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低食物摂取アルツハイマー病患者に対するリバスチグミンパッチの有効性

 多くのアルツハイマー病(AD)患者は、食物摂取不良や食欲不振を経験し、認知障害の進行を加速させる。これまでのいくつかの報告によると、リバスチグミンがAD患者の食欲を改善させることが示唆されている。香川大学の角 徳文氏らは、AD患者における低食物摂取を改善させるためのリバスチグミンパッチの有効性について検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年3月12日号の報告。リバスチグミンパッチはAD患者の食物摂取不良や食欲不振を改善させる可能性 対象は、「AD患者の食物摂取に対するリバスチグミンの効果に関する研究(Attitude Towards Food Consumption in Alzheimer's Disease Patients Revive with Rivastigmine Effects study)」にて募集した、食欲不振または不十分な食物摂取のいずれかを経験したAD患者。対象患者に、リバスチグミンパッチを16週間使用した。患者の食物摂取量、体重、MMSEスコア、すべての有害事象を調査した。 AD患者における低食物摂取を改善させるためのリバスチグミンパッチの有効性を調査した主な結果は以下のとおり。・AD患者38例(年齢:86.2±5.4歳)を調査した。・ベースライン時の平均MMSEスコアは、10.1±7.0であった。・リバスチグミンパッチ使用1週目で、食物摂取量(54.9±98.0g、p<0.01)および食物摂取率(9.3±17.6%、p<0.01)の増加が認められ、試験期間を通じて維持された。・多重線形回帰分析では、独立変数が食物摂取量または食物摂取率と有意な関連を示さなかった。・MMSEスコアのより高い群では、食物摂取量に変化傾向が示されたが、統計学的に有意ではなかった(p=0.07)。 著者らは「リバスチグミンパッチは、AD患者の食物摂取不良や食欲不振を改善させる可能性があることが示唆された」としている。■関連記事アルツハイマーへのリバスチグミン、その有用性はコリンエステラーゼ阻害薬を使用した新規認知症患者における抗コリン作用の影響AD患者におけるパッチ剤切替のメリットは?

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低線量CTの肺がんスクリーニング、5年以上実施で10年生存が改善/Ann Oncol

 肺がんスクリーニングは肺がん死を減少するのか。National Lung Screening Trial(NLST)では、低線量CTによる年1回3年間の肺がんスクリーニングが肺がん死を減少させたことが示されている。イタリア・Foundation IRCCS国立がん研究所のUgo Pastorino氏らは、低線量CTによるさらに長期のスクリーニングについて評価する前向き無作為化臨床試験「Multicentric Italian Lung Detection:MILD試験」を行った。その結果、5年を超える長期スクリーニングは、NLST研究と比較し、早期発見のベネフィットの増強が可能であり、全死亡および肺がん死を大きく減少できる可能性が認められたという。Annals of Oncology誌オンライン版2019年4月1日号掲載の報告。 研究グループは、49~75歳の喫煙歴のある試験参加希望者4,099例を、低線量CTによるスクリーニングを実施する介入群(2,376例)と、実施しない対照群(1,723例)に無作為に割り付けた。介入群ではさらに、年1回群(1,190例)と隔年群(1,186例)に無作為に割り付け、中央値で6年間のスクリーニングを実施した。 主要評価項目は、10年間の全死亡および肺がん特異的死亡であった。低線量CTによるスクリーニングの長期効果を検討するため、最初の5年間における肺がん発症および死亡を除外したランドマーク分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2005~18年までに、3万9,293人年の追跡調査が行われた。・介入群では対照群と比較し、10年で肺がん死亡リスクが39%減少し(HR:0.61、95%CI:0.39~0.95)、全死亡リスクが20%減少した(HR:0.80、95%CI:0.62~1.03)。・低線量CTのベネフィットは、5年目以降のスクリーニングも改善した。肺がん死亡リスクは58%減少(HR:0.42、95%CI:0.22~0.79)、全死亡リスクも32%減少した(HR:0.68、95%CI:0.49~0.94)。

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第21回 関節リウマチとMTXにまつわるお役立ちエビデンス集【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 関節リウマチの罹患率は人口の1%とも言われ、とくに女性の患者は男性の2~3倍と多く、いずれの年代でも発症しうる疾患です1)。関節リウマチ治療の第1選択薬は言わずと知れたメトトレキサート(MTX)で、関節破壊の進行を抑制するために重要かつ有名な薬剤です。今回はそのMTXに関連するエビデンスをあらためて紹介します。有効性についてMTXの有効性については、関節リウマチ患者732例においてMTX単独投与の効果をプラセボと比較したコクランのシステマティックレビュー2)など、すでに十分なエビデンスがあります。これは1997年に発表されたレビューの2014年改訂版で、レビューに含まれているのは1980〜90年代の試験です。以前の治療や併用薬としてNSAIDsや他の抗リウマチ薬を使用している場合もありますが、有効性については、ほとんどの主要評価項目で有意な改善を認めています。ACR50(圧痛関節数、膨張関節数、患者による疼痛評価、患者による全般活動性評価、などの評価で必須項目を含む50%以上の改善)を達成したのは100人当たりプラセボ8例、MTX23例で、健康関連QOLのNNT(Number Needed to Treat:必要治療数)=9、X線写真における関節破壊の進行評価のNNT=13と、MTXの有意な効果が示されています。一方で、3~12ヵ月の評価では、プラセボと比較して100人当たり9例に、多くの有害事象による中止が報告されています。葉酸との併用について葉酸またはフォリン酸(ロイコボリン)を摂取することで、MTXによる悪心、腹痛、肝機能異常などが低減し、口内炎も減る傾向にあることが示唆されています3)。こちらもコクランに掲載された、MTXと葉酸またはプラセボ併用を比較した6つの二重盲検ランダム化比較試験、計624例を含むシステマティックレビューです。葉酸またはフォリン酸併用群では、24~52週のフォローアップで、消化器系の副作用(悪心、嘔吐、腹痛)の絶対リスク減少率-9.0%、相対リスク減少率-26.0%、NNT=11と、プラセボ群よりも有意に減少しています。同じ期間の口内炎の発生については、絶対リスク減少率-6.2%、相対リスク減少率-27.8%で、統計的有意差はないものの減少傾向にありました。また、肝毒性(トランスアミナーゼ上昇)の発生率は、8〜52週間のフォローアップ期間において、絶対リスク減少率-16.0%、相対リスク減少率-76.9%、NNT=6と、葉酸を併用する多くのメリットが示されています。なお、葉酸併用によるMTXの効果の有意な減弱はありませんでした。関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン 2016年改訂版においても、MTXを継続している患者では、必要に応じて葉酸を併用することが推奨されています4)。投与間隔については、MTX服用の24~48時間後が一般的です。同ガイドラインによれば、そのベストな投与間隔について明確なエビデンスはないとされていますが、少なくともその時間を空ければMTXの効果に影響はないだろうとのことです。なお、ロイコボリンレスキュー療法の研究では、MTX服用後42~48時間を過ぎてしまうとMTXの毒性が発現しやすくなることが報告されています5)。感染症リスクについてMTXは免疫抑制作用を有する薬剤ですので、肺炎、発熱、口内炎など感染兆候に注意を払うことも大切です。2015年にLancetに掲載されたネットワークメタ解析で、慢性関節リウマチ患者において、MTX使用時と生物学的製剤使用時の重篤感染症(死亡例、入院例、静脈注射の抗菌薬使用例)発現リスクについて検討されています6)。結果としては、生物学的製剤はDMARDsに比べて重篤感染症リスクが約30%高く、とくにMTX使用歴がある患者および標準〜高用量の生物学的製剤使用患者ではリスクが高いという傾向にありました。年間1,000人当たりの重篤感染症発生人数は、DMARDs服用群で20例、標準量の生物学的製剤使用群で26例、高用量の生物学的薬剤使用群で37例、生物学的製剤との併用群で75例です。MTX使用歴がない患者では、感染症リスクの有意な増加はありませんでした。近年では多くの生物学的製剤が発売されているので、MTXとの併用時や易感染性疾患罹患時の感染兆候モニタリングは意識しておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 関節リウマチ2)Lopez-Olivo MA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;6:CD000957.3)Shea B, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013;5:CD000951.4)関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン 2016年改訂版5)Cohen IJ, et al. Pediatr Blood Cancer. 2014;61:7-10.6)Singh JA, et al. Lancet. 2015;386:258-265.

