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統合失調症外来患者におけるLAI治療中止の予測因子

 重度の精神疾患のマネジメントにおいて、患者の主観的な経験や態度は、重要であると考えられる。イタリア・フィレンツェ大学のLorenzo Tatini氏らは、臨床的に安定した統合失調症外来患者を対象に、経口抗精神病薬から長時間作用型抗精神病薬の維持療法(LAI-AMT)へ切り替え後の治療継続に影響を及ぼす予測因子の潜在的な役割について評価を行った。International Clinical Psychopharmacology誌2021年7月1日号の報告。 6ヵ月以上のLAI-AMTを受けた統合失調症患者59例のデータをレトロスペクティブに収集した。LAI治療を継続した患者と中止した患者を比較するため、ベースライン時の社会人口統計学的および臨床的特徴、精神病理学的特徴(PANSS、MADRS、YMRS)、薬に対する構えの調査(DAI-10)および抗精神病薬治療下主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版(SWNS)で収集した治療経験を評価した。LAI治療中止の予測因子を特定するため、二値ロジスティック分析およびCox回帰分析を用いた。特性の異なるサブサンプルにおけるLAI治療継続と中止を比較するため、Kaplan-Meier推定量を用いた。 主な結果は以下のとおり。・LAI治療を継続した患者は32例、中止した患者は27例であった。・LAI-AMT中止の予測因子は、失業とベースライン時のDAI-10スコアの低さであった。・その他の人口統計学的、臨床的、精神病理学的特徴に、大きな差は認められなかった。 著者らは「経口抗精神病薬からLAI-AMTへ切り替えを行う場合、DAI-10の評価が臨床的に重要であり、治療中止リスクのある患者を特定することが可能である」としている。

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オシメルチニブ耐性NSCLCに対するamivantamab+lazertinibのレスポンダーを同定(CHRYSALIS)/ASCO2021

 オシメルチニブ耐性となったEGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、EGFとMET受容体の二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFR-TKI lazertinibの併用投与が有望であるという発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、韓国Yonsei Cancer CenterのByoung Chul Cho氏よりなされた。 本試験(CHRYSALIS試験)は国際共同の第I相試験で、今回の発表は推奨用量決定後の拡大コホート部分の解析結果である。・対象:オシメルチニブ治療後に病勢進行したEGFR変異(Exson19del/L858R)陽性の進行NSCLC症例(45例)・試験群:amivantamab(1,050mg[体重80kg未満]または1,400mg[80kg以上])を毎週4回、その後隔週+lazertinib(240mg/日)連日投与。・評価項目:[有効性評価]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、NGS/ctDNAによる遺伝子変異状況やIHC結果と有効性との相関など[安全性評価]全有害事象、治療関連有害事象など 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値11.0ヵ月(2021年4月)時点での主治医判定によるORRは36%、DoR中央値は9.6ヵ月、PFS中央値は4.9ヵ月であった。・NGS検査やctDNA検査でオシメルチニブの耐性がEGFR/MET関連と同定された症例17例での解析では、ORR 47%、DoR中央値 10.4ヵ月、PFS中央値は6.7ヵ月であった。・それ以外の症例28例では、ORR 29%、DoR 8.3ヵ月、PFS 4.1ヵ月であり、奏効した8例の獲得耐性の機構は全例とも不明であった。・IHC検査でEGFRとMETが陽性の患者(10例)のORRは90%、DoRは9.7ヵ月、PFSは12.5ヵ月。IHC陰性患者のORRは10%であった。・安全性プロファイルは、既報(ESMO2020)と同様で、最も頻度が高かった有害事象は、Grade1/2のインフュージョンリアクション(78%)で、次いで皮膚障害、爪周囲炎などであった。治療中止は4%に、減量は18%の症例に認められた。 最後に発表者は、amivantamabとlazertinibの併用は、オシメルチニブ耐性EGFR変異陽性NSCLCに有望であり、その有効例を選別するには、NGSによる症例検索が適しているが、IHCによる検索も有効症例の選別には有用であるかもしれない、としめくくった。

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心停止後の昏睡患者の6ヵ月死亡率、低体温療法vs.常温療法/NEJM

 院外心停止後の昏睡状態の患者において、低体温療法は常温療法と比較して6ヵ月死亡率を低下しないことが示された。スウェーデン・ルンド大学のJosef Dankiewicz氏らが、非盲検(評価者盲検)無作為化試験「Targeted Hypothermia versus Targeted Normothermia after Out-of-Hospital Cardiac Arrest trial:TTM2試験」の結果を報告した。体温管理療法は心停止後の患者に推奨されているが、これを裏付けるエビデンスの確実性は低く、研究グループは大規模な無作為化試験で検証した。NEJM誌2021年6月17日号掲載の報告。心停止後の昏睡状態の患者1,900例で低体温療法と常温療法の6ヵ月死亡率を比較 研究グループは、心原性と推定されるかまたは原因不明の院外心停止後に昏睡状態の成人患者1,900例を、低体温療法群(無作為化後28時間まで目標体温33℃を維持、その後は1時間ごとに3分の1℃ずつ37℃まで復温)、または常温療法群(37.5℃以下を維持、≧37.8℃になった場合は37.5℃を目標に冷却)に無作為に割り付けた。介入期間終了後は、無作為化から72時間後まで正常体温(36.5~37.7℃)を維持した。 主要評価項目は6ヵ月時点の全死因死亡、副次評価項目は修正Rankinスケール(mRS)で評価した6ヵ月時点での機能的アウトカムなどである。また、事前規定のサブグループは性別、年齢、初期調律、自己心拍再開までの時間、入院時のショックの有無とし、事前規定の有害事象は肺炎、敗血症、出血、血行動態の悪化を来す不整脈、体温管理装置に関連する皮膚合併症とした。低体温療法 対 常温療法、死亡率に有意差なし 主要評価項目の解析対象は1,850例で、6ヵ月時点の死亡は低体温療法群が925例中465例(50%)、常温療法群が925例中446例(48%)であり、常温療法に対する低体温療法の死亡リスクは1.04(95%信頼区間[CI]:0.94~1.14、p=0.37)であった。 また、機能的アウトカムの評価を得た1,747例において、mRSスコア≧4の中等度以上の障害を有した患者は、低体温療法群が881例中488例(55%)、常温療法群が866例中479例(55%)であった(相対リスク:1.00、95%CI:0.92~1.09)。事前に規定したサブグループ解析においても、結果は一貫していた。 血行動態の悪化を来す不整脈の発現頻度は、低体温療法群24%、常温療法群17%で、低体温療法群が有意に高かった(p<0.001)。その他の有害事象の発現率は、両群で有意差は確認されなかった。

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コロナ禍での肺癌診療を考える【肺がんインタビュー】 第65回

