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精神疾患患者、救急受診の現状は

 米国では年間推定約9万件の、精神疾患治療薬に関連した薬物有害事象での救急部門受診(ADE ED)が発生していることが、米国疾病予防管理センター(CDC)のLee M. Hampton氏らによる分析調査の結果、明らかになった。処方薬の種類ごとのADE ED受診率なども分析され、著者は「ADEを減らす努力は、すべての年代の成人を対象に必要だが、有害事象での救急部門受診が多発している薬物を優先する必要がある」とまとめている。JAMA Psychiatry誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。 米国において、2011年に精神疾患のために処方薬を使用した人は年間推定2,680万人で、全成人の11.5%であったという。精神疾患治療薬はメンタルヘルスに重要な役割を果たしているが、重大な有害事象を引き起こす可能性もある。 そこで研究グループは、2009年1月1日~2011年12月31日の間に発生した精神疾患治療薬に関連したADE ED受診件数および受診率を明らかにする検討を行った。全国傷害電子監視システム-医薬品有害事象共同監視(NEISS-CADE)システムを用いて全米を代表するADE ED受診サーベイランスの記述的分析と、全米外来医療調査(NAMCS)および全米病院外来医療調査(NHAMCS)を用いて、外来受診の処方状況の記述的分析を行った。国を代表するサンプルとして19歳以上成人の、EDおよび外来受診医療記録をレビューし分析した。被験者は、抗うつ薬、抗精神病薬、リチウム、鎮静薬、抗不安薬、刺激薬の処方を受けていた。主要評価項目は、精神疾患治療薬の使用によるADE ED受診、および外来での精神疾患治療薬の処方数1万当たりのADE ED受診であった。 主な結果は以下のとおり。・2009~2011年において、精神疾患治療薬ADE ED受診は、年間推定8万9,094件(95%信頼区間[CI]:6万8,641~10万9,548件)であった。・そのうち入院となったのは19.3%(95%CI:16.3~22.2%)、また19~44歳の患者は49.4%(同:46.5~52.4%)であった。・処方薬別にみると、鎮静薬と抗不安薬によるものが3万707件(95%CI:2万3,406~3万8,008件)、抗うつ薬2万5,377件(同:1万9,051~3万1,704件)、抗精神病薬2万1,578件(同:1万6,599~2万6,557件)、リチウム3,620件(同:2,311~4,928件)、刺激薬2,779件(同:1,764~3,794件)であった。・外来処方1万当たりでみると、抗精神病薬は11.7件(95%CI:10.1~13.2件)リチウムは16.4件(同:13.0~19.9件)であったのに対し、鎮静薬は3.6件(同:3.2~4.1件)、刺激薬2.9件(同:2.3~3.5件)、抗うつ薬2.4件(同:2.1~2.7件)であった。・鎮静薬で使用頻度の高いゾルピデム酒石酸塩は、すべての成人精神疾患治療薬ADE EDの11.5%(95%CI:9.5~13.4%)を占めており、また、65歳以上の受診患者が21.0%(同:16.3~25.7%)と、いずれも、そのほかの精神疾患治療薬と比べて症例数が有意に多かった。関連医療ニュース 救急搬送患者に対する抗精神病薬の使用状況は 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには 急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える  担当者へのご意見箱はこちら

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DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet

 薬剤溶出ステント(DES)留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の継続について、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後も継続して行うことに明白な有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増し有害であることが示された。フランス・INSERMのJean-Philippe Collet氏らが、無作為化試験ARCTIC-Interruptionの結果を分析し報告した。冠動脈ステント留置後のDAPTの至適な継続期間はいまだ明らかになっていない。著者は今回の結果について、「高リスク患者が除外された試験であり、同患者については結論を出すことはできない」としつつ、「同様に中断した試験すべての所見が、冠動脈ステント留置後のDAPTの治療期間について短縮する方向でガイドラインを再検討する必要があることを示唆している」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年7月16日号掲載の報告より。DES留置1年後、DAPT中断群と継続群に割り付け検討 ARCTIC-Interruptionは、既報の無作為化試験ARCTIC-Monitoring(ARCTIC第I相試験、2,440例が参加)で予定されていた延長試験(ARCTIC第II相試験)であった。フランスの38施設でDES埋め込み手術が予定されていた18歳以上の患者が参加して行われた。 ARCTIC-Interruptionは、第I相試験の被験者で追跡1年後、DAPT中断への禁忌(糖尿病、末梢動脈疾患、ADPに対する血小板反応が高いなど)を有さなかった患者を適格とし、コンピュータ無作為化シーケンスにより施設単位で1対1の割合で、中断群と継続群に割り付けて6~18ヵ月治療が行われた。中断群はチエノピリジン系薬(クロピドグレル[商品名:プラビックス])が中断されアスピリンの投与は継続した。 主要エンドポイントは、死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・脳卒中・緊急血行再建術の複合で、intention to treat分析にて評価した。主要複合エンドポイント発生は両群で有意差なし、大出血イベントは継続群で多い 2011年1月4日~2012年3月3日の間に、1,259例がARCTIC-Interruption試験の適格基準を満たし、各治療群に無作為に割り付けられた(中断群624例、継続群635例)。 追跡期間中央値は17ヵ月であった(IQR:15~18ヵ月)。その間の主要エンドポイント発生は、中断群27例(4%)、継続群24例(4%)だった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.68~2.03、p=0.58)。 一方、安全性のエンドポイントでは、STEEPLE大出血イベントが、中断群(1例、0.5%未満)と比べて継続群(7例、1%)のほうが発生する頻度が高かった(HR:0.15、95%CI:0.02~1.20、p=0.073)。また、大出血または小出血イベントも、中断群(3例、1%)と比べて継続群(12例、2%)のほうがより頻度が高かった(同:0.26、0.07~0.91、p=0.04)。

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慢性呼吸器疾患増悪の入院症例に対する、入院中早期リハビリテーション導入についてのランダム化比較試験(解説:小林 英夫 氏)-228

本論文は、慢性呼吸器疾患による入院症例において、入院早期の呼吸リハビリテーション開始が1年間の観察期間にどのような影響を及ぼすかを検討したランダム化比較試験である。結果を概括すると、早期リハビリテーション導入は再入院リスクを低下させず(主アウトカム)、機能回復増進にも結び付かず、1年間の死亡率が高いという結果であり、早期リハビリテーション導入は推奨されない、としている。 プロトコールは良質な臨床試験で、本邦でこの臨床試験を実施することの困難さを思うと羨望せざるを得ない面がある。軽微な数字の取り間違えが4ページに数ヵ所あるが、ネガティブな結果にもかかわらず試験そのものは適切に解析されている。ただ、試験の出発点自体が妥当であろうかという疑問もあり、本論文を単純に受け入れることは難しい。種々の前提条件を踏まえたうえで読むべきであろう。冠動脈や脳血管といった急性動脈閉塞、手術後など急性疾患における早期リハビリテーション介入が機能回復に寄与することが明らかになってきているが、慢性(呼吸器)疾患において急性疾患と同様の結果が得られるかどうか、設定そのものの困難性が潜在するのではないだろうか。 また、対象群は慢性呼吸器疾患群389例で、その82%、320例がCOPDである。COPDに限定したsubgroup解析でも全例解析と差異がなかったとしているが、であるならば他疾患を混在させずCOPDのみを対象とした設定にすることで、よりすっきりした試験となったであろうことが惜しまれる。さらに、対象症例の3割は入院治療として酸素吸入が実施されていない点、平均BMI (body mass index) 26という点、副腎皮質ホルモン薬が入院前から87%の症例に全身投与されている点、現喫煙者が20%以上存在する点、これらの点は本邦での入院症例との差異が大きく、患者像が把握しにくい。次に、平均入院期間5日間(英国では平均的な日数とされる)の対象群を、入院後2日以内に早期リハビリテーションを導入する群と退院後に導入する群に分け比較しているが、数日間の導入差が慢性呼吸器疾患にどの程度の差異をもたらすものだろうか。リハビリテーションの効果は継続性によって発揮されるものであり、数日間の差異が仮に統計学的有意性を示したとしても、その理由付けが難しいように思われる。 さらに、著者らが予想していなかった結果(早期リハビリテーショが有害である)となった理由を論理的に説明できない。著者らもby chanceの可能性も記載しているが、数日程度の導入差が1年後の生存に有害な影響をもたらす解釈が困難である。1年間の追跡において、リハビリテーションによる機能改善効果が徐々に減少していくというデータも残念な成績であった。リハビリテーションの継続性、アドヒアランスの難しさが結果に影響していることが推測される。 本論ではないが、死亡原因の内訳に他臓器がんや消化器疾患が含まれている。臨床試験の取り扱いとして正しいとはいえ、リハビリテーション効果と他臓器がん死が結び付くとは評価できないので、付加的に非呼吸器疾患死亡を除外した検討も知りたいところである。また薬物治療内容も一切の記述がなかった。 筆者が初めて呼吸リハビリテーションの概念に接した1980年代初頭には、経験を積んだ理学療法士も存在せず保険点数も算定できない状況だった。2006年、独立した診療報酬項目として呼吸リハビリテーションが収載され、日本呼吸器学会COPDガイドライン第4版でもエビデンスA、Bの位置に呼吸リハビリテーションが記載されている。いまだ本邦での呼吸リハビリテーションは十分に普及しているとはいえないが、その意義が本論文によって否定されたわけではないことは、十分に留意されなければならない。呼吸リハビリテーションそのものを否定している報告ではなく、あくまで、入院後2日以内の早期開始の有効性がなかったということで、退院後の外来リハビリテーション効果は否定されていない。また本試験で用いられたリハビリテーションは2013年のBTS/ATSガイドライン以前の内容であることも、今後の検討において変更すべき点と思われる。

