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〔CLEAR! ジャーナル四天王(44)〕 MADIT試験の変遷

はじめに 欧米における心臓突然死は年間35万人と推定され、その約80~90%が虚血性心疾患による心室性頻脈性不整脈が原因とされている1)。わが国における心臓突然死は年間6~8万人と推測され2)、約35%が心筋症(拡張型、肥大型、催不整脈右室心筋症など)、約30%が虚血性心疾患、その他プライマリ不整脈疾患(ブルガダ症候群、QT延長症候群、J波症候群など)の内訳となっている3)。心臓不整脈死の予防に対して、植込み型除細動器(ICD)の有効性はすでに確立されているが、本稿では主にMADIT試験の変遷に準拠して概説してみる。MADIT(Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial)-I試験4) 陳旧性心筋梗塞の既往を持つ左室駆出率35%以下の心不全例(NYHA I~III)で、無症候性の非持続性心室頻拍(心拍数>120/分、3連発以上)を有し、プロカインアミド無効な心室頻拍・心室細動が誘発された196例を対象に、ICD治療群と抗不整脈薬治療群の無作為割り付けによる生命予後を比較した試験である(平均観察期間27ヵ月)。その結果、ICD治療群は抗不整脈薬治療群に比し総死亡率を54%低下させた(p=0.009)。サブ解析では、左室駆出率26%未満の高度左室機能障害例でとくに高いICD治療群の生命予後改善効果が示された。本試験により、虚血性心疾患に対するICD治療の高い心臓突然死の一次予防効果が確認された。MADIT-II試験5) 同様に、陳旧性心筋梗塞の既往を持つ左室駆出率30%以下の心不全患者1,232例(NYHA I~III)を対象に、非持続性心室頻拍や心室頻拍・心室細動の誘発性は問わず、ICD治療群742例と抗不整脈薬群490例の無作為割り付けによる生命予後を比較した試験である(平均観察期間20ヵ月)。その結果、ICD治療群は抗不整脈薬治療群に比し総死亡率を31%低下させた(p=0.007)。サブ解析では、左室駆出率25%未満の高度左室機能障害例やQRS幅150msec以上の心室内伝導障害例における高いICD治療群の生命予後改善効果が示された。MADIT-CRT(Cardiac Resynchronization Therapy)試験5) 虚血性、非虚血性を問わず左室駆出率30%以下、QRS幅130msec以上の心不全患者1,820例(NYHA I~II)を対象に、ICD治療群731例とCRTD治療群1,089例の3:2無作為割り付けによる生命予後、ならびに心不全発症の複合イベントを比較した試験である(平均観察期間2.4年)。その結果、CRTD治療群はICD治療群に比し複合イベント率を41%低下させた(p<0.001)。サブ解析では、QRS幅150msec以上の心室内伝導障害例における高いCRTD治療群の心不全予防効果が示された。MADIT-RIT(Reduce Inappropriate Therapy)試験7) 以前より、ICDの上室性頻脈性不整脈などによる不適切作動は患者の生命予後を悪化させることが指摘されていた8)。そのICDの不適切作動を減らすために、ICD移植1,500例を対象に異なる3つの作動プログラミング設定(標準、高心拍、待期的)について検証した国際多施設無作為化試験の結果が、最近になって報告された(平均観察期間1.4年)。従来のICD標準作動プログラム群(170~199拍/分は2.5秒待機で作動、200拍/分以上は1.0秒待機で作動)に比し、高心拍数作動群(200拍/分以上は2.5秒待機で作動)は、初回不適切作動を79%減らし(p<0.001)、全死亡を55%減らす(p=0.01)結果であった。同様に、従来のICD標準作動プログラム群に比し、待機的作動群(170~199拍/分は60秒待機で作動、200~250拍/分は12秒待機で作動、250拍/分以上は2.5秒で作動)は、初回不適切作動を76%減らし(p<0.001)、全死亡を44%減らす(p=0.06)結果であった6)(参考文献6 Figure1、Figure2)。本研究の結果より、ICDの作動プログラミング設定を適切に調節することにより、誤作動を減らし、患者の生命予後を改善させることが示された。おしまいに イスラエル出身のミロウスキー博士によって開発されたICDは、第1例目の移植術が始まってすでに30年以上も経過している。もし、より疼痛が少ない抗頻拍ペーシングや短時間での除細動が可能となれば、患者の精神的苦痛も軽減されるであろう。今後のICD治療には、患者の生命予後改善のみならず、日常生活の質(QOL)向上を目的としたデバイスの開発ならびに設定の配慮が必要であろう。参考文献1. Bayés de Luna A, et al. Am Heart J. 1989; 117:151-159.2. 豊嶋英明ほか.心臓性突然死の疫学.In:村山正博ほか編.心臓性突然死.医学書院;1997.p.6-18.3. 笠貫宏.ICDの適応.日本心臓ペーシング・電気生理学会植込み型除細動器調査委員会編.植込み型除細動器の臨床.医学書院;1998:p.15-32.4. Moss AJ, et al. N Engl J Med. 1996; 335: 1933-1940.5. Moss AJ, et al. N Engl J Med. 2002; 346: 877-883.6. Moss AJ, et al. N Engl J Med. 2009; 361: 1329-1338.7. Moss AJ, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 2275-2283.8. Daubert JP, et al. J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 1357-1365.

