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ホルモン受容体陽性早期乳がんをもつ閉経前女性におけるタモキシフェン+卵巣機能抑制対タモキシフェンの無作為化比較:SOFT試験の分析本試験の副次的評価項目であるT+OFS(卵巣機能抑制)対EXE+OFSの中間解析結果についてはASCO2014の際に報告した(ASCO2014レポート:ホルモン受容体陽性早期乳がんをもつ閉経前女性におけるエキセメスタン+卵巣機能抑制対タモキシフェン+卵巣機能抑制の無作為化比較:IBCSG TEXTとSOFT試験の結合解析。今回はTAM+OFS対TAMの比較(図1)であり、われわれが長年知りたかった部分である。TにLHRHaを加えることの有用性は術後補助療法としてはいまだ証明されておらず、16試験、1万1,906例の患者を解析したメタアナリシス(Lancet. 2007; 369: 1711-1723.)をみても、40歳以下の若年性乳がんで他の化学療法を行った場合にのみ、上乗せ効果が認められていた。しかし、レトロスペクティブな解析(Eur J Cancer. 1998; 34: 632-640,Eur J Cancer. 2000; 36: 43-48.)で示されたごとく、化学療法で無月経となったほうがそうでない場合より予後がよいというデータから、TAMにLHRHaを上乗せする医師も本邦では多かったと思われる。【図1】図1を拡大する本解析の内容は発表とほぼ同時に論文化されている(Francis PA, et al. N Engl J Med. 2014 Dec 11)が、学会発表内容とほぼ同じである。主要評価項目はDFS、対側浸潤性乳がん、他のがん、がん以外での死亡である。化学療法の有無と、リンパ節転移の有無で層別化し、intention-to-treat解析を行っている。オリジナルプランは783イベント後の解析でHR=0.75(α≡0.0167)を検出するための3群比較であったが、登録されたのはより高齢、低リスクであり、予想されたよりDFSが良かった。そのため、2011年にプロトコールが改訂され、プライマリー解析はT+OFS vs Tであり、少なくとも中央値5年のフォローアップの後に行った。HR=0.665で80%の検出力(両側α=0.05)で186のDFSイベントが予測された。化学療法はより若く、リンパ節転移あり、腫瘍径2cm以上、グレード2以上で多かった。中央値5.6年のフォローアップでDFSイベントは299、死亡は106(5%)であった。DFSは有意差がなかったが(p=0.10)、Coxの多変量解析ではHR=0.78(95%CI:0.62~0.98)、p=0.03と、死亡に関して有意差がみられた。サブ解析では化学療法のあるなしでみても、DFSはまったく有意差がなかったが、化学療法のある群で生存率曲線にわずかな開きが見られた(図2)。さらに35歳未満(350例)では、5年DFSがT群67.7%(95%CI:57.3~76.0)、T+OFS群78.9%(95%CI:69.8~85.5)であった(図3)。この年齢では94%が化学療法を受けていた。【図2】図2を拡大する【図3】図3を拡大する全体で19%がTAMを早期に中止しており、81%の患者がGnRHアゴニストであるtriptorelinで卵巣機能抑制が認められた。OFSのアドヒアランスは1年で91%、2年で85%、4年で78%であった。有害事象は、全グレードでみた場合、ホットフラッシュ、汗、性欲障害、膣乾燥、うつ、不眠、筋骨格系症状、骨粗鬆症、高血圧、耐糖能異常、高血糖のいずれもT+OFS群で高く、グレード3,4の割合は、全体としてT+OFS群で31%、T群で24%と重篤なものもT+OFS群で高かった。今後さらに経過をみていくと、予後の差はもう少し広がる可能性はあるが、現時点では全体としてOSおよびDFSのベネフィットも明らかではない。ただし、サブ解析の結果は、若年性で化学療法を行っても卵巣機能が抑制されなかったグループにはOFSを加えることの意義がありそうであり、これは上述したメタアナリシスの結果と一致する。現状での個人的なOFSの使い方は、40歳未満の高リスク群に対してOFSを上乗せする、あるいは40代前半でも化学療法の適応がありながら希望しなかった方たちにOFSの上乗せを提案するというスタンスをとっており、今回の結果からは今の実施臨床に変更はない。ただし、OFS+EXEについては今年のASCOの報告で述べたとおりであり、保険適用となれば、高リスク群に対して標準治療の1つとなっていくであろう。少なくとも治療効果もはっきりしないまま、レトロスペクティブデータや治療理論だけに基づいてOFSを行うことは避けなければならない。早期閉経は長期的には心血管疾患、認知障害、認知症精神疾患、骨粗鬆症に伴う骨折などのリスクを上昇させ、全生存率にも関わりうることを念頭に置いておく必要がある(Menopause Int. 2008; 14: 111-116.)。TAM対TAM+OFSに関してもう1つRCTの結果が今年論文化された(J Clin Oncol 32:3948-58, 2014)。E-3193試験(INT-0142)であり、リンパ節転移陰性、ホルモン受容体陽性、腫瘍径3cm以下の乳がんに対して比較したものであり、中央値9.9年のDFSとOSが示されている。症例数が計337例とかなり少ないことは確かであるが、生存率曲線をみてもほぼ重なっており、まったく差がないことは知っておいてほしい。