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リピート処方の質と安全に、受付・事務スタッフの創造的判断が貢献

リピート処方(repeat prescribing)、いわゆるDo処方について、受付または事務スタッフが、質および安全性に対して重大な「隠れた」貢献を行っているとの研究結果が報告された。英国・バーツ&ロンドン医科歯科大学校のDeborah Swinglehurst氏らによる。BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年11月3日号)掲載報告より。リピート処方をめぐる質・安全への貢献および障壁について調査Swinglehurst氏らは、GP(general practice)におけるリピート処方に関して、組織業務の様子を描出、調査、比較検討することで、質および安全に対する貢献者および障壁を特定する研究を行った。研究対象となったのは、電子患者記録を使用しており、患者への処方が準オートメーション化されている英国4都市の組織形態が多様なGP。395時間にわたって民族誌学的事例研究の手法でスタッフ(医師25人、看護師16人、ヘルスアシスタント4人、マネジャー6人、受付・事務スタッフ56人)を観察し、28の文書と、リピート処方に関わる部分的、全体的な人為的な現象について調べた。主要評価項目は、患者安全や良好な診療の特徴に対する潜在的な脅威とした。研究グループは、医師、受付・事務スタッフがリピート処方について、どのような貢献をしているか、また協同しているかを観察し、処方作業をマッピングすること、組織的実践を描出すること、それらを一緒に話し合って描画しているかなどについて解析した。これらは社会的モデルとして知られるもので、ICT(information and communications technologies)により形成化されているものであった。これからの患者安全の研究は、テクノロジーサポートを研究することが大切調査・解析の結果、リピート処方は複雑で、患者安全に重大な影響を有し、医師とスタッフの協働が求められるテクノロジーサポート・ソーシャルプラクティスであることが明らかになった。リピート処方の半数以上が、受付スタッフによって“例外”と判断されていた。大半は、電子リスト上にあったものと異なる薬、投与量、タイミングなどの理由によるものであった。形式的な処方プロトコルと、リピート処方を書くことにはギャップが存在する。そのギャップを埋める作業として、医師が知らないうちに、受付・事務スタッフの創造的な判断が貢献していた。Swinglehurst氏は、「一見、平凡で、標準的で、自動化されていると見られるテクノロジーサポート・ルーチンワークは、実際には高度な部分的な調整や判断が最前線のスタッフによって求められる。それらを研究することが、患者安全研究の新たなアジェンダになっていくだろう」と結論している。

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乳房温存術後の放射線療法による再発抑制効果は背景因子で異なる

乳房温存術後の温存乳房に対し放射線療法を追加することにより、再発率がほぼ半減して乳がん死は約6分の5にまで低下し、これらのベネフィットはほとんどのサブグループで認められるが、その程度は背景因子によって異なることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)によるメタ解析で示された。早期乳がんには通常、乳房温存術が行われるが、温存乳房内には微小腫瘍病変が残存している可能性があり、後年、局所再発や遠隔転移を来す恐れがある。乳房温存術後の放射線療法により再発や乳がん死が低減することが示されているが、より有効性の高いサブグループが存在する可能性があるという。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月20日号)掲載の報告。放射線療法追加の効果の背景因子による違いを評価EBCTCGは、乳房温存術後に放射線療法を受けた患者において、さまざまな予後因子や背景因子に応じて再発や乳がん死の状況を解析し、15年乳がん死リスクに対する10年再発リスクの影響を検討するためのメタ解析を行った。解析には、乳房温存術後に放射線療法を受けた患者と受けなかった患者の予後を比較した17件の無作為化試験に登録された1万801例の個々の患者データを用いた。このうち、病理学的にリンパ節転移陰性(pN0)あるいは陽性(pN+)と確定された患者は8,337例であった。1例の15年乳がん死の回避には4例の10年再発の予防が必要初回再発(局所および遠隔)の10年リスクは、乳房温存術単独群の35.0%から放射線療法追加群では19.3%まで有意に低下し(絶対低下率:15.7%、95%信頼区間:13.7~17.7、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の25.2%から追加群では21.4%まで有意に減少した(同:3.8%、1.6~6.0、2p=0.00005)。pN0例(7,287例)においては、10年再発リスクは乳房温存術単独群の31.0%から放射線療法追加群では15.6%まで(絶対低下率:15.4%、95%信頼区間:13.2~17.6、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の20.5%から追加群では17.2%まで有意に低減した(同:3.3%、0.8~5.8、2p=0.005)。pN0例における再発リスクの絶対低下率は年齢、腫瘍の悪性度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)の使用状況、手術範囲によって変動がみられ、これらの背景因子を用いて10年再発リスクの絶対低下率を「高(≧20%)」「中(10~19%)」「低(<10%)」に分けて予測が可能であった。また、この分類に対応した15年乳がん死リスクの絶対低下率が高い群は7.8%、中等度の群は1.1%、低い群は0.1%であった(死亡の絶対低下率の傾向検定:2p=0.03)。pN+例(1,050例)は、10年再発リスクが乳房温存術単独群の63.7%から放射線療法追加群では42.5%まで有意に低下し(絶対低下率:21.2%、95%信頼区間:14.5~27.9、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の51.3%から追加群では42.8%まで有意に減少した(同:8.5%、1.8~15.2、2p=0.01)。全体として、10年後の再発を4例で予防できれば、1例を15年後の乳がん死から救うことが可能であった。このような関連は、リンパ節転移の状態が確定された患者におけるリスク低減の高/中/低の予測カテゴリーでも同様に認められた。著者は、「乳房温存術後の温存乳房に対する放射線療法により再発率がほぼ半減し、乳がん死は約6分の5にまで低下した。これらのベネフィットはほとんどのサブグループでみられたが、ベネフィットの程度は患者の背景因子によって実質的に異なっており、治療の決定の際に予後の予測が可能と考えられる」と結論し、「温存乳房内の微小残存腫瘍を放射線療法で死滅させることで局所再発と遠隔転移の双方を抑制可能なことが示唆される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重症型急性アルコール性肝炎に対するプレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法

