visual Analogue Scale)やNRSなどを測定して、処置前との痛みの差を見るとわかりやすいでしょう。血流増加による皮膚温上昇などで、患者さんが温かさを感じることからもブロック効果が判定できます。合併症硬膜下やくも膜下腔への穿刺、それによる麻酔薬注入で麻酔効果が長時間持続し、運動神経が麻痺すると、しばらく足が動かなくなるので、注意が必要です。時間経過により次第に回復しますが、長時間に及ぶこともあります。その予防のために、薬液を注入する前には必ず吸引して液体の逆流を確かめることが必要です。局所麻酔薬の血管内注入による局所麻酔薬中毒により、痙攣が生じることもあります。また、交感神経遮断効果による血圧低下、それに伴う悪心・嘔吐もあります。大量のクモ膜下腔局所麻酔薬注入によって全脊麻が生じると、呼吸困難が見られるので、気道を確保して十分に酸素加することが必要です。以上、硬膜外ブロックを取り上げ、その適応、方法、合併症などについて述べさせていただきました。痛みを有する患者さんに接しておられる先生方に少しでもお役に立てれば幸いです。次回は理学療法の中でも、患者さんに好まれている光線療法ついてお話しします。1)花岡一雄他、ペインクリニック実践ハンドブック 南江堂 1994;

3873.

抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症の治療に関するガイダンス

 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症のマネジメントオプションおよび治療における有効性、忍容性、薬物相互作用、禁忌、投与計画などの考慮すべきポイントについて、米国・ミズーリ大学のMatthew M. Rusgis氏らが評価を行った。American Journal of Health-System Pharmacy誌オンライン版2021年2月26日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・高プロラクチン血症は、抗精神病薬の使用により発現する副作用の1つである。・高プロラクチン血症のマネジメントにおいて、まずは以下の手段を検討する。 ●高プロラクチン血症と関連してる可能性の高い抗精神病薬の減量 ●高プロラクチン血症と関連してる可能性の高い抗精神病薬の中止 ●高プロラクチン血症リスクの低い抗精神病薬への切り替え・これらのオプションは、必ずしも実用的であるとはいえず、精神症状の再発リスクを考慮する必要がある。・その他のマネジメントオプションとして、以下の薬剤による補助療法が検討可能である。 ●アリピプラゾール ●ドパミン作動薬(カベルゴリン、ブロモクリプチン) ●メトホルミン ●ハーブサプリメント・Embase、PubMed、Google Scholarより、高プロラクチン血症や上記治療薬などのキーワードを用いて検索したところ、入手可能なエビデンスより、次の4点が抽出された。(1)アリピプラゾールは、プロラクチンレベルを正常範囲まで低下させるうえで、安全かつ有用な薬剤である。(2)カベルゴリン、ブロモクリプチンは、プロラクチンレベルを低下させる。しかし、カベルゴリンは、心臓弁膜症などの重篤な副作用と関連している可能性がある。(3)メトホルミンは、プロラクチンレベルの軽度な低下が期待できる。(4)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症に対する漢方薬(カモミール、芍薬甘草湯)の使用に関するデータは限られていた。 著者らは「抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症のマネジメントにおいて、抗精神病薬の治療レジメンを変更できない患者でも利用可能な治療方法はいくつかある。抗精神病薬を使用している患者の多くは、慢性疾患であり、長期にわたる薬剤使用が必要であることを考慮すると、高プロラクチン血症に対する治療戦略の有効性、安全性を判断するためには、短期だけでなくより多くの長期的な研究が必要であろう」としている。

3874.

