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中強度スタチン+エゼチミブ、ASCVD患者で高強度スタチンに非劣性/Lancet

 新たな心血管疾患のリスクがきわめて高いアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者の治療において、中強度スタチン+エゼチミブ併用療法は高強度スタチン単剤療法に対し、3年間の心血管死、主要心血管イベント、非致死的脳卒中の複合アウトカムに関して非劣性で、LDLコレステロール値<70mg/dLを維持している患者の割合が高く、不耐による投与中止や減量を要する患者の割合は低いことが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏らが実施した「RACING試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年7月18日号で報告された。韓国26施設の医師主導無作為化試験 RACING試験は、ASCVDの治療において、中強度スタチン+エゼチミブ併用療法は高強度スタチン単剤療法の代替となりうるかの検証を目的とする医師主導の非盲検無作為化試験であり、2017年2月~2018年12月の期間に、韓国の26施設で参加者の登録が行われた(韓国Hanmi Pharmaceuticalの助成による)。 対象は、高強度スタチン単剤療法を要するASCVD確定例(心筋梗塞の既往、急性冠症候群、冠動脈または他の動脈の血行再建術の施行歴、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患のうち少なくとも1つを有する)で、LDLコレステロール値<70mg/dLの患者であった。 被験者は、中強度スタチン+エゼチミブ(ロスバスタチン10mg+エゼチミブ10mg、1日1回、経口)の併用投与を受ける群、または高強度スタチン単剤療法(ロスバスタチン20mg、1日1回、経口)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における3年間の心血管死、主要心血管イベント(冠動脈または末梢動脈の血行再建術、心血管イベントによる入院)、非致死的脳卒中の複合で、非劣性マージンは2.0%とされた。3年時LDL-C値<70mg/dL:72% vs.58%、不耐による投与中止/減量:4.8% vs.8.2% 3,780例が登録され、併用療法群に1,894例、高強度スタチン単剤群に1,886例が割り付けられた。全体の平均年齢は64歳で、男性が75%を占め、40%に心筋梗塞の既往歴が、66%に経皮的冠動脈インターベンションの施行歴があり、37%は糖尿病であった。無作為割り付け前に、38%が高強度スタチン、36%が中強度スタチン、13%は中強度スタチン+エゼチミブの投与を受けていた。追跡期間中央値は3年で、3,622例(95.8%)が3年の追跡を完了した。 主要エンドポイントは、併用療法群が172例(9.1%)で、高強度スタチン単剤群は186例(9.9%)で発生し(絶対群間差:-0.78%、90%信頼区間[CI]:-2.39~0.83)、非劣性マージンが満たされた。 主要エンドポイントの個々の要素については、心血管死は併用療法群が0.4%、高強度スタチン単剤群は0.3%(ハザード比[HR]:1.34、95%CI:0.46~3.85、p=0.59)、主要心血管イベントはそれぞれ8.1%および8.9%(HR:0.91、95%CI:0.73~1.14、p=0.41)、非致死的脳卒中は0.8%および0.7%(HR:1.07、95%CI:0.52~2.22、p=0.85)で発生した。 1、2、3年時に、LDLコレステロール値<70mg/dLを維持していた患者の割合は、併用療法群がそれぞれ73%、75%、72%であったのに対し、高強度スタチン単剤群は55%、60%、58%で、群間の絶対差は1年時が17.5%(95%CI:14.2~20.7)、2年時が14.9%(11.6~18.2)、3年時は14.8%(11.1~18.4)であり、いずれも併用療法群で有意に優れた(すべてp<0.0001)。 また、試験薬への不耐が原因の投与中止または減量は、併用療法群が4.8%と、高強度スタチン単剤群の8.2%に比べ有意に少なかった(p<0.0001)。 著者は、「これらの知見は、高強度スタチン療法を要すると考えられるが、副作用のリスクが高い、またはスタチン不耐の患者では、スタチンの用量を倍増するのではなく、できるだけ早期に中強度スタチンへのエゼチミブの併用を考慮するアプローチを支持するものである」としている。

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BA.4/BA.5に対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波ではオミクロン株BA.5が主流となり、感染拡大が急速に進んでいる。また海外では、BA.4やBA.2.12.1への置き換わりが進んでいる地域もある。東京大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターが共同で行った研究において、これらの新系統BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対し、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、国内で承認済みの抗ウイルス薬が有効性を維持していることが示唆された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年7月20日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 研究対象となったのはFDA(米国食品医薬品局)で承認済み、および国内で一部承認済みの薬剤で、抗体薬は、カシリビマブ・イムデビマブ併用(商品名:ロナプリーブ、中外製薬)、tixagevimab・cilgavimab併用(海外での商品名:Evusheld、AstraZeneca)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ、GSK)、bebtelovimab(Lilly)、抗ウイルス薬は、レムデシビル(商品名:ベクルリー、ギリアド・サイエンシズ)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ、MSD)、ニルマトレルビル(商品名:パキロビッドパック[リトナビルと併用]、ファイザー)となっている。 今回の試験では、対象の各抗体薬の単剤および併用について、新型コロナウイルスの従来株(中国武漢由来の株)と、オミクロン株のBA.2.12.1、BA.4、BA.5を含む各系統の培養細胞における感染を阻害(中和活性)するかどうかを、FRNT50(ライブウイルス焦点減少中和アッセイで50%のウイルスを中和する血清希釈)を用いて評価した。また、各抗ウイルス薬について、IC50(50%阻害濃度)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。【抗体薬】・カシリビマブ・イムデビマブ併用では、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても中和活性は認められるものの、FRNT50の値は、従来株と比べると、BA.2.12.1に対して131.6倍、BA.4に対して133.5倍、BA.5に対して317.8倍高くなっており、効果が著しく低下していた。・tixagevimab・cilgavimab併用では、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても中和活性は認められるものの、FRNT50の値は、従来株と比べると、BA.2.12.1に対して6.1倍、BA.4に対して6.0倍、BA.5に対して30.7倍高くなっており、効果が低下していた。・ソトロビマブの前駆体では、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても中和活性が認められなかった。・bebtelovimabでは、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても中和活性が認められ、その効果についても従来株とほぼ同等のFRNT50の値を示していた。【抗ウイルス薬】・レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルのすべての薬剤が、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても、従来株とほぼ同等の感受性を示し、ウイルスの増殖を効果的に抑制していた。 著者は本研究の限界として、これらの薬剤による治療効果の臨床データがないことを挙げている。また、本研究によって、国内でも承認済みの抗ウイルス薬が、オミクロン株新系統のBA.2.12.1、BA.4、BA.5にも有効であることが示唆された。抗体薬については、国内では未承認のbebtelovimabは有効であったが、そのほかの抗体薬は有効性が低く、ソトロビマブについては効果がない可能性があり、BA.2.12.1、BA.4、BA.5の患者に対して、モノクローナル抗体の選択は慎重に検討する必要があると指摘している。

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PD-L1陽性TN乳がん、ペムブロリズマブ追加でOS延長(KEYNOTE-355最終解析)/NEJM

 プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)が陽性で、複合発現スコア(combined positive score:CPS)が10点以上の進行トリプルネガティブ乳がん患者の1次治療において、化学療法に抗PD-1モノクローナル抗体製剤ペムブロリズマブを追加すると、化学療法単独と比較して全生存(OS)期間が約7ヵ月有意に延長することが、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏らが実施した「KEYNOTE-355試験」の最終解析で示された。有効性の複合主要エンドポイントの1つである無増悪生存(PFS)期間は、ペムブロリズマブ+化学療法群で有意に優れることが、2回目の中間解析の結果としてすでに報告されている。研究の成果は、NEJM誌2022年7月21日号に掲載された。国際的な第III試験のOS最終解析 KEYNOTE-355は、PD-L1陽性・CPS 10点以上の進行トリプルネガティブ乳がんの1次治療におけるペムブロリズマブの有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年1月~2018年6月の期間に、日本を含む29ヵ国209施設で参加者の登録が行われた(MSDの助成を受けた)。 対象は、未治療の切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2がすべて陰性)乳がんで、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS)が0または1の成人患者であった。 被験者は、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+担当医の選択による化学療法(ナノ粒子アルブミン結合[nab]-パクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンのうちいずれか1つ)、またはプラセボ+化学療法を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。試験薬の投与は、病勢進行、許容できない毒性作用の発現、あるいは患者が同意を撤回するか、医師が投与中止と判断するまで継続された。 主要エンドポイントは、PD-L1陽性でCPSが10点以上の患者(CPS-10サブグループ)、PD-L1陽性でCPSが1点以上の患者(CPS-1サブグループ)およびintention-to-treat(ITT)集団という3つの集団におけるPFSとOSとされた。CPSは、腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージにおけるPD-L1免疫染色陽性細胞の数を、生存腫瘍細胞の総数で除して100を乗じた値と定義された。CPS-1サブグループでは有意差なし 847例(ITT集団)が無作為化の対象となり、ペムブロリズマブ群に566例、プラセボ群に281例が割り付けられた。CPS-10サブグループは323例(38.1%)(ペムブロリズマブ群220例、プラセボ群103例)、CPS-1サブグループは636例(75.1%)(425例、211例)であった。これら6つの群の年齢中央値は52~55歳の範囲に、閉経後女性の割合は64~68%の範囲にわたっていた。追跡期間中央値は44.1ヵ月(範囲:36.1~53.2)。 CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群の155例(70.5%)、プラセボ群の84例(81.6%)が死亡した。OS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が23.0ヵ月、プラセボ群は16.1ヵ月(死亡のハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった(両側検定のp=0.0185[有意性の基準を満たす])。18ヵ月時のOS率はそれぞれ58.3%および44.7%だった。 CPS-1サブグループのOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が17.6ヵ月、プラセボ群は16.0ヵ月であった(死亡のHR:0.86、95%CI:0.72~1.04、両側検定のp=0.1125[有意性なし])。また、ITT集団のOS期間中央値は、それぞれ17.2ヵ月および15.5ヵ月だった(0.89、0.76~1.05[有意性は検定されなかった])。 PFS期間中央値は、2回目の中間解析とほぼ同様の結果であった。すなわち、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月(病勢進行または死亡のHR:0.66、95%CI:0.50~0.88)、CPS-1サブグループでは、それぞれ7.6ヵ月および5.6ヵ月(0.75、0.62~0.91)、ITT集団では、7.5ヵ月および5.6ヵ月(0.82、0.70~0.98)だった。 また、奏効率は、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群52.7%、プラセボ群40.8%、CPS-1サブグループでは、それぞれ44.9%および38.9%、ITT集団では、40.8%および37.0%であった。奏効例では、ペムブロリズマブ群で奏効期間中央値が長く、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群12.8ヵ月およびプラセボ群7.3ヵ月だった。 一方、最も頻度の高い有害事象は、貧血(ペムブロリズマブ群49.1%、プラセボ群45.9%)、好中球減少(41.1%、38.1%)、悪心(39.3%、41.3%)であった。試験レジメン関連のGrade3、4、5の有害事象は、それぞれ68.1%および66.9%で認められ、ペムブロリズマブ群の2例(0.4%)(急性腎障害と肺炎が1例ずつ)が死亡した。ペムブロリズマブ群では、免疫介在性の有害事象が26.5%(甲状腺機能低下症15.8%、甲状腺機能亢進症4.3%、肺臓炎2.5%など)で発現し、このうち5.3%がGrade3または4であった。 著者は、「OS期間の探索的解析では、PD-L1陽性でCPSが10~19点、およびPD-L1陽性でCPSが20点以上の患者においても、ペムブロリズマブ追加による一貫した有益性が認められたことから、『CPS 10点以上』は、ペムブロリズマブ+化学療法による利益が期待される進行トリプルネガティブ乳がん患者集団を定義する適切な基準と考えられる」と指摘している。

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高齢乳がん患者への術前化学療法、治療目標を達成できるか

 手術可能な70歳以上の乳がん患者において、術前化学療法(NAC)によるダウンステージ率と忍容性の研究は少ない。今回、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのAustin D. Williams氏らが、NAC完遂率とダウンステージ率を50~69歳と70歳以上で比較したところ、70歳以上ではNAC完遂率が低かったが、乳房および腋窩リンパ節のダウンステージ率は50~69歳の患者と同程度に高かった。Annals of Surgical Oncology誌オンライン版2022年7月24日号に掲載。 本研究の対象は、2013年11月~2020年4月にNAC後に手術を受けた50歳以上のcT1-3N0-1の乳がんの女性で、乳房温存手術不適応から適応へのダウンステージ率とcN1患者の腋窩リンパ節郭清回避率について50~69歳と70歳以上で比較した。また、NACレジメンと完遂率も評価した。 主な結果は以下のとおり。・NACを受けたcT1-3N0-1乳がん患者は668例で、50歳以上の651例のうち75例(11.1%)が70歳以上だった。・70歳以上では50~69歳と比べて、小葉がんが少なく(5% vs.10%、p=0.03)、アントラサイクリンベースのレジメンが少なく(69% vs.93%、p<0.001)、レジメン完遂率が低かった(57% vs.78%、p<0.001)。・乳房温存手術不適応から適応へのダウンステージ率は同程度だった(72% vs.74%、p>0.9)。・NAC後に乳房温存手術適応となった患者のうち乳房温存手術を受けた患者の割合は、70歳以上が50~69歳より高かった(93% vs. 74%、p=0.04)。・cN1患者390例のうち、162例(42%)がリンパ節における病理学的完全奏効を達成した。腋窩リンパ節郭清回避率は同等だった(43% vs. 42%、p>0.9)。 著者らはこの結果から、「適切に選択された高齢患者は、NACによって安全で大きな臨床ベネフィットを得られることを示唆する」と結論している。

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有害量のアルコール摂取、若年男性で多い:GBD2020/Lancet

 アルコール摂取に関する勧告は年齢および地域によって異なることを支持する強いエビデンスがあり、とくに若年者に向けた強力な介入が、アルコールに起因する世界的な健康損失を減少させるために必要であることが、米国・ワシントン大学のDana Bryazka氏らGBD 2020 Alcohol Collaboratorsの解析で明らかとなった。適度なアルコール摂取に関連する健康リスクについては議論が続いており、少量のアルコール摂取はいくつかの健康アウトカムのリスクを低下させるが他のリスクを増加させ、全体のリスクは地域・年齢・性別・年によって異なる疾患自然発生率に、部分的に依存することが示唆されていた。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。年齢・男女・年別にTMRELとNDEを推定 解析には、204の国・地域における1990~2020年の死亡率と疾病負担を年齢別、性別に推計した世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)のデータを用いた。22の健康アウトカム(虚血性心疾患、脳梗塞、がん、2型糖尿病、結核、下気道感染症など)に関する疾患重み付け用量反応相対リスク曲線を構築し、21地域の15~95歳の個人について1990~2020年の期間で、5歳ごとの年齢階級別、男女別および年別に、アルコールの理論的最小リスク曝露量(theoretical minimum risk exposure level:TMREL、アルコールによる健康損失を最小化する摂取量)と非飲酒者等価量(non-drinker equivalence:NDE、飲酒者の健康リスクが非飲酒者の健康リスクと同等時点でのアルコール摂取量)を推定するとともに、NDEに基づき有害な量のアルコールを摂取している人口を定量化した。有害量のアルコール摂取は若年男性で多い アルコールに関する疾患重み付け相対リスク曲線は、地域および年齢で異なっていた。2020年の15~39歳では、TMREL(ドリンク/日:1ドリンクは純粋エタノール10g相当)は0(95%不確実性区間[UI]:0~0)から0.603(0.400~1.00)、NDEは0.002(0~0)から1.75(0.698~4.30)とさまざまであった。 40歳以上の疾患重み付け相対リスク曲線はすべての地域でJ字型であり、2020年のTMRELは0.114(95%UI:0~0.403)から1.87(0.500~3.30)、NDEは0.193(0~0.900)から6.94(3.40~8.30)の範囲であった。 2020年における有害量のアルコール摂取は、59.1%(95%UI:54.3~65.4)が15~39歳、76.9%(73.0~81.3)が男性であり、主にオーストララシア、西ヨーロッパ、中央ヨーロッパに集中していた。

