サイト内検索|page:476

検索結果 合計:11806件 表示位置:9501 - 9520

9501.

日本人の気質は精神状態にどう影響するのか:順天堂大学

 状態ではなく気質を同定するよう設計されているTEMPS-A 気質評価質問紙(Temperament Evaluation of Memphis, Pisa, Paris and San Diego-auto questionnaire)について、これまでに、非臨床集団では精神状態が影響を及ぼす可能性が示唆されていた。順天堂大学の馬場 元氏らはTEMPS-Aの完全バージョンとさまざまな抑うつ尺度、あるいは躁病評価尺度との関連性を調べた。Journal of Affective Disorders誌2014年6月号の掲載報告。 検討は、ベックうつ病評価尺度(BDI)、自己記入式簡易抑うつ症状尺度・日本語版(QIDS-SR-J)、患者健康質問票-9(PHQ-9)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)などの精神評価スコアと気質スコアとの関連を調べるため、314人の医学生および職員を対象に行われた。 主な結果は以下のとおり。・抑うつ状態スコアは、TEMPS-Aの抑うつ気質、不安気質、憂鬱と陽気さを繰り返す循環気質、焦燥気質スコアと、有意に明らかに関連していた。・一方で、閾値下の低躁状態スコアは、TEMPS-Aの焦燥気質と有意に明らかに関連していた。・抑うつ状態あるいは閾値下の低躁状態スコアと発揚気質スコアとの間に関連はみられなかった。・本検討は次の点で限定的なものであった。すなわち、断面的な研究であったこと、抑うつ/低躁状態スコアが気質スコアに影響を及ぼすのか、またはその逆で、気質スコアが抑うつ/低躁状態スコアに影響しているのかは判明しなかったこと。さらに、サンプルが必ずしも代表的集団ではなかったこと、日本人における所見が日本以外でも適用可能であるとのエビデンスはない点である。 以上を踏まえて、著者は「非臨床集団であってもTEMPS-Aの気質スコアへの精神状態の影響を検討することは意義深いことである」とまとめている。関連医療ニュース 双極性障害の症状把握へ、初の質問票が登場 出産後のうつ病リスクは「10~15%」新スクリーニングツール期待 たった2つの質問で認知症ルールアウトが可能  担当者へのご意見箱はこちら

9502.

「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」で副作用事例と対応策を公表

日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、SGLT2阻害薬の発売開始から約1ヵ月の副作用報告を受け、6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表した。発表によると、報告された副作用として、当初予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹など重篤な副作用が発症しているとのことである。同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。■Recommendation1.SU 薬などインスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2.高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3.脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4.発熱・下痢・嘔吐などがあるとき、ないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には休薬する。5.本剤投与後、皮疹・紅斑などが認められた場合にはすみやかに投与を中止し、副作用報告を行うこと。6.尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。7.原則として、本剤はほかに2剤程度までの併用が当面推奨される。■副作用の事例と対策(抜粋)●重症低血糖24例(うち4例が重症例)の低血糖が報告され、多数の糖尿病薬を使用している患者にさらに追加されている場合が多くみられた。併用薬はSU薬、インスリンに加えて、ほかの作用機序の薬剤も含まれている。SGLT2阻害薬の添付文書にあるように、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤またはインスリン製剤と同剤を併用する場合は、低血糖のリスクを軽減するためあらかじめスルホニルウレア剤などの併用剤の減量を検討する必要がある。とくに、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下の通りSU薬の減量を検討することが必要。グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じるグリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じるグリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じる●ケトアシドーシス1例の報告例。本例では極端な糖質制限が行われていた。SGLT2阻害薬の投与に際し、インスリン分泌能が低下している症例への投与では、ケトアシドーシス発現に厳重な注意を図るとともに、同時に栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者への投与ではケトアシドーシスを発現させうることに注意が必要。●脳梗塞3例(うち2例重篤、1例非重篤)の報告。脱水が脳梗塞発現に至りうることに改めて注意を喚起し、高齢者や利尿剤併用患者などの体液減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬の投与は、十分な理由がある場合のみとし、とくに投与初期には体液減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意が必要。参考「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」からhttp://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=20●全身性皮疹・紅斑全身性皮疹が7例(うち6例は重篤)の報告、全身紅斑または紅斑性皮疹が4例(うち3例が重篤)の報告。SGLT2阻害薬投与後、1~12日目で発症。SGLT2阻害薬との因果関係が疑われ、投与に際しては十分な注意が必要。SGLT2阻害薬の使用にあたっては、「適応を十分考慮したうえで、添付文書に示されている安全情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」からhttp://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=48

9503.

サッカーW杯観戦で心イベントは増加するのか

 サッカー観戦が心イベントリスクを増加させるかどうかは、議論の余地が残されている。2006年にドイツでワールドカップが開催されたが、オーストリア・パラケルスス医科大学のDavid Niederseer氏らは、バイエルン地方のサッカーファンの大規模コホートにおいて、心イベントに対する情動ストレスの影響を評価した結果をInternational Journal of Cardiology誌2013年12月号に報告している。本調査では、自国のチームが試合しているかどうかにかかわらず、サッカー観戦は心イベント発生率の増加に関連しておらず、スポーツイベントの観戦で心イベントリスクは増加しないという仮説を支持する結果となっている。 著者らは、ワールドカップの期間(2006年6月9日~7月9日)と対照期間(2005年5月1日~7月31日、2006年5月1日~6月8日、2006年7月10日~31日)におけるバイエルンの統計・データ管理委員会による、以下の疾患における診断データを分析した。[心筋梗塞、心筋梗塞再梗塞、心停止、発作性頻拍、心房細動、心房粗動、その他すべての頻脈性不整脈] データは、ワールドカップ中ドイツチームの試合があった7日間、ドイツチームの試合がなかった24日間、対照期間(61日間)の3群で比較した。 主な結果は以下のとおり。・バイエルン地方の1日当たりの総心イベントにおいても、他の調査疾患においても、対照期間(176.2±51.8)に比べて、ドイツチームの試合があった7日間(161.1±46.7)、試合のなかった24日間(170.5±52.3)における有意なイベント増加はみられなかった(p>0.433)。・この結果は、年齢、性別、負け試合、外気温、二酸化窒素の大気汚染レベルを調整後も、本質的に変わらなかった。

9504.

