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3~17歳へのコロナワクチン、オミクロン優勢期の効果は?/BMJ

 アルゼンチンで、3~17歳の小児・青少年に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(mRNA-1273[モデルナ製]、BNT162b2[ファイザー製]、BBIBP-CorV[Sinopharm製])2回接種の有効性について調べたところ、死亡に対する予防効果は、優勢となっている変異株の種類にかかわらず、小児・青少年ともに高値を維持していたことが明らかにされた。ワクチン接種後の短期間におけるSARS-CoV-2感染予防効果については、オミクロン変異株が優勢であった間は低かったこと、また時間の経過とともに同効果は急激に低下することも明らかにされた。アルゼンチン・保健省のJuan Manuel Castelli氏らが、約14万人のケースとそのマッチング対照を解析した、診断陰性例コントロール試験の結果で、BMJ誌2022年11月30日号で発表された。アルゼンチンで84万例超を対象に診断陰性例コントロール試験 研究グループは、アルゼンチンの国内サーベイランス・システムのデータベースと、ワクチンレジストリを基に、診断陰性例コントロール試験を行い、小児(3~11歳)・青少年(12~17歳)へのCOVID-19ワクチン2回接種の、SARS-CoV-2感染やCOVID-19関連死に対する有効性を推定し評価した。 対象は、2回のCOVID-19ワクチンのプライマリ接種対象者で、SARS-CoV-2感染歴がなく、2021年9月~2022年4月にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査または迅速抗原検査を受けた3~17歳、84万4,460例。マッチング対照の照合を行い、23万1,181例のケースのうち13万9,321例(60.3%)について解析を行った。 主要アウトカムは、SARS-CoV-2感染とCOVID-19関連死だった。条件付きロジスティック回帰分析で、ワクチン2回接種者の非接種者に対するオッズ比(OR)を推算した。ワクチン有効率は、(1-OR)×100%で算出した。小児の対SARS-CoV-2感染有効率、デルタ株優勢期間は61%、オミクロン株では16% デルタ変異株優勢期間のSARS-CoV-2感染に対するCOVID-19ワクチン2回接種の有効率は、小児が61.2%(95%信頼区間[CI]:56.4~65.5)、青少年が66.8%(63.9~69.5)だった。オミクロン変異株優勢期間は、それぞれ15.9%(13.2~18.6)、26.0(23.2~28.8)だった。 ワクチン有効性は、接種後、日数経過とともに低下し、とくにオミクロン変異株優勢期間の低下は急激で、小児では、接種後15~30日で37.6%(95%CI:34.2~40.8)であったが、60日以降では2.0%(1.8~5.6)へと低下し、青少年ではそれぞれ55.8%(52.4~59.0)から12.4%(8.6~16.1%)への低下が認められた。 一方で、オミクロン変異株優勢期間の、SARS-CoV-2感染関連死に対するワクチン有効率は、小児が66.9%(95%CI:6.4~89.8)、青少年が97.6%(81.0~99.7)だった。

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年間50件!心臓移植の先進施設で学べること【臨床留学通信 from NY】第41回

第41回:年間50件!心臓移植の先進施設で学べることさて今回は、1ヵ月間行った重症心不全ローテーションについて報告します。私のいるMontefiore Medical Centerは、心臓移植をかなり積極的に行っており、年間40~50件ほどになります。日本での年間総数が50件前後であることを考えると多いとも言えますし、日本が極端に少ないとも言えます。移植前の患者さんにLVAD(左室補助人工心臓)の植え込みを行う場合もあり、その後移植になったり、また、移植を考慮しない、いわゆるDestination Therapyとして使われたりすることもあります。私は日本での移植やLVADの経験がまったくなかったので、たとえカテーテル治療に進むとしても、重症心不全が学べる施設での研修が望ましいと考え、Montefioreを選んだ経緯があります。術後患者のLVADのスピードの調整、LVADアラームの対応、はたまた移植前の患者さんの検査一式、移植後の免疫抑制剤の調整など、まったくもって未知の領域ですし、1人でそれに対応できるとは思えませんが、そういった患者さんのカテーテル検査等をすることを考えると、有意義なローテーションであったと思います。重症心不全ローテーション自体はフェローの中では忙しい部類であり、朝6時半頃に来て5~10人前後のICU一歩手前のような重症患者を自分でプレラウンドし、9時から心不全の指導医とのラウンドを2時間ほど行います。その後カルテ書き等を行い、概して夕方5時にはしっかり終わる形です。移植のスケジュールはやはり読めないもので、急に移植を始めるとなると、心臓外科ICUに入院となります。高度専門医療のアメリカでは、重症心不全の専門医もしっかりと術後管理をしていきます。これは、外科医が手術に集中できる仕組みでもあります。私は移植の専門家ではありませんが、日本とアメリカにはかなりの仕組みの違いがあります。アメリカは残念ながら薬物中毒死が多く、それによるドナーも多いのが実情です1)。待機期間も日本の3年に比べて、50日強です。それ以外に、米国ではDCD(Donation after Circulatory Death)といった方法でドナーを増やしたりもしています。実際に私のいるMontefioreのグループから、DCDドナーがDBD(Donation after Brain Death)ドナーと比べて遜色がないのではというデータを出しています2)。このような技術の進歩で救える命が広がることを期待します。参考1)NHKハートネット“臓器移植”について語りやすい世の中に2)Madan S, et al. Feasibility and Potential Impact of Heart Transplantation From Adult Donors After Circulatory Death. J Am Coll Cardiol. 2022;79:148-162.ColumnMontefioreは移植の件数がそれなりにあるので、スペインなど他国から見学者が来て、4~8週間ほど滞在しています。残念ながら、カルテの閲覧や患者さんの診察の権限はないのですが、病棟ラウンドなどオブザーバーとして参加しています。物価高もあって、滞在には金銭的負担もありますが、それぞれ自国との違いを熱心に勉強しています。ここ最近は、そんな彼らと仲良くサッカーワールドカップを観戦しています。同じ病院の循環器にドイツの人もいれば、中南米出身の人もいて、なかなか国際色豊かです。日本が勝っても迂闊に大声では喜びにくいものがあります(笑)。

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医師の今年の旅行事情と“来年こそ行きたい場所”は?【CareNet.com会員アンケート結果発表】