 死亡率が高い重症型急性アルコール性肝炎について、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法が生存率を改善するかについて検討した試験が行われた。結果、1ヵ月生存率は上昇したが、主要転帰とした6ヵ月生存率は改善されなかったという。フランス・Picardy大学のEric Nguyen-Khac氏らが、174例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。同疾患患者の死亡率は、グルココルチコイド治療を行っても6ヵ月以内の死亡率が35%と高い。NEJM誌2011年11月10日号掲載報告より。プレドニゾロン単独療法と、+N-アセチルシステイン併用療法とを比較 Nguyen-Khac氏らAAH-NAC(Acute Alcoholic Hepatitis–N-Acetylcysteine)研究グループは、2004~2009年にフランスの11大学病院に重症型急性アルコール性肝炎で入院した患者174例を対象に試験を行った。 被験者は無作為に、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法を受ける群(85例)とプレドニゾロン単独療法を受ける群(89例)に無作為に割り付けられた。被験者は全員4週間にわたってプレドニゾロン40mg/日の経口投与を受け、そのうち併用群は最初の5日間にN-アセチルシステイン静注を受けた。同投与量は、1日目は150mg/kg体重を5%ブドウ糖液250mLに溶解したものを30分間、50mg/kgを同500mLに溶解したものを4時間、100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを16時間かけて投与。2~5日目は、1日当たり100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを投与した。 単独群はその間、5%ブドウ糖液1,000mLのみが投与された。試験中、腹水治療のための利尿薬投与などや門脈圧亢進症のためのβ遮断薬の使用は認められた。飲酒癖は本人任せであった。アセトアミノフェン、ペントキシフィリン、抗TNF-αの使用は禁止された。全患者は標準病院食(1日1,800~2,000kcal)を受けた。主要転帰6ヵ月生存、併用群のほうが低かったが有意差は認められず 主要転帰は6ヵ月での生存とした。結果、併用群(27%)のほうが単独群(38%)よりも低かったが有意ではなかった(P=0.07)。 副次転帰は、1ヵ月、3ヵ月の生存、肝炎の合併症、N-アセチルシステイン使用による有害事象、7~14日のビリルビン値の変化などであった。結果、1ヵ月時点の死亡率は併用群(8%)のほうが単独群(24%)よりも有意に低かったが(P=0.006)、3ヵ月時点では有意差は認められなくなっていた(22%対34%、P=0.06)。6ヵ月時点の肝腎症候群による死亡は、併用群(9%)のほうが単独群(22%)よりも低かった(P=0.02)。 多変量解析の結果、6ヵ月生存に関連する因子は、「年齢がより若いこと」「プロトロンビン時間がより短いこと」「基線のビリルビン値がより低いこと」「14日時点でのビリルビン値低下」であった(いずれもP<0.001)。 感染症は、単独群よりも併用群で頻度が高かった(P=0.001)。その他副作用は両群で同等であった。

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医師の専門性認定、患者や同僚医師の評価に基づく判定は慎重に

医師の専門性を患者や同僚医師の評価に基づいて判定する場合、当該医師や評価者の背景因子に起因する組織的バイアスが生じる可能性があるため注意を要することが、英国・ペニンシュラ医科歯科大学のJohn L Campbell氏らの調査で示された。王立医師協会(GMC)は、イギリスの医師が医師免許を継続して保持するには妥当性を再確認する必要があり、そのためには最新かつ実臨床に即した医療を提供可能なことを示すよう提言している。医師による認定の申請を判定するには、患者や他の同僚医師からの多岐にわたる評価がエビデンスの重要な情報源になるという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月27日号)掲載の報告。医師の専門能力評価に影響する予測因子を調査研究グループは、医師の専門性を評価する際にみられる組織的バイアス(多くの個別の条件下で評価が行われるため、実際の価値とはずれが生じること)の原因に関して質問票を用いて横断的に調査し、得られたデータについて解析を行った。調査対象は、イングランドとウェールズのさまざまな専門領域の非研修段階にある医師1,065人と、その同僚医師1万7,031人および患者3万333人であった。GMCによる患者および同僚医師への質問票を用いて当該医師の専門能力を評価し、医師自身と患者、同僚の背景因子に起因する可能性のある予測因子について検討した。多くの情報源からの医師の評価は慎重に解釈すべき医師および患者の背景因子で調整したところ、ヨーロッパ以外の国で学位を取得した医師に対する患者の評価が低いことが示された。すなわち、これらの医師では、1)特に精神科医として診療業務を行っている医師の評価が低い、2)質問票を提出した白人患者が少ない、3)当該医師の診察を「たいへん重要(very important)」とした患者が少ない、4)「かかりつけ医に診てもらう」と回答した患者が少ない、などの傾向が認められた。同僚医師の評価は、イギリスおよび南アジア以外の国で学位を取得した医師において低かった。これらの医師では、1)代理医師として雇用、2)GPあるいは精神科医として診療、3)非専門的職員(staff grade)、準専門医(associate specialist)あるいは他の同等職種として雇用、4)医師と毎日あるいは毎週、専門的な交渉を行っていると答えた同僚が少ない、などの事例が確認された。完全調整後のモデルによる解析では、当該医師の年齢、性別、人種は、患者や同僚医師による評価の独立の予測因子ではなかった。患者や同僚の年齢、性別も、当該医師の評価の予測因子ではなく、同僚の人種も関連はなかった。これらの結果を踏まえ、著者は「医師の専門性に関する患者や同僚医師の評価を考慮する際は注意が必要である。標準化された専門性の評価法がない場合は、多くの情報源からの意見に基づく医師の評価は慎重に解釈すべき」と警告し、「専門家としての医師の評価には、評価者や評価対象医師の背景因子に起因する組織的バイアスが存在する可能性がある。医師としての妥当性の再確認を目的に、GMCの患者/同僚質問票を用いた調査を行う場合、多くの情報源からの評価は少なくとも初期段階においては「形成的評価」として行われるべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ダビガトラン、非弁膜症性心房細動患者で良好なbenefit-harmバランス示す

 トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンに比べ有益性(benefit)と有害性(harm)のバランスが優れることが示唆されている。今回、これを裏付ける知見が、イギリスBangor大学のJoshua Pink氏らが実施した定量的なbenefit-harm解析および経済的解析によって示された。ダビガトランは、非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンと代替可能な血栓予防薬とされるが、適正用量、benefit-harmバランス、費用対効果は明確にされておらず、費用対効果については相反する結果が報告されているという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月31日号)掲載の報告。高用量と低用量の費用対効果を検討 研究グループは、非弁膜症性心房細動患者におけるダビガトラン110mgまたは150mg(1日2回)と、ワルファリンの有益性を評価し、ダビガトランの費用対効果ついて検討を行った。 離散的事象シミュレーションモデルにRE-LY(Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy)試験で得られた知見を外挿して、定量的な経済的解析を行った。脳卒中リスクが中~高で、ベースラインのCHADS2[うっ血性心不全(CHF)、高血圧(HT)、年齢(Age)75歳以上、糖尿病(DM)、脳卒中(Stroke)/一過性脳虚血発作の既往でスコア化して脳塞栓症リスクを低、中、高に分類]の平均スコアが2.1の5万人の患者を想定し、シミュレーションを実施した。主要評価項目は、質調整生存年(QALY)およびQALY当たりの増分コストとした。INRの管理が良好な施設では費用対効果が低い ワルファリンに比べ、ダビガトランはnet benefitが0.094増加し、QALYは0.146延長した。高用量ダビガトラン(150mg×2回/日)のnet benefitは、ワルファリンに比べ94%増加し、低用量ダビガトラン(110mg×2回/日)よりも76%増加した。経済的解析では、ワルファリンとの比較における高用量ダビガトランの費用対効果比は低用量よりも優れ、延長したQALY当たりの費用は高用量の2万3,082ポンド(約2万6,700ユーロ、3万5,800ドルに相当)に対し、低用量は4万3,074ポンドと高価であった。また、ベースラインのCHADS2スコアが3以上の患者で高用量の費用対効果が優れた。 一方、国際標準化比(INR、検体と標準正常血漿のプロトロンビン時間の比)が良好にコントロールされている施設では、高用量ダビガトランによって延長したQALY当たりの費用は4万2,386ポンドに達し、費用対効果が低かった。 著者は、「ダビガトランは、ワルファリンに比べbenefitとharmのバランスが優れるとの知見を支持する結果が得られた」と結論し、「臨床的にも経済的にも、高用量よりも低用量のほうが高い利益をもたらすサブグループは認めなかった。高用量ダビガトランは、脳卒中リスクの高い患者やINRのコントロールが比較的不良な場合に費用対効果が優れる」と指摘している。

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内視鏡手術のトレーニング用システム2点を開発 11月の日本神経内視鏡学会にて発表へ

外科医向け精密削開練習用骨モデルを製造・販売する大野興業は14日、内視鏡下における水頭症手術(第3脳室底開窓)および経蝶形骨手術(下垂体腺腫)のトレーニング用システムを開発したことを発表した。同トレーニングシステムは、大平 貴之氏(慶應義塾大学 脳神経外科)監修のもとで行われた。水頭症患者の脳室内形状を軟質素材でリアルに再現した「水頭症手術モデル」は、第三脳室底開窓術トレーニングを可能にした。また、鼻腔内鼻甲介や頭蓋底大脳血管などの器官を硬質軟質各種素材でリアルに再現した「経蝶形骨手術モデル」は、粘膜切開剥離と軟骨折除からトルコ鞍底部骨除去に至る内視鏡トレーニングが可能だという。なお、経鼻内視鏡による手術は、脳神経外科と耳鼻咽喉科によるコラボレーションが一般的なため、鼻腔内の再現については、角田 篤信氏(東京医科歯科大学 耳鼻咽喉頭頸部外科)も監修に加わっている。同社は、これら2点のトレーニングシステムは練習者が内視鏡を用いて患者を施術する感覚を繰り返す練習とより深い手技の理解と習得に役立ち、これから内視鏡手術を学ぶ多くの若いドクターにとっても有効なツールになるのではと述べている。また、今回のシ新モデルの開発については、2011年11月17日・18日に岡山にて開催される第18回 日本神経内視鏡学会で発表される予定。プレスリリースはこちらhttp://www.atpress.ne.jp/view/23744第18回 日本神経内視鏡学会Webサイトhttp://www.congre.co.jp/jsne2011/

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新たなサーファクタント治療が早産児の人工呼吸器適応を低減

持続的気道陽圧法(CPAP)で自発呼吸が保持されている早産児では、細いカテーテルを用いたサーファクタント治療によって人工呼吸器の適応が低減することが、ドイツLubeck大学のWolfgang Gopel氏、Cologne大学のAngela Kribs氏らが実施したAMV試験で示された。サーファクタント治療は、通常、呼吸窮迫症候群の治療のために人工呼吸器を装着された早産児に気管内チューブを介して施行されるが、挿管せずに安定状態が保持されている早産児にはCPAPの不利益を考慮してこの治療は行われない。一方、ドイツの新生児集中治療施設では、気管内挿管や人工呼吸器を必要としないサーファクタント治療(治療中のみ気管内に細いカテーテルを留置してCPAPを行いながら施行)が広く普及しつつあるという。Lancet誌2011年11月5日号(オンライン版2011年9月30日号)掲載の報告。人工呼吸器の使用を回避して自発呼吸をうながす新たなサーファクタント治療AMV(Avoiding Mechanical Ventilation)試験の研究グループは、早産児において人工呼吸器の使用を回避して自発呼吸を促す新たなサーファクタント治療の有用性を評価するための無作為化対照比較試験を行った。2007年10月~2010年1月までに、ドイツの12の新生児集中治療施設に在胎週数26~28週、出生時体重1.5kg未満の早産児220人が登録された。これらの新生児が、生後12時間以内に標準治療群あるいは介入群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。すべての早産児はCPAPで安定状態を保持され、必要に応じてレスキュー挿管が行われた。介入群の早産児には、自発呼吸をうながすために吸入気酸素濃度(FiO2)が0.30以上となるよう、喉頭鏡で気管内に細いカテーテル(2.5~5 french)を留置して経鼻的CPAPが施行された。カテーテル留置後に喉頭鏡を外して1~3分間の気管内サーファクタント治療(100mg/kg体重)を行い、治療終了後は即座にカテーテルを抜去した。主要評価項目は、生後25~72時間において、人工呼吸器の適応もしくは人工呼吸器は使用しないが二酸化炭素分圧(pCO2)65mmHg(8.6kPa)以上かFiO2 0.60以上、あるいはその双方を要する状態が2時間以上に達した場合とした。生後2~3日および在院期間中の人工呼吸器適応率が有意に改善介入群に108人が、標準治療群には112人が割り付けられ、すべての新生児が解析の対象となった。生後2~3日における人工呼吸器の適応率は介入群の28%(30/108人)に対し標準治療群は46%(51/112人)であり、有意な差が認められた(絶対リスク低下:-0.18、95%信頼区間:-0.30~-0.05、p=0.008)。在院期間中の人工呼吸器適応率は介入群の33%(36/108人)に比べ標準治療群は73%(82/112人)と、有意差がみられた(絶対リスク低下:-0.40、95%信頼区間:-0.52~-0.27、p<0.0001)。人工呼吸器使用日数中央値は、介入群が0日、標準治療群は2日であり、生後28日までに酸素補給療法を要した早産児は30%(30/101人)、標準治療群は45%(49/109人)(p=0.032)であった。死亡数は介入群が7人、標準治療群は5人、重篤な有害事象はそれぞれ21人、28人であり、いずれも有意な差はなかった。著者は、「CPAPによって自発呼吸が保持されている早産児に対する細いカテーテルを用いたサーファクタント治療は、標準治療に比べ人工呼吸器の適応を低減させた」と結論したうえで、「鎮痛薬や鎮静薬の使用は主要評価項目に影響を及ぼさなかったが、極度な未熟児ではこれらの薬剤による血圧低下や脳灌流障害の有害な影響が指摘されており、介入群で使用頻度が低かったことがベネフィットにつながった可能性もある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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婦人科がんのNCCNガイドライン日本語版を公開