心不全入院患者への予防的ICD、LVEF 30%未満でも生存改善/JAMA

 心不全入院患者に対する予防的植込み型除細動器(ICD)の移植は、左室駆出分画(LVEF)が30~35%および30%未満の患者についても、3年生存率を有意に改善することが、米国・デューク大学医療センターのSana M. Al-Khatib氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。著者は、「LVEF 35%以下でも適格基準を満たす患者には予防的ICD移植を推奨するガイドラインを支持する所見が得られた」とまとめている。同手技の臨床試験では、少数だがLVEF 30~35%の患者が含まれていた。また米国では同レベルの患者でICD移植を受ける人が多数に上ることが報告されており、生存との関連を調べる重要性から本検討が行われた。JAMA誌2014年6月4日号掲載の報告より。LVEF 30~50%、30%未満患者でICD移植vs. 非移植の全死因死亡を評価 研究グループは、LVEF 30~35%でICD移植を受けた患者の特性を明らかにし、非移植患者との生存率を比較した。被験者は、2006年1月1日~2007年12月31日に全米心血管データ登録ICDレジストリ(NCDR)に登録された、メディケア受給者でLVEF 30~35%、心不全で入院の間にICD移植を受けた患者と、Get With The Guidelines-Heart Failure(GWTG-HF)データベースに登録されていたICDを受けなかった類似の患者を特定し分析に組み込んだ。同様にLVEF 30%未満の患者についても分析を行った。 被験者数は、LVEF 30~35%の患者が3,120例(適合コホート群816例)、同30%未満患者は4,578例(同2,176例)で、傾向スコアとCoxモデルを用いて分析した。 主要アウトカムは、全死因死亡で、2011年12月31日までのメディケア支払請求データを入手して評価した。30~35%、30%未満の患者とも同程度にICD移植の恩恵を享受 LVEF 30~35%の適合コホート群816例(ICD移植群[NCDR]:408例、ICD非移植群[GWTG-HF]:408例)のベースライン時特性に有意な差はなかった。 分析の結果、ICD移植群は追跡期間中央値4.4年(範囲:2.7~4.9年)において248例が死亡、ICD非移植群は同2.9年(同:2.1~4.4年)において249例の死亡が報告された。3年死亡率は、ICD移植群51.4%vs. ICD非移植群55.0%で、ICD移植群の有意な低下が認められた(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.69~0.99、p=0.04)。 また、LVEF 30%未満の患者においても、ICD移植群(NCDR 1,088例)とICD非移植群(GWTG-HF 1,088例)の死亡数は634例vs. 660例で、3年死亡率は45.0%vs. 57.6%、HRは0.72(95%CI:0.65~0.81、p<0.001)とICD移植群における死亡率の有意な低下が認められた。 ICD移植を受けた両LVEF(30~35%と30%未満)患者群に有意な差はみられず(p=0.20)、いずれのLVEF患者にもICD移植を受けたことによる同程度の良好な生存が確認された。

9505.

日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究

 海外の追跡研究では、地中海式食事法がアルツハイマー病のリスクを減少させるという報告がみられ、乳製品の摂取は控えめがよいとされている。しかし、久山町研究では、大豆・豆製品および牛乳・乳製品の摂取量が多い食事パターンと認知症予防との関連が報告されている。このうち、牛乳・乳製品の認知症予防に対する効果を検討するため、九州大学の小澤 未央氏らは、高齢の日本人集団での認知症発症における牛乳・乳製品の摂取の効果を検討した。その結果、牛乳や乳製品の摂取量が多いほど、認知症とくにアルツハイマー病のリスクが低下することが認められた。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版6月10日号掲載。 本研究は、日本人高齢者における認知症全体およびそのサブタイプの発症に牛乳や乳製品の摂取が効果的かを調べることを目的とした、前向きコホート研究である。対象は、久山町住民で60歳以上の非認知症者(n=1,081)。牛乳と乳製品摂取量は、70項目の半定量食物摂取頻度調査票を用いて調査し、四分位にグループ化した。牛乳と乳製品摂取量による認知症全体、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)の発症リスクは、Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・17年以上の追跡期間において、303例が何らかの認知症を発症した。うち166例がAD、98例がVaDであった。・年齢・性別で調整した発症率は、認知症全体、AD、VaDともに、牛乳と乳製品の摂取量の増加に伴い、有意に低下していた(傾向性p:それぞれp=0.03、p=0.04、p=0.01)。・潜在的な交絡因子を調整したところ、AD発症と牛乳や乳製品摂取量との間には有意な直線関係が得られた(傾向性p=0.03)。一方で、認知症全体とVaDでは有意ではなかった。・ADの発症リスクは、牛乳や乳製品摂取量の第1四分位よりも第2、3、4分位において有意に低かった。

9506.

