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市中誤嚥性肺炎、嫌気性菌カバーは必要?

 誤嚥性肺炎の治療において、本邦では嫌気性菌カバーのためスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)などが用いられることがある。しかし、海外では誤嚥性肺炎の0.5%にしか嫌気性菌が認められなかったという報告もあり1)、米国胸部学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)の市中肺炎ガイドライン2019では、嫌気性菌カバーは必須ではないことが記載された2)。また、2023年に実施されたシステマティックレビューにおいて、嫌気性菌カバーの有無により、誤嚥性肺炎患者に転帰の差はみられなかったことも報告されている3)。しかし、本レビューに含まれた論文は3本のみであり、サンプルサイズも小さく、結論を導くためには大規模研究が必要である。そこで、カナダ・クイーンズ大学のAnthony D. Bai氏らは、約4千例の市中誤嚥性肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、嫌気性菌カバーは院内死亡リスクを低下させず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させた。本研究結果は、Chest誌オンライン版2月20日号で報告された。 研究グループは、カナダの18施設において市中誤嚥性肺炎で入院した患者のうち、入院から48時間以内に抗菌薬が投与された3,999例を対象とした後ろ向き研究を実施した。セフトリアキソン、セフォタキシム、レボフロキサシンが投与された患者を非カバー群(2,683例)とした。アモキシシリン・クラブラン酸※、モキシフロキサシンが投与された患者、非カバー群の薬剤とクリンダマイシンまたはメトロニダゾールが併用された患者を嫌気性菌カバー群(1,316例)とした。主要評価項目は院内死亡、副次評価項目はC. difficile大腸炎の発現、治療開始後のICU入室であった。なお、両群間の背景因子を調整するため、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いて解析した。※:本研究が実施されたカナダではSBT/ABPCが使用できないため、SBT/ABPCに相当するものとした。 主な結果は以下のとおり。・入院期間中央値は非カバー群6.7日、嫌気性菌カバー群7.6日であった。・院内死亡率は非カバー群30.3%(814例)、嫌気性菌カバー群32.1%(422例)であった。・傾向スコアによる背景因子の調整後の院内死亡リスクの群間差は1.6%(95%信頼区間[CI]:-1.7~4.9)であり、両群間に有意差は認められなかった。・C. difficile大腸炎の発現率は非カバー群0.2%以下(5例以下)、嫌気性菌カバー群0.8~1.1%(11~15例)であった。・傾向スコアによる背景因子の調整後のC. difficile大腸炎の発現リスクの群間差は1.0%(95%CI:0.3~1.7)であり、嫌気性菌カバー群で有意にリスクが高かった。・治療開始後のICU入室率は非カバー群2.5%(66例)、嫌気性菌カバー群2.7%(35例)であった。 著者らは、本研究には抗菌薬を必要としない誤嚥性肺炎患者が含まれる可能性があること、院外死亡や再入院の評価ができなかったこと、多くの患者で肺炎の原因菌が特定できていなかったことなどの限界が存在することを指摘しつつ、「誤嚥性肺炎において、嫌気性菌カバーは院内死亡率を改善せず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させることから不要である可能性が高いと考えられる」とまとめた。

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非ウイルス性肝疾患による死亡リスクは女性の方が高い

 飲酒やメタボリックシンドローム(MetS)が関与して生じる肝臓の病気は、男性に比べて女性は少ないものの、それによる死亡率は男性よりも女性の方が高いことが報告された。青島大学医学院付属医院(中国)のHongwei Ji氏、米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のSusan Cheng氏が、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析した結果であり、「Journal of Hepatology」2月号にレターとして掲載された。 肝臓の病気の原因のうち、C型肝炎などのウイルスによるものは治療が進歩して患者数が減少している一方で、MetSなどの代謝性疾患に伴う脂肪性肝疾患「MASLD」やアルコール関連の肝疾患「ALD」、および代謝性疾患とアルコール双方の影響による肝疾患「MetALD」と呼ばれる肝疾患が増加している。Cheng氏は、それらの肝疾患の有病率と死亡率の実態を性別に検討した。 1988~1994年のNHANES参加者から、20歳未満および解析に必要なデータのない人を除外し、1万7人(平均年齢42±15歳、女性50.3%)を解析対象とした。各疾患の定義は、MASLDについては心臓代謝疾患のリスク因子があること、ALDは飲酒量がアルコール換算で男性420g/週超、女性350g/週超、MetALDは同順に210~420g/週、140~350g/週であり、画像検査で脂肪肝が確認されたものとした。 各疾患の患者数は、MASLDが1,461人、ALDが105人、MetALDが225人だった。これらの有病率を性別に見ると大きな性差が認められ、3タイプの疾患の全て、男性の有病率の方が高かった。具体的には、男性ではMASLD、ALD、MetALDの順に18.5%、1.7%、3.2%であるのに対し、女性は10.3%、0.3%、1.2%だった(すべてP<0.001)。一方、死亡リスクについては以下のように、女性の方が高い傾向にあった。 中央値26.7年の追跡で、2,495人の死亡が記録されており、年齢やBMI、人種、喫煙習慣、収縮期血圧、脂質異常症、糖尿病、降圧薬・血糖降下薬・脂質低下薬の処方、世帯収入などを調整後の死亡ハザード比を性別に検討。すると、MetALDに関しては女性でのみ有意なリスク上昇が確認された〔男性1.00(95%信頼区間0.79~1.28)、女性1.83(同1.29~2.57)。ALDは男性・女性ともに有意なリスク上昇が確認されたが〔男性1.89(1.42~2.51)、女性3.49(1.86~6.52)〕、女性のリスクの方が高い傾向にあった(P=0.080)。MASLDは男性・女性ともに有意なリスク上昇は観察されなかった。 MetALDの「Met」とは「代謝性の」という意味の「metabolic」の略であり、肝臓への脂肪の蓄積を引き起こす可能性がある代謝性の問題、つまり肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症を指している。研究グループでは、「これらのリスク因子のいずれかが該当する女性は、飲酒には特に注意が必要」と述べ、その理由を「飲酒と代謝の問題が組み合わさると、肝臓に脂肪がより蓄積しやすくなるからだ」と解説している。 しかし、なぜ女性の肝臓がこれらの変化に対して、男性よりも脆弱であるのかはまだ明らかにされていない。Cheng氏らは現在、その理由の解明と、そのようなリスクの抑制につながる介入方法の確立に向けて、新たな研究を計画している。

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ハチ刺傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第12回