先端医療振興財団 臨床研究情報センターは11月4日、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)婦人科がんガイドライン 日本語版を公開。 本ガイドラインは、 日本婦人科腫瘍学会に監訳・監修、および日本の治療との相違点等に関するコメントも掲載している。日本語版は大腸がん、泌尿器がん、肺がんに引き続き第四弾。婦人科がんガイドラインの内容は ・子宮頸がん (Cervical Cancer)・子宮体がん(Uterine Neoplasms)・卵巣がん(Ovarian Cancer)・子宮頸がんのスクリーニング(Cervical Cancer Screening)・乳がんおよび卵巣がんにおける遺伝的 / 家族性リスク評価 (Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast and Ovarian) は近日公開予定詳しくはこちらhttp://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/index.html

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プライマリ・ケアにおける腰背部痛治療、予後リスクによる層別化管理法が有効

プライマリ・ケアにおける腰背部痛の治療では、予後のスクリーニングに基づく層別化管理法(http://www.keele.ac.uk/sbst/)が現在の最良の治療法よりも有効な可能性があることが、イギリス・キール大学のJonathan C Hill氏らの検討で示された。腰背部痛は、現在も世界中でプライマリ・ケアにおける大きな課題となっており、最近では、従来のすべての患者を一律に管理する戦略は患者の不均一性を無視しているため最適な治療とはいえないと考えられている。著者らが開発した予後のリスクで層別化(低、中、高リスク)した管理モデルは、画一的な治療アプローチを超えて、プライマリ・ケアにおいて臨床的、経済的なベネフィットをもたらすものと期待されていた。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月29日号)掲載の報告。プライマリ・ケアでの有効性を評価する無作為化対照比較試験研究グループは、プライマリ・ケアでの腰背部痛の治療における層別化管理法(介入群)と、層別化を行わない現時点での最良の治療法(対照群)の臨床的有効性と費用対効果を評価する無作為化対照比較試験を行った。イングランドの10ヵ所のプライマリ・ケア施設で腰背部痛の診察を受けた18歳以上の1,573人が、試験への参加依頼に応じた。これらの患者が介入群と対照群に2対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は、治療12ヵ月後のRoland Morris機能障害質問票(RMDQ)スコア(値が高いほど障害の程度が高い)による治療効果とした。質調整生存年(QALY)の増分および腰背部痛関連の医療費についても評価を行った。RMDQスコア、QALY、コストが改善解析の対象となった851例のうち、568例が介入群に、283例は対照群に割り付けられた。RMDQスコアの調整平均変化は、介入群が対照群に比べ治療4ヵ月(4.7 vs. 3.0、群間差:1.81、95%信頼区間:1.06~2.57)および12ヵ月(4.3 vs. 3.3、群間差:1.06、95%信頼区間:0.25~1.86)の時点で有意に大きかった。治療12ヵ月の時点で、介入群は対照群に比べQALYが平均で0.039延長し、コストが34.39ポンド削減(240.01 vs 274.40ポンド)された。著者は、「腰背部痛の予後スクリーニングに基づく層別化管理法は、プライマリ・ケアにおける将来の管理法として大きな意義を持つと考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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史上最多の患者報告数を更新―RSウイルス感染症 大流行の恐れ―

全国約3,000の小児科定点医療機関から報告されるRSウイルス感染症(Respiratory syncytial virus infection)の患者数が増え続けている。2011年の第42週(10月17日~23日)時点ですでに1,800例に迫り1)、この冬の大流行が現実になりつつある。RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスに感染することで発症する呼吸器感染症である。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、特に乳幼児の場合は生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%が感染するとされ、細気管支炎や肺炎など下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。例年、RSウイルス感染症の患者報告数は夏期に少なく、冬期にピークを迎える。しかし、2011年は夏ごろから例年を大きく上回るペースで増加し続け、2004年以降の同時期の報告数としては史上最多であり、現在こうした状況が第16週以降継続している(図)。第42週の都道府県別の報告数をみると、大阪府(130)、東京都(128)、愛知県(95)、北海道(90)、埼玉県(82)、福岡県(75)となっている。RSウイルス感染症は、乳幼児にとっては重症化すれば生命を奪われかねない、臨床的および公衆衛生的にきわめて重要な感染症である。今冬の大流行に備え、よりいっそうの注意が求められる。出典:1)IDWR(Infectious Diseases Weekly Report Japan)2011年第42週(10月17日~23日):通巻第13巻 第42号.(ケアネット 呉 晨)

