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アルツハイマー病治療薬レカネマブ、厚労省専門部会が薬事承認を了承/エーザイ・バイオジェン

 2023年8月21日、lecanemab(一般名:レカネマブ、商品名:レケンビ点滴静注200mg/同500mg、以下「レカネマブ」)は、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において製造販売承認が了承された。今回の了承に際して、エーザイとBiogen(米国)は共同ステートメントを発表し、「厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、レカネマブの早期アルツハイマー病治療薬としての製造販売承認が了承されたことは、わが国のアルツハイマー病治療における大きな前進であると受け止めている」とした。 レカネマブは大規模グローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づき、7月に米国食品医薬品局(FDA)よりアルツハイマー型認知症治療薬として「フル承認」を取得していた。

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脳卒中の病院間搬送、推奨時間内に収まらず/JAMA

 急性脳卒中の病院間搬送において、最初の病院の救急部門(ED)到着から転院搬送開始までの時間(door-in-door-out time:DIDO時間)の中央値は174分であり、現在のガイドラインで推奨されている時間(120分以内)よりも長いことを、米国・ミシガン大学のBrian Stamm氏らが、米国心臓協会(AHA)のAmerican Heart Association Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)レジストリを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。一刻を争う急性脳卒中の治療は、すべての病院で実施できるわけではなく、しばしば病院間搬送を必要とする。今回の結果について著者は、「DIDO時間の延長に関連する格差や修正可能な医療システム要因は、医療の質の改善に向けた取り組みの目標として適している」と述べている。JAMA誌2023年8月15日号掲載の報告。病院間搬送を要した急性脳卒中患者約10万9,000例について解析 研究グループは、GWTG-Strokeレジストリにおいて2019年1月~2021年12月に、急性虚血性脳卒中または出血性脳卒中を発症し、登録関連病院のEDから他の急性期病院へ転院搬送され、かつ転院先で入院していない患者を特定し、解析した。 主要アウトカムはDIDO時間(転院搬送開始時刻-ED到着時刻)の連続変数およびカテゴリー変数(≦120分、>120分)とし、一般化推定方程式(GEE)回帰モデルを用いて、全体およびサブグループ(出血性脳卒中、血管内治療が適応となる急性虚血性脳卒中、血管内治療以外の理由で転院搬送された急性虚血性脳卒中)における、DIDO時間と関連する患者特性および病院特性を同定した。 解析対象は、1,925施設から転院搬送された10万8,913例(平均[±SD]年齢66.7±15.2歳、非ヒスパニック系白人71.7%、男性50.6%)で、このうち6万7,235例が急性虚血性脳卒中、4万1,678例が出血性脳卒中であった。DIDO時間中央値は174分、ガイドライン推奨の120分を超える 全体におけるDIDO時間の中央値は174分(四分位範囲[IQR]:116~276分)、DIDO時間が≦120分の患者は2万9,714例(27.3%)であった。 DIDO時間中央値の延長と有意な関連がみられた因子は、80歳以上(vs.18~59歳:14.9分、95%信頼区間[CI]:12.3~17.5)、女性(vs.男性:5.2分、3.6~6.9)、非ヒスパニック系黒人(vs.非ヒスパニック系白人:8.2分、5.7~10.8)、ヒスパニック系(vs.非ヒスパニック系白人:5.4分、1.8~9.0)であった。 一方、DIDO時間中央値の短縮と有意な関連がみられた因子は、救急医療サービスの事前通知(-20.1分、95%CI:-22.1~18.1)、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアが12以上(vs.0~1:-66.7分、-68.7~-64.7)、血管内治療適応の急性虚血性脳卒中(vs.出血性脳卒中:-16.8分、-21.0~-12.7)であった。 血管内治療適応の急性虚血性脳卒中患者において、女性、黒人、ヒスパニック系は、DIDO時間の有意な延長と関連があったが、救急医療サービスの事前通知、静脈内血栓溶解、NIHSSスコア高値は、DIDO時間の有意な短縮と関連していた。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その2【「実践的」臨床研究入門】第35回

P(対象)をより具体的で明確なものにする今回は前回に引き続き、P(対象)を設定する際の要点について解説します。Pを設定する際、PがResearch Question(RQ)で設定したO(アウトカム)のat risk集団(Oを発生する可能性のある集団)であることも、押さえるべきポイントです。前述のとおり(連載第34回参照)、プライマリのOは末期腎不全(透析導入)と設定しました。したがって、すでに末期腎不全に至り、透析導入(もしくは腎臓移植)された患者さんはat risk 集団にならず、除外されることになります。できればPは設定したOを起こしやすい集団とするのもコツのひとつです。なぜなら、Oを発症しやすい集団を対象とした方が研究の「効率が良い」からです。ここで言う「効率が良い」の意味は、より少ないサンプル数や短い観察期間で興味のあるOの発生数を確保することができる、ということです。その結果、研究の実施可能性や統計的な検出力が高まります。筆者が米国留学以来関わっている、DOPPS(Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study)という血液透析患者さんを対象とした国際的な臨床疫学研究があります。血液透析患者さんは健常人と較べて、死亡や心血管イベント発症などハードエンドポイント(連載第3回参照)を起こすリスクがかなり高い集団です。ハイリスクな血液透析患者集団の中でも、その予後には国際間で大きな差があることが知られています。日本の血液透析患者さんの予後は、米国の患者さんのそれより圧倒的に良好なことが、DOPPSなどの研究成果から示されています。米国留学中にご指導頂いていたミシガン大学の腎臓内科と臨床疫学の名誉教授であるFK Port先生が、"US data are bad for patients but good for statistical analysis."と日本から来た筆者に自虐的に? おっしゃっていたことを覚えています。また、「研究対象集団」のデータ取得の場である「セッティング」についてキチンと明記することも重要です(連載第34回参照)。われわれのRQの「標的母集団」は慢性腎臓病(CKD)集団全体です。しかし、本研究で実際に診療データにアクセスできるのは自施設の外来に通院中の患者のみであったとすると、「セッテイング」は単施設外来ということになります。単施設の「セッテイング」で行われた臨床研究では、その施設の特性やそこに通院する患者背景などの偏り(選択バイアス)が結果に影響を及ぼす可能性があります(連載第34回参照)。ちなみに、このような「選択バイアス」の影響を出来るだけ減らすために、DOPPSでは「2段階無作為抽出法」というサンプリング手法がとられています。第1段階として、研究施設を所在地や経営母体(公立・私立など)、施設規模(患者数)を考慮して無作為に抽出。第2段階で、施設規模に合わせて研究対象患者を施設毎に無作為抽出。このようなサンプリング手法を用いることにより、「研究対象集団」の代表性を担保しているのです。さて、ここで、われわれのRQのPをあらためて以下のように整理してみました。P(対象):慢性腎臓病(CKD)患者組み入れ基準診療ガイドライン1)で定義されるCKD患者除外基準  ネフローゼ症候群、透析導入(または腎移植)された患者S(セッティング):単施設外来このように組み入れ基準、除外基準、セッテイングも含めて、Pをより具体的で明確なものにします。そうすることにより、研究結果の解釈が容易となり、またその研究結果を他の状況に適用する際の判断もしやすくなるのです。1)日本腎臓学会編集. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023. 東京医学社;2023.

