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片頭痛と認知症リスク~メタ解析

 片頭痛と認知症との関連を調査した研究はほとんどなく、その結果も矛盾している。中国・The Second People's Hospital of HefeiのLong Wang氏らは、片頭痛と認知症との関連性が認められるかを明らかにするため、メタ解析を実施した。Acta Neurologica Scandinavica誌オンライン版2021年9月15日号の報告。 各種データベース(PubMed、EBSCO、Web of Science、EMBASEなど)より2021年4月1日までに公表されたコホート研究を検索した。片頭痛患者における認知症のリスク比(RR)は、RevMan 5.1ソフトウエアを用いて算出した。不均一性の原因を評価するため、サブグループ解析および感度分析を行った。不均一性が認められた場合には、変量効果モデルを用いた。出版バイアスの評価には、Funnel plotとEgger's testを用いた。 主な結果は以下のとおり。・5件のコホート研究より、合計24万9,303人の対象者が抽出された。・プールされた分析では、片頭痛はすべての原因による認知症(RR:1.34、95%CI:1.13~1.59)およびアルツハイマー病(RR:2.49、95%CI:1.16~5.32)のリスク増加と関連していることが示唆された。・片頭痛と血管性認知症リスクとの有意な関連は認められなかった(RR:1.51、95%CI:0.77~2.96)。 著者らは「片頭痛は、アルツハイマー病およびすべての原因による認知症の潜在的なリスク因子であることが示唆された」としている。

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再発乳がんへのパルボシクリブ、実臨床での併用薬や次治療は?/日本癌治療学会

 2017年の承認以来、CDK4/6阻害薬パルボシクリブはホルモン受容体陽性/HER2陰性の手術不能または再発乳がん治療に使用されているが、治療ラインや併用薬、次治療についてのデータは限定的となっている。澤木 正孝氏(愛知県がんセンター)らは、日本におけるパルボシクリブによる治療状況を明らかにするために、リアルワールドデータを用いた後ろ向き観察研究を行い、第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)で報告した。 2017年12月から2021年2月までにMedical Data Vision(MDV)データベースでパルボシクリブが処方された患者の請求データが解析に用いられた。MDVデータベースには439病院(2021年4月時点)が参加しており、DPC病院全体の25%がカバーされている。 治療成功期間(TTF)中央値は、カプランマイヤー法を使用して推定され、併用内分泌療法についてはパルボシクリブ開始から30日以内を開始日とする乳がん治療として定義された。 主な結果は以下のとおり。・MDVデータベースに含まれる乳がんの診断を受けた約44万例のうち、パルボシクリブが投与された1,074例が解析対象とされた。追跡期間中央値は15.9ヵ月。・患者背景は年齢中央値が64(53~72)歳。女性が99.3%、閉経後が86.4%を占めた。チャールソン併存疾患指数の中央値は8、化学療法施行率は18.2%、術後内分泌療法施行率は52.0%で、45.7%は内分泌療法中あるいは内分泌療法開始1年以内の再発であった。・パルボシクリブが使用された治療ラインについて、半年ごとに期間を区切って変化をみると、1次治療は22.7%(2017年12月~2018年6月)から42.6%(2020年7月~12月)に増加し、4次治療以降は29.3%(2017年12月~2018年6月)から10.2%(2020年7月~12月)に減少していた。・併用内分泌療法はフルベストラントとレトロゾールが主に使用され、フルベストラントはLate lineになるほどその使用割合が増加していた。1次治療(357例):フルベストラント(57.4%)、レトロゾール(34.5%)、エキセメスタン(2.2%)、アナストロゾール(1.7%)、タモキシフェン(0.6%)、トレミフェン(0.3%)、その他(3.4%)2次治療(336例):フルベストラント(62.8%)、レトロゾール(23.5%)、エキセメスタン(5.1%)、アナストロゾール(3.9%)、タモキシフェン(0.3%)、トレミフェン(0.3%)、その他(4.2%)3次治療(150例):フルベストラント(66.0%)、レトロゾール(20.0%)、エキセメスタン(6.0%)、アナストロゾール(4.0%)、タモキシフェン(1.3%)、その他(2.7%)・TTF中央値は1次治療が12.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.7~14.2)、2次治療が9.8ヵ月(95%CI:8.6~11.9)、3次治療が8.4ヵ月(95%CI:6.8~10.6)だった。・初回投与量は125mgが82.0%を占め、うち63.5%で1回以上の減量が行われ、32.7%で75 mgまで減量が行われていた。・パルボシクリブ投与後の次治療については、20~30%で内分泌療法+CDK4/6阻害薬が使用されており、化学療法はLate lineになるほどその使用割合が増加していた。1次治療でのPAL投与後(194例):内分泌療法+CDK4/6阻害薬(29.4%)、化学療法単独(23.7%)、内分泌療法単独(17.0%)、内分泌療法+mTOR阻害薬(12.9%)、化学療法+ベバシズマブ(12.4%)、化学療法+内分泌療法(2.1%)、その他(2.6%)2次治療でのPAL投与後(213例):内分泌療法+CDK4/6阻害薬(30.0%)、化学療法単独(29.1%)、内分泌療法+mTOR阻害薬(13.6%)、化学療法+ベバシズマブ(12.7%)、内分泌療法単独(8.9%)、化学療法+内分泌療法(3.8%)、その他(1.9%)3次治療でのPAL投与後(93例):化学療法単独(35.5%)、内分泌療法+CDK4/6阻害薬(22.6%)、内分泌療法+mTOR阻害薬(15.1%)、内分泌療法単独(12.9%)、化学療法+ベバシズマブ(11.8%)、化学療法+内分泌療法(1.1%)、その他(1.1%) 澤木氏は、PALOMA-2試験におけるPFS中央値(27.6ヵ月)1)と比較すると本結果におけるTTFは短いが、米国のリアルワールドデータと大きな差はみられないと考察。また、パルボシクリブによる治療後、一定の割合でCDK4/6阻害薬が使用されている点についても、米国でのリアルワールド研究2)において同様の傾向が報告されているとした。

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「トルリシティ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第75回

第75回 「トルリシティ」の名称の由来は?販売名トルリシティ®皮下注0.75mg アテオス®一般名(和名[命名法])デュラグルチド(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果2型糖尿病用法及び用量通常、成人には、デュラグルチド(遺伝子組換え)として、0.75 mgを週に1回、皮下注射する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[インスリン製剤による速やかな治療が必須となるので、本剤を投与すべきでない。] 3. 重症感染症、手術等の緊急の場合[インスリン製剤による血糖管理が望まれるので、本剤の投与は適さない。]※本内容は2021年10月27日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年3月改訂(第9版)医薬品インタビューフォーム「トルリシティ®皮下注0.75mgアテオス®」2)Lillymedical.jp:製品情報

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進むがん遺伝子パネル検査普及と見える課題/日本癌治療学会

 1万8,329例中607例、8.1%。C-CATに登録されたわが国のがん遺伝子パネル累積検査数と、そこから治療に結び付いた症例数および割合である。 2021年10月21~23日に開催された第59回日本癌治療学会学術集会のワークショップにおいて、わが国のがん遺伝子パネル検査の現状が発表された。大幅な検査の増加とともに、いくつかの課題が示されている。検査数も治療に結びついた症例割合も増加 東北大学の小峰 啓吾氏は、がんゲノム医療中核拠点病院における、がん遺伝子パネル検査の経時的な解析結果を発表した。 調査は、がんゲノム医療中核拠点病でのがん遺伝子パネル検査を対象に行われ、2019年6月~2020年1月の第1期と、2020年2月~2021年1月の第2期に分けて分析された。 がん遺伝子パネル検査数は、第1期754例、第2期では2,295例、と第2期で大きく増加した。また、検査から治療に結び付いた症例の割合も、第1期3.7%、第2期7.7%、と第2期で有意に増加した(p<0.001)。 治療に結び付いた症例の治療内訳では治験がもっとも多く、割合は第1期で2.1%、第2期では4.7%と増加していた。また、治験登録数は治療に結びつく症例数と相関していた(R=0.72)。 遺伝カウンセリングが推奨された割合についても、第1期2.4%、第2期では11.1%、と第2期で増加した(p

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第83回 小児にCOVID-19抗体は生じ難い~ワクチンは有望で効果91%

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した成人はほとんど(90%超)が抗体反応を示し、それらの抗体は少なくとも12ヵ月間は持続するようです1)。感染を経て抗体ができた成人の更なる感染は7~9割ほど少なくて済むようになることが示されています2,3)。一方、SARS-CoV-2感染(COVID-19)小児のどれほどが抗体を備えるかはわかっていませんでした。無症状や軽症の小児はなおさらそうです。そこでオーストラリアのMurdoch Children’s Research Instituteの感染/免疫研究者Paul Licciardi氏等は同国メルボルンの非入院の無症状か軽症のSARS-CoV-2感染患者108人を募って小児の抗体反応が成人とどう違うかを調べました4,5)。その結果、小児と成人のウイルス量は同程度だったにもかかわらずSARS-CoV-2への抗体ができていた小児の割合は成人のおよそ半分ほどでしかありませんでした。小児57人の年齢中央値は4歳で、それらのうち解析が可能だった54人のおよそ4割(37%;20/54人)にしかSARS-CoV-2への抗体ができていませんでした。成人は51人(年齢中央値37歳)のうち解析が可能だった42人の8割ほど(76%;32/42人)に抗体ができていました。抗体ができていた成人には細胞免疫も認められましたが、小児はそうなっておらず、小児が感染で確かな細胞免疫を確立することは難しいのかもしれません。SARS-CoV-2感染小児のほとんどは無症状か軽症で済んでいて入院を必要とすることはほとんどありません。しかしデルタ変異株をはじめとするSARS-CoV-2変異株の出現を受けて小児のSARS-CoV-2感染は2021年になって増えており、小児の免疫を危ぶむ声も上がっています。SARS-CoV-2に感染しても抗体ができなかった小児は再感染する恐れがあり、抗体ができ難い小児は長い目で見て成人に比べてSARS-CoV-2感染をより許してしまうのかもしれません。今回の結果によると小児をCOVID-19から守るためにワクチン接種を含む手立てを講じる必要があるようです5)。実際COVID-19ワクチンは成人や10代の若者と同様に幼い小児の感染予防の手立てとなりうることが今週開催される米国FDA諮問委員会に先立って先週末に公表された解析結果6,7)で示されています。第II/III相試験の第1集団2,268人の10月8日までのデータ解析の結果、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b2は5~11歳小児のCOVID-19発症のほとんどを防ぎました。2,268人は2対1の割合でBNT162b2かプラセボに割り付けられ、BNT162b2投与群は1,518人、プラセボ群はその約半数の750人となりました。先立つ感染経験がない小児のCOVID-19発症数はBNT162b2投与群ではわずか3人でした。一方、プラセボ群はBNT162b2投与群より人数が少ないにもかかわらず16人がCOVID-19を発症し、BNT162b2は先立つ感染経験がない5~11歳小児のCOVID-19発症の90.7%を防ぎました。米国FDAの承認や疾病管理予防センター(CDC)の後押しが得られて事がすべてうまく運べば同国の5~11歳小児へのワクチン接種は来月11月の最初の週かその次の週には可能になるだろうと同国政府感染症対策のリーダーAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏は述べています8)。参考1)Feng C,et al. Nat Commun. 2021 Aug 17;12:4984.2)Rovida F,et al. Int J Infect Dis. 2021 Aug;109:199-202.3)Lumley SF, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 11;384:533-540.4)Children with mild COVID-19 may lack antibodies afterward / Reuters5)Reduced seroconversion in children compared to adults with mild COVID-19. medRxiv. October 18, 20216)Pfizer Briefing Document / Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting October 26, 20217)FDA Briefing Document / Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting October 26, 20218)Wuhan research theory 'molecularly impossible': Fauci / abcNEWS

