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医師の力量評価スコア、無保険者や英語が話せない患者が多いと低スコア傾向に

医師のクリニカルパフォーマンス・スコアは、患者の中に無保険者や英語が話せない人の割合が多いと、低スコアになる傾向があることが明らかにされた。米国マサチューセッツ総合病院総合診療部門のClemens S. Hong氏らが、同一の医師グループに帰属するプライマリ・ケア医162人と、その患者約12万5,000人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月8日号で発表した。高スコア群医師の患者は低スコア群より、高齢で合併症も多い傾向研究グループは、2003年1月1日~2005年12月31日にかけて、同一の医師グループ(9つの病院診療所と4つの地域保健センター)に属するプライマリ・ケア医162人のパフォーマンス・スコア「Health Plan Employer and Data Information Set」(HEDIS)と、その患者12万5,303人の属性との関連について、調査を行った。患者のカルテは、共通の電子カルテシステムで管理されていた。結果、スコアが低い方から三分位の医師の患者の平均年齢は46.6歳だったのに対し、高い方から三分位の医師の患者は51.1歳と、より高齢だった(p

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麻酔による合併症リスクが高い患児をいかに同定するか?

手術時の麻酔施行前に、International Study Group for Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)の改訂質問票で評価を行えば、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を同定可能なことが、オーストラリア、プリンセス・マーガレット小児病院(パース)麻酔科のBritta S von Ungern-Sternberg氏らが行ったコホート研究で示された。小児における麻酔に起因する疾患や死亡の主要な原因として、周術期の呼吸器系の合併症が挙げられる。これまでに合併症のリスク因子の報告はあるが、臨床における高リスク患児の同定法は確立されていないという。Lancet誌2010年9月4日号掲載の報告。単一施設における前向きコホート研究研究グループは、家族歴、麻酔法と周術期呼吸器合併症の関連を評価するプロスペクティブなコホート研究を実施した。2007年2月1日~2008年1月31日までにプリンセス・マーガレット小児病院で外科的あるいは内科的介入、待機的あるいは緊急処置として全身麻酔を施行された全患児を前向きに登録した。手術当日に、担当麻酔医がISAACの改訂質問票を用いて喘息、アトピー、上気道感染症、受動喫煙などの既往について調査した。麻酔法および周術期にみられたすべての呼吸器合併症が記録された。呼吸器疾患の既往歴、上気道感染症などがあると合併症リスクが増大12ヵ月後までに1万496人の患児から得られた9,297の質問票が解析の対象となった。患児の平均年齢は6.21(SD 4.8)歳であった。周術期の呼吸器合併症として気管支攣縮、喉頭痙攣、咳嗽/酸素飽和度低下/気道閉塞について解析した。呼吸器疾患の既往歴(夜間乾性咳嗽、運動時喘鳴、過去12ヵ月で3回以上の喘鳴、現在あるいは過去の湿疹の病歴)は、気管支攣縮(相対リスク:8.46、95%信頼区間:6.18~11.59、p<0.0001)、喉頭痙攣(同:4.13、同:3.37~5.08、p<0.0001)、周術期の咳嗽、酸素飽和度低下、気道閉塞(同:3.05、同:2.76~3.37、p<0.0001)の発現と有意な関連が認められた。上気道感染症は、症状がみられる場合には周術期の呼吸器合併症のリスクを増大させた(相対リスク:2.05、95%信頼区間:1.82~2.31、p<0.0001)。上気道感染症が手術前の2週間以内にみられた場合は周術期呼吸器合併症のリスクが有意に増大した(同:2.34、同:2.07~2.66、p<0.0001)のに対し、感染が手術前2~4週の場合は有意に低下していた(同:0.66、同:0.53~0.81、p<0.0001)。家族の2人以上に喘息、アトピー、喫煙の既往歴があると、周術期の呼吸器合併症のリスクが増大した(いずれも、p<0.0001)。麻酔の導入は吸入薬よりも静注薬の方が合併症のリスクが低く(いずれも、p<0.0001)、麻酔の維持は静注薬に比べ吸入薬が低リスクであった(いずれも、p<0.0001)。気道の確保は、研修医に比べ小児麻酔専門医が行う方が合併症リスクは低く(いずれもp<0.0001)、気管内挿管よりもマスクを使用する方が低リスクであった(いずれもp<0.0001)。著者は、「手術時の麻酔施行前の評価により、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を系統的に同定することが可能であり、それゆえターゲットを定めた特異的な麻酔法がベネフィットをもたらす可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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新規糖尿病患者への集団教育プログラム実施の費用対効果:英国DESMONDプログラム

糖尿病新規診断患者に対する糖尿病教育・自己管理指導(DESMOND)プログラムの、長期的な臨床効果と費用対効果に関する調査結果が、英国シェフィールド大学Health and Related Research校のM Gillett氏らによって報告された。服薬治療だけの通常ケアと比較して、DESMONDプログラム導入の費用対効果は高く、体重減少、禁煙実現といった利点があることが明らかになったという。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載より。費用対効果の検証は初めてDESMONDプログラムは、認定講習を受けたヘルスケア専門家が6時間にわたる集団教育を1日もしくは半日ずつ2回で提供するもので、カリキュラムは生活習慣(食習慣、運動)と心血管リスク因子に焦点を合わせた内容となっている。臨床への効果を検討するため2004年に始められた「DESMOND試験」の短期的(1年)結果を踏まえ(http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=2994)、2008年からは英国糖尿病ガイドラインで、PCT(primary care trust)での実施が明記されるようになっており、現在、イングランドとスコットランドの80以上のPCTで導入されている。これまで費用対効果に関する検討は行われていなかったことから、Gillett氏らは、費用効果分析を実施した。DESMOND試験(13診療所・824例が12ヵ月間追跡された)データを用い、治療の有用性、合併症発生率、死亡率に関する長期アウトカムを、シェフィールド2型糖尿病モデルを使って解析すると同時に、コストおよび健康関連QOL(QALYs)について検討した。さらに、プログラムを取り巻く最近の実態コストを反映した「リアルワールド」コストを用いた分析も行った。主要評価項目は、増大コストとQALYs獲得とした。増大コストに比しQALYs獲得に優れるDESMOND試験データに基づく解析から、プログラムを受けた患者1人当たりの生涯コストの増大は、平均209ポンド(326ドル)と推計された。QALYs増大は0.0392で、QALYs増大にかかるコスト増は平均5,387ポンドと推計された。リアルワールドコストを用いた解析では、プログラムを受けた患者1人当たりの生涯コストの増大は、平均82ポンドと推計され、QALYs増大にかかるコスト増は平均2,092ポンドと推計された。確率的感度解析から、QALYs増大コストの許容額20,000ポンドに対し、試験データベースでは66%、リアルワールドベースでは70%の費用対効果がある可能性が示された。また一方向感受性解析から、プログラムによる介入効果は1年を過ぎると減じると仮定しても、費用対効果に優れることが示唆された。