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若者のうつ病・不安症、未治療での1年後の回復率~メタ解析

 抑うつ症状や不安症状を有する若者に対し、特別なメンタルヘルス介入を行わなかった場合の1年後の回復率は、どの程度か。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAnna Roach氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施し、これを明らかにしようと試みた。その結果、不安や抑うつ症状を有する若者の約54%は、特別なメンタルヘルス介入を行わなくても回復することが示唆された。BMJ Open誌2023年7月21日号の報告。 1980年~2022年8月に公表された論文をMEDLINE、Embase、PsycINFO、Web of Science、Global Healthよりシステマティックに検索した。特別な介入を行わなかった10~24歳の若者を対象に、ベースラインおよびフォローアップ1年後の抑うつ症状および不安症状を評価した査読済みの英語論文を対象とした。3人のレビュアーにより関連データを抽出した。メタ解析を実施し、1年後の回復率を算出した。エビデンスの質は、Newcastle-Ottawa Scaleを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた参考論文1万7,250件のうち5件(1,011例)をメタ解析に含めた。・1年間の回復率は、47~64%の範囲であった。・メタ解析では、全体をプールした若者の回復率は0.54(0.45~0.63)であった。・今後の研究において、回復の予測因子や回復に寄与するリソース、活動を調査する必要がある。

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高血圧への第1選択としての利尿薬vs.他の降圧薬~コクランレビュー

 高血圧患者における死亡率、心血管イベントの発生率、有害事象による中止率などについて、第1選択薬としてのサイアザイド系利尿薬と他のクラスの降圧薬を比較したシステマティックレビューの結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMarcia Reinhart氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年7月13日号に報告した。 2021年3月までのCochrane Hypertension Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、および臨床試験登録が検索された。対象は1年以上の無作為化比較試験で、第1選択薬としての利尿薬と他の降圧薬の比較、および死亡率とその他のアウトカム(重篤な有害事象、総心血管系イベント、脳卒中、冠動脈性心疾患[CHD]、うっ血性心不全、有害作用による中止)が明確に定義されているものとした。 主な結果は以下のとおり。・9万例超が対象の、26の比較群を含む20件の無作為化試験が解析された。・今回の結果は、2型糖尿病を含む複数の合併症を有する50〜75歳の男女高血圧患者における第1選択薬に関するものである。・第1選択薬としてのサイアザイド系およびサイアザイド系類似利尿薬が、β遮断薬(6試験)、Ca拮抗薬(8試験)、ACE阻害薬(5試験)、およびα遮断薬(3試験)と比較された。・他の比較対照には、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、アリスキレン(直接的レニン阻害薬)、およびクロニジン(中枢作用薬)が含まれていたが、データが不十分だった。・重篤な有害事象の総数に関するデータを報告した研究は3件のみで、利尿薬とCa拮抗薬を比較した研究が2件、直接的レニン阻害薬と比較した研究が1件だった。β遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(リスク比[RR]:0.96[95%信頼区間:0.84~1.10]、5試験/1万8,241例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(5.4% vs.4.8%、RR:0.88[0.78~1.00]、絶対リスク減少[ARR]:0.6%、4試験/1万8,135例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:0.85[0.66~1.09]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、CHD(RR:0.91[0.78~1.07]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、心不全(RR:0.69[0.40~1.19]、1試験/6,569 例/確実性:低)。・有害作用による中止(10.1% vs.7.9%、RR:0.78[0.71~0.85]、ARR:2.2%、5試験/1万8,501例/確実性:中程度)。Ca拮抗薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.02[0.96~1.08]、7試験/3万5,417例/確実性:中程度)。・重篤な有害事象(RR:1.09[0.97~1.24]、2試験/7,204例/確実性:低)。・総心血管イベント(14.3% vs.13.3%、RR:0.93[0.89~0.98]、ARR:1.0%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:1.06[0.95~1.18]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.00[0.93~1.08]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、心不全(4.4% vs.3.2%、RR:0.74[0.66~0.82]、ARR:1.2%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(7.6% vs.6.2%、RR:0.81[0.75~0.88]、ARR:1.4%、7試験/3万3,908例/確実性:低)。ACE阻害薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.00[0.95~1.07]、3試験/3万961例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(RR:0.97[0.92~1.02]、3試験/3万900例/確実性:低)。・脳卒中(4.7% vs.4.1%、RR:0.89[0.80~0.99]、ARR:0.6%、3試験/3万900例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.03[0.96~1.12]、3試験/3万900例/確実性:中程度)、心不全(RR:0.94[0.84~1.04]、2試験/3万392例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(3.9% vs.2.9%、RR:0.73[0.64~0.84]、ARR:1.0%、3試験/2万5,254例/確実性:中程度)。α遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:0.98[0.88~1.09]、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(12.1% vs.9.0%、RR:0.74[0.69~0.80]、ARR:3.1%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)。・脳卒中(2.7% vs.2.3%、RR:0.86[0.73~1.01]、ARR:0.4%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)、CHD(RR:0.98[0.86~1.11]、2試験/2万4,396例/確実性:低)、心不全(5.4% vs.2.8%、RR:0.51[0.45~0.58]、ARR:2.6%、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(1.3% vs.0.9%、RR:0.70[0.54~0.89]、ARR:0.4%、3試験/2万4,772例/確実性:低)。 著者らは、本結果を以下のようにまとめている。・利尿薬と他のクラスの降圧薬の間で、おそらく死亡率に差はない。・利尿薬はβ遮断薬と比較して、心血管イベントをおそらく減少させる。・利尿薬はCa拮抗薬と比較して、心血管イベントと心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はACE阻害薬と比較して、脳卒中をおそらくわずかに減少させる。・利尿薬はα遮断薬と比較して、心血管イベント、脳卒中、心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はβ遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬と比較して、有害作用による中止がおそらく少ない。