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心房細動アブレーションに対するエドキサバン継続 vs.ワルファリン継続(ELIMINATE-AF)【Dr.河田pick up】

 エドキサバンはFXa(活性化血液凝固第X因子)を選択的に阻害することにより、心房細動患者において脳梗塞を予防する。心房細動アブレーションを受ける患者に対するエドキサバンの継続療法に関しては、これまで試験が行われていない。 ELIMINATE-AF試験は、多国籍、多施設共同、オープンラベルの無作為化並行群間比較試験。カテーテルアブレーションを受ける心房細動患者における、ワルファリンと比較したエドキサバン(1日1回60mg、減量投与が必要な患者には30mg)の安全性と有効性を評価するために行われた。ドイツのStefan H. Hohnloser氏、チェコのJosef Kautzner氏らヨーロッパのグループによる、European Heart Journal誌オンライン版4月11日号への報告。プライマリーエンドポイントは全死亡、脳卒中、大出血イベント 患者は2:1の割合でエドキサバン群とワルファリン群に無作為に割り付けられた。プライマリーエンドポイントは、アブレーション終了から治療終了まで(90日)の、全死亡、脳卒中、国際血栓止血学会が定めた大出血の最初の発生までの期間とされた。ヨーロッパ、アジア、カナダの11ヵ国の58施設から全体で632例が組み入れられ、614例が無作為化された。553例が割り当てられた薬剤を投与され、アブレーションを受けた。そのうち177例は、無症候性の脳梗塞を評価するために頭部MRIを受けている。プロトコールを遵守して最終的な解析(パー・プロトコール解析)を受けたのは417例(エドキサバン316例、ワルファリン101例)であった。 アブレーション前の抗凝固療法は、ガイドラインに準じて21~28日間行われた。また、アブレーション前に経食道エコーが行われ心内血栓が見つかった場合、手技は中止された。内因性のXa因子の阻害を保つため、最後のエドキサバン投与からアブレーションまでの時間は最大で18時間とした。プライマリーエンドポイントの発生はエドキサバン群2.7%、ワルファリン群1.7% プライマリーエンドポイント(大出血のみ発生)は、エドキサバン群で0.3%(1例)、ワルファリン群で2.0%(2例)であった(ハザード比:0.16、95%信頼区間:0.02~1.73)。アブレーションを受けた患者において(アブレーション患者を含む修正intention-to-treat[ITT]解析集団)、プライマリーエンドポイントは、アブレーション開始から治療終了時までの間にエドキサバン群で2.7%(10例)、ワルファリン群で1.7%(3例)に発生した。虚血性脳梗塞、脳出血による脳梗塞が1例ずつ発生し、ともにエドキサバン群であった。微小脳梗塞はエドキサバン群で13.8%(16例)、ワルファリン群で9.6%(5例)に認められた(名目上のp=0.62)。 全期間を通しての大出血イベントはエドキサバン群(1日1回60mg)2.5%であり、これはRE-CIRCUIT試験におけるダビガトラン(1日2回150mg)での1.6%、とAXAFA試験におけるアピキサバン(1日2回5mg)での3.1%と同様であったとしている。 また、ワルファリン群とエドキサバン群の間で大出血に統計学的な有意差は認められなかったが、臨床経過中に認められた非大出血はエドキサバン群で多い傾向にあり、これらのほとんどが術後48時間以内に起こったものであった。エドキサバンとワルファリン、プライマリーエンドポイントで有意差は認められず 結論として筆者らは、心房細動アブレーションを受ける患者においてエドキサバンの継続はワルファリンの継続の代替となりうるとしている。また、これまでの研究結果と同様、DOAC投与群で術後のMRIで無症候性の微小脳梗塞が高頻度で認められていたことも重要であろう。

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オリゴ転移へのSABR、OSを1年以上延長/Lancet

 原発腫瘍のコントロールが良好で転移病巣が少数(1~5ヵ所)の患者に対し、体幹部定位放射線治療(SABR)は、全生存期間(OS)を有意に延長させることが示された。一方で、SABR治療関連死の発生は3/66例(4.5%)であった。英国・London Health Sciences CentreのDavid A. Palma氏らが、99例を対象に行った第II相の非盲検無作為化比較試験の結果で、Lancet誌オンライン版2019年4月11日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「第III相試験を行い、OSへの確固たるベネフィットが示されるのかを確認し、SABRの恩恵が得られる最大転移病巣数を明らかにする必要がある」と述べている。カナダ、オランダ、スコットランドなど10ヵ所の病院で試験 研究グループは2012年2月10日~2016年8月30日にかけて、カナダ、オランダ、スコットランド、オーストラリアの10ヵ所の病院を通じて、原発腫瘍のコントロールが良好で、転移が1~5ヵ所の少数転移患者99例を対象に試験を行った。被験者は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)スコアが0~1、余命が6ヵ月以上を適格とした。 転移数1~3 vs.4~5で層別化後、被験者を無作為に1対2に分け、一方には標準的緩和ケアを(対照群、33例)、もう一方には標準的ケア+SABRを全転移部位に対して行った(SABR群、66例)。無作為化はコンピュータ生成無作為化リストを用いて9群に割り付けを行った。患者および担当医ともに治療割り付けはマスキングされなかった。 主要エンドポイントは、OS。無作為化第II相スクリーニングデザインを用いて、両側検定を行い、α水準を0.20(p<0.20で肯定的試験を意味する)に設定した。OS中央値、SABR群41ヵ月、対照群は28ヵ月 被験者99例のうち途中で試験を中断したのは、対照群2例(6%)、SABR群2例(3%)だった。追跡期間中央値は、対照群25ヵ月(四分位範囲[IQR]:19~54)、SABR群26ヵ月(IQR:23~37)だった。 OS中央値は、対照群28ヵ月(95%信頼区間[CI]:19~33)に対し、SABR群41ヵ月(95%CI:26~未到達)だった(ハザード比[HR]:0.57、95%CI:0.3~1.10、p=0.090)。 Grade2以上の有害事象発現率は、対照群9%に対し、SABR群29%で、絶対増大値は20%(95%CI:5~34)だった(p=0.026)。 治療関連死は、SABR群4.5%(3例)に対し、対照群では発生が報告されなかった。

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境界性パーソナリティ障害に対する集団精神療法のメタ解析

 境界性パーソナリティ障害(BPD)治療ガイドラインでは、必須とはいかないまでも、患者ケアの重要な要素として精神療法を推奨している。米国・Rawson-Neal Psychiatric HospitalのStephanie P. B. McLaughlin氏らは、BPDに対する集団精神療法と通常治療(TAU)を比較したランダム化比較試験のメタ解析を行った。Psychotherapy誌オンライン版2019年3月14日号の報告。 グループおよび患者の特性、バイアス変数リスク、TAU比較条件の治療要素(精神療法が含まれるかどうかなど)に基づくアウトカムの違いを調査するため、モデレーター分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした研究は、24件(1,595例)であった。・集団精神療法は、BPD症状の軽減に大きな効果を示し(g=0.72、95%CI:0.41~1.04、p<0.001)、自殺念慮/自殺未遂行為に中程度の効果を示した(g=0.46、95%CI:0.22~0.71、p<0.001)。・両アウトカムともに不均一性が高く(それぞれ、I2:76%、70%)、治療ストラクチャ-とBPD症状、理論的手法と自殺念慮/自殺未遂行為の間に関連性が見いだされた。・また、グループの規模とBPD症状および自殺念慮/自殺未遂行為との間にも関連性が認められた。・副次的アウトカム(不安、うつ病、メンタルヘルス)に対する集団精神療法の効果は、小~中程度であった。 著者らは「不均一性についてはさらなる説明が必要であるとしながらも、BPDに対する集団精神療法は、TAUと比較し、より大幅な症状改善が期待できる」としている。■関連記事境界性パーソナリティ障害治療の現状境界性パーソナリティ障害の長期臨床経過に関するメタ解析境界性パーソナリティ障害発症、親子関係が影響

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完全磁気浮上遠心ポンプLVAD HeartMate 3 米国臨床試験最終報告(MOMENTUM 3 Trial)(解説:許俊鋭 氏)-1029

