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ドライアイス中毒にご注意を【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第239回

ドライアイス中毒にご注意をillust ACより使用ドライアイスは昇華すると二酸化炭素が発生します。通常のモクモクとした煙ではそこまで量が多くないのですが、たとえば熱湯などをかけると大量の二酸化炭素が発生し、致死的な二酸化炭素中毒に至ることが知られています。今日はドライアイス中毒の2例を紹介しましょう。Gonzales L, et al. Dry ice (solid carbon dioxide) exposure with disastrous consequences. QJM. 2017 Nov 1;110(11):757-758.息切れやふらつきを訴えた62歳の女性が、「心臓が原因じゃないか」ということで受診しました。症状が起きたシーンから原因は明白でした。密閉していない容器にドライアイスを入れて、アイスクリームを輸送するために車を運転していたのです。エアコンをつけて、窓を閉め切っていました。運転中に意識もうろうとなり、30分後に横転した車の外で目が覚めたそうです。びっくりしますよね、起きたら車が横転しているんですから。救助者が車の窓ガラスを割って彼女を車から救出した直後に彼女は目を覚ましたそうです。Righi FA, et al. Suicide by Gaseous Displacement of Atmospheric Oxygen With Carbon Dioxide From Dry Ice Sublimation. Am J Forensic Med Pathol. 2022 Dec 1;43(4):369-371.次は死亡例です。とくに病歴のない38歳の男性が、浴室内で死亡しているのが発見されました。内側から毛布とタオルがドアの下に押し込まれており、何らかの中毒と思われましたが、すでにその原因物質は消えていました。死亡者の携帯電話を調べたところ、二酸化炭素やドライアイスを使った窒息に関する検索履歴が見つかりました。また、日記には大量のドライアイスを使った自殺計画について記載されていました。浴槽に大量のドライアイスを入れることで二酸化炭素中毒から窒息に至り、自殺を完遂したと結論付けられました。ちなみに、自殺例はこのほかにも報告があります1)。大気中の二酸化炭素濃度は世界平均で約0.04%です。二酸化炭素濃度は2~5%で頭痛、めまい、呼吸困難などを生じ、6~10%で頻脈、頻呼吸、11~17%で意識消失、17%以上で昏睡や死亡に至ります2)。皆さんも浴室で子供とドライアイスで遊ぶ場合には、ご注意を。1)Rupp WR, et al. Suicide by carbon dioxide. Forensic Sci Int. 2013 Sep 10;231(1-3):e30-e32.2)Langford NJ. Carbon dioxide poisoning. Toxicol Rev. 2005;24:229−235.

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小児の急性副鼻腔炎、鼻汁の色で判断せず細菌検査を/JAMA

 急性副鼻腔炎の小児において、鼻咽頭から細菌が検出されなかった患児は検出された患児に比べ抗菌薬による治療効果が有意に低く、その有意差を鼻汁の色では認められなかったことが、米国・ピッツバーグ大学のNader Shaikh氏らによる多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験で示された。急性副鼻腔炎とウイルス性上気道感染症の症状の大半は見分けることができない。そのため小児の中には、急性副鼻腔炎と診断されて抗菌薬による治療を受けても有益性がない集団が存在することが示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「診察時に特異的な細菌検査をすることが、急性副鼻腔炎の小児における抗菌薬の不適切使用を減らす戦略となりうる」とまとめている。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。急性副鼻腔炎の持続・増悪患児約500例を、抗菌薬群とプラセボ群に無作為化 研究グループは2016年2月~2022年4月に、米国の6機関に付属するプライマリケア診療所において、米国小児科学会の臨床診療ガイドラインに基づいて急性副鼻腔炎と診断された2~11歳の小児で、急性副鼻腔炎が持続または増悪している症例515例を、アモキシシリン(90mg/kg/日)+クラブラン酸(6.4mg/kg/日)投与群(抗菌薬群)またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、1日2回10日間経口投与した。 割り付けは、鼻汁の色の有無(黄色または緑色と透明)によって層別化した。また、試験開始前および試験終了時の来院時に鼻咽頭スワブを採取し、肺炎球菌、インフルエンザ菌およびモラクセラ・カタラーリスの同定を行った。 主要アウトカムは、適格患者(症状日誌の記入が1日以上あり)における診断後10日間の症状負荷で、小児鼻副鼻腔炎症状スコア(Pediatric Rhinosinusitis Symptom Scale:PRSS、範囲:0~40)に基づき判定した。また、鼻咽頭スワブ培養での細菌検出の有無、ならびに鼻汁色でサブグループ解析を行うことを事前に規定した。副次アウトカムは、治療失敗、臨床的に重大な下痢を含む有害事象などとした。診断時の鼻咽頭からの細菌検出の有無で治療効果に有意差あり 無作為化後に不適格であることが判明した5例を除く510例(抗菌薬群254例、プラセボ群256例)が試験対象集団となった。患者背景は、2~5歳が64%、男児54%、白人52%、非ヒスパニック系89%であった。このうち、主要アウトカムの解析対象は、抗菌薬群246例、プラセボ群250例であった。 平均症状スコアは、抗菌薬群9.04(95%信頼区間[CI]:8.71~9.37)、プラセボ群10.60(10.27~10.93)であり、抗菌薬群が有意に低かった(群間差:-1.69、95%CI:-2.07~-1.31)。症状消失までの期間(中央値)は、抗菌薬群(7.0日)がプラセボ群(9.0日)より有意に短縮した(p=0.003)。 サブグループ解析の結果、治療効果は細菌が検出された患児(抗菌薬群173例、プラセボ群182例)と検出されなかった患児(それぞれ73例、65例)で有意差が認められた。平均症状スコアの群間差は、検出群では-1.95(95%CI:-2.40~-1.51)に対し、非検出群では-0.88(95%CI:-1.63~-0.12)であった(交互作用のp=0.02)。 一方、色あり鼻汁の患児(抗菌薬群166例、プラセボ群167例)と透明の鼻汁の患児(それぞれ80例、83例)では、平均症状スコアの群間差はそれぞれ-1.62(95%CI:-2.09~-1.16)、-1.70(95%CI:-2.38~-1.03)であり、治療効果に差はなかった(交互作用のp=0.52)。 なお、著者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により試験登録が中断され症例数が目標に達しなかったこと、重症副鼻腔炎の小児は除外されたことなどを研究の限界として挙げている。