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悪性リンパ腫のアントラサイクリンによる心機能障害、アトルバスタチンが抑制/JAMA

 アントラサイクリン系薬剤による治療が予定されているリンパ腫患者において、アトルバスタチンの投与はプラセボと比較して、アントラサイクリン系薬剤関連の心機能障害を有意に抑制し、心不全の発生には有意な差がないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のTomas G. Neilan氏らが実施した「STOP-CA試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年8月8日号で報告された。北米9施設の無作為化プラセボ対照臨床試験 STOP-CA試験は、米国とカナダの9つの施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験であり、2017年1月~2021年9月の期間に患者を登録し、2022年10月に追跡調査を終了した(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。 年齢18歳以上の新規に診断されたリンパ腫で、アントラサイクリン系薬剤ベースの化学療法が予定されている患者を、化学療法の施行前にアトルバスタチン(40mg/日)またはプラセボの経口投与を開始し12ヵ月間投与する群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、左室駆出率(LVEF)が化学療法前の値から絶対値で10%以上低下し、12ヵ月後の最終値が55%未満となった患者の割合であった。副次評価項目は、LVEFが5%以上低下し、最終値が55%未満の患者の割合とした。 300例(平均年齢50[SD 17]歳、女性142例[47%])を登録し286例(95%)が試験を完遂した。アトルバスタチン群に150例、プラセボ群にも150例を割り付けた。ベースラインの全体の平均LVEFは63(SD 4.6)%で、追跡期間中の平均LVEFは58(SD 5.7)%であり、12ヵ月で5%低下した。また、試験薬のアドヒアランスは91%だった。重篤な有害事象の発生率は低い 12ヵ月時に、LVEFが化学療法前の値から10%以上低下し、最終値が55%未満となった患者は、全体で46例(15%)であった。主要評価項目の発生率は、プラセボ群が22%(33/150例)であったのに対し、アトルバスタチン群は9%(13/150例)と有意に低かった(p=0.002)。主要評価項目発生のオッズ(OR)はプラセボ群で約3倍高かった(OR:2.9、95%信頼区間[CI]:1.4~6.4)。 また、副次評価項目の発生率も、アトルバスタチン群で有意に低かった(13% vs.29%、p=0.001)。 24ヵ月の追跡期間中に13例(4%)で心不全イベントが発生した(主要評価項目を満たしたのは11例)。このうちアトルバスタチン群は4例(3%)、プラセボ群は9例(6%)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.26)。 12ヵ月の時点で8例(各群4例ずつ)が死亡した。筋肉痛は49例(アトルバスタチン群28例[19%]、プラセボ群21例[14%]、p=0.35)で報告されたが、筋炎(クレアチンキナーゼ値上昇)は認めなかった。ASTおよびALT値上昇が51例(17%)でみられ、このうち2例(各群1例ずつ)がGrade4だった。腎不全が6例(2%、2例 vs.4例)で発現した。重篤な有害事象の発生率は低く、両群で同程度だった。 著者は、「全コホートの比較では、12ヵ月時のLVEFの群間差は1.3%とわずかであったことから、アントラサイクリン系薬剤の投与を受けた患者の中にはアトルバスタチンの有益性がほとんどない患者が含まれると示唆された。一方、アトルバスタチンは、アントラサイクリン系薬剤による心収縮機能障害のリスクが高度な患者で高い有益性を持つと考えられる」とし、「本試験の知見は、アントラサイクリン系薬剤による心機能障害のリスクが高いリンパ腫患者におけるアトルバスタチンの使用を支持する可能性がある」としている。

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英語で「再確認しましょう」は?【1分★医療英語】第94回

第94回 英語で「再確認しましょう」は?Is this dose correct?(この用量で大丈夫でしたか?)Let’s double-check.(再確認してみましょう)《例文1》医師Have you sent this medication to their pharmacy?(この薬を患者さんの薬局に処方してありますか?)看護師Yes, but let me double-check.(はい、でも再確認しますね)《解説》“double-check(double check)”の表現を学びましょう。これは医学以外でも幅広く使われる英語表現なので、すでに知っている方も多いと思います。日本語でも「ダブルチェック」という言葉はそのまま使われますよね。ただ、日本の医療現場で「ダブルチェック」と言ったとき、「2人が同時にチェックする」という意味で使われることが多いかと思います。英語の場合はちょっとニュアンスが異なります。ケンブリッジ辞典では、“To make certain that something is correct or safe, usually by examining it again.”(もう一度調べることによって、何かが正しいのか問題がないのかを確認すること)と記載がありますが、「正しいかどうかを、チェックすることで確かめる」といったような意味になります。“double-check”を聞かない日はないくらい、医療現場で頻用されている表現です。意味としてはほぼ同じなのですが、さらに“extra”な表現として“double-check”の上の“triple-check”なんて言うこともあります。講師紹介

