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第16回 内科からのレボフロキサシンの処方(前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?肺炎球菌・・・11名全員診療報酬明細書を確認 清水直明さん(病院)その場で肺炎球菌と言い切るということは、グラム染色で確認できたのでしょう。肺炎球菌尿中抗原・呼吸器検体中抗原迅速検査を行っている可能性もありますが、感度・特異度が決して高くなく、既感染の場合でも陽性になる場合があります。行った検査についての記載が診療報酬明細書にあると思うので、可能であれば確認します。HIV感染の可能性も 荒川隆之さん(病院)気管支炎なら連鎖球菌、肺炎ならインフルエンザ菌など他の原因菌も考えられますが、肺炎球菌と医師が断定しているということなので、尿中抗原もしくはグラム染色にて確定診断しているものと考えます。肺炎球菌感染ありきで考えますと、この感染の原因としてさらにHIV感染(初期の感冒様症状)が隠れている可能性もあるかもしれません。肺炎球菌以外の可能性も JITHURYOUさん(病院)恐らく迅速診断キットを使用し、医師から肺炎球菌と言われたと考えられます。肺炎球菌以外で考えると、グラム陽性菌では黄色ブドウ球菌など、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌なども可能性があります。また喘息でステロイド使用例では、肺炎桿菌やエンテロバクターなどのグラム陰性桿菌も検出されることがあるようです。ライノウイルスなどのウイルスやマイコプラズマ、クラミジア・ニューモニエなどの非定型菌も無視できないと思います。これらのウイルスなどの2次感染の可能性はないでしょうか。季節によってはインフルエンザウイルスなども考慮すべきではないかと考えます。そもそも細菌性肺炎? 児玉暁人さん(病院)成人の市中肺炎の可能性を考えれば、予想される原因菌は肺炎球菌、インフルエンザ菌、クレブシエラ、モラクセラ、マイコプラズマなどが考えられます。どのような説明で肺炎球菌と言われたのか不明なのと、レボフロキサシンの処方から肺炎球菌による肺炎なのか、そもそも細菌性肺炎なのかは不明です。点滴内容も不明ですが、喘息があり、点滴で改善していることから、ステロイドの点滴だった可能性もあります(または抗菌薬との併用)。喘息悪化を契機に肺炎を併発した可能性もあるかと思います。Q2 患者さんに確認することは?医師からどのような説明をされているか 荒川隆之さん(病院)なぜレボフロキサシンを3 日後から始めるのかわからないので、まず患者さんに医師からどのように聞いているのか確認します。患者さんの説明で要領を得ない場合は、疑義照会することになると思います。発熱や次回受診日について ふな3さん(薬局)点滴治療開始前の発熱の有無血液検査の結果(あれば)合併症「肺炎球菌」と言われたのは、今回か?「以前」か?次回通院予定日併用歴、副作用歴、既往歴など 中堅薬剤師さん(薬局)併用薬、副作用歴、既往歴と腎機能も確認したいところです。あとはA-DROPに従って考えると、年齢は若く、脱水も意識低下もなさそうですし、入院が必要になるぐらい重篤な感染症の可能性は低い気がします。発熱の情報もないですし。この受診の前にOTCのかぜ薬を服用しているのであれば、アスピリン喘息も疑う必要がありますね。過去に鎮痛薬や感冒薬で咳嗽が悪化したことはないかも確認してみたいです。A-DROPシステムA(age):男性70 歳以上、女性75 歳以上D(dehydration):BUN 21mg/dL以上または脱水ありR(respiration):SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)O(orientation):意識障害ありP(pressure):血圧(収縮期)90mmHg以下軽 症:上記5 つの項目のいずれも満足しないもの。中等度:上記項目の1つまたは2つを有するもの。重 症:上記項目の3つを有するもの。超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの。ただし、ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。どのような検査をしたか 奥村雪男さん(薬局)肺炎球菌と仮定した場合、definitive therapyで第一選択はペニシリンであり、仮にエンピリックに広域抗菌薬で開始したとしても、狭域抗菌薬にde-escalationしていない点が気になります。レスピラトリーキノロンのレボフロキサシンが選択されているのは疑問ですが、患者は βラクタムアレルギーがあるのかもしれません。また、喀痰の培養はしたのか。感受性まで分かるので、ペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP)か、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)かが分かれば、確認したいです。MIC>4.0μg/mLの高度耐性でレボフロキサシンを選択肢に挙げている書籍もあります1)。次に、点滴は何を使用したのか知りたいです。点滴から内服に切り替える場合、通常はクラスを変えないので1)、レボフロキサシン点滴静注の可能性が高いかと思います。いつから薬を飲むように言われているか?喘息治療は? わらび餅さん(病院)患者に、「○月○日から飲むように言われているか?」を確認します。1回/日投与のセフトリアキソン、もしくはレボフロキサシンを点滴したと予想しますが、切り替えに3日空けることが不思議です。また3日開けてしまうと、治療期間の考え方でも違和感があります。点滴2日+内服5日=計7日で効果判定、がしっくりきます。喘息治療はどうしているか?コントローラーは使用しているのか、リリーバーだけかを確認します。肺炎だったとしても、コントローラーは必要なので、アドヒアランスや肺炎治療中に発作が出たときにどう指示が出ているかを確認します。吸入薬の残量や使用期限を確認します。点滴の中身 中西剛明さん(薬局)点滴の中身が知りたいので、診療報酬明細書を確認させてもらいます。そして、次回の通院を確認し、点滴をいつまでするのか聞きます。その回答次第で、レボフロキサシンの開始日が特定できると思います。担当した薬剤師が聞き取った内容身長は175cm、体重53kg。1人暮らしの会社員。食欲がなく、朝から何も食べていなかった体温:37.8℃今回の受診のきっかけとなった咳の状況:夜、寝苦しい、横になると苦しくなって咳き込む、痰がよく出る診療報酬明細書の内容:点滴はセフトリアキソン1g+生理食塩液100mL(キット製剤)血液検査の結果はもらっておらず、詳細は不明今後の受診予定:明日、明後日の2日間は通院して点滴を受けるよう指示があった服用中の内服薬、吸入薬:なし日ごろの食事:朝は牛乳と食パン1枚、昼は会社の食堂で定食を、夜は外食して帰宅飲酒、喫煙習慣:なし副作用歴、アレルギー歴:医薬品ではなし。ハウスダストのアレルギーあり以上を踏まえて・・・後編では、本症例の疑義照会をする/しない、抗菌薬について、患者さんに説明することは?その他気付いたことを聞きます。1)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.

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小児のアトピー性皮膚炎、慢性化の関連因子が判明

 小児のアトピー性皮膚炎(AD)の慢性化に関する因子はよくわかっていない。デンマーク・コペンハーゲン大学のSunna Thorsteinsdottir氏らは、ADに関与する既知の遺伝子変異、父親の喘息およびADの既往、社会的地位の高さ、診断時のHanifin & Rajka診断基準の基本項目と小項目、ならびに発症時の重症度が、13歳まで持続したADに関連していることを明らかにした。著者は、「これらの所見は、個々の患者で疾患の経過を評価するための臨床診療に適用可能である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年11月14日号掲載の報告。 研究グループは、ADの慢性化と関連する遺伝的素因、環境および臨床因子について明らかにする目的で、Copenhagen Prospective Study on Asthma in Childhood 2000(COPSAC2000)による出生前コホート研究において、1998年8月~2015年6月の期間に、喘息を有する母親から生まれた子411例を13歳になるまで追跡調査した。7歳までは年2回、その後13歳時に受診したデータを2015年8月~2018年1月に分析した。 ADは、Hanifin & Rajka診断基準に従って前向きに診断し、親への問診により、親の既往歴、社会的地位、および環境因子に関するデータを収集した。ADの重症度は、Scoring Atopic Dermatitis(SCORAD)指標(スコアの範囲:0~83、高値ほど重症)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・411例中、男児が203例(49.4%)、13歳以前にADと診断されたのは186例(45.3%)であった。・13歳時点で、166例中40例(24.1%)はADが持続しており、このうち126例(76.0%)は寛解を経験していた。・13歳まで持続するADに関連する因子として、遺伝、環境曝露、喘息およびアレルギー感作、診断時の臨床所見、Hanifin & Rajka診断基準の小項目、およびSCORADに基づくAD重症度があった。・ADの慢性化リスク増加との関連は、AD遺伝リスクスコアの高さ(多変量オッズ比[OR]:1.8、95%信頼区間[CI]:1.1~2.9、p=0.02)、父親の喘息(OR:3.7、95%CI:1.2~11.5、p=0.02)、父親のAD(OR:6.2、95%CI:1.17~23.2、p=0.007)、社会的地位の高さ(OR:1.6、95%CI:1.0~2.5、p=0.05)に認められた。・診断時の特定の臨床所見は、Hanifin & Rajka診断基準の特定の小項目(Dennie-Morgan徴候および前頸部皺襞、白色皮膚描記症、羊毛に対する不耐性、発汗時そう痒、皮膚感染症を発症する傾向、食物不耐症、食物アレルギー)(OR:2.6、95%CI:1.1~6.2、p=0.03)、ならびに診断時の重症度の悪化(OR:1.1、95%CI:1.0~1.1、p=0.007)とも関連していた。

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ウィーニング困難患者、非侵襲的換気への切り換えは有用か/JAMA

 自発呼吸トライアルに失敗し人工換気を必要とする患者において、早期に抜管して行う非侵襲的換気は、人工換気から離脱するまでの期間を短縮しないことが示された。英国・ウォーリック大学のGavin D. Perkins氏らによる無作為化試験「Breathe試験」の結果で、JAMA誌2018年11月13日号で発表された。先行研究で、侵襲的人工換気からのウィーニングが難しい成人患者において、非侵襲的換気が早期離脱を容易とする可能性が示唆されていたが、その効果について、ICU入室患者集団では確認されていなかった。標準法と比較し、離脱成功までのトータル日数を評価 Breathe試験は、ウィーニング困難な患者において、早期に抜管し非侵襲的換気を行うウィーニング法(非侵襲群)と、標準的ウィーニング法(侵襲群)について、換気から離脱するまでの時間に対する効果を比較した検討で、英国国民保健サービス(NHS)傘下のICU 41ヵ所で、2013年3月~2016年10月にかけて行われた(フォローアップは2017年4月まで)。 侵襲的人工換気を48時間超受けた、自発呼吸トライアルに失敗した成人患者を登録し、無作為に非侵襲群と侵襲群(自発呼吸トライアルに成功するまで侵襲的換気を継続、その後に抜管する)に割り付け追跡した。 主要評価項目は、生存被験者における、無作為化からあらゆる型式の人工換気からの離脱に成功するまでの時間で、日数で評価した。臨床的に重要な意味を持つ最小日数差は1日とした。 副次評価項目は、侵襲的換気期間およびトータルの換気期間(いずれも日数)、再挿管率または気管切開率、生存期間であった。トータルの換気期間は変わらず、再挿管、気管切開、生存も有意差なし 364例(平均年齢63.1歳[SD 14.8]、男性50.5%)が無作為化を受けた(非侵襲群182例、侵襲群182例)。そのうち319例が主要評価項目について評価できた(41例が離脱前に死亡、2例が中断、2例は人工換気継続のまま退院)。 離脱までの期間中央値は、非侵襲群4.3日、侵襲群4.5日であった(補正後ハザード比[HR]:1.1、95%信頼区間[CI]:0.89~1.40)。死亡に関する競合リスク解析では、同等という結果だった(補正後HR:1.1、95%CI:0.86~1.34)。 非侵襲群は、侵襲的換気を受ける期間が短縮したが(中央値1 vs.4日、発生率比:0.6、95%CI:0.47~0.87)、トータルの換気期間はわずかに短いだけであった(中央値3 vs.4日、発生率比:0.8、95%CI:0.62~1.0)。再挿管率、気管切開率、生存期間にも有意な差はみられなかった。 有害事象の発生は、非侵襲群45例(24.7%)、侵襲群47例(25.8%)であった。