2022年後半には入国時の条件を緩和する国が増え、国内では旅行支援の取り組みが始まりました。一方で11月からは第8波も到来し、まだまだコロナ禍以前と同じようには旅行を楽しむ状況になっていないかもしれませんが、CareNet.comの会員医師1,000人に、現在の状況と、来年こそ行きたい旅行先についてお聞きしました。行ったor行かない?/日帰りor宿泊? 今年1年の旅行事情は「今年1年どのような旅行(出張は除く)に行きましたか?」という問いに対し、約5割(471人)の医師が「住んでいる都道府県内で日帰りの旅行をした」と回答。「住んでいる都道府県外へ1泊以上の旅行をした」(364人)という回答、「住んでいる都道府県内で1泊以上の旅行をした」(159人)という回答が続いた。一方で約2割(235人)の医師が「旅行も帰省もしていない」と回答している。上記の問いについて年代別に回答をみてみると、「住んでいる都道府県内で日帰りの旅行をした」という回答は若い年代ほど多く、「旅行も帰省もしていない」という回答は年代が高くなるほど多い傾向がみられた。「万一の感染が気になる」「医療者だけ区別するのはおかしい」などさまざまな意見医療従事者が旅行に行くことについて、感じていることや意見があるかを聞いた問いでは、さまざまな意見が寄せられた。【院内の規定が厳しい/開業医や高齢者に対応していることの難しさ】勤務先の規定が厳しすぎる(50代、内科、200床以上)個人医院では医師の感染がそのまま医療経営に関係してくるので、まだまだ医師自身および同居家族は控えたほうがいい(60代、耳鼻咽喉科、0床)開業医は休診できない(60代、内科、0床)とくに高齢者施設に勤務しているものにとっては旅行にいける環境ではない(60代、脳神経外科、200床以上)【まわりの雰囲気や万一の感染が気になる】周りの目が気になる(30代、循環器内科、200床以上)行ける雰囲気ではない。ただし世間では行っており無力感を感じる(30代、内科、200床以上)万一感染し院内クラスターの原因になるようなことがあれば、非難は避けられない。インフルエンザなみの対応とならない限り、自主規制はやめられない(50代、放射線科、1~19床)万一感染した場合の影響を考えるとまだ旅行には行きづらい。人が少ない高級ホテル等に宿泊するなど工夫している(20代、内科、200床以上)【医療者を区別すべきでない/ストレスが爆発寸前】医療従事者とそれ以外を分ける必要はない(50代、眼科、0床)医療従事者だけ我慢するというのもおかしいと思うので、リスク管理をしたうえで自由にしたらいいと思う(40代、内科、0床)国民全体が緩和に動いている中、医療従事者に対してだけ厳しいのはよろしくない。クラスターすらも受け入れる世論が必要(30代、神経内科、100~199床)そろそろストレスが爆発してしまう。ある程度の感染対策をしてなら旅行はOKだと思う(60代、循環器内科、0床)【医療者だからこそ適切な感染対策ができる/旅行自体のリスクが高いとは思わない】医療従事者だからこそ、感染対策を適切に行いながら安全な旅行ができると思う(40代、呼吸器内科、1~19床)感染リスクを最小化した少人数のものならよいのでは? 医療従事者の感染リスクというだけで旅行を自粛していたらかなり長期間行けなくなると思う(50代、精神科、200床以上)医療従事者が世間から隔離されて生活しているわけではないので、自由に行ってよいと思う(50代、消化器外科、200床以上)マスクなどの対策、食事、大声でしゃべることを避けるなど基本的な対策を守り節度のある旅行なら大いに良いのではないか(60代、内科、20~99床)旅行自体の感染リスクが高いとは思わないので、構わない気がする。医療従事者だけが批判の対象になるのはもう違うかなという気がする(30代、精神科、0床)“来年こそ行きたい場所”ベスト51位 ハワイ最も多かった回答はやはり“ハワイ”。「暖かいところで安らぎたい」「リゾートの王様といえばやはりハワイ」「しがらみから解き放たれたい」「非日常を感じたい、綺麗な海を見たい」などの声が相次いだ。「コロナ禍以前は恒例の旅行先だったから」「新婚旅行にまだ行けていないから」といった声も。2位 海外2番目に多かったのは、「どこでもいいから海外に行きたい」という回答。「しばらく行けていないから」「withコロナになってきたからそろそろ行きたい」「ずっと行ってないので願望も込めて」などの声が聞かれた。「来年でなくてもよいが、コロナ禍が収束したら行きたい」という声も。ただし、円安を嘆く声も多く寄せられた。3位 沖縄「温暖な地域かつ国内旅行に行きたい」「国内でリゾートを感じたい」など、まずは国内で非日常を味わいたいという声とともに沖縄が3位にランクイン。「青い海が見たい!」「子供にとっては初めての海になるので、きれいな海を見せてあげたい」ときれいな海への渇望を感じさせる声も。4位 北海道北海道を挙げた医師から多く聞かれたのは「美味しいものが食べたい」「海産物が食べたい」「食べ歩きしたい」という北海道グルメに期待する声。「自然を満喫したい」「ゆっくりドライブしたい」「開放的な場所で家族とゆっくり過ごしたい」と沖縄同様国内で自然を満喫したいという意見も多かった。5位 温泉とにかくどこでもいいから温泉でゆっくりしたいという声も多数。具体的な地名が上がった中では、箱根や湯布院、乳頭温泉が人気だった。蔵王や別府に有馬や加賀、鬼怒川や和倉など、全国各地の温泉地の名前が寄せられた。アンケート概要アンケート名『2022年を総まとめ&来年へ!今年の漢字と来年こそ行きたい旅行先をお聞かせください』実施日   2022年11月3日調査方法  インターネット対象    CareNet.com会員医師有効回答数 1,000件

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第139回 眼科医の手術動画提供事件、行政指導で一通りの決着、スター・ジャパンは白内障用眼内レンズ取り扱い終了へ

手術動画提供事件、個人情報保護委員会が行政指導こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この日曜日は横浜のぴあアリーナMMにナンバーガールの解散ライブに行ってきました。ナンバーガールは1995年に結成し2002年11月に一度解散(札幌ペニーレーン24にも行きました)したバンドです。コロナ前の2019年夏に17年ぶりに再結成し、コロナ禍の中、ライブ活動を続けて来たのですが、再びの解散です。リーダーの向井 秀徳氏はライブ直前の12月9日に生出演した日本テレビ「スッキリ」で、「月賦が、ローンが……となってきたら(またメンバーに)声をかけるかもしれない」」と語っていました。あのキリキリとして、人の心を刺すような独特の爆音をライブでしばらく聴けないと思うと寂しい限りですが、向井氏のことだから還暦ぐらいにまた再結成してくれるのではないかと期待しています。さて今回は、眼科医が患者に無断で白内障の手術動画を医療機器メーカーに提供し、現金を受け取っていた事件を再び取り上げます。この事件、1ヵ月ほど前の11月2日に、個人情報保護委員会(個人情報の適切な管理と利活用を監督する政府機関)が、メーカーのスター・ジャパン(千葉県浦安市)と医師の勤務先の7病院に対し、個人情報保護法に基づいて行政指導することで一段落しました。ただし、金銭を受け取っていた医師たちの処分は、個々の医療機関に任されました。白内障の手術動画を患者や勤務先に無断で繰り返し提供事件の経緯については、「第111回 手術動画提供で機器メーカーの不当な現金供与発覚、類似事件がなくならないワケとは」で詳しく書きました。発覚のきっかけはNHKの報道でした。2022年5月14日、NHKは全国の総合病院などに勤務する眼科医5人(報道当時)が、白内障の手術の動画を患者や勤務先に無断で医療機器メーカーに繰り返し提供し、現金を受け取っていたと報じました。5人は、米国の医療機器メーカー、STAAR SURGICAL社の日本法人、スター・ジャパンとの間で、この会社が製造するレンズを使用した白内障手術の動画を作成する契約を結んだ上で、手術動画を繰り返し提供、2021年までの3年間に現金40~105万円、総額で700万円を超える額を受け取っていたとのことでした。医療機器業公正取引協議会はスター・ジャパンに「厳重警告」これらの報道を受け、医療機器メーカーの業界団体で作る医療機器業公正取引協議会が調査に乗り出しました。医師への現金提供の目的が景品表示法に基づく自主規制のルールで禁じられた自社製品の販売促進だった可能性があったからです。つまり、手術動画の提供は医師にお金を渡すための口実に過ぎなかった、というわけです。医療機器業公正取引協議会は今年7月にその調査結果を公表しました。同協議会はスター・ジャパンが75人の医師に総額2,100万円余りの報酬を支払って制作したとする動画は医師に現金を提供するための名目であり販売促進が目的だったと認定、同社に最も重い「厳重警告」の処分を下しました。個人情報保護法に基づいて適切な管理や従業員の監督が求められる手術の動画さらに、個人情報保護委員会も事実関係の調査を進めていました。手術の動画は、映像や音声などから患者の特定につながるおそれがあるため、医療機関には漏えいなどを防ぐために個人情報保護法に基づいて適切な管理や従業員の監督を行うことが求められるからです。もっとも、適切でなかったからといってすぐに法律で罰せられるわけではありません。違法性がある場合、まず個人情報保護委員会が事業者に立ち入り検査などを行い、実態に応じて指導や勧告、命令を出します。そしてこの命令に違反した場合にやっと、「個人は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金」が科せられます。7つの医療機関については個人が特定されるリスクが比較的高い状態11月2日、個人情報保護委員会が調査結果を公表、全国60の医療機関で動画の管理体制に問題があったとして、一斉に注意喚起を行うなどの行政指導を行いました。個人情報保護委員会が複数の事業者を一斉に行政指導をするのは異例のことだそうです。調査結果によれば、対象となった全国60の医療機関すべてで、患者の同意を得ずにメーカーに動画を提供したり、医療機関側が動画の提供を把握していなかったりするなどの問題があったとのことです。このうち7つの医療機関については、個人が特定されるリスクが高い状態でした。スター・ジャパンには、個人情報取得の際には利用目的を特定し、本人への通知や公表をするよう指導。7つの医療機関には個人データを第三者に提供する際には本人の同意を得るほか、適切に扱う体制を整備するよう指摘しました。委員会の調査に対し報告期限を守らなかった4病院にも行政指導が行われました。さらに、国内の医療機関全体に対しても、ホームページを通じて動画の管理体制について注意喚起しました1)。この注意喚起には、手術動画が個人情報に該当するケースや、手術動画を取り扱う際に守るべきルールがまとめられています。興味がある方はご一読下さい。米国同様、リベートを罰する法律を早急に整備するべき今回の事件、不適切な現金供与については業界団体による企業への「厳重注意」、手術動画の提供については個人情報保護委員会による「行政指導」と、一応の決着はついています。しかし、現金を受け取っていた眼科医たちの処分は個々の医療機関に任されただけです。産経新聞等の報道によれば、今回の事件で、福井赤十字病院が就業規則に違反したとして男性医師を処分していたことが判明していますが、他の病院の処分状況はわかりません。前回、事件発覚時にも書きましたが、日本には、過大な景品提供などによる不公正な取引を防ぐため、個々の業界が定めた自主規制ルールである「公正競争規約」があります。同規約は景品表示法第31条に基づくものですが、あくまでも業界の自主ルールであり、そこに法律違反は発生しません。ゆえに今回も、眼科医たちの処分は個々の医療機関に任されたわけです。医療機関が購入する医療機器・用具の代金はそもそも公的財源も入った診療報酬で賄われています。その代金にあらかじめリベートや不当な現金供与分も上乗せされているとしたら、それは大きな問題です。日本も米国同様、リベートを罰する法律を早急に整備するべきであると、今回の事件の流れを振り返り改めて思いました。……とここまで書いてきたら、スター・ジャパンが、白内障用レンズの国内の取り扱いを終了するというニュースが飛び込んで来ました。12月6日付の同社のニュースリリースによれば、「スター・サージカル・グループが白内障用レンズ事業の継続が難しくなったと判断し、今後は、現在グローバル売上の95%を占める眼内コンタクトレンズ事業の成長機会に技術開発と支援を集中すると決定したことに伴うもの」だそうです。眼内レンズは多焦点レンズの登場などによって、世界的にも販売競争が激化しています。今回の事件も、グローバルの本部からの要請もあって、過度な販売促進に走った可能性も考えられます。突然の取り扱い終了によって、同社の白内障用眼内レンズを使用している患者に、不都合が起きないことを願います。参考1)手術動画提供事案に対する個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について(令和4年11月2日)/個人情報保護委員会