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第177回 血小板因子が脳を若返らせる

血小板因子が脳を若返らせる3チーム3様の視点で取り組んだ脳の若返り因子探索がどれも1つの成分に行き着き、それらの成果が3チームの示し合わせのうえで先週16日にNature誌とその姉妹誌2つに同時に報告されました1)。若い動物と老いた動物の血液循環をつなぐと老いた動物が若返ることが知られています。2014年に発表された実験では、血液から細胞を省いた部分である血漿にその効果があることが示されました。その実験では若いマウスの血漿が老いたマウスに注射されました。すると老化に伴う認知機能障害が改善し、学習や記憶が向上しました2)。その報告の筆頭著者だった米国・カリフォルニア大学のSaul Villeda氏が指揮役になってからのさらなる研究で血小板から放たれる血小板第4因子(PF4)が老化マウスの認知機能を改善することが突き止められ、Nature誌にその成果が発表されました3)。まずVilleda氏らは若いマウスの血漿の血小板分画を老化マウスに投与すると脳の老化の特徴である神経炎症指標が落ち着くことを見出しました。続いて血小板分画のどの成分がそれらの有益効果を担うかという検討に移り、若いマウスの血漿にはPF4が豊富なことを発見します。ヒトでも同様で、老人より若い人の血漿検体にはPF4がより豊富でした。運動は老化に伴う認知機能低下を食い止める働きがあり、脳の海馬(の歯状回)の神経新生が運動で増えることへのPF4の寄与が先立つ研究で示唆されています。また、ヒトやサルのPF4が老化に応じて減ることが確認されています。ということはPF4に若返りの作用があるのかもしれません。どうやらその予想は正しく、Villeda氏らのチームが老いたマウスにPF4を注射したところ若い血漿を投与したときと同様の効果が認められました。PF4が投与された老化マウスでは海馬の神経炎症が和らぎ、シナプス可塑性に携わる指標の発現が高まり、記憶や学習の検査成績が良くなりました。神経新生が運動で増えることにどうやらPF4が寄与することを示した上述の成果を2019年に報告したTara Walker氏らの新たな研究でもPF4の抗老化作用がマウス実験で示され、Villeda氏らのNature誌報告と同時にNature Communications誌にその成果が発表されました4)。Walker氏らの新たな研究の結果、運動で血小板が活性化することで老化マウスの海馬の細胞増殖が向上し、血小板由来の成分であるPF4の全身循環の増加が海馬の神経新生促進を介して認知機能を若返らせることが示されています。同時に発表されたもう1つの報告では、寿命を延ばすことが知られるホルモンの働きに必要な因子の探索でPF4が発掘されました。クロトー(klotho)と呼ばれるそのホルモンは長寿をもたらすことに加えて脳機能も改善します。しかし末梢に投与したクロトーは血液脳関門(BBB)を通過できず、脳に到達しません。そこで、クロトーと脳機能改善の関係を仲立ちする成分が探索され、意外にもPF4がその作用を担うことが突き止められました。Nature Aging誌に掲載されたその研究の結果、クロトーはPF4を含む血小板因子を増やし、末梢に投与したPF4は脳に到達可能であり、マウスの老いも若きもPF4投与で認知機能が上向きました5)。ところで、PF4を欠くマウスでもクロトーは認知機能向上効果を有しました。ということはクロトーと認知機能向上の関連を橋渡しするPF4以外の未知の因子がどうやら存在するようです。血小板因子の手入れで老化による脳の衰えを回復できるかもしれないとVilleda氏らの報告には記されています3)。また、アルツハイマー病などの高齢者の認知症の治療にも血小板因子が役立ちそうです。参考1)Blood factor can turn back time in the aging brain / Eurekalert2)Villeda SA, et al. Nat Med. 2014;20:659-663.3)Schroer AB, et al. Nature. 2023 Aug 16. [Epub ahead of print]4)Leiter O, et al. Nat Commun. 2023;14:4375.5)Park C, et al. Nat Aging. 2023 Aug 16. [Epub ahead of print]

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医療者のメンタルヘルス、1日20分の在宅運動で改善

 COVID-19のパンデミック中、医療従事者のメンタルヘルスは著しく低下したことが報告されている。医療従事者を対象に、アプリを使った在宅運動プログラムの介入を行い、メンタルヘルスが改善するかどうかを見た試験の結果が、JAMA Psychiatry誌オンライン版2023年8月9日号に掲載された。 ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)のVincent Gosselin Boucher氏らの研究チームは2022年4月6日~7月4日に同エリアの医療機関において参加者を募集した。参加者は指定のアプリを使い、自重インターバルトレーニング、ヨガ、バー運動など、在宅で行う20分/日、週4回の運動を、12週間継続するように求められた。運動に対するアドヒアランスはアプリ利用時間から測定した。 主要アウトカムは、抑うつ症状の群間差であり、10項目のCenter for Epidemiological Studies Depression Scale(CESD)を用いて測定された。副次的アウトカムは、燃え尽き症候群(シニシズム、疲労感、職業的効力のサブセットで測定)、欠勤率であった。2週間ごとにFeingold効果量(ES)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・登録された288例は平均年齢41.0(SD:10.8)歳、246例(85.4%)が女性で、運動群(n=142)と運動を行わない対照群(n=146)に割り付けられた。・抑うつ症状に対する運動効果は、4週目までは有意ではあったが非常に小さかった(ES:-0.19、95%信頼区間[CI]:-0.37~0.00)が、試験終了時の12週目には有意な小~中程度の治療効果(-0.41、95%CI:-0.69~-0.13)が示された。・燃え尽き症候群の2つのサブセットであるシニシズム(12週目ES:-0.33、95%CI:-0.53~-0.13)と疲労感(-0.39、95%CI:-0.64~-0.14)、欠勤率(r=0.15、95%CI:0.03~0.26)については、有意かつ一貫した効果が示された。・週80分の運動のアドヒアランスは、2週目の78例(54.9%)から12週目には33例(23.2%)まで減少した。 研究者らは「運動は医療従事者の抑うつ症状を軽減したが、試験終了まで継続できた人は少なかった。医療従事者のメンタルヘルス改善を維持するために、運動プログラム継続を最適化することは重要な課題である」としている。

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HER2+転移乳がん1次治療、抗HER2療法に抗がん剤は必要か(PERNETTA試験)

 HER2陽性の転移を有する乳がん(MBC)に対する1次治療は、ペルツズマブ+トラスツズマブ+タキサン系抗がん剤の併用療法が推奨されているが、即時に化学療法を行わないペルツズマブ+トラスツズマブのみであっても有効性が示されている。そこで、スイス・Cantonal Hospital St GallenのJens Huober氏らが化学療法を併用した場合としなかった場合の全生存(OS)率や安全性などの検討を行った結果、化学療法併用群のほうが無増悪生存期間(PFS)は長いものの、2年OS率は同等であったことを明らかにした。JAMA Oncology誌2023年8月10日号掲載の報告。 本試験は、フランス27施設、スイス20施設、オランダ9施設、ドイツ1施設で実施された多施設共同無作為化オープンラベル第II相試験の2次解析。HER2陽性のMBC患者210例を、ペルツズマブ+トラスツズマブ投与群(PT群)とペルツズマブ+トラスツズマブ+パクリタキセルまたはビノレルビン投与群(化学療法併用群)に無作為に割り付けた。両群ともに病勢進行時は2次治療としてトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)による治療を実施した。評価項目は、2年OS率、1次治療のPFS、2次治療のPFS、QOLであった。 募集は2013年5月3日~2016年1月4日に行われ、2020年5月26日に試験が終了した。データは2020年12月18日~2022年5月10日に解析された。 主な結果は以下のとおり。・解析対象210例の年齢中央値は58歳(範囲:26~85)であった。・2年OS率は、PT群79.0%(90%信頼区間[CI]:71.4~85.4)、化学療法併用群78.1%(90%CI:70.4~84.5)であった。・1次治療のPFS中央値は、PT群8.4ヵ月(95%CI:7.9~12.0)、化学療法併用群23.3ヵ月(95%CI:18.9~33.1)であった。・HER2高発現集団とHER2低発現集団でOSおよびPFSに顕著な差はみられなかった。・有害事象はPT群のほうが少なかった。・ベースラインからのQOLの改善はPT群でわずかに認められ、化学療法併用群では変化はなかった。 これらの結果より、研究グループは「化学療法を併用しない抗HER2療法は、一部のHER2陽性MBC患者の1次治療のオプションとなる可能性がある」とまとめた。

