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遺伝子操作したブタの心臓をヒトに移植、米国で世界初

 米国・メリーランド大学医学部は1月10日付のリリースで、重度の心疾患を有する男性患者(57歳)に、遺伝子操作したブタの心臓を世界で初めて移植したと発表した。移植手術は7日に実施され、術後3日時点における患者の経過は順調という。今後、数週間にわたって慎重に経過観察される。今回の執刀医を務めたBartley Griffith氏は、「この画期的な手術は、臓器不足の危機の解決に一歩近づくものだ」と述べ、前例のない試みに対する手応えを示した。 リリースによると、男性患者は6週間前に不整脈で入院し、ECMOを使用していた。いくつかの主要な移植センターで、従来の心臓移植は不適応と見なされ、不整脈のため人工心臓も装着できなかった。ブタの心臓移植は、患者にとって唯一の治療の手段だったという。こうした経緯を踏まえ、米国食品医薬品局(FDA)が昨年12月31日、コンパッショネート・ユース制度(人道的使用)により移植手術を承認した。この制度は、深刻な身体障害や生命を脅かす病状に直面している患者が、利用できる唯一の選択肢である場合に特例的に使用が許可されるものだ。 今回の移植手術に当たり、バージニア州に本拠を置く再生医療会社であるRevivicorが、遺伝子組み換えブタを提供した。提供臓器は、XVIVO社(スウェーデン)が開発した還流装置を使って保護された。一方、外科チームは、異種移植による拒絶反応を防ぐために、米国のバイオ医薬品メーカーKiniksa Pharmaceuticals社製の新薬を使用した。 心臓の異種移植を巡っては、1980年代に初めて試みられた。1983年にヒヒの心臓を移植された幼児は、手術から1ヵ月以内に死亡した。しかし近年では、ウシやブタの心臓弁を、ヒトへの移植に使用することがすでに定着している。2021年9月と11月には、米国・ニューヨーク大学ランゴーン医療センターにおいて、遺伝子操作されたブタの腎臓の移植に成功している。

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双極性障害の自殺死亡率に対する性別固有のリスクプロファイル

 双極性障害患者の自殺リスクに対する性差および併存疾患の影響についてのエビデンスは十分ではない。台湾・台北医学大学のPao-Huan Chen氏らは、自殺の発生率、医療利用状況、併存疾患の観点から、双極性障害患者における自殺リスクに対する性別固有のリスクプロファイルについて調査を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2021年8月11日号の報告。 2000年1月~2016年12月の台湾の全民健康保険研究データベースを用いて、コホート研究を実施した。対象は、双極性障害患者4万6,490例および年齢、性別を1:4の割合でマッチさせた一般集団18万5,960例。自殺死亡率の比率(MRR)は、双極性障害コホートと一般集団の自殺率で算出した。また、双極性障害コホートにおける医療利用状況、併存疾患の性別固有のリスクを調査するため、ネストされたケースコントロール研究(自殺死亡患者:1,428例、生存患者:5,710例)を実施した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者の自殺リスクは、一般集団と比較し、非常に高かった(MRR:21.9)。とくに女性において顕著であった(MRR:35.6)。・性別層別分析では、性別間での医療利用パターンおよび身体的併存疾患のリスクプロファイルの違いが明らかであった。・女性の自殺死亡患者は、生存患者と比較し、非高血圧性心血管疾患、肺炎、慢性腎臓病、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、敗血症のリスクが高かった。一方、男性では、慢性腎臓病と敗血症のリスクが高かった。 著者らは「双極性障害患者の自殺死亡リスクは、発生率および身体的併存疾患において、性別固有のリスクプロファイルを有していると考えられる。これらの修正可能なリスク因子を特定することは、双極性障害患者の自殺リスク減少につながる可能性がある」としている。

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乳がん患者の抑うつ、適切な治療につなげるには?/JAMA

 地域の腫瘍科診療施設で治療を受けている乳がん患者において、実装科学(implementation science)に基づき日常診療で抑うつ状態のスクリーニングを行う個別化戦略は、抑うつスクリーニング指導のみの治療戦略と比較して、行動療法への紹介に結びつく患者の割合が高く、腫瘍内科の外来受診の頻度は低下することが、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニア(KPSC)のErin E. Hahn氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年1月4日号で報告された。米国の6つの地域施設のクラスター無作為化試験 本研究は、KPSC(南カリフォルニアの450万人以上の会員に包括的な治療を提供する統合保健システム)に所属する6つの医療センターが参加した実践的なクラスター無作為化試験であり、2017年10月1日~2018年9月30日の期間に患者の登録が行われ、最終フォローアップ日は2019年3月31日であった(Regents of the University of Californiaなどの助成を受けた)。 6つの参加施設は、抑うつ状態に対する個別化介入を受ける群(介入群)または抑うつ状態のスクリーニングの指導のみを受ける群(対照群)に、それぞれ3施設が無作為に割り付けられた。対象は、腫瘍内科で診察を受け、新規の原発性乳がんと診断された患者であった。病期や組織型、性別、人種/民族、併存疾患、その他の臨床的・人口統計学的因子による除外基準は設けられなかった。 抑うつ状態のスクリーニングプログラムでは、患者は9項目患者健康質問票(9-item Patient Health Questionnaire:PHQ-9)に回答し、アルゴリズムに基づくスコア化で軽度、中等度、重度に分けられ、これらの重症度に応じた行動学的精神保健サービスが紹介された。 介入群の施設は、抑うつ状態のスクリーニングプログラムの一般的な指導のほか、審査、パフォーマンスデータの評価、診療変更を実装するための支援を受け、診療内容は地域の状況に合わせて行われた。対照群の施設は、スクリーニングプログラムの一般的な指導のみを受けた。 主要アウトカムは、スクリーニングと紹介が適切に行われた患者の割合とされた。プライマリケア医、急病診療所、救急診療部の受診に差はない 1,436例(平均年齢61.5[SD 12.9]歳、女性99%、アジア系/太平洋諸島系18%、黒人17%、ヒスパニック系26%、白人37%、Stage 0~II乳がん82%)が登録され、介入群に744例(男性4例を含む)、対照群に692例(同3例)が割り付けられた。 抑うつのスクリーニングを受けた患者は、介入群が596例、対照群は3例で、このうち行動医療(behavioral health)へ紹介されたのはそれぞれ59例および1例だった。試験期間中に28例が死亡した(介入群19例、対照群9例、群間差:1.3%[95%信頼区間[CI]:-0.2~2.7])。 主要アウトカムのイベント発生率は、介入群が7.9%(59/744例)と、対照群の0.1%(1/692例)に比べ有意に高かった(群間差:7.8%、95%CI:5.8~9.8)。 行動医療を受けた患者は、介入群では紹介を受けた59例のうち44例(75%)、対照群は紹介を受けた1例中1例(100%)であった。 また、年齢、人種/民族、がんの病期、パートナーの有無、Charlson併存疾患指数で補正したモデルでは、介入群で腫瘍内科の外来受診患者の割合が有意に低かった(補正後率比:0.86、95%CI:0.86~0.89、p=0.001)が、プライマリケア医(1.07、0.93~1.24)、急病診療所(0.84、0.51~1.38)、救急診療部(1.16、0.84~1.62)の受診については、両群間で差は認められなかった。 著者は、「このプログラムの臨床的有益性や費用対効果を知るために、さらなる研究を要する」としている。

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ホルモン薬避妊は子供の中枢神経系腫瘍リスクと関連?/JAMA

