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乳がん治療におけるタキサン3剤の末梢神経障害を比較

 乳がん治療におけるnab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセルによる化学療法誘発性末梢神経障害の患者報告を比較したコホート研究の結果を、中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのHongnan Mo氏らが報告した。化学療法誘発性末梢神経障害はnab-パクリタキセル群よりパクリタキセル群およびドセタキセル群で有意に少なく、nab-パクリタキセルでは主に感覚神経障害である手足のしびれ、パクリタキセルおよびドセタキセルでは主に運動神経障害および自律神経障害が報告された。また、感覚神経障害よりも運動神経障害のほうが早く報告されていた。JAMA Network Open誌2022年11月2日号に掲載。 本研究は、2019~21年に中国全土の9つの医療センターで実施された前向きコホート研究である。対象は、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセルベースのレジメンで治療を受けた入院中の浸潤性乳がん女性1,234例で、overlap propensity score weightingによる重み付けで評価した。2021年12月~2022年5月のデータを解析し、主要評価項目は欧州がん研究治療機関(ERT)のQOL調査票(感覚神経、運動神経、自律神経スケールの20項目)を用いた患者報告による化学療法誘発性末梢神経障害とした。解析には、ベースラインの患者、腫瘍、治療の特性で調整した重回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・1,234例の平均(SD)年齢は50.9(10.4)歳で、nab-パクリタキセルが295例(23.9%)、パクリタキセルが514例(41.7%)、ドセタキセルが425例(34.4%)だった。・主な症状は、nab-パクリタキセル群では感覚神経に関連する手足のしびれ(81.4%)が多く、パクリタキセル群およびドセタキセル群では運動神経障害(例として、脚力低下はパクリタキセル群47.2%、ドセタキセル群44.4%)、自律神経障害(例として、目のかすみはパクリタキセル群45.7%、ドセタキセル群43.6%)が報告された。・運動神経障害は、感覚神経障害より早い時期に報告され、症状発現までの中央値はnab-パクリタキセル群0.4週間(95%信頼区間[CI]:0.4~2.3)、パクリタキセル群2.7週間(同:1.7~3.4)、ドセタキセル群5.6週間(同:3.1~6.1)であった。・患者報告による化学療法誘発性末梢神経障害のリスクは、nab-パクリタキセル群に比べてパクリタキセル群(ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.41~0.87、p=0.008)とドセタキセル群(HR:0.65、95%CI:0.45~0.94、p=0.02)で低く、感覚的不快感も、nab-パクリタキセル群と比べて、パクリタキセル群(HR:0.44、95%CI:0.30~0.64、p<0.001)およびドセタキセル群(HR:0.52、95%CI:0.36~0.75、p<0.001)で低かった。しかし、運動神経障害や自律神経障害を報告するリスクは、nab-パクリタキセル群に比べ、パクリタキセル群、ドセタキセル群が低くはなかった。

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日本人統合失調症患者における認知機能と社会機能との関係

 統合失調症患者の活動性低下、就労困難、予後不良には、社会機能障害が関連していると考えられる。統合失調症患者の社会機能には、注意力や処理速度などの認知機能が関連しているが、認知機能と社会機能との関連はあまりよくわかっていない。そのため、社会機能に影響を及ぼす因子を明らかにすることは、統合失調症の治療戦略を考えるうえで重要である。金沢医科大学の嶋田 貴充氏らは、統合失調症患者の社会機能に影響を及ぼす因子をレトロスペクティブに分析し、統合失調症患者の認知機能と社会機能との間に有意な相関が認められたことを報告した。Journal of Clinical Medicine Research誌2022年9月号の報告。 患者の背景、知能指数(IQ)スコア、統合失調症認知機能簡易評価尺度の日本語版(BACS-J)スコア、抗精神病薬の投与量、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコア、社会機能評価尺度の日本語版(SFS-J)の各サブスケールに影響を及ぼす因子を評価するため、単変量解析および多変量解析を用いた。ボンフェローニ補正を用いて、単変量解析の各因子との相関を評価した。多変量解析では、ステップワイズ法を用いて、独立変数を選択した。各モデルのサンプルサイズを考慮し、ステップワイズ法で抽出される変数を最大3つに設定した。また、SFS-Jサブスケールスコアと各因子の標準偏回帰係数(standard β)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者36例(平均年齢:57.8歳、平均罹病期間:34.8年、総入院期間:196.7ヵ月)のデータを分析した。・単変量解析では、7つのSFS-Jサブスケールとの有意な関連が認められた。多変量解析では、そのうち3つのみに有意な関連が認められた。・多変数モデルでは、BACS-Jの言語流暢性とSFS-Jのひきこもり、対人関係、就労との間に正の相関が認められた。・PANSSスコア、IQスコア、抗精神病薬の投与量には、SFS-Jサブスケールスコアとの明らかな関連は認められなかった。

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新経口薬camizestrant、ER+進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、進行乳がんに対して内分泌療法による治療歴があり、エストロゲン受容体(ER)陽性の局所進行または転移乳がんを有する閉経後の患者を対象に、フルベストラント500mgと比較して、75mgおよび150mgの両用量で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示したと発表した。なお、camizestrantの忍容性は良好であり、安全性プロファイルは過去の試験で認められたものと一貫しており、新たな安全性上の懸念は確認されていない。 camizestrantは、強力で経口投与可能なSERDかつERへの完全拮抗薬であり、ER活性型変異を含む幅広い前臨床モデルで抗がん活性を示している。第I相臨床試験(SERENA-1試験)では、camizestrantの忍容性が良好であり、単剤療法またはCDK4/6阻害薬パルボシクリブとの併用療法として投与したときに有望な抗腫瘍プロファイルを有することが示されている。 今回結果が発表されたSERENA-2試験は、ER陽性HER2陰性の進行乳がん患者を対象に、複数の用量のcamizestrantをフルベストラントと比較して評価する、無作為化非盲検並行群間多施設共同第II相臨床試験。主要評価項目は、フルベストラント(500mg)との比較によるcamizestrant(75mg)のPFS、およびフルベストラントとの比較によるcamizestrant(150mg)のPFSであり、Response Evaluation Criteria In Solid Tumours(RECIST)ガイドライン第1.1版の定義に従い評価される。240例をcamizestrant群またはフルベストラント群に無作為に割り付け、病勢進行が認められるまで治療を実施した。副次評価項目は、24週目の安全性、客観的奏効率および臨床的ベネフィット率(CBR)など。本試験の詳しい結果は、今後の医学学会で発表される予定となっている。 また、1次治療中にESR1遺伝子変異が検出されたHR陽性の転移乳がん患者を対象にcamizestrantとCDK4/6阻害剤(パルボシクリブまたはアベマシクリブ)の併用療法を評価する検証的第III相臨床試験であるSERENA-6試験や、HR陽性の局所進行または転移乳がんへの1次治療におけるcamizestrantとパルボシクリブの併用療法を評価する第III相SERENA-4試験などが実施されており、SERENA-6試験の適応症は米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定を付与されている。

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フォシーガ、心不全に関する新たなエビデンスをAHA2022で発表/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日のプレスリリースで、第III相DELIVER試験において、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)によって駆出率が軽度低下または保持された心不全患者の症状の負担感および健康関連の生活の質(QOL)を改善したと発表した。 第III相DELIVER試験の事前に規定された解析結果から、プラセボ群と比較して標準治療にフォシーガを追加した併用療法(フォシーガ群)で、症状負荷、身体的制限およびKCCQ平均スコアによる評価においてQOLが改善した。こちらは治療開始から1ヵ月という早期の治療ベネフィット達成となっていた。このベネフィットは8ヵ月時点でも維持されており、プラセボ群と比較して、総症状スコアで平均2.4点、身体的制限で1.9点、臨床サマリースコアで2.3点、全体サマリースコアで2.1点の改善が認められた(すべてp<0.001)。また、8ヵ月時において、プラセボ群と比較してフォシーガ群で大幅な悪化を示した患者さんは少なく、多くの患者さんで、評価したKCCQドメインすべてにおいて健康状態の改善を示し、スコアの軽度(5点以上)、中程度(10点以上)、大幅(15点以上)な増加が確認されている。第III相DELIVER試験におけるフォシーガの安全性および忍容性プロファイルはこれまでに報告されたプロファイルと一貫していた。 結果に関しては2022年米国心臓協会学術集会(AHA2022)で発表、Journal of the American College of Cardiology誌に掲載されている。