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コロナ肺炎からの回復、アバタセプトやインフリキシマブ追加で短縮せず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する肺炎による入院患者において、アバタセプト、cenicrivirocまたはインフリキシマブはCOVID-19肺炎からの回復までの期間を短縮しなかった。米国・セントルイス・ワシントン大学のJane A. O'Halloran氏らが、米国および中南米の95病院で実施したマスタープロトコルデザインによる無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines(ACTIV)-1 Immune Modulator:ACTIV-1 IM試験」の結果を報告した。本検討は、COVID-19の予後不良の一因として免疫調節異常が示唆されていたことから実施された。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。標準治療へのアバタセプト、cenicrivirocまたはインフリキシマブ追加の有効性をプラセボと比較 研究グループは2020年10月16日~2021年12月31日に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認されてから14日以内で肺病変が認められる18歳以上の入院患者を、3つのサブスタディにおいてそれぞれアバタセプト(10mg/kg、最大1,000mg、単回投与)群またはプラセボ群、cenicriviroc(300mg負荷投与後、150mgを1日2回、28日間経口投与)群またはプラセボ群、インフリキシマブ(5mg/kg、単回投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、標準治療(レムデシビルおよび副腎皮質ステロイド)に追加して投与した。 主要アウトカムは、28日以内における回復までの期間で、8段階の順序尺度(スコアが高いほど健康状態が良好であることを示す)を用いて評価した。回復日は、順序尺度が6点以上となった初日と定義した。主な副次アウトカムは28日全死因死亡率などであった。 3つのサブスタディで無作為化された全患者1,971例の背景は、平均(±SD)年齢54.8±14.6歳、男性1,218例(61.8%)であった。いずれの追加投与も、COVID-19肺炎の回復期間は短縮せず COVID-19肺炎からの回復までの期間の中央値は、アバタセプト群vs.プラセボ群でいずれも9日(95%信頼区間[CI]:8~10)、cenicriviroc群vs.プラセボ群でどちらも8日(95%CIは8~9 vs.8~10)、インフリキシマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ8日(95%CI:7~9)vs.9日(95%CI:8~10)であり、アバタセプト、cenicrivirocおよびインフリキシマブのいずれも、プラセボと比較して有意差は認められなかった。 28日全死因死亡率は、アバタセプト群11.0% vs.プラセボ群15.1%(オッズ比[OR]:0.62、95%CI:0.41~0.94)、cenicriviroc群13.8% vs.プラセボ群11.9%(OR:1.18、95%CI:0.72~1.94)、インフリキシマブ群10.1% vs.プラセボ群14.5%(OR:0.59、95%CI:0.39~0.90)であった。 安全性は、3つのサブスタディすべてにおいて、2次感染を含め実薬とプラセボで同等であった。