 ホルモン薬による避妊を行った母親の子供における中枢神経系の腫瘍のリスクは、ホルモン薬避妊法の経験のない母親の子供と比較して増加せず、ホルモン薬の種類ごとのリスクにも差はないことが、デンマーク・Cancer Society Research CenterのMarie Hargreave氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年1月4日号に掲載された。デンマークの全国的なコホート研究 研究グループは、デンマークにおける母親のホルモン薬避妊法の使用と子供の中枢神経系腫瘍の関連を評価する目的で、全国的なコホート研究を行った(Danish Cancer Research Foundationなどの助成を受けた)。 解析には、デンマークの人口ベースの登録データが用いられた。1996年1月1日~2014年12月31日の期間にデンマークで出生した子供が、中枢神経系腫瘍の診断に関して追跡された(最終追跡日2018年12月31日)。 ホルモン薬避妊は、レジメン(エストロゲン・プロゲスチン混合型、プロゲスチン単独型)と投与経路(経口、非経口)で分けられ、最近の使用(妊娠の過去3ヵ月以内または妊娠中)、以前の使用(妊娠の3ヵ月以上前)、非使用に分類された。注射薬、インプラント、子宮内避妊具は、使用時期に応じて分類が適切に変更された。 主要アウトカムは、20歳までに診断された中枢神経系腫瘍のハザード比(HR)および罹患率差(IRD)とされた。10万人年当たりの罹患率:最近使用5.0人、以前使用4.5人、非使用5.3人 118万5,063人の子供が解析に含まれた。1,533万5,990人年の追跡期間(平均12.9年)に725人が中枢神経系腫瘍と診断された。内訳は、ホルモン薬避妊法を最近使用した母親の子供が84人、以前に使用した母親の子供が421人、非使用の母親の子供は220人であった。診断時の子供の平均年齢は7歳で、342人(47.2%)が女児だった。 中枢神経系腫瘍の10万人年当たりの補正後罹患率は、ホルモン薬避妊法を最近使用した母親(13万6,022人)の子供が5.0人、以前使用した母親(77万8,843人)の子供が4.5人、非使用の母親(27万198人)の子供は5.3人であった。 非使用の母親の子供と比較した中枢神経系腫瘍の発生のHRは、最近使用した母親の子供が0.95(95%信頼区間[CI]:0.74~1.23、IRD:-0.3[95%CI:-1.6~1.0])、以前使用した母親の子供は0.86(0.72~1.02、-0.8[-1.7~0.0])であり、いずれも有意な差は認められなかった。 また、経口混合型、非経口混合型、経口プロゲスチン単独型、非経口薬に分けて解析しても、非使用の母親に比べ最近使用および以前使用の母親で、子供の中枢神経系腫瘍の発生に統計学的に有意な差はなかった。 著者は、「ホルモン薬避妊と子供の中枢神経系腫瘍の関連には相反する報告があるが、経口避妊薬のホルモン含有量は時とともに変動しており(たとえば、高用量から低用量へ)、本研究は以前の研究よりも最近のデータに基づくため、今回の結果も別のものとなる可能性がある」としている。

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6時間以上経過した脳主幹動脈閉塞患者に対する血管内治療の有効性について、さらに強いエビデンスとなる結果(解説:高梨成彦氏)

 本研究は発症から6~24時間経過した主幹動脈閉塞患者に対する経皮的脳血栓回収術についての6試験のデータを対象としたメタアナリシスである。505症例のデータが解析され、主要評価項目である90日後のmRSの改善について血管内治療の有効性が確認され、調整済みオッズ比は2.54と高いものであった。また副次評価項目である90日後の死亡率および症候性頭蓋内出血の発生率には差はなかった。 本試験の意義はサブグループにおいても均一な結果が示されたことで、年齢(<70/70~80/>80)、性別、脳卒中の重症度(NIHSS ≦17/≧18)、閉塞部位(ICA/M1)、ASPECTS(≦7/≧8)、発症形態(眼前発症/wake-up stroke)、いずれの群でも血管内治療の有効性が示された。すでに脳卒中ガイドラインにもあるように、発症から6時間以上経過した患者についての血管内治療は実施されているものの、高齢者や重症患者であっても治療をためらう必要はないということが明確に示された意義は大きい。ただし、軽症群にNIHSS 5点以下の患者は含まれておらず、ASPECTSが低値の群に0~5点は含まれていないことは留意する必要がある。 虚血コア体積を評価して治療適応を決定するに当たってDAWN、DEFUSE 3はRAPIDの使用が必須となっており、他の4試験は単純CTまたはMRI検査のASPECTSスコアによる判定が条件となっている。興味深いことに評価方法が違う2群間でも血管内治療の効果に差がなかった。この結果からただちに単純CTまたはMRI検査のみによる判定が有効であるとは言えないものの、RAPIDシステムが普及していない本邦ではclinical-ASPECTS mismatchによる判定が広く行われており、スコアの閾値設定など参考になる結果といえるだろう。 発症から6~12時間と12~24時間の患者群で比較したところ、後者のほうが血管内治療の効果が高かった。この結果は自然再開通が起きる可能性が時間経過とともに低くなることや、6時間未満に治療を受けた群ではtPA投与を受けた患者が多いことが影響している可能性がある。

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手術の理解度が伝わるオペレコ~腹腔鏡下胆嚢摘出術を例に~【誰も教えてくれない手術記録 】第10回

第10回 手術の理解度が伝わるオペレコ~腹腔鏡下胆嚢摘出術を例に~こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。前回に続き、僕の実際のオペレコ※からこだわりポイントをご紹介します。題材としては、若手外科医が最初に取り組むことの多い腹腔鏡手術の中から「腹腔鏡下胆嚢摘出術」を取り上げました。若手のうちはこの手術のオペレコを描く機会も多いと思いますが、オペレコを上級医に見せたときに「わかってるな…!」と認めてもられるようなものが描けるといいですよね。今回はそんな“理解度が伝わる”オペレコを描くためのこだわりポイントを2つ紹介したいと思います!※個人情報保護の観点から、オペレコは本連載用に描き下ろしています。《術式解説》腹腔鏡下胆嚢摘出術は、急性胆嚢炎や胆石症に対する標準的な術式です。胆嚢管と胆嚢動脈を切り離し、肝から胆嚢を剥離し摘出します。肝門部を中心に損傷を避けるべき脈管があり、慎重な操作を要します。例:腹腔鏡下胆嚢摘出術のオペレコ(完成図)こだわり1:対象臓器だけではなく周辺構造や鉗子も描き込む胆嚢を単体で描いてもオペレコの形としては成立しますが、本当に手術のことを理解しているのかどうかは伝わりにくいです。今回のオペレコでは、肝臓、肝門部、十二指腸、横行結腸などの周辺臓器と、操作鉗子を描き込んでいます。どの手術にもいえることですが、摘出の対象臓器だけでなく、それを取り巻く周辺臓器の構造や位置関係も把握していることが大切です。「胆嚢周囲の解剖構造は何も見なくても描けるくらいイメージができています!」と言えたら、上級医も安心するでしょう。参考:胆嚢周囲の臓器と操作鉗子を描き込んだ図こだわり2:CVSなど、手術の「重要な場面」をかならず明示胆嚢摘出術における重要な術野展開の一つに、「Critical view of safety(CVS)」があります(下図参照)。CVSは胆道損傷を回避し、安全な胆嚢摘出であることを示すために必要な術野ですが、もしその場面がオペレコに描かれていなければ、「CVSの重要性が理解できていないのでは」と思われてしまうかもしれません。CVSをオペレコにしっかり盛り込むことで、上級医に「わかってる感」をアピールしましょう。胆嚢摘出術だけではなく、どの手術においてもキーポイントとなる重要な場面があります。描くべき術野をきちんと提示できるようになるとよいですね。参考:CVS(Critical view of safety)の場面オペレコは、術者の手術への理解度を写し出すものです。今回の例だけではなく、どのような手術においても解剖構造や手術のキーポイントを押さえたオペレコが描けると、上級医に理解力を認められ、さらなるステップアップのチャンスが舞い込んでくるかもしれませんよ!それでは、次回もお楽しみに!