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アスピリン潰瘍出血、ピロリ除菌での予防は一時的?/Lancet

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌は、アスピリンによる消化性潰瘍出血に対する1次予防効果があるものの、その効果は長期間持続しない可能性があることが、英国・ノッティンガム大学のChris Hawkey氏らが英国のプライマリケア診療所1,208施設で日常的に収集された臨床データを用いて実施した、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Helicobacter Eradication Aspirin Trial:HEAT試験」の結果、明らかとなった。アスピリンによる消化性潰瘍は、H. pylori感染と関連していることが知られていた。Lancet誌2022年11月5日号掲載の報告。H. pylori陽性者約5,300例を除菌群とプラセボ群に無作為化 HEAT試験の対象は、アスピリン(1日325mg以下、過去1年で28日分の処方を4回以上)の投与を受けている60歳以上の高齢者で、スクリーニング時にH. pylori C13尿素呼気試験が陽性の患者であった。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)または胃保護薬の投与を受けていた患者は、除外された。 適格患者を、H. pylori除菌群(ランソプラゾール30mg、クラリスロマイシン500mg、メトロニダゾール400mgを1日2回7日間投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、試験終了(2020年6月30日)、同意撤回または死亡まで追跡調査した。試験期間中、患者、担当医師および医療従事者、リサーチナース、試験チーム、判定委員会および解析チームは、治療の割り付けに関して盲検化された。追跡調査は、プライマリケアおよび2次医療施設における電子データを用いて実施された。 主要評価項目は、definite/probable消化性潰瘍出血による入院または死亡までの時間とし、intention-to-treat集団を対象にCox比例ハザードモデルを用いて解析した。 2012年9月14日~2017年11月22日の期間に、計3万166例がH. pyloriの呼気検査を受けた。陽性者は5,367例で、このうち5,352例が無作為化された(除菌群2,677例、プラセボ群2,675例)。追跡期間中央値は、5.0年(四分位範囲[IQR]:3.9~6.4)であった。消化性潰瘍出血による入院/死亡、最初の2.5年未満は除菌群で65%低下 主要評価項目の解析の結果、Schoenfeld検定で比例ハザード性の仮定からの有意な逸脱(p=0.0068)が認められた。すなわち、Kaplan-Meier生存曲線が治療群間で早期に分離したが、その差が時間の経過と共に減少した。そこで、無作為化後2.5年未満と2.5年以降に分けて解析した結果、主要評価項目のイベント発生率は2.5年未満において、対照群と比較し除菌群で有意に低下した。definite/probable消化性潰瘍出血と判定されたエピソードは、除菌群6件(1,000人年当たり0.92[95%信頼区間[CI]:0.41~2.04])vs.対照群17件(2.61[1.62~4.19])だった(ハザード比[HR]:0.35[95%CI:0.14~0.89]、p=0.028)。 この有益性は、死亡の競合リスクで補正後も維持されたが(p=0.028)、追跡期間が長期になると消失した(無作為化後2.5年以降でのHR:1.31[95%CI:0.55~3.11]、p=0.54)。 有害事象は5,307例から報告され、最も多かった有害事象は味覚障害(787例)であった。

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真性多血症(真性赤血球増加症)〔PV:polycythemia vera〕

1 疾患概要■ 定義真性多血症(PV)は、造血幹細胞レベルで生じる遺伝子変異により汎血球増加、特に赤血球数の著増を来す骨髄増殖性腫瘍である。■ 疫学発症率は人口10万あたり年間約2人、発症年齢中央値は65歳、男女比は約1.5:1である。■ 病因エリスロポエチン(Epo)、トロンボポエチン、顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカインのシグナル伝達に必須なJAK2の変異により、これらレセプターの下流のシグナル伝達経路が恒常的に活性化して生じる。JAK2変異は95%以上の例に検出されるが、それ以外に、TET2、DNMT3などのエピゲノム関連分子の変異がそれぞれ10~20%、5~10%にみられる。■ 症状頭痛、頭重感、赤ら顔(深紅色の口唇、鼻尖)、発熱、体重減少、倦怠感、掻痒、骨痛などがみられる。皮膚掻痒感は入浴後に悪化することが多い。血小板増加例では、四肢末端に非対称性の灼熱感を伴う発赤腫脹を来す肢端紅痛症がみられる。触知可能な脾腫が15~20%に認められる。■ 分類血栓症の発症リスクに応じて、低リスク群(年齢60未満、かつ血栓症の既往がない)と高リスク群(年齢60歳以上、血栓症の既往の、いずれか、あるいは両方を認める)に分類する。■ 予後生命予後は比較的良好であり、10年総生存率は約85%である。10年の血栓症を生じない生存率、出血を伴わない生存率は、それぞれ約90%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多血、骨髄生検所見、JAK2変異の大基準のうち3項目以上、あるいは大基準の多血と骨髄生検所見に加え、小基準である血清Epo値が低値を示すときにPVと診断する。多血はPVを最初に疑う所見である。PVの診断基準では、Hb値が男性>16.5g/dL、女性>16.0g/dL、ヘマトクリット(Ht)値が男性>49%、女性>48%、もしくは循環赤血球量が予測値の25%を超えて増加している場合を多血とする。赤血球数のみならず、PVでは好中球、血小板数も増加することが多い。PVの骨髄生検所見は過形成であり、赤芽球系、顆粒球系、巨核球系細胞の3系統の細胞の増生がみられる。ただし、3系統の細胞数の比は正常と比べてほぼ同等である。巨核球の分化障害も認めない。線維化はあってもごく軽度である。JAK2変異はPVの95%以上の例に認められる。大部分はV617F変異であり、少数例はexon12の変異を示す。大多数のPVにJAK2変異を認めるため、その存在はPV診断に有用であるものの、JAK2変異はPVに特有ではなく、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の約50%の例にも検出されることに留意が必要である。つまり、JAK2変異を認めない場合のPV診断は慎重に進めるべきであるが、逆にJAK2変異を認めた場合、PV、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症のいずれかであると言ってよい。ただし、JAK2変異の存在だけでPVとは診断できない。血清Epoは低値を示すことが多い。PV診断においてEpo値の低下の特異度は高いものの、感度は中等度である。つまり、血清Epo値が低い場合はPVである可能性が高いが、Epoが高いからといってPVを否定できるわけではない。鑑別すべき主な疾患は、相対性赤血球増加症と2次性赤血球増加症である。相対性赤血球増加症は、循環赤血球量の増大は認めないものの、脱水などによりHt値やHb値が上昇している場合をいう。嘔吐、下痢などの有無、利尿薬の服薬状況の確認が必要である。相対性赤血球増加症に分類されるストレス多血症は、中年の男性に好発し、喫煙者に多い。赤血球数やHb値、Ht値の上昇を認めるが、白血球数や血小板数は正常であり、脾腫も認めない。また、血清Epo値は上昇していることが多い。2次性赤血球増加症は、血清Epo濃度の上昇により生じる赤血球数の増加である。低酸素(高地や慢性閉塞性肺疾患、右左シャントを伴う心疾患など)が続くと、反応性に腎臓からのEpo産生が増加して、また腫瘍性にEpoが産生されると赤血球数増加を来す。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)生命予後は良好であり、治療の基本は血栓症の予防である(図)図 血栓症リスクに基づくPVの治療方針画像を拡大するはじめに心血管系合併症の危険因子(喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症など)の評価を行い、該当する場合は禁煙指導、生活習慣の改善、生活習慣病の治療を行う。増加している赤血球体積を減少させるため、原則として全例に瀉血療法を行う。ヘマトクリット値0.45未満を目標に、血圧、脈拍などの循環動態をみながら1回200~400mLの瀉血を月に1~2度のペースで行う。高齢者や心血管障害を有する例では、循環動態の急激な変化がないように、少量(100~200mL)、頻回の瀉血が望ましい。また、瀉血後に同量の補液を行うと、血行動態の変化を抑えられるだけでなく、ヘマトクリット値が希釈により低下することも期待される。これに加えて、出血や消化器潰瘍症状などの禁忌がなければ低用量アスピリン(商品名:バイアスピリン)投与により血栓症の予防をはかる。血小板数の増加がある場合、von Willebrand 因子(vWF)活性が低下していることがあり(後天性のvWF症候群)、アスピリン投与により出血を来す可能性がある。そのためvWFが30%以下の場合にはアスピリンの投与は行わない。上記に加えて、血栓症の高リスク群(年齢60歳以上、あるいは血栓症の既往がある場合)では、細胞減少療法を行う。細胞減少療法の第1選択薬はヒドロキシカルバミド(同:ハイドレア)、またはロペグインターフェロンα-2b(同:ベスレミ)である。ヒドロキシカルバミドの必要量は症例により大きく異なるため、少量から開始し、Ht<0.45となるように調節する。ロペグインターフェロンα-2bは100μgを開始用量とし、2週間に1回皮下注を行う。増量は50μgずつ行い、最大用量は500μgである。自己注射も可能である。個々の患者に応じた最大量のヒドロキシカルバミドを投与してもHt値0.45以下、白血球数10,000/μL以下、血小板数40万/μL以下にコントロールできない場合をヒドロキシカルバミド抵抗性と、ヒドロキシカルバミド投与によりHb<10g/dL、好中球数<1,000/μL、血小板数<10万/μLと血球減少が生じる場合、あるいはヒドロキシカルバミドによる下肢潰瘍などのためにヒドロキシカルバミド治療が継続できない場合を「ヒドロキシカルバミド不耐容」と呼ぶ。ヒドロキシカルバミド治療を開始された患者の20~40%はヒドロキシカルバミド抵抗性/不耐容となる。このような場合は、JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブ(同:ジャカビ)投与により、血球数のコントロールのみならず、血栓症の減少も期待できる。1回10mgを開始用量とし、1日2回経口投与する。最大用量は1回25mg(1日50mg)である。真性多血症の3~6%は2次性の骨髄線維症へと、数%の例は急性骨髄性白血病へと病型進展する。治療が一定であるにもかかわらず経過中に血球数が減少する場合や、末梢血に芽球が出現する場合は、骨髄線維症、急性白血病への移行を疑い、骨髄生検を行う。4 今後の展望PVの生命予後は比較的良好なものの、約10~20%の例が血栓症、出血を合併する。現在用いられている血栓症のリスク分類は、細胞減少療法の適応を決めるためのものであり、標準的な治療法が選択された患者における血栓症、出血の発症リスクが明らかになることが望まれる。またロペグインターフェロンα-2bやルキソリチニブ治療により、一部の症例ではJAK2V617F allele burdenの減少が認められる。JAK2V617F allele burdenが治療前値と較べ50%以上減少した症例は、そうでない症例と較べ主要血栓症、出血、骨髄線維症や急性骨髄性白血病への進展、死亡を認めない生存率が良好であることが報告されており、血栓症の予防のみならず、腫瘍量の減少を目指す治療戦略が現実的になりつつある。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2024年版(第3.1版). 金原出版;2024.2)Harrison et al. WHO Classification of Tumours of Haematolopoetic and Lymphoid Tissues 5th edition. WHO;2022. p.p40-43.公開履歴初回2022年11月10日更新2025年6月30日

