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脱毛治療での栄養サプリ使用は、安全・有効か?

 脱毛治療のための栄養補助食品使用および食事介入は広く行われているが、安全性・有効性は不明のままである。米国・タフツ大学のLara Drake氏らはシステマティック・レビューの結果、脱毛治療における栄養補助食品使用は患者に利益をもたらす可能性があり、有害事象は報告されていないが、それらレジメンは当局の監視下にないことから、それぞれの試験デザインの条件下で安全性・有効性は解釈すべきものであるとの見解を示した。その上で、「医師は、脱毛患者にこれら治療の潜在的なリスクと利点を十分に説明して、共同意思決定をしなければならない」と述べている。また、今後の検討として、実薬比較による大規模な無作為化試験が求められると提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年11月30日号掲載の報告。 研究グループは、ベースラインで栄養不足が既知ではない患者の脱毛治療における、すべての食事および栄養介入の所見を、システマティック・レビューで評価し見解をまとめた。 MEDLINE、Embase、CINAHLのデータベースを、創刊~2021年10月20日まで検索。英語で執筆され、脱毛症または脱毛を有するベースラインで栄養不足が既知ではない患者における食事・栄養介入調査の、オリジナルな所見を報告している論文を特定した。 試験の質を、Oxford Centre for Evidence Based Medicine基準で評価。注目したアウトカムは、客観的および主観的に評価した疾患経過であった。データの評価は2022年1月3日~11日に行った。 主な結果は以下のとおり。・データベースの検索で、参照リストからの11論文を加えた6,347論文の引用が得られた。総計30論文(17本が無作為化臨床試験[RCT]、11本が臨床研究[non-RCT]2本がケースシリーズスタディ)が包含された。包含基準を満たした食事ベースの介入試験はなかった。・最も質の高いエビデンスを有する栄養介入の試験では、Viviscal、Nourkrin、Nutrafol、Lamdapil、Pantogar、カプサイシンとイソフラボン、抗酸化物質を含むオメガ3と6、リンゴの栄養補助食品、シャクヤクの総グルコシド、複合グリチルリチン・タブレット、亜鉛、トコトリエノール、パンプキンシードオイルの潜在的ベネフィットが示された。・キムチとチョングクジャン、ビタミンD3、およびForti5は、疾患経過の改善に関するエビデンスの質は低かった。・有害作用は、評価を受けたすべての治療でまれで軽症であった。

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コロナ重症例への治療、長期アウトカムは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重篤例への6つの治療(免疫調整薬治療、回復者血漿療法、抗血小板療法、抗凝固療法、抗ウイルス薬治療、コルチコステロイド治療)の検証が行われている「REMAP-CAP試験」から、事前規定の長期(180日)アウトカムの解析結果が、オーストラリア・メルボルン大学のAlisa M. Higgins氏ら同研究グループによって報告された。同試験の既報の主要アウトカム(短期21日)の報告では、IL-6阻害薬(免疫調整薬)にベネフィットがある一方、抗ウイルス薬、anakinra(免疫調整薬)、回復者血漿(免疫グロブリン)、抗凝固療法、抗血小板療法にはベネフィットがないことが示されていた。JAMA誌オンライン版2022年12月16日号掲載の報告。6つの治療について、180日目までの生存を解析 REMAP-CAP試験は、パンデミック/非パンデミックでの重度の肺炎患者に対する複数の治療を評価する国際多施設共同無作為化プラットフォーム試験で現在も進行中である。本論で報告されたCOVID-19重篤例への6つの治療の、事前に規定された2次解析には、14ヵ国197地点で2020年3月9日~2021年6月22日に4,869例のCOVID-19重篤成人患者が登録された。最終180日フォローアップは、2022年3月2日に完了した。 被験者は、6つの治療のうちの1つ以上の介入に無作為に割り付けられた(免疫調整薬治療群2,274例、回復者血漿療法群2,011例、抗血小板療法群1,557例、抗凝固療法群1,033例、抗ウイルス薬治療726例、コルチコステロイド治療401例)。 2次解析の主なアウトカムは、180日目までの生存で、ベイズ区分指数モデルを用いて解析した。ハザード比(HR)が1未満は生存の改善(優越性)を示し、1超は生存の悪化(有害)を示すものとした。無益性は、アウトカムでの相対的な改善が20%未満で、HRが0.83超で示される場合とした。6ヵ月生存改善の確率、IL-6阻害薬99.9%超、抗血小板療法95% 無作為化を受けた4,869例(平均年齢59.3歳、女性1,537例[32.1%])において、4,107例(84.3%)がバイタル情報を有し、2,590例(63.1%)が180日時点で生存していた。 IL-6阻害薬は、対照と比較した6ヵ月生存改善の確率が99.9%超であった(補正後HR:0.74、95%信用区間[CrI]:0.61~0.90)。抗血小板療法は、同95%であった(0.85、0.71~1.03)。 一方、試験定義の統計的な無益性(HR>0.83)の確率が高かったのは、抗凝固療法(確率99.9%、補正後HR:1.13[95%CrI:0.93~1.42])、回復者血漿療法(99.2%、0.99[0.86~1.14])、ロピナビル・リトナビル配合剤(抗ウイルス薬)(96.6%、1.06[0.82~1.38])で、有害である確率が高かったのはヒドロキシクロロキン(免疫調整薬)(96.9、1.51[0.98~2.29])、ロピナビル・リトナビル配合剤+ヒドロキシクロロキン(96.8、1.61[0.97~2.67])。コルチコステロイドは、早期に試験中止となり規定の統計解析要件を満たさなかったが、さまざまな投与戦略が用いられたヒドロコルチゾンの6ヵ月生存改善の確率は57.1~61.6%であった。 著者は、「全体的に、既報の短期の結果を踏まえて、当初の院内治療の効果は、ほとんどの治療で6ヵ月間変わらなかったことが示された」とまとめている。

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過体重・肥満の膝OA疼痛、食事・運動療法は有効か/JAMA

 過体重または肥満の変形性膝関節症患者では、18ヵ月間の食事療法と運動療法を組み合わせたプログラムは生活指導のみの場合と比較して、わずかだが統計学的に有意な膝痛の改善をもたらしたものの、この改善の臨床的な意義は不明であることが、米国・ウェイクフォレスト大学のStephen P. Messier氏らが実施した「WE-CAN試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年12月13日号に掲載された。米国の1州3郡での無作為化臨床試験 WE-CAN試験は、米国ノースカロライナ州の3つの郡(都市部1郡、農村部2郡)で行われた無作為化臨床試験であり、2016年5月~2019年8月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立関節炎・骨格筋/皮膚疾患研究所[NIAMS]の助成を受けた)。 対象は、年齢50歳以上、過体重または肥満(BMI値≧27)の変形性膝関節症(米国リウマチ学会基準で判定)の患者であった。被験者は、地域の施設で18ヵ月間の食事・運動介入を受ける群(介入群)またはattention control(生活指導)を受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、18ヵ月の時点におけるWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)の膝痛スコア(0[痛みなし]~20[重度の痛み]点)の差(臨床的に意義のある最小差[MCID]1.6点)であった。有意差はあるが、MCIDに達せず 823例が登録され、介入群に414例(平均年齢64.5歳、女性320例[77.3%]、平均体重100.7kg、平均BMI値36.7)、対照群に409例(64.7歳、317例[77.5%]、101.1kg、36.9)が割り付けられた。658例(80%)(介入群336例、対照群322例)が試験を完遂した。 18ヵ月の時点での補正後平均WOMAC膝痛スコアは、介入群が5.0点と、対照群の5.5点に比べ有意に改善した(補正後群間差:-0.6点、95%信頼区間[CI]:-1.0~-0.1、p=0.02)。 7項目の副次アウトカムのうち次の5項目で、介入群が対照群に比べ有意に改善した(ベースラインから18ヵ月後までの変化量)。体重(-7.7kg vs.-1.7kg、平均群間差:-6.0kg、95%CI:-7.3~-4.7、p<0.001)、ウエスト周囲長(-9cm vs.-4cm、-5cm、-7~-4、p<0.001)、WOMAC機能障害スコア(0~68点、点数が高いほど機能障害が重度、MICD:6点)(-9.2点vs.-5.5点、-3.3点、-4.9~-1.7、p<0.001)、6分間歩行距離(41m vs.-4m、43m、31~55、p<0.001)、SF-36身体機能スコア(0~100点、点数が高いほど身体機能が良好、MICD:5点)(6.7点vs.2.1点、3.8点、2.5~5.2、p<0.001)。 重篤な有害事象が169件(介入群70件、対照群99件)発現したが、試験と明らかに関連するものはなかった。729件の有害事象のうち32件(4%)が試験と関連し、身体の負傷が10件(介入群9件、対照群1件)、筋挫傷(肉離れ)が7件(6件、1件)、つまずき/転倒が6件(6件、0件)などであった。 著者は、「食事療法と運動療法による7.7kg(8%)の減量と、ウエスト周囲長の9cmの短縮は、変形性膝関節症の高齢者に健康上の利益をもたらす可能性がある」としている。