非定型うつ病は肥満になりやすい~前向きコホート研究

 うつ病と肥満の関連性はたびたび報告されているが、そのメカニズムや経時的な順序はよくわかっていない。スイス・ローザンヌ大学病院のAurelie M Lasserre氏らは、肥満の発症とBMI・ウエスト周囲径・体脂肪量の変化を調査し、うつ病におけるサブタイプ(メランコリー型、非定型、混合型、特定不能)が肥満発症の予測因子となるかどうかを検討した。その結果、非定型うつ病が肥満の強力な予測因子であることが示された。JAMA psychiatry誌オンライン版2014年6月4日号に掲載。 本研究は人口ベースの前向きコホート研究(CoLaus/PsyCoLaus)で、スイス・ローザンヌ市の住民から無作為に選ばれ、開始時の身体的・精神医学的評価と追跡時の身体的評価を受諾した参加者3,054人を5.5年間追跡した。参加者は2003年時点で35~66歳(平均49.7歳)で、女性の割合は53.1%であった。 本研究では、遺伝研究のための半構造化診断面接を用いて、開始時および追跡時の診断(DSM-IVによるうつ病のサブタイプ)を行い、社会人口学的特性、ライフスタイル(飲酒、喫煙、運動)、薬物療法についても聴取した。また、追跡期間中のBMI・ウエスト周囲径・体脂肪量の変化(開始時の値に対する変化率)や、開始時に肥満ではなかった参加者の追跡期間中の肥満発症率を検討した。体重・身長・ウエスト周囲径・体脂肪量(生体インピーダンス法)は開始時に測定され、訓練されたインタビュアーがフォローアップした。 主な結果は以下のとおり。・開始時に非定型うつ病であった参加者においてのみ、うつ病ではなかった参加者に比べて、追跡期間中に肥満が増加した。・非定型うつ病との関連性は、広範囲の潜在的交絡因子の調整後においても、BMI(β=3.19、95%CI:1.50~4.88)、肥満発症率(オッズ比3.75、95%CI:1.24~11.35)、ウエスト周囲径(β=2.44、95%CI:0.21~4.66)において男女とも有意であり、体脂肪量(β= 16.36、95%CI:4.81~27.92)においては男性で有意であった。 これらの結果から、著者らは「非定型うつ病は肥満の強力な予測因子である」と結論し、臨床および研究で本タイプを同定する必要性を強調している。また、「非定型の特徴を持つうつ病症状がみられるときは、食欲増進への影響が少ない治療方法が提唱される」としている。

9507.

COPDと糖尿病の合併例にメトホルミンは安全か

 COPDと2型糖尿病の合併例へのメトホルミン使用について、COPDであることを研究的・臨床的使用の障壁とすべきではないとの検討結果を、英国ロンドン大学セント・ジョージ校のAndrew W. Hitchings氏らが報告した。Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease誌オンライン版2014年6月10日号の掲載報告。 2型糖尿病とCOPDは一般的に関連があるとされている。メトホルミンは2型糖尿病に対して意義のある治療であるが、COPDに対してもベネフィットがあるかもしれない。しかしながら、メトホルミンのまれな副作用として乳酸アシドーシスの報告があることから、COPDにおける安全性については明らかになっていない。 そこで、過去にCOPD増悪で入院を経験したことのある2型糖尿病患者130例をレトロスペクティブに抽出し、乳酸濃度(プライマリーエンドポイント)と生存率(セカンダリーエンドポイント)をメトホルミン投与群と非投与群で比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は73.0±9.8歳、47例(36%)は女性だった。・120例の動脈血ガスを測定し、88例(73%)は低酸素血症、45例(38%)は呼吸不全、33例(28%)は呼吸性アシドーシスであった。・メトホルミン投与群51例(39%)における乳酸濃度の中央値(四分位範囲)は1.45mmol/L(1.10~2.05)であり、非投与群では1.10mmol/L(0.80~1.50)であった(p=0.012)。・生存期間の中央値は投与群で5.2年(95%CI:4.5~5.8)、非投与群で1.9年(95%CI:1.1~2.6)であった(ハザード比:0.57、95%CI:0.35~0.94)。これらは測定可能な交絡因子で調整した多変量モデルにおいても、有意なままであった。 今回、乳酸蓄積のリスクの高いCOPD患者において、メトホルミン療法は臨床的意義の不確かな、乳酸濃度のやや高値と関連していることが示された。これらのことから、著者は「メトホルミンは生存ベネフィットの観点でみると恩恵はあるが、測定不可能な交絡因子によって起こりうる影響も考えられるため、本検討の結果は慎重に解釈すべきである」としている。■「メトホルミン」関連記事eGFRが30未満は禁忌-メトホルミンの適正使用に関する Recommendation

9508.

他の精神科医は薬剤の選択基準をどこに置いているのか

 統合失調症患者に対する抗精神病薬治療のベネフィット・リスク評価にあたり、精神科医はどのように判断を定量化しているのだろうか。また、患者のアドヒアランスはこの判断にどのような影響を及ぼしているのか。米国のMichael A Markowitz氏らが、その答えを明らかにすべく検討を行った結果、精神科医は当然ながら治療法選択にあたって陽性症状の改善を最も重視しており、アドヒアランス低下時には剤形の選択がより重要となることが示された。Psychiatric services誌オンライン版2014年5月15日号の掲載報告。 精神科医にとっての統合失調症治療におけるリスクとベネフィット、代替薬処方に関する相対的重要性について、離散選択モデルを用いたWeb調査により評価した。米国と英国の精神科医は、剤形ごとにさまざまなレベルの改善(陽性症状、陰性症状、社会的機能、体重増加、錐体外路症状、高プロラクチン血症、高血糖)によって特徴づけられる選択肢より回答した。回答者の判断には、過去の患者アドヒアランスの影響を評価に含んだ。ランダムパラメータロジットおよび二変量プロビットモデルにより推定を行った。 主な結果は以下のとおり。・394名の精神科医から回答が集まった。・陽性症状が「改善なし」から「大いに改善」となるシナリオが最も好ましいという結果が得られ、相対的重要度スコアは10と割り当てられた。・その他、重要度の高い順に見ると、陰性症状[改善なし→大いに改善(相対的重要度5.2、95%CI:4.2~6.2)]、社会的機能["severe problems"→"mild problems"(4.6、CI:3.8~5.4)] 、高血糖なし(1.9、CI:1.5~2.4)、15%超の体重増加なし(1.5、CI:0.9~2.0)、高プロラクチン血症なし(1.3、CI:0.8~1.6)、錐体外路症状なし(1.1.CI:0.7~1.5)であった。・剤形については、若干の有効性の変化よりも、アドヒアランス低下例に重要であり、注射剤は毎日の経口剤より好まれた(p<0.05)。関連医療ニュース 抗精神病薬の用量決定時、精神科医が望むことは 抗精神病薬注射剤を患者は望んでいるのか どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与  担当者へのご意見箱はこちら

9509.

