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SGLT2阻害薬は糖尿病薬から心不全治療薬に進化した(解説:絹川弘一郎氏)-1125

 ESC2019にはPARAGON-HF目当てで参加を決めていたが、直前になってDAPA-HFの結果が同じ日に発表されることとなり、パリまでの旅費もむしろ安いくらいの気持ちになった。もう少し発表まで時間がかかると思っていたのでESCでの発表は若干驚きであったが、プレスリリースで聞こえてきたprimary endpoint達成ということ自体は想定内であったので、焦点は非糖尿病患者での振る舞い一点といってもよかった。 なぜ、HFrEFに有効であることに驚きがなかったか、それはDECLAREのACC.19で発表された2つのサブ解析による。1つが陳旧性心筋梗塞の有無による層別化、もう1つがHFrEF/HF w/o known EF/no history of HFの3群間の比較である。ともに心血管死亡と心不全再入院というDECLAREのco-primary endpointに対する解析である。陳旧性心筋梗塞を有する群で明らかに早期からイベント抑制効果が認められ、EMPA-REG OUTCOMEやCANVASで心血管疾患の既往を有する患者で知られてきたSGLT2阻害薬の心不全予防効果が投与早期から現れるということは、言い換えると大半が虚血性心疾患であり、そしてそれは陳旧性心筋梗塞の患者であるということである。 心筋梗塞からHFrEFへ至る遠心性リモデリングは以前から研究された心不全モデルであり、β遮断薬やRAS阻害薬、MRAの有効性の根拠を与えるものである。そして、それはもう1つのサブ解析でHFrEFの患者だけ取り出すとより明確な形で示された。HFrEF患者のイベント発生数は他と比較して群を抜いて多く、そしてダパグリフロジンはHFrEF患者でやはり早期からきわめて明確にイベント抑制を果たした一方で、HFrEF以外の群では早期からカプランマイヤーが分離することはなかった。 この2つのサブ解析を見ると、今まで報じられてきたSGLT2阻害薬の投与初期からのイベント抑制は、実は大半陳旧性心筋梗塞またはHFrEFあるいはその両方を有する患者からの導出とすら言えるのではないかと思われる。DECLAREのサブ解析ではno history of HFの患者の、すなわちstage A/Bの患者ではほとんどイベントが起きておらず、また(とてもたくさんの患者がエントリーされて比較的長期間フォローされているにもかかわらず)ダパグリフロジンの効果は目に見えないほどである。EMPA-REG OUTCOMEでは心不全の既往がある患者でエンパグリフロジンの有効性が有意でなかったが、その後のCANVASではむしろ心不全の既往がある患者のほうでカナグリフロジンがはっきり有効であった。DECLAREの結果を合わせたメタ解析の結果を見れば、心不全患者に対する治療効果はすでに異論のないところであろう。 ここまで見てくると、SGLT2阻害薬はβ遮断薬やRAS阻害薬と同じカテゴリーで論じる必要がある薬剤と考えるべきであるし、そのメカニズムについていまだ明確ではないものの心筋梗塞から虚血性心筋症に至るHFrEFモデルでの解析が待たれる。こうして、ESC2019の前からHFrEFでは間違いなくダパグリフロジンが効くという確信があった。そして事実そうなったのであるが、これが糖尿病患者に限定した効果でないことも今回DAPA-HFで示されたことの意義は絶大である。非糖尿病患者でもSGLT2は近位尿細管に存在するわけで、とくにup-regulateされていない状況でもSGLT2阻害薬による浸透圧利尿効果は有用であるということのようである。 一方で、これまでの結果からやや予想し難いデータがあり、それは腎保護作用である。DAPA-HFにおいてはworsening renal functionについてプラセボより少なめではあったが有意差がなかった。これまでSGLT2阻害薬による腎保護作用は一貫して認められてきたところであり、ここは糖尿病性腎症の進展予防という観点で腎保護作用があると考えれば非糖尿病患者ではその有効性が認め難いのかもしれず、この辺りに関しては今後出てくるサブ解析を待ちたい。いずれにせよ、わが国の心不全ガイドラインのHFrEF治療薬にsacubitril-バルサルタンとイバブラジンと、そしてSGLT2阻害薬を書き加える日が近い。この余勢を駆ってHFpEFまで攻め込めるかどうか、今までのデータからは微妙であるが、これも今後続々と出てくる結果に期待したい。陳旧性心筋梗塞を有するEF<60%くらいまでは、PARAGON-HFと同様にSGLT2阻害薬が有用であろうと予想する。

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家族性高コレステロール血症患児へのスタチン、成人期の心血管リスク低減/NEJM

 小児期にスタチン治療を開始した家族性高コレステロール血症患者は、成人期の頸動脈内膜中膜肥厚の進行が抑制され、心血管疾患のリスクが低減することが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのIlse K. Luirink氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年10月17日号に掲載された。家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロール値の著しい増加と心血管疾患の早期発症を特徴とする。小児へのスタチン治療の短期的効果は確立されているが、心血管疾患リスクの変動を評価した長期的な追跡研究は少ないという。20年後に、患児を非罹患同胞および罹患親と比較 研究グループは、家族性高コレステロール血症小児患者へのスタチン治療に関する20年間の追跡調査の結果を報告した(オランダAMC Foundationの助成による)。 過去に、プラバスタチンの2年投与の有効性と安全性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(1997~99年、単施設)に参加した家族性高コレステロール血症患者214例(98%は遺伝学的に確認)に対し、同症に罹患していない同胞95例とともに、追跡調査への参加を依頼した。 参加者は、質問票に回答し、血液検体を提供し、頸動脈内膜中膜肥厚の測定を受けた。家族性高コレステロール血症患者の心血管疾患の発生率を、同症に罹患している親156例と比較した。39歳時の心血管イベント:患者1% vs.罹患親26%、心血管死:0% vs.7% 当初の試験に参加した家族性高コレステロール血症患者214例(平均年齢13.0±2.9歳、男性47%)のうち、試験開始から20年の時点で追跡調査に応じたのは184例(86%)(31.7±3.2歳、48%)で、非罹患同胞は95例(12.9±2.9歳、53%)のうち77例(81%)(31.6±3.0歳、56%)が調査に参加した。 214例の患者のうち、203例(95%)で心血管イベントのデータが、214例(100%)で心血管系の原因による死亡のデータが得られた。追跡調査時に、184例のうち146例(79%)がスタチンを使用していた。 患者の平均LDLコレステロール値は、237.3mg/dLから160.7mg/dL(6.13mmol/Lから4.16mmol/L)に低下し、ベースラインからの低下率は32%であった。治療目標(LDLコレステロール値<100mg/dL[2.59mmol/L])は37例(20%)で達成され、このうち8例は<70mg/dLに低下していた。一方、非罹患同胞の平均LDLコレステロール値は、98.5mg/dLから121.9mg/dL(2.55mmol/Lから3.15mmol/L)に増加し、増加率は24%だった。 全追跡期間における頸動脈内膜中膜肥厚の進行の平均値は、家族性高コレステロール血症患者が0.0056mm/年、同胞は0.0057mm/年であった(性別で補正後の平均差:-0.0001mm/年、95%信頼区間[CI]:-0.0010~0.0008)。 39歳時の心血管イベント累積発生率は、家族性高コレステロール血症患者が、罹患している親よりも低かった(1% vs.26%、性別と喫煙状況で補正後の無イベント生存率のハザード比[HR]:11.8、95%CI:3.0~107.0)。また、39歳時の心血管系の原因による死亡の累積発生率も、家族性高コレステロール血症患者のほうが罹患親よりも低かった(0% vs.7%)。 著者は、「LDLコレステロールは、アテローム硬化性心血管疾患をもたらす経路における主要な因子と考えられ、LDLコレステロール値を低下させる治療は、アテローム硬化性心血管疾患の進行の予防あるいは緩徐化において重要であることが明らかとなった」としている。

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新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(2)【新型タバコの基礎知識】第10回