今回はハチ刺傷についてです。園芸作業をしているとき、洗濯物を干しているとき、登山をしているときなどいろいろな場所でハチに刺されることがあります。その際の対処法をTintinalli’s Emergency medicineと当直御法度を参考にしながらおさらいしましょう1,2)。なお、大量のハチに刺され、腫脹が大関節をまたぐほど広範囲の場合は対応が大きく異なるため、今回は一匹のハチに刺され、腫脹が大関節をまたがない事例を対象とします。<症例>50歳、男性主訴ハチに刺された病歴庭の草をむしっていたところ、右指先をハチに刺された。痛みが非常に強いため救急要請。アレルギー歴、既往歴、服薬歴特記事項なしさて、この患者さんが受診した場合どうしましょうか。順を追ってみていきましょう。(1)アレルギー症状の有無通常は、ハチに刺されたのみでは命にかかわることはありません。命にかかわる原因の最多がアナフィラキシーですので、まずはアナフィラキシー症状があるかどうかを確認しましょう。本症例は痛みが強いという主訴以外は、粘膜浮腫や呼吸症状、消化器症状、皮疹はありませんでしたので、アナフィラキシー症状はなしと判断しました。(2)針が残存していないかの確認アシナガバチやスズメバチは針を残しませんが、ミツバチは刺した後に針を残します。針が残っていれば除去する必要がありますが、除去の際に攝子や毛抜きを使って引き抜くのは避けます。針の中にある毒素をさらに注入してしまいます。爪やガーゼ、メスなどで軽くこすりながら取りましょう。こちらの動画はガーゼを用いて除去していてわかりやすいので参考にしてください。本患者には毒針がありませんでした。(3)洗浄と疼痛コントロール刺された部位を洗浄し、清潔に保ちましょう。鎮痛薬はロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどで対処します。かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬を処方しましょう。外用ステロイド薬に関しては推奨する根拠がないため私は処方していません。痛みが強い場合は、リドカインとステロイドを局所注射する方法もあります2)。本症例のように疼痛が強い場合は、なるべく早く鎮痛薬を飲ませるのが患者の疼痛緩和のためにもよいです。アセトアミノフェンとロキソプロフェンを内服してもらったのですが、それでも疼痛が強く、過換気を起こしてしまいました。手指の先端であったため血流障害も検討しましたが、毛細血管再充満時間(CRT)は正常でした。本当に痛みが強いだけであったためリドカインを用いて指ブロックを行いました。(4)外来フォロー基本的に私は症状に合わせて対症療法を行い、外来フォローはしていません。ただし、数日経って痛みが急激に強くなるなどの症状が出た場合は、刺傷部の感染の可能性があるため医療機関を受診するように指導しています。この患者さんは上記の処置で疼痛が緩和し、症状も安定したため、アセトアミノフェンを処方して治療終了とし、とくに外来フォローの必要性はありませんでした。今回は、暖かくなってくると時折見かけるハチ刺傷の対処法のまとめでした。突然出会うと困ることもありますので、参考にしていただければと思います。1)Tintinalli JE, et al. Tintinalli’s Emergency Medicine: A Comprehensive Study Guide8th edition. McGraw-Hill Education;2016.2)寺沢 秀ほか. 研修医当直御法度 ピットフォールとエッセンシャルズ第6版. 三輪書店;2016.

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“抗加齢医学”の実学創造~北里 柴三郎博士の思いを継いで~

第24回日本抗加齢医学会総会が2024年5月31日(金)~6月2日(日)の3日間、熊本城ホールにて開催される。今回のテーマは『実学創造~老化制御の一新紀元』。大会長である尾池 雄一氏(熊本大学大学院生命科学研究部分子遺伝学講座 教授/熊本大学医学部長)に本総会に込める思いや注目演題について話を聞いた。予防医学の父、北里 柴三郎氏の精神を引き継ぐ2024年は新日本銀行券が発行されますが、新たな千円札紙幣の顔となる北里 柴三郎博士の生誕の地がこの熊本です。私自身も博士のモットーである『“実学の精神”をもって社会に貢献』にならい、これまで当たり前のように受け入れてきた年齢を重ねることで発症リスクが高まる脳・心血管疾患、悪性腫瘍など加齢関連疾患の発症を”抗加齢医学”の実践により予防するための研究を進めてきました。その思いを詰め込み、本学会総会初となる地方都市開催の実現とともに、北里 柴三郎博士の玄孫にあたる北里 英郎氏による講演「近代医学の父、予防医学の礎を築いた北里 柴三郎博士の功績」ほか、北里 柴三郎博士の意思、精神を引き継ぎ、抗加齢医学の実学創造に挑む関連演題をお届けします。また、会長企画シンポジウムでは、1)コホート研究から健康長寿の鍵を紐解く、2)ミトコンドリア研究から老化制御の実学創造/ミトコンドリア先制医療、3)Inflammagingから老化に迫る、4)老化を予測・制御する最先端研究といったテーマで各々の領域でご活躍されているの方々にご講演いただく予定です。また、『生物はなぜ死ぬのか』の著者で知られる小林 武彦氏(東京大学定量生命科学研究所附属生命動態研究センター 教授)、新たな年齢指標「epigenetic clock(生物学的年齢)」を開発したSteve Horvath氏(米国・カルフォルニア大学)、世界的なエイジング医学ジャーナルnpj Aging編集長のMarco Demaria氏(オランダ・フローニンゲン大学医療センター)を海外からお招きし、抗加齢医学におけるグローバルな話題も提供いたします。予防医学に光明、ミトコンドリア研究が熱い! 私は病的な老化を制御・予防する観点から主に2つの柱で研究を進めております。一つがミトコンドリア機能制御の解明と抗加齢医学への応用です。ヒトの細胞は一人あたりに約200種類、数十兆個が存在していますが、各々の細胞が正常に機能するにはエネルギーが不可欠です。ここで重要なのがミトコンドリアであり、ほぼすべての細胞においてエネルギーを生成する発電所的な役割を果たしているわけです。しかし、このミトコンドリアの機能が異常を示せば細胞レベルで異常がみられるようになり、また、機能異常が進むと、酸化ストレスとも呼ばれる活性酸素(ROS)が細胞内で産生されて体内の老化が一気に加速してしまいます。つまり、ミトコンドリアの機能をいかに正常に保つかが非常に重要課題であることから、さまざまな研究が進められており、近年ミトコンドリアだけにフォーカスした国際シンポジウムが頻繁に開催されたり、CellやNatureといった世界のトップ科学雑誌に新たな研究成果が立て続けに掲載されたりするなど、とても競争が激しくホットな領域なのです。たとえば、“細胞内小器官“であるミトコンドリアが、隣接する細胞間や遠隔の細胞間でやりとりされ、お互いの細胞機能に関わり老化に影響を与えることや、ミトコンドリアの機能に重要なミトコンドリアを構成するタンパク質の合成が活性化されていることが長寿に重要であることなど解明されており、ミトコンドリアを標的とした薬剤やサプリメントの開発など、抗加齢医学への応用が着実に進められています。そこで、皆さまにミトコンドリア研究の今を知ってもらうために、会長企画シンポジウムとしてご用意いたしました。老化に抗う時代の到来か!?もう一つの研究の柱が炎症老化(Inflrammaging)です。これは炎症を意味するinflammationと老化を意味するagingを組み合わせた造語で、老化に伴う慢性炎症のことです。炎症自体は感染や組織損傷への防御反応で、その多くは改善すれば自然と収まるものなので、悪いものではありません。しかしこれまでも、何らかの原因で炎症が遷延し慢性炎症を惹起し、がん化などに繋がることは注目されていました。しかし近年、老化した個体の中で変化し生じるさまざまな機構により慢性炎症が生じ、細胞/臓器/身体の機能低下をもたらし、老化表現型の出現および加齢関連疾患の発症・進展に寄与していることが明らかとなってきました。上述のミトコンドリアの変化も老化に伴う慢性炎症の原因の一つです。現在の老化予防としては老化細胞を除去(セノリシス)する方法や、それとは別に老化細胞のinflammagingなど老化を促進する特徴的な機能を阻害するセノモルフィックな戦略が注目され、既に米国を中心にヒトでの臨床研究が進んでおります。われわれもまた抗老化医学の実学創造の柱としてinflammagingの解明とその制御に挑んでおり、会長企画シンポジウムでもこの話題を盛り込みました。このほか、さまざまな視点から抗加齢に着目した教育講演やシンポジウム、日本血管生物医学会、日本肝臓学会、健康食品産業協議会などとの共催シンポジウム、2025年に向けた大阪万博や世界長寿サミットに関するセッションなどを取り揃え、どんな専門分野の医師、医療関係者も楽しめる総会となっています。ぜひ現地にて皆さまのご参加をお待ちしております。

