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コロナワクチン接種率の違いで死亡率に大きな差/JAMA

 2021年から2022 年にかけて、全世界で新型コロナワクチン接種が普及した一方、デルタ株とオミクロン株が流行した。米国・Brown School of Public HealthのAlyssa Bilinski氏らは、この期間におけるOECD加盟国中20ヵ国のワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査し報告した。米国については、ワクチン接種率上位10州と下位10州についても調査したところ、下位10州の新型コロナウイルス感染症死亡率は上位10州のほぼ倍だった。JAMA誌オンライン版2022年11月18日号のリサーチレターに掲載。ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査 本研究では、ワクチン接種率は2022年1月時点で2回以上接種した人の割合とし、死亡率は2021年6月27日~2022年3月26日の死亡データを比較した。米国のデータはCDCから、その他の国のデータについては、新型コロナウイルス感染症死亡率はWHO、全死亡率はOECD データベース、ワクチン接種率はOur World in Dataからそれぞれ入手した。 ワクチン接種率と新型コロナウイルス感染症死亡率、超過全死亡率を調査した主な結果は以下のとおり。・主な国におけるワクチン接種率と、デルタ株流行期/オミクロン株流行期/全期間の人口10万人当たり新型コロナウイルス感染症死亡者数は以下のとおり。 日本      :80%、3人/7.4人/10.4人 韓国      :82%、6.1人/18.2人/24.3人 ニュージーランド:75%、0.5人/3.3人/3.7人 オーストラリア :76%、4.9人/14.2人/19.2人 イタリア    :76%、15.2人/39人/54.2人 フランス    :74%、14.6人/27.6人/42.2人 ドイツ     :71%、29.6人/22.7人/52.3人 英国      :71%、30.1人/28.9人/59人 米国全体    :63%、60.9人/50.6人/111.6人 米国(接種率上位10州):73%、28.1人/46.6人/74.7人 米国(接種率下位10州):52%、86.6人/59.4人/146人・米国全体およびワクチン接種率下位10州の超過全死亡率は新型コロナウイルス感染症死亡率より高く、全期間における他の国より高かった。・この期間にもし米国の新型コロナウイルス感染症死亡率がワクチン接種率上位10州と同じだった場合、12万2,304人の死亡を回避でき、米国の超過全死亡率がワクチン接種率上位10州と同じだった場合は26万6,700人の死亡を回避できたと推計された。 2021~22年初め、米国の新型コロナウイルス感染症死亡率および超過全死亡率は他国より有意に高かったが、この差はワクチン接種率上位10州では小さくなった。著者らは「残りの差は、他国での高いワクチン接種率、高齢者をターゲットとしたワクチン接種、医療・社会インフラの違いによって説明しうるだろう」と考察している。

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慢性B型肝炎へのbepirovirsen、第IIb相試験結果/NEJM

 B型肝炎ウイルス(HBV)のmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであるbepirovirsenは、300mg週1回24週間投与により、HBV表面抗原(HBsAg)およびHBV DNAの持続的な消失が慢性B型肝炎患者の9~10%で認められた。中国・香港大学のMan-Fung Yuen氏らが、無作為化非盲検第IIb相試験「B-Clear試験」の結果、報告した。bepirovirsenの第IIa相試験では、4週間の投与でHBsAgが急速かつ用量依存的に減少し、一部の患者では一過性の消失も認められていた。著者は、「bepirovirsenの有効性および安全性を評価するため、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌オンライン版2022年11月8日号掲載の報告。HBsAgおよびHBV DNA消失の24週間持続、3用法用量vs.プラセボ 研究グループは、18歳以上で6ヵ月以上HBV感染が持続していることが確認され、HBsAg 100 IU/mL以上の患者を、bepirovirsen 300mg 24週間投与群(第1群)、bepirovirsen 300mg 12週間投与→150mg 12週間投与群(第2群)、bepirovirsen 300mg 12週間投与→プラセボ12週間投与群(第3群)、プラセボ12週間投与→bepirovirsen 300mg 12週間投与群(第4群)に、3対3対3対1の割合で無作為に割り付け、週1回皮下投与した。4日目および11日目に、bepirovirsen 300mg(第1、2、3群)またはプラセボ(第4群)の負荷投与を行った。 試験期間は、治療期間24週間および追跡調査期間24週間を含む最大55週間であった。ヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ(NA)を投与されていた患者は試験期間中もNA療法を継続した。 主要評価項目は、beporovirsen投与終了後、新たに抗ウイルス薬を投与することなくHBsAg値検出限界未満かつHBV DNA値定量下限未満が24週間維持された患者の割合であった。 計457例(NA療法あり227例、NA療法なし230例)が、intention-to-treat集団に含まれた。NA療法併用の有無にかかわらず、300mg週1回24週間投与が有効 主要評価項目を達成した患者は、NA療法併用集団において第1群6例(9%、95%信用区間[CrI]:0~31)、第2群6例(9%、95%CrI:0~43)、第3群2例(3%、95%CrI:0~16)、第4群0例(0%、事後CrI:0~8)であり、非併用集団においてそれぞれ7例(10%、95%CrI:0~38)、4例(6%、95%CrI:0~25)、1例(1%、事後CrI:0~6)、0例(0%、事後CrI:0~8)であった。 安全性については、1~12週目において、注射部位反応、発熱、疲労、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇などの有害事象の発現率が、bepirovirsen群(第1、2、3群)でプラセボ群(第4群)より高かった。

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果物の摂取量が多いほどうつ病リスク低下/国立精神・神経医療研究センター

 日本のコホート研究において、野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物(リンゴ、梨、柑橘類、ブドウ、イチゴなど)の摂取が、うつ病のリスク低下と関連するかどうかを調べた結果、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、うつ病の発症率が低かったことを、国立精神・神経医療研究センターの成田 瑞氏らの共同研究グループが発表した。Translational Psychiatry誌2022年9月26日掲載の報告。果物全体とフラボノイドが豊富な果物の両方でうつ病のオッズ比が低かった 先行研究では、野菜や果物の摂取がうつ病の予防に有意である可能性が示されており、とくにフラボノイドは脳由来神経栄養因子や酸化ストレス、神経炎症の抑制作用により抗うつ効果を持つことが示唆されていた。そこで本研究では、野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取がうつ病のリスク低下と関連するかどうかを調べた。 調査は、1990年時点で長野県南佐久郡8町村に在住の40~59歳の1万2,219人のうち、1995年と2000年に行った2回の食事調査アンケートに回答があり、かつ2014~15年にかけて実施した「こころの検診」に参加した1,204例(男性500例、女性704例)を対象とした。野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取量によって5グループに分け、摂取量が最も少ないグループを基準とした場合の、他のグループのうつ病の発症リスクとの関連を調べた。また、野菜や果物に関連する栄養素として、α-カロテン、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、葉酸の平均摂取量とうつ病との関連も検討した。解析では、年齢、性別、雇用状況、飲酒量、現在の喫煙、運動習慣の影響は調整された。 野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取がうつ病のリスク低下と関連するかどうかを調べた主な結果は以下のとおり。・野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も多いグループでは、摂取量が最も少ないグループと比較して、高齢者、女性、未就労者、非飲酒者、非喫煙者が多かった。運動習慣に差はみられなかった。・1,204例中93例が精神科医によってうつ病と診断された。・果物全体の摂取量が最も少ないグループと比較して、摂取量が最も多いグループにおけるうつ病のオッズ比は0.34(95%信頼区間[CI]:0.15~0.77、p=0.04)であった。・フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も少ないグループと比較して、摂取量が最も多いグループのうつ病のオッズ比は0.44(95%CI:0.20~0.97、p=0.05)であった。・フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も多いグループの中で、とくにイチゴの摂取によるうつ病のオッズ比は0.37(95%CI:0.18~0.79)と顕著であった。・野菜や関連栄養素の摂取量とうつ病との間には関連はみられなかった。 これらの結果より、同氏らは「果物全体とフラボノイドが豊富な果物の両方について、最も多く摂取したグループでうつ病のオッズ比が低かったことから、フラボノイド固有のメカニズムというよりも、果物が持つ抗酸化作用などの生物学的作用がうつ病の発症に対して予防的に働いた可能性が考えられる」と述べるとともに、「今後の研究では、より大きなサンプルを採用し、他の潜在的な交絡因子を調整する必要がある」とまとめた。