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MDMA誘発の高熱にメマンチンが有用?:自治医大

 自治医科大学精神医学教室教授・西嶋康一氏ら研究グループはラット試験の結果、違法ドラッグ3,4-Methylenedioxymethamphetamine (MDMA)が引き起こす可能性がある致命的ともなりうる高熱に対し、メマンチンが有用である可能性が示唆されたことを報告した。Neuroscience Letters誌2012年12月7日号(オンライン版2012年11月6日号)の掲載報告。 本研究は、効果的な薬物治療が確立されていないMDMA誘発の高熱に対する、メマンチン、非競合的N-methyl-d-aspartate(NMDA)型グルタミン酸受容体拮抗薬、α-7ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)拮抗薬の効果について、ラット試験により検討することを目的とした。 主な内容は以下のとおり。・MDMA(10mg/kg)の投与前あるいは投与後のメマンチン(10または20mg/kg)投与により、いずれの場合もラットの最高体温は有意に低下した。・マイクロダイアリシス法の結果、MDMA投与前のメマチン20mg/kg投与は、視床下部前部のMDMA誘発により増大したセロトニン(5-HT)およびドパミン(DA)への影響は認められなかった。・非競合的NMDA受容体拮抗薬のMK-801(0.5mg/kg)や、競合的NMDA拮抗薬のCGS 19755(5mg/kg)について、事前投与の場合、MDMA誘発の高熱は有意に低下した。一方、選択的α-7 nAChR拮抗薬のメチルリカコニチン(6または10mg/kg)では低下はみられなかった。・以上の結果は、MDMA誘発の高熱におけるメマンチンの抑制効果は、NMDA受容体拮抗薬そのものの活性によるものであり、5-HTやDAシステムへのメマンチンの効果によってもたらされるものではない可能性を示唆する。・本研究は、メマンチン中等量の投与が、ヒトにおけるMDMA誘発の高熱の治療薬として役立つ可能性を示唆する。関連医療ニュース ・難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」 ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か? ・NMDA拮抗薬メマンチンによる再発低血糖症の拮抗ホルモン減弱のメカニズム

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(43)〕 もうひとつのeGFR算出式(CKD-EPI)を使った200万人規模のメタ解析が明らかにする『高齢者CKDはAgingに非ず』

今世紀になって、CKDが新たな心血管リスクとして注目されているのは周知のことである。CKD診療のゴールは、『健康長寿(healthy longevity)の実現』と『腎不全の回避』を両立させることにある。CKDの診断基準は、持続するeGFRの低下あるいは、アルブミン尿(蛋白尿)をはじめとする腎障害のいずれか(あるいは両方)を満たす場合とされたが、KDIGO Controversy Conferenceに代表される議論の末1)、eGFR・アルブミン尿(タンパク尿)・腎障害の原因を考慮したComposite Rankingが採用されることになった。 本論文はCKDクライテリアであるeGFRとアルブミン尿(蛋白尿)について、全死亡・末期腎不全(ESRD)に対するサロゲートマーカーとしての妥当性・正当性を、改めて検討することを主眼にしている。とくにeGFRの低下と加齢については、その独立性についての疑問が指摘されており、CKDの分類以前に、受容できる臨床リスクとしての性能や精度が問われていた背景がある。eGFRの低下は高齢者では加齢による結果であり、不可避な老化現象ではないかといった議論が根強く残っていた。本研究では、eGFRの算出にあたり、従来のModification of Diet in Renal Disease(MDRD)Study式に代わって、同じ変数を使いながら、よりリスク予測能が高いとして注目されている慢性腎臓病疫学共同研究(CKD-EPI)式2)を用いていることも大きな特色である。 200万人を超える膨大なデータを解析した結果、eGFR(CKD-EPI)とアルブミン尿(蛋白尿)はともに、年齢とは独立したリスク(全死亡、ESRD)であった。一般集団・ハイリスク集団を対象とした解析から、全死亡に対するeGFRの相対リスクは、加齢とともに低下する傾向にあったが、絶対リスクは、加齢とともに増加する傾向が認められた(Figure1 A/C)。eGFRの低下は、加齢によるリスク上昇により相殺される傾向があるといえる。eGFRを標的にした治療には、年齢別にcost-effectivenessを考慮する必要がでてくるかもしれない。ESRDをエンドポイントとした解析では、アルブミン尿(蛋白尿)は、加齢に対する独立性は認められるものの、年代によるリスク差がほとんどないことが特徴であった(Figure2 B/D)。この結果は、CKDクライテリアに質的診断を加味したComposite Rankingの妥当性を裏付けているといえよう。 先行するCKD-EPI式とMDRD式によるeGFRの算出結果を比較検討した研究から、従来のMDRD式によって、低eGFRによるCKDが過大に評価されている可能性が示唆された3)。精度の足りない計測や測定法による数値に基づいた議論が、診療の最適化を目指すガイドラインを有名無実にすることがあってはならないのは、言うまでもないことであろう。

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長期アスピリン常用と加齢黄斑変性リスクとの関連/JAMA

 アスピリンの常用と加齢黄斑変性(AMD)発症との関連について調査した長期試験の結果、服用期間が5年では有意な関連はみられなかったが、10年では、わずかだが統計的に有意な発症遅延リスクの上昇が血管新生型AMDでみられたことを、米国・ウィスコンシン大学医学部眼科部門のBarbara E. K. Klein氏らが報告した。アスピリンは関節炎などの疼痛緩和や心保護効果があるとして広く使用されている。その使用は、眼科医にとっても関心が高いという。JAMA誌2012年12月17日号掲載報告より。5年ごと20年間の眼底検査結果とアスピリン服用有無との関連を評価Klein氏らは、アスピリンの常用とAMD発生との関連を調べる「Beaver Dam Eye Study」を行った。同試験は、ウィスコンシン州住民ベースの長期にわたる加齢性眼疾患について調査したもので、1988~1990年から2008~2010年の20年間に、検査受診が5年ごとに行われた(ベースラインを含め計5回)。 試験には、ベースライン時に43~86歳の4,926例が参加した。被験者は、その後の調査で、アスピリンを週2回以上、3ヵ月以上服用しているかを質問された。 主要評価項目は、AMD発症が早期(ターゲット受診日より6ヵ月以上前)、遅延期(ターゲット受診日後6ヵ月以降)、および遅延期の2タイプの発症(血管新生型AMD、萎縮型AMD)とした。評価は、Wisconsin Age-Related Maculopathy Grading Systemによる眼底検査に基づき行われた。10年常用とわずかだが有意な血管新生型AMD発症とが関連 平均追跡期間は14.8年だった。試験全体で、早期AMD発症は512例(6,243人・受診につき)、遅延期AMD発症は117例(8,621人・受診につき)であった。 眼底検査前のアスピリン常用が10年で、AMDの遅延期発症と有意な関連がみられた[ハザード比(HR):1.63、95%信頼区間(CI):1.01~2.63、p=0.05]。 また、アスピリン10年常用は、AMDのタイプ別にみると、血管新生型AMDとの有意な関連がみられたが(HR:2.20、95%CI:1.20~4.15、p=0.01)、萎縮型との関連はみられなかった(同:0.66、0.25~1.95、p=0.45)。 一方で、アスピリン10年常用と早期AMDとの関連はみられなかった(HR:0.86、95%CI:0.65~1.13、p=0.28)。また早期AMDは、アスピリン5年常用でも関連はみられなかった(同:0.86、0.71~1.05、p=0.13)。アスピリン5年常用は、遅延期AMDとの関連もみられなかった(同:0.91、0.57~1.46、p=0.69)。 上記の結果について著者は、確証のためのさらなる試験が必要だと述べるとともに、「もし、アスピリン常用と血管新生型AMD発症との関連が確認されたら、アスピリンを常用する、とくに心血管疾患を有する人での血管新生型AMDの予防あるいは遅延のために、原因メカニズムを明らかにし、アスピリンの影響を遮断するための手法を開発しなければならない」とまとめている。

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統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証!