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2cm未満の前庭神経鞘腫、放射線治療が有効/JAMA

 小~中型の片側性前庭神経鞘腫の治療において、早期の放射線治療(upfront radiosurgery)は経過観察(wait and scan)と比較して、4年後の腫瘍体積が有意に減少し、聴力や単語認知の変化には差がなかったことが、ノルウェー・Haukeland大学病院のDhanushan Dhayalan氏らが実施した「V-REX試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年8月1日号に掲載された。ノルウェーの医師主導無作為化臨床試験 V-REXは、ノルウェーの単一施設(Haukeland大学病院)で実施された優越性を検証する医師主導の無作為化臨床試験であり、2014年10月~2017年10月の期間に患者を登録し、2021年10月に4年間の追跡調査を終了した(同病院神経外科などによる研究支援を受けた)。 対象は、年齢18~70歳、新規に診断(6ヵ月以内)された片側性の前庭神経鞘腫で、MRIで測定した小脳橋角部の腫瘍径が2cm未満の患者であった。被験者を、早期に放射線治療(ガンマナイフを用いた定位手術的照射)を受ける群、または経過観察(画像上で腫瘍の増殖が認められた場合にのみ治療を行う)を受ける群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、4年後の試験終了時とベースライン時の腫瘍体積の比(V4:V0)であった。副次評価項目は、患者報告による症状や臨床検査、聴力検査、生活の質(QOL)を含む26の項目だった。副次評価項目は、1つを除き差がない 98例を登録し、放射線治療群に48例(平均年齢54[SD 12]歳、女性46%)、経過観察群に50例(54[SD 10]歳、38%)を割り付けた。放射線治療群の3例(6%)が、介入から3年後に持続性の腫瘍増殖により追加治療を要した(再放射線治療1例、サルベージ・マイクロサージャリー2例)。経過観察群では、21例(42%)が腫瘍増殖時に放射線治療を、1例(2%)がサルベージ・マイクロサージャリーを受け、28例(56%)は無治療だった。 4年後の幾何平均V4:V0は、経過観察群が1.51(95%信頼区間[CI]:1.23~1.84)であったのに対し、放射線治療群は0.87(0.66~1.15)と、腫瘍体積が有意に減少した(両群の比:1.73、95%CI:1.23~2.44、p=0.002)。 一方、26の副次評価項目のうち、非対称性の顔面の感覚異常(6件[12%]vs.0件[0%])の発現が放射線治療群で多かったが、残りの25項目は有意差を認めなかった。 たとえば、純音聴力検査による聴力は試験期間中に両群とも低下し、4年後の平均値は放射線治療群が60dB、経過観察群が61dBであり、ベースラインからの悪化の程度はそれぞれ18dBおよび20dBであった(平均群間差:-2dB、95%CI:-8~5)。また、4年後の単語認知スコアの平均値は、放射線治療群が42%、経過観察群が47%であり、ベースラインからの低下はそれぞれ35%および29%だった(-6%、-19~7)。 死亡および放射線関連の合併症(水頭症、脳幹壊死、放射線誘発腫瘍、悪性形質転換など)は発現しなかった。 著者は、「これらの知見は、前庭神経鞘腫患者の治療方針の決定に有益な情報をもたらす可能性があり、今後、長期的な臨床アウトカムの調査が求められる」としている。

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アミリンアナログとGLP-1受容体作動薬の配合剤は肥満を伴う2型糖尿病に有効である(解説:小川大輔氏)

 肥満を伴う2型糖尿病の治療として、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドが有効であることは周知のとおりである。一方、新規のアミリンアナログであるcagrilintideは肥満症の治療薬として期待が高まっている。今回、BMI 27以上の2型糖尿病患者を対象に、週1回投与のセマグルチド2.4mgとcagrilintide 2.4mgの配合剤(CagriSema)の第II相臨床試験の結果がLancet誌に発表された1)。 アミリンは高血糖時にインスリンと共に膵β細胞から分泌されるホルモンであり、視床下部の食欲中枢に作用して胃の内容物排出速度を低下させ、満腹感を促進する。アミリンアナログであるpramlintideは1型および2型糖尿病の治療薬として2005年にFDAによって承認された。しかし作用時間が短く、1日2~3回注射しなければいけないため実際にはほとんど使用されていない。その後、長時間作用型のアミリンアナログであるcagrilintideが開発され、GLP-1受容体作動薬と共に肥満症の治療薬として期待されている2)。 この試験は米国の17施設において、BMI値27以上でメトホルミン治療中の2型糖尿病成人患者92例を無作為に1対1対1の3群に割り付け、CagriSema、セマグルチド、cagrilintide(いずれも2.4mgまで漸増)をそれぞれ週1回皮下投与した。主要エンドポイントはHbA1cのベースラインから32週目までの変化量で、副次エンドポイントは体重、空腹時血糖値、CGMパラメータ、安全性であった。 ベースラインから32週までのHbA1c値と空腹時血糖値の平均変化は、CagriSema群は、cagrilintide群よりも有意に変化幅が大きかったが、セマグルチド群とは有意差は認められなかった。また体重の平均変化は、CagriSema群-15.6%、セマグルチド群-5.1%、cagrilintide群-8.1%と、CagriSema群はセマグルチド群、cagrilintide群のいずれよりも減少幅が有意に大きかった。これらの結果より、セマグルチドとcagrilintideの併用は、セマグルチド単独に比べてHbA1c値と空腹時血糖値の有意な改善は認めないが、体重に関してはセマグルチド単独よりさらに減少することが示された。 有害事象については、CagriSema群、セマグルチド群、cagrilintide群のいずれの群も同程度であり、消化器系有害事象の頻度が高かった。レベル2およびレベル3の低血糖の発現はいずれの群にも認めなかった。またDexcom G6を用いたCGMのデータにおいても低血糖を伴わず良好な血糖プロファイルが確認された。 今回発表されたCagriSemaの第II相試験で、週1回投与のセマグルチド2.4mgとcagrilintide 2.4mgの配合剤は、過体重の2型糖尿病患者の減量に有効である可能性が示された。第III相試験では症例数を1,200例に増やして現在検討が行われているので、その結果を待ちたい。残念ながら、日本ではセマグルチドはまだ1mgまでしか使えず、アミリンアナログは承認されていない。肥満を伴う2型糖尿病の治療の格差はますます広がるばかりである。