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PEACEを受講しよう【非専門医のための緩和ケアTips】第39回

第39回 PEACEを受講しよう緩和ケアが広がるにつれて専門誌や書籍も増え、独学でも学びやすくなりました。一方で、緩和ケアは個別性が高かったりコミュニケーションの要素が多かったり、書籍だけでは学べない部分も多くあります。今回は、そうした部分が学べる研修会をご紹介します。今日の質問緩和ケアについて学ぶには、何をすればいいでしょうか? 緩和ケアの連携は地域の実情によって異なる部分も多く、そういった面を学ぶのは本だけでは難しく感じます。ご質問いただいた方の着眼点は素晴らしいですね。おっしゃるとおり、地域の医療機関同士の連携や、在宅療養への移行などの際には地域ごとに事情が異なります。こうした座学では学びにくい領域って、どのように学べばよいのでしょうか? そんな方にお薦めなのが、今回ご紹介する「PEACE」という研修会です。PEACEの正式名称は、「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)」と長いため、PEACEの略称や単に「緩和ケア研修会」と呼ばれています。この研修会は、厚生労働省の委託事業として日本緩和医療学会と日本サイコオンコロジー学会がコンテンツを作成しています。事前学習としてE-learningを受講し、グループワークを含む集合研修に1日参加する、というのがその内容。対象は「がん等の診療に携わるすべての医師・歯科医師、緩和ケアに従事するその他の医療従事者」です。E-learning緩和ケア概論/全人的苦痛と包括的アセスメント/がん疼痛/呼吸困難/消化器症状/気持ちのつらさ/せん妄/コミュニケーション/療養場所の選択と地域連携/ACP、看取りのケア、家族・遺族のケアが必修コンテンツです。集合研修コミュニケーションのロールプレイ/全人的苦痛や症状緩和に関するケーススタディ/療養場所の選択と地域連携に関するケーススタディ/患者を支える仕組みについてのレクチャーといった、一人では学びにくいテーマのグループワークが中心です。がん拠点病院では、年に1回以上PEACEを開催することが施設要件になっているため、どの地域でも受講可能です。開催スケジュールは各都道府県の担当部署のサイトに公開されており、「都道府県名+緩和ケア講習会」などで検索すれば出てきます。地域の基幹病院の緩和ケアに関わる医療者と一緒に学ぶことは、連携構築の上での大きな機会となるでしょう。新型コロナの影響で集合研修をオンラインで開催するケースもあり、遠方でも参加しやすくなっています。少し注意が必要なのが内容の「レベル感」です。あくまでも基本的な緩和ケアについて学ぶ研修会であり、受講者の多くが初期研修医を含めた若手です。ベテランの方からすると少し簡単に感じられるかもしれません。一人では学べないことを学び、顔の見える関係をつくるための貴重な機会として、ぜひPEACEを活用してみてください。今回のTips今回のTips地域のがん拠点病院で開催されているPEACEを受講してみましょう。PEACEプロジェクトホームページ/日本緩和医療学会

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近年の米国うつ病有病率―2015~20年調査

 うつ病は一般的に認められる精神疾患だが、致死的な状態を引き起こす可能性がある。COVID-19パンデミックによるうつ病問題の深刻化が、いくつかのデータで示されている。米国・ニューヨーク市立大学のRenee D. Goodwin氏らは、米国におけるCOVID-19パンデミックがメンタルヘルスへ及ぼす影響に対し包括的に対処するため、パンデミック前のうつ病有病率の定量化を試みた。その結果、2015~19年にかけて、うつ病治療件数が相応に増加していないにもかかわらず、うつ病患者の増加が認められており、2020年には過去1年間のうつ病患者数が米国人の10人に1人、青年および若年成人では5人に1人にまで増加していることが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、このメンタルヘルスに関する危機的状況に対処するため、エビデンスに基づく予防や介入、多面的な公衆衛生キャンペーンなどの対策が早急に必要であろうと述べている。American Journal of Preventive Medicine誌2022年11月号の報告。 12歳以上の米国人を対象とした代表的な研究である、薬物使用と健康に関する全国調査(National Survey on Drug Use and Health)の2015~20年のデータを用いて分析を行った。2015~19年における過去1年間のうつ病有病率および介助が必要なうつ病患者数を推定するため、ロバスト標準誤差(SE)を用いたポアソン回帰により時間傾向を評価した。2020年の点推定を算出したが、データの収集法が異なるため、統計傾向分析には含めないこととした。 主な結果は以下のとおり。・2020年において、過去1年間のうつ病エピソードを経験していた12歳以上の米国人は、9.2±0.31%であった。・うつ病の年齢分布は、18~25歳の若年成人(17.2±0.78%)が最も多く、次いで12~17歳の青年(16.9±0.84%)であった。・うつ病の有病率は、性別、人種/民族、収入状況、教育歴のほぼすべてのグループにおいて増加が認められたが、青年および若年成人においては最も急速に増加していた。・35歳以上のうつ病有病率は変化が認められておらず、全研究期間を通じて介助が必要なうつ病有病率は低いままであった。

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乳がんの再発恐怖を認知行動療法アプリが軽減/名古屋市⽴⼤学ほか

