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ulipristal acetate、無防備な性交後の緊急避妊に高い効果

ulipristal acetateは不用意な性交後の緊急避妊薬として5日間まで有効であり、その効果はレボノルゲストレル(商品名:Norlevo)よりも優れることが、イギリス・ロジアン国民保険サービス(NHS)のAnna F Glasier氏らが実施した無作為化試験とメタ解析で示された。現在、緊急避妊薬は世界140ヵ国以上で用いられ、そのうち約50ヵ国では医師の処方箋なしで使用可能であり、先進国のほとんどで認知されているという。現在の標準薬であるレボノルゲストレルは性交後72時間以内に投与する必要があり、時間の経過とともに効果が減弱し、排卵前でなければ十分な効果は期待できないため、より有効な薬剤の開発が望まれていた。Lancet誌2010年2月13日号(オンライン版2010年1月29日号)掲載の報告。緊急避妊薬投与後の妊娠率を評価する非劣性試験研究グループは、緊急避妊薬としてのulipristal acetateの効果と安全性をレボノルゲストレルと比較する多施設共同無作為化非劣性試験を行った。イギリス、アイルランド、アメリカの35の家族計画クリニックに、無防備な性交後5日以内の月経周期が正常な女性2,221人が登録され、ulipristal acetate 30mgを経口投与する群(1,104人)あるいはレボノルゲストレル1.5mgを経口投与する群(1,117人)に無作為に割り付けられた。被験者には割り付け情報は知らされなかったが、医師にはマスクされなかった。予測される次回月経日後5~7日間までフォローアップを行った。主要評価項目は、無防備な性交後72時間以内に緊急避妊薬の投与を受けた女性の妊娠率とした。メタ解析で、妊娠率が有意に32%低減有効性の評価は1,696人(ulipristal acetate群844人、レボノルゲストレル群852人)で可能であった。妊娠率は、レボノルゲストレル群の2.6%(22/852人)に比べ、ulipristal acetate群は1.8%(15/844人)と32%低減した(オッズ比:0.68)。性交後72~120時間に緊急避妊薬の投与を受けた203人のうち3人が妊娠したが、いずれもレボノルゲストレル群の女性であった。最も高頻度にみられた有害事象は頭痛であった(ulipristal acetate群19.3%、レボノルゲストレル群18.9%)。薬剤に起因する可能性がある重篤な有害事象として、ulipristal acetate群でめまいが1人に、レボノルゲストレル群では奇胎妊娠が1人に認められた。メタ解析(性交後72時間以内)を行ったところ、妊娠率はレボノルゲストレル群の2.2%(35/1,625人)に対し、ulipristal acetate群は1.4%(22/1,617人)と有意に避妊効果が高かった(オッズ比:0.58、p=0.046)。著者は、「ulipristal acetateは不用意な性交後5日まで使用可能であり、女性や医療者にとって有効な緊急避妊薬の選択肢である」と結論し、「ulipristal acetateは安全性のデータが十分に集積されるまでは容易に入手できないため、性交後72時間以上が経過した妊娠リスクの高い女性に限定して使用される可能性がある。しかし、72時間以内の場合にレボノルゲストレルなどの薬剤を用いれば、多くの女性は自分の月経周期を明確に把握していないため避妊できず混乱が起きる可能性がある。課題は残るものの、5日以内であればulipristal acetateを使用すべきと考えられる」と考察する。(菅野守:医学ライター)

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妊婦の年齢、拡張期血圧、喫煙などが、妊娠第一期の胎児の発育遅延に関連

妊婦の年齢や拡張期血圧、喫煙などが、妊娠第一期の胎児の発育遅延に関連していることが明らかにされた。同時期の胎児の発育遅延は、早産や低出生体重、2歳までの発育促進の遅滞などとも関連していたという。オランダ・エラスムス医療センターのDennis O. Mook-Kanamori氏らの研究グループ「Generation R Study Group」が、1,600人超の母親とその子供について調べたもので、JAMA誌2010年2月10日号で発表した。喫煙者・葉酸非摂取の妊婦と、非喫煙者・葉酸摂取では胎児頭臀長の差は3.84mm研究グループは、オランダ・ロッテルダムを起点に被験者を登録した前向きコホート試験を行った。試験には、2001~2005年にかけて、妊娠期間が明確な1,631人の妊婦が登録され、妊娠10週0日目と13週6日目に、それぞれ超音波検査で胎児頭臀長の測定が行われた。その結果、妊婦の年齢が高い方が、妊娠第一期の胎児頭臀長が長く、1歳上がる毎に0.79mm増加した。また、拡張期血圧やヘマトクリット値が高いほど、胎児頭臀長は短かった(拡張期血圧は1標準偏差値増す毎に、-0.40mm、ヘマトクリット値は同-0.52mm)。妊婦が喫煙者で葉酸を摂取していない場合には、喫煙をせず適切な葉酸摂取をしていた妊婦と比べ、同期の胎児頭臀長は3.84mm短かった。妊娠第一期に発育遅延があると、早産リスクは2.1倍、低出生時体重リスクは2.4倍に妊娠第一期に胎児の発育が正常だった群と発育遅延がみられた群では、妊娠期間37週未満での早産の発生率はそれぞれ4.0%と7.2%(補正後オッズ比:2.12、95%信頼区間:1.24~3.61)、出生時体重が2,500g未満だった割合は3.5%と7.5%(同:2.42、1.41~4.16)、妊娠期間に比べ小さく生まれた割合は4.0%と10.6%(同:2.64、1.64~4.25)と、いずれも有意差があった。また、妊娠第一期の胎児頭臀長が短いほど、生後2年までの発育促進がみられた(標準偏差スコア2歳につき0.139増大)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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社会経済的格差が、国民のがん治療格差をもたらしている:英国