背景 2018年4月にNEJM誌に「Two-Year Outcomes with a Magnetically Levitated Cardiac Pump in Heart Failure」が掲載され、軸流ポンプLVAD(HeartMate II)に対する完全磁気浮上遠心ポンプLVAD(HeartMate 3)の2年の非劣性臨床試験(MOMENTUM 3)の結果が報告された。後遺症が残る脳卒中回避2年生存率(79.5% vs.60.2%、p<0.001)およびLVADポンプ機能不全に対する再手術(1.6% vs.17.0%、p<0.001)において、HeartMate 3群はHeartMate II群に比べて非劣性かつ優越性があることが示された。本論文はAbbott社から資金提供を受けているMOMENTUM 3臨床試験の最終分析結果報告である。方法 LVADの使用目的(心臓移植へのブリッジまたはDestination Therapy)に関係なく、進行性心不全患者をHeartMate 3またはHeartMate IIのいずれかの群に前向き無作為に割り付けた。複合主要評価項目は、後遺症が残る脳卒中回避2年生存率またはポンプ機能不全による再手術(LVAD交換または摘出)回避2年生存率であり、主な副次的評価項目は2年後までのポンプ交換頻度である。結果 1,028人の患者(HeartMate 3群:516人、HeartMate II群:512人)が登録され、主要評価項目達成はHeartMate II群332人(64.8%)、HeartMate 3群397人(76.9%)であり、HeartMate 3群で優位であった(p<0.001)。また副次的評価項目である2年後までのポンプ交換はHeartMate 3群12人(2.3%)、HeartMate II群57人(11.3%)であり、HeartMate 3群で少なかった(p<0.001)。さらにHeartMate 3群ではHeartMate II群よりも、すべての脳卒中・大出血・消化管出血の患者1人当たりの年間発生数が少なかった。結論 2年間の進行性心不全患者に対するLVAD治療では、HeartMate 3群ではHeartMate II群よりもポンプ交換の必要性が少ないことと関連して、後遺症が残る脳卒中またはポンプ機能不全による再手術(LVAD交換または摘出)回避生存率において優れていた。コメント 本論文の結果は、HeartMate 3群ではHeartMate II群に比較して、2年間で患者10人当たりポンプ血栓合併症2.2回、出血合併症6.8回(消化管出血3.6回)を回避できたことになり、その結果、HeartMate 3群の2年間の再入院期間も短かった。また、HeartMate 3群では出血性・虚血性脳卒中および後遺症を残す脳卒中の頻度も低く、さらに消化管出血を含む出血合併症頻度も低かった。しかしながら、ドライブライン感染、遠隔期右心不全は両群で合併頻度に差はなく、今後の解決すべき課題である。一方、HeartMate 3群では以前にねじれによる送血グラフト閉塞のためにポンプ流量の低下が見られたが、送血グラフトをコネクターに固定することでねじれを防止することが可能となった。 2015年にHeartMate 3が欧州でCE Markを取得し、ドイツでは速やかにHeartMate 3がHeartMate IIに取って代わり急速な普及を見た。米国におけるHeartMate 3の普及は欧州には遅れていたが、MOMENTUM 3臨床試験の進行とともにHeartMate 3の優位性が次々に報告され、2018年10月にHeartMate 3はFDA承認を取得した。J-MACS RegistryとINTERMACS Registryの比較で日本におけるHeartMate IIの臨床成績は米国より優れていると考えられるが、HeartMate 3の速やかな臨床導入により日本のLVAD治療成績がさらに向上するものと期待される。また、米国におけるDTの治療成績も向上しており、日本にも早期のDT臨床導入を推進すべきである。

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第16回 発熱の症例・全てのバイタルが異常。何を疑う?-3【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回の症例は、発熱を来した症例です。発熱のため受診される高齢者は少なくありませんが、なかには早期に治療を開始しないと生命にかかわる場合もあります。患者さんDの場合◎経過──3家族の到着後、医師・訪問看護師、施設の職員とあなたは、家族とよく相談して、近隣の救急病院に救急搬送することにしました。その晩、帰宅したあなたは、SIRSと敗血症について調べてみました。「サーズ、サーズっと。あら?SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome;重症急性呼吸器症候群)とは違うのね?」教科書を読むと、細菌毒素などにより様々なサイトカインや血管拡張物質が放出されて末梢血管抵抗が低下し、相対的に循環血液量が減少することで血圧が低下、臓器への低灌流や臓器障害を来すことが書かれていました。臓器への低灌流や臓器障害を来している場合は重症敗血症(severe sepsis)」と呼ばれ、適切な補液を行っても改善しない血圧低下があること、血圧を維持するためにドパミンやノルアドレナリンなどの昇圧薬を必要とする場合には「敗血症性ショック(septic shock)」といわれること、さらに循環動態を安定化させるための初期治療(Early Goal Directed Therapy; EGDT)について学びました。「すぐに点滴を始めたのは、このためだったのね」敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016)と新しい敗血症の定義つい最近、敗血症診療ガイドラインが新しくなったのをご存知ですか?新しいガイドラインでは敗血症の定義は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と変更されました。敗血症の病態について、「感染症による全身性炎症反応症候群」という考え方から、「感染症による臓器障害」に視点が移されたわけです(図2)。本文の「経過3」には「臓器への低灌流や臓器障害を来している場合は『重症敗血症』と呼れ・・・」とありますが、この以前の重症敗血症が今回の敗血症になりました。また、敗血症性ショックの診断基準は、「適切な輸液にもかかわらず血圧を維持するために循環作動薬を必要とし、『かつ血清乳酸値>2mmol/Lを認める』」となりました。そこで何か感じませんか?そうなんです、敗血症の定義からSIRSがなくなったんです。SIRSは体温・脈拍数・呼吸数・白血球数から診断できますね。新しい敗血症はバイタルサインからその徴候に気付くことができるのでしょうか・・・。敗血症の診断「感染症によって臓器障害が引き起こされた状態」が新しい敗血症の定義でしたね。そこで、どうしたら臓器障害がわかるんだろうという疑問が出てきます。臓器障害は「SOFA(sequential organ failure assessment)スコア」によって判断します(表4)。感染症があり、SOFAスコアが以前と比べて2点以上上昇していた場合に臓器障害があると判断して、敗血症と診断します。この表をみるとすぐに点数を付けるのは難しいな・・・と思いますよね。そこで、救急外来などではqSOFA(quick SOFA)を使用します(表5)。意識の変容・呼吸数(≧22回/分)・収縮期血圧(≦100mmHg)の3項目のうち2項目以上を満たすときに敗血症を疑います。ガイドラインが新しくなったといっても、やはりバイタルサインによって敗血症かどうか疑うことができますね。敗血症が疑われたら、その次にSOFAスコアを評価して、敗血症と診断するわけです。具体的な診断の流れを図に示します(図3)。スライドを拡大するスライドを拡大するEGDT(Early Goal Directed Therapy)についてEGDTは、中心静脈圧・平均動脈圧などを指標にしながら、補液・循環作動薬などを使用して、尿量・血中乳酸値などを早期に改善しようとする治療法ですが、近年の臨床試験ではEGDTを遵守しても有益性は見いだせなかったという結果が得られました。ただ、敗血症性ショックに対する初期治療の一つは補液であることにかわりはありません。時の流れでガイドラインが変わっても患者さんを診るときにバイタルサインが重要なことは変わっていないようですね。エピローグ救急搬送先の病院で細菌学的検査、抗菌薬の投与、およびドブタミン、ノルアドレナリンによる治療が行われました。敗血症性ショックでした。約3週間が経ち、退院後にあなたが訪問すると、その91歳の女性は以前と同じようにベッドの上に寝ていました。以前と同じように寝たきりの状態で、以前と同じように職員の介助で何とか食事をしていました。本人の家族(長男)に新しく処方された薬について説明する機会がありました。ベッドサイドで長男と話をしていると、普段無表情な本人が、長男が来ているところを見て少しニコッと微笑んだように見えました。五感を駆使して、患者さんの状態を感じとる今回のポイントは、敗血症とSIRSの概念を知り、急を要する発熱を見極めることができるようになることでした。それともう1つ、今回のあなたは五感を駆使して患者さんの状態を知ろうとしました。ぐったりしているところや呼吸の状態を"視て"、呼吸が速い様子(息づかい)を耳で"聴き"ながら、手や手首を"触れて"体温や脈の状態を確認しました(味覚と嗅覚が入っていないなんて言わないでくださいね)。緊急度を素早く察知する手段のひとつですから、バイタルサインと併せて患者さんを注意して観察するとよいと思います。

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EGFR陽性MET増幅NSCLCに対するオシメルチニブとsavolitinib併用(TATTON)/AACR2019

