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リンパ節転移のないHER2陽性乳がん、術後PTX+トラスツズマブでの10年生存率/Lancet Oncol

 リンパ節転移のないHER2陽性(HER2+)乳がんに対するパクリタキセル+トラスツズマブでの術後補助療法の長期アウトカムを調査した非盲検単群第II相試験の10年間の解析結果について、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏らがLancet Oncology誌2023年3月号で報告した。著者らはこの結果から、「腫瘍サイズが小さくリンパ節転移のないHER2+乳がんの術後補助療法の標準治療として、パクリタキセル+トラスツズマブが妥当である」としている。HER2陽性乳がんに対する術後補助療法で10年全生存率が94.3% 本試験は、米国13都市16施設から、腫瘍の大きさが3cm以下でリンパ節転移のない18歳以上のHER2+乳がんでPS 0~1の患者を対象とした。適格患者には、パクリタキセル(80mg/m2)+トラスツズマブ(負荷量4mg/kg、維持量2mg/kg)の静脈内投与を12週、その後トラスツズマブ(毎週2mg/kgもしくは3週ごとに6mg/kg)を40週投与した。主要評価項目は3年無浸潤疾患生存(iDFS)率で、今回はプロトコールで規定された治療を受けた患者すべてを対象とした10年生存率と、HER2DXゲノムツールを用いた探索的解析の結果を報告した。 HER2陽性乳がんに対するパクリタキセル+トラスツズマブでの術後補助療法の10年生存率などを調査した主な結果は以下のとおり。・2007年10月29日~2010年9月3日に登録されたHER2陽性乳がん患者410例中406例がパクリタキセル+トラスツズマブの術後補助療法を受けた。・登録時の平均年齢は55歳(標準偏差:10.5)、406例中女性が405例(99.8%)、白人が350例(86.2%)、ホルモン受容体陽性が272例(67.0%)だった。・追跡期間中央値10.8年(四分位範囲:7.1~11.4)で、解析集団406例においてiDFSイベントが31例に観察され、局所同側再発6例(19.4%)、新規の対側乳がん9例(29.0%)、遠隔再発6例(19.4%)、死亡10例(32.3%)であった。・10年無浸潤疾患生存率は91.3%(95%信頼区間[CI]:88.3~94.4)、10年無再発率は96.3%(95%CI:94.3~98.3)、10年全生存率は94.3%(95%CI:91.8~96.8)、10年乳がん特異的生存率は98.8%(95%CI:97.6~100)であった。・HER2DXリスクスコアは、無浸潤疾患生存率(10単位増加当たりのハザード比[HR]:1.24、95%CI:1.00~1.52、p=0.047) および無再発期間(HR:1.45、95%CI:1.09~1.93、p=0.011)と有意に関連していた。

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BRCA/ATM遺伝子変異陽性の転移を有する前立腺がん、rucaparibが有効/NEJM

 第2世代アンドロゲン受容体経路遮断薬(ARPI)による治療後に増悪した、BRCAまたはATM遺伝子変異陽性の転移性前立腺がんの治療において、ポリ(アデノシン二リン酸[ADP]リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬rucaparibは、医師が選択した対照薬と比較して、画像所見に基づく無増悪生存期間が有意に長く、BRCA変異陽性例で最大の効果が認められたが、ATM変異陽性例では両群で同程度であったことが、フランス・パリサクレー大学のKarim Fizazi氏らが実施した「TRITON3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年2月23日号で報告された。12ヵ国143施設の無作為化第III相試験 TRITON3は、12ヵ国143施設で実施された非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2017年2月~2022年2月の期間に参加者のプレスクリーニングまたはスクリーニングが行われた(Clovis Oncologyの助成を受けた)。 対象は、BRCA1、BRCA2、ATM遺伝子のいずれかに変異が認められ、第2世代ARPI(酢酸アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドなど)による治療後に増悪した転移のある去勢抵抗性前立腺がんの患者であった。 被験者は、rucaparib(600mg、1日2回、経口)または医師が選択した対照薬(ドセタキセルまたは第2世代ARPI[酢酸アビラテロンまたはエンザルタミド])の投与を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値であり、独立判定による評価が行われた。ATM変異陽性例では有効性が限定的 405例(intention-to-treat集団)が登録され、270例(年齢中央値70歳[範囲:45~90]、BRCA変異陽性 201例、ATM変異陽性 69例)がrucaparib群、135例(71歳[47~92]、101例、34例)は対照群に割り付けられた。対照群では、75例(56%)がドセタキセル、28例(21%)が酢酸アビラテロン、32例(24%)はエンザルタミドの投与を受けた。 62ヵ月の時点で、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値は、BRCA変異陽性のサブグループ(rucaparib群11.2ヵ月vs.対照群6.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.36~0.69)およびintention-to-treat集団(10.2ヵ月vs.6.4ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.47~0.80)の双方で、rucaparib群が対照群よりも長かった(いずれもp<0.001)。 一方、ATM変異陽性のサブグループの探索的解析では、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値はrucaparib群が8.1ヵ月、対照群は6.8ヵ月であった(HR:0.95、95%CI:0.59~1.52)。 客観的奏効率は、BRCA変異陽性のサブグループではrucaparib群が45%、対照群は17%で、intention-to-treat集団ではそれぞれ35%、16%であり、ATM変異陽性のサブグループでは0%、14%だった。 最も頻度の高かった有害事象は、rucaparib群では倦怠感(61%)、悪心(50%)、貧血/ヘモグロビン低下(47%)であり、対照群では倦怠感(63%)、下痢(28%)、ニューロパチー(28%)であった。最も頻度の高かったGrade3以上の有害事象は、rucaparib群では貧血/ヘモグロビン低下(24%)、好中球減少症/好中球数減少(7%)、倦怠感(7%)であり、対照群では倦怠感(9%)、好中球減少症/好中球数減少(8%)だった。 投与中止の原因となった有害事象は、rucaparib群が15%、対照群は22%で発現した。有害事象による死亡は、それぞれ5例(2%)、3例(2%)で認められたが、試験薬に関連したものはなかった。 著者は、「本試験では、BRCA1変異を有する患者数がBRCA2変異を有する患者数よりも少なかったため、BRCA1変異陽性例での治療効果は確定的ではなかった。また、第2世代ARPIの反復使用はわずかな活性しか示さなかった。これらの知見は、先行研究の結果と一致していた」としている。

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低炭水化物食はテストステロンの血清レベルを上昇させて勃起機能を改善する可能性

 低炭水化物食はテストステロンの血清レベルを上昇させ、メタボリックシンドロームに伴う男性の性腺機能低下症の勃起機能を改善する可能性があることがブラジルのCaio da Silva Schmitt氏らが行った非盲検ランダム化臨床試験によってわかった。BMC Endocrine Disorders誌2023年2月2日号の報告。 低炭水化物食群では血清総テストステロン値の有意な上昇が見られた メタボリックシンドロームはいくつかの疾患の危険因子であり、その中でもメタボリックシンドロームと性腺機能低下症の関係はよく知られている。著者らは、低炭水化物食が血清総テストステロンを増加させ、メタボリックシンドロームに伴う性腺機能低下症の男性の勃起機能を改善できるかどうかを評価する目的で研究を行った。 メタボリックシンドロームの性腺機能低下症の男性18例を対象に、低炭水化物食群と対照食群を3ヵ月間比較する非盲検ランダム化臨床試験を実施した。身体測定値(体重、BMI、腹囲、ヒップ周り、胴囲)、血清総テストステロン値、性腺機能低下症の症状(ADAMおよびAMSスコアによって測定)、性機能(IIEF-5スコアによって測定)が評価された。 低炭水化物食が血清総テストステロンを増加させ、メタボリックシンドロームに伴う性腺機能低下症の男性の勃起機能を改善できるかどうかを研究した主な結果は以下のとおり。・身体測定値は低炭水化物食群でのみ正常値に近づいた。・低炭水化物食群ではIIEF-5スコアが統計学的に増加し、AMSとADAMスコアが有意に減少した(p<0.001)。・対照食群と比較して、低炭水化物食群では血清総テストステロン値の有意な上昇が見られた(p<0.001)。

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早期妊娠高血圧腎症予防のアスピリンを24~28週で中止、発生率は?/JAMA

