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第98回 ワクチン接種率35%の国への侵攻、世界のコロナ感染状況も暗転か

年明け以降、緊迫度を高めていたウクライナ情勢だったが、2月24日、ついにロシアはウクライナへの全面的な軍事侵略を開始した。一応、私自身は国際紛争も取材範囲としている。たぶんコロナ禍でなければ、少なくとも隣国ポーランドあたりまでは向かっていたと思う。現在、ロシアはウクライナの東西南北のうち、国境を接していない西部以外の3方向から侵攻している。首都キーウ(ウクライナ語表記。キエフはロシア語読み)に近い真北の国境はロシアではなくベラルーシと接している。しかし、ベラルーシはヨーロッパ最後の独裁者と評され、28年にわたって国家元首に君臨するアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が近年対ロ接近路線を強めている。今回のロシア侵攻直前もベラルーシ・ウクライナ国境周辺でロシアと合同軍事演習を行っており、そのロシア軍がそのまま南下した格好だ。ロシア側が最初に持ち掛け、2月28日にベラルーシのホメリで開催された第1回停戦交渉にウクライナ側が当初応じなかったのも、ロシア寄りのベラルーシ領内での交渉は中立的に行われないと考えたからに他ならない。それでも最終的にウクライナ側が応じたのは「停戦交渉を拒否している」という理屈でロシアが攻撃継続の正当性を主張する可能性を案じたためだろう。そんなウクライナ、ロシアに関して危惧すべきことがある。まさにいま世界中で流行している新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大だ。まず、ウクライナは2月中旬にピークとなる3万8,000人超の感染者が発生。その後はピークアウトしているものの、今回のロシア軍の侵攻直前の2月21日でも1万3,000人超の感染者が報告されていた。ウクライナの総人口は4,370万人超なので、人口換算では日本で1日の新規感染者報告数が約4万人になっているのと同じことになる。現時点の日本の感染状況から見ればマシだが、ウクライナの国力や周辺環境から考えれば、実は深刻な数字だ。まず、現在のウクライナの新型コロナワクチン接種完了率は、Our World in Dataによるとわずか35.02%。全世界平均の55.69%からすれば惨憺たる数字だ。しかも、戦時下で新型コロナワクチンの接種を進めていられる環境ではなくなったと断言してよい。ただ、懸念すべきはそもそもウクライナでは過去に麻疹ワクチン接種者での接種後死亡などが報じられた影響で国民のワクチン不信が根強いと言われていることだ。実際、世界保健機関(WHO)・国連児童基金(UNICEF)の合同報告では2010年代半ばに麻疹をはじめとする各種ワクチンの接種率が50%を下回る事態となっている。そして実際、2018~2019年にかけては麻疹、2019年には風疹の大流行が起きている。しかも、医療インフラは極めてアンバランスな状況だ。やや古い数字になるが、2014年の世界銀行の公表データでは人口1,000人当たりの医師数は2.9人、病床数は7.46床。医師数でみると、日本よりは多いが経済開発協力機構(OECD)の加盟国などでの数字で見ると、どちらかというと数は少ないほうになる。にもかかわらず病床数は多い。ざっくりした見方をすれば、医師がてんてこ舞いで病床を回しているか、事実上の病床の相当数が実際に機能していないかのいずれかになる。国際通貨基金(IMF)が公表している1人当たりの国内総生産で、ウクライナが世界195カ国・地域中第126位の3,424.77ドルでヨーロッパ最貧国という窮状にあることを考えれば、後者の可能性のほうがやや高いと考えられる。そして現在の戦闘によりウクライナの非常事態省は、すでに「4,000人を超える民間人の死者発生」と発表している。戦傷者の実数は不明だが、おそらく相当数発生していると思われる。当然ながら現下の情勢では医療機関へのアクセスそのものが困難な地域も発生していることは想像に難くなく、アクセスが確保されている医療機関でも受け入れは戦傷者が優先されるはず。もはや新型コロナに気を払っている余裕はないだろうし、PCR検査なども十分に実施しているとは言い難いだろう。そして当然、病床も戦傷者から埋まっていくはずであり、地域や医療機関によっては新型コロナで重症化、あるいは重症化しそうな人が入院できない可能性もある。一方、国内では各所で国内避難民が発生し、地下などのシェルターで密になっているほか、安全に退避できる可能性がある南西部のポーランド、ルーマニア、スロバキア、ハンガリー、モルドバには大量の難民が流入している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、3月1日現在、これらの国に87万人超の難民が流入しているという。これに応じて各国は難民に関して新型コロナに関連した検疫措置を免除している。人道的な観点からやむを得ない措置だろう。これら難民が流入している各国の新型コロナの感染者発生状況は、いずれもピークアウトはしているものの、1日当たりの新規感染者報告数を日本の人口に換算すると、ポーランドが約3万人、ルーマニアが約2万7,000人、ハンガリーが約7万人、スロバキアが約19万人、モルドバが約12万人という規模になる。国によりかなりの差はあるが、スロバキア、モルドバは日本から考えれば尋常とは言えない感染状況である。各国ともそれでも覚悟の上で難民を受け入れているのだろう。そしてこれらの国でのワクチン接種完了率はポーランドが58.71%、ルーマニアが27.91%、ハンガリーが64.04%、スロバキアが50.39%、モルドバが13.14%とやはり心もとない。一方、ウクライナに軍事侵略しているロシアは日本より2,000万人ほど人口が多い中で、最新の新規感染者報告数は13万人超、ワクチン接種完了率は49.07%。どちらも褒められる数字ではない。また、報道を見ればわかるが、隣国に入国してきた難民の多くはマスクを着用していない。それどころか報じられているウクライナ国内の病院での戦傷者の治療場面では医療従事者ですらマスクを着用していない。もっともこの点はある種やむを得ないとも言える。紛争が起きる地域の多くはもともとが貧しいことがほとんどで、さらに戦闘の発生で物流も不安定になるため、十分な医療資器材がないなかで治療を行わなければならないことは日常的だ。実際、私は紛争地の医療機関での戦傷者治療場面に取材のため何度か立ち会ったことがあるが、医療従事者は手洗いする時間すらなく創傷対応に当たっていた。やむを得ないこととはいえ、今回のロシアのウクライナ軍事侵略は両国間での死傷者発生とともに、両国とその周辺国での感染拡大という極めて最悪の事態をもたらすかもしれない。近年まれにみる大義ない軍事侵略に対して、日本政府が各国と協調してロシアに強い制裁措置を行うのは、必要かつ当然のことである。また、岸田首相自ら記者会見で周辺各国への人道支援に1億ドルを提供することを明らかにした。その中にこの新型コロナ対策も念頭に置いて欲しいと思うのは欲張りだろうか? 念のために言っておくが、廃棄直前のアベノマスクをこれ幸いに支援物資に加えるようなお恥ずかしい真似はしないでもらいたい。