第10回 新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(2)Key Points米国では、電子タバコによる急性肺障害が報告され、症例数は1,000例を超え、死亡が18例に達している。電子タバコがハーム・リダクションとなるために必要な前提条件はまだ揃っていない。電子タバコによる急性肺障害が話題になっています。米国での発見例は氷山の一角だと考えられていますが、2019年10月4日までの米国CDCによる報告1)で、症例数は1,000例を超え、死亡が18例に達しています。病態としては、リポイド肺炎、急性好酸球性肺炎や間質性肺炎、過敏性肺臓炎などが考えられています。電子タバコの多様な使用方法やさまざまなフレーバー、大麻由来成分(Tetrahydrocannabinol;THC)の添加など、患者背景に多くの違いがあり、単一の病態でもないことから、現時点での原因の特定は困難です。NEJM誌では17例(死亡例2例含む)における病理像の報告がなされ2)、外来性の油成分によるリポイド肺炎はほとんどみられなかったとのことです。原因物質は不明ですが、新型タバコに含まれる未知の物質の可能性も示唆されています。日本では電子タバコ使用者は比較的少なく、加熱式タバコを使っている人が非常に多くなっています。新型タバコによる急性健康障害に関する実態把握が必要ですが、研究体制は整備できていません。肺炎や喘息等の呼吸器疾患の臨床研究や観察研究を実施している研究者グループの方々と、新型タバコ研究のセットアップおよび支援・協働をしたいと考えていますので、該当の方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください。さて、今回は、「新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?」のパート2です。今回は新型タバコのなかでも電子タバコに注目します。実は、電子タバコについてだけでも本が一冊書けてしまうぐらい情報が集積してきており、問題も複雑化しています。世界的には、加熱式タバコよりも電子タバコが普及しているのです。日本では、ニコチン入りの電子タバコの販売が許可されていない事情もあり、電子タバコはあまり普及していません。しかし、2018年以降電子タバコブランドBluの積極的な販売キャンペーンが展開されるなど、日本でも普及してくる可能性もあるでしょう。電子タバコは製品間の品質のばらつきが大きく、健康被害を一律に評価するのは難しい状況です。冒頭で言及したような急性影響についても分かっていないことばかりであり、長期使用による健康影響はもちろんわかっていません。一方で、電子タバコでは吸引することとなる有害化学物質が紙巻タバコよりも少ないという点に着目して、“ハーム・リダクション(害の低減)”に電子タバコが活用できると訴えている専門家もいます。タバコ問題の場合のハーム・リダクション戦略としては、どうしてもタバコをやめられない人に対して、タバコの代わりにニコチン入り電子タバコを吸ってもらったら、有害物質への曝露を減らせるのではないか、というものです。しかし、この通りにうまくいくのか、世界的に専門家の間でも意見が割れていて、決着がついていません。なぜなら、ハーム・リダクションとなるためのそもそもの前提事項がまだ分かっていないからです。以下に、まだ決着のついていない前提事項を整理します。(1)電子タバコは、紙巻タバコと比べて害が少ないと確定していない電子タバコでは、有害物質の多くが紙巻タバコよりも少ないことは確かですが、一部の化学物質は紙巻タバコよりも多く、総合した場合の有害性が本当に電子タバコの方が低いのか、製品が新しく追跡期間も短いことから、十分に検証できていません。2015年に英国の公衆衛生専門機関が「電子タバコは喫煙よりも約95%害が少ない」と報告しましたが、これに対してはLancet誌等で根拠が十分でないとの反論が起きるなど、論争が巻き起こっています。現在の米国での事態を受けて、よりいっそう議論は複雑化しています。(2)電子タバコによって紙巻タバコがやめられるのか分かっていない電子タバコに紙巻タバコをやめられるようにする禁煙効果があるのかについて、世界的に論争が起きています。まだ実験的研究の段階で、その効果を検証した研究が少なく、結論が出るには至っていません。多くの現場からの研究結果を統合した研究も実施されてきていますが、禁煙効果を支持する結果と支持しない結果がさまざまな研究グループから報告されており、まだしばらく決着はつきそうにありません。(3)電子タバコによる他の問題も指摘されている世界的にはオシャレでカッコいいデザインの電子タバコが若者を中心として普及してきています。電子タバコがもともとタバコを吸わない人へと広がり、ニコチン依存への入り口(ゲートウエイ)として機能してしまうと懸念されているのです。ほかに、電子タバコのデバイスが爆発して大けがを負った事例や、火災となってしまった事例も報告されています。総合的に比較して電子タバコの導入のメリットがデメリットよりも大きくないと、ハーム・リダクションとはなりえません。もし、導入によってハーム(害)が総合して増えるようなこととなれば、単に問題を増やしただけになってしまいます。分かっていないことが多い中で、われわれの社会は難しい判断を迫られているといえるでしょう。タバコ問題においてハーム・リダクションが可能となるための理論的根拠として、根拠(1):タバコやニコチンを使用し続ける人々がどうしてもいるであろうと考えられること根拠(2):ニコチン依存がほとんどのタバコの使用の根底にある一方で、ほとんどの健康被害を引き起こすのは、タバコ煙のニコチン以外の成分だと考えられていることの2つがよく挙げられます。筆者は根拠(1)については同意します。たとえ、タバコを法律で禁止することができたとしても、タバコを使い続ける人はいるでしょう。ただし、法律で禁止することができれば、タバコを吸う人の数は大幅に減らせるものと考えられ、ゆくゆくはそうなってほしいと願っています。しかし一方で、根拠(2)については同意しません。なぜなら、ニコチン依存の害を軽視した考え方だからです。ニコチン依存症の恐ろしさについては、第9回記事を参照ください。第11回は、「新型タバコの発がんリスク」です。1)US Centers for Disease Control and Prevention (CDC)「Outbreak of Lung Injury Associated with E-Cigarette Use, or Vaping」2)Butt YM,et al. N Engl J Med. 2019 Oct 2. [Epub ahead of print]

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家族歴が発症リスクに関連するがん種~日本人10万人の前向き研究

 がんの家族歴は、いくつかのがん種におけるリスク増加の重要な因子である。がんの家族歴と、遺伝的に一致するがんリスクとの関連は多くの疫学研究で報告されているが、生活習慣を調整した包括的な前向き研究はない。今回、わが国のJPHC研究において、国立がん研究センターの日高 章寿氏らによる研究から、膀胱がん、膵がん、食道がんなどのいくつかのがん種で、がんの家族歴ががんリスク増加と関連することが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年10月8日号に掲載。 本研究は、日本の集団ベースの前向き研究であるJPHC研究において、がんの家族歴と遺伝的に一致するがんリスクとの関連を調査した。対象は、がんの既往がなく、ベースライン時にがんの家族歴などの自記式調査票に回答した10万3,707人の適格な被験者で、2012年まで追跡し、多変量調整Cox比例ハザード回帰モデルを使用して分析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡調査した180万2,581人年で、合計1万6,336人が新規にがんと診断された。・がんの家族歴がない人に対して、家族歴がある人におけるがん発症のハザード比は、すべてのがんで1.11(95%信頼区間:1.07~1.15)、食道がん2.11(同:1.00~4.45)、胃がん1.36(同:1.19~1.55)、肝がん1.69(同:1.10~2.61)、膵がん2.63(同:1.45~4.79)、肺がん1.51(同:1.14~2.00)、子宮がん1.93(同:1.06~3.51)、膀胱がん6.06(同:2.49~14.74)であった。

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日本の進行胃がんに対するニボルマブのリアルワールドでの成績(JACCRO GC-08: DELIVER)/ESMO2019

 第III相ATRRACTION-2試験において、ニボルマブは3次治療以降の胃がんに対する有効性を示しているが、PS不良例、腹膜播種例などが含まれるリアルワールドでのデータはない。聖マリアンナ医科大学の砂川 優氏らは、リアルワールドでの進行胃がんに対するニボルマブの効果と安全性、そして腸内マイクロバイオームを含む宿主免疫バイオマーカーを検証した前向き観察研究JACCRO GC-08(DELIVER)の中間成績を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告した。 JACCRO GC-08試験は、組織学的に腺がんであることが確認されたPS 0~2の食道胃接合部がんを含む切除不能な進行胃がんでニボルマブでの単剤治療を行う症例を対象とし、治療前後での便や血液を採取し、腸内細菌種・ゲノム情報、遺伝子多型、遺伝子発現、メタボロームを測定し、ニボルマブの有効性・安全性の予測因子を探索・検証する研究。 試験は2018年3月から開始され、目標症例数は500例。当初の200例で、予測因子を探索し、そこで得られた予測因子候補を300例で検証する計画。 主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は全奏効率(ORR)、病態制御率(DCR)、腫瘍縮小率、腫瘍増大率(TGR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性、バイオマーカー解析。今回発表されたのは前半200症例の患者背景と臨床結果。 主な結果は以下のとおり。・解析可能症例は198例、年齢中央値は70歳、男性が75%であった。・PSは0が47%、1が39%、2が14%であり、腹膜転移は45%にみられた。・腫瘍径が測定可能だった124例でのORRは5.6%(95%信頼区間[CI]:2.3~11.3)、DCRは33.1%(95%CI:24.9~42.1)であった。・投与開始1ヵ月間のTGRが測定できた105例では、58.4%でニボルマブ投与開始後にTGRの減少が認められたが、24.8%では投与開始前と比較してTGRが2倍以上になる高度進行と判定された。・PS別のDCRはPS 0が38%、PS 1が35%、PS 2が22%であった。・DCRは印環細胞がん、腹膜播種性転移、腹水の因子を持つ症例で低率だった。・HER2発現状況あるいは好中球/リンパ球比でDCRに差は認めなかった。

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左冠動脈主幹部病変の5年転帰、PCI vs.CABG/NEJM