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HER2+進行乳がん2次治療でのT-DXd、OSがT-DM1に対し36%改善(DESTINY-Breast03)/SABCS2022

 トラスツズマブおよびタキサン系薬剤の前治療歴があり、HER2+の切除不能または転移を有する乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)とトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)を比較した第III相DESTINY-Breast03試験のアップデート解析において、T-DXd群では全生存期間(OS)が36%改善したことを、米国・University of California Los AngelesのSara A. Hurvitz氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。なお、この結果はLancet誌オンライン版2022年12月6日号に同時掲載された。 これまで、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)でDESTINY-Breast03試験の中間解析結果が発表され、T-DXd群ではT-DM1群よりも主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)が有意に延長したことが示されていた。副次評価項目のOSは両群ともに未到達であったため、今回初めてOSに関する解析が行われた。・対象:トラスツズマブおよびタキサン系薬剤の前治療歴があり、HER2+(IHCスコア3+、またはIHCスコア2+かつISH+)の切除不能または転移を有する乳がん患者524例・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例・対照群(T-DM1群):T-DM1を3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会(BICR)によるPFS[副次評価項目]OS、BICRおよび治験医師などの判定による奏効率(ORR)、BICRによる奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は、T-DXd群で28.4ヵ月(0.0~46.9ヵ月)、T-DM1群で26.5ヵ月(0.0~45.0ヵ月)であった(データカットオフ:2022年7月25日)。・治療期間中央値は、T-DXd群で18.2ヵ月(0.7~44.0ヵ月)、T-DM1群で6.9ヵ月(0.7~39.3ヵ月)であった。・T-DXd群の年齢中央値は54.3歳、HR+が50.2%で、T-DM1群の年齢中央値は54.2歳、HR+が51.0%であった。両群ともにアジア系が約60%で、過去に中央値2ラインの化学療法歴を有していた。・両群ともにOSの中央値には達しておらず、T-DXd群の95%信頼区間(CI)は40.5~NE、T-DM1群の95%CIは34.0~NE(ヵ月)であった。・OSのハザード比(HR)は0.64(95%CI:0.47~0.87、p=0.0037)で、事前に規定されていたp値(0.013)を下回っていた。・12ヵ月時点のOS率は、T-DXd群94.1%(95%CI:90.4~96.4)vs. T-DM1群86.0%(81.1~89.8)、24ヵ月時点は77.4%(71.7~82.1)vs. 69.9%(63.7~75.2)、36ヵ月時点は69.3%(62.5~75.1)vs. 55.4%(47.4~62.8)であった。・BICRによるPFS中央値は、T-DXd群28.8ヵ月vs. T-DM1群6.8ヵ月(HR:0.33、95%CI:0.26~0.43、p<0.000001)であった。・BICRによるORRは、T-DXd群で78.5%(CRは21.1%)、T-DM1群で35.0%(CRは9.5%)であった。・クリニカルベネフィット率は、T-DXd群で89.3%、T-DM1群で46.4%であった。・DOR中央値は、T-DXd群で36.6ヵ月、T-DM1群で23.8ヵ月であった。・治験医師などの判定によるPFS2中央値は、T-DXd群で40.5ヵ月、T-DM1群で25.7ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、T-DXd群で56.4%、T-DM1群で51.7%であった。・外部判定委員会の判定による薬剤関連の間質性肺疾患は、T-DXd群で15.2%(Grade1:4.3%、Grade2:10.1%、Grade3:0.8%)、T-DM1で3.1%(Grade1:1.5%、Grade2:1.1%、Grade3:0.4%)であった。 Hurvitz氏は、「トラスツズマブおよびタキサン系薬剤の前治療歴があり、HER2+の切除不能または転移を有する乳がん患者において、T-DM1と比較して、T-DXdで治療を行った群では、臨床的かつ統計学的に有意なOSおよびPFSの改善がみられた。また、長期に及ぶ治療において、安全性プロファイルは管理可能で忍容性も高かった」とまとめた。

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第142回 ウルソでコロナ予防

胆石などの胆汁鬱滞性肝疾患の治療で広く使用されている馴染みの薬・ウルソデオキシコール酸(UDCA)、いわゆるウルソは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の細胞侵入の玄関・ACE2への同ウイルスの結合を阻止することが知られています1,2)。体内では細菌によって胆汁酸から作られるそのウルソの働きはSARS-CoV-2のACE2結合阻止にとどまらず、なんとACE2それ自体を減らしてSARS-CoV-2感染(COVID-19)を予防しうることが新たな研究で判明しました3-5)。新たな研究ではACE2発現が胆汁酸受容体として知られるファルネソイドX受容体(FXR)によって調節されていることがまず突き止められ、続いてFXR伝達抑制を担うウルソがはたしてACE2発現を減らすことが見出されました。ウルソでACE2発現を抑制することでSARS-CoV-2感染を予防しうることはハムスターの実験で確認されています。9匹のハムスターにヒトでの使用量相当のウルソを投与し、他の6匹には生理食塩水を与え、しばらくしてからそれらハムスターをSARS-CoV-2感染ハムスターと同居させました。その4日後にハムスターを安楽死させて肺を調べたところ食塩水投与群ではすべてからSARS-CoV-2が検出されました。一方、ウルソ投与群でのSARS-CoV-2検出は3匹に1匹で済んでいました5)。餌を自由に食べられるようにしたにもかかわらず食塩水投与ハムスターはSARS-CoV-2感染ハムスターとの同居の後に体重がおよそ9%減りました。一方、ウルソ投与群のハムスターは体重が若干上昇しており、ウルソ投与群のハムスターはどうやらSARS-CoV-2に感染したとしても重症化を免れていたようです。移植されず仕舞いのヒトの肺や肝臓を譲り受けて行った実験でもウルソによるACE2抑制がSARS-CoV-2を感染し難くすることが確認されました。研究はさらに続き、生身の人ではどうかが検討されました。8人にウルソを5日間服用してもらい、SARS-CoV-2感染の主な入り口である鼻上皮細胞をスワブ(nasopharyngeal swab)で採取して調べたところACE2が減っていました。英国の原発性胆汁性胆管炎(PBC)患者情報を集めているUK-PBCのデータ解析でも同様で、ウルソ使用は血清ACE2が少ないことと関連しました。続いてウルソに予後改善効果があるのかどうかがCOVID-19を被った慢性肝疾患患者およそ千人のデータを使って検討されました。その結果、ウルソ使用患者31人は入院、集中治療室(ICU)、死亡がウルソ非使用患者155人に比べてより少なくて済んでいました。肝臓移植患者の記録集を使った比較でもウルソ使用患者(24人)の方がウルソ非使用患者(72人)に比べて中等度や重度以上のCOVID-19をより免れていました。また、著者等が文献執筆中に知った肝硬変患者3千人超のデータ解析ではウルソ使用とCOVID-19がより生じ難いことやより重度のCOVID-19に至り難いことの関連が示されています。30年前から売られているウルソはおよそ安全で副作用がほとんどなく4)、長期投与が可能であり、体が弱い人のCOVID-19の予防薬としてとくに役立つ可能性があります。二重盲検試験を実施してウルソとACE2レベル変化やSARS-CoV-2感染しやすさの関連を調べる必要があると著者は結論しています。ウルソ生成腸内細菌がコロナ死亡率の地域差と関連COVID-19による死亡率は国毎にだいぶ異なり、去年11月に名古屋大学の研究チームが発表した成果によるとCOVID-19死亡率のそのような地域差にどうやら腸内細菌Collinsella(コリンセラ)属が寄与しているようです6,7)。コリンセラ属は他でもないウルソ生成菌であり、肝臓で作られて腸内に放出された胆汁酸をウルソに変換します。名古屋大学の研究チームは10ヵ国953人の匿名の公開情報を解析し、腸内のコリンセラ属が乏しいこととCOVID-19死亡率が高いことの関連を見出しました。ポルトガルでの試験ではより重度のCOVID-19とコリンセラ属が乏しいことの関連が示されており8)、名古屋大学の研究と一致します。ウルソはCOVID-19予防やCOVID-19合併症の緩和効果があるかもしれず、ウルソを作るコリンセラ属のそれらの効果をさらなる試験で調べる必要があると名古屋大学の研究チームは結論しています。参考1)Poochi SP, et al. Food Front. 2020;1:168-179. 2)Carino A, et al. Front Chem. 2020 Oct 23;8:572885.3)Brevini T, et al. Nature. 2022 Dec 5. [Epub ahead of print]4)A liver disease drug could be repurposed to protect against COVID - new research / The Conversation5)Drug that targets ACE2 receptors may work against new covid variants / New Scientist6)Hirayama M, et al. PLoS One. 2021;16:e0260451.7)腸内細菌 Collinsella 属が COVID-19 の感染・重症化を予防 / 名古屋大学8)Moreira-Rosario A, et al. Front Microbiol. 2021;12:705020.