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トラスツズマブ+化学療法が、新たな進行胃がんの標準治療に:ToGA試験

ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2、あるいはERBB2とも呼ばれる)陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療として、分子標的治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)をフッ化ピリミジン系薬剤+シスプラチン(同:ブリプラチン、ランダなど)による化学療法と併用する治療法が有用なことが、国立ソウル大学医学部のYung-Jue Bang氏らが行った無作為化第III相試験で示された。トラスツズマブはHER2を標的とするモノクローナル抗体で、すでに早期および転移性乳がんの有効な治療薬として確立されており、胃がんの前臨床試験ではカペシタビン(商品名:ゼローダ)やシスプラチンとの併用により少なくとも相加的な抗腫瘍効果が確認されている。乳がんでは良好な耐用性が示され、また胃がん患者のHER2陽性率は乳がん患者とほぼ同等だという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載の報告。トラスツズマブの化学療法への上乗せ効果を評価ToGA試験の研究グループは、HER2陽性進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療としてのトラスツズマブ+化学療法併用の有用性を評価する国際的なオープンラベル無作為化第III相試験を実施した。24ヵ国122施設から、免疫組織化学検査でHER2蛋白の過剰発現、あるいはFISH(fluorescence in-situ hybridisation)法でHER2遺伝子の増幅が確認された胃および胃・食道接合部がん患者が登録された。これらの患者が、化学療法[カペシタビン+シスプラチンあるいはフルオロウラシル(商品名:5-FU)+シスプラチン]を3週ごとに6サイクル施行する群あるいは同様の化学療法にトラスツズマブ静脈内投与を併用する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、無作為割り付けの対象となり一回以上の治療を受けた全患者の全生存期間(OS)とした。OS中央値が有意に26%延長594例(トラスツズマブ+化学療法群:298例、化学療法単独群:296例)が登録され、主要評価項目の解析の対象となったのは584例(それぞれ294例、290例)であった。フォローアップ期間中央値は、それぞれ18.6ヵ月(四分位範囲:11~25ヵ月)、17.1ヵ月(同:9~25ヵ月)であった。OS中央値は、トラスツズマブ+化学療法群が13.8ヵ月(95%信頼区間:12~16ヵ月)と、化学療法群単独群の11.1ヵ月(同:10~13ヵ月)に比べ有意に延長した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0046)。最も頻度の高い有害事象は、両群ともに悪心[トラスツズマブ+化学療法群:67%(197/294例)、化学療法単独群:63%(184/290例)]、嘔吐[それぞれ50%(147/294例)、46%(134/290例)]、好中球減少[53%(157/294例)、57%(165/290例)]であった。グレード3または4の有害事象の頻度[それぞれ68%(201/294例)、68%(198/290例)]および心毒性の頻度[6%(17/294例)、6%(18/290例)]は両群間に差を認めなかった。著者は、「トラスツズマブと化学療法の併用療法は、HER2陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの新たな標準治療となる可能性がある」と結論している。なお、本試験の参加者の53%が日本人を含むアジア人である。(菅野守:医学ライター)

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妊娠初期の単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬服用、先天性欠損症リスクを増大せず

母親が妊娠初期に、単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬である、アシクロビル(商品名:ゾビラックスなど)、バラシクロビル(同:バルトレックス)、ファムシクロビル(同:ファムビル)の抗ウイルス薬のいずれかを服用しても、出産児の先天性欠損症リスクは増大しないことが報告された。デンマークStatens Serum Institut疫学研究部門のBjorn Pasternak氏らが、約84万児を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。生後1年間の先天性欠損症発症を追跡同氏らは、1996年1月1日~2008年9月30日にデンマークで生まれた83万7,795児について、既往歴コホート研究を行った。染色体異常や遺伝的症候群、原因の明らかな先天異常症候群、先天的ウイルス感染症のいずれかが認められる乳児は、被験者から除外した。生後1年間で見つかった主な先天性欠損症と、母親の妊娠初期のアシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの服用について、その関連を分析した。抗ウイルス薬服用群と非服用群、先天性欠損症発症率はともに2.2~2.4%と同等母親が妊娠初期に、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルのいずれかを服用していた1,804件の妊娠のうち、主な先天性欠損症が認められたのは、40児(2.2%)だった。一方、母親が妊娠初期にいずれかの抗ウイルス薬も服用していなかった妊娠のうち、主な先天性欠損症が認められたのは1万9,920児(2.4%)で、服薬の有無間での発症リスクに、有意差はみられなかった[補正後罹患率オッズ比(POR):0.89、95%信頼区間:0.65~1.22]。3種の抗ウイルス薬別にみても、同発症リスクの増加は認められず、アシクロビル群(1,561児)のうち先天性欠損症は32児(2.0%)で補正後PORは0.82、バラシクロビル群(229児)は7児(3.1%)で補正後PORは1.21、服薬が稀だったファムシクロビル群(26児)は1児(3.8%)で補正後PORは1.63で、いずれも有意差は認められなかった。予備解析の結果でも、妊娠初期の抗ウイルス薬服用と13種の主な先天性欠損症の間には、有意な関連は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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隠された代替アウトカムが、誤った結論を誘導する?