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ウェーバー・クリスチャン病〔WCD:Weber-Christian disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義WeberおよびChristianにより、再発性、非化膿性、有熱性の急性脂肪織炎として、今から90年ほど前に提唱されたまれな疾患で、女性に多い。他にも、“relapsing febrile nonsuppurative nodular panniculitis”という同義語がある。しかし、その後検査法が進歩し、以前ウェーバー・クリスチャン病として診断された中には悪性リンパ腫や深在性エリテマトーデス、α1-アンチトリプシン欠損症による脂肪織炎などを数多く含んでいたことが徐々に明らかになってくるにつれ、次第にこの病名は使われなくなってきている。1988年、Whiteらは、ウェーバー・クリスチャン病として報告された過去の報告30例を詳細に検討し、12例は結節性紅斑、6例は血栓性静脈炎で、他には外傷性脂肪織炎、細胞貪食組織球性脂肪織炎、皮下脂肪織炎様リンパ腫、白血病の皮下浸潤であったとしている1)。また、別の総説でも、かつてウェーバー・クリスチャン病として報告された疾患の多くは、バザン硬結性紅斑や膵疾患に伴う脂肪織炎であったとしている2)。いまだにこの病名での報告が散見されるが、その理由の1つに、安易にこの病名を使ってしまうことが挙げられる。さまざまな原因で起こる症候群と理解されるので、現在では「いわゆるウェーバー・クリスチャン病」とし、本症を独立疾患とみなさない立場の方が多い。■ 疫学上記の理由から明確な患者数などは統計的にとられておらず不明である。■ 病因現在も不明である。■ 症状元々の概念によると、全身症状を伴い、四肢、体幹に皮下結節や板状の硬結を多発性に呈し、皮膚表面の発赤、熱感、圧痛を伴うこともあり、時に潰瘍化する。再発を繰り返した結果、色素沈着や萎縮性の陥凹を残して瘢痕治癒する。■ 予後原因となる疾患により予後はわかれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査・診断末梢血中の炎症反応の上昇がみられるが、特異的なものはない。病理組織像は、非特異的な脂肪織炎、とくに急性期は脂肪小葉性脂肪織炎(lobular panniculitis)で、時間の経過とともに組織球、泡沫細胞が出現し、脂肪肉芽腫の像を呈し、その後線維化もみられる。血管炎を伴わない。■ 鑑別診断1)皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫下肢に好発し、結節性紅斑に似た臨床像(表面は発赤を伴う皮下硬結)を呈する。組織像は皮下脂肪織にCD8陽性T細胞が脂肪細胞を取り囲むように浸潤し(rimming)、核破砕物を貪食したマクロファージ(bean-bag cell)を認める。また、出血傾向や汎血球減少、肝脾腫などを伴う致死的なウェーバー・クリスチャン病は、“cytophagic histiocytic panniculitis”として報告されたが3)、その大部分は現在、皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫であると考えられている。2)深在性エリテマトーデス皮下脂肪織を炎症の主座とし、脂肪融解により臨床的に陥凹を来す。組織は、皮下脂肪織にリンパ球、組織球の浸潤、細小血管の閉塞、間質へのムチン沈着、晩期には石灰化もみられる。3)結節性紅斑下肢に好発する皮下硬結で、生検の時期によって組織像が異なる。晩期は脂肪肉芽腫もみられる。他にも、スウィート病、ベーチェット病、膵疾患、薬剤性のものなどを除外する必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)抗生剤内服は無効で、副腎皮質ステロイドの内服を主体に、反応が乏しい場合はステロイドパルスや免疫抑制剤なども考慮する。悪性リンパ腫に対しては化学療法を施行する。4 今後の展望ウェーバー・クリスチャン病という病名を使う際には上述のことを良く理解し、他疾患を確実に除外することを忘れてはならない。「いわゆるウェーバー・クリスチャン病」という診断名に満足せず、その原因をさらに特異的に探究していく姿勢を怠ってはならない。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患克服事業「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班」(医療従事者向けのまとまった情報)1)White JW, et al. J Am Acad Dermatol. 1998;39:56-62.2)Requena L, et al. J Am Acad Dermatol. 2001;45:325-361.3)Winkelmann RK, et al. Arch Intern Med. 1980;140:1460-1463.公開履歴初回2022年3月4日

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精神科入院患者へのベンゾジアゼピン使用に対するCOVID-19の影響

 オーストラリア・Cumberland HospitalのNancy Zaki氏らは、COVID-19が急性期精神医学においてベンゾジアゼピンの使用増加に影響を及ぼすかについて、検討を行った。Australasian Psychiatry誌オンライン版2022年2月10日号の報告。 2019~20年の2年間にわたり、2つの急性期精神科入院患者ユニットにおけるベンゾジアゼピン使用率を評価した。同時期における経口アトルバスタチン使用率を比較対象として使用した。 主な結果は以下のとおり。・2020年の総入院患者数は減少したものの、2020年4月~12月のベンゾジアゼピン使用量は、2019年の同時期と比較し、有意な増加が認められた。・パンデミックの制限が緩和された後、使用量はさらにピークを迎えていた。これは、救急でのメンタルヘルス症状および急性期精神科入院の割合の高さによるものであると考えられる。・COVID-19による退院制限も、喫煙のさらなる制限につながっていた。 著者らは「COVID-19パンデミックにより、ベンゾジアゼピン使用は増加した。パンデミックが急性の精神医学的症状に及ぼす影響を理解するためには、より多くの研究が求められる」としている。

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ニボルマブ+化学療法による非小細胞肺がん術前補助療法がFDA優先審査対象に/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年2月28日、米国食品医薬品局(FDA)が、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術前補助療法として、化学療法との併用療法によるニボルマブの生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を受理し、優先審査対象に指定したことを発表した。 今回の申請は、第III相試験であるCheckMate-816試験の結果に基づいたもの。同験では、術前に投与した際、ニボルマブと化学療法の併用療法群は、化学療法単独群と比較して、病理学的完全奏効(pCR)および無イベント生存期間(EFS)を統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。 また、ニボルマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、これまでにNSCLC試験で報告されているものと一貫していた。 CheckMate-816試験の結果は、以前に2021年米国がん学会(pCRデータ)および2021年米国臨床腫瘍学会(外科的予後)年次総会で発表されている。

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乱発投稿される偽論文 筆頭著者まさかの真意【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第205回

乱発投稿される偽論文 筆頭著者まさかの真意photo-ACより使用医学論文の世界では有名な話ですが、SNSをやっていない人はあまりご存じないかもしれません。以下の論文をご存じでしょうか?出版されていないので、正式には刊行されていませんが、アクセプトされた後に掲載料を支払っていないまま、ということです。Elm U, et al.Cyllage City COVID-19 Outbreak Linked to Zubat ConsumptionAmerican Journal of Biomedical Science & Research. DOI:10.34297/AJBSR.2020.08.001256(出版されず)これは「ショウヨウシティにおけるCOVID-19感染拡大とズバット消費量の関係」というタイトルです。ショウヨウシティとは、ポケットモンスターXYの舞台、カロス地方の都市の名前です。2020年3月に投稿された論文ですが、この内容は、カロス地方ではCOVID-19患者がすでに420人発生しており、死亡者が7人いるというもので、どうやらその原因としてズバットの消費量が関係しているのではないかという内容です。まぁウソですよ、この論文は。筆頭著者にいたっては、ワカバタウンでポケモンの研究をしているウツギ博士になっていますし。要は、架空の著者・架空の内容・架空の文献を引用するというすべてウソの論文を投稿したわけです。そんなことは、これを書いた真の著者(Matan Shelomi)もわかっているのです。ハナから偽論文を作ったわけです。彼の真意は1つです。「まさかこんな偽論文をアクセプトしちゃうようなハゲタカジャーナルはないよな?」ということです。そう、査読していますと書いていながら、ひどい質の論文をホイホイ載せてしまう、悪質な医学誌を炙り出そうというわけです。そして、見事に引っかかってしまったジャーナルがあった……という顛末です。投稿からわずか4日後、同誌の編集者から「好意的な査読コメントがあった」と連絡があり、出版に至りました。ほかにもポケモン関連の論文をいくつか投稿しているのですが、彼の論文には必ず、「この論文を出版する雑誌は査読を行っていないので、ハゲタカジャーナルです」といった文章が入っています。雑誌サイドは、そもそも論文など読んでいないということです。いいですね、ハゲタカジャーナルホイホイ。これからも投稿し続けてほしいです。

