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ノルウェーで救急バイトするならこの日は避けろ!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第224回

ノルウェーで救急バイトするならこの日は避けろ!Pixabayより使用メリークリスマス。クリスマスイブと大晦日のプライマリ・ケアや救急のサービス利用状況を、通常の土曜日と比べたノルウェーの報告です。うーむ、どっちがキツイんだろう…。Sandvik H.Emergency primary health care consultations on Christmas Eve, New Year's Eve and a normal Saturday.Tidsskr Nor Laegeforen. 2019 Dec 9;139(18).2008~18年の間に、ノルウェーで時間外当番医になった医師の診療報酬レセプトデータをもとにした研究です。クリスマスイブ、大晦日、1月の最終土曜日の診察・往診件数や診断名などを比較検討しました。通常の業務の代表日として設定された1月最終土曜日の受診者数は4万5,088人でした。クリスマスイブは3万6,045件(土曜の80%)、大晦日は5万377件(土曜の112%)という結果でした。クリスマスイブが少なく、大晦日が多いという結果でした。外傷に関しての相談は、通常土曜日の夜間で1,007件、クリスマスイブの夜間は453件(土曜日の45%)、大晦日の夜間は2,447件(土曜日の243%)でした。大晦日は、ノルウェーでは国をあげてカウントダウンの花火をする習慣があるため、外傷が多いようです。実際、熱傷に関する相談は大晦日の夜間で246件でしたが、クリスマスイブは13件(大晦日夜間の5%)、土曜日は11件(大晦日夜間の4%)と大きな差がありました。また、大晦日の夜間の急性アルコール中毒による受診は513件、クリスマスイブは53件(大晦日夜間の10%)、土曜日は260件(大晦日夜間の51%)という結果でした。みなさんもノルウェーで当直のバイトをする機会があれば、できるだけ大晦日を避けるようにしましょう。

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医学プレゼンの肝となるのは「見やすいグラフ」【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第6回

医学プレゼンの肝となるのは「見やすいグラフ」1)グラフはなるべく大きく作成する2)グラフの色を上手く使い分けて強調する3)2つ軸があるグラフを作成する学会発表では、ResultやDiscussionのスライドにおいて、いかに見やすいグラフをつくるかというのがカギです。文字ばかりのスライドでは聴衆は飽きてしまうため、なるべくグラフでビジュアルに訴えかけるようなスライドにするのが理想的です。つくるべきグラフは、研究の種類(例:症例報告、臨床研究、基礎研究など)や研究内容、データの種類、医局や科の好み・文化などにもよるため一概にはいえませんが、押さえておくべきポイントはいくつかあります。当然ですが、グラフは聴衆から見えないと意味がないため、なるべくスペースを確保して大きく作成するようにします。グラフのタイトル、単位、縦軸、横軸の説明、凡例などがわかりやすく、見やすい文字の大きさで記載されていることも確認しておきましょう。また、パワーポイントのデフォルトのグラフはカラフルなものが多いですが、その中で1つだけ強調したいという場合には、グレースケールのグラフを選択し、強調したいデータのみに色をつけるという工夫もできます〈図1〉。〈図1〉症例報告で臨床経過(Clinical course)を作る際、重要な検査データを時系列で示したいときに、〈図2〉のように単位が異なる複数のデータを1つのグラフにまとめる必要がでてきます。そういった時に役立つ、2軸あるグラフをつくる方法をご紹介します。まず新しい軸を作りたいグラフを右クリックし、「データ系列の書式設定」を選択します。その中で、「第2軸(上/右側)」をクリックすると〈図3〉、〈図4〉のように2軸があるグラフを作成できます。頻繁に使うテクニックですので、ぜひ覚えておきましょう。〈図2〉〈図3〉〈図4〉講師紹介

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脳腫瘍の治療に人種格差が存在か/Lancet

 米国で原発性脳腫瘍患者の人種と、外科医による手術推奨の傾向について調べたところ、黒人患者に対しては、対白人患者に比べ、外科医が手術をしない選択肢を推奨する割合が高いことが示された。米国・ミネソタ大学のJohn T. Butterfield氏らが、レジストリベースのコホート試験で明らかにし、Lancet誌2022年12月10日号で発表した。著者は、「米国では原発性脳腫瘍患者への手術推奨において人種格差が存在する。その格差は、臨床的、人口統計学的、特定の社会経済的要因とは無関係なものであり、さらなる研究で、こうした偏見の原因を明らかにし、手術における平等性を強化する必要がある」とまとめている。新たに6種の脳腫瘍診断を受けた20歳以上を対象に分析 検討では、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベース(1975~2016年)と、American College of Surgeons National Cancer Database(NCDB、2004~17年)のデータが用いられた。 新たに髄膜腫、膠芽腫、下垂体腺腫、聴神経鞘腫、星細胞腫、乏突起膠腫の診断を受けた20歳以上で、腫瘍サイズと手術に関する推奨についての情報が得られた患者を対象に分析を行った。 主要アウトカムは、外科医が原発性脳新生物の診断時に、外科的切除の非実施を推奨するオッズ(OR)だった。臨床要素や人口統計学的要因、社会経済学的要素を盛り込み、多重ロジスティック回帰分析で評価した。黒人患者への手術非実施推奨の傾向は、直近10年間の限定データでも SEERとNCDBのデータにおいて、髄膜腫はSEERに6万3,674例、NCDBに22万2,673例、膠芽腫はそれぞれ3万5,258例と10万4,047例、下垂体腺腫は2万7,506例と8万7,772例、聴神経鞘腫は1万1,525例と3万745例、星細胞腫は5,402例と1万631例、乏突起膠腫は3,977例と9,187例が含まれていた。 臨床要素や、保険の状況、居住地域が農村部か都市部かなどの人口統計学的要因とは独立して、黒人患者に対しては外科医が手術の非実施を推奨する確率が高く、SEERデータセットを基に白人患者と比較した補正後ORは、髄膜腫が1.13(95%信頼区間[CI]:1.06~1.21、p<0.0001)、膠芽腫が1.14(1.01~1.28、p=0.038)、下垂体腺腫が1.13(1.05~1.22、p<0.0001)、聴神経鞘腫は1.48(1.19~1.84、p<0.0001)だった。 さらに、人種が不明の患者に対しても、外科医が手術の非実施を推奨する確率は、下垂体腺腫(補正後OR:1.80、95%CI:1.41~2.30、p<0.0001)、聴神経鞘腫(1.49、1.10~2.04、p=0.011)で高かった。 NCDBデータセットを用いた検証解析でも、黒人患者に対し外科医が手術非実施を推奨する確率が高いことが確認され、補正後ORは、髄膜腫が1.18(95%CI:1.14~1.22、p<0.0001)、膠芽腫が1.19(1.12~1.28、p<0.0001)、下垂体腺腫が1.21(1.16~1.25、p<0.0001)、聴神経鞘腫が1.19(1.04~1.35、p=0.0085)であり、患者の合併症とは独立していた。 SEERデータセットで直近10年間に限定し分析したところ、黒人患者に対する手術の非実施を推奨する確率は、髄膜腫(補正後OR:1.18、95%CI:1.08~1.28、p<0.0001)、下垂体腺腫(1.20、1.09~1.31、p<0.0001)、聴神経鞘腫(1.54、1.16~2.04、p=0.0031)で高かった。

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血液がん、今年押さえておくべき論文&学会発表【Oncology主要トピックス2022 造血器腫瘍編】