英国で2000年に公表された「NHS Cancer Plan」は、英国社会全体の、がん治療アウトカムの向上と健康格差を是正するため、医療サービスへのアクセスの平等を図ることを目的に作成されたものである。ロンドン大学校疫学・公衆衛生部門のRosalind Raine氏らのグループは、その導入効果を評価するため、がん患者の救急入院と選択的入院、大腸がん、乳がん、肺がんの外科手術の種類が、社会経済的要因、年齢、性別、入院年によってどのように変動したかを調査した。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月14日号)より。衰退が進む地域の女性、高齢者ほどがん救急入院率が高い研究グループは、1999年4月1日から2006年3月31日までの病院症例統計(HES)の患者個人データを基に、反復横断研究を行った。症例対象は大腸がん、乳がん、肺がんの診断で入院治療を受けた50歳以上の患者56万4,821例。主要評価項目は、救急入院した患者の比率と、推奨手術治療を受けた患者の割合とした。結果、がん救急入院率が、社会経済的に衰退傾向が進む地域の住民、女性、高齢者で高い傾向にあることが明らかになった。たとえば乳がんに関する救急入院率は、地域衰退指数(Index of Multiple Deprivation、5段階評価)が最低の地域(衰退が進んでいない地域)と最高地域(衰退が進む地域)との補正オッズ比が、0.63(95%信頼区間:0.60~0.66)だった。また肺がんに関する救急入院率で、50~59歳群と比べて80~89歳群の補正オッズ比は3.13(同:2.93~3.34)に上った。この年齢層による差異は、年々改善している傾向はみられたが、衰退が進む地域の患者については、改善傾向はみられなかった。衰退が進む地域の患者ほど、がん推奨手術を受けていないさらに、衰退指数が高い地域の患者ほど、大腸がん、乳がん、肺がんで推奨される手術を受けていないことが認められた。またその傾向が、改善してきている傾向は認められなかった。たとえば、大腸がんで前方切除術を受けていた割合は、衰退指数が最低地域では75.5%(4,497/5,959例)だったのに対し、最高地域では67.4%(3,529/5,237例)で、オッズ比1.34(95%信頼区間:1.22~1.47)の差があった。乳がんで乳房温存手術を受けていた割合は、衰退指数が最低地域では63.7%(18,445/28,960例)だったのに対し、最高地域では54.0%(11,256/20,849例)で、オッズ比は1.21(同:1.16~1.26)だった。また男性は女性と比べて前方切除術や肺がん切除術を受けている割合が低く、高年齢層ほど乳房温存手術と肺がん切除を受けている割合が低かった。たとえば、肺がん切除の場合、50~59歳群と比べて80~89歳群の補正オッズ比は、0.52(95%CI 0.46~0.59)。これらから研究グループは、「NHS Cancer Plan実行にもかかわらず、国民の医療サービスへのアクセスおよびケア供給いずれにも、社会経済的要因がいまだに強い影響をおよぼしている」と報告をまとめている。

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利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

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多発性硬化症に対する経口fingolimod、2年間の有効性確認

多発性硬化症の治療薬として開発中の、経口fingolimod(FTY720、フィンゴリモド;スフィンゴシン1リン酸受容体調節薬)は、リンパ節からのリンパ球放出を抑制する作用が特徴の免疫抑制薬である。これまで第II相、第III相(12ヵ月間)臨床試験の結果、プラセボまたはインターフェロンβ-1a筋注と比べて、多発性硬化症の再発率およびMRI評価のエンドポイントを有意に改善することが明らかになった。本稿は、スイス・バーゼル大学病院Ludwig Kappos氏らFREEDOMS治験グループによる、24ヵ月間の第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験の報告で、NEJM誌2010年2月4日号(オンライン版2010年1月20日号)に掲載された。再発寛解型多発性硬化症患者1,033例を対象に治験グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが0~5.5で、過去1年間に1回以上の再発または過去2年間に2回以上再発したことがある18~55歳の再発寛解型多発性硬化症患者1,272例を登録、24ヵ月間にわたって二重盲検無作為化試験を行った。被験者は経口fingolimodまたはプラセボを1日1回、0.5mgまたは1.25mg投与された。エンドポイントは、年間の再発率(主要エンドポイント)と障害進行までの期間(副次エンドポイント)とした。被験者のうち試験を完了したのは、計1,033例(81.2%)だった。0.5mg、1.25mg用量とも24ヵ月間の再発率、障害進行リスクを有意に低下主要エンドポイントの年間再発率は、fingolimod 0.5mg投与群が0.18、fingolimod 1.25mg投与群が0.16に対し、プラセボ投与群は0.40だった(投与群対プラセボはいずれもP

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多発性硬化症に対する経口クラドリビン、2年間の有効性確認

日本では白血病の抗がん剤としてのみ承認されている免疫抑制薬クラドリビン(商品名:ロイスタチン)は、リンパ球サブタイプを選択的に標的とする特徴を有する。ロンドン大学クイーンズ・メアリー校のGavin Giovannoni氏ら「CLARITY」研究グループは、再発寛解型多発性硬化症患者への有効性を評価する、第III相試験である短期コース経口療法の96週間(24ヵ月間)の結果を報告した。NEJM誌2010年2月4日号より。再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に研究グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが5.5以下で、過去1年間に1回以上の再発を経験した再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に無作為化試験を行った。被験者は、経口クラドリビンを累積投与量で3.5mg/kg体重投与される群、同5.25mg/kg体重投与される群、またはプラセボを投与される群に1:1:1となるよう割り付けられた。試験期間96週のうち、最初の48週での投薬は4コース(クラドリビン3.5mg/kg群は2コース+プラセボ2コース)行われた(投薬日数計8~20日間/年)。その後の48週以降に2コース(48週時点と52週時点)投与が各群に行われた(プラセボ群にはプラセボ投与、他の2群にはクラドリビン投与)。主要エンドポイントは、96週時点での再発率とした。試験を完了したのは1,184例(89.3%)、解析はintention-to-treatにて行われた。3.5mg群、5.25mg群とも再発率・障害進行とも有意に低下、ただし有害事象も高頻度クラドリビン投与群はいずれの用量群も、年間再発率がプラセボ群より有意に低下した。それぞれ3.5mg群0.14、5.25mg群0.15、プラセボ群0.33だった(両比較ともP