 解剖学的複雑度が低度~中等度の左冠動脈主幹部病変患者において、5年時点の全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイントは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)で有意差は確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のGregg W. Stone氏らが、左冠動脈主幹部病変の患者を対象に、エベロリムス溶出ステントによるPCIのCABGに対する追跡期間3年での非劣性を検証した国際多施設共同非盲検無作為化試験「EXCEL試験」の、最終5年アウトカムを報告した。左冠動脈主幹部病変患者において、現代の薬剤溶出ステントを用いたPCI後の、CABGと比較した長期アウトカムは明らかにされてはいなかった。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。左冠動脈主幹部病変患者1,905例で、5年間評価 研究グループは2010年9月29日~2014年3月6日に、解剖学的複雑度が低度~中等度(各参加施設の評価)の左冠動脈主幹部病変患者1,905例を、フルオロポリマーベースのエベロリムス溶出コバルトクロムステント留置群(PCI群948例)、またはCABG群(957例)に無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目は、全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイント。intention-to-treat集団を対象に、ロジスティック回帰分析を用いて解析した。複合エンドポイント、心血管死および心筋梗塞の発生に両群で有意差なし、ただしPCIは全死因死亡が多く、脳血管イベントは少ない 5年時点で、主要評価項目である複合エンドポイントのイベント発生率はPCI群22.0%、CABG群19.2%であった(群間差:2.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.9~6.5、p=0.13)。 全死因死亡の発生は、PCI群がCABG群よりも高率であった(13.0% vs.9.9%、群間差:3.1ポイント[95%CI:0.2~6.1])。一方、心血管死(definite)(5.0% vs.4.5%、0.5ポイント[-1.4~2.5])、および心筋梗塞(10.6% vs.9.1%、1.4ポイント[-1.3~4.2])の発生は両群で有意差はなかった。脳卒中の発生は、両群で有意差はなかったが(2.9% vs.3.7%、-0.8ポイント[-2.4~0.9])、全脳血管イベントはPCI群がCABG群よりも低率であった(3.3% vs.5.2%、-1.9ポイント[-3.8~0])。 虚血による血行再建術は、PCI群がCABG群よりも高頻度であった(16.9% vs.10.0%、6.9ポイント[3.7~10.0])。 著者は研究の限界として、非盲検試験であること、追跡期間が5年と限られていたことなどを挙げたうえで、「PCIおよびCABGの長期的な安全性プロファイルを明らかにするためには、10年あるいはそれ以上の追跡調査が必要である」と述べている。

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1型DMにはクローズドループシステムが有用/NEJM

 1型糖尿病患者において、クローズドループ型インスリン注入システム(人工膵島)の利用は、リアルタイム持続血糖モニター(CGM)機能付きインスリンポンプ(CSII)の利用と比較して、血糖値が目標範囲内であった時間の割合を増加させることを、米国・バージニア大学のSue A. Brown氏らが、6ヵ月間の多施設共同無作為化試験「International Diabetes Closed Loop trial:iDCL試験」で明らかにした。クローズドループ型インスリン注入システムは、1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する可能性があり、これまでのメタ解析ではその有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2019年10月16日号掲載の報告。リアルタイムCGM機能付きCSIIと比較、血糖値目標範囲内の達成時間を評価 研究グループは、2018年7月12日~10月9日の期間で、1型糖尿病患者をクローズドループ型インスリン注入システムで治療を受けるクローズドループ群またはリアルタイムCGM機能付きCSIIで治療を受ける対照群のいずれかに、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、CGMで測定される血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)であった時間の割合。intention-to-treat集団を対象として線形混合効果回帰モデルを用いて解析した。 合計168例が無作為にクローズドループ群(112例)、対照群(56例)に割り付けられた。患者の平均年齢は33歳(範囲:14~71)、糖化ヘモグロビン値は5.4~10.6%であった。全168例が試験を完遂した。クローズドループシステムのほうが血糖コントロール良好 血糖値が目標範囲内であった平均(±SD)時間割合は、クローズドループ群でベースライン時61±17%から6ヵ月間で71±12%まで上昇したが、対照群はいずれも59±14%で変化しなかった(補正後群間差:11ポイント、95%信頼区間[CI]:9~14、p<0.001)。 副次評価項目(血糖値が>180mg/dLであった時間割合、平均血糖値、糖化ヘモグロビン値、血糖値が<70mg/dLまたは<54mg/dLであった時間割合)に関しては、いずれも事前に定義した有意差の階層的基準をすべて満たし、クローズドループ群が良好であることが認められた。 6ヵ月間で血糖値が<70mg/dLであった時間割合の補正後群間差(クローズドループ群-対照群)は-0.88ポイント(95%CI:-1.19~-0.57、p<0.001)、6ヵ月時の糖化ヘモグロビン値の補正後群間差は-0.33ポイント(-0.53~-0.13、p=0.001)であった。クローズドループ群において、システムがクローズドループ・モードであった時間の割合(中央値)は、6ヵ月間にわたり90%であった。 両群とも重篤な低血糖イベントの発生は認めなかった。クローズドループ群で糖尿病性ケトアシドーシスが1例報告された。

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LOXO-292、RET異常甲状腺がんに有望(LIBRETTO-001)/ESMO2019

 RET異常を有する甲状腺がんに対する新規治療薬のselpercatinib(LOXO-292)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Massachusetts General Hospital, Harvard Medical SchoolのLori Wirth氏より発表された。 本試験は、RET異常を有する甲状腺がんと非小細胞肺がんを対象にした国際共同のオープンラベル・シングルアームの第I/II相試験である。selpercatinibはRETタンパクに高い選択的親和性を有するTKIであり、今回は全甲状腺がんの10~20%に存在するRET変異甲状腺がんに関する発表である。・対象:試験に登録されたRET点変異を有する甲状腺髄様がん(MTC)226例と、RET融合遺伝子を有する甲状腺がん27例のうち、cabozantinib(Cabo)とバンデタニブ(Vande)の治療歴のあるMTCの55例を初回解析対象とした・試験群:selpercatinib 20~480mg/日(第I相試験)、320mg/日(第II相試験)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・RET点変異のある症例143例のうち、57%はM918Tで、V804M/Lは8%、細胞外システイン変異は19%であった。・RET融合のパートナー遺伝子は、CCDC6が52%、NCOA4が33%であった。・今回解析対象55例は65%が男性、年齢中央値は57歳、前治療歴は中央値2ライン、脳転移あり7%、全例でCabo、Vande、それ以外のTKIの既治療歴があった。・主治医判定によるORRは56%(CRは6%)で、CaboやVandeの治療歴による差はみられなかった。・Cabo/Vandeの治療歴を持たないMTC76例では、ORR:59%(CRは1%)であった。・追跡期間中央値(mFU)10.6ヵ月時点でのDOR中央値は未到達(イベント数は6例/29例)であった。・mFU11.1ヵ月時点でのPFS中央値も未到達(イベント数は18例/55例)であった。・RET融合遺伝子を有する甲状腺がんのORRは62%であった。・Grade3/4治療関連有害事象は、高血圧9%、ALT上昇7%、AST上昇5%、下痢1%、有害事象による治療中止は1.7%と忍容性が認められ、多くの有害事象はGrade1/2であった。 Wirth氏は「RET異常を有する甲状腺がんに対する治療薬として現在承認されているTKI後の治療薬として、本剤は期待が持てる。2019年中には米国FDAに本剤の承認を申請する予定である」と述べている。

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悪い芽は早めに摘んでとりあえずコンプリートしておきますか!?:多枝病変を有するSTEMIへの戦略(解説:中野明彦氏)-1123

【背景】 STEMIにおける多枝病変の確率は40~50%で、STEMI責任病変のみの一枝疾患に比べ予後不良かつその後の非致死性心筋梗塞が多いことが報告されている。心原性ショックを合併していないSTEMI急性期に責任病変以外の“病変”に手を加えるべきかどうか、一定の見解は得られていても明確な回答が得られていない命題である。急性期介入の期待される利点は、STEMIによる血行動態の悪化が他病変灌流域の局所収縮性を障害することへの予防的措置、あるいはhibernation(冬眠心筋)を来している領域の心機能改善が結果としてSTEMIの予後を改善する可能性、などが挙げられる。一方その弊害として想定されるのは、他枝へのPCIが側枝閉塞や遠位塞栓を合併した場合の余計な心筋障害や造影剤増量による心負荷、腎障害などであろう。 これまでこの命題に挑んだランダム化試験は、知る限り2013年から2017年に報告されたPRAMI(n=465)、CvLPRIT(n=296)、DANAMI-3-PRIMULTI(n=627)、Compare-Acute(n=885)の4つである。多くの試験で観察期間中の再血行再建術が有意に減少、これらを包括した最新の日本循環器学会・ESCガイドラインでは入院中の非梗塞責任血管へのPCIをクラスI~IIaに設定している。しかし期待された予後改善効果は全試験で否定され、また多くの試験で新規MI発症も抑制されなかった。【COMPLETE試験について】 本試験は同じ命題に取り組んだ最新かつ最大規模(n=4,041)、さらに最長の観察期間(約3年)を設定したランダム化試験で、議論決着への期待も大きかった。残枝PCIの適応は虚血の有無にはこだわらず視覚的な70%狭窄以上に設定(70%未満+FFR≦0.80でのエントリーは1%以下とわずか)、PCIのタイミングはad-hoc(single-stage)やimmediate(multi-stage)だったこれまでの試験と異なり、入院中および45日以内までのdelayed PCIを許容し、サブ解析で両者の差異も検証した。 主たるエンドポイントの結果は、心血管死亡に差はなく、MI発症・虚血による血行再建(IDR)は血行再建群で有意に抑制された。懸念された大出血や腎障害などの弊害は増えなかった。 これらの結果をどう解釈すべきか:少し単純化して考えてみる。心血管死亡(2.9% vs.3.2%、HR:0.93)を「STEMIの重症度」、MI(自然発症は3.9% vs.7.0%)を「非責任病変以外の不安定プラーク」、IDR(1.4% vs.7.9%、HR:0.18)を「残存病変の重症度」に置き換えてみると…。・予後への影響:今回もまた他枝へのPCIがSTEMIの重症度を覆すほどのインパクトはないことが示された。immediateでもdelayed PCIでも差がなかったことが象徴的である。・MI発症抑制:ACS症例ではほかにも多くの不安定プラークを有し、特に急性期は内皮障害や炎症が亢進しやすいこと、他方でMIは非有意狭窄から発症する確率が高いことは以前から指摘されている。本試験では有意差はついたものの、70%以上の狭窄性病変を処理してもMI発症が半減すらしなかったことは、lesion severityとlesion instabilityが別物と改めて印象付けた。一方、有意差がつかなかった他の試験(CvLPRIT、Compare-Acute)でのHRは実は本試験より小さい。少ない症例数が影響した可能性が大きく、狭窄病変を潰しておけばある程度のMIは予防できるとも言える。・IDR:非血行再建群で多いのは当然だが、基準がさほど厳しいとも思えないのに非血行再建群のIDRが年率3%に満たない理由は不明である。他試験と比較しても明らかに低率で「そもそもホントに多枝病変?」と突っ込みたくもなる。やはり血管造影では残存病変の重症度を規定するのは難しいと言わざるを得ない。【議論に決着は着いたのか?】 一方は“yes”である。やはり予後は変えないのである。 他方、MI発症抑制・IDR予防についてはどうだろうか? 多枝病変を血管造影で定義した本試験において、完全血行再建が防いだのは1年間で1%のMIと2.3%のIDA…。果たしてコンプリートを目指す“preventive-PCI”は許容されるかどうか。 次のガイドラインはこの試験をどう解釈するだろう?