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ARTでリスク増、HIV患者の奇異性結核関連IRISの予防には?/NEJM

 抗レトロウイルス療法(ART)は、結核菌感染を併発したCD4低値のHIV感染患者の死亡率を抑制するが、奇異性結核関連免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)のリスクを増加させる。南アフリカ共和国・ケープタウン大学のGraeme Meintjes氏らは、奇異性結核関連IRISの予防にprednisoneの4週間投与が有効であり、重症感染症やがんのリスクの上昇は認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2018年11月15日号に掲載された。奇異性結核関連IRISは、抗結核薬の投与を受けたHIV患者に対し、早期ARTを開始後に発現する結核の再発または新たな炎症所見で特徴付けられる免疫病理学的応答である。観察研究の統合解析では、HIV患者の18%にみられるとされる。ケープタウン市の1地区で行われたプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、低用量グルココルチコイドにより、早期ART中の結核関連IRIS発症の基盤となる異常な炎症反応を抑制することで、本症のリスクが低減されるとの仮説を立て、これを検証するために二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(欧州・開発途上国臨床試験プログラム[EDCTP]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、HIVに感染し、ART治療歴がなく、ARTを開始予定で、ART前の30日以内に結核治療を開始しており、CD4数が100/μL以下の患者であった。 被験者は、prednisone(40mg/日を14日間、その後は20mg/日を14日間)またはプラセボを投与する群にランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、ART開始から12週以内の結核関連IRISの発症とし、独立審査委員会による判定が行われた。 2013年8月~2016年2月の期間に、ケープタウン市カエリチャ地区のクリニックに240例が登録され、両群に120例ずつが割り付けられた。12週のフォローアップ期間中に、17例が追跡不能となり(このうち8例は12週以降に再受診)、1例が同意を撤回した。相対リスクが30%低下、安全性は同等 全体の年齢中央値は36歳(四分位範囲[IQR]:30~42)、60%が男性で、73%が微生物学的に結核への感染が確定されていた。CD4数中央値は49/μL(IQR:24~86)、HIV-1RNAウイルス量中央値は5.5 log10コピー/mL(IQR:5.2~5.9)であった。 12週時の結核関連IRISの発生率は、prednisone群が32.5%(39/120例)と、プラセボ群の46.7%(56/120例)に比べ有意に低かった(相対リスク[RR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.51~0.96、p=0.03)。84日時の結核関連IRISの累積発生率のハザード比は0.61(95%CI:0.41~0.92)であり、prednisone群が有意に良好だった(p=0.02)。 結核関連IRISの治療を目的に、非盲検下にグルココルチコイドが処方された患者は、prednisone群が16例(13.3%)であり、プラセボ群の34例(28.3%)に比し少なかった(RR:0.47、95%CI:0.27~0.81)。 prednisone群の5例、プラセボ群の4例が死亡した(p=1.00)。有害事象は、Grade3がprednisone群で少なかったが、Grade4には差がなかった。重症感染症(新たな後天性免疫不全症候群[AIDS]の指標疾患または侵襲性細菌感染症)は、prednisone群の11例(9.2%)、プラセボ群の18例(15.1%)で発症した(p=0.23)。 1年後には18例(prednisone群:8例、プラセボ群:10例)が死亡し、プラセボ群の1例でカポジ肉腫が認められた。 著者は、「今後の検討として、免疫バイオマーカーに基づき結核関連IRISのリスクが高いと判定された患者において、高用量または至適用量のprednisoneによる予防治療の評価が考えられる」としている。

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アテゾリズマブ+CBDCA+nab-PTX、進行肺がん1次治療でPD-L1発現によらずPFS延長(IMpower130)/ESMO2018