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コロナワクチンの感染抑制効果、デルタ株では低下/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのワクチン接種について、アルファ変異株と比較してデルタ変異株のほうが感染減少が少なく、ワクチンの有効性は経時的に低下したことが示された。また、感染発端患者の診断時PCRサイクル閾値(Ct)値は、感染減少を部分的に説明するのみであることも明らかにされた。英国・オックスフォード大学のDavid W. Eyre氏らが、後ろ向き観察コホート研究の結果を報告した。SARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株の出現以前は、ワクチン接種によりウイルス量が減少し、感染したワクチン接種者からのSARS-CoV-2の伝播が抑制したとみなされていた。ワクチン接種により感染リスクはさらに低下しているが、デルタ変異株に感染したワクチン接種者と未接種者のウイルス量は同程度であることが判明し、ワクチン接種が感染をどの程度予防するのか疑問視されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月5日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染患者約11万人とその接触者約15万人について解析 研究グループは、英国の接触者検査データを用い、SARS-CoV-2に感染した成人患者(発端患者)と、その接触者を対象に後ろ向き観察コホート研究を実施した。 多変量ポアソン回帰法により、ウイルス感染とワクチン接種状況(発端患者および接触者について)の関連を調べるとともに、この関連性がアルファ(B.1.1.7)変異株およびデルタ変異株で、また2回目のワクチン接種からの経過期間によってどう変化するのかを検討した。 発端患者10万8,498例と、その接触者で検査を受けた14万6,243例のうち、5万4,667例(37%)がPCR検査でSARS-CoV-2陽性であった。ワクチン接種後の感染患者からの感染減少は、アルファ変異株と比べデルタ株で低下 ワクチン接種済みでアルファ変異株に感染した発端患者では、BNT162b2ワクチン(Pfizer/BioNTech製)またはChAdxOx1 nCoV-19(AZD1222)(AstraZeneca製)の2回接種は、いずれのワクチンでもワクチン未接種者と比較し、接触者のPCR陽性率の低下と関連していることが認められた(BNT162b2の補正後率比:0.32[95%信頼区間[CI]:0.21~0.48]、ChAdxOx1 nCoV-19の同0.48[0.30~0.78])。 ワクチン接種によるデルタ変異株の感染減少は、アルファ変異株と比較して小幅であった。その感染減少幅は、BNT162b2ワクチン2回接種後(未接種者と比較した補正後率比:0.50、95%CI:0.39~0.65)のほうが、ChAdxOx1ワクチン2回接種後(0.76、0.70~0.82)より大きかった。 ワクチンに関連した2つの変異株の感染率低下について、発端患者のCt値(ウイルス量の指標)の変化が占める割合は7~23%であった。デルタ変異株の感染減少は、ワクチン2回接種後に経時的に低下し、ChAdxOx1 nCoV-19ワクチン接種を受けた発端患者では12週までにワクチン未接種者と同等レベルとなり、BNT162b2ワクチン接種を受けた発端患者では大幅な減弱が認められた。接触者におけるワクチン予防効果は、ワクチン2回接種後3ヵ月間で同様に低下した。

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尽きることのない話題PCI vs.CABG、FAME 3試験をめぐって(解説:中川義久氏)

 虚血性心疾患の治療において、PCI vs.CABGは尽きることのない話題である。欧米などの48施設で実施したFractional Flow Reserve versus Angiography for Multivessel Evaluation(FAME)3試験の結果を米国Stanford大学の Fearon氏がTCT 2021で発表した。その結果は、NEJM誌オンライン版2021年11月4日号に報告された(Fearon WF, et.al. N Engl J Med. 2021 Nov 4. [Epub ahead of print])。 3枝冠動脈疾患患者においてPCIの適応を判断するにあたり、冠血流予備量比(FFR)のガイド下とすることで予後が改善し、PCIがCABGに劣らない成績を達成することが期待されていた。つまりPCIがCABGに劣っていないことを証明しようという非劣性試験である。結果は、1年時点の死亡・心筋梗塞・脳卒中・再血行再建術の複合イベントの発生で、FFRガイド下のPCIは、CABGに対する非劣性を示すことができなかった。3枝冠動脈疾患患者においてはCABGが依然として最適な治療法といえることが再確認されたのである。 正直に申して、小生はFAME 3の1年間の結果として、PCIがCABGに対する非劣性を証明できる可能性があると思っていた。古典的な、PCIとCABGの比較試験である、SYNTAX、FREEDOM、NOBLE、およびEXCELを見ると、イベント曲線が2~3年で分離し始めていた。どの試験でも最初の1年でPCIとCABGの差は小さく、カプランマイヤー曲線が分離するのに2~3年かかっていたのである。一般的に観察期間が長くなるほどPCIに対するCABGの優位性が高まると考えられる。今後さらにFAME 3試験の観察期間が延びれば一層とCABGの優位性が示されていくであろう。 FAME 3試験で、PCIがCABGに劣っていないことを示せなかった理由は、心臓血管外科医が特に脳卒中のリスクを減らすことに重点を置いてCABG手術の手技が向上していることにある。FREEDOMやSYNTAXの手術法から進歩し、抜本的な品質改善を外科医が行ったことの成果であろう。このFAME 3試験のCABG群での臨床イベント率は、FREEDOMおよびSYNTAXでのCABG群の臨床イベント率の約半分である。 では、永遠にPCIはCABGの後塵を拝すべきなのであろうか。FAME 3試験でのPCIには、今後のさらなる改善余地がある。 FAME 3試験で血管内イメージングは、PCI治療を受けた患者のわずか11.7%でしか使用されていない。イメージングを多用する日本では、複雑な多枝疾患患者の治療では考えられない低率である。PCIの適応判断においてはFFRを使用することの意義はあるが、いったんPCIを施行すると決定した手技の治療結果がFFRによって向上するものではない。血管内イメージングを活用しPCIを行っていれば、FAME 3試験の結果もまた異なるものであった可能性もある。本当に、PCI vs.CABGは尽きることのない話題である。最新の結果がでた時点で、その結果が陳腐なものとなるのが臨床研究の難しくも、面白いところであろうか。

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日本ではアルツハイマー病新薬は承認されず【コロナ時代の認知症診療】第11回

審議での厚労省見解をどうみるか米国に続き日本での承認が期待されたaducanumabだが、それは叶わなかった。2021年12月22日、厚労省によるaducanumab(商品名:アデュヘルム点滴静注、バイオジェン・ジャパン)の審議の結果、本剤の有効性は明確に判断できない、今後の臨床試験の結果がでれば再度審議するという結果になった。その理由として、1)2つの第III相試験の結果に一貫性がない、2)脳内アミロイドプラーク低下の臨床的意義が確立していない、3)本剤投与により脳の浮腫や出血を生じる、の3点が挙げられた。まず1)はその通りであり反論がない。つまり最近の抗認知症薬の承認には、世界のグローバルレベルで再現性をもって有意性が確認されることが必要である。かつての各国レベルの承認から、今日ではグローバル基準が当然になってきた印象がある。とくに本剤のような薬なら世界中どこでもの再現性は不可欠だろう。2)については、それはそうだが…と、正直頭を抱える気持ちになる。なぜならアルツハイマー病の原因はいまだに不明だ。もっとも主たるバイオマーカー候補がアミロイドとタウである。しかし原因不明である以上、これらは仮説にすぎない。だが現実には、この仮説に沿って、とりあえずはここを攻めようと今日までaducanumabのようなアミロイドを除去する薬の開発に世界中でしのぎが削られてきた。にもかかわらず2)のように言われてしまっては、こうしたアミロイド仮説に沿う薬は、今後も一切日の目を見ないのではないか? と思えてくる。3)については、脳血管周囲に生じる出血や浮腫(ARIA-EやH)があるからという理由は少々納得できかねる。これらは本来の作用の一部、つまり副作用でなく想定できる副反応的なものである。すなわちコロナ予防ワクチンでいえば発熱や痛みのようなものだろう。これが認められない理由であるなら、アミロイドβ仮説に沿うものは皆ダメになりかねない。というのは、aducanumabはアミロイドを溶かし出すのが目標の薬だから、脳実質だけでなく脳内血管の壁にあるアミロイドを溶かす結果、ARIAが起こるのは当たり前である。言うまでもなく、副反応も副作用もないほうがいい。これをさておいても3)は「副作用(副反応)があるからだめ」と読まれかねない。費用や投与のやめどきは? 実臨床での課題さてこの厚労省見解以外に、仮に今のまま使うとなったら、実際いくつかの難しさが考えられる。入手するには、承認された米国から個人輸入するしかないだろう。これは日本のみならず米国以外の国は皆同じである。そこで個人輸入を代行してくれる国際的な組織立ち上げの話もあった。しかし我が国の当局はこれを認めないようだ。この壁は、個人の意志でなすのが個人輸入であるのに、それを代行する組織が介在するのは本来の狙いに反するからだと聞いている。次に値段の問題がある。当初米国での年間費用が640万円とされ驚かれた。最近ではこれが300万円台と報道されている。体格が米国人に劣る日本人だと200万円以下になるのではと、筆者は関係者の話から試算している。さらに数少ない専門医のもとで点滴を月に1度、約30分かけてやるというのも当事者、家族にはなかなかハードルが高い。専門医以外に、近所のかかりつけ医でもできるようになればこれは改善できるだろう。もうひとつは投与のやめどきである。すでにコリンエステラーゼ阻害薬については議論されヨーロッパなどでかなり確立しているようだ。継続審議はどうなる!?最後に継続審議してもらうには、aducanumabの新たな治験データが必要である。正攻法は新たなグローバル治験の体制を立てて、また1年半以上フォローすることだろう。しかし筆者の山勘ながら今から始めても3年後に終わるかどうか? 一方で本剤の第IV相試験は2020年秋に始まり、すでに1年あまり経過している。このデータもまた審議資料になるだろうか? 一方で患者・家族の要望の声も大切であろう。というのは過去にアリセプトに後続したコリンエステラーゼ阻害薬の承認を思い出すからである。承認のために最初に検討された治験成績はいまいちだったようだ。しかしこの時は家族会などの嘆願運動もあって紆余曲折の末に承認されたという記憶がある。すでに米国では第2の疾患修飾薬も審議中だと聞く。今後は開発に拍車がかかって行くと思われる。その中から疑いなく承認される有望な新薬の登場が心待ちにされる。