無作為化臨床試験のうち主要アウトカムとして代替アウトカム(surrogate outcome)を用いたものは17%に及ぶが、その使用を明記し、妥当性につき考察を加えた試験は約3分の1にすぎないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJeppe Lerche la Cour氏が行ったコホート研究で示された。代替アウトカムは、無作為化試験において主要アウトカムの代わりに使用可能な場合があるが、不用意に用いると誤解を招いたり、有害な介入が実施されてしまう可能性があるという。欧米では、代替アウトカムに基づいて新薬の市販承認が行われる場合があり、その危険性を指摘する声もある。BMJ誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月18日号)掲載の報告。主要6誌掲載の代替アウトカムを用いた無作為化臨床試験を評価研究グループは、無作為化臨床試験に関する論文の著者が代替アウトカムの使用を告げているか、およびその妥当性を考察しているかについて検討するコホート研究を実施した。2005~2006年に発行された主要な医学ジャーナル6誌(JAMA、New England Journal of Medicine、Lancet、BMJ、Annals of Internal Medicine、PLoS Medicine)に掲載された無作為化臨床試験のうち、主要アウトカムとして代替アウトカムを用いた試験を抽出した。代替アウトカム使用試験:17%、使用報告:57%、妥当性解析:35%この2年間に6誌に掲載された無作為化臨床試験の論文の総数は626編であった。そのうち、109編(17%)が主要アウトカムとして代替アウトカムを使用していた。109編中、代替アウトカムの使用を明確に記載していたのは62編(57%、95%信頼区間:47~67%)のみであった。さらに、代替アウトカム使用の妥当性について考察を加えていたのは38編(35%、95%信頼区間:26~45%)にすぎなかった。著者は、「代替アウトカムを用いた無作為化臨床試験は多いが、その使用を妥当性の考察とともに明記した試験は約1/3にすぎなかった」と結論し、「誤った結論を誘導したり、新たな治療法を不用意に容認しないためには、代替アウトカムの使用につき、より適切に報告すべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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5価経口生ロタウイルスワクチン、アジアの開発途上国の乳幼児にも有効

5価経口生ロタウイルスワクチン(商品名:RotaTeq ※国内未承認)は、アジアの開発途上国の乳幼児に対し安全に接種可能で、重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効なことが、バングラデシュ・国際下痢性疾患研究センターのK Zaman氏らが行った無作為化試験で示された。WHOの試算では、2004年の世界のロタウイルスによる死亡例数は52万7,000例で、そのうちアジアの開発途上国6ヵ国で21万5,896例を占める。先進国では、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防にロタウイルスワクチンが有効なことが証明されているが、アジアの開発途上国では同ワクチンの有効性に関する試験は行われていないという。Lancet誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月6日号)掲載の報告。バングラデシュ、ベトナムの生後4~12週の乳幼児に3回接種研究グループは、バングラデシュおよびベトナムにおいて、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防における5価経口生ワクチンの臨床効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。対象は、バングラデシュの農村地域であるMatlabおよびベトナムのNha Trangの都市部と近郊農村部で生まれ、消化管疾患の症状のみられない生後4~12週の乳幼児であった。これらの乳幼児が、生後6週、10週、14週の3回、ポリオウイルスワクチンなどのルーチンの乳幼児ワクチンとともに、5価ロタウイルスワクチンを経口接種する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。医療施設を受診した乳幼児に胃腸炎の症状がみられた場合には、医療スタッフあるいは親の記憶に基づいて報告することとした。主要評価項目は、3回目の接種後14日が経過して以降、試験終了時(2009年3月31日、生後約21ヵ月)までに発現した重症ロタウイルス胃腸炎(Vesikariスコア≧11)とし、per-protocol解析を行った。ワクチン有効率は、[(1-ワクチン群の人・時当たりの重症ロタウイルス胃腸炎発生率)÷プラセボ群の発生率]×100と定義した。ワクチン有効率48.3%、有害事象は同等2,036人が登録され、5価ロタウイルスワクチン群に1,018人が、プラセボ群にも1,018人が割り付けられた。このうち解析の対象となったのは、ワクチン群が991人、プラセボ群は978人であった。3回目の接種後14日から最終的な処置までのフォローアップ期間中央値は498日(IQR:480~575日)であった。ワクチン群では1,197人・年以上のフォローアップ期間中に38例の重症ロタウイルス胃腸炎が報告されたのに対し、プラセボ群では1,156人・年以上で71例に発現し、約2年間におけるワクチン有効率は48.3%(95%信頼区間:22.3~66.1%)と有意な効果が認められた(0%以上の有効性との比較におけるp=0.0005)。各回の接種後14日以内にみられた重篤な有害事象は、ワクチン群が2.5%(25/1,017人)、プラセボ群は2.0%(20/1,018人)であった(intention-to-treat解析)。最も高頻度にみられた重篤な有害事象は肺炎であった[ワクチン群:1.2%(12/1,017人)、プラセボ群:1.5%(15/1,018人)]。著者は、「アジアの開発途上国の乳幼児において、5価経口生ワクチンは安全で、かつ重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効であった」と結論し、「これらの知見はWHO勧告の拡張を支持するものであり、本ワクチンの世界的な使用を推し進めるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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20年前と比べ、米国青少年の聴覚障害が増大、約2割に

米国の12~19歳の聴覚障害罹患率が、20年前と比べて増加傾向にあることが明らかになった。1988~1994年調査時の罹患率は約15%だったが、2005~2006年調査時は約20%になっていたという。米国ブリガム&ウィメンズ病院Channing LaboratoryのJosef Shargorodsky氏らが、全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)のデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。著者らは、「増加の要因と、回避・防止し得るリスクファクターを特定することが必要」と提言している。5,000人弱について、聴覚障害の種類や程度、リスク因子を調査Shargorodsky氏らは、NHANESの1988~1994年時の12~19歳被験者2,928人のデータと、2005~2006年時の同1,771人のデータについて検討した。被験者は、聴力測定器によって聴覚障害の有無を調べられ、聴覚障害の程度について、片耳もしくは両耳、低周波(0.5、1、2kHz)または高周波(3、4、6、8kHz)、軽度(15超~25未満dB)か中等度~重度(25以上dB)に分類された。また、聴覚障害とそのリスク因子についての相互関係についても分析調査された。近年の聴覚障害は片耳、高周波が高率結果、1988~1994年の聴覚障害罹患率は14.9%(95%信頼区間:13.0~16.9)だったのに対し、2005~2006年の同率は19.5%(同:15.2~23.8)と、有意に増加していた(p=0.02)。05~06年の聴覚障害は片耳が多く、その罹患率は14.0%(同:10.4~17.6)で、88~94年の同11.1%(同:9.5~12.8)に比べ高率だった(p=0.005)。また05~06年は、高周波聴覚障害の罹患率が16.4%(同:13.2~19.7)と、88~94年の同12.8%(同:11.1~14.5)に比べ高率だった(p=0.02)。聴覚障害のリスクは、連邦政府が定める貧困層の子どもで有意に高く、罹患率は23.6%(同:18.5~28.7)であり、そうでない場合の18.4%(同:13.6~23.2)に比べ有意に高率だった(補正後オッズ比:1.60、95%信頼区間:1.10~2.32)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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外気温の低下により心筋梗塞リスクが増大