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4価HPVワクチン、男性同性愛者の肛門上皮内腫瘍予防に有効

男性との性交渉を持つ男性のHPV感染関連の肛門上皮内腫瘍に対する、4価HPVワクチンの有効性と安全性を検討した試験の結果、グレード2または3の腫瘍の発生率低下が認められ、安全性プロファイルも良好であり、肛門がんリスクの低下に役立つ可能性が示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJoel M. Palefsky氏らが、ワクチンに関する大規模無作為化試験に参加した男性との性交渉を持つ男性602例についてサブ解析を行った結果、報告した。肛門がんは男女ともに増えており、特に男性との性交渉を持つ男性で増大している。HPV-16、-18を主としたHPV感染によって引き起こされる肛門がんは、先行して高度な(グレード2または3)肛門上皮内腫瘍が認められることから、本検討が行われた。NEJM誌2011年10月27日号掲載より。602例対象に有効性と安全性を検討対象となった602例は、7ヵ国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、クロアチア、ドイツ、スペイン、米国)から参加した16~26歳の男性との性交渉を持つ男性で、無作為に4価ワクチンを受ける群とプラセボを受ける群に割り付けられ36ヵ月間追跡された。主要な有効性評価項目は、HPVの4つのウイルスタイプ(6、11、16、18)感染に関連した肛門上皮内腫瘍または肛門がんの予防とした。有効性に関する解析はintention-to-treatと、per-protocol有効性集団(フォローアップを完遂した432例、71.8%)にて行われた。有害事象の発生率についても文書化された。4価ワクチンタイプのHPV肛門持続感染リスク、59.4%低下4価ワクチンの有効率は、intention-to-treatでは50.3%(95%信頼区間:25.7~67.2)、per-protocol集団では77.5%(同:39.6~93.3)であった。HPVのタイプを問わない場合の有効率は、intention-to-treatでは25.7%(95%信頼区間:-1.1~45.6)、per-protocol集団では54.9%(同:8.4~79.1)であった。肛門上皮内腫瘍の発生率は、100人・年当たり、intention-to-treatではプラセボ群17.5に対しワクチン群13.0であった。per-protocol集団ではプラセボ群8.9、ワクチン群4.0だった。4タイプのHPV感染関連のグレード2または3の肛門上皮内腫瘍の発生率は、intention-to-treatでは54.2%(同:18.0~75.3)減少、per-protocol集団では74.9%(同:8.8~95.4)減少した。4タイプのHPVの肛門への持続感染リスクは、intention-to-treatでは59.4%(同:43.0~71.4)低下、per-protocol集団では94.9%(同:80.4~99.4)低下した。ワクチン関連の重篤な有害事象は報告されなかった。(武藤まき:医療ライター)

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田中良哉教授が語る関節リウマチ治療の展望

2011年10月27日、東京で開催された関節リウマチ治療に関するプレスセミナー(主催:アボット ジャパン株式会社/エーザイ株式会社)において、産業医科大学医学部第1内科学講座教授 田中良哉氏=写真=による講演が行われた。講演では、2010年に発表された関節リウマチ治療における新分類基準および寛解基準、治療のあり方を示す「Treat to Target(T2T)」などについて解説したが、田中氏は、新分類基準を治療の「入り口」、新寛解基準を「ゴール」、そしてT2Tを「入り口」から「ゴール」へ至る「道筋」に例え、関節リウマチ診療における意義を強調した。また、最新関節リウマチ治療研究の1つとして、国内4施設(慶應義塾大学医学部内科、埼玉医科大学総合医療センター リウマチ・膠原病内科、産業医科大学医学部第1内科学、東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター)が共同で行った「HARMONY Study」を取り上げた。本試験は、平均罹患年数9年の関節リウマチ患者に生物学的製剤「アダリムマブ」(商品名:ヒュミラ)を投与、その治療効果を検証したレトロスペクティブ試験で、検証の結果、投与1年後には約4割の患者が臨床的寛解に入り、約6割の患者で関節破壊進行が止まったことが明らかになっている 1)。講演の最後、田中氏は「関節破壊を進行させないためには、まず臨床的寛解を達成すべきであり、その寛解を維持することが重要である」と強調した。また、寛解に向けた治療について、「ステロイド薬などによる対症療法は最小限にとどめ、MTXや生物学的製剤などによる根本療法を徹底的に行うべき」と述べ、本講演を締めくくった。 参考文献:1)T Takeuchi, Y Tanaka et al. Mod Rheumatol. 2011 Sep 7.(ケアネット 呉 晨)

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RSウイルスはなぜ脅威となるのか

 RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、生体外でも長時間の感染力を保つ。通常は鼻炎などの上気道炎の原因となるが、乳児や高齢者が感染すると、下気道炎を発症させることが問題 RSウイルスの潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされているが、咳嗽、鼻汁などの上気道症状が2~3日続いた後、感染が下気道に及ぶ。細気管支が狭くなるに従い、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈するがあり、心肺に基礎疾患を有する児においては、しばしば遷延化、重症化し、喀痰の貯留により無気肺を起こしやすくなる。初期症状としては発熱が多くみられるが、入院時には38℃以下、もしくは消失していることが多い。 また、RSウイルス感染症は、乳幼児における肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるという報告もあるが、乳児期がRSウイルス感染症に罹患すると、喘鳴および喘息を発症するリスクが高くなることも報告されている。 2011年第1~39週のRSウイルス感染症患者累積報告数(38,041)における年齢群別割合をみると、0歳児42.1%(0~5ヵ月19.4%、6~11ヵ月22.6%)、1歳児32.6%、2歳児13.5%、3歳児6.4%、4歳児3.0%の順となっており、1歳児以下が全報告数の約70%以上を、3歳児以下が全報告数の90%以上を占めているのは、2004年以降変わっていない(図)1)。 RSウイルス感染症は乳幼児において重症化しやすいが、そのなかでも早産児の入院率は正期産児よりも大幅に高いことが知られている。その原因の一つとして、早産児は正期産児に比べ肺の発達が不完全なため、下気道感染症を発症すると無気肺などが生じやすくなることが挙げられる。また、もう一つの原因として、早産児は気管支が狭いため、RSウイルス感染によって細気管支の気道上皮に炎症や浮腫が発生したり、気道分泌が亢進したりすると、気道狭窄に発展しやすいことが挙げられる。さらに、母親からの移行抗体の濃度が正期産児に比べて大きく下回るため、早産児のRSウイルスに対する中和抗体を含むIgGの濃度が正期産児より低いことも原因の一つとなる。 RSウイルス感染症には、いまだワクチンや有効な治療法がないが、現在、重症化を抑制する唯一の薬剤として、RSウイルスに対し特異的な中和活性を示すモノクローナル抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)が使用されている。その使用対象は以下のようになっている。1)在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児及び乳児 2)在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児及び乳児3)過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児及び幼児4)24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児及び幼児(パリビズマブ添付文書より)RSウイルス感染症には有効な治療法がなく、重症化した乳児に対しては酸素テントに収容するなどの対症療法を行うしかなく、乳幼児の感染予防は困難とされている。そのため、とくに重症化しやすい早産児に対しては、徹底した感染予防対策のほか、重症化の抑制も重要となる。出典:1)IDWR(Infectious Diseases Weekly Report Japan)2011年第39週:通巻第13巻 第39号.