2022年に発表、論文化された造血器腫瘍の重要トピックを大阪医療センター 柴山 浩彦氏が一挙に解説。今年の造血器腫瘍領域におけるプラクティスチェンジの要点がわかる。1)Polatuzumab vedotin in previously untreated diffuse large B-cell Lymphoma. (Tilly H, et al. N Engl J Med. 2022;386:351-363.)未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する標準治療は、2000年代初頭に抗CD20抗体薬のリツキシマブが登場して以降、CHOP療法と併用するR-CHOP療法が、約20年間、標準治療であった。これまで、さまざまな治療法がR-CHOPと比較されてきたがR-CHOPを凌駕する治療法はなかった。抗CD79b抗体にリンカーを介してMMAEを結合した抗体薬物複合体のポラツズマブ ベドチン(Pola)をオンコビンと入れ替えたPola-R-CHP療法を二重盲検法でR-CHOPと比較したPOLARIX試験において、主要評価項目のPFSについて有意にPola-R-CHP療法が優る結果が示された。本試験の結果を基に、日本でも未治療DLBCLに対し、Pola-R-CHP療法が保険適応となり、新たな標準治療となる可能性が示された。2)Overall survival with brentuximab vedotin in stage III or IV Hodgkin’s lymphoma.(Ansell SM, et al. N Engl J Med. 2022;387:310-320.)未治療の進行期ホジキンリンパ腫に対し、標準治療であったABVD療法と、抗CD30抗体にリンカーを介してMMAEを結合した抗体薬物複合体のブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス)をブレオマイシンと入れ替えたA-AVD療法を比較した試験(ECHELON-1試験)にて、主要評価項目のmodified PFSは有意にA-AVD療法が優り、その結果は、NEJM誌に報告された。この結果によって、日本では未治療ホジキンリンパ腫に対するA-AVD療法が保険適用で使用可能となっている。その後、ECHELON-1試験は6年間のフォローアップが実施され、全生存期間(OS)についても、有意にA-AVDを受けた患者群がABVDを受けた患者群よりも優れていることが示された。この結果によって、A-AVD療法は未治療の進行期ホジキンリンパ腫に対する真の標準治療とみなすことができると考えられた。3)Ibrutinib plus bendamustine and rituximab in untreated mantle-cell lymphoma.(Wang ML et al. N Engl J Med. 2022;386:2482-2494.)Efficacy and safety of ibrutinib combined with standard first-line treatment as substitute for autologous stem cell transplantation in younger patients with mantle cell lymphoma: results from randomized triangle trial by the European MCL network.(ASH 2022 #1:プレナリー演題)再発・難治のマントル細胞リンパ腫(MCL)に対し、BTK阻害薬のイブルチニブは、保険適用での単剤治療が認められている。自家移植併用大量化学療法の適応とならない高齢未治療MCLに対し、BR療法との併用の第III相試験(プラセボとの比較、SHINE試験)の結果が約7年のフォローアップののちに2022年のASCOにて発表され、NEJM誌にpublishされた。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)においてイブルチニブ併用群が有意に優れているという結果であった。同様に、自家移植の適応となる未治療MCLに対し、自家移植を行わずとも、イブルチニブをR-CHOP/R-DHAP療法に併用し、その後、イブルチニブの維持療法を行うことで、FFS、OSともに差がみられなかったという結果が2022年ASHにおいてプレナリー演題として報告された。以上の2試験の結果、未治療MCLに対してはイブルチニブ併用の化学療法ののち、イブルチニブを維持療法として継続する治療が新たな標準治療となることが示された(日本では、2022年12月10日時点で未治療MCLに対するイブルチニブは未承認)。4)Triplet therapy, transplantation, and maintenance until progression in myeloma.(Richardson PG, et al. N Engl J Med. 2022;387:132-147.)自家移植併用メルファラン大量化学療法(Auto)の適応となる未治療多発性骨髄腫患者においては、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメサゾン併用療法(VRD療法)を3~4サイクル行い、自家末梢血幹細胞採取を行ったあと、Autoを行い、その後、レナリドミドやイキザゾミブによる維持療法を行うのが標準療法とされている。本試験(DETERMINATION試験)では、VRDを8サイクル行い、その後レナリドミドの維持療法を行う群と、3サイクル後にAutoを行い、その後2サイクルのVRDを追加したあとレナリドミドの維持療法を行う群にランダム化し、PFS、奏効率、OSを比較している。その結果、主要評価項目のPFSではAutoを行った群で有意に優れていたがCR以上の奏効率、OSには差を認めなかった。この試験の結果から、Up-frontのAuto治療は、全患者に画一的に行うより、患者ごとに決定することも許容されることが示された。5)Treatment of adults with Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic Leukemia-from intensive chemotherapy combinations to chemotherapy-free regimens: A review.TKIが登場し、Ph+ALLの治療成績は格段に向上した。現在の未治療Ph+ALLの標準治療は、TKIと化学療法の併用治療を行い、血液学的寛解を得たのちに、適格症例においては同種移植を行うこととなっている。最近になって、TKI(ダサチニブやポナチニブ)とCD3XCD19二重抗体薬のブリナツモマブを併用したケモフリー治療によるPh+ALLに対する良好な治療成績が報告されている。本論文では、それらの臨床試験の結果をレビューしており、第1寛解期における同種移植の役割を疑問視している。今後、TKI+ブリナツモマブのケモフリーレジメンによる治療で、分子学的寛解が得られた場合は、従来の化学療法や同種移植は不要となる可能性が示唆されている。6)Second-line Tisagenlecleucel or standard care in aggressive B-cell lymphoma. (Bishop MR, et al. N Engl J Med. 2022;386:629-639.)Axicabtagene Ciloleucel as second-line therapy for large-B cell lymphoma.(Locke FL, et al. N Engl J Med. 2022; 386:640-654.)Lisocabtagene maraleucel versus standard of care with salvage chemotherapy followed by autologous stem cell transplantation as second-line treatment in patients with relapsed or refractory large B-cell lymphoma (TRANSFORM): results from an interim analysis of an open-label, randomised, phase 3 trial. (Kamdar M, et al. Lancet. 2022;399:2294-2308.)再発・難治性DLBCLに対し、現在、日本では3種類のCD19-CAR-T細胞治療(Tisa-cel、Axi-celLiso-cel)を保険適用で行うことができる。それぞれのCAR-T治療をDLBCLの標準的2次治療(自家移植併用大量化学療法:Auto)と比較する試験が実施され、その結果が発表された。対象となる患者背景に違いを認めたり、標準治療群で、実際に、Autoが実施できた患者の割合が異なったりしており、これらの試験を横並びに比較することはできないが、主要評価項目のEFS(Event-free survival)において、Axi-celとLiso-celは標準治療群よりも有意に優れていたが、Tisa-celは差がなかった。これらの試験結果より、一部の患者において、2次治療としてのCAR-T治療の有用性が認められることが明らかとなったが、CAR-T治療は高額であり、実施できる施設も限られていることから、どのような患者に2次治療としてCAR-T治療を行うべきか、今後の実臨床での症例の蓄積を待つ必要がある。7)Treatment outcomes after undetectable MRD with first-line ibrutinib (Ibr) plus venetoclax (Ven): Fixed duration treatment (placebo) versus continued Ibr with up to 5 years median follow-up in the CAPTIVATE study.(ASH 2022 #92)CLLの治療において、BTK阻害薬(イブルチニブやアカラブルチニブ)単剤治療が、抗CD20抗体と化学療法薬を組み合わせた免疫化学療法よりもPFSやOSが優れていることが示されている。ただし、BTK阻害薬単剤治療では、深い奏効が得られることは稀であり、長い期間治療を継続する必要がある。BTK阻害薬のイブルチニブとBCL-2阻害薬のベネトクラクスを併用することで、約1年間の固定期間の治療で、MRD陰性の深い奏効が得られ、MRD陰性が得られた症例では、継続治療が不要であることが、本年のASHにおいて、4~5年のフォローアップのデータとして示された。今後、とくに、若年のCLL患者に対しては、BTK阻害薬、BCL-2阻害薬、さらに抗CD20抗体薬を併用するケモフリーレジメンで、約1年程度の固定期間の治療を行い、MRD陰性を目指す治療法が標準治療となる可能性が示された。

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周産期アウトカムに人種・民族性は影響するか/Lancet

 世界の20の高所得国と上位中所得国の、周産期アウトカムに関する人種および民族性の影響について解析した結果、母体特性を調整後、白人女性の産児との比較において、十分なサービスを受けていないグループで黒人女性の産児の周産期アウトカムが、評価した項目すべてで不良であることが示された。他のグループ(南アジア系、ヒスパニック系、その他)では、アウトカム項目によりリスクに差異があった。また、周産期有害アウトカムへの人種・民族性の影響について、地域差は認められなかった。英国・バーミンガム大学のJameela Sheikh氏らInternational Prediction of Pregnancy Complications(IPPIC)Collaborative Networkが、妊娠219万8,655例のメタ解析を行い、Lancet誌2022年12月10日号で報告した。これまで、妊娠アウトカムへの人種・民族性の影響に関するエビデンスは、特定の国および医療制度内で行われた個々の研究に限定されていた。新生児死亡、死産、早産、SGA児への人種・民族性の影響を評価 研究グループは、高所得国と上位中所得国の妊娠アウトカムへの人種・民族性の影響を評価し、格差がある場合はその大きさが地域によって異なるかを確認した。IPPICネットワークの妊娠合併症に関する試験データを用いて、個々の参加者データ(IPD)メタ解析を行った。 完全データセットは、94試験、53ヵ国の453万9,640例の妊娠から構成された。解析は、2以上の人種・民族グループ(白人、黒人、南アジア系、ヒスパニック系、その他)の周産期アウトカム(新生児死亡、死産、早産、在胎不当過小[SGA]児)を報告していた試験を対象とした。評価は2段階ランダム効果IPDメタ解析法にて行い、有向非巡回グラフ(directed acyclic graph:DAG)で選択した交絡変数(母親の年齢、BMI値、出産歴、教育レベル)に対する多重代入法を行った。 主要アウトカムは、新生児死亡と死産。副次アウトカムは、早産、SGA児であった。人種・民族と周産期アウトカムの関連を、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて推算。白人女性を対照群とするオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)値を報告し評価した。また、地域ごとの試験のサブグループ解析も行った。白人女性の産児と比べて黒人女性の産児は、新生児死亡・死亡リスクは2倍 20の高所得国と上位中所得国からの51試験、妊娠219万8,655例が、今回のIPDメタ解析の包含基準を満たした。 新生児死亡のリスクは、白人女性の産児と比べて黒人女性の産児は2倍高かった(OR:2.00、95%CI:1.44~2.78)。死産も同様であり(2.16、1.46~3.19)、また早産のリスク(1.65、1.46~1.88)、SGA児のリスク(1.39、1.13~1.72)も高かった。 ヒスパニック系女性の産児は、白人女性の産児と比べて新生児死亡リスクが3倍高かった(OR:3.34、95%CI:2.77~4.02)。南アジア系女性の産児は早産(1.26、1.07~1.48)、SGA児(1.61、1.32~1.95)のリスクが高かった。人種・民族性の早産およびSGA児への影響は地域による差異はみられなかった。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎、抗OX40抗体rocatinlimabの効果/Lancet

