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英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(2)分数・乗数・割合【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第18回

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(2)分数・乗数・割合前回に続いて、英会話における数字の基本的な表現方法を紹介します。今回紹介するのは、科学的な議論で頻用される数字の比較表現です。まったく同じ数学的な関係性を説明する場合でも、表現の方法は多種多様です。スピーキング面では、少なくとも1種類の表現を、自信を持って使えればOKでしょう。一方でリスニング面では、ネイティブスピーカーが使う多種多様な表現を正確かつ瞬時に理解するために、複数の表現を知っておく必要があります。〈表〉画像を拡大する1)分数分数(fraction)は日本語でも英語でも、直感的な比較表現であり、日常会話でも頻用されますが、その読み方には注意が必要です。「分子」は“numerator”、「分母」は“denominator”と訳されます。基本的には、分子を先に読むため、分母が先である日本語とは読む順序が逆となります。分子は基数(整数)、分母は序数(順序を表す数詞)で読むことが基本的なルールですが、分母が「2」のときは“second”ではなく“half”となり、分母が「4」のときは、“fourth”と“quarter”の両方が使えます。基数と序数の区別、複数形の使い方は複雑に思えますが、これらはビジュアルで覚えることが効果的です。以下の図のように、序数で表される分母は「円グラフの1つのピース」だとイメージします。「1/2」の場合、“half”のピースが1つなので、“one half”です。同様に「1/5」は“one fifth”であり、それが複数のピースになる「2/5」は“two fifths”と複数形になります。〈図〉2)乗数分数と異なり、乗数は日本語の順序と基本的に同じなので、直訳する感覚で直感的に理解しやすいでしょう。最も頻用される表現は“times”であり、「3倍大きい」は、“3 times larger”と訳されます。また、“3-fold larger”のように“fold”という表現でも言い換え可能なので、覚えておくとよいでしょう。「2倍」のときに限っては“twice larger”とも言います。3)4)割合こちらも比較的シンプルな表現です。「対象患者○人中の○人で」という表現は医学のプレゼンでは頻出なので、複数の表現方法を押さえておくとよいでしょう。講師紹介

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夜型人間は本当に寿命が短い人の特徴なのか

 近年、「朝活」と称し、朝からスポーツや趣味、習い事などを行う朝型人間が増えてきている。その一方で、夜にならないと勉強も仕事も調子が出ないという夜型人間も多い。こうしたクロノタイプ(時間的特性)が健康に影響をもたらすかどうかは長く議論されてきた。過去には、夜型人間について全死因死亡率および心血管死亡率のわずかな増加が示唆されたという研究報告もある。 では、長期におよぶ追跡調査でも夜型人間は寿命が短い人の特徴であるという結果は変わらないものであろうか。フィンランド・国立労働衛生研究所のChrister Hublin氏は、フィンランドの成人ツインコホートを利用して、37年に及ぶ追跡調査を行い、アンケートを実施し(回答率84%)、その結果を解析、報告した。Chronobiology International誌オンライン版2023年6月15日掲載。夜型人間の寿命を短くする2つの要素 本研究は、「自分がどの程度、朝型人間、夜型人間かを評価してみてください」という質問に対して、4つの選択肢(「明らかに朝型人間」から「明らかに夜型人間」など)で回答した2万3,854人が対象。 回答者の内訳は、朝型が29.5%、やや朝型が27.7%、やや夜型が33.0%、夜型が9.9%。朝型と比較すると、夜型は若く、教育期間が長いカテゴリーの割合がやや高く、飲酒量と喫煙量が多かった。 バイタルステータスおよび死因のデータは、2018年末までの全国のレジスターから提供されたものを使用。死亡率のハザード比は、8,728人の死亡例に基づいて計算され、教育の程度、アルコール、喫煙、BMI、睡眠時間について調整した。 夜型人間は寿命が短い人の特徴であるか調査した結果は以下のとおり。・共変量調整モデルで、夜型人間グループの全死亡率が9%増加していた(ハザード比:1.09、95%信頼区間:1.01~1.18)。また、主に喫煙とアルコールが減衰原因としてみられた。・軽い飲酒をする程度の非喫煙者では、夜型人間グループの死亡率の増加がみられないことから、喫煙とアルコールの重要性が強く示唆された。・原因別死亡率も増加しなかったことから、死亡率に対する夜型人間や朝型人間というクロノタイプの独立した寄与は、ほぼ/またはまったくないことが示唆された。

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双極性障害患者の入院期間に影響を及ぼす要因

 双極性障害患者の入院期間やそれに影響を及ぼす因子を特定するため、 中国・首都医科大学のXiaoning Shi氏らは、本検討を行った。その結果、入院期間の長い双極性障害患者は、自殺リスクが高く、複雑な多剤併用が行われていた。入院期間を短縮するためには、うつ病エピソードの適切な管理と機能的リハビリテーションが有用な可能性がある。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月19日号の報告。 双極I型障害またはII型障害患者を対象に多施設共同観察コホート研究を実施した。2013年2月~2014年6月に中国6都市、7施設より募集した外来患者520例を、継続的なサンプリングパターンを用いてフォローアップ調査を行った。本研究は、12ヵ月のレトロスペクティブ期間と9ヵ月のプロスペクティブ期間で構成された。対象患者の人口統計学的特徴および臨床的特徴を収集した。入院期間(プロスペクティブ期間の入院日数)の影響を及ぼす因子の分析には、ポアソン回帰を用い、入院期間(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間)の分析には、線形回帰分析を用いた。性別、年齢、教育年数、職業的地位、在留資格、精神疾患の家族歴、薬物乱用の併存、不安障害の併存、自殺企図の回数(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間での発生回数)、初回エピソード特性、双極性障害のタイプ(I型またはII型)を変数として用いた。 主な結果は以下のとおり。・ポアソン回帰分析では、入院期間と相関が認められた因子は、自殺企図の回数(発生率[IRR]:1.20、p<0.001)、抗精神病薬の使用(IRR:0.62、p=0.011)、抗うつ薬の使用(IRR:0.56、p<0.001)であった。・線形回帰分析では、うつ病エピソード期間の長期化や機能低下と関連する可能性のある双極II型障害(β:0.28、p=0.005)および失業(β:0.16、p=0.039)は、長期入院との関連が認められた。・自殺企図の回数と短期入院との間に関連傾向が認められた(β:-0.21、p=0.007)。・自殺リスクの高い患者では、治療が不十分、コンプラインアンス不良の傾向があるため、入院中に適切に評価し、治療を行う必要がある。