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EGFR陽性肺がんオシメルチニブ1次治療の有用性、35ヵ月のリアルワールド追跡(OSI-FACT)/日本肺癌学会

 EGFR陽性肺がんの1次治療においてオシメルチニブはスタンダードだが、同レジメンを大規模に観察したリアルワールドデータはない。第63回日本肺癌学会学術集会では、愛知県がんセンターの大矢由子氏により、同治療の有効性と安全性をリアルワールドで評価したOSI-FACT試験の追跡結果が発表された。 対象は、2018年8月〜2019年12月にHanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)を中心に登録された、EGFR変異陽性NCSLC患者538例。これらの患者を後ろ向きに解析した。データカットオフは2022年2月28日で、追跡期間中央値は35.0ヵ月である。 主な結果は以下のとおり。・対象には、グローバル試験の適格基準外となる、ECOG PS≧2(16.2%)、EGFR希少変異(5.5%)、症候性脳転移(6.1%)、髄膜炎(1.1%)。症候性胸水・腹水(9.7%)、間質性肺炎合併例(1.7%)も含まれている。・オシメルチニブ1次治療のPFS中央値は20.2ヵ月であった(観察期間中央値34.4ヵ月)。・OS中央値は未到達であった。・EGFR変異サブタイプによるPFS:exon19delでは26.3ヵ月、L858Rでは16.6ヵ月であった。・PD-L1発現レベル別のPFS:PD-L1<1%では27.89ヵ月、1〜49%では15.61ヵ月、≧50%では10.48ヵ月であった。・奏効率は79.8%、病勢制御率は94.0%であった。・治療中断例は28.1%であった。・肺臓炎の発現は全Gradeで15.7%、Grade3以上は5.2%であった。また、肺臓炎は中長期的にも発現していた。

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餅は胃内で硬くなる!?胃に丸餅10個確認された症例

 毎年、年末になると餅による窒息の注意が喚起されるが、餅の胃内滞留はほとんど知られていない。胃酸が餅を溶かすと誤解されているが、雑煮など温かい汁物の中では柔らかい餅が、胃内の温度では胃液で溶けない程度に硬くなる。そのまま餅が胃内に滞留すると、胃潰瘍や胃穿孔を引き起こす可能性があるので、小児や高齢者以外も注意が必要だ。今回、雑煮の餅を噛まずに飲み込んで胃内に滞留し、腹痛で来院した症例について、名手病院(和歌山県紀の川市)の川西 幸貴氏らがClinical Case Report誌オンライン版2022年12月5日号に報告した。 症例は、腹痛を主訴に受診した65歳女性。腹部CTで胃内に多層の円弧状の高密度な物体を認めた。患者は雑煮の3cmの餅を数個、十分に噛まずに食べていたという。緊急内視鏡検査では原形を留めた丸餅10個が確認され、5日間もそのままの状態だった。本症例に対して、内視鏡でスネアを用いて電流を流さずに餅を1cm以下にスライスし、消化酵素配合剤を処方した。2日後、内視鏡検査で餅はすべて消失し、腹部CTでも腸内に餅は残存していなかった。 川西氏らは「餅が胃内に滞留した場合は早急に内視鏡的処置が必要なため、消化器内科医だけでなく、プライマリケア医や救急医も治療法について熟知しておく必要がある」としている。

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HR+/HER2+転移乳がん1次治療、ET有無の転帰への影響

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(ERBB2+)転移乳がん(MBC)患者における内分泌療法(ET)の位置付けは明確になっていない。フランス・Institut CurieのMarcela Carausu氏らは、HER2陽性患者におけるホルモン受容体の状態やETの1次治療での投与有無と転帰の関連を評価することを目的としてコホート研究を実施。JAMA Network Open誌2022年12月15日号に報告した。 本研究は、フランスの臨床疫学・医療経済(ESME)コホートの臨床データを解析したもので、2008~17年に治療を開始したMBC患者が含まれた。最終フォローアップ日は2020年6月18日。ETによる維持療法と転帰との関連を評価するために、対象患者にはHER2標的療法の第1選択薬に加え、化学療法(CT)±ETあるいはET単独療法が行われた。 Kaplan-Meier法による全生存期間(OS)と初回治療の無増悪生存期間(PFS)が主な評価項目とされ、予後因子を報告・調整するために、Cox比例ハザードモデルおよび傾向スコアが構築された。多変量解析では、転移・再発の年齢、転移・再発までの期間、転移部位数、転移の種類、PSが考慮された。 主な結果は以下のとおり。・HER2陽性のMBC女性患者4,145例のうち、2,696例がHR+(年齢中央値:58.0歳)、1,449例がHR-(56.0歳)の腫瘍を有していた。・HR+ vs.HR-患者のOS中央値は、55.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:53.7~59.4)vs.42.0ヵ月(95%CI:38.8~45.2)、ハザード比(HR):1.40(95%CI:1.26~1.56、p<0.001)だった。・HR+ vs.HR-患者のPFS中央値は、12.2ヵ月(95%CI:11.5~12.9)vs.9.8ヵ月(95%CI:9.2~11.0)、HR:1.15(95%CI:1.06~1.26、p<0.001)だった。・多変量解析の結果、HER2標的療法の種類(トラスツズマブまたはトラスツズマブ+ペルツズマブ)にかかわらず、HER2標的療法+CT(±ET)を受けた患者1,520例とHER2標的療法+ETを受けた患者203例のOSまたはPFSに有意差は認められなかった。・傾向スコアマッチングの結果、HER2標的療法+CTを受けた患者をET療法の有無により時間依存のCoxモデルで比較すると、ETを受けた患者は同時期にまだETを受けていない患者よりも有意にPFSが良好だった(調整HR:0.70、95%CI:0.60~0.82、p<0.001)。なお、ETをCT開始の3ヵ月前または24ヵ月後に開始した場合には、関連は認められなかった。・さらに、CT開始後6ヵ月以上経過してからETを開始した場合にのみ、ETを受けた患者はETを受けなかった患者よりもOSが有意に良好だった(調整HR:0.47、95%CI:0.39~0.57、p<0.001). 著者らは、本研究が後ろ向きのコホート研究であることに触れたうえで、ETを含む1次治療レジメンが、HR+/HER2+MBC患者において有益である可能性が示唆されたとまとめている。

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CDK4/6阻害薬+ETで増悪したHR+/HER2-転移乳がん、パルボシクリブ継続投与は有効か(PACE)/SABCS2022

 CDK4/6阻害薬+内分泌療法(ET)による治療で増悪した、ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)転移乳がん(MBC)患者において、CDK4/6阻害薬を継続投与すべきかは明らかでない。増悪後、フルベストラントへの変更を伴うパルボシクリブの継続が、フルベストラント単独への変更よりも転帰を改善するかどうかを前向きに評価し、パルボシクリブ・フルベストラント・アベルマブの3剤投与の活性を探る第II相PACE試験の結果を、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のErica L. Mayer氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。・対象:CDK4/6阻害薬+ETで増悪したHR+/HER2-MBC患者(MBCに対するETが≦2ライン/化学療法が0~1ライン、フルベストラント治療歴なし)・試験群フルベストラント+パルボシクリブ群(F+P群):フルベストラント 500mg+パルボシクリブ 125mg 111例フルベストラント+パルボシクリブ+アベルマブ群(F+P+A群):フルベストラント 500mg+パルボシクリブ 125mg+アベルマブ 10mg/kg 54例・対照群(F群):フルベストラント 500mg 55例・評価項目:[主要評価項目]F+P群とF群のRECIST評価による無増悪生存期間(PFS)の比較[副次評価項目]F+P+A群とF群のPFSの比較、奏効に関するエンドポイント、安全性、ESR1/PIK3CA/Rbなどのあらかじめ定義された分子的サブグループにおける転帰※ctDNA解析のための血液は、ベースライン時、腫瘍評価時(8週ごと)、進行時に採取された。 主な結果は以下のとおり。・2017年9月~2022年2月に米国の13施設から220例が組み入れられ、F群:F+P群:F+P+A群に1:2:1の割合で無作為に割り付けられた。2022年7月のデータロック時点での追跡期間中央値は23.6ヵ月。・ベースライン特性は3群でバランスがとれており、全体の年齢中央値は57(25~83)歳、閉経後が81%、de novo症例が40%、内臓転移例が60%だった。前治療で使用されたCDK4/6阻害薬はパルボシクリブが91%を占め、前治療(CDK4/6+ET)からの期間は>12ヵ月が76%だった。16%がMBCに対する化学療法歴を有していた。・PFS中央値は、F群4.8ヵ月に対しF+P群4.6ヵ月(ハザード比[HR]:1.11、90%信頼区間[CI]:0.74~1.66、p=0.62)で改善はみられなかった。・F群と比較したF+P+A群のPFS中央値は、8.1ヵ月でHR:0.75、90%CI:0.47~1.20、p=0.23だった。・PFSのサブグループ解析の結果、最初のCDK4/6阻害薬による治療から本試験の治療までの間に化学療法などの他治療を受けていた患者および内分泌療法抵抗性の患者でパルボシクリブ継続のベネフィットがある傾向がみられた。・ベースライン時の分子的サブグループ別にPFSをみると、ESR1およびPIK3CA変異を有する患者でパルボシクリブ継続のベネフィットがある傾向がみられた。・奏効率(ORR)はF群10.8% vs.F+P群13.7% vs.F+P+A群17.9%、臨床的ベネフィット率(CBR)は29.1% vs.32.4% vs.35.2%だった。・Grade3以上の有害事象について、F+P群でみられたのは好中球減少症(32.7%)、貧血(4.5%)、疲労(1.8%)など。F+P+A群でみられたのは好中球減少症(49.1%)、疲労(5.7%)などだった。・免疫関連有害事象の発生率は低く、予期せぬ有害事象は報告されていない。 ctDNAおよび血中循環腫瘍細胞(CTC)の連続サンプルの評価が継続中で、変異や耐性と治療効果の関連、および免疫療法に感受性のあるマーカーが探索される予定となっている。