血圧と12の心血管疾患の関連が明らかに~最新の研究より/Lancet

 30歳以上(最高95歳)の血圧値と12の心血管疾患との関連を分析した結果、どの年齢でも強い相関性が認められ、現状の高血圧治療戦略では生涯負荷が大きいことが明らかにされた。英国・Farr Institute of Health Informatics ResearchのEleni Rapsomaniki氏らが、同国プライマリ・ケア登録患者から抽出した125万例のデータを分析して報告した。著者は「今回の結果は、新たな降圧治療戦略の必要性を強調するものであり、その評価のための無作為化試験をデザインする際の有用な情報になると思われる」とまとめている。本報告は、血圧と心血管疾患との関連に関する最新の集団比較研究である。Lancet誌2014年5月31日号掲載の報告より。プライマリ・ケア登録125万例のデータを用いて分析 調査対象とした12の心血管疾患は、安定・不安定狭心症、心筋梗塞、予測していなかった冠動脈疾患死、心不全、心停止/突然死、一過性脳虚血発作、詳細不明の脳梗塞と脳卒中、くも膜下出血、脳内出血、末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤)だった。 被験者データは、1997年1月~2010年3月にCALIBER(CArdiovascular research using LInked Bespoke studies and Electronic health Records)プログラムへと、225人のプライマリ・ケア医により登録された125万例分を用いた。被験者は30歳以上で、登録時は心血管疾患がなく、約5分の1(26万5,473例)が降圧治療を受けていた。 これらのデータについて、エンドポイントを12の心血管疾患の初発とし、臨床的に測定した血圧値と12の急性・慢性心血管疾患との関連を年齢特異的に比較検討した。また、生涯リスク(最高年齢95歳まで)と、その他リスク因子補正後の30歳、60歳、80歳時における心血管疾患発症の早まりを推算した。関連が低かったのは各年齢とも90~114/60~74mmHg、J曲線関連はみられず 追跡期間中央値5.2年の間に、8万3,098件の初発心血管疾患が記録されていた。 心血管疾患リスクが最も低かったのは、各年齢群とも、収縮期血圧値90~114mmHg、拡張期血圧60~74mmHgの人で、血圧低値群ではリスクが増大するというJ曲線関連のエビデンスはみられなかった。 また高血圧の影響は、心血管疾患エンドポイントでばらつきがあり、強く明白な影響が認められる一方で、まったく影響が認められない場合もあった。 収縮期血圧高値との関連が最も強かったのは、脳内出血(リスク比:1.44、95%信頼区間[CI]:1.32~1.58)、くも膜下出血(同:1.43、1.25~1.63)、安定狭心症(同:1.41、1.36~1.46)だった。逆に最も弱かったのは、腹部大動脈瘤(同:1.08、1.00~1.17)。 拡張期血圧と収縮期血圧の影響を比較した分析では、収縮期血圧上昇の影響が大きかったのは、安定狭心症、心筋梗塞、末梢動脈疾患だった。一方、拡張期血圧上昇の影響が大きかったのは腹部大動脈瘤であった。 脈圧の影響に関する分析では、腹部大動脈瘤だけが唯一、高値ほどアウトカムが良好となる逆相関がみられた(10mmHg上昇ごとのHR:0.91、95%CI:0.86~0.98)。なお脈圧の影響が最も強かったのは、末梢動脈疾患(HR:1.23、95%CI:1.20~1.27)だった。 高血圧症の人(血圧値140/90mmHg以上または降圧薬服用者)の30歳時における全心血管疾患発症の生涯リスクは63.3%(95%CI:62.9~63.8%)であるのに対して、正常血圧の人では46.1%(同:45.5~46.8%)だった。同年齢において高血圧は心血管疾患の発症を5.0年(95%CI:4.8~5.2年)早めることが示され、狭心症の発症が最も多かった(43%;安定狭心症22%、不安定狭心症21%)。 一方80歳時では、高血圧の影響による発症の早まりは1.6年(95%CI:1.5~1.7年)で、心不全、安定狭心症(それぞれ19%)が最も多かった。

9510.

PCSK9阻害薬は新たなコレステロール治療薬となりうるのか?(解説:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(216)より-

LDLコレステロール(LDL-C)が心血管イベントの重要なリスクファクターであること、そしてスタチンによるLDL-C値の低下に伴いイベントの発生率が減少したことで、ASCVD(Atherosclerotic Cardiovascular Disease)においてLDL-C値をより低くコントロールすることが目標とされた。 しかし、スタチンを使用しても管理目標値に到達できない患者群があり、これまでは治療薬としてエゼチミブが併用されていたが、それでも不十分であった。 エボロクマブはLDL-C受容体の分解を促進する蛋白であるPCSK9を阻害することで、スタチンの効果を増強しLDL-Cをさらに著明に低下させることを実現した抗体薬である。本薬の使用で、通常の治療に加えて平均57%、LDL-Cを低下させることがDESCARTES試験として発表された。この試験は、スタチンでは明らかにできなかった新たな世界を広げるエボロクマブの可能性を示している。 LDL-Cの低下のエビデンスはすべてスタチンを用いた試験に基づいていることから、AHA/ACCの今回改訂されたガイドラインでは、LDL-Cの管理目標値を設定せず、高用量のスタチンを使用するだけでよいとされた。エボロクマブは、スタチン以外にLDL-Cを低下させることを可能にした薬剤である。スタチンを用いないLDL-Cの低下によりイベントが減少するかを検証できるようになった。 また、スタチン単独ではLDL-C値を70mg/dL以下にすることが困難であったために、さらなる低下がイベントを減少させるのかが明らかでなかった。エボロクマブは、このようなLDL-Cと心血管イベントとの関連についての科学的な疑問を解決できる可能性のある薬剤である。 今後、イベントを検証するFOURIER試験が計画されている。LDL-Cに関する残された謎が解明され、多くのASCVD患者にとってこの薬剤が福音をもたらすのかどうか、2019年の結果に注目したい。

9511.