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抗CD7塩基編集CAR-T細胞療法、T細胞性ALLに有望/NEJM

 英国・Great Ormond Street Hospital for Children NHS TrustのRobert Chiesa氏らは、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の小児患者を対象とした、抗CD7塩基編集キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の第I相試験において、最初の3例中2例で寛解が得られたことを報告した。CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)によるシチジンの脱アミノ化は、DNAに切断を生じさせることなくシトシンからチミンへ極めて正確に塩基置換変異を起こすことができる。すなわち、転座やその他の染色体異常を誘発することなく遺伝子を塩基編集し不活性化できることから、再発T細胞白血病小児患者において、この技術の使用が検討されている。著者は、「今回の中間結果は、再発白血病患者に対する塩基編集T細胞療法のさらなる研究を支持するもので、また、免疫療法に関連した合併症の予想されるリスクも示している」とまとめている。NEJM誌オンライン版2023年6月14日号掲載の報告。塩基編集したCAR-T細胞を作製 研究グループは、塩基編集を使用して万能で容易に入手可能なCAR-T細胞を作製した。健康ボランティアドナーのT細胞を、T-ALL患者で発現するCD7(CAR7)に特異性を有するCARを発現するよう、レンチウイルスを用いて形質転換した。 次に、リンパ球除去血清療法、CAR7 T細胞のフラトリサイド(CD7を発現している正常T細胞の殺傷性)および移植片対宿主病を回避するため、塩基編集を使用してCD52受容体、CD7受容体、およびT細胞受容体(TCRαβ)のβ鎖をコードする3つの遺伝子をそれぞれ不活化した。 再発白血病小児患者3例を対象に、これらの塩基編集CAR7(BE-CAR7)の安全性を検討した。3例中2例で分子学的寛解 1例目は同種幹細胞移植後に再発したT-ALLの13歳女児で、BE-CAR7単回投与後28日以内に分子的寛解が得られた。その後、元のドナーから強度を下げた(非骨髄破壊的前処置後)同種幹細胞移植を受け、免疫学的再構成に成功し、白血病寛解が継続した。 2例目は維持療法中に再発したcortical T-ALLの13歳男児である。BE-CAR7単回投与後、19日目および25日目の骨髄評価では形態学的寛解がみられたものの、PCR検査で微小残存病変が認められ、黒色アスペルギルスの重複感染による肺合併症の進行により33日目に死亡した。 3例目は、2回目の同種幹細胞移植後に再発し、混合型急性白血病からCD7陽性のT-ALLに移行した15歳男児である。BE-CAR7単回投与後28日目に分子学的完全寛解が認められ、同種幹細胞移植を受けた。 重篤な有害事象は、サイトカイン放出症候群、多系統細胞減少症、日和見感染症などであった。

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HER2陽性胆道がんに対するzanidatamabの有用性(HERIZON-BTC-01)/ASCO2023

 HER2陽性胆道がんに対する抗HER2二重特異性抗体zanidatamabの有用性に関するデータが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・MDアンダーソンがんセンターのShubham Pant氏から発表された。 zanidatamabはHER2の細胞外部位のドメイン2とドメイン4に同時に結合する新規の二重特異性抗体であり、HER2の二量体形成の強力な抑制作用が示されている。今回の発表はアジアを中心に行われた国際共同の第IIb相試験HERIZON-BTC-01の結果である。・対象:ゲムシタビン含有レジメンの治療歴を有する局所進行または転移のあるHER2陽性胆道がん・介入:HER2のIHC 2+/3+症例(コホート1)    HER2のIHC 0/1+症例(コホート2)    zanidatamab(20mg/kg、day1および15)4週間ごと投与・評価項目:[主要評価項目]独立中央判定によるコホート1の奏効率[副次評価項目]奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2020年9月〜2022年3月に、コホート1に80例、コホート2に7例が登録された。コホート2では奏効例がなかったことから、今回はコホート1のみの集計解析。・症例はアジア人が65%、胆のうがんが51%、肝内胆管がんが29%、肝外胆管がんが20%であった。・前治療の中央値は1ラインで、ゲムシタビン+シスプラチンが76%、フッ化ピリミジンが34%、抗PD-1/L1抗体が26%に使用されていた。・奏効率は41.3%(95%信頼区間[CI]:30.4〜52.8)で、DCRは68.8%であった。・DOR中央値は12.9ヵ月、奏効発現までの期間中央値は1.8ヵ月であった。・追跡期間中央値12.4ヵ月における、PFS中央値は5.5ヵ月であった。・治療関連の有害事象は、全Gradeで76.3%、Grade3以上は18.8%に発現した。主な項目は下痢(40%)、インフュージョンリアクション(35%)、EF値低下(10%)、悪心(10%)などであった。・有害事象による治療中止は2.5%、治療関連の死亡例はなかった。 発表者であるPant氏は「本剤が将来のHER2陽性胆道がんの有望な治療オプションとなり得る可能性がある」と結んだ。

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tirofiban、知っている?(解説:後藤信哉氏)