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新型コロナ、2価ワクチンブースターの有効性は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種について、オミクロンBA.4/5またはBA.1変異株対応2価ワクチンによるブースター接種(4回目接種)は、1価(起源株)ワクチン3回接種と比較して、50歳以上の成人におけるCOVID-19関連入院/死亡の低下と関連していたことを、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らが報告した。また、BA.4/5対応2価ワクチンとBA.1対応2価ワクチンの直接比較では、ワクチンの有効性に有意差はなく、潜在的な違いは絶対数では非常に小さいことが示唆されたという。BMJ誌2023年7月25日号掲載の報告。北欧4ヵ国の50歳以上の成人を対象としたコホート研究 研究グループは北欧4ヵ国の住民登録、予防接種登録、患者登録などの各種データベースを用い、2020年12月27日から、解析データが入手できた直近日(デンマーク2023年4月10日、フィンランド4月7日、ノルウェー4月1日、スウェーデン2022年12月31日)までに、AZD1222(アストラゼネカ製)(プライマリ接種コースのみ)、BNT162b2(ファイザー製、1価:起源株)またはmRNA-1273(モデルナ製、1価:起源株)ワクチンを少なくとも3回(プライマリ接種コース2回、ブースター接種1回)接種した50歳(フィンランド60歳、ノルウェー65歳)以上を対象に解析した。 主要アウトカムは、COVID-19関連入院およびCOVID-19関連死である。4回目(2回目のブースター)としてオミクロンBA.4/5またはBA.1変異株対応2価ワクチン接種者と、4回目非接種者(3回接種)をマッチングさせ、それぞれKaplan-Meier推定法を用いてCOVID-19関連入院およびCOVID-19関連死の累積発生率を推定し、90日時点における相対的有効性(1-リスク比)および絶対リスク差を算出した。2価ワクチンのブースター接種者、1価ワクチン3回接種と比較して重症化が減少 4回目としてのBA.4/5対応2価ワクチン接種者は163万4,199例、BA.1対応2価ワクチン接種者は104万2,124例で、3回接種者とのマッチドペアはそれぞれ123万3,741組および93万2,846組であった。 4回目接種者は3回接種者と比較して、90日以内のCOVID-19関連入院およびCOVID-19関連死の累積発生率は非常に低かった。COVID-19関連入院に対する有効性および10万人当たりのリスク差は、BA.4/5対応2価ワクチンで67.8%(95%信頼区間[CI]:63.1~72.5)および-91.9(-152.4~-31.4)(イベント数289 vs.893件)、BA.1対応2価ワクチンで65.8%(95%CI:59.1~72.4)および-112.9(-179.6~-46.2)であった(イベント数332 vs.977件)。また、COVID-19関連死に対する有効性および10万人当たりのリスク差は、BA.4/5対応2価ワクチンで69.8%(95%CI:52.8~86.8)、-34.1(-40.1~-28.2)(イベント数93 vs.325件)、BA.1対応2価ワクチンで70.0%(95%CI:50.3~89.7)、-38.7(-65.4~-12.0)であった(イベント数86 vs.286件)。 4回目接種と3回接種の比較では、ワクチンの有効性は性別および年齢(70歳未満または70歳以上)により差はなく、ワクチン接種日から6ヵ月後まで緩やかに減少したが維持していた。 4回目接種に関してBA.4/5対応2価ワクチンをBA.1対応2価ワクチンと直接比較すると、有効性および10万人当たりのリスク差は、COVID-19関連入院(イベント数802 vs.932件)が-14.9%(95%CI:-62.3~32.4)および10.0(-14.4~34.4)、COVID-19関連死(イベント数229 vs.243件)が-40.7%(95%CI:-123.4~42.1)、8.1(-3.3~19.4)であった。この直接比較の結果は、性別および年齢(70歳未満または70歳以上)による層別化、あるいは追跡期間を6ヵ月まで延長した場合でも、同様であった。

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乾癬・湿疹の重症度、なぜ患者と医師で認識が異なるか

 乾癬や湿疹を有する患者と医師の間で、重症度の認識の違いとその要因を調べた結果、認識の不一致は46.3%に認められた。医師は視覚的な客観的尺度を重視したのに対し、患者は疾患の身体的、機能的、感情的な影響を重視したことが要因として示された。また、これらが患者のレジリエンス(回復力)、自己効力感、否定的な社会的比較と関連していること、医師は重症疾患に遭遇する頻度が高いため、軽症例を過小評価してしまう可能性も示唆された。シンガポール・National University Healthcare SystemのValencia Long氏らが患者と医師1,053組を対象とした横断研究を実施し、以上の結果が示された。著者は、「本研究により明らかになった患者と医師の認識の不一致の要因が、認識の不一致を小さくするための認知行動的介入の潜在的なターゲットになる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年7月12日号掲載の報告。 患者の重症度に関して、患者と医師で認識の不一致がみられることがある。この現象は、重症度評価の不一致(discordant severity grading:DSG)と称され、患者と医師の関係性を妨げ、フラストレーションの原因にもなる。 研究グループは、DSGに関連する認識、行動、疾患的要因を明らかにするため、定性的研究で理論モデルを導き出した。その後、構造方程式モデリング(structural equation modeling:SEM)を用いた定量的研究にて同モデルを検証した。対象患者と医師の収集は、便宜的標本抽出法を用いて2021年10月~2022年9月の期間に行った。3ヵ月以上にわたり乾癬または湿疹を有する18~99歳の患者を抽出した。データ解析は2022年10月~2023年5月に行った。 アウトカムは、患者と医師それぞれが評価した全般的重症度(NRS[numerical rating scale]:0~10、高スコアほど重症度が高い)の差で、医師の認識より患者の認識が2ポイント以上高い場合は「正の不一致」、2ポイント以上低い場合は「負の不一致」と定義した。また、SEMを用いて要因解析を行い、事前に特定した患者、医師および疾患因子と重症度の差との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者は1,053例(平均年齢43.5歳[標準偏差17.5]、男性579例[55.0%])。湿疹が802例(76.2%)、乾癬が251例(23.8%)であった。・解析に含まれた医師は44例(男性20例[45.5%]、31~40歳が24例[54.5%]、シニアレジデントもしくはフェローが20例、コンサルタントまたは主治医が14例)で、医師1人当たりの患者数中央値は5例(四分位範囲:2~18)であった。・患者と医師のペア1,053組のうち、487組(46.3%)で不一致が認められた(正の不一致447組[42.4%]、負の不一致40組[3.8%])。・患者と医師の評価の一致は不良であった(級内相関係数[ICC]:0.27)。・SEMを用いた要因解析により、正の不一致は、症状発現の大きさ(標準偏回帰係数β=0.12、p=0.02)、QOL低下の大きさ(β=0.31、p<0.001)と関連していた。患者や医師の人口統計学的背景との関連は認められなかった。・QOL低下が大きいほど、回復力およびスタビリティ(安定性)の低下(β=-0.23、p<0.001)、否定的な社会的比較の増大(β=0.45、p<0.001)、自己効力感の低下(β=-0.11、p=0.02)、疾患の周期性の増大(β=0.47、p<0.001)、慢性化の見込みの増大(β=0.18、p<0.001)との関連が認められた。・モデルの適合度は良好であった(Tucker-Lewis:0.94、Root Mean Square Error of Approximation[RMSEA]:0.034)。