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事実探求にはある程度の強引さも必要?(解説:野間重孝氏)

 現在全国あちこちで心肺蘇生法の講習が行われている。可及的速やかに、最低限の動脈血流を維持することが生命予後に重大な影響を与えると考えられ、実際各方面から支持されているからである。ここで注意しなければならないのは、なぜ最低限の血流を保つことが重要であるかである。それは心肺系の機能維持のためではない。脳神経系の機能の維持が最大の目的なのである。脳は10~15秒間虚血が続くだけで重大な損傷を受ける。これに対して心筋は10~15分の虚血に晒されても、損傷は受けるものの回復が可能である。であるならば、心肺蘇生から回復した人の最大の予後規定因子は中枢神経系の損傷の程度であるはずである。本studyはこの事実を対象を広く取って最終的に証明してみせたものである。 本研究には優れた先行研究があることを紹介しておかなければならない。COACT studyである(Lemkes JS, et al. N Engl J Med. 2019;380:1397-1407.)。実はこの論文の論文評を評者が担当しており、不思議な縁を感じている。このstudyはオランダの19施設が参加して行われたもので、院外心停止から蘇生しST上昇のみられない患者(非ST上昇型院外心停止患者)552人を2群に分け、一方には即時的に冠動脈造影(CAG)を行い必要ならば直ちに治療を施したのに対し、もう1群に対しては至適内科治療を行って経過を観察し、意識回復をしたもののみを対象としてCAGを施行した。両者の間で90日生存率に差はなく、死亡原因を分析すると神経学的損傷に起因するものが圧倒的に多かったことを示した。 このstudyは待機的CAG群で神経学的回復がみられたもののみをCAGの対象にしたという点は医療倫理の面から評価されたものの、統計学的には解釈が複雑なものとされざるを得なかった。またカウンターショックによる蘇生の対象となった患者のみを扱ったことに、患者層の偏りがあるのではないかという問題点も指摘された。 このような疑問点を払拭すべく計画されたのが本試験だった。ただし、一部の方がこうした流れを自然な流れと考えてしまわれないために、PROCAT II registryを紹介しておくことが適当であると思う。このregistryは蘇生に成功した非ST上昇型院外心停止患者958人全員に対してCAGを施行したところ、3分の1にinterventionの対象となる病変が見つかり、実際interventionを施行したと報告したものである。つまり非ST上昇型心停止であっても、それだけ虚血の関与が大きいと主張したのである。しかし一方COACT studyでは逆のことを強調されている。つまり彼らが対象とした非ST上昇型院外心停止回復患者の3分の1には冠動脈の異常が見いだせなかったことがむしろ強調されているのである。COACT studyは院外心停止回復後患者の予後を決定する最重要因子は脳神経損傷であって心血管系疾患ではないと結論しているのだから、この態度は一貫しているといえる。一方PROCAT II groupが冠動脈疾患の治療をした患者の予後が良好だったことを報告したことは評価されなければならないが、では残り3分の2はいったいなぜ心停止を起こしたのか、その予後決定因子は何だったのかについてしっかり追跡、報告する責任があると思われるが、その点は不明確である。つまりstudyの目的が違ったのだが、従来はこうした方向のほうが一般的だったといえるのである。 今回のTOMAHAWK studyではカウンターショックの対象にならない院外心停止患者をも対象に含めた。つまり、完全心停止や電気的機械的乖離なども蘇生に成功したものはすべて対象に含めた。また待機的CAG群では神経学的回復の有無を問わず、全身状態が落ち着き、CAGに耐えられると考えられたもの全員を対象とした。randomized studyとしてはこれが正しいやり方であることには誰も異論はないだろう。この結果脳神経障害の程度こそが非ST上昇型心停止回復例の主たる予後決定因子であり、心血管系因子の関与の程度は低いことをシンプルな統計で証明した。統計デザインがシンプルであるほど結果が明快であることは、いわば常識であるといってよい。 ただし、医療倫理という点からこうした研究方針が正しいのかとする異論もあるだろう。このような無作為分類をすると、脳死状態や植物状態に移行する可能性の高い患者までもstudyの対象に含めてしまうからである。そして先行したCOACT studyはまさにこの点を勘案して神経学的に回復しない患者を除外したのである。この辺の研究の倫理的側面については評者は軽々な発言はできないので、読者の方々に判断を委ねたいと思う。しかし批判はあるものの、非ST上昇型心停止回復後の予後決定因子は圧倒的に脳神経障害の程度が重要であり、心血管系損傷はそれほど大きな因子ではないこと、したがって全身状態が落ち着いてからCAGを行うという方針が妥当であることを明確な形で示したことは大きな事績であると評価されなければならない。上記の問題の観点からみれば、科学的事実の証明のためにはある程度の強引さも必要であることを示した研究だったともいえるのだろうか。

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新型コロナワクチン接種後のリンパ節腫脹はPET陽性になる【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第196回

新型コロナワクチン接種後のリンパ節腫脹はPET陽性になるphoto-acより使用私の職場で、新型コロナワクチン接種後に腋窩リンパ節が腫大した看護師さんがいました。当時そこまで知見が集まっていなかったものの、稀ながらこういう副反応もあることを海外の文献で読みました。しかし、がん診療においては解釈に注意が必要です。Schapiro R, et al.Case report of lymph node activation mimicking cancer progression: A false positive F 18 FDG PET CT after COVID-19 vaccination.Curr Probl Cancer Case Rep . 2021 Dec;4:100092.40代女性が、2011年末に左乳がんと診断されました。乳房切除術と、左センチネルリンパ節の摘出を受け後、タモキシフェンの投与が行われました。その後、骨転移を指摘され、レトロゾール、パルボシクリブ、デノスマブによる治療を開始しました。定期的にPET CT検査を受け、次第に臨床的効果が得られている状態でした。しかし、2021年1月の定期的PET CT検査で、左腋窩リンパ節および大胸筋下のリンパ節に集積がみられました。転移を疑っていろいろと検査を受けることになりましたが、生検前にリンパ節が正常サイズに戻っていることがわかりました。あれれ?おかしいぞ。よくよく聞いてみると、患者さんは2021年1月のPET CT検査の1週間前、左腕にモデルナ社製の新型コロナワクチン接種を受けており、これがPET CT偽陽性の原因だったと考えられました。新型コロナワクチン接種後のリンパ節腫脹については、本当に注意が必要で、とくにがん診療をされている医師は安易に転移の診断をしないよう注意が必要です。

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忙しい医師向け、スキマ時間に学べる英語学習アプリ5選【医療者のための英語学習法】

「将来は研究や臨床で留学をしたい」「国際学会で発表したい」「外国人の患者を英語で診察できるようになりたい」といった理由で、英語を勉強したいと感じている医療者の方は多いのではないでしょうか。私は現在、ニューヨークにある病院で内科レジデントとして働いています。日本で生まれ育ち、英語はまったく話せなかったものの、20歳ごろから本格的に英語学習を始めました。その後、USMLE(米国医師国家試験)の受験と就職活動を経て29歳で渡米し、臨床医として働いています。当然ながら、職場では患者さんやその家族、同僚や上司とのコミュニケーションはすべて英語で、高い語学力を求められる日々です。卒後5年間、私は海外で働くことを目指して、日本で働きながらコツコツ英語力を向上させてきました。その際に、とくに便利だと感じたのがスマホアプリです。数多くの英語学習の教材がある中で「なぜアプリ?」と思われるかもしれません。私が英語学習にアプリが向いていると考える理由は3点あります。1)常に持ち歩いているのでスキマ時間に利用しやすい皆さんも体感されていると思いますが、臨床業務には、忙しいながらふとしたスキマ時間が存在します。たとえば、外来で患者さんが来るのを待つ間、MRIの付き添いに行って検査が終わるのを待っている間、当直中に患者を診ていない時間など…。重い書籍をいつも持ち歩くのは難しいですが、スマホは常に持ち歩いているため、ちょっとしたスキマ時間を無駄にせず、勉強に充てるツールとして最適なのです。2)テキストと音声の両方からインプットできる学習教材が書籍の場合は、インプットはテキストのみです。一方、アプリはテキストと音声の両方があるものが多く、テキストと音声をセットで覚えることが可能です。このことは、日本人がとくに苦手とすることの多いスピーキングやリスニングの向上に役立ちます。3)フィードバックやリマインド機能があるアプリは、テスト形式になっているもの、テストで間違えた問題だけを繰り返し復習できる機能が付いたものが多くあり、書籍で勉強するよりも効率的です。ついついサボりがちになる勉強も、スマホのリマインド機能、通知機能をオンにしておけば毎日忘れることなく続けられます。また、学習の進捗状況が可視化されるのも良い点です。今回は、私のように「忙しくてまとまった時間を確保できない」という方に向けて、スキマ時間や移動時間を活用して英語力を向上させることができるアプリを5つご紹介したいと思います。1)英単語学習「mikan」iPhoneAndroidスキマ時間に英単語を覚えられる、単語帳アプリです。アプリ自体は無料で利用でき、アプリ内で単語帳を購入して単語学習に活用します。単語の音声読み上げ機能があり、発音とセットで覚えられるのが良いところ。間違えた問題だけをもう一度やり直すことも可能です。研究留学や臨床留学を目指す場合にTOEICやTOEFLなどの資格試験を求められる場合がありますが、そういった試験対策にもぴったりです。2)実践的な英会話が学習できる「Real英会話」iPhoneAndroidネイティブが実際に日常会話で使うフレーズが3,000以上載っています。どのフレーズも短文形式で紹介されているため、実際に使う場面を想像しやすいのが特徴。フレーズの自動再生機能は移動中のインプットに最適です。980円と有料のアプリですが値段以上の価値があると感じます。英語学習では、英語のフレーズを聞いた後に自分で話す「シャドーイング」が効果的だとされています。このアプリのフレーズはシャドーイングにちょうどいい長さなので、私も活用していました。医療英語に特化しているわけではありませんが、短期留学を行う予定の方や、オンライン英会話で講師とスムーズな会話をしたい方などにお薦めです。3)ネットで聞けるラジオアプリ「Podcast」iPhoneAndroidネットで配信されている音声が聞ける、いわば「ネットラジオ」として有名なPodcast。実は医療英語の学習に役立つものが数多くあります。臨床留学や海外での臨床実習を目指す方にお薦めなのが、「The Clinical Problem Solvers」というチャンネルです。研修医や医学生が症例プレゼンを行い、他の研修医や医学生がディスカッションに参加する、という形式のPodcastです。実際に米国の回診で行っているプレゼンやディスカッションに形式が近く、洗練された指導医が司会をしていることもあって臨床推論の勉強にもなります。また「NEJM this week」「JAMA Editors' Summary」などのチャンネルでは、その週に出版された有名医学雑誌のサマリーを聞くことができるため、英語学習のみならず医学情報のアップデートにも最適です。米国や欧州の各専門科学会が中心となってPodcastチャンネルを運営していることも多いので、ぜひご自身の専門科のPodcastを見つけてみてください。英語学習と医療情報のアップデートを同時に行うことができて一石二鳥です。4)発音矯正アプリ「ELSA Speak」iPhoneAndroidこちらは英語の発音に自信がない方にお薦めしたい、発音矯正アプリです。これまで英語の発音を矯正するためには、英会話スクールに通ったりネイティブと話したりする必要がありました。このアプリでは、AIが発音を聞き分け、どこが合っていてどこが間違っているかを一音ずつ指摘してくれます。そのフィードバックを受けて自己学習を積み重ねていく、という画期的な仕組みとなっています。英語は世界中の人が使うコミュニケーションの手段であり、英語になまりやアクセントがあるのは当然のこととして認識されています。そのため、日本人特有のなまりやアクセントがあっても大きな問題にはならないことが多いでしょう。しかし、「rとl」、「bとv」などを含む一部の単語では、発音が違うとまったく異なる意味になる場合が多々あります。私も、発音が理由でコミュニケーションが成り立たず、面食らう場面を幾度となく経験してきました。こうしたアプリを利用して自己学習で発音矯正ができれば、英語を話す時に自信が持てるようになります。5)習慣化アプリ「みんチャレ」iPhoneAndroid最後に紹介するのは、英語学習アプリではありません。同じ目標を持った人が集まり、勉強やダイエット、禁煙などにチャレンジする「三日坊主防止アプリ」です。英語学習のグループも多数あるので、「英語を勉強しようと思ってもついつい三日坊主になってしまう」という方にお薦めです。「オンライン英会話を毎日やる」「ELSA Speakを毎日やる」などの目標を決めたら、同じ目標を持つ仲間のいるグループに加入します(匿名で参加できます)。やった内容の写真やスクリーンショットをタイムラインに投稿し、他の人からのリアクションをもらえる、というシステムです。「1人でチャレンジすると挫折しやすいが、チームでお互いに励まし合うと長続きする」という科学的根拠に基づいて作られたアプリとのこと。一度試してみると面白いですよ。以上、英語学習で使えるアプリを5つご紹介しました。最初は無料で利用できるものがほとんどなので、まずは自分に合うかどうかを試してみるのもよいでしょう。また、最後に紹介した「みんチャレ」のコンセプトに共通する部分もありますが、私たちが運営をしている「めどはぶ(Medical English Hub)」は、励まし合うチームをつくることでモチベーションを維持し、英語学習の習慣を身に付けることを目標にしています。興味のある方はぜひ、めどはぶの詳細もチェックしてみてください。<執筆者>