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コロナワクチンで帯状疱疹リスクは上がるのか~大規模調査

 新型コロナワクチン接種後に帯状疱疹が発症した症例が報告されているが、ワクチンによって帯状疱疹リスクが増加するのかどうかは不明である。今回、新型コロナワクチン接種が帯状疱疹リスク増加と関係するかどうかについて、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のIdara Akpandak氏らが検討した。その結果、新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹の発生率比が0.91であり、本研究では新型コロナワクチン接種と帯状疱疹リスクの増加とは関係していないことが示唆された。JAMA Network Open誌2022年11月16日号に掲載。コロナワクチンと帯状疱疹とは関係しなかった 本コホート研究では、自己対照リスク期間分析を用いて、新型コロナワクチン接種後30日目または2回目接種日までのリスク期間と、新型コロナワクチン最終接種日から60~90日のコントロール期間(リスク期間とコントロール期間の間に30日間を確保)における帯状疱疹の発症リスクを比較した。また、新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹リスクを、パンデミック以前(2018年1月1日~2019年12月31日)もしくはパンデミック初期(2020年3月1日~11月30日)にインフルエンザワクチンを接種した2つのコホートにおけるインフルエンザワクチン接種後の帯状疱疹リスクと比較した。データは米国の医療請求データベース(Optum Labs Data Warehouse)から入手。2020年12月11日~2021年6月30日に、ファイザー製ワクチン(BNT162b2)、モデルナ製ワクチン(mRNA-1273)、ヤンセン製ワクチン(Ad26.COV2.S)のいずれかを接種した203万9,854人のデータを分析した。 新型コロナワクチン接種と帯状疱疹リスクの増加との関係を検討した主な結果は以下のとおり。・新型コロナワクチンを接種した203万9,854人の平均年齢(SD)は43.2(16.3)歳で、女性が50.6%、白人が65.9%であった。このうち、帯状疱疹と診断された1,451人が自己対照リスク期間分析の対象で、平均年齢(SD)は51.6(12.6)歳、女性が58.2%だった。・自己対照リスク期間分析において、新型コロナワクチン接種は帯状疱疹のリスク上昇と関係しなかった(発生率比[IRR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.82~1.01、p=0.08)。・ファイザー製ワクチン接種では帯状疱疹リスクが低下し(IRR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.02)、モデルナ製ワクチン接種は帯状疱疹リスクとの関連は認められなかった(IRR:0.96、95%CI:0.81~1.15、p=0.67)。・新型コロナワクチン接種は、パンデミック以前のインフルエンザワクチン接種と比べて帯状疱疹リスクが低かった。 - 1回目接種のハザード比(HR):0.78、95%CI:0.70~0.86、p<0.001 - 2回目接種のHR:0.79、95%CI:0.71~0.88、p<0.001また、パンデミック初期のインフルエンザ接種とは有意差が認められなかった。 - 1回目接種のHR:0.89、95%CI:0.80~1.00、p=0.05 - 2回目接種のHR:0.91、95%CI:0.81~1.02、p=0.09

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食道癌診療ガイドライン2022改訂、日本発エビデンスで治療戦略が大きく変更

 2022年9月に「食道癌診療ガイドライン」が刊行された。2002年に「食道癌治療ガイドライン」が発刊されてから20年、前版から5年振りの改訂となる。 10月に行われた日本癌治療学会の北川 雄光氏(慶應義塾大学・食道癌治療ガイドライン検討委員会委員長)の講演「食道癌集学的治療のこれまで、これから」、浜本 康夫氏(慶應義塾大学・腫瘍センター)による教育講演「食道扁平上皮がんに対する薬物療法」を参考として、食道癌診療ガイドライン2022年版の主な変更点をまとめた。食道癌診療ガイドライン2022年版で大きく変更のあったCQ 食道がんは他の消化器がんと比べて薬物療法において使用できる薬剤の種類が限られており、近年まで切除可能症例については外科手術を基軸として、化学療法や放射線療法を用いた周術期治療が主に術前治療として行われてきた。しかし、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場し、この3年ほどのあいだに大幅に治療戦略幅が広がってきた。そこには日本発のエビデンスも大きな役割を果たしている。今回の食道癌診療ガイドライン2022年版の改訂において、とくに大きく変更のあったクリニカルクエスチョン(CQ)は以下のとおり。CQ8:cStageII、III食道癌に対して手術療法を中心とした治療を行う場合、術前化学療法、術前化学放射線療法のどちらを推奨するか?→ cStageII、III食道癌に対して手術療法を中心とした治療を行う場合、DCF3剤併用術前療法を強く推奨する。 切除可能局所進行食道がんの術前療法としては、日本ではシスプラチン+5-FU(CF療法)が長らく標準療法であったが、欧米においては化学放射線療法が標準療法となっている。日本と海外では術式や組織型が異なるため、海外の臨床試験の結果をそのまま受け入れるのは難しいと考えられていた。一方、CF療法にドセタキセルを加えたDCF療法が頭頸部がんなどで有望な効果を示しており、術前療法としてのCF vs. DCF vs. CF+放射線(RT)療法の3つを比較したJCOG1109(NExT)試験が計画され、今年初めに結果が報告された。 NExT試験の結果は、CF群の3年生存率62.6%に対してDCF群は72.1%と10%近く上回り、CF群とCF+RT群には統計学的な有意差は示されない、というものだった。徹底的な郭清を行う日本の外科手術においては術前の強い化学療法が有効性を示す、という治療戦略の正しさを世界に示す結果となった。DCF群では遠隔転移が少ない一方で、CF+RT群では他病死が多く、放射線治療による晩期障害が他病死につながっている可能性が指摘されている。CQ9:cStageII、III食道癌に術前補助療法+手術療法を行った場合、術後補助療法を推奨するか?→ 1)cStageII、IIIの食道癌に対して、術前化学放射線療法および手術を行い、根治切除が得られるも病理学的完全奏効が得られない場合、組織型や腫瘍細胞におけるPD-L1の発現によらず、術後ニボルマブ療法を行うことを強く推奨する。→ 2)cStageII、IIIの食道癌に対して、術前化学療法および手術を行い、根治切除が得られるも病理学的完全奏効が得られない場合、術後ニボルマブ療法については、現時点で推奨を決定することができない。 1)は2020年に発表されたCheckMate-577試験の結果を受けたもの。術前化学放射線療法後に切除を行った食道がんまたは胃食道接合部がんに対するニボルマブの効果を見た試験であり、主要評価項目である無病生存期間(DCF)はニボルマブ群で22.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~34.0)、プラセボ群で11.0ヵ月(95%CI:8.3~14.3)と、ニボルマブ群の優越性が示された。ニボルマブの有効性は組織型にも拠らないという結果だった。 2)の術前化学療法+術後のニボルマブ投与の有用性は準拠するエビデンスがない状態で、日本の標準療法が術前DCF療法であることを考えると、ここは早急にエビデンスの確立が求められる部分だ。CQ15:切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として化学療法は何を推奨するか?→ 1)切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として、ペムブロリズマブ+シスプラチン+5-FU療法を行うことを強く推奨する。→ 2)切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として、ニボルマブ+シスプラチン+5-FU療法もしくはニボルマブ+イピリムマブ療法を行うことを強く推奨するが、患者の全身状態および、PD-L1発現状況(TPS)、忍容性等を考慮する。 近年、二次化学療法においてICIの有用性が示され、一次療法においても検討が行われている。1)はKEYNOTE-590試験の結果を受けたもので、749例を対象に初回治療としてのペムブロリズマブの有効性を見た試験おいて、扁平上皮がんかつCPS>10の患者集団における全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ群13.9ヵ月(95%CI:11.1~17.7)に対して、プラセボ群8.8ヵ月(95%CI:7.8~10.5)であり、ペムブロリズマブ併用群の優越性が示された。 2)はCheckMate-648試験の結果を受けたもので、登録患者970例はニボルマブ+化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群、化学療法単独群に1:1:1で割り付けられた。ニボルマブ+化学療法群の無増悪生存期間(PFS)中央値は、TPS≧1集団において6.9ヵ月(95%CI:5.7~8.3)であり、化学療法単独群の4.4ヵ月(95%CI:2.9~5.8)を有意に上回ったが、全ランダム化集団においては有意差を認めなかった。 食道がんも他のがん種と同様に、外科手術中心の時代から化学療法に加えて放射線療法やICIも組み合わせた集学的・個別化医療の時代に突入しており、今後はロボット支援手術によるさらなる低侵襲化や合併症の軽減によって長期予後を狙うことなどに焦点が当てられている。また、食道癌診療ガイドライン2022版の改訂にあわせ、『食道癌取扱い規約』も12版に改訂されている。『食道癌診療ガイドライン 2022年版 第5版』編集:日本食道学会定価:3,520円(税込)発行:2022年9月B5判・176頁・図数:19枚・カラー図数:13枚

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アトピー性皮膚炎の湿疹とかゆみ、臨床で推奨される測定手法は?