統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か

 ガランタミンとメマンチンの組み合わせ治療は、統合失調症の認知機能改善に有効であることが米国・メリーランド大学のMaju Mathew Koola氏らによる検討プロジェクトの結果、示された。両薬の組み合わせが、いずれか一方の単独療法よりも認知機能を選択的に増強するためだという。今回の結果を踏まえて著者は、「将来的には、統合失調のような複雑な疾患の治療では、マルチターゲットの誘発リガンドが役に立つであろう」とまとめている。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年5月27日号の掲載報告。 プロジェクトは、統合失調症における認知機能改善のための調査と治療の研究(MATRICS)および神経認知と統合失調症研究のための治療ユニットプロジェクトで、統合失調症患者の認知機能改善を治療する新薬開発を促すようデザインされたものであった。 主な知見は以下のとおり。・MATRICSプロジェクトでは、ドーパミン作動性、コリン作動性、グルタミン酸作動性の3つの作用機序を有する薬剤を特定した。・統合失調症を有する人では中程度の認知障害がみられ、それが最も有力な長期アウトカムの予測因子であった。・しかし、現状ではこれら認知障害を有する患者に対する承認薬はなく、疾患関連の障害を改善するため新たな薬理学的アプローチの開発は重大である。・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)とメマンチンの併用療法は、アルツハイマー型認知症の認知機能改善に、各単独療法よりも有効である。・ガランタミンは、単なるAChEIではなく、α4β2とα7のニコチン受容体の陽性アロステリックモジュレータでもある。・N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)受容体は、統合失調症の認知症状の病態生理に関連しており、それゆえにメマンチンは認知機能にプラスの影響をもたらす可能性がある。・メマンチンは、tonic NMDA currentを減弱し、ガランタミンはシナプス後部のNMDA currentによる活性を増強すると思われる。このことがシグナル転写の増大に結びつき、両薬の併用時にはメマンチン単独よりも、より大きなシグナルノイズ比が発生する。・ガランタミンは、α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazol-propionate(AMPA)シグナルを改善することで神経保護を可能としており、また記憶コーディングを改善している可能性がある。・以上から、ガランタミンとメマンチンの併用は、いずれか単独よりも選択的に認知機能を増強し、統合失調症における特異的な効果を発揮する可能性が示唆された。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン 統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か 抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学  担当者へのご意見箱はこちら

9512.

シメプレビル+ペグインターフェロンα+リバビリン、SVRを改善/Lancet

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染の未治療患者に対して、ペグインターフェロン(PEG-IFN)α-2aまたは2b+リバビリンにNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬のシメプレビルを加えた組み合わせ療法は、PEG-IFNα+リバビリン併用療法での既知の有害事象の増悪なしに、持続性ウイルス学的著効(SVR)を改善したことが、ドイツ・ハノーファー医科大学のMichael Manns氏らによる第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験QUEST-2で示された。HCV 1型感染患者ではPEG-IFNα-2aまたは2b+リバビリンが標準治療とされているが、SVR達成は限定的(北米約40%、西欧約50%)であった。Lancet誌オンライン版2014年6月4日号掲載の報告より。14ヵ国76地点で無作為化二重盲検プラセボ対照試験 QUEST-2は、遺伝子型1型のHCVで未治療の患者に対する、PEG-IFNα-2aまたは2b+リバビリン+シメプレビルvs. プラセボの組み合わせ治療の有効性、安全性、忍容性を評価した試験で、14ヵ国(ヨーロッパ、北南米)76地点で行われた。 被験者は遺伝子型1型のサブタイプとホスト側のIL28B遺伝子で層別化し2対1の割合で、シメプレビル(150mg、1日1回経口)+PEG-IFNα-2a(180μg、週1回皮下注)またはPEG-IFNα-2b(体重により50μg、80μg、100μg、120μg、150μg、週1回皮下注)+リバビリン(1,000~1,200mg/日または800~1,400mg/日、経口)、もしくはシメプレビルの代わりにプラセボを組み合わせた群に割り付け12週間治療を行い、その後、PEG-IFNα-2aまたは2b+リバビリンのみの治療を12週または36週間行った。 治療期間は治療反応ガイド療法の基準(4週時点でHCV RNAが25IU/mL未満で非検出または検出、12週時点で非検出など)に基づき、シメプレビル群は合計24週または48週だった。プラセボ群は48週間だった。 患者、試験担当関係者、スポンサーは治療割付を知らされなかった。 主要有効性エンドポイントは、治療計画終了後12週時点のSVRとした。解析はintention to treatにて行われた。12週時点のSVR、シメプレビル81%、プラセボ群50% SVR 12を達成したのは、シメプレビル群209/257例(81%)、プラセボ群67/134(50%)だった。両群の補正後差は32.2%(95%信頼区間[CI]:23.3~41.2、p<0.0001)だった。 有害事象の発生は、12週時点(246例[96%]vs. 130例[97%])、全治療(249例[97%]vs. 132例[99%])とも同等で、PEG-IFNα使用の影響はみられなかった。 12週時点で頻度が高かった共通の有害事象は、頭痛(95例[37%] vs. 45例[34%])、疲労感(89例[35%] vs. 52例[39%])、発熱(78例[30%] vs. 48例[36%])、インフルエンザ様疾患(66例[26%] vs. 34例[25%])だった。 シメプレビル群での頻度がプラセボ群よりも高かったのは、発疹(61例[24%] vs. 15例[11%])と光線過敏症(10例[4%] vs. 1例[<1%])だった。 貧血については、12週時点(35例[14%] vs. 21例[16%])、全治療期間(53例[21%] vs. 37例[28%])とも差は認められなかった。

9513.