 動脈血栓の主成分はフィブリンと血小板である。閉塞血栓形成における血小板の機能は血小板凝集と同等と考えられた時期があった。tirofibanは血小板のGP IIb/IIIaに結合して血小板凝集を完全に阻害する。tirofiban、abciximab、eptifibatideの3種のGP IIb/IIIa阻害薬が心筋梗塞などを対象として有効性を示した。血小板凝集を阻害するので出血合併症も多い。日本ではabciximabの治験を行ったが、結局GP IIb/IIIa阻害薬は1つも承認されなかった。 血栓形成プロセスはダイナミックである。GP IIb/IIIa阻害薬にて血小板凝集を完全に阻害する血栓が不安定化することはわれわれが示した(Goto S, et al. J Am Coll Cardiol. 2004;44:316-323.)。本研究は図らずも、われわれが基礎的研究にて示したGP IIb/IIIa阻害薬による血栓の不安定化効果を、早期灌流による予後改善として臨床的に示した論文となった。tirofibanは小分子なので、ヒト型抗体であるabciximabより出血合併症が少ないのかもしれない。 しかし、心臓の経験から脳梗塞に対してGP IIb/IIIa阻害薬が応用されるとは考えなかった。続報を待ちたい。

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頭蓋内爆発音症候群と心停止を繰り返した男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第236回

頭蓋内爆発音症候群と心停止を繰り返した男性Unsplashより使用「頭蓋内爆発音症候群」について皆さんご存じでしょうか。ネットでいろいろな情報が手に入る時代になったため、昔と比べると知名度が上がったと思います。寝入る直前や目覚めた直後に短時間の大きな幻聴が発生する病態で、原因、誘因、治療法など、とりあえずわかっていないことが多い現象です。Hayreh SS.Exploding head syndrome: new observations.Eur J Neurol. 2020 Nov;27(11):2333-2335.この論文のMethodsには興味深いことが書いていました。「この観察研究では、私の個人的な頭蓋内爆発音症候群の経験を記述し、その意義について論じる―――」。…おおお、なんと頭蓋内爆発音症候群になったのが著者本人とな! ちなみにこの著者の方、Wikipediaにも掲載されるくらい有名だったアイオワ大学眼科名誉教授です。2022年に逝去されています。自分自身を症例報告化してしまうケースは、希少疾患で時にみられる手法ですが、この著者はなかなか大変な症状だったそうです。彼は、頭蓋内爆発音症候群にかかっている間、洞不全症候群による一過性の心停止を繰り返し経験していたそうです。この2つの病態、通常おそらく関係ないだろうなと思われます。しかし、彼が心臓ペースメーカーを装着したところ、心停止と頭蓋内爆発音症候群の両方が、まったく出なくなったそうです。実は、洞不全症候群と頭蓋内爆発音症候群の関連については2012年に韓国で報告があります1)。結局のところ、この関連はよくわかっていません。脳の血流が賦活することが、何らかの刺激因子になっていると考えられています。遭遇することはないかもしれませんが、洞不全症候群の患者さんが頭蓋内爆発音症候群で困っている場合、「不整脈の治療によって症状が改善するかもしれない」を頭の片隅に入れておきましょう。1)Kim HY, et al. A Case of Sick Sinus Syndrome Presenting as Exploding Head Syndrome. J Korean Sleep Res Soc. 2012;9:61-63.

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早期乳がんの死亡率、どのくらい下がったのか/BMJ

 英国・オックスフォード大学のCarolyn Taylor氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究を行い、早期浸潤性乳がん女性の予後は1990年代以降大幅に改善され、ほとんどの人が長期がんサバイバーとなっているものの、依然として少数例で予後不良リスクが伴うことを報告した。早期浸潤性乳がん診断後の乳がん死亡リスクは、過去数十年間で低下しているが、その低下の程度は不明であり、また低下は特定の特性を持つ患者に限定されるのか、すべての患者に当てはまるのか不明であった。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。英国の早期浸潤性乳がん患者約51万例について解析 研究グループは、NCRASのデータを用いて、1993年1月~2015年12月に英国において早期浸潤性乳がん(乳房のみ、または腋窩リンパ節陽性であるが遠隔転移なし)の診断で登録された患者51万2,447例を特定し、2020年12月まで追跡調査を行った。 主要評価項目は、乳がん年間死亡率および累積死亡リスクとした。診断時暦年、診断時年齢、エストロゲン受容体(ER)陽性/陰性、HER2陽性/陰性、腫瘍径、腫瘍悪性度、リンパ節転移数、スクリーニングの有無などにより層別し解析を行った。診断時暦年は1993~99年、2000~04年、2005~09年、2010~15年のカテゴリーに分けた。診断特性の違いで、5年累積乳がん死亡率は3%未満群~20%以上群とばらつき 乳がん年間粗死亡率は、いずれの診断年カテゴリーでも、診断後2年間に増加し3年目にピークとなり、その後は低下した。また、乳がん年間死亡率ならびに累積死亡リスクは、診断時暦年が近年になるほど低下した。 乳がん5年粗死亡率は、1993~99年に診断された女性で14.4%(95%信頼区間[CI]:14.2~14.6)であったが、2010~15年に診断された女性では4.9%(4.8~5.0)であった。 ER陽性/陰性別の補正後乳がん年間死亡率も、全体およびほぼすべてのサブグループ(診断時年齢層、スクリーニングの有無、腫瘍径、リンパ節転移数、悪性度別)で診断時暦年が近年になるほど低下し、1993~99年に診断された群に比べて2010~15年に診断された群では、ER陽性で約3分の1、ER陰性で約2分の1であった。 2010~15年に診断された女性のみについて解析した場合、5年累積乳がん死亡率は異なる特性の組み合わせによって大きなばらつきがあり、女性の62.8%(15万3,006例中9万6,085例)を占める特性群の5年累積乳がん死亡率は3%未満である一方、4.6%(15万3,006例中6,962例)の特性群では20%以上であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「より最近の年代に診断された患者群の5年乳がん死亡リスクは、今日の患者の乳がん死亡リスクの推定に使用できるだろう」とまとめている。