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不眠症治療薬、長期に有効・安全なのは?/Lancet

 不眠症治療薬のエスゾピクロンとレンボレキサントはいずれも有効性のプロファイルは良好であるが、エスゾピクロンは副作用発現例数が多く、レンボレキサントの安全性は結論に至っていないこと、またdoxepin、seltorexantおよびzaleplonは忍容性が良好であるが、有効性に関するデータは乏しく確固たる結論は得られていないことなどが、英国・オックスフォード大学のFranco De Crescenzo氏らが行ったシステマティック・レビューとネットワーク・メタ解析により示された。承認されている多くの薬剤は不眠症の急性期治療に有効であるが、忍容性が低いか長期の有効性に関する情報が得られておらず、メラトニン、ラメルテオンおよび未承認薬は全体的なベネフィットは示されなかった。著者は、「これらの結果は、エビデンスに基づく臨床診療に役立つと考えられる」とまとめている。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。無作為化二重盲検比較試験154試験をネットワーク・メタ解析 研究グループは、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、PubMed、Embase、PsycINFO、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ClinicalTrials.govおよび規制当局のウェブサイトにて、2021年11月25日までに報告された不眠症治療薬の無作為化比較試験を検索し、特定の診断基準に基づいて不眠障害と診断された成人(18歳以上)患者を対象とした不眠症治療薬に関するプラセボまたは他の経口実薬単剤との比較試験について解析した。クラスター無作為化試験またはクロスオーバー試験、および二次性不眠症(精神疾患または身体的な併存疾患による不眠症、薬物またはアルコールなどの物質による不眠症)患者が含まれる試験は除外した。 個々の試験についてコクランバイアスリスクツールで評価するとともに、信頼性ネットワークメタ解析フレームワーク(CINeMA)を用いて、エビデンスの確実性を評価した。 主要評価項目は、有効性(患者評価による睡眠の質または睡眠指標による満足度)、治療中止(あらゆる理由で治療を中止した患者の割合)、忍容性(何らかの有害事象により中止した患者の割合)、安全性(少なくとも1件の有害事象を発現した患者数)で、いずれも急性期(投与4週間後、4週間後のデータがない場合は1~12週間のデータで4週間に近い時点)および長期(投与3ヵ月後の最長時点)の両方で評価した。ランダム効果モデルによるペアワイズおよびネットワーク・メタ解析を用い、要約オッズ比(OR)と標準化平均差(SMD)を算出した。 システマティック・レビューには170試験(36介入、4万7,950例)、ネットワーク・メタ解析には無作為化二重盲検比較試験154試験(30介入、4万4,089例)が組み込まれた。エスゾピクロンとレンボレキサントは有効性のプロファイルが良好 急性期治療に関しては、ベンゾジアゼピン系、doxylamine、エスゾピクロン、レンボレキサント、seltorexant、ゾルピデム、ゾピクロンがプラセボより有効であった(SMD範囲:0.36~0.83、CINeMAによるエビデンスの確実性は高~中)。ベンゾジアゼピン系、エスゾピクロン、ゾルピデムおよびゾピクロンは、メラトニン、ラメルテオン、およびzaleplonよりも有効であった(SMD:0.27~0.71、中~非常に低)。 中間作用型ベンゾジアゼピン、長時間作用型ベンゾジアゼピン、およびエスゾピクロンは、ラメルテオンよりもあらゆる原因による中止率が低かった(OR:0.72[95%CI:0.52~0.99、中]、OR:0.70[95%CI:0.51~0.95、中]、OR:0.71[95%CI:0.52~0.98、中])。 ゾピクロンとゾルピデムは、プラセボに比べて有害事象による脱落が多かった(ゾピクロンのOR:2.00[95%CI:1.28~3.13、非常に低]、ゾルピデムのOR:1.79[95%CI:1.25~2.50、中])。また、ゾピクロンはエスゾピクロン(OR:1.82[95%CI:1.01~3.33、低])、daridorexant(OR:3.45[95%CI:1.41~8.33、低])、およびスボレキサント(OR:3.13[95%CI:1.47~6.67、低])より脱落が多かった。 試験終了時の副作用発現例数は、ベンゾジアゼピン系、エスゾピクロン、ゾルピデム、ゾピクロンが、プラセボ、doxepin、seltorexant、zaleplonより多かった(OR範囲:1.27~2.78、高~非常に低)。 長期治療に関しては、エスゾピクロンとレンボレキサントはプラセボより有効で(エスゾピクロンのSMD:0.63[95%CI:0.36~0.90、非常に低]、レンボレキサントのSMD:0.41[95%CI:0.04~0.78、非常に低])、エスゾピクロンはラメルテオン(SMD:0.63[95%CI:0.16~1.10、非常に低])およびゾルピデム(SMD:0.60[95%CI:0.00~1.20、非常に低])より有効であった。 エスゾピクロンとゾルピデムは、ラメルテオンと比較してあらゆる原因による中止率が低かった(エスゾピクロンのOR:0.43[95%CI:0.20~0.93、非常に低]、ゾルピデムのOR:0.43[95%CI:0.19~0.95、非常に低])。しかし、ゾルピデムはプラセボに比べて副作用による脱落数が多かった(OR:2.00[95%CI:1.11~3.70、非常に低])。

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ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!【知って得する!?医療略語】第16回

第16回 ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!ゴルフがきっかけで脳梗塞になるなんてことがあるのですか?そうなんです。水泳のクロールやテニス、カイロプラクティスなども若年性脳梗塞を引き起こすことがありますよ。いずれも椎骨動脈解離(VAD:vertebral artery dissection)が原因です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】VAD【日本語】椎骨動脈解離【英字】vertebral artery dissection【分野】脳神経【診療科】脳神経外科・救急【関連】椎骨動脈解離性動脈瘤 VADA:vertebral artery dissecting aneurysm実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。めまいの鑑別診断で見逃せない疾患の1つに椎骨動脈解離(VAD)があります。見逃すと脳幹梗塞や小脳梗塞、くも膜下出血に至ることもあります。そんなVADは、筆者の経験上、研修医の先生に質問しても、あまり認知されていない疾患ですが、救急外来でめまいの診療をしていると、VADは決して稀な疾患ではありません。しかし、VADという疾患の存在を知らなければ疑うこともできません。また、必ずしも一般的な頭部画像検査ではVADが診断出来るとは限らず、きちんと疑うことができなければ、それに応じたMRオーダーが出来ず、末梢性めまいと誤診してしまう可能性もあります。そこで、今回はVADについて、診断の観点からフォーカスしたいと思います。VADとはVADは脳動脈解離の1つです。脳動脈解離の発症頻度は、椎骨脳底動脈系:頸動脈系=3:1と椎骨脳底動脈系が高く、さらに椎骨脳底動脈系の解離の90%が椎骨動脈です。発症様式は、解離に伴う椎骨動脈内の狭窄で虚血を来す場合と、椎骨動脈の解離部分が瘤状化し椎骨動脈瘤を発症(椎骨動脈解離性動脈瘤)、それが破裂する出血性のものがあります。初期症状は後頸部痛や肩こりで、多くは片側ですが、解離が脳底動脈に及び、脳底動脈の解離であれば頸部痛が両側性になる可能性も十分あります。また、筆者の経験上は頸部痛や肩こりの程度はさまざまで頭重感程度の方もいます。ただ、普段は肩こりや頸部痛が無い人が、めまいで来院し、普段は経験していない肩こりや頸部痛、頭重感を呈している際には、VADの可能性を十分に想定します。VADの主な原因VADの病因は、特発性から外傷性(交通事故・頸椎骨折等)、スポーツ、血管炎、マルファン症候群の結合組織病などさまざまですが、頸部の捻転を伴う動作が発症契機として指摘されています。とくに頸部を急に捻る動きや過伸展を伴うスポーツ、たとえばゴルフや水泳のクロールやサーフィン、テニスやカイロプラクティスなどで症例報告があります。2020年にはくしゃみ直後の発症も報告されています。これは筆者の推測ですが、頸椎の横突孔を通過する椎骨動脈は、頸部の過伸展や捻転動作により、横突孔周囲の骨と強く接触し、ずり応力により血管壁が損傷し解離を来しやすいのではないかと推測しています。頸動脈系よりもVADが圧倒的に多いのは、椎骨動脈の解剖的な構造に由来するのではないかと考えています。VAD診断にはMRのVRFAやBPASが役立つVADの画像診断の上で留意したいのは、虚血発症のVADが必ずしも脳梗塞まで至っていないことがある点です。このため、発症して間もないVADを頭部単純CTでは診断できないのはもちろんですが、頭部MRIでも拡散強調画像で急性期脳梗塞病変を指摘できないことがあります。これは梗塞まで至っていない虚血状態の病態があることによります。そこで頭頸部MRAも併用しますが、椎骨動脈は先天的な左右差も多く、MRAで椎骨動脈が狭窄や途絶しかけているように見えても、椎骨動脈の低形成という場合も少なくありません。このときに参考になるのが、BPAS(basi-parallel anatomical scanning)です。BPASはMRAの撮影法の1つです。MRAが血管内の血流信号(≒血管内腔)を反映するのに対し、BPASは椎骨脳底動脈の外観を表示します。BPASとMRAで示される血管径に明らかな乖離があるとすれば、椎骨動脈に解離腔の存在を疑う、あるいは解離部分の瘤状化を疑う手がかりとして有用です。ただし、BPASで有用な情報を得られない症例も存在し、近年は新たな撮像方法として、可変フリップ角 (VRFA:variable refocusing flip angle)を利用したVRFA-3D-TSE法も登場し、より診断精度の向上が期待されます。しかし、どれほど診断機器が発達しても、まずは疾患を疑わなければ始まりません。VADの診断には病歴聴取がとても重要だと思います。急性のめまいの患者さんの診療においては、症状出現前に頸部の過伸展や捻転イベントがなかったか詳しく問診します。また、これまで経験のない片側の肩こりや頸部痛の有無も確認します。ただし、VADの全例に誘因や頸部痛・後頭部痛があるとは限りませんのでその点は注意が必要です。ですが、少なくとも問診や症状からVADを否定できず、検査前確率が高いと考える場合は、放射線技師と相談し、MRI撮影の依頼時にBPASやVRFAを検討いただくことをお薦めします。最後に筆者がヒヤッとした症例をご報告します。その患者さんはバレリーナで、バレエ中に首を過度に反らしたときに突然のめまいが出現しました。初期対応した医師の診断は、アナムネとCTで異常がないことを理由に良性発作性頭位めまい症(BPPV)と診断したようでしたが、帰宅後も症状持続に改善がなく、患者さんは翌日の内科外来を受診しました。発症状況からVADを否定できないと判断し、BPASも含めた頭部MRを実施したところ、椎骨動脈解離が見つかり緊急入院しました。VADは、受診後にくも膜下出血を来し心機能停止で再搬送されたケースも報告されています。めまいを訴える患者を末梢性めまいと結論付ける前に、中枢性めまいの可能性を慎重に否定する必要があります。なお、近年は脳動脈解離として頸動脈解離とVADが一括りに語られる傾向があり、筆者は少々違和感を持っています。同じ脳動脈解離でも、VADと頸動脈系では臨床像が異なるのがその理由で、現場の実務ではそれぞれの臨床像を知っておく必要があると考えています。1)戌亥 章平ほか. 臨床神経. 2020;60:573-580.2)沖山 幸一ほか. 脳卒中の外科. 2014;42:196-202.3)徳元 一樹ほか. 臨床神経. 2014;54:151-157.4)寺崎 修司ほか. 脳卒中. 1996;18巻:70-73.