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患者さんへの経過説明に、使えるこのグラフ【非専門医のための緩和ケアTips】第19回

第19回 患者さんへの経過説明に、使えるこのグラフ今日の質問外来の進行がん患者さん。今のところ、内服オピオイドで疼痛を調整できていますが、徐々にADLが低下しています。いずれは在宅での緩和ケアも提供したいのですが、本人はもちろん、家族も今後の経過をイメージできていないようです。先行きを心配されているので、話し合いのよいタイミングだと思うのですが、どうすればうまく伝えられるでしょうか?今回頂いたご質問ですが、質問者の方が非常に丁寧に診療されていることが伝わりますね。おそらく、患者さんはもちろん、ご家族とも信頼関係を築けているからこそ、今が話し合いのタイミングだと判断されたのでしょう。緩和ケアの実践において、先行き予測と関係者との共有は大切です。将来の病状の変化に備えて、早めに準備することは大切ですからね。そのために必要な緩和ケア知識として、「病みの軌跡」を紹介しましょう。「病みの軌跡」は患者さんの疾患の進行に伴い、どのような時間経過で身体機能が低下するかを示したグラフです。2005年にBritish Medical Journal誌で発表された論文1)が基になっています。疾患ごとに経過は大きく異なりますが、今回の患者さんはがんの「病みの軌跡」が当てはまります。図:がんの「病みの軌跡」原著論文を基に筆者作成これを見ると、がん(悪性疾患)は初期から中期は比較的身体機能が保たれていますが、亡くなるタイミングが近づくにつれ、急激に身体機能が低下することがわかります。急な容態変化を経て寝たきりとなり、亡くなるがん患者さんを診た経験のある方も多いのではないでしょうか?私自身、診療の中で、患者さんやご家族にこのグラフを見せることがあります。もちろん、しっかり受け止められるコンディションと評価した相手に対し、伝え方にも配慮したうえでです。本人もご家族もゆっくり身体機能が低下する時期を経験しているので、そうした経過がずっと続くように感じています。そのため、私はよく「テレビで有名な方ががんで亡くなったとき、1ヵ月前くらいにテレビに出たりしているので突然亡くなったように感じますよね。でも、このグラフにあるように、がんは体力が落ちてから亡くなるまでの経過が早い病気なんです。だから、少し早めに感じるくらいのタイミングで先々の準備や心構えができるよう、お声掛けをさせてくださいね」といったように説明しています。イメージを共有する際、ビジュアルは非常に有効です。「病みの軌跡」を使って丁寧なコミュニケーションを図っていただければと思います。今回のTips今回のTips「病みの軌跡」のグラフを使うと、患者さんへの説明がラクになる。1)Murray SA, et al. BMJ. 2005;330:1007-1011.

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CPと表記される医療用語が15種類…「誤解を招く医療略語」の解決に役立つポケットブレインとは?

 電子カルテの普及により多職種間で患者情報を共有しやすくなり、紙カルテ時代とは比にならないくらい業務効率は改善したー。はずだったのだが、今度は医療略語の利用頻度の増加による『カルテの読みにくさ』という新たな課題が浮上している。 医療略語は忙しい臨床現場で入力者の負担軽減に寄与する一方で、略語の多用や種類の増加が、職種間での情報共有における新たな弊害になっている可能性がある。また、診療科や職種により医療略語の意味が異なるため、“医療事故”のリスク因子にもなりかねない。増加の一途をたどる医療略語に、医療現場はどう対処していけばよいのだろうか。 そんな医療略語の課題解消に乗り出したのが、病院向け経営支援システムを扱うメディカル・データ・ビジョン株式会社だ。同社は医療IT企業の強みを生かし、医療略語辞書アプリ『ポケットブレイン』を昨年12月7日にリリースした。本アプリは電子カルテに書かれた英字略語を検索できる臨床現場支援ツールで、これを使えばカルテや各種検査レポートで分からない医療略語に遭遇した際、スマートフォンでサクサク検索できる。その開発者で医師の加藤 開一郎氏が昨年12月17日に記者会見を開き、医療略語の現状やアプリの開発経緯とその意義を語った。CPと略語表記されうる医療用語は15種類 医療略語は“さまざまな意味に解釈し得る”がゆえに誤解を招くものが存在する。加藤氏はその理由を「識別性の低さ」と話し、その一例として英字2文字で15種類もの意味を持つ『CP』を挙げた。≪CPと略語表記されうる医療用語≫・カプセル・ケアプラン・CP療法・大腸ポリープ・クロラムフェニコール・セルロプラスミン遺伝子・口蓋裂・脳性麻痺・毛細管圧・皮膚型ポルフィリン症・収縮性心外膜炎・半規管麻痺・臨床心理士・Child-Pugh分類・慢性動脈周囲炎 一方で、同氏は“略語の不統一”という問題も指摘している。これは、事実上は同じ物を指しているにもかかわらず、複数の医療略語が存在することだ。「上部消化管内視鏡検査」をその最たる例として挙げ、「学会でも略語表記の統一をアナウンスはされているが、現場ではさまざまな略語が使用されている」とコメントした。≪上部消化管内視鏡検査を意味して記載された略語≫*1)EGD:esophagogastroduodenoscopy2)GS:gastroscopy3)GIF:gastrointestinal fiber4)GF:gastric fiber5)GFS:gastlic fiber scopy6)ES:endscopy*:出典:ポケットブレイン説明資料医療略語の出現速度に書籍が追いついていない また、同氏は医師の働き方改革についても言及し、「医師の働き方改革と言われる一方で、内科、外科、救急医の減少傾向に歯止めがかからない。心ある医療者がかろうじて現場に踏みとどまっているのが現状だ。とにかく、医師・看護師の業務負担を減らすため、事務的な業務は積極的に事務職への代行を推進する必要がある。しかし、カルテを読む難しさがそれを阻んでおり、その大きな原因が英字略語や英語表記にあると考える。本アプリを開発した目的の1つは医師の業務代行にある」と強調した。 現在、医療略語に関する書籍は多数出版されているが、書籍でページをめくり医療略語を探すのは物理的に時間を要する。さらに、医療略語の出現速度に書籍の改訂ペースが追いついていない。片や、ネット検索は英字略語のみでは適切な情報に辿り着かず、適切な日本語との組み合わせ検索というもうひと手間が必要である。「それらの問題を解決したのが本アプリ『ポケットブレイン』」と同氏はコメント。 ポケットブレインは毎日情報が更新される成長型アプリで、未収載略語の追加・修正依頼、古い略語の削除等の依頼等、ユーザとの双方向性を重要視している。また、重要な機能の1つに“略語の属性情報”と“補足情報”がある。属性情報が分かることにより、目の前のカルテに書かれている英字略語に対し、その和訳を当てはめて良いかどうかの判断が可能となる。これにより医師以外の職種にも汎用性が高い仕様になっている。医療用語は医療を行うための共通言語 現在、日本医療機能評価機構の病院機能評価の機能種別版評価項目<3rdG:Ver2.0>において“略語の標準化”もポイントになっている。そのため、各病院独自のデータベースを構築する施設もあれば、略語の使用を登録制にしている病院もあるという。これを踏まえ、「同社は病院の業務スマホ向け版ポケットブレインの準備を進め、各病院の略語集にも対応していく予定」だという。 医療略語に限らず、医療用語は医療を行うための共通言語であり、インフラと言っても過言ではない。職種を超えた情報共有が求められる今日、カルテを早く正確に読める対策が求められる。 なお、本アプリに関連する連載をCareNet.comにて公開している。「知って得する!?医療略語」