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)の成人患者に対し、開発中のヒト型抗OX40モノクローナル抗体rocatinlimabは、プラセボと比較して症状スコアの有意な改善を示し、投与終了後もほとんどの患者で改善が維持された。忍容性は良好であった。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のEmma Guttman-Yassky氏らが国際多施設第IIb相二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2022年12月9日号掲載の報告。4用量設定で対プラセボの有効性と安全性を評価 試験は、中等症~重症AD成人患者におけるrocatinlimabの有効性と安全性を評価することを目的とし、米国、カナダ、日本、ドイツの65の2次または3次医療センターで行われた。試験適格は、ADが確認された(American Academy of Dermatology Consensus Criteriaまたは各国診断基準による)中等症~重症の患者。重症度はEczema Area and Severity Index(EASI)スコア16超、検証済みInvestigator's Global Assessment for Atopic Dermatitisスコア3(中等症)または4(重症)で定義し、スクリーニングとベースラインにおいて皮疹が体表面積の10%以上にみられ、局所治療では効果不十分または局所治療が不適当の治療歴(1年以内)がある患者とした。 適格患者は二重盲検下で無作為に5群に割り付けられ(1対1対1対1対1)、rocatinlimabを4週ごと(150mgまたは600mg)もしくは2週ごと(300mgまたは600mg)あるいはプラセボの皮下投与を18週目まで受けた(最終投与は16週目)。被験者は18週時点で、18週間の延長試験(18~36週目)に組み込まれ実薬が投与された(rocatinlimab群に割り付けられていた被験者は同じ用量を、プラセボ群に割り付けられていた被験者は2週ごと600mgを投与)。さらに、投与中止後に20週間のフォローアップを受けた。 主要エンドポイントは、16週時点で評価したEASIスコアのベースラインからの変化率(%)。EASIスコアは延長試験期間、フォローアップ中にも評価した。評価対象は、無作為化を受け試験薬を投与され、ベースライン後(16週時点またはそれ以前で)EASIスコアが得られた全無作為化患者とした。 安全性は、無作為化を受け試験薬を投与された全患者を対象に評価(無作為に割り付けられた試験群で解析)した。16週時のEASIスコアの変化率、プラセボ群-15.0%、rocatinlimab群-61.1~-48.3% 2018年10月22日~2019年10月21日に、274例(女性114例[42%]、男性160例[58%]、平均年齢38.0歳[SD 14.5])がrocatinlimab群(217例[79%])またはプラセボ群(57例[21%])に無作為に割り付けられた。 ベースラインから16週のEASIスコアの最小二乗平均%変化は、プラセボ群(-15.0%[95%信頼区間[CI]:-28.6~-1.4])と比較して、rocatinlimab全用量群で有意に低かった。rocatinlimab各用量群の同変化率は、4週ごと150mg投与群-48.3%(-62.2~-34.0、p=0.0003)、4週ごと600mg投与群-49.7%(-64.3~-35.2、p=0.0002)、2週ごと300mg投与群-61.1%(-75.2~-47.0、p<0.0001)、2週ごと600mg投与群-57.4%(-71.3~-43.4、p<0.0001)。 二重盲検試験期間中にrocatinlimab群で最も一般的にみられた有害事象(rocatinlimab全投与群の患者の5%以上でプラゼボ群よりも一般的にみられた有害事象)は、発熱(36例[17%])、鼻咽頭炎(30例[14%])、悪寒(24例[11%])、頭痛(19例[9%])、アフタ性潰瘍(15例[7%])、悪心(13例[6%])であった。死亡例はなかった。

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貼付薬承認とgantenerumabの試験結果【コロナ時代の認知症診療】第22回

ドネペジルの貼付薬、使いどころは筆者は、コリンエステラーゼ阻害薬(ChE-I)の貼付薬を使うことが少なくない。ことに嚥下障害のある人、多剤・多量処方の人などではありがたい。また食欲不振の人で食欲が増すことを時に経験する。3種類のChE-Iのうち、リバスチグミンだけは貼付薬として流通している。本家のドネペジルでも以前から貼付薬開発の話があったが、容易でないという噂は前から聞いていた。この11月、帝國製薬のドネペジルを成分とする貼付薬であるアリドネパッチ27.5mgと55mgが承認された。適応は、アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制とされる。資料によれば、「通常、軽度~中等度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして、1日1回27.5mgを貼付する。高度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして、27.5mgで4週間以上経過後、55mgに増量する。なお、症状により1日1回27.5mgに減量できる。本剤は背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替える」とされる1)。本剤の登場で治療の選択肢が増すことはありがたい。やはり嚥下障害のある人、多剤・多量処方の人がターゲットだろう。筆者は、心密かに、「食欲に悪影響しないドネペジル張り薬」であって欲しいと期待している。というのはリバスチグミン治験に関する強い思い出があるからだ。この薬は、最初は飲み薬として試された。ところが胃腸症状と食欲不振が実に多くの患者で認められた。これを克服すべく貼付薬にリフォームしてなされた2回目の治験が成功した。筆者はいずれの治験にも参加したが、びっくりしたのは、食欲がむしろ改善するという効果が少なからぬ例で見られたことである。同じ成分の薬で、経口か皮膚吸収かで反対の効果なんて! という予想外の経験をしたわけだ。gantenerumabの試験結果をどう読み解く?さてこの数年、世界レベルの大きな治験がなされ、有力な疾患修飾薬として期待されていたのがgantenerumabであった。2022年11月、MCIと早期アルツハイマー病患者を対象にIgG1 mabである本剤の効果を評価したGRADUATE I試験、GRADUATE II試験の結果が発表された2)。両試験とも臨床症状の悪化抑制を検証した主要評価項目で有意差が得られなかった。この主要評価項目とは116週時点のCDR-SB(Clinical Dementia Rating-Sum of Boxes)のベースラインスコアからの変化量である。CDR-SBでは、記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会活動、家庭生活および趣味、介護状況を含む6つの領域について、認知機能と日常生活能を評価されたが、有意な効果が認められなかった。さらに、アミロイドβの除去レベルは想定より低かった。なお本剤の忍容性は、皮下による投与を含め、良好であった。実薬群において、浮腫または滲出液を伴うARIA-Eの発生は25%にみられたが、ほとんどが無症候性であり、投与の中断に至った例は少数であった。以上の結果は、副作用は少なかったが、効果も得られなかったと要約される。これらにより本剤の開発は中止になった。さてlecanemabに続くかと期待されたこのgantenerumabの失敗があっても、これからは疾患修飾薬の治験結果の発表・申請が続々となされるであろう。そこで承認されたとしても、今後の課題は少なくない。とくに重要と考えられるのは以下である。1)薬価と保険収載の有無、2)適応となるアルツハイマー病患者の特性、3)新薬が効く者・効かぬ者(レスポンダーか否か)の投与前判断が挙げられる。1)については、以前にも書いたが、保険収載にならず、費用が噂される年間数百万円であるのなら、新薬は多くの患者さんにとって福音とはならない。2)については若年性、遺伝性、初期・前駆期が基本である。しかしこの3項目に絞っても、投与要件の選び方によっては、数十万人の患者さんが投与対象になるかもしれない。となると国家財政にさえ少なからぬ影響を与えると役所側が考える可能性もある。3)が、臨床家にとって今後の最大の責務になるだろう。経験的にアミロイドPETや遺伝性の有無、発症年齢、認知機能テストの成績などと治療効果が相関するわけではない。それだけにエビデンスある予測の実現は容易ではない。おわりに、最近の新薬開発では、これまできわめて低いとされた脳血管関門(BBB)通過率をいかにして高めるかが大きなポイントだと聞く。ここが改善されたら、薬剤製造コストは下がり治療効率は上がって、これらの問題の克服につながるのではと期待される。参考1)厚生労働省「令和4年11月25日医薬品第一部会 事後ブリーフィング資料」2)Roche discontinues clinical trials of gantenerumab, after GRADUATE studies fail to meet their primary endpoints / Alzheimer Europe

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2022年のプラクティスチェンジ【Oncology主要トピックス2022 泌尿器がん編】【Oncologyインタビュー】第42回