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日本人の睡眠時間やその変化が認知症リスクに及ぼす影響

 睡眠時間およびその変化が長期的な認知症リスクに及ぼす影響について、これまでの研究結果は一貫していない。長崎大学の宮田 潤氏らは、日本人の中年期における睡眠時間およびその変化と認知症リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、長時間睡眠および睡眠時間の増加が認知症リスクと関連することが示唆された。Preventive Medicine誌2024年3月号の報告。 研究チームは、40~71歳の日本人4万1,731人を募集し、ベースライン時(1990~94年)の習慣的な睡眠時間および5年間のフォローアップ調査について記録した。睡眠時間の変化はベースライン時と5年間の測定結果の差として算出し、認知症の発症は介護保険制度の利用(2007~16年)で特定した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の算出には、エリア層別Coxモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・36万389人年の間に、認知症を発症した人は4,621人であった。・7時間睡眠と比較した各睡眠時間の認知症発症の多変量HRは、J-shaped fashionで次のとおりであった(p for linear<0.001、p for quadratic<0.001)。【3~5時間】HR:1.13(95%CI:0.98~1.30)【6時間】HR:0.93(95%CI:0.85~1.02)【8時間】HR:1.06(95%CI:0.99~1.14)【9時間】HR:1.13(95%CI:1.01~1.27)【10~12時間】HR:1.40(95%CI:1.21~1.63)・睡眠時間の変化については、睡眠時間の変化がなかった人と比較した認知症発症のHRは次のとおりであった。【2時間以上の減少】HR:1.02(95%CI:0.90~1.16)【1時間の減少】HR:0.95(95%CI:0.88~1.03)【1時間の増加】HR:1.00(95%CI:0.91~1.09)【2時間以上の増加】HR:1.37(95%CI:1.20~1.58)・睡眠時間の減少との正の相関は、ベースライン時の睡眠時間が7時間以下の人で観察され、8時間以上の人では観察されなかった(p for interaction=0.007)。

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RSウイルスの疾病負担、早産児で長期的に増大/Lancet

 早産児は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)関連疾患の負担が過度に大きく、乳幼児のRSVによる入院の25%が早産児であり、とくに早期早産児で入院のリスクが高く、この状態は生後2年目までは続くことが、中国・南京医科大学のXin Wang氏らRespiratory Virus Global Epidemiology Networkが実施したRESCEU研究で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月14日号に掲載された。2歳未満の早産児の疾患負担をメタ解析で評価 研究グループは、在胎週数37週未満で出生した乳幼児におけるRSV関連の重症急性下気道感染症(ALRI)の世界的な疾病負担とリスク因子の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を行った(EU Innovative Medicines Initiative Respiratory Syncytial Virus Consortium in Europeの助成を受けた)。 1995年1月1日~2021年12月31日に発表された研究の集計データと、Respiratory Virus Global Epidemiology Networkが共有する呼吸器感染症に関する個々の患者データを用いて、早産で出生した2歳未満の乳幼児の地域におけるRSV関連ALRIの発生率、入院率、院内死亡率、および全死亡率を推定した。在胎週数32週未満を早期早産、32~<37週を後期早産とした。2019年のALRI 165万件、入院53万3,000件 47件の論文と、共同研究者の提供による個々の患者データを含む17件の研究を解析の対象とした。 2019年には、世界の早産児において、生後0~<12ヵ月にRSV関連ALRIエピソードが165万件(95%不確実性範囲[UR]:135万~199万)発生したと推定され、このうち154万件(93%)が開発途上国であった。 同様に、RSV関連入院は53万3,000件(95%UR:38万5,000~73万)で、このうち49万3,000件(92%)が開発途上国、RSV関連院内死亡は3,050件(95%UR:1,080~8,620)で、2,700件(88.5%)が開発途上国で発生した。また、RSVに起因する死亡が早産児で2万6,760件(95%UR:1万1,190~4万6,240)発生しており、これは全乳幼児のRSV死の40%(17~65)に相当した。早期早産児でALRIの発生率と入院率が高い 早期早産児では、RSV関連ALRIの発生率と入院率が、すべての在胎週数で出生した乳幼児と比較して有意に高かった(年齢別、アウトカム別の率比[RR]の範囲は1.69~3.87)。また、生後2年目(12~<24ヵ月)には、早期早産児は全乳幼児と比較して、RSV関連ALRIの発生率は同程度であったが、入院率は有意に高かった(RR:2.26、95%UR:1.27~3.98)。 後期早産児におけるRSV関連ALRIの発生率は、1歳未満の全乳幼児と同程度であったが、生後6ヵ月までのRSV関連ALRIによる入院率は後期早産児で高かった(RR:1.93、95%UR:1.11~3.26)。院内死亡率は同程度 全体として、すべての在胎週数の乳幼児におけるRSV関連ALRIによる入院の25%(95%UR:16~37)を早産児が占めた。早産児におけるRSV関連ALRIによる院内死亡率は全乳幼児と同程度であった。 RSV関連ALRIの発生との関連を認めた因子は、主に周産期および社会人口統計学的な特性(母親の妊娠中の喫煙、5歳未満の子供が2人以上いる家庭、多胎児)であった(オッズ比[OR]の範囲は1.68~1.80)。また、入院を要する感染による重篤なアウトカムとの関連を認めた因子は、主に先天性心疾患、気管切開、気管支肺異形成症、慢性肺疾患、ダウン症候群などの基礎疾患だった(ORの範囲は1.40~4.23)。 著者は、「これらの知見は、早産児および乳幼児におけるRSVの予防と臨床管理の戦略を最適化するための重要なエビデンスとなる」としている。

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小児尋常性乾癬、アプレミラストの有用性を第III相試験で検証

 中等症~重症の6~17歳の尋常性乾癬患者において、アプレミラストはプラセボと比較して全般的な疾患活動性および皮膚症状を有意に改善したことが、海外第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SPROUT試験」の結果で示された。カナダ・アルバータ大学Stollery Children's HospitalのLoretta Fiorillo氏らが報告した。経口ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬のアプレミラストは、成人の尋常性乾癬患者に対する使用が、わが国を含め国際的に承認されている。しかし、中等症~重症の小児尋常性乾癬患者に対して使用が承認されている全身性治療薬は限られている。アプレミラストについては、第II相試験の探索的解析で小児患者の皮膚症状を改善することが示され、さらなる検討が支持されていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年1月22日号掲載の報告。 SPROUT試験は、局所療法でコントロール不十分/不良の6~17歳の中等症~重症尋常性乾癬患者(Psoriasis Area and Severity Index[PASI]スコア12以上、皮疹が体表面積[BSA]10%以上、static Physician Global Assessment[sPGA]スコア3以上)を対象とした。対象患者にアプレミラストを16週間投与し、有効性と安全性を検証した。 対象患者を年齢(6~11歳、12~17歳)で層別化し、2対1の割合で無作為にアプレミラスト群またはプラセボ群に割り付けた。アプレミラスト群の患者には、体重に基づき20mgを1日2回(体重20kg以上50kg未満)または、30mgを1日2回(体重50kg以上)16週間投与した。その後、52週まで両群の患者にアプレミラストを投与した。 主要エンドポイントは、16週時のsPGA達成(ベースラインから2点以上低下かつスコア0[消失]または1[ほぼ消失])であった。主要な副次エンドポイントは、16週時のPASI-75達成(PASIスコアがベースラインから75%以上低下)であった。 主な結果は以下のとおり。・2018年12月~2021年12月に、計245例が無作為化された(アプレミラスト群163例[20mg群80例、30mg群83例]、プラセボ群82例)。平均年齢は12歳(6~11歳群41.2%、12~17歳群58.8%)、約50%が女子で、86.9%が白人であった。尋常性乾癬の平均罹病期間は4年、ベースラインの平均PASIスコアは19.8、sPGAスコアは3(中等症)が75.5%、4(重症)が24.5%であった。・16週時のsPGA達成率は、アプレミラスト群(33.1%)がプラセボ群(11.5%)より有意に高率であった(p<0.0001)。・同様にPASI-75達成率は、アプレミラスト群(45.4%)がプラセボ群(16.1%)より有意に高率であった(p<0.0001)。・sPGA達成率は、6~11歳群(49.6%)が12~17歳群(21.5%)よりも高率であり、20kg以上50kg未満群(47.4%)が50kg以上群(19.2%)よりも高率であった。PASI-75の結果についても同様であった。・安全性に関する新たなシグナルは観察されなかった。