 アスピリンは、早期妊娠高血圧腎症のリスクが高い妊婦においてその発生率を抑制するが、周産期出血のリスクを上昇させる可能性があるという。スペイン・バルセロナ自治大学のManel Mendoza氏らは、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt-1)と胎盤増殖因子(PlGF)の比が正常な妊婦では、妊娠36週までアスピリンの投与を継続した場合と比較して、24~28週での投与中止は、早期妊娠高血圧腎症の発生に関して非劣性であり、出血性合併症は減少することを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年2月21日号で報告された。スペインで行われた第III相無作為化試験 本研究は、スペインの9施設で実施された第III相非盲検無作為化試験であり、2019年8月~2021年9月の期間に参加者の募集が行われた(Instituto de Salud Carlos IIIなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、妊娠第1期(妊娠11~13週)に早期妊娠高血圧腎症のリスクが高いと判定された妊娠24~28週(24週0日~27週6日)の単胎妊娠で、妊娠16週6日までにアスピリン150mg/日の投与を開始し、sFlt-1/PlGF比≦38の妊婦であった。  被験者は、アスピリンの投与を中止する群(介入群)または36週まで投与を継続する群(対照群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、妊娠37週未満における妊娠高血圧腎症(早期妊娠高血圧腎症)を伴う出産とされた。早期妊娠高血圧腎症の発生率の95%信頼区間(CI)の上限値が1.9%未満の場合に非劣性基準を満たすと判定された。用量・治療期間の異なる投与法の検討が必要 936例(平均年齢32.4[SD 5.8]歳)が登録され、473例が介入群、463例は対照群に割り付けられた。 早期妊娠高血圧腎症は、介入群が1.48%(7/473例)、対照群は1.73%(8/463例)で発生し(絶対群間差:-0.25%、95%CI:-1.86~1.36)、介入群の対照群に対する非劣性が確認された。 早期妊娠高血圧腎症妊婦の出産時の妊娠週数中央値は、介入群が35.1週、対照群も35.1週であった(p=0.42)。妊娠34週未満での有害アウトカムおよび37週未満での有害アウトカムの発生には、両群間に有意な差は認められなかった。 少なくとも1回の出血性合併症の発生率は、対照群(12.7%[59/463例])に比べ介入群(8.0%[38/473例])で低かった(絶対群間差:-4.71%、95%CI:-8.61~-0.81)。新生児の有害アウトカムについては、いずれも両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「アスピリンの用量および治療期間が異なる投与法の臨床的意義を検討するために、新たな研究が必要と考えられる」としている。

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血友病A、遺伝子治療のvaloctocogene roxaparvovecが有効/NEJM

 アデノ随伴ウイルスベクターを用いてBドメイン欠損第VIII因子のコード配列を送達し、重症血友病A患者の出血を予防するとされるvaloctocogene roxaparvovecについて、安全性と有効性を検証した第III相非盲検単群試験「GENEr8-1試験」の結果が、南アフリカ共和国・ウィットウォーターズランド大学のJohnny Mahlangu氏らにより示された。本薬投与から2年の時点で治療を要する出血の発生率は大幅に低下し、52週以降に新たな安全性シグナルの発現は認められなかったという。研究の成果は、NEJM誌2023年2月23日号に掲載された。単回投与から104週後の治療を要する出血イベントを評価 GENEr8-1試験は、少なくとも6ヵ月間の第VIII因子による定期補充療法を受けている重症血友病Aの男性患者(年齢18歳以上)134例を対象とする第III相非盲検単群試験であり、valoctocogene roxaparvovec投与から49~52週の時点で、ベースラインに比べ有意に高い第VIII因子活性が示され、治療を要する出血エピソードや第VIII因子の使用の頻度が有意に減少したことがすでに報告されている(BioMarin Pharmaceuticalの助成を受けた)。 参加者は、6×1013ベクターゲノム/kg体重のvaloctocogene roxaparvovecの単回投与を受けた。今回の主要エンドポイントは、本薬投与から104週の時点における、治療を要する出血イベントの年間発生率のベースラインからの変化量であった。 本薬の薬物動態をモデル化し、導入遺伝子由来の第VIII因子活性と関連付けて出血リスクを推定した。5年後の第VIII因子活性は軽症例の表現型と一致 valoctocogene roxaparvovecによる遺伝子導入から104週の時点で、134例中132例が試験を継続しており、112例がベースラインの時点で前向きに収集されたデータを有していた。追跡期間中央値は110.9週(範囲:66.1~197.4)だった。 治療を要する出血の平均年間発生率は、ベースラインでの4.8件と比較して104週時には0.8件と、84.5%低下した(p<0.001)。第VIII因子の使用は、ベースライン時の3,961.2 IU/kg/年から104週時には69.9 IU/kg/年へと、98.2%減少した(-3,891.3 IU、95%信頼区間[CI]:-4,221.0~-3,561.5、p<0.001)。  モデルで推定された導入遺伝子由来の第VIII因子産生系の半減期は123週間(95%CI:84~232)であった。また、260週時の発色合成基質法で測定した第VIII因子の推定値(平均値:11.8 IU/dL、中央値:5.7 IU/dL)は、軽症血友病Aの表現型と一致していた。 関節出血のリスクは、導入遺伝子由来の第VIII因子が5 IU/dLの場合に、関節出血エピソードの発生は年間1.0件と予測された。 投与から2年の時点で、新たな安全性シグナルは観察されなかった。最も頻度の高い有害事象はアラニンアミノトランスフェラーゼ値の上昇で、参加者の88.8%で認められ、上昇の期間中央値は21.0日(範囲:1~498)だった。重篤な治療関連有害事象は24例(17.9%)で発現し、このうち5例(3.7%)がvaloctocogene roxaparvovec関連であったが、いずれも52週までにみられており、52週以降には新たな重篤な治療関連有害事象は発現していなかった。 著者は、「現在、本試験と他試験の参加者の追跡が進められており、投与後15年までの参加者における本薬の有効性に関して、新たな知見が得られると考えられる」としている。

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研究成果、誤解なく発信できていますか?「信頼性」の意味は研究者と一般人で違う

 3月16日(木)に、「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」シンポジウムがオンラインで開催される。シンポジウムに先立って、本プロジェクトの主任研究員である井出 博生氏と山田 恵子氏が、成果の一端を2週にわたって報告する。第1回は井出氏が、医学系研究で使われる用語が研究者と一般人で意味が異なるケースについて、調査結果を踏まえて紹介する。 医療情報をわかりやすく発信するプロジェクトでは、AMED研究開発ネットワーク事業(令和3年度主任研究者:井出 博生 東京大学未来ビジョン研究センター特任准教授、令和4年度主任研究者:山田 恵子 埼玉県立大学保健医療福祉学部准教授)として、2022年3月より「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」をWebサイトで公開するなど、医師や研究者が研究成果を世の中に正確に発信していくための研究・支援を行っています。 その一環として、医学系研究で使われる典型的な用語のアンケート調査を行いました。その結果は上記の手引きの作成に活用したほか、分析結果を学会(ヘルスコミュニケーションウィーク2022)で発表しました。最近では大学内、学会で活用していただく場面も出てきています。 さらに現在、それらの用語そのもののデータベース(コーパス)を作成し、ある用語が新聞やテレビで、どういった意味で使われているかを調べています。 コーパスを分析していて、いくつかの新しい知見が得られました。そのなかでも研究班がとくに注目したのは、非常に一般的な単語で、研究者と一般人では通常違う意味で使っているものが少なからずあるということです。 そうした例の典型なものの一つが「信頼性」です。 医学系研究で「信頼性」とは「同じ条件で実験等を行ったときに得られる結果が一致していること」を意味します。しかし、一般の方にアンケートでは、67.2%(n=1,773)の人が「『信頼性』が高いとは、確実な治療効果が見込まれること」という意味だと誤った理解していました。なお、研究者に対するアンケートで82.3%(n=497)が正しく理解していることも確認しています。 信頼性という言葉は、一般の日本語では、「頼りになると信じること」、「信用」という意味で使われることが多いこともわかりました。「発言の信頼性が問われる事態になっている」、「政治全体の信頼性を損なうことにつながる」、「商品の信頼性を担保する」といった使われ方です。研究者も一般の生活者として信頼性という用語に触れた時には、場面によって別のニュアンスもあることに気付くのではないでしょうか。 もう一つの例は「適応」です。 医療の場面で多く使われますが、適応は「薬や治療法などの効果が医学的に認められ、使用の対象となること」です。一般の人の新しい薬や治療法への期待も大きいためか、「適応」という言葉は一般のニュースでも目にする機会が増えています。とりわけ現在は、新型コロナウイルス感染症という大きな社会課題があり、その傾向が高まっているように見受けられます。 ただし、「適応」は一般の日本語では、「外部の環境に適するための行動や意識の変容」を指すことも多いのです。英語で考えてみるとわかりやすいかもしれません。医学系研究における適応の意味が“application”であるのに対し、日本語の適応には“adjustment”の意味もあります。「信頼性」と同様、一般の人が医学系研究で使われる「適応」という言葉を誤解しているケースが多いことが先のアンケートで確認できました。 研究班では2022年度、このようなコーパスを活用した自然言語処理からわかった知見を取り入れ、「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」の改訂を進めてきました。同時に、手引きに付随する動画や一般向けパンフレットの制作、研究者に手引きを使っていただくための普及活動も行っています。 これらの成果は、2023年3月16日(木)にオンラインシンポジウムを開催し、発表する予定です。ご興味がある方はぜひご覧ください。(東京大学未来ビジョン研究センター特任准教授 井出 博生) ※この記事は「医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト」の趣旨に賛同する、m3.com、日経メディカル Online、CareNet.comの3つの医療・医学メディア共同で同時掲載しています。

