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EGFR変異陽性肺がんにはTKI単独療法だけでよいのか「NEJ009試験」【肺がんインタビュー】 第41回

第41回 EGFR変異陽性肺がんにはTKI単独療法だけでよいのか「NEJ009試験」EGFR変異陽性非小細胞肺がん1次治療における、ゲフィチニブ単剤とゲフィチニブ+プラチナ併用化学療法を比較した第III相試験「NEJ009試験」の結果がJournal of Clinical Oncology誌で発表された。試験統括医師である東北大学大学院の井上 彰氏に聞いた。EGFR-TKI単剤を上回る治療効果―試験実施の背景について教えていただけますか。われわれは約10年前に、ゲフィチニブ単剤とプラチナ併用化学療法を比較するNEJ002試験を実施しました。その結果、ゲフィチニブの有用性が示され、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)には、ゲフィチニブなどのEGFR-TKI単剤が標準治療となりました。とはいえ、TKI単剤で病勢が抑えられるわけではなく、その後に化学療法を使うことになります。しかし、NEJ002試験の後解析で、ゲフィチニブ治療の後、3分の1くらいの患者さんが標準化学療法を受けられていないことが明らかになりました。その患者さんたちに、しっかりTKIとプラチナ併用化学療法を使うことができれば、さらに生存成績が改善できるのではないか。では、どうすればTKIとプラチナ併用化学療法をすべて受けられるか、それを検討するためにNEJ005試験を行いました。この試験では、ゲフィチニブとプラチナ併用化学療法を同時に用いる方法と、交互に用いる方法を比較しました。その結果、同時療法は交互療法より手間がかからずに実施でき、さらに安全性は交互療法と同程度、有効性の面では、むしろ同時療法のほうが良好である可能性が示されました。そこで、この同時療法と標準治療となったゲフィチニブ単剤とを比較することとなりました。それがこのNEJ009試験を実施した背景です。―NEJ009試験の概要と主な結果について教えていただけますか。NEJ009試験では、EGFR変異陽性NSCLC初回治療において、ゲフィチニブ+プラチナ併用化学療法という3剤併用群とゲフィチニブ単剤群を比較しました。エンドポイントは、まず無増悪生存期間(PFS)、そして最終的に全生存期間(OS)をみていくデザインで始めました。対象患者は46施設から345例が登録されています。結果、初回治療のPFSはゲフィチニブ単剤群で11.9ヵ月、ゲフィチニブ+化学療法併用群では20.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.490、p<0.001)と、併用群で有意に延長しました。また、奏効率も84%対67%(p<0.001)と、併用群で10%ほど上乗せできています。また、Waterfallプロットで腫瘍縮小率を見ると、効果が深い(deep response)ことがわかります。このようにNEJ009レジメンの初回治療としての能力は、かなり高いことが示されました。また、それが50.9ヵ月対38.8ヵ月(HR:0.722、p=0.021)というOS中央値に反映されたと考えています。この50ヵ月を超える併用群のOSは、肺がんでは今まではあり得なかったような成績です。有害事象については、それぞれの薬剤で既知のものであり、肺がん治療に慣れている先生方であれば、十分対処できるものでした。EGFR変異陽性NSCLCの選択肢の幅を広げる―この試験結果が臨床に与えるインパクトはどのようなものでしょうか。今ではEGFR変異NSCLCの初回治療では多くの方がオシメルチニブを使うでしょう。しかし、どの患者さんでもそれでよいのか。たとえば、体力があって、効果の高い治療を受けたいと希望している患者さんにも、オシメルチニブ一辺倒でよいのかは疑問です。最近の研究成績を見ていると、EGFR-TKI単剤での初回治療の限界が見えてきたのかもしれないと思います。元気で、高い治療効果を望む患者さんには、TKIに化学療法を上乗せするという選択肢を、少なくとも提示しなければいけないと思います。―NEJ009試験はこれで最終報告となりますか。NEJ009と同様のレジメンは、インドの臨床試験でも有効性が示されています。このことからも、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療におけるEGFR-TKIと化学療法の併用の成績については、ある程度結論が付いたと思います。長期追跡データや付随データは出ると考えられますが、NEJ009本体の発表はこれで完了です。―読者の方々にメッセージをお願いします。肺がんでは今、多くの薬剤が開発され、一昔前に比べ、治療しがいのある状態になったと思います。その中で、EGFR変異陽性NSCLCの患者さんに対しては、従来のEGFR-TKI単独に加え、さらに高い効果が得られる可能性のある併用レジメンが、新たな選択肢として、エビデンスを持って現れました。この治療に耐えられる全身状態と本人の要望がある場合には、選択肢として積極的に勧めてよいと考えています。参考Hosomi Y, et al. J Clin Oncol. 2020 Jan 10;38:115-123.

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抗うつ薬治療後のうつ病患者における皮質厚の変化

 従来の抗うつ薬が遅効性であることを考慮すると、早期治療反応のバイオマーカーを特定することは、重要な課題である。うつ病の神経画像の研究では、皮質厚の減少が報告されているが、抗うつ薬がこの異常を改善させるかはよくわかっていない。米国・イェール大学のSamaneh Nemati氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)治療後の初期の皮質厚変化について、プラセボとの比較を行い調査した。Chronic Stress誌2020年1月~12月号の報告。 うつ病患者215例を対象とし、SSRI(セルトラリン)群またはプラセボ群に、ランダムに割り付けた。ベースライン時および治療1週間後に、構造的画像(structural MRI)スキャンを行った。治療反応は、8週間後のハミルトンうつ病評価尺度スコア50%以上の改善と定義した。治療効果、治療反応、治療×反応について調査するため、vertex-wise approachを用いた。 主な結果は以下のとおり。・多重比較の修正後、SSRI群は、プラセボ群と比較し、皮質厚が広範に増大しており、有意な治療効果が認められた。・皮質厚増加は、左内側前頭前野、右内側および外側前頭前野、右頭頂側頭葉内で認められた。・SSRI誘発性の皮質薄化は認められず、治療反応または治療×反応の相互作用も認められなかった。 著者らは「うつ病患者でみられる皮質厚の異常が、抗うつ薬で改善する可能性が示唆された。しかし、初期の皮質変化とその後の治療反応との関連は実証されていない。このような初期効果が8週間維持され、治療反応の向上と関連しているかを調査するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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ニボルマブ・化学療法併用、非小細胞肺がんに対する国内承認申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年2月27日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するプラチナ製剤を含む2剤化学療法との併用療法による用法及び用量の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表。 今回の承認申請は、化学療法未治療のStage4または再発の非小細胞肺がん患者を対象に実施した多施設国際共同非盲検無作為化第III相臨床試験CheckMate-227のPart1およびPart2の結果に基づいている。

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妊娠中のマクロライド系抗菌薬、先天異常への影響は/BMJ

 妊娠第1期のマクロライド系抗菌薬の処方は、ペニシリン系抗菌薬に比べ、子供の主要な先天形成異常や心血管の先天異常のリスクが高く、全妊娠期間の処方では生殖器の先天異常のリスクが増加することが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのHeng Fan氏らの調査で示された。妊娠中のマクロライド系抗菌薬処方に関する最近の系統的レビューでは、流産のリスク増加には一貫したエビデンスがあるが、先天異常や脳性麻痺、てんかんのリスク増加には一貫性のあるエビデンスは少ないと報告されている。また、妊娠中のマクロライド系抗菌薬の使用に関する施策上の勧告は、国によってかなり異なるという。BMJ誌2020年2月19日号掲載の報告。マクロライド系抗菌薬の処方と子供の主要な先天異常を評価 研究グループは、妊娠中のマクロライド系抗菌薬の処方と、子供の主要な先天異常や神経発達症との関連を評価する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(筆頭著者は英国Child Health Research CIOなどの助成を受けた)。 解析には、UK Clinical Practice Research Datalinkのデータを使用した。対象には、母親が妊娠4週から分娩までの期間に、単剤の抗菌薬治療としてマクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)またはペニシリン系抗菌薬の投与を受けた、1990~2016年に出生した10万4,605人の子供が含まれた。 2つの陰性対照コホートとして、母親が妊娠前にマクロライド系抗菌薬またはペニシリンを処方された子供8万2,314人と、研究コホートの子供の同胞5万3,735人が解析に含まれた。妊娠第1期(4~13週)、妊娠第2~3期(14週~分娩)、全妊娠期間に処方を受けた妊婦に分けて解析した。 主要アウトカムとして、欧州先天異常監視機構(EUROCAT)の定義によるすべての主要な先天異常および身体の部位別の主要な先天異常(神経、心血管、消化器、生殖器、尿路)のリスクを評価した。さらに、神経発達症として、脳性麻痺、てんかん、注意欠陥多動性障害、自閉性スペクトラム障害のリスクも検討した。マクロライド系抗菌薬は研究が進むまで他の抗菌薬を処方すべき 主要な先天異常は、母親が妊娠中にマクロライド系抗菌薬を処方された子供では、8,632人中186人(1,000人当たり21.55人)、母親がペニシリン系抗菌薬を処方された子供では、9万5,973人中1,666例(1,000人当たり17.36人)で発生した。 妊娠第1期のマクロライド系抗菌薬の処方はペニシリン系抗菌薬に比べ、主要な先天異常のリスクが高く(1,000人当たり27.65人vs.17.65人、補正後リスク比[RR]:1.55、95%信頼区間[CI]:1.19~2.03)、心血管の先天異常(同10.60人vs.6.61人、1.62、1.05~2.51)のリスクも上昇した。 全妊娠期間にマクロライド系抗菌薬が処方された場合は、生殖器の先天異常のリスクが増加した(1,000人当たり4.75人vs.3.07人、補正後RR:1.58、95%CI:1.14~2.19、主に尿道下裂)。また、妊娠第1期のエリスロマイシンは、主要な先天異常のリスクが高かった(同27.39 vs.17.65、1.50、1.13~1.99)。 他の部位別の先天異常や神経発達症には、マクロライド系抗菌薬の処方は統計学的に有意な関連は認められなかった。また、これらの知見は、感度分析の頑健性が高かった。 著者は、「マクロライド系抗菌薬は、妊娠中は注意して使用し、研究が進むまでは、使用可能な他の抗菌薬がある場合は、それを処方すべきだろう」としている。