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COPD増悪入院患者、肺塞栓症診断戦略の追加は?/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪で入院した患者において、通常治療に積極的な肺塞栓症(PE)の診断戦略を追加しても、通常治療のみと比較し複合的な健康アウトカムの有意な改善は認められないことが、スペイン・Universidad de AlcalaのDavid Jimenez氏らが同国18施設にて実施した、多施設共同無作為化非盲検試験「Significance of Pulmonary Embolism in COPD Exacerbations trial:SLICE試験」の結果、示された。PEはCOPDの増悪を呈した患者に多くみられることが報告されているが、増悪により入院したCOPD患者においてPEを積極的に検査することで臨床アウトカムが改善されるかどうかを評価した臨床試験はこれまでなかった。JAMA誌2021年10月5日号掲載の報告。通常治療と、無作為化後12時間以内のPE診断追加を比較 研究グループは2014年9月~2020年7月に、増悪のために入院したCOPD患者746例を、通常治療+積極的なPE診断戦略(無作為化後12時間以内にDダイマー検査→陽性の場合は肺血管造影CT検査)を行う介入群(370例)と、通常治療のみの対照群(367例)に、1対1の割合で無作為に割り付け、3ヵ月間追跡調査した(最終2020年11月)。 主要評価項目は、無作為化後90日以内の非致死的な新規/再発症候性静脈血栓塞栓症(VTE)、COPDによる再入院または死亡の複合エンドポイントであった。副次評価項目は主要評価項目の各イベントとし、有害事象についても評価した。アウトカムの改善には結び付かず 無作為化された746例のうち、無作為化時点で抗凝固薬を投与されていた4例、同意撤回3例、および誤って無作為化された2例を除く737例(98.8%)がintention-to-treat解析対象集団となった(平均年齢70歳、女性195例[26%])。 主要評価項目のイベントは、介入群で110例(29.7%)、対照群で107例(29.2%)に認められた(絶対リスク差:0.5%[95%信頼区間[CI]:-6.2~7.3]、相対リスク:1.02[95%CI:0.82~1.28]、p=0.86)。介入群の対照群に対する無作為化後90日以内の複合アウトカム発生に関するハザード比は1.0(95%CI:0.8~1.3、p=0.82)であった。 無作為化後90日以内の非致死的な新規/再発症候性VTEは、介入群で2例(0.5%)、対照群で9例(2.5%)(絶対リスク差:-2.0%[95%CI:-4.3~0.1]、相対リスク:0.22[95%CI:0.05~1.01])に発生した。COPD増悪による再入院についても、94例(25.4%)vs.84例(22.9%)で両群に差はなかった(2.5%[-3.9~8.9]、1.11[0.86~1.43])。90日死亡率は、6.2% vs.7.9%であった(-1.7%[-5.7~2.3]、0.79[0.46~1.33])。 有害事象については、大出血は介入群で3例(0.8%)、対照群で3例(0.8%)に発生した(相対リスク:1.0、95%CI:0.2~4.9、p=0.99)。

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PCI後心筋梗塞、クロピドグレルによるde-escalation戦略が好結果/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の安定した急性心筋梗塞(AMI)患者において、チカグレロルからクロピドグレル(ローディングなし)への非ガイド下でのde-escalation抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)戦略は、虚血リスクを増大することなく出血リスクを有意に低下し、12ヵ月までの臨床イベントリスク低下がチカグレロルを継続するDAPT戦略よりも優れている。韓国・カトリック大学議政府聖母病院のChan Joon Kim氏らによる同国32施設で実施した医師主導の多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「TALOS-AMI試験」の結果を報告した。PCI後のAMI患者に対しては、クロピドグレルよりも強力なP2Y12受容体阻害薬を最大1年間投与することが推奨されているが、維持期に出血リスクが高い状態が続くことが懸念されていた。Lancet誌2021年10月9日号掲載の報告。チカグレロルからクロピドグレルへの切り替えの安全性と有効性を検証 研究グループは2014年2月26日~2018年12月31日の期間にPCIが成功したAMI患者をスクリーニングし、同意が得られた患者に1ヵ月間アスピリン+チカグレロルによるDAPTを行い、主要有害虚血/出血イベントが認められなかった患者をde-escalation群(アスピリン+クロピドグレル)または継続群(アスピリン+チカグレロル)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 de-escalation群では、チカグレロルからクロピドグレルへ切り替える際、チカグレロル最終投与後の次の投与予定時刻(例:チカグレロル最終投与から約12時間後)に、クロピドグレル75mg(ローディングなし)を投与した。 主要評価項目は、1~12ヵ月までの心血管死、心筋梗塞、脳卒中、出血(BARC出血基準の2、3、5)の複合エンドポイントであった。非劣性マージンは、層別Cox比例ハザードモデルによるde-escalation群の継続群に対するハザード比(HR)が1.34(intention-to-treat集団で絶対差3.0%に相当する)とし、非劣性が認められた場合は優越性を検証した。ローディングなしクロピドグレルへのde-escalation戦略、複合エンドポイントを改善 計2,901例がスクリーニングを受け、2,697例が無作為に割り付けられた(de-escalation群1,349例、継続群1,348例)。 12ヵ月時点で、主要評価項目のイベントはde-escalation群で59例(4.6%)、継続群で104例(8.2%)確認された。HRは0.55(95%信頼区間[CI]:0.40~0.76、非劣性のp<0.001)であり、de-escalation群が有意に優れていた(優越性のp=0.0001)。 心血管死、心筋梗塞および脳卒中の複合では、de-escalation群(2.1%)と継続群(3.1%)で有意差はなかったが(HR:0.69、95%CI:0.42~1.14、p=0.15)、出血(BARC出血基準の2、3、5)はde-escalation群が少なかった(3.0% vs.5.6%、HR:0.52、95%CI:0.35~0.77、p=0.0012)。 なお、著者は研究の限界として、非盲検試験であること、非劣性マージンの幅が広いことなどを挙げ、多枝病変や複雑病変を有するAMI患者へのde-escalation戦略の適用には限界があるとの見解を述べている。

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MASTER DAPT試験とその解釈、出血イベント定義の難しさ(解説:中川義久氏)

 MASTER DAPT試験は、テルモ製のUltimasterステントを留置後に、高出血リスク患者における最適な抗血小板療法を検証した試験である。2021年欧州心臓病学会での発表と同時にNew England Journal of Medicine誌に論文が公表されるという快挙を達成した。日本発のステントを用いた研究であり、日本人医師としては悪い気はしないというか、爽快感もあるのが率直な感想である。このMASTER DAPT試験は、ステント留置から1ヵ月が経過した時点でDAPTから単剤治療に変更する群(短縮群)と、さらに最低2ヵ月以上DAPTを継続する群(継続群)にランダマイズし、割り付けから335日経過時点で両群の安全性と有効性を以下の3つの項目で評価している。(1)純臨床有害事象(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、大出血の複合)(2)主要心臓・脳有害事象(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)(3)大出血・臨床的に重要な非大出血 統計学的な比較検定の方法として、(1)と(2)は非劣性検定、(3)については優越性検定を用いて評価が行われている。結果として(1)と(2)は非劣性が達成され、(3)は優越性が示された。そして、出血性合併症リスクの高い患者において、DAPT期間の短縮は予後の改善につながることを示したと結論している。この3つの評価項目と比較方法は研究開始前に定められたもので、それに従い解析された結果に異議を挟むものではない。しかし、あえて評価項目の設定について考察させていただきたい。MASTER DAPT試験の出血イベントの定義は、BARCの出血基準に従ってなされている。BARCはARC(Academic Research Consortium)が提案する出血の基準で以下に紹介する。BARCの出血基準●タイプ0:出血なし●タイプ1:医学的に問題とならない(not actionable)、患者が予定外の検査、入院、治療のため医療機関を受診する要因とならない出血。患者が医療専門家に相談せず、患者自身の判断により治療を中止した場合も含む。●タイプ2:明白で、医学的に対応すべき(actionable)出血徴候で(例:臨床状況から想定される以上の出血。画像検査のみで検出される出血を含む)、タイプ3、4、5の基準には該当しないが、下記の基準の1つ以上を満たすもの:(1)医療専門家による非外科的介入を要するもの、(2)入院またはケアレベルの引き上げを要するもの、(3)評価を要するもの。●タイプ3:明白な出血+3g/dL以上のヘモグロビンの低下または、明白な出血に伴う輸血●タイプ4:CABG関連出血●タイプ5:致死的出血 評価項目(1)の純臨床有害事象においては、出血イベントは、「BARCタイプ3、タイプ5」の大出血としている。一方、評価項目(3)での出血イベントは、BARCタイプ2の「臨床的に重要な非大出血」と、タイプ3またはタイプ5の「大出血」を併せたものとしている。実際のMASTER DAPT試験の出血イベントを見ると、短縮群ではBARCタイプ2の出血の累積発生率が継続群に比較して低かった(4.5%対6.8%、差:-2.25%ポイント、95%CI:-3.59~-0.90)。一方で、大出血の累積発生率は両群とも同程度であった。つまり、MASTER DAPT試験の出血イベント評価におけるポジティブ(優越性)な結果は、BARCタイプ2の「臨床的に重要な非大出血」の差によりもたらされている。BARCタイプ2は、定義が少し緩い基準で、やや客観性に欠ける点が指摘されている。さらに、BARCタイプ2の出血イベント減少の臨床的な価値を、実臨床の現場でどのように解釈するかがポイントとなる。 ここでは詳しくは述べないが、同じく短期間DAPTについて検討した、STOPDAPT-2 ACS試験の結果も欧州心臓病学会で発表された。その結果として、短期間DAPTは標準的DAPTに対する非劣性証明を達成することができなかった。STOPDAPT-2 ACS試験での出血イベントの定義は、「TIMI Major or Minor」である。この「TIMI Major or Minor」は「BARCタイプ3、タイプ4、タイプ5」に相当する。BARCタイプ4のCABG関連出血はかなり少ないので、「BARCタイプ3、タイプ5」が「TIMI Major or Minor」とほぼ等価値の評価基準となる。つまり、STOPDAPT-2 ACS試験では、BARCタイプ2のレベルの出血を、イベントとはカウントしていない。仮定の話をするのはルール違反であるが、もしBARCタイプ2をSTOPDAPT-2 ACS試験の評価項目に加えていれば解析結果が異なる可能性もある。 このように、臨床研究の評価は微妙なバランスの上に構成されている。研究結果の解釈においては個々のイベント定義が重要であることを理解いただきたい。仮定の話を展開することは適切ではないことは重々理解しているが、あえて私的な考察を述べたことお許しいただきたい。