眼瞼下垂、老化以外のリスク因子が判明

 眼瞼下垂のリスク因子について、一般にいわれている老化に加えて、「男性」「遺伝子変異」「皮膚色が薄い」「BMI高値」とさらに「現在喫煙」も含まれる可能性が明らかにされた。オランダ・エラスムス大学医療センターのLeonie C. Jacobs氏らが初となる観察研究を行い報告した。眼瞼下垂(または皮膚のたるみ)は高齢者において頻度の高い懸念事項である。これまで老化以外のリスク因子は明らかにされていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2014年5月28日号の掲載報告。 研究グループは、眼瞼下垂の遺伝的およびそれ以外のリスク因子を明らかにするため、上瞼下垂の症例(眼瞼がまつ毛を覆っている場合を皮膚がたるんでいると定義)をデジタル写真に基づき4つの重症度に分類し検討した。 年齢、性別、皮膚の色、日焼けの状況、女性についてはホルモン状態、また現在の喫煙状態、BMI、日焼け防止の行動について、多変量多項ロジスティック回帰モデルで分析した。遺伝的要因は、遺伝率分析とゲノムワイド関連研究を用いて検討した。 主要評価項目は、眼瞼下垂の重症度で、1(健常対照)~4(重症)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・本検討は、オランダ・ロッテルダムの1地区に住む高齢者が参加した「ロッテルダム研究」と、英国全土から双子が参加した「英国成人双子レジストリ(TwinsUK)」の、2つの独立した住民ベースのコホート研究からなった。・ロッテルダム研究にはオランダ人5,578例(平均年齢67.1歳、男性44.0%)、TwinsUKには2,186組の双子(平均年齢53.1歳、男性10.4%)が参加した。・ロッテルダム研究参加者5,578例のうち、皮膚のたるみ(中等度~重度)は17.8%で認められた。・眼瞼下垂の有意で独立したリスク因子として、年齢、男性、皮膚の色が薄い、BMI高値が認められた。・さらに、現在喫煙も有意な関連を示す境界線上に位置していた。・眼瞼下垂の遺伝率は、1,052組の双子から61%と推定された(TwinsUKにおける皮膚のたるみは15.6%)。・両参加者のゲノムワイド関連試験のメタ解析から、rs11876749の有意なCアレル劣性保護作用が示された(p=1.7×10-8)。同遺伝子変異は、皮膚の加齢と関連することで知られるTGIF1(トランスフォーミング増殖因子βの誘発因子)に近接していた。

9514.

「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表

 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、SGLT2阻害薬の発売開始から約1ヵ月間の副作用報告を受けたことを踏まえ、6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表した。 発表によると、報告された副作用として、当初予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹など重篤な副作用が発症しているとのことである。 同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。Recommendation 1. SU 薬等インスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2. 高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3. 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4. 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には休薬する。5. 本剤投与後、皮疹・紅斑などが認められた場合には速やかに投与を中止し、副作用報告を行うこと。6. 尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。7. 原則として、本剤はほかに2剤程度までの併用が当面推奨される。  さらに同委員会は、SGLT2阻害薬の使用にあたっては「適応を十分に考慮したうえで、添付文書に示されている安全情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」から■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

9515.

胃がんの生存率における家族歴とBMIの影響~日本人の前向き研究

 胃がんの長期予後に家族歴や栄養状態が影響する可能性があるが、エビデンスが十分でなく一貫していない。東北大学大学院地域保健学の南 優子氏らは、胃がんの予後因子を明らかにするため、単一の病院に入院した日本人の胃がん患者1,033例における前向き研究を実施した。その結果、60歳前に診断された若年の胃がん患者では、胃がんの家族歴、とくに親の家族歴が死亡率に影響を与える可能性が示された。一方、60歳以上の高齢胃がん患者では、栄養状態が予後因子である可能性が示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2014年5月29日号に掲載。 著者らは、1997年~2005年に単一の病院に入院し、組織学的に胃がんと確認された1,033例について、自記式質問票を用いて胃がんの家族歴および治療前のBMIを評価した。臨床データは病院のがん登録から取得し、すべての患者を2008年12月まで追跡した。また、両親・兄弟姉妹の家族歴とBMIカテゴリに応じて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(95%CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間(中央値5.3年)における全死因死亡は403例、胃がんによる死亡は279例であった。・患者全体としては家族歴との関連は認められなかったが、年齢層別の解析では、診断時に60歳未満の患者において、全死因死亡リスクの増加が第一度近親者(親、兄弟姉妹)の家族歴(HR 1.61、95%CI:0.93~2.78、p=0.09)、および親の家族歴(HR 1.86、95%CI:1.06~3.26)に関連していた。・BMI(kg/m2)は、60歳以上の患者で全死因死亡および胃がんによる死亡に関連し、BMIが23以上25未満の患者と比べ、18.5未満の患者の全死因死亡のHRは2.28、25以上の患者では1.61で、J字型パターンを示した。

9516.

喫煙者では血清尿酸値が低いと肺がんになりやすい?