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高力価vs低力価、有効性の違いは

 統合失調症に対する治療の中心である抗精神病薬について、治療ガイドラインでは、有効性に差はないとしている。しかし、臨床的には低力価抗精神病薬は高力価抗精神病薬に比べて有効性が低いと認識されることが多く、また副作用の面でも異なるると言われていた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMagdolna Tardy氏らは、低力価と高力価の抗精神病薬について臨床的有効性の差を明らかにするため、無作為化比較試験のレビューを行った。その結果、臨床的有効性の優劣は明らかでなく、有害事象についてはハロペリドール群で運動障害が、低力価抗精神病薬群で起立性症状、鎮静および体重増加がより高頻度であったことを報告した。Cochrane Database Systematic Review誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。 そこで研究グループは、統合失調症患者に対するハロペリドールおよび低力価抗精神病薬の臨床的有効性についてレビューした。2010年7月までのCochrane Schizophrenia Group Trials Registerを用い、統合失調症または統合失調様精神異常を呈する患者に対し、ハロペリドールと第一世代の低力価抗精神病薬の比較を行っている無作為化試験すべてを検索した。任意にデータを抽出し、intention-to-treatにおけるランダム効果モデルに基づき、二分変数についてはリスク比(RR)とその95%信頼区間(CI)を算出。連続変数についてもランダム効果モデルに基づき、平均差(MD)を算出した。  主な結果は以下のとおり。・無作為化試験17件の877例についてレビューを行った。試験の対象例数は16~109例の範囲であった。また、いずれの試験も調査期間は2~12週と短期間であった。なお、割付の順番、割付方法および盲検化に関する記載のある報告は少なかった。・ハロペリドールが、低力価抗精神病薬に比べて臨床的有効性が優れるという明らかなエビデンスは見出せなかった(ハロペリドール40%、低力価抗精神病36%、14試験、574例、RR:1.11、95%CI:0.86~1.44、エビデンスの質:低)。・何らかの理由で試験から早期脱落した被験者数の差は不明確で、いずれかの群で治療の忍容性にベネフィットがあるという明らかなエビデンスも見出せなかった(同:13%、17%、11試験、408例、0.82、0.38~1.77、エビデンスの質:低)。・1件以上の有害事象発現という点でも、明確な差はみられなかった(同:70%、35%、5試験、158例、1.97、0.69~5.66、エビデンスの質:きわめて低)。・低力価抗精神病薬群では、鎮静(同:14%、41%、2試験、44例、0.30、0.11~0.82、エビデンスの質:中等度)、起立性症状(同:25%、71%、1試験、41例、0.35、0.16~0.78)および体重増加(同:5%、29%、3試験、88例、0.22、0.06~0.81)を認めた患者の頻度がより高かった。・一方、「1つ以上の運動障害」というアウトカムに関しては、ハロペリドール群のほうが高頻度であった(同72%、41%、5試験、170例、1.64、1.22~2.21、エビデンスの質:低)。・死亡またはQOLに関するデータはなかった。・いくつかのサブグループおよび感度解析において、主要アウトカムは確固たるものであった。・全体に試験の質が低く、主要なアウトカムのエビデンスの質は中等度から非常に低度までとばらつきがあった。ハロペリドールと低力価抗精神病薬の優劣について明確な結論を得るためには、新規の試験が必要である。関連医療ニュース 急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は 統合失調症への抗精神病薬、第一世代vs. 第二世代の注射製剤の効果は 第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症に対するメタ解析  担当者へのご意見箱はこちら

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新薬創出国“日本”を取り戻す

 イリノテカンやブレオマイシンなど、日本は世界中で広く投与されている抗がん剤を多く創出してきた。現在、アメリカ、スイスに次ぐ第3位の新薬創出国であり、日本は新薬を創出できる数少ない国として広く認知されている。しかしながら、近年、臨床で多く用いられている分子標的治療薬をみると、日本で創出された薬剤はたった2つしかない。そのため、分子標的治療薬の輸入は輸出を上回り、貿易赤字は拡大傾向にある。新薬創出国“日本”は、一体どこに行ってしまったのだろうか。 2014年7月17日~19日、福岡市で開催された日本臨床腫瘍学会において、がん研究会 がん化学療法センター 藤田 直也氏が「アカデミア創薬の橋渡し研究における課題」をテーマに、本邦における新薬創出の問題点と打開策について講演した。 創薬プロセスには、基礎研究から新薬承認までに数十年の長い月日と膨大な研究開発費(1,000億円規模)を要する。さらに、近年、新薬と承認される薬剤が減ってきており、開発成功率が下がってきている。そのため、相対的に1品目当たりの研究開発費が高騰している。しかし、本邦の基礎研究や臨床研究のレベルが下がっているわけではない。基礎研究において、薬の種(シーズ)を発見しても、それを標的にした研究・開発は海外で行われてしまっているのが現状である。 本邦における新薬創出の問題点は、シーズを臨床研究に結び付けるまでのトランスレーショナルリサーチ(TR)にある。TRとは、シーズからターゲットを見つけ、化合物のスクリーニング、動物モデルでの確認、結晶構造解析、特許取得までの一連の研究開発過程を指す。  藤田氏は、TR研究の大学・研究機関(アカデミア)側の問題点として以下を挙げている。1)スクリーニングや構造解析、個体レベルでの解析など、複数の部門が共同で研究を行う必要があるが、現時点では共同研究体の構築が不十分である。2)抗体医薬の毒性試験はサルでのみ行わなければならず、費用が5,000万円ほどかかりコストが高い。3)出口を見越した特許取得戦略が不足している。 また、企業側の問題として以下を挙げている。1)研究開発費絶対額が不足している。2)リスクを取ることに躊躇している。3)アカデミアの成果を評価する人材が不足している。4)ブロックバスターモデルからアンメット・メディカル・ニーズに対応した医薬品開発への転換ができていない。5)研究開発のクローズ手法からオープン化への転換が遅れている。6)低分子化合物に偏りがちでバイオ医薬品開発への転換が遅れている。 ここでは、アカデミアの成果を評価する人材の不足に注目したい。TR研究における日本とアメリカの大きな違いは、創薬ベンチャー企業の存在にある。アメリカでは、創薬ベンチャーがアカデミアと企業の間に入ることで、円滑に開発を進めることができ多くの薬剤を創出している。本邦では、創薬ベンチャー企業が少なく、その起業リスクなどから拡大傾向にないのが現状である。その一方で、経済産業省が推し進めるTLO[Technology Licensing Organization(技術移転機関)]という制度が整いつつある。TLOとは、アカデミアの研究成果を特許化し、それを企業へ技術移転する法人であり、いわばアカデミアと企業をつなぐ「仲介」役として注目されている。 今後、アカデミア側としてはTLOをうまく活用すること、企業側としてはアカデミアとの初期段階からのマッチング、国内アカデミアへの投資・協同を行うことで、TR研究を円滑に進めることができるのではないだろうか。 新薬創出国“日本”の復活が期待される。