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MCIやアルツハイマー病患者でみられる嗅覚識別能力の低下

 金城大学の吉武 将司氏らは、地域在住高齢者において、軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病(AD)の嗅覚同定能力を調査し、識別困難なにおいの特定を試みた。その結果、MCIやADの高齢者は認知機能が正常な高齢者と比較し、嗅覚同定能力の低下が認められた。このことから著者らは、認知症患者に対し嗅覚刺激に関連する治療介入を行う前に、嗅覚の評価を行うことが重要であるとしている。Journal of Physical Therapy Science誌2022年11月号の報告。 対象は、MCI高齢者(MCI群)12例、AD高齢者(AD群)17例、どちらでもない高齢者(対照群)30例。嗅覚同定能力は、においスティック(OSIT-J)による検査を用いて評価し、スコアの群間比較および群間差を調査した。次に、各においに対する正答率の群間比較を行い、識別困難なにおいの特定を試みた。 主な結果は以下のとおり。・MCI群およびAD群のOSIT-Jスコアは、対照群と比較し、有意に低かった。・刺激臭の正確な識別には、群間差が認められなかった。・AD群では、調理ガスのにおいの識別が困難であった。・MCI群およびAD群では、食物に関連するにおいの識別能力の低下が認められた。

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二重抗体薬talquetamab、再発難治多発性骨髄腫に有望/NEJM

 再発/難治性多発性骨髄腫患者において、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)とCD3に対する二重特異性T細胞誘導抗体であるtalquetamabの405μg/kg週1回ならびに800μg/kg隔週の皮下投与は、いずれも同様の安全性プロファイルと有効性を示すことが、米国・マウントサイナイ医科大学のAjai Chari氏らによる第I相の「MonumenTAL-1試験」で明らかとなった。GPRC5Dは、正常なヒトの組織にはほとんど発現しておらず、悪性形質細胞に過剰発現しているオーファン受容体である。talquetamabは、GPRC5DとCD3の両方に結合してT細胞を動員および活性化し、GPRC5D発現骨髄腫細胞の殺傷を誘導する。著者は、「CAR-T細胞療法だけでなく二重特異性抗体によるアプローチでの抗骨髄腫活性は、GPRC5Dが骨髄腫の治療標的であることを立証している」とまとめている。NEJM誌2022年12月15日号掲載の報告。前治療が多い再発/難治性多発性骨髄腫患者で各用量の静脈内投与と皮下投与を検討 本試験は、用量漸増期(パート1)と拡大投与期(パート2)で構成されている。対象は、確立された既存の治療法(中央値で前治療歴6ライン)で病勢進行した、または許容できない副作用のためそれら確立された既存治療を受けることができない、18歳以上の再発/難治性多発性骨髄腫患者で、talquetamabの静脈内投与(ステップアップ投与ありまたはなしで0.5~3.38μg/kgを週1回または隔週、5~180μg/kg週1回)、または皮下投与(ステップアップ投与ありで5~405μg/kgを週1回、800μg/kgを週1回または隔週、1,200μg/kgを隔週、1,600μg/kgを月1回)を実施した。 主要評価項目は、用量制限毒性(DLT)の頻度と種類(パート1のみ)、有害事象および臨床検査値異常、副次評価項目は奏効率、薬物動態、薬力学および免疫原性であった。 2018年1月3日~2021年11月15日の期間に288例がスクリーニングを受け、適格患者232例が登録されtalquetamabの投与が行われた(静脈内投与:102例、皮下投与:130例)。405μg/kg週1回皮下投与で奏効率70%、奏効持続期間中央値約10ヵ月 用量漸増期(パート1)において、DLTは4例報告された。内訳は、Grade4のリパーゼ上昇1例(7.5μg/kg週1回静脈内投与群)、Grade3の斑状丘疹状皮疹2例(135μg/kg週1回皮下投与群、800μg/kg週1回皮下投与群)、Grade3の皮疹1例(800μg/kg隔週皮下投与群)であった。安全性、有効性、薬物動態および薬力学データに基づき、拡大投与期(パート2)の用法・用量として405μg/kg週1回および800μg/kg隔週の皮下投与が選択された。 405μg/kg週1回皮下投与群30例、800μg/kg隔週皮下投与群44例における主な有害事象は、サイトカイン放出症候群(発現率はそれぞれ77%、80%)、皮膚関連事象(67%、70%)、味覚異常(63%、57%)などであった。ほとんどはGrade1または2であり、Grade3のサイトカイン放出症候群は405μg/kg群で1例認められた。 追跡期間中央値11.7ヵ月(405μg/kg群)または4.2ヵ月(800μg/kg群)において、奏効率はそれぞれ70%(95%信頼区間[CI]:51~85)、64%(95%CI:48~78)、奏効持続期間中央値はそれぞれ10.2ヵ月および7.8ヵ月であった。

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IO+Chemoへのベバシズマブ add onの成績(APPLE)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療はIO+化学療法にパラダイムシフトしている。ベバシズマブは化学療法の効果を増強することが報告されているだけでなく、VEGF阻害に伴う免疫抑制の解除による免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果増強も期待されている。 そのような中、NSCLCおいて、ICIであるアテゾリズマブ・化学療法併用へのベバシズマブの追加効果を評価するAPPLE試験が行われている。第63回 日本肺癌学会学術集会では、APPLE試験の初回解析結果を九州大学病院の白石 祥理氏が発表した。・ 対象:未治療のStageIII/IVの非扁平上皮NSCLC・試験薬群:アテゾリズマブ+化学療法(CBDCA+ペメトレキセド)+ベバシズマブ 4サイクル→アテゾリズマブ+化学療法+ベバシズマブ PDまで最長2年投与(APPB群)・対照薬群:アテゾリズマブ+化学療法(CBDCA+ペメトレキセド) 4サイクル→アテゾリズマブ+化学療法 PDまで最長2年投与(APP群)・評価項目: [主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS) PFSのハザード比[HR]は0.727に設定された。 [副次評価項目]治験担当医評価のPFS、全生存期間(OS)、奏効率(RR)、奏効期間、有害事象 主な結果は以下のとおり。・ITT集団のPFS中央値はAPPB群9.6ヵ月、APP群7.7ヵ月で、HRは0.86(95%信頼区間[CI]:0.77~1.07、p=0.92)であり、当初の基準に及ばず、主要評価項目は達成されなかった。・OS中央値はAPPB群29.4月、APP群25.3ヵ月であった(HR:0.86、95%CI:0.65~1.13)。・RRはAPPB群63%、APP群51%であった。・サブグループを見ると、APPB群のPFSが良好であったドライバー遺伝子異常陽性、肝転移であった。・EGFR変異陽性例のPFS中央値はAPPB群9.6ヵ月、APP群5.7ヵ月で、HRは0.70(95%CI:0.46~1.06)であった。・治療関連有害事象はAPPB群2.4%、APP群0.5%に発現した。安全性プロファイルは従来と同様であった。

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急性心不全へのGDMTの早期増量と頻回なフォローアップで再入院リスクは減少する?(解説:原田和昌氏)