 いくつかの抗精神病薬による体重増加には、遺伝的要因が関与していると言われている。一般人における肥満に関連する遺伝子にFTO遺伝子がある。イギリス・クイーンズ大学ベルファストのGavin P. Reynolds氏らは、このFTO遺伝子における共通のリスク多型(rs9939609)が抗精神病薬誘発性の体重増加や肥満と関連があるかどうかを検討した。The international journal of neuropsychopharmacology / official scientific journal of the Collegium Internationale Neuropsychopharmacologicum (CINP).誌オンライン版2012年12月14日号の報告。 以下2つのサンプルを検討した。(1)初めて抗精神病薬の投与を受けた初回エピソード患者93例における体重の変動を最大12ヵ月間観察した。(2)慢性期統合失調症患者187例における肥満や代謝機能不全を測定し評価した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬にナイーブな患者の体重増加とFTO遺伝子との間に関連は認められなかった。・慢性期統合失調症患者では腹囲、ウエスト/ヒップ比、中心性肥満の頻度に関連づけられたBMIとFTO遺伝子との間に有意な関連が認められた。関連医療ニュース ・統合失調症患者における「多飲」その影響は? ・日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証! ・情動障害患者よりも統合失調症患者で有意に体重を増加

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【寄稿】トピックス「舌下免疫療法」

概説花粉症を含むアレルギー性鼻炎はI型アレルギーであり、その治療の基本はアレルゲンの除去、回避である。しかし完全に行うことは不可能であり、エビデンスも少なくARIA(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)ガイドラインでは推奨度Dである1)。このため、抗原特異的治療としてアレルゲン免疫療法(SCIT)が唯一、アレルギー疾患に対する根本的な治療法であり、治癒させうる治療法である。SCITは1911年にNoonが初めて行って以来2)、現在まで続いている。国際的にSCITはアレルギー専門医になくてはならない治療法であり、高い効果が示されている。しかし、アナフィラキシーをはじめとする種々の全身的副作用のため、本邦では一般的治療法にはなっていないのが現状である。このSCITの副作用を減少させるため、欧米では抗原投与ルートを変更させた代替免疫療法(局所アレルゲン免疫療法)がかなり以前より行われている。その中で最も注目を浴びているのが舌下免疫療法(SLIT)であり、1990年に初めてTariらによって報告された3)。日本では2000年より日本医科大学耳鼻咽喉科により臨床試験が行われ、2010年からスギ花粉症に対し、2012年からダニ通年性アレルギー性鼻炎、喘息に対して開発治験が始められた。理論・機序SLITの効果発現機序では局所の免疫誘導が最も考えやすいが、現在まで効果発現機序の検討は少ない。1999年のSLIT開始早期での末梢血単核細胞(PBMC)の活性化は、少なくとも舌下した抗原の免疫誘導が全身に生じたことを示している。またSCITでの報告と同じく、全身性の制御性T 細胞がその有効性を左右していると考えられている4)。現在まで千葉大学のグループのスギ花粉症に対する臨床効果もほぼ同等であるが、効果発現機序としてスギ特異的T細胞クローンの減少を報告している5)。また、日本医科大学と三重大学グループの試験では、SLITにおいても誘導性制御性T細胞Tr1が誘導され、SLITの効果発現機序の根幹であることが示唆された6)。今後、症例数を増加させた同様の検討あるいは局所リンパ節などの検討から、SLITの効果発現機序をさらに明らかにしなければならない。実際の方法・手技・対象1 SLITの方法国際的な報告を受け、日本特有のスギ花粉症に対してSLITを適応させるべく、2000年より日本医科大学倫理委員会の承認を受け、SLITをスギ花粉症患者に対して行った7)。2 投与スケジュール投与スケジュールは、1週目から4週目までは毎日、5週目では最高濃度20滴を1週間のうち2回、6週目以降は季節を通じて1週間に1回、抗原エキス2,000 JAU/mLを20滴舌下に投薬した(表1)。これは国際的に初めてSLITを開始したフランスのStallergenesの液剤プロトコールであり、当時としては標準的なものである。しかし、現在治験が行われているスギ花粉症に対するSLIT治験TO-194SLでは開始濃度は200JAU/mLであり、また投与は最後まで毎日行うスケジュールとなっている。表1 抗原エキス舌下投与スケジュール画像を拡大する成績および長期予後<スギ花粉症に対するSLITの効果>2005年には、スギ・ヒノキ花粉飛散は約12,000個/cm2/シーズンと大量飛散の年であった。今までのランダム化されていない比較研究ではなく、エビデンスの作成として56症例(実薬35症例、プラセボ21症例)でのプラセボ対照の二重盲検比較試験(RCT)を行った。今までの薬物療法との比較研究では、症状スコアではSLITは薬物療法と有意差がなかったが、症状薬物スコアではSLIT群が有意に低く、薬物療法より効果を示していた。2005年のRCTでは、国際的な評価を得ているSLITがスギ花粉症においてもプラセボより有意に症状スコア(図1)、QOLスコア(図2)を下げたことが示された8)。図1 症状スコアの推移画像を拡大する図2 QOLスコアの変化画像を拡大する長期予後はまだまだデータが少ないが、施行後3年の症状軽快を示すデータ、他の抗原感作を抑制するというSCITと同じようなデータが出つつある9)。今後、さらに長期予後のデータを収集しなければならない。注意事項副作用は少数であるが確認された。もちろん、重篤なアナフィラキシーや喘息発作はないが、抗原投与時の舌や口腔の痒み・しびれ感、鼻汁増加、皮膚の痒み、蕁麻疹が合わせて10%程度の頻度で認められた(図3)。また口腔底の腫脹は通常では認められない高度のものも存在し、その場合の施行継続/休止/停止などの決定にはアレルギー診療での対処が求められる。今回の症例数は少なく絶対的な安全性の根拠にはならないが、過去の国際的な報告も併せ、注射との実際的な関係を考えても高度な副作用は少ないことが示唆される。図3 口腔底の腫脹展望と今後の方向性欧米ではすでにこの舌下免疫療法が一般的な治療となっていて、フランスのStallergenes、デンマークのALK ABELLOなどすでに製剤としてのSLIT製品があり、その一般臨床への応用が各国で始まっている。日本における開発は、日本アレルギー学会の「アレルゲンと免疫療法専門部会」(部会長:増山敬祐)のもとで始まっている。日本での抗原製品の作成としては、先に述べたスギ花粉症に対する舌下用抗原エキスの開発が鳥居薬品により進められ、評価最終年が2012年であった。薬価収載は2013年秋以降になると予想されている(編集部注:2012年12月25日承認申請)。また、検討会でも海外での製材導入が検討されたが、StallergenesとALK ABELLOの舌下用ダニ抗原エキスが日本企業と連携し、開発を進めることが決定され、臨床試験が2012年秋から開始される予定である。日本ではまだまだ施行例が少なく、重篤な副作用はないが、施行にあたってはアレルギー学、免疫学の知識が不可欠であり、使用を試みる医師に対しての勉強会・講習会などの開催が必要だと考える。引用文献1) ARIA Workshop Group. A Allergy Clin Immunol. 2001;108:s147-s334.2)Noon L. Lancet. 1911;1:1572-1574.3)Tari MG, et al. Allergol Immunopathol (Madr). 1990;18:277-284.4)Ciprandi G, et al. Allergy Asthma Proc. 2007;28:574-577.5)Horiguchi S, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2008;146:76-84.6)Yamanaka K, et al. J Allergy Clin Immunol. 2009;124:842-845.7)Gotoh M, et al. Allergol Int. 2005;54:167-171.8)Okubo K, et al. Allergol Int. 2008;57:265-275.9)Di Rienzo V, et al. Clin Exp Allergy. 2003;33:206-210.