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ICI耐性の非小細胞肺がんに対するラムシルマブ+ペムブロリズマブの2次治療(Lung-MAP S1800A)/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)耐性となった進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療が有望な成績を示した。 進行NSCLCにおけるICI耐性後の2次治療は化学療法だけであり、今もなお大きなアンメットニーズが残っている。一方、ICIとVEGF阻害薬の併用は、複数のがん種で有望な結果が得られている。ドライバー変異のないICI耐性NSCLCの2次治療に、ICIであるペムブロリズマブとVEGF阻害薬であるラムシルマブの併用を化学療法と比較したLung-MAP S1800Aが行われた。結果は米国臨床がん学会年次集会(ASCO2022)で発表され、同時にJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。・対象:1ライン以上のPD-1/L1治療+プラチナベース化学療法(後治療または併用)を受け病勢進行したバイオマーカーの適合がないStage IVまたは再発NSCLC(ICI開始後84日以上かつ最終治療から1年以内に進行した症例)・試験薬群:ラムシルマブ+ペムブロリズマブ(RP群)3週ごと35サイクルまで投与 69例・対照薬群:治験担当医が選択した標準化学治療(ドセタキセル±ラムシルマブ、ゲムシタビン、メトレキセド、SOC群)67例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間、治験医師評価の無増悪生存期間(PFS)、毒性など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はRP群で14.5か月、SOC群で11.6か月であり、RP群で有意に改善された(ハザード比[HR]0.69、80%信頼区間[CI]:0.51〜0.92、片側p=0.05)。・ほとんどのサブグループでRP群のOS改善が示された。・PFS中央値はRP群で4.5ヵ月、SOC群で5.2ヵ月であった(HR:0.86、80%CI:0.66〜1.14、片側p=0.25)・ORRはRP群で22%、SOC群で 28%であった(片側p=0.19)。・Grade3以上の治療関連有害事象は、RP群の42%、SOC群の60%で発現した。 ICIと化学療法による治療で進行したNSCLC患者に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療は従来のSOCと比較して、OSの有意な改善が示され、安全性は両剤の既知の毒性と一致していた。

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英語で「便通がまだありません」は?【1分★医療英語】第38回

第38回 英語で「便通がまだありません」は?I have not had a bowel movement since surgery.(手術後、まだ便通がありません)I see. Let me give you some medications for that.(わかりました。お薬を出しておきますね)《例文1》医師Good morning. How is everything?(おはようございます。具合はいかがですか?)患者Overall everything is good, but I have not had a bowel movement.(全体的には良いのですが、まだ便通がありません)《例文2》Have you had a bowel movement?(お通じは出ましたか?)《解説》医療現場特有の会話の1つに、「便通」に関するものがあります。日常会話では基本的に出てくることの少ない話題ですので、とっさには出てきにくい表現だと思います。“have a bowel movement”で、「便通がある」という意味になります。婉曲的な表現ですが、とくに外科系の病棟では非常によく使われます。ポイントは「過去分詞の方が一般的である」ということです。“Did you have a bowel movement?”でも似た意味になりますが、過去形では「過去のある一時点」という基準点が含まれません。過去分詞を使うことよって、暗に「手術から現在」という時間範囲を限定しているのです。また、皆さんもご存じの通り、英語には“poo(p)”、“shit”、“crap”など、直接的に「便」を表す言葉がありますが、これらの表現はプロフェッショナルな場面においては不適切で、使うべきではありません。英語にもTPOがありますので、ぜひそのあたりにも気を遣いながら、英語を上達しましょう。講師紹介

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サル痘感染拡大、4~6月に感染した528例の特徴/NEJM

 2022年4月以降、欧米を中心にサル痘感染が広がっている。7月23日にはWHOが緊急事態を宣言し、日本でも7月25日に感染者が確認された。今回、英国・Queen Mary University of LondonのJohn P. Thornhill氏らの国際共同研究グループ(SHARE-net Clinical Group)が、2022年4月27日~6月24日に16ヵ国43施設でPCR検査によりサル痘と確認・診断された528例について、症状、臨床経過、転帰を調査した結果を報告した。NEJM誌オンライン版2022年7月22日号に掲載。<感染者の背景>98%がゲイもしくはバイセクシュアルの男性で、75%が白人、41%がヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性、年齢中央値は38歳だった。検査を受けた377例中109例(29%)で性感染症を併存していた。精液を分析した32例中29例にサル痘ウイルスDNAが検出された。<感染経路>95%が性行為による感染と考えられた。<症状>95%に発疹/皮膚病変がみられ、その部位は肛門性器が73%、顔が25%、体幹/手足が55%だった。皮膚病変以外の所見として、発熱(62%)、リンパ節腫脹(56%)、倦怠感(41%)、筋肉痛(31%)、頭痛(27%)、咽頭炎(21%)などがみられた。<潜伏期間>曝露歴が明らかな23例において、潜伏期間中央値は7日(範囲:3〜20日)であった。<入院目的>疼痛管理(主に肛門の激痛)21例、軟部組織感染18例、咽頭炎(経口摂取制限)5例、眼病変2例、急性腎障害2例、心筋炎2例、感染制御目的13例であった。<転帰>死亡例は報告されていない。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その2【「実践的」臨床研究入門】第22回