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地域枠出身の研修医の臨床能力は低いのか

 医師の偏在を解消するために医学部で地域枠の導入が進んでいる。2021年度には入学者全体の18.7%が地域枠学生となっている。その一方で、入学試験での成績は一般枠入学者に比べ、地域枠入学者で低い傾向にあることが知られ、入学後の学習能力や臨床能力の差異について懸念が示されてきた。 これら懸念事項について福井 翔氏(杏林大学 総合医療学)、西崎 祐史氏(順天堂大学 医学教育研究室)、徳田 安春氏(群星沖縄臨床研修センター)らの研究チームは、日本全国の臨床研修医(postgraduate year[PGY]-1およびPGY-2)を対象に実施した基本的臨床能力評価試験(GM-ITE:General Medicine In-Training Examination)の結果と、研修教育環境に関するアンケート結果を用いて、地域枠卒業生のGM-ITEスコアの特徴を調査した。約6,000人の研修医の臨床能力研究からわかったこと 本研究は2020年度のGM-ITE試験に参加した全国593施設から6,097人を対象とした横断研究。内訳は地域枠卒業生(1,119人)と一般枠卒業生(4,978人)。 結果は以下のとおり。・ 地域枠卒業生と一般枠卒業生のGM-ITEスコアの平均値(標準偏差)は、それぞれ29.4(5.2)点、29.0(5.4)点と地域枠卒業生のほうがわずかに高かった。・学習時間や常時受け持ち入院患者数、病院の基本情報などの研修環境因子で調整したマルチレベル分析を実施した結果、地域枠卒業生とGM-ITEスコアとの間に有意な関連は認められなかった(β係数[95%信頼区間]:0.20[-0.16~0.56];p=0.27)。・地域枠出身者か否かと研修医の基本的臨床能力(GM-ITEスコア)については、臨床的および統計学的に有意な差がないと結論付けられる。 これらの結果を受けて、福井氏らの研究チームは、下記のように今回の結果を分析している。 本研究は、医師国家試験の合格率が地域枠卒業生では一般枠卒業生と同等、ないしはわずかに高いという過去の研究結果に加え、臨床研修医の基本的臨床能力についても一般枠出身者と同等であることを日本全国大規模データで初めて明らかにした。この結果は地域枠入学者の学習能力および、基本的臨床能力の懸念を軽減するものであり、今後の医師育成を検討する上で重要な基礎資料と成りうる。 地域枠出身者の医学部入学時の試験点数は低い傾向であるものの、卒後臨床研修における基本的臨床能力の評価指標であるGM-ITEの結果において、地域枠出身者のスコアが一般枠出身者と比較して差がなかったことについては、いくつかの要因が寄与していることが推測できる。たとえば、奨学金サポートが医学部在籍時の学習時間の確保に繋がっている可能性、地域医療現場で求められる総合的な知識やスキルを意欲的に習得している可能性、総合的な臨床能力の開発が臨床研修の到達目標およびGM-ITEの評価項目に合致している可能性などが挙げられる。また、大学入学時の地域枠選抜では、学科の試験結果のみならず、高校での評定、面接、小論文などが重視され評価されることが多いため、医師を志す上で大切なコミュニケーション能力、共感力、モチベーションなどの学力だけでは評価できない重要な資質が備わった人材が選定されている可能性がある。このような大学入学時の選抜方法の違いが医学部入学後や臨床研修における学習態度に好影響を与えている可能性も考えられる。 そして、本研究の課題として「あくまでGM-ITEスコアに基づいた臨床能力と地域枠出身者の関連を検討した研究であり、いくつかの限界点がある。たとえば、地域枠制度の詳細な内容(奨学金や診療科制限など)についてのデータは収集しておらず評価できていない点、医学部卒業時点での医学知識や臨床能力のベースラインを測定していないため、臨床能力の変化について着目した解析が実施できていない点」などを挙げている。