 患者⾃⾝で認知⾏動療法を実施できるスマートフォンアプリを⽤いることで、乳がん患者の再発に対する恐怖が軽減したことを、名古屋市⽴⼤学⼤学院精神・認知・⾏動医学分野の明智 ⿓男氏らの共同研究グループが発表した。スマートフォンのアプリを用いることで通院などの負担を⼤きく軽減でき、場所や時間を選ばずに苦痛を和らげるための医療を受けられるようになることが期待される。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版11月2日掲載の報告。 先⾏研究において、問題解決療法アプリ「解決アプリ」と⾏動活性化療法アプリ「元気アプリ」(下欄参照)を京都⼤学、国立精神・神経医療研究センターが共同で開発し、乳がん患者の再発に対する恐怖を和らげる可能性があることが⼩規模の臨床試験で⽰されていた。本研究では、乳がん患者を、通常の治療に加えて上記2つのアプリを使⽤する群と使⽤しない群に無作為に割り付け、8週後に再発に対する恐怖が和らぐかどうかを検討した。 参加対象は20~49歳の女性で、⼿術後1年以上再発のない乳がん患者。主要評価項目は8週までの再発恐怖で、副次的評価項目は24週までの抑うつと心理的ニード(⼼理的側⾯に関するケアの必要性)、外傷後成長などであった。 主な結果は以下のとおり。・447例が研究に参加し、アプリ使⽤群223例とアプリを使⽤しない群224例に割り付けられた。年齢の中央値は45歳で、約半数はフルタイムで就労していた。・アプリを使用しない群に比べ、アプリ使⽤群では、開始から4週時点で再発に対する恐怖が統計学的に有意に下がり、その効果は8週時点においても継続した(p<0.001)。8週と24週における再発恐怖に差はみられなかったことから、その効果は24週時点も継続している可能性がある。・抑うつと⼼理的ニードもアプリ使用群では有意に改善し、24週まで継続した(それぞれp<0.05)。外傷後成長では有意差はみられなかった。・⼀部の参加者に聞き取り調査を⾏った結果、副作⽤はみられなかった。 研究グループは、「分散型臨床試験という新たな研究基盤を開発して研究を行った結果、多くのフルタイムで就労されている方に参加いただくことができた。これは、がんの治療のみならず、患者さんの生活の質の向上に必要な支持療法を受けながら、仕事も両立させることを可能とすることを意味する。今後、分散型臨床試験の基盤を広く社会に実装していくことで、患者さんの負担を、体力的な側面のみならず、時間的にも経済的にも軽減しながら、支持療法の開発を加速することが可能である」とコメントした。―――――――――――――――――――<解決アプリ>7つのセッション(1つの導入セッション、4つの問題解決療法の5段階を学習するセッション、1つのトレーニングセッション、1つのエピローグセッション)から構成される。最短で4週間で完了でき、各セッションに要する時間は30分程度。患者の日常生活上の問題を分類し、具体的に達成可能な目標を定め、解決策をブレインストーミングし、解決策のメリットとデメリットを比較して、最終的に実際にやってみたい解決策を選ぶ方法を習得していく。<元気アプリ>2セッション(行わなくなった行動に気づき再挑戦するセッションと新たな行動に挑戦するセッション)から構成される。終了までに最短で2週間、標準で8週間を要する。各セッションに要する時間は週30分程度。「行動が変われば気分も変わる」という原理に基づき、喜びや達成感のある活動をすることの重要性についての学習を行い、やめてしまった楽しい活動や今までやったことのない楽しそう/新しそうな活動を実際にやってみて、その結果を評価するということを繰り返す。―――――――――――――――――――

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海外の著名医師が日本に集結、Coronary Week 2022開催について【ご案内】

 2022年12月1日(木)~3日(土)、The 8th International Coronary Congress(ICC2022)をJPタワーホール&カンファレンスにて開催する。本会は初の試みである「Coronary Week 2022」として、第25回日本冠動脈外科学会学術大会および第34回日本冠疾患学会学術集会と同時開催する。現在、以下24名のInternational Facultyの来日が決定している。―――John D. Puskas (USA)Professor of Cardiovascular SurgeryIcahn School of Medicine at Mount Sinai New York, NYChairman, Department of Cardiovascular SurgeryMount Sinai Morningside (formerly Saint Luke’s),Mount Sinai Beth Israel and Mount Sinai West (formerly Roosevelt) HospitalsNew York, NYDavid P. Taggart (UK)Professor of Cardiovascular Surgery at the University of OxfordMario F. Gaudino (USA) Faisal G. Bakaeen (USA)Stephen Fremes (USA) Bob Kiaii (USA)Husam H. Balkhy (USA) Gianluca Torregrossa (USA)Sigrid E. Sandner (Austlia) Torsten Doenst (Germany)Vipin Zamvar (UK) Piroze Davierwala (Canada)Michael E Farkouh (Canada) James Tatoulis (Australia)Ki-Bong Kim (Korea) Umberto Benedetto (UK)Gil Bolotin (Israel) Sotirios Prapas (Greece)Jeong Seob Yoon (Korea) Oh-Choon Kwon (Korea)Theodoros Kofidis (Singapore) Chusak Nudaeng (Thai)Nuttapon Arayawudhikul (Thai) Chawalit Wongbuddha (Thai)――― Program Chairの荒井 裕国氏(東京医科歯科大学 名誉教授/JA長野厚生連 北信総合病院 統括院長)は「冠動脈外科領域でこれほど多数の豪華海外メンバーが本邦に集結するイベントは初めてであり、ぜひ、この機会にジョイントセッションでの講演にご参加ください。多数のご来場をお待ち申し上げております」と参加を呼びかける。【Coronary Week 2022開催概要】●The 8th International Coronary Congress 会期:2022年12月1日(木)〜3日(土) Program Chair:荒井 裕国(東京医科歯科大学 名誉教授/JA長野厚生連 北信総合病院 統括院長/日本冠動脈外科学会 理事長) ホームページはこちら●第25回日本冠動脈外科学会学術大会 会期:2022年12月1日(木)〜2日(金) 会長:高梨 秀一郎(川崎幸病院心臓病センター心臓外科 主任部長/国際医療福祉大学三田病院 教授 心臓外科部長) ホームページはこちら●第34回日本冠疾患学会学術集会 会期:2022年12月1日(木)〜3日(土) 会長:内科系/中村 正人(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)    外科系/渡邉 善則(東邦大学医療センター大森病院 心臓血管外科) ホームページはこちら【会場】JPタワーホール&カンファレンス【参加登録】登録方法:オンライン参加登録はこちら参加費: 条件によって異なる※参加登録サイトにてご確認ください。【お問い合わせ】ICC2022 運営事務局E-mail:jacas25@nip-sec.com

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第134回 「消化器外科手術に男女の性差なし」、女性外科医たちがBMJに研究成果を発表