第65回 コロナ禍での肺癌診療を考える出演<ファシリテーター>(聖マリアンナ医科大学 古屋 直樹氏)<パネリスト>(日本鋼管病院 田中 希宇人氏)(仙台厚生病院 中村 敦氏)(Kanormas Cancer Institute 長阪 美沙子氏)(神奈川県立がんセンター 村上 修司氏)新型コロナ禍におけるがん診療には十分なエビデンスはないが、臨床現場では原則に基づき施設ごとに実践的に対応している。しかし、「自施設での対応は適切か」「ほかの施設ではどうやっているのか」といった懸念や疑問があると聞く。そのような疑問や経験を共有するため、肺がん診療におけるCOVID-19対応にテーマを絞り、4名のパネリストが意見交換。その内容をハイライトで提供する。

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多剤併用の高齢者、他の薬剤継続もスタチン中止で心血管リスク増

 高齢者の多剤併用(ポリピル)は主要な健康問題に発展するため、近年問題になっている。処方薬を中止すれば薬の使用を減らすことができる一方、臨床転帰への影響は不確かなままである。そこで、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らがスタチン中止によるリスク増大の影響について調査を行った。その結果、多剤併用療法を受けている高齢者において、ほかの薬物療法を維持しつつもスタチンを中止すると、致命的および非致命的な心血管疾患発生の長期リスクの増加と関連していたことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年6月14日号掲載の報告。 研究者らはイタリア・ロンバルディア地域在住で多剤併用を受けている65歳以上を対象に、他の薬剤を維持しながらスタチンを中止することの臨床的意義を評価することを目的として、スタチン中止に関連する致命的および非致命的転帰のハザード比(HR)と95%信頼区間[CI]を推定した。対象者は2013年10月~2015年1月31日の期間(2018年6月30日までフォローアップ)に、スタチン、降圧薬、糖尿病治療薬、および抗血小板薬を継続服用していた患者。データはロンバルディ地域の医療利用データベースから収集し、2020年3~11月に分析した。また、スタチン中止後最初の6ヵ月間にほかの治療法を維持した患者とスタチンも他剤も中止しなかった患者について、傾向スコアによるマッチングを行った。 主な結果は以下のとおり。・全対象者は多剤併用の高齢者2万9,047例だった(平均年齢±SD:76.5±6.5歳、男性:1万8,257例[62.9%])。また、5人に1人が虚血性心疾患(5,735例[19.7%]を、12人に1人が脳血管疾患(2,280例[7.9%])を併存しており、そのほかにも心不全(2,299例[7.9%])や呼吸器疾患(2,354例[8.1%])があった。・全例のうちスタチンを中止するも他剤を継続したのは5,819例(平均年齢±SD:76.5±6.4歳、男性:2,405例[60.0%])で、傾向スコアでマッチングさせ4,010例が評価対象となった。 ・スタチン中止群の患者はすべて維持した群と比較して入院リスクが高く、心不全ではHR:1.24(95%CI:1.07~1.43)、心血管疾患の発生はHR:1.14(同:1.03~1.26)、あらゆる原因による死亡ではHR:1.15(同:1.02~1.30 )だった。・年齢や性別、臨床プロファイルなどの層別分析によると、スタチン中止の効果が各カテゴリー間で有意に不均一であるという証拠は示されなかった。・negative exposure analysisによれば、プロトンポンプ阻害薬の中止が死亡率に影響を及ぼしたという証拠は得られなかった(HR:1.08、同:0.95~1.22)。

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コロナワクチンで注目される有害事象、ワクチンなしでの発生率は?/BMJ

 新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン関連の、とくに注目される15種の有害事象(AESI)のバックグラウンド発生率を8ヵ国のデータベースを基に調べたところ、年齢や性別によりばらつきがあることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らによる検討で明らかにされた。データベース間でも差が認められたという。ワクチン有害事象のバックグラウンド率は、ワクチン接種者の間で観察された割合のベースラインコンパレータとして機能することで、ワクチンの安全性を監視するうえで歴史的に重要な役割を果たしているが、研究結果を踏まえて著者は、「バックグラウンド率をサーベイランス目的で用いる場合は、同一のデータベースを使い比較する必要性が示唆された。事前に年齢や性別による差を考慮し、階層化や標準化が必要だ」と述べている。BMJ誌2021年6月14日号掲載の報告。脳卒中や心筋梗塞、肺塞栓症など15のAESI発生率を解析 研究グループは、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、オランダ、スペイン、英国、米国の8ヵ国の電子健康記録と医療費支払いデータを基に、COVID-19ワクチン関連の15のAESIに関するバックグラウンド発生率を定量化した。事前に規定した15のAESIは、非出血性・出血性脳卒中、急性心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、アナフィラキシー、ベル麻痺、心筋炎/心膜炎、ナルコレプシー、虫垂炎、免疫性血小板減少症、播種性血管内凝固症候群、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、横断性脊髄炎だった。 AESI発生率は、年齢、性別、データベースにより層別化。発生率はランダム効果メタ解析を用いて別のデータベースとプール化し、国際医学団体協議会(Council for International Organizations of Medical Sciences:CIOMS)による頻度カテゴリーに従って分類した。データベースや年齢、性別によりAESI発生率に差 13のデータベースを基に、1億2,666万1,070人について2017年1月1日~2019年12月31日の間に365日以上の観察を行った(観察日は各年の1月1日)。 AESIバックグラウンド発生率は、データベースにより大きなばらつきがあった。たとえば、深部静脈血栓症の65~74歳女性の発生率は、英国CPRD GOLDデータベースでは387件(95%信頼区間[CI]:370~404)/10万人年だったが、米国IBM MarketScan Multi-State Medicaidデータでは1,443件(1,416~1,470)/10万人年だった。 AESI発生率は、年齢上昇に伴い増加するものもあった。具体的には、米国Optum電子健康記録データでは、男性の心筋梗塞発生率は、18~34歳では28件(95%CI:27~29)/10万人年だったが、85歳超では1,400件(1,374~1,427)/10万人年だった。 一方で、若年層に多くみられるAESIもあった。同健康記録データでは、男性のアナフィラキシー発生率は、6~17歳では78件(95%CI:75~80)/10万人年だったが、85歳超では8件(6~10)/10万人年だった。 メタ解析によるAESI発生率の推定値は、年齢および性別で分類された。

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オリゴ転移乳がん、サブタイプ別の予後良好因子(OLIGO-BC1サブセット解析)/ASCO2021