心筋梗塞のリスクは外気温が低下するごとに増大するが、外気温が高いこととは関連がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らがMyocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)のレジストリーについて実施した解析で明らかとなった。外気温は短期的な死亡率増加のリスクに影響を及ぼし、暑い日も寒い日にも死亡率は増大することが示されている。一方、外気温が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響については明らかにされていないという。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月10日号)掲載の報告。外気温の1℃の変化ごとの心筋梗塞リスクの変動を評価研究グループは、イングランドとウェールズの15の大都市圏において外気温と心筋梗塞のリスクの短期的な関連について検討するために、時系列的な回帰分析を行った。対象は、2003~2006年のMyocardial Ischaemia National Audit Projectに登録された心筋梗塞入院患者8万4,010例で、イベント発生数中央値は57件/日であった。外気温の1℃の変化ごとの心筋梗塞リスクの変動を、その後28日にわたり検討した。心筋梗塞のリスクが高い集団への介入で、外気温低下によるリスク増大を抑制可能外気温と心筋梗塞の発症には、平滑化されたグラフとして直線的な関連が認められ、外気温の閾値とは無関係に対数線形モデルによって良好な相関関係が確認された。すなわち、1日の平均外気温が1℃低下するごとに、直近およびその後28日間の心筋梗塞リスクが2.0%(95%信頼区間:1.1~2.9%)ずつ累積的に増大した。最も強い影響は2~7日と8~14日の中間期に生じると予測され、外気温1℃の低下ごとに心筋梗塞リスクがそれぞれ0.6%(95%信頼区間:0.2~1.1%)、0.7%(同:0.3~1.1%)増加した。外気温が高いことは心筋梗塞に対し有害ではなかった。75~84歳の高齢者は85歳以上を含む他の年齢層よりも外気温の1℃低下による心筋梗塞の相対リスクが有意に高く(相互作用のp<0.001)、冠動脈心疾患の既往歴のある患者は既往歴のない患者に比べ相対リスクが有意に高かった(相互作用のp=0.001)。これに対し、アスピリン服用者は、非服用者に比べ心筋梗塞の相対リスクが有意に低かった(相互作用のp=0.007)。著者は、「外気温の低下による心筋梗塞のリスク増大は、寒さに関連した死亡率増加の促進因子の一つと考えられるが、外気温が高いことは心筋梗塞のリスクを増大させない」と結論し、「外気温低下の予報をきっかけとして、的を絞ったアドバイスを行うなどの介入法によって、心筋梗塞のリスクが高い集団におけるリスク低減が可能となるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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開発中止となった抗肥満薬rimonabantの市販後臨床試験の結果報告

重篤な精神神経系の副作用により早期中止となった抗肥満薬rimonabantの心血管アウトカムの改善効果を検討した市販後臨床試験(CRESCENDO試験)の結果が、アメリカScripps Translational Science Institute(ラ・ホーヤ)のEric J Topol氏らによりLancet誌2010年8月14日号で報告された。この結果を受けて、2008年11月、rimonabantは開発自体が中止されている。rimonabantは内在性カンナビノイド受容体を遮断することで減量効果を発揮し、トリグリセリド、HDLコレステロール、空腹時血糖などの代謝異常を改善することが示され、ヨーロッパでは抗肥満薬として市販されていた。悪心やうつ病などの副作用が懸念されていたが、長期投与による心血管リスクの改善効果に期待が集まっていた。重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討CRESCENDO試験の研究グループは、rimonabantによる重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2005年12月~2008年7月までに、42ヵ国974施設から血管疾患の既往歴やリスクの増大がみられる患者1万8,695例が登録され、rimonabant 20mgを投与する群(9,381例)あるいはプラセボ群(9,314例)に無作為に割り付けられた。試験の関係者や患者には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、中央判定委員会の評価による心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を行った。いくつかの国の規制当局が重篤な精神的副作用を許容できないと判断平均フォローアップ期間13.8ヵ月の時点で、3ヵ国の医療関連規制当局がrimonabant群における自殺への懸念を表明したため、これらの国では試験が早期に中止された。解析は、無作為割り付けの対象となった全例について実施された。試験終了時(2008年11月6日)における心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントの発現率は、rimonabant群が3.9%(364/9,381例)、プラセボ群は4.0%(375/9,314例)であり、両群間に有意な差はみられなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.84~1.12、p=0.68)。rimonabant群はプラセボ群に比べ、消化管副作用[33%(3,038/9,381例) vs. 22%(2,084/9,314例)]、精神神経系副作用[32%(3,028/9,381例) vs. 21%(1,989/9,314例)]、重篤な精神的副作用[2.5%(232/9,381例) vs. 1.3%(120/9,314例)]が有意に高頻度であった。rimonabant群の4例、プラセボ群の1例が自殺した。著者は、「抗肥満薬として上市された薬剤の心血管アウトカムの改善効果を検討したところ、重篤な精神神経系の副作用がみられ、規制当局が許容できないと判断したため、試験も薬剤の開発も早急に中止された」とまとめ、「本試験が早期終了となったことは今後の薬剤開発計画に重要な教訓をもたらすだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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CKD患者への透析開始を早めても生存改善に有意差認められず