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大人のリンゴ病 4つの主要パターン

 フランス・パリ第5大学のValentia Mage氏らは、成人のパルボウイルスB19感染症について、皮膚症状の特徴を明らかにするため多施設共同の記述的後ろ向き研究を行った。結果、同感染症では多彩な皮膚症状を呈するが、主要なパターンとして、「発疹(網状か環状)」「手足」「屈面周囲」「明らかな紫斑」の4つが、個別にまたは重複してみられることを報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌2014年7月号(オンライン版2014年4月14日号)の掲載報告。 検討は、1992~2013年に多施設において、パルボウイルスB19の1次感染が確認された18歳超の29例の患者(女性17例、男性12例)を対象に行われた。 主な結果は以下のとおり。・病変部にみられる皮膚症状は、大半は紅斑(86%)であったが、紫斑(69%)の頻度も高かった。・かゆみは、症例の48%で報告された。・皮膚症状が顔面にみられる頻度は低く(20%)、むしろ発疹が下肢(93%)、体幹(55%)、腕(45%)に認められた。・4つのパターン、すなわち皮疹(網状、場合によっては環状)(80%)、手足パターン(24%)、屈面周囲パターン(28%)、明らかな紫斑(24%)がみられた。4つのパターンは重複することもあった(45%)。・本検討は、3次医療センターで行われた後ろ向きデザインの潜在的な被験者募集バイアスがあった試験という点で限定的であった。

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炎症性腸疾患患者における抗TNF-α薬と発がんリスクとの関連(解説:上村 直実 氏)-227

炎症性腸疾患(IBD)に対して、成分栄養を含む食事療法、サラゾピリン・メサラジン、ステロイド、免疫抑制薬、血球成分除去、外科的腸切除術など種々の治療が行われているが、最近では高い有用性が報告されている分子標的薬の抗TNF-α薬が頻用されている。抗TNF-α薬は発がんリスクを増大する可能性を指摘する報告もあったが、今回、デンマークにおけるIBD、ならびに、がん患者の全国レジストリを用いて施行された大規模コホート研究の結果、抗TNF-α薬投与は発がんリスクの増大と関連しないことがJAMAに報告された。 本研究の解析対象は1999~2012年のレジストリからIBDと特定された15歳以上の5万6,146例であり、抗TNF-α薬使用群は4,553例(8.1%)でクローン病54%、潰瘍性大腸炎46%、診断時年齢は33.7歳であった。主要評価項目は使用群と非使用群を比較したがん発症率比(RR)で、年齢、暦年、罹患期間、Propensity score、他のIBD薬使用に関する補正後に評価された結果、中央値3.7年の追跡期間で、使用群の非使用群に対する補正後RRは1.07(95%CI:0.85~1.36)であり、すべての部位における発がんリスクは抗TNF-α薬の使用期間や投与量とも関連を認めなかった。以上より、IBDに対する抗TNF-α薬の使用は発がんリスクを増加することはないと結論されている。 しかし、慢性関節リウマチ患者を対象としたRCTの結果では、抗TNF-α薬により発がんリスクが増大したとの報告がある。一方、本研究の結果では免疫抑制薬Azathioprineの併用群はがんのリスクが増大する可能性が示唆されている。したがって、抗TNF-α薬とAzathioprineを併用する患者に対してはがんの発症を念頭においた診療が必要であり、抗TNF-α薬と発がんリスクに関する結論は、今後、観察期間をさらに延長した研究結果が重要と思われる。

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乾癬を長く患っている人は骨密度に注意

 乾癬患者と骨密度の関連を調査した結果、骨減少症/骨粗鬆症の被験者では、乾癬の罹患期間が有意に長いことが、ローマ・ラ・サピエンツァ大学のSofia D'Epiro氏らによって報告された。本調査の結果を踏まえて筆者らは、「乾癬患者、とくに長期罹患者では、より早期から骨代謝の評価が必要である」とまとめた。The Journal of Dermatology誌オンライン版2014年7月3日掲載報告。 乾癬と骨粗鬆症の発症には、全身性炎症、乾癬治療薬の服用、乾癬性関節炎による関節機能不全といったいくつかの要因が関与していると考えられている。本研究の目的は、乾癬患者の骨密度を評価し、骨減少/骨粗鬆症の有病率や乾癬病変部位、重症度(PASIスコア)、平均罹患期間、乾癬性関節炎、乾癬治療歴との相関を調査することであった。 主な結果は以下のとおり。・調査には、乾癬を有している連続患者43例が登録された。うち19例は関節変形を来していた。・乾癬の重症度はPASIスコア、CASPAR診断基準、乾癬性関節炎の確定診断のための超音波検査、罹患期間の推定により判定した。・骨密度の測定には、腰椎と大腿骨頸部の二重エネルギーX線吸収法(DEXA法)が実施された。・骨減少/骨粗鬆症の被験者では、骨密度が成人若年者の平均値と同等の被験者に比べ、有意に乾癬罹患期間が長かった(17年vs. 8.8年、p=0.04)。・ロジスティック回帰分析の結果、乾癬の平均罹患期間と骨密度の変化には明らかな関連がみられた(p=0.04)。

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ADHDには地域サポートが重要

 注意欠如・多動症(ADHD)に地域特性はどのような影響を及ぼすのか。米国・カリフォルニア大学のNooshin Razani氏らは、個人的および家族的要素を加味したうえで、ADHDと地域の社会的・物理的特性との関連について調査した。Journal of attention disorders誌オンライン版2014年7月15日号の報告。 2007年の全米小児健康調査データを使用した(n=64,076)。検討にあたっては、3つの地域スケールを設定した[社会的支援、設備(amenities)、秩序の乱れ(disorder)]、ロジスティックおよび順序ロジスティック回帰を用い、個人や家族の特性を調整したうえで、これらのスケールとADHDの診断および重症度との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・ADHD児は8%であった。重症度別にみると、軽度47%、中等度40%、重度13%であった。・調整モデルでは、地域サポートの低さはADHDの診断増加(OR=1.66 [1.05~2.63])や、重症度(OR=3.74 [1.71~8.15])と関連していた。地域の設備や秩序の乱れとの有意な関連は認められなかった。・親のメンタルヘルスが悪いことは、ADHDの有病率および重症度と関連していた。・地域の社会的サポートは、ADHD児やその保護者にとって重要な介入方法である可能性が示唆された。関連医療ニュース 小児ADHD、食事パターンで予防可能か ADHDの世代間伝達に関連する独立リスク因子は 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学  担当者へのご意見箱はこちら