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B7-H3標的ADCのI-DXd、固形がんへの有効性・安全性は?/日本臨床腫瘍学会

 既治療の進行・転移固形がん患者を対象として、抗B7-H3(CD276)抗体薬物複合体ifinatamab deruxtecan(I-DXd;DS-7300)の有用性が検討されている。第I/II相試験(DS7300-A-J101)の小細胞肺がん(SCLC)、食道扁平上皮がん(ESCC)、去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)、扁平上皮非小細胞肺がん(sqNSCLC)における最新結果が、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、土井 俊彦氏(国立がん研究センター 先端医療開発センター長)により報告された。 B7-H3は免疫関連分子であり、多くの固形がんで発現が認められるが、正常組織では発現しないか非常に低発現であると報告されている。また、B7-H3が高発現であると、予後が不良であることも報告されている1,2)。I-DXdは、国内で製造販売承認を取得しているトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)と同じリンカーとペイロードを用いた製剤である。 DS7300-A-J101試験は、既治療の進行・転移固形がん患者を対象とした第I/II相試験で、用量漸増パートと用量拡大パートから構成されている。用量拡大パートでは、推奨用量となったI-DXd 12.0mg/kgが3週ごとに投与された。I-DXdは10がん種の174例に投与され、本発表では、そのうちSCLC患者21例(日本人:5例)、ESCC患者28例(同:20例)、mCRPC患者59例(同:8例)、sqNSCLC患者13例(同:5例)における有効性、I-DXdが投与された全患者の安全性の結果が発表された。安全性の解析はI-DXdを投与された全例、有効性の解析はI-DXdを4.8~16.0mg/kgの用量で投与された患者が対象となった。 主な結果は以下のとおり。・SCLC、ESCC、mCRPC、sqNSCLC患者における有効性の結果は以下のとおり(括弧内は日本人のデータ)。 -追跡期間中央値(月):11.7(6.7)、14.9(14.9)、16.6(14.5)、5.2(4.4) -奏効率(%):52.4(40.0)、21.4(20.0)、25.4(12.5)、30.8(40.0) -奏効期間中央値(月):5.9(未到達)、3.5(2.8)、6.4(2.8)、4.1(4.0) -無増悪生存期間中央値(月):5.6(4.7)、2.8(3.9)、5.3(4.4)、不明 -全生存期間中央値(月):12.2(未到達)、7.0(9.7)、13.0(11.4)、不明・SCLCおよびmCRPC患者においてB7-H3の発現量と最良奏効との間に関連は認められなかった。・安全性解析集団における治療継続期間中央値は12.3ヵ月(日本人:12.3ヵ月)であり、Grade3以上の有害事象は43.7%(同:39.3%)に発現した。治療関連死は1例(同:1例)に認められた。・安全性解析集団において、8.0~16.0mg/kgの用量で投与された患者のうち10例(6.9%)に間質性肺疾患(ILD)が認められたが、多くがGrade1/2であった。ただし、16.0mg/kgの用量で投与された日本人集団の子宮内膜がん患者1例に、ILDによる死亡が認められた。 本研究結果について、土井氏は「多くの前治療歴のある固形がん患者において、I-DXdは忍容性があり、有望な抗腫瘍効果を示した。現在進行中の進行SCLC患者を対象とした第II相試験(NCT05280470)を含め、各がん種でのさらなる開発が期待される」とまとめた。

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日本の乳がんの特性・治療・予後の変化~NCD乳がん登録46万例のデータ

 日本における2004~16年の乳がんの特性・治療・生存の動向について、川崎医科大学の岩本 高行氏らがBreast Cancer誌2024年3月号に報告した。これは、NCD(National Clinical Database)乳がん登録の45万7,878例のデータ(追跡期間中央値5.6年)に基づく日本乳癌学会による予後レポートである。 2004~08年の症例と2013~16年の症例を比較した主な結果は以下のとおり。・治療開始年齢の中央値は、2004~08年では57歳、2013~16年では60歳と上昇した。・Stage0~IIの割合は74.5%から78.3%に増加した。・エストロゲン受容体陽性の割合は74.8%から77.9%、プロゲステロン受容体陽性の割合は60.5%から68.1%に増加した。・(術前)術後補助化学療法は、タキサン(T)またはT-シクロホスファミド(C)レジメンは2.4%から8.2%に増加したが、(フルオロウラシル(F))アドリアマイシン(A)C-T/(F)エピルビシン(E)C-Tは18.6%から15.2%、(F)AC/(F)ECレジメンは13.5%から5.0%に減少した。・術(前)後HER2療法に関しては、トラスツズマブの使用が4.6%から10.5%に増加した。・センチネルリンパ節生検の実施率は37.1%から60.7%に増加し、腋窩リンパ節郭清の実施率は54.5%から22.6%に減少した。・HER2陽性乳がん患者では無病生存期間と全生存期間の改善が認められたが、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、トリプルネガティブ乳がん患者では明らかな傾向は認められなかった。

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新たな薬剤耐性大腸菌の広がりに科学者が警戒

 中国の小児病院で、抗菌薬に耐性を持つ大腸菌が新たに確認された。英国の研究グループによると、中国の病院で最も一般的となった薬剤耐性大腸菌は、最後の砦とされるカルバペネム系抗菌薬にも耐性を持つ配列タイプ(sequence type;ST)410に属する大腸菌(ST410)であるが、中国の小児病院で発生した2件の大腸菌アウトブレイクの背景には、B5/H24RxCと呼ばれるST410より強毒性の大腸菌が関与していたことが判明したという。英バーミンガム大学微生物学・感染症研究所所長のAlan McNally氏らによる研究で、詳細は、「Nature Communications」に1月12日掲載された。 この変異株は、非常に感染力が強く、従来の大腸菌より増殖スピードが速く、より多くの害を生物に及ぼすと研究グループは警鐘を鳴らしている。McNally氏は、「この新しい変異株は、抗菌薬に対する耐性が強くなるとともに病原性も増している。これは、これまでには見られなかった憂慮すべき傾向だ。この大腸菌が中国国外にも広がっていることが確認されている。世界中のサーベイランスラボが、この大腸菌を警戒すべきだ」と話している。 McNally氏らはこの研究で、2017年から2021年の間に中国の26の省で入院患者から採取されたカルバペネム系抗菌薬に耐性を持つ大腸菌(CREC)の388の分離株のゲノム解析を行った。これらの分離株は主に、尿(111点)、痰(64点)、血液(47点)の検体から分離されたものだった。 その結果、これらの株の中で最も多く認められたSTはST410(109株)であり、次いで、ST167(41株)、ST131とST617(12株ずつ)の順であった。2015〜2017年に実施された研究では、ST410はST131、ST167に次いで3番目に多いSTであったことから、CRECのポピュレーションが変化したことがうかがわれた。 ST410についてさらに詳しく解析したところ、通常よりも高い毒性や感染力を持つB5/H24RxCと呼ばれるST410のクローンが同定され、このクローンが、中国の小児病院で生じた2件のアウトブレイクの原因菌である可能性が示唆された。研究グループは、B5/H24RxCは、2006年に特定され、2015年から2021年の間に中国以外の10カ国で分離されたB4/H24RxCの進化型である可能性があると述べている。 論文の筆頭著者である、英ケンブリッジ大学獣医学分野のXiaoliang Ba氏は、「本研究は、大腸菌のような臨床的に重要な病原体における抗菌薬耐性の進化を浮き彫りにするものだ。また、世界的な公衆衛生において深刻化しているこの課題に対処するためには、各国が互いに協力しあって取り組むことが喫緊に必要なことを強調する結果だ」と述べている。