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肺がん診断後の禁煙により予後が改善

早期肺がんの診断後に禁煙を開始すると、喫煙を継続した場合に比べ65歳以上の患者の予後が改善することが、イギリス・バーミンガム大学タバココントロール研究センターのA Parsons氏らによる系統的なレビューで示された。喫煙は原発性肺がん発症のリスク因子であり、生涯喫煙者は生涯非喫煙者の20倍のリスクを有するとされる。一方、肺がんと診断されたのちの禁煙が予後に及ぼす影響については明らかにされていなかった。BMJ誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月21日号)掲載の報告。肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響を評価した試験を系統的にレビュー研究グループは、原発性肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響のエビデンスについて系統的レビューを行った。データベース(CINAHL、Embase、Medline、Web of Science、CENTRAL)を用い、発症時の病期や腫瘍の組織像にかかわらず、肺がん診断後の禁煙が予後に及ぼす影響を評価した無作為化対照比較試験および縦断的観察研究を抽出し、各論文に掲載された文献リストの論文にもあたった。2名の研究者が別個に個々の論文をレビューし、適格基準を満たす試験を選択した。変量効果モデルを用いて各試験のデータを統合し、不均質性の評価にはI2 statisticを使用した。このレビューで得られた診断後の喫煙継続者と禁煙者の死亡率に基づいて生命表をモデル化した。これを用いて早期非小細胞肺がんおよび限局型小細胞肺がんの5年生存率を推算した。非小細胞肺がん、限局型小細胞肺がんとも、5年生存率が2倍以上に解析の対象となった10試験のうち9試験では、ほとんどの患者が早期肺がんと診断されていた。早期非小細胞肺がんでは、診断後も喫煙を継続した患者の全死亡率は禁煙した場合の約3倍であり(ハザード比:2.94)、再発率は約2倍(同:1.86)に達した。限局型小細胞肺がんでは、全死亡率が約2倍(ハザード比:1.86)、2次原発がんの発現率が4倍以上(同:4.31)、再発率が約1.3倍(同:1.26)であった。非小細胞肺がんにおいて、禁煙ががん特異的死亡率や2次原発がんの発現に及ぼす影響を解析した試験はなかった。得られたデータに基づいてモデル化した生命表では、65歳以上の非小細胞肺がんの場合、喫煙を継続した患者の5年生存率が33%であったのに対し、禁煙した患者では70%に達した。限局型小細胞肺がんの5年生存率は、喫煙者の29%に対し禁煙者は63%であった。著者は、「早期肺がんの診断後の禁煙は予後を改善することが示唆された」と結論し、「生命表では、禁煙の肺がん抑制効果によって防止された死亡の予測値が、禁煙の心呼吸器疾患の抑制効果で防止された死亡の数よりも大きかったことから、禁煙のベネフィットは主にがんの進行の抑制によるものと考えられる。早期肺がんが見つかった場合は禁煙を勧めるべきであろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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双極性障害の再発予防、リチウム+バルプロ酸の併用が有効:BALANCE試験

長期的な治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウム(商品名:リーマスなど)とバルプロ酸(同:デパケンなど)の併用がバルプロ酸単剤よりも有効なことが、イギリス・オックスフォード大学精神科のJohn R Geddes氏らが行った無作為化試験(BALANCE試験)で示された。双極性障害は寛解が得られても多くが再発、慢性化し、世界的に15~44歳の障害の原因として最も重要な疾患の一つとされる。炭酸リチウムとバルプロ酸セミナトリウムはいずれも単剤で双極性障害の再発予防薬として推奨されているが、十分な効果が得られない患者も多い。再発例には、エビデンスがほとんどないにもかかわらず両薬剤の併用療法が推奨されているのが現状だという。Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2009年12月23日号)掲載の報告。単剤と併用を比較するオープンラベル無作為化試験BALANCE試験の研究グループは、リチウムとバルプロ酸の併用療法がそれぞれの単剤療法よりも双極性I型障害の再発予防に有効か否かを検討する、オープンラベル無作為化試験を実施した。イギリス、フランス、アメリカ、イタリアの41施設から16歳以上の双極性I型障害患者330例が登録され、リチウム単剤群(血漿濃度0.4~1.0mmol/L、110例)、バルプロ酸単剤群(同750~1,250mg、110例)、両薬剤併用群(110例)に無作為に割り付けられた。患者と医師には治療割り付け情報が伝えられたが、予後イベントの評価を行う試験管理チームには知らされなかった。最長で24ヵ月間のフォローアップが行われた。主要評価項目は「緊急の気分障害エピソードに対する新たな介入の開始」とし、intention-to-treat解析を行った。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない緊急の気分障害エピソードで介入を受けた患者は、併用群が54%(59/110例)、リチウム単剤群が59%(65/110例)、バルプロ酸単剤群は69%(76/110例)であった。併用群は、バルプロ酸単剤群よりもエピソードに対する介入が有意に低減した(ハザード比:0.59、p=0.0023)が、リチウム単剤群との比較では有意な差は認めなかった(ハザード比:0.82、p=0.27)。リチウム単剤群はバルプロ酸単剤群よりも介入の低減効果が高かった(ハザード比:0.71、p=0.0472)。16例に重篤な有害事象がみられた。そのうち7例がバルプロ酸単剤群で、3例が死亡した。5例がリチウム単剤群で2例が死亡、4例は併用群で死亡は1例であった。著者は、「臨床的に長期の治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウムとバルプロ酸の併用あるいはリチウム単剤がバルプロ酸単剤よりも有効なことが示唆される。このベネフィットは、試験開始時の重症度とは関連せずに認められ、2年間持続した。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない」と結論している。さらに、「アメリカやイギリスの双極性障害治療ガイドラインでは、長期的治療の1次治療としてバルプロ酸単剤を推奨しているが、リチウムとの併用あるいはリチウム単剤を考慮すべきである。また、リチウム単剤療法中に再発を繰り返す患者にはバルプロ酸単剤への切り替えが推奨されているが、この場合は併用療法がより有効であろう」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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ロタウイルスワクチンの接種効果:アフリカからの報告

