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ブロナンセリン経皮吸収型製剤への切り替えによる錐体外路症状への影響

 ブロナンセリンは、統合失調症治療に用いられる第2世代抗精神病薬であり、経口剤(錠剤、散剤)だけでなく経皮吸収型製剤としても使用可能な薬剤である。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症患者に対しブロナンセリンの経口剤から経皮吸収型製剤への切り替えを行うことにより、錐体外路症状(EPS)の減少および/または薬物動態安定による抗パーキンソン薬の投与量減少に寄与するかについて、52週間の非盲検試験の事後分析を実施し、評価を行った。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年11月3日号の報告。 統合失調症患者155例をコホート1またはコホート2のいずれかにエントリーした。コホート1では、97例に対しブロナンセリンの錠剤8~16mg/日を6週間投与した後、同薬剤の経皮吸収型製剤40~80mg/日へ切り替えて1年間投与を行った。なお、経皮吸収型製剤の投与量は、錠剤の投与量に基づき決定した。コホート2では、ブロナンセリンの経口剤(錠剤、散剤)投与後の58例に対し、同薬剤の経皮吸収型製剤40mg/日から開始し40~80mg/日に切り替える治療を1年間継続した。3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月の時点での経皮吸収型製剤開始後のEPSの変化および抗パーキンソン薬の投与量の変化は、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)、抗パーキンソン薬のビペリデン換算量でそれぞれ評価した。 主な結果は以下のとおり。・155例中EPSにより経皮吸収型製剤を中止した患者は、コホート1の4例のみであった。・両コホートにおける経皮吸収型製剤開始後のDIEPSS合計スコアの平均変化では、統計学的に有意な改善が認められた。【コホート1】3ヵ月時点:-0.44±1.50(p=0.013)6ヵ月時点:-0.07±1.78(p=0.73)12ヵ月時点:-0.14±1.37(p=0.44)【コホート2】3ヵ月時点:-0.16±1.32(p=0.40)6ヵ月時点:-0.74±1.92(p=0.020)12ヵ月時点:-0.81±2.22(p=0.047)・抗パーキンソン薬のビペリデン換算量は、経皮吸収型製剤開始後、有意な変化は認められなかった。 著者らは「ブロナンセリンの経皮吸収型製剤は、同薬剤の錠剤や散剤と比較し、EPSのリスクを減少させるために効果的な投与経路であると考えられる」としている。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用のNSCLC1次治療、4年追跡結果(CheckMate 227)/日本肺癌学会

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのニボルマブとイピリムマブの併用療法は、PD-L1の発現状態、非扁平上皮がんまたは扁平上皮がんの組織型にかかわらず、化学療法と比較して長期的な生存効果を示すことがCheckMate 227試験の4年間追跡結果から示された。この結果の概要が、第62回日本肺癌学会学術集会において、がん研究会有明病院の西尾誠人氏によって紹介された。ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのハザード比は0.76・対象:未治療のPD-L1発現1%以上(Part1a)および1%未満(Part1b)のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者(PS 0~1、組織型問わず)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ併用群(NIVO+IPI群)     ニボルマブ単剤群(TPS1%以上)(NIVO群)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)(NIVO+Chemo群)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独(Chemo群)・評価項目:[複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群の無増悪生存期間(PFS)、PD-L1発現(≧1%)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群の全生存期間(OS)[副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるNIVO群対Chemo群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のPFS、そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・PD-L1発現率1%以上の患者集団(1,189例)のOS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群、ニボルマブ単独療法群、化学療法群でそれぞれ17.1ヵ月、15.7ヵ月、14.9ヵ月であり、4年OS率はそれぞれ29%、21%、18%であった。・ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのハザード比(HR)は、0.76(95%信頼区間[CI]:0.65~0.90)であった。・以上の結果は、非扁平上皮がんと扁平上皮がんで層別して解析しても一貫していた。・PD-L1発現率1%未満の患者集団(550例)のOS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群、ニボルマブ/化学療法併用群、化学療法群でそれぞれ17.2ヵ月、15.2ヵ月、12.2ヵ月であり、ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのHRは0.64(95%CI:0.51~0.81)であった。・4年間の長期観察において、安全性に関する新たな懸念は示されなかった。

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75歳以上のコロナワクチン、心血管イベントに影響なし/JAMA

 仏・French National Agency for Medicines and Health Products SafetyのMarie Joelle Jabagi氏らが75歳以上のフランス人において、BNT162b2mRNAワクチン(以下、ファイザー社ワクチン)接種後の重度心血管イベントの発症について短期リスクを評価。その結果、急性心筋梗塞、脳卒中、および肺塞栓症の発生率の増加は、ワクチン接種14日後に見られなかったことを明らかにした。なお、先行のイスラエルと米国の研究でも、ファイザー社ワクチン接種後42日と21日において、心筋梗塞、肺塞栓症、脳血管イベントのリスクは増加しなかったと報告している。JAMA誌オンライン版2021年11月22日号のリサーチレターに掲載された。 研究者らは、フランスの国民健康データシステムを使用し、75歳以上でかつ2020年12月15日~2021年4月30日に急性心筋梗塞、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、肺塞栓症と診断されて入院した患者(ワクチンの接種は問わない)を適格者として検証を行った。調査方法には自己対照ケースシリーズ法を用い、心血管イベントに依存する曝露、ワクチン接種のキャンセルや延期または短期の死亡率を増加させる可能性のある死亡率に関連する高いイベントを調査した。その際、イベントに先行する曝露のみが考慮された。曝露リスクの間隔は2回のワクチン接種後それぞれ1~14日で、曝露リスク間隔はさらに1~7日目と8~14日目に細分化された。ワクチン接種日以外は非リスク期間と見なされた。イベントとワクチン接種の両方のバックグラウンド率の変化を考慮するため、一時的(7日単位)に調整された相対発生率(RI)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・2021年4月30日時点で、75歳以上の約390万人がファイザー社ワクチンを1回以上接種し、320万人が2回接種をしていた。・そのうち、観察期間中に1万1,113例が急性心筋梗塞で入院(そのうち1回以上ワクチン接種を受けたのは58.6%)し、1万7,014例が虚血性脳卒中(同54.0%)、4,804例が出血性脳卒中(同42.7.%)、7,221例が肺塞栓症(55.3%)で入院した。・ワクチン1回目、2回目いずれかの接種後14日間に、有意なリスク増加は見られなかった。・心筋梗塞のRIは、 1回目が0.97(95%信頼区間[CI]:0.88~1.06)、2回目が1.04(同:0.93~1.16)だった。虚血性脳卒中では1回目が0.90(同:0.84~0.98)、2回目が0.92(同:0.84~1.02)。出血性脳卒中は1回目が0.90(同:0.78~1.04)および2回目は0.97(同:0.81~1.15)。肺塞栓症は0.85(同:0.75~0.96)、2回目は1.10(同:0.95~1.26)だった。・2つの細分化された曝露間隔(1~7日および8~14日)において、心血管イベントの有意な増加はいずれも観察されなかった。

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DOAC時代の終わりの始まり(解説:後藤信哉氏)