 MET増幅は、EGRF変異陽性進行NSCLCのEGFR-TKIの獲得耐性の1つとして注目されている。savolitinibは高い親和性を持つ経口MET-TKIとして開発中の薬剤である。進行NSCLCを対象にした第Ib相オープンラベル多施設共同試験TATTONの中間解析として、EGFR変異陽性MET増幅患者に対するオシメルチニブとsavolitinibの併用治療の結果米国がん研究会議年次集会(AACR2019)で報告された。 オシメルチニブとsavolitinib併用のコホートは2つ。コホート1では第1世代または第2世代EGFR-TKI治療での進行患者が、コホート2では第3世代EGFR-TKI治療での進行患者がそれぞれ登録された。対象患者にはオシメルチニブ80mg/日とsavolitinib600mg/日が投与された。[コホート1]・46例が登録され、患者の年齢中央値は59歳、女性67%、アジア人80%であった。・頻度の高い(20%以上)有害事象(AE)は、悪心、下痢、疲労、食欲減退28%、発熱であった。Grade3以上のAE発現は43%であった。・客観的奏効率(ORR)は52%(すべてPR)。奏効持続期間(DoR)は7.1ヵ月であった。[コホート2]・48例の患者が登録され、患者の年齢中央値は59歳、男性56%、アジア人77%であった。・頻度の高い(20%以上)AEは、悪心、嘔吐、下痢、疲労、食欲不振、発熱。Grade3以上のAE発現は23%であった。・ORR)は28%(すべてPR)。奏効持続期間(DoR)は9.7ヵ月であった。■参考AACR 2019. Abstract(CT032)AACR 2019. Abstract(CT033)■関連記事EGFR-TKI耐性のNSCLCにおけるオシメルチニブ+savolitinibの成績:TATTON/WCLC2017