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妊婦への百日咳ワクチン接種は安全か/BMJ

 妊娠第3三半期の妊婦に対し百日咳ワクチンを接種しても、非接種妊婦に比べて死産のリスクは増大しないことが、英国医薬品庁(MHRA)のKatherine Donegan氏らの検討で示された。グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)に起因する百日咳は、初期症状は比較的軽いものの、とくに3ヵ月未満の幼児に重篤で致死的な合併症を引き起こす可能性がある。米国では、市販後調査で安全性に関する懸念が払拭された2011年以降、妊婦への接種が推奨されているが、接種率は現在も低迷しており、安全性に関するエビデンスは限られたものだという。BMJ誌オンライン版2014年7月11日号掲載の報告。妊婦への接種の安全性をコホート研究で評価 研究グループは、英国における妊婦に対する百日咳ワクチン接種の安全性を評価する観察的コホート研究を実施した。年齢中央値30歳のワクチン接種妊婦と背景因子をマッチさせた非接種妊婦の転帰を比較した。 妊婦、ワクチン接種、妊娠関連有害事象のデータの収集にはClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いた。CPRDには英国の650以上のプライマリ・ケア関連データベースが参画し、全国の1,250万例以上の患者データが登録されている。 妊婦の有害事象は妊娠中の診療記録で同定し、子供の有害事象はCPRDの母子関連データで確認した。 主要評価項目は死産(妊娠24週以降の子宮内死亡)とした。接種後の死産率:0.19 vs. 0.23%、新生児死亡率:0.03 vs. 0.03% 30歳の妊婦2万74人が百日咳ワクチンの接種を受け、1万7,560人(87%)で接種後28日以上のフォローアップが行われた。このうち1万3,371人(76%)で在胎期間の予測が可能であり、ワクチン接種時の在胎期間中央値は31週だった。 ワクチン接種群の接種後2週以内の短期的な死産リスクは、非接種群に比べ増大していなかった(死産件数:接種群5件vs. 非接種群7.2件、率比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.23~1.62)。 フォローアップ期間が44週以上のワクチン接種妊婦は6,185人(年齢中央値30歳、接種時の在胎期間中央値33週)であった。これら接種群の分娩までの期間は、非接種群との間に有意な差はみられなかった(全体の在胎期間中央値:40週、ハザード比:1.00、95%CI:0.97~1.02)。 ワクチン接種群における全体の死産率は0.19%(12/6,185人、出産500件当たり約1件)であり、非接種群の0.23%(42/1万8,523人)との間に有意な差は認めなかった(率比:0.85、95%CI:0.45~1.61)。 出生7日以内の新生児死亡(発生率:0.03 vs. 0.03%、率比:1.00、95%CI:0.20~4.95)、妊娠高血圧腎症/妊娠高血圧(同:0.36%vs. 0.29%、1.22、0.74~2.01)、前置胎盤(同:0.03%vs. 0.08%、0.40、0.09~1.75)、子宮内発育遅延/低出生時体重/体重<2,500g(同:2.04%vs. 1.68%、1.20、0.98~1.48)のほか、帝王切開、分娩後出血などにも、両群間に有意な差はなかった。 ワクチン接種後の母体死亡、分娩前出血、子宮破裂、胎盤早期剥離、前置血管、胎児機能不全、新生児腎不全は認めなかった。 著者は、「妊娠第3三半期のワクチン接種により、短期的および接種後の全妊娠期間を通じて、死産のリスクは増大しなかった」とまとめ、「本研究は、妊婦に対する百日咳ワクチン接種の安全性に関する初めての大規模観察試験であり、ワクチン接種に関わる医療従事者にとって有益で、ワクチン接種関連の施策の立案に資すると考えられる」と指摘している。

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週1回GLP-1アナログでは初の非劣性/Lancet

 血糖コントロール不良の2型糖尿病患者において、週1回デュラグルチド(dulaglutide、国内未承認)のHbA1c値の改善効果は1日1回リラグルチド(商品名:ビクトーザ)に劣らないことが、米国・オハイオ州立大学のKathleen M Dungan氏らが行ったAWARD-6試験で示された。両薬はいずれもGLP-1受容体作動薬であり、2型糖尿病患者において血糖コントロールを改善し、体重の減少をもたらすとともに、低血糖のリスクを低減することが報告されている。これまでに、2つの週1回投与のGLP-1作動薬(エキセナチド、アルビグルチド)とリラグルチドの直接比較試験が実施されたが、いずれの長時間作用型製剤もリラグルチドに対する非劣性は確認されていないという。Lancet誌オンライン版2014年7月11日号掲載の報告。血糖値改善効果の非劣性を無作為化試験で評価 AWARD-6試験は、メトホルミン治療中の血糖コントロール不良2型糖尿病患者に対するデュラグルチド(週1回、自己注射)とリラグルチド(1日1回、自己注射)の有用性を比較する非盲検無作為化第III相非劣性試験。 対象は、年齢18歳以上、メトホルミン(≧1,500mg/日)の投与を受け、HbA1c値7.0%(53mmol/mol)~10.0%(86mmol/mol)、BMI≦45の患者であった。参加者は、デュラグルチド1.5mgを週1回皮下注射する群またはリラグルチドを0.6mg/日、1.2mg/日、1.8mg/日へと3週間かけて漸増する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、治療終了時(26週)のHbA1c値(最小二乗平均値)のベースラインからの変化の差であった。非劣性マージンは0.4%とし、95%信頼区間(CI)の上限値が0.4%を超えない場合に非劣性と判定した。安全性は、治療終了後4週間のフォローアップを行って評価した。HbA1c値の変化の差は-0.06%、安全性、忍容性も同等 2012年6月20日~2013年11月25日までに、9ヵ国62施設から599例が登録され、デュラグルチド群に299例(平均年齢56.5歳、男性46%、平均BMI 33.5、平均罹病期間7.1年)が、リラグルチド群には300例(56.8歳、50%、33.6、7.3年)が割り付けられた。ベースラインの平均HbA1c値は両群ともに8.1%であった。両群269例ずつが治療を完遂した。 HbA1c値のベースラインからの変化は、デュラグルチド群が-1.42%(p<0.0001)、リラグルチド群は-1.36%(p<0.0001)であり、両群ともに有意な改善効果が認められた。両群間の変化の差は、-0.06%(95%CI:-0.19~0.07)であり、デュラグルチド群はリラグルチド群に対し非劣性であった(非劣性p<0.0001)。 空腹時血清グルコース値のベースラインからの変化は、デュラグルチド群が-1.93%(p<0.0001)、リラグルチド群は-1.90%(p<0.0001)といずれも有意に低下した。また、食後血漿グルコース値のベースラインからの変化は、それぞれ-2.56(p<0.0001)、-2.43(p<0.0001)であり、いずれも有意な改善が認められた。体重の変化は、-2.90kg、-3.61kgであり、リラグルチド群でより減少する傾向が認められた。 頻度の高い消化器系の有害事象として、悪心(デュラグルチド群20%vs.リラグルチド群18%、p=0.46)、下痢(12%vs. 12%、p=0.99)、嘔吐(7%vs. 8%、p=0.55)などが認められた。有害事象による治療中止はそれぞれ6%、6%であった(p=0.99)。低血糖はそれぞれ9%、6%で発現したが、患者1人当たりの年間発生率は0.34回、0.52回であった。重篤な低血糖の報告はなかった。 著者は、「デュラグルチドは、より少ない注射回数でリラグルチドと同等の血糖コントロールを達成した。週1回投与はコンプライアンスも良好と予測されるが、これについてはさらなる検討を要する」とまとめ、「本試験は週1回GLP-1受容体作動薬の1日1回リラグルチドに対する非劣性を確認した初めての研究であり、治療を決定する際の有益な情報となるだろう」と指摘している。

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ピルと筋骨格系外傷や摂食障害との関連

 米国・ウィスコンシン大学のJill M. Thein-Nissenbaum氏らは、女子高校生アスリートを対象に調査を行い、経口避妊薬(OCP)の使用者および非使用者ともに月経不順、筋骨格系の外傷の有病率は同程度であるが、摂食障害はOCP使用者に多いことを明らかにした。OCP使用者は月経があるとみなされ3主徴が見逃される恐れがあることから、著者は、OCPを使用している女子高校生における3主徴のスクリーニングでは、とくに摂食障害に注意するよう呼びかけている。Sports Health誌7・8月号の掲載報告。 女性アスリートの3主徴として、利用可能エネルギー不足、月経障害および低骨密度が指摘されている。現在、3主徴の要素と高校生の筋骨格系の外傷との関連についての情報は限られており、とくにOCP使用の影響についてはこれまで検討されていなかった。 研究グループは、女子高校生アスリートにおける摂食障害、月経不順および筋骨格系の外傷の有病率を、OCP使用者と非使用者とで比較する目的で後ろ向きコホート研究を行った。 参加者に摂食障害診断質問票(EDE-Q)を記入してもらうとともに、ウィスコンシン女子高校生アスリート健康調査(Healthy Wisconsin High School Female Athletes Survey〔HWHSFAS〕)を行い、OCP使用の有無別に解析した。  主な結果は以下のとおり。・参加者のうち、14.8%がOCPを使用していた。・OCP使用者群と非使用者群とで、月経不順と筋骨格系の外傷の有病率に差はなかった。・摂食障害の有病率は、非使用者群に比べOCP使用者群で有意に高かった。・OCP使用者群は非使用者群より、摂食障害の基準を満たすリスクが約2倍高く(オッズ比[OR]:2.47、95%信頼区間[CI]:1.20~5.09)、摂食障害傾向を満たすグローバルスコアを有するリスクは5倍を超えた(OR:5.36、95%CI:1.92~14.89)。