慢性腎臓病(CKD)ステージ5の患者に対し、早期に維持透析開始をしても、生存率あるいは臨床転帰の改善とは関連しないことが明らかにされた。維持透析開始のタイミングには、かなりの差異がみられるものの、世界的に早期開始に向かう傾向にある。そうした中で本報告は、オーストラリアのシドニー医科大学校・王立North Shore病院腎臓病部門のBruce A. Cooper氏らの研究グループが、維持透析開始のタイミングが、CKD患者の生存に影響するかどうかを検討するため、早期開始群と晩期開始群との無作為化対照試験「IDEAL」を行った結果によるもので、NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年6月27日号)で発表された。eGFR10~14 mL/分を早期、5~7 mL/分を晩期に割り付けIDEAL(Initiating Dialysis Early and Late)試験は、オーストラリアとニュージーランドの計32施設で実施された。18歳以上の進行性のCKD患者で、推定糸球体濾過量(eGFR)が体表面積(コッククロフト・ゴールト式を用いて算出)1.73m2当たり10.0~15.0mL/分の患者の中から、eGFRが10.0~14.0mL/分の患者を早期に透析開始する群(早期開始群)に、eGFRが5.0~7.0mL/分の患者を遅く開始する群(晩期開始群)に無作為に割り付けた。試験参加者は、2000年7月~2008年11月の間に合計828例(平均年齢60.4歳、男性542例、女性286例、糖尿病患者355例を含む)が、早期開始群404例、晩期開始群424例に割り付けられ、2009年11月まで追跡された。主要評価項目は、全死因死亡とした。死亡率、有害事象とも有意差は認められず透析開始までの期間の中央値は、早期開始群1.8ヵ月(95%信頼区間:1.60~2.23)、晩期開始群は7.4ヵ月(同:6.23~8.27)だった。なお晩期開始群のうち75.9%は、開始指標としたeGFRは7.0mL/分より高値だったが、臨床症状が発現したため透析開始となった。追跡調査期間の中央値3.59年の間に、早期開始群404例中152例(37.6%)、晩期開始群424例中155例(36.6%)が死亡した(早期開始群のハザード比:1.04、95%信頼区間:0.83~1.30)、P=0.75)。有害事象(心血管イベント、感染症、透析合併症)の頻度においても、有意な群間差は認められなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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進行性特発性肺線維症にシルデナフィルは有効か?

ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬シルデナフィル(商品名:レバチオ、ED治療薬としてはバイアグラ・保険未適応)について、進行性特発性肺線維症(IPF)に対する有効性をプラセボとの対照で検討した追加適応を目指す臨床試験の結果が報告された。主要評価項目(6分間歩行改善)での有益性は認められなかったが、副次評価項目ではさらなる研究の必要性をうたうに相当する、肯定的な結果がみられたという。シルデナフィルは進行性特発性肺線維症患者で、肺換気の比較的良好な領域の血流量を選択的に改善し、ガス交換能を改善する可能性があると期待されていることから、IPF臨床研究ネットワークのDavid A. Zisman氏らは、シルデナフィル投与による治療で、進行性IPF患者の歩行距離、呼吸困難、そしてQOLが改善するとの仮説を立て、検証のための臨床試験「STEP-IPF」を実施した。NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年5月18日号)より。2期から成る二重盲検・非盲検試験で評価STEP-IPF(Sildenafil Trial of Exercise Performance in Idiopathic Pulmonary Fibrosis)試験では、進行性IPFの定義は一酸化炭素拡散能が予測値の35%未満であることとした。試験は二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、2期間で構成された。被験者数は計180例。第1期試験では、被験者はシルデナフィル群(89例)またはプラセボ群(91例)に無作為に割り付けられ、12週間時点で評価が行われた。主要評価項目は、6分間歩行距離の20%以上延長を示した患者の比率だった。副次評価項目は、動脈血酸素化、呼吸困難の程度、QOLの変化などとされた。第2期試験は、非盲検試験で、全患者にシルデナフィルが投与され12週時点で評価が行われた。6分間歩行距離延長に有意差なし主要評価項目の6分間歩行距離の20%以上改善がみられたのは、シルデナフィル投与群では9例(10%)、プラセボ投与群6例(7%)で、両群間に有意差は認められなかった(P=0.39)。一方、副次評価項目である動脈血酸素化、一酸化炭素拡散能、呼吸困難の程度、QOLには、シルデナフィル投与を支持する、わずかながらも有意差が認められた。重篤な有害事象の発生は、両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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米国40歳以上糖尿病患者のうち網膜症罹患率は28.5%

米国の40歳以上糖尿病患者のうち、糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%と高率であることが明らかになった。特に非ヒスパニック系黒人で高く、4割近くにみられたという。米国疾病対策予防センター(CDC)のXinzhi Zhang氏らが、1,000人超の糖尿病患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月11日号で発表した。糖尿病性網膜症の罹患率、重症度に関して、全米人口をベースとした最近の動向は存在しなかったという。糖尿病1,006人について蛍光眼底撮影を実施同研究グループは、全米の断面調査「National Health and Nutrition Examination Survey」2005~2008年を基に分析を行った。サンプル数は1,006人だった。糖尿病の定義については、自己申告による糖尿病診断歴あり(妊娠糖尿病除く)、またはHbA1cが6.5%以上とした。両眼について2回の蛍光眼底撮影を行い、その程度についてAirlie House分類スキーム、Early Treatment Diabetic Retinopathy Study重症度スケールにて分類した。サンプルから求めた罹患率を基に、全米の40歳以上に関する罹患率推定値を算出した。40歳以上糖尿病の、男性の31.6%、女性の25.7%が糖尿病性網膜症全米40歳以上糖尿病患者における糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%(95%信頼区間:24.9~32.5)だった。そのうち、治療をせずに放っておくと間もなく失明するほどの重症度の同罹患率推定値は、4.4%(同:3.5~5.7)だった。男女別では、同推定値は、男性が31.6%と、女性の25.7%に比べ有意に高かった(p=0.04)。人種別では、非ヒスパニック系黒人で同推定値が38.8%、また治療をせずに放っておくと間もなく失明する程の重症度の同推定値は9.3%と、非ヒスパニック系白人の各値26.4%、3.2%に比べ、いずれも有意に高かった(p=0.01)。なお、糖尿病性網膜症に関する独立危険因子は、男性(オッズ比:2.07)、HbA1c高値(同:1.45)、長期糖尿病歴(同:1.06)、インスリン使用(同:3.23)、収縮期血圧高値(1mmHg上昇につきオッズ比:1.03)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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新しい糖尿病治療薬exenatide、追加薬として最適:DURATION-2試験