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摂食障害の薬物療法に関するWFSBPガイドライン2023

 摂食障害の薬物療法に関する世界生物学的精神医学会連合(WFSBP)のガイドライン2023では、診断および精神薬理学的進歩、エビデンスレベル、推奨度などの評価に関して、最新の推奨内容に更新されている。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのHubertus Himmerich氏らは、本ガイドラインの更新内容のレビューを行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2023年4月24日号の報告。摂食障害の薬物療法に関するガイドラインで神経性過食症にトピラマート推奨 摂食障害のWFSBPタスクフォースは、関連文献をレビューし、エビデンスレベルおよび推奨度のランク付けを行った。 摂食障害の薬物療法に関するガイドラインの更新内容のレビューを行った主な結果は以下のとおり。・神経性やせ症に関しては、利用可能なエビデンスが体重増加に限定されており、精神病理に対するオランザピンの影響もあまり明確ではないことから、オランザピンに対する推奨度は限定的であった。 【神経性やせ症】オランザピン(エビデンスレベル:A、推奨度:2)・神経性過食症に関しては、現在のエビデンスにおいてfluoxetineおよびトピラマートが推奨された。 【神経性過食症】fluoxetine(エビデンスレベル:A、推奨度:1) 【神経性過食症】トピラマート(エビデンスレベル:A、推奨度:1)・過食性障害に関しては、リスデキサンフェタミンおよびトピラマートが推奨された。 【過食性障害】リスデキサンフェタミン(エビデンスレベル:A、推奨度:1) 【過食性障害】トピラマート(エビデンスレベル:A、推奨度:1)・回避・制限性食物摂取症(ARFID)、異食症、反芻症/反芻性障害に対する薬物療法のエビデンスは、非常に限られていた。・オランザピンやトピラマートは、これらのエビデンスがあるにもかかわらず、摂食障害での使用に関していずれの医薬品規制当局からも承認を取得していない。

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未治療の早期NSCLC、定位放射線+ニボルマブが有効/Lancet

 未治療の早期非小細胞肺がん(NSCLC)およびリンパ節転移陰性の孤立性肺実質再発NSCLC患者の治療において、定位放射線治療(SABR)+ニボルマブの併用(I-SABR)はSABR単独と比較して、4年無イベント生存率が有意に優れ、毒性は忍容可能であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJoe Y. Chang氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号に掲載された。テキサス州3病院の無作為化第II相試験 本研究は、米国テキサス州の3つの病院で実施された非盲検無作為化第II相試験であり、2017年6月~2022年3月の期間に参加者の無作為化が行われた(Bristol-Myers SquibbとMDアンダーソンがんセンターの提携機関などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の早期NSCLC(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版の病期分類でStageI~II[N0M0])、または孤立性の肺実質再発NSCLC(根治手術または化学放射線療法の施行前にTanyNanyM0)で、全身状態が良好(ECOG PSスコア0~2)な患者であった。 被験者を、I-SABRまたはSABRを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。I-SABR群では、ニボルマブ(480mg)を4週ごとに静脈内投与した。 主要評価項目は、4年無イベント生存率であった。イベントは、局所、領域、遠隔での再発、2次原発性肺がん、死亡とされた。PP集団とITT集団の双方で良好な結果 無作為化の対象となったのは156例(intention-to-treat[ITT]集団)で、割り付けた治療を実際に受けたのは141例(per-protocol[PP]集団)であった。PP集団では66例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:66~75]、女性70%)がI-SABR群、75例(年齢中央値72歳[IQR:66~78]、女性55%)がSABR群だった。 フォローアップ期間中央値33ヵ月の時点でのPP集団における4年無イベント生存率は、SABR群が53%(95%信頼区間[CI]:42~67)であったのに対し、I-SABR群は77%(66~91)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.38、95%CI:0.19~0.75、p=0.0056)。また、ITT集団でも同様の結果が示された(HR:0.42、95%CI:0.22~0.80、p=0.0080)。 SABR群では、Grade2の有害事象を3例(4%)に認めたのみで、Grade3以上の有害事象は発現しなかった。一方、I-SABR群では、10例(15%)でニボルマブに関連するGrade3の免疫関連有害事象(疲労2例、甲状腺機能亢進症1例など)を認めたが、Grade3の肺臓炎はなく、Grade4以上の毒性の発現もなかった。 著者は、「SABRへの免疫療法の追加により、治療歴のない早期NSCLCおよび孤立性肺実質再発NSCLC患者の転帰が改善することが示唆され、I-SABRはこれらの患者における治療選択肢となる可能性がある。本試験の結果は、現在進行中の第III相試験の重要な先例となるだろう」としている。

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英語で「ケースバイケース」は?【1分★医療英語】第91回