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ESMO2021レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のESMOは、6月のASCO、8月のWCLCに続く9月開催ということもあり、肺がん領域では大きなインパクトのある発表はないと思われましたが、重要な試験のアップデート、EGFR-TKIや免疫チェックポイント阻害薬の耐性後の治療開発、希少ドライバー変異に対する新薬や、がん免疫療法の第III相試験など、新たな知見の報告が多くありました。今回はその中から、とくに実臨床や近い将来に影響すると思われる演題について概括します。WJOG9717L試験EGFR遺伝子変異陽性、未治療進行再発、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを標準治療に、オシメルチニブ+ベバシズマブの優越性を評価した無作為化第II相試験である。活性型EGFR遺伝子変異タイプの割合や約2割の術後再発症例を含むなど、患者背景は同じ対象の過去の試験と同様であった。122例が登録され1:1に割り付けられた。主要評価項目は中央判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は主治医判定のPFS、全生存期間、奏効割合が設定されている。第1世代のEGFR-TKIであるエルロチニブにベバシズマブ(BEV)を併用することでPFS延長効果が第III相試験で示されており、オシメルチニブにBEVを併用することでPFSのさらなる延長効果に大きな期待が集まっていた試験である。BEV併用効果を示すことができなかった本試験の結果は、BEV併用群のPFS中央値22.1ヵ月、オシメルチニブ単剤群20.2ヵ月であった。生存曲線を見ると、治療開始早期から離れていたが24ヵ月あたりでほぼ重なってしまい、ハザード比0.862(95%信頼区間0.531~1.397)という結果だった。医師判定による結果も同様で、BEV併用群24.3ヵ月、オシメルチニブ単剤群17.1ヵ月であり、ハザード比0.801(95%信頼区間0.504~1.272)で差がなかった。サブ解析では、喫煙歴のある集団、del19の集団で併用群のPFSが良い傾向が認められた。奏効率は、BEV併用群82%、オシメルチニブ単剤群86%で同等であるが、Waterfall plotでは併用群は全例で縮小が認められた。しかし、血管新生阻害薬併用時に見られる腫瘍縮小の深さは見られなかった。有害事象で1つ興味深い結果があった。併用群でオシメルチニブに関連する肺臓炎発症頻度が少ないことである。オシメルチニブ単剤群18.3%、併用群3.3%であり、肺臓炎発症リスクを低減させる可能性が示唆される。この傾向は血管新生阻害薬併用の他試験でも見られている。本試験以外に、オシメルチニブにBEVを併用した試験は、T790M遺伝子変異陽性既治療症例を対象に実施された比較試験が2つあり(BOOSTER、WJOG8715L)、いずれも併用によるPFS延長効果を示すことができていない。血管新生阻害薬併用は単純ではなく、EGFR変異タイプ、胸水貯留や間質性肺炎の懸念など、使いどころを考える必要がある。DESTINY-Lung01試験HER2を標的としたADC(Antibody Drug Conjugate活性を:抗体薬物複合体)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)の第II相試験である。本試験には、標的とするHER2の免疫染色による、HER2過剰発現、またはHER2遺伝子変異を対象とした2つのコホートがある。2020年のASCOでHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん42例の中間解析結果が発表されたが、今回は91例の結果が発表された。主要評価項目は独立評価による奏効割合である。観察期間中央値は13.1ヵ月、年齢中央値60歳、36.3%に脳転移を有し、変異部位はキナーゼドメインが93.4%であった。ほぼ全例が標準治療を受けた既治療例で、HER2-TKI既治療例も一部いた。解析時、15例(16.5%)が治療継続していた。CR 1.1%を含む、54.9%の奏効割合、病勢制御率は92.3%。HER2変異部位、蛋白発現や遺伝子増幅レベル、TKI既治療の有無に関係なく奏効していた。PFS中央値は8.2ヵ月、生存期間中央値は17.8ヵ月で、標準治療後の成績として有望な結果である。有害事象において特筆すべきは間質性肺疾患(ILD)である。24例(26.4%)に薬剤関連のILDが発現し、多く(75%)はGrade1/2であるが、死亡2例(2.2%)を認めた。細胞傷害性抗がん剤がリンカーで結合している薬剤のため、30%を超える消化器毒性と骨髄抑制の発現があり、50%を超える嘔気と倦怠感が最も多い減量理由であった。RET阻害薬が最近承認され、KRAS阻害薬は承認申請中であり、希少ドライバー変異に対する分子標的治療薬が臨床に届き始めた。HER2を標的にする阻害薬はなく、この試験結果から間違いなく期待される薬剤であるが、リスクベネフィットを考慮する必要がある。本研究は発表と同時にNEJM誌に掲載されている。ZENITH20試験(コホート4)HER2エクソン20挿入変異陽性、未治療の非小細胞肺がんを対象にした、経口の汎HERチロシンキナーゼ阻害薬poziotinibの第II相試験である。EGFRとHER2のエクソン20の挿入変異は、非小細胞肺がんにおいてそれぞれ約2~4%に認められ、変異全体の約10%を占めている。またエクソン20挿入変異は既存のTKIに対して耐性を示すことが知られている。HER2エクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対し有効な治療はない。本試験には7つのコホートがあり、主に既治療・未治療、EGFR・HER2のそれぞれに対する有効性を検討している。今回のコホートでは、最初の48例にpoziotinib 16mgを1日1回経口投与、以後登録される被験者には8mgが1日2回投与された。年齢中央値は60歳で肺がん試験では比較的若い。未治療48例中21例が奏効し、奏効率43.8%(95%信頼区間:29.5~58.8)であり、主要評価項目を達成した。PFS中央値は5.6ヵ月、そのうち26%の症例はPFSが12ヵ月を超えて持続していた。有害事象は、下痢(83%)、口内炎(81%)、皮疹(69%)、爪囲炎(46%)が認められ、投与中断割合88%、減量割合77%で治療中止割合は13%、と既存の第2世代EGFR-TKIと同程度であり、毒性がやや強いと思われる。治療薬がないドライバー変異に対する新規治療として有効性を示しているが、初回治療成績として臨床的に意義のある有効性とは言い難い。IMpower010試験完全切除された術後IBからIIIA期(UICC第7版)の非小細胞肺がんで、術後化学療法を最大で4サイクル受けた患者を対象に、アテゾリズマブを16サイクル投与する試験治療を経過観察と比較した第III相試験である。PD-L1(SP263)発現陽性54.6%、EGFRまたはALK遺伝子陽性例14.9%が含まれていた。無病生存期間(DFS)を主要評価項目とした中間解析の結果がすでにASCO2021で発表されており、アテゾリズマブは経過観察に比べて、再発または死亡リスクを34%低下させた(ハザード比:0.66、95%信頼区間0.50~0.88)。ASCO、WCLCでの発表に続く今回は、再発の詳細と再発後の治療についての発表で、少しずつ試験の全貌が明らかになってきている。再発率は、PD-L1 TC 1%以上でII~IIIA期の集団で、アテゾリズマブ群29.4%、経過観察群44.7%であった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団では33.3%と43.0%、ITT集団(IB~IIIA期)では30.8%と40.8%であった。再発形式は局所または遠隔のみ、その両方と中枢神経再発別で比較しているが、2群間で大きな差はない。再発形式は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期の集団で、局所領域のみの再発はアテゾリズマブ群47.9%、経過観察群41.2%、遠隔再発のみは38.4%と39.2%、局所と遠隔再発は12.3%と16.7%、中枢神経再発のみは11.0%と11.8%だった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団やITT集団でも、再発形式、その割合はほとんど一緒であり、2群間に大きな差はなかった。無作為化から再発までの期間は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期集団でアテゾリズマブ群のほうが経過観察群より長く、中央値がそれぞれ、アテゾリズマブ群17.6ヵ月(0.7~42.3ヵ月)、経過観察群10.9ヵ月(1.3~37.3ヵ月)であった。また、同集団の再発形式別に見た再発までの期間は、いずれもアテゾリズマブ群のほうが長かった。しかし、無作為化されたII~IIIA期の集団やITT集団では、2群間の再発までの期間中央値は差が小さかった。再発後の治療においても外科治療、放射線治療、化学療法いずれも2群ともほとんど同じ割合であり、免疫療法を受けた割合は経過観察群(35.3%)で、アテゾリズマブ群(11.0%)より多かった。アテゾリズマブ群の再発に関しては経過観察群と比べて特徴のある因子はなく、局所から脳転移などの遠隔転移まで、満遍なく制御していることでDFS延長効果を示した結果であった。また、PD-L1発現50%以上の強発現集団では、DFSのハザード比は0.43と報告されている。現在、アテゾリズマブは術後化学療法に対して承認申請を行っている。本試験の観察期間中央値が32ヵ月であり、生存曲線もテイルプラトーが見られておらず、本当の意味での術後治療の有効性を見極めるためにはもうしばらく時間が要りそうである。IMpower010試験のデータは、Lancet誌に掲載されている。PACIFIC-R Real-World Study切除不能III期非小細胞肺がんを対象として、根治的同時化学放射線療法(CRT)後にデュルバルマブ維持療法を1年間投与する治療を、プラセボと比較して検証したPACIFIC試験のリアルワールドデータである。今年のASCO2021でデュルバルマブ投与による5年生存割合40%と長期生存改善効果が報告され、切除不能III期の予後を大きく改善しているが、試験データがこの1つしかない。良好な治療成績を示したPACIFIC試験だが、プラセボ群の治療成績も良い。そのため、試験に登録された対象全体が全身状態を含め条件の良い症例であると考えられ、患者背景もさまざまな実臨床で治験と同様の成績が証明できるのか疑問があった。この試験は、PACIFICレジメンの実臨床における有効性を後ろ向きに評価した観察研究である。11ヵ国、29施設から登録された1,399例が解析対象となった。患者背景は年齢中央値66歳、StageIIIA 43.2%、扁平上皮がん35.5%、CRT同時併用は76.6%、PD-L1≧1%は72.5%であった。放射線治療終了からデュルバルマブ投与までの期間中央値は56日、デュルバルマブ投与回数中央値22回、PFS中央値は21.7ヵ月で治験成績(16.9ヵ月)より良好であった。デュルバルマブ投与完遂率47.1%、有害事象による中止率16.7%、PDによる中止率26.9%も治験と同様であった。切除不能III期非小細胞肺がんに対するCRT後のデュルバルマブ維持療法の有用性は、リアルワールドでも裏付けられた結果といえる。CASPIAN試験進展型小細胞肺がんを対象に、プラチナ+エトポシドを標準治療とし、デュルバルマブの併用、デュルバルマブ+tremelimumabの併用をそれぞれ評価した第III相試験である。主要評価項目である全生存期間の延長効果がデュルバルマブの上乗せによって示され、肺がん診療ガイドラインで推奨されている。最近、Lancet Oncology誌に掲載された2年フォローアップ解析の生存データの報告も新しい。今回の発表では、追跡期間中央値39.4ヵ月の3年生存割合のアップデート結果が示された。進展型小細胞肺がんで3年生存まで解析するのは珍しい。報告された生存に関する解析では、両群のハザード比が0.71、95%信頼区間0.60~0.86、3年生存割合が試験治療群17.6%、標準治療群5.8%という結果で、生存曲線の開きを維持しつつ、3年生存率の差が3倍になりテイルプラトーも見られた。小細胞肺がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬の上乗せによる長期生存効果が確認できたが、非小細胞肺がんと違い、有望なバイオマーカーがなく、開発に期待したい。CheckMate-743試験切除不能進行、未治療悪性胸膜中皮腫の1次治療に対して、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の試験治療を、標準化学療法であるペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンと比較した第III相試験である。観察期間中央値29.7ヵ月で実施された事前指定の中間解析においてハザード比0.74(96.6%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0020)と、ニボルマブとイピリムマブ併用療法による生存延長効果が示されているが、今回、観察期間中央値43.1ヵ月の3年長期生存結果と探索的バイオマーカーの解析結果が発表された。生存期間中央値は、ニボルマブとイピリムマブ併用群18.1ヵ月、標準治療群14.1ヵ月でハザード比0.73(95%信頼区間0.61~0.87)であった。3年生存割合は、23%と15%で、少しずつ年次生存率の差は小さくなっている。生存曲線はしっかり離れているがテイルプラトーは見え始めたような印象である。腫瘍組織のRNAシークエンスを用いてCD8A、STAT-1、LAG-3、PD-L1の4遺伝子の発現スコア、TMB、LIPI(Lung immune prognostic index、好中球/リンパ球比とLDHから算出される)と生存の関連が解析された。ニボルマブとイピリムマブ治療を受けた集団において、4遺伝子の発現スコアが高い集団で生存が良かった(21.8ヵ月vs.16.8ヵ月)。一方、化学療法群ではスコアによって生存に差がなかった。TMBやLIPIスコアに関係なく、ニボルマブとイピリムマブ群の生存が良い傾向が示された。WJOG9616L試験PD-1(L1)抗体が有効であった進行再発非小細胞肺がんに対して、ニボルマブ投与の有効性を検討した第II相試験である。主要評価項目は奏効割合、副次評価項目は無増悪生存期間、全生存期間などとなっている。標準治療を受けた既治療進行肺がんでは、前治療で奏効が得られた抗がん剤の再投与による治療は、比較的広く受け入れられている。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の再投与の有効性は、症例報告で散見されている程度である。対象は、CR、PRもしくは6ヵ月以上のSDの臨床的有効性が得られ、その後に増悪し、最終投与から60日以上経過している61症例で、59例で有効性が解析された。奏効割合は8.5%、無増悪生存期間中央値2.6ヵ月、全生存期間中央値は11.0ヵ月だった。診断時のPD-L1発現や前治療ICIの効果(41例がCRまたはPR)と有効性は関連性がなかった。ICI無効後のリチャレンジの有効性はない結果となったが、irAEなどで中止後の再投与とは違うと思われる。おわりに今回取り上げた演題以外にも知っていただきたい発表がたくさんありますが、臨床に反映できる内容が良いと考えて演題を選び概括させていただきました。まずはこのレポートが、多くの先生方に読んでいただき、今の臨床に役立つ内容になっていれば幸いです。