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ハチミツでなくとも甘くてトロリとしたものなら鎮咳効果がある?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第229回

ハチミツでなくとも甘くてトロリとしたものなら鎮咳効果がある?Pixabayより使用ハチミツって咳をおさめる効果があるとされる唯一の食材なのですが、実はかなり議論の余地があります。私はハチミツの味が苦手なので使いませんが、子供の咳に対して有効とする報告はこれまでいくつもあります。たとえば、就寝前に「スプーン1杯(2.5mL)のハチミツを取るグループ」、「咳止めを飲むグループ」、「何もせず様子をみるグループ」のいずれかにランダムに割り付けた研究では、ハチミツを与えられた患児で、有意に咳が減少することが示されました1)。コクランレビューでも2018年の時点では、急性の咳に対するハチミツは、何もしないよりは咳止めの効果があり、「既存の咳止めと大差がないほど効果的だ」という結論になっています2)。Nishimura T, et al.Multicentre, randomised study found that honey had no pharmacological effect on nocturnal coughs and sleep quality at 1-5 years of age.Acta Paediatr. 2022 Nov;111(11):2157-2164.これは上気道炎による急性咳嗽を呈した1~5歳児を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。日本国内の複数の小児科クリニックから患児を登録しました。参加者には、ハチミツまたはハチミツ風味のシロップ(プラセボ)を2晩連続で、眠前1時間のタイミングで摂取してもらいました。夜間咳嗽と睡眠について、7段階のリッカート尺度で評価しました。161人が登録され、78人がハチミツ群、83人がプラセボ群にランダム化されました。この分野ではかなり多い登録数だと思います。結果、確かに夜間の咳嗽の改善はみられたのですが、ハチミツ群とプラセボ群の有意差が観察されなかったのです。つまり、ハチミツによる有効性はプラセボ効果をみているのか、あるいはシロップのような甘いものであれば鎮咳効果があるのか、どちらかの可能性が高そうです。過去の研究が正しいとするなら、後者のほうが妥当な解釈かなと思います。となると、甘くてトロリとしたものであれば、ハチミツでなくてもよいのかもしれませんね。1)Paul IM, et al. Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents. Arch Pediatr Adolesc Med. 2007 Dec;161(12):1140-1146.2)Oduwole O, et al. Honey for acute cough in children. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 10;4(4):CD007094.

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日本人・小中高校生の頭痛有病率~糸魚川紅ズワイガニ研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、小児および青年期の頭痛、片頭痛、薬物乱用頭痛の有病率を調査するため、小学校から高校までの日本人学生を対象に、学校ベースのオンラインアンケートを実施した。また、片頭痛を引き起こすトリガーについて調査するとともに、頭痛頻度に対するCOVID-19パンデミックの影響も併せて検討を行った。その結果、小児および青年期において、頭痛による生活への支障は大きいことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、頭痛の臨床診療におけるアンメットニーズを修正する必要があるとしている。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2023年1月20日号の報告。 2022年4月~8月に、新潟県糸魚川市内の小中高の学生(6~17歳)に対しオンラインアンケートを実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。片頭痛を引き起こすトリガーを調査するため、因子分析およびクラスタリングを実施した。頭痛頻度へのCOVID-19パンデミックの影響についての回答も収集した。 主な結果は以下のとおり。・有効回答数2,489例のうち、頭痛は907例(36.44%)、片頭痛は236例(9.48%)、薬物乱用頭痛は11例(0.44%)で認められた。・頭痛の回答者の最大70%は日常生活への支障を訴え、約30%は医師に相談していた。・片頭痛のトリガーは、因子分析により5つの因子にグループ化され、因子に対する片頭痛患者の感受性は、3つのクラスターに分類された。 ●クラスター1は、さまざまなトリガーに対し強い感受性を示していた。 ●クラスター2は、天気、スマートフォン、ビデオゲームに対し敏感な反応がみられた。 ●クラスター3は、トリガーに対する感受性が低かった。・クラスター2は、片頭痛による支障が非常に大きいにもかかわらず、医師の診察を受けていない傾向が認められた。・COVID-19パンデミック下では、頭痛の回答者の10.25%で頭痛の発作が増加し、3.97%で減少していた。

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リファンピシン感受性肺結核、8週レジメンが標準治療に非劣性/NEJM

 結核の治療において、8週間のベダキリン+リネゾリドレジメンによる初期治療を含む治療戦略は標準治療に対して非劣性であり、治療期間の短縮にもつながり、安全性に明らかな懸念はないことを、シンガポール・シンガポール国立大学のNicholas I. Paton氏らがアダプティブ第II/III相無作為化非盲検非劣性試験「Two-Month Regimens Using Novel Combinations to Augment Treatment Effectiveness for Drug-Sensitive Tuberculosis trial:TRUNCATE-TB試験」の結果、報告した。結核は、通常6ヵ月間のリファンピシンベースのレジメンで治療されるが、初期治療期間の短縮を含む治療戦略により同様の治療成績が得られるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2023年2月20日号掲載の報告。高用量リファンピシン+リネゾリドまたはベダキリン+リネゾリドを検証 研究グループは2018年3月21日~2020年1月20日の期間で、インドネシア、フィリピン、タイ、ウガンダ、インドの18施設において、18~65歳のリファンピシン感受性肺結核患者675例を、標準治療(リファンピシン+イソニアジド24週、ピラジナミド+エタンブトールを最初の8週間併用)、または4つの初期治療戦略群(8週間レジメンの初期治療、臨床症状が持続する場合は12週まで治療延長、治療後モニタリングおよび再発時の再治療を含む)のいずれかに無作為に割り付けた。4つの初期治療レジメンは、高用量リファンピシン+リネゾリド、高用量リファンピシン+クロファジミン、rifapentine+リネゾリド、ベダキリン+リネゾリド(いずれもイソニアジド+ピラジナミド+エタンブトールとの併用)である。 今回は、登録が完了した高用量リファンピシン+リネゾリドとベダキリン+リネゾリドの2つの初期治療レジメンについて、標準治療に対する非劣性を検証した。 主要アウトカムは96週時点での死亡、治療継続または活動性疾患の複合で、非劣性マージン12ポイント、片側有意水準0.0125とした。ベダキリン+リネゾリド、96週後の複合エンドポイントに関して非劣性 675例中、1例は誤って無作為化されたため直ちに撤回され、intention-to-treat集団は674例であった。このうち、4例が同意撤回または追跡不能となった。 主要アウトカムのイベントは、標準治療群で181例中7例(3.9%)、高用量リファンピシン+リネゾリド群で184例中21例(11.4%、補正後群間差:7.4ポイント、97.5%信頼区間[CI]:1.7~13.2、非劣性基準を満たさず)、ベダキリン+リネゾリド群で189例中11例(5.8%、0.8ポイント、-3.4~5.1、非劣性基準を満たす)に発生した。 96週時点の平均治療期間は、標準治療群180日、高用量リファンピシン+リネゾリド群106日、ベダキリン+リネゾリド群85日であった。 Grade3/4の有害事象および重篤な有害事象の発現率は、3群で類似していた。

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第34回 経鼻インフルワクチン使いますか?