ロタウイルスは、世界的に乳幼児における重症胃腸炎の最も頻度が高い原因として知られる。世界保健機構(WHO)によれば、ロタウイルス感染による年間の小児死亡例は推定52万7,000例で、そのうち23万例以上は、サハラ以南のアフリカで起きているという。南アフリカのWitwatersrand大学疾病ワクチン予防研究部門のShabir A. Madhi氏らは、アフリカの1歳未満児におけるロタウイルスワクチンの有効性に関する臨床試験を実施。その結果、1歳未満での重症ロタウイルス胃腸炎発生の有意な低下が確認できたと報告した。同地域は貧困が深刻で医療資源が限られており、ワクチン接種による重症化予防が期待されている。NEJM誌2010年1月28日号より。乳児約5,000例を、3回or2回接種群、プラセボ群に無作為化し追跡Madhi氏らは、南アフリカ共和国とマラウイ共和国両国の複数施設から健康な乳児を登録し、重症ロタウイルス胃腸炎予防に関する、経口ロタウイルス生ワクチンの有効性を評価する無作為化プラセボ対照試験を行った。試験に登録された乳児は、南アフリカから3,166児(全体の64.1%)、マラウイから1,773児(同:35.9%)の計4,939児で、1:1:1の比率で無作為に、ワクチン2回投与群(プラセボ投与1回を含む3回投与群も含む、1,647例)、ワクチン3回投与群(1,651例)、プラセボ3回投与群(1,641例)に割り付けられ追跡された。ワクチン接種は、生後6週目、10週目、14週間目に行われた。積極的な追跡サーベイランスで、1歳未満に起きた野生型ロタウイルスによる胃腸炎症状エピソードの評価を行い、Vesikariスケールで類型化した。重症ロタウイルス胃腸炎に対するワクチン有効性は61.2%有効性解析に含まれたのは4,417児。そのうち重症ロタウイルス胃腸炎の発生は、プラセボ群で4.9%、ワクチン接種群は1.9%で、ワクチンの有効性は61.2%(95%信頼区間:44.0~73.2)だった。ワクチン有効性は、マラウイ(49.4%)の方が、南アフリカ(76.9%)より低かった。しかし重症ロタウイルス胃腸炎が予防された症例数は、マラウイ(6.7例/ワクチン接種100児年)の方が、南アフリカ(4.2例/ワクチン接種100児・年)より多かった。原因を問わない重症胃腸炎に対するワクチン有効性は、30.2%だった。一つ以上の重篤な有害事象は、ワクチン接種群は9.7%、プラセボ群では11.5%報告された。(医療ライター:朝田哲明)

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ロタウイルスワクチンの接種効果:米国SCID乳児でウイルス感染例が報告

米国で、経口5価ロタウイルス生ワクチン(RV5)の接種を受けた、重症複合型免疫不全症(SCID)の乳児3児が、同ウイルスに感染したことが報告された。いずれの乳児も、同ワクチンの初回または2回目の接種後1ヵ月以内に、脱水症状や下痢を起こし、その後、SCIDであることが判明したケースだという。米国Baylor大学のNiraj C. Patel氏らの症例報告によるもので、NEJM誌2010年1月28日号で発表された。米国では2006年にRV5が承認を受け、その後、乳児へのルーチン摂取が行われるようになっている。脱水や重度下痢、成長障害など引き起こすPatel氏らの報告によると、1児は、生後2ヵ月と4ヵ月に、RV5の接種を受けたケース。その後、生後5ヵ月の時、脱水、重度の下痢、代謝性アシドーシス、成長障害、肺炎で入院した。2児目は、生後2ヵ月と4ヵ月でRV5を接種し、2回目を受けた6日後、ショック症状、脱水、水溶状の下痢を起こしたケース。3児目は、生後2ヵ月でRV5を接種後、重度の下痢、成長障害、呼吸促迫を起こしたケースだった。なおいずれの乳児も、集団保育は受けていなかった。RV5投与前にSCID検査の実施が望ましい3児の便について、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)定量法と遺伝子配列分析を行った結果、RV5ワクチンに含まれるウシロタウイルス(WC3)が検出された。RV5は親株となるWC3と4種のヒトロタウイルスを合わせ、弱毒化したもの。これまでに、WC3様のウシロタウイルスの、ヒトへの感染例は報告されていなかった。この結果を受け、Patel氏らは、SCIDの家族歴がない乳児に対し、SCIDの有無を事前に見極めずにRV5ワクチンを接種することは「あり得るかもしれない」とした上で、新生児に対して行う血液検査の中で、SCIDの有無を見極めることで、医師による乳児に対するワクチン投与の、より効果的な選択を可能にし、ワクチン投与に伴う病気の発症予防にもつながると述べている。米国では、新生児に対し、より頻度の高い遺伝性疾患に関する血液検査を行っており、その際、SCIDの有無を検査している州もあるという。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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0.5Gy以上の被曝で心疾患、脳卒中のリスクが増大、広島・長崎の被爆者調査から判明