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第91回 年末年始急展開の3事件、「アデュカヌマブ」「三重大汚職」「町立半田病院サイバー攻撃」のその後を読み解く

第6波到来、デルタ株とは異なる対策必要にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。国内の新型コロナウイルスの新規感染者は1月8日、9日と連続で8,000人を超え、感染第6波が本格的に到来しました。9日からは沖縄県、山口県、広島県で「まん延防止等重点措置」が適用されています。これまでに、オミクロン株はデルタ型より感染力が強い一方で、肺まで達して重症化するリスクは低いことなどがわかってきました。しかし、感染力が格段に強いため、感染拡大のスピードも早く、国内外で医療機関のみならずさまざまな社会インフラへの影響が出始めています。本連載でも繰り返し書いてきたように、「空気感染」をしているとしか考えられない事例も増えているようです。感染拡大が先行して進んだ沖縄の状況について、1月7日付の朝日新聞は「デルタ株とは別の病気」というタイトルで沖縄県の専門家会議の議論を紹介、座長である藤田 次郎・琉球大学教授が以下のコメントをしています。「国の基準はデルタ株を前提として作られているが、臨床医の感覚では別の病気。インフルエンザなら薬を飲めば熱が下がって数日で職場復帰できるが、コロナは休む期間が長い。このため、社会インフラに与える影響が大きい」。日本では、第5波を教訓に、病床確保など第6波に備えた対策を取ってきたはずですが、それはあくまでもデルタ株の感染を踏まえての対策だったと言えます。その病態を大きく変化させたオミクロン株には、さまざまな対策や規制の抜本的な見直しが必要だと言えそうです。岸田 文雄首相は1月11日、水際対策の2月末までの現状骨格維持や、ワクチンの大規模接種会場の再開設などを表明しましたが、いずれも従来の路線の延長であり、新機軸はありません。第5波の時のように、対策が後手後手にならなければいいのですが……。アデュカヌマブ承認、日本では結論持ち越しさて今回は、このコラムで昨年取り上げたいくつかの話題が、年末年始で急展開を迎えていましたので、まとめておさらいしておきたいと思います。まずはアルツハイマー型認知症の治療薬「アデュカヌマブ」です。2021年12月22日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会には、アデュカヌマブ(商品名:アデュヘルム、バイオジェン ・ジャパン)の承認について、「現時点で得られたデータから、本剤の有効性を明確に判断することは困難であり、今後実施される適切なデザインの臨床試験の成績等に基づき有効性及び安全性について再検討し、その結果に応じて再度審議する必要がある」と、結論を持ち越しました。主な議論の内容として、「申請の根拠とされた2つの 国際共同第III相試験の結果に一貫性がない」「脳内アミロイドβプラーク低下の臨床的意義が確立していない」「本剤の投与によって、脳の浮腫や出血などがみられる」などが挙げられています。アデュカヌマブについては、米国のFDA(食品医薬品局)が承認した2021年6月、本連載の「第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)」「第63回 後編」でも詳しく書きました。日本の結論持ち越し決定が出る直前の12月17日、欧州のEMA(欧州医薬品庁)は承認しないよう勧告を行っており、厚労省の判断が注目されていました。結局日本は米国と欧州の中間的な結論を選択、米国で行われている第IV相試験の結果や今後実施予定とされる新たな臨床試験の結果次第、ということになったわけです。ちなみに、「臨床的意義が確立していない」と言われた脳内アミロイドβプラークを低下させる薬剤としては、同じくバイオジェン社がlecanemab、イーライリリー社がdonanemabの開発を進めており、いずれも2022 年にFDA から迅速承認を得られる可能性がある、とされています。今年も認知症薬の承認を巡って、医療界だけでなく、世間や株価が大騒ぎしそうです。三重大病院汚職事件、残るは元教授の公判のみ次は、三重大付属病院の臨床麻酔部の医師らが、小野薬品工業、日本光電工業の社員と起こした汚職事件です。津地裁は12月28日、医療機器の納入で業者に便宜を図った見返りに、上司の元教授が代表を務める団体に200万円の賄賂を提供させたとして、第三者供賄罪に問われた三重大病院元講師(47)に懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年2月)の判決を言い渡しました。この事件については、2020年9月に「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」で取り上げて以降、幾度も書いてきました。この事件で逮捕・起訴された三重大病院臨床麻酔部の元医師3人、小野薬品工業の社員2人、日本光電工業の社員3人の計8人のうち、これまでに7人の公判が津地裁で開かれ、いずれも執行猶予付の有罪判決が出ています。残るは一連の事件の首謀者とされる元教授の公判ですが、年明けにも開かれる予定です。なお、元教授は保釈を請求し、昨年11月に保釈を認める決定が出ています。この事件については、小野薬品工業が昨年8月に外部調査委員会の報告書を公開、事件について「MRにとってグレーゾーンの中で起きた事件であると言っても過言ではない」と指摘、奨学寄付金と取引誘引との関係については業界全体で検討すべき課題だ、と提言しています。一体何が問題だったのか、元教授の判決を待って本連載でも改めて考えてみたいと思います。町立半田病院、電子カルテのサーバーが復旧最後は徳島県つるぎ町の町立半田病院で2021年10月末に起こったランサムウエアによる病院システムへのサイバー攻撃の事件です。同病院ではこの攻撃で患者約8万5,000人分の電子カルテが閲覧できなくなっていましたが、年末にサーバーが全面復旧、2022年1月4日から約2ヵ月ぶりに全13診療科で通常診療が再開しました。この連載では、「第86回 世界で猛威を振るうランサムウエア、徳島の町立病院を襲う」で同事件を取り上げ、「同病院は11月26日に会見を開き、身代金は支払わず電子カルテのシステムを一からつくり直す、と表明しました」と書きました。結局、復旧を依頼した外部のセキュリティー会社から戻ってきたサーバーでカルテを閲覧できることが確認できたため、システムを一から再構築する必要はなくなった、とのことです。徳島新聞などの報道では、病院は復旧の具体的な方法などについては、「今後のセキュリティー対策に関わるので公表しない」とのことです。また、当面は安全対策として、メンテナンスなどに必要な外部との接続は行わず、専門家らでつくる有識者会議に諮った上で接続を試みるとしています。さらに、バックアップの方法やVPN(仮想プラベートネットワーク)の構築方法なども有識者会議に検討してもらうそうです。12月29日付の読売新聞は、この事件に関連し「『身代金』ウイルス、国内11病院が被害…救急搬送や手術に支障も」と題する記事を掲載しています。それによれば、同紙の取材によって2016年以降、国内の少なくとも11病院がランサムウエアによる被害を受けていたことがわかったそうです。救急搬送の受け入れや手術の停止、外来診療の制限などの被害が出ており、医療機関が攻撃対象になるケースは増加傾向にある、とのことです。なお、同じく読売新聞の報道によれば、厚労省は2021年度中にも医療機関向けの新たな情報セキュリティー指針を策定する予定で、電子カルテなどのバックアップデータについては病院のネットワークから切り離して保管することなどを盛り込む方針とのことです。今年は診療所・病院の区別なく、あらゆる医療機関がサイバー攻撃の対策に本腰を入れる必要がありそうです。