フルミストが承認へ厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2月27日、第一三共の経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液(以下フルミスト)」の承認を了承しました。3月に承認される見通しです。フルミストは、鼻に噴霧するインフルエンザワクチンです。「これまでにない剤型でナウい!」と思われるかもしれませんが、2003年にアメリカで承認されており、日本は20年遅れの承認となっています。2016年あたりに承認に向けた話し合いが進められたのですが、事務的な手続きやら何やらで、いろいろと後ずれしてしまったそうです。フルミストは、2013/14シーズン以降ワクチン効果の低下を指摘されており、米国疾病予防管理センター(CDC)でも一時推奨リストから取り下げられていました。そのため、現在も「いまいちかも…」と思っている医師は多いかもしれません。A型インフルエンザ(H1N1)の流行時に、小児で有効性が検証されています1)。この研究では、不活化ワクチンに非劣性という結果が得られています。具体的には、調整済みの有効性(VE)が、H1N1に対してフルミスト69%(95%信頼区間[CI]:56~78%)、不活化ワクチン79%(95%CI:70~86%)、H3N2に対してそれぞれ36%(95%CI:14~53%)、43%(95%CI:22~59%)、B型インフルエンザに対してそれぞれ74%(95%CI:62~82%)、56%(95%CI:41~66%)という結果でした。現在CDCはフルミストをインフルエンザワクチンの選択肢の1つとして位置づけています2)。CDCの推奨と接種対象国際的には2~49歳へ接種が可能ですが、日本国内はおそらく2~19歳未満に限定されることになります。ほぼ子供のワクチンと言えるでしょう。2歳未満で喘鳴が増えた経緯があり、接種対象外となっています。上述しましたが、CDCはインフルエンザワクチン全般について、不活化ワクチンとそれ以外のどちらがよいか、断言していません3)。ただ、フルミストについては接種対象が限定されており、それには注意すべきと書いています。生ワクチンなので、喘息発作の既往が1年以内にある人、免疫不全者、妊婦では接種を回避する必要があります。また、自宅に免疫不全者がいる場合も避けるべきとされています。なお、卵アレルギーについてはそこまで懸念しなくてよいとされています2)。CDCの推奨は「卵アレルギーの既往歴があり、蕁麻疹のみを経験したことがある人は、インフルエンザワクチンの接種は可能。蕁麻疹以外の症状(血管浮腫、呼吸困難、ふらつき、再発性嘔吐など)があったり、アドレナリン(エピネフリン)投与を要したりした人についても、年齢や健康状態に応じたワクチン接種を受けることが可能」となっています。インフルエンザワクチンと卵アレルギーの関係については、堀向 健太先生がYahoo!のニュース記事に詳しくまとめられているので、そちらを参考にするとよいでしょう3)。フルミストは弱毒生ワクチンなので、接種後、鼻汁や咳などの症状が出ることがあります。とはいえ、低温馴化された弱毒化されたものを使っていますので、基本的にはそこまで問題にならないでしょう。おそらく国内では、来シーズンから経鼻インフルワクチンが使われることになると予想されます。参考文献・参考サイト1)Buchan SA, et al. Effectiveness of Live Attenuated vs Inactivated Influenza Vaccines in Children During the 2012-2013 Through 2015-2016 Influenza Seasons in Alberta, Canada: A Canadian Immunization Research Network (CIRN) Study. JAMA Pediatr. 2018;172:e181514.2)Grohskopf LA, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices - United States, 2022-23 Influenza Season. MMWR Recomm Rep. 2022;71:1-28.3)インフルエンザワクチン製造時に鶏卵を使用 卵アレルギーの子どもは予防接種できる?

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ダロルタミド、転移を有する前立腺がんに適応追加/バイエル

 バイエル薬品は2023年2月24日、経口アンドロゲン受容体阻害薬(ARi)であるダロルタミド(商品名:ニュベクオ)について、遠隔転移を有する前立腺がんへの適応追加承認を取得した。ダロルタミドを加えた併用療法が死亡リスクを有意に32.5%低減 今回のダロルタミドの承認は、遠隔転移を有する前立腺がん患者を対象とした第III相ARASENS試験の良好な結果に基づくもの。同試験では、アンドロゲン遮断療法(ADT)+ドセタキセルにダロルタミドを加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して死亡リスクを有意に32.5%低減することが示された。これらの結果は、NEJM誌2022年3月24日号に掲載された。 ダロルタミドは転移のあるホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)の適応に対して複数の国や地域において申請中である(米国では承認済み)。同剤は、mHSPCを対象とした第III相試験(ARANOTE試験)や、再発リスクが非常に高い限局性前立腺がんの術後補助療法としてダロルタミドを評価するANZUP主導の第III相試験(DASL-HiCaP試験、ANZUP1801)など、さまざまな病期の前立腺がんを対象とした他の試験でも検討が進められている。 ダロルタミドは、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん患者(nmCRPC)の治療薬として、米国、欧州連合(EU)、日本および中国を含めた世界の80以上の地域で承認されている。

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平均血糖値とHbA1c値の乖離の理由が明らかに/京都医療センターほか

 平均血糖値が同じ180mg/dLであってもHbA1c値が7.0%台の人もいれば、9.0%近くの人もいると、A1c-Derived Average Glucose(ADAG)研究で報告されている。これらの平均血糖値とHbA1c値の乖離現象はヘモグロビン糖化に個人差があるのではないかと推察されている。2型糖尿病ではヘモグロビン糖化インデックス(Hemoglobin glycation index:HGI)が高い人は、糖尿病合併症、心血管疾患、死亡リスクが増大すると報告されている。しかし、日本人1型糖尿病での報告はなかった。 そこで、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)らのFGM-Japan研究グループ(9施設)は日本人1型糖尿病を対象に、HGIに及ぼす要因を検討したところ、性別(女性)、HbA1c値、腎機能(eGFR)、血糖変動(%CV)が関連していることが明らかとなった。Journal of Diabetes Investigation誌2023年2月14日号の報告。 1型糖尿病211例の過去90日間の連続血糖測定(CGM)データを用いて、平均血糖や血糖変動指標などを算出した。HGIは「実測されたHbA1cから平均血糖から予測されたHbA1cを引き算」して求められ、高HGI・中HGI・低HGIの3群に分類された。平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を多変量解析した結果 平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を検討した主な結果は以下のとおり。低HGI、中HGI、高HGIの順に、・女性の割合が多くなった(45.1%、58.6%、74.3%、p=0.002)・HbA1c値が高くなった(7.0±0.8%、7.4±0.7%、8.2±0.8%、p=0.029)・Hb値は低くなった(13.9±1.7g/dL、13.7±1.3g/dL、13.2±1.4g/dL、p=0.024)・推定腎機能は低くなった(83.4±21.3、75.6±20.1、75.1±19.4、p=0.029)・血糖変動指標の中でADRR(38.7±9.8、41.4±11.1、43.5±10.9、p=0.031)と%CV(32.6±5.1、34.8±6.7、35.0±5.9、p=0.029)が高くなった しかし、その一方で・年齢、糖尿病歴、BMI、糖尿病合併症、糖尿病治療、食事・運動習慣、生活習慣では3群間に差を認めなかった・平均血糖、GMI、TAR、TIR、TBRでは3群間に差を認めなかった その他・多変量解析の結果、性別(女性)とHbA1c値と独立して、%CVとeGFRがHGIと有意に関連していた(R2=0.44) 共同研究者の三浦 順之助氏(東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科分野)は、本研究について「ヘモグロビン糖化の個人差の一部が解明されたことは、糖尿病診療の上で大きな意義がある。遺伝的要因や炎症などがヘモグロビンの糖化に関係している可能性も考えられ今後も検討が必要である」と述べている。

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パーキンソン病、片側淡蒼球内節の集束超音波で運動機能改善/NEJM