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AIで乳がん病変の悪性鑑別を~非侵襲的かつ鑑別精度の高い手法の開発目指す

 GEヘルスケア・ジャパン株式会社(以下、GEヘルスケア)と愛媛大学は、乳がんの早期発見・診断精度向上に向けた非侵襲的な検査方法を開発するべく2021年より共同研究を開始している。本研究では同医学部附属病院で得られた乳腺病変のデータに人工知能技術を使用した解析を行っており、その結果、画像データから乳腺病変の良悪性を鑑別できる可能性が示唆された。本結果は、12月6日の記者会見で発表されたもので、将来的に乳がんの診断や治療に伴う身体的負担や心理的不安、検査コストの低減につながる可能性がある。 乳がん領域において、検診のマンモグラフィ画像から病変検出や良悪性判定するためにCAD(Computer-aided diagnosis)が活用されるなど、人工知能による乳がん発症予測の実現化が期待され、実際に陰性のマンモグラフィ検査後5年以内の乳がん発症リスクを推定できることも報告されている1)。一方、精密検査では超音波検査や乳腺MRIを実施した後、米国放射線専門医会(ACR)が中心となって作成したガイドラインBreast imaging reporting and data system(BI-RADS)を用いて良悪性診断を行うが、人間による腫瘤の形・辺縁の評価や判別には限界があることから、診断方法の確立が望まれている。 そこで、GEヘルスケアと愛媛大学は「MRIによる各種定量値のマッピング画像を用いた人工知能による新たな乳腺病変の良悪性判定方法」の開発に着手。本研究に当たっている松田 卓也氏(同大学大学院医学系研究科医療情報学講座)らは、Synthetic MRIの“1回の撮像から複数種類の定量値マップが取得できる”という利点を用い、造影前後の乳腺Synthetic MRIのマッピング画像から得たRadiomics*特徴量(ヒストグラム特徴量とテクスチャー特徴量)を用いて、機械学習手法による乳腺腫瘤の良悪性鑑別に対する有用性を検討した。造影前後に行った水平断像のSynthetic MRIのsource imageからPD map、T1 map、T2 mapを作成し、それぞれからRadiomics特徴量88種類を抽出させる(88×3×2=528種類)。ただし、機械学習の性能維持のために計528特徴量から100種類の特徴量を選択(次元削減)するなどの処理を行った。*Radiomics=Radiology(放射線医学)+Omics(すべて+学問)の意。医用画像の(多数の)特徴量を統計解析や機械学習に用いる手法のこと。 本研究の初期検討結果について、松田 卓也氏は「今後の性能向上(特徴量の追加[そのほかのMRI画像特徴量・臨床的因子]やカテゴリー判定と組み合わせた総合的アルゴリズム)を検討している。臨床応用のためにエビデンスを構築し、更なる検討を重ねていく」とコメント。松田 恵氏(同大学医学部附属病院 放射線部)は「今後、精度を上げていくことで生検が不要になり、医療コスト面からも貢献できる可能性がある」と話した。

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オミクロン株のlong COVIDリスク、デルタ株より低い

 新型コロナウイルス感染症のオミクロン株は以前に流行したデルタ株と比較して急性期の症状が軽症であることが報告されているが、コロナ罹患後の後遺症、いわゆるlong COVIDのリスクも低いことが、ノルウェー・公衆衛生研究所のKarin Magnusson氏らの調査で示された。本研究の結果はNature Communications誌2022年11月30日号で報告された。 研究者らは、ノルウェーにおける18~70歳の全国民を対象に、医療データベースを使った前向きコホート研究を行った。オミクロンとデルタ株の流行が最も重複した期間(2020年12月8日~2021年12月31日)を対象に、オミクロン株の感染者の罹患後症状を、デルタ株感染者・非感染者と比較した。さらに、検査陽性後14~126日までの追跡期間を、急性期(14~29日)、亜急性期(30~89日)、慢性期(90日以上)に分け、罹患後症状の有病率の推定値も示した。 主な結果は以下のとおり。・全国民369万6,005人のうち、17万3,317人が期間中に1回以上のPCR検査を受け、うち5万7,727人が陽性と判定された。うち2万3,767人がデルタ株の感染者(デルタ群)、1万3,365人がオミクロン株の感染者(オミクロン群)だった。オミクロン群は、デルタ群に比べ、若年で高学歴、合併症が少なく、ワクチン接種の頻度も高い傾向があった。・オミクロン群およびデルタ群の両方で、PCR検査の陰性者と比較して、罹患後症状のリスクが20~30%増加し、息切れの発症リスクが30~80%増加した・全期間(14〜126日)における具体的な訴えを直接比較したところ、オミクロン群とデルタ群の差は認められなかったが、オミクロン群はデルタ群に比べ、検査後90日以上経過した時点でいずれかの症状を持つリスクが低く(1万人あたり43人[95%CI:14〜72]減)、筋骨格系の痛みのリスクも低かった(1万人あたり23人[95%CI:2〜43]減)。・ワクチン接種者(14~210日前に1、2、3回接種)では、オミクロン群(9,368人)はデルタ群(1万4,160人)と比較して90日以上の罹患後症状有病率が1万人あたり36人(95%CI:1~70)減ることが示された。

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HR0.58、camizestrantがER+HER2-進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長(SERENA-2)/SABCS2022