乳がんリスクの高い9遺伝子を同定(解説:下村昭彦氏)-1369

 1月20日のNEJM誌に乳がんリスク遺伝子を網羅的に解析した大規模試験が2本掲載された。そのうちの1つは英国からの報告であり、11万3,000例以上のBreast Cancer Association Consortiumに参加した乳がん患者と対象者において34遺伝子を搭載したパネルで5つ(ATM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2)の乳がんリスク遺伝子を同定した。また4つの遺伝子(BARD1、RAD51C、RAD51D、TP53)におけるタンパク切断型変異も乳がんリスクと関連した。 もう1つは米国からの同様の研究であり、こちらは6万5,000例以上を解析し、BRCA1、BRCA2、PALB2、BARD1、RAD51C、RAD51D、ATM、CDH1、CHEK2の9遺伝子がリスクを増加させる遺伝子として報告され、またそれぞれの遺伝子ごとにリスクの高い乳がんのサブタイプが示された。 これらの遺伝子のほとんどは相同組み換え修復に関わるものであり、よく知られたものである。また、TP53はLi-Fraumeni症候群の原因遺伝子として知られており、若年乳がん(30歳以下)ではTP53の遺伝学的検査が考慮される。CDH1はびまん性胃がん症候群の原因遺伝子として知られており、小葉がんの発症が多いことが知られている(つまり、エストロゲン受容体陽性が多い)。 これらの研究の画期的である点は、パネル検査を用いて生殖細胞系列の遺伝子変異を網羅的に測定している点である。両者共通の10遺伝子を搭載したカスタムパネルを作ることで、乳がん発症リスクが高い人を同定し、サーベイランスやリスク低減手術などの健康管理に役立てることが可能になる。今後は網羅的に生殖細胞系列を測定する時代が訪れるのであろう。その一方でBRCA1、2やTP53以外の遺伝子に対してはサーベイランスやリスク低減手術のエビデンスは十分ではない。これらのハイリスクの集団に対する対策プログラムを構築し、エビデンスを作っていくことが重要である。 なお、これらの研究では家族歴が不明の症例が多く含まれていたり、第1度近親者までしか家族歴がわかっていない症例がほとんどであることに注意が必要である。すなわち、原因遺伝子として見つかっているものの多くは遺伝性腫瘍の原因遺伝子であり、家族歴で検査の対象を絞り込むことが可能になるかもしれない。日本から発表された研究では対照群をがんの罹患歴も家族歴もない人に絞っており、11遺伝子を網羅的に調べてそのうち8遺伝子(BRCA2、BRCA1、PALB2、TP53、PTEN、CHEK2、NF1、ATM)の頻度が乳がん患者で高いことを示している(Momozawa Y, et al. Nat Commun. 2018;9:4083.)。リスク因子となっている遺伝子が今回提示した2報と異なっていることが家族歴によるものなのか、それとも人種によるものなのか、など今回の結果を臨床に役立てるうえで確認すべきデータは多いであろう。

3875.

視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療薬/田辺三菱製薬

 田辺三菱製薬株式会社は、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」を適応症とした治療薬イネビリズマブ(商品名:ユプリズナ 点滴静注 100mg)の製造販売承認を2021年3月23日に取得した。失明や呼吸不全を起こす視神経脊髄炎 視神経脊髄炎スペクトラム障害(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder:NMOSD)は、わが国での有病率が10万人あたり2~4人と少ない疾患で、重度の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であり、指定難病となっている。 疾患の機序・症状として身体の免疫システムが、健康な細胞(一般的には視神経、脊髄および脳)を攻撃し、再発や重篤な傷害をもたらすことで、眼の痛みや失明、重度の筋力低下、麻痺、しびれ、腸や膀胱の機能低下および呼吸不全を引き起こす。 病態には、主に抗アクアポリン4(AQP4)抗体が関与し、NMOSD患者の約73~90%で抗AQP4抗体が検出されるという。半年に1回投与の治療薬 イネビリズマブは、ヒト化抗CD19モノクローナル抗体で、抗体を産生する形質芽細胞や形質細胞を含むB細胞に発現するCD19というタンパク質に結合し、これらの細胞を循環血液中から速やかに除去することで、NMOSDにおける再発を予防する。また、イネビリズマブは、新規メカニズムによるNMOSD治療薬であり、投与間隔が半年に1回という利便性から、再発予防期のNMOSD患者に新たな治療選択肢として提供できるものと考えられている。今回の承認では、わが国のNMOSD患者を含むグローバル臨床試験の成績に基づきなされた。米国では2020年6月11日に「UPLIZNA」の製品名で、同症の適応承認を受けている。 そのほかイネビリズマブは、重症筋無力症およびIgG4関連疾患について、グローバル(日本を含む)III相臨床試験を実施している。なお、本剤の販売時期、薬価は未定。

3876.