 パーキンソン病患者に対する片側淡蒼球内節の集束超音波アブレーション(FUSA)は、3ヵ月後に運動機能やジスキネジアが改善した患者の割合が高かったものの、有害事象を伴った。米国・University of North CarolinaのVibhor Krishna氏らが北米、アジアおよび欧州の16施設で実施した無作為化二重盲検シャム対照比較試験の結果を報告した。片側淡蒼球内節のFUSAは、ジスキネジアや運動変動のあるパーキンソン病患者を対象とした小規模の非盲検試験において有効性が示唆されていた。著者は、「パーキンソン病患者におけるFUSAの有効性と安全性を明らかにするためには、より長期の大規模臨床試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2023年2月23日号掲載の報告。FUSA群とシャム群に無作為化、3ヵ月後の改善を評価 研究グループは、UK Brain Bank基準で特発性パーキンソン病と診断され、投薬オフ状態でジスキネジアまたは運動変動と運動障害を有する30歳以上の患者を、淡蒼球内節のMRガイド下FUSA群またはシャム(対照)群に3対1の割合で無作為に割り付け、患者の利き手側または運動障害が大きい側と反対側に投薬オフ状態で治療を行った。 適格基準は、MDS-UPDRSパートIII(運動)スコアが投薬オン状態に対してオフ状態では30%以上減少で定義されるレボドパ反応性を有し、MDS-UPDRSパートIIIスコアが20以上で、ジスキネジアまたは運動変動の運動障害があり(投薬オン状態でMDS-UPDRS項目4.2スコアが2以上、またはMDS-UPDRS項目4.4スコアが2以上)、パーキンソン治療薬を30日以上安定投与されている患者とした。 主要アウトカムは、治療後3ヵ月時点の改善(投薬オフ状態での治療側のMDS-UPDRSパートIII[運動]スコアまたは投薬オン状態でのジスキネジア評価スケール[UDysRS]のスコアのいずれかがベースラインから3点以上減少で定義)。副次アウトカムはMDS-UPDRSの各項目スコアのベースラインから3ヵ月時点までの変化であった。 3ヵ月間の二重盲検期の後、12ヵ月時まで非盲検期を継続した。治療3ヵ月後に運動症状が改善した患者の割合はFUSA群69%、シャム群32% 94例が登録され、FUSA群に69例、シャム群に25例が割り付けられた。このうち治療を受けたそれぞれ68例および24例を安全性解析対象集団、3ヵ月後の主要評価を完遂した65例(94%)および22例(88%)を修正intention-to-treat集団とした。 治療後3ヵ月時点で改善した患者は、FUSA群で65例中45例(69%)、シャム群で22例中7例(32%)であった(群間差:37ポイント、95%信頼区間[CI]:15~60、p=0.003)。 FUSA群の改善例45例のうち、MDS-UPDRSパートIIIスコアのみが3点以上減少した患者は19例(29%)、UDysRSスコアのみが3点以上減少した患者は8例(12%)、両スコアとも3点以上減少した患者が18例(28%)であった。一方、シャム群の改善例7例のうち、6例はMDS-UPDRSパートIIIスコアのみが3点以上減少し、1例は両スコアとも3点以上減少した。 副次アウトカムは、概して主要アウトカムと同様の結果であった。 FUSA群において、3ヵ月時点で改善した45例のうち12ヵ月時点で評価し得たのは39例で、このうち30例は改善が続いていた。 FUSA群における淡蒼球破壊術関連有害事象は、構音障害、歩行障害、味覚障害、視覚障害および顔面筋力低下であった。

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コロナ感染による免疫、変異株ごとの効果は~メタ解析/Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染のその後の再感染に対する予防効果は、デルタ株までの変異株に対しては非常に高く40週後も高いままであったが、オミクロンBA.1株については時間と共に急速に低下した。一方、再感染での重症化予防効果は、オミクロンBA.1株までの変異株すべてにおいて、既感染1年後まで比較的高いレベルで維持されていた。米国・保健指標評価研究所(IHME)のCaroline Stein氏らCOVID-19 Forecasting Teamが実施したメタ解析の結果で示された。著者は、「今回の解析から、過去の感染による変異株別ならびに経時的な予防効果は、mRNAワクチン2回接種と同等以上であることが示唆された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年2月16日号掲載の報告。2022年9月までの65件の研究をメタ解析 研究グループは、PubMed、Web of Science、medRxiv、SSRNなどを用い、2022年9月31日までに発表された査読つき論文、報告書、査読前原稿、ニュース記事などを検索し、SARS-CoV-2既感染者のCOVID-19のリスク減少を未感染者と比較して推定した後ろ向きおよび前向きコホート研究ならびに検査陰性症例対照研究を特定し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 アウトカムは、再感染(前回のPCR検査/迅速抗原検査陽性から90日以上または120日以上後に検査陽性など)、症候性再感染(発熱、咳、息切れ、悪寒、筋肉痛、味覚・嗅覚障害、咽頭痛、下痢、嘔吐などを伴う再感染)、重症化(入院または死亡に至った再感染)である。既感染の有効性について、アウトカム、変異株、および感染からの経過時間ごとにメタ解析し、ベイズメタ回帰を用いて統合効果量を推定した。 19ヵ国の計65件の研究が解析対象となった。再感染での重症化予防効果、オミクロンBA.1株を含む変異株で78%以上 再感染に対する予防効果は武漢株、アルファ株、ベータ株、デルタ株に対しては高く統合推定値は82%以上であったが、オミクロンBA.1株への再感染予防効果は低く、統合推定値は45.3%(95%不確実性区間[UI]:17.3~76.1)であった。症候性再感染に対する予防効果も同様で、統合推定値は武漢株、アルファ株、ベータ株、デルタ株では82%以上であったが、オミクロンBA.1株は44.0%(95%UI:26.5~65.0)であった。一方、重症化予防効果は概して高く、アルファ株、ベータ株、デルタ株およびオミクロンBA.1株で78%以上であった。 感染からの時間関数として予防効果を評価すると、再感染予防効果は武漢株、アルファ株およびデルタ株を合わせ4週時点では85.2%と高いが、40週時点では78.6%(95%UI:49.8~93.6)に低下した。オミクロンBA.1株への再感染予防効果の低下はより急速で、40週時は36.1%(95%UI:24.4~51.3)と推定された。 症候性再感染に対する予防効果も同様であった。しかし、重症化予防効果は、40週時点で武漢株、アルファ株、デルタ株は90.2%(95%UI:69.7~97.5)、オミクロンBA.1株は88.9%(84.7~90.9)であった。

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HFpEF診療はどうすれば…?(前編)【心不全診療Up to Date】第6回