第91回 英語で「ケースバイケース」は?Do you think we should use this new mediation as our standard of care?(この新薬を私たちの標準治療として使うべきだと思いますか?)I think it depends. It seems to have some side effects too.(それはケースバイケースである[時と場合による]と思います。副作用もあるようですから)I agree. We should use it on a case-by-case basis.(同感です。それはケースバイケース[臨機応変に、個別対応]で使うほうがよいと思います)《例文》The side effects may vary from case to case.(副作用は症例ごとに異なります)《解説》日本語における「ケースバイケース」という表現には、多少意味が異なる2種類の使用方法があると思います。会話例の2番目の医師は、「質問に対する明確な単一の答えがないとき」の返答として「(物事の判断は)時と場合による」という意味で、「ケースバイケース」を動詞的に使っています。この意味を自然に英語にすると、“it depends (on something)”となります。一方で、3番目の医師は「ケースバイケース」を「臨機応変に[使う]」と副詞的に使っており、この場合は英語でもそのまま同じ表現で“on a case-by-case basis”となります。英語で“case-by-case”と表現する場合は、この慣用句としての副詞的な使い方が圧倒的に多いのです。類似表現として、《例文》のように“case to case”という言い方もできます。講師紹介

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第174回 アルツハイマー病治療に役立ちうる変異タウ除去タンパク質TRIM11を同定

アルツハイマー病治療に役立ちうる変異タウ除去タンパク質TRIM11を同定微小管結合タンパク質タウを含有する細胞内の繊維状の塊を特徴とするアルツハイマー病やそのほか20を超える認知症や運動疾患はひっくるめてタウ病と呼ばれます。ゆらゆら浮かぶ独り身の単量体タウが繊維状の塊を形成する仕組みはこれまで謎でした。その謎を解き明かすべく、「TRIM」というタンパク質ひとそろいとタウ病のつながりが調べられました。TRIMは多すぎたり傷んだりして邪魔なタンパク質の除去、タンパク質の折り畳みの逸脱や凝集の予防、すでに凝集してしまったタンパク質の解散にどうやら携わることが知られています。70を超えるヒトのTRIMの解析のかいがあり、病気と関連するタウ変異体の凝集を阻止する3種類のTRIMが突き止められました1)。それら3種類の1つであるTRIM11の変異タウ除去作用はとりわけ強力でした。死後脳組織を調べた結果、アルツハイマー病患者23例のTRIM11はそうでない対照群14例に比べてだいぶ減っていました。ほかの2つのTRIM(TRIM10とTRIM55)はアルツハイマー病患者群と対照群の死後脳で大差ありませんでした。そうであるならTRIM11を増やすことでアルツハイマー病やそのほかのタウ病を治療できるかもしれません。どうやらその可能性はあるようで、タウ病を模したマウスにTRIM1遺伝子を導入して脳でのその発現を増やしたところタウ病変や神経炎症が抑制され、認知機能や身のこなしが改善しました。TRIM11の特徴からしてその発現を経口摂取可能な低分子薬で底上げすることは可能なようです。TRIM11が乏しくなることはタウ病に一枚かんでいるようであり、低分子薬などでのTRIM11発現回復は効果的な治療手段となりうると著者は言っています2)。筋肉増強サプリメントでアルツハイマー病治療TRIM11の発現を増やす経口薬の実現はまだまだ時間がかかりそうですが、筋肉美を追求するボディビルダーが筋肉増強のために常用することで知られる経口サプリメントにアルツハイマー病治療効果があるかもしれません。β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)は運動で筋肉量を増やしたり筋力を高めるのを助けたり運動能力を改善するためにボディビルダーや運動選手(アスリート)が常用するサプリメントとして知られています。HMBはおよそ無害で、たとえ長期間服用しても副作用もありません。Cellの姉妹誌Cell Reportsに今月中頃に発表された細胞やマウスでの研究の結果、HMBは脂肪酸代謝に寄与する核内受容体PPARαを活性化することで脳の海馬の機能を向上するとわかりました3)。また、HMBは脳のアミロイド病変を減らし、アルツハイマー病マウスの記憶や学習を改善しました。PPARαを欠如している海馬神経やマウスではHMBの有益効果は認められず、HMBはPPARαを介した仕組みで神経保護作用をもたらすようです。HMB補給をボディビルダーやアスリートだけのものとするのはもったいない話かもしれません。HMBはアルツハイマー病患者の記憶を守り、病気の進行を食い止める最も安全で手軽な手段となりうると研究者は言っています4)。参考1)Zhang ZY, et al. Science. 2023;381:eadd6696.2)Tau-regulating protein identified as a promising target for developing Alzheimer’s disease treatment / Eurekalert3)Paidi RK, et al. Cell Rep. 2023;42:112717.4)Bodybuilding supplement may help stave off Alzheimer’s / Eurekalert

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コロナの急性期症状、男女差は?