 診療ガイドライン推奨の心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)は、通常慢性期に推奨用量を目標に漸増するものであり、急性心不全による入院後に、いつごろからどのくらいの時間で、どの用量まで増量するかのエビデンスはほとんどない。心不全入院後の頻回なフォローアップだけでは、これまで有効性は示されなかった。急性心不全(HFrEFが68%、HFpEFが15%)による入院後に、GDMTの早期漸増に加えて頻回なフォローアップ(90日で5回)を行うという強化治療戦略は、通常治療と比較して症状軽減、QOL改善、180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクの減少をもたらすことが、Mebazaa氏らの多施設共同無作為化非盲検並行群間試験であるSTRONG-HF試験により示された。 14ヵ国の87病院において、急性心不全で入院し退院予定日前2日以内に経口心不全治療薬の最大用量を投与されていない18~85歳の患者を対象に、2週間でGDMTを目標用量まで漸増する強化治療と通常治療とを比較した。左室駆出率(≦40% vs.>40%)で層別化して、通常治療群または高強度治療群(β遮断薬、RAS阻害薬またはARNI、MR拮抗薬)に1対1の割合で無作為に割り付けた。高強度治療群では無作為化後2週間以内に推奨用量の100%まで治療薬を漸増し、無作為化後1・2・3・6週時に臨床状態、臨床検査値、NT-proBNP値を評価した。主要評価項目は、180日以内の心不全による再入院または全死亡で、ITT集団を対象に有効性と安全性を評価した。なお、主要評価項目の群間差が予測より大きかったため、本試験は2022年9月23日に早期中止となった。 1,078例が高強度治療群(542例)または通常治療群(536例)に無作為化された。平均(±SD)年齢63.0±13.6歳、男性61%であった。180日以内の心不全による再入院または全死亡は、高強度治療群で506例中74例、通常治療群で502例中109例発生した(補正後リスク差:8.1%[95%信頼区間[CI]:2.9~13.2]、p=0.0021、リスク比:0.66[95%CI:0.50~0.86])。高強度治療群は通常治療群と比較して、90日目までに経口心不全治療薬を最大用量まで漸増された患者の割合が高かった(RAS阻害薬:55% vs.2%、β遮断薬:49% vs.4%、MR拮抗薬:84% vs.46%)。また、高強度治療群は通常治療群より、90日目までに血圧、心拍数、NYHA分類、体重およびNT-proBNP値が改善した。90日以内の有害事象は、高強度治療群(223/542例、41%)が通常治療群(158/536例、29%)より多く認められたが、重篤な有害事象の発現率、致死的有害事象の発現率は同等であった。 GDMTの優位性を示すことは診療ガイドラインの有効性を検証することであり、論文になりやすい。しかし、二重盲検化されたRCTのエンドポイントは全死亡+心不全入院でよいが、本試験は非盲検試験であるため、QOLの改善にはバイアスが入りやすいこと、また、エンドポイントとしては問題がある180日の全死亡+心不全再入院で有意差がついているが、全死亡や心血管死のハードエンドポイントで差がつかなかったことは、統計的パワー不足と言い訳しているのが、気に掛かるところである。また、HFpEFが15%含まれているのは実臨床に即しているというが、LVEFによって各GDMT薬の有効性も異なる可能性があるため、年齢やHFpEFの割合が違う別の集団で同じ結果が出るかは疑問である。また、通常治療群においてGDMT(β遮断薬、RAS阻害薬またはARNI)の推奨量に達した、または推奨量の半分以上の患者の割合が、180日たってもほとんど増加していないのは、本試験での通常治療とは何なのか意味不明である。

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第144回 コロナ合併症MIS-C関連変異同定/クリスマス前の人情報告~開発段階の薬が人助け

小児のコロナ合併症MIS-Cに寄与する遺伝子欠陥を同定新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)小児の稀だけれども下手したら命を奪いかねない多臓器炎症症候群(MIS-C)に寄与しうる遺伝子変異が見つかりました1,2)。MIS-CはCOVID-19発症からたいてい4週間後ぐらいに生じ、発熱、嘔吐、心筋の炎症などを引き起こして入院治療を強います。MIS-Cの発生率はSARS-CoV-2感染小児1万例当たりおよそ1例と稀ですが、米国での今夏8月末までのMIS-C小児数は約9千例(8,826例)に上り3)、悲しくも命を落とすこともあって71例は死亡しています。MIS-Cで上昇する生理指標によると複数の臓器での炎症が示唆され、単球の活性化持続がMIS-Cの主な免疫特徴として一貫して報告されています。さらには、単球活性化作用だけにとどまらない2型インターフェロン(IFN-γ)伝達絡みの指標がMIS-Cの初期にしばしば上昇します。そのような背景を受け、米国のロックフェラー大学が率いるチームはSARS-CoV-2への免疫反応を不得手にする生まれながらの遺伝子欠陥がMIS-Cの下地になっているかもしれないと考え、世界のMIS-C患者558例のエクソームやゲノム配列を調べ上げました。実に総勢およそ百人の研究者が携わったその途方もない取り組みは類縁関係のないMIS-C患者5例へとやがて収束します。インターフェロンによって発生してウイルスなどの二本鎖RNA(dsRNA)を感知するタンパク質OASやOASによって活性化される酵素RNase Lの欠陥をもたらす変異をそれらMIS-C患者5例から発見したのです。RNase Lはいわばハサミのようなもので、タンパク質へと翻訳されるmRNAを切断します。見つかったOAS変異はRNase Lを働けなくし、RNase L変異はまともなRNase Lを作れなくします。OASやRNase Lいずれかを欠損した免疫細胞(単核球細胞や骨髄細胞)のdsRNAやSARS-CoV-2への反応を調べたところ果たしてMIS-Cで生じるのに似た炎症性サイトカイン過剰生成が認められました。研究チームはRNase L欠乏細胞でのサイトカイン生成に寄与する経路も突き止めており、OASやRNase Lの欠乏はSARS-CoV-2感染に伴う無節操な炎症性サイトカイン生成をもたらしてMIS-Cを醸成したと結論しています。今回の研究で判明したMIS-C関連変異やそれら変異の免疫への影響の仕組みは川崎病などのMIS-Cに似た他の慢性炎症疾患の研究にも役立つでしょう2)。クリスマス前に心温まった報告~開発段階の薬が妊婦とその胎児を救った血液凝固の制御に携わる血中タンパク質ADAMTS13の重度欠乏による親譲りの血栓性血小板減少性紫斑病(先天性TTP)が妊娠中に判明した女性が武田薬品の開発段階の人工ADAMTS13(recombinant ADAMTS13、TAK-755)投与のおかげで無事に赤ちゃん(男児)を出産することができました4)。先天性TTP患者へのADAMTS13の目下の供給源は血漿ですがその女性のTTPに血漿交換(therapeutic plasma exchange)は歯が立たず、胎児はすぐにでも命を落としかねない状況となりました。女性の担当医師等は早い段階から先を見越して人工ADAMTS13のメーカー(武田薬品)に急遽の斟酌使用(emergency compassionate use)の要望を伝え、必要な手続きを経た上で人工ADAMTS13を入手しました。同剤使用に当たって担当医師は要所要所すべてで女性本人とその夫を交えて方針を決定しました。そのような一刻を争ったであろう状況の中、武田薬品から提供された人工ADAMTS13の投与の甲斐あって女性の血小板数は幸いにも正常化し、胎児の発育も安定化します。そして妊娠は37週過ぎまで持ちこたえてついには帝王切開による赤ちゃん(男児)の出産に漕ぎ着けることができました。クリスマス前の22日にNEJMに掲載されたその報告で著者はスイスと米国の武田薬品の従業員を含む関係者一同に謝意を示しています。論文執筆の時点で女性も男児も健やかに過ごせており、女性は2週間に1回の人工ADAMTS13投与を続けています。人工ADAMTS13は現在第III相試験(NCT04683003)が進行中です。結果がわかるのはしばらく先のようで、試験完了予定は2026年8月末です5)。参考1)Lee D, et al. Science. 2022 Dec 20;eabo3627. [Epub ahead of print]2)Research identifies potential genetic cause for MIS-C complication following COVID-19 infection / Eurekalert3)Melgar M, et al. MMWR Recomm Rep. 2022;71:1-14.4)Asmis LM, et al. N Engl J Med. 2022;387:2356-23615)A Study of TAK-755 in Participants With Congenital Thrombotic Thrombocytopenic Purpura(Clinical Trials.gov)