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僧帽弁形成術、小切開vs.胸骨正中切開/JAMA

 僧帽弁形成術において、術後12週時の身体機能の回復に関して、小開胸術の胸骨切開術に対する優越性は示されなかった。弁修復率および安全性については両手術で同等であることが確認された。英国・South Tees Hospitals NHS Foundation TrustのEnoch F. Akowuah氏らが、実用的多施設共同無作為化優越性試験の結果を報告した。変性による僧帽弁逆流を有する患者における、胸腔鏡下小開胸vs.胸骨正中切開の僧帽弁形成術の安全性と有効性は不明であった。JAMA誌2023年6月13日号掲載の報告。小開胸術と胸骨切開術に無作為化、術後12週時のSF-36身体機能スコアを比較 研究グループは、英国の3次医療機関10施設において、変性による僧帽弁逆流を有し僧帽弁形成術を受ける成人患者を、小開胸術群または胸骨切開術群に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。手術は専門医が行い、評価は割り付けを盲検化された独立した研究者が行った。 主要アウトカムは、術後12週時の身体機能およびそれに伴う日常活動への復帰で、SF-36身体機能スコアのTスコアのベースラインからの変化量として測定した。副次評価項目は、1年後までのSF-36身体機能スコア、6週時および12週時の手首装着型加速度計による身体活動および睡眠、12週後および1年後の経胸壁心エコーによる残存僧帽弁逆流、1年後までのEQ-5D-5Lで評価したQOLとした。また、安全性評価項目は、術後12週までの術後合併症、ならびに術後1年までの死亡、僧帽弁再手術および心不全による入院の複合とした。SF-36身体機能スコアの変化量に群間差なし 2016年11月~2021年1月に1,167例がスクリーニングを受け、330例が無作為化され(平均年齢67歳、女性100例[30%])、小開胸術群に166例、胸骨切開術群に164例が割り付けられた。このうち309例が手術を受け、294例で主要アウトカムに関するデータを得られた。 術後12週時のSF-36身体機能スコアのTスコアの変化量平均値は、小開胸術群7.62(95%信頼区間[CI]:5.49~9.78)、胸骨切開術群7.20(同:5.04~9.35)で、平均群間差は0.68(同:-1.89~3.26)であり、胸骨切開術に対する小開胸術の優越性は認められなかった。 残存僧帽弁逆流がない、または軽度の患者割合は、術後12週時で小開胸術群95%、胸骨切開術群96%と両群で類似しており、1年後では両群とも92%で群間差は認められなかった。 安全性については、術後1年時の複合アウトカムの発生は、小開胸術群5.4%(166例中9例)、胸骨切開術群6.1%(163例中10例)であった。 著者は、「今回の結果は、共同意思決定(shared decision-making)および治療ガイドラインへ、エビデンスのある情報を提供するものである」とまとめている。

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妊娠糖尿病への早期治療介入は時期尚早か(解説:住谷哲氏)

 妊娠糖尿病が母児の産科的合併症のリスク増大と関連することが明らかにされている。妊娠糖尿病のスクリーニングはIADPSGが推奨する、初回受診時に通常の糖尿病診断基準を用いて妊娠中の明らかな糖尿病overt diabetes in pregnancyを除外し、それ以外の妊婦に対しては妊娠24~28週に75gOGTTを実施して妊娠糖尿病gestational diabetes mellitusを拾い上げる方法が一般的である。しかし現実的には、糖尿病発症ハイリスク妊婦に対しては24週以前に75gOGTTが実施され、妊娠糖尿病と診断されて治療介入されるケースも少なくない。 IADPSGの推奨の根拠となっているのはHAPO研究であるが、この研究の対象となったのは妊娠24週以降の妊婦のみである点に注意が必要である。したがって、HAPO研究に基づくIADPSGの妊娠糖尿病診断基準を妊娠24週以前の妊婦に適用できるか否かは不明である。さらに24週以前の妊婦にも適用可能であると仮定した場合に、妊娠糖尿病と診断された患者にその時点から早期治療介入すれば母児の予後が改善するかどうかは明らかではない。 本試験は糖尿病発症ハイリスク妊婦のなかで、妊娠20週以前(平均15.6週)に75gOGTTによるスクリーニング検査で妊娠糖尿病と診断された患者を対象として早期治療介入の有効性を検討した。対象患者を妊娠20週以前の診断時から妊娠糖尿病として治療介入する早期治療介入群と、24~28週に実施する通常のスクリーニングまで治療介入しないコントロール群に分けた。コントロール群は、24~28週のスクリーニングで妊娠糖尿病と診断されればその時点から治療介入された。 結果は3つの主要評価項目のうち、新生児有害アウトカムneonatal adverse outcomeは早期治療介入群で有意に減少したが、妊娠関連高血圧pregnancy-related hypertensionおよび新生児除脂肪体重neonatal lean body massは両群に有意差を認めなかった。さらにコントロール群の33%は24~28週で再度実施した75gOGTTで妊娠糖尿病の診断基準を満たしていなかった。早期治療介入群は再度の75gOGTTを実施していないので正確ではないが、早期治療介入群のほぼ30%の患者は妊娠糖尿病ではなかったにもかかわらず治療介入された可能性も否定できない。 本試験の対象は糖尿病発症ハイリスク妊婦であり、そうではない妊婦に本試験の結果が適用できるかは不明である。さらに早期治療介入による新生児有害アウトカムの減少も効果としてはそれほど大きいものではなく、妊娠24~28週でのスクリーニングが適当とするIADPSGの推奨を変更する必要はなさそうに思われる。