 製薬企業というのは戦略的な情報企業だと思う。経口Xa阻害薬アピキサバン、リバーロキサバンが世界で毎年1兆円以上売れている。現状をつくるために、製薬企業はきわめて巧みな情報統制を行った。非弁膜症性心房細動は、心不全、突然死などのリスクのマーカーである。しかし、「非弁膜症性心房細動=脳血栓塞栓症」と徹底的に宣伝した。確かに、心房細動症例に脳卒中が多いことはFramingham研究が示した事実である。しかし、脳血栓塞栓症が多いことは誰も示していない。部分的に真実を入れた広報はプロパガンダの初歩である。将来を見越してしっかりとストーリーをつくった能力には敬服する。 筆者は経口Xa阻害薬など(DOAC)の開発を主導したが、途中で限界が明確に見えてしまった。しかし、企業は第III相試験の結果を徹底的に使ってDOACを広報した。心房細動の脳卒中予防試験は4種のDOACにとっておおむね成功であった。成功の最大の鍵は対照群をPT-INR 2-3のワルファリン治療としたところにあった。実臨床ではPT-INR 2程度を標的としていた医師が多かったのではないだろうか? PT-INR 2-3を過去の標準治療とする明確な根拠はなかった。PT-INRが高くなれば頭蓋内出血、出血性脳卒中が増える。DOAC開発試験の有効性エンドポイントは脳卒中であったため、出血性脳卒中は有効性エンドポイントとなる。まったくの嘘ではない。部分的な真実を入れたプロパガンダはワルファリン群との比較でも成功であった。 ランダム化比較試験を実行していないと気付かないが、DOAC開発試験のワルファリン群のPT-INRは通常の臨床と同じ方法で計測されたわけではない。医師も患者も、ワルファリン服用なのか、DOAC服用なのかわからない。そこで、ベッドサイドで採血して、割り付け番号を入れるとワルファリン群ではPT-INRが、DOAC群では嘘の値が出るPOC装置が使われた。POCによる計測は検査室と同じではない。さまざまにワルファリン群に制限をかけてようやくDOACの認可・承認に至った。 特許期間には膨大な利潤がある。DOAC開発企業・株主は大きなメリットを得た。しかし、特許は喪失する。低分子化合物なので原価数十円に近いジェネリック品に置き換わる。利潤が年間兆円規模となると次が苦しい。血液凝固第XI因子は出血を惹起しない抗凝固標的として以前から注目されていた。Xa阻害薬が売れている間は、XI阻害薬への期待などを企業は話せない(自らのXa阻害薬の欠点:出血リスクを自ら認めることになるので…)。しかし、Xa阻害薬の特許が切れたら、スムーズに次につながる新薬が欲しい。 AXIOMATIC-TKR試験の結果は、経口薬milvexianに血栓イベント抑制効果があること、効果に用量依存性がありそうなこと、重篤な出血リスクは増えなそうことを示唆した。 製薬企業はDOACからXI阻害薬へのスムーズな転換への論理を示せるだろうか? 本研究は第III相試験の用量決定には役立つと想定される。DOACの開発ではワルファリンのPT-INRの恣意的な調節により、一種、人工的な差を出すことに成功した。今後第III相に進むとすれば、市場規模の大きな血栓症ではDOACとの比較試験が必要となる。DOACに勝る有効性、安全性を第III相試験で示しても、マーケットでの競争は安価なDOACのジェネリック品となる。世界の俊英を集めた巨大製薬企業のブレインたちは、次世代の巨大な利潤に向けたmilvexianの絵を描けるだろうか? 筆者は、新薬の価格を著しく釣り上げて特許期間内のみ巨額の利潤を得る現在のモデル自体の転換が必要と考えている。さまざまな意味で期待を持たせる論文であった。

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肺炎球菌ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第11回