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CAR-T liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療に承認/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年12月20日、CD19を標的とするCAR-T細胞療法リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel、商品名:ブレヤンジ)について、自家造血幹細胞移植への適応の有無にかかわらず、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の2次治療として、再生医療等製品製造販売承認事項一部変更承認を取得した。 今回の承認は、自家造血幹細胞移植適応患者を対象とした国際共同第III相試験(JCAR017-BCM-003試験)、自家造血幹細胞移植非適応患者を対象とした海外第II相試験(017006試験)および国際共同第II相試験(JCAR017-BCM-001試験)コホート2を含む、1次治療後の再発・難治性のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者を対象とした臨床試験の成績に基づいている。 1次治療後に再発・難治性の自家造血幹細胞移植適応のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者184例(日本人9例を含む)を対象に、liso-cel群と標準療法群(救援化学免疫療法および自家造血幹細胞移植併用大量化学療法)を無作為化比較したJCAR017-BCM-003試験の中間解析では、主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)において、liso-cel群は標準療法群と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善(HR:0.349、95%信頼区間[CI]:0.229~0.530、p<0.0001)を示した。主な副次評価項目である完全奏効割合、無増悪生存期間(PFS)についても、標準療法群と比較してliso-cel群で統計学的に有意な改善が認められた。1次治療後の再発・難治性のLBCL患者で認められたliso-cel群の新たな安全性シグナルは認められなかった。

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乳がん領域、Practice changeにつながる重要な発表【Oncology主要トピックス2022 乳がん編】【Oncologyインタビュー】第43回