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第30回 抗精神病薬による体重増加、薬剤ごとに差【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗精神病薬による体重増加、脂質異常症や高血糖などの代謝障害は比較的よく知られている副作用で、とくに第1世代に比べて第2世代の抗精神病薬で高頻度に報告されています。治療継続の妨げになったり、長期的な心血管イベントのリスクが上昇したりすることがあるため、長期間服用するためには体重や検査値のチェックが欠かせません。今回は、体重増加の機序や薬剤による違い、対処方法について紹介します。体重増加の機序体重増加の原因は特定されておらず、薬剤の影響で食欲が亢進して過剰に摂食したというだけでなくさまざまな説があります。実際、自覚的な食事量が変わらなくても体重が増加しているケースもあるように思います。その機序として、脂質酸化の減少と炭水化物酸化の増加、セロトニン/ドパミン/ヒスタミンなどの各種受容体への作用、視床下部ペプチドによって食欲亢進や満腹感低下が生じる可能性が指摘されています。さらに、摂食やエネルギー代謝に関わるペプチドであるアディポネクチンの減少、抗精神病薬により脂肪組織から放出されるホルモンであるレプチンに対する耐性がカロリー摂取量の増加と脂肪組織の増加の機序として考えられています1)。ダイエットに関心がある患者さんで、アディポネクチンやレプチンを知っている方にお会いしたことがありますので、そういう患者さんに詳しく説明し過ぎるとアドヒアランスに影響しかねないため注意が必要な場合もあると思います。総脂肪率増加の程度1つ以上の精神障害や攻撃性のため精神病薬を検討している6~18歳の患者144例を、経口アリピプラゾール(49例)、オランザピン(46例)またはリスペリドン(49例)にランダムに割り付けて12週間治療し、総体脂肪率およびインスリン感受性を調べた試験があります。12週時点で、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)で測定した総脂肪率は、リスペリドンで1.18%増加、オランザピンで4.12%増加、アリピプラゾールで1.66%増加しました。インスリン刺激によるグルコース消失率の変化は、リスペリドンで2.30%増加、オランザピンでは29.34%減少、アリピプラゾールで30.26%減少となっており、薬剤間で有意差はありませんでした。MRIによる腹部脂肪測定では、皮下脂肪はリスペリドンまたはアリピプラゾールよりもオランザピンで有意に増加していました。なお、すべての治療群で行動の改善がみられています2)。体重増加の薬剤間比較体重増加の程度は薬剤によって異なりますが、とくにクロザピンやオランザピンでその程度が大きいことが示唆されています。第2世代抗精神病薬で治療された患者の体重、コレステロールおよびグルコースの変化を評価した48のランダム化比較試験のシステマティックレビューの結果は次のとおりです3)。クロザピンはリスペリドンと比較して体重が増加した(平均差[MD]:2.86kg、95%信頼区間[CI]:1.07~4.65、459例の患者を対象とした4試験の分析)。オランザピンは以下の薬剤よりも有意に体重が増加した。○アミスルプリド※(MD:2.1kg、95%CI:1.29~2.94、671例の患者を対象とした3試験の分析)○アリピプラゾール(MD:3.9kg、95%CI:1.62~6.19、患者656例を対象とした2試験の分析)○クエチアピン(MD:2.68kg、95%CI:1.1~4.26、患者1,173例を対象とした7試験の分析)○リスペリドン(MD:2.44kg、95%CI:1.61~3.27、2,302例の患者を対象とした16試験の分析)○ジプラシドン※(MD:3.82kg、95%CI:2.96~4.69、1,659例の患者を対象とした5試験の分析)※国内未承認体重増加の対処方法日本神経精神薬理学会が作成した『統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー』において、体重増加の対処方法の例として薬剤変更が挙げられています4)。実際に、心血管疾患の危険因子を改善するために、オランザピン、クエチアピンまたはリスペリドンからアリピプラゾールに切り替えた非盲検のランダム化比較試験がありますので見てみましょう5)。上記3剤のいずれかにより治療されている統合失調症ないし統合失調感情障害を有する患者215例(平均年齢41歳)を、アリピプラゾールへの切り替え群(109例)またはそのまま継続した群(106例)にランダムに割り付けて24週間経過をみています。全患者が、BMI≧27kg/m2および非HDLコレステロール≧130mg/dLで、プライマリアウトカムは非HDLコレステロール値の変化です。両群を比較した結果は、平均体重減少は3.6kg対0.7kg(p<0.001)、平均非HDLコレステロール減少は20.2mg/dL対10.8mg/dL(p=0.01)、トリグリセライドは25.7mg/dL減少対7mg/dL増加(p=0.002)であり、切り替えに一定の効果を認めています。安易に薬剤を切り替えたり中止したりすることは避けなければなりませんが、体重や体脂肪率増加の理由、程度、発現時の代替案などを聞かれる機会もあるかと思いますので、参考にしていただければと思います。1)Maayan L, et al. Expert Rev Neurother. 2010;10:1175-1200.2)Nicol GE, et al. JAMA Psychiatry. 2018;75:788-796.3)Rummel-Kluge C, et al. Schizophr Res. 2010;123:225-233.4)日本神経精神薬理学会編. 統合失調症薬物治療ガイドー患者さん・ご家族・支援者のためにー. 日本神経精神薬理学会;2018.5)Stroup TS, et al. Am J Psychiatry. 2011;168:947-956.

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NAFLD/NASH患者、リスク因子補正後のAMIや脳卒中リスクとの関連は?/BMJ

 欧州の大規模な4つのデータベースを用いた検討で、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断された成人は、年齢、性別、診療情報を適合したNAFLDを有さない成人と比較して、既知の心血管リスク因子補正後、急性心筋梗塞(AMI)や脳卒中の発生リスクに、わずかな増大は認められるが有意差はないことが明らかにされた。英国・GlaxoSmithKlineのMyriam Alexander氏らが計1,770万例を対象とした適合コホート試験の結果で、著者は「NAFLD診断成人の心血管リスク評価は重要だが、一般集団のそれと同様とすべきであろう」と述べている。NAFLDは、メタボリックシンドロームやその他のAMIや脳卒中のリスク因子との関連が認められている。AMIおよび脳卒中リスク増大との関連、および心血管疾患の代用マーカー(surrogate marker)との関連が示されているが、既知のリスク因子補正後の関連性について完全には確立されていなかった。BMJ誌2019年10月8日号掲載の報告。NAFLD/NASH診断例約12万例を追跡 研究グループは欧州4ヵ国の、2015年12月までのプライマリケアの電子データベースを用いて、住民ベースの適合コホート試験を行った。各データベースの患者数は、イタリア154万2,672例、オランダ222万5,925例、スペイン548万8,397例、英国1,269万5,046例だった。 そのうち、NAFLDまたは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断を受け、かつその他の肝疾患のない12万795例を対象に分析を行った。同一データベースから、診断日の年齢、性別、医療機関、受診状況、診断日前後6ヵ月時点の医療記録でマッチングした、NAFLDまたはNASHのない被験者を最大100例選んだ。 主要アウトカムは、致死的または非致死的AMIおよび虚血性/unspecified脳卒中だった。ランダム効果メタ解析により、Coxモデルを用いて複数データベースのプールド・ハザード比(HR)を推計した。年齢や喫煙、血圧、2型DM、総コレステロール値などで補正後、リスク増大なし NAFLD/NASHの診断を受けた12万795例について、診断日からの追跡期間はコホート集団により異なり、中央値2.1~5.5年だった。 年齢と喫煙について補正後、AMI発症に関するHRは1.17(95%信頼区間[CI]:1.05~1.30)だった(イベント数はNAFLD/NASH群1,035件、コントロール群6万7,823件)。より多くのリスク因子情報を含むNAFLD/NASH患者8万6,098例と適合コントロール466万4,988例についての解析では、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン服用の有無、高血圧症で補正後、AMI発症に関するHRは1.01(95%CI:0.91~1.12)だった(NAFLD/NASH群747件、コントロール群3万7,462件)。 年齢と喫煙状況で補正後の、脳卒中発症に関するHRは1.18(同:1.11~1.24)だった(NAFLD/NASH群2,187件、コントロール群13万4,001件)。より多くのリスク因子の情報を含む集団についての解析では、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン服用の有無、高血圧症で補正後、脳卒中発症に関するHRは1.04(同:0.99~1.09)だった(NAFLD/NASH群1,666件、コントロール群8万3,882件)。