ワクチンで予防できる疾患:肺炎球菌感染症肺炎球菌感染症とは肺炎球菌の感染による疾病の総称であり、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎などが含まれる。肺炎球菌は主に鼻腔粘膜に保菌され、乳幼児では40〜60%と高頻度に、成人ではおよそ3〜5%に保菌されている1)。感染経路は飛沫感染であり、小児の細菌感染症の主な原因菌の1つである。また、成人の市中肺炎の起因菌では38%と最も多い2)。肺炎球菌が髄液や血液などの無菌部位に侵入すると、菌血症を伴う肺炎、髄膜炎、敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:以下「IPD」)を引き起こす。治療は抗菌薬投与および全身管理であるが、近年は薬剤耐性菌の出現も問題となっている3)。わが国の成人IPDの好発年齢は60~80代で4,5)、基礎疾患があることは発症や重症化のリスクとなる3,6)。65歳以上の成人(以下「高齢者」)の罹患率はおよそ5/10万人・年であり、致命率は6%台と高い1)。成人の肺炎球菌感染症とりわけIPDの発症や重症化の予防には、日常診療における基礎疾患の管理とともに肺炎球菌ワクチンの接種が重要である3,6)。ワクチンの概要肺炎球菌の病原因子の中で最も重要なものは、菌の表層全体を覆う莢膜である。この莢膜は多糖体からなり、97種類の型が報告されている3)。ある莢膜型の肺炎球菌に感染するとその型に対する抗体が獲得され、同じ型には感染しなくなるが、別の型には抗体がないため感染が成立し、発症する7)。そのため肺炎球菌による発症や重症化を予防するには、さまざまな莢膜型の抗体をあらかじめ獲得しておく必要があり7)、肺炎球菌ワクチンは莢膜多糖体を抗原としている。国内では以下の2つのワクチンが承認されているが、それぞれカバーする莢膜型の数や種類、免疫応答の方法などが異なる(表)。以下に2つのワクチンの特徴を述べる。1)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)〔商品名:ニューモバックスNP〕23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(以下「PPSV23」)は、莢膜多糖体からなる不活化ワクチンで、23種類の莢膜型を有する。PPSV23接種による免疫応答では、T細胞を介さないため免疫記憶は獲得されず、B細胞の活性化によりIgG抗体のみが獲得される。IgG抗体は経年的に減弱し、減弱するとワクチン血清型の菌に対して予防効果は期待できなくなる3)。PPSV23の予防効果としては、接種により高齢者のワクチン血清型のIPDを39%減少させ8)、すべての肺炎球菌による市中肺炎を27.4%、ワクチン血清型の肺炎球菌による市中肺炎を33.5%減少させたと国内より報告されている9)。PPSV23は2006年に販売開始となり、2014年から5年間限定で65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳になる人を対象に定期接種となった。2019年度以降はさらに5年間の期限で、同年齢を対象に定期接種が継続されている10)。初回接種後の予防効果は3〜5年で低下する11)。再接種による予防効果について明確なエビデンスは報告されていないが、再接種後の免疫原性は初回接種時と同等であり、初回接種時と同等の予防効果が期待されている12)。また、再接種時の局所および全身性の副反応の頻度は初回接種時より高いことに注意が必要だが、いずれも軽度で許容範囲と考えられている12)。以上より症例によっては追加接種を繰り返してもよいと考えられ、接種後5年以上の間隔をおいて再接種することができる12)。2)沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)〔同:プレベナー13水性懸濁注〕沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(以下「PCV13」)は、莢膜多糖体に無毒化したジフテリア蛋白を結合させた蛋白結合型の不活化ワクチンで、13種類の莢膜型を有する。PCV13接種による免疫応答は、T細胞とB細胞を介している。まず、樹状細胞に抗原が提示されてT細胞の活性化を誘導する(T細胞依存型)。ついで活性したT細胞とB細胞の相互作用によりB細胞が活性化する。その後、形質細胞によるIgG抗体の産生とメモリーB細胞による免疫記憶が獲得される。そのため記憶された莢膜型の菌が侵入すると速やかにIgG抗体産生能が誘導(ブースター効果)され免疫能が高まる3)。小児に対する7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)は2010年より販売開始となり、同年に接種費用の公費助成が開始された。2013年4月より定期接種となり、同年11月よりPCV13に切り替えられた。予防効果として、PCV7・PCV13の導入により小児のIPD、とくに髄膜炎は87%も激減したと報告されている4)。一方、2014年より高齢者に対しても適応が拡大され、任意接種することが可能となった。PCV13接種により高齢者のワクチン血清型のIPDを47〜57%減少させ、ワクチン血清型の肺炎(非侵襲型)を38〜70%、すべての原因の肺炎を6〜11%減少させたとの予防効果が諸外国より報告されている13)。さらに2020年5月からは、高齢者のみならず全年齢に適応が拡大され、全年齢の「肺炎球菌感染症に罹患するリスクが高い人」に接種が可能となった。また、PCV13接種には集団免疫効果が認められており、小児へのPCV7およびPCV13接種の間接効果(集団免疫)により、成人IPD症例のPCV13血清型(莢膜型)は劇的に減少した3)。その一方で、PCV13に含まれない血清型が増加するなど血清型置換が報告されている3)がこの問題は後述する。表 肺炎球菌ワクチン(PPSV23とPCV13)の比較画像を拡大する接種のスケジュール1)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)〔商品名:ニューモバックスNP〕【定期接種】これまでにPPSV23を1回も接種したことがなく、以下(1)(2)にあてはまる人は定期接種として1回接種できる。(1)2019年度から2023年度末までの5年間限定で65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳になる人。なお、2023年度以降は65歳になる年度に定期接種として1回接種できる見込みである。(2)60〜64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限されている人。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)で免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人。【任意接種】2歳以上で上記以外の人。接種後5年以上の間隔をおいて再接種することができる12)。2)沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)〔同:プレベナー13水性懸濁注〕【定期接種】小児(2ヵ月以上5歳未満)以下のように接種開始時の月齢・年齢によって接種間隔・回数が異なることに注意する。(〔1〕1回目、〔2〕2回目、〔3〕3回目、〔4〕4回目)[接種開始が生後2ヵ月~7ヵ月に至るまでの場合(4回接種)]〔1〕〔2〕〔3〕の間は 27 日以上(27~56日)、〔3〕〔4〕の間は 60日以上の間隔をあけて(12~15ヵ月齢で)接種する 。[接種開始が生後7ヵ月~12ヵ月に至るまでの場合(3回接種)]〔1〕〔2〕の間は 27日以上(27~56日)、〔2〕〔3〕の間は 60日以上の間隔をあけて(12ヵ月齢以降で)接種する。[接種開始が12ヵ月~24ヵ月に至るまでの場合(2回接種)]〔1〕〔2〕の間は 60日以上の間隔をあけて接種する。[接種開始が24か月-5歳の誕生日に至るまでの場合(1回接種)]1回のみ接種する。【任意接種】5歳以上の罹患するリスクが高い者:1回1回のみ接種する。日常診療で役立つ接種ポイント1)PPSV23の推奨(1)2歳以上の脾臓を摘出した患者肺炎球菌感染症の発症予防として保険適用されるが、より確実な予防のためには摘出の14日以上前までに接種を済ませておくことが望ましい。(2)2歳以上の脾機能不全(鎌状赤血球など)の患者(3)高齢者(4)心臓や呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏などの基礎疾患がある患者(5)免疫抑制作用がある治療が予定されている患者。治療開始の14日以上前までに接種を済ませておくことが望ましい。2)PCV13の推奨(1)乳幼児(生後2ヵ月~5歳未満:定期接種)IPDは、とくに乳幼児でリスクが高く、5歳未満の致命率はおよそ1%と報告され14)、後遺症を残す危険性もある。そのため乳児であっても、接種が可能となる生後2ヵ月以上ではワクチン接種をされることを強く勧める。(2)基礎疾患がある5〜64歳の人2017年時点のIPDの致命率は、6〜44歳で6.2%、45〜64歳で19.5%と高く、基礎疾患を有することがリスクとなることが報告されている6)。基礎疾患(先天性心疾患、慢性心疾患、慢性肺疾患、慢性腎疾患、慢性肝疾患、糖尿病、自己免疫性疾患、神経疾患、血液・ 腫瘍性疾患、染色体異常、早産低出生体重児、無脾症・脾低形成、脾摘後、臓器移植後、髄液漏、人工内耳、原発性免疫不全症、造血幹細胞移植後など6,15)がある人には、本人・保護者と医師との話し合い(共有意思決定)に基づいてワクチン接種をされることを勧める。詳しくは「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日)を参照。(3)基礎疾患がある高齢者、高齢者施設の入所者 基礎疾患(慢性的な心疾患、肺疾患、肝疾患、糖尿病、アルコール依存症、喫煙者など)がある高齢者では、本人・家族と医師との話し合い(共有意思決定)に基づいてワクチン接種することを勧める11)。とくに、髄液漏、人工内耳、免疫不全(HIV、無脾症、骨髄腫、固形臓器移植など)の患者には接種を勧める11)。高齢者施設の入所者も医師と相談して接種することを勧める11)。3)高齢者に対するPPSV23とPCV13の接種に関する考え方これまで高齢者に対するPPSV23とPCV13の接種について国内外で議論されてきたが、現時点での日本呼吸器学会・日本感染症学会の合同委員会による「考え方」16)を紹介する。【PPSV23未接種者に対して】(1)まず定期接種としてPPSV23の接種を受けられるようにスケジュールを行う。(2)PPSV23とPCV13の両方の接種をする場合には(1)を考慮しつつPCV13→PPSV23の順番で接種し、PCV13接種後6ヵ月〜4年以内にPPSV23を接種することが適切と考えられている。この順番の利点は、成人ではPCV13接種後に、被接種者に13の血清型の莢膜抗原特異的なメモリーB細胞が誘導され、その後のPPSV23接種により両ワクチンに共通した12の血清型に対する特異抗体のブースター効果が期待されることである。ただし、この連続接種については海外のデータに基づいており、日本人を対象とした有効性、安全性の検討はなされていない。【PPSV23既接種者に対して】PPSV23接種から1年以上あけてからPCV13接種を行う。詳細は以下の図1と「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版)」を参照。図1 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(2019年10月)(日本感染症学会/日本呼吸器学会 合同委員会)画像を拡大する今後の課題・展望小児へのPCV7およびPCV13接種の間接効果(集団免疫)により、成人IPD症例のPCV13血清型(莢膜型)は劇的に減少したが、一方でPCV13に含まれない血清型が増加し、血清型置換が報告されている3)(図2)。図2 小児へのPCVs導入後のIPD由来株の莢膜型変化画像を拡大する2018年の厚生労働省の予防接種基本方針部会では、国内のIPDや肺炎原因菌の血清型分布などを検討しPCV13を高齢者に対する定期接種に指定しないと結論された17)。また、米国予防接種諮問委員会(ACIP)において、PPSV23はこれまで同様に推奨されたが、小児へのPCV13定期接種の集団免疫効果により高齢者の同ワクチン血清型の感染が劇的に減少したことから費用対効果も考慮し、高齢者へのPCV13の定期接種や一律のPCV13-PPSV23の連続接種は推奨しない方針に変更され、患者背景を考慮してPCV13接種を推奨することとされた13)。PCV13は高齢者の定期接種には指定されていないものの、接種しないことが勧められているわけではなく、その効果や安全性は確認されており13)、患者背景を考慮して接種する必要があることに注意する。とくに基礎疾患がある高齢者、高齢者施設の入所者には積極的に接種を勧めたい。また、2016年時点の高齢者のPPSV23接種率は40%ほど1)に留まっており、接種率のさらなる向上が必要である。基礎疾患を有することはIPDの重症化のリスクであり、日常診療における基礎疾患の管理とともに、適切にPPSV23やPCV13の接種を勧め、被接種者と共有意思決定を行い(shared decision making)、接種を実施し患者や地域住民をIPDから守りたい。わが国では成人IPDの調査・研究に限界があるが、前述の通りIPD症例の莢膜型の変化が報告4)されており、将来的にはさらに多くの血清型をカバーするワクチンやすべての肺炎球菌に共通する抗原をターゲットとした次世代型ワクチンの開発が望まれ、今後の動向にも注目したい3,6,18)。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)1)23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライド ワクチン(肺炎球菌ワクチン) ファクトシート. 平成30(2018)年5月14日.国立感染症研究所.2)13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(成人用)に関するファクトシート. 平成27年7月28日.国立感染症研究所. 3)65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版 2019-10-30)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会4)「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日).日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会.5)こどもとおとなのワクチンサイト1)国立感染症研究所. 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライド ワクチン(肺炎球菌ワクチン) ファクトシート. 平成30(2018)年5月14日. 2018.(2021年8月9日アクセス)2)Yoshii Y, et al. Infectious diseases. 2016;48:782-788.3)生方公子,ほか. 肺炎球菌感染症とワクチン. 2019.(2021年8月10日アクセス)4)Ubukata K, et al. Emerg Infect Dis. 2018;24:2010-2020.5)Ubukata K, et al. J Infect Chemother. 2021;27:211-217.6)Hanada S, et al. J Infect Chemother. 2021;27:1311-1318.7)生方公子, ほか. 肺炎球菌. 重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析、その診断・治療に関する研究.(2021年8月10日アクセス)8)新橋玲子, ほか.成人侵襲性肺炎球菌感染症に対する 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンの有効性. 2018; IASR 39:115-6.(2021年8月10日アクセス) 9)Suzuki M, et al. Lancet Infect Dis. 2017;17:313-321.10)厚生労働省. 第27回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料. 2019.(2021年8月10日アクセス)11)World Health Organization. Releve epidemiologique hebdomadaire. 2008;83(42):373-384.12)肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会. 肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版). 感染症誌. 2017;9;:543-552.(2021年8月10日アクセス)13)Matanock A, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2019;68:1069-1075.14)国立感染症研究所. 資料3 13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(成人用)に関するファクトシート. 平成27年7月28日. 第1回厚生科学審議会予防接種・ワクチン文科会予防接種基本方針部会ワクチンに関する小委員会資料. 2015.(2021年8月9日アクセス)15)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会. 「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日). (2021年8月9日アクセス)16)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版 2019-10-30). 2019.(2021年8月9日アクセス)17)厚生労働省. 第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料 2018.(2021年8月9日アクセス)18)菅 秀, 富樫武弘, 細矢光亮, ほか. 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)導入後の小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の現状. IASR Vol. 39 p112-113. 2018.(2021年8月10日アクセス)講師紹介