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統合失調症と肥満~メタ解析

 統合失調症および抗精神病薬と代謝調整不全との関係は、現在十分に確立された知見が示されているが、肥満に対する影響についてはよくわかっていない。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのEmily Smith氏らは、肥満測定画像技術の所見を統合することにより、統合失調症患者の病状や治療に対する肥満の影響を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年8月30日号の報告。統合失調症は肥満リスクが高く、抗精神病薬に使用により増強される 2021年2月までに報告されたケースコントロール研究およびプロスペクティブ縦断研究を、MEDLINE、EMBASE、PsychINFO、Scopusより検索した。主要アウトカムは、体脂肪率、皮下脂肪、内臓脂肪を含む肥満関連の測定値とした。 統合失調症への肥満の影響を検討した主な結果は以下のとおり。・統合失調症スペクトラム障害患者における肥満を定量化するため画像診断法を用いた29件の研究を特定した。・統合失調症スペクトラム障害患者群では、対照群と比較し、肥満関連の測定値が高かった。 ●体脂肪率の平均差:3.09%(95%CI:0.75~5.44) ●皮下脂肪の平均差:24.29cm2(95%CI:2.97~45.61) ●内臓脂肪の平均差:33.73cm2(95%CI:4.19~63.27)・抗精神病薬の使用は、皮下脂肪、内臓脂肪の増加との関連が認められたが、体脂肪率には影響を及ぼさないようであった。 ●皮下脂肪の平均差:31.98cm2(95%CI:11.33~52.64) ●内臓脂肪の平均差:16.30cm2(95%CI:8.17~24.44)・しかし、体脂肪率の変化は、治療を受けていた統合失調症スペクトラム障害患者と比較し、抗精神病薬未使用/初めて使用の患者のほうが高かった。 著者らは「統合失調症スペクトラム障害患者は、肥満リスクが高く、とくに抗精神病薬に使用により増強されることが示唆された。抗精神病薬未使用の若年患者では、この影響をとくに受けやすい可能性がある。今後の研究では、特定の抗精神病薬の肥満に対する影響や全体的な代謝関連への影響を調査する必要がある」としている。

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ファイザー製ワクチン後の心筋炎、発症率と重症度/NEJM

 イスラエルの大規模医療システムにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)を1回以上接種した人の推定心筋炎罹患率は2.13/10万人で、16~29歳の男性の罹患率が最も高く、重症度は軽症~中等症だったという。イスラエル・Rabin Medical Center・Beilinson HospitalのGuy Witberg氏らが、1回以上接種者250万人超を調べた結果を報告した。心筋炎発症とCOVID-19のmRNAワクチン接種との関連を示唆する報告がされているが、これまで頻度や重症度について大規模な調査は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2021年10月6日号掲載の報告。イスラエルで、初回ワクチン接種日から42日までの心筋炎罹患率を分析 研究グループは、イスラエル最大の医療組織(HCO)「Clalit Health Services」のデータベースから、mRNAワクチンBNT162b2を1回以上接種し、心筋炎の診断を受けた患者を抽出した。心筋炎の診断は、米国疾病管理予防センター(CDC)の定義に基づき、循環器専門医が判断した。 患者の電子健康記録から、症状、臨床経過、アウトカムを要約。Kaplan-Meier法で、初回ワクチン接種日から42日までの心筋炎罹患率を分析した。16~29歳・男性の推定罹患率が最も高く10.69/10万人 ワクチン接種をした16歳以上のHCO会員250万人超において、心筋炎の診断基準に適合した症例は54例だった。ワクチン1回以上接種者の推定罹患率は、2.13/10万人(95%信頼区間[CI]:1.56~2.70)だった。推定罹患率が最も高かったのは、16~29歳の男性で、10.69/10万人(6.93~14.46)だった。 心筋炎の重症度は、76%が軽症で、22%が中等症だった。心原性ショックとの関連が認められたのは1例だった。 心筋炎発症後、中央値83日の追跡期間中、病院再入院は1例で、退院後に原因不明の死亡が1例報告された。入院中に心エコー検査で左室機能不全が認められたのは14例で、そのうち退院時点で同機能不全を有していたのは10例、うち5例はその後の検査で正常な心機能が確認された。

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ファイザー製ワクチン後の心筋炎、非接種者と比較した発症率/NEJM

 mRNAワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)接種後の心筋炎の罹患率は、低率だが、とくに若い男性の2回接種者で増大すること、また臨床症状は概して軽症であったことを、イスラエル・Hadassah Medical CenterのDror Mevorach氏らが同国保健省のモニタリングデータを分析して報告した。イスラエルでは2021年5月31日時点で、約510万人がmRNAワクチン・BNT162b2の完全接種を受けている。同国保健省は、有害事象のモニタリングにおいて心筋炎が報告された早期の段階から積極的なサーベイランスを行っていたという。NEJM誌オンライン版2021年10月6日号掲載の報告。初回接種・2回目接種後のリスク差などを評価 研究グループは2020年12月20日~2021年5月31日のイスラエル保健省のデータベースから、臨床・検査データや退院サマリー、電子カルテを後ろ向きにレビューし、全心筋炎について、Brighton Collaboration定義を用いて分類した。 心筋炎の罹患に関する分析では、ワクチン初回接種後と2回目(21日後)接種後の罹患率を、リスク差を算出して比較。診断確実性とは独立した、ワクチン初回接種後21日以内、2回接種後30日以内の、観察/予測罹患率の標準化罹患率比を算出して評価した。また、2回目接種後30日の率比を、ワクチン非接種者との比較によって求め評価した。2回目接種後の標準化罹患率比は全体では5.34 心筋炎症状が認められた304例のうち、21例は別の診断名が付いていた。それらを除く283例のうち、BNT162b2ワクチン接種後の発症例は142例で、うち136例がdefinitive/probableに分類された。 definitive/probable例のうち129例(95%)が軽症と判断されたが、劇症だった1例は死亡している。 ワクチン1回目と2回目接種後のリスク差は、全体では1.76/10万人(95%信頼区間[CI]:1.33~2.19)で、16~19歳男性で最も差が大きく13.73/10万人(8.11~19.46)だった。 過去のデータに基づく予測値と比較した2回目接種後の標準化罹患比は5.34(95%CI:4.48~6.40)で、16~19歳男性の2回目接種後が最も高く13.60だった(9.30~19.20)。 ワクチン完全接種者の2回目接種後30日の、ワクチン非接種者に対する心筋炎発症に関する率比は2.35(95%CI:1.10~5.02)で、16~19歳男性で8.96(4.50~17.83)と最も高く、6,637人中1人の割合で発症していた。

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ESMO2021レポート 消化器がん(上部下部消化管)