メトホルミンで十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に対する追加薬剤としては、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニストであるexenatideが、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4) 阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)やチアゾリジン系薬剤ピオグリタゾン(同:アクトス)よりも有用なことが、アメリカInternational Diabetes Center at Park NicolletのRichard M Bergenstal氏らが実施した無作為化試験で示された。2型糖尿病患者の薬物療法はメトホルミンで開始されることが多いが、いずれは他の薬剤の追加が必要となる。GLP-1受容体アゴニストやDPP-4 阻害薬は血糖コントロールだけでなく、肥満、高血圧、脂質異常などの2型糖尿病関連の代謝異常にも有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2010年8月7日号(オンライン版2010年6月26日号)掲載の報告。3群の優越性を評価する二重盲検ダブルダミー無作為化試験DURATION-2試験の研究グループは、メトホルミン治療を受けている2型糖尿病患者において、週1回のexenatide、最大承認用量のシタグリプチン、最大承認用量のピオグリタゾンの安全性と有効性を評価する二重盲検無作為化試験を行った。2008年1月22日~8月6日までに、アメリカ、インド、メキシコの72施設から、メトホルミン治療を受けている18歳以上の2型糖尿病患者で、ベースライン時の糖化ヘモグロビン(HbA1c)が7.1~11.0%、BMIが25~45 kg/m2の者が登録された。これらの患者が、exenatide 2mg/週(皮下注)+プラセボ 1回/日(経口)、シタグリプチン100mg/日(経口)+プラセボ 1回/週(皮下注)、ピオグリタゾン45mg/日(経口)+プラセボ1回/週(皮下注)を併用投与する群で無作為に割り付けられた。主要評価項目はベースラインから治療26週までのHbA1cの変化率とし、1回以上の治療を受けたすべての患者についてintention-to-treat解析を行った。exenatide群でHbA1cと体重が有意に低下、重篤な低血糖は認めなかったexenatide群に170例、シタグリプチン群に172例、ピオグリタゾン群には172例が割り付けられた。このうちintention-to-treat解析の対象となったのは、それぞれ160例、166例、165例であった。ベースライン時の平均年齢は52歳、HbA1c平均値は8.5%、空腹時血糖は9.1mmol/L、体重は88.0kgであった。HbA1cのベースラインからの変化の最小二乗平均は、exenatide群が-1.5%(95%信頼区間:-1.7~-1.4%)であり、シタグリプチン群の-0.9(同:-1.1~-0.7%)、ピオグリタゾン群の-1.2%(同:-1.4~-1.0%)に比べ低かった。exenatide群とシタグリプチン群の差は-0.6%(同:-0.9~-0.4%、p<0.0001)、exenatide群とピオグリタゾン群の差は-0.3%(同:-0.6~-0.1%、p=0.0165)であり、exenatide群におけるHbA1cの有意な改善効果が確かめられた。exenatide群では体重が2.3kg(95%信頼区間:-2.9~-1.7kg)減少していた。シタグリプチン群との差は1.5kg(p=0.0002)、ピオグリタゾン群の差は5.1kg(p<0.0001)であり、シタグリプチン群で有意な体重減少効果が確認された。3群ともに重篤な低血糖エピソードの報告はなかった。最も高頻度にみられた有害事象は、exenatide群とシタグリプチン群が悪心[それぞれ24%(38例)、10%(16例)]、下痢[それぞれ18%(29例)、10%(16例)]であり、ピオグリタゾン群では上気道感染症[10%(17例)]、末梢浮腫[8%(13例)]の頻度が高かった。著者は、「糖尿病の治療を行う臨床医の目標は体重の減少と低血糖エピソードの抑制とともに最適な血糖コントロールを達成することであり、メトホルミンへの追加薬剤として、exenatideはシタグリプチンやピオグリタゾンよりもこの目標の達成度が高い」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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電話によるDV相談サポート、うつ改善にはつながらず:香港

親しいパートナーからの暴力[intimate partner violence:IPV;一般にドメスティックバイオレンス(DV)と知られる]を受けた女性に対し、暴力からの自衛手段を教えるなどのエンパワメントおよび電話カウンセリングを行っても、被害者のメンタルヘルスへの影響、うつ症状の改善にはつながらないことが報告された。IPV生存者のうつ症状に対する効果的な介入については明らかになっていないことから、アドボカシー的介入の効果を検討するため、中国・香港大学のAgnes Tiwari氏らが、200人の女性を対象に行い無作為化試験を行ったもので、JAMA誌2010年8月4日号で発表した。なお、香港におけるIPV発生率は、4.5~10%に上るという。通常ケアに加え、エンパワメントおよび電話カウンセリング介入同氏らは、2007年2月~2009年6月にかけて、IPVを受けたことのある18歳以上の女性200人について、調査を行った。研究グループは被験者を2群に分け、一方の群(介入群、100人)には、通常のコミュニティサービスの他に、介入開始時に約30分間1対1で「Dutton氏のエンパワメントモデル」に基づいた防御およびよりよい選択と問題解決方法を教示し、その後12週間にわたり週1回の電話によるカウンセリングを行った。もう一方の群(対照群、100人)には、通常のコミュニティサービス、医療的ケア、運動・趣味のサークル活動の提供にとどめる介入を行った。なお被験者全員には、24時間対応の電話ホットラインが提供された。主要評価項目は、9ヵ月後の「中国版ベックうつ病調査表II」によるうつ症状の変化。副次評価項目は、IPV発生率、健康関連QOL、ソーシャルサポート利用についての変化とした。3~9ヵ月後のうつ症状スコア、介入群で対照群に比べ2.66減少したが……その結果、試験開始後3ヵ月後のうつ症状スコア変化の平均値は、介入群が14.9に対し対照群が11.6、9ヵ月後はそれぞれ23.2と19.6で、3ヵ月時点および9ヵ月時点の治療効果の有意差は認められなかった(p=0.86)。また試験開始3~9ヵ月で、うつ症状スコアは、介入群で対照群に比べ、2.66(95%信頼区間:0.26~5.06、p=0.03)有意に減少したものの、臨床的に意味のある変化と規定していた5ポイントには達しなかった。一方、パートナーからの心理的攻撃については有意な減少が認められ、介入群で対照群に比べ、3~9ヵ月で1.87(p=0.01)の有意な減少がみられた。また、ソーシャルサポート利用は同2.18(p=0.01)で有意に増えていた。しかし、身体への暴行や性的暴力、健康関連QOLの変化については、両群で有意差はなかった。なお、IPV被害者に対するサポートの強化が、有用であると回答したのは、対照群で81.7%に対し介入群で93.8%(両群差12.1%、p=0.02)、親しいパートナーとの対立を解決する手助けとなると回答したのは、対照群で84.1%に対し介入群で97.5%(両群差13.4%、p=0.001)と、いずれも介入群の方が有意に高率ではあった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その1)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、米国ワシントン大学のThomas D. Rea氏らは、「胸骨圧迫を重視させるべきとの戦略を後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した無作為化試験の結果を報告した。全体的な生存率改善に関しては両群で有意な差はみられなかったが、発作時の臨床症状別で解析した結果で、単独実施群の生存率の方が高い傾向がみられたという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。通報者へのCPR指示を、胸骨圧迫単独実施群、+人工呼吸実施群に無作為化し検討一般市民によるCPRで、人工呼吸を実施することの有効性については明らかになっていない。Rea氏らは、胸骨圧迫単独実施よりも、胸骨圧迫+人工呼吸併用実施の方が、生存率を改善するであろうと仮定し、多施設共同無作為化試験(米国ワシントン州キング郡とサーストン郡、英国ロンドン市)を行った。試験は、救急医療サービスに通報があった際に、通信隊員が胸骨圧迫のみを実行するよう指示する場合、もしくは胸骨圧迫+人工呼吸を実行するよう指示する場合に無作為に割り付け実行された。対象は、18歳以上の院外心停止のケース(外傷、溺水、仮死状態は除く)で、通信隊員が、通報してきた現場に居合わせた一般市民によるCPR実行が必要と判断した場合だった。主要評価項目は、生存退院とし、副次評価項目は、神経学的転帰良好な生存退院[CPC(Cerebral Performance Category)5段階評価で1、2に該当]とされた。なお、患者に対する事前承諾は行われなかったが、生存回復後に試験に組み入れられていたことが知らされた。生存退院者割合は有意差認められず、ただし……患者登録は3地域トータルで、2004年6月1日~2009年4月15日に行われ計1,941例が試験に組み入れられた。内訳は、胸骨圧迫単独群に割り付けられたのは981例、胸骨圧迫+人工呼吸併用群は960例だった。結果、生存退院した人の割合は、単独群12.5%、併用群11.0%で、両群間に有意差は認められなかった(絶対差:1.5ポイント、95%信頼区間:-1.4~4.4、P=0.31)。副次評価項目の、神経学的転帰良好で生存退院した人の割合も両群間に有意差は認められなかった(それぞれ14.4%、11.5%、P=0.13)。ただし臨床症状別に検討した事前規定のサブグループ解析の結果、単独群の方が生存退院者の割合が高い傾向がみられた。すなわち、心原性心停止ケースにおける生存退院者の割合は、単独群15.5%に対し併用群12.3%(P=0.09)、AED適応ケースでは単独群31.9%に対し併用群25.7%(P=0.09)だった。(武藤まき:医療ライター)