前回、網羅的なPubMed検索を行うために役立つツールであるMeSH(Medical Subject Headings)の概要を説明しました。今回からは、MeSHも活用したPubMed検索式の具体的な作成方法について解説します。まずは、あなたの「漠然とした臨床上の疑問」であるクリニカル・クエスチョン(CQ)を「具体的で明確な研究課題」であるリサーチ・クエスチョン(RQ)に変換しましょう(連載第1回参照)。言い換えると、CQをRQの典型的な「鋳型」であるPE(I)COのP(対象)とE(曝露要因)もしくはI(介入)、C(比較対照)、O(アウトカム)に流し込むのです。ここでは、われわれが最近出版したコクラン・システマティックレビュー (SR: systematic review)論文1)のPICOを例に挙げて、説明します。検索式はPとI(もしくはE)で構成する降圧薬の1種であるアルドステロン受容体拮抗薬は、心血管疾患(CVD: cardiovascular disease)発症リスクを低下させることが知られています。しかし、腎機能が廃絶した透析患者では、アルドステロン受容体拮抗薬の作用機序から重篤な高カリウム血症を生じる懸念もあり、その有効性と安全性については確かなエビデンスは確立されていませんでした。このような背景のもと、われわれは下記のCQとRQ(PICO)を立案しました。CQ:アルドステロン受容体拮抗薬は透析患者の予後を改善するかP:透析患者I:アルドステロン受容体拮抗薬C:プラセボもしくは通常治療(アルドステロン受容体拮抗薬なし)O:全死亡、CVD死亡、CVD発症、高カリウム血症、などこのように、RQ(PICO)を立てた後、はじめに押さえておくべき検索式作成のポイントは、下記のとおりです。まず、PとI(またはE)というRQの2つの構成要素の概念を英語検索ワードに変換して、検索式の構築を考えます。適切な英語検索ワードの選択については連載第3回で解説しました。その手順を踏んで、Pの構成要素の概念である「透析」をライフサイエンス辞書で検索してみると、まず"dialysis"という英語キーワードがヒットします。続いて、前回解説したMeSHも調べてみましょう。MeSHデータベースで"dialysis"を検索すると、リンクのように"Renal Dialysis"や”Dialysis”、"Peritoneal Dialysis"などのMeSH term(統制語)がヒットします。Iのアルドステロン受容体拮抗薬もライフサイエンス辞書で調べると、"aldosterone receptor antagonist"という英語キーワードが検索されます。同様に、MeSHデータベースで"aldosterone receptor antagonist"をキーワードに検索すると、リンクのように”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”がMeSH termでした。検索式作成におけるもう一つのポイントは、CとOは検索式に一般的には含めない、ということです。なぜなら、CやOはひとつの構成概念では決まらないことが多いからです。実際、今回提示したわれわれのコクランSR1)論文のRQ(PICO)でも、Cはプラセボもしくは通常治療と2つの概念で構成されています。Oも、ここで記載した4つのアウトカムだけでなく、Summary of findings tableに記載した主要なものだけでも、女性化乳房(アルドステロン受容体拮抗薬の頻度の多い副作用)、左心室重量(心エコーにて評価)と計6つ挙げています1)。また、PubMedでの検索の対象になるのは論文タイトルと抄録ですので、CやOの構成概念は必ずしも記載されていないことが多い、ということもCとOを検索式に含めない理由とされています。1)Hasegawa T,et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 15;2:CD013109.

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HER2低発現乳がん、HER2ゼロと異なるサブタイプとみなすべきか/JAMA Oncol

 HER2低発現乳がんは、HER2ゼロ乳がんとは異なる生物学的サブタイプとして考えるべきかどうか。米国・Dana-Farber Cancer InstituteのPaolo Tarantino氏らが、Stage I~III乳がんにおけるHER2低発現と臨床病理学的特徴および予後の関連を調べたところ、ホルモン受容体(HR)陽性およびトリプルネガティブ(TN)乳がんにおいて、HER2低発現乳がんを明確な生物学的サブタイプとは解釈できないという結果が示された。JAMA Oncology誌オンライン版2022年6月23日号に掲載。HER2低発現例とHER2ゼロ例の臨床病理学的特徴と予後を比較 本研究は、Dana-Farber Brigham Cancer Centerで2016年1月~2021年3月に手術したすべての乳がん患者の前向きデータベースから、Stage I~IIIのHER2陰性浸潤性乳がん患者5,235例を対象とし、2021年9月~2022年1月のデータを解析した。HER2低発現(IHCスコアが1+もしくは2+でISH陰性)およびHER2ゼロ(IHCスコア0)の患者における臨床病理学的特徴および病理学的完全奏効率(pCR)、無病生存期間(DFS)、遠隔無再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)を比較した。 HER2低発現と臨床病理学的特徴および予後の関連を調べた主な結果は以下のとおり。・Stage I~IIIのHER2陰性浸潤性乳がん患者5,235例のうち、5,191例(99.2%)が女性で、初回手術時の年齢中央値(範囲)は59.0歳(21.0~95.0)、HER2低発現例は2,917例(55.7%)、HER2ゼロ例は2,318例(44.3%)だった。・HRの発現は、HER2低発現例が90.6%で、HER2ゼロ例の81.8%より有意に多かった(p<0.001)。・エストロゲン受容体(ER)レベルとHER2低発現の割合は正の相関を示し、低ER患者はHER2ゼロが多く、高ER患者はHER2低発現が多かった。・術前化学療法を受けた675例におけるpCR率は、HER2ゼロ例のほうがHER2低発現例より高かった(26.8% vs.16.6%、p=0.002)が、HR陽性、低ER、低ERを除くHR陽性、TNの患者を別々に分析すると有意な差はなかった。・探索的生存解析では、HR陽性およびTN乳がんの患者では、HER2低発現例とHER2ゼロ例でDFS、DDFS、OSに差はみられなかった。 著者らは「この結果は、HER2低発現乳がんを明確な生物学的サブタイプとして解釈することを支持するものではなかった」とし、「HER2低発現はERレベルと正の相関があり、HER2ゼロ例では低ER例が多く、また低ER例の予後が悪いことから、HER2低発現例の予後解析の交絡に関連しているかもしれない」としている。

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BA.4/BA.5感染者の症状は?

オミクロン株BA.4/BA.5感染者でみられた症状(BA.1感染者との比較)76%BA.156%58%51%BA.4/BA.558%52%48%51%43%41% 40%38%31%26%18%7%18%12%17%9%17%8%15% 15%9%6%8%2%0%1% 0%1%対象:フランスで2022年4~5月にBA.4/BA.5に感染した288例(年齢中央値:47歳)と2021年11月~2022年1月にBA.1に感染した281例(同:35歳)[フランス公衆衛生局による2022年6月15日発表データより] 倦怠感、せき、発熱、頭痛などが多く報告されています BA.1感染者と比べると、鼻水、吐き気、下痢、味覚・嗅覚障害が多い傾向がみられました 症状が続いた期間はBA.1感染者が4日間(2~7日)だったのに対し、BA.4/BA.5感染者では7日間(3~10日)と長い傾向がみられました 無症状者はBA.1感染者では10.9%だったのに対し、BA.4/BA.5感染者では3%でしたCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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認知症の初診はなぜ遅れる? 新たな評価ツールを開発【コロナ時代の認知症診療】第17回