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認知症にスタチンは有用か

 アルツハイマー病(AD)や血管性認知症(VaD)へのスタチン治療は、比較的未開拓の領域である。先行文献において、ADではβ-アミロイド(Aβ)が細胞外プラークとして沈着し、Aβ生成はコレステロールに依存することが確認されている。また、VaDの病因に高コレステロール血症が関与していることも知られている。そこで、英国・Belfast Health and Social Care TrustのBernadette McGuinness氏らは、認知症に対するスタチン治療の有益性について、システマティックレビューとメタ解析により検討を行った。Cochrane Database Systematic Review誌オンライン版2014年7月8日号の掲載報告。 研究グループは、スタチンがコレステロールを低下させることから、ADやVaDの治療において有効であることが期待できるとして、臨床的有効性および安全性を評価した。今回の検討では、ADおよびVaDの治療におけるスタチンの効果が、コレステロール値、ApoE遺伝子型、認知レベルに左右されるかどうかを評価した。2014年1月20日時点で、ALOIS、Cochrane Dementia and Cognitive Improvement GroupのSpecialized Register、Cochrane Library、MEDLINEなどを検索。認知症と診断された人に6ヵ月以上スタチンを投与していた二重盲検無作為化臨床比較試験を適格とした。2名の著者がそれぞれデータの抽出と評価を行い、研究グループは必要に応じてデータをプールしメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・検索で特定したのは、4試験(被験者1,154例、年齢50~90歳)であった。著者らは、全試験のバイアスリスクは低いと評価した。・全被験者が、標準的な診断基準によりADがほぼ確実もしく疑いがあった(possible/ probable AD)。また、これらは、ほとんどの被験者でコリンエステラーゼ阻害因子に基づき確認されていた。・全試験が、ADAS-Cogのベースライン時からの変化を主要アウトカムとしていた。プールデータ解析の結果、ADAS-Cogへのスタチンによる有意な有益性は認められなかった(平均差:-0.26、95%信頼区間[CI]:-1.05~0.52、p=0.51)。・また、全試験で、MMSEのベースライン時からの変化が報告されていた。プールデータ解析の結果、MMSEへのスタチンによる有意な有益性はみられなかった(平均差:-0.32、95%CI:-0.71~0.06、p=0.10)。・治療関連の有害事象は、3試験で報告されていた。プールデータ解析の結果、スタチンとプラセボで有意差はみられなかった(オッズ比:1.09、95%CI:0.58~2.06、p=0.78)。・スタチンとプラセボとの間に、行動、全体的機能やADLに有意差はみられなかった。・VaDの治療におけるスタチンの役割について評価した試験は見つからなかった。関連医療ニュース スタチン使用で認知症入院リスク減少 アルツハイマーの予防にスタチン 認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか

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乾癬へのセクキヌマブの有効性/NEJM

 中等症~重症の局面型乾癬に対し、新規開発中のインターロイキン-17A阻害薬セクキヌマブ(secukinumab、国内承認申請中)を投与することで、12週間後に症状が75%以上改善した人は約7割に上ることが示された。カナダ・ダルハウジー大学のRichard G. Langley氏らが、2件の第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験、「ERASURE」と「FIXTURE」の結果、報告したもので、著者は、「中等症~重症の局面型乾癬に対し、セクキヌマブは有効であることが示された」とまとめている。NEJM誌オンライン版2014年7月9日号掲載の報告より。12週間後のPASI 75の割合を比較 ERASURE(Efficacy of Response and Safety of Two Fixed Secukinumab Regimens in Psoriasis)試験では、中等症~重症の局面型乾癬の患者738例を無作為に3群に分け、それぞれセクキヌマブを300mg、150mgまたはプラセボ(5週間は週1回、その後は4週ごと)をそれぞれ投与した。FIXTURE(Full Year Investigative Examination of Secukinumab vs. Etanercept Using Two Dosing Regimens to Determine Efficacy in Psoriasis)試験では、1,306例を無作為に4群に分け、セクキヌマブ300mg、150mg、プラセボと、エタネルセプト(50mg、12週間は週2回、その後は週1回)をそれぞれ投与した。 主要評価項目は、PASI(psoriasis area-and-severity index)スコアがベースライン時から75%以上改善(PASI 75)した人と、5ポイント修正IGA(investigator’s global assessment、研究者による皮膚症状の重症度の包括的な評価尺度)のスコアが0(寛解)または1(ほぼ寛解)の割合だった。PASI 75達成患者、セクキヌマブ群7~8割、エタネルセプト群4割 結果、12週間後にPASI 75だった患者の割合は、セクキヌマブ群がプラセボ群、エタネルセプト群よりも有意に高率だった。具体的には、ERASURE試験では、セクキヌマブ300mg群が81.6%、同150mg群が71.6%に対し、プラセボ群が4.5%だった。FIXTURE試験では、セクキヌマブ300mg群が77.1%、150mg群が67.0%に対し、エタネルセプト群44.0%、プラセボ群4.9%だった(両試験ともセクキヌマブ群vs. 比較群のp<0.001)。 また、修正IGAスコアが0または1の人の割合も、セクキヌマブ群でプラセボ群やエタネルセプト群より有意に高率だった。各試験の結果は、ERASURE試験では、セクキヌマブ300mg群が65.3%、同150mg群が51.2%、プラセボ群は2.4%だった。FIXTURE試験では、セクキヌマブ300mg群が62.5%、150mg群が51.1%、エタネルセプト群が27.2%、プラセボ群が2.8%だった(同p

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Vol. 2 No. 3 肺高血圧症とは 肺高血圧症の発症機序に関する最新知見と臨床分類