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34~37週未満での後期早産児、RDSなど呼吸性疾患リスク増大

妊娠34週~37週未満の後期早産では、新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)などの呼吸器疾患発生リスクが、妊娠39~40週の満期出産に比べ有意に増大することが、米国内最新の大規模データで裏付けられた。この点に関するデータはこれまで、10年以上前の、米国外データによるものしかなかったが、米国イリノイ大学シカゴ校のJudith U. Hibbard氏らが、米国内約23万件の出産データを基にして調べ明らかにした。JAMA誌2010年7月28日号掲載より。2万弱の早産児のうち、36.5%がNICU同研究グループは、米国内の病院19ヵ所(12機関)での、2002~2008年の23万3,844件の出産について、後ろ向きに追跡した。主要評価項目は、RDS、新生児一過性多呼吸、肺炎、呼吸不全、振動換気法または通常換気法によるサポートの発症・発生だった。その結果、追跡期間内の後期早産1万9,334件のうち、7,055人(36.5%)が新生児集中治療室(NICU)入室となり、2,032人に呼吸機能障害が認められた。一方、満期出産は16万5,993人で、うちNICU入室となったのは1万1,980人(7.2%)、呼吸機能障害がみられたのは1,874人だった。RDS発症は妊娠38週の0.3%に対し34週の10.5%RDSを発症したのは、妊娠38週の0.3%(4万1,764児中140児)に対し、妊娠34週の新生児では10.5%(3,700児中390児)と大幅に高率だった。その他の呼吸器疾患について、妊娠38週と妊娠34週の新生児について比べてみると、新生児一過性多呼吸の発症率は0.4%対6.4%、肺炎は0.1%対1.5%、呼吸不全は0.2%対1.6%と、いずれも34週の群で高率だった。同傾向は、振動換気法または通常換気法によるサポートについても認められた。RDSの発症リスクは、妊娠34週から週数の増加につれて低下し(補正後オッズ比が34週40.1→38週1.1)た。妊娠37週の39~40週に対するオッズ比は3.1だったが、38週では有意差はなくなった。この傾向は、新生児一過性多呼吸(補正後オッズ比が34週14.7→38週1.0)、肺炎(同7.6→0.9)、呼吸不全(同10.5→1.4)についても認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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投身自殺名所への防止柵設置で自殺は減ったか? 既遂者約1万5,000人の解析

カナダ・トロント市の投身自殺名所の橋への自殺防止柵設置によって、その橋での自殺は解消されたものの、市全体の自殺率には変化がなかったことが、Sunnybrook Health Sciences Centre and Women’s College Hospital(トロント市)のMark Sinyor氏らの調査で明らかとなった。今回の結果と同様、これまでの調査でも防止柵設置後に全体の自殺率が低下したとの報告はない。一方、柵の設置がある程度自殺を予防しているのか、あるいは単に別の橋が代用されたり別の手段で自殺が試みられているのかははっきりしていないという。BMJ誌2010年7月24日号(オンライン版2010年7月6日号)掲載の報告。自殺防止柵設置前後の自殺既遂者約1万5,000人の記録を調査研究グループは、年間の投身自殺率が「金門橋(Golden Gate Bridge、アメリカ・サンフランシスコ市)」に次いで世界で2番目に高率の橋である「ブロア通り高架橋(Bloor Street Viaduct、カナダ・トロント市)」への自殺防止柵の設置が、自殺率に変化をもたらしたかについて調査を行った。対象は、1993~2001年(自殺防止柵設置前の9年間)および2003年7月~2007年6月(設置後の4年間)のオンタリオ州主席検死官事務所の記録に記載された自殺既遂者1万4,789人。主要評価項目は、ブロア通り高架橋、その他の橋、高層建築物からの人口当たりの年間投身自殺率、および他の手段による年間自殺率とした。投身自殺への誘惑に満ちた特別の場所ではないことが判明トロント市の人口当たりの年間投身自殺率は、ブロア通り高架橋への自殺防止柵設置前が56.4、設置後が56.6であり、設置前後で全体的な変化はみられなかった(p=0.95)。防止柵設置前のブロア通り高架橋における平均年間投身自殺率は9.3であったのに対し、設置後は自殺は1件も起きていない(p<0.01)。ブロア通り高架橋以外の橋における平均年間投身自殺率は、柵設置前の8.7に対し設置後は14.2と有意に増加しており(p=0.01)、高層建築物からの投身自殺率は設置前の38.5から42.7へと増大したものの有意な差は認めなかった(p=0.32)。著者は、「ブロア通り高架橋での投身自殺は防止柵の設置によって解消されたが、トロント市全体の人口当たりの年間投身自殺率に変化はなかった。その原因は、他の橋や高層建築物からの投身自殺が代償的に増加したためと考えられる」と結論し、「これらの知見により、ブロア通り高架橋が人を自殺に誘う独特の場所ではないこと、また防止柵を設置しても近隣に代わりになる橋などがあれば絶対自殺率には影響がない可能性が示唆される」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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糖尿病性網膜症の進行を抑制する薬物療法