レポーター紹介2021年9月16日から21日にかけて、パリでESMOが開催された。「パリ」ということで楽しみにされていた先生も多かったのではないだろうか。私もその1人である。今回も新型コロナウイルスの影響で現地参加はかなわなかったが、感染は現地で比較的制御されているのかハイブリッドでの開催であり、欧米の先生の中にはリアルに参加されている方がいたのが大変うらやましく、印象的だった。今年のESMO、消化管がんの演題はpractice changingではないものの、来るべき治療の影が見え隠れする、玄人受けする(?)演題が多い印象であった。後述するように、とくに中国の躍進を感じさせる演題が多く、個人的には強い危機感を覚えている。食道がんいまや消化管がんにおける免疫チェックポイント阻害剤(ICI)のショーケースともいえるのが食道がん1st lineである。これまでに出そろったデータとして、ペムブロリズマブ+chemo(KEYNOTE-590試験)、ニボルマブ+chemo or イピリムマブ(CheckMate 648試験)、camrelizumab+apatinib(ESCORT-1st試験)がある。それにさらに加わったのが、中国発のICI、sintilimabとtoripalimabである。抗PD-1抗体sintilimabのchemotherapy(シスプラチン+パクリタキセル or 5-FU)に対する上乗せを検証したORIENT-15試験では、食道扁平上皮がん(ESCC)のみの全体集団で、主要評価項目の全生存期間(OS)における有意な延長を示した(OS median:16.7 vs.12.5 months、HR:0.628、p<0.0001)。同じく抗PD-1抗体toripalimabのchemotherapy(シスプラチン+パクリタキセル)に対する上乗せを検証したJUPITER-06試験では、ESCCのみの全体集団で主要評価項目のOS、無増悪生存期間(PFS)の両方において有意な延長を示した(OS median:17.0 vs.11.0 months、HR:0.58、p<0.00036、PFS median:5.7 vs.5.5 months、HR:0.58、p<0.0001)。胃がんCheckMate 649試験(CM 649)の成功によって、胃がん1st lineの標準治療がICI+chemotherapyとなったのは昨年のESMOであった。CM 649はそもそも3アーム試験であり、chemo±ニボルマブ(nivo)のほかにニボルマブ(1mg/kg q3w)+イピリムマブ(ipi)(3mg/kg q3w)というexperimental armがあったのだが、毒性の問題で登録中止となり主解析から外れていた。nivo+ipiにはさまざまなvariationがあるが、CM 649では高用量のipiが採用されている点は注意されたい。今回のESMOではnivo+ipiアームのデータが、chemo±nivoの長期フォローアップ、MSI解析に加えて公表された。結論から言えば、nivo+ipiはchemoに対して期待されたCPS≧5の集団において優越性を示すことはできなかった(OS:11.2 vs.11.6 months、HR:0.89、p=0.232)。MSI-Hは試験全体の3%であった。chemoとの比較において、chemo+nivoは高い有効性を示した(OS:38.7 vs.12.3 months、HR:0.38、ORR:55% vs.39%)。途中で中止となったアームなので比較はできないが、nivo+ipiはMSI-Hに対して、さらなる有効性を示唆した(OS:NR vs.10.0 months、HR:0.28、ORR:70% vs.57%)。MSI-Hに対しては5-FUがdetrimentalに作用する可能性が示唆されており、殺細胞性抗がん剤を含まないレジメンの有効性を示唆する結果であると考えている。現在、未治療のMSI-H胃がんに対するニボルマブ(240mg, fix dose, q2w)+low doseイピリムマブ(1mg/kg q6w)の有効性を探索する医師主導phase II試験(NO LIMIT, WJOG13320G/CA209-7W7)が進行中である(プロトコル論文:Kawakami H, et al. Cancers (Basel). 2021;13:805.)。nivo+ipiについてはもうひとつ、HER2陽性胃がん初回治療におけるニボルマブ+トラスツズマブにイピリムマブvs. FOLFOXの上乗せ効果を比較したランダム化phase II、INTEGA試験の結果も興味深かった。試験デザインは先進的である。つまりCM 649でnivo+ipiがchemoに対する優越性を証明でき、かつKEYNOTE-811においてchemo+トラスツズマブ+ペムブロリズマブの優越性が証明できれば、その次に浮かぶclinical questionがこのデザインだったからである。すでにHER2陰性胃がんに対して、nivo+ipiが化学療法を凌駕することがないことは、CM 649にて示されていたが、残念ながらこの試験結果もそれを追認するものであった。この結果から、HER2陽性胃がんに対する1st lineとしてのKEYNOTE-811の重要性が増した印象であり、生存データの結果公表が待たれる。HER2陽性胃がんといえば、本邦発のHER2 ADC、T-DXdの2次治療における欧米患者集団でのsingle arm phase II試験、DESTINY-Gastric02のデータが公表された。T-DXdは日本では3次治療以降の承認であるが、米国FDAにおいては2次治療ですでに承認となっている。主要評価項目を奏効率とし、トラスツズマブを含む1次治療に不応となったHER2陽性胃がん79例が登録された。有害事象は既報と変わりなかった。肝心の奏効率は38%と3次治療以降を対象としたDESTINY-Gastric01で認められた51%より低い数字であった(もちろん直接比較するものではないが)。Gastric-01と02の違いとして注意しなければならないのは、人種の違い以外(01は日本と韓国、2ヵ国の試験)に、02が2次治療すなわちトラスツズマブ不応直後の症例を対象としている、ということである。胃がんの治療開発の歴史においてトラスツズマブを含むanti-HER2 beyond PDは、これまで開発がことごとく失敗している。その原因の1つと考えられているのが、細胞表面上に発現しているHER2タンパクがトラスツズマブ治療中に欠失することにより不応となるという獲得耐性メカニズムである。複数の報告があるが、一例を挙げると、トラスツズマブbeyond PDの有効性を探索したT-ACT試験では2nd line前のHER2 statusが調べられた16症例のうち、実に11例(69%)でHER2陰性であった(Makiyama A, et al. J Clin Oncol. 2020;38:1919-1927.)。そうした背景からGastric-02試験においては、試験開始前に再度HER2陽性であることが確認されたことが適格条件となっている。こうしてみると、01試験の高い奏効率はどう説明できるのか、という疑問も生じる。現在、トラスツズマブ不応となったHER2陽性胃がんを対象としたphase III、DESTINY-Gastric04試験(weeklyパクリタキセル+ラムシルマブvs.T-DXd)が進行中である。この試験でも試験開始前に再度HER2陽性であることが確認されたことが適格条件となっており、今後注目の試験である。食道がんでもpositiveとなったsintilimabは、胃がん1次治療でもpositiveな結果であった(ORIENT-16試験)。CapeOxに対してsintilimabは、主要評価項目のOSにおいてCPS≧5(18.4 vs.12.9 months、HR:0.766、p=0,0023)および全患者集団(15.2 vs.12.3 months、HR:0.766、p=0.0090)において有意な延長を示した。中国の薬剤開発状況を「#MeToo」戦略といってばかにするのは簡単だが、昨年のESMOであればpresidential sessionに選出されたような開発を国内のみで短期間、しかも複数で成しえていること事態が驚異的である。ただ、これだけ同じような治療法が乱立した場合、どのような使い分けが中国国内で議論されるのかは知りたい気がする。しかし今回のESMOで一番衝撃を受けたのは、これからご紹介するClaudin(CLDN)18.2に対するCAR-Tである。CAR(Chimeric antigen receptor)-Tとは、患者さんのT cellに、がん細胞などの表面に発現する特定の抗原に対するキメラ受容体を人為的に発現させたものである。現在、CAR-T治療は本邦では白血病や悪性リンパ腫にのみ保険適用である一方、固形がんでの開発はまだまだ途上という印象である。CLDNは細胞間結合、とくにタイトジャンクションに関与するタンパク質で、少なくとも24種類のアイソフォームが知られている。CLDN18は、胃と肺で特異的に発現し、CLDN18.2は、タイトジャンクションが破壊された胃がん(低分化)での発現が高く、高度に選択的なマーカーと考えられている。すでにCLDN18.2を標的とする臨床開発は行われている。最も進んでいるのはCLDN18.2抗体zolbetuximabと化学療法を併用する治療戦略で、phase IIIが進行中である。そのCLDN18.2を標的とするCAR-Tの有効性と安全性に関するphase I試験の結果が報告された。対象はECOG PS-0,1、18~75歳のCLDN18.2発現陽性、既治療の胃がん症例であった。CLDN18.2陽性を背景に、42.9%がSignet ring cell carcinomaであった。前治療として抗PD-(L)1抗体が42.9%、Multi kinase inhibitorが35.7%で投与されていた。懸念された有害事象で治療中止となったものは1例のみで、忍容性が示される結果であった。有効性に関しては以下のとおりである。標的病変を有する36例中13例(48.6%)で奏効が認められた。病勢制御率は73%であった。また、少なくとも2ライン以上の治療を受けた症例(40%以上が抗PD-[L]1抗体既治療)でみると、奏効率は61.1%、病勢制御率は83.3%、median PFS 5.6ヵ月、median OS 9.5ヵ月というものであった。もちろんpreliminaryな結果ではあるが、この分野で中国の開発が一歩先に出ていることを示した重要なデータである。大腸がんMSS大腸がんに対しては、なかなか革新的な治療がなく、以前効果のあった薬を再利用するrechallengeの有効性が議論されるほど、「冬の時代」といえるのが大腸がんである。その理由としては、「大半を占めるMSSに対してICIが無効である」ことと「治療抵抗因子としてのRAS変異の存在(大腸がんの半数を占める)」が挙げられる。この大きな課題に対して、わずかずつではあるが光明が差してきていることを感じさせる結果が報告された。まずはICIについて注目した演題が2つ。1つはFOLFOXIRI+ベバシズマブ(Bmab)+アテゾリズマブ(atezo)の有効性を探索したランダム化phase II、AtezoTRIBE試験である。イタリアのGONO study groupらしく、1次治療としてFOLFOXIRI+Bmabがbackbone chemotherapyに選択された。主要評価項目をPFSとし、218例がatezo+chemo群vs.chemo群に2:1で割り付けされた。MSI-Hはそれぞれ6%、7%であった。結果として、atezo+chemo群が有意なPFSの延長を示した(mPFS:13.1 vs.11.5 months、HR:0.69、80%CI:0.56~0.85、p=0.0012)。一方で奏効率については59% vs.64%、R0 resection rateは26% vs.37%と有意差はないものの、atezo+chemo群で不良な傾向が認められた。この結果をどう捉えるか? 個人的には、この結果はby chanceの可能性が高く有効性については疑問符と考えている。この試験で気になっているのは、「客観性」が保たれていたのか、つまりblindが機能したのかということであり、それは主要評価項目PFSの確からしさに直結する。この試験にはopen labelなのかという記載がなく不明であるが、仮にblindされていたとしても経験のあるoncologistであれば、毒性からICIが投与されているかどうかは感覚的にわかる部分がある。その場合、PFSの評価が甘くなる可能性がある。つまりinvestigator PFSなのかcentral PFSなのかによって、ここが大きく揺らぐ可能性があるが、そこも明言されていない。一方、responseについては客観的な評価となるわけで、そこで優越性が示されていないことが上記の疑念をさらに増幅させる。さらなる情報の追加が求められる。もうひとつ、MSS、MGMT不活化切除不能大腸がんに対する、テモゾロミド(TMZ)、TMZ+LD-イピリムマブ+ニボルマブ併用療法の逐次治療の有効性を検討する(phase II)MAYA試験も注目した演題であるが、これも客観性に乏しいという問題があり、現時点での評価はやはり疑問符である。MSSに対するICIのチャレンジは道半ばという印象であった。一方、光明が見られたのはKRAS mutationに対してである。KRAS G12Cに対する開発が非小細胞肺がんに対するsotorasibを嚆矢に急激な発展を遂げているが、今回、既治療大腸がんKRAS G12Cを対象に、RAS G12C阻害剤adagrasib単剤もしくはセツキシマブ併用の有効性を探索したKRYSTAL-1試験の結果が報告された。個人的には、すでに基礎的に有効性が示されているセツキシマブ併用に注目していた。結果としては奏効率が単剤で22%、併用で43%と、別のRAS G12C阻害剤であるsotorasibでは見られなかった「手応え」を感じさせる結果であった。こうしたearly phaseでの良好な結果を見るとすぐに飛びつきたくなるが、Cobi Atezoの苦い経験からも、今回の結果はいずれもpreliminaryであり、まだ信じてはいけないな、と思っている(でも期待している)。したがって、1次治療不応となった症例を対象としたphase III試験KRYSTAL-10(adagrasib+セツキシマブvs.FOLFIRI/FOLFOX based)の結果を待ちたい。KRAS G12Cは大腸がんKRAS exon2変異の6~7%、つまり大腸がん全体の症例の2~3%という希少フラクションであり、その開発には少なからぬ困難が伴うが、少しずつではあるが着実に、この難しいパズルは解決に向かっていると信じている。最後に:ESMOの感想に代えて実は、筆者は6月に中国で行われた第11回CGOG(Chinese Gastrointestinal Oncology Group)総会に教育講演のinvited speakerとして参加した際に、このCLDN18.2に対するCAR-Tで実際に治療された症例報告を目にしていた。CAR-Tは血液悪性腫瘍では有効だが、消化器がんのような固形がんでの応用はまだまだ先と信じていた筆者にとって、すでに有効例が多数存在していることは衝撃的であった。さらに北京大学の若手医師たちが、この研究を通じてCAR-Tの治療経験をだいぶ積んでいる様子がディスカッションからうかがえ、言いようのない焦りを覚えた。こんな連中を相手にどんな教育講演をすればよいのか、頭が真っ白になった(会議のほとんどは中国語でやりとりされていて、急に英語で話を振られるので気が気でなかったというのもあるが)。さらに驚いたのは、「もうすでにphase Iを終えて、high impact journalへ投稿準備中である。そして新たにphase IIを計画中である」と北京大学の医師が語っていたことであった。CAR-Tは胃がんに対する新しい有望な治療の登場であり、喜ばしい報告であるのだが、正直筆者は強い危機感を覚えている。それはアジアにおける薬剤開発において、日本の優位性はもはや存在しないという事実を突き付けられたからにほかならない。胃がんに対するCAR-Tだけではない。CGOG総会で発表された基礎研究は非常にレベルが高いものが多かったが、アカデミアからだけでなく企業からのそうした発表も多く、産学連携が非常にうまく作用しているように思えた。CAR-Tはscienceであると同時にengineeringの側面が大きく、臨床のアイデアを形にするテクノロジーとの協調は必須である。この彼我の差は個々人の能力というより国を挙げての投資の結果の違いだと信じたいが、日本の基礎医学への冷淡な姿勢を見ていると、この状況はすぐには変わりそうになく暗澹たる気持ちになる。今後、薬剤開発においてこうした「格差」を感じる場面が増えてくるのではないかと思っている。個人的な話で恐縮だが、『三体』という中国発のSF小説を間もなく読了するところである(第三部は2021年5月に日本発売)。世界中で異例の大ヒットとなっている小説なのでご存じの方も多いと思うが、第一部、第二部でこの小説の世界観、想像力の大きさに圧倒され第三部を楽しみにしていた。そしてここまで読んで「中国はここまで来ているのか」と空恐ろしさを感じている。もちろん小説であり、そこに描かれているのは現実ではないが、それを感じさせる充実した内容であった。今年のESMOを見ていてふと思い出したのが、この小説『三体』であった。『三体』を読んで無意識に感じていた、まい進する中国に対する漠然とした「焦燥感」もしくは現状に対する「危機感」を、形にして突き付けられたような気がしたからかもしれない。最後に、この『三体』の単行本が中国で発売されたのが2008年1月であることを付記しておきたい。