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富とうつ病との関係

 うつ病と収入との関係については、逆相関が認められるといわれている。しかし、富とうつ病との関連はあまりわかっていない。米国・ボストン大学のCatherine K. Ettman氏らは、富とうつ病との関係についてこれまでの文献から何がわかっているかについて調査するため、スコーピングレビューを実施した。Brain and Behavior誌オンライン版2022年2月8日号の報告。 2020年7月19日までの報告を、Medline(PubMed経由)、Embase、PsycINFO、PsycArticles、EconLit、SocINDEXより検索した。抽出された96文献をレビューした。文献の主な特徴は、発行年、サンプルサイズ国、研究デザイン、うつ病の定義、富の定義、富とうつ病の関係であった。詳細なチャートレビューには、32の縦断研究を含めた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病の定義は、全体的に比較的標準的な方法で行われていた。・一方、富の定義と測定は、研究により大きく異なっていた。・フルレビュー研究の多く(56件、58%)および縦断チャートレビュー研究の半数(16件、50%)は、富とうつ病との関係に逆相関が認められると報告していた。・縦断チャートレビューにおいて、以下の影響が示唆された。(1)マクロ経済のイベントがうつ病に影響(2)富の状態は、ライフコース全体のうつ病に影響(3)失業などのストレスに直面した際の、富のうつ病保護作用(4)富の認識、相対的な比較、社会的地位などの主観的または心理社会学的因子が、富とうつ病との関係を変化(5)貯蓄は状況により異なるが、うつ病の軽減が期待 著者らは「これらの調査結果より、メンタルヘルスに関する検討などを行う上で、富を考慮するべきであることが示唆された」としている。

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5~11歳の新型コロナ重症度、インフルやRSウイルスと比較すると?

 新型コロナワクチン接種の対象が5~11歳に拡大されたが、この年代の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度は、同年代のインフルエンザやRSウイルス感染症と比較すると高いのか、低いのか。米国医療研究品質局(AHRQ)のWilliam Encinosa氏らは、米国の11州での入院患者データを用いて分析した横断研究の結果を、JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年2月21日号リサーチレターに報告した。 米国で5~11歳に対するファイザー社の新型コロナワクチンの緊急使用許可が出された2021年10月までに、この年齢層の小児でSARS-CoV-2感染と診断されたのは180万人、死亡者は143人で、入院は8,000人以上だった。本研究では米国内の11州1,333病院における、2021年第1四半期(1~3月)のCOVID-19、COVID-19による小児多系統炎症性症候群(MIS-C)、インフルエンザ、RSウイルス感染症による入院患者データを調査。COVID-19流行期には感染者が少なかったため、インフルエンザとRSウイルスについては10年間の平均的な感染者数であった2017年第1四半期のデータも用いられた。 心臓血管系、呼吸器系、神経系、血液系、腎臓系、胃腸系、筋骨格系の46の合併症のほか、入院日数や治療に要した費用についても調査された。両側検定におけるp値は、Stata/MP version 17(StataCorp)を使用して線形回帰分析から求められ、p値<0.05で有意と設定された。 主な結果は以下の通り。・計2,269例(平均[SD]年齢:7.6[2.0]歳、男児:56.0%)のデータが分析された。・343例のCOVID-19(MIS-Cなし)、379例のMIS-C、1,134例のインフルエンザ、413例のRSウイルス感染症による入院があり、10万人当たりの入院はそれぞれ5.1例、5.7例、17.0例、6.2例であった。・すべての感染症で入院中の死亡は稀であった。・COVID-19(MIS-Cなし)では神経系合併症が多く(9.6%[95%CI:6.5~12.8%]、p=0.03)、MIS-Cでは血液系(55.4%[50.4~60.4%]、p=0.001)、胃腸系(47.2%[42.2~52.3%]、p=0.001)、心血管系(29.8%[25.2~34.4%]、p=0.001)、および腎臓系(21.9%[17.7~26.1%]、p=0.001)の合併症が多くみられた。・RSウイルス感染症では呼吸器系合併症が多くみられた(75.8%[71.6~79.9%]、p=0.001)。・インフルエンザでは筋骨格系合併症が多くみられた(9.5%[7.8~11.2%]、p=0.001)。・MIS-Cでは、入院期間中央値(IQR)が最も長く(5[3~7]日)、費用の中央値は23,585ドルで、インフルエンザの場合(入院期間中央値:2[1~4]日、費用中央値:5,200ドル)と比べて長期かつ高額だった。・COVID-19感染とMIS-Cを合わせた総入院日数は,入院率が低い(10万人当たり10.8人 vs.17.0人)にもかかわらず,インフルエンザとほぼ同じ(4,384日vs.4,202日、p=0.65)であった。 著者らは、5~11歳の小児において、COVID-19入院1件に対してMIS-C入院1件であり、この知見は、MIS-Cがこれまで考えられていたほどCOVID-19の後遺症として稀ではない可能性を示唆すると考察。COVID-19の他の長期合併症も懸念され、MIS-Cの重症度はインフルエンザより低いものの、COVID-19感染とMIS-Cの複合による経済的・健康的負担は、過去のインフルエンザ流行時と同程度に高いとまとめている。

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硬化性萎縮性苔癬〔LSA:lichen sclerosus et atrophicus〕