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アルツハイマー病の症状を抑制する初の薬剤となるか~aducanumab第III相試験の新たな解析結果

 バイオジェンとエーザイは2019年10月22日、早期アルツハイマー病(AD)患者に対する第III相試験において無益性解析に基づき中止となったaducanumabについて、中止後に新たに利用可能となったデータを追加し解析した結果から、米国食品医薬品局(FDA)との協議に基づいて、2020年に承認申請を予定していることを発表した。aducanumabが承認された場合、早期アルツハイマー病の臨床症状悪化を抑制する最初の治療薬となるとともに、アミロイドベータ(Aβ)の除去が臨床上のベネフィットをもたらすことを実証する世界初の薬剤となるという。 臨床第III相試験であるEMERGE試験(1,638例)および ENGAGE試験(1,647例)は、aducanumabの2つの投与量群について有効性と安全性を評価する多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験。両試験は、事前に計画したより早期で小さなデータセットでの無益性解析の結果に基づき、2019年3月に中止された。 その後、新たに利用可能となったデータを追加し、18ヵ月間の試験期間を完了した2,066例を含む、合計3,285例の被験者のデータを解析した。その結果、ENGAGE試験については主要評価項目を達成しなかったが、EMERGE試験については、aducanumabの高用量投与群が主要評価項目であるClinical Dementia Rating-Sum of Boxes(CDR-SB)において、78週でのベースラインからの臨床症状悪化について、プラセボ投与群に比較して統計学的に有意な抑制を示した(23%抑制、p=0.01)。副次評価項目についても、プラセボ投与群に比較して、Mini-Mental State Examination(MMSE)が15%抑制(p=0.06)、AD Assessment Scale-Cognitive Subscale 13 Items(ADAS-Cog13)が27%抑制(p=0.01)、AD Cooperative Study-Activities of Daily Living Inventory Mild Cognitive Impairment Version(ADCS-ADL-MCI)が40%抑制(p=0.001)と、それぞれ一貫した抑制傾向を示した。また、アミロイドプラーク沈着のイメージングにより、aducanumab低用量群および高用量群の両群において、投与26週および投与78週でプラセボ投与群と比較して、アミロイドプラーク沈着の減少が確認された(p<0.001)。 両試験において報告された最も一般的な有害事象は、アミロイド関連画像異常(ARIA-E(浮腫))と頭痛であった。ARIA-Eが発症した被験者群のほとんどは、無症候性であり、ARIA-Eは4週から16週間以内にほとんど解消し、長期間におよぶ臨床的後遺症もなかった。 バイオジェンは、2019年12月に開催されるアルツハイマー病臨床試験会議(CTAD2019)で、EMERGE試験およびENGAGE試験の本解析に関する、より詳細な結果を発表予定。

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新たなJAK阻害薬、中等症~重症の成人アトピー性皮膚炎に有効

 アトピー性皮膚炎(AD)に対するJAK阻害薬の開発が進んでいる。開発中の経口JAK1選択的阻害薬abrocitinib(PF-04965842)について、中等症~重症の成人ADに対する短期使用の有効性および忍容性が、第IIb相プラセボ対照無作為化試験で確認された。カナダ・SKiN Centre for DermatologyのMelinda J. Gooderham氏らが報告した。abrocitinibは、ADの病理生理学的特性に重要な役割を担うサイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31、インターフェロンγなど)のシグナル伝達を阻害する。今回の第II相試験では、200mg、100mg、30mg、10mgの各用量を1日1回投与し、プラセボとの比較検証を行った。なお、本試験の結果を受けてabrocitinibの200mgと100mgの有効性と安全性を評価する第III相試験が行われている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年10月2日号掲載の報告。 試験は2016年4月15日~2017年4月4日に、オーストラリア、カナダ、ドイツ、ハンガリー、米国の58施設で行われた。試験デザインには二重盲検並行群間比較が用いられた。 被験者は、中等症~重症との診断を受けてから1年以上、局所療法の効果不十分または禁忌(12ヵ月間で4週間以上)の18~75歳の患者267例であった。 被験者を無作為に1対1対1対1対1の5群に割り付け、abrocitinib(200mg、100mg、30mg、10mg)またはプラセボを12週間投与した。 主要アウトカムは、医師による全般的評価(IGA:Investigator's Global Assessment)による改善度が、12週時にベースラインから2グレード以上改善し、消失(0)またはほぼ消失(1)に達した患者の割合とした。副次アウトカムは、EASIスコア(Eczema Area and Severity Index)のベースラインから12週時の変化率とした。 有効性はFAS(full analysis set)で評価した。試験薬を1投与以上受けた全患者を包含し、1試験地での4例を除く修正intention-to-treat集団(263例)を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・267例のうち144例が女性であった(平均年齢40.8[SD 16.1]歳)。abrocitinib群(200mg群55例、100mg群56例、30mg群51例、10mg群49例)、プラセボ群56例であった。・12週時点で、主要アウトカムを達成した患者の割合は、abrocitinib 200mg群21/48例(43.8%、両側検定のp<0.001)、100mg群16/54例(29.6%、p<0.001)で、プラセボ群は3/52例(5.8%)であった。30mg群は4/45例(8.9%、p=0.56)、10mg群は5/46例(10.9%、p=0.36)であった。・上記の結果は、最大効果モデルベースの推定値では、200mg群44.5%(95%信頼区間[CI]:26.7~62.3)、100mg群27.8%(14.8~40.9)、プラセボ群6.3%(-0.2~12.9)に相当した。・EASIの低下率は、200mg群82.6%(90%CI:72.4~92.8、p<0.001)、100mg群59.0%(48.8~69.3、p=0.009)で、プラセボ群35.2%(24.4~46.1)であった。・治療関連有害事象(TEAE)は、184/267例(68.9%)、計402件報告されたが、そのほとんどが軽症であった。・TEAEはいずれの群でも3例以上報告があった。最も頻度が高かったのは、アトピー性皮膚炎の悪化、上気道感染症、頭痛、悪心、下痢であった。・abrocitinib群では用量依存の血小板数の減少が観察されたが、4週以降はベースライン値へと上昇に転じた。

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小脳脳内出血、血腫除去vs.保存的治療/JAMA

 小脳の脳内出血(ICH)を呈した患者において、外科的治療としての血腫除去は保存的治療と比べて、機能的アウトカムを改善しないことが、ドイツ・エアランゲン・ニュルンベルク大学のJoji B. Kuramatsu氏らによるメタ解析の結果、明らかにされた。主要アウトカムとした3ヵ月時点の機能的アウトカムについて、有意差は示されなかった。結果を受けて著者は、「血腫容量で機能的アウトカムとの関連に違いがないかを明らかにする必要はある」と述べている。JAMA誌2019年10月8日号掲載の報告。4つのICH観察研究を統合しIPDメタ解析 研究グループは、小脳ICHに対する血腫除去手術と臨床的アウトカムの関連を明らかにするため、2006~15年にドイツ国内の64病院で治療を受けた6,580例が参加した4つのICH観察研究を統合し、参加患者個々人のデータ(individual participant data:IPD)に基づくメタ解析を行った。 血腫除去手術を受けた患者と保存的治療を受けた患者を比較。主要アウトカムは、修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[機能障害なし]~6[死亡])を用いて3ヵ月時点で評価した機能的障害(良好[mRS:0~3]vs.不良[4~6])。副次アウトカムは、3ヵ月時点および12ヵ月時点の生存率などとした。 解析は、傾向スコア適合および共変数を補正して行い、確率予測を用いて小脳ICHの治療関連カットオフ値を確認した。3ヵ月時点の機能的アウトカム、血腫除去手術群の有意な改善の可能性認められず 小脳ICHを呈した578例のうち、傾向スコア適合解析には、血腫除去手術群152例(平均年齢68.9歳、男性55.9%、経口抗凝固薬使用60.5%、ICH容量中央値20.5cm3)、保存的治療群152例(69.2歳、51.3%、63.8%、18.8cm3)を包含し比較した。 補正後、血腫除去手術群は保存的治療群と比較して、3ヵ月時点で機能的障害が有意により良好となる可能性は認められなかった(30.9% vs.35.5%、補正後オッズ比[AOR]:0.94[95%信頼区間[CI]:0.81~1.09、p=0.43]、補正後リスク差[ARD]:-3.7%[95%CI:-8.7~1.2])。 一方で、副次アウトカムの3ヵ月時点の生存率(78.3% vs.61.2%、AOR:1.25[95%CI:1.07~1.45、p=0.005]、ARD:18.5%[95%CI:13.8~23.2])、12ヵ月時点の生存率(71.7% vs.57.2%、AOR:1.21[95%CI:1.03~1.42、p=0.02]、ARD:17.0%[95%CI:11.5~22.6])は、有意により増大する可能性が認められた。 カットオフ値の容量範囲は12~15cm3であった。これより低容量(≦12cm3)では、血腫除去手術が良好な機能的アウトカムと関連する可能性は低いことが確認された(30.6% vs.62.3%[p=0.003]、ARD:-34.7%[-38.8~-30.6]、交互作用のp=0.01)。高容量(≧15cm3)では、生存率が増大する可能性が認められた(74.5% vs.45.1%[p<0.001]、ARD:28.2%[24.6~31.8]、交互作用のp=0.02)。