今年も乳がん領域では今後の標準治療を変え得る重要な研究結果が報告された。大きく分類すると1)HER2低発現と新規薬物療法、2)CDK4/6阻害薬のOS結果、3)CDK4/6阻害薬耐性後の治療戦略となる。その他の話題も少し加えてまとめてみたい。1)HER2低発現に対する新規薬物療法:DESTINY-Breast04試験・TROPiCS-02試験DESTINY-Breast04試験トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はHER2 抗体薬物複合体(ADC)製剤であり、DESTINY-Breast01、02、03試験の結果から、HER2陽性で転移を有する乳がんの2次治療以降の標準治療である。ASCO2022のプレナリーセッションでHER2低発現に対するDESTINY-Breast04試験の結果が報告された。HER2低発現は今回新たに注目された新たな分類であり、IHC2+/ISH-またはIHC1+と定義され、全乳がんの約50%程度を占めると考えられる。T-DXdはBystander effectの結果、HER2低発現の腫瘍に対しても効果を示す。DESTINY-Breast04試験は1~2ラインの化学療法を受けたHER2低発現の転移を有する乳がん患者(N=557)を対象に、T-DXd群と治験医師選択治療(TPC)群(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択)が比較された。主要評価項目は、ホルモン受容体陽性(HR)陽性患者における盲検下独立中央判定による無増悪生存期間(PFS)で、副次評価項目は全体集団におけるPFS、HR陽性患者および全体集団における全生存期間(OS)などだった。T-DXd群(N=373、HR陽性89%)、TPC群(N=184、HR陽性90%)で、脳転移は約5%であった。転移乳がんとして前治療化学療法レジメン中央値は1で、HR陽性乳がんでは内分泌療法は前治療で中央値2レジメン、CDK4/6阻害薬は約65%で使用されていた。主要評価項目であるHR陽性患者におけるPFS中央値は、T-DXd群10.1ヵ月、TPC群5.4ヵ月でT-DXd投与群で有意に延長していた。全体集団でもPFS中央値はT-DXd群、TPC群それぞれ9.9ヵ月vs. 5.1ヵ月でありT-DXd群で有意に延長していた。OSも同様にHR陽性(23.9ヵ月vs. 17.5ヵ月)、全体集団(23.4ヵ月vs. 16.8ヵ月)であり、T-DXd群で有意に延長していた。全体の約1割程度の患者であるがHR陰性集団(N=58:トリプルネガティブ乳がん)の解析も探索的解析として行われたがPFS(8.5ヵ月vs. 2.9ヵ月)、OS(18.2ヵ月vs. 8.3ヵ月)ともにT-DXd群で良好であった。奏効率に関してはHR陽性で52.6%vs. 16.3%、HR陰性で50.0%vs. 16.7%であった。またHER2発現(IHC1+vs IHC2+/ISH-)で奏効率に差はなかった。薬剤性肺障害(ILD)はT-DXd群の12.1%に認められたが、ほとんどがGrade2以下で10.0%、Grade5は0.8%(3/371)だった。これらの結果より新たな乳がんカテゴリーであるHER2低発現に対してT-DXdは標準治療となり、プレナリーセッション発表後は盛大なスタンディングオベーションが起こった。このようにADC製剤の登場により新たなサブタイプとしてHER2低発現が脚光を浴びることとなった。HER2低発現(とくにHER2 0と1+の境界について)の定義についても今後の検討課題である。TROPiCS-02試験Trop-2は腫瘍増殖に関連している分子で、乳がんではサブタイプによらず約80%に発現している。Sacituzumab Govitecan(SG)は抗Trop-2抗体にトポイソメラーゼI阻害剤をペイロードとしたTrop-2 ADCである。転移を有するトリプルネガティブ乳がんではASCENT試験の結果を受け米国ではすでに承認されている。転移を有するHR陽性乳がんを対象としてはTROPiCS-02試験が行われ、ASCO2022でPFS最終解析とESMO2022でOS第2回中間解析の結果が報告された。転移を有するHR陽性乳がん患者で内分泌療法、CDK4/6阻害薬、タキサン既治療、転移乳がんとして2~4ラインの化学療法を受けた543例を対象に、SG群(272人)とTPC群(271人:カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、エリブリンから選択)が比較された。主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFSでSG群が5.5ヵ月、TPC群が4.0ヵ月でありSG群で有意に延長した。OS第2回中間解析の結果、中央値はSG群14.4ヵ月vs. TPC群11.2ヵ月で統計学的に有意な延長がみられた。奏効率はSG群21%、TPC群が14%であった。SG群で多くみられた有害事象は好中球減少、貧血、白血球減少、下痢、嘔気、脱毛などであった。これらの結果からSGは前治療としてCDK4/6阻害薬を含む内分泌療法、少なくとも2レジメン以上の化学療法などを濃厚に受けたHR乳がんに対して臨床的に意味のある治療選択肢となり得ると思われる。対象としては上記のDESTINY Breast 04試験と重なる部分もあるが、TROPiCS-02試験の方がやや前治療が多く入っており、またHER2 0も含み一致はしていない。今後この標的分子の異なる両ADC製剤をどのように使い分け、どの順に使っていくのか、またその耐性機序についても解明が必要となる。画像を拡大する2)CDK4/6阻害薬のOS結果:PALOMA-2試験・MONARCH 3試験PALOMA-2試験PALOMA-2は、閉経後転移を有するHR陽性乳がんに対する1次治療としてCDK4/6阻害薬であるパルボシクリブとアロマターゼ阻害薬であるレトロゾール併用群(併用群:N=444)と、プラセボとレトロゾールの群(単独群N=222)にランダム化されたフェーズ第III相試験である。これまでにパルボシクリブ併用でPFSが有意に延長することが示されている。ASCO2022でPALOMA-2試験のOS結果が報告された。OS中央値は併用群53.9ヵ月 vs単独群51.2ヵ月、HR 0.956(95% CI:0.777~1.177)p=0.3378で有意差を認めなかった。OSサブグループ解析では、PS 1/2、無病生存期間(DFI)12ヵ月超、内分泌療法既治療、骨転移のみの患者で併用群が良好な傾向を示した。本邦未承認薬ribociclibのMONALEESA-2では、併用群のOSの有意な延長が既に示されており、PALOMA-2の結果とは大きく異なった。その違いについては1)CDK4/6阻害薬としての薬効の違い、2)後治療の影響、3)対象とする集団の違いなどが考えられる。1)についてはPFSに関してどのCDK4/6阻害薬もほぼ同様の結果が示されているが、生物学的活性、阻害作用を示す分子が異なるとの報告もある。2)の後治療が影響した可能性については増悪後のCDK4/6阻害薬の使用はMONALEESA-2では併用群で21.7%、単独群で34.4%とPALOMA-2より高かった。HR陽性乳がんでは増悪後の生存期間が長く、後治療がOS結果に影響を及ぼした可能性はあるが、今回のPALOMA-2の報告では詳細は不明で今後の報告を待つ必要がある。3)に関して、2つの試験は同じ1次治療の試験であるが、大きく異なっている。PALOMA-2では術後内分泌療法中または終了後1年以下での再発症例が22%含まれていたのに対し、MONALEESA-2では全員術後内分泌療法終了後1年超経過した症例が対象であった。この術後内分泌療法中または終了後1年以下の集団は内分泌療法感受性が低い集団であり、パルボシクリブは内分泌療法抵抗性に対しては効果が弱い可能性が示唆されているため、PALOMA-2でこの内分泌療法抵抗性の集団を一部含んだことにより、効果の差が薄まった可能性がある。今回の発表では、ほぼ同様の患者を対象とした第II相試験のPALOMA-1試験とPALOMA-2試験の統合解析でDFI 12ヵ月超でのOSサブグループ結果も示されたが、併用群64.0ヵ月、単独群44.6ヵ月であり、HR:0.736、 95%CI:0.780~1.120であり、MONALEESA-2のOSハザード比0.76に近似する値であった。しかしこれは統合解析のサブグループ解析であり、あくまで参考値の評価である。MONARCH 3試験本邦では別のCDK4/6阻害薬であるアベマシクリブも承認されているが、この薬剤の1次治療試験であるMONARCH 3の第2回OS中間解析結果がESMO2022で報告された。まだ中間解析であり、残念ながら統計学的有意差は示されなかったが、OS中央値は併用群で67.1ヵ月、単独郡で54.4ヵ月(HR:0.754、95%CI:0.584~0.974)であった。この結果は前述のMONALEESA-2とほぼ同様であり、来年解析予定のOS最終解析が非常に楽しみな結果であった。MONARCH 3はMONALEESA-2と同じく、術後内分泌療法終了後1年超経過した患者が対象であった。以上より、これまでPFSでは差を認めなかったCDK4/6阻害薬であるが、異なるOSの結果が得られたことは今後の処方に少なからず影響することが予想される。薬剤選択の際には効果のみならず、有害事象(骨髄抑制、下痢など)、患者の価値観などの情報を共有し、ともに薬剤選択をする(Shared decision making: SDM)が重要となる。画像を拡大する3)CDK4/6阻害薬耐性後の治療戦略:AKT阻害薬、経口SERD、CDK4/6阻害薬継続CDK4/6阻害薬増悪後の治療に関してこれまでエビデンスはなく、「乳癌診療ガイドライン2022年版」のFRQ10aでは、「一次内分泌療法として、アロマターゼ阻害薬とサイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の併用療法を行った場合、閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳がんの二次内分泌療法として何が推奨されるか?」に対して、二次内分泌療法として、・最適な治療法は確立しておらず、耐性機序を考慮した臨床試験が進行中である、との記載がある。主なものとしては1)CDK4/6阻害薬既治療例に対するPTEN/PI3K/AKT/mTOR経路、2)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のESR1変異、3)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のその他の機序、4)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のCDK4/6阻害薬の継続の治療開発が行われている。3)-1)CDK4/6阻害薬既治療例に対するPTEN/PI3K/AKT/mTOR経路阻害:AKT阻害薬capivasertib(CAPItello-291試験)今年のSABCSではこのうちAKT阻害薬capivasertibの第III相試験であるCAPItello-291試験の報告があった。閉経前/後のホルモン受容体陽性進行・再発乳がん患者を対象(AI投与中/後に再発・進行、転移再発に対する治療歴として2ライン以下の内分泌療法、1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容)として、試験治療群capivasertib+フルベストラント、対照群プラセボ+フルベストラントが比較された。主要評価項目は全体集団およびAKT経路に変異(≧1のPIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子変異)を有する患者におけるPFSであった。約69%でCDK4/6阻害薬が前治療として使用されていた。AKT経路に変異を有する患者は44%vs. 38%だった。全体集団におけるPFS中央値は、プラセボ群3.6ヵ月に対しcapivasertib群7.2ヵ月で有意に改善した。またAKT経路に変異を有する患者でもPFS中央値は、プラセボ群3.1ヵ月に対しcapivasertib群は7.3ヵ月で有意に改善した。capivasertibで多く報告されたGrade3以上以上の有害事象は、下痢(9.3% vs. 0.3%)、斑状丘疹(6.2%vs. 0%)、発疹(5.4%vs. 0.3%)、高血糖(2.3%vs. 0.3%)だった。治療中止につながる有害事象の発生は、13.0% vs. 2.3%であり、効果と有害事象のバランスは考慮しなければならないものの、CDK4/6阻害薬治療後の新たな治療選択肢として期待できる結果であった。3)-2) AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のESR1変異:経口SERD (SERENA-2試験・EMERALD試験)これまで選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)は臀部筋肉注射のフルベストラントが標準治療として使用されているが、ESR変異に対して抗腫瘍効果を発揮することが期待される経口SERDが複数開発されている。このうちcamizestrantとelacestrantの報告があった。経口SERDであるcamizestrantの第II相SERENA-2試験の結果がSABCS2022で報告された。HR陽性の閉経後進行乳がん患者(1ライン以上の内分泌療法後の再発または進行で内分泌療法・化学療法は1ライン以下)を対象に試験群:camizestrant75mg(C75)群74例、camizestrant150mg(C150)群73例と対照群:フルベストラント(F)群73例が比較された。術後内分泌療法歴ありが66.7%、転移再発乳がんに対して化学療法ありが19.2%、内分泌療法ありが68.8%、CDK4/6阻害薬による治療歴ありは49.6%だった。ESR1変異ありが36.7%だった。主要評価項目のPFS中央値は、F群3.7ヵ月に対しC75群7.2ヵ月、C150群7.7ヵ月で、camizestrantの両用量群で有意に改善した。camizestrantのGrade3以上の有害事象は、血圧上昇、倦怠感・貧血・関節痛・ALT上昇・四肢痛・低ナトリウム血症であった。現在、SERENA-4およびSERENA-6の2つの第III相試験が進行中となっている。上記治験はいずれも日本からも参加している。もう1つ、経口SERDとしてelacestrantの第III相EMERALD試験のUpdate結果もSABCS2022で報告された。EMERALD試験は、HR陽性でCDK4/6阻害薬治療後に進行した男性および女性の閉経後乳がん患者(1~2ラインの内分泌療法歴[うち1ラインはCDK4/6阻害薬との併用]と1ライン以下の化学療法歴有)を対象としてelacestrantとフルベストラントが比較された初めての第III相試験であり、これまで主要評価項目であるPFSはelacestrant群で有意な延長が報告されていた。今回のSABCS2022では前治療におけるCDK4/6阻害薬の治療期間別の治療成績が報告された。CDK4/6阻害薬の投与期間を6ヵ月未満、6~12ヵ月、12~18ヵ月、18ヵ月以上と細かく分けてもelacestrant群でPFSは延長することが示された。elacestrantの主な有害事象は悪心、倦怠感、嘔吐、食欲不振、関節痛である。ESR1変異は転移再発治療としてCDK4/6阻害薬+AIを治療中に起こってくる耐性機序の1つであるが、新たに開発された経口SERDはその解決策として非常に有望である。長期の治療成績については今後の続報を待つ必要がある。3)-3) AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のCDK4/6阻害薬の継続(MAINTAIN試験)今回初めて前向き試験であるMAINTAIN試験の結果が報告された。MAINTAIN試験はHR陽性転移乳がんに対してCDK4/6阻害薬と内分泌療法後に増悪した症例に対してフルベストラントまたはエキセメスタンとribociclibを併用投与する群(併用群)と、フルベストラントまたはエキセメスタンとプラセボを投与する群(プラセボ群)が比較された。初回CDK4/6阻害薬としてパルボシクリブが86%で使われておりribociclibは10%強であった。主要評価項目のPFS中央値は併用群5.29ヵ月、プラセボ群2.76ヵ月で、HR:0.57(95%CI:0.39~0.95)、p=0.006と有意に併用群のPFSが延長した。奏効率は併用群20%、プラセボ群11%、臨床的有用率は併用群43%、プラセボ群25%でどちらも併用群で良好な結果であった。ESR1変異有無別では非常に症例数の少ないサブグループ解析ではあるがESR1変異なしでは併用群が優れている傾向を示したが、ESR1変異ありでは両群間に差を認めなかった。本試験は小規模な第II相試験であり、標準治療をすぐに変えるものではないが、CDK4/6阻害薬増悪後の後治療として、併用するホルモン治療を変更することでCDK4/6阻害薬の効果を維持できる可能性が示唆された。妊娠希望のあるHR陽性乳がん患者の新たなエビデンスPOSITIVE試験若年乳がん患者にとって妊孕性温存は重要な問題であり、特にHR陽性においては長期に術後補助内分泌療法が必要なため、内分泌療法を一時中断した場合のアウトカムが待望されていた。今回、SABCSにて内分泌療法を2年間中断した場合の乳がん再発の観点から見た安全性について、前向き単群試験のPOSITIVE試験の結果が報告された。対象は術後補助内分泌療法を18~30ヵ月間受けたStage I~IIIのHR陽性乳がん患者で、妊娠を希望し内分泌療法を中断する42歳以下の閉経前女性。内分泌療法を、wash out期間(3ヵ月)を含み、妊娠企図、妊娠、出産、授乳で2年間中断し、再開後5~10年追跡された。主要評価項目は乳がん無発症期間(BCFI)、副次評価項目は妊娠および出生児のアウトカムなどであった。2014年12月~2019年12月に518例が登録され、登録時の年齢中央値は37歳、75%が出産歴がなく、94%がStage I/IIであった。内分泌療法はタモキシフェン単独が最も多く(42%)、次いでタモキシフェン+卵巣機能抑制(36%)で、62%が術前もしくは術後化学療法を受けていた。追跡期間中央値41ヵ月においてBCFIイベントが44例に発生し、3年間累積発生率は8.9%だった。これはSOFT/TEXT試験(Breast. 2020)の対照コホートで算出した9.2%と同様だった。妊娠アウトカムを評価した497例中368例(74%)が1回以上妊娠し、317例(64%)が1回以上出産し、365児が誕生した。その後の内分泌療法は、競合リスク分析によると76%が再開し、8%は再開前に再発/死亡し、15%は再開していなかった。この結果はHR陽性乳がんとしてはフォローアップがまだ短いものの、妊娠を希望する若い乳がん患者が安全に内分泌療法を中断し、出産可能であることを示した重要な結果である。