 ホルモン受容体(ER)陽性/HER2陰性の閉経後進行乳がん(ABC)患者において、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、フルベストラントと比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善した。第II相SERENA-2試験の結果を、スペイン・Vall d'Hebron University HospitalのMafalda Oliveira氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。・対象:ER陽性/ HER2陰性の閉経後進行乳がん患者(1ライン以上の内分泌療法後の再発または進行で、ABCに対するフルベストラントまたは経口SERD治療歴はなく、内分泌療法・化学療法は1ライン以下)・試験群:camizestrant75mg(C75)群 74例camizestrant150mg(C150)群 73例・対照群:フルベストラント(F)群 73例・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]24週における臨床的ベネフィット率(CBR24)、奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、安全性[層別化因子]CDK4/6阻害薬による治療歴、肺/肝転移 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点での年齢中央値は60.0(35~89)歳、ECOG 0が58.8%、肺/肝転移ありが58.3%、ESR1変異ありが36.7%だった。・術後内分泌療法歴ありが66.7%、ABCに対しては化学療法ありが19.2%、内分泌療法ありが68.8%。CDK4/6阻害薬による治療歴ありは49.6%だった。・PFS中央値は、F群3.7ヵ月に対しC75群7.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.41~0.81、p=0.0124)、C150群7.7ヵ月(HR:0.67、95%CI:0.48~0.92、p=0.0161)となり、camizestrantの両用量群で有意に改善した。・PFSのサブグループ解析の結果、CDK4/6阻害薬による治療歴ありおよび肺/肝転移あり、ベースライン時点でESR1変異を有する患者とER-driven disease(5th ESO-ESMO ABCにより定義)の患者において、camizestrantの両用量はフルベストラントと比較し臨床的に意義のある改善を示した。・camizestrantの両用量での治療により、ctDNAにおけるESR1変異のレベルがサイクル 2の1日目までに検出不能または検出不能に近いレベルまで低下し、これをサイクル7の 1日目まで維持した。フルベストラントも低下させたが、camizestrantほどの低下はみられなかった。・ORRはF群11.5%に対しC75群15.7%(オッズ比[OR]:1.43、95%CI:0.63~3.33、両側p=0.4789)、C150群20.3%(OR:1.96、95%CI:0.88~4.51、両側p=0.1675)だった。・CBR24はF群39.1%に対しC75群48.8%(OR:1.48、95%CI:0.84~2.64、両側p=0.2554)、C150群51.0%(OR:1.62、95%CI:0.91~2.89、両側p=0.1658)だった。・Grade3以上のTRAEはC75群1.4%、C150群2.7%、F群1.4%で発生。TRAEによる投与中断はC75群14.9%、C150群21.9%で発生したが(F群4.1%)、短期間であった。・Grade3以上のTEAEとしては、C75群では血圧上昇、C150群では倦怠感・貧血・関節痛・ALT上昇・四肢痛・低ナトリウム血症が報告されている。 Oliveira氏は「SERENA-2試験は主要評価項目を達成し、camizestrantは75mgと150mg の両用量で、同患者においてフルベストラントと比較してPFSを改善し、またアンメットメディカルニーズとして事前に設定された各サブグループにおいても臨床的に意義のあるPFS改善効果を示した」とまとめた。また、稀にGrade3以上のTRAEが発生し、減量や中断が行われたものの、両用量ともに忍容性は高いとしている。 SERENA-4およびSERENA-6の2つの第III相試験が進行中となっている。

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T-DM1既治療のHER2+進行乳がん、T-DXdがPFSとOSを改善(DESTINY-Breast02)/SABCS2022

 トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療歴のあるHER2+の切除不能または転移を有する乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast02試験において、T-DXd群では無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に改善したことを、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIan Krop氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。・対象:T-DM1治療歴のあるHER2+(IHCスコア3+、またはIHCスコア2+かつISH+)の切除不能または転移を有する乳がん・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 406例・対照群(TPC群):TPC(トラスツズマブ+カペシタビンまたはラパチニブ+カペシタビン)202例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会(BICR)によるPFS[副次評価項目]OS、BICRによる奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、治験医師などの判定によるPFS、安全性 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は、T-DXd群で21.5ヵ月(0.1~45.6ヵ月)、TPC群で18.6ヵ月(0~45.7ヵ月)であった(データカットオフ:2022年6月30日)。・T-DXd群の年齢中央値は54.2歳、HR+が58.6%であった。TPC群の年齢中央値は54.7歳、HR+が58.4%であった。両群ともに、過去に中央値2ラインの化学療法歴を有していた。・BICRによるPFS中央値は、T-DXd群17.8ヵ月vs.TPC群6.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.3589、95%信頼区間[CI]:0.2840~0.4535、p<0.000001)であった。・OS中央値は、T-DXd群39.2ヵ月vs.TPC群26.5ヵ月(HR:0.6575、95%CI:0.5023~0.8605、p=0.0021)であった。・ORRは、T-DXd群で69.7%、TPC群で29.2%であった。・DOR中央値は、T-DXd群で19.6ヵ月、TPC群で8.3ヵ月であった。・臨床的ベネフィット率(CBR)は、T-DXd群で82.3%、TPC群で46.0%であった。・治験医師などの判定によるPFS中央値は、T-DXd群で16.7ヵ月、TPC群で5.5ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、T-DXd群で52.7%、TPC群で44.1%であった。・間質性肺疾患は、T-DXd群で10.4%(Grade1:2.7%、Grade2:6.4%、Grade3:0.7%、Grade4:0%、Grade5:0.5%)、TPC群で0.5%(Grade3のみ)であった。 Krop氏は「DESTINY-Breast02試験の結果は、T-DM1治療歴のあるHER2+の切除不能または転移を有する乳がん患者において、T-DXd群では、TPC群と比較して、統計学的にも臨床的にも有意なPFSおよびOSの改善がみられた。安全性はこれまでのT-DXdの報告と一致しており、新たな有害事象は観察されなかった」とまとめた。

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アテゾリズマブのNSCLCアジュバント、日本人でも有効(IMpower010)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)に対するアテゾリズマブの術後補助療法は、日本人においても良好な成績を示した。 第63回日本肺癌学会学術集会で、静岡県立静岡がんセンターの釼持 広知氏が、アテゾリズマブ術後補助療法の第III相試験IMpower010の日本人サブセットを発表している。内容の一部は、Cancer Science誌2022年9月5日号で発表されたものである。・対象:UICC/AJCC第7版定義のStageIB~IIIAのNSCLC、手術後にシスプラチンベースの補助化学療法(最大4サイクル)を受けた1,005例・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日3週ごと16サイクルまたは1年・対照群:BSC・評価項目[主要評価項目]治験医師評価による階層的無病生存期間(DFS):(1)PD-L1 TC≧1% StageII~IIIA集団、(2)StageII~IIIA全集団、(3)ITT(StageIB~IIIA全無作為化)集団[副次評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)、PD-L1 TC≧50% StageII~IIIA集団のDFS、全集団の3年・5年DFS 主な結果は以下のとおり。・日本人は149例が登録され、無作為化割り付け対象は117例、そのうちアテゾリズマブ群は59例、BSCは58例であった。・PD-L1≧1%のStageII~IIIAのDFSはアテゾリズマブ群未到達、BSC群31.4ヵ月であり、アテゾリズマブによる改善傾向が観察された(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.25〜1.08)。・OS中央値は、アテゾリズマブ群、BSC群ともに未到達で、HRは0.41(95%CI:0.41〜1.04)であった。・データカットオフ日(2021年1月21日)にアテゾリズマブの治療を完遂(3週ごと16サイクル)した患者は59例中35例であった。・アテゾリズマブのGrade3/4治療関連有害事象(TRAE)16%で発現した。頻度の高いアテゾリズマブのTRAEは皮疹、肝炎、肺臓炎などであった。肺臓炎の発現は10.7%、Grade3/4の発現はない。 発表者の釼持氏は、今回の成績を評価しつつも、長期にわたり患者のQOLを下げるirAEの可能性などを考慮し、長期データに注目すべきだと結んだ。

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模擬運転プログラムで、10代ADHDの衝突事故が低減/NEJM

 注意欠如・多動症(ADHD)を持つ10代は自動車衝突事故のリスクが高く、衝突リスクの一因として、道路から長時間目をそらす行為が指摘されている。米国・シンシナティ小児病院医療センターのJeffery N. Epstein氏らは、この長時間の目そらしを少なくするためのコンピュータ化された模擬運転プログラムによる介入が、従来の自動車運転教育と比較して、模擬運転で道路から長時間目をそらす行為の回数を減少させ、車線内の中心からの位置のずれを抑制し、実社会でも衝突事故や異常接近が低下することを示した。研究の成果は、NEJM誌2022年12月1日号に掲載された。米国の単施設の無作為化対照比較試験 本研究は、単施設(米国・シンシナティ小児病院医療センター)の無作為化対照比較試験であり、2016年12月~2020年3月の期間に参加者の募集が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 年齢16~19歳、ADHDの診断基準を満たし、自動車運転免許を有する集団が、デスクトップコンピュータベースのソフトウエアである集中力・注意学習プログラムの強化版(FOCAL+)による介入を受ける群(介入群)、または従来の自動車運転教育の強化版を受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、ベースライン、訓練後1ヵ月および6ヵ月の時点での、2回の模擬運転(1回15分)中に道路から長時間(2秒以上)目をそらす回数と、車線位置の標準偏差(車線の中心から側方への移動の指標)とされた。 副次評価項目は、長時間目をそらす行為の発生率と、自動車の運動量の突然の変化(Gイベント)による衝突事故または異常接近の発生率であり、訓練後1年間の車内記録で評価が行われた。薬物療法の影響は判断できない 152例が登録され、介入群に76例、対照群にも76例が割り付けられた。全体の平均(±SD)年齢は17.4±0.9歳、男性が62%であった。 訓練後の模擬運転中の長時間目をそらす行為は、介入群は1ヵ月の時点で1回の運転当たり平均16.5回、6ヵ月の時点では平均15.7回であり、対照群ではそれぞれ28.0回および27.0回であった。1ヵ月時の発生率比は0.64(95%信頼区間[CI]:0.52~0.76、p<0.001)、6ヵ月時の発生率比は0.64(0.52~0.76、p<0.001)であり、いずれも介入群で有意に低下していた。 車線位置の標準偏差(数値はフィート)は、介入群は1ヵ月の時点で0.98 SD、6ヵ月の時点でも0.98 SDであり、対照群はそれぞれ1.20 SDおよび1.20 SDであった。1ヵ月時の群間差は-0.21 SD(95%CI:-0.29~-0.13)、6ヵ月時の群間差は-0.22 SD(-0.31~-0.13)であり、いずれも介入群で良好だった(いずれも交互作用検定のp<0.001)。 訓練後1年間の実社会における運転中での、Gイベント当たりの長時間目をそらす行為の発生率は、介入群が18.3%、対照群は23.9%であった(相対リスク:0.76、95%CI:0.61~0.92)。また、Gイベント当たりの衝突事故または異常接近の発生率は、介入群3.4%および対照群5.6%であった(0.60、0.41~0.89)。 著者は、この試験の限界として「ADHDの薬物療法の影響を判断できない」ほか、シンシナティ(州境の都市圏)で行われているため「10代に段階的な免許取得などを義務付けているオハイオ州の施策を考慮すると、一般化可能性に影響を及ぼす可能性がある」などを挙げている。