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オミクロン株での重症度や死亡率、他の変異株と比較/JAMA

 南アフリカ共和国におけるCOVID-19第4波はオミクロン株が原因とされている。同国・Netcare Ltd South AfricaのCaroline Maslo氏らは、第4波初期におけるCOVID-19の入院患者の特徴や転帰について第1~3波それぞれの初期の入院患者と比較し、JAMA誌オンライン版2021年12月30日号のリサーチレターで報告した。第4波では年齢が若く、併存疾患のある患者が少ないこと、入院や急性呼吸器疾患を発症する患者が少なく、重症度と死亡率も低いことが示された。 本研究は、南アフリカ共和国全土に、1万床超の急性期病院49施設を有するNetcare Ltd South Africaで実施された。南アフリカ共和国では、2020年6~8月(従来株)、2020年11月~2021年1月(ベータ株)、2021年5月~9月(デルタ株)の3つの波が発生し、その後2021年11月15日から再び増加し始め、12月7日にコミュニティ陽性率が26%に達した。そこで、各波で陽性率が26%に達するまでの期間(第1波:2020年6月14日~7月6日、第2波:2020年12月1日~23日、第3波:2021年6月1日~23日、第4波:2021年11月15日~12月7日)におけるCOVID-19の入院患者について、患者の特徴、酸素供給・人工呼吸の必要性、ICU入院、入院期間、死亡率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・各波の初期に病院で治療された患者数は、最も多かった第3波で6,342例に対し、第4波では2,351例と差がみられた。一方、第1~3波では新型コロナウイルス陽性で救急に来院した患者における入院患者の割合は68~69%だったのに対し、第4波では41.3%だった。・入院患者の年齢中央値は第4波のほうが若く(第4波:36歳、最も高かった第3波:59歳、p<0.001)、女性の割合が高かった。・併存疾患のある患者は第4波で有意に少なく、急性呼吸器疾患を呈する割合は低かった(第4波:31.6%、最も高かった第3波:91.2%、p<0.001)。・第4波に入院した971例のうち、ワクチン接種者は24.2%、非接種者は66.4%、接種不明が9.4%だった。・酸素供給を必要とした患者は第4波で有意に低く(第4波:17.6%、第3波:74%、p<0.001)、人工呼吸を受けた患者も同様に低かった。・ICU入院患者は、第4波で18.5%に対し、第3波では29.9%だった(p<0.001)。・入院期間中央値は、第1~3波の7〜8日から第4波では3日に減少した。・死亡率は、第1波19.7%、第3波29.1%に対し、第4波では2.7%と低かった。 著者らは本研究の限界として、遺伝子型判定ができなかったこと、追跡最終日(12月20日)の時点で患者の7%がまだ入院していること、患者の行動や入院プロファイルが各波で異なることなどを挙げている。各波の違いが獲得免疫や自然免疫に影響されるかどうか(2021年12月時点で、同国の成人人口の44.3%がワクチン接種済みで、人口の半分以上が新型コロナウイルスへの曝露経験がある)、またオミクロン株が他の変異株よりも病原性が低いかどうかの判断にはさらなる研究が必要としている。

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新型コロナの後遺症、入院患者と自宅療養者で違い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症での一般診療医(GP)受診率について、COVID-19で入院を要した患者(入院患者)と入院を必要とせずコミュニティで療養した患者(コミュニティ療養者)で差があることを、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのHannah R. Whittaker氏らがイングランド住民を対象としたコホート研究で明らかにした。コミュニティ療養者では、時間の経過とともに受診率が低下する後遺症もあったが、不安や抑うつなど受診が継続している後遺症があり、ワクチン接種後に受診率の低下が認められる後遺症があることも明らかにされた。これまでいくつかの観察研究で、COVID-19回復後の持続的な症状および新たな臓器機能障害は報告されているが、それらは主に重篤症状の入院患者でみられたもので、コミュニティ療養者の長期アウトカムを比較した研究はごくわずかで、いずれも小規模で選択バイアスの掛かったものであった。また、大規模な住民ベースのコホート研究での経時的評価やCOVID-19ワクチン接種後のアウトカムの評価も行われていなかった。BMJ誌2021年12月29日号掲載の報告。イングランドのCOVID-19後遺症によるGP受診率を調査 研究グループは、COVID-19入院患者とコミュニティ療養者の急性期症状回復後の後遺症でのGP受診率を調べるとともに、コミュニティ療養者の受診率の経時的変化およびワクチン接種後の受診率の変化を調べた。データソースとして、イングランドのGP 1,392人が寄与する臨床診療研究データリンク(Clinical Practice Research Datalink Aurum[CPRD Aurum])を用いた。 対象者は、2020年8月1日~2021年2月14日にCOVID-19と診断された45万6,002例(男性44.7%、年齢中央値61歳)。診断後、2週間以内に入院した患者(1万8,059例)もしくはコミュニティ療養を受けた患者(43万7,943例)で、フォローアップ期間は最長9.2ヵ月であった。解析では、非COVID-19患者からなるネガティブ対照群(3万8,511例)と、パンデミック前のインフルエンザ患者のコホート群(2万1,803例)も設定し評価が行われた。 主要アウトカムは、新規の症状、疾患、処方および医療サービス利用を目的としたGP受診率で、入院患者vs.コミュニティ療養者、感染前vs.感染後とそれぞれ比較した。医療サービス利用についてはCox回帰法および負の二項回帰法を用いた。 解析は、ネガティブ対照群とインフルエンザ患者群と順次実施。コミュニティ療養者については、COVD-19診断後のアウトカムを経時的に記録し、さらに、負の二項回帰法を用いて、COVID-19後の症状を有した療養者についてワクチン接種前後の比較も行った。コミュニティ療養者は嗅覚・味覚障害が、入院患者は静脈血栓塞栓症が最も高頻度 ネガティブ対照群およびインフルエンザ患者群と比較して、コミュニティ療養者群、入院患者群ともに、複数の後遺症でのGP受診率が有意に高率であった。 コミュニティ療養者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、嗅覚または味覚もしくは両方の障害(補正後ハザード比[HR]:5.28、95%信頼区間[CI]:3.89~7.17、p<0.001)、静脈血栓塞栓症(3.35、2.87~3.91、p<0.001)、肺線維症(2.41、1.37~4.25、p=0.002)、筋肉痛(1.89、1.63~2.20、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(1.15、1.14~1.15、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、関節痛(2.5%)、不安症(1.2%)、そしてNSAIDの処方(1.2%)であった。 入院患者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、静脈血栓塞栓症(補正後HR:16.21、95%CI:11.28~23.31、p<0.001)、悪心(4.64、2.24~9.21、p<0.001)、パラセタモールの処方(3.68、2.86~4.74、p<0.001)、腎不全(3.42、2.67~4.38、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(発生率比:1.68、95%CI:1.64~1.73、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、静脈血栓塞栓症(3.5%)、関節痛(2.7%)、および息切れ(2.8%)であった。 コミュニティ療養者群では、不安や抑うつ、腹痛、下痢、全身疼痛、悪心、胸部圧迫感、耳鳴での受診が、フォローアップ期間中継続して認められた。また、コミュニティ療養者群ではワクチン接種前と比べて1回目のワクチン接種後に、神経障害性疼痛、認知障害、強オピオイドおよびパラセタモール使用を除き、すべての症状、処方、医療サービス利用についてGP受診率の低下が認められた。虚血性心疾患、喘息、胃・食道疾患についてもGP受診率の低下がみられた。