第6回 HFpEF診療はどうすれば…?(前編)Key Points原因不明の息切れ、実はHFpEFかもしれないですよ!BNP値が上昇していないのにHFpEF?HFpEFの病態生理、今どこまでわかっている? 最新の情報をUpDateはじめに今回は、発症率、有病率ともに上昇の一途をたどっている左室駆出率の保たれた心不全HFpEF (Heart Failure with preserved Ejection Fraction)を取り上げる1,2)。 近年のHFpEFの病態生理の理解、診断アプローチ、効果的な新しい治療法の進歩にもかかわらず、日常診療においてHFpEFはまだ十分に認識されていないのが現状である。『原因不明の息切れ、それはHFpEFかも』をキャッチフレーズに、まずはぜひ疑っていただきたい。そのために、本稿では、HFpEFの病態生理、診断、治療に関する最新情報を皆さまと共有したい。HFpEFの“いまどき”の定義HFpEFとは、呼吸苦や倦怠感、浮腫などの心不全徴候を認め、左室駆出率(EF, Ejection Fraction)が50%以上で、安静時もしくは労作時のうっ血(左房圧上昇)を示唆する客観的証拠※を認めるものと定義される(※:Na利尿ペプチド[NP, Natriuretic Peptide]値上昇、左房機能障害・左房拡大、安静時/労作時の肺動脈楔入圧[PAWP, Pulmonary Artery Wedge Pressure]上昇など)3-5)。つまり、BNP/NT-proBNP値正常範囲内であっても、労作時息切れがあり、何らかのうっ血を示唆する所見があれば、それはHFpEFの早期段階をみている可能性があるということである6)。とくにHFpEFでは、労作時にのみ左房圧が上昇し、肺うっ血を来すという症例が約30%と決してまれではなく、“NP値が正常範囲内のHFpEF”があるということをぜひご理解いただきたい7)。しかも、この“NP値正常のHFpEF”群(息切れあり)は、非HFpEF群(息切れの原因がHFpEFではない集団)と比較して、死亡または心不全入院のリスクが約2.7倍高かったという報告もあり、この表現型(フェノタイプ)の重要性が最近とくに注目されている8)。つまり、『息切れを主訴に来院された患者、実はその原因がHFpEFかも』と考えていただき、必要あれば循環器専門施設へご紹介いただくことが、HFpEFを早期の段階(心不全Stage C早期)で診断することにつながり、その患者の予後やQOLを改善するうえでも大切といえるわけである。では、なぜそのようなことが起きるのか。キーワードは“予備能低下”である。HFpEFの病態生理、今どこまでわかっている?HFpEFを一言で説明すると、心臓だけではない多臓器の予備能が低下したヘテロな全身性の症候群といえよう9)。そして、HFpEFすべてに共通しているのは、“まずは労作時に左房圧が上昇し、その後病期が進行すると安静時まで左房圧が上昇してしまう”ということである(これ重要!)。では、それを引き起こす機序はどこまでわかっているのか、少し歴史を紐解きつつ解説していきたい。遡ること約35年前、HFpEFの初期の記述の1つとして、Topolらが高齢者の高血圧性肥大型心筋症についてNEJMへ報告したが10)、これはMモード、ドップラー心エコー図検査が急速に普及し、広く使われるようになっていた当時、拡張機能障害の概念にうまく合致するものであった。つまり、左室腔が小さく、左室壁が肥厚し、左室拡張末期圧容積関係が上方および左方にシフトし、拡張機能障害と左室充満圧の上昇を来すというものであった11)。2000年代初頭、拡張期心不全の古典的な説明が多くの患者に当てはまらないことが明らかになった12,13)。多くの患者で左室腔の大きさは正常で、明らかな左室肥大を有しておらず、拡張機能障害以外の異常が次第に確認され始めた(図1)14-16)。このような経緯で、HFpEFという用語が生まれ、その定義と特徴をより明確にすることに焦点が当てられるようになったわけである。画像を拡大する時は2023年、HFpEFは拡張機能障害だけではなく、糖尿病、肥満、高血圧、心房細動、腎機能障害、冠動脈疾患、COPD、貧血、睡眠時無呼吸症候群といった併存疾患、そして加齢が複雑に絡み合って生じる全身性炎症、内皮機能障害、心筋エネルギー代謝や骨格筋の異常などによる左室収縮・拡張予備能低下、肺血管障害、末梢での酸素利用能低下、動脈スティフネス、心室-血管カップリング異常、自律神経機能障害によって引き起こされる症候群であるという認識に至った(図2)17-19)。なお、このHFpEFの病期進行がどのような時間経過で進展していくのか、まだ結論は出ていないが、図3のような仮説が提唱されている20)。もちろん順序などには個人差があり、まだ議論の余地はあるが、病態生理を理解するうえではわかりやすく、参考にされたい。画像を拡大する画像を拡大するこのように、多臓器にわたる予備能低下を特徴とするHFpEFであるが、まずは一番重要な心臓、そして肺における異常について考えていきたい。心臓における構造的・機能的異常は、病期が進行すれば、両心房両心室に及ぶとされている4)。HFpEFでは、左室弛緩障害、スティフネス増大などにより、持続的または断続的に左室充満圧が上昇しており、それが左房のリモデリング、機能障害(左房コンプライアンスの低下)を引き起こす9-12)。HFpEFでは心房細動の合併がしばしば認められるが、これは左房機能障害がより進んだHFpEFの指標と考えられる21-23)。また、心エコー図検査(スペックルトラッキング法)で評価する左房リザーバーストレインの低下によって診断される左房機能障害が、左室機能障害よりも予後の強い予測因子とされているし22)、左房ストレインの低下が、息切れの原因精査(HFpEFが原因かどうかの区別)に最も有用であったという報告もあり24-26)、HFpEFの病態生理を理解するうえで、左房の機能評価がかなり重要な役割を担っているといえる。なお、HFpEFの多くは、左室機能障害が左房機能障害に先行するが、左室機能障害よりも左房機能障害が全面に出る(左房圧上昇があるも左室機能は保持されている)サブタイプ(primary LA myopathy)も存在するので、この点からも左室だけをみていてはいけないといえる27)。そして、左房圧の持続的な上昇は、全肺血管(肺静脈、肺毛細血管、肺小動脈)に負担をかけ、肺高血圧(PH, Pulmonary Hypertension)、右室機能障害を来し、さらには右房にまで負荷が及ぶことになる28)。実際HFpEF患者の約80%にPHが合併しており、PHのないHFpEFと比べて予後は悪く、また右室機能障害も約30%に合併し、死亡率上昇に寄与することが報告されている29-31)。つまり、HFpEFをみれば、必ず“左房さん、肺血管さん、そして右心系さん、大丈夫?”と早めから気にかけてあげることがきわめて重要なのである32-35)。早めに誰も気が付けず、この肺血管への負担が持続すると、全肺血管のリモデリング、血管収縮が生じ始め、最終的には肺血管抵抗(PVR, Pulmonary Vascular Resistance)が上昇し、肺血管疾患(PVD, Pulmonary Vascular Disease)を引き起こすことになる36,37)。PVDを伴うことで、右室-肺動脈カップリングが損なわれ、肺動脈コンプライアンスは低下し、右心機能がさらに増悪し、軽労作でも容易に右室充満圧が上昇するようになる38)。それにより、心室中隔が左室側へ押され、左室充満圧も血流のわずかな増加で容易に上昇するようになり、さらに肺うっ血が増悪するという負のサイクルがより回るようになり、”Stage D” HFpEFへと移行してしまう39)。このように、決して甘く見てはいけないのが、PVDの合併である。そうならないための糸口として、最近の研究で、HFpEFにおけるPVD進行の初期段階でこの病態を捉える重要性が認識されるようになってきた。それは、労作時にのみPVRが上昇する“Latent PVD”という概念で、左房障害の時間経過と同じように、PVDも初期段階では労作時にのみPVRが上昇、病期が進行すると、安静時でもPVRが上昇するようになる。Latent PVDの段階であっても、PVDのない群と比較して予後は不良で40)、心房間シャントデバイスのような新たな治療法への反応もlatent PVDの有無で異なることもわかってきている(HFpEF最新治療の詳細は次回説明予定)41)。ここまでHFpEFにおける心臓、肺の病態生理について述べてきたが、HFpEFでの多臓器にわたる異常を理解するうえでもう一つ重要になってくるのが、肥満や代謝ストレスなどによって誘導される全身性の炎症、内皮機能障害である42-45)。これは、心臓、肺、肝臓、腎臓、骨格筋などに対して悪影響を及ぼすが、たとえば、心臓においてはこの影響で冠微小循環障害を来すとされており、HFpEFの約75%に冠微小循環障害が合併しているという報告もある46)。この炎症反応において重要な役割を担っているE-selectinやICAM-1などの細胞接着分子(炎症細胞の炎症組織への接着に関与)の心筋発現レベルが、HFpEF患者において上昇しているという報告もあり47)、ICAM-1などをターゲットとした薬剤が今後出てくるかもしれない。また、欧米諸国では、肥満が関連したHFpEFが大きな問題となっており、字数足りず詳細は省くが、肥満とHFpEFに関してもかなり多くの研究が行われており、ご興味ある方はぜひ参考文献をご確認いただきたい17,48-52)。 画像を拡大するそのほか、自律神経機能に関する異常(脈拍応答不全、圧受容器反射感受性低下、血液分布異常)もHFpEFでは一般的であり53)、これらに対する治療として、最近いくつかのデバイス治療に関する臨床試験が進行している。たとえば、脈拍応答不全(chronotropic incompetence)に対するペーシング治療や血液分布異常(impaired systemic venous capacitance)に着目した右大内臓神経アブレーション治療(unilateral greater splanchnic nerve ablation)がそれにあたり、私自身も現在この分野の研究に携わっており、今後出てくる結果に注目いただきたい。このように多臓器にわたるさまざまな病態が複雑に絡み合うHFpEFであるが、最近報告されたゲノムワイド関連解析(GWAS, Genome Wide Association Study)の結果で、HFrEFとHFpEFの遺伝的構造には大きな違いがあり、HFpEFのgenetic discoveryは非常に限られていることが報告された54)。このことからも、HFpEF患者それぞれにおいて、異なる病態がいくつか融合する形で存在している可能性が高い。しかしながら、「HFpEF患者それぞれにおいて、どの病態の異常が、どれくらいの割合で融合しているのか、そしてそれぞれの病態の異常がどの程度進行した状態となっているのか」という点についてはまだわかっておらず、これは今後の大きな課題の1つである。最近の研究で、臨床データ、画像・バイオマーカー・オミックスデータを人工知能/機械学習技術を用いて解析することで、より適切なサブフェノタイピングが確立できるかどうかが検討されているが、これが確立すれば、上記の問題に加え、HFpEF患者それぞれの根底にある遺伝的シグナルとその要因の解明も可能となるかもしれない。この“治療に結びつくより一歩進んだフェノタイピング戦略”の開発は私自身も米国で関わっているNHLBI HeartShare Studyの主な目的の1つでもあり55)、必ず明るいHFpEF診療の未来がやってくると信じてやまないし、自分もそれに貢献できるよう、努力を続けたい。そして、次回は、いよいよHFpEFの診断、そして治療について深堀りしてきたい。1)Dunlay SM, et al. Nat Rev Cardiol. 2017;14:591-602.2)Steinberg BA, et al. Circulation. 2012;126:65-75.3)Bozkurt B, et al. Eur J Heart Fail. 2021;23:352-380.4)Pfeffer MA, et al. Circ Res. 2019;124:1598-1617.5)Borlaug BA. Nat Rev Cardiol. 2020;17:559-573.6)Sorimachi H, et al. Circulation. 2022;146:500-502.7)Borlaug BA, et al. Circ Heart Fail. 2010;3:588-595.8)Verbrugge FH, et al. Eur Heart J. 2022;43:1941-1951.9)Shah SJ, et al. Circulation. 2016;134:73-90.10)Topol EJ, et al. N Engl J Med. 1985;312:277-283.11)Aurigemma GP, et al. N Engl J Med. 2004;351:1097-1105.12)Burkhoff D, et al. Circulation. 2003;107:656-658.13)Kawaguchi M, et al. Circulation. 2003;107:714-720.14)Maurer MS, et al. J Card Fail. 2005;11:177-187.15)Maurer MS, et al. J Am Coll Cardiol. 2007;49:972-981.16)Petrie MC, et al. Heart. 2002;87:29-31.17)Shah SJ, et al. Circulation. 2020;141:1001-1026.18)Shah AM, et al. Nat Rev Cardiol. 2012;9:555-556.19)Burrage MK, et al. Circulation. 2021;144:1664-1678.20)Lourenco AP, et al. Eur J Heart Fail. 2018;20:216-227.21)Melenovsky V, et al. Circ Heart Fail. 2015:295-303.22)Freed BH, et al. Circ Cardiovasc Imaging. 2016;9.23)Reddy YNV, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;76:1051-1064.24)Telles F, et al. Eur J Heart Fail. 2019;21:495-505.25)Reddy YNV, et al. Eur J Heart Fail. 2019;21:891-900.26)Backhaus SJ, et al. Circulation. 2021;143:1484-1498.27)Patel RB, et al. Sci Rep. 2021;11:4885.28)Verbrugge FH, et al. Circulation. 2020;142:998-1012.29)Melenovsky V, et al. Eur Heart J. 2014;35:3452-3462.30)Mohammed SF, et al. Circulation. 2014;130:2310-2320.31)Obokata M, et al. Eur Heart J. 2019;40:689-697.32)Lam CS, et al. J Am Coll Cardiol. 2009;53:1119-1126.33)Iorio A, et al. Eur J Heart Fail. 2018;20:1257-1266.34)Miller WL, et al. JACC Heart Fail. 2013;1:290-299.35)Vanderpool RR, et al. JAMA Cardiol. 2018;3:298-306.36)Fayyaz AU, et al. Circulation. 2018;13:1796-1810.37)Huston JH, et al. Circ Res. 2022;130:1382-1403.38)Melenovsky V, et al. Eur Heart J 2014;35:3452-3462.39)Borlaug BA, et al. JACC: Heart Fail. 2019;7:574-585.40)Ho JE, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;75:17-26.41)Berry N, et al. Am Heart J. 2020;226:222-231.42)Schiattarella GG, et al. Cardiovasc Res. 2021;117:423-434.43)Schiattarella GG, et al. Nature. 2019;568:351-356.44)Borlaug BA, et al. J Am Coll Cardiol. 2010;56:845-854.45)Shah SJ, et al. Circulation. 2016;134:73-90.46)Shah SJ, et al. Eur Heart J. 2018;39:3439-3450.47)Franssen C, et al. JACC Heart Fail.2016;4:312-324.48)Borlaug BA. Nat Rev Cardiol. 2014;11:507-515.49)Rao VN, et al. Eur J Heart Fail. 2020;22:1540-1550.50)Koepp KE, et al. JACC Heart Fail. 2020;8:657-666.51)Obokata M, et al. Circulation. 2017;136:6-19.52)Borlaug BA, et al. Cardiovasc Res. 2022;118:3434-3450.53)Maurer MS, et al. Eur J Heart Fail. 2020;22:173-176.54)Joseph J, et al. Nat Commun. 2022;13:7753.55)Shah SJ, et al. Nat Rev Drug Discov. 2022;21:781-782.