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無作為化試験の結果から個人の治療効果を予測し治療するほうが実質的ベネフィットが大きい

無作為化試験のデータを基にした個人の治療効果予測は可能であり、その効果予測に基づき個々人の治療を行うことは実質的なベネフィットをもたらすとの報告が、BMJ誌2011年10月22日号(オンライン版2011年10月3日号)で発表された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJohannes A N Dorresteijn氏らが、一例としてJUPITER試験[ロスバスタチン(商品名:クレストール)投与による心血管疾患予防に関する試験]のデータを基に、新たに開発した予測モデルなどを用いて治療効果を予測し、それに基づく治療を行った場合の実質的なベネフィットを評価した結果による。LDL3.4mmol/L未満、高感度CRP2.0mg/L以上の健康な人を対象に比較試験は、JUPITER試験の被験者で、LDL-C値が3.4mmol/L未満でCRP値が2.0mmol/L以上の、健康な男女1万7,802人を対象とした。被験者のロスバスタチンによる心血管疾患予防効果(心筋梗塞、脳卒中、動脈系血管再生、不安定狭心症による入院、心血管系が原因の死亡)について、フラミンガム・リスクスコア、レイノルド・リスクスコア、そして新たに開発した予測モデルの3通りの方法で予測し、比較した。各モデルの絶対リスク低下の中央値は3.9~4.4%ロスバスタチン治療による10年間の心血管疾患絶対リスク低下の中央値は、フラミンガム・リスクスコアで4.4%(四分位範囲:2.6~7.0)、レイノルド・リスクスコアで4.2%(同:2.5~7.1)、新たな予測モデルでは3.9%(同:2.5~6.1)だった。こうした予測に基づく個別治療は、全対象者について治療の是非を決めることよりも、治療によるネット効果は大きく、その場合の治療決定閾値は2~7%だった。10年間に1件の心血管疾患を予防するために必要な積極的に治療する件数(number willing to treat ;NWT)は15~50だった。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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民間減量プログラム参加者の減量効果は、プライマリ・ケア医による減量治療の2倍

過体重、肥満者の減量達成について、プライマリ・ケア医による標準的な減量治療と、プライマリ・ケア医が地域ベースの民間健康プログラム提供者へと対象者を紹介した場合とを比較した結果、後者のほうが2倍量の減量を達成したことが報告された。過体重、肥満者の増大により、プライマリ・ケアと地域ベースでの減量のための効果的なアプローチが必要とされているなか、英国・MRC Human Nutrition ResearchのSusan A Jebb氏ら研究グループが、オーストラリア、ドイツ、英国の3ヵ国で772例の過体重または肥満者を対象に、前述の比較について検討する平行群非盲検無作為化試験を行った。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載報告より。12ヵ月間の減量治療群と民間減量プログラム参加群との効果を比較試験は2007年9月~2008年11月の間に、オーストラリア70ヵ所、ドイツ39ヵ所、英国6ヵ所の診療所から772例の過体重または肥満の成人患者を集めて行われた。被験者は18歳以上、BMI値27~35で、腹囲女性>88cm/男性>102cm、非インスリン治療中の2型糖尿病など肥満関連のリスク因子を1つ以上有していた。被験者はコンピュータ無作為化システムによって、各国臨床ガイドラインに即した標準治療を受ける群(395例)と、自由参加の民間プログラム「Weight Watchers」を受ける群(377例)とに割り付けられ、いずれも12ヵ月間にわたる介入を受け、その後12ヵ月間追跡された。Weight Watchersは、週1ミーティングで、体重測定、食事や運動のアドバイス、動機づけ、グループ支援を提供するプログラム(http://www.weightwatchers.com/index.aspx)。主要アウトカムは、12ヵ月間の体重変化とし、解析は、intention to treatおよび12ヵ月間の評価を完遂した人について行われた。民間減量プログラムのほうが臨床的に有用の可能性12ヵ月間の評価を完遂したのは、民間プログラム群は230例(61%)、標準治療群は214例(54%)だった。全例解析の結果、民間プログラム群の被験者の減量は、標準治療群の2倍以上を達成していた。すなわち、12ヵ月時点での体重変化の中央値は、LOCF法(途中脱落者のデータについて最終測定値を用いて解析を行う方法)では、民間プログラム群-5.06kg(SE 0.31)に対し、標準治療群は-2.25kg(同0.21)で、補正後格差は-2.77kg(95%信頼区間:-3.50~-2.03)だった。BOCF法(基線データを用いて解析を行う方法)では、民間プログラム群-4.06kg(SE 0.31)に対し、標準治療群は-1.77kg(同0.19)で、補正後格差は-2.29kg(95%信頼区間:-2.99~-1.58)だった。12ヵ月間の評価完遂者を対象とした解析では、民間プログラム群-6.65kg(SE 0.43)に対し、標準治療群は-3.26kg(同0.33)で、補正後格差は-3.16kg(95%信頼区間:-4.23~-2.11)だった。試験参加に関連した有害事象を報告した被験者はいなかった。著者は、「民間減量プログラムへ紹介するほうが、臨床的に有用で、体重管理の早期介入を果たし、より大きな減量効果を達成する可能性がある」と結論している。