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メトホルミンに追加する血糖降下薬としてはGLP-1受容体作動薬が他剤を一歩リードしている(解説:住谷哲氏)

 多くの心血管アウトカム試験CVOTの結果を踏まえて、臓器保護薬としてのSGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の位置付けはほぼ確立したといってよいだろう。しかし罹病期間の短い、合併症のない低リスク2型糖尿病患者はCVOTの対象患者には含まれていない。したがって、CVOTの結果がこれらの低リスク患者にそのまま適用できるかどうかは不明である。 基礎治療薬としてのメトホルミンの有効性はUKPDS 34で明らかにされたが、メトホルミン単剤で血糖コントロールが維持できないときに追加すべき血糖降下薬としては何が適切かは実は明らかになっていない。そこでメトホルミンに追加する血糖降下薬としての持効型インスリンのグラルギン、SU薬のグリメピリド、GLP-1受容体作動薬のリラグルチドそしてDPP-4阻害薬のシタグリプチンの有効性を比較した比較有効性試験comparative-effectiveness studyが本試験GRADE(Glycemia Reduction Approaches in Type 2 Diabetes: A Comparative Effectiveness Study)である。製薬企業が自社製品でない薬剤の有効性を証明する試験を実施することはないので、本試験は米国国家予算で実施され、薬剤を含めたすべての介入は無償で提供された。したがって、本試験における有効性effectivenessは医療費を考慮しない状況下でのeffectivenessであることに注意が必要である。結果は、glycemic durabilityにおいてはリラグルチドとグラルギンが、体重減少においてはリラグルチドとシタグリプチンが他剤に比較してより有効性が高かった。 先日発表されたADA/EASDのコンセンサスステートメントでは、2型糖尿病管理の4本柱は血糖管理glycemic management、体重管理weight management、心血管リスク管理cardiovascular risk management、心腎保護薬の選択cardiorenal protection-choice of glucose-lowering medicationとされている1)。ハイリスク患者におけるGLP-1受容体作動薬の有効性はCVOTにおいてすでに報告されているが、本試験の別の報告においても心血管アウトカムに関してリラグルチドの有効性が示唆されている2)。したがって、血糖管理、体重管理、心腎保護薬の選択からメトホルミンに追加する薬剤としては、GLP-1受容体作動薬が他剤を一歩リードしているといってよいだろう。 本試験が企画された2012年ごろには、まだSGLT2阻害薬が市場に登場していなかった。また、ピオグリタゾンについては安全性に対する懸念が少なからずあったことと予算の関係から、選択肢として試験に組み込まれなかった。メトホルミンに追加した場合の両薬剤のglycemic durabilityについてもぜひ知りたいところである。

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帯状疱疹で脳卒中・冠動脈疾患リスクが長期的に増大

 帯状疱疹と脳卒中および冠動脈疾患の関連を検討したところ、帯状疱疹の既往が脳卒中および冠動脈疾患の長期的なリスクを高め、そのリスクは帯状疱疹発症から12年以上継続する可能性があることを、米国・Brigham and Women's HospitalのSharon G. Curhan氏らが明らかにした。Journal of the American Heart Association誌2022年11月16日掲載の報告。帯状疱疹は脳卒中および冠動脈疾患の長期リスクの増大に関連 調査は、米国の3つの大規模コホート研究であるNurses' Health Study(NHS)、Nurses' Health Study II(NHS II)、Health Professionals Follow-Up Study(HPFS)を用いて行われた。解析対象は、これまでに脳卒中や冠動脈疾患の既往のないNHSの女性7万9,658例(平均年齢65.8歳)、NHS IIの女性9万3,932例(平均年齢46.2歳)、HPFSの男性3万1,440例(平均年齢69.5歳)の合計20万5,030例であった。 帯状疱疹、脳卒中、冠動脈疾患の発症の有無は、隔年のアンケートで聴取し、診療記録で確認した。Cox比例ハザード回帰モデルを使用して、帯状疱疹の既往の有無や経過年数から、脳卒中および冠動脈疾患の多変数調整ハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・200万人年を超える追跡期間中、3,603例の脳卒中と8,620例の冠動脈疾患が生じた。帯状疱疹の既往は、脳卒中および冠動脈疾患の長期リスクの増大に有意かつ独立して関連していた。・3つのコホートを統合して解析した結果、帯状疱疹の既往がない群と比べ、帯状疱疹の既往がある群の脳卒中の多変数調整HRは、帯状疱疹発症から1~4年で1.05(95%信頼区間[CI]:0.88~1.25)、5~8年で1.38(1.10~1.74)、9~12年で1.28(1.03~1.59)、13年以上で1.19(0.90~1.56)であった。・同様に、帯状疱疹の既往がある群の冠動脈疾患の多変数調整HRは、帯状疱疹発症から1~4年で1.13(95%CI:1.01~1.27)、5~8年で1.16(1.02~1.32)、9~12年で1.25(1.07~1.46)、13年以上で1.00(0.83~1.21)であった。・心血管疾患の複合イベントの多変数調整HRは、帯状疱疹発症から1~4年で1.11(95%CI:1.01~1.23)、5~8年で1.26(1.13~1.41)、9~12年で1.27(1.11~1.46)、13年以上で1.08(0.92~1.28)であった。 研究グループは、これらの結果から「帯状疱疹の既往は長期的な心血管疾患の発症に影響を及ぼすため、帯状疱疹の予防が重要である」とまとめた。

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早期パーキンソン病へのdeferiprone、疾患進行に有効か?/NEJM

 レボドパ製剤による治療歴がなく、ドパミン作動薬の投与が予定されていない早期パーキンソン病患者において、deferiproneによる36週間の治療はプラセボと比較して、パーキンソン病の臨床的な悪化が認められたことが、フランス・リール大学のDavid Devos氏らにより欧州の23施設で実施された医師主導の第II相無作為化二重盲検比較試験「FAIR PARK II試験」の結果、示された。パーキンソン病患者では黒質の鉄量増加が認められており、疾患の病態生理に寄与している可能性が示唆されている。鉄キレート剤のdeferiproneは、パーキンソン病患者の黒質線条体の鉄量を減少させることが、初期の研究で示されていたが、疾患進行に対する有効性は不明であった。NEJM誌2022年12月1日号掲載の報告。deferiproneを36週間投与、MDS-UPDRS総スコアの変化量を評価 研究グループは、新たにパーキンソン病と診断され、レボドパ製剤の投与歴がない18歳以上の患者を、deferiprone(1回15mg/kg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日2回36週間経口投与した。症状のコントロールのために必要と判断された場合を除き、ドパミン作動薬は投与しないこととした。 主要評価項目は、運動障害疾患学会・改訂版パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)の総スコア(範囲:0~260点、スコアが高いほど障害が大きい)の36週時のベースラインからの変化量であった。 副次評価項目は、36週または40週時のMDS-UPDRSパートIIおよびIIIのスコア、パートIIとIIIの合計スコアであった。探索的評価項目は、MDS-UPDRSパートIのスコア、モントリオール認知評価(MoCA)スコア、パーキンソン病質問票(PDQ-39)で評価した疾患関連QOL、MRIを用いて評価した脳内鉄量などとした。 2016年2月~2019年12月に372例が登録され、deferiprone群186例、プラセボ群186例に割り付けられた。36週時の平均MDS-UPDRS総スコア、deferiprone群で15.6点悪化 ドパミン作動薬の治療導入につながる症状の進行は、deferiprone群22.0%、プラセボ群2.7%で確認された。 ベースラインの平均MDS-UPDRS総スコアは、deferiprone群34.3点、プラセボ群33.2点であり、36週時までにそれぞれ15.6点および6.3点増加(悪化)した(群間差:9.3点、95%信頼区間[CI]:6.3~12.2、p<0.001)。 MDS-UPDRSパートI、IIおよびIIIのスコア、パートIIとIIIの合計スコア、PDQ-39スコアのベースラインからの変化量は、プラセボ群よりdeferiprone群で大きかった(悪化)。また、黒質線条体における鉄量は、プラセボ群と比較してdeferiprone群でベースラインより大きく減少していた。 重篤な有害事象は、deferiprone群で9.7%、プラセボ群で4.8%に認められ、無顆粒球症はdeferiprone群でのみ2例、好中球減少症はそれぞれ3例および1例であった。