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家族性のがんリスクに関する検討/BMJ

 がんの家族性リスクが早期発症例に限定されるかどうかを判断するため、ドイツがん研究センターのE Kharazmi氏らは、全国規模のSwedish Family-Cancer Databaseを用いて前向きコホート研究を実施した。その結果、「子」のがんリスクが最も高くなるのは「親」が若い年齢で同一がんが診断された場合だが、「親」が高齢で診断された場合においてもリスクが増加することが認められた。著者は、「家族性のがんは、高齢でがんに罹患した家族を持つ人々における早期発症をいうのではなく、早期発症と遅発性発症という別個の構成要素があるのかもしれない」と考察している。BMJ誌2012年12月20日号に掲載。 本研究の対象は、1931年以降に生まれたすべてのスウェーデン人とその両親の計1,220万人で、主なアウトカムは診断時の年齢による同一がんの家族性リスクであった。 主な結果は以下のとおり。・「親」が若い(40歳未満)ときにがんと診断された場合に、家族性リスクが最も高かった。・「親」が高齢(70~79歳、80~89歳)で診断された場合でも、大腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、黒色腫、皮膚扁平上皮がん、非ホジキンリンパ腫では、家族性リスクが有意に増加した。・「親」がより高齢(90歳以上)で診断された場合でも、「子」における同一がんのリスクは、皮膚扁平上皮がん(ハザード比:1.9、95%信頼区間:1.4~2.7)、大腸がん(同1.6、同1.2~2.0)、乳がん(同1.3、同1.0~1.6)、前立腺がん(同1.3、同1.1~1.6)で有意に増加した。・「親」が50歳未満でがんに罹患し、「子」が60~76歳でがんと診断された場合は、ほぼすべてのがんで家族性リスクの有意な増加はみられなかった。

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有棘細胞がん、ケラトアカントーマをダーモスコピーで見分けるコツ

 有棘細胞がん(SCC)とケラトアカントーマを、ダーモスコピーによって他の非着色皮膚病変と見分けるには、ホワイトサークル、ケラチン、出血斑が手掛かりとなることを、Cliff Rosendahl氏らがオーストラリアのプライマリ・ケア設定での試験の結果、報告した。Archives of Dermatology誌2012年12月号(オンライン版2012年9月21日号)の掲載報告。 研究グループは、有棘細胞がん、ケラトアカントーマを、他の病変と比較し、ダーモスコピーによる診断基準の特徴を明らかにすることを目的とした。オーストラリア・ブリスベンのプライマリ・ケアにおける皮膚がん診療において、2011年3月1日~12月31日の間、連続病変の診断試験を観察者非盲検にて行った。主要評価項目は、感度、特異度、適中率、オッズ比とした。 主な結果は以下のとおり。・患者186例、206病変を対象とした。・浸潤性SCC60例とケラトアカントーマ43例のレトロスペクティブな解析の結果、両病変タイプでは、ケラチン、皮膚表面スケール、出血斑、白色領域、ホワイトサークル、コイル状の血管(coiled vessels)が、共通して認められた。・これらの診断的特徴の有意性について、206例の非着色隆起病変(SCC 32例、ケラトアカントーマ29例、その他145例)で再評価した。・中心部ケラチンは、SCCよりもケラトアカントーマのほうが、より共通してみられた(51.2%vs. 30.0%、p=0.03)。・ケラトアカントーマとSCCについて、最も感度が高かったのはケラチンであった(79%)。また特異度が最も高かったのはホワイトサークルであった(87%)。・ケラトアカントーマとSCCを基底細胞がんと対比させた場合、ケラチンによる陽性適中率は92%、ホワイトサークルでは89%であった。・日光角化症とボーエン病と対比させた場合、陽性適中率は、ケラチンは50%、ホワイトサークルは92%であった。・多変量モデルにおいて、ホワイトサークル、ケラチン、出血斑は、SCCとケラトアカントーマの独立予測因子であった。・SCCとケラトアカントーマであることを支持する最も高いオッズ比を示したのは、ホワイトサークルであった。観察者間のホワイトサークルについての合意は良好であった(0.55:95%CI:0.44~0.65)。・本試験で得られた診断の有意性は、臨床に依拠したものである。

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抗精神病薬投与前に予後予測は可能か?