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産後受診時の心血管健康カウンセリング、減少傾向に/JAMA

 出産をした成人女性において、妊娠前の心血管健康(cardiovascular health、CVH)の不良と有害な妊娠アウトカム(APO)は、その後の心血管疾患(CVD)の重大なリスク因子となる。産後受診は、リスクを有する人のCVHに関する診療の機会となるが、CVHカウンセリングを受けていたのは約60%であったことが、米国・ノースウェスタン大学のNatalie A. Cameron氏らによる調査で明らかにされた。また、5年の調査対象期間(2016~20年)に、わずかだが減少していたという。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。2016~20年にカウンセリングを受けた割合と予測因子、傾向を調査 研究グループは、米国疾病予防管理センター(CDC)が行う住民ベースのサーベイ(全国から代表者を抽出して実施)のPregnancy Risk Assessment Monitoring System(PRAMS)から、2016~20年のデータを連続断面解析し、自己申告による産後受診時のCVHカウンセリングを受けた割合と予測因子および傾向を調べた。 主要解析には、出産後4~6週に受診し、CVHカウンセリングを受けた、自己申告による妊娠前のCVDリスク因子(肥満症、糖尿病、高血圧)およびAPO(妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、早産)に関するデータが入手できた16万7,705人(重み付け調整計871万4,459人)を包含した。 自己申告による産後CVHカウンセリング(健康的な食事、運動、妊娠中に増加した体重を減らすためのカウンセリングと定義)を受けた割合(/100人、年間年齢補正後)を全体およびCVDリスク因子数別(妊娠前リスク因子またはAPOが0、1、2以上で定義)で算出。2016~20年のCVHカウンセリングの傾向を、年平均変化率(APC)で評価した。 データをプールし、年齢、教育、加入保険(産後)、出産年で補正後、CVDリスク因子の有無で比較するため、カウンセリングの率比(RR)を算出して評価した。リスクなし群とあり群との差はわずかで、いずれも年々減少 2016~20年に自己申告に基づく産後CVHカウンセリングを受けた割合は、CVDリスク因子なし群で56.2/100人から52.8/100人に減少していた(APC:-1.4%[95%信頼区間[CI]:-1.8~-1.0/年])。リスク因子が1つあり群では58.5/100人から57.3/100人に減少(-0.7%[-1.3~-0.1/年])、リスク因子が2つ以上群では61.9/100人から59.8/100人に減少していた(-0.8%[-1.3~-0.3/年])。 カウンセリングを受けたとの報告はリスク因子なし群と比べて、リスク因子1つの群(RR:1.05[95%CI:1.04~1.07])、リスク因子2つ以上の群(1.11[1.09~1.13])いずれもわずかな増大にとどまった。

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飲酒時のウコンの効果は?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第240回

飲酒時のウコンの効果は? Unsplashより使用コロナ禍も落ち着き、飲み会が増えてきたかもしれません。学会でも懇親会が催されることが増えました。さて、久しぶりにアルコールを飲むと「大丈夫だろうか」と健康が気になるところです。医学的にエビデンスがあるのかないのかよくわからないけど、ウコンを飲んでいるという人もいるかもしれません。Zhao HL, et al.Negative effects of curcumin on liver injury induced by alcohol.Phytother Res. 2012 Dec;26(12):1857-1863.この研究は、クルクミンがアルコールを摂取したマウスの肝臓にどのような影響を与えるか調べたものです。クルクミンは、ウコンに含まれるポリフェノールの一種で、これが肝臓によいとされています。マウスに対してクルクミンとエタノール(アルコール)を注射し、肝臓の組織を顕微鏡で観察したところ、クルクミンがエタノールによる肝障害を保護するどころか、むしろ悪化させている可能性が指摘されました。あれ? 真逆の結果です。ウコンはCMで放送されるくらいですから、その効果を支持する報告はもちろんたくさんあります。飲酒前のウコンの有効性を検証した研究では、クルクミンを摂取した場合にアセトアルデヒド濃度の上昇が抑制され、もともとγ-GTPが高い人に対しても肝臓の逸脱酵素の数値を改善させる効果があると報告されています1)。相反する結果もありますから、もしかすると、ヒトを1,000人ずつくらい集めてウコンの効果を比較しても、統計学的な差を生むほどの効果はないのかもしれません。何かしらのサプリメントでアルコール性肝障害を予防するくらいなら、飲み会の席で、目の前にある1杯のアルコールを減らしたほうが効果的かもしれません。まあ、それを言ってしまうとこの話はおしまいなのですが。世の中に「効果がある」と謳われている健康食品の多くは、大規模な臨床試験を行われていないことが問題で、日常的に密接に関わるものなので、もう少し検討してほしいなあと思っています。マウスに対する10の効果がヒトに対しても10であると捉えられていて、1つ1つの事象が飛躍の積み重ねになっている健康食品もあります。1)Shimatsu A, et al. Clinical application of “Curcumin”, a multi-functional substance. Anti-Aging Med. 2012;9:75-83.

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2型糖尿病の肝硬変、GLP-1受容体作動薬により死亡リスク減

 肝硬変は2型糖尿病と関連していることが多いものの、肝硬変患者を対象とした2型糖尿病治療に関する研究はほとんどない。今回、台湾・Dr. Yen's ClinicのFu-Shun Yen氏らは2型糖尿病の肝硬変患者を対象にGLP-1受容体作動薬による治療の長期アウトカムを調査した。その結果、2型糖尿病の肝硬変(代償性)患者がGLP-1受容体作動薬を使用した場合、死亡、心血管イベント、非代償性肝硬変、肝性脳症、肝不全のリスクが有意に低くなることが示された。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2023年6月16日号掲載の報告。2型糖尿病の肝硬変患者はGLP-1受容体作動薬による治療で死亡リスク減 研究者らは台湾の国民健康保険研究データベースを用い、傾向スコアマッチング法により2008年1月1日~2019年12月31日のGLP-1受容体作動薬の使用者と未使用者467組を選定した。 2型糖尿病の肝硬変患者を対象にGLP-1受容体作動薬による治療の長期アウトカムを調査した主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間は、GLP-1受容体作動薬の使用者で3.28年、未使用者で3.06年だった。・それぞれの死亡率は、1,000人年当たり27.46例と55.90例だった。・多変量解析の結果、GLP-1受容体作動薬の使用者は未使用者に比べ、死亡(調整ハザード比[aHR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.32~0.69)、心血管イベント(aHR:0.6、95%CI:0.41~0.87)、非代償性肝硬変(aHR:0.7、95%CI:0.49~0.99)、肝性脳症(aHR:0.59、95%CI:0.36~0.97)、肝不全(aHR:0.54、95%CI:0.34~0.85)のリスクが低いことが示された。・GLP-1受容体作動薬の累積使用期間が長いほど、GLP-1受容体作動薬を使用しなかった場合よりもこれらのリスクが低くなった。