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結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その1

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。フランス・ビセートル病院(パリ)のFrancois-Xavier Blanc氏らCAMELIA試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週後と8週後を比較したもので、2週後のほうが生存が有意に改善されたという。本報告の被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)だった。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。カンボジアの5病院から被験者を募り、2週後開始vs. 8週後開始を検討CAMELIA(Cambodian Early versus Late Introduction of Antiretrovirals)試験グループは、カンボジアの5つの病院から被験者を募り、ART開始について抗結核療法開始2週後と8週後とを比較する多施設共同前向き無作為化非盲検優越性試験を行った。具体的には、2006年1月31日~2009年5月27日に被験者を募り、「新たに結核と診断されたCD4+T細胞数200個/mm(3)以下のARTを受けていないHIV患者では、ARTの開始時期が死亡率に有意な影響をもたらす」との仮説検証を目的とした。ART療法は、スタブジン+ラミブジン+エファビレンツの3剤併用療法だった。被験者は、結核の標準治療(6ヵ月間の抗結核療法)開始後、無作為に早期ART開始群(抗結核療法開始2週±4日後に開始)か待機的ART開始群(同8週±4日後に開始)に割り付けられ、生存を主要エンドポイントに追跡された。待機的ART群と比べた早期ART群の死亡リスクは0.62倍と有意に低下試験には661例(早期ART群332例、待機的ART群329例)が登録され、中央値25ヵ月間追跡された。被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)、ウイルス量中央値は5.64 log(10)コピー/mLだった。結果、各群の死亡は、早期ART群は59/332例(18%)だったのに対し、待機的ART群は90/329例(27%)で、早期ART群のハザード比0.62(95%信頼区間:0.44~0.86、P=0.006)と同群死亡リスクが有意に低かった。一方で、結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)リスクは、早期ART群の有意な上昇が認められた(ハザード比:2.51、95%信頼区間:1.78~3.59、P<0.001)。また両群とも、CD4+T細胞数増大の中央値は114個/mm(3)であり、50週時点でウイルス量は患者の96.5%で検出されなくなっていた。(武藤まき:医療ライター)

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2004年のCONSORT拡張版発表後も、臨床試験報告の方法論基準に改善認められず

臨床試験報告に関する統合基準「CONSORT」(consolidated standards of reporting trials)の拡張版が2004年に発表されて以降、クラスター無作為化試験の報告基準には多少の改善がみられたものの、方法論基準には改善が認められないことが報告された。カナダ・Women’s College Hospital(トロント)のN M Ivers氏らが、300のクラスター無作為化試験について調べ明らかにしたもので、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年9月26日号)で発表した。クラスター無作為化試験300のCONSORT遵守について、04年以前と05年以降を比較CONSORTの初版は1996年に作成されたが、その初版発表の影響についての調査では、1997~2000年に発表されたクラスター無作為化試験において、その大部分がCONSORTで推奨する方法論基準に遵守していないことが明らかになった。そのため2004年、方法論基準と報告基準に関する項目を強化した拡張版が作成された。Ivers氏らは、2000~2008年に英語雑誌にて発表された300のクラスター無作為化試験について、報告基準の14項目と方法論基準の4項目のCONSORT拡張版遵守の状況について調査を行い、2000~2004年に発表されたものと2005~2008年に発表されたものを比較した。報告基準14項目のうち5項目は改善、方法論基準4項目はいずれも改善認められず結果、報告基準14項目のうち5項目については、2005年以降に発表されたものに有意な改善が認められた。具体的には、無作為化されたクラスターについての説明、クラスターのデザインの正当性、アウトカムの評価はブラインドだったか否か、無作為化されたクラスターの数、追跡を失ったクラスターの数の5項目だった。一方で、方法論基準の4項目については、いずれも有意な改善は認められなかった。また全体的に、臨床的環境下の試験は非臨床的環境下の試験よりも、また医学雑誌に発表された試験結果はそうでないものよりも、報告基準や方法論基準がより遵守されている傾向が認められた。研究グループは、「クラスター無作為化試験におけるCONSORTの報告基準と方法論基準の遵守を促すには、さらなる改善のための働きかけが必要だ」と結論している。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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術前の貧血は非心臓手術患者の予後を増悪させる

非心臓手術を受ける患者では、術前の貧血はたとえそれが軽度であっても術後30日以内の合併症や死亡のリスクを上昇させることが、レバノンAmerican University of Beirut医療センターのKhaled M Musallam氏らの検討で示された。心臓手術前に貧血がみられた患者は、術後の合併症の罹患率および死亡率が増大することが知られているが、非心臓手術における術前の貧血が予後に及ぼす影響は不明であった。術中の輸血は、少量であっても合併症率、死亡率を上昇させることが報告されており、術前貧血は術中輸血の機会を増大させるためリスク因子とみなされるという。Lancet誌2011年10月15日号(オンライン版10月6日号)掲載の報告。術前貧血が術後アウトカムに及ぼす影響を後ろ向きに評価するコホート試験研究グループは、非心臓手術を受ける患者において、術前の貧血が術後の合併症率、死亡率に及ぼす影響をレトロスペクティブに評価するコホート試験を実施した。「米国外科学会の手術の質改善プログラム(American College of Surgeons’ National Surgical Quality Improvement Program)」のデータベース(世界211病院からプロスペクティブに集められたアウトカムのレジストリー)を用い、2008年に主な非心臓手術を受けた患者のデータについて解析した。30日合併症率および30日死亡率(心臓、呼吸器、中枢神経系、尿路、創傷、敗血症、静脈血栓塞栓症)、人口学的因子、術前・術中のリスク因子に関するデータを収集した。貧血は軽度(ヘマトクリット値が男性29~39%、女性29~36%)および中等度~重度(男女ともヘマトクリット値<29%)に分けた。リスク因子(65歳以上、心疾患、重度COPD、中枢神経疾患、腎疾患、がん、糖尿病、敗血症、肥満)に基づくサブグループにおいて、貧血が術後のアウトカムに及ぼす影響について多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。術後30日合併症率、死亡率が有意に上昇非心臓手術を受けた患者22万7,425例のうち6万9,229例(30.44%)に術前の貧血が認められた。術後の30日死亡率は、術前非貧血患者よりも貧血患者で有意に高く(調整オッズ比:1.42、95%信頼区間:1.31~1.54)、この差は軽度貧血(同:1.41、1.30~1.53)および中等度~重度貧血(同:1.44、1.29~1.60)に一致して認められた。術後30日合併症率も、術前非貧血患者に比べ貧血患者で有意に高く(調整オッズ比:1.35、95%信頼区間:1.30~1.40)、死亡率と同様に軽度貧血(同:1.31、1.26~1.36)および中等度~高度貧血(同:1.56、1.47~1.66)で一致していた。著者は、「非心臓手術を受ける患者では、術前の貧血はたとえそれが軽度であっても術後30日以内の合併症や死亡のリスクを上昇させる」と結論し、「この知見は、年齢、性別、手術手技にかかわらず一貫して認められ、貧血が既知のリスク因子と併存すると、リスク因子がアウトカムに及ぼす影響がさらに増大した」としている。(菅野守:医学ライター)