 抗精神病薬処方に際し、効果や副作用を事前に予測することができるのであろうか。Eric D A Hermes氏らは、第二世代抗精神病薬の選択時に、医療関係者が心血管疾患のリスクを予測できるかを検証した。Psychiatric services (Washington, D.C.)誌オンライン版2012年12月15日号の報告。 本試験はアカデミック・ディテーリングの一環として、2007年10月~2009年5月に行われた。単一の退役軍人医療センターのすべての精神科医療関係者を対象に、第二世代抗精神病薬による新規処方を行ったすべての患者について調査を完了した。調査では、処方薬、患者の社会人口学的データ、精神疾患および併存疾患の診断、処方理由を記述した。肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病と心血管疾患や心血管代謝レベルに応じた抗精神病薬の選択との関係を評価した。 主な結果は以下のとおり。・259名の医療関係者から2,613件のデータが集積された。・心血管代謝リスクの高いオランザピン、中等度のクエチアピン、リスペリドン、これら3剤の処方箋は全体の79%を占めた。・第二世代抗精神病薬の処方は肥満、脂質異常症、糖尿病との間に有意な相関が認められたが(p<0.001)、高血圧、心血管疾患との相関は認められなかった。・オランザピンの投与は、心血管疾患の既往がない患者より、既往のある患者において処方割合がわずかに少なかった(平均4%)。・心血管代謝リスクが低いかほとんどないアリピプラゾールを投与された患者の割合は、心血管代謝疾患既往患者で一貫して高かった(平均2%)。 ・医療関係者による統計学的に有意な心血管代謝リスクについてのセンシティビティの存在が明らかになったが、このセンシティビティは強力ではなく統計学的に一様に有意でもなかった。・治療決定を行う際、薬剤のリスクに関する多くの情報を収集しておくことで、ケアの質を向上させることができると考えられる。関連医療ニュース ・第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析 ・初回エピソード統合失調症患者、長期予後予測に新基準! ・検証!非定型抗精神病薬の神経保護作用

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境界性パーソナリティ障害患者の症状把握に期待!「BPDSI-IV」は有用か?

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、患者の機能的能力を低下させる深刻な疾患であり、医療経済的な損失が大きい。BPDの症状を短期的に評価可でき、臨床評価や治療アウトカムの研究に適用可能な、信頼性と妥当性が担保されたツールが求められている。フィンランド・オウル大学のLeppänen Virpi氏らは、境界性パーソナリティ障害患者の重症度を評価するために、BPDSI-IVが有効であるかどうかを、フィンランドにおいて初めて検討した。Nordic journal of psychiatry誌オンライン版2012年12月11日号の報告。 フィンランドのBPD患者に対しBPDSI-IVインタビューを行い、心理学的特性を評価した。本研究は、通常治療と専門家による治療の有効性を比較した無作為化試験monocentre Oulu-BPD試験の一部である。対象は、2年間の無作為化比較試験に登録されたBPD患者71例。最近のBPD症状を評価するためにBPDS-IVを用いた。フィンランドの患者サンプルにおけるBPDSI-IVの内的整合性は、クロンバックの α係数(Cronbach's alpha coefficient)と平均I-T相関分析を用い評価した。判別の妥当性は、フィンランドのBPD患者とオランダのBPD患者、非患者群を比較することにより検討した。 主な結果は以下のとおり。・クロンバックの α係数は0.58~0.79であり、解離性が最も高く、関係性が最も低かった。・9項目のうち5項目のサブスケールが許容範囲を超えていた(≧0.70)。・平均I-T相関に関しては、9項目のうち7項目のサブスケールが許容範囲内であった(≧0.30)。・BPDSI-IVはBPD患者の重要度や症状変化を測定するうえで、有用であると考えられる。関連医療ニュース境界性人格障害の自殺対策へ期待「DBT PEプロトコール」パイロット試験境界性人格障害患者の自殺予防のポイントはリハビリ うつ病や拒食症の女性は…「感情調節が困難」

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ARBの長期使用はがんのリスクを増大させるか?

 アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の長期使用とがんとの関連については、ランダム化比較試験や観察研究のメタアナリシスで矛盾した結果が報じられており、物議を醸している。 カナダのLaurent Azoulay氏らは、ARBが4つのがん(肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん)全体のリスク増大に関連するかどうかを判断し、さらにそれぞれのがん種への影響を調べるため、United Kingdom General Practice Research Databaseにおいてコホート内症例対照解析を用いて後ろ向きコホート研究を行った。その結果、ARBの使用は4つのがん全体およびがん種ごとのいずれにおいても、リスクを増大させなかったと報告した。PLoS One 誌オンライン版2012年12月12日号に掲載。 本研究では、1995年(英国において最初のARBであるロサルタンの発売年)から2008年の間に降圧薬を処方された患者コホートを2010年12月31日まで追跡調査した。 症例は、追跡調査中に新たに肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんと診断された患者とした。ARBの使用と利尿薬やβ遮断薬(両方またはどちらか)の使用とを比較して、条件付きロジスティック回帰分析を行い、がんの調整発生率比(RR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・コホートには116万5,781人の患者が含まれ、4万1,059人の患者が4つのがん種のうちの1つに診断されていた(554/100,000人年)。・ARBの使用とがんの増加率は、利尿薬やβ遮断薬(両方またはどちらか)の使用と比較し、4つのがん全体(RR:1.00、95%CI:0.96~1.03)、およびがん種ごとのどちらにおいても関連が認められなかった。・アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(RR:1.13、95%CI:1.06~1.20)とCa拮抗薬(RR:1.19、95%CI:1.12~1.27)の使用が、それぞれ肺がんの増加率と関連していた。 著者は、「ACE阻害薬とCa拮抗薬による肺がんの潜在的なリスクを評価するためにさらなる研究が必要」としている。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(41)〕 固形がんに対する新しい治療薬の夜明けとなるか?