 StageIV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるカルボプラチンとnab-パクリタキセルの併用療法へのPD-L1阻害薬アテゾリズマブの上乗せ効果を検討した第III相IMpower130試験の結果、アテゾリズマブ併用群でPD-L1発現状態にかかわらず、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが発表された。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、AUSL della Romagna-RavennaのFederico Cappuzzo氏が発表した。 IMpower130試験は、化学療法未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者を対象とし、カルボプラチンとnab-パクリタキセル併用+アテゾリズマブ→アテゾリズマブ維持療法群(atezo+CnP群)とカルボプラチンとnab-パクリタキセル併用→BSCあるいはペメトレキセドによる維持療法群(CnP群)を比較したオープンラベル多施設共同無作為化第III相試験。患者は、atezo+CnP群とCnP群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、EGFRまたはALK陽性患者を除くITT解析集団(ITT-WT)における治験担当医評価による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)。副次評価項目は、全集団におけるPD-L1発現状態に応じたPFSおよびOS、客観的奏効率(ORR)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・全体で723例(ITT-WT:679例)が登録された。・ITT-WTにおけるatezo+CnP群は451例/CnP群は228例。<65歳:50.3%/50.0%、男性:59.0%/58.8%、登録時点での肝転移有症例:15.3%/13.6%、ECOG PS 0:42.0%/39.9%、PD-L1高発現(TC3またはIC3):19.5%/18.4%、PD-L1低発現(TC1/2またはIC1/2):28.4%/28.5%、PD-L1陰性:52.1%/53.1%。・データカットオフ(2018年3月15日)時点の追跡期間中央値は19.0ヵ月であった。・ITT-WTにおけるPFS中央値は、atezo+CnP群7.0ヵ月に対しCnP群5.5ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.54~0.77、p<0.0001)。・ITT-WTにおけるOS中央値は、atezo+CnP群18.6ヵ月に対しCnP群13.9ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、p=0.033)。・全集団におけるPFS中央値は、atezo+CnP群7.0ヵ月に対しCnP群5.6ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.65、95%CI:0.54~0.77、p<0.0001)。・全集団におけるOS中央値は、atezo+CnP群18.1ヵ月に対しCnP群13.9ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.80、95%CI:0.65~0.99、p=0.039)。・PD-L1発現状態ごとのサブグループ解析では、PD-L1高発現(88例/42例):PFS中央値は6.4ヵ月 vs. 4.6ヵ月(HR:0.51、95%CI:0.34~0.77)、OS中央値は17.3ヵ月 vs. 16.9ヵ月(HR:0.84、95%CI:0.51~1.39)。PD-L1低発現(128例/65例):PFS中央値は8.3ヵ月 vs. 6.0ヵ月(HR:0.61、95%CI:0.43~0.85)、OS中央値は23.7ヵ月 vs. 15.9ヵ月(HR:0.70、95%CI:0.45~1.08)。PD-L1陰性(235例/121例):PFS中央値は6.2ヵ月 vs. 4.7ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.56~0.91)、OS中央値は15.2ヵ月 vs. 12.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.61~1.08)。と、PD-L1発現状態に関わらず、PFS、OSにおけるベネフィットが確認された。・EGFR / ALK陽性患者におけるサブグループ解析では、PFS中央値は7.0ヵ月 vs. 6.0ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.36~1.54)、OS中央値は14.4ヵ月 vs. 10.0ヵ月(HR:0.98、95%CI:0.41~2.31)であった。・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)は、atezo+CnP群で73.2%、CnP群で60.3%の患者に発現した。 ディスカッサントを務めたフランス・Institute of Gustave Roussy のBenjamin Besse氏は、IMpower-150試験の結果とともに本結果を解説し、EGFR / ALK陽性患者を対象とした場合にベバシズマブが役割を果たす可能性があると指摘した。■参考IMpower130試験(Clinical Trials.gov)■関連記事アジア人でより有効、進行肺がんへのプラチナ+ペメトレキセド+アテゾリズマブ(IMpower132)/ESMO2018アテゾリズマブ併用療法、進行肺がん1次治療でPD-L1発現、遺伝子ステータスに関わらずPFSの改善示す(IMpower-150)/AACR2018進行膵がんのnab-PTX+GEM療法、新たな標準治療のエビデンス/NEJMnab-パクリタキセル+アテゾリズマブ、トリプルネガティブ乳がんでPFS延長(IMpassion130)/ESMO 2018※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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マルファン症候群〔MFS:Marfan syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義マルファン症候群(Marfan syndrome:MFS)は、結合組織の主要成分の1つであるfibrillinの質的あるいは量的異常による先天性の結合組織疾患である。心血管、眼、骨、関節、皮膚,肺を含む全身の結合組織において広範かつ多彩な表現型を呈するが、とくに大動脈瘤(基部拡張)・解離と水晶体偏位(亜脱臼)が重要な所見で、前者は90%以上、後者は50%以上の患者で認める。病名は、1896年にフランスの小児科医であったAntoine Marfan博士が、長く細い指(arachnodactyly:クモ指)が特徴的な少女の症例を報告したことに由来する。当初は、高身長・側弯・胸郭異常などの骨格症状のみが注目されたが、その後、重篤な大動脈解離を高頻度に合併することがわかり、循環器疾患として再認識されるようになった。常染色体優性遺伝による遺伝性疾患であるが、約25%では家族歴を認めず、突然変異によるとされる。■ 疫学発症頻度は、人種に関わりなく5,000~1万人出生に1人とされ、性差はない。■ 病因15番染色体長腕に位置するFBN1遺伝子の機能喪失型の変異により発症する。FBN1遺伝子がコードするfibrillinは弾性線維の骨格成分であるmicrofibrilの主成分であるため、弾性線維に富む筋・皮膚・肺などの臓器が障害される。また、fibrillinは眼球を保持するチン小帯の主成分でもあるため、チン小帯の断裂や弛緩により水晶体偏位を生じる。そのほか、fibrillinは、細胞増殖抑制や分化に関わるTGF-βの組織における活性制御に関与していることから、多彩な症状の背景にはTGF-βの機能亢進も関係していると推測されている。■ 症状臨床症状は、心血管系、眼系、骨格系、その他に大別される。1)心血管系:大動脈瘤・解離、僧帽弁逸脱、大動脈弁閉鎖不全、僧帽弁閉鎖不全MFSでは、大動脈中膜の平滑筋が障害されるため、大動脈全般で拡張や解離を来しやすく、実際、大動脈病変は、60歳までにはほぼ全例で認めるとされる最も重要な所見である。なかでも特徴的な所見は、大動脈基部(バルサルバ洞)の拡大(図1)である。画像を拡大する比較的早期から大動脈基部のバルサルバ洞部の洋梨状拡大を認めることが多いが、初期には自覚症状は乏しく、その後、上行大動脈や胸部下行大動脈にも拡大が及び、大動脈弁閉鎖不全や大動脈解離を合併して初めて自覚症状が現れる、という経過をたどることが多い。一般的に、軽度の基部拡張は小児期より認められるが、小児循環器科専門医でないと見過ごされやすい。大動脈基部径と大動脈解離のリスクには、ある程度の相関が見られ、拡大傾向が強くなる青年期以降に解離のリスクが高くなる。解離部位は、上行大動脈を含むことが多いが、胸部下行大動脈が初発部位となることもある。僧帽弁逸脱所見は約75%の患者で認め、粘液変性(myxomatous degeneration)所見も約25%で認める。僧帽弁逸脱は、MFSの特徴的症状のそろわない小児期でも認められることが多い。聴診の際の収縮中期クリック音で気付かれるが、確認には心臓超音波検査が最も有効である。重度の僧帽弁閉鎖不全は、新生児MFSを除くと病初期にはまれであるが、幼~小児期以降は、僧帽弁閉鎖不全による症状が前面に出てくる場合がある。その他、肺動脈基部の拡張や三尖弁逸脱もしばしば認めるが、治療の対象となることは少ない。2)眼系:水晶体偏位(亜脱臼・脱臼・振盪)、近視、乱視、網膜剥離、白内障、緑内障水晶体を支えるチン小帯の脆弱性により、水晶体偏位(亜脱臼・脱臼・振盪)や、水晶体性近視・乱視を発症する。また、眼軸が伸びることによる軸性近視もしばしば認める。水晶体偏位は、MFS患者の50~60%で認め、他の類縁疾患ではみられない特徴的所見であるため、診断的価値はきわめて高い。水晶体偏位は、外傷性の場合と異なり、両側性で上方にずれることが多いとされる。幼児期に高度の偏位を認める場合には、将来の弱視につながる可能性があるため、早期の治療を要する。一方、偏位が軽度の場合は、視力も正常に保たれるため、診断には散瞳下細隙灯検査が必要である。網膜剥離、白内障、緑内障も、一般に比べるとやや頻度が高い。3)骨格系:高身長、細く長い指、側弯、胸郭変形、扁平足ほか長管骨が長軸方向に伸びる結果、高身長で手足が長いdolichostenomeliaを認める。指が長く関節が柔らかいことによる親指徴候(サムサイン)・手首徴候(リストサイン)はarachnodactyly(クモ指)と称され、MFSの代表的身体所見で、幼少児期よりみられることが多い(図2)。漏斗胸、鳩胸、脊椎側弯、脊椎後弯などの胸郭病変も小児期より認める場合が多いが、成長期に増悪しやすい。その他、外反扁平足、高口蓋、叢生歯(歯列不正)も高率に認める。顔貌の特徴としては、長頭、頬骨低形成、眼球陥凹、下顎後退、眼瞼裂斜下などが傾向として挙げられる。画像を拡大する4)その他自然気胸は全体の約15%で認める。皮膚弾性組織の断裂による線状性皮膚萎縮(皮膚線条)も、成人には高頻度で認めるが、小児期には少なく、成長期以降に増加する。鼠径ヘルニアや瘢痕ヘルニアも一般に比べて高い頻度で認める。腰仙部の脊髄硬膜拡張もCTやMRIによる画像検査でしばしば認める所見であるが、自覚症状はない場合がほとんどである。■ 予後生命予後は、大動脈解離をはじめとする心血管系合併症に左右される。1986年に報告された大動脈基部置換術(Bentall手術)により生命予後は劇的に改善したが、その後、予防的自己弁温存大動脈基部置換術(David手術、Yacoub手術)など、解離前に脆弱な大動脈基部を人工血管に置換する術式の開発により、さらに生命予後は改善している。また、小児期よりβ遮断薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬の内服が、大動脈拡張自体をある程度抑制できることも大規模臨床試験で示された。近年では、早期診断と早期からの医療管理により、健康な人と遜色ない生命予後が期待できるところまできている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)国際的診断基準である「ゲント診断基準(2010改訂)」に従う。診断は、(1)大動脈基部病変、(2)水晶体偏位、(3)遺伝学的検査、(4)全身徴候スコア、に基づいてなされる(表1)。診断に必要な項目は、家族歴の有無により異なる。この基準により、MFSの95%以上は診断可能とされる。表1 マルファン症候群(MFS)診断のための改訂ゲント基準(2010)【家族歴がない場合】(1)大動脈基部病変(Z≧2)1)+水晶体偏位 → MFS(2)大動脈基部病変+FBN1遺伝子異常2) → MFS(3)大動脈基部病変+全身徴候(7点以上) → MFS*(4)水晶体偏位+(大動脈病変との関係が既知の)FBN1遺伝子異常 → MFS【家族歴がある場合】(5)水晶体偏位+家族歴3) → MFS(6)全身徴候(7点以上)+家族歴 → MFS*(7)大動脈基部病変(Z≧2(20歳以上)、Z≧3(20歳未満))+家族歴 → MFS*・水晶体偏位があっても、大動脈病変と関連するFBN1遺伝子変異を認めない場合は、全身徴候の有無にかかわらず「水晶体偏位症候群(ELS)」とする。・大動脈基部病変が軽度で(バルサルバ洞径;Z<2)、全身徴候(≧5点で骨格所見を含む)を認めるが、水晶体偏位を認めない場合は「MASS」4)とする。・僧帽弁逸脱を認めるが、大動脈基部病変が軽度で(バルサルバ洞径;Z<2)、全身徴候を認めず(<5点)、水晶体偏位も認めない場合は「僧帽弁逸脱症候群(MVPS)」とする。・MFS*:この場合の診断は、類縁疾患であるShprintzen-Goldberg症候群、Loeys-Dietz症候群、血管型エ-ラスダンロス症候群との鑑別を必要とし、所見よりこれらの疾患が示唆される場合の判定は、TGFBR1/2遺伝子、COL3A1遺伝子、コラーゲン生化学分析などの諸検査を経てから行うこと。なお、鑑別を要する疾患や遺伝子は、将来変更される可能性がある。注1)大動脈基部径(バルサルバ洞径)の拡大(体表面積から算出された標準値との差をZ値で判定)、または大動脈基部解離注2)FBN1遺伝子異常の意義付けに関しては別に詳しく規定されている(詳細は省略)注3)上記の(1)~(4)により、個別に診断された発端者を家族に有する注4)MASS:近視、僧帽弁逸脱、境界域の大動脈基部拡張(バルサルバ洞径;Z<2)、皮膚線条、骨格系症状の表現型を有するもの(訳者注 MASSとは、“Mitral valve、Aorta、Skin、Skeletal features”をあらわす)■ 診断のための検査大動脈基部病変の評価は、心臓超音波検査、胸部CT(造影・非造影)検査、胸部MRI/MRA検査による。このうち心臓超音波検査は、大動脈基部の評価や心臓弁や心機能の評価に最も適しており、定期的フォローには欠かすことができない検査である。大動脈基部病変の定義は拡張および解離であるが、このうち拡張の評価は、バルサルバ洞径の実測値と体表面積から算出した標準値を比較して行われ、成人では、実測値が標準値の+2SD以上、小児では+3SD以上を有意な拡張とする。一方、弓部以降の大動脈や分枝動脈の評価には、CTやMRI検査が適しており、年齢や目的に応じて適宜使い分ける。水晶体偏位を含む眼病変は、通常の眼科的検査で評価する。水晶体偏位の有無は、散瞳薬により瞳孔を開いた状態で細隙灯(スリットランプ)下で確認する。遺伝学的検査では、FBN1遺伝子の病原性変異(バリアント)を検出する。FBN1遺伝子は巨大な遺伝子であり、病気の発症と関係しないバリアントや、MFS以外の疾患の原因となるバリアントも存在するため、病原性の判定には注意を要する。わが国ではMFSの診断のための遺伝学的検査は、2016年4月より保険診療として認められており、国内では、かずさDNA研究所などが検査を受注している。全身徴候スコアは、通常の理学的検査による身体所見やX線やCTなどの一般的画像所見を用いて評価するもので、項目別に点数化し、全20点中7点以上のスコアを陽性と判断する(表2)。ここには、旧ゲント基準に含まれていた、上記以外のほとんどが含まれる。項目の詳細は、画像付きで米国マルファン協会のHPの中で紹介されている。表2 改訂ゲント基準における全身徴候スコア画像を拡大する■ 鑑別診断大動脈瘤・解離を合併しやすい疾患および類似の骨格所見・眼所見を呈する疾患が鑑別の対象となる。いずれも、改訂ゲント基準により鑑別可能である。・ロイス・ディーツ症候群(Loeys-Dietz syndrome)・血管型エーラス・ダンロス症候群(Vascular Ehlers-Danlos syndrome)・家族性胸部大動脈瘤・解離症候群(Familial thoracic aortic aneurysm and dissection syndrome)・動脈蛇行症候群(Arterial tortuosity syndrome)・先天性拘縮性くも状指趾症(Congenital contractural Arachnodactyly/Beals syndrome)・ホモシスチン尿症(Homocystinuria)・スティックラー症候群(Stickler syndrome)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)心血管系合併症に対する治療で最も重要なのは大動脈瘤・解離の予防である。内科的治療としては、β遮断薬あるいはアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の内服で、基部の拡張を認めるときには、できるだけ早期に治療を開始することが推奨されている。大動脈基部径が45mmを超えると大動脈解離のリスクが高くなるため、予防的大動脈基部置換手術を考慮する。これには、自己弁温存手術(David手術、Yacoub手術)と生体弁や機械弁を用いたBentall手術があるが、それぞれ長所・短所があるため、患者の年齢・性別・生活歴などを考慮しながら、最善の方法を選択する。なお、女性患者の場合、将来の妊娠の可能性を踏まえた治療が大切である。つまり、大動脈基部径が40mmを超えると妊娠中の大動脈解離リスクが高くなるため、そのままでの妊娠は難しくなる。したがって、女児では、成長後の基部径が40mm以下に保てるように、小児期から適切に降圧薬治療を継続することが重要である。その他、僧帽弁閉鎖不全や不整脈に対する治療は、通常の場合と同様である。水晶体偏位を認める場合、軽症なら眼鏡などによる視力矯正のみで経過観察を行うが、偏位が重症で完全脱臼や弱視の可能性がある場合は水晶体摘出手術や眼内レンズ縫着手術が行われる。高度近視の場合や水晶体手術後は網膜剥離のリスクが高くなるので、定期的に眼科を受診する必要がある。側弯、漏斗胸、気胸、ヘルニアなど、上記以外の合併症に対しては、いずれも対症療法が基本である。4 今後の展望致死的合併症となりうる大動脈解離の予防には、早期診断および早期治療介入が必須である。内科的治療に関しては、大規模臨床試験で、小児期からのβ遮断薬とアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)内服に大動脈基部拡張予防効果のあることが示され、標準的治療として定着してきた。また、外科的治療についても、致死的な大動脈解離の発症を防ぐための予防的大動脈基部人工血管置換手術も、手術手技の進歩により自己弁温存手術が標準的治療として定着しつつあり、術後のQOLも改善している。5 主たる診療科循環器内科、小児科、臨床遺伝科、眼科、心臓血管外科、整形外科※全身性疾患であり、各科専門医によるチーム診療が望ましい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センタ- マルファン症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センタ- マルファン症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviewsJapan  マルファン症候群(医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews “Marfan syndrome”(医療従事者向けのまとまった疾患情報:英語のみ)National Library of Medicine Genetics Home Reference(医療従事者向けのまとまった情報:英語のみ)National Marfan Foundation (NMF)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:英語のみ)患者会情報マルファンネットワークジャパン(患者とその家族および支援者の会)日本マルファン協会(患者とその家族および支援者の会)1)Loeys BL, et al. J Med Genet. 2010;47:476-485.2)Neptune ER, et al. Nat Genet. 2003;33:407-411.3)Lacro RV, et al. N Engl J Med. 2014;371:2061-2071.公開履歴初回2018年11月27日