2型糖尿病患者の網膜症進行に対する薬物療法の効果を検討した結果、強化血糖コントロールと、抗高脂血症薬併用療法で進行率の低下が認められたことが報告された。一方、強化血圧コントロールによる効果は認められなかった。報告は、「ACCORD」試験被験者のサブグループ「ACCORD Eye」被験者データを解析した結果による。これまでのデータで、血糖、コレステロール、血圧という全身性因子が、糖尿病性網膜症の発症および進行に重要な影響を及ぼしている可能性が示唆されていたことを受けて行われた。NEJM誌2010年7月15日号(オンライン版2010年6月29日号)より。ACCORDサブグループ対象に解析無作為化試験「ACCORD」(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)は、2型糖尿病を有し心血管疾患リスクが高く、各種薬物療法を受けている1万251例が参加して行われた。被験者は、血糖コントロールの強化治療(目標<6.0%)もしくは標準治療(同7.0~7.9%)を受け、さらに脂質異常症に対する治療として抗高脂血症薬の併用投与[フェノフィブラート(商品名:リピディルなど)1日1回160mg+シンバスタチン(商品名:リポバスなど)]か単独投与(プラセボ+シンバスタチン)を、あるいは収縮期血圧コントロール[目標<120mmHg(強化群)か<140mmHg(標準群)]を受けた。これら治療の糖尿病性網膜症に対する4年時点の効果について、サブグループ「ACCORD Eye」(2,856例)を対象に評価が行われた。評価は、ETDRS(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)重症度スケール(7方向の立体眼底写真を17段階で評価、高段階ほど重症)で3段階以上の進行、あるいはレーザー光凝固術または硝子体切除術を余儀なくされた糖尿病性網膜症の発症について検討された。強化血糖コントロールのオッズ比0.67、抗高脂血症薬併用療法のオッズ比は0.604年時点の糖尿病性網膜症の進行率は、強化血糖コントロール群は7.3%だったのに対し、標準血糖コントロール群は10.4%だった。強化血糖コントロール群の補正後オッズ比は0.67(95%信頼区間:0.51~0.87、P=0.003)。抗高脂血症薬治療別では、併用群は6.5%だったのに対し、単独群は10.2%だった。併用群の補正後オッズ比は0.60(0.42~0.87、P=0.006)。一方、血圧コントロールについては、強化血圧コントロール群10.4%、標準血圧コントロール群8.8%で、強化血圧コントロール群の補正後オッズ比は1.23(0.84~1.79、P=0.29)だった。(医療ライター:武藤まき)

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肥満症治療薬lorcaserin、プラセボに比べ体重減少・維持改善が有意

選択的セロトニン2C受容体アゴニストである肥満症治療薬lorcaserin(国内未承認)の体重減少および維持改善効果は、プラセボに比べ有意であることが報告された。米国フロリダ病院&サンフォード-バーナム研究所のSteven R. Smith氏らが行った、2年にわたる98施設参加の多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験「BLOOM」の結果で、NEJM誌2010年7月15日号で発表された。2年にわたる無作為化プラセボ対照二重盲検試験BLOOM(Behavioral Modification and Lorcaserin for Overweight and Obesity Management)試験は、3,182例の肥満・過体重の成人(平均BMI:36.2)を無作為に、lorcaserin 10mgを1日2回投与を受ける群と、同プラセボ投与を受ける群に割り付け行われた。全員、食事療法と行動変容のカウンセリングも受けた。試験は2年にわたり、投与開始52週時点で割り付けの再設定が行われ、プラセボ群は全員引き続きプラセボを、lorcaserin群は無作為にlorcaserinかプラセボを受ける群に再設定された。主要評価項目は、1年時点の体重減少、2年時点の体重減少維持。安全性については、FDA定義の心弁膜症の発現について心エコー検査で確認がされた。1年時点で試験を受けていたのは、lorcaserin群55.4%(883/1,595例)、プラセボ群45.1%(716/1,587例)だった(両群計1,599例)。2年時点では、両群計1,553例だった。1年で5%以上体重減少、lorcaserin群47.5%、プラセボ群20.3%1年時点で、体重が5%以上減少したのは、lorcaserin群は47.5%、プラセボ群は20.3%だった(P<0.001)。重量減少でみると、1年間でlorcaserin群は平均5.8±0.2kg、プラセボ群は平均2.2±0.1kgだった(P<0.001)。1年間lorcaserin投与を受け基線より5%以上体重減少した人について、2年目も引き続きlorcaserin投与を受けた人の方が、2年目はプラセボ投与を受けた人よりも体重減少が維持されていた(67.9%対50.3%、P<0.001)。心エコー検査が行われたのは、1年目2,472例、2年目1,127例だった。いずれもlorcaserin投与に関する心臓弁膜症の増大は認められなかった。lorcaserin群で最も頻度の高かった有害事象は、頭痛、めまい、吐き気で、重篤な有害事象の発生は両群で同等だった。Smith氏は、「行動変容とともにlorcaserin投与を受けた患者の体重減少および維持改善は、プラセボ群と比べて有意だった」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

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