乳がんに対する抗体治療であるトラスツズマブの登場は大きな衝撃であった(Slamon DJ et al. N Engl J Med. 2001; 344: 783-792.)。トラスツズマブの開発を最初として、固形がんに対する分子標的薬の開発が加速した。トラスツズマブの第三相試験の発表から10年、T-DM1が登場した。T-DM1は、HER2抗体であるトラスツズマブにemtansineという微小管に採用する化学療法剤をリンカーでくっつけた薬剤である。 抗体薬に抗がん剤(殺細胞薬)を接合した薬剤はAntibody-Drug Conjugate(ADC)と呼ばれる新しい製剤である。従来の抗がん剤は殺細胞効果が強いため、がん細胞も正常細胞も同様に死滅させてしまい、副作用が強いことが問題であった。ADCは、抗体ががん細胞に結合した後で殺細胞効果が発揮されるため、より副作用が軽減され、効果が高まると期待されている。実は20年以上も昔から「ミサイル療法」などと言って開発の期待がされていた製剤であるが、トラスツズマブの成功によりやっと実現されたと言える。血液腫瘍では、既にゲムツズマブオゾガマイシン(商品名:マイロターグ)という薬剤が開発されているが、T-DM1は固形がんで有効性が証明された初めての薬剤ということになる。 この試験は、前治療として、トラスツズマブの既往のある進行乳がん患者に対して、現在の標準治療であるラパチニブ+カペシタビン療法(内服薬)とT-DM1(静注)とを比較したものである。 プライマリーエンドポイントは、当初は、無増悪生存期間(PFS)のみであったのが、途中で全生存期間(OS)も評価できるようにして、サンプルサイズを再計算し、目標症例数を580名から、980名に増やしている。これは、最近の抗がん剤開発で“PFSのみ延長させ、OSには影響を与えない”といった、解釈が困難な第三相試験の結果の発表が相次いでなされたことの影響が少なからずあったものと考えられる。 OSの結果は、2回目の中間解析で、有効中止の基準ラインであるP=0.0037を下回った(P

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百日咳ワクチン対策の「コクーン戦略」は限界がある?

 オーストラリア・シドニー大学のK.E. Wiley氏らは、小児ワクチン戦略の「コクーン(繭)戦略」に関して、生後6ヵ月未満の年少の乳児における百日咳の感染源を調べ、接種対象者についてエビデンス情報のレビューを行った。コクーン戦略は、ワクチンが疾患等により接種できない小児の代わりに、近親者に接種を行い繭に包まれた状態として感染を防御するというものである。著者は、百日咳の重症罹患率が最も高い年少の乳児について、感染源を明確にすることは、近親者の誰にワクチン接種を行うのが有効であるかを決定する最も重要かつ唯一の因子であるとして本検討を行った。Vaccine誌オンライン版2012年11月29日号の掲載報告。 研究グループは、高所得国の生後6ヵ月未満の乳児に焦点をあて、百日咳の感染源の特定と、それら報告データおよび要約の質について評価した。対象報告は、MEDLINEとEMBASEのオンラインデータベース、および関連文献リストから研究報告を検索して解析に組み込んだ。 研究の質はSTROBE(Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology)ステートメントに基づき標準化された基準で評価し、最も質の高い報告データを用いて、感染源別に百日咳症例の推定割合をプールして評価した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たし解析に組み込まれたのは、9件の研究報告であった。7件は入院した6ヵ月未満児の接触者についてのデータを含んでいた。症例の定義と接触確認の方法には、ばらつきがあった。・感染源として最も多く同定されたのは家族で、母親が39%(95%CI:33~45)、父親が16%(同:12~21)、祖父母5%(同:2~10)であった。・兄弟姉妹は16~43%、非家族接触者は4~22%と、ばらつきがあった。・また、症例のうち32~52%は、感染源が特定できなかった。・無症候性の百日咳感染が、評価をした近親者のうち8~13%で認められた。・以上の結果は、より幼い乳児の重症疾患予防について、母親への百日咳ワクチン接種が最も効果が高い可能性があることを示し、次いで父親、補助的に祖父母に行うことが効果的であること示すものであった。・兄弟姉妹に関しては重要性にばらつきがあった。最近のデータではワクチン接種を受けた子どもの漸減免疫を考慮しており、さらなる検証が必要である。・非家族感染源についてもかなり文書化されており、これは乳児の重症疾患予防のためのコクーン戦略の潜在的な限界を強調するものであった。

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難治性慢性腰痛患者への高頻度SCS、6ヵ月時点で74%が改善を報告

 難治性の慢性腰痛患者に対して、高頻度の脊髄電気刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)は、70%以上で腰痛および下肢痛の軽減を有意かつ持続的にもたらすことが報告された。とくに感覚異常がなく達成され、患者は身体障害や睡眠に関する有意な改善も認められた。Van Buyten JP氏らによるProspective Multicenter European Clinical Studyの報告で、「全体的として、高頻度SCSシステムの良好な安全性と有効性が確認された」と結論している。Neuromodulation誌オンライン版2012年11月30日の掲載報告。 前向きオープンラベル多施設共同欧州臨床試験は、SCSシステムの有効性と安全性を定量化することを目的とした。SCSは、慢性で難治性の腰痛、下肢痛の治療として、高頻度(最高10kHz)波形で、感覚異常をもたらさないように行われた。 評価は、最長6ヵ月間の患者の疼痛評価、身体障害、睡眠障害、満足度、合併症の割合について行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は83例であった。試験期間終了後、88%(72/82例)がVASスコアについて有意な改善を報告し、高頻度SCSシステムの永続的な埋め込み術を受けた。・腰痛VASスコアは、平均8.4から、6ヵ月時点で2.7まで低下した(p<0.001)。・下肢痛VASスコアは、平均5.4から、6ヵ月時点で1.4まで低下した(p<0.001)。・被験者の74%は、6ヵ月時点で腰痛の50%以上軽減を報告した。・Oswestry障害スコアと睡眠スコアも有意に改善し、疼痛緩和のための薬物使用も減少した。・有害事象は、従来SCS療法を受けた患者でみられ、リードの遊走、創傷部感染、埋め込み部位周辺の痛みなどであった。