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無症状でも重症ASは放っておいてはダメ(解説:上妻謙氏)-1192

 昔から失神や胸痛を来した重症大動脈弁狭窄症(AS)は、急いで手術しないと急死しやすいことは経験的に認められてきた。TAVRが出てくる前から手術ができる患者は準緊急で手術に送ったものだったが、TAVRが出てから市場が大きく掘り起こされ、超高齢社会も相まって、無症候のASが多く見つかるようになった。これは、そういった無症候の重症ASを手術せずに経過をみたらどうなるかということをはっきりさせた重要な論文である。 早期に手術をする群に比べコンサーバティブに経過観察した群は明らかに死亡率が高く、早期手術群では手術死亡もなかった。単純明快な論文であるが、いくつかlimitationも存在する。まずは145例と症例数の少ない点、そして患者の6割以上が二尖弁で平均年齢が62歳と若い点である。これは最近増加している高齢者のdegenerative ASの患者像とは異なり、手術リスクも異なるため、同様には扱いにくい。しかしTAVRが一般化した現在では高齢者にも当てはめてよいと考えられる。 このスタディが行われた韓国ではTAVRが保険適用となっておらず、高齢者を多数含む研究が行いにくかったと思われ、実際にランダマイズの前に除外された症例が多いのにも注意を要する。また今回の対象患者は流速4.5m/sあるいは弁口面積0.75cm2以下、平均圧較差50mmHg以上でvery severe ASとされているが、一般にvery severe ASといえば流速5m/s以上、弁口面積0.6cm2以下あるいは、もっと重症のものを指すことが多い。この定義が異なるところが日常臨床に当てはめるにあたって混乱を招きやすい点だろう。いずれにせよ、症状がないからと治療を受けるのを躊躇する患者に説明するのに良い材料ができたといえる。

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使える英語上達のカギは「とにかく聴き、ひたすら話す」に尽きる!【臨床留学通信 from NY】第7回

第7回:使える英語上達のカギは「とにかく聴き、ひたすら話す」に尽きる!今回は、私なりの英語の勉強の仕方をお伝えします。とはいえ、実のところ英語に対しては渡米して1年半経過した今でも苦手意識があり、自信を持ってこれが正解と言えるのかわかりませんが、発音の改善、そして「話す・聴く」に相当な時間をかけること、この2つが非常に大事だということは強調しておきます。オンライン教室やドラマのセリフで生きた英会話を体得するまず、発音に関してはスコット・ペリーの教材を買いました。日本人的な英語の発音から、それらしく聞こえる発音になるいくつかのtipsを紹介しており、短期間で発音が良くのなるのが実感できます。発音が良くなれば、USMLE Step2CSにおいて相手により伝わりやすくなり、音の違いがわかるようになればリスニングに生かせます。また、英会話において初心者であっても自信を持って会話できるというメリットがあります。そのため、まず発音から入るのは理に適っていると思います。次に、話すこと・聴くことですが、可能であればやはり毎日2~3時間は確保したいところです。話すことについては、数あるオンライン英会話教室からいくつか試してみてやるのがいいでしょう。(私はnative campというのを最終的に利用しました。時間が無制限なのがポイントです) 聞くことについてはPodcastのnewsなり、好きな洋画ドラマを活用するといいと思います(私はフレンズやERなどを観ました)。とにかく、移動などの隙間時間をすべてPodcastのリスニングに費やすのです。ちなみに、映画は言葉が少ないので、ドラマのほうがいいと思います。嫌にならない程度に英語字幕で観てから、<字幕なし>にトライし、また<字幕あり>に戻るといった具合に、多少繰り返しやっていましたが、この方法だと飽きてくるので、<字幕あり>だけを通してみるのもいいでしょう。ただ<字幕あり>では、耳ではなく目で単語を追ってしまうため、理想としては聞き取れなかったところを字幕で確認し、再び<字幕なし>で聴き取れるまで繰り返しトレーニングするのがいいと思います。渡米して1年半、曲がりなりにも臨床医として働いている私ですが、英語に依然苦労していて、今でもドラマを観ては勉強を続けています。毎日の地道な積み重ねの先に、口をついて出てくる英語があるStep2CSの勉強開始の時点では、英語が全く口から出なかった訳ですが、CSの勉強は定型文を丸覚えしてそれを声に出してみるという練習をひたすら行いました。その際に、オンライン英会話教室も利用して、日常英会話も含めた会話の相手だけでなく、CSの模擬患者役もしてもらいました。CSの対策は、半年あまりの短い期間にかなりの詰め込んだ勉強をしましたが、USMLEを受けると決めた時点からオンライン英会話教室などを利用して少しでも早い時期から話す訓練を始めるべきです。1日30分程度から始めて、軌道に乗ったら1日2~3時間できれば理想的です。それでも、上達には年単位でかかるものだというのが、私が経験から得た実感です。Column画像を拡大する米国に来て当初3年の目標であった、JACC誌に論文を掲載するという目標がまず達成できました1,2)。米国の研修医をやりながら、合間に時間を見つけて臨床研究をやるのはなかなかハードでしたが、形になりホッとしております。とくにこの論文はメタ解析であり、数百本の論文に目を通しScreeningする作業を1年前のICUの夜勤中の合間にやったのは本当に大変でした。今回の画像は、私の職場Mount Sinai Beth Israelです。ここで日夜臨床と研究に取り組んでおり、今回の論文も執筆しました。1)https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S07351097193849062)https://www.carenet.com/news/general/carenet/49510

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統合失調症の世界的な現状~GBD 2017

 統合失調症は、世界で深刻な健康問題の1つである。中国・西安交通大学のHairong He氏らは、統合失調症の世界的負担について、国や地域レベルで定量化するため、Global Burden of Disease Study 2017(GBD 2017)を用いて検討を行った。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌2020年1月13日号の報告。 1990~2017年のGBD 2017データを用いて、統合失調症の有病数、障害調整生存年数(DALYs)、年齢調整罹患率(ASIR)、DALYsの年齢調整率(ASDR)に関する詳細情報を収集した。統合失調症のASIRおよびASDRの時間的傾向を定量化するため、ASIRおよびASDRの推定年間変化率(EAPC)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・2017年の世界的な統合失調症有病数は113万件(95%不確定性区間[UI]:100万~128万)、1,266万DALYs(95%UI:948万~1,556万)であった。・1990~2017年の期間に、世界的なASIRはわずかに減少し(EAPC:-0.124、95%UI:-0.114~-0.135)、ASDRは変化が認められなかった。・有病数、DALYs、ASIR、ASDRは、女性よりも男性で高かった。・年齢別にみると、有病数は20~29歳で、DALYsの割合は30~54歳で最も高かった。・地域別にみると、2017年のASIR(19.66、95%UI:17.72~22.00)とASDR(205.23、95%UI:153.13~253.34)は、東アジアで最も高かった。・社会人口統計指標(SDI)別にみると、ASIRは高~中程度SDIの国で最も高く、ASDRは高度SDIの国で最も高かった。・ASDRのEAPCは、1990年のASDRと負の相関が認められた(p=0.001、ρ=-0.23)。 著者らは「統合失調症の世界的な負担は、依然として大きく、増加し続けており、医療システムの負担増大につながっている。本調査結果は、高齢社会における統合失調症患者の増加を考慮した、リソース配分と医療サービスの計画に役立つであろう」としている。