 男性のほうが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状が重症化しやすく死亡率が高いという、性別による差異が報告されている。その理由として、男性のほうが喫煙率や飲酒率、予後悪化に関連する併存疾患を有している割合が高いなどの健康格差が示唆されている1)。今回、COVID-19の急性期症状の性差を調査したところ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性と判定された男性では発熱や悪寒といった特定の症状の発現率が女性よりも高いことが、米国・テキサス大学ヒューストン健康科学センターのJenil R. Patel氏らにより明らかになった。Preventive Medicine Reports誌2023年10月号掲載の報告。 対象は、アーカンソー医科大学でRT-PCR検査を受けた成人であった。パンデミック当初はCOVID-19関連の症状を有する人や濃厚接触者が検査対象であったが、その後、症状や曝露の有無にかかわらずすべての希望者に拡大した。COVID-19関連の症状(発熱、咳、息切れ、咽頭痛、悪寒、筋肉痛、頭痛、味覚・嗅覚障害)は、検査時、7日後、14日後に聴取した。症状の発現率の性差はχ2検定を用いて評価し、男女別の有病率比および95%信頼区間(CI)はロバスト分散を使用したポアソン回帰モデルを用いて推定した。今回の報告は、2020年3月29日~10月7日に聴取したデータの解析であった。 主な結果は以下のとおり。・2020年10月7日時点で、6万648例の地域住民と患者がRT-PCR検査を受けた。・SARS-CoV-2陽性者のうち86.3%が18~64歳、53.7%が女性であった。検査時に有していたCOVID-19関連の症状は、咳(28.1%)、頭痛(20.7%)、発熱(19.7%)、咽頭痛(16.0%)、筋肉痛(15.8%)、悪寒(13.7%)、味覚・嗅覚障害(12.4%)、息切れ(11.5%)であった。・陽性および陰性を含む解析対象者全員の症状は、検査時では悪寒を除くすべてが女性で有意に多かった。7日後では発現率は下がるものの、悪寒も含めて女性で有意に多いままであった。14日後にはほぼすべての症状は男女差なく減少したが、咳(p=0.02)は女性で有意に多かった。・陽性の集団では、男性のほうが発熱(男性22.6% vs.女性17.1%、p<0.001)と悪寒(14.9% vs.12.6%、p=0.04)が有意に多く、そのほかの症状は男女による差はなかった。・陰性の集団では、女性のほうが男性よりもすべての症状が有意に多かった。・検査時の男女別有病率比は、男性では発熱1.32(95%CI:1.15~1.51)および悪寒1.19(95%CI:1.01~1.39)と高かった。7日後では男性のほうが症状を有する割合が低い傾向にあったが、咽頭痛(0.49[95%CI:0.24~1.01])と筋肉痛(0.67[95%CI:0.41~1.09])以外は統計学的に有意ではなかった。14日後では、男女間で有意差は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「SARS-CoV-2陽性と判定された男性では、検査時における発熱や悪寒といった特定の症状の発現率が女性と比較して高かった。これらの違いは、COVID-19パンデミック時に急速に顕在化した健康格差という重要な問題を明らかにするものである」とまとめた。

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双極性障害の5年間の再発率とそれに関連する要因~レトロスペクティブコホート研究

 双極性障害患者の再発率に関するエビデンスは、とくに英国において不足している。英国・バーミンガム大学のDanielle Hett氏らは、英国の健康保健サービスより定期的なケアを受けている双極性障害患者を対象に、5年間の再発率および関連性の評価を行った。その結果、英国で2次的メンタルヘルスサービスを受けている双極性障害患者の約4人に1人は、5年間で再発を経験していた。トラウマ、自殺傾向、精神症状の残存、併存疾患などは、双極性障害患者の再発と関連していることから、再発予防の観点からもこれらの因子を考慮し、対処することが求められると報告した。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月30日号の報告。 匿名化された電子健康記録を用いて、双極性障害患者を抽出した。再発の定義は、2014年6月~2019年6月における入院または急性期メンタルヘルスサービスへの紹介とした。5年間の再発率を算出し、再発経験および再発回数に対する独立した社会人口学的因子および臨床的因子の特定を試みた。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害と診断され2次的メンタルヘルスサービスを受けた患者2,649例中、676例(25.5%)が5年間に1回以上の再発を経験していた。・再発回数は、60.9%が1回のみ、残りは複数回経験していた。・5年間のフォローアップ期間中に死亡した患者は、7.2%であった。・共変量で調整後、再発経験と関連していた因子は、次のとおりであった。 ●自傷行為/自殺傾向歴(OR:2.17、95%信頼区間[CI]:1.15~4.10、p=0.02) ●併存疾患(OR:2.59、95%CI:1.35~4.97、p=0.004) ●精神症状(OR:3.66、95%CI:1.89~7.08、p<0.001)・共変量で調整後、再発回数と関連していた因子は、次のとおりであった。 ●自傷行為/自殺傾向歴(β:0.69、95%CI:0.21~1.17、p=0.005) ●外傷歴(β:0.51、95%CI:0.07~0.95、p=0.03) ●精神症状(β:1.05、95%CI:0.55~1.56、p<0.001) ●併存疾患(β:0.52、95%CI:0.07~1.03、p=0.047) ●民族性(β:-0.44、95%CI:-0.87~-0.003、p=0.048)