 臨床において、アトピー性皮膚炎患者の湿疹コントロールおよびかゆみの強度測定に推奨される手法は何か。イスラエル・ラビン医療センターのYael A. Leshem氏らHarmonising Outcome Measures for Eczema in Clinical Practice(HOME-CP)イニシアチブが、システマティックレビューを介して入手した測定手法についてエビデンスレビューを行った。 結果、湿疹の長期コントロールの測定には、Recap of Atopic Eczema(RECAP)とAtopic Dermatitis Control Tool(ADCT)が、かゆみ強度の測定には、かゆみに関するPatient-Reported Outcomes Measurement Information System(PROMIS)質問票に基づく、かゆみの数値評価スケール(NRS-itch)でみた24時間ピーク値および1週間ピーク値と1週間平均値が推奨される、とのコンセンサスステートメントを発表した。 「臨床医と患者は、これらの十分に検証され、迅速に実行でき、使いやすい手法を診療所に持ち込み、ニーズに最適な手法を選択することを推奨する。今回の評価は、患者と臨床医の出会いに取って代わるものではなく、実臨床での研究およびヘルスケアの改善に資するものである」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年10月12日号掲載の報告。 臨床でのアウトカムを測定することは、患者のケア、質の改善および実臨床のエビデンスジェネレーションに役立つ可能性がある。HOME-CPイニシアチブは、臨床でアトピー性皮膚炎を測定するための、有効かつ実現可能な手段のリストを作成している。これまでの研究で、湿疹症状と長期的なコントロールが、臨床診療で測定すべき最も重要な領域であることが確認されている。 湿疹コントロールとかゆみ強度を測定するための利用可能な手法をシステマティックレビューにより特定し、HOME VIIIバーチャルオンラインミーティング(2020年10月6日と9日)においてコンセンサス(合意形成)プロセスを開催した。検討では、臨床で最適な手法を選択するために実行可能性(feasibility)の側面に力点が置かれた。反対者が30%未満の場合、その手法がコンセンサスを得られたとした。 主な結果は以下のとおり。・湿疹コントロールの手法は7つが特定された。そのうち、コンセンサスを得たのはRECAP(反対者3/63例[5%])とADCT(7/69例[10%])であった。・1つの質問による患者の総合評価は、支持を集めはしたが、現時点で利用可能な手法はコンセンスを得るには至らなかった。・かゆみの強度の測定手法は6つが特定された。そのうち、3つの手法が推奨のコンセンサスを得た。・3つの手法は、かゆみのPROMIS質問票に基づく、NRS-itchの24時間ピーク値(11/63例[17%])、1週間ピーク値(14/63例[22%])、1週間平均値(16/59例[27%])であった。

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頭痛患者におけるドライアイのリスク~メタ解析

 中国・大連医科大学のShuyi Liu氏らは、頭痛がドライアイのリスクに影響を及ぼすかどうか明らかにするためメタ解析を実施した。その結果、頭痛はドライアイの独立したリスク因子であることが示唆され、とくに片頭痛患者においては頭痛とドライアイのリスクに強い関連が認められた。Annals of Medicine誌2022年12月号の報告。 PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASEのデータベースより、関連文献の検索を行った。すべての原因による頭痛に対するドライアイのオッズ比(OR)を算出するため、ソフトウェアStataを用いた。異質性の因子の調査には、サブグループ解析と感度分析を実施した。出版バイアスの評価には、Funnel plotとEgger's testを用いた。 主な結果は以下のとおり。・11件の研究(コホート研究:1件、ケースコントロール研究:4件、横断的研究:6件)より357万5,957例をメタ解析に含めた。・プール分析では、すべての原因による頭痛は、ドライアイのリスクの高さと関連していることが認められた(OR:1.586、95%信頼区間[CI]:1.409~1.785、I2=89.3%、p<0.001)。・頭痛のサブタイプ別においても、各頭痛タイプはドライアイのリスクの高さと関連していた。 ●片頭痛(OR:1.503、95%CI:1.369~1.650、I2=81.8%、p<0.001) ●緊張型頭痛(OR:1.610、95%CI:1.585~1.635、p<0.001) ●群発頭痛(OR:2.120、95%CI:1.104~4.073、p=0.024)・ケースコントロール研究におけるドライアイのリスクは、横断的研究およびコホート研究における同リスクよりもわずかに高かった。 ●ケースコントロール研究(OR:1.707、95%CI:1.291~2.258、I2=85.0%、p<0.001) ●横断的研究(OR:1.600、95%CI:1.590~1.610、I2=0.0%、p<0.001) ●コホート研究(OR:1.440、95%CI:1.096~1.893、p=0.009)・地域別のサブグループ解析では、米国、欧州、アジア、オセアニアにおけるすべての原因による頭痛は、ドライアイのリスクの高さと関連が認められた。

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William Osler先生とJ-OSLER、内科専門研修を考えてみた【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第54回

第54回 William Osler先生とJ-OSLER、内科専門研修を考えてみたオスラー先生の格言ウイリアム・オスラー(William Osler)の名前を耳にしたことはあると思います。カナダ生まれの医学者・内科医・教育者です(1849~1919)。ペンシルベニア大学、ジョンズ・ホプキンス大学、オックスフォード大学などで教授を務め、カナダ、米国、英国の医学の発展に多大な貢献をしました。遺伝性出血性末梢血管拡張症であるオスラー病や、感染性心内膜炎でみられる指趾掌蹠の有痛性結節であるオスラー結節などに名前を残しているように研究者としても一流でした。何よりも医学教育に情熱をそそぎ、彼の思想は今も医療の現場で受け継がれています。日本の名医・日野原 重明も感銘を受け、「医学の中にヒューマニズムを取り戻し、人間を全人的に診る」というオスラー先生の姿勢を世に広めるため「日本オスラー協会」を発足させています。『The Principles and Practice of Medicine』(医学の原理と実際)など名著だけでなく、100年後の今も受け継がれる数々の格言も有名です。Listen to your patient, he is telling you the diagnosis.患者の言葉に耳を傾けよ、患者はあなたに診断を告げている。これは、オスラー先生の言葉のなかでも小生が最も感銘を受けた一文です。循環器内科医として狭心症・心筋梗塞を診断するにあたり、心電図や採血でのトロポニン上昇も大切ですが、なによりも病歴聴取が一番重要と日々感じているからです。今日の医学教育の父として世界にその名を馳せたオスラー先生ですが、日本中の大学病院や研修指定病院で毎日のように彼の名前が叫ばれていることをご存じでしょうか。それは、ウイリアム・オスラーではなくジェイ・オスラー(J-OSLER)です。J-OSLERをめぐる専攻医と指導医のリアルJ-OSLERについて説明しましょう。2013年に厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」から、専門医制度改革が必要であると報告されました。日本専門医機構が中心となり、各領域の専門医制度は再整備されることとなりました。日本内科学会でも「新・内科専門医制度」を整備することとなり、具現化するために導入されたシステムがJ-OSLERです。正式には以下の文言による造語です。「Online system for Standardized Log of Evaluation and Registration of specialty training System」を直訳すれば「専門研修の標準化を図るためオンラインで研修実績の登録と評価ができるシステム」で、この頭文字がOSLERです。そこに日本を意味するJが冠されてJ-OSLERとなっています。高名なオスラー先生を意識した素晴らしいネーミングです。このJ-OSLERをめぐる現場での苦労を紹介させていただきます。J-OSLERを実際に使用するのは、初期研修を修了して内科専門研修プログラムを選択した卒後3年次から5年次の医師が中心です。彼らを専攻医と呼称します。新内科専門医制度において研修履歴や実績を登録し審査を受ける仕組みが導入されました。具体的には専攻医はJ-OSLERを用いて症例登録と病歴要約が義務付けられています。症例登録は、一言でいうと症例の概要と省察を含むサマリーで56分野から160症例以上を登録します。指導医の評価を受け、修正に応じて承認を得る必要があります。これは、1例を入力するのに数十分ほど要します。症例登録した中から29症例について病歴要約を作成します。これは症例の詳細なサマリーで、学会発表での症例報告のような丁寧さと緻密さが要求され、A4判2ページほどの分量となります。病歴要約は、まず指導医と研修プログラム統括責任者が1次評価を行います。さらに専攻医の所属外の施設の査読委員が2次評価を行います。1次・2次評価ともに29症例ごとに、Accept(受理)、Revision(要修正)、Reject(要差し替え)の3段階で評価されます。全症例がAccept(受理)となるまで修正を繰り返します。1例の入力には短くても半日ほどの作業への集中が必要となります。症例登録は全分野をカバーしての量の面で、病歴要約は緻密な記載を求められる質の面で、それぞれ大変な作業となります。えらいこっちゃ!?事務作業に注力する余りベッドサイド診療が…新専門医制度にあわせて導入されたJ-OSLERの評判は、専攻医と指導医の双方から必ずしもいいわけではありません。たしかに、質の高い内科専門医を育成することは、社会がより高い水準で医療の恩恵を受けるために重要なことです。J-OSLERによる症例登録と病歴要約は、専攻医が個々の症例の理解を深め、さらには研修制度の標準化にも寄与することに異論はありません。一方で、J-OSLERの登録と評価における専攻医の負担も軽視できないレベルと感じます。専攻医は日常臨床業務だけでも大変です。この専門研修期間中に複数の施設での勤務が求められるために、勤務先の入職・退職と住居の転入・転出を繰り返して行うこととなり、手続きだけも多くの時間を要します。女性医師においては出産や育児などのライフイベントとも重複する時期となります。昨今、働き方改革が声高に論じられる中、専攻医だけでなく指導医にとっても、システム入力が困難と感じる場面があることは事実です。オスラー先生の格言を紹介します。Fifteen minutes at the bedside is better than three hours at the desk.3時間机で勉強するよりもベッドサイドの15分が勝る。J-OSLERの症例登録・病歴要約により机でレポートを書く時間が増えたことは皮肉といえます。机上の事務作業に注力する余りベッドサイド診療が疎かになりかねない現状はJ-OSLER本来の意義からも望ましいことでは無いように思います。高邁な理念のもとに導入されたJ-OSLERを揶揄するつもりはありません。しかしウィリアム・オスラーは「えらい」先生なのですが、ジェイ・オスラーは「えらいこっちゃ」というのが本音です。新専門医制度による研修が開始され数年しか経過していません。課題もこれから明らかになってくるのでしょう。よりよい新専門医制度となるよう制度が洗練されていくことを期待しております。今回は、日本内科学会に直訴状を提出する気構えで気合をいれて書かせていただきました。