中村 一文 氏岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 循環器内科学はじめに肺高血圧症の発症機序に関する肺循環生理の3つの特徴を述べたあと、肺動脈内腔の狭窄を引き起こす3つの発症機序について概説する。また、receptor for advanced glycation endo-products(RAGE)の関与など最新の知見についても説明する。さらに、ニース会議における肺高血圧症の臨床分類の従来との変更点を簡単に説明し、最後に3系統の薬剤を使用したあとにわかった最近の話題を述べる。肺循環の生理と肺高血圧1. 低圧系・低抵抗系かつコンプライアンスが大きい肺循環系は体循環系と比べ低血圧系であり、安静時肺動脈圧の正常値は収縮期圧20〜30mmHg、平均圧10〜15mmHg程度である。肺血管抵抗は、全身血管抵抗の約1/5~1/6と低い。肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)の診断を行う場合には、安静時に平均肺動脈圧25mmHg以上で肺動脈楔入圧が15mmHg以下と定義されている。さらに、肺循環系の特徴はコンプライアンスが大きいことである。運動など肺血流量の増大時は、肺血管は容易に伸展し、受動的な拡張(distension)が生じる。また、それまで血流のなかった血管に再疎通(recruitment)が生じる。このように肺血管床は予備血管床が多いので、肺動脈に器質的狭窄が起こってきたとき、有効肺血管床が1/3以下に減少するまで安静時の肺動脈圧の上昇はみられないと考えられている1)。したがって、肺高血圧はカテーテルにて診断された時点で病像はかなり進んでいるということを認識して、治療にあたる必要がある。2. 低酸素性肺血管攣縮肺胞換気量の低下などにより肺胞気酸素分圧が低下すると、その肺胞領域を灌流する細小動脈に血管収縮が生じ、血流が減少する。これは低酸素性肺血管攣縮(hypoxic pulmonary vasoconstriction: HPV)といわれ、換気のよい肺胞により多くの血液が流れるようにする自己調節機能である。この肺血管収縮は、低酸素を伴う肺疾患などの病気においては肺高血圧の原因の1つになる。したがって、低酸素を予防するため、肺高血圧治療の一般的ケアとして酸素が用いられる。3. 生理活性物質による肺循環の調節血管内皮細胞から産生される血管拡張因子であるnitric oxide(NO)とprostaglandin I2(PGI2)、さらに血管収縮因子であるエンドセリンは、血管平滑筋に作用してそれぞれ血管を弛緩・収縮させる。NOならびにそのシグナル伝達物質であるcGMPの分解を抑制するホスホジエステラーゼ5(PDE-5)阻害薬、そしてPGI2は、肺高血圧の治療に応用されている。また、血管収縮因子であるエンドセリン受容体の拮抗薬も肺高血圧の治療に使用されている。肺動脈性肺高血圧症の発症機序PAHの病態の主体は肺動脈内腔の狭窄で、主に3つの要因により生じる。1つは血管内皮細胞および平滑筋細胞などの過剰増殖とアポトーシス抵抗性による血管リモデリング、2つ目は血管拡張因子と血管収縮因子のアンバランスによる血管収縮、3つ目は凝固系の異常による病変部での血栓形成である。以上の結果、肺血管抵抗が上昇し、肺動脈圧の上昇や右心不全を引き起こす。前述の肺循環生理の破綻がそこにはある。1. 血管リモデリング診断時に行われる急性血管拡張試験で陽性例が少ないこと、薬剤治療(PGI2、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE-5阻害薬)により速やかには改善しないこと、叢状病変(plexiform lesion)には異常増殖性・アポトーシス抵抗性・増殖因子に対する異常反応などの性質を持つ内皮細胞が認められることから、細胞の腫瘍性増殖による血管リモデリングがPAHの主要な原因と考えられている(cancer paradigm)2)。【血管内皮細胞の異常増殖とパラクリン作用】叢状病変の形成には、内皮細胞の異常な増殖が関与する。PAHの血管内皮細胞は単一性増殖(monoclonal proliferation)、すなわち腫瘍性増殖を示す。PAHの血管内皮細胞はFGF2などを過剰に発現しており、そのパラクリン作用が肺動脈平滑筋細胞の増殖を促す。【平滑筋細胞の過剰増殖】肺動脈は本来非筋性の径20~30μmの細動脈(arteriole)レベルまで筋層が発達し(muscularization of arteriole)、内膜や中膜の肥厚により狭窄・閉塞を示す。走査型電子顕微鏡で見ると毛細血管に至るまでに一部動脈が閉塞し、枯れ枝状になっている(本誌p.10図を参照)3, 4)。PAH肺動脈平滑筋細胞におけるbone morphogenetic protein(BMP)シグナル異常が、細胞の異常増殖に関与している。肺高血圧のない対照者由来の肺動脈平滑筋細胞では、BMPリガンド刺激は平滑筋細胞の増殖を抑制するのに対し、PAH肺動脈平滑筋細胞ではこの抑制効果が欠如している。このBMPによる増殖抑制効果の低下は、BMP2型受容体(BMPR2)遺伝子異常の有無にかかわらず認められる。血小板由来増殖因子(platelet-derived growth factor:PDGF)刺激への過剰反応も認められる。PAH肺動脈平滑筋細胞において、PDGF刺激による増殖が、肺高血圧のない対照者のものより亢進している5, 6)。PDGF受容体アンタゴニストのイマチ二ブは、PAH肺動脈平滑筋細胞の増殖抑制作用を有する6)。イマチニブとプラセボを比較した第Ⅲ相臨床試験(IMPRES study)では、6分間歩行距離が有意に増加し(primary endpoint)、PVRが有意に減少したが、残念ながら副作用発現や治療継続困難な例が多く、臨床応用は困難となっている7)。【平滑筋細胞のアポトーシス抵抗性】PAH患者の肺組織ではproapoptotic/antiapoptotic遺伝子の比が減少しており、PAH患者の肺動脈平滑筋細胞はアポトーシス抵抗性が亢進している8)。また、正常または二次性肺高血圧の肺動脈平滑筋細胞では、BMP-2,-7によりアポトーシスが誘導されるが、PAH肺動脈平滑筋細胞では誘導されない。このアポトーシス抵抗性の機序の1つとして、電位依存性カリウムチャネル(Kvチャネル)電流の低下が考えられている。細胞内カリウム(K)イオン濃度の増加によりカスパーゼ活性が抑制され、アポトーシス抵抗性となる9)。他の機序としてアポトーシス抑制蛋白であるsurvivinの発現亢進も認める。高用量のPGI2療法は臨床上有効であり10)、肺動脈平滑筋細胞にFasリガンドのupregulateを介しアポトーシスを引き起こす(本誌p.11 図を参照)11)。【PAH平滑筋細胞におけるRAGEの関与】終末糖化産物受容体(RAGE)はイムノグロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通型の蛋白で、終末糖化産物(advanced glycation endo-products: AGE)のほか、免疫系細胞から分泌されるS100蛋白などが結合する。PAH患者の肺動脈平滑筋細胞ではRAGEの発現が亢進している12)。それはSTAT3の活性化、BMPR2とPPARγの減少につながり、過剰増殖とアポトーシス抵抗性を引き起こしている。モノクロタリンとSugen誘発性PAHモデルラットにおいて、siRNAにてRAGEの発現を抑制したところ、肺動脈圧の減少効果が認められ、RAGEは今後の治療標的として注目されている。糖尿病治療では、初期からの厳格な血糖管理が、長期にわたり血管合併症に関して抑制的に作用する遺産効果(legacy effects)があるといわれている。この効果にAGE/RAGEの初期からの長期にわたる抑制が関与すると考えられている。肺高血圧治療に「legacy effectsは存在するのか?」さらに「それにRAGEは関与するのか?」、興味がつきないところである。【CTEPH細胞】慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の器質化血栓から単離した細胞(CTEPH細胞)は増殖能が高く、PDGF受容体の発現が増加しており、正常平滑筋細胞とは異なる性質を持つ。OgawaらはPDGFにより増殖が亢進し、ストア作動性カルシウム流入が亢進することなどを報告している13)。この細胞の特性を明らかにすることはCTEPHの病変進行の機序の解明につながると期待されている。2. 血管収縮PAHでは血管拡張因子と血管収縮因子のアンバランスもある。血管拡張につながる内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現低下と、血管収縮につながるエンドセリン-1の発現亢進がみられる。さらにPGI2 合成酵素の発現低下によるPGI2の低下も認められる14)。原子間力顕微鏡を用いて、肺動脈平滑筋細胞の弾性率を検討したところ、コントロール状態(=無刺激時)の弾性率はPAH肺動脈平滑筋細胞と肺高血圧のない対照者の肺動脈平滑筋細胞間で差はなかったが、NOに対する反応をみると、対照者の細胞では弾性率が低下するのに対し、PAH細胞では弾性率に変化が認められなかった(本誌p.12図を参照)15)。すなわち、PAH肺動脈平滑筋細胞は生体内の血管弛緩物質であるNOに対して反応しにくい細胞であると考えられる。3. 血栓形成PAH患者の内皮においては、血小板の凝集につながるトロンボキサンA2が増加し、抗凝集につながるプロスタサイクリン(PGI2)の減少を認める。肺高血圧症の臨床分類2013年2月、ニースにおいて第5回肺高血圧症ワールドシンポジウムが開催された。そこで提唱された分類は、2008年のDana Point分類と大きな違いはなかったが、新生児遷延性肺高血圧症は第1群の亜型に、溶血性貧血は第5群に移動となっている(表)。表 肺高血圧症の臨床分類(ニース会議2013)画像を拡大する最近の話題現在使用されているPGI2(とその誘導体)、PDE-5阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬は、血管拡張作用のみならず肺動脈平滑筋細胞の増殖抑制作用も有する。また、高用量のPGI2は肺動脈平滑筋細胞にアポトーシスも引き起こす11)。このような薬剤を使用されている状況下で肺移植を受けた62名の患者の肺動脈病理が最近報告された16)。PAHの肺動脈では内膜と中膜の肥厚を認めたが、内膜の肥厚が優性であった。血管周囲の炎症細胞浸潤も著しかった。叢状病変もよく認められたが、PGI2治療を受けていない人の方が少なかった。この結果から、現状の3系統の薬剤治療にて、中膜平滑筋の増殖は抑制できうるが、内膜の肥厚と叢状病変は抑えきれないことがわかる。また炎症細胞浸潤が病態の進行に関与していることも示唆される。残るこれらの病変の機序の解明とそれらを標的とした治療法の開発が期待される。文献1)国枝武義. 「肺高血圧症の概念, 病態, 治療体制の確立に向けて」基調講演. Ther Res 2005; 26 :2012-2021.2)Rai PR et al. The cancer paradigm of severe pulmonary arterial hypertension. Am J Respir Crit Care Med 2008; 178: 558-564.3)Miura A et al. Three-dimensional structure of pulmonary capillary vessels in patients with pulmonary hypertension. Circulation 2010;121: 2151-2153.4)Miura A et al. Different sizes of centrilobular ground-glass opacities in chest high-resolution computed tomography of patients with pulmonary veno-occlusive disease and patients with pulmonary capillary hemangiomatosis. Cardiovasc Pathol 2013; 22: 287-293.5)Ogawa A et al. Prednisolone inhibits proliferation of cultured pulmonary artery smooth muscle cells of patients with idiopathic pulmonary arterial hypertension. Circulation 2005; 112: 1806-1812.6)Nakamura K et al. Pro-apoptotic effects of imatinib on PDGFstimulated pulmonary artery smooth muscle cells from patients with idiopathic pulmonary arterial hypertension. Int J Cardiol 2012; 159: 100-106.7)Hoeper MM et al. Imatinib mesylate as add-on therapy for pulmonary arterial hypertension: results of the randomized IMPRES study. Circulation 2013; 127: 1128-1138.8)Geraci MW et al. Gene expression patterns in the lungs of patients with primary pulmonary hypertension: a gene microarray analysis. Circ Res 2001; 88: 555-562.9)Remillard CV et al. Activation of K+ channels: an essential pathway in programmed cell death. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2004; 286: L49-67.10)Akagi S et al. Marked hemodynamic improvements by high-dose epoprostenol therapy in patients with idiopathic pulmonary arterial hypertension. Circ J 2010; 74: 2200-2205.11)Akagi S et al. Prostaglandin I2 induces apoptosis via upregulation of Fas ligand in pulmonary artery smooth muscle cells from patients with idiopathic pulmonary arterial hypertension. Int J Cardiol 2013; 165: 499-505.12)Meloche J et al. Critical role for the advanced glycation end-products receptor in pulmonary arterial hypertension etiology. J Am Heart Assoc 2013; 2: e005157.13)Ogawa A et al. Inhibition of mTOR attenuates store-operated Ca2+ entry in cells from endarterectomized tissues of patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2009; 297: L666-676.14)Christman BW et al. An imbalance between the excretion of thromboxane and prostacyclin metabolites in pulmonary hypertension. N Engl J Med 1992; 327: 70-75.15)Nakamura K et al. Altered nano/micro-order elasticity of pulmonary artery smooth muscle cells of patients with idiopathic pulmonary arterial hypertension. Int J Cardiol. 2010; 140: 102-107.16)Stacher E et al. Modern age pathology of pulmonary arterial hypertension. Am J Respir Crit Care Med 2012; 186: 261-272.