野球を観戦しながら年齢差、性差について考えるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本シリーズに続き、米国MLBのワールドシリーズも終わり、今年の野球シーズンもほぼ幕を閉じました。MLBではヒューストン・アストロズがフィラデルフィア・フィリーズを4勝2敗で下し、ワールドチャンピオンとなりました。アストロズは5年前の2017年に球団初の世界一となりましたが、組織ぐるみの「サイン盗み」が発覚、当時GM、監督が1年間の出場停止処分を受けており、“インチキ優勝”のレッテルが貼られていたので、まさに満を持しての世界一と言えます。また、メジャー監督歴25年、通算2,093勝のダスティ・ベーカー監督(73歳)は自身初、ワールドシリーズ史上最高齢での世界一となりました。MVPを取った新人のジェレミー・ペーニャ内野手(25歳)との年齢差は実に48歳。MLBの底力と深さを感じさせる今年のシリーズでした。そんな中、オフシーズンに入った日本では、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表対北海道日本ハムファイターズといったエキシビジョン・ゲームが各地で行われています。11月3日には東京ドームで、元大リーガーのイチロー氏(49歳、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が率いる草野球チーム「KOBE CHIBEN」と、高校野球女子選抜の試合が行われました。イチロー氏のチームと女子選抜との試合は、女子野球を盛り上げるためにイチロー氏が中心となって企画したイベントで、昨年12月に第1回が神戸で開かれています。女子選抜は今年の夏の全国高等学校女子硬式野球選手権大会に出場した選手から3年生20人が選ばれました。3年間野球を頑張った女子高校球児へのご褒美といった側面もあるようで、今後も継続される予定だそうです。私はBS-TBSで放送していた生中継を見たのですが、“草野球”にもかかわらず観客もそこそこ入っていた(報道では1万6,272人)のには驚きました。試合はKOBE CHIBENが7対1で圧勝しました(昨年は1対0で辛勝)。イチロー氏は9番・投手で出場し、131球2安打1失点、14奪三振で完投勝利。新加入した元西武ライオンズ(且つ元メジャーリーガー)の松坂 大輔氏(42歳)も4番・遊撃手として9回フル出場、打撃は4打数3安打1打点、守備もほぼ完璧で大活躍でした。40歳を超えたおじさん中心のチームが真剣に女子高生と戦い、ボコボコにしてしまう姿は一部に批判もあったようです。130キロ超の速球を投げる投手は女子高校野球の世界にはいない、とのことですが、その速球を女子高生に忖度することなくバンバン投げて、三振を取っていく姿は、何事にも常に真剣に取り組むイチロー氏らしく、私はむしろ感動を覚えました。女子選抜の選手たちも実に楽しそうにイチロー氏や松坂氏らと対戦していました。ちなみに、イチロー氏のバッティングは4打数無安打で、女子選抜の投手に完璧に封じ込められていました。イチロー氏は試合後のインタビューで、「(身体は)ボロボロです。女子野球選手のモチベーションになれば(と思い試合を企画した)。新たなステージを設けることは意義があると思う」と話していました。というわけで、今回は1ヵ月ほど前にBMJ誌に掲載された、「日本における消化器外科医の手術成績に性差がないことがわかった」という興味深い研究結果のニュースを取り上げます。女性が外科医として十分活躍できる存在であるのかを調査京都大学大学院医学研究科の大越 香江客員研究員、東京大学大学院医学系研究科の野村幸世准教授らの共同研究グループは、日本消化器外科学会による日本最大の手術データベースNational Clinical Database(NCD)を利活用した研究において、男女の消化器外科医が執刀した手術の短期成績を解析しました。日本の消化器外科医における女性の割合は6%程度(2016年当時)と少ないですが、年々増加傾向にあるそうです。しかし、指導的立場の女性消化器外科医は未だに少ないことから、男女の消化器外科医による手術成績に差があるのか、女性が外科医として十分活躍できる存在であるのかを調査するために、この研究を行ったそうです。幽門側胃切除術、胃全摘術、直腸低位前方切除術の死亡率、合併症を比較2022年9月29日、BMJオンライン版に掲載された論文1)によれば、研究の概要は以下のようなものです。2013年から2017年にかけて登録されたNCDおよび日本消化器外科学会の会員データを使用して、幽門側胃切除術(DG:18万4,238症例)、胃全摘術(TG:8万3,487症例)、直腸低位前方切除術(LAR:10万7,721症例)の手術症例の患者背景、病院の特徴、患者の術後短期成績について、執刀した外科医の性別や医籍登録後の年数などを分析。この3つの術式はNCDに患者背景や合併症の有無などが詳細に記録されており、かつ女性消化器外科医の執刀数が比較的多い術式とのことです。研究ではこれらの手術について、術後90日以内の手術関連死亡率、手術関連死亡率および術後30日以内の合併症、膵液瘻(幽門側胃切除術と胃全摘術のみ)、縫合不全(低位前方切除術のみ)の発生率を主要評価項目として解析しました。女性外科医はよりリスクの高い患者を対象に手術を施行多変量ロジスティック回帰モデルを使った患者、外科医、病院の特徴を調整後、男性外科医と女性外科医における手術関連死亡率は、幽門側胃切除術(調整オッズ比[OR]:0.98、95%CI:0.74~1.29〕、胃全摘術(同:0.83、0.57~1.19)、直腸低位前方切除術(同:0.56、0.30~1.05)のいずれにおいても差は認められませんでした。手術関連死亡率と合併症の複合についても、幽門側胃切除術(OR:1.03、95%CI 0.93~1.14)、胃全摘術(同:0.92、0.81~1.05)、直腸低位前方切除術(同:1.02、0.91~1.15)で性差はありませんでした。膵液瘻の発生率は幽門側胃切除術(OR:1.16、95%CI:0.97~1.38)と胃全摘術(同:1.02、0.84~1.23)のいずれにおいても性差はありませんでした。直腸低位前方切除術における縫合不全の発生率(同:1.04、0.92~1.18)にも性差は認められませんでした。また、女性外科医は男性外科医に比べて医籍登録後の年数が短く、腹腔鏡手術に携わる割合が少ないものの、よりリスクの高い患者(栄養不良、ステロイド長期服用、疾患の病期が高い)に手術を施行していることも明らかになりました。なお、担当した手術数は、女性外科医は圧倒的に少なく、全手術の5%しか施行していませんでした。ちなみに、別の研究では、難易度が高い手術ほど女性外科医の担当割合は低くなる傾向が出ていたとのことです。「新規技術を医局で導入するときは、まず男子に先にやらせる」論文掲載に先立ち9月27日に開かれた記者会見で、大越氏らは「女性は手術を執刀するのに適していないと考えられ、外科医になりたいと思っても歓迎されないという話がよくあった。しかし、今回の分析では、術後死亡率や合併症率に執刀医の性別による有意な差はなく、女性も同様に手術スキル向上に成功していることがわかった。今後、手術トレーニングの機会や執刀数、昇進の機会などにおいて男女の平等が実現すれば、女性消化器外科医の技術はさらに向上すると思われる」とコメントしました。なお、女性外科医による腹腔鏡下手術が少なかった点について大越氏は「女性消化器外科医にはそもそも腹腔鏡手術困難症例の割り当てが多く、腹腔鏡技術を習得する機会が少なかった可能性がある」と話し、その背景として野村氏は「新規技術を医局で導入するときは、まず男子にやらせるといった状況もある」と指摘していました。心臓外科や脳神経外科など他の分野でも同じ状況?“男の世界”で苦闘する女性医師の問題については、本連載でも医学部入試に関連して、「第94回 昨年の医学部入試で男女別合格率が逆転!医師が「An Unsuitable Job for a Woman」でなくなる日は本当に来るか(前編)」、「第95回 同(後編)」などで書きました。今回のBMJへの論文掲載で個人的に驚いたのは、10年ほど前、私が女性の外科系医師のキャリアパスをテーマとした座談会の司会をした時に登場してもらった女性消化器外科医が、この論文の共著者の1人だったことです。消化器外科の技術を磨くことに加え、女性外科医の地位向上にも一貫して取り組まれていることに感服しました。今回の論文を読む限り、消化器外科の手術は野球とは違い、そのパフォーマンスに性差はないようです。消化器外科に限らず、心臓外科や脳神経外科など他の分野でも同じ状況なのでしょうか。医師の働き方改革が進められる中、こうした研究は今後ますます重要になってくるに違いありません。野球シーズンの終わり、イチロー氏が女子野球の技術向上に尽力する姿を見ながら、そんなことを考えた週末でした。参考1)Okoshi K, et al. BMJ 2022;378:e070568.

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非感情性精神病患者の就労に対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬の使用が初回エピソード非感情性精神病(nonaffective psychosis)の就労障害低下と関連しているかを明らかにするため、カナダ・オタワ大学のMarco Solmi氏らは、検討を行った。その結果、初回エピソード非感情性精神病に対する抗精神病薬(とくに長時間作用型注射剤)の使用は、未使用の場合と比較し、就労障害リスクを30~50%低下させ、この影響は初回診断5年超でも継続していることを報告した。このことから著者らは、非感情性精神病の初回エピソード後、できるだけ早期に抗精神病薬治療を開始することの意義を強調した。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月6日号の報告。 16~45歳の初回エピソード非感情性精神病患者2万1,551例を対象に、抗精神病薬の使用と病気による欠勤または障害年金リスクとの関連を評価するため、最長11年間(2006~16年)のフォローアップ期間を設けたスウェーデン全国コホート研究を実施した。被験者内分析を採用し、選択バイアスを除外するため各個人自身を対照群とし、時間により変化する因子で調整した後、層別Cox回帰モデルを用いて分析した。主要アウトカムは、就労障害(病気による欠勤または障害年金)とし、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、初回エピソード非感情性精神病患者の45.9%に就労障害が認められた(フォローアップ期間中央値:4.8年)。・抗精神病薬使用患者は、未使用患者と比較し、就労障害リスクが低かった(aHR:0.65、95%CI:0.59~0.72)。・調整済みHRが最も低かった因子は、長時間作用型注射剤抗精神病薬の使用(aHR:0.46、95%CI:0.34~0.62)、経口アリピプラゾールの使用(aHR:0.68、95%CI:0.56~0.82)、経口オランザピンの使用(aHR:0.68、95%CI:0.59~0.78)であった。・長時間作用型注射剤の使用は、最も使用頻度の高かった経口抗精神病薬であるオランザピンと比較し、就労障害リスクが低かった(aHR:0.68、95%CI:0.50~0.94)。・調整済みHRは、診断から2年未満、2~5年、5年超の場合で同様であった。

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iPhoneを使った眼科検査の精度はいかに?