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第204回 乗り物酔いの原因と有望な治療薬候補

乗り物酔いの原因と有望な治療薬候補車や電車での旅行者から果ては宇宙飛行士まで多くの人が乗り物酔いを多かれ少なかれ経験します。乗り物酔いは動きに身を委ねているときに生じる不快な生理的不調であり、顔色が悪くなる、冷や汗やあくびが出る、悪心や嘔吐、めまい、食欲低下、眠気、悪くすると重度の痛みさえ引き起こします。乗り物酔いは人に限ったものではなく、イヌやマウスなどの哺乳類やさらには魚でさえ被りうることが示されており、進化の歴史のなかで脈々と受け継がれてきたようです。移動を反映する情報は内耳前庭から前庭神経核(VN)と呼ばれる脳領域に伝達されます。VNの神経の活性化が乗り物酔い様の状態をもたらすことがラットやマウスの実験で示されています。また、VNの働きに影響する病気は乗り物酔いの症状とかぶるめまいや悪心・嘔吐などの自律神経不調と関連することが知られており、VNの神経が乗り物酔いに一枚かんでいることはかなり裏付けられています。しかしVNがどういう仕組みで乗り物酔いを引き起こすのかはこれまでわかっていませんでした。そこでスペインのバルセロナ自治大学と米国のワシントン大学のチームは、マウスをぐるぐる回したときのVNを解析してどの神経が乗り物酔いに寄与しているかを調べ、グルタミン酸輸送体VGLUT2を発現する神経(VGLUT2VN神経)が乗り物酔い症状を引き起こすことが突き止められました1,2)。マウスのVGLUT2VN神経を阻害したところ、ぐるぐる回されているときの乗り物酔い症状(歩行が遅くなる、食欲減退、体温低下)を予防または緩和できました。逆にVGLUT2VN神経を光で活性化したら回されているときと同様の乗り物酔い様症状が生じました。研究はさらに進み、VGLUT2VN神経の一派が発現するペプチドがどうやら乗り物酔い症状を誘発することが判明します。そのペプチドはコレシストキニン(CCK)と呼ばれ、VNのCCK発現神経は不快感の発生に携わる脳領域の傍小脳脚核(PBN)へと通じています。CCK発現神経からの入力でPBNのカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)発現神経が活性化することが乗り物酔い症状を引き起こすらしく、CCKが結合するCCK-A受容体の遮断薬であるdevazepideはぐるぐる回されたマウスのPBNのCGRP発現神経活性化を減らし、乗り物酔い症状を抑制しました。乗り物酔いの治療の定番であるジメンヒドリナートなどの抗ヒスタミン薬は眠気を誘発する恐れがあります。しかしdevazepideのようなCCK発現神経狙いの薬はその心配がなさそうであり2,3)、危険を伴う機械を操作する患者も安心して使えるかもしれません。devazepideの臨床試験成績の査読論文はあいにく報告されていないようですが4)、片頭痛を治療する抗CGRP薬は経口薬も含めていくつかすでに承認されています。有望なことに抗CGRP薬(olcegepant)がマウスの乗り物酔い指標を抑制することが最近の研究で示されており、その用途はさらに検討する価値があるようです5)。参考1)Machuca-Marquez P, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2023;120:e2304933120.2)Neurons responsible for motion sickness identified / Autonomous University of Barcelona3)The Culprits Behind Motion Sickness / TheScientist4)ScienceDirect:Devazepide5)Rahman SM, et al. Cephalalgia. 2024;44:3331024231223971.

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局所進行直腸がん術前治療におけるctDNA活用に期待/日本臨床腫瘍学会

 局所進行直腸がんの術前治療の決定において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)解析の有用性が示唆された。 局所進行直腸がんでは手術後の再発が問題だったが、直腸間膜全切除(TME)手術や術前化学放射線療法 (CRT)によって局所再発のコントロールが実現した。近年では術前化学療法 (NAC)や、CRTに化学療法を追加するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、遠隔再発の抑制が報告されている。一方、すべての患者にTNTを行うべきか明確な基準はなく、一部の患者では過剰治療も懸念されている。 そのような中、術後再発予測因子としてctDNAの役割が期待されている。大阪大学の浜部 敦史氏らは、術前治療後ctDNAの状況が局所進行直腸がんの再発に影響するかを検討したCIRCULATE-Japan GALAXY trialの結果を、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 GALAXY trialには、術前治療(CRTまたはNAC)を実施したStageII~IIIの直腸腺がん患者が登録された。登録患者には診断時に全エクソームシークエンスを行い、 ベースライン、術前治療終了後、手術後にctDNA検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・2021年10月~2023年9月に200例が登録され、191例が解析対象となった。・術前治療の内容はCRT89例(46.6%)、NAC102例(53.4%)であった。・ベースラインctDNA陽性147例中、69例で術前治療後にctDNAが陰性化した (陰性化率 47%)。・術前治療別の陰性化率はCRT57%(40/70例)、NAC38%(29/77例)で、CRTで高い傾向だった。・術前治療後のctDNA陽性は、再発予測因子とされる手術後(4週後)のctDNA陽性と相関していた。・無病生存期間 (DFS)は、術前治療後ctDNA陽性症例に比べ陰性例で有意に良好であった (ハザード比:推定不能、Log-rank検定 p=0.0024) 今回の知見から、ctDNAが局所進行直腸がんにおける個別化術前治療のガイドになるのではないか、と浜部氏は期待感を示した。

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進行固形がんのリキッドバイオプシーにおける偽陽性/日本臨床腫瘍学会

 血漿検体を用いて遺伝子のシークエンス解析を行うリキッドバイオプシーはがん治療で広く用いられている。血漿中にはがん由来のDNAと共に血液由来のDNAも存在するが、通常は結果に影響しない。しかし、加齢などにより、遺伝子異常を持った血液細胞が増殖するクローン性造血(CH)が起こり、これらをがん由来の遺伝子異常と判断することで起こる偽陽性が懸念されている。 国立がん研究センター東病院の藤澤 孝夫氏らは、進行固形がん患者を対象に血漿と血液細胞(PBMC)のシークエンス解析を行い、血液細胞による偽陽性を回避できる新たなリキッドバイオプシー検査(PBMC-informed LBx)の有用性を評価した。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)での発表。 研究は、固形がんの遺伝子スクリーニングネットワークSCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-2に登録された患者を対象に行われた。抗がん剤治療を行う進行固形がん患者を対象として、ベースラインと治療終了後に検出された遺伝子異常のうち、血液細胞(CH)由来と考えられる遺伝子異常の割合(CH conversion rate)を算出した。  主な結果は以下のとおり。 ・2021年5月~2023年7月に登録され、PBMC-informed LBxによる遺伝子解析結果が得られた1,456例を解析した。・1,456例からは3,190の病的遺伝子異常が検出され、このうち730(22.9%)がCH由来と分類された。・CH由来の遺伝子異常が含まれていた遺伝子には、通常CHと関連が深いとされる遺伝子(DNMT3A、TET2など) のみならず、固形がんに多く治療標的とされる遺伝子(BRCA2、KRAS、CDK12)なども含まれていた。・とくに薬剤の治療適応となるBRCA2、KRAS、BRAFでもCH由来の遺伝子異常が含まれていた(それぞれ28.4%、8.4%、5.6%)。 本発表の結果から、リキッドバイオプシーにおいて検出された遺伝子異常においては、治療標的となるような重要遺伝子においてもCH由来の偽陽性が一定の割合で含まれること、 PBMC-informed LBxを用いることで、より正確に患者ごとの治療標的となる遺伝子異常を評価できる可能性が示唆された。