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ESMO2018レポート 消化器がん

レポーター紹介胃がんに対する後方ライン治療(1)-ATTRACTION-2試験長期成績-切除不能胃がんに対する標準治療は1次治療フルオロピリミジン+白金製剤(HER2陽性の場合にはさらにトラスツズマブ併用)、2次治療パクリタキセル+ラムシルマブである。3次(後方ライン)治療以降は、ニボルマブもしくはイリノテカンが治療選択肢である。ニボルマブは、2レジメン以上の化学療法不応の切除不能胃がん(胃食道接合部がん含む)を対象としたプラセボ群との比較第III相試験(ATTRACTION-2)で有効性が示され、本邦でも2017年9月に胃がんへと適応拡大された。ESMO2018では、ATTRACTION-2のアップデート結果が報告された。2018年2月までの2年間の長期追跡でも、ニボルマブ群はプラセボ群と比較して有意なOS延長が確認され、2年全生存(OS)割合は、ニボルマブ群10.6%、プラセボ群3.2%、2年無増悪生存(PFS)割合は、ニボルマブ群3.8%、プラセボ群0%であった。奏効例のOS中央値26.61ヵ月、2年OS割合61.3%であった。また、SD症例におけるOS中央値は、ニボルマブ群8.87ヵ月、プラセボ群7.62ヵ月(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.52~1.23)であり、有意差はないもののニボルマブ群で良好であった。本結果は、実施臨床でのニボルマブ使用においても実感できる。奏効例では長期奏効が得られることも多く、まさにノーベル賞受賞の最近の報道でなされる“奇跡の薬”との表現にも同意する。一方で胃がんでのニボルマブの奏効率はわずか10%程度であり、治療のメリットが実感できない場面が多いのも事実である。さらに、最近は約10%にhyperprogressionが認められ、むしろdetrimentalに働く集団の存在も示唆されている。抗PD-1抗体薬の効果予測バイオマーカーが必要であり、有効もしくは無効のバイオマーカーがないと、1次・2次治療や補助療法での抗PD-1抗体薬の使用は困難であろう。胃がんに対する後方ライン治療(2)-新たな治療選択肢の登場-TAGS試験(TAS-102 Gastric Study)は、2レジメン以上の前治療歴のある切除不能胃がんに対するTAS-102の有効性を検証したプラセボ対照第III相試験である。結果はすでに本年の世界消化器癌学会議(ESMO-GI)で発表されているが、ESMO2018ではサブグループ解析と腫瘍縮小効果の結果が追加された(TAS-102群:337例、プラセボ群:170例)。主要評価項目であるOS(中央値/12ヵ月OS割合)は、プラセボ群3.6ヵ月/13%に対して、TAS-102群5.7ヵ月/21%(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0003)であり、TAS-102群が有意に良好であった。サブグループ解析でも、各サブグループにおいてTAS-102群が良好な結果であった。腫瘍縮小効果はTAS-102群で1例の完全奏効(CR)と部分奏効(PR)12例を認め、奏効割合(ORR)は4%であった。安定(SD)も含めた病勢制御割合(DCR)はTAS-102群44%であり、プラセボ群14%に比べ有意に良好であった。有害事象は、TAS-102群においてgrade 3以上の有害事象が多くみられ(TAS-102 80% vs.プラセボ58%)、好中球数減少(38% vs.0%)や白血球減少(21% vs.0%)、貧血(19% vs.7%)、血小板数減少(6% vs.0%)などの血液毒性が主であった。これら有害事象によるTAS-102の減量・休薬は58%で、13%の症例は試験治療中止となり、16%の症例でG-CSFが投与されていた。本試験より、TAS-102は胃がん後方ライン治療の新たな選択肢として、本邦においても使用可能となるだろう。位置付けはニボルマブと同様になると思われる。有害事象も大腸がんでの報告と同程度であり、胃がんでも比較的スムーズに臨床導入できるだろう。一方で、胃がんと大腸がんの病態の違いには注意が必要である。つまり、胃がんの方がよりaggressiveな病態を呈する患者が多く、経口摂取が困難となるケースも多い。本試験でもTAS-102後の後治療移行率は、TAS-102群25%、プラセボ群26%と両群ともきわめて低率であった。ニボルマブ、TAS-102、イリノテカンをすべて単剤療法として使い切るストラテジーよりも、併用療法の開発が期待される。大腸がん1次治療としてのTriplet療法の再検証-TRIBE2試験-大腸がん1次治療においてFOLFOXIRI+ベバシズマブ療法は、本邦におけるガイドラインでも推奨されるレジメンの1つである。その根拠となったTRIBE試験は、FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法(Triplet)とFOLFIRI+ベバシズマブ療法との第III相試験であり、ORR 65% vs.53%(p=0.006)、PFS中央値12.1ヵ月vs.9.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.75、p=0.003)、OS中央値29.8ヵ月vs.25.8ヵ月(HR:0.80、p=0.030)と、いずれもTriplet群が有意に良好であった。しかし本試験では、FOLFIRI群の後治療のオキサリプラチン導入割合が低く、本邦の実地臨床への外挿に疑問の声もあった。ESMO2018では、続編としてTriplet+ベバシズマブ療法を1次治療および2次治療で使用する群(triplet群)と1次治療FOLFOX+ベバシズマブ療法→2次治療FOLFIRI+ベバシズマブ療法を逐次的に行う群(doublet群)を比較した第III相試験(TRIBE2試験)の結果が報告された。すべての治療は最大8コースの施行とされ、その後は、増悪まで5-FU+ベバシズマブ療法継続が実施された。679例が登録され、患者背景は両群に大きな差はなく、RAS変異型60%程度、BRAF変異型10%、右側結腸38%と、一般的な大腸がんのpopulationよりも多い傾向であった。主要評価項目であるPFS2(2次治療終了までの無増悪生存期間)中央値は、doublet群16.2ヵ月、triplet群18.9ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.57~0.83、p<0.001)とtriplet群で有意に良好であった。1次治療PFSはdoublet群9.9ヵ月、triplet群12.0ヵ月(HR:0.73、p<0.001)、2次治療PFSの中央値はdoublet群5.5ヵ月、triplet群6.0ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.70~1.05、p=0.120)と有意差を認めなかった。doublet群の86%(248/288例)、triplet群の74%(194/261例)が2次治療に移行し、規定された2次治療が、doublet群では88%(FOLFIRI±Bmab)、triplet群では76%(FOLFOXIRI±Bmab)に行われていた。有害事象は既報のとおりで、1次治療における安全性は、grade 3以上の有害事象のうち、下痢(doublet群5% vs.triplet群17%、以下同様)、好中球減少(21% vs.50%)、発熱性好中球減少症(3% vs.7%)で群間差を認めた。本発表は、初回治療におけるtripletの有効性を再現したものと考えられる。doublet群の88%で2次治療に移行できているにもかかわらずtriplet群でPFS2が良好であったことはインパクトが大きいが、その理由は明らかではない。治療早期に強いレジメンを実施し、腫瘍縮小を達成することが生存延長につながっているのであろうか。とくに本試験の対象として多く含まれているRAS/BRAF変異型や右側結腸原発症例で有用である。今後発表されるOS結果にも注目したい。大腸がんに対する免疫療法の明暗-Checkmate142試験とMODUL試験-大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害剤は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)やミスマッチ修復(mismatch repair:MMR)タンパク発現消失を示すMMR機能欠損(deficient MMR:dMMR)がんとMMR機能欠損を示さないproficient MMR(pMMR)がんに分けて治療開発が行われている。dMMR例は遺伝子変異数(tumor mutation burden:TMB)が多く、腫瘍浸潤性リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte:TIL)の強い免疫腫瘍環境を有することから、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる。CheckMate142試験は抗PD-1抗体薬ニボルマブ(NIVO)単剤療法、NIVOと抗CTLA-4抗体薬イピリムマブ(IPI)との併用療法を検討した第II相試験であり、ESMO2018では1次治療としてのNIVO+IPI併用療法コホートの結果が報告された。本コホートは、dMMR例を対象に、NIVO(3mg/kgを2週間隔)と低用量IPI(1mg/kgを6週間隔)の併用療法であり、既報の同薬剤併用の既治療コホート(NIVO 3mg/kg+IPI 1mg/kgを3週間隔×4回→その後はNIVO 3mg/kgを2週間隔)とは異なったスケジュールである。今回のコホートには45例が登録され、BRAF変異型38%、Lynch症候群18%が含まれていた。主要評価項目である担当医判定によるORRは60%(完全奏効[CR]:3例[7%]を含む)、DCRは84%であった。BRAF変異例17例でも、ORR 71%、DCR 88%と良好だった。解析時点において82%の症例が効果継続中であり、12ヵ月PFS割合77%、OS割合83%と、長期の生存延長効果が期待された。Grade 3以上の重篤な有害事象割合は16%であり、治療中止に至る有害事象も7%と低かった。今回の報告は既治療例通常用量のNIVO+IPIコホートと比較して有効性は同程度、重篤な有害事象は少ない傾向であった。これが、低用量IPIのおかげなのか、それとも初回治療例を対象としたものかはランダム化比較試験でないため確証はないが、個人的には有害事象と有効性のバランスが良い本投与法を実地臨床では使用したい。とくにBRAF変異型も含めた高い有効性は魅力的である。dMMRがんに対するpembrolizumabは本年度中に適応拡大予定であるが、NIVO+IPI療法もdMMR大腸がんに必要なレジメンと考えられる。一方でpMMR大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療開発は、いまだ成功していない。MODUL試験は、大腸がんにFOLFOX+ベバシズマブ導入化学療法後の維持療法に関するランダム化比較試験で、バイオマーカーに基づくアンブレラ型試験である。今回、BRAF野生型コホート(コホート2)としてフッ化ピリミジン系薬剤+Bevacizumab(Bmab)とAtezolizumabの併用療法との比較パートの結果が発表された。患者背景はRAS変異型60~65%、dMMR2%であり、本試験はpMMR大腸がんへの免疫チェックポイント阻害剤の有効性を探索する試験と言える。追跡期間中央値18.7ヵ月時点におけるupdate analysisでのPFS中央値は試験治療群7.20ヵ月、標準治療群7.39ヵ月(HR:0.96、95%CI:0.77~1.20、p=0.727)、OS中央値は試験治療群22.05ヵ月、標準治療群21.91ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.13、p=0.283)と、有意差は認められなかった。ESMO-GIでは後方ラインでのAtezolizumab(+cobimetinib)の第III相試験(COTEZO)もnegativeな結果が報告された。pMMR大腸がんへの免疫療法は、まだまだ暗い闇の中といったところである。