 モバイル網膜カメラで撮影した画像は視神経乳頭陥凹拡大の検出において、対面診療での眼科検査と比較して、有用であることが報告された。Cureus誌2022年8月17日号掲載の報告。 米国および世界における失明は予防可能であるが、健康保険の欠如や健康リテラシーの低さにより、眼科医療を受けられない人々が多く存在する。米国・NewYork-Presbyterian/Weill Cornell Medical CenterのDu Cheng氏らはiPhoneなどのデバイスおよび3Dプリンターでモバイル網膜カメラを開発し、ニューヨーク市で眼科検査のスクリーニングイベントを実施した。 参加者は112人で、現地で眼科医の監督の下、訓練を受けた医学生により近視・遠視、瞳孔反射、眼球運動、眼圧に関してスクリーニングが実施された。すべての参加者に、モバイル網膜カメラでの網膜写真(拡張後)の撮影後、眼科医によって間接検眼鏡による拡張眼底検査が行われた。 主な結果は以下のとおり。・モバイル網膜カメラの画質について眼科医の評価は「良好」が56%、「適切」が41%、「不適切」が3%であった。・遠隔健康眼科評価の有効性について、対面眼科医の読影に基づく遠隔画像による視神経乳頭陥凹拡大の検出感度は92%であり、一致の特異度は83%であった。・対面眼科医は評価した86人のうち34人をさらに他の眼科医に紹介するよう勧めた。一方、遠隔画像を使用した眼科医は86人の評価対象者のうち42人をさらに他の眼科医に紹介するよう勧めた。よって、遠隔画像の感度は71%であり、特異度は65%であった。 著者らは「この装置は持ち運びができ、価格も手頃で、眼科医のトレーニングが比較的少ない人でも使用することができる。この手頃な価格のモバイル網膜カメラの有用性を実証し、十分な医療サービスを受けていない人々を対象とした地域のスクリーニングイベントで遠隔健康眼科評価を行うことにより、病気を発見し長期ケアにつなげることができるだろう」と述べている。

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ラブリズマブ、視神経脊髄炎スペクトラム障害患者で73週間再発ゼロを達成/アレクシオン

 アレクシオンは、2022年11月2日付のプレスリリースで、第III相CHAMPION-NMOSD試験において、ラブリズマブを投与された抗アクアポリン4抗体陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害(以下、NMOSD)成人患者群が、外部対照であるエクリズマブのPREVENT試験のプラセボ群と比較して、再発リスクが有意に低いことが示されたことを2022年欧州多発性硬化症学会(ECTRIMS)会議で発表されたと報告した。 CHAMPION-NMOSD試験は、成人患者(58例)を対象としてラブリズマブの安全性および有効性を評価する非盲検第III相多施設国際共同試験である。NMOSDの再発は長期的な機能障害をもたらす可能性があり、またすでに有効な治療選択肢が存在していたため、本試験では倫理的理由からプラセボ対照群が設定されず、ラブリズマブ投与群は、外部対照としてエクリズマブのPREVENT試験のプラセボ群と比較された。本試験の主要評価項目は、独立評価委員会により判定された初回の治験中再発までの期間と設定されており、ラブリズマブを投与された患者は全員、73週(中央値)にわたる治療期間を再発と判定されることなく経過した(再発リスク低下率:98.6%、ハザード比:0.014[95%信頼区間[CI]:0.000~0.103]、p<0.0001)。48週時点の無再発率は、外部対照のプラセボ群では63%であったのに対し、ラブリズマブ群では100%であった。また本試験では、独立評価委員会により判定された治験中再発の年間再発率(判定された再発数の合計を患者年数の合計で割った値)や、Hauser Ambulation Index(可動性の評価尺度)で測定された可動性(歩行機能)のベースラインからの臨床的に重要な悪化などの副次評価項目も達成された。 全体として、ラブリズマブの安全性および忍容性は、これまでの臨床試験や実臨床下での使用時の結果と一致しており、新たな安全性の懸念は認められなかった。最もよく見られた(患者の10%以上)有害事象(AE)は、COVID-19(24%)、頭痛(24%)、背部痛(12%)、関節痛(10%)、尿路感染(10%)であった。COVID-19 症例はすべて非重篤であり、ラブリズマブとは無関係と見なされている。髄膜炎菌感染症が2例報告されたが、2例とも後遺症なく完治し、1例は試験を継続している。56例の患者が、延長投与期に移行し、現在も治療を継続している。 NMOSDは希少疾患であり、脊髄や視神経などの中枢神経系に影響を与える自己免疫疾患である。ほぼすべてのNMOSD患者が神経症状の新規出現や悪化などを引き起こす再発を繰り返し経験し、各再発は重度かつ予測不能で、障害が一生残ることもある。 CHAMPION-NMOSD試験の主任治験責任医師であるSean J. Pittock氏は「CHAMPION-NMOSD試験では、73週間(中央値)の治療期間にわたって再発が見られなかった。これは、ラブリズマブの8週間ごとの投与によって再発リスクが持続的に低下しうることを示しているとともに、NMOSDの治療におけるC5補体阻害の有効性を強調するものだ」と述べた。また、NMOSDを対象とした Guthy-Jackson Charitable Foundationのメディカルアドバイザーの座長でもあるMichael Yeaman氏は、「近年、抗AQP4抗体陽性のNMOSD患者に安全かつ有効な治療を提供する活動において、有意義な進展が見られている。この希少疾患は、可動性、視力、筋力、平衡機能など、日常生活のあらゆる面で妨げとなる可能性があるが、患者やその家族と日々接する中で得られる知見に基づき、革新的な研究や臨床試験を続けることで、個々のニーズや生活習慣に合った新たな治療の選択肢を発展させ、患者を力付けることができる」と述べた。アレクシオンのシニア・バイスプレジデントであり、開発・安全性部門長であるGianluca Pirozziは、「CHAMPION-NMOSD試験は、希少疾患を対象とした科学的に厳密で臨床的にも意義ある臨床試験のデザイン、および実施に必要なイノベーションを達成した注目すべき実例となる。本試験では、患者の声を聞き、保健当局と連携しながら、患者のニーズを第一に考え、患者にとって最も重要な指標を評価した。今回得られた有意義な結果に加え、ラブリズマブがNMOSDのコミュニティのために治療を向上させうることを大変喜ばしく思う」と語った。