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ニボルマブ+低用量イピリムマブ、NSCLCのOS有意に改善(CheckMate-227)/ESMO2019

 イピリムマブとニボルマブの併用は、悪性黒色腫や腎細胞がんにおいて全生存期間(OS)の改善を示している。非小細胞肺がん(NSCLC)においても、イピリムマブの用法・用量の肺がんへの適正化(1mg/kg 6週ごと投与)により、有効性を示す試験結果が報告されている。CheckMate-227試験は、ニボルマブベースの治療と化学療法を比較したオープンラベル無作為化第III相試験。同試験は、Part1とPart2で構成されており、Part1の結果として、高腫瘍変異負荷(TMB≧10mut/Mb)患者におけるイピリムマブ・ニボルマブ併用の化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)の延長が報告されている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、Part1の最終結果、とくにPD-L1≧1%の患者における主要評価項目であるイピリムマブ+ニボルマブ対化学療法の全生存期間(OS)のデータについて、スイス・ローザンヌ大学のSlonge Peters氏が発表した。・対象:未治療のPD-L1発現1%以上(Part1a)および1%未満(Part1b)のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者(PS 0~1、組織系問わず)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ群(NIVO+IPI群)     ニボルマブ単独群(TPS1%以上)(NIVO群)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)(NIVO+Chemo群)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独(Chemo群)・評価項目[複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群のPFS、PD-L1発現(≧1%)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群のOS[副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるNIVO群対Chemo群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のPFS、そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・PD-L1≧1%のOSはNIVO+IPI群で17.1ヵ月、Chemo群14.9ヵ月と有意にNIVO+IPI群で改善した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.65~0.96、p=0.007)。同条件におけるNIVO群のOSは15.7ヵ月でChemo群に対するHRは0.88(95%CI:0.75~1.04)であった。・盲検下独立中央評価委員会(BICR)評価によるORRはNIVO+IPI群35.9%、NIVO群27.5%、Chemo群30.0%であった。・BICR評価によるDORはNIVO+IPI群23.2ヵ月、NIVO群15.5ヵ月、Chemo群6.2ヵ月であった。・PD-L1<1%のOSはNIVO+IPI群17.2ヵ月、Chemo群12.2ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.48~0.78)。同条件におけるNIVO+Chemo群のOSは15.2ヵ月でChemo群に対するHRは0.78(95%CI:0.60~1.02)であった。・全対象患者(PD-L1レベルにかかわらず)のOSはNIVO+IPI群17.1ヵ月、Chemo群13.9ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.64~0.84)。・NIVO+IPI群とChemo群のサブグループ解析のすべての項目、いずれのPD-L1発現レベルにおいてもNIVO+IPI群が優位であった。・有害事象については、従来の報告と同様であり、新たなものはみられなかった。 CheckMate-227試験は、NSCLCの1次治療におけるPD-L1阻害薬とCTLA-4阻害薬の併用で主要評価項目を達成した初の第III相試験となった。PD-L1発現レベルを問わず、化学療法に対し臨床的に意味のあるOSの改善を示した。加えて、PD-L1≧1%以上についてはNIVO群に対しPD-L1<1%についてはNIVO+Chemo群に対し、アウトカムを改善した。Peters氏は個人的見解として、免疫チェックポイント阻害薬の併用は、進行NSCLCの1次治療の選択肢となる可能性を示したと結んだ。 この発表は同時にNEJM誌オンライン版2019年9月28日号に掲載された。

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EGFR陽性肺がん1次治療でのエルロチニブ+ラムシルマブ、T790M発現との関係は?(RELAY)/ESMO2019

 EGFR変異陽性のNSCLCでは、第1、2世代EGFR-TKIの1次治療により30~60%の患者でT790M変異による耐性が発現する。近畿大学の西尾 和人氏らは、EGFR変異陽性のNSCLCでのラムシルマブ・エルロチニブ併用(以下、RAM+ERL)の効果を検証した第III相RELAY試験の結果から、この2剤併用がEGFRの2次変異であるT790M変異の発生を遅延させる可能性があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。 RELAY試験は未治療のEGFR変異陽性進行NSCLC患者(449例)を対象に、RAM+ERLとプラセボ+エルロチニブ(以下、PL+ERL)を比較した第III相国際共同二重盲検無作為化試験で、併用群における無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が報告されている(HR:0.591、p<0.0001)。T790M発現については、PD後30日後のRAM+ERL群と対照群で差はみられていない(43%対47%)。 今回の発表は、EGFR-TKI耐性のメカニズムとRAM+ERLがT790Mおよび他の獲得耐性関連変異にどう影響するかを調査するために行われた日本人患者における探索的研究。リキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からEGFR変異の状況をdroplet digital PCR(ddPCR)を用いて解析した。血漿サンプル採取は、治療開始前、4サイクル目、13サイクル目以後6サイクルごと53サイクルまで、そして治療中止から30日後に行われた。 日本人患者は、バイオマーカーPopulation1(以下、Population1)とバイオマーカーPopulation2(以下、Population2)に分けられた。Population1はベースライン(T790M変異なし)と進行後30日の結果がある42例(RAM+ERL群:19例、PL+ERL群:23例)で、Population2は進行後30日後にEGFR活性化変異を検出した23例(RAM+ERL群:8例、PL+ERL群15例)であった。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者全体(211例)のPFSのハザード比(HR)は0.61(95%CI:0.43~0.86)、Population1のPFSのHRは0.61(95%CI:0.33~1.15)、Population2のHRは0.87(95%CI:0.35~2.15)であった。・治療中止後30日でのT790M変異陽性率はPopulation1においてはRAM+ERL群26%、PL+ERL群30%(p=1.0)。Population2においてはそれぞれ62%対40%(p=0.4)で両群間に差はなかった・病勢進行患者に対するT790M変異陽性患者の割合推移は、12サイクル目RAM+ERL群17%(1/6例)、PL+ERL群33%(3/9例)、24サイクル目RAM+ERL群11%(1/9例)、PL+ERL群38%(6/16例)、53サイクル目RAM+ERL群26%(5/19例)、PL+ERL群30%(7/23例)と、RAM+ERL群ではサイクル数が多くなってから増加してくる傾向がみられた。 この結果から、筆者はエルロチニブへのラムシルマブ併用はT790M変異の発生を遅延させている可能性があると述べている。