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外傷性急性硬膜下血腫、開頭術vs.減圧開頭術/NEJM

 外傷性急性硬膜下血腫の手術において、骨弁を還納する開頭術と還納しない減圧開頭術では、1年時点の障害およびQOLのアウトカムは同等だった。一方で、2週間以内の追加手術の発生率は開頭術群で高く、創部合併症の発生率は減圧開頭術群が高かった。英国・Addenbrooke's HospitalのPeter J. Hutchinson氏らが、11ヵ国40施設で行った無作為化比較試験の結果を報告した。外傷性急性硬膜下血腫の手術の選択肢である減圧開頭術は、頭蓋内圧亢進症を予防する可能性が示唆されているが、より良好なアウトカムと関連するかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。1年時点のGOSEで障害の程度を比較 研究グループは、外傷性急性硬膜下血腫の手術が予定されている患者を無作為に2群に割り付け、一方には開頭術を、もう一方には減圧開頭術を行った。試験対象の基準は、骨弁の前後径11cm以上とした。 主要アウトカムは、12ヵ月時点の拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE、8ポイント尺度で、「死亡」~「上位の良好な回復[損傷関連の問題なし]」を評価)による分類だった。副次アウトカムは、6ヵ月時点のGOSE評価分類、EuroQol Groupの5領域5段階質問票(EQ-5D-5L)で評価したQOLなどだった。1年時点の障害程度は同等、2週間以内の追加頭蓋手術は開頭術群で高率 試験は2014年9月~2019年4月に、11ヵ国(英国、インド、カナダ、マレーシア、ドイツ、スペイン、米国、オーストラリア、ハンガリー、パキスタン、シンガポール)の40施設で行われ、3,566例がスクリーニングを受け、462例が試験に登録された。 解析に組み入れられたのは、開頭術群228例、減圧開頭術群222例。骨弁の前後径中央値は両群ともに13cm(四分位範囲:12~14)だった。 12ヵ月時点のGOSE分類の差に関する共通オッズ比(OR)は、0.85(95%信頼区間[CI]:0.60~1.18)と、両群で同等だった(p=0.32)。6ヵ月時点の結果も同様だった。 12ヵ月時点の死亡率は、開頭術群30.2%、減圧開頭術群32.2%。植物状態(vegetative state)は開頭術群2.3%、減圧開頭術群2.8%で、下位または上位の良好な回復は開頭術群25.6%、減圧開頭術群19.9%で認められた。 12ヵ月時点のEQ-5D-5Lスコアは、両群で同程度だった。 無作為化後2週間以内の頭蓋手術の追加実施は、開頭術群14.6%、減圧開頭術群6.9%、創部合併症は、開頭術群3.9%、減圧開頭術群12.2%でそれぞれ発生した。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8【「実践的」臨床研究入門】第33回

検索式で研究デザインを限定する その3前回は、PubMedの「Filterサイドバー」(連載第31回参照)を利用して、検索式で「研究デザイン」を「観察研究」に限定する方法について説明しました。「Filterサイドバー」を用いる方法は簡便ですが、Publication typeが“Observational Study(観察研究)”であるという情報が付与されていない論文は、検索式から漏れてしまいます。そこで、今回は「観察研究フィルター」の検索式を紹介します。また、実際にわれわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューの検索式に「観察研究フィルター」の検索式を加えて、「Filterサイドバー」を使う方法と検索結果を比較してみたいと思います。Journal of the Medical Library Associationという医学図書館学についての専門学術誌があります。この雑誌に掲載された論文1)で、「研究デザイン」を「観察研究」に絞る、PubMed用の「観察研究フィルター」の検索式が紹介されています。ちなみにこの論文1)では、「観察研究フィルター」以外にも、「システマティックレビューフィルター」と「介入研究フィルター」のPubMedおよびEmbaseの検索式が提示されていますので、ご関心があれば参照してください。下記に、この論文1)で紹介されたPubMed用の「観察研究フィルター」検索式の例を示します。“Epidemiologic Studies”[mh] OR “case control”[tiab] OR “case-control”[tiab] OR ((case[tiab] OR cases[tiab]) AND (control[tiab] OR controls[tiab)) OR “cohort study”[tiab] OR “cohort analysis”[tiab] OR “follow up study”[tiab] OR “follow-up study”[tiab] OR “observational study”[tiab] OR longitudinal[tiab] OR retrospective[tiab] OR “cross sectional”[tiab] OR questionnaire[tiab] OR questionnaires[tiab] OR survey[tiab]それでは、Advance Search Builderを用いて(連載第27回参照)、われわれのRQの関連研究レビューのための検索式に、この「観察研究フィルター」検索式を加えてみましょう。検索結果は下記の表1のようになりました(本稿執筆2023年6月時点)。表1画像を拡大する前回解説した、「Filterサイドバー」の“article type”で“Observational Study(観察研究)”に絞り込んだ検索結果の10倍以上の文献数がヒットしました。この検索結果に、改めて「Filterサイドバー」を用いて“Observational Study(観察研究)”に限定すると、下記の表2のとおりとなり、前回ヒットした文献がすべて検索されました。表2画像を拡大するこのように、今回解説した「研究デザインフィルター」の検索式を用いた方が、「Filterサイドバー」を使うよりも、さらに網羅的な検索ができることがわかります。1)Avau B, et al. J Med Libr Assoc. 2021;109:599-608.

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円形脱毛症の母親の出生児が抱えるリスクとは?

 韓国・延世大学校のJu Yeong Lee氏らが実施した後ろ向き出生コホート研究において、円形脱毛症(AA)を有する母親から出生した児は、AAに関連する併存疾患リスクが高いことが示された。母親のAAと児の自己免疫疾患や炎症性疾患、アトピー性疾患、甲状腺機能低下症、精神疾患の発症に関連がみられ、著者は「臨床医や保護者は、これらの疾患が発生する可能性を認識しておく必要がある」と述べている。AAは自己免疫疾患や精神疾患と関連することが知られているが、AAを有する母親の児に関する長期アウトカムの調査は不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。 研究グループは、韓国の全国健康保険サービス(Nationwide Health Insurance Service)のデータベースと、出生登録データベースを用いて後ろ向き出生コホート研究を実施した。 対象は、2003~15年にAA(ICD-10コードL63に基づく)を診断名として3回以上受診した母親から出生したすべての児6万7,364例(AA群)と、AAと診断されていない母親から出生した児(対照群)67万3,640例であった(1対10の割合で、出生年、性別、保険の種類、所得レベル、居住地をマッチング)。 対象児について出生から2020年12月31日まで追跡し、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、甲状腺疾患、精神疾患の発症※と母親のAAとの関連について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した(共変量:出生年、年齢、保険の種類、所得レベル、居住地、母親の年齢、分娩形態、母親のアトピー性皮膚炎の既往歴、自己免疫疾患の既往歴)。解析は、2022年7月~2023年1月に行った。※:AA、全頭型脱毛症/汎発型脱毛症(AT/AU)、白斑、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、バセドウ病、橋本病、注意欠如・多動症(ADHD)、気分障害、不安症の発症。 主な結果は以下のとおり。・AA群は対照群と比較して、以下の発症リスクが有意に高かった。 -AA(調整ハザード比[aHR]:2.08、95%信頼区間[CI]:1.88~2.30) -AT/AU(同:1.57、1.18~2.08) -白斑(同:1.47、1.32~1.63) -アトピー性疾患(同:1.07、1.06~1.09) -甲状腺機能低下症(同:1.14、1.03~1.25) -精神疾患(同:1.15、1.11~1.20)・AA群のうち、AT/AUを有する母親から生まれた児5,088例は、AT/AU(aHR:2.98、95%CI:1.48~6.00)および精神疾患(同:1.27、1.12~1.44)の発症リスクが高かった。