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オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善

 統合失調症患者に対して、オキシトシンを投与することで症状改善につながるとの先行研究がある。しかし、それらは短期間の研究にとどまっており、統合失調症患者に対するオキシトシン投与について、3週間超のエビデンスは存在しなかった。イラン・テヘラン医科大学Roozbeh精神病院のAmirhossein Modabbernia氏らは、リスペリドンによる治療を受けている統合失調症患者にオキシトシン鼻腔内スプレーを8週間併用し、有効性と忍容性についてプラセボと比較検討した。その結果、オキシトシン鼻腔内投与により統合失調症患者の症状、なかでも陽性症状が著明に改善されることを報告した。CNS Drugs誌オンライン版2012年12月12日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症患者におけるオキシトシン鼻腔内スプレーの有効性と忍容性を評価することを目的とした、8週間にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照試験。DSM-IV-TRにて統合失調症と診断され、リスペリドン固定用量(5または6mg/日)の治療を少なくとも1ヵ月以上受けている患者40例(18~50歳男女)を対象とし、オキシトシン群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。オキシトシン鼻腔内スプレーは、最初の1週間は20 IU(5スプレー)を1日2回投与し、以降は40 IU(10スプレー)を1日2回、7週間投与した。ベースライン時、2、4、6、8週後に、陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale:PANSS)により評価を行った。主要アウトカムは、治療終了時におけるPANSSスコアの2群間の差とした。主な結果は以下のとおり。・全患者がベースライン後1回以上の評価を受け、37例(オキシトシン群19例、プラセボ群18例)が試験を完了した。・反復測定分散分析によると、PANSS総スコア[F(2.291,87.065) = 22.124、p<0.001]および陽性スコア[F(1.285,48.825) = 11.655、p = 0.001]、陰性スコア[F(2.754,104.649) = 11.818、 p < 0.001]、総合精神病理[F(1.627,61.839) = 4.022、 p = 0.03]サブスケールについて、相互作用による有意な効果がみられた。・8週後までに、オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSサブスケールの陽性症状について著明かつ有意な改善を示した(Cohen's d=1.2、スコアの減少20%vs. 4%、p<0.001)。・オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSサブスケールの陰性症状(Cohen's d=1.4、スコアの減少7%vs. 2%、p<0.001)、総合精神病理(Cohen's d=0.8、スコアの減少8%vs. 2%、p=0.021)においても統計学的に有意な改善を示したが、臨床的にはその差が実感されなかった。・オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSの総スコア(Cohen's d=1.9、スコアの減少11%vs. 2%、p<0.001)において有意な改善を示した。・有害事象の発現状況は、2群間で同程度であった。・以上のことから、リスペリドン併用下のオキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者のとくに陽性症状を、忍容性を保ちつつ有効に改善することが示された。・本パイロット試験で得られた興味深い知見は、より大規模な母集団を用いて再現する必要がある。関連医療ニュース ・統合失調症治療にニコチン作動薬が有効である理由とは? ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か? ・統合失調症の遂行機能改善に有望!グルタミン酸を介した「L-カルノシン」

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中等度~重度のにきび、家族歴、BMI、食生活が影響?

 イタリアのAnna Di Landro氏らGISED Acne Study Groupは、にきびの原因には、遺伝的要因と環境的要因が関与している可能性があるとして、思春期および若年成人を対象に、それら要因と中等度~重度にきびリスクとの関係について調べた。その結果、家族歴とBMI、食事内容が中等度~重度にきびのリスクに影響を与えている可能性が示されたと報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌2012年12月号の掲載報告。 GISED(Gruppo Italiano Studi Epidemiologici in Dermatologia)は、中等度~重度のにきびの新規診断症例に関して、家族歴、個人の習慣、食事性因子、月経歴の影響を評価するため、イタリアの皮膚科外来診療所で症例対照研究を行った。 症例は、中等度~重度のにきびと新規診断された患者205例で、対照被験者は、にきび以外で受診した、にきびがない(あるいは、あっても軽症の)患者358例であった。 主な結果は以下のとおり。・中等度~重度のにきびは、一等親血縁者でのにきび既往歴と強い関連が認められた(オッズ比:3.41、95%CI:2.31~5.05)。・リスクは、BMIが低い人では低下し、女性よりも男性で顕著な影響が認められた。・喫煙による関連は、みられなかった。・牛乳を週に3ポーション以上消費する人では、消費量が多いほどリスクが上昇した(オッズ比:1.78、95%CI:1.22~2.59)。・その関連は、全乳よりもスキムミルクでより特徴的であった。・魚の消費は、保護作用と関連していた(オッズ比:0.68、95%CI:0.47~0.99)。・月経変数と、にきびリスクとの関連はみられなかった。・本試験は、皮膚科学的対照被験者の選択において、また対照群の軽症患者の組み込みで一部オーバーマッチングの可能性があった。・以上の結果から、家族歴、BMI、食生活は、中等度~重度にきびのリスクに影響する可能性があった。環境および食事要因による影響について、さらに調査を行う必要がある。

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統合失調症治療にニコチン作動薬が有効である理由とは?

 米国・Western New York Stem Cell Culture and Analysis CenterのM.K. Stachowiak氏らは、マウス試験の結果、FGF受容体シグナル伝達の変異が統合失調症に結びつく発達異常の中心的な役割を果たしており、統合失調症の治療についてニコチン作動薬が有効であることを示唆する知見を得た。Schizophrenia Research誌オンライン版2012年12月8日号の掲載報告。 統合失調症は、複数の神経システムの構造や結びつき、化学的作用を特徴とする神経発達障害であり、脳の発達障害は、成人期の初期に表れる臨床的な疾患症状よりずっと以前の妊娠期間中に確立されるとみられている。一方で、統合失調症には多数の遺伝子が関連しており、大半の患者に共通してみられる変異遺伝子の存在が認められていない。著者は、さまざまな変異遺伝子が統合失調症患者の脳でみられる複合的な一連の障害にどのように結びつくのかを検証した。 主な内容は以下のとおり。・著者は、さまざまな変異遺伝子からつくられるタンパク質が、共通の神経発達経路に収束し、複数の神経回路や神経伝達システムの発達に影響するのではないかと仮説を立てた。・そのような神経発達経路は、Integrative Nuclear FGFR1 Signaling(INFS)であった。・INFSには多様な神経性シグナル(直接的な遺伝子再プログラミングで、有糸分裂後に肝幹細胞や神経前駆細胞、未成熟な神経細胞の成長に直接働きかける)が集積される。・さらに、FGFR1とそのパートナータンパク質は、統合失調症と結びついた遺伝子が機能する複数の上位経路と結びつき、それらの遺伝子と直接的に影響し合う。・FGF受容体シグナル伝達の障害があるトランスジェニックマウスにより、複数の重要なヒト擬態統合失調症の特徴(神経発生的成因、出生時の解剖学的異常、行動症状の遅延発症、疾患の複数領域にわたる欠損、定型・非定型抗精神病薬とセロトニン拮抗薬およびニコチン受容体作動薬による症状の改善)が実証された。関連医療ニュース ・第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析 ・日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに ・統合失調症の遂行機能改善に有望!グルタミン酸を介した「L-カルノシン」