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浮腫の見分け方、発症形式と部位を押さえよう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第7回

第7回 浮腫の見分け方、発症形式と部位を押さえよう!―Key Point―片側性の下腿浮腫は、深部静脈血栓症の可能性を第一に考える突然発症の浮腫はアナフィラキシーや血管浮腫を想起する薬剤が原因で浮腫を起こすことがある症例:73歳女性主訴)左下肢腫脹現病歴)4日前から左下肢が腫れてきた。膝背部や大腿が椅子に座ると痛む。近くの診療所からリンパ浮腫の疑いと紹介があった。胸痛や歩行時の息切れはない。既往歴)特になし身体所見)バイタルサインは体温:36.4℃、血圧111/59mmHg、心拍数63回/分、呼吸数20回/分、SpO2 95%(室内気)。意識清明、左下肢全体に浮腫と発赤があった。経過)鑑別診断として深部静脈血栓症と蜂窩織炎を考えた。骨盤造影CT検査を行い左総腸骨静脈血栓症と診断した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!どの部位に浮腫があるか発症形式(時期)病態生理【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】浮腫の部位、発症形式に注目し、病態生理を考える全身性浮腫心不全、肝硬変、腎不全、ネフローゼ症候群などによる低アルブミン血症、甲状腺機能低下症、薬剤(Ca拮抗薬、NSAIDs、ステロイド、シクロスポリン)局所性浮腫口唇(血管浮腫)、上肢(上大静脈症候群)、片側下肢(深部静脈血栓症、蜂窩織炎、リンパ浮腫)発症形式(時期)突然発症(数分以内)アナフィラキシー、血管浮腫急性発症(数日)深部静脈血栓症、蜂窩織炎、急性糸球体腎炎慢性(数ヵ月)心不全、肝硬変、静脈不全病態生理1)患部を指で圧迫する非圧痕性浮腫甲状腺機能低下症、リンパ浮腫圧痕性浮腫fast edema(40秒以内に圧痕が消失)なら低アルブミン血症、slow edema (40秒経っても圧痕が残る)なら心不全、静脈不全2)血栓の有無や静脈不全を見逃さない血栓片側性下腿浮腫では、深部静脈血栓症→肺塞栓の可能性を第一に考える。悪性腫瘍(とくに腺がん)に伴う過凝固が原因で深部静脈血栓症ができることもある。静脈不全見逃されていることが多い。内果の血管拡張、うっ滞性皮膚炎、静脈瘤、足関節付近の色素沈着、下腿潰瘍があれば疑う。3)浮腫の原因は複合的なことが多い1)[例]薬剤(Ca拮抗薬)+静脈不全+塩分過多+長時間の立位図)正常と静脈不全の下肢2)画像を拡大する【STEP3】治療を検討する● 深部静脈血栓症抗凝固療法● 静脈不全塩分制限、下肢挙上、弾性ストッキング● 薬剤性薬剤の中止<参考文献・資料>1)高橋良. 本当に使える症候学の話をしよう. じほう.2020.p.124-154.2)Thai KE, at al. Fitzpatrick’s Dermatology in General Medicine. 7th. 2007.p.1680.

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第82回 コロナ感染後の後遺症にワクチンが有効

今月はじめに世界保健機関(WHO)が定義した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症をワクチンが予防のみならずその発生後の投与で治療しうることもフランスでの試験で示されました。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に確かにまたは恐らく感染した患者のその発症か無症状感染の診断確定からたいてい3ヵ月間に、代替診断が不可能な疲労・息切れ・認知機能障害などの症状が生じて少なくとも2ヵ月間続くことをWHOはCOVID-19後遺症(post COVID-19 condition)と定義しました1)。症状はCOVID-19の発症初期からひと続きのこともあればCOVID-19がいったん収まってから新たに発生することもあり、たいてい日常生活に影響を及ぼします。また、症状は小康と悪化を繰り返すか再発するかもしれません。COVID-19患者のほとんどは感染発覚時の症状が済めば感染前の健康を取り戻します。しかしCOVID-19患者の10人に1人、ともすると5人に1人はWHOが定義したような数週間から数ヵ月にも及ぶ後遺症に陥ることがこれまでの試験で示唆されています1)。先月にLancet Infectious Diseases誌に発表された英国での試験によるとワクチンを接種済みであればたとえSARS-CoV-2に感染してもそういう後遺症を生じ難くなるようです。試験ではワクチン接種済みの97万1,504人のうち2,370人(0.2%)がSARS-CoV-2に感染し、ワクチン接種済みだと28日以上の後遺症の発現率が約半分で済んでいました2,3)。ワクチンの効果はその予防にとどまりません。COVID-19後遺症に陥ってからの接種でその症状がより改善することがLancet誌掲載予定の試験結果で示されました4)。試験には恐らくまたは確かにSARS-CoV-2感染して症状が3週間を超えて続くフランスの患者910人が参加しました。それらの半数の455人は試験の観察期間の開始から60日以内に最初のSARS-CoV-2ワクチンを接種し、残り455人は接種しないままでした。観察期間の開始から120日後時点のワクチン接種群の後遺症は非接種群に比べてより緩和しました。また、17%の患者の後遺症は解消に至っており、非接種群のその割合8%をおよそ2倍上回りました。受け入れがたい症状の患者の割合はワクチン非接種群では46.4%と半数近かったのに対してワクチン接種群では5人に2人ほど(38.9%)で済んでいまいた。ワクチン接種群で入院を要した深刻な有害事象の発生率はわずか0.4%であり、COVID-19後遺症患者へのワクチン接種の安全性も確認されました。結論としてワクチンがCOVID-19後遺症の症状を改善することを示したことに加え、COVID-19後遺症が体内のどこかに居続けるウイルスや体内をめぐるウイルス断片に起因しうるという仮説も支持されました4)。参考1)A clinical case definition of post COVID-19 condition by a Delphi consensus, 6 October 2021 / WHO 2)Antonelli M,et al. Lancet Infect Dis. 2021 Sep 1;S1473-3099.00460-6. [Epub ahead of print] 3)Double vaccination halves risk of Long COVID / King’s College London4)Efficacy of COVID-19 Vaccination on the Symptoms of Patients With Long COVID: A Target Trial Emulation Using Data From the ComPaRe e-Cohort in France. pre-prints with THE LANCET. 29 Sep 2021.