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腎細胞がん1次治療のペムブロリズマブ+アキシチニブ、5年超追跡でも生存改善を維持(KEYNOTE-426)/ASCO2023 

 進行/再発の淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブとアキシチニブの併用療法は、5年間以上の追跡結果においても有用性が確認できた。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのBrian I. Rini氏が発表したKEYNOTE-426試験の結果である。 KEYNOTE-426は国際共同非盲検第III相試験であり、ペムブロリズマブとアキシチニブによるRCCの有意な生存延長を報告している。今回は60ヵ月以上の追跡期間(中央値67.2ヵ月)の最終結果報告となる。・対象:未治療の局所進行もしくは転移を有するRCC・試験群:ペムブロリズマブ3週ごと最長35サイクル(2年間)投与+アキシチニブ連日投与(PemAxi群:432例)・対照群:スニチニブ4週投与2週休薬(Suni群:429例)・評価項目:[主要評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]BICRによるITT集団の全奏効率(ORR)、BICRによる奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、PemAxi群で15.7ヵ月、Suni群で11.1ヵ月、ハザード比(HR)は0.69(95%信頼区間[CI]:0.59~0.81)とPemAxi群の優越性は保たれており、60ヵ月PFS率は、PemAxi群18.3%、Suni群7.3%であった。・ORRはPemAxi群60.6%、Suni群39.6%であった。・OS中央値は、PemAxi群で47.2ヵ月、Suni群で40.8ヵ月、HRは0.84(95%CI:0.71~0.99)で、60ヵ月OS率は、PemAxi群41.9%、Suni群37.1%であった。・全症例の約70%を占めるintermediate riskとpoor riskグループにおける、PFSのHRは0.68(95%CI:0.56~0.82)、OSのHRは0.76(95%CI:0.62~0.93)と、PemAxi群が良好な結果であった。・後治療として抗PD-1/L1抗体の投与を受けたのは、PemAxi群の27%、Suni群の80%、抗VEGF薬の投与を受けたのは、それぞれ87%と72%であった。・これら後治療の影響を調整してOS解析を実施したところ、OS中央値はPemAxi群38.8ヵ月、Suni群25.3ヵ月、HRは0.67(95%CI:0.52~0.84)となった。・PemAxi群でペムブロリズマブの35サイクルを完遂できた割合は27.8%で、完遂例はfavorable risk群と肉腫様腎細胞がんに多く、遠隔転移2ヵ所以上の群では少なかった。・同完遂例におけるPemAxi群のPFS中央値は37.4ヵ月、OS中央値は未到達と良好な結果だった。 演者は「5年を越える長期のフォローアップデータでも、これまでの報告と同様に、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用療法が標準治療であることを支持し続けている」と述べた。

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心房細動の脳梗塞後、抗凝固療法開始は早いほうがよい?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動症例の脳卒中リスクは洞調律例よりも高いとされる。しかし、脳梗塞急性期の抗凝固療法では梗塞巣からの出血が心配である。DOAC時代になって、ワルファリンの時代よりも抗凝固療法に対する心理的ハードルは低下した。心房細動があり、脳梗塞を経験した症例での早期(48時間以内)と晩期(6~7日後)のDOAC療法による30日以内の脳梗塞・全身性塞栓症・大出血・症候性頭蓋内出血の発現リスクをランダムに比較した。 本研究は、実臨床を反映したシンプルな仮説検証試験である。実臨床の中で、シンプルな仮説検証を繰り返しながら医療の質をシステム的に改善するアプローチとして価値のある研究である。 本研究はSwiss National Science Foundationなどによる助成研究である。日本でも公的資金により、CROなどを使用せずに、シンプルに仮説検証研究を安価に施行できるようになるとよいと思う。

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英語で「今日はどうされましたか」は?【1分★医療英語】第85回

第85回 英語で「今日はどうされましたか」は?How can I help you today?(今日はどうされましたか?)I have a chest pain.(胸が痛いです)《類似表現》What brings you here today?What can I do for you today?(今日はどうされましたか?)《解説》問診では、日本語では「今日はどうされましたか?」というオープンクエスチョンで始める場合が多いと思いますが、意外と英語で言うのは難しいかもしれません。親しい間柄の人に「どうしたの?」と聞く場合は、“What happened?”、“What is the problem?”、“What’s the matter with you?”といったフレーズがよく知られていますが、これらは「何があったの?」といったニュアンスの砕けた表現であり、医師と患者さんの会話で使うのは避けるべきです。また“Why are you here today?”(なぜあなたはここにいるのですか?)という表現も、間接的に「来るべきではなかった」という意味になってしまうためNGです。その代わりに、“How can I help you today?”、“How may I help you today?”といった表現や、類似表現として挙げたような、“What brings you here today?”、“What can I do for you today?”という表現を使うことによって、スムーズに問診をスタートさせることができるでしょう。講師紹介

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わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」【下平博士のDIノート】第123回

わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」今回は、原発性手掌多汗症治療薬「オキシブチニン塩酸塩ローション(商品名:アポハイドローション20%、製造販売元:久光)」を紹介します。本剤はわが国初の原発性手掌多汗症の適応を有する治療薬であり、いわゆる「手汗」を抑制することで、QOLの向上や労働生産性の改善が期待されています。<効能・効果>原発性手掌多汗症の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、6月1日より発売されています。本剤は抗コリン作用を有するため、閉塞隅角緑内障の患者、前立腺肥大など排尿障害のある患者、重篤な心疾患のある患者、腸閉塞または麻痺性イレウスのある患者、重症筋無力症の患者は禁忌となっています。<用法・用量>1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布します。1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分が目安です。本剤は可燃性であるため、保存および使用の際には火気を避けます。<安全性>第III相比較試験において、下記の副作用が認められました。1~5%未満適用部位皮膚炎、適用部位そう痒感、適用部位湿疹、皮脂欠乏症、口渇0.1~1%未満適用部位紅斑、皮膚剥脱、口角口唇炎、尿中ブドウ糖陽性なお、重大な副作用として、血小板減少、麻痺性イレウス、尿閉(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、手のひらの皮膚から吸収され、エクリン汗腺の受容体をブロックすることで、発汗を抑えます。2.1日1回、就寝前にポンプ5押し分を目安として、両手の手のひら全体に塗布してください。3.起床後、手を洗うまでの間は、眼や塗布部位以外に触れないようにしてください。もし塗布時に眼に入った場合は、刺激や散瞳作用があるため、直ちに水で洗い流してください。4.眼の調節障害やめまい、眠気が現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作を行う際には注意してください。5.消化管運動が低下する恐れがあるので、消化器症状が現れた場合は使用を中止し、医療機関を受診してください。6.妊婦または妊娠している可能性のある人は医師に相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、わが国初の原発性手掌多汗症に適応を有する薬剤です。原発性局所多汗症は、頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に温熱や精神的負荷の有無に関わらず、日常生活に支障を来すほどの大量の発汗が生じる状態で、そのうち手掌部に発現するものが原発性手掌多汗症です。国内における原発性手掌多汗症の有病率は5.33%で、学習効率や労働生産性の低下、精神的苦痛、対人関係への悪影響など、患者のQOLが低下することがあります。「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」において、原発性手掌多汗症に対する第1選択の治療法は、20%~50%塩化アルミニウム外用療法および水道水イオントフォレーシス療法とされています。しかし、塩化アルミニウム外用薬は保険適用外であり、イオントフォレーシスは患者自身による機器購入または機器を有する医療機関への通院が必要です。本剤の有効成分であるオキシブチニン塩酸塩は、エクリン汗腺に発現するムスカリンM3受容体に対して抗コリン作用を有することにより、抑汗作用を示します。本剤の代謝物であるN-デスエチルオキシブチニン(N-Desethyloxybutynin:DEO)も臨床効果に関与することが示唆されています。なお、オキシブチニン塩酸塩は、頻尿治療薬のポラキスやネオキシテープと同じ成分です。12歳以上の原発性手掌多汗症患者284例を対象にした国内第III相比較試験において、投与4週後に発汗量が50%以上改善した患者の割合は、プラセボ群と比較して本剤群で有意に高いことが認められました。本剤塗布から手を洗うまでの行動制限を可能な限り少なくするため、日中の塗布を避け、1日1回就寝前に塗布します。万一、塗布時に眼に入った場合は、散瞳作用および眼刺激性があることから、直ちに水で洗い流します。また、発汗を抑制するため、気温や湿度が高い場所や運動時などでも汗が出ず、体温が上がる恐れがあるため、熱中症対策も指導しましょう。なお、なお、1回の塗布量のポンプ5押し分は約0.5mLに相当し、最初の空打ち分を差し引くと、1本で約7日分に相当します。手掌多汗症の患者のQOL低下はアトピー性皮膚炎やざ瘡よりも大きいという報告もあります。保険適用の治療選択肢が増えることは朗報です。関連サイトHamm H, et al. Dermatology. 2006;212:343-353.

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第168回 かつてのプラセボがいまや米国承認の勃起不全治療製品

かつてのプラセボがいまや米国承認の勃起不全治療製品英国の製薬会社Futura Medical社が開発した処方箋不要の勃起不全治療外用ジェル(商品名:Eroxon)の店頭販売が米国で承認されました1,2)。かつて同社は同社独自の経皮粘液(ジェル)DermaSysの一種(以下「DermaSys」)に血管拡張成分として知られるニトログリセリンを混ぜた塗り薬を開発していました。その開発品名はMED2005で、先々週の火曜日9日に承認されたEroxonの中身は本命だったMED2005ではなく、意外にもその単なる下地にすぎなかったDermaSysのほうです。ニトログリセリンを含まないDermaSysはFM57という名称の第III相試験でプラセボの役割を担いました。その試験結果は2019年12月に発表され、どういうわけかDermaSysはニトログリセリン入りのMED2005と同様の勃起機能改善効果を示しました。MED2005高用量投与群は元に比べて23.27%多い被験者が性交の間勃起を保つことができ、DermaSys投与群のその割合もほぼ同じで23.16%でした3)。というわけで残念なことにMED2005はDermaSysを上回る効果は認められませんでした。しかしDermaSys投与群のどの重症度の患者も勃起不全が元に比べて改善したことにFutura Medical社は勇気づけられ、新たな第III相試験に踏み切ります。米国FDA了承の計画に沿って実施された新たな第III相試験でDermaSysは幸いにもFutura Medical社の期待に見事に応え、勃起不全の有意な改善をもたらしました4)。被験者数96例の同試験で対照薬として使われた飲み薬(タダラフィル錠)に比べて効果の発現は早く、今やEroxonという商品名を冠するDermaSysは塗ってから10分以内に勃起を感じ取れるようになることが示されました。タダラフィル錠にその効果はありませんでした。試験の成功を受け、ニトログリセリンを含まないEroxonは医薬品ではなく事前の予定どおり医療機器の扱いで承認されました。主な成分は水とエタノール(アルコール)であり、処方箋不要で店頭で購入できます。勃起不全を患う22歳以上の成人男性が使えます。Eroxonを塗った部分はその揮発性成分(エタノールと水)の蒸発によって冷え、続いてゆっくりと温まります。その冷温反応が亀頭の神経末端を刺激することでペニスを膨らませ、性交に必要な固さの勃起を達成して維持できるようにします2,5)。米国でタダラフィルやシルデナフィルなどの経口薬(PDE5阻害薬)は医師の処方が必要で、たいていは事に及ぶ少なくとも30分前に服用する必要があります。一方、Eroxonは塗ってから10分以内に勃起できるようにします。Eroxonは米国に先立って欧州全域ですでに承認されており、ベルギーと英国で販売されています。Eroxonのホームページによると同剤使用者の約65%が勃起を維持して性交をやりおおせるようです6)。参考1)US FDA Grants for Over-the-Counter Marketing Authorization to Futura for Fast-Acting Topical Gel, MED3000, to Treat Erectile Dysfunction / BusinessWire 2)FDA Roundup: June 13, 2023 / PRNewswire3)Futura Announces Top-Line Results from MED2005 Phase 3 study in Erectile Dysfunction / GlobeNewswire4)Highly positive FM71 Phase 3 study results with all primary and secondary endpoints achieved, MED3000 remains on track to submit for FDA marketing authorization / BusinessWire5)Eroxon Product Leaflet6)Eroxonのホームページ