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スタチンは卵巣がんの発生を抑制するか/JAMA

 スタチン治療薬のターゲット遺伝子の抑制は、上皮性卵巣がんのリスク低下と有意に関連することが、英国・ブリストル大学のJames Yarmolinsky氏らによるメンデルランダム化解析の結果、示された。ただし著者は、「今回の所見は、スタチン治療薬がリスクを低減することを示す所見ではない。さらなる研究を行い治療薬においても同様の関連性が認められるかを明らかにする必要がある」と述べている。これまで前臨床試験および疫学的研究において、スタチンが上皮性卵巣がんリスクに対して化学的予防効果をもたらす可能性が示唆されていた。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。HMG-CoA還元酵素、NPC1L1、PCSK9の治療的抑制をGWASメタ解析データで解析 研究グループは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A(HMG-CoA)還元酵素(HMG-CoA還元酵素の機能低下と関連する遺伝子異型、スタチン治療薬のターゲット遺伝子)と、一般集団における上皮性卵巣がんの関連性、およびBRCA1/2変異遺伝子との関連性を調べる検討を行った。 HMG-CoA還元酵素、Niemann-Pick C1-Like 1(NPC1L1)、proprotein convertase subtilisin/kexin type 9(PCSK9)の治療的抑制の代替として、HMGCR、NPC1L1、PCSK9における一塩基遺伝子多型(SNPs)とLDLコレステロール低下との関連が示されている、ゲノムワイド関連解析(GWAS)のメタ解析データ(19万6,475例以下で構成)を用いた。 このGWASメタ解析のデータを用いたOvarian Cancer Association Consortium(OCAC)による浸潤上皮性卵巣がんの症例対照解析での上記SNPsに関するサマリー統計(6万3,347例)と、Consortium of Investigators of Modifiers of BRCA1/2(CIMBA)によるBRCA1/2変異遺伝子キャリアにおける上皮性卵巣がんの後ろ向きコホート解析のサマリー統計(3万1,448例)を入手して評価した。2つのコンソーシアムにおける被験者は、1973~2014年に登録され、2015年まで追跡を受けていた。OCAC被験者は14ヵ国から、CIMBA被験者は25ヵ国から参加していた。 SNPsは、multi-allelicモデルに統合され、ターゲットの終身阻害を意味するメンデルランダム化推定値を、逆分散法ランダム効果モデルを用いて算出した。 主要曝露は、HMG-CoA還元酵素の遺伝的プロキシ阻害、副次曝露は、NPC1L1とPCSK9の遺伝的プロキシ阻害および遺伝的プロキシLDLコレステロール値で、主要評価項目は、総合的および組織型特異的な浸潤上皮性卵巣がん(一般集団対象)、上皮性卵巣がん(BRCA1/2変異遺伝子キャリア対象)、卵巣がんオッズ(一般集団対象)およびハザード比(BRCA1/2変異遺伝子キャリア対象)とした。HMG-CoA還元酵素の遺伝的プロキシ阻害は卵巣がんリスク低下と有意に関連 OCACのサンプル例は浸潤上皮性卵巣がんの女性2万2,406例と対照4万941例であり、CIMBAのサンプル例は上皮性卵巣がんの女性3,887例と対照2万7,561例であった。コホート年齢中央値は41.5~59.0歳の範囲にわたっており、全被験者が欧州人であった。 主要解析において、遺伝的プロキシLDLコレステロール値1mmol/L(38.7mg/dL)低下に相当するHMG-CoA還元酵素の遺伝的プロキシ阻害が、上皮性卵巣がんのオッズ低下と関連することが示された(オッズ比[OR]:0.60[95%信頼区間[CI]:0.43~0.83]、p=0.002)。 また、BRCA1/2変異遺伝子キャリア対象の解析では、HMG-CoA還元酵素の遺伝的プロキシ阻害と卵巣がんリスク低下の関連が示された(ハザード比[HR]:0.69、[95%CI:0.51~0.93、p=0.01)。 副次解析では、NPC1L1(OR:0.97[95%CI:0.53~1.75]p=0.91)およびPCSK9(0.98[0.85~1.13]、p=0.80)の遺伝的プロキシ阻害、LDLコレステロール値(0.98[0.91~1.05]、p=0.55)のいずれも上皮性卵巣がんとの有意な関連は認められなかった。

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多遺伝子リスクスコアの追加、CADリスク予測をやや改善/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)のリスク評価モデルpooled cohort equations(PCE)と多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score)を組み合わせることで、CAD発症の予測精度がわずかではあるが統計学的に有意に改善し、一部の個人集団においてリスク分類を改善することが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJoshua Elliott氏らが、観察研究の結果を報告した。著者は、「PCEでの遺伝情報の使用は、臨床で実施される前にさらなる検証が必要である」とまとめている。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。多遺伝子リスクスコアのみvs.PCEのみvs.両方の組み合わせで検証 研究グループは、2006~10年にUK Biobankに登録された参加者のうち、一般的なCADを有する1万5,947例、およびそれらと年齢・性別をマッチングした同数の対照例を用いて、公表されているゲノムワイド関連解析の要約統計に基づくCADの多遺伝子リスクスコアの予測性能を最適化した。 また、独立した35万2,660例(2017年まで追跡)のコホートを使用し、多遺伝子リスクスコア、PCEおよびその両方の組み合わせについて、CAD発症の予測精度を評価した。 主要評価項目はCAD(心筋梗塞とそれに関連する後遺症)で、リスク閾値を7.5%として判別(discrimination)、較正(calibration)、再分類について評価した。PCEに多遺伝子リスクスコア追加でCAD予測精度がわずかに改善 検証モデルの予測精度評価に用いた35万2,660例(平均年齢55.9歳、女性20万5,297例[58.2%])において、追跡調査期間中央値8年でCADイベントの発生が6,272例確認された。 CAD判別のC統計量は、多遺伝子リスクスコアのみが0.61(95%信頼区間[CI]:0.60~0.62)、PCEのみが0.76(95%CI:0.75~0.77)、および両方の組み合わせでは0.78(95%CI:0.77~0.79)であった。後者の2モデル(PCEのみと両方の組み合わせ)間のC統計量の変化は、0.02(95%CI:0.01~0.03)であった。 モデルのキャリブレーション(較正)については、PCEによるリスクの過大評価が示唆され、再較正後に修正された。 リスク閾値を7.5%としてPCEに多遺伝子リスクスコアを追加すると、ネット再分類改善(net reclassification improvement:NRI)は、CAD発症例で4.4%(95%CI:3.5~5.3)、非発症例で-0.4%(95%CI:-0.5~-0.4)であった(全体のNRIは4.0%、95%CI:3.1~4.9)。

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オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第11回

第11回 オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで1)Leonetti A, Sharma S, Minari R, et al. Resistance Mechanisms to Osimertinib in EGFR-mutated Non-Small Cell Lung Cancer. Br J Cancer. 2019;121:725-737.2)G.R.Oxnard, J.C.-H.Yang, H Yu, et al. TATTON: A multi-arm, phase Ib trial of osimertinib combined with selumetinib, savolitinib or durvalumab in EGFR-mutant lung cancer. Ann of Oncol. In press.FLAURA試験の結果、EGFR変異陽性例に対する初回治療はオシメルチニブというコンセンサスが得られたものの、日本ではサブセットに関する賛否両論もある。一方、今後の治療戦略を考えるうえで、オシメルチニブの多彩な耐性機序を整理しておくことは非常に重要であり、今回British Journal of Cancer誌によくまとまったレビューが掲載されているので紹介したい(論文1 Fig 1は必見)。本稿では耐性機序をOn-target / Off-target /組織型の転化に分け、頻度は初回治療・既治療(T790M陽性)に基づいて記載した。末尾にそれぞれに関する治療戦略も付記しているが、多くの治療が前臨床・治験レベルであることはご了解いただきたい。1. On-target(EGFR遺伝子)の獲得耐性頻度 初回治療 7%(FLAURA)   既治療 21%(AURA3)いずれにおいてもC797X変異が最多であり、それ以外にもL792X、G796X、L718Qなどが報告されている。L792Xは他のEGFR変異と併存することが多く、逆にL718QはC797Xとは独立して生じるようで、これらが今後の薬剤選択にどのように影響するのかは現時点で不明。FLAURAでは、T790Mの出現は認められていない。T790M陽性例では、治療期間が短い一因として、耐性時にT790M変異が消失している例が挙げられ、こうした症例ではKRAS変異(最近注目のG12Cではない)やMET遺伝子増幅など他の耐性機序を生じている症例が多かった。2. Off-target(EGFR遺伝子以外)の獲得耐性Off-targetによる耐性は、初回治療としてオシメルチニブを用いた場合に多くなる傾向があり、EGFR変異は保持されたままであることが多い。これは腫瘍のheterogeneityを反映しているのでは、と考察されている。機序は多種多様だが、報告されている中ではMET遺伝子増幅が最多。頻度 初回治療 15%(FLAURA)   既治療 19%(AURA3)またMET遺伝子の近傍に位置するCDK6やBRAFなどの遺伝子増幅を同時に認める症例があるとのこと(Le X, et al. Clin Cancer Res. 2018;24:6195-6203.PMID: 30228210)。近年いくつかの薬剤の有効性が示されているMET exon14 skippingも症例報告レベルではあるが報告されている(Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。ほかにはHER2遺伝子増幅(FLAURA 2%、AURA3 5%)、NRAS変異、KRAS G12S変異、BRAF V600E変異(同3%、3%)、PIK3CA変異(4%、4%)、cyclin D1などcell cycle関連の変異(同12%、10%)、融合遺伝子変異(FGFR・RET/NTRK1・ROS1・BRAFなど3~10%、初回投与では少ない?)などがそれぞれ報告されている。3. 組織型の転化小細胞肺がんへの転化が4~15%でみられ、これらの症例では治療前からRB1やTP53の不活性化が確認されている。最近では扁平上皮がんへの転化も報告されている(治療ラインにかかわらず7%前後、Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。4. 有効な治療方針は?耐性例ではとくに、空間的・時間的な不均一性が問題になることが指摘されている(現時点で何か解決策があるわけではないが)。つまり1ヵ所の再生検のみでは全体を十分に把握できていない可能性がある。一方で上記の頻度は解析材料(組織生検か、リキッドバイオプシーか)にも左右されうることには注意が必要。耐性時点でのT790M変異消失は予後不良とする報告がある(Oxnard GR, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1527-1534.)。耐性機序が多彩であることを踏まえてNEJ009レジメンに倣った化学療法の併用について前臨床での報告がなされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2019;38:222.)。C797S変異:前臨床の段階だが第4世代EGFR-TKI(EAI045)やアロステリック阻害薬(JBJ-04-125-02)の開発が進行中(To C, et al. Cancer Discov. 2019;9:926-943.)。MET遺伝子増幅/変異に対してはクリゾチニブをはじめとしたc-MET阻害薬の併用やcabozantinibの有効性が少数ながら報告されている(Kang J, et al. J Thorac Oncol. 2018;13: e49-e53.)。HER2遺伝子増幅例に対しては前臨床でオシメルチニブとT-DM1の併用が有望とされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2017;36:174.)。その他BRAF阻害薬、AXL阻害薬、ベバシズマブ、Bcl-2阻害薬、mTORC阻害薬、CDK4/6阻害薬など多くの薬剤が検討中であるが、総じて臨床データは乏しい。最近ではTATTON試験においてc-MET阻害薬savolitinibやMEK阻害薬selumetinibとの併用が報告された。安全性は確認されたものの、対象が雑多なこともあり有効性について目立った成果は示せていない(Oxnard GR, et al. Ann Oncol. 2020 Jan 24. [Epub ahead of print])。特殊な治療として、本論文の末尾にはCRISPRを用いた‘molecular surgeon’についても紹介されていた(Tang H, et al. EMBO Mol Med. 2016;8:83-85.)。