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EVARデバイス監視モデルがリスク評価に有望/BMJ

 腹部大動脈瘤の血管内修復術(EVAR)後の長期にわたるデバイス(グラフト)監視に、リンク登録した医療費支払請求データを活用したところ、個々のデバイスの再手術リスクを特定したことが示された。米国・ダートマス-ヒッチコック・メディカルセンターのPhilip Goodney氏らによる検討の結果で、著者は「デバイスメーカーおよび規制当局は、リンク登録データソースを活用すれば、心血管手術後の実臨床における長期アウトカムの積極的なモニタリングが可能である」と述べ、今回の検討結果が、将来的なデバイス監視モデルになりうることを示唆した。BMJ誌2022年10月25日号掲載の報告。EVAR治療使用の4種のデバイスを長期監視、再手術・破裂を評価 研究グループは、実臨床での大動脈エンドグラフトの長期アウトカム(腹部大動脈瘤の再手術およびlate破裂)の評価に、リンク登録医療費支払いデータを用いることを検討する観察サーベイランス試験を行った。米国メディケア医療費とリンクするVascular Quality Initiative Registryを設定(2003~18年、282施設が参加)し検討した。 被験者は2万489例で、EVAR治療では4種のデバイスが使用されており、8,310例(40.6%)がExcluder(Gore製)、6,606例(32.2%)がEndurant(Medtronic製)、3,281例(16.0%)がZenith(Cook Medical製)、2,292例(11.2%)がAFX(Endologix製)を使用した。このうち、AFXは2014年後期に改良が行われたため、同群は2群に分類し(初期AFX群942例、後期AFX群1,350例)、他のデバイス群と比較した。検討には傾向マッチングCoxモデルが用いられた。 主要評価項目は、EVAR後の腹部大動脈瘤の再手術および破裂の発生。全患者(100%)が、登録または医療費支払ベースもしくは両者を介したアウトカム評価を完遂した。当局の警告発出は2017年、対して開発モデルのリスク特定時期は2013年半ば 被験者の年齢中央値は76歳(四分位範囲[IQR]:70~82)、男性が80.0%(1万6,386/2万489例)、追跡期間中央値は2.3年(IQR:0.9~4.1)であった。 5年粗再手術率は、初期AFX群がその他デバイス群と比べて有意に高率であった。初期AFX群27.0%(95%信頼区間[CI]:23.7~30.6)に対し、Excluder群14.9%(13.7~16.2)、Endurant群19.5%(18.1~21.1)、Zenith群16.7%(15.0~18.6)であった。 初期AFXでEVARを受けた患者の再手術リスクは、傾向マッチングCoxモデルでのその他デバイスとの比較において有意に高率であり(ハザード比[HR]:1.61、95%CI:1.29~2.02)、外科医レベル変数(臨床でのAFXグラフト使用が33%超)を用いた解析でも同様であった(1.75、1.19~2.59)。 リンク登録された医療費支払請求データが、早期AFXデバイスの再手術リスク増大を特定したのは2013年半ばであり、2017年に米国で最初の規制当局の警告が発出されるよりかなり前であった。

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線維組織に対する追加焼灼 - 心房細動アブレーションはさらに進化したか?(解説:香坂俊氏)

(1)加齢と線維化と心房細動 心房細動は心筋組織の「線維化」にその根本原因があるとされている。実はどこの臓器でも加齢と線維化の進行は表裏一体であり、心臓の場合、その典型的な表現型が心房細動であるという言い方もできる(下記参照)。―――――――――――――――――――・線維化が進んだ心房では、洞房結節からの信号が線維組織に邪魔されたり、ほかの場所からの信号が混ざったりして、その結果小さな不規則なリエントリー回路が形成される。・加えて、線維化が進んだ心臓は急速に大きくなっていき(リモデリング)、余計に伝導が房室結節に伝わりにくくなり、さらに心房細動が起きやすくなる。『極論で語る循環器内科 第3版』1章より許可を得て抜粋―――――――――――――――――――(2)線維組織をターゲットとするアブレーションは有効か? 近年、この線維組織がMRIによって可視化することができるようになっている。今回執筆を依頼いただいたDECAAF II試験では、心房細動カテーテルアブレーション(焼灼)治療を行う際に、追加でこの線維組織を「焼く」ことによって、治療成績を向上させることができるかどうか、ランダム化によって検討している。 しかし、結果から先に申し上げると、線維組織を追加焼灼した群と通常焼灼群を比較しても、90日の心房細動の再発率に差は認められず(43.0% vs.46.1%、P=0.63)、一方で手技関連の合併症(とくに脳梗塞)は増えてしまった(1.5% vs.0%)。同論文の著者たちは結語に率直に「この研究結果は MRIガイド下のカテーテル焼灼術の使用を支持しない(findings do not support the use of MRI-guided fibrosis ablation)」と記している。(3)DECAAF II試験がもたらしたもの 意欲的なデザインであり、線維組織を焼灼のターゲットとするということも非常に理に適っていたように考えられたのだが、予想されるような結果はもたらされなかった。心房細動アブレーションは優れた手技であり、心房細動のリズムコントロール治療に革命的な変化をもたらしたが、その基本手技から再発率をさらに下げることは容易ではない(とくに今回対象とされた永続性心房細動に対しては)。 しかし、自分はこのDECAAF II試験が実施されたことには大きな意義があったと考えている。「線維組織周辺を焼いたほうがよいような気がする」という、理には適っているが仮説にすぎない命題を、多施設共同RCTに落とし込み、検証を行う姿勢というのは見習うべきではないかと思う。最終的に10ヵ国44施設から843例の患者さんを登録したと記載されているが、こうした方々の協力があってこそ、いわゆる標準治療は真に「標準(スタンダード)」であると広く認知されるのではないだろうか。

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英語で「経口摂取ができている」は?【1分★医療英語】第53回

第53回 英語で「経口摂取ができている」は?The patient is tolerating oral intake very well. (患者さんは、経口摂取がしっかりできています)Okay, then let’s plan to discharge him next week.(良いですね。それでは、来週退院の予定としましょう)《例文1》I will advance his diet because he is tolerating puree diet.(ペースト食が摂取できているので、食上げします)《例文2》Let’s make her NPO(nothing per os)for now as she is not tolerating PO.(経口摂取ができていないので、いったん絶食にしておきましょう)《解説》「経口摂取ができている」を直訳しようとすると、“The patient can eat~”というようなフレーズが思い浮かぶかもしれません。確かにそれでも意味は通じるでしょうが、医療現場では今回紹介した“tolerate”という動詞をよく用います。この“tolerate”を使うことで、「これまで食事が摂れていなかった人」、あるいは「食事摂取が十分できるかどうかわからなかった人」が、「十分耐性がある」「十分にその力がある」ことを確認した、というニュアンスを出すことができます。“tolerate”という動詞は「耐える」という訳が充てられることが多く、知らないと咄嗟に使うのは難しいかもしれませんが、実はよく医療現場で用いられる言葉で、患者さんの回復過程に相性の良い動詞です。他にも、「可能な範囲で食上げをしてください」という場合に、“Please advance his diet as tolerated.”というフレーズを使うことがあります。“tolerate”を“as”と一緒に用いて“as tolerated”とすると「できる範囲で」「可能な範囲で」といった意味合いを持たせることができます。医師が看護師さんへの指示を出す場合などによく用いる表現ですので、これもあわせて覚えてしまいましょう。講師紹介

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第137回 コロナワクチン買い占めが130万人の命を奪った/あの飲み物でコロナ予防?

COVID-19ワクチン買い占めが130万人の命を奪った去年2021年の終わりまでに世界のおよそ2人に1人(約50%)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)ワクチンの一通り(2回)の接種を済ませました。しかしその普及率は一様ではなく、高所得国では75%近くに達しているのに対して低所得国ではわずか2%足らずです。富裕国は去年末時点でCOVID-19ワクチンを余分に貯め込み、比較的重症化し難い幼い小児への接種に取り掛かっています。かたや貧しい国はというとCOVID-19で死ぬリスクが高い人への接種も十分に行き届いていないありさまです。COVID-19ワクチン普及の世界的な格差は不必要な死をおそらくもたらしたとすでに周知されています。そのような不必要な死がどれほど生じたかを推定することは将来の不可避な疫病流行への備えの準備に役立つはずです。そこで英国ワーウィック大学の数理疫学専門家Sam Moore氏等は世界154ヵ国の死亡やワクチン普及のデータを使い、金ではなく需要に応じてCOVID-19ワクチンが隈なく世界の人々の手に渡っていたらSARS-CoV-2感染やその重症度はどうだったかを予想しました。その結果、COVID-19ワクチンが世界で完全に公平に分配されていたとしたら2021年にSARS-CoV-2感染は約3億例少なく、130万人はCOVID-19で死なずに済んだと推定されました1-4)。さらには変異株を封じる効果も期待できるようです。SARS-CoV-2オミクロン株BA.5が流行したかと思えば早くも次はBA.5から分家したBQ.1やその近縁種BQ.1.1の感染が世界的な広がりを見せており、米国では先週5日までの一週間のCOVID-19診断数のおよそ35%を占めるまでに増えています5)。その前の週のBQ.1とBQ.1.1感染の割合はおよそ23%でした。欧州でも増えており、まもなく感染の大半を占めるようになり、向こう数週間か数ヵ月の感染例増加を後押しするとみられています6)。COVID-19ワクチンをより公平に共有すれば、SARS-CoV-2感染がいっそう減少し、そのような次から次へのSARS-CoV-2変異株台頭を遅らせうることも今回の研究で示唆されました4)。金払いではなく需要に応じてワクチンを分配することで皆が恩恵を受けうるのであり1)、各国の政策決定者は今回の研究の推定結果を頼りに次の流行にもっと優れた手立てを講じることができそうです4)。コーヒーでCOVID-19予防?COVID-19ワクチンを世界に公平に広めるには各国の協力などのひと手間が今後必要ですが、すでに世界に広まるある飲み物がもしかしたらCOVID-19予防効果を担うかもしれません。その飲み物とは、それを朝飲まないことには一日が始まらないという方も多いであろうコーヒーです。その成分・5-caffeoyl quinic acid(慣用名はクロロゲン酸)がコーヒー1杯分ほどに含まれる量の濃度でSARS-CoV-2のスパイクタンパク質と細胞のACE2受容体の結合を確実に阻止し、細胞感染を防ぐことがドイツのヤーコプス大学の化学者Nikolai Kuhnert氏等の生化学実験で示されました7)。実験ではコーヒー1杯を200mLと仮定しました8)。その量のコーヒーにはクロロゲン酸がおよそ100mg含まれます。コーヒーに実際のところCOVID-19予防効果があるのかないのかの判断は化学者である自分にはできないが、疫学試験でその答えが判明するだろうとKuhnert氏は言っています8)。同氏等は社会学などの他の分野の研究者に相談する予定です。参考1)Moore S, et al. Nat Med. 2022 Oct 27. [Epub ahead of print]2)Quantifying the effect of inequitable global vaccine coverage on the COVID-19 pandemic / Nature3)Daily briefing: Vaccine hoarding might have cost 1.3 million lives / Nature 4)COVID vaccine hoarding might have cost more than a million lives / Nature 5)COVID variants BQ.1/BQ.1.1 make up 35% of U.S. cases / Reuters6)Cases of BQ.1, BQ.1.1 COVID variants double in U.S. as Europe warns of rise / Reuters7)Schmidt D, et al. Food Funct. 2022;13:8038-8046.8)Research at Jacobs University: Coffee could offer protection from catching COVID-19 / Eurekalert