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英語で「湿布」は?【1分★医療英語】第55回

第55回 英語で「湿布」は?I twisted my ankle.(足をくじいてしまいました)Place this patch on the painful area.(痛むところに、この湿布を貼ってください)《例文1》Apply the patch to a clean, dry, and hairless skin area.(清潔で乾いた毛の少ない部分に湿布を貼ってください)《例文2》Remove the patch after 24 hours and choose a difference place to apply the new patch.(24時間したらパッチを取り外し、別の場所に新しいパッチを貼ってください)《解説》「湿布(貼付剤)」は“patch”(または“transdermal patch”:経皮貼付剤)といいます。日本語でも「パッチ剤」と呼ぶこともありますよね。冷湿布や温湿布を指す場合には“cold compress / hot compress”と表現します。冷または温のジェル状のものを“compress”(当てる=圧縮する、押し付ける)する、というわけで、こちらは薬剤が入っていない場合がほとんどです。アルツハイマー型認知症の経皮吸収型製薬である“rivastigmine”(リバスチグミン)パッチなどの場合には、前のものを剥がし忘れたまま複数のパッチを貼ってしまうことのないよう、《例文2》のようにパッチを取り外すことの説明を加えるとよいでしょう。また、合成オピオイドである“fentanyl transdermal patch”(フェンタニルパッチ)を誤ってペットや子供が触ってしまう事故を避けるために、“Promptly dispose of used patches by folding them in half with the sticky sides together.”(使用後のパッチは、粘着面を内側にして半分に折り、即座に処分してください)と伝えることも大切です。講師紹介

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第139回 世界の男性の精子が半減/T細胞強化コロナワクチンの試験開始

世界の総人口80億人到達1)とは裏腹に、その始まりの半分の出どころ、精子が心配なことに減り続けているようです2,3)。しかも悪いことにその傾向は21世紀に入ってどうやら加速すらしています。イスラエルのヘブライ大学公衆衛生学教授Hagai Levine氏が率いる研究チームが6年前の2017年に発表したメタ解析では北米、欧州、オーストラリアでの精子の紛れもない減少が確認されました4,5)。その3年後の2020年春にLevine氏等は2014年以降に出版された試験の同定に着手し、男性1万4,233人からの精液検体を扱った38試験報告を見出しました。新たに見つかったそれらの試験と2017年のメタ解析で扱った試験は合わせて233件あり、1973~2018年の46年間に6万人近い5万7,168人の男性から採取された精液検体の検討結果を含みます。世界6大陸53ヵ国からのそれらの結果を改めてメタ解析した結果、北米、欧州、オーストラリアでの精子が減り続けていることに加えて、南/中央アメリカ、アジア、アフリカでも精子が減っていることが確認されました。世界の男性の精子減少は驚くばかりで、1973年には1mL当たり1億個を超えていたのが2018年にはその半分未満の1mL当たり4,900万個に減っていました。しかもその減少は20世紀に入って拍車がかかっているらしく、1mL当たりの精子数の年間低下率は1972年過ぎ(post-1972)からは1.16%だったのが2000年以降は2.64%へとおよそ倍増しています。日本の男性の精子もどうやら同様かもしれません。4都市(川崎、大阪、金沢、長崎)の大学構内にポスターを出して被験者を募った1999~2003年の試験の結果、中央値およそ21歳の大学生被験者1,559人の精子数の平均は1mL当たり5,900万個でした6)。今回のメタ解析報告での世界の2000年頃の精子数は(同報告のFigure 2 によると)1mL当たり平均7,000万個ほどであり、日本の大学生被験者はそれに比べると少なめです。また、パートナーが妊娠した男性、すなわち不妊ではなく受精能力がある日本人男性のみ募った試験7)での792人の1mL当たりの精子数平均は1億を超えており(1億0500万個/mL)、大学生被験者を上回っていました。それに、大学生被験者の実に3人に1人(32%)は1mL当たりの精子数が4,000万個に届いておらず、よって受精能力が低いと示唆され、パートナーの妊娠はより困難かもしれません。もっというと大学生被験者のおよそ10人に1人(9%)の1mL当たりの精子数は世界保健機関(WHO)の基準下限1,500万個8)未満でした。最初のメタ解析発表の翌年2018年、Levine氏を筆頭とする医師や科学者等一堂は精子減少を公衆衛生の一大事として認識し、人類の存続のために男性の生殖機能を重視することを求める声明を発表しています9)。各国は男性の生殖機能の衰えの原因を調べることに資源や人手を割き、その調子を把握して害されないようにする最適な環境を整えることをその声明は求めています。Levine氏に言わせれば事態は急を要します。今回発表されたメタ解析結果は男性の精子に危機が迫っていることを知らせるいわば炭鉱のカナリア(canary in a coal mine)であり、このままでは人類の存亡にかかわります。人間を含むすべての生き物にとってより健康的な環境を整えることに世界は取り組み、生殖機能を害する振る舞いや要因を減らさねばなりません3)。Pfizer/BioNTech社の“T細胞”強化コロナワクチンの試験開始新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へのT細胞反応強化を目指すPfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b4の第I相試験(NCT05541861)が始まりました10,11)。SARS-CoV-2感染症(COVID-19)予防 mRNAワクチンを少なくとも3回接種した健康なおよそ180人を募り、オミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチン併用でのBNT162b4の3用量(5、10、15 μg)の免疫原性や安全性などがオミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチンと比べてどうかが検討されます。BNT162b4はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質以外のタンパク質を作るT細胞抗原mRNAが成分であり、T細胞免疫をいっそう強化してより隈なく行き届くようにし、COVID-19予防をより持続させることを目指します。重症化や入院を少なくとも1年は予防する長持ちな抗体やT細胞免疫を引き出すCOVID-19ワクチンを世に出すことを目指していると今年中頃の決算の会見でPfizerの最高科学責任者Mikael Dolsten氏は述べています12)。今回臨床試験段階に進んだBNT162b4はそういう長持ちで手広い免疫反応を引き出す取り組みの一翼を担っています。参考1)11月15日「80億人の日」/ 国連人口基金2)Levine H, et al. Hum Reprod Update. 2022 Nov 15:dmac035 [Epub ahead of print].3)Follow-up study shows significant decline in sperm Ccounts globally, including Latin America, Asia and Africa / Eurekalert4)Levine H, et al. Hum Reprod Update. 2017;23:646-659.5)Comprehensive study shows a significant ongoing decline in sperm counts of Western men / Eurekalert6)Iwamoto T, et al.BMJ Open 2013;3:e002222.7)Iwamoto T, et al.BMJ Open. 2013;3:e002223.8)WHO laboratory manual for the Examination and processing of human semen / WHO9)Levine H, Basic Clin Androl. 2018;28:13.10)Pfizer and BioNTech Advance Next-Generation COVID-19 Vaccine Strategy with Study Start of Candidate Aimed at Enhancing Breadth of T cell Responses and Duration of Protection / GlobeNewswire11)Safety and Effects of an Investigational COVID-19 Vaccine as a Booster in Healthy People(ClinicalTrials.gov)12)Pfizer (PFE) Q2 2022 Earnings Call Transcript / Fool.com