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いぼの治療にMMRワクチンが有効

 疣贅(ゆうぜい=いぼ)へのMMRワクチンを用いた病巣内免疫療法は、忍容性があり効果的であることが、韓国・朝鮮大学校医学部のC. H. Na氏らによる検討の結果、示された。現状で有用な疣贅治療は、冷凍療法、レーザー治療、電気外科治療、角質溶解薬の局所塗布などがあるが、痛みを伴うことが多く治療部位が瘢痕となる可能性がある。一方で近年、皮膚反応検査の抗原やワクチンを用いた病巣内免疫療法が疣贅治療に有効であることが示されていた。Clinical and Experimental Dermatology誌2014年7月号の掲載報告。 研究グループは、疣贅の新たな病巣内免疫療法として、MMRワクチンを用いた治療法の有効性を評価する後ろ向き検討を行った。 さまざまなタイプの疣贅を有する136例を登録し、2年間にわたって評価。患者は、2週間に1回、計6回にわたって治療を受けた。 治療反応は、疣贅の大きさ、数の減少を3段階で分類し評価した。また、完全奏効(CR)を再発で確認。写真とカルテで臨床評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・被験者136例の半数(51.5%)が、疣贅の大きさ・数について50%超の減少を認めた。・被験者の46.7%が異なる部位に疣贅が拡散していたが、良好な治療反応を示した。・一般的な疣贅は、その他のタイプの疣贅と比べて治療反応が有意に高率であった(p<0.05)。しかし、有効であることを示すその他の臨床変数は認められなかった。・ほとんどすべての患者は接種時に軽度の痛みを報告したが、その他の副作用はほとんど観察されなかった。・CRが確認された患者のうち、6ヵ月後に疣贅再発を呈したのはわずかに5.6%であった。・著者は、「痛みに敏感で副作用を心配する一般的な疣贅患者には、MMRワクチンを用いた病巣内免疫療法が、忍容性があり有効であることを提案する」とまとめている。・「治療反応は、接種回数を増やすことで改善する」としている。

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うつ寛解のポイントは疲労感

 大うつ病性障害(MMD)患者に対する、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)治療のアウトカムに、疲労感はどのような影響を及ぼすのだろうか。この疑問を明らかにすべく、M. Ferguson氏らはSTAR*Dの二次解析により検討を行った。その結果、ベースライン時の疲労感が軽度であること、および治療中の疲労回復は、うつ症状の寛解、および良好な機能やQOLと関連していることが示された。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2014年7月4日号掲載の報告。 研究グループは、STAR*Dのレベル1治療(14週以下のシタロプラム単独療法)のデータを解析した。疲労感は、16項目のうつ症状簡易自己評価票(QIDS-SR16)から活力(energy)レベルに関係していた項目14で、前向きに評価した(スコア0~3、0は疲労感なし、3は疲労感が最大)。評価は、レベル1治療の導入および終了時に行った(疲労感なし/ 治療により疲労感が出現/ 疲労感が軽減/ 疲労感が残る)。 主要評価項目は、抑うつ症状の寛解(17項目のハミルトンうつ病評価尺度で7以下、またはQIDS-SR16で5以下)、生活の質に関する楽しみと満足感の簡易質問票(Quality of Life Enjoyment and Satisfaction Questionnaire-Short Form)の評価、簡易健康調査の精神・身体的サブスケール(Short-Form Health Survey Mental and Physical subscales)、仕事と社会性の調整尺度(Work and Social Adjustment Scale;WSAS)であった。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時2,868例の患者が、解析に組み込まれた。QIDS-SR16の項目14のスコアが0であった患者は5.5%、1は22.9%、2は53.6%、3は18.0%であった。・レベル1の治療中、疲労感なしであった患者は3.5%、治療により疲労感が出現は2.1%、治療中に疲労感が軽減33.6%、疲労感が残った患者は60.8%であった。・「女性」「失業中」「教育を受けた期間が短い」「月収が低い」が、ベースライン時の疲労感と有意に関連していた(すべてp<0.0001)。・ベースライン時の疲労感レベルが高かった人または疲労感が継続した人は、寛解の尤度が低く、あらゆる満足感が低かった(p<0.0001)。治療アウトカムにおける精神的・身体的機能が低く(p≦0.005)、WSAS総スコアも高い(p<0.0001)ことから、機能障害がより重度であることが示唆された。・一方、ベースライン時の疲労感レベルが低く抗うつ薬治療中に疲労感が軽減したMMD患者は、うつ症状寛解率が高く、機能およびQOLも良好であった。・本検討は、STAR*Dのレベル1サンプル(抗うつ薬がシタロプラムのみであった)を採用していたこと、活力/疲労感の代替指標を用いていたこと(QIDS-SR16の項目14)、副次的な事後解析デザインであることから限定的であった。関連医療ニュース うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学 「笑い」でうつ病診断が可能に うつ病患者、SSRI治療開始1年以内に約半数がセカンド治療に  担当者へのご意見箱はこちら