1 疾患概要■ 概念・定義外陰部に好発する難治性炎症性疾患である。男性の陰茎部に生じるbalanitis xerotica obliterans、女性の外陰部にみられるkraurosis vulvaeやhypoplastic dystrophyと呼ばれる疾患も本症と同義である。■ 疫学性差は男女比が1:9と、圧倒的に女性の罹患者が多い。初経前と閉経後の2つの年齢層に発症のピークがある。男性例は30~50歳の壮年層に発症頻度が高い。■ 病因不明であるが、Borrelia burgdorferi感染の関与が示唆されたことはあるが、菌体が同定された報告は無く、現在では否定的と考えられている。■ 症状女性外陰部の病変は、象牙色調の浸潤を触れる硬化性または萎縮性の紅色局面が主体で、びらん、水疱、紫斑、出血を伴うことがある(図1)。図1 女性外陰部の硬化性苔癬大陰唇から膣口にびらん、苔癬化、脱色素斑が混在する。劇痒と形容される強い瘙痒感や、灼熱感を訴えることが多い。約3割で肛門周囲にも病変がみられ、外陰部から肛門周囲にかけて「8の字型」と称される連続病変を呈することがある(図2)。図2 外陰部から肛囲までの8の字病変肛門部では萎縮した白色調の病変が広がり、さまざまな程度で色素脱失や色素沈着が混在することが多い。同部の皮膚粘膜境界部に生じた場合には、尿道口や腟口部の狭窄を来たしうる。経過中に瘢痕を生じやすく、進展すると癒着による小陰唇の消失や陰核包皮の癒着・閉鎖、陰核の埋没などを来す。通常は腟や子宮頸部などの粘膜部位は侵さないが、辺縁の皮膚病変からびらん、亀裂、腟口部の狭窄が進展した場合には、自発痛や排尿痛、性交痛を生じることがある。その一方、高齢者では無症状の場合もあり、健診で初めて指摘されることもある。男性例は、成人では包皮、冠状溝、亀頭部、小児では通常包皮に生じる。女性例に比べて瘙痒が主症状になることは少なく、陰茎や肛囲の病変はまれである。高度の包茎や癒着による尿道口の狭小化のため、排尿異常を生じることがある。■ 分類性差を問わず、ほとんどが外陰部のみに限局する。外陰部以外の病変が併存することや、外陰部外のみの症例もあるが、諸外国と比べてわが国では極めてまれである。■ 予後長期の罹患に伴って上皮系悪性腫瘍(ほとんどが有棘細胞がん)が本症の5~11%で出現し、最も予後に影響する。また、溶血性貧血、白斑、自己免疫性水疱症のような自己免疫疾患や臓器特異的な自己抗体が検出される症例が、おのおの全体の2割と4割に合併することが知られており、予後に関わるものもある。中でも甲状腺疾患が12%、次いで白斑が6%と多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 諸検査1)皮膚生検と病理組織学的所見病理組織学的に不全角化を伴う過角化、毛孔性角栓を伴う様々な厚さの表皮肥厚や液状変性を認め、完成期には萎縮して表皮突起が平坦化する。直下の真皮浅層では、毛細血管拡張やリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤に加え、膠原線維が均一化した無構造物「硝子様均質化(ヒアリン化, hyalinization)」が特徴的である(図3)。生検組織の蛍光抗体直接法では、免疫グロブリンや補体の沈着は通常認めない。図3 外陰部硬化性苔癬の病理組織像過角化、表皮突起の不規則化と消失、真皮上層の毛細血管拡張とヒアリン化、リンパ球浸潤を特徴とする。2)血液学的所見一般血液・生化学検査は正常であることが多く、本疾患の診断や病勢把握に有益な保険適応内のバイオマーカーは存在しない。上述のように、10~30%に自己免疫異常(抗甲状腺抗体、抗BP180抗体など)を認めることがある。■ 鑑別疾患外陰部カンジダ症を含む股部白癬、扁平苔癬、乳房外パジェット病、粘膜類天疱瘡、限局性強皮症(モルフェア)、白斑、円板状ループスエリテマトーデスなどを鑑別する必要がある。■ 合併症進行すると尿道狭窄や性交障害など、排尿や外陰部の機能障害を来すことがある。女性外陰部の硬化性苔癬では7~11%、また表皮が肥厚した病変では約30%に有棘細胞がんが出現するとの報告がある(図4)。図4 有棘細胞がんを合併した女性外陰部の硬化性苔癬右大陰唇から小陰唇の病変部内に隆起性の腫瘤を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療目標ほとんどの症例が難治であり、各種治療に難渋することが多い。長期にわたって症状のコントロールが不良な症例では局所発癌の頻度が高まるため、通常の治療に抵抗する場合は、まず症状の緩和とその維持を目指す。■ 治療内容1)初期治療局所へのステロイド外用剤が第1選択である。外陰部は他の部位と比べて薬の吸収率が良いものの(42倍 vs. 0.14~13倍:前腕内側の吸収率を1とした場合)、治療効果を優先して、欧米やわが国のガイドラインでは強めのステロイド外用剤の使用が推奨されている。掻爬行為によって症状が悪化するため、抗ヒスタミン薬などを併用して瘙痒のコントロールを行うこともある。2)治療後期症状が軽快したのちも無治療ではなく、保湿剤による外陰部の保護を継続することで、再燃やそのピークが抑えられる場合が多い。3)治療抵抗例保険適応外ではあるが、ステロイド外用に加えてタクロリムス含有軟膏の併用や、局所への光線療法が奏効する場合もある。男性の場合、既存の包茎が症状の遷延化を招くことが多いため、症状に応じて専門科への紹介を考慮する。4)合併症への治療硬化性苔癬における外科的治療は、悪性腫瘍合併例の病変部切除や尿道口狭窄例の尿道拡張術や尿道再建手術などに限って行う。4 今後の展望■ 治療外用療法が基本となるため、ステロイド以外の抗炎症作用ならびに免疫抑制効果をもつ外用剤が期待されている。上述したタクロリムス外用や活性型ビタミンD3外用剤、局所紫外線療法の奏効例が報告されている(本邦保険適用外)。全身療法ではシクロスポリンやバリシチニブ(JAK阻害薬)の内服が奏効した報告がある。■ 診断本症の確定診断には皮膚生検による病理組織所見の確認が必須であるが、女性の罹患者が多く、病変部がプライベートパーツであることから、生検が困難な症例も少なくない。患者血清中の細胞外基質extracellular matrix protein 1(ECM1)に対するIgG抗体を用いた血清診断が、非侵襲的かつ経過中の病勢の把握に有用バイオマーカーになる可能性が指摘されている。いまだ本抗体の病的意義は不明であり、今後の検討が待たれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚科学会 硬化性萎縮性苔癬 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)1)長谷川 稔ほか. 日皮会誌. 2016;126:2251-2257.2)強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン作成委員会.全身性強皮症・限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン 2017. 金原出版;2017.3)Lewis FM, et al. Br J Dermatol. 2018;178:839-853.4)Kirtschig G, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017;31:e81-e83.5)Oyama N, et al. Lancet. 2003;362:118-123.公開履歴初回2022年3月2日

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スピロノラクトン、がんリスクはある?

 スピロノラクトンの使用とがんリスクに関連はあるのか。米国・マイアミ大学ミラー医学部のKanthi Bommareddy氏らは、メタ解析(452万8,332例のデータを包含)で関連を調べ、がんリスク増大との関連は認められず、前立腺がんについてはリスク低下との関連が認められたことを示した。著者は、「しかしながら、エビデンスの確実性は低く、若年者や、にきびあるいは多毛症を有するなど、多様な集団を対象としたさらなる検討が必要である」と述べている。 スピロノラクトンは、もともとは心不全、高血圧症、浮腫の治療薬として承認されたが、にきび、化膿性汗腺炎、男性型脱毛症、多毛症の治療に適応外使用されるのが一般的となっており、米国FDAから腫瘍発生に関連する公式の警告が発せられている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年2月9日号掲載の報告。 研究グループは、スピロノラクトンによる治療を受けた患者において、がんの発症、とくに乳がんと前立腺がんの発症をプールし、解析した。 発刊から2021年6月11日までのPubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Scienceを検索。選択試験の適格条件は、スピロノラクトンを投与された18歳以上の男女におけるがん発生について報告した、英語で書かれた論文とした。 筆者である2人のレビュアーがそれぞれ試験の選択とデータ抽出を行い、Newcastle-Ottawa Scaleを用いてバイアスリスクを評価。包含試験はランダム効果メタ解析法を用いて統合し、がん発生(乳がんと前立腺がんにフォーカス)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・7試験が適格基準を満たした。サンプルサイズは1万8,035例~230万例にわたり、被験者は総計452万8,332例で、平均年齢62.6~72.0歳。性別による層別化のない試験では、女性が17.2~54.4%を占めていた。・全試験ともバイアスリスクは低いとみなされた。・スピロノラクトンの使用と乳がんリスクに、統計学的に有意な関連性はみられなかった(リスク比[RR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.86~1.22、エビデンスの確実性:とても低い)。・スピロノラクトンの使用と前立腺がんリスク低下に、関連性がみられた(RR:0.79、95%CI:0.68~0.90、エビデンスの確実性:とても低い)。・スピロノラクトンの使用と卵巣がんリスクに、統計学的に有意な関連性はみられなかった(RR:1.52、95%CI:0.84~2.20、エビデンスの確実性:とても低い)。・また、膀胱がん(RR:0.89、95%CI:0.71~1.07、エビデンスの確実性:とても低い)、腎臓がん(0.96、0.85~1.07、エビデンスの確実性:低い)、胃がん(1.02、0.80~1.24、エビデンスの確実性:低い)、食道がん(1.09、0.91~1.27、エビデンスの確実性:低い)についても、統計学的に有意な関連性はみられなかった。