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急性期治療における抗精神病薬の使用状況~スコーピングレビュー

 せん妄などの原発性精神疾患以外の症状に対して、急性期治療で抗精神病薬が使用されることは少なくない。このようなケースで使用された抗精神病薬は、退院時およびフォローアップ時においても継続使用されていることが多いといわれている。カナダ・カルガリー大学のNatalia Jaworska氏らは、抗精神病薬処方の慣行の特徴、抗精神病薬処方と中止に対する専門家の認識、急性期治療における抗精神病薬処方中止戦略などを明らかにするため、スコーピングレビューを実施した。その結果、急性期治療で専門家が認識していた抗精神病薬処方と実際に測定された処方の慣行は異なっており、また院内での処方中止戦略についての報告はほとんどないことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、抗精神病薬の有効性およびリスクを評価するためには、処方中止戦略を継続的に評価する必要があるとしている。BMC Health Services Research誌2022年10月21日号の報告。 2021年7月3日までに公表された、抗精神病薬の処方と中止の慣行、および急性期治療における抗精神病薬処方と中止に対する認識について報告した1次調査研究を、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、Web of Scienceのデータベースより検索した。プロトコール、エディトリアル、オピニオンピース、システマティックレビュー、スコーピングレビューを除くすべての研究デザインを分析に含めた。2人のレビュアーにより、データを個別または重複してスクリーニングし、要約した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングした研究4,528件のうち80件を分析に含めた。・すべての急性期治療環境(集中治療室、入院、救急部門)において専門家が認識していた抗精神病薬処方は、ハロペリドールが最も高頻度であったが(100%[36件中36件])、測定された抗精神病薬処方の慣行では、クエチアピンが最も一般的であった(76%[36件中26件])。・抗精神病薬の使用理由は、せん妄(70%[69件中48件])および興奮症状(29%[69件中20件])であった。・退院時では、クエチアピンの処方が最も多かった(100%[18件中18件])。・3件の研究で、薬剤師主導の処方中止権限、ハンドオフツール、教育セッションに焦点を当てた院内抗精神病薬処方中止戦略が報告されていた。

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末期腎不全患者の手術、透析からの日数が死亡リスクに影響/JAMA

 血液透析を受けている末期腎不全患者において、術前最後の血液透析から手術までの間隔が1日に比べて、2日および3日と長くなるほど術後90日死亡リスクが高まり、とくに手術当日に血液透析を実施していない場合に有意に高まることが、米国・スタンフォード大学のVikram Fielding-Singh氏らが行った、米国メディケア受給者を対象とした後ろ向きコホート研究の結果、示された。血液透析治療中の末期腎不全患者において、待機的手術前の適切な血液透析の時期は不明であった。ただし、今回の結果について著者は、「絶対リスクの差の程度は小さく、残余交絡の影響の可能性もある」と述べている。JAMA誌2022年11月8日号掲載の報告。血液透析~手術間隔(1日・2日・3日)、手術当日の血液透析有無の術後死亡を評価 研究グループは、末期腎不全のために血液透析を受けているすべての患者の全国登録であるUnited States Renal Data Systemを用い、血液透析治療中の末期腎不全患者で2011年1月1日~2018年9月30日の期間に外科手術(眼内注射、デブリードマン等の小手術を含む)を受けたメディケア受給者を特定し、2018年12月31日まで追跡調査した。 主要評価項目は術後90日死亡率で、手術と術前最後の血液透析との間隔が1日、2日、3日間で比較するとともに、手術当日の血液透析の有無でも評価した。血液透析から手術までの間隔と術後90日死亡率との関連性は、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。 解析対象は34万6,828例(年齢中央値65歳[四分位範囲[IQR]:56~73]、女性49万5,126例[43.1%])、手術件数114万7,846件であった。血液透析から手術までの期間が長いほど、術後90日死亡リスクが高い 114万7,846件の手術のうち、術前最後の血液透析と手術との間隔が1日間は75万163件(65.4%)、2日間が28万5,939件(24.9%)、3日間が11万1,744件(9.7%)であった。また、19万3,277件(16.8%)では、手術当日に血液透析が実施されていた。 90日死亡は、3万4,944件(3.0%)の術後に発生した。術前最後の血液透析から手術までの間隔が長いほど90日死亡リスクは高く、日数依存の有意な関連性が認められた。2日vs.1日(絶対リスク4.7% vs.4.2%、絶対リスク差0.6%[95%信頼区間[CI]:0.4~0.8])の補正後ハザード比(aHR)は1.14(95%CI:1.10~1.18)だが、3日vs.1日(5.2% vs.4.2%、1.0%[0.8~1.2])のaHRは1.25(1.19~1.31)であり、また3日vs.2日(5.2% vs.4.7%、0.4%[0.2~0.6])のaHRは1.09(1.04~1.13)であった。 手術当日の血液透析の実施は、実施なしと比較して死亡リスクの有意な低下と関連していることが認められた。手術当日の血液透析ありvs.なしは、絶対リスク4.0% vs.4.5%、絶対リスク差は-0.5%(95%CI:-0.7~-0.3)で、aHRは0.88(95%CI:0.84~0.91)であった。 血液透析から手術までの間隔と手術当日の血液透析との相互作用について解析した結果、手術当日の血液透析実施は、術前の血液透析から手術までの間隔の延長に関連するリスクを有意に低下させることが示された(相互作用のp<0.001)。

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スマホ充電器による皮膚潰瘍【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第222回

スマホ充電器による皮膚潰瘍Pixabayより使用iPhone14が発売されて、買おうと思ったら無茶苦茶高くて諦めました。スマホってそもそも3万円くらいじゃありませんでしたっけ?物価上昇、円安の影響などのせいか、20万円近い価格に手が出ず…。Nakagawa Y, et al.iPhone charger-induced chemical burn from overnight contact with sweat: Two cases.J Dermatol . 2020 Oct;47(10):1187-1190.iPhoneの充電器って、コンセントにつないだものから電極が露出していますよね。あれって触ったとしてもビリビリと感電するわけではないので、安全なのかなと思っていたのですが、どうやら皮膚科では注意が必要のようです。さて、iPhoneは、夜間ベッドの近くで充電されることが多いです。私も枕の下で充電しながら寝ています。iPhoneってどれだけ慎重に使っても、すぐにバッテリーが減っていくので、毎日充電しないと使いものにならないです。これは日本からの報告で、iPhoneの充電器であるLightningケーブルによる皮膚潰瘍の2例です。この論文には、顔に押し付けられた電極が潰瘍化した写真が掲載されています。そう、あの電極が顔に押し付けられると、次第に潰瘍化していくというのです。汗をかいていると、この部位に化学性の潰瘍を生じる可能性があるようです。私も、朝起きて頭皮に潰瘍ができていないか注意しないといけません。大事な髪の毛を守らねば…。ちなみに、リチウム電池を使用しているスマホの場合、過去に爆発事故もありました。今の製品はおそらく大丈夫でしょうが、みなさんもスマホ関連のトラブルには注意してください。

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精神病性うつ病の死亡率~18年フォローアップ調査

 精神病性うつ病に関連する死亡率や併発する精神症状の影響に関するエビデンスは、非常に限られている。英国・オックスフォード大学のTapio Paljarvi氏らは、併発する精神症状を制御した精神病性うつ病の原因別死亡率を推定するため、本研究を実施した。その結果、精神医学的併存疾患を制御した後、重度のうつ病に関連する死亡リスクに対し、精神症状の著しい影響が認められた。著者らは、自殺やその他の外的原因による死亡を減少させるためにも、すべての重度うつ病患者に対し、迅速な治療および精神症状のモニタリング強化が求められると報告している。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。精神病性うつ病患者の死亡リスクが最も高かったのは初回診断1年以内 本コホート研究では、フィンランドの全国健康レジスタより得られたデータを分析した。対象は、2000~18年に精神病性うつ病または重度の非精神病性うつ病と診断された18~65歳(診断時)のうち、統合失調症スペクトラム障害または双極性障害ではない患者。精神病性うつ病患者の原因別死亡率を、重度の非精神病性うつ病患者と比較した。死亡原因は、ICD-10で定義した。 精神病性うつ病患者の原因別死亡率を重度の非精神病性うつ病患者と比較した主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、精神病性うつ病患者1万9,064例、非精神病性うつ病患者9万877例。・フォローアップ期間は、最大18年であった。・精神病性うつ病患者の死亡の約半数(1,199/2,188例)は、初回診断から5年以内に認められ、相対リスクが最も高かったのは、初回診断1年以内であった。・精神病性うつ病患者は、非精神病性うつ病患者と比較し、初回診断5年以内のすべての原因による死亡(調整HR:1.59、95%信頼区間[CI]:1.48~1.70)、自殺(調整HR:2.36、95%CI:2.11~2.64)、死亡事故(調整HR:1.63、95%CI:1.26~2.10)のリスクが高かった。