 日本、中国、韓国によるオリゴ転移乳がんに関する後ろ向きコホート研究(OLIGO-BC1)のサブセット解析として、乳がんサブタイプ別に各予後因子における全生存期間(OS)を検討した結果を、中国・Guangdong Provincial People's HospitalのKun Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用およびECOG PS0が予後良好で、luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移が1個のみ、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していた。オリゴ転移乳がんの予後良好な因子を評価 本研究は、日本癌治療学会(JSCO)、中国臨床腫瘍学会(CSCO)、韓国臨床腫瘍学会(KSMO)によるFederation of Asian Clinical Oncology(FACO)が実施した国際的後ろ向きコホート研究で、ASCO2020では、局所および全身療法がオリゴ転移乳がん患者のOSを延長したこと、多変量解析からは、ある種の全身療法、若年、ECOG PS0、診断時Stage I、非トリプルネガティブタイプ、少ない転移個数、局所再発、長い無病生存期間においてOSが延長することを報告している。・対象:2005年1月~2012年12月に診断された、ABCガイドラインで定義されたオリゴ転移乳がん(転移病変が少なく[5個以下、同一臓器に限らない]、サイズが小さい、腫瘍量の少ない転移疾患)で、全身療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法など)と局所療法(外科的切除、放射線療法、焼灼療法、経カテーテル動脈(化学)焼灼療法など)の併用、もしくは全身療法のみで治療された患者・評価項目:OS オリゴ転移乳がんをサブタイプ別に各予後因子におけるOSを検討した主な結果は以下のとおり。・オリゴ転移乳がん患者1,200例におけるオリゴ転移数は、578例(48%)で1個、289例(24%)で2個、154例(13%)で3個、102例(9%)で4個、77例(6%)で5個だった。・骨転移は301例(25%)、内臓転移は387例(32%)、局所再発は25例(2%)、多発性転移は404例(34%)で報告された。・luminalタイプは 526例(44%)、luminal-HER2タイプは189例(16%)、HER2タイプは154例(13%)、トリプルネガティブタイプは166例(14%)、その他は164例(13%)で報告された。・どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用、 ECOG PS0で生存ベネフィットが認められた。・luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移数1個、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していたが、トリプルネガティブタイプではこれら3因子による生存ベネフィットはなかった。・局所治療では、外科的切除と放射線療法の併用で生存ベネフィットがみられた。・リンパ節・肺・肝臓・骨転移において、転移数1個は2個以上に比べて5年OSが良好だった。 Wang氏は、「オリゴ転移乳がんは偶然にみつかるが、いくつかの症例は集学的治療で生存しうるようだ。予後良好な因子を評価し、局所療法を検討することは価値がある」と結論している。

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小児で新型コロナが重症化する3つの因子~日本含む観察研究

 日本、中国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、パキスタンのアジア7ヵ国における小児の新型コロナウイルス感染例の観察研究から、小児における重症化の危険因子として、1歳未満、併存疾患の存在、診察時の咳症状が特定された。シンガポール・KK Women's and Children's HospitalのJudith Ju Ming Wong氏らが報告した。The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene誌オンライン版2021年6月15日号に掲載。 7ヵ国の研究者グループは、小児のCOVID-19重症化の危険因子を特定するため、Pediatric Acute and Critical Care COVID-19 Registry of Asia(PACCOVRA)にデータ提供している病院の小児COVID-19の観察研究を実施した。主要アウトカムは、世界保健機関(WHO)の定義によるCOVID-19の重症度(軽症、中等症、重症、重篤)とした。単変量および多変量ロジスティック回帰モデルを使用し、重症/重篤なCOVID-19の危険因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・7ヵ国8病院から、検査で確認された小児の新型コロナウイルス感染例260例が登録された。・よくみられる臨床症状は類似していた(発熱64%、咳39%、鼻炎23%)。・約40%は無症候性だった。・全体の死亡率は2.3%で、すべてインドとパキスタンから報告された。・多変量解析によると、1歳未満、併存疾患の存在、診察時の咳症状が、重症/重篤なCOVID-19と関連していた。

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腎細胞がん1次治療のペムブロリズマブ+アキシチニブ、最終報告でも良好な生存改善(KEYNOTE-426)/ASCO2021

 進行再発の淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブ・アキシチニブ併用療法は、長期フォローアップの結果からもスニチニブより有用であるという発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのBrian I. Rini氏より発表された。 本試験KEYNOTE-426は、国際共同非盲検無作為化比較の第III相試験であり、過去のASCO(2019/2020)でもペムブロリズマブ・アキシチニブ併用療法(PemAx)の有意な生存延長が報告されている。今回は観察期間中央値42.8ヵ月時点(データカットオフ2021年1月)での最終結果報告である。・対象:淡明細胞型RCCで、腎摘除術後の再発例、または全身薬物治療の未実施例・試験群:ペムブロリズマブ200mg/日を3週ごと最長35サイクル(2年間)投与+アキシチニブ(5mgx2/日)を投与(PemAx群:432例)・対照群:スニチニブ(50mgX1/日)を4週投与2週休薬(Suni群:429例)・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会によるITT集団の全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]ITT集団の全奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、PemAx群45.7ヵ月、Suni群40.1ヵ月、ハザード比(HR)は0.73(95%信頼区間[CI]:0.60~0.88)、p<0.001であった。すべてのペムブロリズマブの投与が終わった2年以降も、カプランマイヤー曲線は離れたままで、36ヵ月時OS率は63%対54%であった。・PFS中央値は、PemAx群が15.7ヵ月、Suni群11.1ヵ月、HRは0.68(95%CI:0.58~0.80)、p<0.0001であった。36ヵ月時PFS率は29%対15%であった。・ORRはPemAx群60.4%(CR:10%)、Suni群39.6%(CR:3.5%)、p<0.0001であった。DoR中央値は、PemAx群23.6ヵ月、Suni群15.3ヵ月であった。・IMDCリスク分類におけるFavorable Risk群でのOSのHRは1.17(95%CI:0.76~1.80)であり、42ヵ月OS率はPemAx群が72.3%、Suni群が73.0%であった。・Intermediate/Poor Risk群でのOSのHRは0.64(95%CI:0.52~0.80)、42ヵ月OS率はPemAx群が50.6%、Suni群が37.6%であった。・両群ともに安全性プロファイルは既報同様で、安全性に関する新たなシグナルはなかった。 発表者は「今回の最終解析報告もこれまでの報告と同様に、進行性RCCに対する一次治療として、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用療法が標準治療であることを支持している」と述べた。

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HER2阻害薬の心毒性、そのリスク因子や管理は? 【見落とさない!がんの心毒性】第3回