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英語で「また連絡します」は?【1分★医療英語】第6回

第6回 英語で「また連絡します」は?Thank you for seeing our patient.(私たちの患者を診てくれてありがとうございます)Anytime. I’ll touch base with you later.(もちろんです。あとでまた連絡しますね)《例文1》I believe ischemia is unlikely, but I will dig into this case and touch base with you later.(虚血の可能性は低いと思いますが、もう少し症例の詳細を見てからまた連絡します)《例文2》Let’s touch base on our project today.(私たちのプロジェクトについて今日話し合いましょう)《解説》“I’ll touch base with you later.”英語圏で働いたことのない方には、あまりなじみのない表現かもしれません。意味は“I’ll contact you.”と同じで、「また連絡するよ」といった意味です。しかし、“contact”では味気がないので、ちょっとスパイスの効いたこの表現が頻繁に用いられるのでしょう。“base”は野球の「ベース」がその由来となっているようです。野球の世界でベースに触れていればセーフ(=安心)、という意味から派生して、さまざまな意味で「アウト」にならないように「連絡を取り合う」という意味の慣用句となったようです。この“touch base”を用いる場合、単なる「連絡する」ではなく、「何か共通の課題やプロジェクトがある際に連絡を取る」というニュアンスで用いられます。米国の病院で研修医として働いていると、たとえば指導医から「あの症例についてあとでまた話そう、いろいろ調べてまた伝えるよ」といった状況で、よくこの“I’ll touch base with you.”と声を掛けられます。臨床現場に限らず、とても使いやすい表現なので、ぜひ身に付けてください。英語表現で1つ先の“塁”を狙えるかもしれません。講師紹介

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第90回 オミクロン株そのものを使った実験でワクチン追加接種の効果を確認

Pfizer(ファイザー)/BioNTech(ビオンテック)の1週間ほど前の発表1,2)に続き、Reutersが報じたイスラエルでの研究でも両社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2追加接種がどうやらオミクロン(Omicron)株に有効らしいことが示されました。BNT162b2を2回接種の人の血液はオミクロン株を全く中和できませんでしたが、3回目接種は中和活性を100倍ほど高めたとイスラエルのSheba Medical CenterのGili Regev-Yochay氏が先週土曜日11日に記者会見で発表しました3)。Regev-Yochay氏は同病院の感染症部門を率いています。その発表の3日前の8日水曜日に発表されたPfizer/BioNTechの研究1)によると、BNT162b2の2回接種を済ませた人の血清のオミクロン株に対する中和効果は著しく弱く、他のSARS-CoV-2株に対する中和活性の25分の1未満ほどでしかありませんでした。しかし3回目接種をした人のオミクロン株スパイクタンパク質に対する中和抗体活性は2回接種後に比べて25倍高く、3回接種後のオミクロン株中和活性は2回接種後の非オミクロン株中和活性に肩を並べるほどになると示唆されました。Pfizer/BioNTechとイスラエルの研究はどちらもオミクロン株への3回接種の効果を示すものですが中身が少し違っています。Pfizer/BioNTechの研究ではオミクロン株そのものではなくオミクロン株の変異を仕込んだ代理ウイルス(pseudovirus)が使われました3)。一方、イスラエルの研究はBNT162b2を2回接種してから5~6ヵ月経つ人と3回目接種してから間もない(1ヵ月後)人の血液のオミクロン株そのものへの効果を比較しており、オミクロン株そのものを使ったぶん実態により即しているようです。2回接種群と3回接種群の人数はどちらも20人です。ともあれBNT162b2の3回接種がオミクロン株に有効らしいことが2つの異なる研究で示されたことは頼もしい限りです。BNT162b2を3回接種すればオミクロン株からより確実に身を守れるとPfizerのCEO・Albert Bourla氏は言っています1)。米国の感染症対策の本丸・国立アレルギー感染症研究所(NIAID)を率いるAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏もBourla氏と似た考えのようです。ニュースのインタビューでファウチ氏は追加接種が最善(optimal care)であり4)、引き続き検討が必要ではあるもののオミクロン株に特化したワクチンを揃える必要はないかもしれないと言っています5)。米国でのオミクロン株感染は概ね軽症で済んでいる米国でのオミクロン株感染は初出の12月1日から1週間後8日までに22州で確認されています。経過が一通り判明しているそれらオミクロン株感染者43人を調べたところ多くがワクチン接種済みでしたが、幸いなことに概ね軽症で済んでおり、1人が2日間の入院を要したものの誰も死には至っていません6-8)。43人のうち34人(79%)はワクチン接種済みで、およそ3人に1人(14人)は追加接種済みでもありました。咳(89%;33人)、疲労感(65%;24人)、鼻水/鼻詰まり(59%;22人)を多くが呈し、他に発熱(38%;14人)、悪心嘔吐(22%;8人)、息切れ/呼吸困難(16%;6人)、下痢(11%;4人)、味覚や嗅覚の消失(8%;3人)が認められました6)。最も早い発症日は11月15日でした。検体採取からウイルス配列判明まで2~3週間を要したことから11月遅くに発生したオミクロン株感染の同定が近々続くだろうと著者は言っています。参考1)Pfizer and BioNTech Provide Update on Omicron Variant / BUSINESS WIRE2)ファイザー製コロナワクチン、3回接種でオミクロン株にも効果 / ケアネット3)Israeli study finds Pfizer COVID-19 booster protects against Omicron / Reuters4)Fauci says three shots of COVID-19 vaccine is 'optimal care' / Reuters5)Fauci says Omicron-specific version of Covid-19 vaccines may not be necessary / STAT6)CDC COVID-19 Response Team. MMWR. Morbidity and Mortality Weekly Report.2021 December 10 [Epub ahead of print]7)Most reported U.S. Omicron cases have hit the fully vaccinated -CDC / Reuters8)Early U.S. Omicron Cases Caused Mild Illness in Vaccinated / Bloomberg

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DLL3を標的としたBiTE抗体tarlatamabの小細胞肺がんに対する安全性と抗腫瘍効果/日本肺癌学会

 腫瘍組織で多く発現するデルタ様リガンド3(DLL3)は、小細胞肺がん(SCLC)の治療標的として注目されている。このDLL3を標的とする半減期を延長した二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体であるtarlatamab(AMG757)は、がん細胞とT細胞を架橋し、さらにT細胞を活性化させることでがん細胞を攻撃する。進行または再発SCLCを対象とした第I相試験の結果から、tarlatamabの安全性および抗腫瘍効果について、第62回日本肺癌学会学術集会において国立がん研究センター東病院の泉大樹氏が報告した。BiTE抗体tarlatamabをSCLC患者66例に投与・対象:プラチナベースの化学療法後に進行または再発したSCLC患者66例(PS 0~2)・治療薬:tarlatamab 0.003~100mgを週2回投与・評価項目:[主要評価項目]安全性および忍容性、最大耐用量および推奨用量[副次評価項目]PK特性、予備的な抗腫瘍効果 BiTE抗体tarlatamabの安全性および抗腫瘍効果の主な結果は以下のとおり。・66例中56例(85%)に治療関連有害事象(TRAE)が認められ、Grade 3以上のTRAEは18例(27%)に発現した。・頻度の高いTRAEとしてサイトカイン放出症候群(CRS)が17例(44%)に発現したが、Grade 3以上のCRSは1例(2%)のみだった。次いで、発熱17例(26%)、疲労感11例(17%)などがみられた。・TRAEにより3例(5%)の患者が治療を中止した。また、用量制限毒性(DLT)はGrade 5の非感染性肺炎が1例(0.3mg投与)とGrade 3の脳症が1例(100mg投与)にみられた。・BiTE抗体tarlatamabの抗腫瘍効果については、64例中13例(20%)でconfirmed PRを示し、3mg投与例の36%、10mg投与例の30%、100mg投与例の27%がPRであった。SDは17例(27%)、病勢コントロールは37例(47%)に認められた。・確定されたPRが得られるまでの期間の中央値は8.7ヵ月であった なお、本試験は現在でも継続されている。

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抗TROP2抗体薬物複合体Dato-DXd、TN乳がんでの第I相試験最新データ(TROPION-PanTumor01)/SABCS2021

 抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd、DS-1062)の固形がんを対象とした第I相TROPION-PanTumor01試験のうち、切除不能なトリプルネガティブ(TN)乳がんにおける安全性と有効性に関する最新データについて、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIan Krop氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で発表した。本データから、Dato-DXdが管理可能な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍活性を示すことが示唆された。 本試験は進行中の多施設非盲検第I相試験で、進行/転移乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、その他のがんを対象に安全性と有効性が評価されている。今回、TN乳がんコホートにおける更新結果を発表した。・対象:標準治療後に病勢進行した切除不能なTN乳がん(ECOG PS 0~1)44例・投与スケジュール:42例はDato-DXd 6mg/kgを3週間ごとに静脈内投与、2例は8mg/kgを投与・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性[副次評価項目]有効性(盲検下独立中央評価[BICR]による奏効率)、薬物動態など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2021年7月30日)時点で、44例中13例(30%)が治療を継続し、30例(68%)が病勢進行、1例(2%)が有害事象により治療を中止していた。・年齢中央値は53歳(範囲:32〜82歳)で、30例(68%)が前治療を2ライン以上受けていた。前治療は、19例(43%)が免疫療法、13例(30%)は別のトポイソメラーゼ阻害薬が結合した抗体薬物複合体(うち10例はsacituzumab govitecan)が投与されていた。・BICRによる奏効率は34%(確定したCR/PR:14例、確定前のCR/PR:1例)で、病勢コントロール率(DCR)は77%だった。・別のトポイソメラーゼI阻害薬が結合した抗体薬物複合体による治療歴のない27例のサブグループ解析において、奏効率は52%(確定したCR/PR:13例、確定前のCR/PR:1例)で、DCRは81%だった。・奏効期間中央値は未到達(範囲:2.7〜7.4+ヵ月)だった。・治療中の有害事象(TEAE)は、全Gradeが98%、Grade3以上が45%に発現し、治療関連TEAEは全Gradeが98%、Grade3以上が23%に発現した。重篤な治療関連TEAEは5%に発現し、死亡例はなかった。・発現の多かった有害事象は、悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛症で、血液毒性と下痢の頻度は低かった。薬物関連の間質性肺疾患は報告されていない。 なお、本試験におけるHR+/HER2-乳がんコホートについては登録が完了している。ほかにも、TN乳がんに対してDato-DXd+デュルバルマブの有効性と安全性を評価するBEGONIA試験が進行中である。また、HR+/HER2-乳がんに対する第III相TROPION-Breast01試験が開始されており、今後、TN乳がんに対する第III相試験も予定されている。

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喫煙妊婦、報奨金の提供で禁煙が継続/BMJ

 妊娠中の喫煙者では、禁煙を継続するに従って増額される金銭的な報奨はこの報奨がない場合と比較して、禁煙継続率の向上をもたらし、不良な新生児アウトカムの割合が低く、喫煙妊婦への安全で効果的な禁煙介入であることが、フランス・ソルボンヌ大学ピティエ-サルペトリエール病院のIvan Berlin氏らが実施した「FISCP試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年12月1日号に掲載された。フランス18施設の無作為化対照比較試験 本研究は、妊娠中の喫煙者の禁煙状況および出産アウトカムに及ぼす、禁煙の継続に応じて金額が漸増する報奨金の有効性の評価を目的とする単盲検無作為化対照比較試験であり、フランスの18ヵ所の産婦人科病棟で参加者の登録が行われた(French National Cancer Institute[INCa]Recherche en Prevention Primaireの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、たばこ≧5本/日または手巻きたばこ≧3本/日の喫煙者で、妊娠期間<18週であり、禁煙の意思のある妊婦(0[まったく意思がない]~10[きわめて強い意思がある]点の視覚アナログ尺度で>5点)であった。被験者は、金銭的な報奨を受ける介入群またはこれを受けない対照群に無作為に割り付けられた。 すべての参加者は、6回の受診日に来院しただけで、その都度来院費として20ユーロ(17ポンド、23ドル)相当の引換券を受け取った。金銭的報奨群では、来院費とは別に、受診時に禁煙を継続していると、2回目の受診日は40ユーロ、3回目は60ユーロ、4回目は80ユーロ、5回目は100ユーロ、6回目は120ユーロの報奨金に相当する引換券が与えられた(最高額は520ユーロ)。対照群は、6回の受診日にすべて来院しても、禁煙継続の有無にかかわらず、合計120ユーロの来院費のみが与えられた。 主要アウトカムは、所定の禁煙開始日から、出産前の6回目受診日までの禁煙継続であった。禁煙は、参加者の自己申告による過去7日間の喫煙なし、かつ呼気中一酸化炭素(eCO)≦8ppmと定義された。喫煙再開までの期間、喫煙欲求、出生時体重も改善 460例の妊婦が登録され、金銭的報奨群に231例、対照群に229例が割り付けられた。全体の平均年齢は29歳で、受診回数中央値は4回であり、両群間に差はなかった。また、就業率は金銭的報奨群が59%(137例)、対照群は65%(148例)であり、婚姻率はそれぞれ18%(41例)および13%(31例)、交際中が71%(163例)および75%(171例)であった。全体の過去7日間の喫煙本数中央値は60本だった。 禁煙継続率は、金銭的報奨群が16%(38/231例)と、対照群の7%(17/229例)に比べ有意に高かった(オッズ比[OR]:2.45、95%信頼区間[CI]:1.34~4.49、p=0.004)。金銭的報奨群は対照群に比べ、禁煙の点有病率(point prevalence)(4.61、1.41~15.01、p=0.011)が高く、喫煙再開までの期間中央値(5回目[IQR:3~6]の受診日vs.4回目[3~6]の受診日、p<0.001)が長く、喫煙欲求(β=-1.81、95%CI:-3.55~-0.08、p=0.04)が弱かった。 一方、不良な新生児アウトカム(新生児集中治療室への移送、先天形成異常、けいれん、周産期死亡の複合)のリスクは、金銭的報奨群が2%(4例の新生児)と、対照群の9%(18例の新生児)よりも7%低く、有意な差が認められた(平均群間差:14例、95%CI:5~23、p=0.003)。 事後解析では、金銭的報奨群で、出生時体重≧2,500gの新生児が多い可能性が示唆された。補正前ORは1.95(95%CI:0.99~3.85、p=0.055)で有意差はなかったものの、性別で補正後のORは2.05(1.03~4.10、p=0.041)で有意な差がみられ、性別と早産で補正後は2.06(0.90~4.71、p=0.086)となった(事後解析であるためデータの解釈には注意を要する)。 重篤な有害事象の発現は両群で同程度であった。引換券の総費用は、金銭的報奨群が4万9,040ユーロ、対照群は1万9,520ユーロであり、2万9,520ユーロの差が認められた。 著者は、「今後の研究では、金銭的な報奨が出産後の禁煙に及ぼす長期的な効果を評価する必要がある」としている。

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第44回 相関関係とは?【統計のそこが知りたい!】

第44回 相関関係とは?関数関係がある場合には、xの値が決まると必然的にyの値が決まります。ところが、xの値が決まったからといってyの値が正確には定まらず、そうかといって両者がまったく関係がないともいえないこともあります。このような現象の代表例としてよく取り上げられるのが「身長と体重との関係」です。以下に相関関係について説明します。■相関関係(Correlation)次の表はある10人の学生について身長と体重を測定した結果です。表 対象者の体重と身長の一覧身長をy軸(縦軸)、体重をx軸(横軸)にとり、点グラフを描くと図になります。この図のことを「相関図」または「散布図」といいます。図 身長と体重の相関図(散布図)相関図で体重と身長の関係をみると「体重が決まれば身長が決まる」という明確な関係はみられません。そのため、体重と身長との関係を関係式で表すことはできません。しかし、体重が重ければ身長が高くなる傾向はみてとれ、体重と身長は「まったく無関係」ともいえません。このように、2つの項目がかなりの程度の規則性をもって、同時に変化していく性質を「相関」といいます。また、2つの項目xとyについて、xの値が決まれば必然的にyの値が決まるわけではないにしろ、両者の間に関連性が認められるとき「xとyとの間には相関関係がある」といいます。相関関係の程度の強さを表す指標を「相関関係」といいます。また、相関関係を用いて変数相互の因果関係を調べることを「相関分析(Correlation analysis)」といいます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第42回 相関分析とは?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決!一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)