2022年に発表、論文化された泌尿器がんの重要トピックを国立がん研究センター東病院 腫瘍内科 近藤千紘氏が一挙に解説。今年の泌尿器がんにおけるプラクティスチェンジの要点がわかる。2022年のプラクティスチェンジ進行腎がんにおける標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の併用療法およびICIと血管新生阻害チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の併用療法が主流になっている。2022年2月に、4種類目のICI+TKI療法である、ペムブロリズマブ+レンバチニブが適応承認となり、日常診療で用いられるようになった。この試験結果で、これまでの標準治療であったスニチニブと比較を行ったICI+TKI療法はすべて主要評価項目を達成したことになり、プラクティスチェンジとなったと結論付けられる。【CLEAR試験:307/KEYNOTE-581試験】また、腎がん領域では初となる術後薬物療法のペムブロリズマブが8月24日に保険適応を取得した。腎がんの術後薬物療法の開発は、TKIやmTOR阻害薬でこれまで評価されてきた。これらの薬剤は長期投与に伴う有害事象が問題となり、減量、中止をやむなくされることもあり、主要評価項目の無再発生存割合 (DFS)の延長は達成できても全生存割合 (OS)の改善までは示されず、各国で適応を取得するまでには至らなかった。ペムブロリズマブは、ICIで術後薬物療法の意義を検証した初の第III相試験であったが、DFSの延長という主要評価項目の達成のみで、保険適応を取得した。TKI単独療法と異なり、有害事象が比較的軽度であったことや、対象となる患者選択に成功した試験の結果を反映していると考えられる。【KEYNOTE-564試験】尿路上皮がんにおいて、ICIによる術後薬物療法として初となるニボルマブの保険適応が3月28日に承認された。尿路上皮がんのICIは、進行再発の2次治療としてペムブロリズマブが、1次治療のプラチナ併用化学療法後の維持療法としてアベルマブがすでに標準治療となっており、今回の保険承認は、さらに前の段階である術後における再発抑制効果を示したという薬物療法の歴史的な進歩の結果といえる。【CheckMate 274試験】非筋層浸潤性膀胱がんの術前化学療法では、長らくMVAC療法が無治療に比べてOSを改善する治療のエビデンスがあるとされてきた。しかしながら、毒性の強さには問題があることから、進行再発症例にて用いられるゲムシタビン+シスプラチン (GC)療法を用いることもガイドライン上では勧められてきた。進行再発症例におけるエビデンスとして、dose-dense MVAC療法は、MVAC療法に比べて安全性が高まり、病理学的奏効(pCR)割合が増加する治療法として注目され、術前化学療法での役割を期待された。2022年3月にJournal of Clinical Oncologyに出版された、筋層非浸潤性膀胱がんにおける術前療法としてのdose-dense MVAC(dd-MVAC)療法とGC療法のランダム化比較第III相試験の結果は、術前化学療法を考えさせられる重要なエビデンスであった。【VESPER試験:GETUG/AFU V05試験】【CLEAR試験; 307/KEYNOTE-581試験】1)2)CLEAR試験は、進行淡明細胞腎細胞がん患者を対象にレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法(Len+Pem)および、レンバチニブ+エベロリムス併用療法(Len+Eve)をスニチニブ単剤(Sun)と比較するランダム化比較第III相試験であり、1069例の対象症例が各群に1:1:1でランダム化割付された。主要評価項目は独立中央画像判定による無増悪生存期間(PFS)であり、2つの試験治療群のSunに対するハザード比(HR)は0.714と設定されていた。Len+Pemには90%の検出力および両側α=0.045を、Len+Eveには70%の検出力および両側α=0.0049で統計設定された。3群に割り付けられた患者背景に偏りはなく、Len+Pem群のIMDC予後因子分類ではFavorable/Intermediate/Poor riskに27.0/63.9/9.0%が含まれていた。PFS中央値は、Len+Pem群は23.9ヵ月、Len+Eve群は14.7ヵ月、Sun群は9.2ヵ月であり、Len+Pem群のSun群に対するHRは0.39(95%信頼区間[CI]:0.32~0.49、p<0.001)、Len+Eve群のSun群に対するHRは0.65(95%CI:0.53~0.80、p<0.001)であり、いずれも優越性が示された。Key Secondary endpointのOSにもαが配分されており、中間解析時点においてLen+Pem群でα=0.0227、Len+Eve群でα=0.0320が優越性の基準とされていた。観察期間中央値26.6ヵ月の時点のOS中央値は、Len+Pem群 到達せず、Len+Eve群 到達せず、Sun群 30.7ヵ月であり、Len+Pem群のSun群に対するHRは0.66 (95%CI:0.49~0.88、p<0.001)、Len+Eve群のSun群に対するHRは1.15(95% CI:0.88~1.50、p<0.30)であり、Len+Pem群のみ優越性が示された。客観的奏効割合(ORR)は、Len+Pem群で71.0%、Sun群で36.1%であり、奏効期間中央値はそれぞれ25.8ヵ月および14.6ヵ月であった。安全性において、Grade3以上の重篤な有害事象がLen+Pem群は82.4%、Sun群は71.8%であったが、プレドニゾロン換算で40mg以上のステロイド使用は15%と比較的少ない印象の結果となっている。【KEYNOTE-564試験】3)4)この試験は、腎がん術後で再発ハイリスクの定義にあてはまる症例を、ペムブロリズマブあるいはプラセボで1年間治療を行い、主要評価項目はDFS、HR:0.67を片側α=0.025、検出力95%で検証する統計設定であった。また1回目の中間解析において、α=0.0114を消費することとしていた。報告は、1回目の中間解析、観察期間中央値24.1ヵ月時点のものである。994人の患者が2群にランダムに割り付けられた。再発ハイリスクの定義は、T2で核異型度4あるいは肉腫様分化あり、T3以上、N1、転移巣切除後(M1 NED)であったが、実際のペムブロリズマブ群の患者背景はintermediate-to-highリスクのT2-3N0M0が86.1%、high riskのT4あるいはN1が8.1%、M1 NEDが5.8%であり、プラセボ群もほぼ同等の割合であった。DFSは両群ともに中央値に到達しなかったが、HR:0.68(95%CI:0.53~0.87、p=0.002)であり、ペムブロリズマブはプラセボと比較し再発のリスクを32%減少した。OSの結果はイベント数が少なく比較は困難であった。安全性に関し、重篤な有害事象はペムブロリズマブ群で32.4%、プラセボ群で17.7%とペムブロリズマブ群で多く認めたが、死亡はそれぞれ0.4%と0.2%と大きな差はなかった。なお、観察期間中央値30.1ヵ月時点のアップデートの結果が報告されたが、intermediate-to-highリスクのHRは0.68(95%CI:0.52~0.89)、highリスクのHRは0.60(95%CI:0.33~1.10)、M1 NEDのHRは0.28(95%CI:0.12~0.66)であり、いずれのリスクでも効果は十分ありそうだが、とくにM1 NEDにおいては治療の意義が大きいことが示唆される結果であった。【CheckMate 274試験】5)この試験は、筋層浸潤性尿路上皮がんの術後薬物療法として、ニボルマブとプラセボを比較したランダム化第III相試験であり、主要評価項目をDFSとし全体集団とPD-L1陽性(腫瘍のPD-L1発現;TPSで1%以上と定義)集団の両者に設定した。全体集団において、87%の検出力で両側α=0.025としHR:0.72、PD-L1陽性集団において、80%の検出力で両側α=0.025としHR:0.61を検証する統計設定となっていた。1回目の中間解析で全体集団ではα=0.01784、PD-L1陽性集団ではα=0.01282を消費することがあらかじめ決められていた。1回目の中間解析において、709例の患者がランダムに2群に割り付けられ、PD-L1陽性は282例であった。観察期間中央値は20.9ヵ月の時点であったが、全体集団のDFS中央値はニボルマブ群で20.8ヵ月、プラセボ群で10.8ヵ月であり、HR:0.70(95%CI:0.55~0.90)、p<0.001であった。またPD-L1陽性集団においては、HR:0.55(98.72%CI:0.35~0.85)、p<0.001と良好な結果を示した。なおOSの結果は現時点で報告はない。安全性においては、重篤な有害事象はニボルマブ群で42.7%、プラセボ群で36.8%であったが、新たなシグナルは認められなかった。本試験は、術後のニボルマブを検証した試験であったが、これまでの術後治療の試験にはない広い対象症例を含んでいた。シスプラチンに適格となる筋層浸潤膀胱がんでは術前化学療法(NAC)を行うことが標準であるため、このような集団では術後にypT2以上の残存病変がある場合に本試験に適格となった。一方シスプラチンに不適格となる筋層浸潤膀胱がんでは、NACのエビデンスはないため手術をまず行い、術後にカルボプラチンを含む化学療法を行うことを検討する。また上部尿路がんは術前の組織診断や病期診断が困難であるため、まず手術を選択することが多い。これらの手術先行症例においては、pT3以上であった場合にこの試験の対象となった。日常診療において、ニボルマブを必要な患者に届けるためには、術前からの治療計画を医療者だけでなく患者にも共有し、適切に治療を進めることが大切と思われる。【VESPER試験; GETUG/AFU V05試験】6)7)フランスで行われた周術期化学療法のランダム化比較第III相試験である。転移のない筋層浸潤性膀胱がんの患者をDose-dense MVAC療法(メトトレキサート30mg/m2 day1、ビンブラスチン3mg/m2 day2、ドキソルビシン30mg/m2 day2、シスプラチン70mg/m2 day2、G-CSF day3~9、2週ごと)6サイクルと、GC療法(ゲムシタビン1250mg/m2 day1、8、シスプラチン70mg/m2 day1、3週ごと)4サイクルの2群にランダムに割り付け、術前の症例は化学療法後に膀胱全摘術を行い、術後の症例は膀胱全摘後に化学療法を行った。主要評価項目は3年PFSであった。493例がランダム化され、PFS中央値はddMVAC群で64%、GC群で56%、HRは0.77(95%CI:0.57~1.02)、p=0.066であり、ネガティブな結果であった。副次評価項目であるpCR割合は、ddMVAC群で42%、GC群で36%(p=0.20)、OSはimmatureな段階ではあるが、ddMVAC群に良好な傾向(HR:0.74、95%CI:0.47~0.92)を認めていた。安全性では、重篤なものは両群同等であったが、ddMVAC群で多かったのは、貧血と無力症、消化器毒性であった。手術関連の合併症はGC群で20例、ddMVAC群で14例であった。NACかAdjuvantかを層別化因子に設定していたが、患者背景はAdjuvant症例においてリンパ節転移陽性がGC群73%、ddMVAC群60%、NAC症例ではcT4がGC群1.8%、ddMVAC群4.1%などと偏りがみられた。3年PFSにおける予後因子の多変量解析において、術前後の選択と化学療法の違いにinteractionがあったことから、Adjuvant症例とNAC症例は区別して検討することが望ましいと判明した。NAC症例においては、3年PFSはddMVAC群で66%、GC群で56%、HR:0.70(95%CI:0.51~0.96)、p=0.025であった。この結果を受けて米国National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインでは、ddMVAC療法をPreferred regimenに指定した。このレジメンを実際に適用する場合には、本試験に登録された患者背景から、63歳前後(最高でも68歳まで)であることも考慮して十分な副作用対策を講じる必要があると考える。参考1)Motzer R, Alekseev B, Rha SY, et al. Lenvatinib plus Pembrolizumab or Everolimus for Advanced Renal Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:1289.2)Motzer R, Alekseev B, Rha SY, et al. Lenvatinib plus Pembrolizumab or Everolimus for Advanced Renal Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:1289.3)Choueiri TK, Tomczak P, Park SH, et al. Adjuvant Pembrolizumab after Nephrectomy in Renal-Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 385:683.4)Powles T, Tomczak P, Park SH, et al. Pembrolizumab versus placebo as post-nephrectomy adjuvant therapy for clear cell renal cell carcinoma (KEYNOTE-564): 30-month follow-up analysis of a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol 2022,23:1133.5)Bajorin DF, Witjes JA, Gschwend JE, et al. Adjuvant Nivolumab versus Placebo in Muscle-Invasive Urothelial Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:2102.6)Pfister C, Gravis G, Fléchon A, et al. Dose-Dense Methotrexate, Vinblastine, Doxorubicin, and Cisplatin or Gemcitabine and Cisplatin as Perioperative Chemotherapy for Patients With Nonmetastatic Muscle-Invasive Bladder Cancer: Results of the GETUG-AFU V05 VESPER Trial. J Clin Oncol 2022, 40:2013.7)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, Bladder Cancer. Version 2.2022