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初回エピソード統合失調症に対する抗精神病薬の有効性比較

 抗精神病薬の有効性プロファイルの違いは、初回エピソード統合失調症患者に最適な治療選択肢を与え、長期的なアウトカムに影響を及ぼす重要なポイントとなる。スペイン・カンタブリア大学のMarcos Gomez-Revuelta氏らは、3年間のフォローアップにおける初回エピソード統合失調症患者に対する、オランザピン、リスペリドン、ハロペリドール、アリピプラゾール、ziprasidone、クエチアピンの有効性について比較検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2020年1月24日号の報告。 2001年2月~2011年1月まで、プロスペクティブランダム化オープンラベルのフェーズII試験を実施した。薬物治療未実施の初回エピソード統合失調症患者376例を、オランザピン群(55例)、リスペリドン群(63例)、ハロペリドール群(56例)、アリピプラゾール群(78例)、ziprasidone群(62例)、クエチアピン群(62例)にランダムに割り付け、3年間フォローアップを行った。主要評価項目は、すべての原因による治療中止とした。また、臨床的な有効性の分析にはITT解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・3年間の脱落率は、全体で20.75%であった。・治療中止率は、薬剤間で有意な差が認められた(χ2=79.86、p=0.000)。 ●オランザピン群:69.09% ●リスペリドン群:71.43% ●アリピプラゾール群:73.08% ●ziprasidone群:79.03% ●ハロペリドール群:89.28% ●クエチアピン群:95.53%・有効性、アドヒアランス、忍容性の欠如に関する有意な差によって、すべての原因による治療中止までの時間が決定することが、3年のフォローアップ期間中に薬剤間で観察された(Log Rank=92.240、p=0.000)。・薬剤間の有意な差は、眠気/鎮静、睡眠時間の延長、アキネジア、体重増加、射精機能障害、錐体外路症状、無月経で認められた。 著者らは「有効性の観点から、初回エピソード統合失調症患者に対する第1選択薬として、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールの利点が示唆された。異なる中断パターンを特定することで、初回エピソード統合失調症患者に対する治療選択の最適化につながる可能性がある」としている。

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エヌトレクチニブ、ROS1肺がんに国内承認/中外

 中外製薬は、2020年2月21日、エヌトレクチニブ(商品名: ロズリートレク)に関し、ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)の適応拡大の承認を厚生労働省より取得したと発表。 エヌトレクチニブは、ROS1およびTRKファミリーを選択的に阻害するチロシンキナーゼ阻害薬で、「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん」の効能効果にて2019年6月18日に承認を取得し、同年9月4日に発売している。 今回の承認は、主にオープンラベル多施設国際共同第II相臨床試験(STARTRK-2試験)の成績に基づいている。 なお、エヌトレクチニブの「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の適応判定は、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルによって行う。FoundationOne CDxがんゲノムプロファイルのコンパニオン診断機能の追加については、2019年12月25日に厚生労働省より承認を取得している。

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CHD予測モデルにおける多遺伝子リスクスコアの価値とは/JAMA

 多遺伝子リスクスコアは、冠動脈疾患(CHD)のイベント発生を予測するが、2013年米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)による動脈硬化性疾患のリスク予測モデル(pooled cohort equations:PCE)と比べて、識別能、キャリブレーション(較正)、リスク再分類を有意に改善しないことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のJonathan D. Mosley氏らが、被験者数合計7,000例超の2つの米国成人コホートからを後ろ向きに解析し明らかにした。多遺伝子リスクスコアは、何百万もの一塩基遺伝子多型(SNP)の情報を含むため、幅広い集団のCHDスクリーニングに役立つ可能性が示唆されていた。著者は「今回の結果は、多遺伝子リスクスコアは、一般白人中高年の集団においてはリスク予測能を強化しないことを示唆するものである」とまとめている。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。欧州系白人被験者約4,900例と多民族約2,400例のコホートを追跡評価  研究グループは、地域における動脈硬化症リスク(ARIC)スタディの欧州系白人被験者4,847例と、アテローム性動脈硬化症の多民族(MESA)スタディの被験者2,390例を対象に後ろ向きコホート試験を行い、多遺伝子リスクスコアの予測精度を検証した。ARICスタディの被験者は試験開始時45~64歳で、試験期間は1986~2015年だった。MESAスタディの被験者は試験開始時45~84歳で、2000~02年に試験を開始し、2015年まで追跡された。 多遺伝子リスクスコアと、2013年ACC/AHAによるPCEモデルを比較した。遺伝子リスクは、663万149 SNP(一塩基多型)のアレル量から加重合計で求めた。 主要アウトカムは、モデル識別能により評価した10年初回CHDイベント(心筋梗塞、致死的冠動脈イベント、無症候性心筋梗塞、血行再建術、蘇生心停止)の予測と、キャリブレーション(較正)、NRI(スコアの再分類により純増した改善)だった。多遺伝子リスクスコアと10年CHDリスクには有意な関連 ARICスタディの被験者の平均年齢は62.9(SD 5.6)歳、女性は56.4%で、MESAスタディの被験者の平均年齢は61.8(9.6)歳、女性は52.2%だった。両コホートの追跡期間中央値はそれぞれ、15.5年(四分位範囲[IQR]:6.3年)と14.2年(2.5年)で、その間のCHDイベント発生はそれぞれ696例(14.4%)と227例(9.5%)だった。 多遺伝子リスクスコアは、10年CHDイベントリスクと有意な関連が認められ、1標準偏差増加ごとのハザード比は、ARICコホート1.24(95%信頼区間[CI]:1.15~1.34)、MESAコホート1.38(1.21~1.58)だった。 ACC/AHAによるPCEモデルに多遺伝子リスクスコアを追加しても、C統計量はいずれのコホートでも増加しなかった(ARICコホートのC統計量の変化:-0.001[95%CI:-0.009~0.006]、MESAコホートの同変化:0.021[-0.0004~0.043])。 10年CHDリスク7.5%を閾値にしてPCEモデルに多遺伝子リスクスコアを追加しても、ARICコホート、MESAコホートともにNRIの有意な改善は認められなかった(ARICコホートのNRI変化:0.018[95%CI:-0.012~0.036]、MESAコホートの同変化:0.001[-0.038~0.076])。また、多遺伝子リスクスコアを追加しても、いずれのコホートにおいてもキャリブレーション(較正)を有意に改善しなかった。