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双極性障害の再発予防に対し、認知療法は有効か?

 双極性障害患者は薬物療法を継続してもなお、再発するケースが少なくない。再発抑制を目指し、近年注目されているのがマインドフルネス認知療法(MBCT)である。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のT Perich氏らは、12ヵ月間のフォローアップを行ったランダム化比較試験により、双極性障害患者の治療におけるMBCTの有用性を検証した。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2012年12月9日号の報告。 対象はDSM-IVで双極性障害と診断された患者95例。通常療法+MBCT実施群48例と通常療法単独群47例に無作為に割り付けた。主要評価項目は、DSM-IVの大うつ病、軽躁、軽躁エピソードの再発までの期間、モントゴメリー/アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)とした。副次的評価項目は再発回数、うつ病・不安ストレススケール(DASS)、特性不安尺度(STAI)とした。 主な結果は以下のとおり。・気分エピソードの最初の再発までの期間、12ヵ月間の再発合計回数は両群間で有意な差が認められなかった(ITT解析)。・MADRS、YMRSのスコアも両群間で有意な差は認められなかった。・STAIの不安状態スコアにおいては、両群間に有意な差が認められた。・DASSのアチーブメントサブスケールの治療反応時間に有意な差が認められた。・今回の試験では、MBCTは主要評価項目に対する有用性は認められなかったものの、双極性障害に併存する不安症状の軽減に対し有効である可能性が示唆された。関連医療ニュース ・アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? ・うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける? ・双極性I型障害におけるアリピプラゾールの有効性-AMAZE試験より-

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中年期の広範囲の慢性疼痛リスク、少年期の知能指数1SD低下につき1.26倍上昇

 精神的因子は、慢性疼痛に関わる因子の一つと考えられていることから、英国・サウサンプトン大学のCatharine R. Gale氏らは、中年期の慢性疼痛について、少年期の知能との関連について調査した。その結果、少年期知能指数が低値になるほど中年期の慢性疼痛リスクは上昇すること、そのリスク上昇は、BMIが高いほど、また社会経済的階層が低くなるほど有意であることが明らかになったという。Pain誌2012年12月号の掲載報告。 研究グループは、1958年英国生まれの人を登録した全国小児発達サーベイから、男女6,902人について、少年期の知能と、成人期の慢性疼痛リスクとの関連について調査した。 被験者は、11歳時に一般知能指数試験を受け、45歳時点で、広範囲の慢性疼痛について、米国リウマチ学会診断基準(ACR)に基づく評価が行われた。ログ二項式回帰を用いて、性および潜在的な交絡因子、媒介因子を補正しリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・ACR基準に基づく広範囲の慢性疼痛リスクは、知能指数が低下するほど段階的に上昇した(線形傾向p<0.0001)。・性補正後解析において、知能指数1SD低下に対する慢性疼痛のRRは1.26(95%CI:1.17~1.35)であった。・多変量後方段階的回帰解析において、少年期知能は、社会階級、教育達成レベル、BMI、喫煙状態、精神的ストレスとともに、慢性疼痛の独立した予測因子であり続けた(RR:1.10、95%CI:1.01~1.19)。・中年期の広範囲の慢性疼痛リスクに対する少年期知能の低さの影響は、BMIが高くなるほど、また社会経済的位置付けがより低くなるほど有意であった。・少年期に高い知能を有する男女はともに、成人期に慢性疼痛を報告する頻度は低いようである。

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手術待機中のOA患者が心に描く期待はICFモデルと合致

 変形性膝関節症(OA)患者が心に描く疾患描写(mental representations)は、国際生活機能分類(International Classification of Functioning Disability and Health:ICF)の機能・障害・健康モデルで用いられる用語と整合性が取れており、ICFの3つの構成概念(障害度、活動度、社会参加)がOA患者にとって重要であることが明らかにされた。英国・アバディーン大学のBeth Pollard氏らが、両者の一致について検証した研究の結果、報告した。Disability and Rehabilitation誌オンライン版2012年11月21日号の掲載報告。 本研究は、OA患者が心に描く疾患描写とICFモデルとの整合性について調べることを目的とし、人工関節置換術を受けることになっているOA患者202例を対象に郵送アンケートにて行われた。 アンケートでは被験者に、人工関節置換術に期待していることを尋ね、心に描く疾患描写(心象)を測った。2人の専門家が、それらを判定して、主要なICFの構成概念[障害(I)、活動性の制限(A)、社会参加への制限(P)]の該当項目に分類した。 主な結果は以下のとおり。・2人の専門家による判定の一致度は高かった。また、各ICF構成概念に分類された被験者の心的表象数は同程度であった。・手術待機中の患者の心象と、主なICFモデルのバイオメディカルな路線とは一致していた(IからA、次いでPへなど)。・そのことは、OA患者は暗黙のうちに、バイオメディカルな障害発生モデルを適用していることを示唆した。そのモデルは、治療や介入が、障害から回復するためだけでなく、活動性の制限、さらには間接的に社会参加への制限に効果をもたらす可能性があるというものであった。・一方で、その方法は、ICFモデルの3つの構成概念の発生要因の関連を調べる新たな道筋を提供するものでもあった。

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