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不眠症の第一選択薬~日本の専門家コンセンサス

 睡眠障害の治療に関する臨床的疑問(クリニカル・クエスチョン)に対し、明確なエビデンスは不足している。琉球大学の高江洲 義和氏らは、1)臨床状況に応じた薬物療法と非薬物療法の使い分け、2)ベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量または中止に対する代替の薬物療法および非薬物療法、これら2つの臨床的疑問に対する専門家の意見を評価した。その結果、専門家コンセンサスとして、不眠症治療の多くの臨床状況において、オレキシン受容体拮抗薬と睡眠衛生教育を第一選択とする治療が推奨された。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月9日号の報告。不眠症の第一選択薬、入眠障害に対するレンボレキサントなどを推奨 睡眠障害の専門家196人を対象に、不眠症に関する10項目の臨床的疑問に基づいた、治療法を選択するアンケート調査を実施した(9段階リッカート尺度:1[反対]~9[同意])。回答は、推奨事項に応じて第一選択、第二選択、第三選択に分類した。 主な結果は以下のとおり。・主な不眠症薬物療法の第一選択薬では、入眠障害に対するレンボレキサント(7.3±2.0)、中途覚醒に対するレンボレキサント(7.3±1.8)およびスボレキサント(6.8±1.8)が推奨された。・主な非薬物療法では、睡眠衛生教育が入眠障害(8.4±1.1)および中途覚醒(8.1±1.5)の第一選択、多要素認知行動療法が入眠障害(5.6±2.3)および中途覚醒(5.7±2.4)の第二選択として推奨された。・他剤切り替えによるベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量または中止では、レンボレキサント(7.5±1.8)およびスボレキサント(6.9±1.9)が第一選択薬として推奨された。

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進行腎細胞がん、免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か/Lancet

 免疫チェックポイント阻害薬の投与中または投与後に病勢が進行した腎細胞がん患者の治療において、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブの併用療法はカボザンチニブ単独療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善せず、重篤な有害事象が増加したことが、米国・シティ・オブ・ホープ総合がんセンターのSumanta Kumar Pal氏らが実施した「CONTACT-03試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年6月5日号に掲載された。15ヵ国の無作為化第III相試験 CONTACT-03試験は日本を含む15ヵ国135施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2020年7月~2021年12月に患者のスクリーニングが行われた(F Hoffmann-La RocheとExelixisの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、全身状態が良好(Karnofsky performance statusスコア70%以上)で、組織学的に局所進行または転移性腎細胞がんと確定され、1次または2次治療において免疫チェックポイント阻害薬の投与中または投与後に画像上で病勢の進行が認められた患者であった。 被験者は、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと、静脈内投与)+カボザンチニブ(60mg、1日1回、経口投与)の投与を受ける群(併用群)、またはカボザンチニブ単独の投与を受ける群(単独群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、PFS(盲検下に独立の中央判定による)およびOSの2つで、intention-to-treat解析が行われた。奏効率は同じ、奏効期間は2ヵ月短い 522例が登録され、併用群に263例(年齢中央値62歳、女性22%)、単独群に259例(63歳、24%)が割り付けられた。追跡期間中央値は15.2ヵ月だった。前治療で投与された免疫チェックポイント阻害薬は、1次治療ではイピリムマブ+ニボルマブ(併用群31%、単独群27%)、2次治療ではニボルマブ単独(それぞれ87%、93%)が使用されていた。 PFS中央値は、併用群10.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.8~12.3)、単独群10.8ヵ月(10.0~12.5)であり、両群間に有意な差は認められなかった(増悪または死亡のハザード比[HR]:1.03、95%CI:0.83~1.28、p=0.78)。また、OS中央値は、併用群25.7ヵ月(21.5~評価不能)、単独群は評価不能(21.1~評価不能)であり、両群間に有意差はみられなかった(死亡のHR:0.94、95%CI:0.70~1.27、p=0.69)。 客観的奏効(中央判定)は、併用群105例(41%)、単独群104例(41%)で得られた。奏効期間中央値は、それぞれ12.7ヵ月、14.8ヵ月だった。 頻度の高い有害事象として、両群とも下痢(併用群171例[65%]、単独群181例[71%])、手掌・足底発赤知覚不全症候群(101例[39%]、105例[41%])、食欲減退(100例[38%]、97例[38%])がみられた。 重篤な有害事象は、併用群の262例中126例(48%)、単独群の256例中84例(33%)で発現した。試験薬の投与中止の原因となった有害事象はそれぞれ41例(16%)、10例(4%)、減量/中断の原因となった有害事象は240例(92%)、223例(87%)、死亡の原因となった有害事象は17例(6%)、9例(4%)で認められた。 著者は、「これらの結果は、臨床試験以外では、腎細胞がん患者においては免疫チェックポイント阻害薬の逐次的な使用を控えるべきであることを示唆する。また、免疫チェックポイント阻害薬の再投与があらゆるがん種で標準治療とならないうちに、前向き臨床試験で評価することの重要性を強調するものである」としている。

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