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進行悪性黒色腫、TIL療法でPFSが延長/NEJM

 進行悪性黒色腫の治療において、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた養子免疫細胞療法は、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体であるイピリムマブと比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させ、病勢進行と死亡のリスクが半減したとの研究結果が、オランダがん研究所(NKI)のMaartje W. Rohaan氏らによって報告された。研究の成果は、NEJM誌2022年12月8日号に掲載された。欧州2施設の無作為化第III相試験 本研究は、進行悪性黒色腫の1次または2次治療におけるTILとイピリムマブの有用性の比較を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2014年9月~2022年3月の期間に、2施設(NKI、デンマーク国立がん免疫療法センター[CCIT-DK])で参加者の登録が行われた(Dutch Cancer Societyなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18~75歳、StageIIICまたはIVの切除不能または転移を有する悪性黒色腫の患者であった。被験者は、TILまたはイピリムマブ(3mg/kg[体重]、3週ごと、最大4回、静脈内)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 TIL群は、骨髄非破壊的リンパ球除去化学療法(シクロホスファミド+フルダラビン)を施行された後、5×109~2×1011個のTILを1回注入され、次いで高用量インターロイキン-2(60万IU/kg/回、8時間ごと、最大15回)の投与が行われた。 主要評価項目は、PFSであった。PFS、奏効割合が2倍以上に 168例が登録され、TIL群に84例、イピリムマブ群にも84例が割り付けられた。全体の年齢中央値は59歳(範囲26~77)、男性が100例(60%)であった。前治療歴のある患者は89%で、残りの11%は未治療だった。149例(89%)は、全身療法(術後抗PD-1療法が40例[24%]、抗PD-1療法による1次治療が105例[62%])を受けたのち病勢が進行した患者であった。追跡期間中央値は33.0ヵ月。 PFS中央値は、TIL群が7.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~13.1)と、イピリムマブ群の3.1ヵ月(3.0~4.3)に比べ有意に延長した(病勢進行と死亡のハザード比[HR]:0.50、95%CI:0.35~0.72、p<0.001)。6ヵ月時のPFS率は、それぞれ52.7%(95%CI:42.9~64.7)および21.4%(14.2~32.2)であった。 客観的奏効の割合は、TIL群が49%(95%CI:38~60)、イピリムマブ群は21%(13~32)であった。このうち、完全奏効がそれぞれ20%および7%、部分奏効は29%および14%であった。 全生存期間(OS)中央値は、TIL群が25.8ヵ月(95%CI:18.2~未到達)、イピリムマブ群は18.9ヵ月(13.8~32.6)であった(死亡のHR:0.83、95%CI:0.54~1.27)。2年OS率は、それぞれ54.3%および44.1%だった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、TIL群が全例、イピリムマブ群は57%で発現し、TIL群は主に化学療法関連の骨髄抑制であった。重篤な治療関連有害事象は、それぞれ15%および27%で認められた。TIL群では、前処置としてのリンパ球除去化学療法によるGrade 3以上の好中球数減少が全例で、インターロイキン-2関連の毛細血管漏出症候群(全Grade)が30%で発現した。 著者は、「本試験では、前治療歴のない集団、術後補助療法として抗PD-1療法を受けた集団、1次治療で抗PD-1療法を受けた集団において、無増悪生存期間中央値に大きな差はなかった。これは、TIL療法の1次治療としての可能性を示唆するが、治療法の選択では、患者や疾患の特性(脳転移、血清乳酸脱水素酵素の高値、全身状態不良)、潜在的な毒性などが重要な役割を担う」としている。

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英語で「私なら~します」は?【1分★医療英語】第59回

第59回 英語で「私なら~します」は?What do you think is the best next step in this case?(この症例で、次のステップとして何が最善だと思いますか?)I would order an abdominal CT.(私なら、腹部CTをオーダーします)《例文1》I would start empiric antibiotics.(私なら、経験的な抗菌薬治療を開始します)《例文2》What medication would you choose?(あなたなら、どの薬を選択しますか?)《解説》今回ご紹介するのは、「私なら」「あなたなら」という仮定法を用いた表現です。「仮定法」というと、“if”を使うイメージかもしれませんが、日常会話では、“if”を使わずに仮定法が使われることがよくあります。“I would order an abdominal CT.”という文頭の文章の前に、“If I were you~”(もし私があなたなら)が省略されている、と考えるとわかりやすいかもしれません。結果として、「私なら、腹部CTをオーダーします」という意味になります。ここで注意が必要なのは、“I will do it.”と“I would do it.”では、「音は似ていても、意味は大きく異なる」ということです。たとえば、指導医との会話で、指導医が“I will do it.”と言った場合、それをやるのは指導医であり、下級医は任せておけばよい状況です。一方で、指導医が“I would do it.”と言ったのであれば、指導医は「私なら、それをやる」と言っているだけで実際に指導医がやるわけではなく、上下関係の中での発言であれば、少し丁寧に「それをやってください」と言っているのに近く、命令に近いニュアンスです。実は私も渡米したばかりの頃に、この聞き間違いをしたことがあります。指導医が“I would order…”と言っていたのを“I will order…”と勘違いして、「指導医がやってくれるのか」と思い込んでいたら、後で、「やっておいてと言ったのに、なんでオーダーしていないの?」と怒られたのです。その時、“I would…”の恐ろしさを知りました。一語の違いで意味が180度変わってしまうのです。“if”が登場しない仮定法、聞き間違いをするとこんな風に大きく意味が変わってしまうので、ぜひ注意して聞くようにしてください。講師紹介

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第143回 運動意欲を腸内細菌が支える

病気の数々を防ぐ最も効果的な習慣である運動の意欲向上にどうやら腸内細菌が一役買っていることがマウス実験で示されました1)。先立つ研究で腸の微生物が筋肉や心肺機能、さらには脳の生理に関わることが知られています2)。ペンシルバニア大学の微生物学者Christoph Thaiss氏等はそれらの成果を紡ぎ、筋肉・心肺機能・脳を含むより多くの関わりによって生み出されるであろう運動能力への腸内微生物の貢献を調べることを試みました。Thaiss氏等はマウス199匹を用意し、抗生物質いくつかを使ってそれらマウスの腸内細菌を減らすか排除したときの運動性能を2つの手段を使って調べました2)。1つはしばらくの間走ることを強いて持久力を調べるトレッドミルで、もう1つはいつでも好きなだけ走ることができる回し車(wheel)です。どのマウスも飼育カゴの中で同様に自由に動き回ることが可能でしたが、腸内細菌が減ったマウスは腸内細菌がまともなマウスに比べてトレッドミル運動で疲れやすく、運動意欲が乏しくて回し車をあまり使いませんでした。行動を定着させる神経伝達物質・ドーパミンの生成に携わる脳の線条体神経の遺伝子の発現を調べたところ、運動の最中に発現するそれら遺伝子が腸微生物を欠くマウスでは鈍っていました。それらの神経を阻害して運動中のドーパミン生成を妨げたときの運動能力は腸微生物を制限するか完全に除去したときと同じように劣りました。以上の結果は脳でのドーパミン生成が運動意欲に確かに貢献しており、腸の微生物の構成がその調節に何らかの役割を担っていることを意味します。次の疑問は腸内細菌と脳のドーパミンを関連づける仕組みです。その解明のために胃腸と脳をつなぐ神経を阻害してトレッドミルと回し車の実験を再び行いました。その結果、腸-脳連結神経が遮断されていると腸微生物はまっとうでも腸微生物が乏しいマウスと同様の運動低下が生じ、マウスがどれだけ運動するかはその神経の刺激にかかっていると示唆されました。何がその神経を刺激するのかが次に調べられ、2つの細菌・Eubacterium rectale(ユウバクテリウム レクターレ)とCoprococcus eutactus(コプロコッカス ユウタクタス)が生み出す代謝物・脂肪酸アミド(FAA)から作られる神経伝達物質・内在性カンナビノイドが運動中に胃腸神経の受容体を刺激し、脳のドーパミン生成に至ることが判明しました。その腸-脳経路を刺激するとマウスはより走れるようになり、かたや末梢の内在性カンナビノイド受容体の阻害、脊髄の神経除去、ドーパミン阻害は腸微生物排除と同様にマウスをより走れなくしました。運動中の腸の細菌の働きのおかげで運動する意欲がより高まって運動がより身につくことを今回の結果は裏付けました。これまでの研究で運動能力が高いマウスは痛みの感じ難さを示すランナーズハイがより強烈であることが示されており、腸内細菌はよく知られるその高揚感にも携わっているかもしれません。今回のマウス実験で示されたのと同じ腸-脳経路がヒトでも存在するかどうかを研究チームは次に調べる予定です。ヒトでの研究が進めば巷の人に走る習慣を身に付けさせたり一流アスリートの運動能力を最適化する安上がりで安全な食事ベースの手段が実現するかもしれません。また、依存やうつ病で支障を来した気分や意欲の回復手段を生み出せる可能性もあります3)。参考1)Dohnalova L, et al. Nature. 2022 Dec 14. [Epub ahead of print]2)Mice With a Healthy Gut Microbiome Are More Motivated to Exercise / TheScientist3)Gut microbes can boost the motivation to exercise, Penn Medicine study finds / Eurekalert