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ESMO2018レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO(European Society for Medical Oncology)2018はドイツのミュンヘンで、2018年10月19~23日の期間に行われた。今年は9月に世界肺癌学会がカナダのトロントで行われたこともあり、昨年のESMOと比べると少しトピックスが少ない印象ではあったが、2万8千人が参加し、多くの演題が報告された。肺がん領域でのトピックスをいくつか紹介する。分子標的治療薬のトピックスオシメルチニブの耐性機序EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者で、1次治療としてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)で治療された後、耐性遺伝子の1つであるT790M変異が陽性であった場合に、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブもしくはプラチナ製剤+ペメトレキセドに割り付けられる第III相試験であるAURA3の試験における、耐性メカニズムについて報告された。ベースラインの血漿サンプルでEGFR遺伝子変異陽性であり、耐性後に血漿検体の評価ができた73例の検討では、49%でT790Mの消失を認め、C797Sが14%で認められた。(Papadimitrakapoulou V, et al, LBA51)また、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者で、1次治療として第1世代のEGFR-TKIとオシメルチニブを比較する第III相試験であるFLAURA試験における耐性メカニズムについても報告された。第1世代のEGFR-TKIで治療され、ベースラインの血漿でEGFR遺伝子変異が陽性であった129例の検討では、T790M陽性が47%と最も多く、METの増幅が4%、PIK3CAの変異が3%で認められた。また、オシメルチニブ群で血漿のEGFR遺伝子変異が陽性であった91例の検討では、METの増幅が15%で最も多く、C797X変異が7%、PIK3CA変異が7%で認められた(Ramalingam SS, et al LBA50)。血漿での検討ではあるが、オシメルチニブの耐性メカニズムの検討として重要な報告であったと考える。ALESIAアジアで行われた、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの初回治療として、クリゾチニブとアレクチニブを比較する第III相試験の結果が報告された。本試験には187例が登録され、125例がアレクチニブ(600mgを1日2回内服)群に、62例がクリゾチニブ群に割り付けられた。主要評価項目である研究者による評価の無増悪生存期間(PFS)は、アレクチニブ群で有意に良好であった(PFS中央値、アレクチニブ群:未到達、クリゾチニブ群:11.1ヵ月、ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.13~0.38、p<0.0001)。また、Grde3以上の毒性においても、アレクチニブ群では28.8%でみられたのに対し、クリゾチニブ群で48.8%であり、毒性においてもアレクチニブ群で軽いことが3つ目の第III相試験でも確認された(Zhou C, et al. LBA10)。ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおけるアレクチニブの有効性が改めて確認された一方で、日本のみアレクチニブの用量が異なることが、今後のALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの治療開発において、問題となることが危惧される。免疫チェックポイント阻害薬のトピックスPACIFIC試験の全生存期間に関する探索的検討III期の非小細胞肺がんに対し、化学放射線療法後にデュルバルマブとプラセボを比較する第III相試験であるPACIFIC試験において、SP263で評価したPD-L1の発現によるサブグループ解析の結果が報告された。PFSにおいては、PD-L1が1%以上の集団、PD-L1が1%未満の集団ともにデュルバルマブ群で良好な結果であった。しかし、全生存期間(OS)においては、PD-L1が1%以上の集団ではデュルバルマブ群で良好な結果であったが、PD-L1が1%未満の集団ではプラセボ群で生存曲線が上回る結果であった(Faivre-Finn C, et al. 1363O)。PD-L1の発現評価が可能であったのは全体の60%強であり、またそのうちのサブグループ解析であるため、この結果の解釈には注意が必要であり、この結果をもってPD-L1が1%未満にはデュルバルマブの効果が低いという結論には至らない。しかし、化学放射線療法施行例において、PD-L1発現と予後の結果については今後も検討を行う必要があることが示唆されると考える。IMpower130IV期の非扁平上皮非小細胞肺がんの初回治療として、カルボプラチン+ナブパクリタキセル+アテゾリズマブの3剤併用療法後にアテゾリズマブの維持療法(Atezo+CnP)とカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法後に支持療法もしくはペメトレキセドの維持療法(CnP)を比較する第III相試験の結果が報告された。主要評価項目の1つである研究者評価のPFS(遺伝子変異陰性患者での)はAtezo+CnPで有意に良好であった(PFS中央値、Atezo+CnP:7.0ヵ月、CnP:5.5ヵ月、HR:0.64[95%CI:0.54~0.77]、p<0.0001)。またもう1つの主要評価項目であるOS(遺伝子変異陰性患者での)においても、Atezo+CnPで有意な改善を認めた(OS中央値、Atezo+CnP:18.6ヵ月、CnP:13.9ヵ月、HR:0.79[95%CI:0.64~0.98]、p=0.033)。EGFRもしくはALK陽性の患者において、PFSとOSともにカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果は認められなかった。遺伝子変異陰性の非小細胞肺がんに対する、初回治療としての、プラチナ製剤を含む併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果が再確認された結果であった。一方で、遺伝子変異陽性の患者に対する、プラチナ製剤を含む併用療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果については、いまだ不明のままである。大規模な比較試験の結果が待たれる。(Cappuzzo F, et al. LBA53)B-F1RST局所進行または転移性非小細胞肺がん患者における、アテゾリズマブ単剤の単群第II相試験の結果が報告された。本試験の主解析として、血液検体を用いたtumor mutation burden(bTMB)のカットオフを16とした解析が含まれている。152例のITT集団のうち、バイオマーカーの評価可能でmaximum somatic allele frequency≧1%の患者が119例であり、bTMB≧16の患者は28例であった。bTMB≧16の患者での奏効割合が28.6%に対し、bTMB<16の患者では奏効割合4.4%であった。また、PFSはbTMB≧16群でよい傾向であったものの、統計学的な有意差は認めなかった(PFS中央値、bTMB≧16:4.6ヵ月、bTMB<16:3.7ヵ月、HR:0.66[95%CI:0.42~1.02]、p=0.12)。本試験のみで、bTMBのバイオマーカーとしての有効性の評価は難しいが、高い期待が持てる結果とはいえない。現在、bTMBが高い集団に対する第III相試験が進行中であり、その結果が待たれる。(Kim ES, et al. LBA55)

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有給休暇とうつ病リスクとの関連

 米国は、労働者の有給休暇取得を保証していない唯一の先進経済国である。実証研究によると、有給休暇は幸福感やストレスと関連しているといわれているが、有給休暇とうつ病との関連性については研究されていない。米国・ノースイースタン大学のDaniel Kim氏は、45~52歳の男女の代表的な労働者3,380例をサンプルとした1979年の全国縦断調査(National Longitudinal Survey of Youth 1979)を用いて、有給休暇の取得がうつ病を予防するかについて検討を行った。Scandinavian journal of work, environment & health誌オンライン版2018年11月7日号の報告。 50歳時にうつ病評価尺度簡易版(CES-D-SF)で測定したうつ病に対する、40歳時の年次有給休暇日数の影響について、多変量線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを用いて推定した。モデルは、人口統計、社会経済的要因、身体的健康状態、週の労働時間、個々の固定効果で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・女性において、有給休暇が10日間追加されるごとに、うつ病オッズが29%低下した(オッズ比[OR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.55~0.92、p=0.01)。この関連は、男性では認められなかった。・線形回帰モデルでは、男女ともに関連が認められなかった。・10日間の有給休暇ごとに、白人女性ではうつ病オッズが36%低下し、2人以上子供がいる女性ではうつ病オッズが38%低下した。 著者は「本研究は、有給休暇とうつ病との関連性を検討した最初の報告であり、2人以上の子供がいる白人女性において、有給休暇取得によるうつ病予防効果が示唆された。この関連性の因果関係が正当であり、全年齢の成人女性労働者に共通した影響をもたらすと仮定すると、平均有給休暇10日間の場合、毎年56万8,442件の女性のうつ病発症が回避され、毎年29億4,000万米ドルのコスト削減につながる可能性が示唆された。有給休暇取得の権利を与える政策は、米国の女性労働者の健康および経済的負担に対し好影響をもたらす可能性がある」としている。■関連記事うつになったら、休むべきか働き続けるべきか職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのか長時間労働やシフト作業は認知症発症に影響するか

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ART未治療HIV-1感染患者へのドルテグラビル+ラミブジン/Lancet