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下肢外傷固定後の抗凝固療法、TRiP(cast)で必要性を判断可/Lancet

 固定を要する下肢外傷で救急外来を受診した患者における予防的抗凝固療法には議論の余地がある。フランス・Angers University HospitalのDelphine Douillet氏らは、「CASTING試験」において、抗凝固療法を受けておらず、Thrombosis Risk Prediction for Patients with Cast Immobilisation-TRiP(cast)スコアが7未満の患者は、静脈血栓塞栓症のリスクがきわめて低いことから、下肢外傷で固定術を受けた患者の大部分は血栓予防を安全に回避可能であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月15日号に掲載された。15施設のステップウェッジ・クラスター無作為化試験 CASTING試験は、フランスとベルギーの15の救急診療部で実施したステップウェッジ・クラスター無作為化試験であり、2020年6月~2021年9月に患者を登録した(フランス保健省の助成を受けた)。 ステップウェッジ方式に基づき、15の参加施設を、コントロール期から介入期への移行時期をずらして無作為化した。コントロール期は、通常診療として抗凝固療法を行い、介入期は、TRiP(cast)スコア<7の患者には抗凝固療法を行わず、≧7の患者にはこれを行った。 対象は、18歳以上で、救急診療部を受診し、少なくとも7日間の固定を必要とする下肢外傷の患者であった。 主要アウトカムは、ITT集団における、TRiP(cast)スコアが<7の患者の介入期での症候性静脈血栓塞栓症の3ヵ月間の累積発生率とし、この値が<1%で95%信頼区間(CI)の上限値が<2%の場合に安全と判定した。発生率0.7%、主要アウトカムを達成 介入期の解析の対象となった1,505例(年齢中央値31歳[四分位範囲[IQR]:23~44]、女性43.2%)のうち、1,159例(77.0%)がTRiP(cast)スコア<7であり、抗凝固療法を受けなかった。 ITT解析では、TRiP(cast)スコア<7の患者1,159例のうち症候性静脈血栓塞栓症が発生したのは8例(0.7%、95%CI:0.3~1.4)であり、主要アウトカムを達成したことから、これらの患者に抗凝固療法を行わないことは安全と考えられた。 また、per-protocol解析では、TRiP(cast)スコア<7の患者1,048例において、症候性静脈血栓塞栓症が発生したのは8例(0.8%、95%CI:0.3~1.5)であった。出血の発生にも差はない 症候性静脈血栓塞栓症の累積発生率は、コントロール期が1.0%(6/603例)、介入期は1.1%(17/1,505例)であり、2つの期間の絶対差は0.1ポイント(95%CI:-0.8~1.1)であった。 また、出血は、コントロール期には発生せず、介入期には大出血が1例(自然発生的な頭蓋内出血)、臨床的に重要な非大出血が1例(術後の腓腹筋血腫)で発生した。 著者は、「フランスとベルギーの現在の診療(本試験のコントロール期)と比較して、TRiP(cast)スコアを用いた戦略は、3ヵ月間の静脈血栓塞栓症を増加させずに、抗凝固療法の処方を半減させた」「TRiP(cast)スコアは、医師による意思決定に有用であり、下肢固定患者のほぼ4分の3において、毎日の皮下注射による抗凝固療法を回避することが可能と考えられる」としている。

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やはり高頻度だったデノスマブの透析高齢女性への投与における重症低Ca血症(解説:浦信行氏)

 デノスマブは、破骨細胞の活性化に関与すると考えられているNF-κB活性化受容体リガンド(Receptor activator of nuclear factor-κB ligand:RANKL)と結合することによって、骨破壊に起因する病的骨折等の骨関連事象の発現を抑制する、ヒト型モノクローナル抗体である。 腎不全の病態では腸管からのCa吸収が低下するため、そのCaの濃度を維持しようとして、二次性副甲状腺機能亢進を来した状態である。そのような高回転骨の状態にデノスマブを使用すると、破骨細胞性骨吸収が抑制されるが、その一方で類骨での一次石灰化は続くため、細胞外液から骨にCaが一方的に流入し、高度の低Ca血症が引き起こされると考えられる。腎不全の高齢女性の場合は、その発現頻度増加と程度が重症となる可能性が早くから指摘されていた。 米国・食品医薬品局(FDA)では、昨年11月22日にFDA主導の別の予備研究からも入院や死亡リスクが高まることを指摘していた。このたびの試験は、後ろ向き研究ではあるが1,523例を対象とし、1,281例の経口ビスホスホネート製剤群を対照に置き、頻度と重症度を比較したこれまでにない大規模研究である。 結果の詳細は2024年2月26日公開のジャーナル四天王(透析高齢女性へのデノスマブ、重度低Ca血症が大幅に増加/JAMA)をご覧いただきたいが、頻度はデノスマブ群で40%前後と著明な高値で、対照群の20倍程度多かった。また、重度低Ca血症発症から30日以内のデノスマブ群の発症者の5.4%が、痙攣や心室性不整脈と診断され、1.3%が死亡していた。デノスマブ群1,523例中、重篤な副作用は13例、死亡3例となる。ちなみに対照群では、このような転帰は皆無であった。 これまでも同様の研究がいくつか行われているが、いずれも少数例の試験であるため、発現頻度に関しては報告間で大きな差がある。また、わが国の各種の医薬品安全性情報を見ても、このような症例での報告はいずれも数十例を対象とした報告であり、透析高齢女性を対象とした報告は、少数例の成績も見当たらない。このような重要な情報は早期に提示する必要があると考える。

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irAE心筋炎の原因の一つに新たな知見が!!【見落とさない!がんの心毒性】第29回