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MF59アジュバント不活化インフルエンザワクチン、乳幼児への有効性確認

新たなアジュバント製法によって開発された不活化インフルエンザワクチンについて、乳幼児に対する有効性が無作為化試験によって確認されたことが報告された。不活化インフルエンザワクチンは、乳幼児においては有効性が乏しいことが知られている。新たなアジュバントは水中油型乳剤のMF59で、成人用季節性インフルエンザに対する三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)のアジュバントとして1997年以降27ヵ国で利用接種が承認されている。乳幼児に対する有効性を検討した無作為化試験は、2ヵ国2シーズンにわたって行われた。NEJM誌2011年10月13日号掲載報告より。アジュバントワクチン(ATIV)、非アジュバントワクチン(TIV)、対照群で無作為化試験乳幼児(生後6ヵ月以上72ヵ月未満)におけるMF59アジュバントの三価不活化インフルエンザワクチンの有効性に及ぼす影響について検討した試験は、2回のインフルエンザ流行期にわたり、2007~2008年シーズンにドイツ(654例)、2008~2009年シーズンにドイツ(2,104例)、フィンランド(1,949例)の、合計4,707例の健常児を対象に行われた。被験児は、MF59アジュバント添加ワクチン(ATIV)接種群、アジュバント非添加ワクチン(TIV)接種群、非インフルエンザワクチン接種(対照)群に無作為化され接種を受け、インフルエンザ様疾患に対する絶対効果と相対効果について評価された。インフルエンザ様疾患の確認はPCR法にて行われた。なお接種間隔・回数はいずれも、28日間隔の2回で行われ、またアジュバント用量は年齢(生後6~36ヵ月未満、36~72ヵ月未満)により調整がされた。インフルエンザ様疾患発症率、ATIV群0.7%、TIV群2.8%、対照群4.7%PCR法にて確認されたインフルエンザ様疾患の発症率は、2回の流行期を合わせて、ATIV群0.7%、TIV群2.8%、対照群4.7%であった。全インフルエンザ株110例中94例はワクチンと一致するH3N2ウイルスだった。それら(全インフルエンザ株)に対する絶対効果は、ATIV群86%(95%信頼区間:74~93)、TIV群43%(同:15~61)であり、ATIVのTIVに対する相対効果は75%(同:55~87)だった。対象年齢別にみた有効率は、ATIV群は、生後6~36ヵ月未満児群79%(同:55~90)、36~72ヵ月未満児群92%(同:77~97)であったが、TIV群はそれぞれ40%(同:-6~66)、45%(同:6~68)だった。抗体反応はATIVのほうが高く、その状態は181日目まで持続した。ATIVとTIVそれぞれの、全身反応・局所反応の発現率は、生後6~36ヵ月未満児群においては同程度であったが、36~72ヵ月未満児群では全身性イベントの頻度がATIV群では63%と、TIV群44%、対照群50%より高かった。重篤な有害事象は3群で同程度だった。(武藤まき:医療ライター)

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リビング・ウィルが終末期医療費を抑制、院内死亡を低下、ホスピス利用を増大:米国

終末期の医療行為を特定のものに制限する事前指示書「リビング・ウィル」と米国終末期医療費、治療内容との関連を調べた結果、同費用が高い地域において同指示書があることは費用の有意な低下と関連していることが報告された。また、同費用が中程度~高い地域における院内死亡率の低下やホスピス利用の増大も認められたという。米国・ミシガン大学のLauren Hersch Nicholas氏らが、約3,300人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月5日号で発表した。終末期医療費が高い地域で、リビング・ウィルにより約5,600ドル有意に低下研究グループは、1998~2007年に死亡した65歳以上のメディケア加入者で、前向きに調査データが収集されていたHealth and Retirement Study被験者3,302人について、メディケア保険請求データと全米死亡統計(National Death Index)に基づき分析を行った。死亡者の入院先地域で照会したメディケア支払額ごとに、リビング・ウィルと終末期医療費、治療内容との関連について多変量回帰モデルを用いて解析した。主要評価項目は、死亡前半年間のメディケア医療費、延命治療、ホスピス・ケア、病院死亡率とされた。結果、終末期医療費が高い地域では、リビング・ウィルのない人の1人当たり終末期医療費の予測平均値が3万9,518ドルだったのに対し、リビング・ウィルのある人の同医療費の補正後予測平均値は3万3,933ドルと、5,585ドル低かった(95%信頼区間:-1万903~-267、p=0.04)。一方、終末期医療費が低い地域と中程度の地域では、リビング・ウィルの有無による終末期医療費の補正後予測平均値に有意差は認められなかった。終末期医療費が中程度~高い地域、院内死亡が低下、ホスピス入所が増大またリビング・ウィルは、終末期医療費が中程度~高い地域において、補正後院内死亡率予測値の低下と関連していた。同医療費中程度の地域は-5.3ポイント低下(95%信頼区間:-10~-0.4)、高い地域では-9.8ポイント低下していた(同:-16~-3)。さらにリビング・ウィルは、終末期医療費が中程度~高い地域において、補正後ホスピス入所率予測値の増大と関連していた。同医療費中程度の地域で11ポイント増(同:6~16)、高い地域で17ポイント増(同:11~23)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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