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2型糖尿病のCOPD重症化、GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬が有効か/BMJ

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で2型糖尿病(DM)の患者において、GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬は、スルホニル尿素(SU)薬と比べ、COPD増悪による入院リスクを約30~38%低減することが示された。また、GLP-1受容体作動薬は、中等度増悪リスクを37%低減した。一方でDPP-4阻害薬は、COPD増悪リスクの明らかな低減は認められなかったという。カナダ・マギル大学のRicheek Pradhan氏らが、英国国民保健サービス(NHS)データを基に行った住民ベースの3種実薬比較新規使用者デザインコホート試験の結果で、BMJ誌2022年11月1日号で発表した。3種の新規血糖降下薬vs.SU薬を評価 研究グループは、英国の全NHS病院入院データ「Hospital Episode Statistics Admitted Patient Care and Office for National Statistics」とリンクした、大規模プライマリケアデータ「Clinical Practice Research Datalink」を基に住民ベースコホート試験を行った。 被験者は、試験薬(GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬)のいずれか、またはSU薬を、新たに服用開始したCOPD既往の2型DM患者だった。 第1コホートにはGLP-1受容体作動薬の服用を開始した1,252例とSU薬服用を開始した1万4,259例が、第2コホートにはDPP-4阻害薬服用を開始した8,731例とSU薬服用を開始した1万8,204例が、第3コホートにはSGLT-2阻害薬服用を開始した2,956例とSU薬服用を開始した1万841例がそれぞれ含まれた。 主要アウトカムはCOPDの重症増悪(COPDによる入院と定義)で、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬それぞれについて、傾向スコア層別化重み付けCox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)値を推算して評価した。また、これら3つの試験薬が中等度増悪(同日に、COPD急性増悪の外来診断と、経口コルチコステロイドと抗菌薬の同時処方と定義)のリスク減少と関連するかどうかも検証した。COPD重症増悪リスク、GLP-1受容体作動薬は30%、SGLT-2阻害薬は38%低減 SU薬と比較して、GLP-1受容体作動薬はCOPD重症増悪リスクを30%低減した(100人年当たり3.5 vs.5.0、HR:0.70、95%CI:0.49~0.99)。また中等度増悪リスクも37%低減した(0.63、0.43~0.94)。 同様にSGLT-2阻害薬も、COPD重症増悪リスクを38%低減した(100人年当たり2.4 vs.3.9、HR:0.62、95%CI:0.48~0.81)。一方で、中等度増悪リスクの低減は認められなかった(1.02、0.83~1.27)。 DPP-4阻害薬は、COPD重症増悪リスク、中等度増悪リスクともに低減はわずかだった(それぞれHR:0.91[95%CI:0.82~1.02]、0.93[0.82~1.07])。

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バイオレットライト透過レンズで学童期の近視進行を抑制/近視研究会

 10月23日に近視研究会が開催された。鳥居 秀成氏(慶應義塾大学医学部 眼科学教室)が「近視進行抑制におけるバイオレットライトの可能性」と題し、学童期の近視増加への警鐘とその予防策について講演した(共催:株式会社JINS)。バイオレットライトを含む短波長側の光は近視進行を抑制すると報告 世界中で近視人口が増えているなか、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)流行による活動自粛が近視進行に拍車をかけている。鳥居氏が示した新型コロナによる活動自粛前後の6~13歳の6年間の屈折値の変化を調査した論文1)によると、とくに6~8歳での近視化が顕著だという。近視予防のためには、これまでも屋外の光環境が重要であることが示唆されてきたが、近年では高照度(10万lux)でなくとも1,000lux台でも効果があることが報告2)され、光の波長に注目が集まっている。たとえば、動物実験において、一部を除けばほとんどの動物種においてバイオレットライト(Violet light)を含む短波長側の光は近視進行を抑制し、長波長側の光は近視進行を進めるというレビュー論文が報告3)されている。近年、学童期の近視の進行抑制治療としてRed light therapyも注目を集め有効性の報告があるものの、効果を発揮するメカニズムが不明であり、中止後3ヵ月でリバウンドを認め、脈絡膜厚はベースラインにまで戻ってしまったという報告4)もあることから、光の波長と近視進行抑制については今後さらなる研究成果が待たれるところである。 一方でバイオレットライトは近視進行抑制効果を発揮するメカニズムがOPN5ノックアウトマウスを用いた研究から明らかになってきており、非視覚光受容体OPN5を介すことで脈絡膜厚を維持し、眼軸長伸長を抑制することが報告5)された。さらには小児では水晶体の分光透過率で長波長側は変わらないものの短波長側の透過率が成人よりも高いことが報告6)され、屋外活動による近視抑制効果が低年齢児で得られやすいという疫学研究結果と矛盾しないことも報告された。バイオレットライト透過眼鏡で近視の抑制効果を認めた 近年の眼鏡は紫外線(UV)カットが多く、UVカットレンズはバイオレットライトも一緒にカットしてしまうため、UVはカットするもののバイオレットライトは透過させることで近視進行抑制効果を高めるレンズをJINSと共同開発。バイオレットライト透過眼鏡を使用することでバイオレットライト透過率が65%までに増加するという。この有効性を評価するために特定臨床研究として『バイオレットライト透過眼鏡によるランダム化比較試験』を実施した。本研究の対象者は近視(-1.50D~-4.50D)と診断された学童113例で、バイオレットライト透過眼鏡装用群と通常眼鏡装用群に割り付け、2年間の経過観察を行い有効性の検証をした。平均年齢(±SD)は9.4(±1.5)歳で、平均眼軸長は24.5mm、屈折値は約-2.7Dだった。バイオレットライトは室内にはほとんど存在しないため、本眼鏡が効果を発揮するには太陽光が存在する屋外に行かないと得られない。そのため全体では屋外活動時間が1時間未満のため、さらに必要症例数(140例)を満たすことができなかったため、バイオレットライト透過眼鏡装用群では近視進行抑制傾向ではあったが有意差を認めなかった。そこでサブグループ解析を実施したところ、屋外活動時間が1時間未満にもかかわらず、2年間で約20%の近視進行抑制効果を認めたことを報告7)した。 最後に同氏は「バイオレットライトをより積極的に室内にいても享受する方法として、現在バイオレットライトを眼鏡フレームから照射することができる眼鏡『バイオレットライト照射眼鏡』を坪田 一男氏(坪田ラボ/慶應義塾大学眼科学教室 名誉教授)らと開発中である」と述べ、「現在はバイオレットライト照射眼鏡の探索治験が終了し、短期安全性については問題がなく、探索的に解析を行ったことで関連が期待される層があったことも報告8)したことから、さらに今後の検証治験で1年間以上の有効性・安全性を評価していく」と締めくくった。■参考1)Wang J, et al. JAMA Ophthalmol. 2021;139:293-300.2)Wu PC, et al. Ophthalmology. 2018;125:1239-1250.3)Thakur S, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2021;62:22.4)Chen H, et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2022 Aug 17. [Epub ahead of print]5)Jiang X, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2021;118:e2018840118.6)Ambach W, et al. Doc Ophthalmol. 1994;88:165-173.7)Mori K, et al. J Clin Med. 2021;10:5462.8)Torii H, et al. J Clin Med. 2022;11:6000.