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認知症の精神症状に対する薬理学的治療~メタ解析

 認知症では精神症状が頻繁に認められ、疾患アウトカムの不良や実質的な機能障害を引き起こす可能性がある。どの治療薬を用いるべきかを議論するためには、薬物療法の直接的または間接的な比較が必要とされるが、これまで十分に行われていなかった。中国・復旦大学のYu-Yuan Huang氏らは、認知症患者に対する薬理学的治療の有効性および忍容性アウトカムを調査するため、システマティックレビューおよびペアワイズネットワークメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌2022年3月号の報告。 2020年8月末までに報告された研究を、MEDLINE、Cochrane Library、EMBASE、PubMedより検索した。米国FDAより最終承認されているコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)、メマンチン、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬を含む試験を検索した。すべての薬剤について対プラセボの比較効果をランク付けするため、SUCRA(surface under the cumulative ranking)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・34試験より、15種の薬物療法にランダムに割り付けられた1万415例を分析対象とした。・ネットワークメタ解析において、プラセボよりも大きなベネフィットが認められ、忍容性が良好であった薬剤は以下の3剤であった。【ドネペジル】標準平均差(SMD):-0.30、95%信頼区間(CI):-0.50~-0.12、SUCRA:0.85【メマンチン】SMD:-0.20、95%CI:-0.34~-0.07、SUCRA:0.68【アリピプラゾール】SMD:-0.17、95%CI:-0.32~-0.02、SUCRA:0.62・リスペリドン(SMD:-0.16、95%CI:-0.28~-0.05、SUCRA:0.60)は、プラセボと比較し、より効果的ではあったが、忍容性が低かった(オッズ比[OR]:1.50、95%CI:1.06~2.26)。・ドネペジル、メマンチン、ハロペリドール、アリピプラゾール、リスペリドンは、クエチアピンと比較し、より効果的であった(SMDの範囲:-0.36~-0.22)。・ドネペジル、メマンチン、ミルタザピンは、セルトラリンと比較し、より効果的であった(SMDの範囲:-0.47~-0.36)。・結果の多くは、低~非常に低いと評価された。 著者らは「本結果は、メタ解析の限界と大多数の研究における方法論的質の低さから、慎重に解釈すべきである」としながらも「認知症の精神症状に対しては、いくつかの効果的な治療選択肢が利用可能であるが、中でもドネペジル、メマンチン、アリピプラゾールは、薬理学的治療が必要な場合に検討すべき適切な選択肢であると考えられる」としている。

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親密な男性パートナーによる暴力、15~49歳女性の27%が経験/Lancet

 持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット5.2では、「人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力の排除」がうたわれている。世界保健機関(WHO)のLynnmarie Sardinha氏らは、今回、この目標の達成状況を評価するために、366件の研究のデータを解析し、2018年時点で、年齢15~49歳の女性の4人に1人以上(27%)が、生涯において親密な男性パートナーからの身体的または性的、あるいはその両方の暴力を経験し、7人に1人(13%)は調査の過去1年以内に暴力を受けたと推定されると明らかにした。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年2月16日号で報告された。2000~18年の161の国と地域の研究を解析 研究チームは、SDGsのターゲット5.2の達成に向けた各国政府の取り組みの進捗状況を監視する目的で、親密な男性パートナーによる女性への暴力の世界的な発生状況を調査した(英国・国際開発省[DFID、現在は外務・英連邦・開発省に統合]などの助成を受けた)。 解析には、「WHOの女性に対する暴力に関する国際的データベース(WHO Global Database on Prevalence of Violence Against Women)」のデータが用いられた。これらのデータは、主に、文献データベース(MEDLINE、Global Health、Embase、Social Policy、Web of Science)の検索で得られた論文の系統的レビューと、各国の統計データなどのウェブサイトを包括的に調査することで収集された。 対象には、2000~18年に実施され、国または地方政府のレベルを代表しており、年齢15歳以上の女性を対象とし、親密なパートナーによる身体的または性的、あるいはその両方の暴力に関して行為に基づく評価を行っている研究が含まれた。 161の国と地域の366件の研究が解析の対象となった。これは、世界の親密なパートナーを持つ年齢15歳以上の女性の90%を代表するものであった。生涯における親密なパートナーからの暴力を含む研究は307件、過去1年以内の親密なパートナーからの暴力を含む研究は332件であり、調査に回答した女性の数はそれぞれ176万7,802人および176万3,989人だった。過去1年以内の暴力も、若年女性で高頻度 2018年の時点で、現在または以前に親密な男性パートナーまたは夫がいる(いた)年齢15~49歳の女性の27%(不確定区間[UI]:23~31)が、生涯においてパートナーからの身体的または性的、あるいはその両方の暴力を受け、13%(10~16)は調査時から過去1年以内に暴力を経験していた。年齢15歳以上の全女性では、生涯の暴力を26%(22~30)、過去1年以内の暴力を10%(8~12)が経験していた。日本では、それぞれ20%(10~38)および4%(1~10)であり、いずれも世界平均を下回っていた。 このような暴力は女性が若いころから始まり、15歳以降に少なくとも1回の暴力を受けた経験のある女性は、15~19歳が24%、20~24歳は26%と、ほぼ4人に1人の割合であった。暴力を受けた経験のある女性の割合が最も高かったのは、30~34歳と35~39歳(いずれも28%)であり、その後は徐々に低下して65歳以上では23%であった。 過去1年以内に暴力を受けた女性の割合も若い年代で高く、15~19歳が16%、20~24歳も16%であった。この割合は、50歳以降は実質的に低下し、60~64歳で5%、65歳以上は4%だった。 また、親密なパートナーからの暴力の経験の頻度には地域差が認められた。2018年時点の年齢15~49歳の女性のうち、生涯においてパートナーからの身体的または性的、あるいはその両方の暴力を受けた女性の割合が最も高かった地域はオセアニア(49%)で、次いでサハラ以南のアフリカの中部地域(44%)、アンデス山脈系の南米諸国(38%)、サハラ以南のアフリカの東部地域(38%)の順であった。暴力を受けた女性の割合が最も低かった地域は、中央ヨーロッパ(16%)、中央アジア(18%)、西ヨーロッパ(20%)であったが、それでも高率だった。 年齢15~49歳の女性に対する過去1年以内の暴力の割合は、全般に高所得地域で低く、オーストララシアが3%、西ヨーロッパが4%、中央ヨーロッパが5%、南米の南部諸国が5%、北米は6%であった。高所得地域と中・低所得地域における暴力の頻度の差は、生涯に比べて過去1年以内の暴力のほうが大きく、中・低所得地域では過去1年以内の暴力の頻度が高かった。 過去1年以内に暴力の発生が最も少なかった(最高で4%まで)30ヵ国のうち、24ヵ国は高所得国であった。また、この30ヵ国中23ヵ国はヨーロッパの国であり、日本は残りの7ヵ国に含まれた。 著者は、「これらの知見は、女性に対する親密な男性パートナーによる暴力は世界的な公衆衛生上の懸念事項であり、世界中の数100万人の女性とその子供たちの人生に悪影響を及ぼすことを裏付けるものである」とし、「暴力低減の進展は遅く、各国はSDGsの目標を達成するための行程に乗れていない。これらの確固たるエビデンスは、親密なパートナーからの暴力は予防可能であり、多層的で複数の領域にわたる予防介入を実施し、親密なパートナーからの暴力に対する保健対策などを強化するには、目標を絞った投資が必要であることを示すものだ」と指摘している。

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英語で「うまくいくよう祈りましょう」は?【1分★医療英語】第17回

第17回 英語で「うまくいくよう祈りましょう」は?I’m worried that something bad will happen to my husband.(夫に何か悪いことが起こるのではないかと心配です)He is a strong man. Let’s keep our fingers crossed.(彼は強い人です。うまくいくよう祈りましょう)《例文1》Let’s keep our fingers crossed and hope for a good outcome.(良いアウトカムが出るように祈りましょう)《例文2》I’m keeping my fingers crossed that the treatment will go well.(治療がうまくいくよう願っています)《解説》“Fingers crossed”は、直訳すれば「指を交差させる」という意味です。“Let’s keep our fingers crossed”も、直訳すれば「私たちの指を交差させ続けましょう」となりますが、これではよく意味がわかりませんね。「指(人差し指と中指)を交差させる」という仕草は、日本ではあまりなじみのないものですが、西洋文化では十字架を象徴するもので、「悪運から守る」という意味を持ちます。“Keep one’s fingers crossed”という表現は、それがそのままイディオムとして定着したもので、「うまくいくように祈る」という意味になります。医療現場では、手術前や大切な治療の前に、医師や家族から患者への声掛けとしてよく使われるフレーズです。また、日常生活やメールの中などでもよく用いられる表現で、大切な試験や大仕事を控えている相手に対して「うまくいきますように」という気持ちを込めて使われます。他の表現としては、“Wish one luck”や“hope for the best”などとも言い換えることができますので、併せて覚えておきましょう。講師紹介