『敗血症診療ガイドライン2020年』の完成版が発刊

 昨年、ダイジェスト版が先行発表されていた日本集中治療医学会・日本救急医学会の合同作成による「日本版敗血症診療ガイドライン2020」の正式版が、3月に発刊された。本ガイドラインは、小児から成人まで敗血症・敗血症性ショック患者およびその疑いのある患者の診療において、医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことを目的に作成されている。また、敗血症診療に従事または関与する専門医、一般臨床医、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床工学技士、管理栄養士などのすべての医療従事者への利用を促している。 今回の改定版は、敗血症疾患の予後改善のために適切な判断を下すことを目的に、一般臨床医にもわかりやすく作成されている。.新たな項目として4領域(神経集中治療、Patient-and Family-Centered Care、Sepsis Treatment System、ストレス潰瘍)を追加し、敗血症診療を計22領域で構成、CQ:118題について解説されている。<Clinical Question―全22領域>CQ1:敗血症の定義と診断CQ2:感染の診断CQ3:画像診断と感染源のコントロールCQ4:抗菌薬治療CQ5:免疫グロブリン(IVIG)療法CQ6:初期蘇生・循環作動薬CQ7:ステロイド療法CQ8:輸血療法CQ9:呼吸管理 CQ10:痛み・不穏・せん妄の管理CQ11:急性腎障害・血液浄化療法CQ12:栄養療法CQ13:血糖管理CQ14:体温管理CQ15:DIC診断と治療CQ16:静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)対策CQ17:Post-intensive care syndrome(PICS)と ICU-acquired weakness(ICU-AW)CQ18:小児CQ19:神経集中治療CQ20:Patient- and Family-Centered Care CQ21:Sepsis treatment systemCQ22:ストレス潰瘍 制作委員長を務めた江木 盛時氏(神戸大学大学院医学研究科外科系講座麻酔科学分野)と小倉 裕二氏(大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター)らは、「集中治療室に限らず、一般病棟や救急外来で、診断・治療を受ける患者を包括するが、敗血症患者は高度な全身管理を必要とすることから、敗血症およびその疑いの強い患者では、状況が許す限り、速やかに集中治療室へ移送しての管理が望ましい」と強調している。

3877.

既治療NSCLCへのニボルマブ、5年生存率の結果/JCO

 免疫療法は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に革命をもたらした。すでに、既治療の扁平上皮および非扁平上皮NSCLC患者を対象とした2つの第III相試験(CheckMate-017およびCheckMate-057)において、ニボルマブはドセタキセルと比較し、全生存(OS)期間の改善と良好な安全性を示している。米国・Fox Chase Cancer CenterのHossein Borghaei氏らは、両試験の5年間における有効性および安全性に関するプール解析を行い、ニボルマブはドセタキセルと比較して、OS延長効果が持続し、新たな安全性の懸念はなかったことを明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌2021年3月1日号掲載の報告。 研究グループは、プラチナ併用化学療法中または化学療法後に進行したECOG PS≦1のNSCLC患者(CheckMate-017:扁平上皮がん、CheckMate-057:非扁平上皮がん、合計854例)を、ニボルマブ群(3mg/kg、2週間ごと)またはドセタキセル群(75mg/m2、3週間ごと)に1対1の割合で無作為に割り付け、進行または許容できない毒性発現まで投与した。 両試験の主要評価項目はOSで、副次評価項目は無増悪生存(PFS)および安全性などであった。探索的ランドマーク解析による評価も行った。 主な結果は以下のとおり。・CheckMate-017試験64.2ヵ月、CheckMate-057試験64.5ヵ月の最小追跡期間において、ニボルマブ群で50例、ドセタキセル群で9例が生存していた。・5年OS率はニボルマブ群13.4%、ドセタキセル群2.6%であり、5年PFS率はそれぞれ8.0%、0%であった。・ランドマーク解析において、2年時および3年時に病勢進行を認めなかったニボルマブ群の患者の5年生存率はそれぞれ82.0%および93.0%、5年無増悪率はそれぞれ59.6%および78.3%であった。・治療関連有害事象(TRAE)は、3~5年の追跡期間中にニボルマブ群で31例中8例(25.8%)に報告され、そのうち7例が新たな事象を経験した。Grade3のTRAEは1例(3.2%)認められた。Grade4のTRAEはなかった。

3878.