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capivasertib+フルベストラント、CDK4/6治療歴によらずAI耐性進行乳がんでPFS延長(CAPItello-291)/SABCS2022

 アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のエスロトゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性進行・再発(ABC)乳がん患者において、AKT阻害薬capivasertib+フルベストラントが、プラセボ+フルベストラントと比較して無増悪生存期間(PFS)を約2倍に延長した。日本を含むグローバル第III相CAPItello-291試験の結果を、英国・王立マーズデン病院のNicholas Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。なお、本療法については第II相FAKTION試験で閉経後女性患者において全生存期間(OS)とPFSを有意に改善したことが報告されているが、CDK4/6阻害薬治療歴のある患者は含まれていなかった。・対象:閉経前/後のER+/HER-の進行・再発乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、ABCに対する治療歴として≦2ラインの内分泌療法・≦1ラインの化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも可、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴ありは不可、HbA1c<8.0%) ・試験群(Capi群):capivasertib 400mgを4日間投与3日間休薬で1日2回経口投与+フルベストラント500mg 355例・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 353例・評価項目:[主要評価項目]全体集団およびAKT経路に変異(≧1のPIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子変異)を有する患者におけるPFS[主要副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異を有する患者におけるOS、奏効率(ORR)[層別化因子]肝転移の有無、CDK4/6阻害薬治療歴の有無、地域 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はCapi群59歳vs.プラセボ群58歳、女性が両群とも約99%を占め、閉経後患者は81% vs.74%、アジア人が両群とも約27%、肝転移ありが44% vs.43%だった。・前治療歴は1ラインのABCに対する内分泌療法歴ありが81% vs.71%、CDK4/6阻害薬治療歴ありが両群とも約69%だった。また術前/術後化学療法歴ありが51% vs.48%だった。・AKT経路に変異を有する患者は44% vs.38%だった。・全体集団におけるPFS中央値は、プラセボ群3.6ヵ月に対しCapi群7.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.51~0.71、両側p<0.001)となり、Capi群で有意に改善した。・AKT経路に変異を有する患者におけるPFS中央値は、プラセボ群3.1ヵ月に対しCapi群7.3ヵ月(HR:0.50、95%CI:0.38~0.65、両側p<0.001)となり、Capi群で有意に改善した。・サブグループ別にPFSをみると、肝転移の有無およびCDK4/6阻害薬治療歴の有無を問わず、Capi群で改善がみられた。・全体集団におけるORRはプラセボ群12.2%に対しCapi群22.9%(オッズ比[OR]:2.19、95%CI:1.42~3.36)だった。・AKT経路に変異を有する患者におけるORRはプラセボ群9.7%に対しCapi群28.8%(OR:3.93、95%CI:1.93~8.04)だった。・immatureなデータではあるが、全体集団におけるOSのHRは0.74(95%CI:0.56~0.98)、AKT経路に変異を有する患者におけるOSのHRは0.69(95%CI:0.45~1.05)だった。・Capi群で多く報告されたGrade3以上の有害事象は、下痢(9.3% vs.0.3%)、斑状丘疹(6.2% vs.0%)、発疹(5.4% vs.0.3%)、高血糖(2.3% vs.0.3%)だった。治療中止につながる有害事象の発生は、13.0% vs.2.3%だった。 Turner氏は「capivasertib+フルベストラント併用療法は、内分泌療法ベースのレジメンで治療し進行したホルモン受容体陽性進行・再発乳がん患者における将来の治療オプションになる可能性がある」と結論付けた。OSフォローアップは進行中である。

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ビメキズマブ、乾癬性関節炎の症状を改善/Lancet

 腫瘍壊死因子α(TNFα)阻害薬の効果が不十分または不耐の乾癬性関節炎患者の治療において、ビメキズマブはプラセボと比較して、16週の時点での関節および皮膚の症状の改善効果が有意に優れ、安全性も良好であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoseph F. Merola氏らが実施した「BE COMPLETE試験」で示された。ビメキズマブは、インターロイキン(IL)-17FとIL-17Aの双方を選択的に阻害するヒト化モノクローナルIgG1抗体。IL-17FまたはIL-17Aのいずれかの単独阻害と比較して、in vitroでの炎症性サイトカインの反応をより効果的に抑制することが知られている。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年12月5日号で報告された。11ヵ国のプラセボ対照第III相試験 BE COMPLETE試験は、日本を含む11ヵ国92施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月~2022年2月の期間に、患者の登録が行われた(UCB Pharmaの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、スクリーニングの6ヵ月以上前にClassification Criteria for Psoriatic Arthritisの基準を満たした成人期発症の乾癬性関節炎で、乾癬性関節炎または乾癬の治療として1または2剤のTNFα阻害薬の投与を受けたが、効果不十分か不耐の患者であった。 被験者は、ビメキズマブ(160mg、4週ごと)またはプラセボの皮下投与を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、16週の時点における米国リウマチ学会(ACR)基準の50%以上の改善(ACR50)を達成した患者の割合とされた。エンドポイントがすべて改善 400例(平均年齢50.5[SD 12.5]歳、女性53%、平均罹患期間9.5[SD 9.3]年)が登録され、ビメキズマブ群に267例、プラセボ群に133例が割り付けられた。体表面積の3%以上が乾癬病変の患者が66%(264例)であった。77%(306例)が1剤のTNFα阻害薬で効果不十分、11%(45例)が2剤で効果不十分、12%(49例)はTNFα阻害薬に不耐だった。 16週時の階層法に基づく統計解析では、主要エンドポイントと副次エンドポイント(4項目)がすべて達成された。 ACR50を達成した患者の割合は、ビメキズマブ群が43%(116/267例)と、プラセボ群の7%(9/133例)に比べ有意に高かった(補正後オッズ比[aOR]:11.1、95%信頼区間[CI]:5.4~23.0、p<0.0001)。 ベースラインで体表面積の3%以上が乾癬病変であった患者における、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)の90%以上の改善(PASI 90)は、ビメキズマブ群が69%(121/176例)の患者で得られ、プラセボ群の7%(6/88例)に比べ有意に良好であった(aOR:30.2、95%CI:12.4~73.9、p<0.0001)。 また、ビメキズマブ群では患者報告による身体機能にも改善が認められ、健康評価質問票機能障害指数(HAQ-DI)とSF-36の身体的側面のQOLサマリースコア(PCS)がプラセボ群に比べ有意に優れた(HAQ-DIのベースラインからの変化量:ビメキズマブ群-0.38 vs.プラセボ群-0.07、SF-36 PCSのベースラインからの変化量:7.3 vs.1.4、いずれもp<0.0001)。 16週までに発現した治療関連有害事象の頻度は、ビメキズマブ群が40%(108/267例)、プラセボ群は33%(44/132例)であった。重篤な有害事象は、ビメキズマブ群の5例(2%)で認められた。重篤または重度の治療関連有害事象による投与中止はみられなかった。ビメキズマブ群で頻度の高い治療関連有害事象は、鼻咽頭炎(10例[4%])、口腔カンジダ症(7例[3%])、上気道感染症(6例[2%])であった。新たな安全性シグナルはみられず、死亡例もなかった。 著者は、「これらの結果は、臨床的に関心が高いサブグループであるTNFα阻害薬で効果不十分または不耐の集団において、ビメキズマブの高い有効性と忍容性を示すものである」とまとめ、「ビメキズマブの治療効果の発現は迅速で、1回投与後の4週目には有効性に関してプラセボとの間に大きな差が認められた。これは、日常生活への影響を軽減するために症状の緩和を優先する患者にとって価値があると考えられる」と指摘している。現在、非盲検下に延長試験が進行中で、これによりビメキズマブの長期的な有効性と安全性の評価が可能になるという。

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認知機能を学ぶオンラインカフェスペース「Cognition Cafe」公開【ご案内】