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バレニクリンにNRT併用の禁煙効果/JAMA

 禁煙治療について、ニコチンパッチ+バレニクリン(商品名:チャンピックス)の併用療法(治療期間12週間)は、バレニクリン単独よりも12週時点(治療終了時)および6ヵ月時点で禁煙率が有意に高く有効であることが示された。南アフリカ共和国・ステレンボス大学のCoenraad F. N. Koegelenberg氏らが、無作為化盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。行動療法と薬物療法の組み合わせが禁煙支援に有益であることは示されている。しかし、ニコチン補充療法(NRT)とバレニクリンの組み合わせによる禁煙への寄与について、有効性および安全性は明らかではなかった。JAMA誌2014年7月9日号掲載の報告より。バレニクリン単独群と比較、主要エンドポイントは治療9~12週の連続禁煙率 試験は2011年4月~2012年10月に南アフリカ共和国の7施設で、治療期間12週間、フォローアップ12週間にて行われた。一般健常の喫煙者446例が1対1の割合で無作為化され、有効性と安全性の解析には435例が含まれた。 被験者には、目標禁煙日(TQD)の2週間前からニコチンパッチまたはプラセボの貼付を開始し、TQD後12週間継続した。バレニクリンは、TQDの1週間前より投与を開始し、TQD後12週間継続し、13週間目に漸減した。 禁煙の達成は、TQD時点とその後の24週時点までに一定間隔で測定した呼気CO濃度で評価し確認した。 主要エンドポイントは、第4週測定の呼気CO濃度(治療9~12週の禁煙率、すなわち治療介入最後の4週時点での完全な禁煙率を示す)。副次エンドポイントは、6ヵ月時点の禁煙率、9週から24週までの連続禁煙率、有害事象などであった。主要および副次エンドポイントとも、多重代入分析法(multiple imputation analysis)にて評価した。12週連続禁煙率は併用群55.4%対単独群40.9%、6ヵ月時点は65.1%対46.7% 結果、併用療法は、12週時点の連続禁煙率が有意に高率であった(55.4%対40.9%、オッズ比[OR]:1.85、95%信頼区間[CI]:1.19~2.89、p=0.007)。また、24週時点(49.0%対32.6%、OR:1.98、95%CI:1.25~3.14、p=0.004)、6ヵ月時点の完全禁煙率(65.1%対46.7%、同:2.13、1.32~3.43、p=0.002)も、有意に高率だった。 併用療法群では、悪心、睡眠障害、皮膚反応、便秘、うつ病の発生件数が多かった。ただし統計的に有意であったのは皮膚反応のみであった(14.4%対7.8%、p=0.03)。バレニクリン単独群の発生件数が多かったのは、夢見が悪い、頭痛であった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第10回

第10回:3年間ではMCI患者の25%が悪化する 介護保険制度を利用している自立度II以上の認知症高齢者は、日本では現在約280万人おり、認定を受けていない方も含めると400万人いるといわれています。今後は、2025年に介護保険制度を利用している自立度II以上の認知症高齢者は、470万人に増加すると予測されています1)。認知症の中核症状は脳の老化として捉えると、人口動態からはごく自然な数かもしれません。一方、認知症の前段階と考えられているMCI(Mild Cognitive Impairment)は認知症を除く高齢者の16%に存在するといわれ、発症率は63.6人/千人・年といわれています2)。認知症の早期発見早期治療も叫ばれて、多くの薬剤が発売されていますが、MCIに対する介入も大切かもしれません。この文献の結果から、MCIの75%が安定とみるのか、25%が悪化とみるのか。とても考えさせられた文献でした。 以下、本文 Annals of Family Medicine 2014年3-4月号2)より1.概要プライマリ・ケア医にかかっている75歳以上で、認知症がなく、少なくとも1年に1度はプライマリ・ケア医に通院している方3,215人(ただしナーシングホームや訪問診療を受けている人、3ヵ月以内に生命を脅かすような病気をした人は除いている)の中からMCIの基準を満たす483人を抽出した。そのうち3年間フォローできたMCIの患者357人を分析した。2.診断基準MCIの基準は、International Working Group on Mild Cognitive Impairmentが提唱している方法により診断した。(1)認知症がないこと、(2)客観的な認知力の課題に対して自分や他者からみてうまくできないことを繰り返している確かな証拠があるが、(3)日常生活や道具を使っての最低限の基本生活はできていること。Global Deterioration Scale of Reisberg の4点以上を認知症と診断。3点以下であり、かつ、記憶・見当識・知的活動と高い皮質活動の4領域の項目で、年齢・教育レベル水準から1偏差以上低下していることをMCIとした。MCIのグループは4つに分けた。記憶領域だけが低下している群、記憶領域は正常で他の1領域だけが低下している群、記憶領域は正常で他の2領域以上が低下している群、記憶領域の低下とその他の領域の低下が同時にみられる群である。3.結果経過観察をしつつ、1年半後と3年後に、再度認知機能を評価した。認知機能が改善した群、変わらない群、悪化した群、改善とMCIの行き来をした群の4つに分けた。41.5%の人が1年半と3年で認知機能は正常を示した。21.3%は良くなったり悪くなったり、14.8%は認知機能変わらず、22.4%は認知症へと進行した。抑うつがあったり、記憶領域より他の2領域以上が低下している人、記憶領域とその他の領域も低下している人、より高齢な人は、認知機能が悪化する群に移る傾向が高かった。新たな事柄を覚えて10分後に聞き直すという記憶テストは、MCIが良くなるか、進行するかのもっとも鋭敏なテストであった。4.考察プライマリ・ケアにおいて、3年間の間に、25%のMCIの患者が認知症へと進行した。MCIの臨床診断基準は変わるかもしれないが、75%のMCIの患者は3年の間で、改善したり、変化がなかったりすることを忘れてはならない。ゆえに、MCIの診断を受けたからといって、不必要に不安をあおるべきではない。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 厚生労働省.「認知症高齢者の日常生活自立度」II以上の高齢者数について(2014.8公表) 2) Kaduszkiewicz H, et al. Ann Fam Med. 2014; 12: 158-165.

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不眠の薬物療法を減らすには

 睡眠の質はプライマリ・ケアにおける教育的介入により改善し、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の投薬の必要性を減らせることが示された。スペイン・Centro de Salud El LlanoのAna Gancedo-Garcia氏らが単盲検非無作為化臨床試験の結果、報告した。Atencion Primaria誌オンライン版2014年6月27日号の掲載報告。 不眠症患者に対し、薬物療法+プライマリ・ケアでの教育介入を行った場合の効果を評価する検討は、スペイン・アストゥリアス州ヒホンにある2つの都市部のプライマリ・ヘルスセンターで行われた。2012年7月~2013年1月に不眠症で受診し、包含基準を満たした患者をシステマティックに対照群と介入群に分類した。全患者は、ロラゼパム1mg(夕方服用)で治療を開始し、翌月以降に週4回15分の外来受診+1回のフォローアップ受診を受けた。介入群には4回の受診の際、刺激のコントロール、睡眠衛生、呼吸法、リラックス法に関する教育的介入が行われた。対照群には非侵襲的な測定のみが行われた。ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で6未満を達成またはベースライン値から50%低下した患者を、治癒したとみなして評価。また、ベースライン時から最終受診時およびフォローアップ受診時までのPSQIの変化と、ロラゼパムの自発的な服薬中断についても分析した。すべての分析はベイズ推定にて行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は50例であった(介入群26例、対照群24例)。・治癒が認められたのは、介入群26例中12例(46.2%)、対照群は24例中1例(4.2%)であった。・PSQIの平均変化は、ベースライン時から最終受診時までは、介入群-4.7(95%CI:-5.9~-3.5)、対照群-1.8(同:-3~-0.5)であった。ベースライン時からフォローアップ受診時まではそれぞれ-6.3(同:-7.5~-5.1)、-1.7(同:-2.9~-0.4)であった。・ロラゼパムを中断したのは、介入群9例(34.6%)、対照群4例(16.7%)であった。・本試験を完了したのは介入群19例、対照群17例であった。per protocol解析は類似した結果が示された。関連医療ニュース 認知症の不眠にはメラトニンが有用 不眠症の人おすすめのリラクゼーション法とは 統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か  担当者へのご意見箱はこちら

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