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統合失調症の抗精神病薬関連代謝異常~最新レビュー

 代謝異常や肥満は、統合失調症患者の主な心血管イベントのリスク因子である。その結果として、統合失調症患者は、そうでない人と比較し、死亡率が高く、平均寿命が短くなる。統合失調症と代謝異常との関係は、特定の遺伝学的または病理学的リスクが影響している可能性もあるが、抗精神病薬(とくに第2世代抗精神病薬)が体重増加や代謝異常リスクを上昇させていると考えられる。台湾・台北医学大学のShen-Chieh Chang氏らは、抗精神病薬に関連する体重増加や代謝異常、それらのメカニズム、モニタリングガイドライン、介入に関する文献のレビューを行った。World Journal of Psychiatry誌2021年10月19日号の報告。 主なレビューは以下のとおり。・ほぼすべての抗精神病薬において体重増加との関連が認められたが、その程度は薬剤間で異なる。・体重増加や特定の代謝異常に対し、神経伝達物質受容体親和性の強さやホルモンが関連していることが示唆されているが、抗精神病薬関連の体重増加や代謝異常の根底にあるメカニズムは明らかになっていない。・新たなエビデンスとして、抗精神病薬関連の体重増加や代謝異常と関連する遺伝子多型の役割が示唆されている。・抗精神病薬誘発性代謝異常のスクリーニングやモニタリングのために多くのガイドラインが発表されているが、これらは臨床で日常的に実施されているわけではない。・抗精神病薬誘発性代謝異常のマネジメント戦略に関する研究が多かった。・統合失調症患者およびその介護者は、健康的な生活が送れるよう、禁煙、食事、身体活動のプログラムについて教育を受け、動機づけを行わなければならない。・ライフスタイル介入がうまくいかない場合には、代謝異常リスクの低い他の抗精神病薬への切り替えや体重増加を軽減させるための補助治療薬の追加を検討する必要がある。・統合失調症の治療において抗精神病薬は不可欠であるため、臨床医は抗精神病薬関連の体重増加や代謝異常をモニタリングし、マネジメントする必要がある。

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コロナワクチン3種の有効性、流行株で変化?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)、mRNA-1273(Moderna製)、Ad26.COV2.S(Janssen/Johnson & Johnson製)の3種類のワクチンの有効性は、デルタ変異株が優勢になるに伴ってやや低下したものの、COVID-19による入院に対する有効性は高いまま維持されていた。ただし、65歳以上でBNT162b2またはmRNA-1273ワクチン接種者に限ってみると、COVID-19による入院に対する有効率はわずかに低下していたという。米国・ニューヨーク(NY)州保健局のEli S. Rosenberg氏らが、同州データベースを用いた前向きコホート研究の解析結果を報告した。FDAが承認した3種類のCOVID-19ワクチンの有効性に関する、米国の地域住民を対象としたデータは限られており、ワクチンの有効性の低下が、免疫の減弱、デルタ変異株または他の原因に起因するかどうかについても不明であった。著者は、「今回の結果は、COVID-19患者を減少させるためには、予防行動に加えてワクチンが引き続き有効であることを支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年12月1日号掲載の報告。NY州869万人における3種類のワクチンの有効性を検証 研究グループは、NY州における4つのデータベース(CIR、NYSIIS、ECLRS、HERDS)※を連携して、同州居住18歳以上の成人869万825例を対象とするコホートを構築し、BNT162b2、mRNA-1273およびAd26.COV2.Sワクチンの有効性を評価した。 評価項目は、2021年5月1日~9月3日における検査で確認されたCOVID-19に対するワクチンの有効性、ならびに2021年5月1日~8月31日におけるCOVID-19による入院(入院時または入院後にCOVID-19と確定診断)に対するワクチンの有効性で、接種したワクチンの種類、年齢、ワクチン接種完了月に準じて定義したコホートと、年齢別のワクチン未接種コホートを比較した。※CIR(Citywide Immunization Registry):NY市居住者のCOVID-19ワクチン接種に関する全データ、NYSIIS(New York State Immunization Information System):NY州およびその他の地域のCOVID-19ワクチン接種に関するデータ、ECLRS(Electronic Clinical Laboratory Reporting System):NY州のすべてのCOVID-19検査結果、HERDS(Health Electronic Response Data System):NY州内全入院施設の日次電子調査(COVID-19の診断が確認された人の全新規入院に関するデータ日次新型コロナ入院データを収集)2021年5月~8月に、3種類すべてで有効性が低下 対象期間中に、COVID-19は15万865例、COVID-19による入院は1万4,477例確認された。 流行中の変異株に占めるデルタ変異株の割合が1.8%だった2021年5月1日の週において、COVID-19に対する有効率中央値は、BNT162b2で91.3%(範囲:84.1~97.0)、mRNA-1273で96.9%(93.7~98.0)、Ad26.COV2.Sで86.6%(77.8~89.7)であった。 その後、有効率は全コホートで同時に低下し、全体の有効率中央値は5月1日の週の93.4%(範囲:77.8~98.0)から、デルタ変異株が85.3%を占めた7月10日頃には73.5%(13.8~90.0)、デルタ変異株が99.6%を占めた8月28日の週には74.2%(63.4~86.8)となった。 一方、COVID-19による入院に対する有効率は、18~64歳では明らかな経時変化はみられず、ほぼ86%以上で維持されていた。65歳以上では、BNT162b2またはmRNA-1273は5月から8月にかけて有効率が低下し(それぞれ94.8%→88.6%、97.1→93.7%)、Ad26.COV2.Sは経時的な変化はないものの他のワクチンよりも有効率が低かった(範囲:80.0~90.6%)。

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院外心停止者の持続的自己心拍再開に有効なのは?カルシウムvs.生食/JAMA

 院外心停止の成人患者において、静脈内または骨髄内のカルシウム投与は生理食塩水投与と比較して、自己心拍の持続的再開を改善せず、30日生存率や良好な神経学的アウトカムの達成割合がいずれも有意差はないものの不良な傾向にあることが、デンマーク・Prehospital Emergency Medical ServicesのMikael Fink Vallentin氏らの検討(Calcium for Out-of-Hospital Cardiac Arrest trial)で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2021年11月30日号で報告された。デンマークの無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、院外心停止患者の自己心拍再開におけるカルシウム投与の有用性の評価を目的に、医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(Novo Nordic Foundationなどの助成を受けた)。 この研究は、2020年1月20日~2021年4月15日の期間に、デンマークの行政区の1つであるCentral Denmark Region(人口約130万人)で実施された。対象は、年齢18歳以上、院外で心停止となり、心停止中に少なくとも1回のエピネフリンの投与を受けた患者であり、外傷性心停止や妊婦などは除外された。 被験者は、塩化カルシウム5mmolの静脈内または骨髄内投与を最多で2回行う群、または同様に生理食塩水(塩化ナトリウム9mg/mL、プラセボ)の投与を行う群に無作為に割り付けられた。試験薬の1回目の投与は、エピネフリンの初回投与直後に行われた。 主要アウトカムは持続的な自己心拍再開(自己心拍が得られ、それ以上の胸骨圧迫が必要でない時間が20分以上持続した場合)とされた。主な副次アウトカムは、30日の時点での生存および良好な神経学的アウトカム(修正Rankin尺度スコアが0~3点)を伴う生存などであった。 383例の非盲検データの中間解析の結果により、2021年4月15日、独立データ安全性監視委員会はカルシウム群の有害性の徴候に基づき試験の早期中止を勧告し、これを受けて運営委員会は即座に試験を中止した。主要アウトカム:19% vs.27%、高カルシウム血症も高頻度 391例が解析に含まれ、193例がカルシウム群、198例が生理食塩水群であった。全体の平均年齢は68(SD 14)歳で、114例(29%)が女性だった。発生場所は82%が自宅で、75%が電気ショック非適応リズムの患者であった。 心停止から試験薬投与までの期間中央値は18分(IQR:14~23)で、60%の患者が骨髄内投与を受け、73%は試験薬の投与を2回受けた。フォローアップが不能の患者はなかった。 持続的な自己心拍再開の達成割合は、カルシウム群が19%(37例)と、生理食塩水群の27%(53例)に比べ低かったが、両群間に有意な差は認められなかった(リスク比:0.72[95%信頼区間[CI]:0.49~1.03]、リスク差:-7.6%[95%CI:-16~0.8]、p=0.09)。 30日の時点での生存率は、カルシウム群は5.2%(10例)であり、生理食塩水群の9.1%(18例)より低かったものの、有意差はみられなかった(リスク比:0.57[95%CI:0.27~1.18]、リスク差:-3.9%[95%CI:-9.4~1.3]、p=0.17)。 また、30日時の良好な神経学的アウトカムの達成割合は、カルシウム群が3.6%(7例)、生理食塩水群は7.6%(15例)であった(リスク比:0.48[95%CI:0.20~1.12]、リスク差:-4.0%[95%CI:-8.9~0.7]、p=0.12)。 カルシウム値が測定され、自己心拍再開が達成された患者のうち、カルシウム群では74%(26例)、生理食塩水群では2%(1例)が高カルシウム血症を発現した。 著者は、「これらの結果は、院外心停止の成人患者に対する心停止中のカルシウムの投与を支持しない」とまとめ、「早期に中止された試験は、効果を過大評価する傾向があるとされる。また、主要アウトカムの95%CIの幅の広さを考慮すると、有害性を示唆する点推定値は偶然の結果である可能性もある」と指摘している。