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新型コロナ、異種ワクチン接種の有益性を確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの異種接種について、1回目接種がアデノウイルスベクターワクチンのChAdOx1 nCoV-19(ChAd、AstraZeneca製)またはmRNAワクチンのBNT162b2(BNT、Pfizer-BioNTech製)いずれの場合も、2回目接種がmRNAワクチンのmRNA-1273(m1273、Moderna製)の場合は、一過性の反応原性を増大することが示された。遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンのNVX-CoV2373(NVX、Novavax製)は、BNTのプライム接種群で非劣性が示されなかった。英国・オックスフォード大学のArabella S. V. Stuart氏らによる無作為化試験の結果で、「複数のワクチンが、BNTまたはChAdでプライミング後の免疫完了に適していた。今回の結果は、異種ワクチンによる接種スケジュールを支持するもので、ワクチン接種の迅速なグローバル展開を促進することになるだろう」と述べている。Lancet誌2022年1月1日号掲載の報告。ChAd、BNT、m1273、NVXによる混合プライミングスケジュールを検討 研究グループは、同一スケジュールで異なるCOVID-19ワクチンを柔軟に用いることが、迅速な展開を促進するために重要であるとの認識から、ChAd、BNT、m1273、NVXを組み込んだ混合プライミングスケジュールについて検討した単盲検無作為化非劣性試験「Com-COV2試験」を実施した。 試験は、ChAdまたはBNTの単回接種を地域で受けた50歳以上を対象とし、各接種群内で3群(試験全体では計6群)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、同一ワクチン、m1273またはNVXの2回目接種(初回接種後8~12週に)を行った。 主要エンドポイントは、異種vs.同種スケジュールのELISA法で測定した血清SARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度の幾何平均比(GMR)で、2回目接種後28日時点で評価。GMRの片側98.75%信頼区間[CI]値が0.63超を非劣性と定義した。 主要解析は、ベースラインで血清陰性であったper-protocol集団で実施。安全性解析は、試験ワクチンの接種を受けた全被験者を対象に行われた。GMRは、ChAd/m1273群10.2、BNT/m1273群1.3 2021年4月19日~5月14日に、イングランドの9地点で、ChAd(540例、女性47%)またはBNT(532例、女性40%)の単回接種を受けた計1,072例が無作為化を受けた。ChAd群の異種ワクチンによる2回目接種までの期間中央値は9.4週間(範囲:4.7~12.0)、BNT群は同9.6週間(8.0~12.0)であった。 ChAd群では、2回目接種から28日後の幾何平均抗体濃度(GMC)は、ChAd/m1273群2万114 ELISA laboratory units[ELU]/ mL(95%CI:1万8,160~2万2,279)、ChAd/NVX群は5,597 ELU/mL(4,756~6,586)で、いずれもChAd/ChAd群(1,971 ELU/mL[1,718~2,262]に対して非劣性が認められた。ChAd/ChAd群と比較したGMRは、ChAd/m1273群10.2(片側98.75%CI:8.4~∞)、ChAd/NVX群2.8(2.2~∞)であった。 BNT群では、BNT/BNT群(GMC:1万6,929 ELU/mL[95%CI:1万5,025~1万9,075])に対する非劣性は、BNT/m1273群(2万2,978 ELU/mL[2万597~2万5,636])では示されたが、BNT/NVX群(8,874 ELU/mL[7,391~1万654])では示されなかった。BNT/BNT群と比較したGMRは、BNT/m1273群は1.3(片側98.75%CI:1.1~∞)、BNT/NVX群は0.5(0.4~∞)であった。ただし、NVX群もワクチン接種後28日のGMCは18倍の上昇が認められた。 重篤な有害事象は15件報告されたが、いずれも免疫獲得とは関連していないとみなされた。

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第45回 因果関係とは?【統計のそこが知りたい!】

第45回 因果関係とは?因果関係(Causal relationship)は、「項目間に原因と結果に関係があると言い切れる関係」を意味します。たとえば広告費と売り上げの関係をみると、「広告費を増やすと売り上げが多くなる」が通説です。「広告費を増やす」という行為が原因で、「売り上げが多くなる」という結果が導かれるので、両者の間には因果関係があります。原因と結果の関係は、「原因→結果」の一方通行です。「原因があって結果がある」という時間的順序が成り立っています。また、身長と体重の関係性でいえば、身長が高いと体重が重いのか、体重が重いと身長が高いのかがわからないので、両者の因果関係は定かではありません。因果関係があれば必ず相関関係は認められますが、相関関係があるからといって必ずしも因果関係が認められるわけではありません。因果関係と相関関係は、図のように2つの事象とA とBの関係性を表しています。「相関関係があるからといって因果関係がある」と言い切れないため、両項目の時間的順序などを検討して、因果関係を考察します。両者に因果関係があるかを解明するには、統計解析を行う必要があります。ちなみに、共分散構造解析は因果関係を解明するのに使われる代表的な統計解析手法です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第12回 オッズ比は、なぜ臨床研究で使われるのか?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問9 多変量解析を学ぶ前に知っておくべき統計の基礎を教えてください(その1)質問22 ロジスティック回帰分析の事例

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日本の入院患者における向精神薬使用と転倒リスク~症例対照研究

 これまでのいくつかの研究において、転倒のリスク因子の1つとして向精神薬の使用が挙げられている。しかし、これまでの研究では、管理データベースより取得したデータを用いる、向精神薬の使用から転倒や転落までの時間間隔に関する情報が欠如しているなど、いくつかの制限が含まれていた。東京医科大学の森下 千尋氏らは、カルテより収集した信頼できるデータを用いて、入院患者における向精神薬の使用と転倒や転落との関連について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年12月8日号の報告。 カルテから抽出したデータに基づき、東京医科大学病院に入院している患者を対象に、年齢、性別、入院部門をマッチさせた新規使用者デザイン(new -user design)の症例対照研究を実施した。アウトカムは、転倒・転落の発生率とした。抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬の4つのクラスの向精神薬の使用について、転倒経験患者254例と転倒経験のない対照患者254例の間で比較を行った。転倒や転落とこれら向精神薬の使用との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・単変量分析では、すべてのクラスの向精神薬使用と転倒リスクとの間に統計学的に有意な関連が認められた。・年齢、性別、入院部門、BMI、入院時の転倒リスク評価スコア、他の向精神薬使用などの潜在的な交絡因子で構築された多変量ロジスティック回帰分析では、睡眠薬の使用と転倒リスクとの関連は、有意なままであった。 著者らは「入院患者において睡眠薬の使用は、転倒や転落の危険因子であることが示唆された。転倒や転落の発生率の低減させるためには、睡眠薬の使用を可能な限り控えることが重要であろう」としている。

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転移のない前立腺がん、アビラテロン+エンザルタミドで無転移生存期間延長/Lancet