 ケアネットは、医療従事者に認知機能(cognition)を「知り」「学び」「考える」きっかけを届けるオンラインカフェスペース「Cognition Cafe」を公開した。 本サイトは、認知機能の理解を通して「人と関わる」「人が集まる」「社会復帰ができる」ことの実現を目的に、認知機能に関するさまざまなコンテンツや企画を発信するために立ち上げられた。現在(2022年12月)、実臨床に役立つ書籍や文献が紹介されているほか、認知機能に関するより専門的なコンテンツが掲載されている。本サイトは、認知機能改善に携わる精神科医師・リハビリ医師・看護師・心理士・ケアスタッフなどに向けて、認知機能を知り、また当事者の日常生活を改善するために必要な専門職の役割や知見を学ぶことを、リラックスできるカフェのようなオンライン空間で体験できる場を目指していく。 「Cognition Cafe」はこちらから

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HR+/HER2低発現早期乳がんの術前療法としてのT-DXdの有用性(TALENT)/SABCS2022

 ホルモン受容体陽性(HR+)かつHER2低発現の早期乳がん患者の術前補助療法として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)±内分泌療法の有効性と安全性を検討した医師主導第II相TRIO-US B-12 TALENT試験の結果、良好なpCR率とORRが得られたことを、米国・Massachussetts General Hospital、Harvard Medical SchoolのAditya Bardia氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2022)で発表した。・対象:HR+かつHER2低発現(IHC1+またはIHC2+でFISH-)で、手術可能なStage II~IIIの男性または閉経前/閉経後女性の乳がん患者 58例・治療方法:[T-DXd単独群]T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 29例[内分泌療法併用群]T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与+アナストロゾール錠1mg、1日1回投与(男性および閉経前女性にはGnRHアナログも投与) 29例・サイクル数:当初は6サイクルであったが、2022年2月に新規登録者と手術実施患者では8サイクルに修正された。・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効(pCR)率(ypT0/is ypN0)[副次評価項目]奏効率(ORR)、HER2発現の変化を含む腫瘍バイオマーカー、安全性・層別化因子:HER2発現、閉経状態 主な結果は以下のとおり。・2020年9月~2022年10月の間に、T-DXd単独群では29例中14例が6サイクルの治療を、7例が8サイクルの治療を完了して手術を受け、4例が治療中であった。内分泌療法併用群では29例中13例が6サイクルの治療を、8例が8サイクルの治療を完了して手術を受け、5例が治療中であった。・ベースライン時における年齢中央値はT-DXD単独群が59歳、内分泌療法併用群が55歳であった。T-DXD単独群ではStage IIAが27.6%、Stage IIBが44.8%、Stage IIIAが24.1%、Stage IIIBが3.4%で、内分泌療法併用群ではStage IIAが37.9%、Stage IIBが51.7%、Stage IIIAが10.3%、Stage IIIBが0%であった。HER2発現は、T-DXD単独群ではIHC1+が75.9%、2+が13.8%で、内分泌療法併用群ではIHC1+が86.2%、2+が6.9%であった。リンパ節転移陽性はT-DXD単独群が51.7%、内分泌療法併用群が55.2%であった。またKi-67値が30%以上の患者はT-DXD単独群が55.2%、内分泌療法併用群が65.5%であった。・ORRは、T-DXD単独群で68%(CR:8%、PR:60%)、内分泌療法併用群では58%(CR:8%、PR:50%)であった。・ベースライン時から手術までの間に、T-DXd投与により49%の患者のHER2発現(IHC)が変化した。このうち88%でHER2発現が低下した。・T-DXd投与後の残存腫瘍量(RCB)は、T-DXD単独群のRCB 0/Iが15%(0:5%、I:10%)、内分泌療法併用群のRCB 0/Iも15%(I:15%)であった。・T-DXdに関連するGrade3以上の有害事象は、T-DXD単独群では嘔気、倦怠感、下痢、頭痛、嘔吐、低カリウム血症、好中球減少、脱水、白血球減少で、内分泌療法併用群では倦怠感、嘔吐、下痢、頭痛、低カリウム血症であった。・間質性肺炎は、1例(Grade2)で生じ、治療中止後に回復した。 Bardia氏は、これらの結果から「本研究により、HR+かつHER2低発現の早期乳がん患者の術前補助療法として、T-DXdは有望な臨床効果が期待できることが示された。内分泌療法の上乗せによる効果の増強は認められなかったが、症例が少ないことに注意が必要である」とまとめた。

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妊娠希望で乳がん術後内分泌療法を一時中断した場合の再発リスク(POSITIVE)/SABCS2022

 HR陽性早期乳がんの若年女性において、妊娠を希望して術後補助内分泌療法を一時中断した場合のアウトカムを検討した前向き試験はない。今回、内分泌療法を2年間中断した場合の乳がん再発の観点から見た安全性について、前向き単群試験のPOSITIVE試験で検討した結果、短期的には再発リスクに影響がないことが示唆された。米国・Dana-Farber Cancer InstituteのAnn H. Partridge氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。・対象:術後補助内分泌療法を18~30ヵ月間受けたStageI~IIIのHR陽性乳がん患者で、妊娠を希望し内分泌療法を中断する42歳以下の閉経前女性・方法:内分泌療法を、wash out期間(3ヵ月)を含み、妊娠企図、妊娠、出産、授乳で2年間中断し、再開後5~10年追跡・評価項目:[主要評価項目]乳がん無発症期間(BCFI)[副次評価項目]妊娠および出生児のアウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・2014年12月~2019年12月に518例が登録された。登録時の年齢中央値は37歳(範囲:27~43歳)、75%が出産歴がなく、94%がStage I/IIであった。内分泌療法はタモキシフェン単独が最も多く(42%)、次いでタモキシフェン+卵巣機能抑制(36%)で、62%が術前もしくは術後化学療法を受けていた。・追跡期間中央値41ヵ月においてBCFIイベントが44例に発生し、3年間累積発生率は8.9%だった。これはSOFT/TEXT試験(Breast. 2020)の対照コホートで算出した9.2%と同様だった。・妊娠アウトカムを評価した497例中368例(74%)が1回以上妊娠し、317例(64%)が1回以上出産し、365児が誕生した。・その後の内分泌療法は、競合リスク分析によると76%が再開し、8%は再開前に再発/死亡し、15%は再開していなかった。 Partridge氏は「これらのデータは、若年の乳がん女性の治療とフォローアップに、患者中心の生殖医療を取り入れる必要があることを強調している」と述べた。なお、本試験は、内分泌療法の再開と乳がんのアウトカムをモニターするために、2029年までフォローアップ予定という。

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bDMARD未治療の乾癬性関節炎、ビメキズマブの有効性は?/Lancet

 生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)による治療歴がない乾癬性関節炎患者において、ビメキズマブはプラセボと比較して、16週時の関節、皮膚、画像的な有効性アウトカムについて有意な改善が認められた。真菌感染の発現を含むビメキズマブの安全性プロファイルは、尋常性乾癬患者を対象にしたIL-17A阻害薬のこれまでの第III相試験結果と一致していた。英国・グラスゴー大学のIain B. Mclnnes氏らが、14ヵ国135施設で実施された52週間の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照実薬(アダリムマブ)参照試験「BE OPTIMAL試験」の結果を報告した。ビメキズマブは、IL-17AおよびIL-17Fを選択的に阻害するモノクローナルIgG1抗体で、ビメキズマブの有効性と安全性は並行して実施されたBE OPTIMAL試験とBE COMPLETE試験の2つの第III相試験で検証された。Lancet誌オンライン版2022年12月6日号掲載の報告。ビメキズマブの有効性と安全性を対プラセボで検証 BE OPTIMAL試験は、52週間の無作為化二重盲検プラセボ対照実薬(アダリムマブ)参照試験で、16週間のプラセボ対照二重盲検期と、36週間の治療盲検期で構成される。本論では、事前に計画された24週時の主要解析結果が報告された。 適格基準は、18歳以上でスクリーニングの6ヵ月以上前から国際的な乾癬性関節炎の分類基準(CASPAR)を満たし、圧痛関節数(TJC)が3関節以上(68関節中)、腫脹関節数(SJC)が3関節以上(66関節中)、1ヵ所以上の活動性の乾癬病変または乾癬の既往患者で、乾癬性関節炎または乾癬に対して生物学的製剤の投与歴がある患者は除外した。 患者を、ビメキズマブ(1回160mgを4週ごとに皮下投与)群、プラセボ(2週ごとに皮下投与)群、アダリムマブ(1回40mgを2週ごとに皮下投与)群に3:2:1の割合で無作為に割り付けた(地域[北米、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、アジア]および骨びらん数[0または1以上]で層別化)。プラセボ群は、16週時にビメキズマブ(1回160mgを4週ごとに皮下投与)に切り替え、52週まで投与した。なお、本試験では、ビメキズマブ群またはプラセボ群と、アダリムマブ群を比較するための検出力はなかった。 主要エンドポイントは、米国リウマチ学会分類基準の50%以上改善(ACR50)を達成した患者の割合とし、解析にはnon-responder imputation法(評価が得られなかった症例はノンレスポンダーとして補完)を用いた。有効性解析対象集団は無作為化された全患者(intention-to-treat集団)、安全性解析集団は治験薬の投与を1回以上受けた患者とした。ACR50達成率はビメキズマブ群44%、プラセボ群10% 2019年4月3日~2021年10月25日の期間に、1,163例がスクリーニングを受け、852例がビメキズマブ群(431例)、プラセボ群(281例)、アダリムマブ群(140例)に無作為に割り付けられた。 16週時のACR50達成率は、ビメキズマブ群44%(189/431例)、プラセボ群10%(28/281例)、アダリムマブ群46%(64/140例)であり、プラセボ群と比較してビメキズマブ群で有意に高かった(オッズ比:7.1、95%信頼区間:4.6~10.9、p<0.0001)。 16週時までに治療下で発現した有害事象は、ビメキズマブ群で431例中258例(60%)、プラセボ群で281例中139例(49%)、アダリムマブ群で140例中83例(59%)報告された。死亡例はなかった。