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慢性期統合失調症の陰性症状に対するpentoxifylline補助療法~RCT

 エジプト・University of Sadat CityのMahmoud S. Abdallah氏らは、慢性期統合失調症患者の陰性症状軽減に対するリスペリドン治療の補助療法としてpentoxifyllineの有効性および安全性を評価するため、ランダム化プラセボ対照試験を実施した。その結果、慢性期統合失調症患者の陰性症状軽減に対する8週間のリスペリドン+pentoxifylline補助療法は、有望な治療選択肢である可能性が示唆された。CNS Neuroscience & Therapeutics誌オンライン版2022年11月7日号の報告。 慢性期統合失調症外来患者80例を対象に、リスペリドンとpentoxifyllineまたはプラセボを併用し、8週間投与した。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて、試験の開始時、2、4、6、8週目に評価を行った。治療開始前後の血清レベル(cAMP、TNF-α、IL-6)を測定した。 主な結果は以下のとおり。・pentoxifylline群において、陽性症状評価尺度以外のPANSSスコアでTTI(time-treatment interaction)の有意な効果が確認された。 ●PANSS陰性症状スコア(p<0.001) ●PANSS総合精神病理スコア(p<0.001) ●PANSS総スコア(p<0.001) ●PANSS陽性症状スコア(p=0.169)・pentoxifylline群は、プラセボ群と比較し、cAMPレベルの有意な増加およびTNF-αとIL-6レベルの有意な減少が認められた。

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がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2022、利用者の意見反映

 『がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン』が6年ぶりに改訂された。2016年の初版から分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療の知見が増えたことや腎障害にはさまざまな分野の医師が関与することを踏まえ、4学会(日本腎臓学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本腎臓病薬物療法学会)が合同で改訂に携わった。 本書は背景疑問を明確に定義する目的で16の「総説」が新たに記載されている。また、実用性を考慮して全体を「第1章 がん薬物療法対象患者の腎機能評価」(治療前)、「第2章 腎機能障害患者に対するがん薬物療法の適応と投与方法」(治療前)、「第3章 がん薬物療法による腎障害への対策」(治療中)、「第4章 がんサバイバーのCKD治療」(治療後)の4章にまとめている。とくに第4章は今回新たに追加されたが、がんサバイバーの長期予後が改善される中で臨床的意義を考慮したものだ。2022版のクリニカルクエスチョン(CQ)※総説はここでは割愛■第1章 がん薬物療法対象患者の腎機能評価CQ 1 がん患者の腎機能(GFR)評価に推算式を使用することは推奨されるか?CQ 2 シスプラチンなどの抗がん薬によるAKIの早期診断に新規AKIバイオマーカーによる評価は推奨されるか?CQ 3 がん薬物療法前に水腎症を認めた場合、尿管ステント留置または腎瘻造設を行うことは推奨されるか?■第2章 腎機能障害患者に対するがん薬物療法の適応と投与方法CQ 4 透析患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?CQ 5 腎移植患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?■第3章 がん薬物療法による腎障害への対策CQ 6 成人におけるシスプラチン投与時の腎機能障害を軽減するために推奨される補液方法は何か?CQ 7 蛋白尿を有する、または既往がある患者において血管新生阻害薬の投与は推奨されるか?CQ 8 抗EGFR抗体薬の投与を受けている患者が低Mg血症を発症した場合、Mgの追加補充は推奨されるか?CQ 9 免疫チェックポイント阻害薬による腎障害の治療に使用するステロイド薬の投与を、腎機能の正常化後に中止することは推奨されるか?CQ 10 免疫チェックポイント阻害薬投与に伴う腎障害が回復した後、再投与は治療として推奨されるか?■第4章 がんサバイバーのCKD治療CQ 11 がんサバイバーの腎性貧血に対するエリスロポエチン刺激薬投与は推奨されるか?アンケート結果で見る、認知度・活用度が低かった3つのCQ 本書を発刊するにあたり、日本腎臓学会、日本がんサポーティブケア学会、日本医療薬学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会の5学会は初版(2016年版)の使用に関する実態調査報告を行っている。回答者は1,466人で、学会別で見ると、日本腎臓学会から264人(アンケート実施時の会員数:約1万人)、日本臨床腫瘍学会から166人(同:9,276人)、日本癌治療学会から107人(同:1万6,838人)、日本医療薬学会から829人(同:1万3,750人)、日本がんサポーティブケア学会から25人(同:約1,000人)、そのほかの学会より74人の回答が得られた。 なかでも、認知度が低かった3つを以下に挙げる。これらは腎臓病学領域での認知度はそれぞれ、63.1%、69.7%、62.0%であったのに対し、薬学領域での認知度はそれぞれ52.9%、51.9%、39.5%。腫瘍学領域での認知度はそれぞれ49.5%、56.5%、43.2%と比較的低値に留まった。(1)CQ2:がん患者AKI(急性腎障害)のバイオマーカー(2)CQ14:CDDP(シスプラチン)直後の透析(3)CQ16:抗がん剤TMA(血栓性微小血管症)に対するPE(血漿交換) 認知度・活用度の低いCQが存在する理由の1つとして、「CQの汎用性の高さに比して、実用性に関しては当時十分に普及していなかった」と可能性を挙げおり、たとえば「CQ2は認知度55.2%、活用度59.8%とともに低値である。抗がん薬によるAKI予測は汎用性の高いテーマではあるが、2016年のガイドライン時点では、代表的なバイオマーカーである尿NGAL、尿KIM-1、NephroCheck(R)[尿中TIMP-2とIGFBP7の濃度の積]が保険適用外であった。しかし、尿NGAL(好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン)が2017年2月1日に保険適用となり、バイオマーカーの実用性が認識されてきた。加えて、エビデンスを評価できる論文も増加してきたことから、今回あらためてシステマティックレビューを行い、positive clinical utility index(CUI)が0.782でgood(0.64以上0.81未満)、negative CUIも0.915でexcellent(0.81以上)と高い評価が得られたことを、2022年のガイドラインで記載している」としている。 本ガイドラインに対する要望として最も多かったのは「腎機能低下時の抗がん薬の用量調整に関して具体的に記載してほしい」という意見であったそうで、「本調査結果を今後のガイドライン改訂に活かし、より実用的なガイドラインとして発展させていくことが重要」としている。

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早期アルツハイマー病へのlecanemab、第III相試験結果/NEJM