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家族性アミロイドポリニューロパチー〔FAP: familial amyloid polyneuropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は、代表的な遺伝性全身性アミロイドーシスである1,2)。組織の細胞外に沈着したアミロイドは、コンゴレッド染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下でアップルグリーンの複屈折を生じる。電子顕微鏡で観察すると、直径8~15nmの枝分かれのない線維状の構造物として観察される。現在までに、36種類以上の蛋白質がヒトの体内でアミロイド沈着を形成する蛋白質として同定されている3)。FAPを生じるアミロイド前駆蛋白質として、トランスサイレチン(TTR)、ゲルソリン、アポリポ蛋白質A-Iが知られているが、大部分のFAP患者は、TTRの遺伝子変異によるため、以下はTTRを原因とするFAP(TTR-FAP)に関して概説する。近年、国際アミロイドーシス学会は、TTR-FAPに代わる病名として「遺伝性TTR(ATTRv)アミロイドーシス」の使用を推奨しているが3)、わが国ではFAPの病名が現在も使用される場合が多いため、本稿ではFAPの病名を用いて概説する。本疾患の原因分子であるTTRは、主に肝臓から産生され血中に分泌される血清蛋白質である。その他のTTR産生部位として、脳脈絡叢、眼の網膜色素上皮、膵臓ランゲルハンス島のα細胞が知られている。血中に分泌された本蛋白質は、127個のアミノ酸から構成されるが、豊富なβシート構造を持つことにより、アミロイド線維を形成しやすいと考えられている。TTR遺伝子には150種類以上の変異型が報告されており、その大部分がFAPの病原性変異として同定されてきた。TTRの30番目のアミノ酸であるバリンがメチオニンに変異するVal30Met型が、最も高頻度に認められる1,2)。生体内では、通常TTRは四量体として機能し、四量体の中心部には1分子のサイロキシン(T4)が強く結合し、T4の運搬を担っている。また、TTRはレチノール結合蛋白質との結合を介して、ビタミンAの輸送も担っている。■ 疫学以前はFAP ATTR Val30Metの大きな家系が、ポルトガル、スウェーデン、日本(熊本県と長野県)に限局して存在すると考えられていたが、近年、世界各国からFAP ATTR Val30Met患者の存在が確認されている1,2)。また、明確な家族歴がなく高齢発症のFAP が日本各地から報告されており4)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、糖尿病性ニューロパチー、手根管症候群、腰部脊柱管狭窄症などの非遺伝性末梢神経障害の鑑別疾患として本症を考えることが重要である。スウェーデンでは、FAP ATTR Val30Met遺伝子保因者の3~10%しか発症しないことが知られているが、わが国においても、TTR遺伝子に変異を持ちながら、終生FAPを発症しない症例も存在する。Val30Met以外の変異型TTRによるFAPもわが国から多く報告されている(図1)。わが国の疫学調査の結果では、国内の推定患者数は約600人であるが、的確に診断されていない症例が多く存在する可能性がある。画像を拡大する■ 病因TTRに遺伝子変異が生じると、TTR四量体が不安定化し、単量体へと解離することが、アミロイド形成過程に重要であると、in vitroの研究で示されている。しかし、アミロイドがなぜ特定の部位に沈着するのか、どのように細胞や臓器の機能を障害するのかは、明らかにされていない。アミロイド線維を形成するTTRの一部は断片化されており、アミロイド線維形成への関与が議論されている。■ 症状1)神経症状末梢神経障害は、軸索障害が主体で神経軸索が細胞体より最も遠い両下肢遠位部の症状が初発症状となる場合が多い。また、神経症状は一般に自律神経、感覚(温痛覚低下)、運動(両側末梢優位)の順で症状が出現することが多い。これは、アミロイド沈着により小径無髄線維から大径有髄線維の順に障害が進行するためと考えられている。病初期には、下肢末梢部である足首以下で、温痛覚の低下を認めるが触覚は正常である解離性感覚障害を認める場合が多い。温痛覚障害のため、足の火傷や怪我に患者本人が気付かない場合がある。筋萎縮、筋力低下など運動神経障害は、感覚障害より2~3年遅れて出現する場合が多いが、まれに運動神経障害が主体で感覚障害が軽い症例もある。進行期には、高度の末梢神経障害による四肢の感覚障害と筋力低下や呼吸筋麻痺などを呈する。アミロイド沈着による手根管症候群を呈する場合がある。とくに家族歴が明らかでない症例では、病初期にCIDP、糖尿病性ニューロパチー、腰部脊柱管狭窄症などと誤診されることが多く、注意が必要である。症例によっては、脳髄膜や脳血管のアミロイド沈着による意識障害や脳出血など中枢神経症候を呈する場合がある。2)消化器症状重度の交代性下痢便秘や嘔気などの消化管症状が出現する。末期には持続性の下痢となり、吸収障害や蛋白質の漏出も生じる。3)循環器系障害早期より自律神経障害による起立性低血圧や、アミロイド沈着による房室ブロック、洞不全症候群、心房細動などの不整脈が生じる。心筋へのアミロイド沈着により心不全を生じ、心室の拡張障害が収縮障害に先行すると考えられている。TTR変異型により心症候が主体で、末梢神経障害が目立たないタイプがある。4)眼症状変異型TTRは肝臓のみならず網膜からも産生されており、アミロイド沈着による硝子体混濁はFAP患者に多く認められる。硝子体混濁が本症の初発症状である症例もある。前眼部へのアミロイド沈着による緑内障を来し、進行すると失明の原因となる。また、涙液分泌低下によるドライアイも生じる。5)腎障害アミロイド沈着によるネフローゼ症候群や腎不全を呈するが、症例によりその程度は異なる。病初期には目立たない場合が多い。■ 分類TTR変異型により症候が異なる場合がある。アミロイドポリニューロパチー(末梢神経障害)が主体となるタイプ(Val30Metなど)、心アミロイドーシスにより不整脈や心不全が主体となるタイプ(Ser50Ile、Thr60Alaなど)、脳髄膜・眼アミロイドーシスにより一過性の意識障害や脳出血、白内障や緑内障が強く生じるタイプ(Ala25Thr、Tyr114Cysなど)がある。また、同じATTR Val30Metを持つFAP患者でも、ポルトガルでは若年発症(20~30代で発症)が多く、スウェーデンでは高齢発症(50歳以降)が多い。わが国でも、本疾患の集積地である熊本や長野のFAP患者は若年発症が多いが、他の地域では高齢発症で家族歴が確認できない症例が多く、70歳以降の発症も少なくない。■ 予後未治療の場合は、発症からの平均余命は若年発症のFAP ATTR Val30Metは約10~15年1)、高齢発症のFAP ATTR Val30Metは約7年4)である。進行期には、呼吸筋麻痺、重度の起立性低血圧、心不全、致死的な不整脈、ネフローゼ症候群、腎不全、蛋白漏出性胃腸症、重度の緑内障などを呈する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)本症の診断基準を表に示す。病初期に各治療法の効果が高いため、早期診断、早期治療が重要である。臨床症候や各種の臨床検査により本症が疑われる場合には、生検によりアミロイド沈着を検索すること、および専門施設に依頼し、免疫組織化学染色や質量分析法でTTRがアミロイドの構成成分であることを確認する必要がある(図2)。生検部位は、侵襲度の比較的低い消化管(胃、十二指腸、直腸)、腹壁脂肪、口唇の唾液腺、皮膚などが選択されるが、病初期にはアミロイド沈着が検出されない場合もある。本症の疑いが強い場合は、繰り返し複数部位からの生検を行うことが重要である。また、前述の部位からアミロイド沈着が確認できない場合は、障害臓器である末梢神経や心筋からの生検も考慮する必要がある。TTRがアミロイド原因蛋白質として同定された場合は、野生型TTRが非遺伝性に生じる老人性全身性アミロイドーシス(SSA)(野生型TTR[ATTRwt]アミロイドーシス)との鑑別のため、遺伝子検査や血液中TTRの質量分析によりTTR変異の解析を必ず行う(図3)。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPに対する治療は、近年、劇的に進歩している。長く実施されてきた肝移植療法に加えて、TTR四量体の安定化剤であるタファミジス(商品名: ビンダケル)が、国内でも2013年9月に希少疾病用医薬品として承認され、現在、本疾患に対し広く使用されている。また、核酸医薬によるTTR gene silencing療法の国際的な臨床試験が終了し、良好な結果が得られている。図4にFAPに対する治療法を研究中のものを含めて示した。画像を拡大する■ 肝移植療法本疾患の病原蛋白質である変異型TTRの95%以上が肝臓で産生されていることから、1990年にスウェーデンで本疾患に対する治療法として肝移植が初めて行われ、その有効性が示されてきた5)。FAP患者の血液中の変異型TTRは、正常肝が移植された後に速やかに検出感度以下まで低下する。しかし、肝移植で本疾患が完全に治癒するわけではなく、末梢神経障害を含めて、症候の大部分は移植後も残存する。また、発症から長期間経過し、病態が進行した症例や、高齢患者、BMIが低値(低栄養状態)であると、移植後の予後が不良であるため、肝移植が実施できない場合も少なくない。そして、症例によっては、肝移植後も症候(とくに心アミロイドーシス)が進行するケースもある。眼の網膜色素上皮細胞や脳脈絡叢からは、肝移植後も継続して変異型TTRが産生され続けているため、眼や脳・脊髄では、肝移植後も変異型TTRによるアミロイドが形成され、症候も悪化する症例が報告されている。他の治療法が開発されたことにより、本症に対する肝移植の実施数は減少傾向にある。■ TTR四量体安定化剤(タファミジス)TTR四量体が不安定となり単量体へと解離することが、TTRのアミロイド形成過程に重要な過程と考えられている。TTR四量体の安定化作用を持つ薬剤が、本症の新たな治療薬として研究開発されてきた。非ステロイド系抗炎症薬の1つであるジフルニサルなどにTTR四量体の安定化作用が確認され、本症の末梢神経障害に対する進行抑制効果が確認された6)。ジフルニサルには、非ステロイド系抗炎症薬が元来持つCOX阻害作用があり、腎障害などの副作用が出現する可能性が想定されたため、COX阻害作用を持たずにTTR四量体のより強い安定化作用を示す新規化合物としてタファミジスが新たに開発された。本薬剤の国際的な臨床治験が実施され、生体内でもTTR四量体を安定する作用が確認されるとともに、末梢神経障害の進行を抑制する効果が確認されている7)。また、心症候に対する効果も報告された8)。わが国では2013年9月に本症による末梢神経障害の進行抑制目的で承認されている。■ 核酸医薬(TTR gene silencing療法)9, 10)Small interfering RNA(siRNA)9) やアンチセンスオリゴ(ASO)10) を用いて、肝臓におけるTTRの発現抑制を目的としたgene silencing療法の開発が行われ、強いTTR発現抑制効果と良好な治療効果が確認されている9, 10)。これらのgene silencing療法では、変異型TTRに加えて、野生型TTRの発現抑制も標的としている。これらの治療法は、今後、本疾患に対する標準的な治療法となることが期待されている。■ その他の研究段階の治療法前述のごとく、肝移植療法の実施やTTR四量体安定化剤の臨床応用、gene silencing療法によるTTR発現抑制法の開発など、本疾患に対する治療法は近年急激に発展しているが、いずれもアミロイド原因蛋白質であるTTRの発現抑制および安定化を標的としており、沈着したアミロイドを除去する治療法は確立していない。さらなる治療法の改善を目指して、図4に示した方法をはじめとした多くの治療法の開発が精力的に行われている。■ 対症療法本症では、心伝導障害の進行は必発であるため、I度房室ブロックの段階でペースメーカーの植え込みを考慮する場合がある。致死的な不整脈が発生する場合には、植込み型除細動器を積極的に検討する必要がある。起立性低血圧に対して、弾性ストッキングや腹帯の使用を考慮する。手根管症候群に対しては、手術療法を考慮する。眼アミロイドーシスによる白内障や緑内障に対しても手術療法が必要となる。そのほかにも、自律神経症状や消化管症状、心不全などに対して内服薬による対症療法を試みるが、十分な効果が得られない場合が少なくない。4 今後の展望肝移植療法がFAPに対して実施され始めて28年以上が経過し、その有効性とともに治療法としての限界や関連する問題点が明らかになってきた。TTR四量体の安定化剤が臨床応用され、広く使用されるにつれて、本症に対する肝移植実施数は減少傾向にある。また、肝臓でのTTR発現抑制を目的とした核酸医薬によるgene silencing療法の臨床治験で良好な結果が得られ、わが国でも承認が待ち望まれる。これらの治療法の長期的な効果に関しては、まだ不明な点が多く残されているため、長期予後に関する調査が必要である。さらに、すでに組織に沈着したアミロイド線維を除去できる根治療法の研究開発が必要である。5 主たる診療科脳神経内科、循環器内科、眼科、移植外科、消化器内科、腎臓内科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報家族性アミロイドポリニューロパチーの診療ガイドライン(日本神経学会)(医療従事者向け診療情報)難病情報センター:全身性アミロイドーシス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)熊本大学 大学院生命科学研究部 脳神経内科学分野(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)熊本大学 医学部附属病院 アミロイドーシス診療センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)信州大学 医学部第3内科 アミロイドーシス診断支援サービス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews(Pub Med)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)GeneReviews(日本語版)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)FAP WTR(FAPに対する肝移植に関する国際的レジストリ)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)THAOS(TTRアミロイドーシスの自然経過に関する国際的調査)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)The Registry of Mutations of Amyloid Proteins(TTR変異の国際的レジストリ)(医療従事者向けの研究情報)OMIM(医療従事者向けの診療・研究のレビュー情報)日本アミロイドーシス学会(医療従事者向けの研究情報)国際アミロイドーシス学会(ISA)(医療従事者向けの研究情報)厚生労働省 難治性疾患政策研究事業「アミロイドーシスに関する調査研究」班(医療従事者向けの研究情報)患者会情報道しるべの会 second step あゆみ ブログ(患者のブログ)1)Ando Y, et al. Arch Neurol. 2005;62:1057-1062.2)Ueda M, et al. Transl Neurodegener. 2014;3:19.3)Benson MD, et al. Amyloid. 2019 [Epub ahead of print]4)Koike H, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012;83:152-158.5)Yamashita T, et al. Neurology. 2012;78:637-643.6)Berk JL, et al. JAMA. 2013;310:2658-2667.7)Coelho T, et al. Neurology. 2012;79:785-982.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med, 2018;379:1007-1016.9)Adams D, et al. N Engl J Med. 2018;379:11-21.10)Benson MD, et al. N Engl J Med. 2018;379:22-31.公開履歴初回2013年08月08日更新2019年04月23日

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高血圧治療ガイドライン2019で降圧目標の変更は?