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英語で「あなたの趣味は何ですか」は?【1分★医療英語】第54回

第54回 英語で「あなたの趣味は何ですか」は?What do you do for fun?(あなたの趣味は何ですか?)I like watching Anime.(アニメを見るのが好きです)《例文》医師What do you do like to do for fun?(何か好きなことはありますか?)患者I enjoy biking.(自転車に乗ることです)《解説》今回は、「社会生活歴」にフォーカスを当てます。「社会生活歴」は英語でもそのまま“Social History”です。“What do you do for fun / What do you like to do for fun?”という表現で、ざっくりと日本語でいう「好きなことはなんですか」という意味になります。「趣味は何ですか?」というと真っ先に浮かぶのは中学で習った“What is your hobby?”ではないでしょうか。これも直訳した意味は同じになりますが、「“passionate”(熱烈)に打ち込んでいるもの」(楽器やスポーツのような)に限定して聞いている印象があるので、あまり一般的に使われる表現ではありません。今回紹介した“What do you do for fun?”のほうが自然で、日常会話でも頻繁に使われます。答え方としては、“I like〜”または“I enjoy〜”で始めれば無難です。小児科領域でいえば、米国では「HEADSS assessment」という独特の診察項目があり、思春期(11-13歳)になると親を部屋の外に出して子どもと医師が1対1になってHome、Education、Activities、Drugs、Sex、Suicideについて一通り聞くことが推奨されています。そのActivitiesを聞く際に“What do you do for fun?”は必ず使われる表現の一つです。ちなみに、職業を聞く際に使われる一般表現は、“What do you do for living?”(お仕事は何をされていらっしゃるのですか?)です。こちらも学校で習ったであろう“What is your job/occupation?”はかなり直接的な表現で失礼に当たる可能性もあるので、実際に使われる場面はほとんどありません。日本の診察場面では、患者さんが質問に答えた後に医師が反応することはあまりないでしょうが、米国では患者さんが、“I am an accountant.”(会計士です)と答えたら、医師側も“That is amazing!” “Wow, what a nice job!”などと大胆にリアクションをとることも多く、こうした“Social History”のやりとりを通して患者さんとラポートを形成しています。講師紹介

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第138回 コロナ薬発掘の明暗/コロナ再感染はより危険

COVID-19入院患者への抗IL-1薬anakinra使用を米国が認可既承認薬の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果発掘の取り組みが米国で結実し、スウェーデンを本拠とする製薬会社SobiのIL-1受容体遮断薬anakinra(アナキンラ、商品名:Kineret) によるCOVID-19入院患者治療が米国FDAに取り急ぎ認可されました1)。重度呼吸不全の恐れが大きいCOVID-19入院患者をsuPAR(可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体)血漿濃度上昇を頼りに選定したプラセボ対照第III相試験(SAVE-MORE)結果2,3)などに基づいてその試験とほぼ同様の用法が今回認可されました。COVID-19患者のsuPAR上昇は重度呼吸不全や死によりいっそう至りやすいことと関連し、C反応性タンパク質(CRP)・インターロイキン6(IL-6)・フェリチン・Dダイマーなどの他の生理指標に比べてCOVID-19進行のより早い段階で認められます。suPARが反映するのは危機を知らせる分子・カルプロテクチンやIL-1αの存在であり、カルプロテクチニンとIL-1αのどちらもCOVID-19の病的炎症の片棒をかつぐことで知られます。カルプロテクチニンは体内を巡る単球によるIL-1β異常生成を促し、IL-1αの阻害はCOVID-19マウスの強烈な炎症反応の発生を予防しました。anakinraはそれらIL-1αとIL-1βの両方の活性をIL-1受容体遮断により阻止します。そういった情報の集積に基づいてanakinraをsuPAR上昇患者に早めに投与し始めてCOVID-19を挫く治療が考案されました。その効果はまずは被験者130人の小規模な第II相試験で確認され4)、続く第III相試験SAVE-MORE2)で確立することになります。SAVE-MORE試験にはsuPAR血漿濃度6ng/mL以上のCOVID-19入院患者が参加し、anakinraは死亡や集中治療室(ICU)治療をプラセボ群に比べて少なくて済むようにしました。anakinra治療群の28日間の死亡率は約4%(3.9%)であり、プラセボ群の約9%(8.7%)の半分未満で済みました。またanakinra治療患者はより早く退院できました。FDAはSAVE-MORE試験の対象と同様の患者へのanakinra治療を取り急ぎ認めています。酸素投与を必要とする肺炎が認められ、重度呼吸不全に進展する恐れがあり、suPARが上昇しているらしい(likely to have an elevated)SARS-CoV-2検査陽性COVID-19入院患者に米国では同剤が使えます。Sobi社には宿題があります。suPAR検査販売の承認申請に必要なデータを準備し、2025年1月31日までにその申請を済ませる必要があります、また、suPAR検査に代わる患者同定手段を確立する必要があり、まずはその解析計画を来年2023年1月31日までにFDAに示し、その4ヵ月後の2023年5月31日までに解析結果を提出しなければなりません。COVID-19にコレステロール低下薬フェノフィブラート無効COVID-19へのanakinraの試験は先立つ研究の集大成として幸いにも成功を収めましたが、既存薬のCOVID-19治療効果発掘の取り組みは周知の通り必ずしも成功するとは限りません。脂質異常症の治療として世界で広く使われているコレステロール低下薬・フェノフィブラート(fenofibrate)はその1つで、国際的な無作為化試験で残念ながらCOVID-19に歯が立ちませんでした5,6)。先立つ細胞実験では試験結果とは対照的にフェノフィブラートの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染阻止効果が示唆されています。SARS-CoV-2感染した培養細胞やCOVID-19患者の肺組織では細胞内の過剰な脂肪生成が認められ、フェノフィブラートはSARS-CoV-2が引き起こす細胞代謝変化を解消し、細胞内でのSARS-CoV-2の複製を阻害することが細胞実験で確認されていました。また、フェノフィブラートの活性型であるフェノフィブリン酸はSARS-CoV-2スパイクタンパク質を不安定にしてその感染を減らすことも最近の細胞実験で示されています。COVID-19に有益そうな免疫調節効果も示唆されていました。期待した効果が惜しくも認められなかった無作為化試験はそれらの有望な前臨床実験結果に背中を押されて実施されました。試験に参加したCOVID-19患者の約半数の351人は発症から14日以内にフェノフィブラートを10日間服用しました。それらフェノフィブラート投与患者の重症度指標をプラセボ投与患者350人と比較したところ残念ながら有意差がありませんでした。死亡などの他の転帰も差がありませんでした。期待した効果が認められなかったとしてもなにがしかの有益な情報は得られるものです。今回の試験もそうで、安全性について重要な情報をもたらしました。フェノフィブラート群では胃腸有害事象が若干より多く認められたものの、大変な有害事象の過剰な発生は認められませんでした。よって脂質異常症などでフェノフィブラートを必要とするCOVID-19患者に同剤は安全に投与できるようです。すでに使っている患者は安心して使い続けられるでしょう。あいにくフェノフィブラートの効果は示せませんでしたが、細胞代謝経路を手入れする他の治療のCOVID-19への試験を引き続き実施する必要があると著者は言っています。コロナ再感染はより危険COVID-19治療薬発掘の取り組みが進むのは心強いですが、健康のために何よりも重要なのは感染しないようにすることかもしれません。COVID-19流行が始まってからおよそ3年が経ち、不運にも二度三度と感染する人もいます。米国の退役軍人医療データの解析によるとそのような再感染は脳や臓器の数々の不調をいっそう生じやすくし、はては死亡リスクも高めるようです7,8)。解析ではSARS-CoV-2感染経験がないおよそ533万人、SARS-CoV-2感染が1回の約43万人、SARS-CoV-2感染が2回以上の約4万人が比較されました。その結果、繰り返し感染した人は感染経験がない人に比べて約2倍多く死亡しており、3倍ほど多く入院していました。また、再感染した人は感染が1回の人に比べて肺、心臓、脳(神経)の不調をそれぞれ3.5倍、3倍、1.6倍生じやすいという結果が得られています。感染を繰り返すほどに健康不調の危険性は累積して上昇するようであり、すでに2回感染していたとしても3回目の回避に努めるに越したことはなく、3回感染している人も4回目をしないようにした方が無難なようです8)。参考1)FDAからSobi社への認可通知2)Kyriazopoulou E, et al. Nat Med. 2021;27:1752-1760. 3)Nature Medicine publishes phase 3 anakinra study results in patients with COVID-19 pneumonia / PRNewswire4)Kyriazopoulou E, et al.eLife.2021;10:e66125.5)Chirinos JA, et al. Nat Metab. 2022 Nov 7:1-11. [Epub ahead of print]6)After showing early potential, cholesterol medication fenofibrate fails to cut severe symptoms or death in COVID-19 patients / Eurekalert7)Bowe B, et al. Nat Med. 2022 Nov 10. [Epub ahead of print]8)Repeat COVID-19 infections increase risk of organ failure, death / Eurekalert