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TN乳がん1次治療でのペムブロリズマブ、適切なCPSカットオフ値は?(KEYNOTE-355)/SABCS2021

 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、ペムブロリズマブ+化学療法による治療ベネフィットが期待される患者の定義としてCPS 10以上が適切であることを示唆する、第III相KEYNOTE-355試験のサブグループ解析結果を、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)で発表した。 本試験では、化学療法+ペムブロリズマブが、未治療のPD-L1陽性(CPS 10以上)の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん患者において、化学療法+プラセボと比べ、有意に全生存(OS)および無増悪生存(PFS)を改善したことがすでに報告されている。しかし、CPS 1以上の集団では有意なベネフィットは示されなかった。今回は、CPS 1未満、1~9、10~19、20以上のサブグループに分けてOSとPFSを解析した。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例・対照群:プラセボ+化学療法 281例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS 10以上、1以上)およびITT集団におけるPFSとOS[副次評価項目]奏効率、奏効期間、病勢コントロール率、安全性 主な結果は以下のとおり。・最終解析時点(データカットオフ:2021年6月15日)で、無作為化~データカットオフの期間の中央値は44ヵ月だった。・OSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.73(0.55~0.95)、CPS 1以上で0.86(0.72~1.04)、ITT集団で0.89(0.76~1.05)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で0.97(0.72~1.32)、1~9で1.09(0.85~1.40)、10~19で0.71(0.46~1.09)、20以上で0.72(0.51~1.01)で、CPS 1~9ではペムブロリズマブ群とプラセボ群で変わらず、10~19と20以上ではペムブロリズマブの追加による治療ベネフィットが同等だった。 ・PFSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.66(0.50~0.88)、CPS 1以上で0.75(0.62~0.91)、ITT集団で0.82(0.70~0.98)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で1.09(0.78~1.52)、1~9で0.85(0.65~1.11)、10~19で0.70(0.44~1.09)、20以上で0.62(0.44~0.88)だった。

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CKDの透析導入、最適なeGFRは?/BMJ

 進行した慢性腎臓病(CKD)患者において、非常に早期の透析導入は死亡および心血管イベントをわずかだが減少することが示された。オランダ・ライデン大学医療センターのEdouard L. Fu氏らが、進行性CKD患者における透析導入の最適な推算糸球体濾過量(eGFR)を明らかにすることを目的とした観察コホート研究の結果を報告した。検討により、導入参照値と比べた死亡の5年絶対リスク低下は5.1%で、平均1.6ヵ月の死亡の延期に相当するものだったが、透析導入を4年早める必要があることも示された。著者は、「ほとんどの患者にとって、今回の試験で示されたぐらいの減少では、透析期間がより長期化することに伴う負担を上回るものにはならないと思われる」と述べている。BMJ誌2021年11月29日号掲載の報告。透析を開始するeGFRを4~19mL/分/1.73m2の15段階で検討 研究グループは、腎臓専門医に紹介された患者を登録するスウェーデンの全国腎臓登録(National Swedish Renal Registry)を用い、2007年1月1日~2016年12月31日の期間にベースラインのeGFRが10~20mL/分/1.73m2の患者を対象として、2017年6月1日まで追跡調査を行った。 主要評価項目は5年全死因死亡率、副次評価項目は主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)である。無イベント時間バイアス、リード・タイム・バイアス、生存者バイアスを排除して厳格な臨床試験デザインを模倣し、動的周辺構造モデルを用いて、eGFR(mL/分/1.73m2)値4から1単位刻みで19までの、15の透析導入戦略に関して、補正後ハザード比および絶対リスクを推算した(参照値はeGFR6~7)。eGFR15~16で、5年全死因死亡5.1%低下、心血管イベント2.9%低下 進行したCKD患者1万290例(年齢中央値73歳、女性3,739例[36%]、eGFR中央値16.8)において、3,822例が透析を開始し、死亡が4,160例、MACEが2,446例で確認された。 死亡率には放物線型の関連が認められ、eGFR15~16で最も死亡リスクが低かった。eGFR6~7での透析導入と比較して、eGFR15~16での透析導入による死亡の5年絶対リスク低下は5.1%(95%信頼区間[CI]:2.5~6.9)、MACEの同リスク低下は2.9%(0.2%~5.5%)で、ハザード比はそれぞれ0.89(95%CI:0.87~0.92)、0.94(0.91~0.98)であった。 死亡に関する絶対リスク差5.1%は、5年の追跡期間中で平均1.6ヵ月の死亡の延期に相当するものだったが、一方で透析導入は4年早める必要があった。 Initiating Dialysis Early and Late(IDEAL)研究の強化戦略(eGFR10~14 vs.eGFR5~7)とIDEAL研究で達成されたeGFR(eGFR7~10 vs.eGFR5~7)を模倣した場合の全死因死亡のハザード比は、それぞれ0.96(95%CI:0.94~0.99)、0.97(95%CI:0.94~1.00)であり、無作為化試験のIDEAL研究の結果と一致していた。

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12/11、第63回米国血液学会(ASH)スタート!注目演題は?

 12月11日(現地時間)から第63回米国血液学会(ASH)が米国アトランタとオンラインのハイブリッド形式で開催される。COVID-19の影響で昨年は完全オンライン開催だったが、今年はハイブリッド方式を選択。現地の参加者の交流を促すため、感染対策を行いながらウエルカムレセプションやオピニオンリーダーを囲む少人数セッションなどが企画されている。 既にAbstractが公開されており、Late-breakingには「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するポラツズマブ ベドチンとR-CHP療法併用vs.R-CHOP療法/POLARIX」「初回免疫寛容誘導(ITI)療法に対するrFVIIIFcの有効性」「B細胞非ホジキンリンパ腫2次治療としてのCAR-T細胞tisagenlecleucel vs.標準治療/BELINDA試験」などの演題が選ばれた。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」ではASHの特設カテゴリーを設置。横浜市立大学の山崎 悦子氏が選定した白血病、国立がん研究センター 東病院の山内 寛彦氏が選定したリンパ腫、群馬大学大学院医学系研究科の半田 寛氏が選定した骨髄腫を中心とした、計25の注目演題をコメント付きで紹介している。登録者向けのオンデマンド配信は2022年2月1日まで視聴可能となっている。

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サクビトリル・バルサルタン:ステージBにエビデンスが出なかったけど、日本だけはステージAから使えてしまう矛盾(解説:絹川弘一郎氏)