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NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。 DPCデータを用いて、2010年7月~2021年3月にプラチナ製剤を含む化学療法を開始した進行NSCLC患者7万5,807例を抽出した。対象患者をICI使用の有無で2群に分類し(ICI併用群7,177例、単独療法群6万8,630例)、プラチナ製剤を含む化学療法開始後6ヵ月以内のVTE、ATE、院内死亡の発生率を検討した。背景因子を調整するため、生存時間分析には傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・VTEの発生率はICI併用群1.3%(96例)、単独療法群0.97%(665例)であった。ATEの発生率はそれぞれ0.52%(38例)、0.51%(351例)であった。院内死亡率はそれぞれ8.7%(626例)、12%(8,211例)であった。・傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析の結果、ICI併用群は単独療法群と比較してVTEリスクが有意に高かったが(部分分布ハザード比[SHR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.01~1.60)、ATEリスクに有意差はみられなかった(同:0.96、0.67~1.36)。・使用したICI別に同様の解析を行った結果、ペムブロリズマブを使用した場合にVTEリスクが有意に高かったが(SHR:1.29、95%CI:1.01~1.64)、アテゾリズマブを使用した場合にはVTEリスクに有意差はみられなかった(同:0.91、0.49~1.66)。・院内死亡リスクはICI併用群が有意に低かった(ハザード比:0.67、95%CI:0.62~0.74)。

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2型DM患者は超加工食品摂取で食事の質と無関係に死亡リスク増

 2型糖尿病患者では、食事の質とは無関係に、カップ麺やスナック菓子、加工肉などの超加工食品の摂取量の増加は全死因死亡率と心血管疾患(CVD)死亡率の上昇と関連していることが、イタリア・IRCCS NEUROMEDのMarialaura Bonaccio氏らの前向き観察コホート研究の結果、明らかになった。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2023年7月26日号掲載の報告。 研究グループは、ベースライン時に2型糖尿病を発症している1,065例を対象として、11.6年間(中央値)を前向きに追跡した。食物摂取量は、188項目の食事アンケートによって評価された。超加工食品はNova分類に従って定義され、超加工食品と総摂取食物の重量比として計算された。食事の質は、地中海食スコアによって評価された。Cox比例ハザードモデルを用いて、死亡率の多変量調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・超加工食品の摂取量は平均7.4%(±5.0%)であった。・超加工食品摂取量が最も多かった群(女性10.5%以上、男性9%以上)では、摂取量が最も少なかった群(女性4.7%未満、男性3.7%未満)よりも、全死因死亡(aHR:1.70、95%CI:1.25)およびCVD死亡(aHR:2.64、95%CI:1.59)のリスクが高かった。・地中海食スコアによる食事の質を加味しても、これらの関連性は変化しなかった。・超加工食品摂取量と全死因死亡およびCVD死亡リスクの間には線形の用量反応関係が観察された。 これらの結果より、研究グループは「ベースライン時に2型糖尿病を発症していた参加者では、食事の質とは無関係に、超加工食品摂取量の増加は生存率の低下とCVD死亡率の上昇と関連していた。2型糖尿病管理の食事ガイドラインでは、必要栄養量に基づいた食事の導入に加えて、超加工食品を制限することも推奨する必要がある」とまとめた。

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英語で「難しい天秤です」は?【1分★医療英語】第93回

第93回 英語で「難しい天秤です」は?I wonder if we should stop anticoagulation given recent GI bleeding.(最近あった消化管出血を考えると、抗凝固薬をやめるべきなのか悩んでいます) It is a difficult balancing act between risks and benefits.(それはリスクとベネフィットの難しい天秤ですよね)《例文1》The decision to proceed with the surgery requires a careful balancing act.(手術に進むかの決断には注意深いバランスが必要です)《例文2》We need to think about a delicate balancing act between pain control and sedation.(疼痛コントロールと鎮静の間で繊細な天秤を考える必要があります)《解説》医療現場では、相反する2つの事実を天秤に掛け、バランスを取らなければならないことはしばしばです。治療の益と害、手術をすべきかどうか。そんなときに、「対立する2つの間でバランスを取らなければならない=難しい天秤に掛けなければならない」という状況に置かれます。そういった際、患者さんへの説明、あるいは医療者同士の議論の場で有用な表現が、この“balancing act”です。“balancing act”は、本来は「曲芸における綱渡り」を意味する言葉だそうです。綱渡りは、絶妙なバランスを取りながら綱の上を渡る曲芸。医療者にも医療上の絶妙なバランスを求められることがありますが、そのようなバランスを取って決断していくことを“balancing act”という言葉で表現し、「両立させること」「バランスを取ること」という意味を持ちます。たとえば、冒頭の会話のシチュエーションはこのような感じです。心房細動の既往があり、血栓症のリスクが高い患者に消化管出血が起こった。血栓のリスクも、出血のリスクも高く、今後の抗凝固薬をどうすべきか…。この血栓リスク、出血リスクの両者は難しい天秤だと思いますが、それらを慎重に測りながら、どこかに線引きをして決断をしなければなりません。そんなシチュエーションを表現するのに、この“It is a balancing act”は最適な表現です。一般英会話の教科書で見ることは少ないかもしれませんが、医療現場ではよく登場する表現ですので、そのまま覚えてしまうとよいでしょう。講師紹介

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第176回 バラなどの芳香と共に眠ることと記憶の改善が関連