今回のおはなし連載の第2回は、大倉先生によるアントラサイクリン心筋症についての解説でした。今回のテーマはHER2阻害薬の心毒性です。なかでもトラスツズマブが有名ですが、それ以外にもHER2阻害薬はあるんですよ。今回はその心毒性が起こる機序や病態の特徴について、概要を説明します。HER2阻害薬では、日頃からの心血管リスク因子の適切な管理がとても大事になります。HER2ってそもそも何?HER2はヒト上皮成長因子受容体(EGFR:human epidermal growth factor receptor)に似た受容体型チロシンキナーゼで、ヒトEGFR関連物質2 (human EGFR-related protein 2)を略してHER2と命名されました。別名でErbB2とも表現され、こちらはヒト以外に齧歯類なども含めた対象となります。正常細胞においてHER2は細胞増殖や分化の調節に関わる重要なシグナル伝達分子として働いており、そのHER2遺伝子発現の増幅、遺伝子変異ががん化に関わります。HER2遺伝子は唾液腺がん、胃がん、乳がん、卵巣がんで発現が見られ、現在ではHER2陽性タイプの乳がん、胃がんに対してHER2阻害薬が臨床で使われています。一方、HER2は心臓や神経にも存在します。これらの臓器でもHER2は細胞分化や増殖に関わり、HER2阻害薬により心臓では心筋細胞障害が生じ心毒性を発症する事になります。心筋特異的にErbB2を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスでは、出生するものの拡張型心筋症様の病態を呈し、心筋細胞のアポトーシスが観察され、大動脈縮窄術による後負荷増大で容易に心不全に陥り、高率に死亡する事が報告されています。そして、このコンディショナルノックアウトマウス由来の心筋細胞はアントラサイクリンへの感受性が亢進していたことから、ErbB2が生体において病的ストレスからの心保護に必須な分子と考えられています1)。つまり、乳がん治療でのアントラサイクリンとトラスツズマブとの逐次治療において、アントラサイクリンによりダメージを受けた心筋細胞がトラスツズマブによりその修復が阻害されると言う仕組みが考えられています(図1)2)。(図1)アントラサイクリンおよびトラスツズマブの逐次療法における心筋障害のイメージ画像を拡大するHER2阻害薬の種類分子標的薬に属するHER2阻害薬は、HER2タンパクを持つがんに対して投与され、とくに乳がん治療でよく用いられていますが、胃がんなどでも使われています。中でも抗体薬のトラスツマブが有名ですが、それ以外にも抗体薬のペルツズマブ、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)かつ二標的キナーゼ阻害薬(EGFRおよびHER2)のラパチニブ、そしてトラスツズマブと殺細胞性抗がん剤との抗体薬物複合体(ADC)のトラスツズマブ-エムタンシン(T-DM1)やトラスツズマブ-デルクステカンも最近登場しています。T-DM1はトラスツズマブによるHER2シグナル伝達阻害作用だけでなく、化学療法薬であるエムタンシン(DM1)をがん細胞内部に直接送達させ、がん細胞を破壊する作用も併せ持ちます。これらADCである新規のHER2阻害薬は従来のものと比較して、心毒性の発生頻度が少ない事が報告されています3)。(表1)HER2陽性乳がんで使用できる分子標的薬画像を拡大するHER2阻害薬による心毒性の機序HER2阻害薬が心筋細胞上のHER2(ErbB2)受容体を選択的にブロックする事で、いわゆる“心筋細胞の栄養”とも言えるneureglin(NRG)のErbB4-ErbB2二量体を介した心筋細胞への結合を阻害します。その結果、心筋細胞の生存や保護に関わるシグナル伝達を阻害し細胞ダメージを来すと言われています。とくに、HER2受容体はアントラサイクリン投与後の心筋細胞に代償的にアップレギュレートして発現する事が報告されており、その発現はアントラサイクリン投与後の心筋細胞のダメージへの保護、生存に寄与すると言われています。それゆえ、とくにアントラサイクリン投与後の心筋細胞修復機構の障害が生じ、心筋傷害が助長されると言われています(図1、図2)4)。(図2)HER2阻害薬による心毒性の機序画像を拡大するHER2阻害薬関連心毒性のリスク因子は?HER2阻害薬関連心毒性のリスク因子を下の表に示しています(表2)5)。アントラサイクリンの併用または治療歴、心不全の既往、高血圧や虚血性心疾患の合併、胸部放射線治療の併用により心毒性発現のリスクが高まります。この表から、通常の心血管リスク因子がHER2阻害薬関連心毒性にも重大なリスク因子となる事が分かります。そのため、通常の心血管リスク管理が薬剤性心毒性管理においてものすごく重要です。(表2)HER2阻害薬のリスク因子HER2阻害薬による心毒性の特徴と病態管理HER2阻害薬による心不全の発生頻度について、初期の解析によるとアントラサイクリンやシクロホスファミドとトラスツズマブを同時投与すると27%と高率であると報告されました6)。そして、逐次療法では1~4.1%で心不全症状、4.4~18.6%で左室駆出率(LVEF)の低下を来すと言われています。報告によれば逐次療法でも8.7%でNYHAIII度からIV度の心不全が発症しており、およそ3ヵ月毎の定期的な心機能評価が推奨されます7)。HER2阻害薬による心毒性の特徴は、左室機能低下後のHER2阻害薬の休薬により約2~4ヵ月程度で左室機能の改善がみられる事が多く、LVEF回復後にはHER2阻害薬の再投与検討も可能と考えられています。ただし、ここで注意が必要です。トラスツズマブ投与後に心不全症状を認めた患者の71%で半年後も左室機能の回復が得られなかったと言う報告もあります8)。われわれ臨床家の間では、約20~30%の症例で心機能低下が遷延すると考えられています。HER2阻害薬の休薬で左室機能の回復が得られる可能性はあるものの、心毒性がみられた際にはACE阻害薬(エナラプリル)やβ遮断薬(アーチストなど)による心保護薬の投与を行うことが望ましいと考えます。しかし、心保護薬の長期的継続について、とくに心機能が回復した症例に対する長期的心保護治療継続の妥当性については明らかにはされていません。筆者の個人的な対策ではありますが、左室機能低下を来していた時のトロポニン上昇度や心エコーにおける低心機能の程度などの患者病態、そして心血管リスク因子の保有状況などを考慮し、患者に応じて長期的な心保護管理の継続を行っています。スクリーニングのタイミング最後に、ヨーロッパ臨床腫瘍学会(ESMO)から2020年に発表されたESMO consensus recommendationsを紹介します(図3)9)。がん治療前から心機能を確認し、高リスクであれば循環器医へ相談、がん治療開始後も3ヵ月毎に心機能をフォローし心配な所見があれば適宜循環器医に相談をすると良いと思います。がん治療中の心血管毒性の管理において、がん治療医と循環器医との良好な連携は欠かせません。(図3)CTRCD[がん治療関連心機能障害]の管理アルゴリズム―ESMO consensus recommendations 2020―画像を拡大する1)Crone SA, et al. Nat Med. 2002;8:459-465.2)Ewer MS, et al. Nat Rev Cardiol. 2015;12:547-558.3)Verma S, et al. New Engl J Med. 2012;367:1783-1791.4)Lenneman CG, et al. Circ Res. 2016;118:1008-1020.5)Lyon AR, et al. Eur J Heart fail. 2020;22:1945-1960.6)Nemeth BT, et al. Br J Pharmacol. 2017;174:3727-3748.7)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.8)Tan-Chiu E, et al. J Clin Oncol. 2005;23:7811-7819.9)Curigliano G, et al. Ann Oncol. 2020;31:171-190.講師紹介

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新規CDK4/6阻害薬dalpiciclib+フルベストラント、進行乳がんのPFS改善(DAWNA-1)/ASCO2021