免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)の適応がますます広がっているが、同薬剤による免疫関連有害事象(以下irAE)による心筋炎の発症は臨床上の大きな問題となっている。これまで、irAE心筋炎の発症リスク・重症化リスクとして明らかなものはICI同士の併用療法だけであり、そのほかに女性のほうが男性より発症率が高いことも報告されている1)。ICI併用では単剤と比較して2〜6倍、女性は男性に比べて2〜3倍、心筋炎の発症率が高いとされてきた1)。致死的な合併症であるirAE心筋炎のリスクを把握することは安全ながん治療の実施のために極めて重要であるが、最近、irAE心筋炎の発症機序に関する新しい知見が発表された。2023年10月26日のNature Medicine誌オンライン版に胸腺異常がirAE心筋炎の発症に強く関与していることを明らかにした研究成果が掲載された2)ため、以下に紹介する。Thymus alterations and susceptibility to immune checkpoint inhibitor myocarditis.この論文はパリのソルボンヌ大学を中心としたグループからの発表である。グローバル副作用報告データベース(VigiBase)や臨床試験データなど、複数のデータベースを用いて、胸腺上皮性腫瘍(以下、TET)とほかのがん腫を比較したところ、TETの心筋炎や筋炎発症のオッズ比またはリスク比が15〜38倍であったことを明らかにした。VisiBaseの解析ではほかのがん腫では心筋炎の発症率が1%であったのに対して、TETでは16%と驚異的な発症率であったことも明らかにされた。また、VigiBaseデータより、TETに関連して有意に増加するirAEは重症筋無力症様症候群、筋炎、心筋炎、肝炎であり、ほかのirAEは有意な増加を認めなかった(ただし、肝炎の診断根拠はトランスアミナーゼの上昇のみであり、その背景には肝臓の炎症ではなくむしろ筋炎などがあったことが推察される)。また、ICI心筋炎の国際的レジストリデータから、TETに関連する心筋炎は発症がより早期で、筋炎や重症筋無力症様症候群の合併が多く、致死率も高いことが明らかにされた。さらに興味深いことに、非TET患者でも、ICI心筋炎を発症した患者ではCT画像上の胸腺の形態や大きさが心筋炎を来さなかった患者に比べて有意に異なっており、非TET患者のICI心筋炎の発症にも胸腺異常が関わっていることが示唆された。また、ICI心筋炎患者はICI心筋炎を発症しなかった患者と比べて抗アセチルコリンレセプター(AChR)抗体の陽性率が4〜9倍高く(16〜36% vs. 4%)、抗AChR抗体の存在は心筋炎の発症の独立した危険因子であり、致死性心イベントの増加とも関連していた。胸腺はT細胞が分化成熟するために必須の器官であり、自己抗原を強く認識するT細胞受容体を発現するT細胞を排除する(負の選択)ことにより、自己免疫寛容の成立に寄与する。しかし、一部のT細胞は負の選択をすり抜けて末梢に出現し、心臓に関しては、心筋αミオシンに反応するT細胞が健常人においても末梢に存在しているが3)、主にPD-1/PD-L1経路による末梢性自己免疫寛容が機能しており、自己免疫性心筋炎は滅多に生じることはない。ICI投与によりこの経路がブロックされることにより心筋炎が惹起されると考えられており4)、実際にICI心筋炎動物モデルやICI心筋症患者の末梢血中に心筋ミオシン反応性T細胞が存在することが最近明らかになってきている5,6)。今回の論文から胸腺異常が心筋炎の発症と密接に関わっていることが示されたことにより、ICI心筋炎の発症に胸腺で受けるべきT細胞の正常な分化成熟の阻害が関与していることが示唆され、胸腺をすり抜けたαミオシン反応性T細胞のような心筋反応性T細胞が心筋炎の発症に寄与していることが示唆される。この論文が持つ臨床的意義はとても大きい。抗AChR抗体の存在が有力な発症予測マーカーである可能性があり、そもそも胸腺腫の既往がある人やTETに対するICIの使用はハイリスクであることが明らかになった。また、これまで加齢に伴って生じる胸腺の生物学的および形態学的な変化や成人の免疫系における胸腺の役割に関して、あまり注目がされてこなかった。しかし、この論文においてCTによる胸腺の形態学的特徴がICI心筋炎の予測マーカーとなる可能性が示されたことは、今後がん免疫療法がますます発展していく中で、大きな発見であると考える。1)Yousif LI, et al. Curr Oncol Rep. 2023;25:753–763.2)Fenioux C, et al. Nat Med. 2023;29:3100–3110.3)Lv H, et al. J Clin Invest. 2011;121:1561–1573.4)Tajiri K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2018;48:7–12. 5)Won T, et al. Cell Rep. 2022;41:111611.6)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818–826.講師紹介

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転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル追加データ(JCOG1611、GENERATE)/日本臨床腫瘍学会

 膵がん1次治療の最適レジメンを検討する国内第II/III相JCOG1611試験1)。2023年10月に欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で中間解析結果が発表されたが、2024年2月22~24日に開催された第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)では、本試験の追加データについてがん研有明病院 肝胆膵内科の尾阪 将人氏が発表した。<JCOG1611試験の概要>・対象:切除不能転移膵がん、PS0~1・試験群:【GnP群】nab-パクリタキセル+ゲムシタビン【mFOLFIRINOX群】オキサリプラチン、イリノテカン、l-ロイコボリン、フルオロウラシル【S-IROX群】オキサリプラチン、イリノテカン、S-1 ・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性 すでに発表されている発表されている結果は下記のとおり。・国内45施設から527例がGnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。・OS中央値はGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(ハザード比[HR]:1.31、95%信頼区間[CI]:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)だった。・PFS中央値はGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)だった。 mFOLFIRINOX群、S-IROX群がGnP群を上回る可能性が1%未満となったため、本試験は中止となっている。 今回発表された追加データは下記のとおり。・病状進行し、2次治療に進んだのはGnP群で59.7%、mFOLFIRINOX群で63.4%、S-IROX 群で62.5%、2次治療のほぼすべてが化学療法だった。・増悪後生存期間(Postprogression survival)中央値は、GnP群で7.0ヵ月、mFOLFIRINOX群で5.5ヵ月、S-IROX群で5.6ヵ月だった。・プラチナ製剤が奏効しやすいとされるBRCA1/2遺伝子変異陽性例を層別化したデータが発表された。BRCA陽性はGnP群で9例、mFOLFIRINOX群で7例、S-IROX群で7例だった。陽性例のOSは3群すべてで全体集団よりも長く、GnP群25.9ヵ月、mFOLFIRINOX群18.6ヵ月、S-IROX群33.2ヵ月だった。 発表後のディスカッションのテーマは、同じく転移膵がん1次治療として、GnPとNALIRIFOX(ナノリポソーム型イリノテカン、5FU、ロイコボリン、オキサリプラチン)を比較し、NALIRIFOXが有意なOSの改善を示す結果となったNAPOLI‐3試験2)と本試験の結果をどう解釈するのかが中心となった。 尾阪氏は「JCOG1611はもともとGnPに対するmFOLFIRINOXとS-IROXの優越性を検証するためにデザインされた試験であり、GnPが有意差をもってmFOLFIRINOX群を上回る今回の結果にはわれわれも驚いている。NALIRIFOXレジメンは今後日本でも承認が見込まれているが、GnPとNALIRIFOXを比較した日本人のデータはまだなく、どちらを優先して使うかは今後の重要な臨床課題となるだろう」とした。

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複雑性尿路感染症、CFPM/taniborbactam配合剤が有効/NEJM

 急性腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症(UTI)の治療において、セフェピム/taniborbactamはメロペネムに対する優越性が認められ、安全性プロファイルはメロペネムと同様であることが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian M. Wagenlehner氏らが15ヵ国68施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「Cefepime Rescue with Taniborbactam in Complicated UTI:CERTAIN-1試験」の結果、明らかとなった。カルバペネム耐性腸内細菌目細菌や多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、世界的な健康上への脅威となっている。セフェピム/taniborbactam(CFPM/enmetazobactam)は、β-ラクタムおよびβ-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤で、セリンβ-ラクタマーゼおよびメタロβ-ラクタマーゼを発現する腸内細菌目細菌、および緑膿菌に対して活性を発揮することが示されていた。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。セフェピム/taniborbactamの有効性と安全性をメロペネムと比較 研究グループは、複雑性UTIまたは急性腎盂腎炎と診断された18歳以上の入院患者を、セフェピム/taniborbactam(2.5g:セフェピム2g、taniborbactam0.5g)群またはメロペネム(1g)群に、2対1の割合に無作為に割り付け、8時間ごとに7日間静脈内投与した。菌血症を有する患者には、投与期間を最大14日間まで延長可とした。 主要アウトカムは、微生物学的ITT(microITT)集団(両治験薬が有効である、特定のグラム陰性菌を有する患者)における投与(試験)開始後19~23日目の微生物学的成功および臨床的成功の複合であった。複合成功率の群間差の95%信頼区間(CI)の下限値-15%を非劣性マージンとし、非劣性が認められた場合に優越性を評価することが事前に規定された。有効性はメロペネムより優れ、安全性は類似 2019年8月~2021年12月に661例が無作為化され、このうち436例(66.0%)がmicroITT集団であった。microITT集団の平均年齢は56.2歳で、65歳以上が38.1%、複雑性UTI 57.8%、急性腎盂腎炎42.2%、ベースラインで菌血症を有した患者13.1%であった。 複合成功は、セフェピム/taniborbactam群で293例中207例(70.6%)、メロペネム群で143例中83例(58.0%)に認められた。複合成功率の群間差は12.6ポイント(95%CI:3.1~22.2、p=0.009)であり、セフェピム/taniborbactamのメロペネムに対する優越性が示された。 複合成功の差異は、後期追跡調査(試験開始後28~35日目)においても持続しており、セフェピム/taniborbactam群のほうが複合成功率および臨床的成功率が高かった。 安全性解析対象集団(657例)において、有害事象はセフェピム/taniborbactam群で35.5%、メロペネム群で29.0%に認められ、主な事象は頭痛、下痢、便秘、高血圧、悪心であった。重篤な有害事象の発現率は両群で同程度であった(それぞれ2.0%、1.8%)。