 血清尿酸値が低い喫煙群ではCOPDと肺がんの有病率が高かったことが英国Research Department of Primary Care and Population HealthのLaura J Horsfall氏らにより報告された。Thorax誌オンライン版2014年6月5日の掲載報告。 人間の血清中で抗酸化作用のある分子で最も数の多いものは尿酸である。今回、血清尿酸値と呼吸器疾患の有病率との間に関係があるのか、さらに喫煙状況による影響の変化も含めて調査した。 2000年1月1日~2012年12月31日の間に血清尿酸値が測定されていたコホートを「The Health Improvement Network(THIN)英国プライマリ・ケア・データベース」より抽出した。新たにCOPDと肺がんを診断する場合は診療記録の診断コードで確認した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中の対象人数は100万2,496人年であり、そのうちCOPDは3,901例、肺がんは1,015例であった。・多変量解析の結果、喫煙群において血清尿酸値と呼吸器疾患の有病率との間に強い負の相関が認められたが(p<0.001)、非喫煙群や過去に喫煙歴のあった群(現在は非喫煙)では、その関係が認められなかった。・1日に20本以上喫煙する群における肺がんで最も強い負の相関が認められ、血清尿酸値が100~250 µmol/Lの群では1万例あたり97例だったのに対し(95%CI:68~126)、438~700 µmol/Lの群では1万例あたり28例であった(95%CI:14~41)。

9517.

職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大

 職場におけるジョブコントロールとソーシャルサポートが、うつ病、燃え尽き症候群、不眠症に相乗効果をもたらすことが、旭川医科大学の西條 泰明氏らによる調査研究の結果、明らかにされた。またその効果は、仕事の要求度による層別化後、男女間で差があることも明らかになった。この結果を踏まえて著者は、「仕事の要求度およびコントロールだけでなく、仕事のコントロールとソーシャルサポートの相乗効果も考慮することが、仕事のストレスを評価するためには必要である」とまとめている。International Archives of Occupational and Environmental Health誌オンライン版2014年5月23日号の掲載報告。 調査は、旭川市の地方公務員2,121人を対象に行われた。職業性ストレス簡易調査票(Brief Job Stress Questionnaire)を用いて、仕事の要求度、ジョブコントロール、ソーシャルサポートについて評価した。また、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いてうつ病を、マスラック・バーンアウト尺度(MBI-GS)で燃え尽き症候群を、アテネ不眠尺度(AIS)を用いて不眠症に関する評価を行った。考えられる交絡因子で補正したロジスティック回帰分析にて、うつ病、燃え尽き症候群、不眠症に関するオッズ比を求め、職場でのジョブコントロールとソーシャルサポートの相乗効果指数を評価した。 主な結果は以下のとおり。・相乗効果指数は、うつ病については男性2.08(80%信頼区間[CI]:1.01~4.27)、女性1.98(同:0.67~5.89)、燃え尽き症候群についてはそれぞれ1.79(同:1.28~2.51)、2.62(同:1.07~6.40)、不眠症は1.92(同:1.22~3.02)、2.77(同:0.43~18.01)であった。・仕事の要求度が高い男性は、要求度が低い男性と比べて、うつ病、燃え尽き症候群に関してジョブコントロールとソーシャルサポートの相乗的相互効果が高かった。・一方、女性は、仕事の要求度が低い場合に、要求度が高い女性と比べて、燃え尽き症候群、不眠症に関してジョブコントロールとソーシャルサポートの相乗効果が高かった。関連医療ニュース 仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学 仕事と家庭の両立への悩み、女性ではうつ病リスク 厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ  担当者へのご意見箱はこちら

9518.

インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet

 インフルエンザワクチン接種について、新たに開発された無針ジェット式注射器「Stratis」による接種と、通常の有針注射器による接種を比較した結果、免疫原性に関して前者の非劣性が示されたことが報告された。同注射器を開発した米国・PharmaJet社のLinda McAllister氏らによる非劣性無作為化試験の結果で、安全性プロファイルは臨床的に許容可能なものだった。接種部位反応が通常注射器を使用した場合よりも高率だったが、著者は「Stratisは、三価インフルエンザワクチンの代替接種法となりうる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年5月30日号掲載の報告より。有針注射器との無作為化比較試験で、三価ワクチンの免疫原性を評価 試験は、コロラド大学ヘルスシステム内の4つの従業員クリニックで、健康成人(18~64歳)を対象に行われた。被験者は各クリニックで三価不活化インフルエンザワクチン「Afluria」の1回接種を受ける際に、無針ジェット式注射器か有針注射器で接種を受け、免疫原性について評価された。無作為化は、コンピュータにより100例単位で計画された。試験の性質上、試験参加者の盲検化は行われなかった。 免疫原性の評価は、ワクチンに含まれる3つのインフルエンザウイルス株について血漿中の血球凝集抑制抗体価を測定して行った。 主要エンドポイントは、3株の特異的な幾何平均抗体価(GMT)および血清抗体陽転率の6つとした。 無針ジェット式注射器の有針注射器に対する非劣性の定義は、GMTの95%信頼区間[CI]の上限値が1.5未満である場合、および血清抗体陽転率の同値が10ポイント未満である場合とした。両群の比較は、t検定試験にて評価した。3株のGMT、血清抗体陽転率とも非劣性を確認 試験は北半球の2012~2013インフルエンザシーズン中に、1,250例の被験者を、無針ジェット式注射器接種群(627例)、有針注射器群(623例)に無作為に割り付けて行われた。 intention-to-treat分析には、2つの血清サンプルを得られた全患者(無針ジェット式注射器接種群575例、有針注射器群574例)が組み込まれた。 結果、無針ジェット式注射器接種群の有針注射器群に対するAfluria免疫原性は、6つの共通主要エンドポイントについてすべて非劣性であることが示された。 無針ジェット式注射器接種群のGMTの非劣性達成値は、A/H1N1株が1.10、A/H3N2株が1.17、B株が1.04だった。 血清抗体陽転率についてはそれぞれ、A/H1N1株が6.0%、A/H3N2株が7.0%、B株が5.7%だった。 接種部位反応の即時の報告(0~6日)は、無針ジェット式注射器接種群で有意に多かったが(p<0.001)、大部分はグレード1、2で3日以内に治癒していた。28日以内の1回以上の有害事象の自己申告の頻度は、無針ジェット式注射器接種群14.4%、有針注射器群は10.8%であった(p=0.06)。頻度が高かったのは、注射部位の発赤(1.4%vs. 0)、血腫(1.8%vs. 0.2%)、頭痛(3.7%vs. 2.2%)、のどの痛み(0.5%vs. 1.0%)だった。有害イベントにより試験を中断した被験者はいなかった。 なお被験者のうち3例で重大有害イベントが記録されたが、試験に関連していなかった。

9519.