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世界のCKD患者、27年間で3割増/Lancet

 2017年の世界の慢性腎臓病(CKD)の推定有病率は9.1%で、1990年から29.3%増大していたことが明らかにされた。また、同年の全世界のCKDによる推定死亡者数は120万人に上ることも示され、CKDの疾病負荷は、社会人口指数(SDI)五分位のうち低いほうから3つに該当する国に集中しているという。イタリア・Mario Negri研究所のBoris Bikbov氏ら「GBD Chronic Kidney Disease Collaboration」研究グループが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。ヘルスシステムの計画策定には、CKDを注意深く評価する必要があるが、CKDに関する罹患率や死亡率といったデータは乏しく、多くの国で存在すらしていないという。研究グループは、世界的、および地域、国ごとのCKDの疾病負荷の状況、さらには腎機能障害に起因した心血管疾患および痛風の疾病負荷を調べるGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2017を行った。Lancet誌オンライン版2020年2月13日号掲載の報告。CKDの罹患率や有病率を透析や腎移植に関するデータから推算 研究グループは、PubMedやEmbaseを基にシステマティックレビューを行い、1980年以降に発表された研究結果を選び出した。また、2017年までに報告された腎代替療法に関する年間レジストリから、透析や腎移植に関するデータを抽出した。 それらのデータを基に、Cause of Death Ensembleモデル(CODEm)とベイズ・メタ回帰分析ツールを用いて、CKDの罹患率や有病率、障害生存年数(YLD)、死亡率、損失生存年数(YLL)、障害調整生存年数(DALY)を推算した。比較リスク評価アプローチにより、腎機能障害に起因する心血管疾患の割合や痛風の負荷についても推算した。1990~2017年でCKD有病率は3割増加した 2017年の全世界のCKDによる推定死亡者数は、120万人だった(95%不確定区間[UI]:120万~130万)。1990~2017年にかけて、CKDによる世界の全年齢死亡率は41.5%(95%UI:35.2~46.5)増加したが、年齢調整死亡率に有意な変化はなかった(2.8%、-1.5~6.3)。 2017年のステージを問わない全世界の推定CKD症例数は6億9,750万例(95%UI:6億4,920万~7億5,200万)で、全世界の有病率は9.1%(95%UI:8.5~9.8)だった。その3分の1は、中国(1億3,230万例、95%UI:1億2,180万~1億4,370万)とインド(1億1,510万例、1億680万~1億2,410万)で占められていた。また、バングラデシュ、ブラジル、インドネシア、日本、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、ロシア、米国、ベトナム各国のCKD症例数がいずれも1,000万例超だった。195ヵ国のうち79ヵ国において2017年のGBDにおけるCKDの有病症例が100万例超だった。 全世界の全年齢CKD有病率は、1990年から29.3%(95%UI:26.4~32.6)増加した一方で、年齢調整有病率は安定的に推移していた(1.2%、-1.1~3.5)。 CKDによる2017年のDALYは3,580万DALY(95%UI:3,370万~3,800万)で、その約3分の1は糖尿病性腎症によるものだった。また、CKDの疾病負荷のほとんどが、SDIの五分位のうち低いほうから3つに該当する国に集中していた。 腎機能障害に起因する心血管疾患関連死は140万例(95%UI:120万~160万)、心血管疾患DALYは2,530万例(2,220万~2,890万)と推定された。 結果を踏まえて著者は、「腎疾患は、世界の人々の健康に重大な影響を与えており、世界の罹患や死亡の直接的な要因であり、心血管疾患の重大なリスク因子となっている」と述べ、「CKDの多くは予防および治療が可能であり、世界のヘルス政策の意思決定で最も注目に値するものである。とくに低・中SDIの国や地域では注視すべきである」とまとめている。

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オゾン10μg/m3増加で、死亡率0.18%上昇/BMJ

 オゾンが10μg/m3増加すると、死亡の相対リスクは0.18%上昇し、大気質基準(air quality standards)がより厳格であれば、オゾン関連死は低下する可能性があることが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAna M. Vicedo-Cabrera氏らの検討で示された。地表オゾンと死亡との短期的な関連の研究の多くは、測定場所の数が少なく、地理的地域が限定的で、さまざまなデザインやモデル化の方法を用いて行われてきたという。ほとんどの研究が、地表オゾンと死亡には関連があるとしているが、結果は不均一であり、統計学的な検出力は限定的で研究間にも差異があるため、さまざまな国や地域での重要性の高い比較は困難とされる。BMJ誌2020年2月10日号掲載の報告。日本の45都市を含む時系列研究 本研究は、オゾン曝露に関連する短期的な死亡リスクと死亡率の増加の評価を目的とする2段階時系列研究である(英国医学研究会議[MRC]などの助成による)。 Multi-Country Multi-City(MCC)Collaborative Research Networkのデータベースから、1985~2015年の20ヵ国406都市(2011~15年の日本の45都市を含む)のデータを抽出した。研究期間内に各都市で記録された死亡例のデータを用いて、1日当たりの総死亡率を評価した。 平均期間13年における406都市の合計4,516万5,171件の死亡について解析した。国別で0.06~0.35%の幅、日本は0.20% オゾン曝露と死亡リスクには関連性が認められ、当日と前日のオゾンの平均10μg/m3の増加により、全体の死亡の相対リスクは0.18%上昇した(相対リスク:1.0018、95%信頼区間[CI]:1.0012~1.0024)。 この相対リスクの上昇には、参加国間にある程度の異質性が認められた(I2=29.8%、Cochran Q:p<0.001)。英国(相対リスク:1.0035)、南アフリカ共和国(1.0027)、エストニア(1.0023)、カナダ(1.0023)でリスクの上昇が大きかったのに対し、オーストラリア、中国、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、日本(1.0020)、韓国、スウェーデン、スイス、米国は1.0014~1.0020の範囲で近似しており、ギリシャ(1.0011)、メキシコ(1.0008)、ポルトガル(1.0011)、スペイン(1.0006)、台湾(1.0010)はリスクの上昇の割合が小さく、不明確だった。 最大バックグラウンド濃度(70μg/m3)を超えるオゾンへの曝露による短期的な死亡率の上昇は0.26%(95%CI:0.24~0.28)であり、これは406都市全体で年間8,203件(3,525~1万2,840)の死亡数の増加に相当した。また、WHOガイドラインの基準値(100μg/m3)を超えた日に限定しても、死亡率の上昇は0.20%(95%CI:0.18~0.22)と実質的に残存しており、これは年間6,262件の死亡数の増加に相当した。 さらに、大気質基準の閾値が高くなるに従って、死亡率の上昇の割合は、欧州(欧州連合指令:120μg/m3)が0.14%、米国(米国環境大気質基準[NAAQS]:140μg/m3)が0.09%、中国(中国環境大気質基準[CAAQS]のレベル2:160μg/m3)は0.05%と、漸進的に低下した。 著者は、「これらの知見は、国内および国際的な気候に関する施策の中で策定された効率的な大気清浄介入や軽減戦略の実施と関連がある」としている。

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アキレス腱断裂の治療効果、石膏ギプスvs.機能的装具/Lancet

 アキレス腱断裂で保存療法を受ける患者の管理では、早期の荷重負荷(アキレス腱断裂スコア[Achilles tendon rupture score:ATRS]で評価)において、従来の石膏ギプスは機能的装具に優越せず、資源利用の総費用はむしろ高い傾向にあることが、英国・オックスフォード大学のMatthew L. Costa氏らが行った無作為化試験「UKSTAR試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年2月8日号に掲載された。保存療法を受けるアキレス腱断裂患者では、従来、数週間にわたり石膏ギプスで腱を固定する治療が行われてきた。機能的装具は、より早期に運動を可能にする非手術的な代替療法であるが、有効性と安全性のエビデンスは十分ではないという。経済的評価を含む無作為化試験 研究グループは、保存療法を受けるアキレス腱断裂患者において、ギプスと機能的装具の機能・QOLアウトカムおよび資源利用の費用を比較する目的で、実用的な無作為化対照比較優越性試験を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価計画の助成による)。 対象は、年齢16歳以上、初発のアキレス腱断裂の患者であった。患者は外科医とともに、標準的な処置として保存療法が適切かを検討し、患者が手術をしないと決めた場合に、試験への参加が可能とされた。 被験者は、ギプスまたは機能的装具による治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入の期間は8週間だった。 主要アウトカムは、9ヵ月時の患者報告によるATRSとし、修正intention-to-treat(ITT)集団で解析した。ATRSは、アキレス腱関連の症状、身体活動性、疼痛を評価する10項目からなるスコア(0~100点、100点が最も良好)である。安全性アウトカムとして再断裂の評価を行った。また、患者は資源利用質問票に回答し、資源利用の値を費用に変換した。9ヵ月時ATRS:ギプス群74.4点vs.機能的装具群72.8点 2016年8月~2018年5月の期間に540例(平均年齢48.7[SD 13.8]歳、男性79%)が登録され、ギプス群に266例、機能的装具群には274例が割り付けられた。断裂の原因は70%がスポーツ活動であった。527例(98%)が修正ITT集団に含まれた。 受傷後9ヵ月時の平均ATRSは、ギプス群が74.4(SD 19.8)点、機能的装具群は72.8(20.4)点であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後平均群間差:-1.38点、95%信頼区間[CI]:-4.9~2.1、p=0.44)。8週時のATRSは機能的装具群で優れた(ギプス群35.3点vs.機能的装具群40.3点、補正後平均群間差:5.53、95%CI:2.0~9.1、p=0.0024)が、この差に臨床的な意義があるかは不明であった。また、3および6ヵ月時にも有意な差はなかった。 健康関連QOL(EQ-5D-5L)は、ATRSと同様のパターンを示し、受傷後8週時は機能的装具群で有意に良好であったが、それ以降は両群間に差はみられなかった。 合併症(腱再断裂、深部静脈血栓症、肺塞栓症、転倒、踵の痛み、足部周辺の感覚異常、圧迫創傷)の発現にも差はなかった。腱再断裂は、ギプス群が266例中17例(6%)、機能的装具群は274例中13例(5%)で発現した(p=0.40)。 介入の直接費用の平均額は、ギプス群が36ポンドと、機能的装具群の109ポンドに比べ有意に安価であった(平均群間差:73ポンド、95%CI:67~79、p<0.0001)。一方、医療と個別の社会サービスの総費用の平均額は、それぞれ1,181ポンドおよび1,078ポンドであり、機能的装具群でわずかに低いものの有意な差はなかった(平均群間差:103ポンド、95%CI:-289~84)。 著者は、「早期の荷重負荷において、ギプスの安全で費用効果が優れる代替法として、機能的装具を考慮してもよいと考えられる」としている。