 抗レトロウイルス療法(ART)歴のないHIV-1感染成人患者において、ドルテグラビル+ラミブジンによる48週間の治療は、ガイドラインで推奨される3剤レジメンに対して非劣性であることが検証された。アルゼンチン・ブエノスアイレス大学のPedro Cahn氏らによる多施設共同無作為化二重盲検非劣性第III相試験「GEMINI-1」および「GEMINI-2」の結果で、忍容性プロファイルは類似しており、著者は「2剤レジメンはHIV-1感染患者の初回治療として支持される」とまとめている。2剤レジメンは、現在の標準治療である3剤以上を併用するレジメンと比較して、長期にわたる薬物曝露やARTの毒性を減少させる可能性があると考えられていた。Lancet誌オンライン版2018年11月9日号掲載の報告。ドルテグラビル+テノホビル/エムトリシタビンの3剤レジメンと比較 GEMINI-1試験とGEMINI-2試験は、同一試験デザインで21ヵ国192施設において実施された。対象は、HIV-1 RNAウイルス量が50万コピー/mL以下のART歴のない18歳以上のHIV-1感染患者で、2剤レジメン(ドルテグラビル50mg+ラミブジン300mgの1日1回経口投与)群、または3剤レジメン(ドルテグラビル50mg+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩300mg/エムトリシタビン200mgの1日1回経口投与)群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。患者と治験担当医は、治療の割付について盲検化された。 主要評価項目は、intention-to-treat-exposed集団における48週時のHIV-1 RNA量が50コピー/mL未満の患者の割合(Snapshotアルゴリズム解析)で、非劣性マージンは-10%とし、治験薬を1回以上服用したすべての患者(安全性解析対象集団)において安全性を評価した。2剤レジメンの3剤レジメンに対する非劣性を確認 2016年7月18日~2017年3月31日に、両試験で計1,441例が無作為に割り付けられた(2剤レジメン群719例、3剤レジメン群722例)。 48週時のHIV-1 RNA量が50コピー/mL未満の患者の割合は、GEMINI-1試験では2剤レジメン群90%(320/356例)、3剤レジメン群93%(332/358例)(補正群間差:-2.6%、95%信頼区間[CI]:-6.7~1.5%)、GEMINI-2試験ではそれぞれ93%(335/360例)、94%(337/359例)(補正群間差:-0.7%、95%CI:-4.3~2.9%)であり、両試験とも非劣性が示された(併合解析:2剤レジメン群91%[655/716例]vs.3剤レジメン群93%[669/717例]、補正群間差:-1.7%、95%CI:-4.4~1.1%)。 薬剤関連有害事象の発現率は、3剤レジメン群で2剤レジメン群より高かった(24% vs.18%)。有害事象により試験を中止した患者はいずれも少なかった(3剤レジメン群2%、2剤レジメン群2%)。GEMINI-2試験において2剤レジメン群で死亡が2例報告されたが、いずれも治験薬との関連はないと判定された。

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CABGでのグラフト採取、内視鏡下 vs.切開法で長期転帰に差なし/NEJM

 冠動脈バイパス術(CABG)における静脈グラフト採取法について、切開採取と内視鏡下採取で主要有害心血管イベント(MACE)に有意差は確認されなかった。米国・VAボストン・ヘルスケアシステムのMarco A. Zenati氏らが、CABGにおける切開/内視鏡下静脈グラフト採取法の長期臨床アウトカムを評価した多施設共同無作為化試験(Randomized Endovein Graft Prospective trial:REGROUP試験)の結果を報告した。伏在静脈グラフトは、CABGで最も一般的であるが、静脈グラフト採取法の長期アウトカムへの影響はこれまで十分に明らかにはされていなかった。NEJM誌オンライン版2018年11月11日号掲載の報告。1,150例対象に、MACE発生率を評価 研究グループは、米国の退役軍人心臓外科センター16施設において、CABG実施予定患者を、切開静脈グラフト採取法(切開)群、または内視鏡下静脈グラフト採取法(内視鏡下)群のいずれかに無作為に割り付けた。 主要評価項目は、MACE(全死因死亡、非致死的心筋梗塞、血行再建術再施行の複合)とし、創部合併症も同様に評価した。統計解析は、Cox比例ハザードモデルを用いてintention-to-treat集団で実施された。 2014年3月~2017年4月の期間で、計1,150例が無作為化を受けた(切開群574例、内視鏡下群576例)。追跡中央値約3年、内視鏡下採取と切開採取のMACE発生率に有意差なし 追跡期間中央値2.78年において、主要評価項目であるMACEは、切開群で89例(15.5%)、内視鏡下群で80例(13.9%)が確認された(ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.83~1.51、p=0.47)。死亡は、切開群46例(8.0%)、内視鏡下群37例(6.4%)(HR:1.25、95%CI:0.81~1.92)、心筋梗塞は、それぞれ34例(5.9%)および27例(4.7%)(1.27、0.77~2.11)、血行再建術は、35例(6.1%)および31例(5.4%)(1.14、0.70~1.85)であった。 創部感染は、切開群で18例(3.1%)、内視鏡下群で8例(1.4%)に認められた(相対リスク:2.26、95%CI:0.99~5.15)。 なお、著者は、グラフト開存の画像評価がないことや、多くの患者が男性であったことなどを研究の限界として挙げている。

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妊娠中の有害なライフイベントと5歳時のADHD症状との関連

 妊娠中の有害なライフイベントの経験は、子供のADHDと関連があるといわれているが、家族性交絡の影響はよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMina A. Rosenqvist氏らは、妊娠中の有害なライフイベントが、子供のADHD症状と関連しているかを明らかにするため、家族性の要因について検討を行った。Journal of Child Psychology and Psychiatry誌オンライン版2018年10月27日号の報告。 人口ベースのノルウェー母子コホート研究(Norwegian Mother and Child Cohort Study)に参加した子供3万4,751例(6,427例の兄弟姉妹を含む)のデータを収集した。母親からは、妊娠中に特定のライフイベントを経験したかどうかの報告を収集した。5歳時のADHD症状は、Conners' Parent Rating Scale-Revised(CPRS-R)簡易版を用いて評価した。ライフイベントと平均ADHDスコアとの関連は、全コホートにおける最小二乗法を用い、家族性交絡のために兄弟姉妹比較における固定効果線形回帰を用いてモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・有害なライフイベントに曝露した子供では、5歳時のADHDスコアが高かった。最も影響が大きかったのは金銭的な問題(調整モデルにおける平均差:0.10、95%CI:0.09~0.11)、最も影響が小さかったのは親しい人の喪失であった(調整モデルにおける平均差:0.02、95%CI:0.01~0.04)。・有害なライフイベント曝露の不一致を兄弟姉妹で比較すると、統計学的に有意ではない減弱した推定値が得られた。たとえば、金銭的な問題の平均差は-0.03(95%CI:-0.07~0.02)であった。・母親がつらいまたは困難な経験をした場合には、イベント数に応じてADHDスコアが上昇し、兄弟姉妹比較の分析では、正常なほうへ推定値が減少した。 著者らは「本結果では、妊娠中の有害なライフイベントと子供のADHD症状との関連性が示唆され、これは家族性の要因によって説明される」としている。■関連記事母親の体格がADHD、自閉症リスクと関連か母親のADHD症状と子供のアウトカムとの関係ADHD発症しやすい家庭の傾向

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HFpEFの治療はいまだ闇の中(解説:絹川弘一郎氏)-958

 LVEFの保たれた心不全、HFpEFにはEF低下例とは異なり、生命予後をはじめとした予後を改善する薬剤が知られていない。高齢者に多いHFpEFであるゆえ、とくに長生きしなくても再入院を予防できればいいのでは、または運動耐容能が保たれればいいのでは、などとも考えられてきており、エンドポイントも工夫してさまざまな臨床研究が行われているが、いまだ解決の糸口が見えない。 このINDIE-HFpEF試験1)は亜硝酸ナトリウムを吸入させて運動耐容能が改善するかをみたものである。硝酸薬は冠動脈病変のある患者や心不全症例でLVEDPを低下させるが、そのメカニズムは静脈系血管拡張による前負荷軽減と動脈系血管拡張による後負荷がバランスした時に過度な血圧低下なく、症状改善に結びつく。一方で、NOのように肺血管をメインに拡張するような薬剤を左心不全症例に使用すると、肺動脈圧は低下するものの肺血流はむしろ増加して肺うっ血を悪化させる。HFpEFでは血管拡張薬は後負荷軽減が心拍出量増加に寄与する部分が少なく、PAWPを低下させるだけの前負荷軽減がたちまち低心拍出につながる場合が多く、これは要するに拡張期圧容積関係が急峻であるため、極端に血行動態が振れることを意味している。このHFpEFの急峻な拡張期圧容積関係は虚血の際の拡張機能障害とは異なり、直接改善させられる薬剤は知られていない。 最近、生活習慣病による内皮機能障害をトリガーと考え、二次的に心筋細胞内のNO-cGMP-PKG経路の低下がtitinのリン酸化の変化をもたらして最終的に拡張機能障害に至るという仮説がHFpEFで有力である。この説に従えばHFpEFの拡張機能障害もNOを供与することで緩和されうる可能性があり、さらにNO供与体のほか、sGC刺激薬、PDE5阻害薬など、この経路を活性化する可能性のある薬剤が試されてきた。しかし、一硝酸イソソルビド(ISMN)2)、vericiguat3)、シルデナフィル4)は、いずれもHFpEFに否定的な結果となっている。今回試されたものは亜硝酸塩であり、硝酸塩が亜硝酸塩を経てNOを産生するのに比して、低酸素下でも1段階でNOを産生できるメリットがあると考えられ、また耐性を生じないということで硝酸薬とは若干違う可能性が期待された。小規模な単施設の研究では、いずれも血行動態や運動耐容能を改善していることから、今回多施設での前向き研究を企画された経緯である。 しかし、残念ながらこの研究で亜硝酸塩の吸入もHFpEFの運動耐容能改善には結びつかなかった。単施設との違いは議論を要するが、これまでの多くの試験結果と合わせても、むしろネガティブであることのほうが自然であるように思われる。現時点でHFpEFに残された薬剤はPARAGON試験5)で検証中のsacubitril/バルサルタンだけといっても過言でない。