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認知症における抗精神病薬処方を合理化するための介入

 認知症介護施設の入居者に対する不適切な抗精神病薬投与は問題となっている。この問題に対処するため、施設スタッフの教育やトレーニング、アカデミック・ディテーリング、新たな入居者評価ツールで構成された「認知症に対する抗精神病薬処方の合理化(RAPID:Rationalising Antipsychotic Prescribing in Dementia)」による複合介入が開発された。アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・コークのKieran A. Walsh氏らは、認知症介護施設の環境下におけるRAPID複合介入の利用可能性および受容性を評価するため、本研究を実施した。また、向精神薬の処方、転倒、行動症状に関連する傾向についても併せて評価した。その結果、RAPID複合介入は広く利用可能であり、関係者の受容性も良好である可能性が示唆された。著者らは、今後の大規模研究で評価する前に、実装改善のためのプロトコール変更やさらなる調査が必要であるとしている。Exploratory Research in Clinical and Social Pharmacy誌2022年10月10日号の報告。 2017年7月~2018年1月にアイルランドの大規模介護施設において、混合法による利用可能性介入研究を実施した。介護施設のスタッフおよび一般開業医によるフォーカスグループと半構造化インタビューを3ヵ月のフォローアップ期間終了後に実施し、参加者を評価した。定量測定には、介入前後の評価および向精神薬の処方率を含めた。 主な結果は以下のとおり。・2日間のトレーニング研修に介護施設スタッフ16人が参加し(参加率:21%)、一般開業医4人がアカデミック・ディテーリングセッションに参加した(参加率:100%)。・フォーカスグループとインタビューに参加した18人は、教育およびトレーニングが自身の業務に有益であると認識し、本調査完了後も新規スタッフの教育を継続したいと回答した。・しかし、施設入居者評価ツールの使用は限定的であった。・参加者からは、介入を強化するための推奨事項も挙げられた。・定期的な抗精神病薬の処方が行われていた認知症入居者の割合は、介入前3ヵ月間45%(18例)、ベースライン時44%(19例)であったが、介入3ヵ月後では36%(14例)とわずかな減少が認められた。・認知症入居者に投与される1ヵ月当たりの向精神薬頓服処方の絶対数は、ベースライン時の90から介入3ヵ月後の69へと大幅に減少した。

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第123回 全国の出産費用を公表へ、妊婦の選択を支援/社会保障審議会

<先週の動き>1.全国の出産費用を公表へ、妊婦の選択を支援/社会保障審議会2.コロナワクチン接種で女性死亡、アナフィラキシーか? 県医師会が調査へ/愛知3.かかりつけ医は手上げ制へ、全世代型社会保障構築会議4.腎臓内科医が一斉退職へ、教授選考がきっかけか/島根大5.接触確認アプリ「COCOA」17日から機能停止へ/デジタル庁6.医薬品の迅速・安定供給の実現に向け財政措置を/中医協1.全国の出産費用を公表へ、妊婦の選択を支援/社会保障審議会11月11日に厚生労働省が開催した社会保障審議会において、全国の分娩医療機関での出産にかかる費用を公表することが了承された。正常分娩は、自由診療であり、価格が自由となっているため、ホームページで施設ごとに一覧できるようにし、妊婦が医療機関を選びやすくする。厚生労働省は、医療機関ごとに平均在院日数、分娩費の平均額など公表する。また、分娩費を支援する出産育児一時金の財源について、75歳以上の後期高齢者が新たに7%負担する仕組みを提案し、次回の保険料改定に合わせて2024年4月から導入する方針となった。(参考)病院ごとの出産費用を公表へ 妊婦の経済的負担軽減狙う 厚労省(毎日新聞)出産費や室料差額など公表へ、医療機関ごとに 社保審・部会が了承(CB news)75歳以上、7%分負担=出産育児一時金の財源に-厚労省(時事通信)高齢者にも「出産育児一時金」への応分負担求める! 「全国医療機関の出産費用・室料差額」を公表し妊婦の選択支援?社保審・医療保険部会(Gem Med)2.コロナワクチン接種で女性死亡、アナフィラキシーか? 県医師会が調査へ/愛知愛知県愛西市で11月5日に2価の新型コロナワクチンの接種直後に容体が急変し、死亡した事件をめぐって、愛知県医師会の医療安全対策委員会で、アナフィラキシーの有無を含め、対応について調査に乗り出すことになった。厚生労働省の第88回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会などでも検討を行っているが、遺族からは発生当初の初期対応をめぐって疑問の声が上がっている。(参考)「アナフィラキシーか」愛知県医師会が調査へ ワクチン接種後に死亡(朝日新聞)コロナワクチン接種で女性死亡 愛知県医師会が対応検証(日経新聞)ワクチン接種直後に容体急変 女性死亡 愛知県医師会が検証へ(NHK)新型コロナワクチン(コミナティRTU筋注[2価:起源株/オミクロン株BA.4-5])接種後に死亡として報告された事例の一覧[令和4年10月5日以降の報告分](厚労省)3.かかりつけ医は手上げ制へ、全世代型社会保障構築会議11月11日に開催された全世代型社会保障構築会議において、いわゆる「かかりつけ医機能」や勤労者皆保険制度について議論を行った。この中で、かかりつけ医制度について、事前の登録を義務化せずに、患者や医療機関側にそれぞれ判断を委ねる「手上げ方式」を提案した。政府は年内のとりまとめを目指しており、議論をさらに深めていく方針。一方、健康保険組合連合会(健保連)は11月8日、人口減少とさらなる高齢化により保険財政と医療資源が限界をむかえ、医療の最適化は必須であるとし、かかりつけ医師を認定する仕組みや任意の登録制度の創設を提言しており、今後、さらに議題を進め、医療の質の向上や医療機関との役割分担を明確にする狙い。(参考)第8回 全世代型社会保障構築会議(厚労省)「かかりつけ医」患者1人に複数で対応 政府有識者会議が方向性示す(朝日新聞)「かかりつけ医機能」手上げ方式検討へ 患者が選択、全世代型社会保障構築会議(CB news)かかりつけ医「登録制を」 健保連提言 実績ある医師認定(日経新聞)「かかりつけ医」の制度・環境の整備について[議論の整理](健保連)4.腎臓内科医が一斉退職へ、教授選考がきっかけか/島根大島根大学の医学部附属病院で、腎臓内科所属の医師7人が年度末までに退職する意向であることが文春オンラインで報道された。島根大学の腎臓内科の教授選は、2回の公募を行い、合計3回実施されたが、結果として落選した診療教授が退任することに合わせて、所属する腎臓専門医6人のうち2人が退職し、残りの医師も退職を検討していると報道されている。今後の島根県の腎臓医療や地域医療に影響が出る可能性があるため、関心を呼んでいる。(参考)島根大で腎臓内科医が一斉退職へ 島根の腎臓医療が崩壊危機(文春オンライン)5.接触確認アプリ「COCOA」17日から機能停止へ/デジタル庁デジタル庁は、新型コロナウイルスの陽性者との接触確認アプリの「COCOA」のサーバを11月17日から徐々に機能停止を行なっていくと発表した。これは今年9月末から全数届出が見直されたのに伴い、陽性登録が可能な人が限られるため、機能停止が決まった。今後、ユーザー全員に、11月17日より機能停止版(バージョン3.0.0)の配信を開始する。利用中のユーザーは、COCOAのアップデートを行った後に、機能停止の手続きをすることになる。(参考)接触確認アプリ「COCOA」17日から停止 “利用者は機能削除を”(NHK)COCOA、終了へのアップデートを17日に開始。必ず更新し、停止手続き後に削除を(PC Watch)コロナ接触確認アプリCOCOAの機能を停止 - 厚労省が発表、感染対策へのITツール活用で調査も(CB news)6.医薬品の迅速・安定供給の実現に向け財政措置を/中医協厚生労働省は11月9日に中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会を開き、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」での検討状況について報告を受けた。後発品のメーカーによる製造工程の問題をきっかけに生じた、医薬品の欠品問題により、医薬品の安定供給が困難となっており、さらに物価高騰や為替変動の影響もあり、早期の解決に向けて短期的に財政措置の検討が必要であると報告した。また、医薬品市場の将来予測では、先進10ヵ国中、わが国だけがマイナスまたは横ばいの成長であり、薬剤費の総額を伸ばして、革新的な医薬品の開発に対する投資を促すためにも、経済成長率以上の伸びは確保するべきではないかといった意見も出ている。今後、23年度改定にこれらの内容を盛り込むよう求める意見を含め検討を重ね、来年4月を目途にとりまとめを行う予定。(参考)中医協薬価専門部会 医薬品の安定供給は「短期的」な財政措置検討へ23年度改定の論点に(ミクスオンライン)令和5年度薬価改定について(有識者検討会における議論の状況について)(厚労省)第5回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(同)

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