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再発性多発軟骨炎〔RP:relapsing polychondritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis:RP)は、外耳の腫脹、鼻梁の破壊、発熱、関節炎などを呈し全身の軟骨組織に対して特異的に再発性の炎症を繰り返す疾患である。眼症状、皮膚症状、めまい・難聴など多彩な症状を示すが、呼吸器、心血管系、神経系の病変を持つ場合は、致死的な経過をたどることがまれではない。最近、この病気がいくつかのサブグループに分類することができ、臨床的な特徴に差異があることが知られている。■ 疫学RPの頻度として米国では100万人あたりの症例の推定発生率は3.5人。米国国防総省による有病率調査では100万人あたりの症例の推定罹患率は4.5人。英国ではRPの罹患率は9.0人/年とされている。わが国の全国主要病院に対して行なわれた疫学調査と人口動態を鑑みると、発症年齢は3歳から97歳までと広範囲に及び、平均発症年齢は53歳、男女比はほぼ1で、患者数はおおよそ400~500人と推定された。RPは、平成27年より新しく厚生労働省の指定難病として認められ4~5年程度経過したが、筆者らが疫学調査で推定した患者数とほぼ同等の患者数が実際に医療を受けているものと思われる。生存率は1986年の報告では、10年生存率55%とされていた。その後の報告(1998年)では、8年生存率94%であった。筆者らの調査では、全症例の中の9%が死亡していたことから、90%以上の生存率と推定している。■ 病因RPの病因は不明だが自己免疫の関与が報告されている。病理組織学的には、炎症軟骨に浸潤しているのは主にCD4+Tリンパ球を含むリンパ球、マクロファージ、好中球や形質細胞である。これら炎症細胞、軟骨細胞や産生される炎症メディエーターがマトリックスメタロプロテナーゼ産生や活性酸素種産生をもたらして、最終的に軟骨組織やプロテオグリカンに富む組織の破壊をもたらす。その発症に関する仮説として、初期には軟骨に向けられた自己免疫反応が起こりその後は、非軟骨組織にさらに自己免疫反応が広がるという考えがある。すなわち、病的免疫応答の開始メカニズムとしては軟骨組織の損傷があり、軟骨細胞または細胞外軟骨基質の免疫原性エピトープを露出させることにある。耳介の軟骨部分の穿孔に続いて、あるいはグルコサミンコンドロイチンサプリメントの摂取に続いてRPが発症したとする報告は、この仮説を支持している。II型コラーゲンのラットへの注射は、耳介軟骨炎を引き起こすこと、特定のHLA-DQ分子を有するマウスをII型コラーゲンで免疫すると耳介軟骨炎および多発性関節炎を引き起こすこと、マトリリン-1(気管軟骨に特異的な蛋白の一種)の免疫はラットにRPの呼吸障害を再現するなどの知見から、軟骨に対する自己免疫誘導の抗原は軟骨の成分であると考えられている。多くの自己免疫疾患と同様にRPでも疾患発症に患者の腫瘍組織適合性抗原は関与しており、RPの感受性はHLA-DR4の存在と有意に関連すると報告されている。臨床的にも、軟骨、コラーゲン(主にII型、IX、XおよびXIの他のタイプを含む)、マトリリン-1および軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)に対する自己抗体はRP患者で見出されている。いずれの自己抗体もRP患者の一部でしか認められないために、RP診断上の価値は認められていない。多くのRP患者の病態に共通する自己免疫反応は明らかにはなっていない。■ 症状1)基本的な症状RPでは時間経過とともに、あるいは治療によって炎症は次第に治まるが、再発を繰り返し徐々にそれぞれの臓器の機能不全症状が強くなる。軟骨の炎症が基本であるが、必ずしも軟骨細胞が存在しない部位にも炎症が認められる事があり、注意が必要である。特有の症状としては、軟骨に一致した疼痛、発赤、腫脹であり、特に鼻根部(鞍鼻)や耳介の病変は特徴的である。炎症は、耳介、鼻柱、強膜、心臓弁膜部の弾性軟骨、軸骨格関節における線維軟骨、末梢関節および気管の硝子軟骨などのすべての軟骨で起こりうる。軟骨炎は再発を繰り返し、耳介や鼻の変形をもたらす。炎症発作時の症状は、軟骨部の発赤、腫脹、疼痛であるが、重症例では発熱、全身倦怠感、体重減少もみられる。突然の難聴やめまいを起こすこともある。多発関節炎もよく認められる。関節炎は通常、移動性で、左右非対称性で、骨びらんや変形を起こさない。喉頭、気管、気管支の軟骨病変によって嗄声、窒息感、喘鳴、呼吸困難などさまざまな呼吸器症状をもたらす。あるいは気管や気管支の壁の肥厚や狭窄は無症状のこともあり、逆に二次性の気管支炎や肺炎を伴うこともある。わが国のRPにおいてはほぼ半数の症例が気道病変を持ち、重症化の危険性を有する。呼吸器症状は気道狭窄によって上記の症状が引き起こされるが、狭窄にはいくつかの機序が存在する。炎症による気道の肥厚、炎症に引き続く気道線維化、軟骨消失に伴う吸・呼気時の気道虚脱、両側声帯麻痺などである。気道狭窄と粘膜機能の低下はしばしば肺炎を引き起こし、死亡原因となる。炎症時には気道過敏性が亢進していて、気管支喘息との鑑別を要することがある。この場合には、吸引、気管支鏡、気切、気管支生検などの処置はすべて死亡の誘因となるため、気道を刺激する処置は最小限に留めるべきである。一方で、気道閉塞の緊急時には気切および気管チューブによる呼吸管理が必要になる。2)生命予後に関係する症状生命予後に影響する病変として心・血管系症状と中枢神経症状も重要である。心臓血管病変に関しては男性の方が女性より罹患率が高く、また重症化しやすい。これまでの報告ではRPの患者の15~46%に心臓血管病変を認めるとされている。その内訳としては、大動脈弁閉鎖不全症(AR)や僧帽弁閉鎖不全症、心筋炎、心膜炎、不整脈(房室ブロック、上室性頻脈)、虚血性心疾患、大血管の動脈瘤などが挙げられる。RP患者の10年のフォローアップ期間中において、心血管系合併症による死亡率は全体の39%を占めた。筆者らの疫学調査では心血管系合併症を持つRP患者の死亡率は35%であった。心血管病変で最も高頻度で認められるものはARであり、その有病率はRP患者の4~10%である。一般にARはRPと診断されてから平均で7年程度の経過を経てから認められるようになる。大動脈基部の拡張あるいは弁尖の退行がARの主たる成因である。MRに関してはARに比して頻度は低く1.8~3%と言われている。MRの成因に関しては弁輪拡大、弁尖の菲薄化、前尖の逸脱などで生じる。弁膜症の進行に伴い、左房/左室拡大を来し、収縮不全や左心不全を呈する。RP患者は房室伝導障害を合併することがあり、その頻度は4~6%と言われており、1度から3度房室ブロックのいずれもが認められる。高度房室ブロックの症例では一次的ペースメーカが必要となる症例もあり、ステロイド療法により房室伝導の改善に寄与したとの報告もある。RP患者では洞性頻脈をしばしば認めるが、心房細動や心房粗動の報告は洞性頻脈に比べまれである。心臓血管病変に関しては、RPの活動性の高い時期に発症する場合と無症候性時の両方に発症する可能性があり、RP患者の死因の1割以上を心臓血管が担うことを鑑みると、無症候であっても診察ごとの聴診を欠かさず、また定期的な心血管の検査が必要である。脳梗塞、脳出血、脳炎、髄膜炎などの中枢神経障害もわが国では全経過の中では、およそ1割の患者に認める。わが国では中枢神経障害合併症例は男性に有意に多く、これらの死亡率は18%と高いことが明らかになった。眼症状としては、強膜炎、上強膜炎、結膜炎、虹彩炎、角膜炎を伴うことが多い。まれには視神経炎をはじめより重症な眼症状を伴うこともある。皮膚症状には、口内アフタ、結節性紅斑、紫斑などが含まれる。まれに腎障害および骨髄異形成症候群・白血病を認め重症化する。特に60歳を超えた男性RP患者において時に骨髄異形成症候群を合併する傾向がある。全般的な予後は、一般に血液学的疾患に依存し、RPそのものには依存しない。■ RP患者の亜分類一部の患者では気道病変、心血管病変、あるいは中枢神経病変の進展により重症化、あるいは致命的な結果となる場合もまれではない。すなわちRP患者の中から、より重症になり得る患者亜集団の同定が求められている。フランスのDionらは経験した症例に基づいてRPが3つのサブグループに分けられると報告し、分類した。一方で、彼らの症例はわが国の患者群の臨床像とはやや異なる側面がある。そこで、わが国での実態を反映した本邦RP患者群の臨床像に基づいて新規分類について検討した。本邦RP症例の主要10症状(耳軟骨炎、鼻軟骨炎、前庭障害、関節炎、眼病変、気道軟骨炎、皮膚病変、心血管病変、中枢神経障害、腎障害)間の関連検討を行った。その結果、耳軟骨炎と気道軟骨炎の間に負の相関がみられた。すなわち耳軟骨炎と気道軟骨炎は合併しない傾向にある。また、弱いながらも耳軟骨炎と、心血管病変、関節炎、眼病変などに正の相関がみられた。この解析からは本邦RP患者群は2つに分類される可能性を報告した。筆者らの報告は直ちに、Dionらにより検証され、その中で筆者らが指摘した気管気管支病変と耳介病変の間に存在する強い負の相関に関しては確認されている。わが国においても、フランスにおいても、気管気管支病変を持つ患者群はそれを持たない患者群とは異なるサブグループに属していることが確認されている。そして、気管気管支病変を持たない患者群と耳介病変を持つ患者群の多くはオーバーラップしている。すなわち、わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆された。■ 予後重症度分類(案)(表1)では、致死的になりうる心血管、神経症状、呼吸器症状のあるものは、その時点で重症と考える。腎不全、失明の可能性を持つ網膜血管炎も重症と考えている。それ以外は症状検査所見の総和で重症度を評価する。