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がん患者に出現した呼吸困難、見落としがちな疾患は?【見落とさない!がんの心毒性】第16回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・女性主訴咳嗽、労作時呼吸困難感現病歴HER2陰性乳がんに対して手術が施行され、以後ホルモン療法にてフォローされていた。5年間再発なく経過していたが、1ヵ月ほど前より咳嗽、労作時呼吸困難感を自覚するようになり、かかりつけ医を受診したところ、SpO2の低下(安静時92%、労作時82%)を認め、当科に紹介となった。初診時の身体所見では、バイタルに異常は認めず、心音や呼吸音も正常であった。頸静脈怒張や下腿浮腫も認めなかった。血液検査では貧血は認めず、血小板数も正常であった。肝機能や腎機能も正常。炎症反応の上昇はなく、D-ダイマー 5.8 μg/mL、BNP 32.2 pg/mLと軽度上昇を認めた。12誘導心電図は洞調律で明らかな異常は認めなかった。胸部X線検査でも特記すべき所見なし。心臓超音波検査では、LVEF 65%と左室収縮能は保たれていたが、中等度の三尖弁逆流を認め、三尖弁逆流圧格差40mmHgと肺高血圧症が確認された。【問題】本症例について、診断に有用な検査はどれか、3つ選べa. 胸部造影CTb. 右心カテーテル検査c. 肺換気血流シンチd. 冠動脈造影検査(CAG)e. 心臓MRI1)von Herbay A, et al. Cancer. 1990;66:587-592.2)Price LC, et al. Eur Respir Rev. 2019;28:180065.3)Minatsuki S, et al. Int Heart J. 2015;56:245–248.4)Higo K, et al. Intern Med. 2014;53:2595–2599.講師紹介

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英語で「便秘」は?【1分★医療英語】第60回

第60回 英語で「便秘」は?My son recently has stomach pain.(うちの息子は、最近お腹が痛いと言っています)Is he constipated?(便秘気味ですか?)《例文1》Do you have any medications for constipation?(便秘に効く薬はありますか?)《例文2》How long have you been constipated?(どのくらいの期間、便秘なのですか?)《解説》今回は「便秘」にフォーカスを当てたいと思います。便秘を主訴とする、または腹痛の背景に便秘がある患者さんは頻繁に遭遇しますよね。便秘は“constipation”(コンスティペイション)で表すことができます。たとえば、「私は便秘気味です」であれば“I am constipated.”もしくは“I have constipation.”で表現することができます。どちらも正解ですが、前者のほうがよく聞く印象です。医療者同士での会話でも同様に“This patient is constipated.”と使ったり、“This constipated patient is~”のように形容詞として使ったりします。ちなみに、便秘には“obstipation”(アーブスティペイション)という言葉もあり、これは“severe form of constipation”、つまり「かなりひどい便秘症状」の際に時々用いられます。医療現場で使う「排便」という表現には、“bowel movement”が使われます。使い方としては、“Do you have any bowel movements yesterday?”(昨日排便はありましたか?)や、“How many bowel movements do you have per day?”(1日に何回排便しますか)といったように使用されます。小児領域に関しては、“poop”という表現がお子さんに伝わりやすいので、親が外来に来た際に、“She has not pooped for three days.”(うちの娘は3日間うんちが出ていません)と説明したり、医療者も“Do you poop every day?”(うんちは毎日出ていますか?)と聞いたりします。ただし、日本語の「うんち」のトーンなので、幼い子ども相手の使用に留めておくほうが無難でしょう。医療現場で大人の患者さんに使うと少しびっくりされるかもしれません。医療現場でたびたび遭遇する「便秘・排便」の表現を使いこなせるようになりましょう!講師紹介

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2022年、がん専門医に読まれた記事は?Doctors’Picksランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」は、2022年を通して、がん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。1位は新型コロナに関する話題だったが、その他は肺がん分野の話題が多数ランク入りしたほか、がん横断的なトピックスである新たな免疫療法の開発に関する話題(4位)や、米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)でプレナリーセッションに登壇した国立がんセンター東病院 消化管内科長・吉野 孝之氏の演題(6位)も大きな注目を集めた。【1位】3回目接種を受けた医療従事者の新型コロナ感染率は?(1/11)/JAMA 2022年1月10日にJAMA誌に掲載された、イスラエルの医療従事者におけるSARS-CoV-2感染の発生率とBNT162b2ワクチンの3回目接種との関連についての研究。ブースター接種から約1ヵ月間におけるSARS-CoV-2感染のハザード比は、2回接種者と比較して0.07(95%CI:0.02~0.20)と有意に低下することが示された。【2位】PD-L1高発現の1次治療、ICIにChemoを上乗せしてもOSの延長なし?(3/24)/Annals of Oncology PD-L1高発現の非扁平上皮非小細胞肺がん(Nsq-NSCLC)の1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に化学療法を上乗せする効果を見た試験。結果として上乗せ効果は認められなかったという。【3位】小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法+tiragolumabの成績/SKYSCRAPER-02(5/28)/ASCO ASCO2022で発表された、進展型小細胞肺がんの標準療法の1つであるアテゾリズマブ+カルボプラチン/エトポシドの併用療法に、抗TIGIT抗体tiragolumab追加併用の有効性を見たSKYSCRAPER-02試験。主要評価項目である全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかったという。【4位】PD-1阻害薬を超える!?新たな免疫療法PD1-IL2v開発の基礎(10/4)/nature PD-1を発現しているT細胞特異的に、IL-2R(βとγ)アゴニスト作用を持つ新たな免疫療法として、PD1-IL2vという薬剤が開発されたという報告。PD-1治療抵抗性のメラノーマに対して、PD-1阻害薬と比較しても圧倒的な効果を発揮したという、その作用機序を解説。【5位】おーちゃん先生のASCO2022 肺癌領域・オーラルセッションの予習 9000番台(5/30)/Doctors'Picks ASCO2022で発表される数千の演題の中から注目すべきものをエキスパート医師が事前にピックアップして紹介する恒例企画。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)がオーラルセッションを全解説した。 6~10位は以下のとおり。【6位】国立がんセンター東病院・吉野 孝之氏がプレナリーセッション登壇(6/2)/ASCO【7位】進行NSCLC、PD-1/L1阻害薬PD後のペムブロリズマブ継続の意義(2/7)/Clinical Cancer Research【8位】転移のある大腸がん、原発巣部位とゲノム異常の解析結果(5/9)/Target Oncol【9位】EGFR陽性NSCLCに対するオシメルチニブ/アファチニブ交替療法の有効性(4/13)/Lung Cancer【10位】ctDNAの臨床応用に関するESMOの推奨事項(7/14)/ESMO

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マインドフルネス・運動は本当に認知機能に有効?/JAMA