高齢者のせん妄と認知症リスク~メタ解析

 せん妄と新規認知症発症との関連は、観察研究によって調査されているが、利用可能なエビデンスを定量的および定性的に評価したレビューは、最近行われていなかった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のJarett Vanz-Brian Pereira氏らは、せん妄と認知症に関連するエビデンスをシステマティックにレビュー、これを厳密に評価したうえで、せん妄発症後の新規認知症発症率を算出するため、検討を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年2月9日号の報告。 本システマティックレビューおよびメタ解析は、PRISMA(システマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目)に従って実施した。65歳以上の高齢入院患者を対象に、せん妄の有無における認知症発症率を比較した英語のエビデンスをMEDLINE、EMBASE、PsycINFOより検索した。メタ解析には、変量効果モデルを用いた。全体のエフェクトサイズは、報告されたイベント数の生データを用いて算出した。バイアスリスクの評価には、Newcastle-Ottawa Quality Assessment scaleを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした観察研究は6件であり、フォローアップ期間は6ヵ月~5年の範囲であった。・対象患者別の内訳は、大腿骨近位部骨折の外科患者4件、心臓外科患者1件、老年科患者1件であった。・すべての研究において、すでに認知症を発症している患者は除外された。・プールしたメタ解析において、せん妄を発症した高齢入院患者では、せん妄を発症していない患者と比較し、その後の認知症発症率が約12倍に増加することが明らかとなった(OR:11.9、95%CI:7.29~19.6、p<0.001)。 著者らは「せん妄を発症した高齢入院患者は、その後の認知症発症リスクが高まることが明らかとなった。このことは、せん妄の予防およびその後の認知症モニタリングの重要性を示している。今回のメタ解析では、主に術後患者を対象としており、今後の研究では、内科系ICUを対象としたコホート研究が必要であろう。また、せん妄の期間、重症度、サブタイプが認知症発症リスクに及ぼす影響についての評価も求められる」としている。

3879.