放射線被曝線量が0.5Gyを超えると、心疾患や脳卒中のリスクが増大することが、放射線影響研究所(広島市)疫学部のYukiko Shimizu氏らが広島・長崎の被爆者を対象に行ったコホート研究で明らかとなった。ホジキン病や乳がんに対する放射線治療の際に心臓や頭頸部に高線量が照射されると、心疾患や脳卒中による死亡が増加することが知られているが、中~低線量でもこれらの疾患のリスクが増大するか否かは不明であったという。頭部や胸部のCT検査および放射線照射によるインターベンション治療が急速に増加している現在、1Gy未満の線量が循環器疾患に及ぼす影響を明らかにすることは重要な課題とされている。BMJ誌2010年1月23日号(オンライン版2010年1月14日号)掲載の報告。被爆者の53年の長期フォローアップデータを用いた前向きコホート研究研究グループは、電離放射線への曝露量がどの程度になると心疾患や脳卒中による死亡リスクが増大するかを検討するために、広島および長崎の原爆被害者の53年(1950~2003年)にわたるフォローアップデータを用いたプロスペクティブなコホート研究を行った。寿命調査(Life Span Study;LSS)の登録者のうち、原爆投下により0~3Gy以上の放射線に被曝したと推測される86,611人(86%が0.2Gy未満)が解析の対象となった。心疾患および脳卒中による死亡率を調査し、原爆放射線による被曝線量反応関係を評価した。0.5Gy以上で脳卒中、心疾患のリスクが上昇、0.5Gy未満では不明1950~2003年までに、約9,600人が脳卒中で死亡し、約8,400人が心疾患で死亡した。脳卒中については、線形線量反応モデルによる1Gy当たりの過剰相対リスク推定値(estimated excess relative risk)は9%(95%信頼区間:1~17%、p=0.02)と有意差が認められたが、上向き曲率(upward curvature)を指標としても低線量での相対リスクはほとんど示されなかった。心疾患に関する1Gy当たりの過剰相対リスク推定値は14%(95%信頼区間:6~23%、p<0.001)と有意差を認めた。線形モデルでは最適フィット(best fit)が得られ、低線量における過剰リスクが示唆された。しかし、0~0.5Gy以上の線量での線量反応効果は有意ではなかった。喫煙、アルコール摂取、教育、職業、肥満、糖尿病は、放射線被曝による脳卒中および心疾患のリスクにほとんど影響を及ぼさなかった。がんを誤診して循環器疾患とされた場合にも、リスクには影響しなかった。これらの知見を踏まえ、著者は「被曝線量が0.5Gy以上になると脳卒中および心疾患のリスクがともに上昇したが、0.5Gy未満の場合のリスクは不明であった」と結論し、「被爆者においては、脳卒中と心疾患を合わせた放射線関連死は、がんによる死亡の約3分の1と考えられる」と指摘している。(医学ライター:菅野守)

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ticagrelorは、急性冠症候群の予後をクロピドグレルに比べ有意に改善:PLATO試験

新たな経口P2Y12受容体阻害薬であるticagrelorは、侵襲的治療が適用とされる急性冠症候群(ACS)患者の抗血小板療法において、クロピドグレル(商品名:プラビックス)に比べ有意に予後を改善することが、米国Brigham and Women’s病院TIMI study groupのChristopher P Cannon氏らが実施したplatelet inhibition and patient outcomes(PLATO)試験で示された。クロピドグレルの抗血小板作用には個人差がみられ、不可逆的であるため、ACS患者における至適な用量や投与のタイミングについては議論がある。ticagrelorはクロピドグレルと同じP2Y12受容体阻害薬であるが、その作用は可逆的で、より強力かつ長期に持続するという。Lancet誌2010年1月23日号(オンライン版2010年1月14日号)掲載の報告。約13,000例を対象とした二重盲検ダブルダミー無作為化試験PLATO試験の研究グループは、入院後できるだけ早期に治療を開始する必要があるため侵襲的治療が計画されたACS患者を対象に、ticagrelorとクロピドグレルの予後改善効果および出血リスクを比較する二重盲検ダブルダミー無作為化試験を実施した。ST上昇あるいは非上昇ACSで入院中の患者18,624例が登録され、そのうち侵襲的治療が計画された13,408(72.0%)例が、ticagrelorとプラセボを投与する群(負荷用量180mg投与後、90mg×2回/日を投与)あるいはクロピドグレルとプラセボを投与する群(負荷用量あるいは維持用量として300~600mgを投与後、75mg/日を投与)に無作為に割り付けられ、6~12ヵ月の治療が行われた。全例にアスピリンが投与された。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を実施した。1,000例当たり年間11例の死亡、13例の心筋梗塞、6例のステント血栓症を防止ticagrelor群に6,732例が、クロピドグレル群には6,676例が割り付けられた。治療開始後360日における複合エンドポイントのイベント発生率は、ticagrelor群が9.0%とクロピドグレル群の10.7%に比べ有意に低かった(ハザード比:0.84、p=0.0025)。大出血の発生率は、ticagrelor群が11.5%、クロピドグレル群は11.6%と両群間に差を認めなかった(ハザード比:0.99、p=0.8803)。GUSTO(Global Use of Strategies To Open occluded coronary arteries)の出血基準に基づく重篤な出血についても、それぞれ2.9%、3.2%と同等であった(ハザード比:0.91、p=0.3785)。著者は、「薬物療法開始時に侵襲的治療が計画されているACS患者に対する抗血小板療法としては、ticagrelorがより有用な選択肢と考えられる」と結論している。これらの知見に基づいて推算すると、ticagrelorはクロピドグレルに比べ大出血や輸血の頻度を上昇させずに、年間にACS患者1,000例当たり11例の死亡を回避し、13例の心筋梗塞および6例のステント血栓症を防止するという。また、今回の結果は、「血小板P2Y12受容体の阻害を増強すれば、大出血を増加させずに死亡率を低減させることが可能との考え方を支持するもの」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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肺気腫と気道閉塞は、心機能と負の相関