 主観的な認知機能低下を自覚する高齢者において、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)、運動またはその併用はいずれも、エピソード記憶ならびに遂行機能を改善しなかった。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、米国の2施設(ワシントン大学セントルイス校、カリフォルニア大学サンディエゴ校)で実施した2×2要因無作為化臨床試験「Mindfulness, Education, and Exercise(MEDEX)試験」の結果を報告した。エピソード記憶と遂行機能は、加齢とともに低下する認知機能の本質的な側面であり、この低下は生活習慣への介入で改善する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の知見は、主観的な認知機能低下を自覚する高齢者の認知機能改善のためにこれらの介入を行うことを支持しない」とまとめている。JAMA誌2022年12月13日号掲載の報告。マインドフルネス低減法、運動、両者の併用の認知機能への影響を検証 研究グループは、認知症ではないが主観的な認知機能低下を自覚する65~84歳の高齢者585例を、MBSR群(150例)、運動群(138例)、MBSR+運動併用群(144例)、または健康教育群(対照群、153例)に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた(登録期間:2015年11月19日~2019年1月23日、最終追跡日:2020年3月16日)。 MBSR群では、18ヵ月間、月1回MBSR教室が開催され、自宅で毎日60分間を目標に瞑想を行った。運動群では、6ヵ月間は週2回、その後12ヵ月間は週1回教室が開催され、それぞれ1.5時間運動(有酸素運動、筋トレ、機能訓練)するとともに、自宅で週300分以上(教室での運動の時間も含めて)運動することが目標とされた。併用群はこれらMBSRと運動の両方を行い、対照群ではグループでの教育のみを行った。 主要アウトカムは2つで、6ヵ月時ならびに18ヵ月時の神経心理学的検査によるエピソード記憶と遂行機能とし、平均[SD]を0[1]に標準化(スコアが高いほど認知機能良好)して評価した。副次アウトカムは5つが報告され、機能的MRIによる海馬体積、背外側前頭前野の厚さと表面積、機能的認知能力、自己申告による認知機能の懸念であった。いずれもエピソード記憶と遂行機能の改善には至らず 無作為化された585例(平均年齢71.5歳、女性424例[72.5%])のうち、568例(97.1%)が6ヵ月間、475例(81.2%)が18ヵ月間の試験を完遂した。 6ヵ月時点で、MBSRまたは運動のいずれも、エピソード記憶に対する有意な有効性は認められなかった。記憶複合スコアは、MBSRあり0.44 vs.なし0.48(平均群間差:-0.04、95%信頼区間[CI]:-0.15~0.07、p=0.50)、運動あり0.49 vs.なし0.42(0.07、-0.04~0.17、p=0.23)であった。 また、遂行機能に対する有効性も認められなかった。遂行機能複合スコアはMBSRあり0.39 vs.なし0.31(平均群間差:0.08、95%CI:-0.02~0.19、p=0.12)、運動あり0.39 vs.なし0.32(0.07、-0.03~0.18、p=0.17)だった。18ヵ月時点においても同様に、介入の有効性は確認されなかった。 6ヵ月時点において、MBSRと運動の間に有意な相互作用は認められなかった。また、副次アウトカムも、対照群と比較していずれの介入群も有意な改善は示されなかった。

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二重抗体薬glofitamab、再発難治DLBCLの39%が完全寛解/NEJM

 CD20/CD3二重特異性モノクローナル抗体のglofitamabは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に有効性を示したものの、患者の半数以上にGrade3以上の有害事象が発現したことが、オーストラリア・メルボルン大学のMichael J. Dickinson氏らによる第II相試験で示された。DLBCLの標準的な1次治療はR-CHOP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone)であるが、同患者の35~40%は再発/難治性で、その予後は不良であった。NEJM誌2022年12月15日号掲載の報告。glofitamab12サイクル投与の有効性を検証 研究グループは、2ライン以上の治療歴のある18歳以上の再発/難治性DLBCL患者を登録し、サイトカイン放出症候群軽減のためオビヌツズマブ(1,000mg)による前治療後、glofitamabを1サイクルの8日目に2.5mg、15日目に10mg、2~12サイクルの1日目に30mgを投与した(1サイクル21日間)。 主要評価項目は独立評価委員会(IRC)判定による完全奏効。主な副次評価項目は奏効期間、全生存期間、安全性などとし、intention-to-treat解析を実施した。 2020年1月~2021年9月に計155例が登録され、このうち154例が少なくとも1回の治験薬(オビヌツズマブまたはglofitamab)投与を受けた。完全奏効率は39%、ただしGrade3以上の有害事象の発現率が62% 追跡期間中央値12.6ヵ月時点で、IRC判定による完全奏効率は39%(95%信頼区間[CI]:32~48)であった。キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の治療歴がある52例においても、完全奏効率は35%であり、結果は一貫していた。 完全奏効までの期間の中央値は42日(95%CI:42~44)で、完全奏効が得られた患者の78%は12ヵ月時点で完全奏効が継続していた。12ヵ月無増悪生存率は、37%(95%CI:28~46)であった。 glofitamabの投与中止に至った有害事象は、14例(9%)に認められた。最も発現率が高かった有害事象は、サイトカイン放出症候群(ASTCT基準)(63%)であった。Grade3以上の有害事象は62%に認められ、Grade5(死亡)は8例報告された。なお、死亡例はいずれもglofitamabと関連はないと判断された。Grade3以上の主な有害事象は好中球減少症(27%)であり、Grade3以上のサイトカイン放出症候群は4%、Grade3以上の神経学的イベントは3%であった。

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認知症の根本治療薬により認知症の人は減るか?(解説:岡村毅氏)

 人類史に残る論文ではないか。人類はとうとう認知症の進行を遅らせるエビデンスを得たようだ。この領域は日本のエーザイがとてつもない情熱をもって切り開いてきた。またこのlecanemab論文のラストオーサー(日本人)は、さまざまな不条理にも負けることなく一流の研究を進めてきた。最大限の敬意を表したい。 そのうえで、認知症を専門とする精神科医として、この偉大な一歩を解説しよう。神経学ではなくあくまで精神医学の視点であることを先に言っておく。 まず、主要アウトカムはCDR-SBで評価している。CDRは、臨床家ならわかると思うがかなり実生活に即した評価だ。この総点で、進行が緩やかになっているということは、確かに生活障害においても効果があるといえる。ちなみに変化量の差は、18ヵ月でおよそ3割であった。 つまり、アミロイドへの効果→認知機能低下への効果→生活障害への効果、という図式で見て最後の段階、つまり生活レベルできちんと効いている。大したものである。 今後さまざまな疾患修飾薬がどんどん出てくるに違いない。より安価で、より安全なものが出てくるだろう。 近未来には、こうなるかもしれない。あなたが50歳で検診を受けると(アミロイドペットという仰々しい検査を受けることなく)「コレステロールが高いです」「骨密度が低いです」のように「脳内のアミロイドが溜まってます」と書かれてしまう。すると専門外来を受診し、毎朝(あるいは月に1回とか)認知症の薬をのむ。あなたは、本来は70歳で認知症を発症していたかもしれない。しかし75歳までは認知症を発症しない。75歳になると、あなたは認知症を発症し、ゆっくりと認知機能そして身体機能が低下を始める。 素晴らしい科学の進歩だということをまず押さえよう。そのうえで以下を問い掛ける。 第一の疑問は、あなたは主観的に認知症予防効果を感じられるであろうか、というものだ。答えはイエスでありノーでもある。なぜなら人生は1回きりなので、あなたは結局のところ「高齢期に認知症になった」という1回きりの人生において1回きりの体験をしている。それは科学的には有意に遅くなっているのだろうが、あなたの実存においてはあまり関係ない。個人の体験と、集団での有意差は別の話である。 第二の疑問は、認知症に伴う不安は解消されるかというものだ。今回の対象者は軽度認知障害などであるが、進行が遅らされている(繰り返し言うが、それ自体は素晴らしいことだ)。しかし臨床家として言えるのは、不安な時期が延びたとも言えるな、ということだ(繰り返すが、早く進行してしまえばよいという意味では決してない)。 認知症になっても不安や孤独に陥ることなく、一回きりのかけがえのない人生を希望と尊厳をもって生きることができるようにするのは、薬ではなく、社会変革だろう。問題は人々が、薬が出たらすべてがバラ色だという思い込みをしていたら、大間違いだということである。ただ、人々のリテラシーは向上しているように感じる。ドネペジルが出たころは思い込みが多く見られたが、aducanumabやlecanemabに関する報道を見ていても基本的に抑制されてると思う。 第三の疑問は、認知症の人は本当に減るのかということだ。認知症の薬というとなぜか人々は「認知症が根絶される」ということを意味すると勘違いする。認知症になる人はこの先もずっといる。糖尿病や高血圧の良い薬はたくさんあるが、患者さんは増えている。おそらく、平和な社会、医学の発展、経済的繁栄が続く限り長寿化はまだ止まらないのだから、認知症の人は今後しばらくは増えるだろう(なお、人口は減少局面にあり絶対数は今後は減少に転じると思われるが、その時は青壮中年の人々も減少しているだろう)。 最後にまとめてみると、病態生理に直結し、進行を遅らせる薬剤が出たことを素直に喜びたい。一方で臨床家なら誰もが知っているし、そもそも製薬会社の人も十分にわかっていると思うが、年を取れば認知症になるということは変わらない。時を止めることができないのと同じだ。認知症になることを遅らせること(予防)と認知症になっても楽しく生きること(共生)は対立概念ではなく、別の次元の話なのだ。わが国から予防のイノベーションを起こす方々を尊敬しつつ、共生のイノベーションも起こしていきたい。

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