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第101回 COVID-19入院患者の新たな糖尿病はたいてい一過性らしい

米国のマサチューセッツ総合病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者およそ2千人(1,902人)の電子カルテ情報を遡って調べたレトロスペクティブ試験結果によると、その入院時に新たに診断された糖尿病(NDDM;newly diagnosed diabetes mellitus)はたいてい一過性らしく、退院後間もなくおよそ正常な血糖値に多くの場合回復するようです1,2)。1,902人のうち約3人に1人(594人)に糖尿病が認められ、それらのうち77人(全被験者1,902人の4%、糖尿病患者594人の13%)の糖尿病は入院前には認められなかったもの、すなわちNDDMでした。NDDMのそれら77人のうち入院中に死亡した10人と消息が絶えた3人を除く64人のその後を調べたところ約1年時点(中央値323日)で半分に近い26人(41%)の血糖値は糖尿病の水準未満(正常か前糖尿病レベル)に落ち着いていました。追跡された64人のうち39%(25/64人)はインスリン投与頼りで退院しましたが約1年後のインスリン投与患者は僅か5人(7.8%)に減っていました。それに8割方のHbA1cは7%以下になっていました(HbA1c測定患者41人中33人)。NDDMの77人の半数近い33人(43%)は入院前の記録で前糖尿病が見つかっており、そのような前糖尿病患者の高血糖は比較的軽度でした。一方、入院前に医療と縁遠かったNDDM患者はより重度の高血糖を呈しました。それら所見によると、COVID-19入院患者の新たな糖尿病は新たに発症したものか単に新たに把握されたものか多くの場合不明瞭かもしれず、新たに発症した糖尿病というより新たに診断に至った糖尿病と捉えるほうがより適切なようです。実際今回の研究ではそう位置づけられています。NDDMに至った経緯はどうあれNDDM患者は入院前からの糖尿病患者に比べてC反応性タンパク質(CRP)等の炎症マーカーの値が高く、集中治療室(ICU)をより必要としました。それらに加えてNDDM患者の血糖値は退院後に改善していることも踏まえるとNDDMの後ろ盾はどうやら炎症反応であり、インスリンを分泌するβ細胞の破壊ではなくインスリンに細胞が反応し難くなるインスリン抵抗性がCOVID-19入院に伴うNDDMの主因らしきことを物語っています。ただし、インスリン不足を意味する糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が糖尿病を新たに生じた患者と以前からの糖尿病患者の両方で多いことが複数の試験で示されており、インスリン抵抗性のみならず急なインスリン欠乏もまたNDDMの片棒を担いでいるかもしれません。今回の報告でのDKA発現率はNDDM患者では6.5%、以前からの糖尿病患者では11%であり、著者によると同等(comparable)でした。今回の報告はCOVID-19入院時のNDDMを長く追跡した研究のさきがけの一つであり、更なる試験で検証が必要です。また、COVID-19で急な高血糖が生じる仕組みを掘り下げていかねばなりません。参考1)Cromer SJ,et al. J Diabetes Complications. 2022 Feb 4:108145. [Epub ahead of print]2)Newly diagnosed diabetes in patients with COVID-19 may simply be a transitory form of the blood sugar disorder / Eurekalert

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HR+HER2-転移・再発乳がん、ベバシズマブ+パクリタキセル導入療法後に内分泌療法+カペシタビン維持療法の戦略で長期のOSを確認/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性(HR+)HER2 陰性(HER2-)転移・再発乳がんに対するベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後の維持療法の有効性を検討した国内多施設無作為化第II相試験(KBCSG-TR1214)において、内分泌療法+カペシタビン併用維持療法が内分泌療法単独に比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことがすでに報告されている。今回、この治療戦略の全生存期間(OS)への影響を評価するために、本試験を事後解析した結果について、大阪大学の吉波 哲大氏が第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。[KBCSG-TR1214試験]・対象:HR+HER2-の遠隔転移があるか手術適応とならない再発乳がん(PS 0または1)で、転移・再発がんへの化学療法歴が1レジメン以下の患者・方法:導入化学療法としてベバシズマブ+パクリタキセルを4~6サイクル実施し、病勢進行を認めなかった90例を、維持療法として内分泌療法+カペシタビン(EC群)または内分泌療法(E群)に無作為に割り付けた。維持療法で病勢進行した場合は、ベバシズマブ+パクリタキセル再導入療法を実施した。・評価項目:[主要評価項目]維持療法のPFS[副次評価項目]無作為化からのTime to failure of strategy(TFS)、導入療法からの全生存期間(OS)、再導入療法からのPFSなど 事前に計画された解析には無作為化に至らなかった26例は含まれておらず、今回は、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法を開始した116例(E群46例、EC群44例、非無作為化26例)のデータを解析した。 主な結果は以下のとおり。・116例全例におけるOS中央値は34.5ヵ月(95%CI:28.0~43.2)だった。・主に病勢進行のため無作為化されなかった26例におけるOS中央値は15.7ヵ月(95%CI:7.75~30.8)で、E群34.9ヵ月(同:23.3~NA)、EC群43.8ヵ月(同:33.7~NA)より短い傾向があった。・本治療を1次治療で受けた102例のOS中央値は36.0ヵ月(95%CI:29.2~46.2)、2次治療で受けた14例では25.7ヵ月(同:17.6~37.5)だった。 本解析から、ベバシズマブ+パクリタキセル導入化学療法後に維持療法を実施する治療戦略により、導入化学療法での病勢進行例を含めても長期のOSが達成されることが示された。

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薬物療法中の双極性障害患者における運転パフォーマンス

 双極性障害治療で用いられる薬物は、患者の認知機能に影響を及ぼす可能性がある。双極性障害患者は、寛解状態でも神経認知機能障害が認められる場合が少なくない。名古屋大学の山口 亞希子氏らは、薬物治療中の安定期双極性障害外来患者の日常機能、とくに運転パフォーマンスについての検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年1月17日号の報告。 対象は、実臨床で薬物療法中の双極性障害外来患者58例および性別、年齢がマッチした健康対照者80例。ドライビングシミュレーターを用いて3つの運転タスク(道路追跡、車両フォロー、急ブレーキ)および3つの認知機能タスク(Continuous Performance Test、Wisconsin Card Sorting Test、Trail-Making Test)で評価した。症状評価には、ヤング躁病評価尺度、構造化ハミルトンうつ病評価尺度、BDI-IIベック抑うつ質問票、自記式社会適応度評価尺度、スタンフォード眠気尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者の道路追跡、車両フォローの運転パフォーマンスは、人口統計学的因子で調整した後、健康対照者と比較し、有意な低下が認められた。これらのパフォーマンスは、一般的に重なり合っていた。・双極性障害患者の広範な神経認知機能は、健康対照者と比較し、有意に低かった。車両フォローの運転パフォーマンスと注意力の持続との負の相関のみが認められた。・多くの患者は単剤療法ではなく、併用療法がおこなわれていたが、運転パフォーマンスとの関連は認められなかった。 著者らは「薬物療法中の安定期双極性障害患者は、健康対照者と比較し、運転パフォーマンスが損なわれていることが示唆されたが、運転パフォーマンスの重なり合う部分は、双極性障害患者の運転パフォーマンスが常に悪い状態であることを示しているわけではない。双極性障害患者の運転適性を判断するうえで、注意力は有用な臨床的特徴であると考えられる」としている。