なぜ、認知症の受診や初期診断が遅れるか2021年の日本の病院における入院者数は、1984年以来、約40年ぶりに最少を記録した。全国の医療機関における初診患者数についてもおそらく同様と思われる。さてAducanumabを始め、アルツハイマー病の疾患修飾薬の適応は、軽度認知障害やそれ以前の段階だと考えられている。まさに早期発見が早期治療につながる。ところが以前から、家族が認知症かなと感じても、実際に医療機関を受診する迄には、2年もかかるといわれてきた。それがコロナ禍による受診控えでさらに遅れていると思われる。ここは何とか打開する必要がある。そこでまず「なぜ、認知症の受診や初期診断が遅れるか」を調べてみた。この問題に関するレビュー1)によれば、介護者が認知症に気付き難いこと、それに関する教育不足が最初に指摘されている。また患者や介護者と担当医との間のコミュニケーションがまずいことも挙げられている。さらに注意不足や対処戦略が思いつかないこと、そして認知症などは考えたくない否認もある。多くの臨床医は、認知症患者さんが、いわゆる病態否認、つまり「自分の健忘をはじめとする認知機能障害に気づいてない、否定すること」をしばしば経験されているであろう。どうすれば受診してもらえるか?家族の試行錯誤ところで現実的に、このような場合に家族はただ指をくわえているだけであろうか? これまでに多くの方々から、当事者を専門家の元へ誘う方法についてそれぞれのやり方を伺ってきた。よくあるのは、「健康診断へ行こう」とか「血圧が高いから心配なので脳動脈硬化など診てもらおう」といったものである。経験的にはこれらはあまりうまくいかない。印象に残ったのが、あるジェネラリストによるものである。ご主人に認知症が疑われる場合、奥さんが「認知症が心配なので診てもらおうと思う。でも怖いからあなたもついてきて」というのである。これはかなり成功率が高い。なお奥様がそれとおぼしき例では、「行きたければあなたが行けばいい」と言われるケースもあるそうだ。筆者はこれまで、当事者もしくは医療関係者の意見しか知らなかった。けれども最近は、高齢者の悩み事に特化した社会福祉士の事務所もある。意外ながら、お金や家族関係、終活はもとより、こうした医療受診までも、医師や法律家に相談する以前の初期問い合わせが来るようになっていると聞く。幾つか具体的な台詞を教えてもらったが、医療関連法や倫理を基本とする私達とは異なる視点からの説得力がある。いずれにせよ、敷居の高い専門家よりも、まずは「困りごと相談」的で気安いことが普通の人には大切なようだ。目に見える行動からMCI状態を評価する新ツールところで初期診断までに必要とする時間を短くするには、新たにどんな手法があるだろうか? と私の周辺では何年も前から話題になっていた。そこで日本老年精神医学会の有志を中心に新たなチェック法を作成することになった。それが「目に見える行動からMCI状態を評価する」という新たな測定尺度である2)。さて認知症分野では、MMSE や改訂長谷川式に代表される認知機能の簡易スクリーニング検査がある。ところがこれらは、自分の知能を試されているという感じを当事者に与えてしまうことがある。そこで家族など観察者の報告による評価もある。たとえば記憶を評価するのに、「物忘れが多くなった」、注意力をみるのに「何かしていてもすぐに飽きてしまう」など行動から推察できる認知能力の低下をみるのである。同じように日常生活動作(ADL)から、「トイレに間に合わない」とか、「食事の動作が適切でない」等からの評価もある。また道具的ADLでは、「ガスコンロやリモコンがうまく使えない」、「ATM操作ができない」などもある。けれども認知機能やADLなど学問領域からの発想とは異なり、誰の目にも見える行動一般から初期状態を捉えようとする尺度はなかった。また基本的に認知症を把握しようというもので、 MCI を指摘しようとするものもなかった。しかも報告者は基本的に家族介護者である。ところが最近では、一人暮らしや知友のない高齢者は全く珍しくない。そこで「MCI-J」という、行動変化から初期に気づくための尺度を作成した。第1の特徴は、報告者は家族介護者のみならず、当事者でもまた医療機関のスタッフでも良い。けれども当事者は自分に甘く、介護者は厳しい。そこで、500人弱のデータから、当事者との続柄ごとに、同じ人をみても、どれくらい評価に差があるかを算出した。この数値を用いて重み付けしている。だからもし全く同じ回答内容であっても、誰が評価したかにより判定は異なる。対象とする疾患はアルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症である。明らかな発作歴や麻痺のある脳血管性認知症は含まない。最終的に13の質問項目となった。それらによりこうした認知症疾患の前駆状態や初期認知症をかなり把握できた。ちなみに感受性は90%、特異性は57%だが、スクリーニングテストなので感受性が高ければ、特異性は少し低くても良いと考えている。なおこの尺度は、紙の上ではなく、スマホやタブレットなどのITデバイスに載せ、アルゴリズムを自動計算させるものである。終わりに。本尺度は認知症の見当付けに有用そうである。けれどもこれで認知症が疑われた場合には、早めに専門家を訪れることが不可欠である。参考1)Bradford A, et al. Alzheimer Dis Assoc Disord. 2009;23:306-314.2)Asada T, et al.Int J Griatr Psychiaty.2022 Aug;37.

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統合失調症患者における治療開始前後の色彩感覚と認知機能

 統合失調症患者は発症の初期段階で、視覚機能や眼組織構造に有意な変化がみられることが、多くの研究で報告されている。統合失調症の病因における新たな科学的進歩の探求を可能にするには、眼組織や眼機能の潜在的な分野を調査する目的で、脳の構造・機能の従来の研究を変革することが求められる。しかし、虹彩構造と統合失調症との相関関係を調査した研究はほとんどなく、エビデンスは不十分であった。中国・Chengde Medical UniversityのLi Duan氏らは、虹彩構造、色彩感覚、認知機能が、初発統合失調症患者において抗精神病薬治療前後で変化するかを分析し、統合失調症の早期臨床スクリーニングと診断を簡便に測定可能なバイオマーカーの特定を試みた。その結果、統合失調症患者の色彩感覚は、認知機能と共に改善することが示唆された。著者らは、陰窩や色素点を伴う虹彩構造の特徴は、統合失調症の薬物治療効果に大きな影響を及ぼす可能性があり、統合失調症を鑑別する潜在的なバイオマーカーである可能性があることを報告した。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2022年6月13日号の報告。 対象は、初発統合失調症患者61例(男性:22例)。抗精神病薬治療開始前の認知機能および色彩感覚を評価するため、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)およびFarnsworth-Munsell Dichotomous(D-15 Hue Test)をそれぞれ用いた。対象患者に、医師の処方に従い第2世代抗精神病薬(オランザピン換算量)による6週間の治療を実施し、治療前(ベースライン)および治療2週目、4週目、6週目(フォローアップ時点)に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて治療効果を評価した。まず、虹彩の特徴に基づき対象患者を分類した。次に、薬物治療効果を群間比較し、虹彩の特徴と治療効果との関連を検討した。最後に、ベースライン時と治療6週目の認知機能および色彩感覚の変化を比較し、それぞれに対する抗精神病薬の治療効果を分析した。 主な結果は以下のとおり。・虹彩構造の特徴に基づき対象患者61例を次のように分類した。 ●陰窩なし:28例、あり:33例 ●色素点なし:35例、あり:26例 ●シワなし:42例、あり19例・ベースライン時、すべての患者のPANSSスコアに有意な差は認められなかったが、各フォローアップ時点において、「陰窩あり」および「色素点あり」の患者では有意な差が認められた。・特定の虹彩構造の特徴がない患者(「陰窩なし」および「色素点なし」)は、他の患者と比較し、PANSSスコアの有意な減少が確認されており(p<0.05)、これは薬物療法が非常に効果的であることを示唆している。・薬物療法の影響を除外すると、未治療の初発統合失調症患者におけるD-15とMoCAの結果に有意な関連が認められた(r=-0.401、p<0.05)。・MoCAスコアは、ベースライン時と比較し、抗精神病薬治療6週目で有意に高かった(平均差=2.36、t=10.05、p<0.01)。

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ロルラチニブのALK肺がん1次治療、3年追跡PFSのHR0.27、脳転移進行のHR0.02(CROWN)/Cancer Res

 未治療のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)におけるロルラチニブの第III相CROWN試験の3年追跡の結果が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2022)で発表され、良好な生存ベネフィットとともに、脳転移例に対して強力な有効性を示した。 ALK陽性肺がんに適応を有するALK阻害薬は、現在わが国で5種類承認されており、いずれも良好な成績を示す。近年は各薬剤の1次治療の成績が発表されている。その中で最もALK阻害作用が強いロルラチニブの1次治療を評価するCROWN試験の結果が注目される。 主な結果は以下のとおり。・ロルラチニブの追跡期間中央値は36.7ヵ月(対照群のクリゾチニブは29.3ヵ月)であった。・主要評価項目である盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)中央値は、ロルラチニブ群では未到達、クリゾチニブ群では9.3ヵ月であった([ハザード比]HR:0.27、95%CI:0.18〜0,.39)。・脳転移の無増悪期間(IC-TTP)のHRは、ベースライン時脳転移陰性例では0.02(95%CI:0.002〜0.14)、脳転移陽性例では0.10(95%CI:0.04〜0.27)であった。・確定奏効率(confirmed OR)はロルラチニブ群77%、クリゾチニブ群は59%であった。・脳転移のconfirmed ORはロルラチニブ群65%、クリゾチニブ群は18%であった。・奏効期間(DoR)中央値はロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は9.6ヵ月であった。・脳転移のDoR中央値はロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は9.4ヵ月であった。・Grade3/4の有害事象(AE)はロルラチニブ群の76%、クリゾチニブ群の57%で発現した。治療中止に至ったAE発現はロルラチニブ群7%、クリゾチニブ群は10%であった。 筆者は今回の3年追跡結果の結果について、未治療のALK陽性肺がんにおけるロルラチニブの使用を脳転移の有無を問わずに支持するものだと述べている。

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AEDってなに?どんなときに使う?