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スティーブンス・ジョンソン症候群〔SJS : Stevens-Johnson Syndrome〕、中毒性表皮壊死症〔TEN : Toxic Epidermal Necrolysis〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬疹(薬剤性皮膚障害)は軽度の紅斑から重症型までさまざまであるが、とくにスティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome:SJS)型薬疹と中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis:TEN)型薬疹は重篤な経過をたどり、死に至ることもある。両疾患はウイルス感染症や細菌感染症に続発して生じることもあるが、原因の大半は薬剤であるため、本稿では両疾患をもっぱら重症型薬疹の病型として取り扱う。■ 疫学近年、薬剤による副作用がしばしばマスコミを賑わせているが、薬疹は目にみえる副作用であり、とくに重症型薬疹においては訴訟に及ぶこともまれではない。重症型薬疹の発生頻度は、人口100万人当たり、SJSが年間1~6人、TENが0.4~1.2人と推測されている。2009年8月~2012年1月までの2年半の間に製薬会社から厚生労働省に報告されたSJSおよびTENの副作用報告数は1,505例(全副作用報告数の1.8%)で、このうち一般用医薬品が被疑薬として報告されたのは95例であった。原因薬剤は多岐にわたり、上記期間にSJSやTENの被疑薬として報告があった医薬品は265成分にも及んでいる。カルバマゼピンなどの抗てんかん薬、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛消炎薬、セフェム系やニューキノロン系抗菌薬、アロプリノールなどの痛風治療薬、総合感冒薬、フェノバルビタールなどの抗不安薬による報告が多いが、それ以外の薬剤によることも多く、最近では一般用医薬品による報告が増加している。■ 病因薬疹は薬剤に対するアレルギー反応によって生じることが多く、I型(即時型)アレルギーとIV型(遅延型)アレルギーとに大別できる。I型アレルギーによる場合は、原因薬剤の投与後数分から2~3時間で蕁麻疹やアナフィラキシーを生じる。一方、大部分を占めるIV型アレルギーによる場合は、薬剤投与後半日から2~3日後に、湿疹様の皮疹が左右対側に生じることが多い。薬剤を初めて使用してから感作されるまでの期間は4日~2週間のことが多いが、場合によっては10年以上安全に使用していた薬剤でも、ある日突然薬疹を生じることがある。患者の多くは薬剤アレルギーの既往がなく突然発症するが、重症型薬疹の場合はウイルスなど感染症などが引き金になって発症することも多い。男女差はなく中高年に多いが、20~30代もまれではない。近年、免疫反応の異常が薬疹の重症化に関与していると考えられるようになった。すなわち、免疫やアレルギー反応は制御性T細胞とヘルパーT細胞とのバランスによって成り立っており、正常な場合は、1型ヘルパーT細胞による免疫反応を制御性T細胞が抑制している。通常の薬疹では(図1)、1型ヘルパーT細胞が薬剤によって感作されて薬剤特異的T細胞になり、同じ薬剤の再投与により活性化されると薬疹が発症する。画像を拡大するしばらく経つと制御性T細胞も増加・活性化するため、過剰な免疫反応が抑制され、薬疹は軽快・治癒する。ところが、重症型薬疹の場合(図2)は、ウイルス感染などにより制御性T細胞が抑制され続けているため、薬疹発症後も免疫活性化状態が続く。薬剤特異的T細胞がさらに増加・活性化しても、制御性T細胞が活性化しないため、薬剤を中止しても重症化し続ける。画像を拡大する細胞やサイトカインレベルからみた発症機序を示す(図3)。画像を拡大する医薬品と感染症によって過剰な免疫・アレルギー反応を生じ、活性化された細胞傷害性Tリンパ球(CD8 陽性T細胞)や単球、マクロファージが表皮細胞を傷害してネクロプトーシス(ネクローシスの形態をとる細胞死)を誘導し、表皮細胞のネクロプトーシスが拡大することによりSJSやTENに至る、と考えられている。■ 症状重症型薬疹に移行しやすい病型として、とくに注意が必要なのは多形滲出性紅斑で、蕁麻疹に似た標的(ターゲット)型の紅斑が全身に生じ、短時間では消退せず、重症例では皮膚粘膜移行部にびらんを生じ、SJSに移行する。SJSは、全身の皮膚に多形滲出性紅斑が多発し、口唇、眼結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部や口腔内の粘膜にびらんを生じる。しばしば水疱や表皮剥離などの表皮の壊死性障害を来すが、一般に体表面積の10%を超えることはない。38℃以上の発熱や全身症状を伴うことが多く、死亡もまれではない。TENは最重症型の薬疹で、全身の皮膚に広範な紅斑と、体表面積の30%を超える水疱、表皮剥離、びらんなど表皮の重篤な壊死性障害を生じる。眼瞼結膜や角膜、口腔内、外陰部に粘膜疹を生じ、38℃以上の高熱や激しい全身症状を伴い、死亡率は30%以上に及ぶ。救命ができても全身の皮膚に色素沈着や視力障害を残し、失明に至ることもある。また、皮膚症状が軽快した後も、肝機能や呼吸器などに障害を残すことがある。なお、表皮剥離が体表面積の10%以上30%未満の場合、SJSからTENへの移行型としている。■ 予後SJS、TENともに、薬剤を中止しても適切な治療が行われなければ非可逆的に増悪し、ステロイド薬の全身投与にも反応し難いことがある。皮疹の経過は多形滲出性紅斑 → SJS → TENと増悪していく場合と、最初からSJSやTENを生じる場合とがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)薬疹は皮疹の分布や性状によってさまざまな病型に分類されるが、重症型薬疹は一般に、(1)急激に発症し、急速に増悪、(2)全身の皮膚に新鮮な発疹や発赤が多発する、(3)結膜、口腔、外陰などの粘膜面や皮膚粘膜移行部に発赤やびらんを生じる、(4)高熱を来す、(5)全身倦怠や食欲不振を訴える、などの徴候がみられることが多い。皮膚のみならず、肝腎機能障害、汎血球・顆粒球減少、呼吸器障害などを併発することも多いため、血算、白血球分画、生化学、非特異的IgE、CRP、血沈、尿検査、胸部X線撮影を行う。また、ステロイド薬の全身投与前に糖尿病の有無を調べる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療の実際長年安全に使用していた薬剤でも、ある日突然重症型薬疹を生じることもあるため、基本的に全薬剤を中止する。どうしても中止できない場合は、治療上不可欠な薬剤以外はすべて中止するか、系統(化学構造式)のまったく異なる、患者が使用した経験のない薬剤に変更する。急速に増悪することが多いため、入院させて全身管理のもとで治療を行う。最強クラスの副腎皮質ステロイド薬(クロベタゾールプロピオン酸など)を外用し、副腎皮質ステロイド薬の全身投与(プレドニゾロン 30~60mg/日)を行う。治療効果が乏しければ、ステロイドパルス(メチルプレドニゾロン 1,000mg/日×3日)およびγグロブリン(献血グロベニン 5g/日×3日)の投与を早急に開始する。反応が得られなければ、さらに血漿交換や免疫抑制薬(シクロスポリン 5mg/kg/日)の投与も検討する。■ 原因薬剤の検索治癒した場合でも再発予防が非常に重要である。原因薬剤の検索は、皮疹の軽快後に再投与試験を行うのが最も確実であるが、非常にリスクが大きい。入院させて通常処方量の1/100程度のごく少量から投与し、漸増しながら経過をみるが、薬疹に対する十分な知識や経験がないと、施行は困難である。再投与試験に対する患者の了解が得られない場合や、安全面で不安が残る場合は、皮疹消退後にパッチテストを行う。パッチテストは非常に安全な検査で、しかも陽性的中率が高いが、感度は低く60%程度しか陽性反応が得られない。また、ステロイド薬の内服中は陽性反応が出にくくなる。In vitroの検査では「薬剤によるリンパ球刺激試験」(drug induced lymphocyte stimulation test:DLST)が有用である。患者血清中のリンパ球と原因薬剤を反応させ、リンパ球の幼若化反応を測定するが、感度・陽性的中率ともにパッチテストよりも低い。DLSTは薬疹の最盛期にも行えるが、発症から1ヵ月以上経つと陽性率が低下する。したがって、再投与試験を行えない場合はパッチテストとDLSTの両方を行い、両者の結果を照合することにより原因薬剤を検討する。現在、健康保険では3薬剤まで算定できる。4 今後の展望近年、重症型薬疹の発症を予測するバイオマーカーとして、ヒト白血球抗原(Human leukocyte antigen:HLA)(主要組織適合遺伝子複合体〔MHC〕)の遺伝子多型が注目されている。すなわち、HLAは全身のほとんどの細胞の表面にあり免疫を制御しているが、特定の薬剤による重症型薬疹(SJS、TEN)の発症にHLAが関与しており、とくに抗痙攣薬(カルバマゼピンなど)、高尿酸血症治療薬(アロプリノール)による重症型薬疹と関連したHLAが相次いで発見されている。さらに、同じ薬剤でも人種・民族により関与するHLAが異なることが明らかになってきた(表)。画像を拡大するたとえば、日本人のHLA-A*3101保有者がカルバマゼピンを使用すると、8人に1人が薬疹を発症するが、もしこれらのHLA保有者にカルバマゼピン以外の薬剤を使用すると、薬疹の発症頻度が1/3になると推測されている。また、台湾では、カルバマゼピンによる重症型薬疹患者のほぼ全員がHLA-B*1502を保有しており、保有者の発症率は非保有者の2,500倍も高いといわれている。そのため台湾では、カルバマゼピンとアロプリノールの初回投与前には、健康保険によるHLA検査が義務付けられている。このようにあらかじめ遺伝子多型が判明していれば、使用が予定されている薬剤で重症型薬疹を起こしやすいか否かが予測できることになる。5 主たる診療科複数の常勤医のいる基幹病院の皮膚科、救命救急センター※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報医薬品・医療機器等安全性情報 No.290(医療従事者向けのまとまった情報)医薬品・医療機器等安全性情報 No.293(医療従事者向けのまとまった情報)医薬品・医療機器等安全性情報 No.285(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報SJS患者会(SJSの患者とその家族の会)1)藤本和久. 日医大医会誌. 2006; 2:103-107.2)藤本和久. 第5節 粘膜症状を伴う重症型薬疹(スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症). In:安保公介ほか編.希少疾患/難病の診断・治療と製品開発.技術情報協会;2012:1176-1181.3)重症多形滲出性紅斑ガイドライン作成委員会. 日皮会誌. 2016;126:1637-1685.公開履歴初回2014年01月23日更新2019年10月21日