 本邦における高血圧有病者は約4,300万人と推計される。このうち、治療によって良好なコントロールが得られているのは30%以下。残りの70%は治療中・未治療含め血圧140/90mmg以上のコントロール不良の状態となっている。2014年以来5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」では、一般成人の降圧目標値が引き下げられ、より早期からの非薬物治療を主体とした介入を推奨する内容となっている。 4月25日の「高血圧治療ガイドライン2019」発表を前に、日本高血圧学会主催の記者発表が4月19日に行われ、平和 伸仁氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が改訂点やその作成経過について解説した。家庭血圧 vs.診察室血圧、厳格治療 vs.通常治療などCQ方式で推奨度を明記 高血圧治療ガイドライン2019では、初めてClinical Question(CQ)方式、Systematic Review(SR)方式が採用され、エビデンスに基づく17のCQが作成された。また、エビデンスが十分ではないが、医療者が実臨床で疑問を持つ課題として9のQ(クエスチョン)を設定。コンセンサスレベルでの推奨が解説されている。 作成されたCQは、「成人の本態性高血圧患者において、家庭血圧を指標とした降圧治療は、診察室血圧を指標とした治療に比べ、推奨できるか?(CQ1)」、「降圧治療において、厳格治療は通常治療と比較して心血管イベントおよび死亡を改善するか?(CQ3)」、「高血圧患者における減塩目標6g/日未満は推奨されるか?(CQ4)」など。推奨の強さが3段階、エビデンスの強さが4段階でそれぞれ評価されている。 Qについては、2021年以降製造・輸出入が禁止される水銀血圧計に代わって何を推奨するか(Q1)、家庭血圧はいつ/何回/何日間の測定を推奨するか(Q2)などの項目が設けられた。基準値は変更なし、ただし120/80mmHg以上は定期的な再評価と早期介入を推奨 高血圧治療ガイドライン2019での高血圧の基準値は、2014年版と同じく140/90mmHg以上。一方で、正常域血圧の名称と拡張期血圧の範囲が、一部変更された:・至適血圧:120/80mmHg未満→正常血圧:120/80mmHg未満・正常血圧:120~129/80~84mmHg→正常高値血圧:120~129/80mmHg未満・正常高値血圧:130~139/85~89mmHg→高値血圧:130~139/80~89mmHg 背景には、120~139/80~89mmHgでは生涯のうちに高血圧へ移行する確率が高く、120/80mmHg未満と比較して脳心血管リスクが高いというデータがある。そのため、高血圧治療ガイドライン2019では基準値以下である高値血圧あるいは正常高値血圧の段階から、早期介入が推奨されている。2014年版では、I度高血圧以上のみ年齢や合併症の有無によって層別化されていた脳心血管病リスクが、高値血圧についても低~高リスクに分類された(表3-2)。また、高血圧管理計画は、高値血圧や正常高値血圧についてもフローチャートの形で整理され、初診時の血圧レベルに応じた再評価時期、治療法選択の考え方が示されている(図3-1)。なぜ高血圧治療ガイドライン2019で降圧目標が10mmHgずつ引き下げられたか 合併症のない75歳未満の成人および脳血管障害患者、冠動脈疾患患者については、高血圧治療ガイドライン2019では130/80mmHg未満、75歳以上の高齢者については140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられた。この背景には、日本人対象のJATOS、VALISH、HOMED-BPなどを含む介入試験のメタ解析結果(CQ3)と、EPOCH-JAPANや久山町研究などのコホート研究結果があるという。 厳格治療群と通常治療群を比較したRCTのメタ解析では、厳格治療群で複合心血管イベントおよび脳卒中イベントリスクが有意に低く、130/80mmHgを目標とする厳格治療のメリットが示された。またEPOCH-JAPANでは、120/80mmHg未満と比較して血圧レベルが上昇するにつれ脳心血管死亡リスクが高まることが示されている。 高血圧治療ガイドライン2019では、高齢者は130 mmHg未満への降圧による腎障害などに注意を要するため、140/90mmHg未満とされたが、「忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を目指す」とされている。高血圧治療ガイドライン2019で従来より厳格な薬物治療が求められる患者とは? とはいえ、「この目標値は、すべての患者における降圧薬による降圧目標ということではない」と平和氏は重ねて強調。初診時あるいは降圧薬治療中で130/80mmHg台、低・中等リスクの患者では、生活習慣修正の開始・強化が推奨されている。脳心血管病や糖尿病などの合併症のある高リスク患者でのみ、「降圧薬治療の開始/強化を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す」とされた。 2014年版と比較して、高血圧治療ガイドライン2019で生活習慣修正の上で薬物による降圧強化が新たに推奨された病態としては、下記が挙げられている:◇130~139/80~89mmHgで、以下のいずれか・75歳未満の高リスク患者※・脳血管障害患者(血管狭窄なし)・冠動脈疾患患者※高リスク患者の判定: ・脳心血管病既往 ・非弁膜症性心房細動 ・糖尿病 ・蛋白尿陽性のCKD ・65歳以上/男性/脂質異常症/喫煙の4項目のうち、3項目以上がある ・上記4項目のうちいずれかがあり、血圧160/100mmHg以上 ・血圧180/110mmHg以上◇75歳以上で、収縮期血圧140~149mmHg

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消化管がんの2次予防にビタミンD補充は有効か/JAMA

 消化管がんの2次予防において、ビタミンD補充はプラセボと比較して、5年無再発生存率を改善しないことが、東京慈恵会医科大学の浦島 充佳氏らが実施したAMATERASU試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月9日号に掲載された。消化管がんの2次予防では、ビタミンD補充の有用性を示唆する観察研究の報告があり、無作為化試験の実施が求められていた。術後ビタミンD3補充の有用性を評価する日本の無作為化試験 本研究は、消化管がんにおける術後ビタミンD3補充療法の有用性の評価を目的に、単施設(国際医療福祉大学病院)で行われた二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(国際医療福祉大学病院と東京慈恵会医科大学の助成による)。 対象は、年齢30~90歳、Stage I~IIIの消化管がん(食道から直腸まで)の患者であった。被験者は、ビタミンDカプセル(2,000IU/日)またはプラセボを経口投与する群に、3対2の割合で無作為に割り付けられた。投与は、術後の初回外来受診時(術後2~4週)に開始され、試験終了まで継続された。 主要評価項目は、無再発生存期間(割り付けからがんの再発または全死因死亡までの期間)とした。また、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)値で3群(<20ng/mL、20~40ng/mL、>40ng/mL)に分けてサブグループ解析を行った。 患者登録は2010年1月~2016年4月に行われ、フォローアップは2018年2月に終了した。417例が登録され、ビタミンD群に251例、プラセボ群には166例が割り付けられた。5年無再発生存率:77% vs.69%、年齢で補正すると有意に良好 患者はすべて日本人であった。フォローアップ率は99.8%で、フォローアップ期間中央値は3.5年(四分位範囲[IQR]:2.3~5.3)、最長7.6年であった。ベースラインの全体の年齢中央値は66歳で、34%が女性であった。がんの部位は、食道が9.6%、胃が41.7%、小腸が0.5%、大腸が48.2%で、StageはIが44%、IIが26%、IIIは30%だった。 再発または死亡は、ビタミンD群が50例(20%)、プラセボ群は43例(26%)で発生し、死亡はそれぞれ37例(15%)、25例(15%)だった。 5年無再発生存率は、ビタミンD群が77%、プラセボ群は69%であり、両群に有意な差は認めなかった(再発または死亡のハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.50~1.14、p=0.18)。また、5年全生存率は、それぞれ82%、81%であり、有意差はなかった(死亡のHR:0.95、0.57~1.57、p=0.83)。 サブグループ解析では、ベースラインの25(OH)D値が20~40ng/mLの集団において、5年無再発生存率がプラセボ群に比べビタミンD群で有意に優れた(85% vs.71%、再発または死亡のHR:0.46、95%CI:0.24~0.86、p=0.02、交互作用のp=0.04)。 また、ベースラインの年齢中央値がビタミンD群で高かった(67歳vs.64歳)ため、事後解析として年齢の四分位でHRを補正したところ、再発または死亡の累積ハザードが、ビタミンD群で有意に良好だった(補正HR:0.66、95%CI:0.43~0.99、p=0.048)。 骨折が、ビタミンD群3例(1.3%)、プラセボ群5例(3.4%)で、尿路結石が、ビタミンD群2例(0.9%)で発現した。また、入院を要した有害事象はビタミンD群19例(8.4%)、プラセボ群9例(6.1%)で、原発がんの部位以外の臓器に新たに発現したがんは、それぞれ15例(6.6%)、8例(5.4%)で認められた。 著者は、「ビタミンD補充は、ベースライン25(OH)D値20~40ng/mLの集団で有効であったが、これは探索的な検討であるため解釈には注意を要する」と指摘し、「生存に関して、至適な25(OH)D値の範囲はがん種によって異なる可能性がある。また、2,000IU/日という用量は、低25(OH)D値のサブグループでは、ビタミンD値を十分に上昇させるには不十分だった可能性もある」と考察している。