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コロナワクチンの効果低下、変異だけが理由ではない/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種した成人では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株(B.1.617.2)が優勢となった時期には、ワクチンの感染防御効果が低下しており、変異株別の感染防御効果の違いとは別個に、mRNAワクチンの有効率は経時的に減少する可能性があることが、米国疾病予防管理センターのAmadea Britton氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年2月14日号に掲載された。米国のtest-negativeデザインの症例対照研究 本研究は、デルタ変異株が優勢となる以前の時期(前デルタ期:2021年3月13日~5月29日)と、その後の優勢となった時期(デルタ優勢期:2021年7月18日~10月17日)で、症候性SARS-CoV-2感染症とワクチン接種以降の日数の関連の評価を目的とする、test-negativeデザインを用いた症例対照研究である(米国疾病予防管理センターの助成を受けた)。 解析には、米国のIncreasing Community Access to Testing(ICATT)の6,884のCOVID-19検査施設のデータが用いられた。これらの検査施設で、2021年3月13日~10月17日の期間に、COVID-19様疾患を呈する患者181万4,383例が核酸増幅検査(NAAT)を受けた(20歳以上:163万4,271例、12~19歳:18万112例)。 ワクチンは、2つのmRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]、mRNA-1273[Moderna製]、2回接種で完全接種)と、1つのアデノウイルスベクターワクチン(Ad26.COV2.S[Janssen/Johnson&Johnson製]、1回接種で完全接種)の3種が使用された。ワクチン接種者は、検査の14日以上前に完全接種を終了した集団が解析に含まれた。 主要アウトカムは、症候性感染症とワクチン接種の関連とされ、スプライン法に基づく多変量ロジスティック回帰分析によって算出されたオッズ比(OR)で評価された。12~19歳も成人と同様の結果 解析に含まれた181万4,383例(20~44歳59.9%、12~19歳9.9%、女性58.9%、白人71.8%)のうち、39万762例(21.5%)が検査陽性(症例群)で、142万3,621例(78.5%)は検査陰性(対照群)であった。 20歳以上の成人の完全接種者は、BNT162b2ワクチンが30.6%、mRNA-1273ワクチンが19.9%、Ad26.COV2.Sワクチンが4.5%で、45.0%は未接種者であった。 20歳以上では、BNT162b2ワクチンの2回目接種後14~60日の症候性感染症とワクチン完全接種のOR(初期OR)は、前デルタ期が0.10(95%信頼区間[CI]:0.09~0.11)と、デルタ優勢期の0.16(0.16~0.17)と比較して小さく、接種後の時間の経過(14~111日)とともに上昇していた(ORの月ごとの変化 前デルタ期:0.04[95%CI:0.02~0.05]、デルタ優勢期:0.03[0.02~0.03])。これは、ワクチン接種以降に、症候性感染症とワクチン完全接種の関連性が経時的に減弱したことを示す。 同様に、mRNA-1273ワクチンの初期ORは、前デルタ期の0.05(95%CI:0.04~0.05)からデルタ優勢期には0.10(0.10~0.11)へと上昇し、接種以降に経時的(14~266日)な増加が認められた(ORの月ごとの変化 前デルタ期:0.02[95%CI:0.005~0.03]、デルタ優勢期:0.03[0.03~0.04])。 また、成人でのAd26.COV2.Sワクチンの初期ORは、前デルタ期が0.42(95%CI:0.37~0.47)、デルタ優勢期は0.62(0.58~0.65)であったが、接種以降に、経時的に有意な増加はみられなかった。 一方、12~19歳の完全接種者は、BNT162b2ワクチンが33.7%、mRNA-1273ワクチンが3.7%、Ad26.COV2.Sワクチンが1.0%で、61.5%は未接種者だった。 12~15歳では、BNT162b2ワクチンの症候性感染症とワクチン完全接種の初期ORは、デルタ優勢期が0.06(95%CI:0.05~0.06)で、接種後14~127日に、月ごとに0.02(95%CI:0.01~0.03)ずつ上昇し、16~19歳では、初期ORはデルタ優勢期が0.10(0.09~0.11)で、接種後14~231日に、月ごとに0.04(0.03~0.06)上昇した。16~19歳におけるmRNA-1273ワクチンのデルタ優勢期の初期ORは0.06(0.04~0.08)、14~203日の月ごとのOR上昇は0.03(0.02~0.05)であり、Ad26.COV2.Sワクチンの初期ORはデルタ優勢期が0.46(0.30~0.62)で、経時的な変化はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、ワクチンの変異株別の感染防御効果の違いとは別個に、mRNAワクチンの有効率は時間の経過とともに着実に減少する可能性があるとの見解と一致する」としている。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その3【「実践的」臨床研究入門】第17回

検索データベースの違いを知る前回は“CONNECTED PAPERS”を用いて、われわれのリサーチ・クエスチョン(RQ)の「Key論文」1)であるコクラン・システマティック・レビュー(SR:systematic review)以降に出版された関連研究論文について概観しました。今回からは、これらの関連研究を個別に見ていきたいと思います。前回、「Key論文」1)以降に出版された、糖尿病性腎疾患患者における低たんぱく食療法の臨床効果を検証したランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)を対象とした非コクランSR5編の結果を表にまとめて比較しました(連載第16回参照)。O(アウトカム)である推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度の変化のメタ解析の結果が、個々のSR論文によって異なることに疑問を持たれた読者の方もいらっしゃると思います。これらの差異はそれぞれのSR論文の対象論文検索戦略(検索日、使用したデータベース、検索式、など)の違いに依るところが大きいと考えられます。下の表は、これら5編のSRの検索日、使用したデータベース、eGFR低下速度の変化というOのメタ解析に組み入れたRCT数、および解析対象患者数をまとめたものです。画像を拡大するISRCTNInternational Standard Randomized Controlled Trial NumberUMIN-CTRUniversity Hospital Medical Information Network-Clinical Trials RegistryCNKIChina National Knowledge Infrastructure個々の非コクランSRの“Methods”に記述されている論文検索戦略をよく読んで比較してみると、検索日はもちろん違いますが、使用したデータベースもかなり異なることがわかります。以下に、個別の論文(1次情報)(連載第3回参照)を調べるときに有用な代表的な検索データベースの違いを整理してみました。画像を拡大するMEDLINE、 EMBASEはこれまで取り上げた上記5つすべての非コクランSRで、CENTRALはひとつのSR4)以外すべてで使用されています。非コクランSR3編2-4)では米国の臨床試験登録データベースであるClinicalTrials.govも検索されています。 わが国から発信された非コクランSR3)ではClinicalTrials.govに加えて、日本の国立大学病院医療情報ネットワーク(University Hospital Medical Information Network:UMIN)が運営する臨床試験登録システムやGoogle Scholarも使用しています。一方、中国からの非コクランSR5)では、中国の電子ジャーナル検索データベース(CNKI、VIP Information、Wanfang Data)が使用されており、解析組み入れRCT数と解析対象患者数が突出して多いことが見て取れます。1)Robertson L, et al. Cochrane Database Syst Rev.2007 Oct. 17:CD002181.DOI: 10.1002/14651858.CD002181.pub22)Pan Y, et al. Am J Clin Nutr. 2008 Sep;88:660-6.3)Nezu U, et al. BMJ Open. 2013 May 28;3:e002934.4)Zhu HG, et al. Lipids Health Dis. 2018 Jun 19;17:141.5)Li XF, et al. Lipids Health Dis.2019 Apr 1;18:82.6)Li Q, et al. Diabetes Ther. 2021 Jan;12:21-36.