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紅皮症性アトピー性皮膚炎にもデュピルマブが有効

 紅皮症性アトピー性皮膚炎は、広範な皮膚病変によって定義され、合併症を引き起こし、場合によっては入院に至る重症アトピー性皮膚炎である。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らは、デュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの無作為化比較試験の事後解析において、紅皮症性AD患者に対するデュピルマブ治療は、全体集団と同様にアトピー性皮膚炎の徴候・症状の迅速かつ持続的な改善をもたらし、安全性は許容できるものであったと報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。紅皮症性アトピー性皮膚炎がデュピルマブで有意に改善 中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象にデュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの国際共同、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験について、事後解析が行われた。対象は、アトピー性皮膚炎の病変が体表面積(BSA)の90%以上かつ全般症状スコア(Global Individual Sign Score)の紅斑のスコアが1以上を満たした患者とした(紅皮症性アトピー性皮膚炎)。 対象患者は、デュピルマブ(週1回または隔週)またはプラセボを、単剤または局所コルチコステロイド(TCS)との併用で投与された。 16週目における有効性(病変のBSAに対する割合、Eczema Area and Severity Index[EASI]スコア、Peak Pruritus Numerical Rating Scale[そう痒NRS]スコア)、血清中バイオマーカー(TARC[thymus and activation-regulated chemokine]、総IgE、LDH[乳酸脱水素酵素])の変化、安全性(有害事象の発現頻度)などを評価した。 データはレジメンごとにプールされ、デュピルマブ単剤投与とTCS併用投与で層別化された。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された3,075例中、209例がベースライン時に紅皮症性アトピー性皮膚炎の基準を満たした。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の年齢中央値はデュピルマブ単剤群31歳、TCS併用群39歳で、全体集団(それぞれ34歳、36歳)と類似していた。また、紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の男性の割合は、デュピルマブ単剤群71.3%(97例)、TCS併用群74.0%(54例)であった(全体集団はそれぞれ58.7%、60.6%)。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団において、デュピルマブ投与群(週1回投与、隔週投与)はプラセボ群と比べて、有効性の指標がいずれも有意に改善した。・病変のBSAに対する割合(最小二乗平均変化率[標準誤差[SE]]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-42.0% [7.7]、隔週投与-39.9%[6.5]であったのに対し、プラセボ群は-17.2%[11.0]であった(いずれもp=0.03)。TCS併用群は週1回投与-63.2% [6.7]、隔週投与-56.1%[9.1]であったのに対し、プラセボ群は-14.5%[7.3]であった(いずれもp<0.001)。・EASIスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-58.5% [9.0]、隔週投与-58.3%[7.9]であったのに対し、プラセボ群は-22.3%[12.4]であった(それぞれp=0.004、p=0.003)。TCS併用群は週1回投与-78.9%[7.8]、隔週投与-70.6%[10.1]であったのに対し、プラセボ群は-19.3%[8.2]であった(いずれもp<0.001)。・そう痒NRSスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-45.9% [7.8]、隔週投与-33.9%[6.6]であったのに対し、プラセボ群は-0.6% [9.4]であった(いずれもp<0.001)。TCS併用群は週1回投与-53.0% [8.1]、隔週投与-55.7%[10.8]であったのに対し、プラセボ群は-26.0%[8.8]であった(それぞれp=0.006、p=0.01)。・名目上の統計学的に有意な改善は、早ければ1週目からみられた(デュピルマブ単剤群のEASIスコアとそう痒NRSスコア[それぞれp<0.05、p<0.001])。・バイオマーカー値はプラセボと比べて有意に低下した(いずれもp<0.001)。・デュピルマブ治療を受けた患者で最もよくみられた有害事象は、注射部位反応、結膜炎、上咽頭炎であった。

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CAR-T ide-cel、再発・難治性多発性骨髄腫への第III相試験結果(KarMMa-3)/NEJM