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試験中止の認知症薬、BACE-1阻害薬による結果の詳細/NEJM

 前駆期アルツハイマー病患者を対象に、アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1(BACE-1)阻害薬verubecestatの有用性を評価した国際的な臨床試験の結果が、米国・MerckのMichael F. Egan氏らにより発表された。verubecestatは、健康成人およびアルツハイマー病患者の脳脊髄液中のアミロイドβ(Aβ)を60%以上低下させ、BACE-2(生理機能は不明)の阻害作用も有するという。中間解析の結果、プラセボと比較して認知症の臨床的評価が改善せず、アルツハイマー病による認知症への進行例の割合が高く、有害事象の発現率も高かった。そのため、データ安全性監視委員会の勧告により、本試験は無効中止となった。NEJM誌2019年4月11日号掲載の報告。2種の用量とプラセボを比較、22ヵ国238施設の無作為化試験 本研究は、2013年11月~2018年4月の期間に、22ヵ国238施設で実施された二重盲検プラセボ対照並行群間無作為化試験であり、第1部(104週)および第2部(延長期)で構成された(Merck Sharp & Dohmeの助成による)。 対象は、年齢50~85歳、認知症の基準は満たさないものの、1年以上にわたる記憶力の低下を自覚しており、脳アミロイド値の上昇がみられる患者であった。被験者は、verubecestat 12mg/日(12mg群)、同40mg/日(40mg群)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、ベースラインから104週時までの臨床認知症評価スケール(CDR-SB)のスコア(0~18点、点数が高いほど認知機能と日常生活機能が不良であることを示す)の変化とした。 日本人患者を含む1,454例が登録され、12mg群に485例、40mg群に484例、プラセボ群には485例が割り付けられた。704例(12mg群234例、40mg群231例、プラセボ群239例)が104週の治療を終了し、593例が延長期に登録された時点で、無効中止となった(2018年2月)。CDR-SBスコアの変化、高用量群で有意に不良 ベースラインの平均年齢は、12mg群71.7歳、40mg群71.0歳、プラセボ群71.6歳で、女性がそれぞれ47.4%、50.4%、44.0%であった。全体の69%がAPOE4保因者で、46%がアルツハイマー病の治療薬を併用していた。 CDR-SBスコアのベースラインから104週時までの推定平均変化量は、12mg群1.65、40mg群2.02、プラセボ群1.58であった(12mg群とプラセボ群との比較のp=0.67、40mg群とプラセボ群との比較のp=0.01)。したがって、高用量群のアウトカムはプラセボ群に比べ、有意に不良であることが示唆された。 アルツハイマー病による認知症へと進行した患者の推定割合は、100人年当たり12mg群24.5、40mg群25.5、プラセボ群19.3(12mg群のプラセボ群に対するハザード比は1.30[97.51%信頼区間:1.01~1.68]、40mg群のプラセボ群に対するハザード比は1.38[同:1.07~1.79]、多重比較の補正なし)であり、プラセボ群が有意に良好だった。 有害事象の頻度は、verubecestat群(12mg群91.3%、40mg群92.1%)がプラセボ群(87.0%)に比べ高かった。重篤な有害事象の頻度は、それぞれ25.7%、20.9%、19.8%であり、3例、1例、3例が死亡した。 verubecestat群で多い有害事象として、皮疹・皮膚炎・蕁麻疹(12mg群19.9%、40mg群20.9%、プラセボ群12.8%)、睡眠障害(7.9%、9.1%、4.5%)、体重減少(5.6%、6.6%、2.1%)、咳嗽(5.8%、6.2%、3.1%)、毛髪変色(2.5%、5.0%、0.0%)が認められた。転倒・負傷(25.7%、25.4%、20.7%)および自殺念慮(6.8%、9.3%、6.4%)も、verubecestat群で多かったが有意差はなかった。 著者は、「より早期Stageの患者のほうが、BACE-1の阻害への感受性が高い可能性がある。また、verubecestatの作用はBACE-2の阻害に起因する可能性もある」としている。

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落雷によるリヒテンベルク図形【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第137回

落雷によるリヒテンベルク図形いらすとやより使用救急のドクターはおそらくご存じであろう、“リヒテンベルク図形”。落雷の際、皮膚に現れる所見として重要です。物理学的にはリヒテンベルク図形と呼びますが、医学論文の世界では“電紋”と呼ぶのが一般的です。 Cherington M, et al.Lichtenberg figures and lightning: case reports and review of the literature.Cutis. 2007;80:141-143.これは、電紋(リヒテンベルク図形)がどのようにできるのかを考察した論文です。まず、リヒテンベルク図形(Lichtenberg figure)がどういうものか知ってもらう必要があります。写真を見てもらうとわかりますが、稲妻が樹枝状に這うように枝分かれした模様のことを指します。写真. リヒテンブルク図形(Wikipediaより)これは、1777年ドイツの物理学者、ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルクが発見したもので、対象物質の電子が一点に向かって移動する軌跡が可視化されたものと考えられています。電流により心停止となることも珍しくありませんが、皮膚表面では全身のさまざまな部位で火花放電(沿面放電)が起きます。紹介した論文によれば、落雷の場合は電子が表皮に向かって移動し、皮膚がキャンバスのように作用してリヒテンベルク図形を形成すると考えられています。この図形には、通常疼痛はなく、病理学的には血管透過性が亢進して血液が血管外に漏出した所見が得られます。つまり、熱傷とは異なる所見です。ちなみに電紋は、電流の流れた方向の推測に役立ちます。基本的に電流は、枝分かれする方向に流れるためです。

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HIVのPrEP法、性感染症の増加と関連/JAMA

 HIV曝露前予防投与(preexposure prophylaxis:PrEP)法を受けている同性愛/両性愛の男性において、細菌性の性感染症(sexually transmitted infections:STI)が一部で非常に多く認められ、PrEP法がSTI発生増加と関連することが明らかにされた。オーストラリア・Burnet InstituteのMichael W. Traeger氏らが、PrEP法開始後のSTI発生率の変化を検討する目的で実施した多施設共同非盲検介入試験「The Pre-exposure Prophylaxis Expanded(PrEPX)試験」の結果で、著者は「PrEP法を受けている同性愛/両性愛の男性に対する頻繁なSTI検査の重要性が浮き彫りとなった」とまとめている。これまでに、同性愛/両性愛の男性において、PrEP法開始後にSTIsが増加することは新たなエビデンスとして示されていたが、PrEP法開始前のSTI発生のデータは限定的であった。JAMA誌2019年4月9日号掲載の報告。同性愛/両性愛の男性で、PrEP法開始前後のSTI発生率を評価 PrEPX試験は、Australian Collaboration for Coordinated Enhanced Sentinel Surveillance of Blood- Borne Viruses and Sexually Transmitted Infections(ACCESS)プロジェクトの一環で実施された。2016年7月26日〜2018年4月1日に、オーストラリア・ビクトリア州で登録されたHIV高リスク者4,275例のうち、ACCESSクリニック5施設(プライマリケア3施設、性の健康クリニック1施設、地域のHIV迅速検査サービス施設1施設)で登録され、追跡調査のため1回以上の診察を受け、2018年4月30日までモニタリングされた2,981例について解析した。参加者は、登録後PrEP法としてテノホビルおよびエムトリシタビン1日1回経口投与と、年4回のHIV・STI検査と臨床的モニタリングを受けた。 主要評価項目は、クラミジア、淋病、梅毒の発生で、STI診断の行動リスク因子を示す発生率とハザード比を算出した。また、登録前の検査データがある参加者1,378例において、検査頻度を補正した発生率比(IRR)を求め、登録1年前から追跡期間中のSTI発生の変化を評価した。追跡期間中に約半数でSTIが発生、PrEP開始前に比べSTI発生率が増加 2,981例(年齢中央値34歳[四分位範囲:28~42])のうち、98.5%が同性愛/両性愛の男性で、29%が登録前にPrEP法を受けていた。89例(3%)が同意撤回のため除外となり、2,892例(97.0%)が最終追跡調査に登録された。 平均追跡調査期間1.1年(3,185.0人年)において、1,427例(48%)に2,928件のSTI(クラミジア1,434件、淋病1,242件、梅毒252例)が発生した。STI発生頻度は91.9/100人年で、全STIのうち2,237件(76%)を736例(25%)が占めていた。 完全なデータがある2,058例を対象とした多変量解析の結果、STIリスクの上昇は「年齢が若い」「パートナー多数」ならびに「集団セックス」と関連することが認められた。コンドームの使用との関連は認められなかった。 登録前の検査データのある参加者1,378例において、STIの発生頻度は登録前69.5/100人年から追跡期間中に98.4/100人年へ増加した(IRR:1.41、95%信頼区間[CI]:1.29~1.56)。検査頻度を補正後、登録1年前から最終追跡までの発生率は、全STI(補正後IRR:1.12、95%CI:1.02~1.23)およびクラミジア(補正後IRR:1.17、95%CI:1.04~1.33)で有意に増加した。