 内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんに、新規CDK4/6阻害薬dalpiciclibとフルベストラントの併用が、フルベストラント単独に比べ無増悪生存期間を大幅に改善し、安全性プロファイルも管理可能であったことが、第III相DAWNA-1試験の中間解析で示された。中国・National Cancer Center/Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのBinghe Xu氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。dalpiciclib+フルベストラントはHR+/HER2-進行乳がん患者の新たな治療選択肢 dalpiciclibは新たなCDK4/6阻害薬で、単剤で、複数の治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がんに対し単剤で忍容性および予備的な抗腫瘍活性を示すことが報告されている。DAWNA-1試験は、内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんを対象に、dalpiciclibとフルベストラントとの併用についてフルベストラント単独と比較した無作為化二重盲検第III相試験である。今回は、PFSイベント(病勢進行/死亡)が162件(予測の71.4%)発生した時点(2020年11月15日)で、事前に計画されていた中間解析の結果を報告した(追跡期間中央値10.5ヵ月)。・対象:内分泌療法で再発/進行した、局所進行もしくは転移を有するHR+/HER2-乳がん患者(進行がんに対する1ラインの化学療法は許容) 361例、試験群と対照群に2:1の割合で無作為に割り付け・試験群:dalpiciclib(150mg1日1回、1~21日目に経口投与、4週間ごと)+フルベストラント(500mg、1サイクル目は1、15日目、その後は1日目に筋注、4週間ごと)241例・対照群:プラセボ+フルベストラント 120例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師の評価によるPFS(有意性の閾値は片側p=0.0080とした)[副次評価項目]独立評価委員会(IRC)評価によるPFS、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率、奏効期間、次の化学療法までの期間、安全性 内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんを対象にdalpiciclibとフルベストラントとの併用についてフルベストラント単独と比較した主な結果は以下のとおり。・治験責任医師の評価によるPFSは、dalpiciclib+フルベストラント群の中央値15.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.1~NR)で、プラセボ+フルベストラント群の7.2ヵ月(95%CI:5.6~9.2)より有意に延長した(ハザード比[HR]:0.42、95%CI:0.31~0.58、p<0.0001)。・IRCの評価によるPFSも、dalpiciclib+フルベストラント群の中央値13.6ヵ月(95%CI:11.3~NR)で、プラセボ+フルベストラント群の7.7ヵ月(95%CI:5.6~10.9)より有意に延長した(HR:0.45、95%CI:0.32~0.64、p<0.0001)。・ORRは、dalpiciclib+フルベストラント群が27.0%(95%CI:21.5~33.0)、プラセボ+フルベストラント群で20.0%(95%CI:13.3~28.3)であった(p=0.0727)。・次の化学療法までの期間のHRは0.47(95%CI:0.32~0.69、p<0.0001)で、dalpiciclibによるベネフィットはdalpiciclibによる治療の終了後もみられた。・曝露期間中央値は、dalpiciclib+フルベストラン群ではdalpiciclib 9.4ヵ月(四分位範囲:4.3~11.4)、フルベストラント9.9ヵ月(同:4.7~11.9)、プラセボ+フルベストラント群ではフルベストラント6.1ヵ月(同:3.7~11.0)だった。・重篤な有害事象の発現率は、dalpiciclib+フルベストラント群、プラセボ+フルベストラント群の順に5.8%、6.7%、有害事象による治療中止率は2.5%、3.3%だった。発現率3%以上のGrade3/4の有害事象は、好中球減少症(84.2%、0%)と白血球減少症(62.1%、0%)だった。 Xu氏は、「本試験の結果は、内分泌療法で再発または進行したHR+/HER2-進行乳がん患者の新たな治療選択肢として、dalpiciclib+フルベストラントを支持している」と結論した。

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うつ病エピソードや抗うつ薬使用が小児双極性障害に及ぼす影響

 小児双極性障害は、重度の機能障害につながる重篤な再発性疾患である。そして、最初に発現する気分エピソードが、疾患の長期的な経過に影響を及ぼす可能性がある。トルコ・Dokuz EylulUniversityのNeslihan Inal氏らは、全国多施設自然主義的フォローアップ調査のサンプルより小児双極性障害の臨床的特徴を評価し、躁症状発症年齢に対する最初の気分エピソードおよび以前の抗うつ薬治療効果の影響について検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年6月2日号の報告。 双極I型障害の若年患者271例を対象に、トルコの代表的な6つの地域にある大学病院7施設と州立研究病院3施設の児童思春期精神科クリニックでフォローアップを行った。すべての診断は、構造化面接に従って実施した。すべてのデータは、臨床医が記録した診療データよりレトロスペクティブに収集した。 主な結果は以下のとおり。・最初に発現した気分エピソードがうつ病/混合エピソードの患者(IDE群)は129例、躁病エピソードの患者(IME群)は142例であった。・気分エピソードおよびラピッドサイクリングの総数は、IME群よりもIDE群で有意に多かった。・社会人口統計および疾患の特徴で調整したCox回帰分析では、抗うつ薬治療を受けたIDE群の思春期女性において、より早期に躁病を発症する可能性が高いことが示唆された(ハザード比:2.03、95%信頼区間:1.31~3.12、p=0.001)。 著者らは「本研究は、トルコで初めて実施された大規模フォローアップ調査であり、抗うつ薬治療経験のある若年者、とくに思春期の女性において、躁病の早期発症との関連が認められた。小児双極性障害の根底にある神経発達のプロセスを特定し、予防に対するアプローチを行うためには、より大規模なプロスペクティブ研究が必要である」としている。

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筋層浸潤性膀胱がんに対するGC+ニボルマブの有用性評価/ASCO2021

 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)を対象に、シスプラチン+ゲムシタビン+ニボルマブ併用投与の有用性評価と、膀胱温存が可能な症例の予測に関する報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Icahn School of Medicine at Mount SainaiのMatthew D. Galsky氏よりなされた。 本試験(HCRN GU16-257)は米国で行われた多施設共同第II相試験である。MIBCでは、プラチナベースの術前化学療法により30~40%の症例が病理学的完全奏効(pCR)を得られることと、そのpCR症例は予後良好であることが知られているが、そのpCRが明らかになるのは膀胱摘除後である。また過去のレトロスペクティブ研究によると、その10年生存率は膀胱全摘65%、部分切除73%、切除なし75%と大きな差はなく、部分切除例では53%、切除なし例では61%が、膀胱温存したままで10年生存を得ていたという報告がある。・対象:シスプラチン(CDDP)の投与適格のcT2-4a/N0/M0のMIBC・介入:CDDP+ゲムシタビン+ニボルマブ 4サイクル(GC+Nivo)臨床的完全奏効(cCR)症例はニボルマブの追加投与(4ヵ月)、その後局所再発をきたした時点で膀胱摘除術実施。Non-cCR症例は膀胱摘除術を実施・評価項目[主要評価項目]cCRの割合、治療ベネフィット予測因子としてのcCRの可能性評価(2年間の無転移生存、または膀胱摘除時にpCRが確認された場合を治療ベネフィットとした)[その他評価項目]初診時のTURBT検体におけるDNA損傷修復関連遺伝子(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)変異およびTMBとcCRの相関性 主な結果は以下のとおり。・2018年8月~2020年11月に76例が登録された。年齢中央値69歳、男性79%、臨床病期はcT2が57%、cT3が32%、cT4が12%であった。・4サイクルの薬物治療を完遂できたのは64例で、48%(31例)がcCRを達成した。・cCR達成31例中30例が膀胱温存。残りの1例とNon-cCR症例(33例)が膀胱摘除術を受けた。・cCR獲得後の膀胱温存症例では8例に局所再発が認められ、6例に膀胱摘除術が施行された。その際、50%は病理学的ステージがpT1N0以下であった。・Non-cCR症例で膀胱摘除術を受けた症例の36%がpT1N0以下で、32%がpN+であった。・有害事象プロファイルは、他のGC+Nivo試験での報告と同様であった。・TMB高値(≧10mut/Mb)と、ERCC2変異でcCRまたはpCRとの相関が認められた(いずれもp=0.02)。  最後に発表者は、MIBCに対するGC+Nivo療法は、cCRを達成できるレジメンであり、このcCRが膀胱を温存したままでの長期の無再発生存につながる可能性がある、と述べた。