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第12回 びまん性汎細気管支炎にマクロライド系抗菌薬が長期投与されるのはなぜ?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗菌薬は必要なときに短期間処方されるのが一般的ですが、例外もあります。その代表的なものが、マクロライド系抗菌薬の長期投与です。COPDや非嚢胞性線維症性の気管支拡張に対して行われることも多い治療法ですが、今回はびまん性汎細気管支炎(Diffuse panbronchiolitis:DPB)に対するマクロライドの少量長期療法について紹介します。DPBは呼吸細気管支と呼ばれる細い気管支を中心に慢性炎症が起こり、咳や痰、呼吸困難が生じる疾患で、ほとんどの場合で慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を合併するのが特徴的です1)。日本人を含む東アジア人に多く、男女差はなく、40~50代が好発年齢です2)。もともとは未治療の場合、診断から5年以内に約50%が死亡するというきわめて予後の悪い疾患でしたが3)、マクロライドの少量長期療法が行われるようになって死亡率が急速に低下しました4)。日本発の治療法で、その効果が判明したのは1980年代になってのことです。それでは、数ある抗菌薬の中でもなぜマクロライド系抗菌薬がDPBに有効なのでしょうか。その説明として考えられているのが、その抗炎症作用です。抗菌作用も期待できるとは思われますが、DPBにおける投与量は通常よりも少なく、一般的な重感染症最小発育阻止濃度を下回っているので、主に抗炎症作用を期待しての治療なのでしょう。抗炎症作用といっても多くの説があり、バイオフィルム形成、免疫調整、肺胞マクロファージによる食作用の亢進作用などが知られています。一般にマクロライド系抗菌薬は、肺胞マクロファージによって細胞内に濃縮されやすく、血清濃度よりもクラリスロマイシンで約400倍、アジスロマイシンで約800倍高いレベルになるとされていて、これが比較的低用量で奏効する理由と考えられています5)。コクランのシステマティックレビューにおいてもDPBに対するマクロライド少量長期療法の効果が検証されています6)。システマティックレビューといっても、レビューへの組み入れ基準は「DPBに対するマクロライドの効果と安全性を検討したランダム化比較試験(RCT)ないし準ランダム化比較試験」で、RCTではない観察研究や対照群のない研究が除かれた結果、最終的に残ったRCTは1件だけでした。その内容は、20~70歳(平均年齢50歳)のDPB患者19例のうち12例をエリスロマイシン600mg/日の長期投与群、7例を無治療群に割り付けて比較したというものです。エリスロマイシン群の全例において、CT画像はベースラインからの改善がみられた一方、対照群では71.4%が悪化、28.6%が変化なしという結果でした。レビュー内でエビデンスの質は低いとされていますが、予後の悪い疾患でこれほどの差が出ていることは注目に値するのではないでしょうか。14員環、15員環なら有効性は高いが、16員環は無効エリスロマイシン以外の長期療法についても紹介しましょう。10例のDPB患者を組み入れ、クラリスロマイシン200mg/日で4年間治療したオープンラベルの研究です。肺機能検査などの項目は、ほとんどの被験者で6ヵ月以内に有意な改善がみられています。また、重大な副作用は認められず、長期間安全に服用できることが示唆されました7)。エリスロマイシンやクラリスロマイシンは14員環のマクロライドですが、15員環のアジスロマイシンにおいてもDPBに対する効果を検討した試験があります。51例のDPB患者を対象とした研究では、アジスロマイシン500mg/日を静注で1~2週間投与した後、1日1回経口服用で3ヵ月継続し、さらに週に3回経口服用を6~12ヵ月継続したところ、臨床的治癒は27.5%、改善は70.6%で、5年生存率は94.1%でした8)。また、別の研究では、アジスロマイシンを60例の患者に250mg/日を週2日3ヵ月間投与したところ、多くの被験者で喀痰量および呼吸困難が減少し、有効率は84.6%でした9)。なお、16員環を有するマクロライド(ジョサマイシンなど)はDPBに無効と考えられており、ガイドラインにおいても推奨されていません2)。長期療法と言われると気になるのはどのくらい長期かということですが、その最適な期間は明確には定まっていないようです。紹介してきた臨床試験においては、ほとんどの患者さんにおいて最低6ヵ月程度は継続され、大部分は治療開始2年後までには中止に至っています。基本的には、臨床症状、X線写真所見、および肺機能測定値が改善または安定するまでということになるようです。もちろん中止後も、呼吸困難、咳、痰の程度についてモニタリングすることが望ましく、再び気管支拡張症や副鼻腔炎のような徴候が出た場合には治療が再開される可能性があることには留意しておくとよいでしょう。また、マクロライド系抗菌薬にはモチリン様作用が知られているので、低用量であっても下痢が生じる可能性があります。モチリンは消化管の蠕動運動を活発にするホルモンですが、マクロライドも同様に消化管運動を活発にすることが報告されています10)。したがって、腸内細菌叢のバランスが崩れるという以外の理由で下痢や腹痛が生じることがあり、とくに服用当日など早期に生じる下痢はこの作用による可能性が高いとされています。便秘の方には逆によいケースもあるかもしれませんが、服薬指導時に説明しておくほうが安心かと思います。1)日本呼吸器学会 びまん性汎細気管支炎2)JAID/JSC感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―3)Kudoh S, et al. Clin Chest Med. 2012;33:297-305.4)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1998;157(6 Pt 1):1829-1832.5)Steel HC, et al. Mediators Inflamm. 2012;584262.6)Lin X, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD007716.7)Kadota J, et al. Respir Med. 2003;97:844-850.8)Li H. et al. Intern Med. 2011;50:1663-1669.9)小林 宏行ほか. 感染症学雑誌. 1995;69:711-722.10)Broad J, et al. Br J Pharmacol. 2013;168:1859-1867.

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TKI→TKIシークエンスの治療戦略は生き残れるか?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第2回

第2回 TKI→TKIシークエンスの治療戦略は生き残れるか?1)Hochmair MJ, et al. Sequential treatment with afatinib and osimertinib in patients with EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer: an observational study. Future Oncol. 2018 Oct 19.[Epub ahead of print].2)Mok TS, et al. Improvement in Overall Survival in a Randomized Study That Compared Dacomitinib With Gefitinib in Patients With Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer and EGFR-Activating Mutations. J Clin Oncol. 2018 Aug 1;36(22):2244-2250.EGFR、ALK陽性例では、すなわち幅広い変異に有効性を示す第3世代のTKIが第1世代TKIに比して大きなPFSの延長を示し、OSも同等かそれ以上の結果が報告されている。一方で第2世代TKIについては、前臨床試験の結果から特定の感受性変異に対して高い有効性が期待されている。実地臨床においてこうした薬剤を1次治療で用いると、耐性変異に特化した腫瘍を誘導でき、2次治療で第3世代TKIを長期間使用できるのではないか、というTKI→TKIの治療戦略に期待が持たれてきた。アファチニブについては、過去の臨床試験に参加した患者を対象に後解析が行われ、アファチニブ後のオシメルチニブでは治療期間中央値が20.2ヵ月、という報告が行われている(Sequist LV, ESMO2017)。今回、この結果を受けて行われた、より大規模なGioTag試験について(ESMO報告ですでにご存じの方もおられるかもしれませんが)解説する。1)についてGioTag試験は、日常臨床におけるアファチニブ→オシメルチニブのシークエンスを検討したもの。アジア・欧米の204例について検討された。患者背景などは特筆すべき事項なし(アジア人は50例[24.5%])。それぞれの治療期間中央値は、アファチニブ11.9ヵ月、オシメルチニブ14.3ヵ月、両薬剤合わせて27.6ヵ月となっている。生存期間については2年生存率79%とのこと。観察期間の問題で中央値は未公表。2)についてARCHER1050のOS論文:dacomitinibとゲフィチニブの第III相試験だが、この中で少数ながら2次治療で第3世代TKIを用いた集団の成績に言及されている。dacomitinib群227例中、22例(9.7%)が第3世代TKIを投与されている。MSTは36.7ヵ月とのこと(ちなみに、全体集団のMSTは34.1ヵ月)。問題点ESMO2017で報告された統合解析から、第2世代→第3世代TKIという治療シークエンスが最強であると考えた人は少なくなかった。しかしながら、より規模を拡大したGioTag試験の結果は、統合解析の報告からは程遠い結果であった。GioTag試験の適格基準の中には「登録時点でオシメルチニブを10ヵ月以上投与しているもの」という項目があり、相当な患者選択がなされているにもかかわらず、である。非常に小規模ではあるが、ARCHER1050のサブセット解析も全体集団とそう変わらない印象がある。GioTag論文のディスカッションでは、アジア人/非アジア人、del19/L858Rなどのサブセット解析もなされているが、そう目を引くものではなかった。ただ今回のPHS 14.3ヵ月についてAURA3における2次治療オシメルチニブのPFS 10.1ヵ月よりはやや長かったので、増悪時サンプルの解析も併せて何らかの特殊な集団を同定できれば興味深かったのだが…。いずれにせよ、本研究結果はTKIシーケンスの治療戦略にとって残念な結果であった。本邦ではALK陽性例に対して初回治療アレクチニブとクリゾチニブを比較する大規模な後方視的研究が登録を完了しており(研究事務局 伊藤 健太郎先生@松阪市民病院)、この結果も待たれるところである。

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大腸がん原発巣部位に関連する遺伝子、およびセツキシマブの治療効果に関するバイオマーカー【消化器がんインタビュー】第2回

第2回 大腸がん原発巣部位に関連する遺伝子、およびセツキシマブの治療効果に関するバイオマーカー出演:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学 砂川 優氏Sunakawa Y, et al. Tumor sidedness and enriched gene groups for efficacy of first-line cetuximab treatment in metastatic colorectal cancer. Clin Colorectal Cancer. 2018 Oct 1.[Epub ahead of print]

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食事の炎症指数とうつ病に関するメタ解析

 中国医科大学のJian Wang氏らは、食事炎症指数(dietary inflammatory index:DII)でスコア化された食事の炎症能とうつ病との関連性を評価するため、システマティックレビュー、メタ解析を行った。Public health nutrition誌オンライン版2018年10月15日号の報告。 2018年8月までに実施された、DIIスコアとうつ病または抑うつ症状との関連を調査した観察研究を、PubMed、Web of Science、EMBASEのデータベースより包括的に検索した。 主な結果は以下のとおり。・4件のプロスペクティブコホート研究と2件の横断研究より、4万9,584例が抽出された。・全体として、DIIスコアが最も高い群では、最も低い群と比較し、うつ病リスクが23%高かった(リスク比[RR]:1.23、95%信頼区間[CI]:1.12~1.35)。・試験デザインにより層別化すると、プロスペクティブコホート研究のプールされたRRは1.25(95%CI:1.12~1.40)、横断研究のプールされたRRは1.16(95%CI:0.96~1.41)であった。・性別特異的分析では、この関連性は女性では認められたが(RR:1.25、95%CI:1.09~1.42)、男性では統計学的に有意な差は認められなかった(RR:1.15、95%CI:0.83~1.59)。 著者らは「高いDIIスコアで推定される炎症促進作用を有する食事は、とくに女性において、うつ病リスクの上昇と独立して関連していることが示唆された。しかし、抗炎症作用を有する食事が、うつ病リスクを低減できるかを評価するためには、適切に設計された研究が必要である」としている。■関連記事うつ病治療と食事パターン魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当かうつ病患者で重要な食事指導のポイント

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ALK陽性肺がんに、第3世代ALK-TKIロルラチニブ発売/ファイザー

 ファイザー株式会社は、2018年11月20日、「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果で、ロルラチニブ(商品名:ローブレナ錠25mg、同100mg)を発売した。 ALK陽性肺がん治療は2012年のザーコリの発売以降、合計3剤のALK阻害剤が上市され、治療選択肢が広がっている。一方で、遺伝子の耐性変異により既存薬で効果が得られなくなるといった治療上の課題が存在していた。 ロルラチニブは、この耐性メカニズムに注目し創製された第3世代のALK阻害薬で、耐性変異がみられる変異型ALKにも効果が期待される薬剤。臨床試験において、既存のALK阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK陽性NSCLCに対する臨床的に意義のある抗腫瘍効果と忍容性が示された。 ロルラチニブは、昨年10月に導入された「医薬品の条件付き早期承認制度」の適用を受け、優先審査の対象として、約8ヵ月間の審査期間を経て、9月21日に世界に先駆けて日本での承認を取得した。製品名:ローブレナ錠25mg/100mg(LORBRENA Tablets 25mg/100mg)一般名:ロルラチニブ(Lorlatinib)効能・効果:ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌用法・用量:通常、成人にはロルラチニブとして1日1回100mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売承認取得日:2018年9月21日薬価収載日:2018年11月20日発売日2018年11月20日薬価:25mg:7,216.40円、100mg:25,961.00円製造販売元:ファイザー株式会社