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中等度リスクの急性冠症候群への早期冠動脈造影CTは有効か/BMJ

 急性胸痛で救急診療部を受診し、急性冠症候群および続発する臨床イベントのリスクが中等度の患者において、早期の冠動脈造影CT検査は、冠動脈への治療的介入全般および1年後の臨床アウトカムに影響を及ぼさず、侵襲的冠動脈造影の施行率は減少させたものの、入院期間はわずかに延長したとの研究結果が、英国・エディンバラ大学のAlasdair J. Gray氏らが実施したRAPID-CTCA試験で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年9月29日号に掲載された。英国37病院の無作為化対照比較試験 研究グループは、急性胸痛がみられ急性冠症候群のリスクが中等度の患者への早期冠動脈造影CT検査は、1年後の臨床アウトカムを改善するかの検証を目的に、非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。本試験には、英国の37の病院が参加し、2015年3月~2019年6月の期間に参加者が登録された。 対象は、急性冠症候群が疑われるか、急性冠症候群と暫定診断され、冠動脈性心疾患の既往歴を1つ以上有するか、心筋トロポニン上昇、または心電図異常が認められる成人患者であった。被験者は、早期冠動脈造影CT+標準治療を受ける群、または標準治療のみを受ける群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、1年後の全死因死亡または非致死的心筋梗塞(1型[血栓症に伴う自然発症]および4b型[ステント血栓症に起因])とされた。 1,748例が登録され、造影CT群に877例、標準治療群に871例が割り付けられた。全体の平均年齢は61.6(SD 12.6)歳、64%が男性で、平均GRACEスコアは115点だった(23%が>140点)。34%に冠動脈性心疾患の既往歴があり、57%に心筋トロポニン上昇、61%に心電図異常が認められた。 造影CT群のうち、実際に早期冠動脈造影CT検査を受けたのは767例(87.5%)で、無作為割り付けからCT施行までの時間中央値は4.2時間(IQR:1.6~21.6)であった。CT検査により、23%で正常冠動脈、29%で非閉塞性病変、47%で閉塞性病変が同定された。血行再建術、薬物療法、予防治療の変更にも影響はない 主要エンドポイントは、造影CT群が5.8%(51例)、標準治療群は6.1%(53例)で発生し、両群間に有意な差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.62~1.35、p=0.65)。 一方、侵襲的冠動脈造影検査の施行率は、造影CT群が54.0%(474例)と、標準治療群の60.8%(530例)に比べて低かった(補正後HR:0.81、95%CI:0.72~0.92、p=0.001)。 また、両群間で、冠動脈血行再建術(補正後HR:1.03、95%CI:0.87~1.21、p=0.76)や入院での急性冠症候群に対する薬物療法(補正後オッズ比[OR]:1.06、95%CI:0.85~1.32、p=0.63)、退院時の予防治療の変更(補正後OR:1.07、95%CI:0.87~1.32、p=0.52)に差はなかった。 入院期間中央値は、造影CT群が2.2日(IQR:1.1~4.1)と、標準治療群の2.0日(1.0~3.8)に比べ延長した(Hodges-Lehmann推定量で0.21日[95%CI:0.05~0.40、p=0.009]の増加)。 著者は、「これらの知見は、急性胸痛がみられ急性冠症候群のリスクが中等度の患者において、1年後の臨床イベントを低減する戦略としての早期冠動脈造影CTの日常診療での使用は適切でないことを示唆する」とまとめ、「冠動脈造影CTの患者満足度(補正後OR:1.25、95%CI:1.02~1.53、p=0.03)は高く、これは造影CTが患者の臨床的な病態を迅速に評価し、担当医の診断の確実性を強化したことを反映していると考えられる」としている。

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進化する放射線治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは【見落とさない!がんの心毒性】第7回

今回のお話ひと昔前までの放射線治療(RT)では、がん病変に関連した広範囲を対象に照射していたため、ホジキンリンパ腫、乳がん、食道がん、肺がんなど胸部RTが必要ながん腫では心臓縦隔が広範囲に照射されてしまい、急性期および遠隔慢性期に放射線関連心血管合併症(RACD :Radiation Associated Cardiovascular diseases:)を発症していました。しかし、最近は心臓回避技術の向上、いわゆるRTのオーダーメイド治療が進化しRACDの発症頻度は減少しています。ゆえに一昔前と同様の考察でRACDに対峙していては時代遅れです。一方、放射線による組織障害、その結果として生じた心血管障害への対応には案外これまで通りのRACDへの理解が不可欠であり、RACDリスク管理として一般的心血管リスク因子の適正化が重要です。つまるところ、従来から循環器医が注力している診療要素がここでも大事なのは明らかで、結局は、臨床におけるRACDに対する急な理論武装は不要な様に思っています。もちろん、現代のRTに精通し、それによる新規RACDへの探究は極めて重要と考えますが、まずは基本に忠実な診療を施す事、そしてこれは放射線治療医の先生方へのお願いとなりますがRACDスクリーニングへも目を向ける重要性をお届けしたいと思います。そのほかにも、最新RTが不整脈治療に有効となる可能性!? なんていう話題についてもご紹介してみたいと思います。なお、RACDという表記について、別のRIHD(Radiation Induced Heart Disease)の表記も見かけます。この領域において、まだ統一表記になっていないと理解しています。今回は筆者が従来から使用し、また今回2021年第4回日本腫瘍循環器学会でも表記で利用されたRACDを本稿では使用します。RACDの基本の基:平均心臓照射量とのリニアな関係まずは2013年NEJM誌からの報告です。乳がん患者においてRT治療後5年目から冠動脈イベント頻度は高まりはじめ、少なくとも20年間はリスクが続き、平均心臓照射量が多ければ多いほど冠動脈イベントの増加に関連する事が示されました1)(図1)。(図1)心臓への平均照射量に応じた冠動脈イベントの割合1)画像を拡大する「線量依存性」かつ「慢性期発症」というのがRACDの基本の基です。多くはないものの急性発症もある事は申し添えておきます。RACDの発症は近年の技術革新により減少しています。しかし、がん患者、がんサバイバーが更に増加する昨今、そして、高齢化により心疾患を抱えたRT患者の増加も想像にたやすく、今後も臨床においてRACDを診療する機会はなくならないでしょう。別途、胸部以外の部位へのRTでも炎症やほかの機序により心血管障害を起こす可能性もあるのですが2)、混乱を来すのでここでは扱いません。RTの技術革新、New RACDは従来型とは違うのか次にホジキンリンパ腫に対するRTを例に技術革新を紹介します3)。(図2)ホジキンリンパ腫に対するRTの時代ごとの変遷画像を拡大する(A)時代ごとで分かるRT技術革新。拡大放射線療法であるマントル照射(B)以前の治療法(D)(B)に比較しIMRTを用いたinvolved-site RTでは(C)心臓を回避したより限局的治療を可能とし、DIBH(deep inspiration breath-hold、深吸気呼吸停止)法も適用し心臓部位への照射量は軒並み抑えられています3)(図2)を見ると心臓への照射量は劇的に減少しています。強度変調放射線治療(IMRT:intensity-modulated RT)、定位放射線治療(SRT:Stereotactic RT)のほか、粒子線治療といった高精度放射線療法の導入により、オーダーメイド放射線治療ができるようになった近年、一昔前のRTと現在のものとでは、もう同等比較はできません。心臓照射はより回避され、がん病変へのより限局的治療へと進化し、冠動脈、心筋、弁膜など心臓内の各重要部位が回避できるRTに進化を遂げています。この新時代RTいわゆるNew RACDは従来のものとは異なり、より限局的な心血管障害になるでしょうし、患者毎、がん病変毎で個々に異なるRACDの病態を呈する前提で行われていくでしょう。そういう意味で、New RACDとRACDは確実に異なります。問題点は…当の小生もですが、New RACDについて深く語れるほど循環器医がRTの進化に追いついておらず、New RACDの詳細を大して認識できていないという事です。ただし、New RACDの発症形態、特有の予後などまだ不明な点が多いものの、結果として生じた心血管系組織障害に対する臨床的対応はそれほど変わらないとも言えます。 結局、主治医がとるべき臨床的対応は、従来のRACDに対するものとさほど変わらないのではないかと思っています。よく知られているRACD前述した通り、New RACDはより限局的な心血管障害となり、発症形態は従来のRACDとは異なると推察されます。、その臨床的病型について、注意点はこれまでとさほど変わらないとし、まずはRACDの代表的な所をお示しします。RACDとしておさえておきたい病態を(図3)に示しました4),5)。RTにより心室では拘束性障害や収縮性障害をきたします。そのほか、冠動脈硬化、弁膜硬化、刺激伝導障害、自律神経機能障害、心膜疾患、心嚢水貯留、上行大動脈の全周性高度石灰化 (porcelain aorta)などが生じます。(図3)RACDとして挙げられる心臓関連病態4),5)画像を拡大するRACDの多くは遠隔慢性期に発症―RT後にも症例に応じたRACDスクリーニング計画、心血管リスク因子の適正化が重要RACDの特徴は急性期障害もあるものの、問題の多くが治療後遠隔期の慢性期障害となる事です。ゆえに、がん治療病院の管理から離れた後に発症する懸念から、いかにあらかじめの患者教育が大事かということになります。そして、RACDリスクが高い患者にはRT後の定期的なRACDスクリーニングの計画が推奨されます。(表1)にRACDのリスク因子を示しました。中には「心血管疾患リスク因子の保有」とあります。この心血管疾患リスク因子管理がRACDの進行回避において非常に重要なのです。そして、項目にある「コバルト線源」については近年における臨床現場ではあまり一般的治療ではないと聞いています。ただし、過去に治療歴がある患者の場合には注意すべきであり知っておくことは望ましいですよね。(表1)RACDのリスク因子4),7)RACDによる冠動脈病変は周囲組織を含め硬化が強くPCIでもバイパス手術でも成績が不良と言われます6)。これらを改善させるためにもスクリーニングによる早期検出で少しでも安全な治療が可能になる事に期待がもたれます。(図4)にはスクリーニングを含めたRACD管理アルゴリズムを示しました。(図4)RACD管理アルゴリズム5),8)画像を拡大する逆の発想!?心室性不整脈に対するRTの可能性RACDを起こす放射線障害ですが、その組織傷害性を利用したRTによる不整脈源性障害心筋への治療利用が考えられています。phase I/II ENCORE-VT(Electrophysiology-Guided Noninvasive Cardiac Radioablation for Ventricular Tachycardia) trialが行われ、難治性心室性頻拍に対してその有効性と安全性が報告されました9)。今後、そういう治療が主流になって行くのでしょうか、興味津々です。おわりに進化したRTによるRACD、いわゆるNew RACDについて、発症形態や予後など不明な点が多く、われわれはそれを明らかにすべく更なる探求が必要であると思います。しかし、その臨床的対応については、まずは従来のRACD対する対応と大きく変える必要は無いのではないでしょうか。重要なのは、治療後遠隔慢性期の発症形態をとるRACDの発見が遅れないよう、あらかじめ患者教育を施し、RACDリスク因子となる高血圧、糖尿病、脂質異常などのリスク管理、そしてRACDに対するスクリーニングの計画が検討される事、つまりRT後の患者が放置されない医療的アプローチが肝要であるのだと思います。循環器医も腫瘍科医も現段階ではRT新時代に取り残されているのかもしれませんが、これまでの知識や経験をもってNew RACDへ対応して行くことが先決でしょう。また、そんな状況だからこそ、腫瘍科医や放射線科医、そして循環器医が互いの強みを発揮しながらの協働が必要になってくるわけです。そして、当然、新世代RT特有のNew RACDの側面も今後明らかになってくることにも期待が高まります。最新の情報をアップデートしていきましょう。1)Darby SC, et al. N Engl J Med. 2013;368:987-998.2)Haugnes HS, et al. J Clin Oncol. 2010;28:4649-4657.3)Bergom C, et al. JACC CardioOnc. 2021;3:343-359.4)Desai MY, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;74:905-927.5)志賀太郎編. 医学書院. 2021. 循環器ジャーナル.(II章, がん放射線療法に関連した心血管合併症[RACD])6)Reed GW, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2016;9:e003483.7)Jaworski C, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:2319-2328.8)Ganatra S, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2020;2:655-660.9)Robinson C, et al. Circulation. 2019;139:313-321.講師紹介

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