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限界はあるが必要だった研究(解説:野間重孝氏)-1403

 アスピリンは世界で初めて人工合成された医薬品で、ドイツ・バイエル社がこの開発に成功したのは1897年にさかのぼる。ところが、低用量アスピリンに血小板凝集抑制作用があることが発見されたのは1967年のことだった。Gruentzigが経皮的冠動脈形成術(PTCA)を初めて行ったのが1977年であることを考えると、不思議な暗合を感じてしまうのは評者だけではないと思う。 PTCAは確かに画期的な技術ではあったが、バルーンによる拡張のみでは血管壁の解離、リコイルを防ぐことができず、高頻度に発生する急性冠動脈閉塞や慢性期再狭窄率の高さが問題となっていた。これに解決策を与えるべく開発されたのが冠動脈ステントだった。慢性期に対する効果はSTRESS、BENESTENT両試験により証明されたが、亜急性期ステント血栓症(SAT)にはなかなか解決策が見いだされなかった。当初アスピリンとワルファリンの併用による効果が期待されたが、十分な効果は得られなかった。90年代初めに開発されたチエノピリジン系薬剤であるチクロピジンとアスピリンの併用、つまり抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が初めてこの問題に解決策を与えたのである。 ステント開発によって術成績は飛躍的に向上し、とくに急性期合併症は激減したのだが、慢性期再狭窄による再血行再建術が必要になる率はそれでも15~30%に上るとされた。これに対して開発されたのが薬物溶出ステント(DES)であった。しかしDESの登場は新たな問題を引き起こした。金属のみによるステントでは比較的早くストラットが内膜により覆われるのに対し、DESでは内膜による皮膜形成に時間がかかり、ストラットがむき出しになっている期間が長いため、別のメカニズムからSATが問題となってきたのである。この頃にはチエノピリジン系薬剤も第2世代となり、クロピドグレルが主役となっていた。現在チエノピリジン系薬剤は第3世代の開発も進み、また違った機序の新規血小板機能抑制剤も開発されているが、それでもクロピドグレルの市場占有率は高いまま推移しているのは本論文にあるとおりである。アスピリン、クロピドグレル併用によるDAPTは確かにSATの発生を抑えたが、今度はDAPTをいつやめればいいのか、またやめた後にどちらの薬剤を残すのかが新たな問題として浮上した。 一方、ステント開発メーカーも手をこまねいていたわけではない。ストラットの菲薄化、形状の工夫、ポリマーの生体適合性の改善などを通して機材面からSAT発生率の低下が図られた。この結果、現在米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、欧州心臓病学会(ESC)のガイドラインで、出血リスクの低い患者では6ヵ月以上のDAPTを推奨するものの、出血リスクのある患者では1~3ヵ月のクロピドグレルの併用を推奨するというところにまでなったのである。SATの予防と出血リスクは、いわばトレードオフの関係にあるのである。 本論文は残ったもうひとつの問題、つまりDAPTをやめた後にどちらの薬剤を残すのかという問題を中心に据えた初めての大規模臨床研究である。ただし、これには少しただし書きが必要である。というのは、DAPTの期間を検討する一連の研究の中で、この問題は併せて扱われてきたからである。とくに最近のGLOBAL LEADERS試験、SMART-CHOICE試験、STOPDAPT-2試験などで短期間のDAPTとチエノピリジン系薬剤による耐容性はすでに十分議論されており、理由はさまざまであるにせよ、持続する薬剤としてはチエノピリジン系薬剤が選択されているのである。そもそも出血傾向はアスピリンで強く、またアスピリンでは胃腸障害などの副作用も問題になるからである。しかし著者らの言うとおり、この問題のみを正面から扱い、さまざまなレベルの冠動脈疾患を対象とした大規模臨床研究は、確かにこの研究が最初といえるのである。そしてこの問題について明快な解答を与えたことは評価されなければならないだろう。 しかし指摘されなければならないのは、これはあくまでクロピドグレルの成績だ、ということである。つまり、本研究からはDAPTの相手がプラスグレルであったり、チカグレロルであったらどうなのか、という点には言及できないということである。とくに第3世代チエノピリジン系薬剤であるプラスグレルは、代謝による効果のバラツキがほとんどないこと、さらに効果発現が速やかであることから、急性期の処置が必要な症例ではこちらのほうが選択されるケースが多いのではないだろうか。評者の周囲では、プラスグレルの場合もそちらを残すことを選択する臨床医が増えている印象がある。なお本稿は論文評であって総説ではないため解説できないが、なぜプラスグレルやチカグレロルがクロピドグレルに替わって標準治療薬とならなかったのかについての歴史的経緯は、若い方々には調べてみると参考になる点が多いと思うのでお勧めする。 気になった点をもうひとつ挙げると、著者ら自身がdiscussionの中で第3番目のlimitationとして認めているように、プロドラッグであるクロピドグレルでは肝臓における代謝は個人差が大きく、とくに東洋人でこの代謝酵素であるCYP2C19の欠損が報告されるケースが目立つことに関する議論である。この論文が韓国から発表されていることを考えると、著者らがこうした代謝の個人差の検討が行われていないことに対して、少し強いコメントをせざるを得ないことは理解できる。しかし、著者らが“The clinical significance of clopidogrel resistance is still under debate”と書き、さらにaspirin resistanceの問題を持ち出すなどの論述姿勢は適当だったのだろうか。また同国からクロピドグレルの効果についてAsian paradoxなる報告があるというが、これは定説といえるのだろうか。臨床研究において明らかになった事実を、自分たちはただ淡々と発表したのだと言えばよかったのではないだろうか。 評者はこの論文評欄において、一見当たり前であるように思われていることや類推が可能である事柄であっても、しっかり証明することの重要性を強調してきた。そういう意味でこの論文は評価されなければならないのは当然であるが、上記のように結果解釈の応用に限界がある点は指摘されなければならない。

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閉経後HR+早期乳がん、レトロゾール追加投与でベネフィットが得られる患者は?(NSABP B-42)/ASCO2021