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乳がん周術期ICI治療、最新情報を総括/日本臨床腫瘍学会

 近年、いくつかのがん種で免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用した周術期治療が開発されている。乳がん領域では2022年9月、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するペムブロリズマブの術前・術後治療が承認されており、他のICIを用いた試験も実施されている。さらにHR+/HER2-乳がんに対する試験も進行中である。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「ICIで変わる、周術期治療」で、乳がんの周術期ICI治療の試験成績や進行中の試験などの最新情報を、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が紹介した。乳がん周術期ICI治療で現在承認されているのはペムブロリズマブのみ 近年、切除可能TNBCに対する治療は、術前化学療法を実施し、術後に病理学的に残存病変がある場合はカペシタビンとオラパリブ(BRCA変異がある場合)を投与することが標準治療となっている。そのような中、2022年9月、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せし術後にペムブロリズマブを投与する治療が、国際共同第III相KEYNOTE-522試験の結果を基に承認され、現在の標準治療となっている。KEYNOTE-522試験では、病理学的完全奏効(pCR)率、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善し、Stage、PD-L1発現、pCR/non-pCRにかかわらず有効であったことが示されている。一方、non-pCR症例では予後不良であったことから、新たな治療戦略が検討されている(後述)。 KEYNOTE-522試験については、ペムブロリズマブ群における5年EFS割合の改善が9%であることと、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)発現割合(術前薬物療法期)が13.0%ということが釣り合うのか、という議論がしばしば行われるが、尾崎氏は、TNBCの再発後の予後が約2年ということを考慮すると釣り合う、との理解だ。本試験では、ペムブロリズマブ群で薬物療法中止例が1割程度増えるが、手術実施割合の低下は1%未満である。これはirAEをしっかり管理することでほとんどの症例で手術可能であることを示しており、リスクベネフィットバランスを議論するうえで非常に重要なデータと考える、と尾崎氏は述べた。pCR症例の術後ペムブロリズマブは省略可能か?non-pCR症例の術後治療は? KEYNOTE-522試験では、術前化学療法+ペムブロリズマブでpCRが得られた症例は予後良好であることから、術後のペムブロリズマブは省略可能ではないかと考える医師が多い。この疑問を解決するために、現在、pCR症例にペムブロリズマブの投与と経過観察を比較するOptimICE-pCR試験が進行中である。 一方、non-pCR症例に対しては、ペムブロリズマブ単独で十分であると考える医師は少なく、従来使用されてきたカペシタビンやオラパリブ(BRCA変異がある場合)を逐次投与するという施設も増えているという。さらに、より有効な術後治療が検討されており、sacituzumab govitecan+ペムブロリズマブの効果を検討するASCENT-05/OptimICE-RD試験、datopotamab deruxtecan+デュルバルマブの効果を検討するTROPION-Breast03試験が進行中である。 また、ペムブロリズマブによる術前・術後治療後に再発した症例に対しては、西日本がん研究機構(WJOG)においてペムブロリズマブ+パクリタキセル+ベバシズマブの効果を検討するPRELUDE試験が計画中という。予後不良症例に対する新規治療戦略や、他のICIを用いた開発が進行中 TNBCの周術期ICI治療に現在承認されているのはペムブロリズマブのみだが、他の薬剤の試験も実施されている。 アテゾリズマブについては、術前・術後に投与したIMpassion031試験において、pCRの改善は認められたが、EFSは改善傾向がみられたものの統計学的に有意な改善が認められなかった。しかしながら、対照群がKEYNOTE-522試験と同様のGeparDouze/NSABP-B59試験が進行中であり、結果が注目される。 術前・術後の両方ではなく、どちらかのみICIを投与するレジメンも検討されている。術前のみの投与については、アテゾリズマブを用いたneoTRIP試験はnegativeだったが、デュルバルマブを用いたGeparNeuvo試験(第II相試験)において、pCRでは差がなかったもののEFSの改善が認められている。術後のみの投与については、アテゾリズマブを用いたAlexandra/IMpassion030試験ではEFSの改善が認められておらず、ペムブロリズマブを用いたSWOG1418/BR006試験は現在進行中である。尾崎氏は、これまでの成績からは術前・術後とも投与することが重要ではないかと考察している。HR+/HER2-乳がんに対する周術期ICI治療の開発 TNBCだけではなく、現在、他のサブタイプに対しても周術期ICI治療の開発試験が行われている。高リスクのHR+/HER2-乳がんに対して術前化学療法および術後内分泌療法へのICIの上乗せ効果を検討する試験として、ペムブロリズマブのKEYNOTE-756試験とニボルマブのCheckMate 7FL試験が進行中だが、どちらも有意なpCR率の改善が示されており、EFSの結果が期待される。 尾崎氏は、これらの開発状況を踏まえ、「乳がん領域においても、今後さらに周術期ICI治療が増えてくる」と期待を示し、講演を終えた。

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高齢統合失調症患者の死亡率、その原因と他の精神疾患との比較

 統合失調症でみられる超過死亡は、その後の生活においても影響を及ぼす可能性がある。高齢統合失調症患者でみられる死亡率増加の具体的な原因、および向精神薬の潜在的な影響については、これまで十分にわかっていない。フランス・Corentin-Celton HospitalのNicolas Hoertel氏らは、高齢統合失調症患者の5年死亡率とその原因を調査し、双極性障害やうつ病との比較を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2024年1月31日号の報告。 高齢者の統合失調症、双極性障害、うつ病の入院および外来患者564例(平均年齢:67.9±7.2歳)を対象に、5年間のプロスペクティブコホート研究を実施した。1次分析では、社会人口学的要因、罹病期間と重症度、精神疾患と非精神疾患の併存などの交絡因子の影響を軽減するため、逆確率重み付け(IPW)多変量ロジスティックモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・死亡原因は、心血管疾患(CVD)、感染症などのCVD以外の疾患関連死、自殺、不慮の事故であった。・5年死亡率は、高齢統合失調症患者で29.4%(89例)、双極性障害またはうつ病の高齢者で18.4%(45例)であった。・調整後、統合失調症患者は、双極性障害またはうつ病患者と比較し、すべての原因による死亡率およびCVDによる死亡率の増加と有意な関連が認められた。【すべての原因による死亡】調整オッズ比(aOR):1.35(95%信頼区間[CI]:1.04~1.76)、p=0.024【CVDによる死亡】aOR:1.50(95%CI:1.13~1.99)、p=0.005・これらの関連性は、抗うつ薬を服用している患者において有意な減少が認められた。【抗うつ薬服用患者のすべての原因による死亡】相互作用オッズ比(IOR):0.42(95%CI:0.22~0.79)、p=0.008【抗うつ薬服用患者のCVDによる死亡】IOR:0.39(95%CI:0.16~0.94)、p=0.035 著者らは「高齢統合失調症患者は双極性障害またはうつ病患者と比較し、死亡率が高く、超過死亡の多くはCVDに関連していることが示唆された」とし、本分析において「抗うつ薬の使用は、すべての原因による死亡やCVDによる死亡の有意な減少と関連していたが、他の向精神薬では超過死亡に対し影響を及ぼさない」ことを報告した。

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