 転移のない高リスク前立腺がん男性の治療において、アンドロゲン除去療法(ADT)による3年間の標準治療にアビラテロン酢酸エステル(アビラテロン)+プレドニゾロンまたはアビラテロン+プレドニゾロン+エンザルタミドを併用すると、標準治療単独と比較して、全生存期間の代替指標とされる無転移生存期間が延長し、前立腺がん特異的生存期間や生化学的無再発生存期間も改善されることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのGerhardt Attard氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年12月23日号で報告された。2つの第III相STAMPEDE試験のメタ解析 研究グループは、非転移性前立腺がん男性の治療における、ADTへのアビラテロン+プレドニゾロンまたはアビラテロン+プレドニゾロン+エンザルタミド併用の有効性を評価する目的で、STAMPEDEプラットホームプロトコールに基づく2つの第III相非盲検無作為化対照比較試験のメタ解析を行った(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。これら2つの試験は、英国とスイスの113施設が参加し、2011年11月~2016年3月の期間に実施された。 対象は、年齢制限はなく、高リスク(リンパ節転移陽性、または陰性の場合は次の要件のうち少なくとも2つを有する:腫瘍Stage T3/T4、Gleasonスコア8~10点、前立腺特異抗原[PSA]値40ng/mL以上)あるいは、高リスクの特徴(ADTの全期間が12ヵ月以下で治療なしの間隔が12ヵ月以上でありPSA値4ng/mL以上で倍加時間が6ヵ月未満、またはPSA値20ng/mL以上、またはリンパ節再発)を持つ再発の非転移性前立腺がんで、WHO performance statusが0~2の患者であった。放射線療法は、リンパ節転移陰性例では行い、陽性例では推奨された。 2つの試験(第1試験、第2試験)とも、被験者は、ADT単独(手術、黄体形成ホルモン放出ホルモンの作動薬と拮抗薬)による治療を受ける群(対照群)、またはADT+経口アビラテロン酢酸エステル(1,000mg/日)+経口プレドニゾロン(5mg/日)を受ける群(併用群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。第2試験の併用群は、さらにエンザルタミド(160mg/日、経口投与)が追加された。ADTは3年間、併用治療は2年間行われたが、放射線療法を受けなかった患者では、病勢が進行するまで治療を継続できることとされた。 主要エンドポイントは無転移生存期間とし、無作為化の時点から全死因死亡または遠隔転移(画像で確定)の発現までの期間と定義された。両群とも期間中央値には未到達だが、併用群で47%延長 1,974例が解析に含まれた。第1試験(2011年11月~2014年1月)では、併用群に459例、対照群に455例が、エンザルタミドを含む第2試験(2014年7月~2016年3月)では、それぞれ527例および533例が割り付けられた。全体の年齢中央値は68歳(IQR:63~73)、PSA中央値は34ng/mL(IQR:14.7~47)であった。また、39%がリンパ節転移陽性で、85%は標準治療として放射線療法を受けていた。 追跡期間中央値は72ヵ月(IQR:60~84)で、この間に無転移生存イベントが併用群で180件、対照群で306件発生した。 無転移生存期間中央値(月)は、両群とも未到達(IQRは併用群が評価不能[NE]~NE、対照群は97~NE)であり、併用群で有意に延長していた(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.44~0.64、p<0.0001)。6年無転移生存率は、併用群が82%(95%CI:79~85)、対照群は69%(65~72)であった。 また、全生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群は103~NE、HR:0.60[95%CI:0.48~0.73]、p<0.0001)、前立腺がん特異的生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群はNE~NE、HR:0.49[0.37~0.65]、p<0.0001)、生化学的無再発生存期間(併用群は中央値未到達でIQRはNE~NE、対照群は中央値86ヵ月でIQRは83~NE、HR:0.39[0.33~0.47]、p<0.0001)、無増悪生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群は103~NE、HR:0.44[0.36~0.54]、p<0.0001)は、いずれも併用群で有意に長かった。 治療開始から24ヵ月の期間に、Grade3以上の有害事象は、第1試験の併用群で37%(169/451例)、対照群で29%(130/455例)に、第2試験ではそれぞれ58%(298/513例)および32%(172/533例)に認められた。併用群で頻度の高かったGrade3以上の有害事象は、高血圧(第1試験の併用群は5%[23/451例]、対照群は1%[6/455例]、第2試験はそれぞれ14%[73/513例]および2%[8/533例])と、高アラニントランスアミナーゼ血症(第1試験の併用群は6%[25/451例]、対照群は<1%[1/455例]、第2試験はそれぞれ13%[69/513例]および1%[4/533例])であった。 Grade5の有害事象は7件が報告された。第1試験の併用群で3件(直腸腺がん、肺出血、呼吸不全)、第2試験の併用群で4件(敗血症性ショック2件、突然死2件)であり、2つの試験とも対照群では発現しなかった。 著者は、「アビラテロン+プレドニゾロンは、転移のない高リスク前立腺がんの新たな治療法として考慮すべきである」としている。

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COVID everywhere【臨床留学通信 from NY】番外編7

COVID everywhere昨年の大晦日、残念ながら運悪く(くじを引いたわけでもありませんが)24時間当直となり、空いた時間ができたため、本稿を備忘録的に書いています。ニューヨークでは、クリスマスを終えた週から、COVIDによる入院がぐんと増え、院内は再びコロナ患者だらけ。現場には緊張感が走っています。米国の陽性患者は、1日当たり58万人(本稿を執筆した2021年末時点)、人口2,000万人のニューヨーク州は、1日で7万人が陽性になっており、まだまだ増えそうです。日本の人口で換算すると40万人ほどに相当する数です。実際に日本で40万人が陽性になったらパニックになりそうですね。現在ICUで働いていないので、正確なワクチンとの兼ね合いと重症度は不明ですが、今回のオミクロン株は拡大が早く、印象としては単独の呼吸不全よりも心筋梗塞、心不全、COPD等の合併症を伴って来院する人が多い気がします(ワクチン未接種の人が呼吸不全になる可能性が高いのは、ほぼ間違いありません)。日本で流行り始めたら、1週間程度でパンデミックになるのではと懸念します。Booster接種はリスクの高い人優先でしょうが、この状況を鑑みるとリスクに関係なくすぐに必要だと考えます。というのも、3回目接種済みの同僚たちもやはりコロナにかかってしまっているのです。CDCは、無症候のコロナ陽性の隔離期間を従来の10日から5日に短縮し、これはmedical workerが互いの穴を埋める期間が少なく済むのでありがたいのですが、本当に良いのかどうかはよくわかりません。文末のグラフは、私が勤務する病院系列MHS(Montefiore Health System)の入院患者ですが、急峻に増加しているのがわかると思います。デルタ株は、ほとんど流行りませんでしたが、オミクロン株は昨年1月の第2波(グラフ中央)をも超える勢いなのではないかとも思います。なお、グラフの最初の第1波はひどいもので、病棟の8割がコロナ患者に占拠されている状態でした。日本の大学病院で1,000床、800人以上が酸素を必要とするコロナ患者、というのはちょっと想像し難いと思いますが、まさに阿鼻叫喚の様相でした。私もいつ罹患するかわからない状況ですが、コロナを併発した心筋梗塞、心肺停止など待ったなしの人もおり、我が身に迫る危機を実感する日々です。

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モルヌピラビル、新型コロナの入院・死亡リスクを低減/NEJM

 重症化リスクがあるワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者について、モルヌピラビルによる早期治療(発症後5日以内に開始)は、入院または死亡リスクを低減することが、コロンビア・IMAT OncomedicaのAngelica Jayk Bernal氏らによる第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験で示された。試験は約1,400例を対象に行われ、29日間の入院または死亡の発生リスクは中間解析で-6.8ポイント差、全解析で-3.0ポイント差であったという。モルヌピラビルはSARS-CoV-2に対し活性を示す、経口小分子抗ウイルスプロドラッグである。NEJM誌オンライン版2021年12月16日号掲載の報告。発症後5日以内に治療開始、800mgを1日2回、5日間投与 研究グループは、検査によりCOVID-19が確認され、重症化リスクが少なくとも1つあるワクチン未接種の軽症~中等症の成人患者を対象に、症状発症後5日以内に開始したモルヌピラビルによる治療の有効性と完全性を検証した。 被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはモルヌピラビル800mgを1日2回5日間投与し、もう一方にはプラセボを投与した。 主要有効性エンドポイントは、29日時点での入院または死亡の発生。主要安全性エンドポイントは、有害事象の発現頻度とした。 目標登録患者数1,550例の50%が29日間の追跡を受けた時点で、事前に規定した中間解析を行った。対プラセボの入院/死亡リスク、中間解析で-6.8ポイント差 被験者1,433例が無作為化を受け、716例がモルヌピラビル群に、717例がプラセボ群に割り付けられた。両群のベースライン特性は、性別の偏り(女性がモルヌピラビル群のほうが多く、中間解析では7.6ポイント差、全解析では4.7ポイント差)を除けば類似していた。 中間解析(15ヵ国78地点で775例が登録)では、モルヌピラビル群の優越性が示された。29日間のあらゆる入院または死亡のリスクは、モルヌピラビル群(385例中28例、7.3%)がプラセボ群(377例中53例、14.1%)よりも有意に低下した(群間差:-6.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-11.3~-2.4、p=0.001)。 無作為化を受けた全被験者を対象とした解析でも、29日間の入院または死亡の発生率は、プラセボ群(699例中68例、9.7%)よりも、モルヌピラビル群(709例中48例、6.8%)が低率だった(群間差:-3.0ポイント、95%CI:-5.9~-0.1)。 サブグループ解析は全体解析とほぼ一貫した結果だったが、SARS-CoV-2感染既往者や、ベースラインウイルス量が低値の感染者、糖尿病患者などでは、推定群間差がプラセボ群で良好だった。 29日間の死亡は、プラセボ群9例、モルヌピラビル群1例だった。有害事象の発生率は、それぞれ33.0%(701例中231例)、30.4%(710例中216例)だった。

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