AEDってなに?どんなときに使う?監修:久村 正樹 氏 埼玉医科大学総合医療センター救急科(ER)参考:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ(2022年7月14日)https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat4/cat1/post-148.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.AEDってなに?AED(自動体外式除細動器)とは、心臓が非常に細かく震えて、全身に血液を送り出すポンプとしてうまく動かなくなったときに、強い電流を一瞬流してショックを与え(電気ショック)、正常な状態に戻すための機器です。医療者だけでなく、一般の方でも使用することができます。<もし別の病気やケガで意識を失っているときは?>AEDは傷病者の心電図を自動的に解析し、電気ショックが必要かどうかを判断します。電気ショックが不要な人や操作を間違った場合に電気が流れることはありません。判断に迷う場合は、AEDを装着してAEDの判断を確認しましょう。監修:久村 正樹 氏 埼玉医科大学総合医療センター救急科(ER)参考:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ(2022年7月14日)https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat4/cat1/post-148.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.AEDを用いた救命の手順(1/4)① 反応を確認する。• 倒れている人を発見したら、肩を軽くたたきながら大声で呼びかける。② (反応がない/判断に迷う場合)119番通報、AED手配を行う。• 大声で応援を呼び、119番通報とAEDの手配を依頼する。• 119番通報の電話を通じて通信司令員の指示を受ける。③ 呼吸を確認する。• 傷病者のそばに座り、10秒以内で胸と腹部の動きを見て、普段どおりの呼吸をしているか確認する。監修:久村 正樹 氏 埼玉医科大学総合医療センター救急科(ER)参考:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ(2022年7月14日)https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat4/cat1/post-148.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.AEDを用いた救命の手順(2/4)④ (呼吸がない/判断に迷う場合)胸骨圧迫を開始する。• 胸骨の下半分にひじを伸ばして垂直に体重をかけ、胸が約5cm(小児では胸の厚さの約1/3)沈むように、100~120回/分の速さで胸を押す。• 押したあとは、完全に胸が元の位置に戻るように圧迫をゆるめる。⑤ AED到着後、電源を入れる。監修:久村 正樹 氏 埼玉医科大学総合医療センター救急科(ER)参考:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ(2022年7月14日)https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat4/cat1/post-148.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.AEDを用いた救命の手順(3/4)⑥ 音声とパネル表示に従い、電極パッドを貼る。• 電極パッドは右胸上部と左胸下部に装着する。• 電気ショックが必要かどうかは、AEDが心電図を解析して判断する。• 電気ショックが必要ない場合は、胸骨圧迫を再開する。監修:久村 正樹 氏 埼玉医科大学総合医療センター救急科(ER)参考:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ(2022年7月14日)https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat4/cat1/post-148.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.AEDを用いた救命の手順(4/4)⑦ (電気ショックが必要な場合)音声に従い、ショックボタンを押す。• 傷病者に誰も触れていないことを確認し、ボタンを押す。• 電気ショック後はすぐ胸骨圧迫を再開し、AEDがさらに電気ショックが必要か否かを指示するのでそれに従う。• 救急隊に引き継ぐまで、または傷病者が普段どおりの呼吸や目的のあるしぐさが認められるまで続ける。• 電極パッドは救急隊が到着するまで電源は切らず、装着したままにする。監修:久村 正樹 氏 埼玉医科大学総合医療センター救急科(ER)参考:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ(2022年7月14日)https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat4/cat1/post-148.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.よくある質問①Q.AEDはどこにありますか?病院や医療機関、駅、公共施設などに設置されていることがあります。AED設置情報を確認できるウエブサイトもあります。日本救急医療財団 全国AEDマップ(https://www.qqzaidanmap.jp)• 厚生労働省の指示に基づく全国版で登録型のAEDマップ• 設置者および設置管理者から日本救急医療財団のホームページに設置登録情報を公開することに同意を得たものを公開監修:久村 正樹 氏 埼玉医科大学総合医療センター救急科(ER)参考:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ(2022年7月14日)https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat4/cat1/post-148.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.よくある質問②Q.服はすべて脱がせなくてはいけませんか?電極パッドは素肌に装着する必要がありますが、服をすべて脱がさずに、下着をずらして装着してもかまいません。また、パッドを装着して、その上から服などをかけて肌を隠して使用することも可能です。監修:久村 正樹 氏 埼玉医科大学総合医療センター救急科(ER)参考:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ(2022年7月14日)https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/ippan/cat/cat4/cat1/post-148.htmlCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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テオフィリン鼻洗浄でコロナの嗅覚障害は改善するか

 気管支喘息治療薬でおなじみのテオフィリンは、細胞内のcAMP濃度を上昇させることで神経の興奮性を高める作用があり、これを利用した嗅覚の改善効果が以前より立証されている1)。また、最近の研究では生理食塩水鼻洗浄(SNI)にテオフィリンを追加することで、新型コロナウイルス感染後の嗅覚機能障害(OD:olfactory dysfunction)の効果的な治療になり得ることが示唆されている。 そこで、米国・ワシントン大学・セントルイス校のShruti Gupta氏らは新型コロナウイルス関連のODに対し、テオフィリン鼻洗浄の有効性と安全性を評価した。その結果、テオフィリン鼻洗浄の臨床的利点は決定的ではないことが示唆された。JAMA Otolaryngology-Head&Neck Surgery誌オンライン版2022年7月7日号掲載の報告。 本試験は三重盲検プラセボ対照第II相ランダム化試験で、2021年3月15日~8月31日にミズーリ州またはイリノイ州に居住し新型コロナによるODが持続する成人(コロナ感染疑いから3〜12ヵ月が経過した者)を対象に実施された。生理食塩水とテオフィリン400mgのキットを治療群用に、生理食塩水と乳糖粉末500mgのキットを対照群用として用意し、参加者はカプセル内容物を生理食塩水に溶解し、6週間にわたり朝と晩の1日2回の鼻腔洗浄を行った。 主要評価項目は治療群・対照群間で反応した人の割合の差で、CGI-I(Clinical Global Impression-Improvement)で少なくともわずかに改善を示す反応として定義した。副次評価の測定には、ペンシルベニア大学の嗅覚識別テスト(UPSIT)、嗅覚障害に関する質問、一般的な36項目の健康調査、新型コロナ関連の質問が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・51例が研究に登録され、平均年齢±SDは46.0±13.1歳で、女性は36例(71%)。テオフィリン鼻洗浄群(n=26)とプラセボ鼻洗浄群(n=25)にランダムに割り付けられた。・参加者のうち45例が研究を完遂した。治療後、テオフィリン群13例(59%)はプラセボ群10例(43%)と比較して、CGI-Iスケール(反応した人)でわずかな改善を報告した(絶対偏差:15.6%、95%信頼区間[CI]:13.2~44.5%)。・ベースラインと6週間の嗅覚識別テストUPSITでの中央値の差は、テオフィリン群で3.0(95%CI:-1.0~7.0)、プラセボ群で0.0(95%CI:-2.0~6.0)だった。・混合モデル分析により、UPSITスコアの変化は2つの研究群間で統計学的に有意差が得られなかったことが明らかになった。・テオフィリン群の11例(50%)とプラセボ群の6例(26%)は、ベースラインから6週間までにUPSITスコアで4ポイント以上の変化があった。また、UPSITで反応した人の割合の差は、テオフィリン群で24%(95%CI:-4~52%)だった。

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英語で「抗凝固薬」は?【1分★医療英語】第37回

第37回 英語で「抗凝固薬」は?Why do I need to take a blood thinner?(何で抗凝固薬を飲まなければいけないのですか?)Blood thinners are recommended to prevent blood clots from forming.(抗凝固薬は血栓が作られるのを防ぐために使われます)《例文1》What are the most common side effects of blood thinners?(抗凝固薬によくある副作用は何ですか?)《例文2》Are you on blood thinner medications?(抗凝固薬を服用していますか?)《解説》抗凝固薬は正式には“anticoagulant”ですが、患者さんへの説明には“blood thinner”を使います。日本語でも「血液をサラサラにする薬」と定番の言い方をするのと同様です。“blood thinner”を広義に「抗血栓薬」として、“antiplatelet”(抗血小板薬)を含むことも多く、患者さんへ抗血小板薬を説明する時は、“There are two different types of blood thinners, and antiplatelets  keep your platelets from sticking together.”(2種類の抗血栓薬があり、抗血小板薬は血小板がくっ付くのを防いでいます)と説明すると理解しやすくなります。“blood thinner”の副作用の確認には、“black or tarry stool”(黒色便やタール便 = 血便)、“prolonged nosebleed”(長引く鼻血)、“excessive bleeding gums”(過剰な歯茎からの出血)などの単語を使って説明します。ちなみに抗凝固薬のイグザレルト(Xarelto、一般名:リバーロキサバン)の発音は「ゼロート」という感じで、頭のXはZの音になるので注意が必要です。講師紹介