donanemab、早期アルツハイマー病の認知機能/日常生活動作を改善/NEJM

 早期の症候性アルツハイマー病(AD)患者の治療において、donanemabはプラセボと比較して、76週時の認知機能と日常生活動作を組み合わせた複合評価尺度(iADRS)が有意に良好であることが、米国・Eli LillyのMark A. Mintun氏らが実施したTRAILBLAZER-ALZ試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年3月13日号に掲載された。donanemabは、N末端がピログルタミン酸化されたアミロイドベータ(Aβ)のエピトープを標的とするヒト化IgG1抗体。第Ib相試験では、アミロイド陽性の軽度認知障害または軽症~中等症のアルツハイマー型認知症患者において、1回の投与でアミロイドプラーク量を減少させることが確認されている。北米56施設のプラセボ対照無作為化第II相試験 本研究は、早期の症候性AD患者におけるdonanemabの安全性、有害事象、および有効性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、米国とカナダの56施設で患者登録が行われた(米国Eli Lillyの助成による)。 対象は、年齢60~85歳、PET検査で脳へのタウおよびアミロイドの沈着が認められ、認知症発症前の症候性AD(prodromal AD、明らかな軽度認知障害を認める)または認知症を伴う軽度AD(認知症とADの診断基準を満たし、症状の重症度が十分に高い)で、精神状態短時間検査(MMSE)スコア(0~30点、点数が高いほど認知機能が優れる)が20~28点の患者であった。 被験者は、donanemab(初めの3回は700mg、それ以降は1,400mg)を4週ごとに最長72週、静脈内投与する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、76週時の統合AD評価尺度(iADRS、0~144点、点数が低いほど、認知機能障害や日常生活動作の障害が大きい)のスコアのベースラインからの変化とした。副次アウトカムは、CDR-SB(Clinical Dementia Rating Scale-Sum of Boxes)、ADAS-Cog13(13-item cognitive subscale of the Alzheimer's Disease Assessment Scale)、ADCS-iADL(Alzheimer’s Disease Cooperative Study-Instrumental Activities of Daily Living Inventory)、MMSEのスコアの変化、およびPETで評価したアミロイドとタウの量の変化であった。ARIA-Eの頻度が高い、重篤な有害事象に差はない 257例が登録され、131例(平均年齢[±SD]75.0±5.6歳、女性51.9%、APOE ε4保因者72.5%)はdonanemab群、126例(75.4±5.4歳、51.6%、74.2%)はプラセボ群に割り付けられた。 ベースラインの平均iADRSスコアは、donanemab群が106.2点、プラセボ群は105.9点であった。ベースラインから76週までの平均スコアの変化は、donanemab群が-6.86点、プラセボ群は-10.06点であり、donanemab群のほうが減少幅が小さく、認知・身体機能の低下が少なかった(群間差:3.20点、95%信頼区間[CI]:0.12~6.27、p=0.04)。 副次アウトカムの、ベースラインから76週までの平均スコアの変化の群間差は、CDR-SBスコアが-0.36点(95%CI:-0.83~0.12)、ADAS-Cog13スコアが-1.86点(-3.63~-0.09)、ADCS-iADLスコアが1.21点(-0.77~3.20)、MMSEスコアは0.64点(-0.40~1.67)であった。 florbetapir PETで測定したアミロイドプラーク値は、76週時にdonanemab群がプラセボ群よりも85.06センチロイド低下していた(-84.13 vs.0.93センチロイド)。donanemab群のアミロイド陰性(アミロイドプラーク値<24.10センチロイドと定義)の割合は、24週時が40.0%、52週時が59.8%、76週時は67.8%だった。 また、flortaucipir PETで評価したタウ総量は、76週時にdonanemab群がプラセボ群よりも0.01低下しただけで、実質的な差はなかった。 死亡(donanemab群0.8% vs.プラセボ群1.6%)や重篤な有害事象(17.6% vs.17.6%)の発生について両群間に差はなかった。アミロイド関連画像異常(ARIA)のうち浮腫(ARIA-E)は、donanemab群で頻度が高かった(26.7% vs.0.8%)。 著者は、「ADにおけるdonanemabの有効性と安全性を評価するには、より長期で、より大規模な試験を要する。現在、本試験の参加者を対象に、follow-on試験(TRAILBLAZER-EXT試験)への患者登録を進めている」としている。

3880.

同種HCT後の心房細動、死亡リスク増大/JCO

 同種造血幹細胞移植(HCT)後の、新規心房細動は予後不良と関連するとの知見が示された。米国・ロサンゼルス小児病院のEllen K. Chang氏らは、同種HCTに関連した転帰に対する心房細動の影響を検討する目的で後ろ向きコホート研究を行い、同種HCT後の心房細動発症は生存率の低下と関連していることを明らかにした。また、患者背景、HCT前の心臓パラメータおよびHCTに関連した曝露と、心房細動リスクとの重要な関連を特定し、HCT中およびHCT後の予防戦略についても示している。Journal of Clinical Oncology誌2021年3月10日号掲載の報告。 研究グループは、コホート内症例対照研究法を用いて、2014~16年に同種HCTを受けた487例を対象に、HCT前の心エコー測定とその後の心房細動イベントとの関連を解析した。 主な結果は以下のとおり。・HCT時の年齢中央値は52.4歳、心房細動発症までの期間中央値は117.5日であった。・心房細動の5年累積発生率は10.6%であった。・心房細動の独立した危険因子は、高齢(50歳以上)(ハザード比[HR]:2.76、95%信頼区間[CI]:1.37~5.58)、HLA非血縁ドナー(HR:2.20、95%CI:1.18~4.12)、脂質異常症(HR:2.40、95%CI:1.23~4.68)、HCT前のQTc延長(HR:2.55、95%CI:1.38~4.72)であった。・心房細動発症患者は非発症患者と比較し、左室収縮機能が同等であったにもかかわらず、HCT前の左房駆出率低値、左房リザーバー機能低下および三尖弁逆流ジェット速度上昇を呈する可能性が顕著に高かった。・心房細動後の脳卒中発症率は1,000人年当たり143例だった。・補正後解析では、全死因死亡リスクは12.8倍(HR:12.76、95%CI:8.76~18.57)、非再発死亡リスクは15.8倍(HR:15.78、95%CI:8.70~28.62)であった。

検索結果 合計:10313件 表示位置:3861 - 3880