肺気腫および気道閉塞がより重症であるほど、左室充満の障害が大きく、1回拍出量、心拍出量が減少するという負の相関が、一般住民ベースの研究によって確認された。その関連は、喫煙者ほど大きいことも判明したという。報告は米国コロンビア大学医学部のR. Graham Barr氏らによる。Barr氏らは、きわめて重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、肺血管抵抗が高まり肺性心を生じ、2次的に左室充満、1回拍出量、心拍出量が減少するが、重度の肺疾患を有していなくとも、肺気腫や気道閉塞と心機能とには負の相関があるのではないかと仮定し検討を行った。NEJM誌2010年1月21日号掲載より。45~84歳の2,816例を対象に評価Barr氏らは、45~84歳の2,816例を対象に評価を行った。左室構造と左室機能の評価はMRIを用いて行い、肺気腫の重症度(肺気腫率:%)は心臓CTによって定義(-910ハウンスフィールド単位未満のボクセルのパーセンテージの肺野条件)され、スパイロメトリー検査は、米国胸部疾患学会(ATS)ガイドラインに基づき行われた。そのうえで、一般化加法モデルを用いて、閾値効果の検討を行った。現喫煙者のほうが負の相関関係は強い被験者のうち、現喫煙者は13%、元喫煙者は38%、非喫煙者は49%だった。肺気腫の重症度の10ポイント上昇と、左心室拡張末期容積の減少(-4.1ml、95%信頼区間:-3.3~-4.9、P<0.001)、1回拍出量の減少(-2.7mL、同:-2.2~-3.3、P<0.001)、心拍出量の減少(-0.19L/分、同:-0.14~-0.23、P<0.001)とには直線的な関連がみられた。この関連は、現喫煙者が、元・非喫煙者に比べて強かった。気道閉塞の重症度は、左室構造と左室機能にも関連しており、喫煙状況による影響も同様にみられた。なお、肺気腫の重症度および気道閉塞の重症度と、左室駆出率との関連は認められなかった。(医療ライター:朝田哲明)

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高齢者へのイチョウ葉エキスの長期投与、認知能力低下の抑制効果みられず

高齢者に対し、イチョウ葉エキス(Ginkgo biloba)を長期に投与しても、認知能力低下の抑制効果はみられないことが報告された。イチョウ葉エキスについて、その長期的効果の有無を検討した大規模臨床試験は珍しいという。米国・ピッツバーグ大学神経内科のBeth E. Snitz氏らが、3,000人超の高齢者について行った、無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Ginkgo Evaluation of Memory」(GEM)の結果明らかにしたもので、JAMA誌2009年12月23/30日合併号で発表した。記憶力、注意力、空間視覚能力などの低下幅に有意差なしGEM試験は、2000~2008年にかけて米国の6つの大学病院で、72~96歳の高齢者3,069人を2群に分け、一方の群にはイチョウ葉エキス120mgを1日2回(1,545人)、もう一方の群にはプラセボを投与(1,524人)し追跡した。追跡期間中、改変ミニメンタルステート検査(3MSE)とアルツハイマー病評価尺度の認知度サブスケール(ADAS-Cog)検査、記憶力や注意力などに関する検査を定期的に行った。追跡期間の中央値は、6.1年だった。その結果、記憶力や注意力などに関するZスコアの年間低下幅は、投与群とプラセボ群で有意差がなかった。具体的には、投与群とプラセボ群のZスコア年間低下幅はそれぞれ、記憶力が0.043と0.041、注意力が0.043と0.048、空間視覚能力が0.107と0.118、言語力が0.045と0.041、実行機能が0.092と0.089だった。3MSEとADAS-Cogのスコア低下率、両群で差はみられず3MSEとADAS-Cogいずれのスコアは基線では差があったにもかかわらず、低下率は両群で有意差がなかった(3MSEについてのp=0.71、ADAS-Cogのp=0.97)。能力低下に対する治療効果には、年齢や性別、人種や教育レベル、APOE*E4対立遺伝子の有無や試験開始時の軽度認知障害の有無などで、有意差はなかった(p>0.05)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ビタミンD+カルシウム、高齢者の骨折予防に効果

高齢者の骨折予防におけるビタミンD単剤の用量は10~20μg/日では不十分であるが、カルシウムと併用すると大腿骨頸部骨折および全骨折が有意に抑制されることが、デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院のB. Abrahamsen氏らDIPART(vitamin D Individual Patient Analysis of Randomized Trials)の研究グループが実施したプール解析で明らかとなった。高齢者の骨折予防におけるビタミンDの使用については理論的な根拠が確立されているが、骨折予防に必要な用量は明確になっておらず、カルシウム併用の意義も不明であった。BMJ誌2010年1月16日号(オンライン版2010年1月12日号)掲載の報告。7つの無作為化試験からプールされたデータを用い、個々の患者レベルで解析DIPARTの研究グループは、全骨折、大腿骨頸部骨折、臨床的椎骨骨折に対するビタミンD単剤およびビタミンD+カルシウムの予防効果を、患者特性を踏まえて検討し、ビタミンDの用量およびカルシウム併用の意義について評価を行った。ビタミンD単剤あるいはビタミンD+カルシウムの骨折予防効果について検討した7つの主要な無作為化試験からプールされたデータを用いて、個々の患者レベルのデータ解析を行った。解析の対象となったのは合計68,517例で、平均年齢が69.9(47~107)歳、男性は14.7%であった。より高用量のビタミンD単剤の試験を行うべきビタミンD+カルシウムに関する試験では、全骨折のリスクが有意に低減した(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.86~0.99、p=0.025)。大腿骨頸部骨折のリスクについては、全試験の解析では有意な予防効果を認めなかったが(ハザード比:0.84、95%信頼区間:0.70~1.01、p=0.07)、ビタミンD用量10μg+カルシウムの試験では骨折リスクが有意に低減した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.005)。ビタミンD単剤を10μg/日あるいは20μg/日投与する試験の解析では、有意な骨折予防効果は認められなかった。骨折の既往歴と治療効果に関連は認めず、年齢、性別、ホルモン補充療法の既往歴も治療効果に影響を及ぼさなかった。著者は、「ビタミンD単剤10~20μg/日の投与に骨折予防効果はない。一方、ビタミンD+カルシウムの併用投与により、年齢、性別、骨折の既往歴にかかわらず、大腿骨頸部骨折および全骨折の頻度が低減し、おそらく椎骨骨折の予防効果もあると推察される」と結論し、「ビタミンDとの併用における骨折予防に必要なカルシウムの用量は1,000mg/日以上と考えられる。より高用量のビタミンD単剤の試験を行う必要がある」と指摘している。(医学ライター:菅野守)