わが国では、全患者中5%は症状がすべて解消された良好な状態を維持している。67%の患者は、病勢がコントロール下にあり、合計で71%の患者においては治療に対する反応がみられる。その一方、13%の患者においては、治療は限定的効果を示したのみであり、4%の患者では病態悪化または再発が見られている。表1 再発性多発軟骨炎重症度分類画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在ではRPの診断にはMcAdamの診断基準(1976年)やDamianiの診断基準(1976年)が用いられる(表2)。実際上は、(1)両側の耳介軟骨炎(2)非びらん性多関節炎(3)鼻軟骨炎(4)結膜炎、強膜炎、ぶどう膜炎などの眼の炎症(5)喉頭・気道軟骨炎(6)感音性難聴、耳鳴り、めまいの蝸牛・前庭機能障害、の6項目の3項目以上を満たす、あるいは1項目以上陽性で、確定的な組織所見が得られる場合に診断される。これらに基づいて厚生労働省の臨床調査個人票も作成されている(表3)。表2 再発性多発軟骨炎の診断基準●マクアダムらの診断基準(McAdam's criteria)(以下の3つ以上が陽性1.両側性の耳介軟骨炎2.非びらん性、血清陰性、炎症性多発性関節炎3.鼻軟骨炎4.眼炎症:結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、ぶどう膜炎5.気道軟骨炎:喉頭あるいは気管軟骨炎6.蝸牛あるいは前庭機能障害:神経性難聴、耳鳴、めまい生検(耳、鼻、気管)の病理学的診断は、臨床的に診断が明らかであっても基本的には必要である●ダミアニらの診断基準(Damiani's criteria)1.マクアダムらの診断基準で3つ以上が陽性の場合は、必ずしも組織学的な確認は必要ない。2.マクアダムらの診断基準で1つ以上が陽性で、確定的な組織所見が得られる場合3.軟骨炎が解剖学的に離れた2ヵ所以上で認められ、それらがステロイド/ダプソン治療に反応して改善する場合表3 日本語版再発性多発軟骨炎疾患活動性評価票画像を拡大するしかし、一部の患者では、ことに髄膜炎や脳炎、眼の炎症などで初発して、そのあとで全身の軟骨炎の症状が出現するタイプの症例もある。さらには気管支喘息と診断されていたが、その後に軟骨炎が出現してRPと診断されるなど診断の難しい場合があることも事実である。そのために診断を確定する目的で、病変部の生検を行い、組織学的に軟骨組織周囲への炎症細胞浸潤を認めることを確認することが望ましい。生検のタイミングは重要で、軟骨炎の急性期に行うことが必須である。プロテオグリカンの減少およびリンパ球の浸潤に続発する軟骨基質の好塩基性染色の喪失を示し、マクロファージ、好中球および形質細胞が軟骨膜や軟骨に侵入する。これらの浸潤は軟骨をさまざまな程度に破壊する。次に、軟骨は軟骨細胞の変性および希薄化、間質の瘢痕化、線維化によって置き換えられる。軟骨膜輪郭は、細胞性および血管性の炎症性細胞浸潤により置き換えられる。石灰化および骨形成は、肉芽組織内で観察される場合もある。■ 診断と重症度判定に必要な検査RPの診断に特異的な検査は存在しないので、診断基準を基本として臨床所見、血液検査、画像所見、および軟骨病変の生検の総合的な判断によって診断がなされる。生命予後を考慮すると軽症に見えても気道病変、心・血管系症状および中枢神経系の検査は必須である。■ 血液検査所見炎症状態を反映して血沈、CRP、WBCが増加する。一部では抗typeIIコラーゲン抗体陽性、抗核抗体陽性、リウマチ因子陽性、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性となる。サイトカインであるTREM-1、MCP-1、MIP-1beta、IL-8の上昇が認められる。■ 気道病変の評価呼吸機能検査と胸部CT検査を施行する。1)呼吸機能検査スパイロメトリー、フローボリュームカーブでの呼気気流制限の評価(気道閉塞・虚脱による1秒率低下、ピークフロー低下など)2)胸部CT検査(気道狭窄、気道壁の肥厚、軟骨石灰化など)吸気時のみでなく呼気時にも撮影すると病変のある気管支は狭小化がより明瞭になり、病変のある気管支領域は含気が減少するので、肺野のモザイク・パターンが認められる。3)胸部MRI特にT2強調画像で気道軟骨病変部の質的評価が可能である。MRI検査はCTに比較し、軟骨局所の炎症と線維化や浮腫との区別をよりよく描出できる場合がある。4)気管支鏡検査RP患者は、気道過敏性が亢進しているため、検査中や検査後に症状が急変することも多く、十分な経験を持つ医師が周到な準備をのちに実施することが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)全身の検索による臓器病変の程度、組み合わせにより前述の重症度(表2)と活動性評価票の活動性(表3)を判定して適切な治療方針を決定することが必要である。■ 標準治療の手順軽症例で、炎症が軽度で耳介、鼻軟骨に限局する場合は、非ステロイド系抗炎症薬を用いる。効果不十分と考えられる場合は、少量の経口ステロイド剤を追加する。生命予後に影響する臓器症状を認める場合の多くは積極的なステロイド治療を選ぶ。炎症が強く呼吸器、眼、循環器、腎などの臓器障害や血管炎を伴う場合は、経口ステロイド剤の中等~大量を用いる。具体的にはプレドニゾロン錠を30~60mg/日を初期量として2~4週継続し、以降は1~2週ごとに10%程度減量する。これらの効果が不十分の場合にはステロイドパルス療法を考慮する。ステロイド減量で炎症が再燃する場合や単独使用の効果が不十分な場合、免疫抑制剤の併用を考える。■ ステロイド抵抗性の場合Mathianらは次のようなRP治療を提唱している。RPの症状がステロイド抵抗性で免疫抑制剤が必要な場合には、鼻、眼、および気管の病変にはメトトレキサートを処方する。メトトレキサートが奏功しない場合には、アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)またはミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)を次に使用する。シクロスポリンAは他の免疫抑制剤が奏功しない場合に腎毒性に注意しながら使用する。従来の免疫抑制剤での治療が失敗した場合には、生物学的製剤の使用を考慮する。現時点では、抗TNF治療は、従来の免疫抑制剤が効かない場合に使用される第1選択の生物学的製剤である。最近では生物学的製剤と同等以上の抗炎症効果を示すJAK阻害薬が関節リウマチで使用されている。今後、高度の炎症を持つ症例で生物学的製剤を含めて既存の治療では対応できない症例については、JAK阻害薬の応用が有用な場合があるかもしれない。今後の検討課題と思われる。心臓弁膜病変や大動脈病変の治療では、ステロイドおよび免疫抑制剤はあまり有効ではない。したがって、大動脈疾患は外科的に治療すべきであるという意見がある。わが国でも心臓弁膜病変や大動脈病変の死亡率が高く、PRの最重症病態の1つと考えられる。大動脈弁病変および近位大動脈の拡張を伴う患者では、通常、大動脈弁置換と上行大動脈の人工血管(composite graft)置換および冠動脈の再移植が行われる。手術後の合併症のリスクは複数あり、それらは術後ステロイド療法(および/または)RPの疾患活動性そのものに関連する。高安動脈炎に類似した血管病変には必要に応じて、動脈のステント留置や手術を行うべきとされる。呼吸困難を伴う症例には気管切開を要する場合がある。ステント留置は致死的な気道閉塞症例では適応であるが、最近、筆者らの施設では気道感染の長期管理という視点からステント留置はその適応を減らしてきている。気管および気管支軟化病変の患者では、夜間のBIPAP(Biphasic positive airway pressure)二相性陽性気道圧または連続陽性気道圧で人工呼吸器の使用が推奨される。日常生活については、治療薬を含めて易感染性があることに留意すること、過労、ストレスを避けること、自覚的な症状の有無にかかわらず定期的な医療機関を受診することが必要である。4 今後の展望RPは慢性に経過する中で、臓器障害の程度は進展、増悪するためにその死亡率はわが国では9%と高かった。わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆されている。今後の課題は、治療のガイドラインの策定である。中でも予後不良な患者サブグループを明瞭にして、そのサブグループにはintensiveな治療を行い、RPの進展の阻止と予後の改善をはかる必要がある。5 主たる診療科先に行った全国疫学調査でRP患者の受診診療科を調査した。その結果、リウマチ・免疫科、耳鼻咽喉科、皮膚科、呼吸器内科、腎臓内科に受診されている場合が多いことが明らかになった。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 再発性多発軟骨炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)聖マリアンナ医科大学 再発性多発軟骨炎とは(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報再発性多発軟骨炎患者会ホームページ(患者とその家族および支援者の会)1)McAdam P, et al. Medicine. 1976;55:193-215.2)Damiani JM, et al. Laruygoscope. 1979;89:929-946.3)Shimizu J, et al. Rheumatology. 2016;55:583-584.4)Shimizu J, et al. Arthritis Rheumatol. 2018;70:148-149.5)Shimizu J, et al. Medicine. 2018;97:e12837.公開履歴初回2020年02月24日