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米国脳神経外科学会で外傷性脳損傷に対する再生細胞薬SB623の効果を発表/サンバイオ

 サンバイオ株式会社およびその子会社であるSanBio, Inc.は、2019年4月17日、再生細胞薬SB623の外傷性脳損傷を対象にした日米グローバル第II相試験(STEMTRA)の有効性および安全性に関する詳細結果を、米国脳神経外科学会(American Association of Neurological Surgeons)の年次総会で発表したことを明らかにした。24週時点の Fugl-Meyer Motor Scale(FMMS)のベースラインからの改善量が、SB623投与群8.7点、コントロール群2.4点となり主要評価項目を達成した。 米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)によると、米国において外傷性脳損傷(TBI)による障害を持つ患者数は約530万人おり、毎年28万人以上の新規患者が慢性的な障害に苦しんでいる。また、TBIによる障害は、一般的に長期化するとされている。 同試験は、SB623投与群46例、コントロール群15例の合計61例で行われ、主要評価項目はFugl-Meyer Motor Scale(FMMS)のベースラインからの改善量としている。運動機能障害の変化を測定するFMMSにおいて、10点以上の改善は外傷性脳損傷における臨床的に意味のある改善量とされているなか、10点以上達成はSB623投与群18例(39.1%)に対し、コントロール群は1例(6.7%)と、SB623投与群で統計学的な有意差を認めた(p=0.044)。 新たな安全性の懸念は認められなかった。最も多かった有害事象は頭痛で、術後7日までにSB623投与群の34.4%に発生したが、SB623投与群とコントロール群で、有害事象発生率の統計学的な有意差はなかった(p=0.25)。 同社は、外傷性脳損傷プログラム第III相臨床試験を2020年1月期末までに開始することを計画しており、日本においては、国内の再生医療等製品に対する条件及び期限付承認制度を活用し、2020年1月期(2019年2月~2020年1月)中に、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指しているとしている。

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5α還元酵素阻害薬で糖尿病の発症リスク増大?/BMJ

 5α還元酵素阻害薬(デュタステリドまたはフィナステリド)の投与を受ける良性前立腺肥大症患者は、タムスロシンの投与を受ける患者と比較して2型糖尿病の新規発症リスクが上昇することが示された。デュタステリドとフィナステリドとの間で有意差はなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLi Wei氏らが、5α還元酵素阻害薬投与による2型糖尿病の新規発症を検証した住民ベースのコホート試験の結果で、「これらの薬剤を開始する男性で、とくに2型糖尿病のリスク因子を有する男性では、モニタリングが必要になるだろう」とまとめている。最近の短期投与試験で、デュタステリドがインスリン抵抗性や脂肪肝を引き起こすことが示され、デュタステリドを日常的に服用している男性は他の治療薬を用いている男性と比較し、2型糖尿病のリスクが増加する可能性が指摘されていた。BMJ誌2019年4月10日号掲載の報告。デュタステリド群、フィナステリド群、タムスロシン群で2型糖尿病の新規発症率を解析 研究グループは、英国の大規模臨床データベース(Clinical Practice Research Datalink:CPRD 2003~14年)と台湾の医療保険請求に基づく研究用データベース(Taiwanese National Health Insurance Research Database:NHIRD 2002~12年)を用いて、前立腺肥大症の薬物療法として5α還元酵素阻害薬の投与を受ける患者における2型糖尿病の新規発症率を調べた。 CPRDでは、デュタステリド群8,231例、フィナステリド群3万774例、タムスロシン群1万6,270例が特定され、傾向スコアマッチング(デュタステリド対フィナステリドまたはタムスロシンを2対1)により規定したコホートは、それぞれ2,090例、3,445例、4,018例であった。NHIRDでは、デュタステリド群1,251例、フィナステリド群4,194例、タムスロシン群8万6,263例が特定され、傾向スコアマッチング後のコホートは、1,251例、2,445例、2,502例であった。 2型糖尿病の発生タイプを、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。デュタステリド、フィナステリドで2型糖尿病の発症リスクが約30%上昇 CPRDでは、追跡期間中央値5.2年(SD 3.1年)で、2型糖尿病の新規発症は2,081例確認された(デュタステリド群368例、フィナステリド群1,207例、タムスロシン群506例)。1万人年当たりの発症頻度は、デュタステリド群76.2(95%信頼区間[CI]:68.4~84.0)、フィナステリド群76.6(95%CI:72.3~80.9)、タムスロシン群60.3(95%CI:55.1~65.5)であった。タムスロシン群と比較し、デュタステリド群(補正後ハザード比[HR]:1.32、95%CI:1.08~1.61)およびフィナステリド群(1.26、1.10~1.45)は、2型糖尿病リスクの中程度の増大が確認された。 NHIRDの結果も、CPRDの結果と一致していた(タムスロシン群と比較したデュタステリド群の補正後HR:1.34[95%CI:1.17~1.54]、同フィナステリド群の補正後HR:1.49[1.38~1.61])。 傾向スコアマッチング解析でも、同様の結果が示された。

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長時間透析の有用性は確認できず:ACTIVE Dialysis延長観察/国際腎臓学会

 血液透析例の予後改善の方策として、透析時間延長の有用性が唱えられている。しかし近年報告されたランダム化試験では、延長による生命予後改善の報告がある一方1)、増悪の報告もある2)。 前者は施設での短時間透析の回数を増やす有用性を検討しており、後者は自宅での夜間透析の回数を増やしていた。いずれも回数増加を介した透析時間の延長を試みていた。では透析を回数ではなく、時間そのものを目安に延長した場合、血液透析例の予後はどうなるだろうか―。この問いに答えるべく、Brendan Smyth氏(オーストラリア・シドニー大学)は、ACTIVE Dialysis試験の延長観察データを解析した。しかし観察研究という限界もあり、長時間透析の有用性は確認できなかった。4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019のLate Breaking Sessionにて報告された。≧24時間/週の「長時間」透析と≦18時間/週の「標準」透析の比較 ACTIVE Dialysis試験は元来、長時間透析によるQOLへの影響を検討したランダム化試験である。血液透析(施設、自宅を問わず)を施行中の200例が、透析時間12~15時間(上限18時間)/週の「標準」透析群と、≧24時間/週の「長時間」透析群にランダム化され、12ヵ月間追跡された。両群とも、1週間当たりの透析回数や毎回の透析時間は、参加者が自由に設定できた。 今回報告されたのは、上記の12ヵ月間の「長時間」透析によるQOLへの影響について追跡終了後、さらに4年間観察した結果である。 当初の12ヵ月間の追跡終了時、試験に残っていたのは185例だった。平均年齢は52.1歳。透析導入の理由は、糸球体腎炎が41.0%で最も多く、次いで糖尿病性腎症の27.0%、高血圧性腎硬化症の11.0%が続いた。観察期間の大半で「長時間」透析と「標準」透析に差はなくなり、生命予後にも有意差なし それら185例をさらに4年間観察したデータを解析したが、介入試験終了後の観察研究となったため、「長時間」透析群における週当たりの透析時間は維持されず短縮。そのため、観察1年後以降は「標準」透析群との差は消失していた。いずれの群も、週の透析時間中央値は12時間であり、観察終了時に「長時間」透析群で≧24時間/週の透析を受けていたのは5%のみだった。 その結果、5年生存率は両群とも80%。「標準」透析群に対する「長時間」透析群の死亡ハザード比(HR)は0.91(95%信頼区間[CI]:0.48~1.72)で、有意差は認められなかった。「長時間」透析の有用性が否定されたわけではない Smyth氏はそこで、本稿の冒頭にある2試験(「頻回[=長時間]」透析vs.「通常」透析)と今回の結果を併せてメタ解析を行った。すると「長時間」透析では「通常」透析に比べ、死亡HRが0.84となったが、95%信頼区間は「0.57~1.23」で、有意差とはならなかった。しかし試験間のばらつきの指標であるI2は79.6%ときわめて高く、同氏は「このメタ解析をもとに、「長時間」透析の有用性を否定するのは適切ではない」と注意を促した。

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