 サクビトリル・バルサルタンはとても良い心不全治療薬である。もう少し正確に言うと素晴らしい軽症心不全治療薬である。Paradigm-HFやLifeのデータを見てもNYHA 4度には効かないし、自分の臨床経験でもその通りである。サクビトリル・バルサルタンは重症テスターともいえ、この薬剤に忍容性がない(=血圧が下がりすぎる、ないしは腎機能が悪化する)場合、NYHA 4度と認定しても構わないのではとすら、最近思う。しかし、血行動態が安定しているNYHA 2度のHFrEFには実によく効くし、リバースリモデリングも大いに期待できる。 閑話休題(それはさておき)、Paradise-MIという試験が発表されて、急性心筋梗塞(AMI)後LVEFが低下したか(40%以下)、または肺うっ血所見のある患者に対してramipril 10mg/dayと比較してサクビトリル・バルサルタン400mg/dayが心血管死亡や心不全入院を減らすかどうかが検証された。 もともと、HFrEFの治療というのはAMI後の遠心性リモデリングから心不全に至る道筋における神経体液性因子の悪循環を阻止するという動物実験モデルがそのベーシックリサーチ的枠組みであり、その視点でいえば、HFrEFの予後を改善する薬剤はすべからくAMI後のリモデリング抑制(時にリバースリモデリングも)とイベント抑制がセットになるべきである。事実、ACE阻害薬の有効性はEFが低下したAMI症例においてSAVE試験(カプトプリル)で実証されており、その後TRACE試験(トランドラプリル)でも追試されている。EFは問わずAMI全般でACE阻害薬にリモデリング抑制とイベント抑制があるというGISSI-3試験(リシノプリル)もあるし、AIRE試験(ramipril)ではEFは問わず心不全を合併したAMI症例での有効性を示している。ARNIはその機序から考えても(例えば、カルペリチドのAMI直後の投与がイベントを減らすというJ-WINDのデータなどから)、ACE阻害薬以上のイベント抑制効果を急性心筋梗塞後の患者でもたらすと想像していた。 しかし、このParadise-MIの結果は否定的である。確かに全体のハザード比[HR]が0.90でカプランマイヤー曲線もずっとramipril群より下にあるし、PCIをしたAMIとか、血圧低めの患者とか、Killip II度以上の急性心不全患者とか、効きそうなサブグループもあるが、やはり有意差なしは有意差なしである。ramiprilは日本では導入されていなくて、使用経験はないが、評判では“最強の”ACE阻害薬と言われている。何をもって最強というのかよくわからんけど(おそらくは降圧効果であろう)、カプトプリルが“最弱の”ACE阻害薬でその対極に位置する。ARBにも“最弱”ロサルタンがあるし、“最強”ARBはカンデサルタンかテルミサルタンか。 この強弱については歴史的に臨床試験の結果である程度の推測がされている。一番弱いはずのカプトプリルにロサルタンはOPTIMAAL試験で勝てないばかりか負けかかっており(HR:1.15、95%信頼区間[CI]:0.99~1.28)、それこそRAS阻害薬中の最弱という位置付けである。そしてVALIANT試験でカプトプリルにようやく引き分けたバルサルタンはその次に弱い感じである。 On Target試験というテルミサルタンとramiprilをハイリスク高血圧患者に対して投与してイベント比較をした試験もあって、そこでは引き分けなので(厳密にはAMI後のEF低下例ではないので引用する意味はないかもしれないが)、イメージとしてARBとACE阻害薬の最強対決が引き分けたみたいに思っている。そこで、日本にramiprilがない上で、通常AMI後にはramiprilより少し弱そうなエナラプリルを投与するのであるから、そこをARNIにしたら血圧の忍容性が良ければもう少しメリットがあるかもしれないという想像は可能である。 とはいえ、テルミサルタンが強かろうと、そもそもOPTIMAALやValiantのせいでAMI後にARBは推奨されてないから強いARB入れましょうともならない。今回ARNIの相手に最強ACE阻害薬を選んだのが間違いというか、やや調子に乗ったというか、エナラプリル相手が無難であったと思われる。 いずれにしても、もうこれで再戦はないので、心筋梗塞後のステージBにおいてACE阻害薬をARNIに切り替える、または最初から投与することを支持するハードなエビデンスはありません、という状況がずっと続く。ただし、この試験では“最初の”心不全増悪と心血管死亡を主要エンドポイントとしており、差は認めなかったけれども、ごく最近になって心不全による“総入院回数”と心血管死をエンドポイントに設定するとARNIが入院回数を減らしたという論文が出た。さらにParadise-MIのプロトコル論文によるとエコーデータをサブ解析用に取得しているようなので、左室リモデリングの点でARNIの方がramiprilより優れているとなれば、やっぱり効果はあるかもと言い出すかもしれない。しかし、ここにも小規模ながら最近negativeなデータがあって、心筋梗塞後3ヵ月以上経過した(しかし無症状のEF40%以下)患者に対するMRIで検討した左室リモデリングやNT-proBNPに対する効果はバルサルタン320mgとの比較で差がないとなっており、相手を選べば勝てるともいえない(これはHFrEFの一歩手前でSOLVD-preventionと同じような患者層であり、HFrEFにおいてARNIによるプラスアルファのリバースリモデリングが実体験上ある中でむしろ差がないことはとても意外である)。とはいえ、日本は世界で唯一高血圧に対する適応症をARNIが取得しており、ステージAから投与可能となっているから、ステージBのエビデンスなどあってもなくてもどっちでも一緒である。

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日本人高齢者におけるコーヒー、緑茶、カフェインと認知症リスク

 コーヒー、緑茶、カフェインは、高齢者の認知症予防の潜在的な因子といわれているが、根拠となるエビデンスは十分ではない。新潟大学のNana Matsushita氏らは、中高年の認知症リスクとコーヒー、緑茶、カフェインの摂取との関連を調査した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2021年10月8日号の報告。1日3杯以上コーヒーを飲んでいる人では認知症リスクが50%減少 本研究は、8年間フォローアップを行ったコホート研究である。対象者は、40~74歳の日本の地域住民1万3,757人。2011~13年に自己記入式のアンケート調査を実施した。予測因子は、コーヒー、緑茶の消費量とし、そこからカフェインの摂取量を推定した。アウトカムは、介護保険データベースより抽出した認知症発症とした。調整済みハザード比(HR)の算出には、Cox比例ハザードモデル、遅延組み入れCoxモデルを用いた。 高齢者の認知症リスクとコーヒー、緑茶、カフェインの摂取との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・調査期間中の認知症発症数は309例であった。・コーヒーの消費量が多い人はHRが低く、五分位で最も消費量が多い群(326mL/日以上)は、最も少ない群(26mL/日未満)と比較しHRが有意に低かった(HR:0.49、95%CI:0.30~0.79)。・同様に、カフェイン摂取量が最も多い群は、最も少ない群と比較しHRが有意に低かった(調整p for trend=0.0004)。・遅延組み入れCoxモデルにおいても、同様の結果であった。・これらの関連性は、男性では有意であったが、女性では有意な差は認められなかった。・コーヒーの消費量が1日2~2.9杯(HR:0.69、95%CI:0.48~0.98)および1日3杯以上(HR:0.53、95%CI:0.31~0.89)の人は、0杯の人と比較しHRが低かった。・緑茶の消費量と認知症リスク低下との関連は、60~69歳でのみ有意な関連が認められた(調整p for trend=0.0146)。 著者らは「コーヒーやカフェイン摂取は、とくに男性において、用量依存的に認知症リスクの低下が認められた。1日3杯以上コーヒーを飲んでいる人では、認知症リスクが50%減少することが示唆された」としている。

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ICIによる非小細胞肺がんの術前・術後補助療法の有効性を探る(CheckMate 77T試験)/日本肺癌学会

 最近のStageIIAからIIIBの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後の5年生存率は50%以下であり、その治療効果は十分とはいえず、何らかの追加治療が必要とされてきた。 1990年代から化学療法を用いた術前補助療法が行われてきたが、最近は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場。周術期治療への可能性が期待されている。そこで、化学療法にICIを加えた周術期治療の有用性を検証するCheckMate 77T試験が現在進行しており、その概要が第62回日本肺癌学会学術集会において、神奈川県立がんセンターの伊藤宏之氏から紹介された。 StageIIIAのNSCLC患者46例を対象に、化学療法にニボルマブを併用する術前補助療法の後に手術を施行する第II相試験として、NADIM試験が実施された。その結果、残存するがん細胞の面積ががん組織中に占める割合が 10%以下の症例の割合を表すmajor pathological response(MPR)が83%、病理学的完全奏効(pCR)は59%との良好な成績を示し、18か月後の無増悪生存率は81%、全生存率は91%となっていた。この結果を受け、第III相試験としてCheckMate 77T試験がデザインされた。 CheckMate 77T試験は、切除可能なNSCLC患者を対象に、組織型に基づく化学療法にニボルマブ360mgまたはプラセボを加えた術前補助療法を行い、さらに術後補助療法としてニボルマブ480mgまたはプラセボを1年間投与する無作為化二重盲検第III相試験である。主要評価項目は盲検下独立中央評価委員会(BICR)による無イベント生存期間(EFS)、主な副次評価項目としてBICRによる全生存期間(OS)、pCR、およびMPR、安全性と忍容性などについても評価される。 対象は、切除可能なStage IIAからIIIBのNSCLCで、ECOG PS が0~1の患者。EGFR/ALK変異、脳転移、自己免疫疾患もしくはその疑いがある患者は除外された。 現在、日本を含む21ヵ国から115施設が参加し、2024年9月の修了を目指して試験が進行している。伊藤氏は、これまでICIは内科領域の治療で使われる薬剤であったが、今後は外科領域における周術期治療においても使用されるようになる可能性が高いとの期待を示した。

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