 閉経後のホルモン(HR)陽性早期乳がん患者において、術後内分泌療法としてのレトロゾール5年間追加投与は、MammaPrintによるゲノムリスクが低リスクの患者では有意なベネフィットが確認されたが、高リスクの患者では有意差を得られなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、米国・UPMC Hillman Cancer CenterのPriya Rastogi氏が、第III相NSABP B-42試験の追加解析結果を報告した。 本試験は、術後内分泌療法を受けた閉経後のHR陽性早期乳がん患者を対象に、レトロゾール5年間追加投与の有効性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照試験。2019年のサン・アントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で、主要評価項目の無病生存期間(DFS)は、レトロゾール追加投与群で有意に延長したことが報告された(ハザード比[HR]:0.85、p=0.01)。OSに有意差はみられなかったが、乳がん無発症期間(BCFI)のHRは0.75、p=0.003、無作為化から遠隔転移までの期間(DR)のHRは0.72、p=0.01とともに改善した。今回の解析では、レトロゾール5年間追加投与によるベネフィットを受ける患者の選択における、70遺伝子シグニチャー検査(MammaPrint)の有用性が検討された。・対象:術後内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬(AI)を5年間、または3年以内のタモキシフェン投与後にAIを計5年間投与した閉経後のHR陽性早期乳がん患者・試験群:レトロゾールを5年間追加投与(ELT群)・対照群:プラセボを5年間投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]無作為化から遠隔転移までの期間(DR)[副次評価項目]無病生存期間(DFS)、乳がん無発症期間(BCFI) 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2020年4月30日、追跡期間中央値は 10.4年であった。・本試験の全適格患者は3,903例、うちMammaPrintの結果が得られ本解析の対象とされたのは1,866例(MPコホート、N0:56.4%、AIのみ:61.1%、HER2-:79.3%)。37.8%がMammaPrint 評価で高リスク(MP-H)、62.2%が低リスク(MP-L)、MP-Lのうち13.5%が超低リスク(MP-UL)、48.7%がMP-LNUL(MP-LだがMP-ULではない)だった。・レトロゾールの追加効果は、全体集団と比較してMPコホートでより顕著であった。・主要評価項目のDRは、MP-LでELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが(HR:0.43、95%信頼区間[CI]:0.25~0.74、p=0.002)、MP-Hではみられなかった(HR:0.65、95%CI:0.34~1.24、p=0.19、相互作用のp=0.38)。・副次評価項目のDFSにおいても、MP-L(HR:0.67、95%CI:0.52~0.85、p<0.001)でELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが、MP-Hではみられなかった(HR:1.10、95%CI:0.82~1.47、p=0.55、相互作用のp=0.015)。・BCFIでも同様の傾向が観察された。MP-L(HR:0.51、95%CI:0.35~0.74、p<0.001)、MP-H(HR:1.15、95%CI:0.74~1.79、p=0.53、相互作用のp=0.006)。・MP-Lのサブカテゴリ別にみると、MP-LNULではDR、DFS、BCFIすべてでELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが、MP-ULではみられなかった。ただし、症例数が少ないため検出力が不足している可能性がある。 演者のRastogi氏は、本結果は追加の内分泌療法を実施する患者選択におけるMammaPrintの臨床的有用性を示したと結論付け、臨床病理学的特徴と組み合わせた解析を行うことで、より最適な患者選択が可能になるのではないかと展望を示した。

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再発/難治性B-ALL、CAR-T細胞療法「KTE-X19」が有望/Lancet

 再発/難治性前駆B細胞急性リンパ性白血病(ALL)の患者に対する、自家抗CD19 CAR-T細胞療法「KTE-X19」の有効性と安全性を検討した第II相国際多施設共同非盲検単群試験「ZUMA-3試験」の結果を、米国・モーフィットがんセンターのBijal D. Shah氏らが報告した。完全寛解率または血液学的回復が不十分な完全寛解率は高率で、奏効した患者における全生存(OS)期間中央値は未到達であり、安全性プロファイルは管理可能であったという。新たな治療法や自家造血幹細胞移植(allo-SCT)の治療にもかかわらず、再発/難治性前駆B細胞ALL患者の転帰は依然として不良であり、より効果的な治療の開発が求められている。著者は、「今回の試験結果は、KTE-X19はそれらの患者に長期的な臨床的ベネフィットをもたらす可能性があることを示すものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。米国・カナダ・欧州25施設で行われたZUMA-3試験 ZUMA-3試験の被験者は、米国、カナダおよび欧州の25施設で登録され、18歳以上、ECOG 0/1、骨髄芽球5%超の再発/難治性前駆B細胞ALL患者が適格とされた。被験者は白血球除去療法および前処置化学療法を受けた後、KTE-X19の単回注入(1×106 CAR-T細胞/kg体重)を受けた。 主要評価項目は、中央評価による完全寛解(CR)率および血液学的回復が不十分な完全寛解(Cri)率であった。副次評価項目は、寛解期間(DOR)、無再発生存(RFS)期間、OS、微小残存病変(MRD)陰性率、allo-SCTを受けた患者の割合などであった。 有効性および安全性の解析は、治療を受けた患者集団を対象に行われた。主要評価項目達成は71%、奏効患者のOSは未到達 2018年10月1日~2019年10月9日の期間に、71例が登録され、白血球除去療法を受けた。KTE-X19の作製に成功したのは65例(92%)で、55例(77%)が投与を受けた。治療を受けた患者の年齢中央値は40歳(IQR:28~52)、追跡期間中央値は16.4ヵ月(13.8~19.6)であった。 CRまたは血液学的回復が不十分なCriを達成した患者は39例(71%、95%信頼区間[CI]:57~82、p<0.0001)であった。うちCR達成患者は31例(56%)であった。 DOR中央値は、12.8ヵ月(95%CI:8.7~評価不能[NE])であり、RFSは11.6ヵ月(2.7~15.5)、OS期間は18.2ヵ月(15.9~NE)であった。 奏効した患者において、OS中央値は未到達であり、38例(97%)がMRD陰性であった。KTE-X19投与後にallo-SCTを受けた患者は10例(18%)だった。 Grade3以上で最も頻度の高い有害事象は、貧血27例(49%)、発熱20例(36%)であった。Grade3以上の感染症を呈した患者は14例(25%)報告された。Grade5のKTE-X19関連事象は2例(脳ヘルニア、敗血性ショック)報告された。Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)は13例(24%)、Grade3以上の神経学的イベントは14例(25%)報告された。

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AZ製ワクチン、毛細血管漏出症候群を副反応に追加/欧州医薬品庁

 欧州医薬品庁(EMA)の安全委員会・ファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)はアストラゼネカ製のCOVID-19ワクチン「Vaxzevria:開発名ChAdOx1 nCoV-19(AZ製ワクチン)」に関するレビューをサイト上で発表し、過去に毛細血管漏出症候群を発症した人はAZ製ワクチンを接種すべきではない、と結論付けた。 毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome)は、毛細血管から液体が漏出し、手足のむくみ、低血圧、アルブミン血中濃度の低下などが生じ、全身の浮腫や腎不全などの症状を引き起こす希少疾患。 PRACは、AZ製ワクチンを接種した毛細血管漏出症候群の6例について詳細な検討を行った。症例の大半が女性で、ワクチン接種後4日以内に発生した。対象者のうち3例は毛細血管漏出症候群の既往歴があり、うち1例はその後死亡した。2021年5月27日時点で、AZ製ワクチンはEU/EEAおよび英国において7,800万回以上接種されている。 PRACは、毛細血管漏出症候群の兆候や症状、および過去に同症候群と診断されたことのある人の再発リスクに対する認識を高めるために、医療従事者とコミュニケーションをとることを検討しており、あわせて毛細血管漏出症候群をワクチンの新たな副反応として製品情報に追加し、このリスクについて医療従事者や患者の認識を高めるための警告を加えるべき、と結論付けている。