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第24回 新型コロナ抗体薬の栄枯盛衰

どんどん効かなくなる抗体薬臨床現場で最も使った抗体薬といえば、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)です。2022年の初頭あたりは、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)とソトロビマブを大事に使っていました。当時院内在庫が3本しかなくて、結局のところ、軽症例で海外のようにレムデシビル(商品名:ベクルリー)が使えないかと声が上がり、軽症の入院患者さんの抗ウイルス薬は、基本的にレムデシビルという流れになったと記憶しています。オミクロン株がBA.2になって、スパイクタンパクのS371F変異が影響し、これまで効果的と考えられたソトロビマブも有効性が低下していきました1)。主に血液悪性腫瘍などの抗体価が得られにくい患者さんに対して、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)が予防的に用いられてきましたが、ここにきて再び変異ウイルスがBA.5からBQ.1.1などに変わりつつあります。最近、分離したBQ.1.1とXBBに対する抗体薬の効果は期待できないとする報告がありました2)。FRNT50(ウイルスの50%を中和する血清の希釈率の逆数)は表のとおりです。表. 抗体薬の効果(参考資料2をもとに筆者作成)もはや現在流通している抗体薬のすべてがBQ.1.1やXBBに効果を持たないことから、今後抗体薬が登場しても、またウイルスが変異して、といういたちごっこになる可能性があります。抗体薬はこのような変異が起こると、効果を失っていくのかと正直驚かざるを得ませんでした。頑張ってコマースした製剤が過去の薬剤になっていく構図は、製薬会社としてもつらいだろうなと思います。抗ウイルス薬は効果を保っている幸いにも抗ウイルス薬は変異ウイルスにも効果があることがわかっており、今後も使用されていくと思われます。塩野義製薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)は国際的には認められていませんが、重症化予防効果などのエビデンスが示されれば、使用が増えてくるかもしれません。現時点では、レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)に先んじて使用することは推奨されていません。12月9日に塩野義製薬から、エンシトレルビルの使用状況や副作用データをまとめた報告がありましたが、1,024人に処方されているものの、とくに重篤な副作用は報告されていないとのことです。参考文献・参考サイト1)Iketani S, et al. Antibody evasion properties of SARS-CoV-2 Omicron sublineages. Nature. 2022 Apr;604(7906):553-556.2)Imai M, et al. Efficacy of Antiviral Agents against Omicron Subvariants BQ.1.1 and XBB. N Engl J Med. 2022 Dec 7. [Epub ahead of print]

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術前化療でリンパ節転移が陰性化した乳がんのALND省略後の再発、SLNBとTADの比較(OPBC-04/EUBREAST-06/OMA)/SABCS2022

 リンパ節転移陽性乳がんで術前化学療法により転移が陰性化した患者において、診断がセンチネルリンパ節生検(SLNB)単独または標的腋窩郭清(TAD)併用のいずれであっても、腋窩リンパ節郭清(ALND)省略後の早期腋窩再発が非常にまれであったことを、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのGiacomo Montagna氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。再発率は、標的腋窩郭清併用でもセンチネルリンパ節生検単独より有意に低くはなかったという。 4つの前向き試験で、術前化学療法後にリンパ節転移陽性の患者においてセンチネルリンパ節生検の偽陰性率が10%を超えることが示されているが、これらの試験では全例が腋窩リンパ節郭清を実施しているため腋窩再発のデータはない。標的腋窩郭清により偽陰性率の低下が報告されているが、腋窩再発率の低下につながるかどうかは不明である。またこの設定で、腋窩病期診断のためにセンチネルリンパ節生検単独と標的腋窩郭清併用のいずれを用いるべきかコンセンサスは得られていない。今回Montagna氏らは、術前化学療法でリンパ節の病理学的完全奏効を達成し腋窩リンパ節郭清を省略した、リンパ節転移陽性乳がん患者の大規模なリアルワールド集団において、腋窩の局所浸潤再発率を評価し、さらにデュアルトレーサーマッピングによるセンチネルリンパ節生検もしくは標的腋窩郭清後の腋窩再発率を比較した。 本研究の対象は、T1-4かつN1-3(生検による)で、術前化学療法後にデュアルトレーサーマッピングによるセンチネルリンパ節生検もしくは標的腋窩郭清(センチネルリンパ節生検との併用、デュアルトレーサーマッピングの有無は問わない)による診断で病理学的にリンパ節転移陰性だった乳がん患者。腋窩再発、局所再発、あらゆる浸潤性再発(局所もしくは遠隔)の累積発生率を競合リスク分析で解析し、さらにセンチネルリンパ節生検と標的腋窩郭清の3年累積発生率をGray検定で比較した。 主な結果は以下のとおり。・2013年4月~2020年12月に適格となった1,144例(センチネルリンパ節生検666例、標的腋窩郭清478例)を評価した。年齢中央値は50歳、臨床的T2が57%、臨床的N1が95%、HER2陽性が54%であった。・術前化学療法レジメンはセンチネルリンパ節生検群と標的腋窩郭清群で違いが見られた。・センチネルリンパ節の摘出個数の中央値は、センチネルリンパ節生検群4個(IQR:3~5)、標的腋窩郭清群3個(四分位範囲[IQR]:2~4)だった(p<0.001)。リンパ節の平均摘出個数も同様に標的腋窩郭清群が少なかった。・リンパ節放射線治療実施は、センチネルリンパ節生検78%、標的腋窩郭清85%だった(p=0.005)。・腋窩再発率は、全体で3年時0.65%(95%信頼区間[CI]:0.29~1.3)、5年時1.0%(同:0.49~2.0)だった。3年腋窩再発率はセンチネルリンパ節生検(0.8%)と標的腋窩郭清(0.5%)で差がなかった(p=0.55)。・局所再発率は、全体で3年時1.5%(95%CI:0.83~2.4)、5年時2.7%(同:1.6~4.1)だった。3年局所再発率はセンチネルリンパ節生検(1.9%)と標的腋窩郭清(0.8%)で差がなかった(p=0.19)。・浸潤性再発率は、全体で3年時7.5%(95%CI:5.9~9.3)で、5年時10%(同:8.3~13)だった。3年浸潤性再発率はセンチネルリンパ節生検(7.3%)と標的腋窩郭清(7.3%)で差がなかった(p=0.60)。 Montagna氏は「これらの結果は、術前化学療法でリンパ節転移陰性となった患者でのリンパ節郭清省略を支持している」と結論した。

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長年の謎。ウイルス感染はなぜ寒い時期に増える?

 ウイルス性気道感染症は、冬の時期に増えることが知られているが、そのメカニズムはこれまで明らかになっていなかった。ハーバード大学のDi Huang氏らの研究グループは、上気道感染症の原因となるウイルスを撃退する鼻の中の免疫反応を発見した。さらに、この免疫反応は気温が低くなると抑制され、感染症が発生しやすくなることを明らかにした。本研究結果は、The Journal of Allergy and Clinical Immunologyオンライン版2022年12月6日に掲載された。 先行研究により、鼻孔の細胞が細菌やウイルスなどの病原体を検出すると、細胞外小胞(EV)が粘液中に放出され攻撃することが報告されている。そこで、健康人や手術を受ける患者から採取した鼻粘膜組織を用いて、Toll様受容体3(TLR3)を介した免疫応答における鼻腔上皮細胞由来EVの役割が検討された。具体的には、TLR3刺激による鼻腔上皮細胞由来EVの分泌や組成、EVの呼吸器ウイルス(コロナウイルス、ライノウイルス)に対する抗ウイルス活性とそのメカニズム、TLR3を介した抗ウイルス免疫に及ぼす低温の影響などが検討された。 主な結果は以下のとおり。・TLR3アゴニストのpoly(I:C)(polyinosinic-polycytidylic acid)への曝露により、TLR3シグナルを介して鼻腔上皮細胞由来EVの分泌が増加した。・鼻腔上皮細胞由来EVは、マイクロRNA(miR-17)の送達およびLDL受容体(LDLR)、接着分子ICAM-1などの表面受容体を介したウイルスとの結合・中和による抗ウイルス活性を通じて宿主をウイルス感染から保護することが示された。・健康人を室温の環境(23.3℃)から寒い環境(4.4℃)に移動させて15分経過すると、鼻の中の温度が約5℃低下した。そして、この温度低下を鼻粘膜組織に適用したところ、EVの総分泌量の減少、EV中のmiR-17量の低下、EV上のLDLR、ICAM-1の発現量の低下がみられ、EVの抗ウイルス活性が低下した。 著者らは、本研究の重要なポイントとして、「鼻腔上皮細胞由来EVが、TLR3を介した抗ウイルス免疫に関与していること」「鼻腔上皮細胞由来EVが、マイクロRNAの輸送および直接的にウイルスを中和することにより、感染を抑制していること」「寒い環境では、鼻腔上皮細胞由来EVを介した抗ウイルス活性が低下すること」の3点を挙げている。

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