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第12回 痛みの治療法【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第12回 痛みの治療法これまで11回にわたって、痛みの基本的概念から身体各部の痛みについて述べてまいりました。この<痛み>シリーズの最終回として、今回は痛みの治療法を概説いたします。痛み治療は末梢→中枢が原則、治療法は多岐に基本的な痛みの治療方針としては、神経の末梢部位から攻めていきます。たとえば神経ブロックにおきましても、罹患部分が末梢であれば痛みのトリガーポイントからブロックしていきます。効果が見られなければ、順次中枢部へと進んでいきます。末梢神経ブロックの次には、硬膜外ブロックが適応となります。その次には、脊髄や脳組織もターゲットとなります。電気神経刺激療法におきましても、体表の末梢神経から始めまして、脊髄電気刺激、脳電気刺激などへ移行し、鎮痛効果が見られなければ、神経ブロック同様に刺激部位を上位中枢へと移動していきます。大脳皮質を刺激する電気痙攣療法(ECT)は、うつ病に効果が認められておりますが、難治性慢性疼痛の治療にも応用されています。ECTによって嫌な記憶を忘れることも、疼痛の緩和をもたらすからです。低出力レーザー治療を含む光線療法も広く応用されてきております。レーザー治療は、神経ブロックの効果には多少及ばないものの、高齢患者を想定すると副作用が少ないために安全で有用性も高いと考えられております。患者参加型の疼痛治療法も試みられております。痛みは患者本人にしかわからないために、患者が痛みを感じた時に痛み治療薬を患者自身で投与する方法です。Patient Controlled Analgesia (PCA:自己調節鎮痛法)と呼ばれておりますが、ディスポーザブルセットからコンピュータ内蔵機器まで様々な装置が使用されております。主として鎮痛薬の静脈投与ですが筋肉投与も可能です。経口投与による頓服投与スタイルもPCAの一種ですが、あらかじめ基本となる鎮痛薬をベースとしまして、痛い時に使用する頓服用の鎮痛薬を、痛みが強くなるようであれば患者自身の判断で服用してもらいます。インターベンショナルな痛みの治療法も様々考案されております。そのうち、仙骨硬膜外腔癒着剥離術は腰痛治療にも応用されております。ビデオガイドカテーテルを仙骨裂孔から挿入し、ディスプレイ画面にて、癒着部を確認しながら、剥離を行っていきます。それと同時に生理食塩水で炎症部を洗浄し、発痛物質を洗い出すことによって、鎮痛を得る方法です。近年、分子生物学的手法の進展によって、痛みに関連する神経の受容体が次々と発見され、複雑な痛みの機序が徐々に解明されてきております。また、個々の患者さんによって、その疼痛機序は異なっておりますので、責任受容体や痛みの機序を容易に見つけ出すためのテストが必要になってきました。このためにドラッグチャレンジテスト(DCT)を活用することによって有効的な薬物を見出して、より効果的な薬物療法を施行していくことが大切です。使用される薬物としては、ケタミン、ATP(アデノシン3燐酸)、チオペンタール、ミダゾラム、モルヒネ、リドカイン、フェントラミンなどです。ケタミンはN-メチル‐D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗薬であり、NMDA受容体の活性化が原因の痛みに効果的です。ATPは脊髄A1受容体を介する神経調節機構に働きます。チオペンタールは、抗痙攣作用や精神的原因などの中枢神経抑制作用によって、痛みを軽減する効果を持っています。ミダゾラムも、チオペンタールと同様の作用を持っておりますが、筋緊張の改善作用もありますので、疼痛も緩和されます。モルヒネは、脊髄オピオイド受容体に作用するとともに、下行性抑制系も賦活して、強い鎮痛効果を発揮します。リドカインは、痛み神経の異常興奮を抑制する作用を有しておりますので、神経が原因となる神経障害性疼痛に効果がみられます。フェントラミンは、痛みの機構に交感神経系の関与があるときに効果があります。このようにして、それぞれの患者の痛みの機構を解明することによって、関連する薬物の投与や、脊髄・脳電気刺激療法などの適応が考慮され、治療法が重点的に応用されるために患者の負担が少なくなる上、より良い効果が早く得られるため、有効率もそれだけ高くなります。難治性疼痛の患者さんには、認知行動療法、マインドフルネスなどの心理療法も活用されております。運動療法を含む理学療法にも効果が見られております。最近、痛み患者の遺伝子の解析も試みられております。痛みが残存する人、しない人などの遺伝子の違いが解明されれば、痛み治療対象者や治療対象薬の選定にも有用となります。人生100年時代への対策の一つとして、2,000万人と言われる慢性疼痛の患者さんが、痛みを軽減することによって、患者さん自身で完結できる人生を歩んでいただければ、この上ない喜びです。<CareNet.com編集部よりお知らせ>本連載は、今回でいったん完結となります。2020年1月より、花岡一雄先生執筆による新連載を開始予定です。痛みの治療法をより具体的に掘り下げ、密度の濃い内容でお届けいたします。ぜひ、ご期待ください!

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がん患者におけるVTEとAF、わが国の実際/腫瘍循環器学会

日本のがん患者の静脈血栓塞栓症合併率は欧米並み 固形がん患者の2~8%に悪性腫瘍関連静脈血栓塞栓症(cancer-associated venous thromboembolism:CA-VTE)が合併すると欧米より報告されている。アジア人は白人と比較してCA-VTEの合併率が低いとの報告もあるが、日本人の固形腫場患者を対象としたCA-VTEの合併率の報告は少ない。神戸大学の能勢 拓氏らは、自施設における新規固形がん患者を対象として後方視的に情報を収集し、第2回日本腫瘍循環器学会で発表した。 対象は2,735例で、観察期間中央値は103日であった。CA-VTEが認められ、合併率は3.3%(2,735例中92例)で、欧米の報告と同等であった。CA-VTE合併例の年齢中央値は70歳で、52%が女性であった。症候ありは47%で、Dダイマー正常値(<1.0μg/mL)は5.4%であった。 がん種別のCA-VTE合併率は、肺がん12.0%、甲状腺がん5.0%、原発不明がん4.4%、肉腫4.2%、膵臓がん3.8%、乳がん3.8%、大腸がん3.7%、胆道がん3.3%、胃がん3.3%、食道がん2.3%などであった。固形がん患者のAF並存は約10%、循環器医の介入で予後改善 がん患者の予後は改善し、高齢化や治療による心血管疾患の予後への影響が無視できなくなっている。心房細動(AF)は頻度が高く、また脳梗塞のリスクなどがん治療へ悪影響を与える。しかし、進行がん患者におけるAFの併存頻度や、予後に与える影響については明らかでない。聖路加国際病院の佐藤 岳史氏らは、自施設における進行固形がん患者を対象に後方視的コホート研究を行い、AF併存の有無、循環器医の介入の有無による予後の違いを比較し、予後不良因子を検討した。 対象は1,879例、年齢中央値は66歳であった。AF併存患者は、9.9%(186例)であった。がん種別の併存率は、肺・縦隔がん16%、消化器がん10.6%、泌尿器がん10.6%、肝胆膵がん8.1%、婦人科がん7.1%、乳がん3.9%であった。抗がん治療を受けた患者1,349例のうち、AF併存なし患者の生存期間中央値は1.8年、AF併存患者は1.5年で生存期間に統計学的な差はなかった。AF併存群を循環器医の介入の有無で分けたところ、循環器医介入群(75例)の生存期間は1.7年、循環器医非介入群(50例)は1.1年であった。AF併存なしとの3群の多変量解析において、循環器医非介入のAF併存は独立した予後不良因子であった(HR:1.40、95%CI:1.01~1.95、p=0.04)。

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男性乳がん死亡率、女性乳がんより高い?/JAMA Oncol

 乳がんは男性患者と女性患者で生存率に差があることが報告されているが、性差が関連する要因について、大規模なデータ解析に基づく知見が示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのFei Wang氏らは全米がん登録コホート研究にて、乳がん診断後の死亡率は、臨床的特徴、治療因子、治療を受ける機会を考慮しても、女性患者より男性患者で高いことを明らかにした。乳がん死の性差を理解することは、がん治療とサバイバーのケアに関する戦略を立てるうえで基本となる。結果を受けて著者は、「死亡率の性差をなくすためには、とくに生物学的属性、治療コンプライアンス、ライフスタイルなど他の要因を特定する必要があろう」と指摘している。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。 研究グループは、乳がんの男性患者と女性患者の死亡率を比較し、死亡率の性差に関連する要因を定量的に評価する目的で、National Cancer Databaseを用い、2004年1月1日~2014年12月31日までに乳がんと診断された患者を特定しデータを収集した。解析対象集団は181万6,733例で、2018年9月1日~2019年1月15日に解析を行った。 主要評価項目は全生存率、副次評価項目は3年および5年死亡率であった。 主な結果は以下のとおり。・全181万6,733例中、男性は1万6,025例(平均年齢63.3歳)、女性は180万708例(平均年齢59.9歳)であった。・女性患者と比較し男性患者は、すべてのStageで死亡率が高かった。・男性患者では、全生存率は45.8%(95%信頼区間[CI]:49.5~54.0)、3年生存率は86.4%(85.9~87.0)、5年生存率は77.6%(76.8~78.3)であった。・女性患者では、全生存率は60.4%(95%CI:58.7~62.0)、3年生存率は91.7%(91.7~91.8)、5年生存率は86.4%(86.4~86.5)であった。・男性患者の超過死亡率の63.3%は、臨床的特徴と過少治療が関連していた。 ・性別は、臨床的特徴・治療因子・年齢・人種/民族・治療を受ける機会に関して補正後も、全死亡率(補正後ハザード比[aHR]:1.19、95%CI:1.16~1.23)、3年死亡率(aHR:1.15、1.10~1.21)、5年死亡率(aHR:1.19、1.14~1.23)と有意に関連した。(ケアネット)

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