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AML初回治療、シタラビンのプロドラッグBST-236の有用性/ASCO2021

 初発急性骨髄性白血病(AML)はシタラビンによる強力寛解導入療法が標準治療となるが、毒性が強く高齢者や合併症のある患者は不適となる。不適患者にはベネトクラクスと脱メチル化薬(HMA)の併用療法が推奨されるが、臨床応用ははじまったばかりでリアルワールドのデータは乏しい。 こうした状況において開発中のaspacytarabine(BST-236)はシタラビンのプロドラッグで、シタラビンの曝露量を減少させ、全身毒性を軽減する。このaspacytarabineの有用性をみた多施設共同シングルアーム第II相試験の中間解析結果を、ノースウェスタン大学Jessica K. Altman氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:標準化学療法不適の初発AML患者・介入:aspacytarabine 4.5g/m2/日(シタラビン3g/m2/日に相当)を6日間静脈内投与、寛解導入療法1~2コースと地固め療法1~3コース・評価項目:[主要評価項目]完全寛解(CR)率[副次評価項目]最小残存病変(CRMRD)陰性、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・aspacytarabineの1~4コースを完了した46例が解析対象となった。年齢中央値75歳、ECOG PS 0~1が27例(59%)、2が19例(41%)だった。・26例(63%)がde novo AML、17例(37%)が二次性で、うち6例(13%)がHMAによる前治療を受けていた。・ベースライン時の骨髄芽球中央値は52%で、欧州白血病ネット(ELN)スコアが不利または中間の患者はそれぞれ54%と29%だった。・全CR率は39%、HMA±ベネトクラクス未治療群は45%、de novo AML群は52%、二次性群は18%だった。・完全寛解のうち、63%が最小残存病変(MRD)陰性だった。・20%以上の患者で発生した有害事象は、発熱性好中球減少症(57.4%)、低カリウム血症(44.7%)、末梢性浮腫(42.6%)などだった。Grade3以上の有害事象は、発熱性好中球減少症(48.9%)、血小板減少症(38.2%)、貧血(27.7%)などだった。 Altman氏はaspacytarabineの反復投与における安全性と忍容性が確認されたとしている。一方で本試験は奏効期間中央値12ヵ月、全生存期間中央値24ヵ月(フォローアップ終了時)にいずれも達しておらず、最終結果は今後の学会で発表される予定となっている。

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ヘルメットで甲状軟骨骨折【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第189回

ヘルメットで甲状軟骨骨折いらすとやより使用ヘルメットは、致死的な頭部外傷のリスクを軽減させるとされている装具です(医学的エビデンスはよくわかりません)。道路交通法第63条によると、13歳未満の児童では自転車に乗る場合にも着用努力義務があります。親など大人が運転する自転車に、子どもを乗せる時にも適用されます。ヘルメットにはあごひも(バックル)があり、これが実は頸部に対するリスクになるのでは……、という議論があります。Ostby ET, et al.Helmet Clasp Cracks Larynx? A Case Series and Literature ReviewAnn Otol Rhinol Laryngol . 2018 Apr;127(4):282-284.これは、米国・カリフォルニア州にあるロマ・リンダ大学の単施設のケースシリーズです。自転車とオートバイの交通事故の後、甲状軟骨の骨折があった3人の診療録や画像データを見返すと、興味深いことがわかりました。3人には嗄声や嚥下障害という症状がありました。ヘルメットのあごひも(バックル)が甲状軟骨の直上にある場合、ヘルメットが後ろにずれたタイミングで、ひもが甲状軟骨を骨折させてしまうことがあるのです。通常の装着方法では、甲状軟骨よりももう少し上になってヘルメットも固定されていることが多いですが、やや甘めに装着してしまうと、ヘルメットが脱げたときにあごひも(バックル)が甲状軟骨に大きな力をかけてしまいます。過去の文献検索では、ヘルメットの使用に続発した喉頭損傷の報告は1例のみですが、高エネルギー外傷においては、このあごひも(バックル)による喉頭へのダメージが軽視されている可能性があります。甲状軟骨や輪状軟骨の骨折は、ときに気管の損傷を合併することがあります。Gussackの分類にもあるように(図)、頸部外傷部位に皮下気腫がみられる場合、緊急性が高いです。画像を拡大するとくに、首から掛けて“なんちゃってヘルメット装着”をしている中高生は注意です。ちなみに私が中高生のときは、ノーヘルでした。時代ですな。1)Gussack GS, et al. Laryngotracheal trauma: a protocol approach to a rare injury. Laryngoscope 1986; 96: 660-665

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進行TN乳がんへのアテゾリズマブ、どの免疫フェノタイプや分子サブタイプに有効か(IMpassion130)/ASCO2021

 未治療の進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する第III相IMpassion試験の探索的解析から、免疫フェノタイプや分子サブタイプによりアテゾリズマブの上乗せ効果が異なることが示された。米国・University of Pittsburgh Medical Center Hillman Cancer CenterのLeisha A. Emens氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 IMpassion130試験は、進行TNBCの1次治療として、アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル(アテゾリズマブ併用群、451例)をプラセボ+nab-パクリタキセル(プラセボ群、451例)と比較した第III相試験で、PD-L1 IC+(腫瘍浸潤免疫細胞が1%以上発現)患者において、アテゾリズマブ併用群で有意な無増悪生存期間(PFS)の改善と臨床的に意味のある全生存期間(OS)の改善が報告されている。また探索的分析では、腫瘍微小環境(TME)がリッチな患者や腫瘍遺伝子変異量が多い患者におけるアテゾリズマブ併用による臨床アウトカムの改善が、PD-L1 IC+患者に限られることも報告されている。今回は、アテゾリズマブの併用効果に関連するTMEの構成要素を特定するために探索的解析を実施した。 PD-L1発現の有無と免疫フェノタイプ(inflamed/excluded/desert)は免疫組織化学染色(IHC)で評価し、分子サブタイプと経路の分析にはRNA-seqを使用した。アテゾリズマブ併用群とプラセボ群のPFSおよびOSは、タキサン治療歴、肝転移を調整しCox回帰分析を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・免疫フェノタイプ別では、PD-L1 IC+患者のinflamedタイプ(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.80)およびexcludedタイプ(HR:0.72、95%CI:0.51~1.00)で、アテゾリズマブ併用群のPFS改善がみられ、OSの改善はinflamedタイプ(HR:0.61、95%CI:0.42~0.88)のみでみられた。・分子サブタイプ別には、PD-L1 IC+患者のBLIA(basal-like immune-activated)タイプ(HR:0.49、95%CI:0.34~0.69)およびBLIS(basal-like immune-suppressed)タイプ(HR:0.66、95%CI:0.44~0.98)でアテゾリズマブ併用群のPFS改善がみられ、OS改善はBLIAタイプ(HR:0.54、95%CI:0.36~0.80)のみでみられた。 Emens氏は、「TMEの特徴は、PD-L1 IC+の進行TNBC患者におけるアテゾリズマブ+nab-PTXの臨床アウトカムと関連している。一方、PD-L1 IC-の患者のアウトカムと関連する特徴は確認されていない」とまとめた。

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