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第15回 内科からのエリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Campylobacter coli属・・・11名全員Salmonella Enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス)・・・1名Escherichia coli(大腸菌)・・・1名Arcobacter属・・・1名Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)・・・1名腹痛、下痢、鶏肉から 奥村雪男さん(薬局)カンピロバクター属が原因菌と予想されます。下痢と腹痛から市中腸管感染症で、加熱不十分の鶏肉を食べたこと、検査はおそらくグラム染色だったのではないでしょうか。カンピロバクターのグラム染色での感度は30%程度のようですが、特異度が高いので確定診断に至ったのだと考えます。カンピロバクターは一般的には補液などの対症療法で自然軽快することがほとんどとされていますが、早期治療による菌の排出期間短縮と症状軽減があったとの報告があります1)。キノロン系薬剤への耐性化が進んでいるため、マクロライド系薬剤が第一選択であり、下記が推奨されています1)。クラリスロマイシン経口 1回200mg 1日2回 3~5日間アジスロマイシン経口 1回500mg 1日1回 3~5日間エリスロマイシン経口 1回200mg 1日4回 3~5日間Q2 患者さんに確認することは?どのような検査をしたか わらび餅さん(病院)できればどのような検査をしたか聞きます。培養ではっきり菌を特定するには、通常は数日かかるからです。下痢と腹痛が主訴ですが、可能なら血便など重症だと判断する情報があるのか聞きたいです。潰瘍性大腸炎の可能性も? 中堅薬剤師さん(薬局)併用薬と副作用歴です。また、可能であれば潰瘍性大腸炎の除外診断を医師がしているかどうかも確認したいです。今回は検査結果があるので可能性はあまりないと思いますが、開業医が第六感で「感染性腸炎」と誤診し、潰瘍性大腸炎が重症化することが非常に多い、と広域病院の消化器科医の講演を聞いたことがあります。必要に応じて、潰瘍性大腸炎の可能性も考慮して対応することが重要だと考えます。併用薬について 荒川隆之さん(病院)併用薬を必ず確認します。エリスロマイシンはCYP3A4で代謝される薬剤と併用した場合、併用薬の代謝が阻害され血中濃度が上昇する可能性があります。また、P糖タンパクを介して排出される薬剤と併用した場合、併用薬剤の排出が阻害され血中濃度が上昇する可能性があります。ピモジドなどの併用禁忌の確認 奥村雪男さん(薬局)エリスロマイシンはマクロライド系抗菌薬の中でもCYP3A4 阻害作用が強いので、ピモジドなどの併用禁忌薬剤を服用していないか確認します。マクロライド系抗菌薬のCYP3A4阻害様式はMBI(Mechanical based inhibition)で、服用開始から数日程度で阻害作用が最大になり、服用終了から数日程度で阻害作用は消失すると考えられます2)。そのため、服薬終了後も併用薬に注意が必要です。自炊かどうか 児玉暁人さん(病院)可能なら鶏肉をどこで食べたか確認します。飲食店なのか自宅で自炊をしてなのか。一人暮らしで自炊しているのであれば、しっかり加熱する、二食肉は他の食品と調理器具や容器を分けて処理や保存を行う、食肉を取り扱った後は十分に手を洗ってから他の食品を取り扱う、食肉に触れた調理器具などは使用後洗浄・殺菌を行うなどのアドバイスができるかもしれません。Q3 疑義照会する?する・・・5人エリスロマイシンの用量 キャンプ人さん(病院)エリスロマイシンの1 回用量が多いように思うので、確認します。ガイドラインでは1回200mg 1日4回 3~5日間1)とされています。重症でなければ自然軽快する場合が多い 清水直明さん(病院)カンピロバクター腸炎の場合、重症でなければ抗菌薬の投与なしで自然に軽快する場合がほとんどです。処方医と信頼関係ができていれば、説明した上で「抗菌薬は不要かもしれません」と提案するでしょう。他剤への変更 JITHURYOUさん(病院)本症例は、重症感がなくカンピロバクター自体は自然軽快することが多いため、抗菌薬は不要ではないかと感じます。それでも医師が抗菌薬は必要だとするなら、現時点で消化器症状があるのでクラリスロマイシンに変更提案します。エリスロマイシンより消化器作用が少ないこと、添付文書上の適応のためです。併用薬がある場合には、相互作用の少ないアジスロマイシンに変更提案します。可能なら抗菌薬処方なしにもっていきたいです。しない・・・6人3日間投与は適切 中堅薬剤師さん(薬局)ガイドラインには、カンピロバクターは世界的にキノロン系薬の耐性化が進んでおり、マクロライドを第一選択にすると記載されています1)が、マクロライド耐性も問題化しつつあるようなので、まず3日間投与は適切ではないでしょうか。エンピリック処方かどうか わらび餅さん(病院)患者さんの聞き取りを踏まえ、カンピロバクターと予想した上でのエンピリック処方だと判断できれば、疑義照会しません。ただし、原因菌と特定されていればエリスロマイシンの用法を確認します。もし、アドヒアランスなどを考慮して用法を1日3回としていたら、アジスロマイシン1日1回でもよいのでは、と聞ければ聞きます。海外での使用例やPAE※も考慮 ふな3さん(薬局)エリスロマイシンは半減期が1.5時間程度と短めのため、1日3回ではちょっと不安ですが、カンピロバクターへの適応はないものの米国などでは1,000mg/2×などの処方もあるようです。PAEも期待できることから、疑義照会はしないと思います。※post-antibiotic effect。血中や組織中から抗菌薬が消失しても、一定期間、病原菌の増殖が抑制される効果1日3回が難しければ処方提案 児玉暁人さん(病院)エリスロマイシンの1回量が多く、回数も3回ですが、適宜増減の範囲内と考え、疑義照会はしません。ただし、1日3回の内服が難しそうであればクラリスロマイシン1回200mg 1日2回 3日分の処方提案をします。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?しっかり飲みきること キャンプ人さん(病院)指示されている期間しっかり服用することです。また、エリスロマイシンのモチリン様作用(消化管運動亢進作用)により、消化管の蠕動運動が活発になることを説明しておきます。服用時間について ふな3さん(薬局)1回目の分はすぐに飲み始めること。2回目は6時間程度あけて服用。1日3回、3日間飲みきることを伝えます。下痢についての説明 清水直明さん(病院)「今回、下痢止めは出されていませんが、下痢止めを服用しなくても数日で回復してくると思います。治りを遅くすることがあるので、市販の下痢止めは服用しないでください。」脱水に注意 JITHURYOUさん(病院)現時点で重症感はなさそうですが、水分補給して脱水に注意し、安静にするよう伝えます。はっきりと重症化しないとはいえませんが、年齢的に考えてみても整腸剤だけで経過観察でもよかったかもしれませんね。他院受診時にお薬手帳を持参 奥村雪男さん(薬局)今回の抗菌薬は服薬終了後も数日間程度飲み合わせに注意が必要なので、他院にかかる場合はお薬手帳を持参することを伝えます。Q5 その他、気付いたことは?ボツリヌス毒素の可能性も? ふな3さん(薬局)「古いパックの食品も疑われた」という言葉から、ボツリヌス毒素の疑いもあったのかもしれません。また、カンピロバクターからのギランバレー症候群の発症のリスクもあるため、下記のような症状が出たら、すぐに医師に連絡するよう伝えたいです。口内乾燥、嚥下困難、複視、視力低下(ボツリヌス中毒)四肢の脱力(ボツリヌス中毒、ギランバレー)エリスロマイシンの処方意図 柏木紀久さん(薬局)今回の症例はあまり抗菌薬の必要性を感じませんが、排菌の促進や消化管運動の促進を期待して3日分の処方かな?と思いました。ギランバレー症候群と菌血症 奥村雪男さん(薬局)カンピロバクター感染症の合併症に、ギランバレー症候群と菌血症が知られています。0.1%以下でギランバレー症候群の報告があり、感染後2~3週後に発症するようです3、4)。発症はまれなので不安をあおらないように伝えません。菌血症は1%程度に報告があり4)、高齢者に多いようです。若年では検査陽性になるころには自然治癒するようで、あまり心配ないかもしれませんが、知識として持っておく必要があると思います。後日談(担当した薬剤師から)調剤した日の閉局間際に「薬を飲んだら、余計にお腹の調子が悪くなりました。どうしたらいいですか?」と電話がかかってきました。実は、薬を渡すときにモチリン様作用の説明をするのを忘れていたことに気付きました。「原因の菌を退治するだけでなく、胃腸の動きを活発にさせる作用もあるお薬ですので、自然とその症状は治まります。菌の排出も早まりますので、辛抱して内服を続けてください」と返事をしました。無事治療が終了したのか、後日の来局はありませんでした。1)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015―腸管感染症―. 一般社団法人日本感染症学会、2016.2)鈴木洋史監. これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践. 東京、じほう、2014.3)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.4)酒見英太監. ジェネラリストのための内科診断リファレンス. 第1版. 東京、医学書院、2014.[PharmaTribune 2017年6月号掲載]

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統合失調症の認知機能に対するアセチルコリンエステラーゼ阻害薬

 統合失調症で認められる認知機能障害は、予後の悪化をもたらす。そのため、統合失調症における認知機能改善を目的とした治療は、臨床的に重要であると考えられる。スペイン・バスク大学のBorja Santos氏らは、統合失調症患者の認知機能に対し、抗精神病薬とアセチルコリンエステラーゼ阻害薬併用療法の有効性を評価するため、検討を行った。Journal of Psychopharmacology誌2018年11月号の報告。 2018年3月までの研究をMedline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsより検索を行った。特定の認知機能領域(処理速度、注意、ワーキングメモリ)について、抗精神病薬とアセチルコリンエステラーゼ阻害薬との併用、抗精神病薬とプラセボとの併用を比較した、ランダム化比較試験(RCT)を抽出した。2人の独立したレビュー著者が、研究適格性を評価し、データを抽出し、研究のバイアスリスクを評価した。ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行い、エビデンスの質の評価には、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)を使用した。 主な結果は以下のとおり。・9件のRCTが抽出された。・6件のRCT(219例)では、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬併用群は、処理速度を改善するエビデンスが示された(標準化平均差[SMD]:-0.52、95%信頼区間[CI]:-0.79~-0.25、p=0.0002)。・その一方で、8件のRCT(252例)では、注意領域への改善効果はプラセボ併用群の方が優れているという結果が示された(SMD:-0.43、95%CI:-0.72~-0.13、p=0.005)。・8件のRCT(273例)では、両群間でワーキングメモリの改善に差は認められなかった(SMD:-0.14、95%CI:-0.51~0.24、p=0.47)。 著者らは「現在のエビデンスでは、統合失調症患者の認知機能改善に対し、抗精神病薬への補助療法としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬を併用することへの推奨レベルは非常に弱かった。また、効果予測に対する信頼性も限定的であった。」としている。■関連記事統合失調症の精神病理および認知機能障害に対する抗認知症薬に関するメタ解析統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か統合失調症の認知機能障害、コリン作動系薬の可能性

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