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筋弛緩回復剤「ブリディオン」承認取得

シェリング・プラウ株式会社は20日、筋弛緩回復剤「ブリディオン静注200mg / 500mg(一般名:スガマデクスナトリウム)」の承認を同日付で取得したと発表した。ブリディオンは、旧シェリング・プラウ・コーポレーション(現:Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A)が創製した、新たな筋弛緩回復剤で、平成21年9月現在、世界35カ国以上において承認を取得している。同剤は、筋弛緩剤ロクロニウム/ベクロニウムを選択的に直接包接して筋弛緩作用を不活化する、世界初の筋弛緩回復剤(SRBA:selective relaxant binding agent)。このような作用機序を有する同剤は、自発呼吸の回復を待たずに、深い筋弛緩状態からも速やかに回復することが可能であり、コリン作動性神経系への影響もない薬剤とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.schering-plough.co.jp/press/index.html

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5-HT3受容体拮抗型制吐剤「アロキシ」製造販売承認取得

大鵬薬品工業株式会社は20日、5-HT3(セロトニン)受容体拮抗型制吐剤 「アロキシ静注0.75mg」(一般名:パロノセトロン塩酸塩)の製造販売承認を取得したと発表した。アロキシは2004年1月の大鵬薬品とスイスのヘルシン社(HELSINN HEALTHCARE SA)とのライセンス契約に基づき、同社が国内開発した薬剤。海外においては、2003年7月に米国、2005年3月に欧州で承認され、2009年 12月現在、世界62ヵ国で承認されている。アロキシは、がん化学療法(シスプラチン等)実施前の1回投与で、急性悪心、嘔吐のみならず、現行の治療薬では効果の不十分であった遅発性悪心、嘔吐にも有効性が確認されている。同剤は、血中消失半減期が約40時間と非常に長く、5-HT3受容体に対して高い結合親和性と選択性を有している。また、 NCCNの「制吐療法ガイドライン」で、高度催吐性化学療法に伴う悪心、嘔吐の予防に用いる薬剤として推奨されているという。詳細はプレスリリースへhttp://www.taiho.co.jp/corporation/news/2010/20100120.html

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防げる子宮頸がん…防がないのは罪 ~HPVワクチンの接種により73%の子宮頸がんが減少。社会・経済的効果も190憶円~

諸外国に遅れをとりながらわが国でも子宮頸がんの予防ワクチンが承認された。そのような中『子宮頸がんと予防ワクチン』と題し、国立がんセンター中央病院にて講演会が開催された。講演会では、主催者の国立がんセンター中央病院院長土屋了介氏に加え3名の演者が製薬企業、医療者、患者それぞれの立場でHPVワクチンを日本の医療環境に取り入れていく中での課題や問題点について発表した。そのなかから自治医大埼玉医療センター産婦人科今野良氏の講演内容を中心に紹介する。日本と世界に於ける子宮頸がんの状況世界では、子宮頸がんにより毎年50万人が亡くなっている。日本での子宮頸がん発生率は人口10万人当たり約8人、死亡率は2.6人であり、世界的にみても少ないといえる。これは、日本の子宮頸がん検診は導入、充実が世界的にも早かったためである。しかし、近年は若年者での発生率が増加しているという問題が発生している。実際、20~29歳の浸潤がんの発生率は1984年に比べ1996年で4倍である。その原因としては若年者の子宮頸がん検診受診率が極めて低いことが挙げられる。欧米先進国の子宮頸がん検診受診率は80%以上であるが、日本の受診率は既に24%と極端に低くなっている。これは若い世代に検診の重要性を伝えきれていない結果である。このまま若年者の検診受診の習慣付けをしないと患者数が大幅に増加すると予想される。検診での過ちをワクチンでも繰り返すべきではないと考える。成人女性であれば特別なこととはいえないHPVの感染HPV(Human Papiloma Virus)感染は子宮頸がん発生の必要条件として報告されており、HPV感染の有無は500倍のodds比であり関連度は99%である。HPV感染は通常の性交渉によって起こる。HPVは子宮頸部の非常に微細な上皮の傷から感染し増殖する。そのため、成人女性であれば大部分の方が一度は感染しているといえ、非常にありふれたものといってもおかしくない。いまだ一部誤解があるようだが、問題がある性交渉を行ったから発生するというものではない。また、HPV感染の90%は一過性感染である。残りの10%が持続感染になり、その中からがんに至るものがでてくる。HPVワクチンの効果は非常に高く日本での臨床試験ではHPV16、18感染に関して共に100%予防可能であった。HPVワクチンと検診の両輪で子宮頸がんを克服する子宮頸がんは、リスクファクターもその前がん病変も明らかである。前がん病変は検診時の細胞診で従来から判定が可能である。それに加えリスクファクターであるHPV感染を予防するワクチンが出現した。つまり、子宮頸がんは、一次予防のHPVワクチンと二次予防の検診の両輪で予防可能な疾患なのである。*HPVワクチンについて会場質問と回答も追記・HPVワクチンは成人に接種しても意味がない:現在HPV16、18に感染している方には効果がないが、過去に感染があっても現在陰性であれば年齢に関係なく有効。90%の方は陰性であり成人に対する接種も医学的には有効である。 ・HPV感染者への接種で抗体価が上がる:抗体価は上がらない。また、感染者に接種しても良くも悪くもならない・腺がんの対策:腺がんは検診では鑑別できないため現状の対策はHPVがワクチンしかないHPVワクチン導入による社会・経済的効果本邦におけるHPVワクチン接種による医学的効果と経済評価を行った。その結果、12歳の女児全員に接種すると子宮頸がんの発生率、死亡率ともに73%抑えることが推計された。経済的には、治療費用、機会費用を合せ400億円が削減され、ワクチン費用約210億円(ワクチン1コース36,000円と仮定)を差し引くと社会全体で約190億円の費用削減効果が期待された。さらに、10~45歳の女性全員にワクチンを接種させた場合、約430億円の社会的費用が削減さると推計された。増分費用効果比からみても45歳までの接種が許容されるという計算になる。 子宮頸がん後進国にならないためにHPVがワクチン接種の公費負担をHPVワクチンは100ヵ国以上の国で承認され、約30ヵ国で公費負担により12歳前後の女子に対し接種が行われている。そして、オーストラリア、欧州、米国でも医療保険、民間保険で費用の一部あるいは全額がカバーされている。WHOからも今年の4月にPositionPaperが提示され、世界の多くの国や機関でワクチン政策に組み入れることを推奨している。検診率が高い欧州は、更にHPVワクチン接種を組み込むことによって子宮頸がんを根絶しようという戦略である。一方、経済資源がなく検診の充実が期待できないアフリカなどでもGAVI(Global Alliance for Vaccines and Immunization)のような世界的支援機関の援助でHPVワクチン接種が始められている。日本では、発売されたものの公費負担は認可されていない。公費負担がないとワクチン接種率は5%程度と予想される。前出の費用効果分析の手法でシミュレーションしても、それでは子宮頸がんの発症抑制は全く期待できないことになる。このままだと日本は子宮頸がん対策に取り残されることになるのである。ワクチンの普及には行政がイニシアチブをとることが必要である。まずは11~14歳のHPVワクチンの全額公費負担を、次に15~45歳の保険償還での補助などでHPVワクチン接種の費用負担を実現させたい。 最後に座長の土屋了介氏は、HPVがワクチン公費負担についての会場署名およびWebサイト公募署名を長妻大臣に届けることを会場で宣言し会を締めくくった。(ケアネット 細田 雅之)