バラなどの芳香と共に眠ることと記憶の改善が関連香りで嗅覚を刺激することで頭の働きがよくなることが先立つ試験で示されています。パーキンソン病患者70例が参加した試験では数種の香りを毎日しばし嗅ぐことで言語の流暢さが改善しました1)。50~84歳の成人91例の試験ではエッセンシャルオイル4種を毎日2回嗅ぐことで言語機能が改善し、うつ症状も緩和しました2)。認知機能低下の恐れがある高齢成人68例を募った試験では9つの香りを嗅ぐことと認知症症状の抑制の関連が示されています3)。認知症をすでに発症した患者の香りを豊かにすることも認知機能に有益なようです。認知症成人65例が参加した試験の結果、40種類の香りに毎日2回接することで記憶、うつ症状、注意、言語機能などが改善しました4)。早速実践に移せればよいですが、認知症の患者が平素に40種類の香りを毎日2回嗅ぐのはおそらく容易ではありません。認知症患者が40種類のボトルを毎日2回、すなわち80回も手にとって開け閉めして嗅ぐことはおよそ非現実的ですし、認知症でなくとも手に負えるものではなさそうです。そのような込み入った手段だと長続きしません。普段の生活の中で続けてもらうにはできるだけ容易な手段にする必要があります。そこで考え出されたのがよい香りと共に眠るというおよそ苦もなく実践できそうな手段です。香りの種類もせいぜい数種類に限定しました。それらの香りを1つずつ順繰りに毎晩寝るときに部屋に漂わせる効果を少人数の試験で検討したところ願ったりかなったりの結果が得られました。試験には記憶が損なわれていない60~85歳の男女43例が参加し、よい香りと共に眠る群とそうでない対照群に無作為に振り分けられました。よい香りと共に眠る群の20例は芳香油を2時間拡散させて眠ることを毎晩繰り返しました。同様の日課を対照群の23例は実質的に香りがしない蒸留水を使って繰り返しました。芳香は7種類で、バラ、オレンジ、ユーカリ、レモン、ペパーミント、ローズマリー、ラベンダーの芳香油が1つずつ毎晩順繰りに使われました。半年をそうして過ごしたところ、よい香りと共に眠る群では言語の学習や記憶の検査であるRey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)成績が向上しました5)。対照群のRAVLT成績は逆に悪化しました。また、老化やアルツハイマー病で支障を来す脳領域である鉤状束の機能の改善が画像検査で示されました。香りを豊かにすることは脳の調子を改善する効果的で手軽な方法となりうるようであり、より大人数の試験でその効果の検討が進むことを著者は望んでいます。どうやら香りの効果は多岐にわたり、高齢者や認知機能に限ったものではなさそうです。最近発表された試験結果ではペパーミント油の香りが心臓手術後の患者の痛みを和らげ、睡眠の質を改善したことが示されています6)。ペパーミント油の主成分であるカルボン、リモネン、メンソールが痛み緩和効果の多くを担うようであり、ペパーミントの香りを漂わせるアロマセラピーを手術後に施すことを著者は勧めています。さかのぼること20年ほど前に発表された試験結果では早産児の無呼吸を減らすバニラの香り(バニリン)の効果が認められています7)。参考1)Haehner A, et al. PLoS One. 2013;8:e61680.2)Birte-Antina W, et al. J Geriatr Psychiatry Neurol. 2017;33:212-220.3)Oleszkiewicz A, et al. Behav Neurosci. 2021;135:732-740.4)Cha H, et al. Geriatr Gerontol Int. 2022;22:5-11.5)Woo CC, et al. Front Neurosci. 2023;17:1200448.6)Maghami M, et al. BMJ Support Palliat Care. 2023 Aug 3. [Epub ahead of print] 7)Marlier L, et al. Pediatrics. 2005;115:83-88.

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C型肝炎にDAA治療成功も死亡率高い、その理由は/BMJ

 インターフェロンを使用せず直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療に成功したC型肝炎患者では、一般集団と比較して死亡率が高く、この過剰な死亡の主な要因は薬物や肝臓関連死であることが、英国・グラスゴー・カレドニアン大学のVictoria Hamill氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年8月2日号に掲載された。カナダと英国の3地域のコホート研究 本研究は、ブリティッシュコロンビア州(カナダ)、スコットランド(英国)、イングランド(英国)の3つの地域のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(研究資金は主に、責任著者のHamish Innes氏[グラスゴー・カレドニアン大学]が英国のMedical Research Foundationから受けたウイルス性肝炎フェローシップの報奨金が充てられた)。 対象は、インターフェロンフリーの抗ウイルス薬治療の時期(2014~19年)に、C型肝炎の治療に成功(ウイルス学的著効[SVR]を達成)した2万1,790例であった。 これらの参加者を肝疾患の重症度で、肝硬変なし(肝硬変前)、代償性肝硬変、末期肝疾患(ESLD)の3つの群に分けた(イングランドは肝硬変とESLDのみ)。追跡調査は、抗ウイルス薬治療の終了後12週の時点から開始し、死亡日または2019年12月31日に終了した。 主要アウトカムは、粗死亡率と年齢・性別標準化死亡率、および標準化死亡率比であり、年齢、性別、年度で調整した一般集団と比較した。ポアソン回帰分析で、全死因死亡率と関連する因子を同定した。3地域とも、肝疾患の重症度の上昇と共に死亡率増加 追跡期間中に1,572例(7%)が死亡した。主な死因は、薬物関連死(383例、24%)、肝不全(286例、18%)、肝がん(250例、16%)だった。 粗全死因死亡率(1,000人年当たりの死亡数)は、ブリティッシュコロンビア州が31.4(95%信頼区間[CI]:29.3~33.7)、スコットランドが22.7(20.7~25.0)、イングランドが39.6(35.4~44.3)であった。また、標準化死亡率はそれぞれ31.4(95%CI:29.3~33.7)、28.6(24.7~32.5)、38.5(34.1~42.9)だった。 全死因死亡率は、各コホートおよびすべての重症度の群において、一般集団に比べC型肝炎治療成功者でかなり高かった。たとえば、ブリティッシュコロンビア州の全死因死亡率は、肝硬変のない集団では一般集団の約3倍(標準化死亡率比:2.96、95%CI:2.71~3.23、p<0.001)、肝硬変の集団では約4倍(3.96、3.26~4.82、p<0.001)、ESLDの集団では10倍以上(13.61、11.94~15.49、p<0.001)であった。 また、スコットランドとイングランドでも同様に、疾患の重症度が上がるに従って全死因死亡率の標準化死亡率比が高くなり、いずれも有意な差が認められた(すべてのp<0.001)。 回帰分析では、高齢、最近の薬物乱用による入院、アルコール乱用による入院、併存疾患が死亡率の上昇と関連していた。 著者は、「これらの知見は、直接作用型抗ウイルス薬の効果を最大限に発揮させるためには、C型肝炎の治療が成功した後も、継続的な支援と追跡調査が必要であることを強調するものである」としている。

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