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統合失調症、うつ病患者に退院時使用されている頓服薬の傾向

 統合失調症やうつ病に対する継続的な薬物療法が重要であることは、さまざまなガイドラインで示唆されているが、頓服による治療に関する報告はほとんど行われていない。東京大学の市橋 香代氏らは、向精神薬の頓服使用を行っている統合失調症およびうつ病患者の特徴を明らかにするため、検討を行った。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年1月13日号の報告。 精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のデータを用いて、統合失調症(2,617例)およびうつ病患者(1,248例)の退院時における向精神薬頓服使用の有無、患者の年齢や性別、頓服使用と継続的な向精神薬使用との関連について評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・退院時における向精神薬の頓服使用率は、統合失調症患者で29.9%、うつ病患者で31.1%であった。・統合失調症患者では、65歳以上の向精神薬頓服使用率が21.6%であり、他の年齢層よりも低かった。・うつ病患者では、向精神薬頓服使用率が女性で34.2%であり、男性(25.5%)よりも有意に高かった。・統合失調症患者では、向精神薬の使用と継続的な向精神薬の併用との間に関連が認められた。 著者らは「向精神薬の頓服使用は、統合失調症患者では高齢者で少なく、うつ病患者では女性で多かった。統合失調症患者では、向精神薬頓服使用による向精神薬の多剤併用が認められた。これらのエビデンスを蓄積し、適切な頓服処方に関する知見を共有するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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食道がん1次治療におけるニボルマブ+イピリムマブとニボルマブ+化学療法、日本人サブ解析(CheckMate-648)/日本臨床腫瘍学会

 進行食道扁平上皮がんの1次治療における免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用、および免疫チェックポイント阻害薬2剤併用の有用性を示したCheckMate-648試験。2022年2月に開催された第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)において、本試験の日本人サブグループの解析結果を、神奈川県立がんセンターの尾形 高士氏が発表した。[CheckMate-648試験]・対象:未治療の切除不能な進行または転移のある食道扁平上皮がん患者・試験群:以下の3群に1対1の割合で無作為に割り付けニボイピ群:ニボルマブ3mg/kgを2週ごと+イピリムマブ1mg/kgを6週ごとニボケモ群:ニボルマブ240mgを2週ごと+化学療法(4週を1サイクルとして、1~5日目までフルオロウラシル800mg/m2、1日目シスプラチン80mg/m2)ケモ群:化学療法単独・評価項目:[主要評価項目]PD-L1発現率が1%以上(TPS≥1%)の患者における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全体集団のOSおよびPFS、TPS≥1%および全体集団の奏効率(ORR) 日本人サブグループにおける主な結果は以下のとおり。・全970例のうち、日本人は394例(ニボイピ群:131例、ニボケモ群:126例、ケモ群:137例)が登録された。最短フォローアップ期間は12.9カ月であった。[OS中央値]TPS≥1%ニボイピ群 20.2カ月、ニボケモ群17.3カ月、ケモ群9.0カ月(ハザード比[95%信頼区間]ニボイピvs.ケモ群. 0.46[0.30~0.71]、ニボケモ群vs.ケモ群. 0.53[0.35~0.82])。日本人全体集団ニボイピ群 17.6カ月、ニボケモ群15.5カ月、ケモ群11.0カ月(ハザード比[95%信頼区間]ニボイピ群vs.ケモ群. 0.68[0.51~0.92]、ニボケモ群vs.ケモ群. 0.73[0.54~0.99])。[PFS中央値]TPS≥1%ニボイピ群5.4カ月、ニボケモ群7.0カ月、ケモ群4.2カ月(ハザード比[95%信頼区間]ニボイピ群vs.ケモ群. 0.84[0.54~1.32]、ニボケモ群vs.ケモ群. 0.56[0.36~0.89])。日本人全体集団ニボイピ群4.2カ月、ニボケモ群6.8カ月、ケモ群4.3カ月(ハザード比[95%信頼区間]ニボイピ群vs.ケモ群. 1.16[0.85~1.57]、ニボケモ群vs.ケモ群. 0.76[0.56~1.03])。[ORR]TPS≥1%ニボイピ群44(32~57)%、ニボケモ群65(51~76)%、ケモ群17(9~28)%日本人全体集団ニボイピ群36(28~45)%、ニボケモ群56(47~65)%、ケモ群24(17~32)%・治療関連有害事象はニボイピ群85%(うちGrade3以上37%)、ニボケモ群99%(同49%)、ケモ群93%(同36%)の発現率であった。 尾形氏は「日本人サブグループ解析の結果は全体集団と大きな差はなく、本結果より、日本人においても進行食道扁平上皮がんに対する1次治療としてニボイピまたはニボケモの併用療法は新しい治療選択肢になり得ると考えられる」としている。

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COVID-19入院患者へのロナプリーブ、血清抗体の有無で有効性に差/Lancet

 COVID-19入院患者において、カシリビマブ・イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)の抗体カクテル療法は、血清陰性患者(液性免疫反応が起きていなかった患者)の28日死亡率を低下させたが、血清陽性患者の28日死亡率は低下しなかった。無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果を、英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏らRECOVERY試験共同研究グループが報告した。カシリビマブ・イムデビマブは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン上にあるそれぞれ異なる部位に非結合的に結合することにより、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害するモノクローナル抗体で、COVID-19外来患者における有効性が報告されていた。Lancet誌2022年2月12日号掲載の報告。COVID-19入院患者9,785例において、28日の全死因死亡率を比較 研究グループは、2020年9月18日~2021年5月22日に、英国の127施設において、RECOVERY試験に登録された患者のうち適格患者、すなわち臨床的にSARS-CoV-2感染が疑われるかまたは検査で感染が確認された12歳以上の入院患者9,785例を、標準治療群または標準治療+カシリビマブ・イムデビマブ群(カシリビマブ4gとイムデビマブ4gを単回点滴静注投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。治験責任医師とデータ評価者は、試験期間中、データの解析については盲検化された。 主要評価項目は28日の全死因死亡率で、まず、無作為時にSARS-CoV-2感染に対する抗体が検出されなかった患者(血清陰性患者)について評価し、その後、無作為化された全例を対象にintention-to-treat解析を行った。安全性は、カシリビマブ・イムデビマブの投与を受けた全例について評価した。血清陰性患者でのみ28日死亡率が低下 無作為化された計9,785例(標準治療群4,946例、カシリビマブ・イムデビマブ群4,839例)の患者背景は、平均(±SD)年齢61.9±14.6歳、症状発現からの期間は中央値9日(IQR:6~12)で、血清陰性が3,153例(32%)、血清陽性が5,272例(54%)、入院時の抗体の有無が不明な患者が1,360例(14%)であった。812例(8%)は少なくとも1回SARS-CoV-2ワクチンを接種していた。 血清陰性患者集団を対象とした主要有効性解析では、28日死亡率はカシリビマブ・イムデビマブ群24%(396/1,633例)、標準治療群30%(452/1,520例)であった(率比[RR]:0.79、95%CI:0.69~0.91、p=0.0009)。ベースライン時の抗体の有無にかかわらず無作為化された全例を対象とした解析では、28日死亡率はカシリビマブ・イムデビマブ群19%(943/4,839例)、標準治療群21%(1,029/4,946例)であった(RR:0.94、95%CI:0.86~1.02、p=0.14)。死亡率に対するカシリビマブ・イムデビマブの比例効果は、血清陽性患者と血清陰性患者で有意差が認められた(異質性のp=0.002)。 治療に起因する死亡は認められず、事前に規定した安全性評価項目(死因別死亡率、不整脈、血栓症、大出血イベント)について、意味のある群間差は確認されなかった。重篤な有害事象は7例(<1%)報告され(アレルギー反応3例、痙攣2例、急性飽和度低下1例、一過性意識消失1例)、いずれも治験責任医師によりカシリビマブ・イムデビマブ投与と関連ありと判定された。

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