 2~4レジメンの前治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるイデカブタゲン ビクルユーセル(idecabtagene vicleucel:ide-cel)は標準治療と比較して、無増悪生存期間を約7ヵ月有意に延長するとともに深い奏効をもたらし、安全性プロファイルは先行研究と一致し新たな安全性シグナルは認められないことが、スペイン・Clinica Universidad de NavarraのPaula Rodriguez-Otero氏らが実施した「KarMMa-3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年2月10日号で報告された。3分の2が3クラス抵抗性の無作為化第III相試験 KarMMa-3は、日本を含む12ヵ国49施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年5月~2022年4月の期間に患者の登録が行われた(2seventy bioとCelgene[Bristol-Myers Squibbの関連会社]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、多発性骨髄腫と診断され、3クラスの薬剤(ダラツムマブ、免疫調整薬、プロテアーゼ阻害薬)を含む前治療(それぞれ2サイクル以上)を2~4レジメン施行され、最後の治療の最終投与日から60日以内に増悪が認められた患者であった。 被験者は、ide-celを投与する群(用量範囲:CAR陽性細胞150×106~450×106)または標準治療を受ける群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。標準治療は、担当医の裁量で、次の5つのレジメンから1つが選択された。ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン、イキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン、エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン。 386例が登録され、ide-cel群に254例(年齢中央値63歳、男性61%)、標準治療群に132例(63歳、60%)が割り付けられた。66%が3クラス抵抗性で、95%はダラツムマブ抵抗性であった。全生存データは不十分 追跡期間中央値18.6ヵ月の時点における無増悪生存期間中央値(主要評価項目)は、標準治療群が4.4ヵ月であったのに対しide-cel群は13.3ヵ月と、有意に延長した(増悪または死亡のハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.38~0.65、p<0.001)。6ヵ月無増悪生存率は、ide-cel群が73%、標準治療群は40%、1年無増悪生存率はそれぞれ55%、30%だった。 奏効割合(部分奏効以上)は、標準治療群の42%に比しide-cel群は71%であり、有意差が認められた(オッズ比[OR]:3.47、95%CI:2.24~5.39、p<0.001)。完全奏効または厳格な完全奏効の割合は、ide-cel群で高かった(39% vs.5%)。また、奏効までの期間中央値は、ide-cel群が2.9ヵ月、標準治療群は2.1ヵ月で、奏効期間中央値はそれぞれ14.8ヵ月、9.7ヵ月だった。全生存のデータは不十分であった。 Grade3/4の有害事象は、ide-cel群が93%、標準治療群は75%で、Grade5はそれぞれ14%、6%で発現した。最も頻度の高い血液毒性は、好中球減少(ide-cel群78%、標準治療群44%)、貧血(66%、36%)、血小板減少(54%、29%)であり、消化器毒性では、悪心(45%、27%)、下痢(34%、24%)の頻度が高かった。 ide-cel群では、サイトカイン放出症候群が88%(197/225例)で発現し、このうちGrade3以上は5%(11例)であった。また、神経毒性は15%(34例)で認められ、3%(7例)がGrade3だった。 著者は、「複数の患者サブグループで無増悪生存期間が延長し、奏効率が改善したことを考慮すると、ide-celは、選択肢が少なく治療困難な再発・難治性多発性骨髄腫の患者に有益である可能性がある。また、本研究の知見は、生存アウトカムが不良な3クラス抵抗性の患者における本薬の使用を支持するものと考えられる」としている。

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ペムブロリズマブの肺がんアジュバントの(FDA)承認で考えること【侍オンコロジスト奮闘記】第144回

第144回:ペムブロリズマブの肺がんアジュバントの(FDA)承認で考えること参考FDA approves pembrolizumab as adjuvant treatment for non-small cell lung cancerImfinzi and Imjudo with chemotherapy approved in the US for patients with metastatic non-small cell lung cancerReijers ILM, et al.Nat Med.202;28:1178-1188. Personalized response-directed surgery and adjuvant therapy after neoadjuvant ipilimumab and nivolumab in high-risk stage III melanoma: the PRADO trial

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英語で「ちなみに」は?【1分★医療英語】第69回

第69回 英語で「ちなみに」は?Just FYI, this patient’s son is a cardiologist.(ちなみに、この患者さんの息子は循環器内科医です)Thanks for your input.(情報ありがとう)《例文1》医師AJust FYI, your patient called me twice yesterday.(ちなみに、昨日あなたの患者さんが2回電話してきました)医師BI will call her back today.(私が後から掛け直します)《例文2》医師Just FYI, I am from Boston too.(ちなみに、私もボストン出身です)患者Oh, that is great!!(おお、本当ですか!)《解説》“Just FYI,”この短い表現は頻繁に使われます。少しくだけた表現なので私の周りでは医療従事者同士で使われることが多い印象です。“For Your Information”の略で“FYI”、発音はそのまま「エフワイアイ」です。意味としては、「ちなみに」という日本語が近いです。相手にとって有益な情報や、共有したい情報を伝える際に文頭に付けることで相手の注意を引くことができます。どちらかというと、「非常に重要な情報」というよりは、「本題に付加する豆知識的な情報」に対して使われます。日常会話でも、病院内でも、使い方をマスターすればとても便利な表現ですので、ぜひ使ってみてください。講師紹介

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第152回 欧州医薬品評価委員会がモルヌピラビル承認を支持せず

Merck社がRidgeback Biotherapeutics社と組んで開発した新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)治療薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)を、欧州連合(EU)の医薬品審査の実質的な最終意思決定の場である欧州医薬品評価委員会(CHMP)が承認すべきでないと判断しました1)。クリニカルベネフィットが示されていないとCHMPは判断していますが、Merck社は不服を申し立てて再検討を求める予定です2)。高リスクのコロナ患者の入院/死亡リスクがモルヌピラビルでおよそ半減することを示した2021年10月発表の試験結果3)は世間を沸かせました。その翌月にはPfizer社もコロナ薬ニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)の有望な試験成績を発表します。ニルマトレルビル・リトナビルはコロナ患者の入院/死亡率を89%低下させました4)。モルヌピラビルは今では25を超える国々で認可/承認されており、400万人を超える患者に投与され2)、昨年の売り上げは約57億ドルでした。しかし今年のモルヌピラビルの売り上げは約10億ドルになるとMerck社は予想しています5)。一方、Pfizer社は今年のニルマトレルビル・リトナビルの売り上げは約80億ドルになると見込んでいます6)。米国は取り急ぎの認可の6ヵ月ほど前の2021年6月にモルヌピラビル170万回治療分を12億ドルで購入する約束を交わし7)、今月19日時点までに取得した290万回治療分のうち約120万回分を使っています8)。Pfizer社のニルマトレルビル・リトナビルはというと約1,228万回治療分のうち約821万回分が使われています。昨夏2022年7月に米国FDAは薬剤師がPfizer社のニルマトレルビル・リトナビルを処方できるようにしましたが9)、モルヌピラビルはそうではありません。昨秋2022年10月に発表されたコロナワクチン接種患者を主とする英国での試験結果では、モルヌピラビルの入院や死亡の予防効果が認められませんでした10)。その翌月に英国は公的医療でのモルヌピラビル使用を却下する暫定方針を示しています11)。昨春2022年4月にPfizer社はコロナ患者の同居人にニルマトレルビル・リトナビルを投与しても感染を防げなかったという試験結果を発表しました12)。Merck社のモルヌピラビルも残念ながら同じ結果で、先週発表された国際試験結果でコロナ患者の同居人の感染を減らすことができませんでした13)。参考1)Meeting highlights from the Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP) 20 - 23 February 2023 / EMA2)Merck and Ridgeback Provide Update on EU Marketing Authorization Application for LAGEVRIO? (Molnupiravir) / BUSINESS WIRE3)Merck and Ridgeback’s Investigational Oral Antiviral Molnupiravir Reduced the Risk of Hospitalization or Death by Approximately 50 Percent Compared to Placebo for Patients with Mild or Moderate COVID-19 in Positive Interim Analysis of Phase 3 Study / BUSINESS WIRE4)Pfizer’s Novel COVID-19 Oral Antiviral Treatment Candidate Reduced Risk of Hospitalization or Death by 89% in Interim Analysis of Phase 2/3 EPIC-HR Study / BUSINESS WIRE5)Merck Announces Fourth-Quarter and Full-Year 2022 Financial Results BUSINESS WIRE6)PFIZER REPORTS RECORD FULL-YEAR 2022 RESULTS AND PROVIDES FULL-YEAR 2023 FINANCIAL GUIDANCE BUSINESS WIRE7)Merck Announces Supply Agreement with U.S. Government for Molnupiravir, an Investigational Oral Antiviral Candidate for Treatment of Mild to Moderate COVID-19 / BUSINESS WIRE8)COVID-19 Therapeutics Thresholds, Orders, and Replenishment by Jurisdiction9)Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Authorizes Pharmacists to Prescribe Paxlovid with Certain Limitations FDA10)Molnupiravir Plus Usual Care Versus Usual Care Alone as Early Treatment for Adults with COVID-19 at Increased Risk of Adverse Outcomes (PANORAMIC): Preliminary Analysis from the United Kingdom Randomised, Controlled Open-Label, Platform Adaptive Trial. Posted: 17 Oct 202211)NATIONAL INSTITUTE FOR HEALTH AND CARE EXCELLENCE Draft guidance consultation Therapeutics for people with COVID-1912)Pfizer Shares Top-Line Results from Phase 2/3 EPIC-PEP Study of PAXLOVID? for Post-Exposure Prophylactic Use / Pfizer13)Merck Provides Update on Phase 3 MOVe-AHEAD Trial Evaluating LAGEVRIO? (molnupiravir) for Post-exposure Prophylaxis for Prevention of COVID-19 / BUSINESS WIRE

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