 早期アルツハイマー病において、可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体プロトフィブリルに選択的に結合するヒトIgG1モノクロナール抗体lecanemabの投与は、18ヵ月時点でプラセボよりも脳内アミロイド蓄積量を減少させ、認知および機能低下をわずかだが抑制した。一方で、有害事象との関連が報告されている。米国・イェール大学のChristopher H. van Dyck氏らが、1,795例を対象に行った第III相無作為化比較試験「Clarity AD試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「早期アルツハイマー病におけるlecanemabの有効性と安全性を確認するための長期試験が必要だ」とまとめている。NEJM誌オンライン版2022年11月29日号掲載の報告。18ヵ月後の臨床的重症度判定尺度の合計スコアを測定 研究グループは、早期アルツハイマー病(アルツハイマー病による軽度認知障害・軽度認知症)で、ポジトロン断層法(PET)または脳脊髄液検査で脳内アミロイド病理が確認された50~90歳の患者を対象に、18ヵ月にわたる多施設共同二重盲検第III相試験を行った。 被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはlecanemab(10mg/kg体重、2週ごとに静脈内投与)を、もう一方にはプラセボを投与した。 主要評価項目は、臨床的認知症重症度判定尺度の合計(Clinical Dementia Rating-Sum of Boxes:CDR-SB、範囲:0~18、高スコアほど障害が大きいことを示す)スコアのベースラインから18ヵ月時までの変化だった。主要な副次評価項目は、PETにより評価した脳内アミロイド蓄積量、アルツハイマー病評価尺度(Alzheimer's Disease Assessment Scale:ADAS)の14項目認知サブスケール(ADAS-cog14、範囲:0~90、高スコアほど障害が大きいことを示す)、Alzheimer's Disease Composite Score(ADCOMS、範囲:0~1.97、高スコアほど障害が大きいことを示す)、Alzheimer’s Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS-MCI-ADL、範囲:0~53、低スコアほど障害が大きいことを示す)の変化とした。脳内アミロイド蓄積量は対プラセボで-59.1センチロイド 被験者数は合計1,795例で、lecanemab群が898例、プラセボ群が897例だった。ベースラインの平均CDR-SBスコアは、両群ともに約3.2だった。 CDR-SBスコアは18ヵ月時点で、ベースラインからの補正後最小二乗平均変化値が、lecanemab群1.21、プラセボ群が1.66だった(群間差:-0.45、95%信頼区間[CI]:-0.67~-0.23、p<0.001)。 698例を対象に行ったサブスタディでは、プラセボ群に比べlecanemab群で脳内アミロイド蓄積量の減少が大きかった(群間差:-59.1センチロイド、95%CI:-62.6~-55.6)。 そのほか、ベースラインから18ヵ月時点までの平均変化に群間差が認められたのは、ADAS-Cog14スコア(群間差:-1.44、95%CI:-2.77~-0.61、p<0.001)、ADCOMSスコア(-0.050、-0.074~-0.027、p<0.001)、ADCS-MCI-ADLスコア(2.0、1.2~2.8、p<0.001)だった。 lecanemab群では、インフュージョンリアクションが26.4%、画像上の脳内アミロイド関連の浮腫・浸出が12.6%に認められた。

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医師が選ぶ「2022年の漢字」TOP5を発表!【CareNet.com会員アンケート】

12月12日は漢字の日。毎年この日に、京都の清水寺で発表される「今年の漢字」(主催:日本漢字能力検定協会)。本家より一足先に、CareNet.com医師会員1,029名に選んでいただいた「2022年の漢字」TOP5を発表します。1年を振り返ってみて、皆さんはどの漢字をイメージしましたか?第1位「戦」第1位には、104票の圧倒的な得票数で「戦」が選ばれました。2022年2月24日にロシアがウクライナへ軍事侵攻し、全世界が戦争の終結を願っているものの、冬を迎えた今も戦禍は続いています。長引くコロナとの戦いに加え、戦争による影響もあり、世界経済も不安定になった1年でした。「戦」を選んだ理由(コメント抜粋)ウクライナの戦争が長引いて庶民は物価高騰との戦いであるから。(50代 眼科/島根)ロシアによるウクライナ侵攻が最大のニュースだった。(40代 循環器内科/東京)ウクライナのように、突如侵略戦争の犠牲になる可能性について考えた。(30代 精神科/埼玉)ウクライナ侵略に正当性はない。(50代 小児科/神奈川)ウクライナにおける惨状を目の当たりにして。(50代 その他/群馬)ワンオペ育児に奔走、コロナと戦い世界的に戦争もあったから。(20代 麻酔科/北海道)第2位「乱」第2位には、「乱」がランクイン。過去にも何度か登場していて昨年は5位でしたが、混乱の世の中は変わらず、再浮上する結果となりました。第1位と同様に、ウクライナでの戦争や、オミクロン株に悩まされたコロナ禍、国内外の経済の混乱などが理由に挙げられました。 「乱」を選んだ理由(コメント抜粋)円安に拍車がかかったり、ミサイルが幾度も飛んできたり、乱れに乱れた1年だったと思うから。(40代 循環器内科/青森)相変わらず社会全体が混乱のさなかにあると感じました。(40代 外科/岡山)ウクライナに対するプーチンの乱暴。(50代 形成外科/北海道)戦争、コロナ、資源高、円安など混乱が続いているから。(40代 精神科/広島)ロシアによるウクライナ侵攻、為替の乱高下などが印象に残っているため。(20代 臨床研修医/香川)コロナ禍やウクライナ情勢、経済的な混乱を目の当たりしたから。(40代 腎臓内科/福岡)■第3位「安」第3位は「安」。全35票のうち27票で理由に挙げられたのが「円安」。一時は32年前の水準と並ぶ1ドル150円台を記録しました。また、7月の参院選で起きた安倍元総理の銃撃事件を挙げた方も見られ、複合的な理由から「安」が上位に入る結果となりました。 「安」を選んだ理由(コメント抜粋)数十年ぶりの円安ドル高、物価上昇など印象に残ったため。(50代 泌尿器科/鹿児島)安倍元総理の事件のインパクトの大きさと安全安心な世界になってほしい気持ちを込めて。(20代 内科/東京)円安が進んでいよいよ日本の国家としての危機が強まったから。(30代 内科/東京)安倍元首相の銃撃事件、急激な円安、安全保障問題など関連することが多いと感じた。(30代 内科/福岡)第4位「禍」昨年はトップだった「禍」ですが、ここにきて第4位に転落。コロナ禍は依然として続いていますが、今年は治療薬や2価ワクチンの登場などもあり、対抗する手段が増えたことで、収束の兆しが見えてきました。 「禍」を選んだ理由(コメント抜粋)医療逼迫にて行政にも振り回される1年となった。(50代 救急科/愛知)コロナが終わらない。(50代 内科/兵庫)コロナ禍は未だ終息せず、ウクライナの戦禍もあったから。(40代 麻酔科/愛知)第5位「耐」第5位は「耐」。オミクロン株の流行の波が何度もやってきた2022年、医療者には引き続き忍耐が強いられました。全国旅行支援のキャンペーンも開始されるなど、日本も解禁ムードに向かっています。来年こそは、これまで我慢していたことをできる日常が戻ってくるといいですね。 「耐」を選んだ理由(コメント抜粋)月並みだけど、コロナ禍で外出(旅行、飲み会など)を我慢してきた。忍耐のみ。(70代以上 膠原病・リウマチ科/神奈川)まだ旅行や宿泊へ行けずに耐えているから。全面解除になったら、ぜひ政府に医療者限定特別旅行期間をもうけてもらわないと、割に合わない。(50代 精神科/石川)値上げや円安で我慢が強いられる年だから。(40代 眼科/大阪)アンケート概要アンケート名『2022年を総まとめ&来年へ!今年の漢字と来年こそ行きたい旅行先をお聞かせください』実施日   2022年11月3日~10日調査方法  インターネット対象    CareNet.com会員医師有効回答数 1,029件

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スタチン、抗凝固薬服用の心房細動患者の出血リスクを低減

 経口抗凝固薬を服用している非弁膜症性心房細動患者において、スタチン服用で大出血、全死亡、虚血性イベントのリスクが有意に低下したことが、多施設後ろ向きレジストリ研究で示唆された。兵庫医科大学の内田 和孝氏らがAmerican Journal of Cardiovascular Drugs誌オンライン版2022年11月16日号で報告した。 本研究は、心臓機械弁もしくは肺/深部静脈血栓症の既往歴のある患者を除外した経口抗凝固薬を服用している非弁膜症性心房細動患者を対象とした。2013年2月26日に7,826例を登録し、2017年2月25日まで追跡した。主要評価項目は大出血、副次評価項目は全死亡、虚血性イベント、出血性脳卒中、虚血性脳卒中で、スタチン投与群と非投与群で比較した。 主な結果は以下のとおり。・スタチン投与群(2,599例、33%)は非投与群に比べ、発作性心房細動(37% vs.33%、p=0.0003)、高血圧(84% vs.76%、p<0.0001)、糖尿病(41% vs.27%、p<0.0001)、脂質異常症(91% vs.30%、p<0.0001)を有している患者が多かった。・大出血の累積発生率は、スタチン投与群6.9%、非投与群8.1%であった(p=0.06)。・スタチン投与群の非投与群に対する各評価項目の調整ハザード比(95%信頼区間)は、大出血が0.77(0.63~0.94)、全死亡が0.58(0.47~0.71)、虚血性イベントが0.77(0.59~0.999)、出血性脳卒中が0.85(0.48~1.50)、虚血性脳卒中が0.79(0.60~1.05)だった。

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