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ワクチン接種における接種部位、接種方法【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第3回

ワクチン接種において安全性や効果を保つためには、定められた接種部位や接種方法を知っておく必要がある。しかし、どのように接種すれば妥当かは、新たな科学的根拠や歴史的経緯が加わることで変わっていくため、アップデートする必要がある。ワクチンの接種部位は図のように、上腕伸側、三角筋中央部、大腿前外側の3ヵ所である。接種部位は、接種方法によって変わる。接種方法は、筋肉注射と皮下注射、経口内服とに大きく分けられる。本稿では、経口内服による接種は比較的簡便であるため割愛し、筋肉注射と皮下注射における接種部位について述べる。画像を拡大する筋肉注射の部位とポイントはじめに筋肉注射の場合は、1歳以上の年代には「三角筋の中央部」が望ましい。一方、乳児(1歳未満)に三角筋への筋肉注射を行うと、筋量が不足しているために免疫賦活反応が十分に惹起されない。そのため乳児には「大腿前外側」に筋肉注射が望ましい。また、日本小児科学会は、1歳以上2歳未満であれば大腿前外側と三角筋のいずれでもよいと定めている。注意点は、臀部に対して筋肉注射しないことである。なぜなら臀部には、神経組織が多いため坐骨神経損傷の可能性があるからである。医療機関でワクチン接種を行うと非接種者やその家族から、「接種部位を揉んだ方がよいですか?」または「揉まなくてもよいですか?」といった質問を受ける。接種後に接種した部位を揉む必要は特になく、軽く圧迫するだけでよい。以前は、筋肉注射においては揉むことによって注入された薬液が拡散され、吸収までの時間が早くなるため望ましいと考えられていた。しかし現在では、揉むことによって局所の疼痛や硬結が増えるという報告もあり、効果に差がないため、必要としていない。皮下注射の部位とポイント次に、皮下注射の場合は「上腕伸側」と定められている。海外諸国では、生ワクチンは皮下注射によって接種し、不活化ワクチンは基本的に筋肉注射で接種する。わが国では、生ワクチンを皮下注射で接種する点は同様であるが、不活化ワクチンに関しても皮下注射による接種が主流となっている。そのようになった背景には歴史的経緯があるため紹介する。1970年代に抗菌薬や解熱鎮痛剤を臀部に筋肉注射することによって、大腿四頭筋拘縮症が報告された。この報告は社会問題となり、それ以降、医薬品を筋肉注射で投与することは原則的に避けられるようになった。このような背景から、わが国では不活化ワクチンを皮下注射で接種することが主流となった。皮下注射で接種する際は皮内注射とならないように角度を30~45度と、直感的にはやや深めにとる。角度が浅いと、結果として皮内注射となる場合がある。皮内注射は著明に腫れたり、疼痛が強くなることもある。同時接種での注意点ワクチン接種の際に、「一度に何本も接種して大丈夫ですか?」や「一度に何本まで同時接種できるのですか?」といった質問が多い。そこで同時接種についても説明する。同部位に同時接種する場合は、注射する部位の間を2.5cm以上離す必要がある。2.5cmというのは、海外では1インチ(2.54cm)以上離すという基準を元に、センチメートルに置き換えて定められている。生ワクチンを含む、複数のワクチンを同時に接種することによる有効性および安全性自体に関して、問題はないとされている。同日のうちに接種するワクチンの本数には制限はない。複数のワクチンを接種しても、それぞれのワクチンの有害事象や副反応が生じる頻度は増加しないとされている。また、同時接種の利点として、ワクチン接種のために何回も医療機関に足を運ぶ時間や労力、交通費が削減でき、何よりも接種スケジュールを迅速に進めることが可能となる。乳児や海外渡航を計画しているワクチン接種希望者は、限られた期間に接種が必要なワクチンの数が多い。そのような立場では、接種スケジュールは切実な問題である。しかし、ワクチン接種において同時接種は問題とされない一方で、薬液の混注は認められていない。事例を挙げると、2017年4月、複数のワクチンを1つに混ぜて接種していた医療行為が報告された。具体的には、MRワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンを混注、あるいは四種混合ワクチンとHibワクチンを混注していた。最短でも5年間、350人以上の子どもに実施していたという。同様の混注事例は2016年4月にも報告されている。ワクチン接種における混注に関して効果や安全性のエビデンスは今のところは存在しないために、実施は認められない。ワクチン接種にあたってワクチン接種を行う医療者は、医学的必要性(ワクチン接種を受ける者にとってどの程度リスクが高いか)、個人の価値観やヘルスリテラシー、経済的事情、医療的な状況(ワクチンの供給、アウトブレイクがアクセス可能な地域で生じているか)など、すべて加味した上で接種を受ける側の者とシェアド・デジションメイキングする必要がある。シェアド・デジションメイキングする際には、医療とは原則的にトレードオフの関係にあり、何かのリスクやコストを抑えるためには、また別のリスクやコストを受け入れなければならないことをよく理解していただく必要がある。疾患に罹患していない者に対して未来において生じうるリスクやコストを受け入れなければならないため、ワクチン接種においても接種を行う医療者の理解と面接技術がそれぞれ必要である。接種時には、ワクチンに対する不安や心配を取り除くことが重要であり、接種を行う者は、接種を受ける者一人一人の立場になって親身に接する姿勢が望ましい。1)日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 小児に対するワクチンの筋肉内接種法について(改訂版).2)岡田賢司. 予防接種の基本的な知識.3)The National Center for Immunization and Respiratory Diseases, Centers for Disease Control and Prevention. 11th Edition of Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases 2009. Public Health Foundation4)日本小児科学会. 日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方.5)日本小児科学会ホームページ. 複数のワクチンを混ぜて接種していた医療行為に対する日本小児科学会の見解.講師紹介

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化学療法の毒性リスクが最も低い患者は?/Cancer

 化学療法を受けるがん患者の毒性リスクに関して、栄養状態がキーを握ることが報告された。米国・フォックス・チェイスがんセンターのEfrat Dotan氏らが、固形腫瘍を有する高齢者において、治療前のBMI値、アルブミン値ならびに過去6ヵ月の意図しない体重減少(UWL)と、化学療法の毒性との関連を評価した結果、BMIが高くアルブミン値正常でGrade3以上の毒性リスクが低くなることが示されたという。著者は、「高齢のがん患者において、栄養状態が罹病率と死亡率に直接影響を及ぼすことが示された」とまとめ、「栄養マーカーの臨床的重要性を明らかにし、今後、介入していくためにも、さらなる研究が必要である」と提言している。Cancer誌オンライン版2020年1月24日号掲載の報告。 研究グループは、前向き多施設研究で化学療法を受けた65歳以上の高齢者について2次解析による検討を行った。 治療前に、高齢者機能評価、BMI値、アルブミン値、およびUWLのデータを収集し、多変量ロジスティック回帰モデルにより、栄養因子とGrade3以上の化学療法毒性リスクとの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は750例で、年齢中央値は72歳、ほとんどがStageIVのがんであった。・治療前のBMI中央値は26、アルブミン中央値は3.9mg/dLであった。・約50%の患者がUWLを報告し、10%超のUWLがみられた患者は17.6%であった。・多変量解析の結果、10%超のUWLとGrade3以上の化学療法毒性リスクとの間に関連性は認められなかった(補正後オッズ比[AOR]:0.87、p=0.58)。・一方、BMI 30以上では、Grade3以上の化学療法毒性リスクが減少する傾向がみられ(AOR:0.65、p=0.06)、アルブミン低値(≦3.6mg/dL)では、Grade3以上の化学療法毒性リスクの増加と関連した(AOR:1.50、p=0.03)。・BMIとアルブミンを組み合わせて解析した結果、BMI 30以上かつアルブミン値正常の患者において、Grade3以上の化学療法毒性が最も低いことが示された(AOR:0.41、p=0.008)。

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祭りで目を失った子供【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第157回

祭りで目を失った子供photoACより使用イスラム教シーア派の宗教行事として「アーシューラー(Ashura)」があります。アーシューラーとは、イスラーム暦の最初の月、ムハッラムの10日目にあたる日のことです。また、3代目イマームであるフサインの命日にあたるため、シーア派にとってはきわめて重要な日なのです。アーシューラーは元々危険なものではないのですが、一部の国では自傷行為や爆竹・花火を使った過激な祭典になっていることもあります。今回はアーシューラーの危険性を記した医学論文を紹介しましょう。Moustaine MO, et al.Ashura: a festival of charity associated with a serious and disabling eye injury (report of 12 cases).Ann Burns Fire Disasters. 2017 Mar 31;30(1):65-67.本来アーシューラーは、子供が参加したとき、おもちゃやお菓子をあげるような、ハロウィーンに似た穏やかな祭典だったのですが、近年どんどん過激化していることが問題視されています。この論文は、カサブランカにある小児眼科で治療を受けたアーシューラー時の重度眼損傷の被害児12例をまとめて報告したものです。12人の小児(平均年齢8.5歳、男児8人、女児4人)のうち、3人が両眼を損傷しました。全体の3分の2が爆竹による爆発が原因でした。8例は視機能が回復しましたが、3例は永続的な視力低下に至り、1例については穿孔により眼そのものを失うこととなりました。この論文では、輸入された爆竹のほとんどが粗悪な中国製であり、想定よりも火力が強いことが危険であると書かれています。本場中国ですら、北京市や深セン市などの大都市では使用に一定の規制が設けられています。最近は花火や爆竹をやろうにも規制が強くなり、近所の公園ですらNGになりました。そのため、爆竹なんてものを最近の子供は知らないそうで、これもそのうち死語になるかもしれませんね。

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