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バイスタンダー心肺蘇生実施率に人種/民族差/NEJM

 米国において、バイスタンダー(現場に居合わせた人)によって自宅や公共の場で心肺蘇生(CPR)を受けた院外心停止者は、心停止が起きた地域の人種/民族構成や所得レベルに関係なく、黒人・ヒスパニック系が白人と比べて少なかった。米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のR. Angel Garcia氏らが、院外心停止者の前向き多施設登録「Cardiac Arrest Registry to Enhance Survival:CARES」のデータを用いた解析の結果を報告した。院外心停止では、バイスタンダーCPRの実施率の差が、生存率の差に寄与することが知られており、その実施率が院外心停止者の人種/民族間で差があるかを理解することは、対策を検討するうえで非常に重要とされていた。NEJM誌2022年10月27日号掲載の報告。院外心停止者の前向き多施設登録を用い、バイスタンダーCPRの実施率を解析 CARESは、米国疾病予防管理センター(CDC)とエモリー大学によって設立された、院外心停止者の前向き多施設登録で、現在、約1億6,700万人(米国人口の51%に相当)の住民が含まれている。 研究グループは、CARESにおいて2013年1月1日~2019年12月31日に市中で目撃された成人の非外傷性院外心停止11万54件を特定し、階層的ロジスティック回帰モデルを用いて、自宅や公共の場におけるバイスタンダーCPRの実施率を黒人・ヒスパニック系と白人で比較分析した。全体での実施率と、居住地域の人種/民族構成および所得別の実施率も解析した。 居住地域は、白人が多い地域(住民の80%超)、黒人・ヒスパニック系が多い地域(住民の50%超)または混合地域、ならびに高所得(年間世帯所得中央値が8万ドル超)、中所得(4万~8万ドル)、低所得(4万ドル未満)に分類した。黒人・ヒスパニック系は白人より自宅で26%、公共の場で37%低い 11万54件中3万5,469件(32.2%)が黒人・ヒスパニック系であった。 自宅でのバイスタンダーCPR実施率は、黒人・ヒスパニック系(38.5%、1万627/2万7,573件)が白人(47.4%、2万6,899/5万6,723件)よりも低く(補正後オッズ比[OR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.72~0.76)、公共の場でも同様であった(45.6% vs.60.0%、補正後OR:0.63、95%CI:0.60~0.66)。 黒人・ヒスパニック系へのバイスタンダーCPR実施率は、白人が多い地域の自宅(補正後OR:0.82、95%CI:0.74~0.90)および公共の場(0.68、0.60~0.75)のいずれにおいても白人と比較して低値であるのみならず、黒人・ヒスパニック系が多い地域(自宅の補正後OR:0.79[95%CI:0.75~0.83]、公共の場の補正後OR:0.63[95%CI:0.59~0.68])や、混合地域(0.78[0.74~0.81]、0.73[0.68~0.77])でも同様であった。 また、所得レベル別でもすべてのレベル層で、自宅ならびに公共の場における黒人・ヒスパニック系へのバイスタンダーCPR実施率が白人より低かった。 なお、著者は研究の限界として、バイスタンダーの人種についての情報がなかったこと、バイスタンダーがCPRを実施しなかった理由についての情報が利用できなかったことなどを挙げている。

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【第221回 】液体窒素を飲むとどうなるか?

液体窒素を飲むとどうなるか?いらすとやより使用私の子供がとあるYouTubeチャンネルの動画を見ていたとき「液体窒素を口に含んでも大丈夫」と言っていました。確かにそうかもしれない、と私も思いました。熱したフライパンに水を垂らしたとき、水滴は玉になったままフライパンの上を転がるのと同じ原理ということです。しかし、間違って飲んでしまったらどうなるんだろう…。ちょっと気になったので調べてみました。まとまった報告はなく、症例報告をいくつか紹介してみます。Kim DW.Stomach Perforation Caused by Ingesting Liquid Nitrogen: A Case Report on the Effect of a Dangerous Snack.Clin Endosc. 2018 Jul;51(4):381-383.これは13歳の男児が遊園地でお菓子を食べたところ、突然腹痛を訴えて来院した症例報告です。このお菓子は、液体窒素でキンキンに冷えていたことがわかりました。腹部CT検査で、消化管穿孔を起こしていることがわかり、緊急手術で胃穿孔が判明しました。液体窒素そのものか、ただ冷えていたことが原因なのかどうか、何とも言えない症例ではありますね。Zheng Y, et al. Barotrauma after liquid nitrogen ingestion: a case report and literature review.Postgrad Med. 2018 Aug;130(6):511-514.これは、25歳男性が液体窒素を含んだ自家製飲料を摂取した後に、急性腹症を起こした症例です。精査の結果、胃穿孔を起こしていることがわかり、緊急手術となりました。Pollard JS, et al.A lethal cocktail: gastric perforation following liquid nitrogen ingestion.BMJ Case Rep. 2013 Jan 7;2013:bcr2012007769.液体窒素を含むアルコール飲料を摂取した後に、胃穿孔を起こした18歳女性の症例報告です。胃の損傷の程度が大きかったため、Roux-en-Y再建による胃全摘術が必要でした。胃穿孔ばかり続きます。痛そうです。胃全摘はかなりシビアですね。Knudsen AR, et al.Gastric rupture after ingestion of liquid nitrogen.Ugeskr Laeger. 2009 Feb 9;171(7):534.28歳男性が、煙を吐き出して周囲を驚かせるために液体窒素15mLを飲み、その後重度の腹部膨満と縦隔気腫があったという症例報告です。小弯部を中心に胃が破裂していたため、開腹手術で縫合されました。上部消化管内視鏡検査では、冷却による潰瘍性病変などはありませんでした。おや?4つ目の報告は、ちょっと胃潰瘍とは異なる機序のようですね。実は、液体窒素による胃の傷害は、冷却による粘膜障害ではないとされています。ドライアイスなどを飲み込むと、長時間冷温に曝露されるので胃潰瘍のリスクがあるのですが、液体窒素はおそらくそれよりも早く気化します。液体窒素は、加熱されると数百倍に膨張することが問題になります。これによって、胃が極度に膨張して傷害を受けるのではないか、ということです。まぁ…どちらの機序が優勢にしても、こんなもんを飲み込むなんて狂気の沙汰ですから、決してマネしないように。ちなみにドライアイスを飲んだらどうなるかというと…実はこの連載の3回目で紹介しています。

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