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米国成人肥満率、男性は10年前の1.32倍:米国過去10年の動向調査

米国成人の過去10年の肥満率は、男性はやや増加傾向が見られるものの、女性は明らかな変化は認められないことが報告された。米国疾病対策予防センター(CDC)のKatherine M. Flegal氏らが、National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)の結果を分析して明らかにしたもので、JAMA誌2010年1月20日号(オンライン版2010年1月13日号)で発表した。米国成人の68%が、太り気味か肥満研究グループは、2007~2008年のNHANESの結果から、20歳以上の男女、合わせて5,555人について、身長と体重を分析した。その中で、ボディマス指標(BMI)が25.0~29.9を太り気味、BMIが30.0以上を肥満と定義し、1999~2006年の結果と比較した。その結果、2007~2008年の年齢補正後の肥満の割合は、33.8%(95%信頼区間:31.6~36.0)だった。男女別に見ると、男性が32.2%(同:29.5~35.0)、女性が35.5%(同:33.2~37.7)だった。BMIが25.0以上の、太り気味と肥満を併せた割合は、全体で68.0%(同:66.3~69.8)、男性では72.3%(同:70.4~74.1)、女性では64.1%(同:61.3~66.9)だった。女性は有意な変化見られず過去10年間の肥満割合の傾向について見てみると、女性については、有意な傾向は見られなかった(1999~2000年に対する2007~2008年の補正後オッズ比:1.12、95%信頼区間:0.89~1.32)。一方男性については、やや増加傾向が見られた(同:1.32、1.12~1.58)。ただし男性も、直近3回(2003~2004年、2005~2006年、2007~2008年)の調査結果では、有意差は見られていない。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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米国6~19歳白人男子、過度肥満リスクが10年前の約1.5倍:米国過去10年の動向調査

米国20歳未満の過去10年間(1999~2008年)の肥満率は、全体として変化傾向はみられないことが報告された。ただし一部、6~19歳の男子などについては、過度な肥満者の割合が増加していることも明らかになった。米国疾病対策予防センター(CDC)のCynthia L. Ogden氏らが、2007~2008年のNational Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)を分析し、JAMA誌2010年1月20日号(オンライン版2010年1月13日号)で発表している。1999~2006年にかけての米国20歳未満のボディマス指標(BMI)も、一定水準にあったという。19歳未満の約4,000人を、年齢、性、人種別で分析研究グループは、2007~2008年のNHANESの結果から、2歳未満児の719人と、2~19歳の3,281人について分析を行った。2歳未満の肥満の定義については、CDCの性別横臥身長に対する体重グラフ2000年版に基づき、その95パーセンタイル以上とした。また、2~19歳の肥満の定義は、CDCの性別BMI成長グラフ2000年版に基づき、その97パーセンタイル以上と95パーセンタイル以上、85パーセンタイル以上の3段階に分類定義した。1999~2000年のNHANESデータと比べて、年齢、性、人種別に変化傾向を分析した。全体としての変化傾向はみられずその結果、2007~2008年の2歳未満で基準グラフの95パーセンタイル以上だったのは、9.5%(95%信頼区間:7.3~11.7)だった。2~19歳については、基準グラフの97パーセンタイル以上が11.9%(同:9.8~13.9)、95パーセンタイル以上が16.9%(同:14.1~19.6)、85パーセンタイル以上が31.7%(同:29.2~34.1)だった。傾向分析の結果、1999~2000年と2007~2008年の間には、全体としての変化傾向はみられなかった。ただし、6~19歳の男子で、97パーセンタイル以上の過度な肥満となるリスクが増加しており、2007~2008年の1999~2000年に対するオッズ比は1.52(同:1.17~2.01)だった。なかでも同年齢の非ヒスパニック系白人の男子でのオッズ比は1.87(同:1.22~2.94)と高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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