DYRK1Bは新規のヒトのメタボリックシンドローム原因遺伝子か?(コメンテーター:山下 静也 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(213)より-

米国Yale大学のKeramatiらは、ヒトのメタボリックシンドローム(MetS)関連遺伝子としてDYRK1Bの遺伝子変異をNEJMに報告した。 同グループはイラン人の3つの大家族において、中心性肥満、高血圧、糖尿病を有し、若年発症の冠動脈疾患の合併した家族を同定し、連鎖解析と全エクソーム配列決定によって、発端者からDYRK1Bの遺伝子突然変異であるDYRK1B R102C(102番目のアルギニン→システイン)変異を明らかにした。このDYRK1B R102C変異はgain-of-function変異で、ヘテロ接合体でもMetSの表現型を示す優性遺伝形式をとると考えられる。また、同グループは他の家系でDYRK1B H90P(90番目のヒスチジン→プロリン)変異もMetSの表現型を示すことを示した。 従来、ヒトMetSの関連遺伝子としては、これまでにレプチン、レプチン受容体、Melanocortin 4 receptor(MC4-R)、Proopiomelanocortin(POMC)、PCSK1、アディポネクチン、CD36などが報告されている。これらの遺伝子異常によって、ヒトでは高度肥満を呈する場合が多く、肥満関連の遺伝子異常ではあるものの、中心性肥満、高血圧、糖尿病などのMetSに特徴的な危険因子の遺伝的集積と、早発性冠動脈疾患を合併する遺伝子変異は本報告が初めてと考えられる。 では、なぜ、DYRK1Bの遺伝子のgain-of-function変異がMetSの表現型を引き起こすのであろうか? DYRK1Bは進化学的に保存されたprotein kinaseのグループであるDyrkファミリーに属する蛋白で、細胞の分化・生存や増殖に関与する。DYRK1Bはserine-threonine kinaseであり、マウスやヒトではユビキタスに発現する。DYRK1B遺伝子の発現は脂肪細胞の分化に伴って著しく増加する。脂肪形成過程では未分化の間葉系幹細胞から脂肪細胞への分化が起こる。DYRK1Bはsonic hedgehog(SHH)経路を抑制する結果、Wnt蛋白の発現を減らし、脂肪組織形成性のCCAAT/enhancer-binding proteinα(C/EBPα)やperoxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)の発現を増加させ、これによって脂肪細胞への分化が促進されると考えられる。 したがって、DYRK1Bのgain-of-function変異は、本来のDYRK1Bよりもさらに脂肪細胞への分化を促進する活性が強いと考えられる。さらに、DYRK1Bは糖新生に重要な酵素であるglucose-6-phosphataseの活性を誘導することが知られているが、DYRK1Bのgain-of-function変異R102Cは、より強いglucose-6-phosphataseの活性の誘導効果を有することも示されている。このことから、変異を有する群での空腹時血糖の上昇は説明できよう。 日本人においても遺伝性MetSの家系が存在すると考えられるが、このDYRK1Bのgain-of-function変異がわが国でも発見されるのか否かは大変興味のあるところである。また、DYRK1BのR102C変異のキャリアの臨床像は、中心性肥満、2型糖尿病、早発性冠動脈疾患であるが、脂質異常症に関してはLDLコレステロールの高値傾向、トリグリセライド値の増加は示されているが、MetSの診断基準にも含まれる低HDLコレステロール血症の有無については記載がない。インスリン抵抗性に関するデータも示されておらず、内臓脂肪蓄積による症候性のMetSとの相違点があるのか否かについて、今後解明されることが期待される。

9520.

乳幼児専用の腎代替療法機器が登場/Lancet

 多臓器不全を伴う新生児や乳幼児への持続的腎代替療法(CRRT)機器として開発された「CARPEDIEM」は、多様な治療やサポートを提供し有用であることがイタリア・聖ボルトロ病院のClaudio Ronco氏らにより報告された。腹膜透析導入を減らし、CRRT適用範囲を拡大し、CRRTによる外傷を減らし、その他の腎代替療法がなくても支持療法として用いることができるという。新生児の急性腎不全(AKI)例では腹膜透析が選択肢となるが、適用できなかったり効果的ではない場合がある。従来CRRT機器は、15kg未満の新生児には未承認使用されており、乳幼児向けにデザインされたものはなかった。Lancet誌2014年5月24日号掲載の報告より。承認後初となるヒトへの適用例を報告 CARPEDIEM(Cardio-Renal Pediatric Dialysis Emergency Machine)は、新生児および乳幼児向けに開発されたCRRT機器で、研究グループにより5年間の前向き開発プロジェクトによって考案、デザイン、作製されものだった。in-vitro試験評価と開発目的基準を満たし、ヒトでの使用ライセンスを取得。本報告は承認後初となる、重篤な新生児例への使用を評価したものであった。2.9kgの新生児に400時間適用、軽度腎機能障害のみで生存退院 CARPEDIEMの主な特徴は、低血流量(30mL未満)、小型ポンプ、1gの精度で調整可能な正確な濾過機能などで、in-vitro試験では、ハード面およびソフト面の両者で設計仕様が満たされたことが確認されていた。 研究グループは同機器を、出血性ショック、多臓器不全、重度体液過剰を伴う2.9kgの新生児に400時間超適用した。結果、65%体液過剰、クレアチニンおよびビリルビン値上昇、重度アシドーシスはすべて安全かつ効果的に管理され、重篤な疾患であったが、臓器機能は回復。新生児は命を取り留め、軽度腎機能障害のみで病院から腎代替療法を要しない状態で退院となったと報告されている。

検索結果 合計:11806件 表示位置:9501 - 9520