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ASCO2022 レポート 肺がん

レポーター紹介2022年のASCOは久しぶりの現地開催とWeb開催のハイブリッド形式で実施された。肺がん領域については昨年にも増して大きな話題に乏しく、Phase I試験のExpansion、Phase II試験、さらにはサブセット解析などが主体で、PivotalなPhase IIIの公表はあってもNegativeという状況であった。本稿では、その中から重要な知見について解説したい。SKYSCRAPER-02試験ASCO2022の肺がん領域において、Positiveであれば肺がんだけでなく臓器横断的に大きなインパクトを残したであろう試験がSKYSCRAPER-02試験である。残念ながらProgression-free survival(PFS)、Overall survival(OS)ともにNegativeであったこの試験は、進展型小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブというIMpower133試験で確立された標準治療に、tiragolumab(抗TIGIT抗体)を上乗せすることの優越性を検証するために実施された。TIGIT(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)はT細胞やNK細胞に発現する免疫チェックポイント分子である。tiragolumabは非小細胞肺がんを対象に実施された無作為化Phase II試験であるCITYSCAPE試験の結果、PD-L1高発現の患者集団においてアテゾリズマブに対する上乗せが示され、大きな期待を集めていた。SKYSCRAPER-01試験では進行非小細胞肺がんPD-L1高発現群において、SKYSCRAPER-03試験では切除不能III期非小細胞肺がんの化学放射線療法後の地固め療法として、そして進展型小細胞肺がんにおいてはSKYSCRAPER-02試験が実施されている。その中で最も早く結果が公表されたSKYSCRAPER-02試験は、前述のとおりPFS、OSともにカルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブに対する上乗せを示すことができなかった。さらに、ASCO直前にSKYSCRAPER-01試験においても、PFSが統計学的にNegativeであり、OSの結果は追跡中というプレスリリースが発行され、大きな話題となった。SKYSCRAPER-01試験についても、PFSはNumerical improvementを示しているとされており、OSの結果は追跡中、さらにSKYSCRAPER-03試験は結果を待っている状態であり、今後の報告が待たれる。CITYSCAPE試験の成功以降、多数の薬剤が同時に開発される状況となった抗TIGIT抗体についても、今後、他の領域、他の薬剤の結果を含め注目したい。PD-L1高発現群に対するFDAのPooled analysis2021年前半にESMO virtual plenaryにおいて、Flatiron社の技術を用いた電子カルテデータの解析に基づき、免疫チェックポイント阻害薬単剤(IO-only)と、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用療法(Chemo-IO)が、PD-L1高発現の集団において有効性に大きな違いがないことが報告され大きく注目された。今年のASCOにおいては、FDAがこれまでの臨床試験のデータのPooled analysis結果をまとめ、ASCO2022の進行肺がんOralセッションの1番目という栄誉を得た。Chemo-IOとしては、KEYNOTE-021試験、KEYNOTE-189試験、KEYNOTE-407試験、IMpower150試験、IMpower130試験、CheckMate9LA試験が、IO-onlyとしては、CheckMate026試験、KEYNOTE-024試験、KEYNOTE-042試験、IMpower110試験、CheckMate227試験、EMPOWER-Lung 1試験が対象となっている。これらの試験に登録された9,000例以上の患者から、PD-L1 50%以上のChemo-IO 455例、IO-only 1,298例が解析対象となっている。OSはIO-onlyで20.9ヵ月、Chemo-IOで25.0ヵ月、Hazard ratio(HR)は0.82(95%信頼区間[CI]:0.62~1.08)であり、わずかにChemo-IOで良いものの信頼区間は1をまたいでいるという結果であった。とくに、年齢別のサブセットで異なる傾向を認め、65歳以下ではChemo-IOが良好な傾向があるのに対して、75歳以上ではIO-onlyが良好であった。確かにPost-hocの解析であり、限界も多いものの、PD-L1高発現の集団において、IO-onlyの治療戦略の重要性が再度示される結果であった。ニボルマブ+イピリムマブに関連したフォローアップデータPoster発表ではあったものの、CheckMate227試験の5年アップデートの結果が公表された。抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法の、進行非小細胞肺がんにおけるベンチマークとなる報告である。今回の報告では、PD-L1 1%以上と、1%未満に大別した成績が報告されている。1%以上においては、5年OS割合が24%、5年PFS割合が12%であった。1%未満においては、5年OS割合が19%、5年PFS割合が10%であり、従来指摘されてきたように、PD-L1の発現によらず、ほぼ同等の成績が5年のデータとしても確認された。PD-L1 1%以上のKEYNOTE-042試験においては、5年OS割合が16.6%、5年PFS割合が6.9%とすでに報告されている。異なる試験の結果であり直接比較は難しいものの、ニボルマブ+イピリムマブの併用により長期生存にプラスに働く可能性があることが示唆される結果といえる。今回PD-L1高発現群でのサブセット解析の結果は示されていないため、KEYNOTE-024試験との比較や、KEYNOTE-598試験などで検証されているPD-L1高発現の部分については、新たな情報がなく、今後追加の発表が期待される。さらに、同じくPosterであるが、CheckMate9LA試験については3年のアップデート結果が報告された。PD-L1の発現によらない全体集団において、化学療法2サイクル+ニボルマブ+イピリムマブは、3年OS割合27%、3年PFS割合13%を示した。この傾向はPD-L1の発現によらず維持されており、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の特徴が表れている。CheckMate9LA試験についても今後5年のフォローアップデータなどが待たれるものの、おおむねCheckMate227試験を踏襲する傾向であった。ただ、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で実施されているJCOG2007(NIPPON)試験において、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ群の安全性の問題により登録が中断されており、実施に際しては免疫関連の有害事象を中心とした安全管理に留意が必要である(JCOG2007[NIPPON試験]における重篤な有害事象発生について)。周術期治療の話題切除可能非小細胞肺がんに対して、初めてニボルマブによる術前治療を実施した試験がNew England Journal of Medicine誌に掲載されたことを記憶されている方も多いと思われる。ASCO2022では、この試験の5年フォローアップデータがPosterセッションではあるものの報告されている。20例の対象患者全体において、5年のOS割合が80%、無再発生存割合が60%であり、ニボルマブによる術前治療によりMPR(Major pathologic response、切除検体でViable tumorが10%以下)を達成した9例の患者のうち、8例(89%)が5年無再発生存しているという良好な結果であった。確かに非常に限られた症例での報告ではあるものの、現在実施中、フォローアップ中のさまざまな周術期免疫チェックポイント阻害薬の試験の結果を先取りする内容として確認しておきたい。最近の試験としては、CheckMate816試験について、術前ニボルマブ+化学療法後の病理学的奏効に基づく、EFS(Event-free survival)のサブセット解析の結果が報告されている。本試験はすでにAACR2022において、EFSにおいて術前化学療法に対してニボルマブを上乗せする意義が証明されたとする報告が行われている。AACRでの発表においても、pCR(pathologic complete response)を達成した患者において、ニボルマブの有無にかかわらず明らかにEFSが良いという結果、すなわちpCRが術前治療後の患者にとって明確な予後因子であることが報告されている。今回の報告ではその点をさらに解析し、pCRやMPRだけでなく、70%以上、20%以上などのさまざまなカットオフで評価しており、おおむね病理学的奏効の深さとEFSの良さが相関することが示された。ESMOが主導する、ESMO Virtual plenaryシリーズは、通常開催の学会とは独立して、重要演題を速報的に公開する方法として徐々にその地位を固めつつある。今年のESMO Virtual plenaryにおける肺がん領域の話題は、完全切除後の非小細胞肺がんにおいて、術後補助療法としてペムブロリズマブの意義を検証する、Phase III試験であるEORTC-1416-LCG/ETOP 8-15(PEARLS/KEYNOTE-091)試験であった。本試験においては、何よりもPD-L1高発現の集団においてペムブロリズマブの優越性が示されなかった点が話題となり、今後さまざまな観点からの解析結果が待たれる状態である。ASCO2022においてはサブグループ解析が報告され、割付調整因子に含まれていた術後プラチナ併用療法の有無において実施群のほうで明らかにペムブロリズマブの追加が良い傾向を認め、探索的な結果ながらも術後プラチナ併用療法としてカルボプラチン+パクリタキセルを実施した場合にペムブロリズマブの追加の効果が乏しいことが示されている。本試験については今後もさまざまな追加解析が実施されると思われ、それらの結果からIMpower010試験のアテゾリズマブと合わせて、周術期免疫療法の理解が深まることを期待している。

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