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NAFLD→MASLD・NASH→MASHに名称変更する理由とは…

 「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease、わが国ではナッフルディ、ナッフルドと呼ばれる)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis 、ナッシュ)が名称変更される」と、先日開催された欧州肝臓学会国際肝臓学会議(EASL-ILC)2023で発表された。以前から欧米ではNAFLDやNASHという用語が患者への偏見になるという声が上がっていたようで、今回、米国・シカゴ大学のMary E. Rinella氏らは論文などの趣意に関する専門家や患者支援者が命名法や定義の変更について支持しているか否かを調査した。その結果、改名に際し“metabolic”(代謝性)という用語を含めることが求められ、新たな名称としてNAFLDはMASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)へ、NASHはMASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)への変更が望ましいことが明らかになった。Journal of Hepatology誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。MASLDがNAFLDに代わる名前として選ばれた 調査は肝臓病に関する大きな3団体が主導し修正Delphi法を用いて行われ、命名プロセスとは関係のない専門家からなる独立委員会がこの頭字語とその診断基準に関する最終勧告を作成した。 NAFLDやNASHの名称変更について調査した主な結果は以下のとおり。・本研究では56ヵ国から236人が参加し、4つのオンライン調査と2つのハイブリッド会議にて調査が行われた。・オンライン調査の回答率は、それぞれ87%、83%、83%、78%で、回答者の74%は現在の命名法には名称変更を検討するに足るだけの多くの欠点があると感じていた。・「ノンアルコール」「太っている」という言葉は、各回答者の6割超が“非難されている”と感じていた。・Steatotic liver disease(SLD)は、脂肪肝のさまざまな病因を包含する包括的な用語として選択された。また、steatohepatitisという用語は、保持すべき重要な病態生理学的な概念であると判断された。・NAFLDに代わる名前として選ばれたのは、代謝機能不全に関連した『metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD』だった。・その際、5つの心臓代謝危険因子のうち1つ以上を含むように定義変更することで合意が得られた。・代謝異常がなく原因不明の患者は成因不明SLDとみなすこととなった。純粋なMASLD以外で1週間あたりのアルコール摂取量が多い(女性:140~350g/週、男性:210~420g/週)場合は『MetALD』(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)と呼ぶよう、新たなカテゴリーが新設された。 研究者らは「新しい命名法と診断基準は広く支持され、偏見を与えるものではなく、認識と患者の識別を向上させることが可能だ」としている。 医療におけるスティグマと言えば、昨年には日本糖尿病協会が「糖尿病」の名称変更を検討する方針を示し波紋を呼んだ。当時、ケアネットが会員医師に対して名称変更の賛否についてアンケート調査した結果、6割の医師が反対票を投じた。NASH/NAFLDも糖尿病や循環器領域などの代謝系疾患の合併頻度が高いことから、さまざまな診療科で新たな用語を浸透させる必要があるだろう。この結果を受け、今後の日本での動向が気になるところである。

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難聴高齢者の補聴器、認知機能低下を予防できる集団は?/Lancet

 認知機能が正常で難聴を有する高齢者において、補聴器を用いた聴覚介入は、認知機能低下のリスクが高い集団では3年後の認知機能の低下を抑制したが、低リスクの集団ではこのような効果はない可能性があることが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のFrank R. Lin氏らが実施した「ACHIEVE(Aging and Cognitive Health Evaluation in Elders)試験」で示唆された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号で報告された。観察研究の参加者を含む米国の無作為化試験 ACHIEVE試験は、米国の4つの地域の研究施設で実施された非盲検無作為化対照比較試験であり、2017年11月~2019年10月に参加者のスクリーニングが行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 対象は、未治療の両側性難聴を有し、認知機能障害のない70~84歳の高齢者であり、進行中の縦断研究であるARIC研究(心疾患と脳卒中のリスク因子、および心血管系と認知機能の関連の解明を目的とする)の参加者と、同一の地域で新たに募集したボランティアが含まれた。 被験者は、聴覚介入(聴覚カウセリングと補聴器の提供)を受ける群、または対照として健康教育(健康教育を行う医療従事者との個別の面接で、慢性疾患の予防に関するトピックスを学習)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、6ヵ月ごとにフォローアップが行われた。 主要エンドポイントは、包括的な神経認知機能評価バッテリーを用いた、標準化された因子に関する総合認知機能スコアのベースラインから3年目までの変化量(SD単位)であった。ARICと新規コホートで効果が異なる 977例(ARICコホート238例[24%]、新規コホート739例)を登録し、介入群に490例、対照群に487例を割り付けた。全体の平均年齢は76.8(SD 4.0)歳、523例(54%)が女性、858例(88%)が白人だった。ARICコホートは新規コホートに比べ、年齢が高く、認知機能低下のリスク因子が多く、ベースラインの認知機能スコアが低かった。 ARICコホートと新規コホートを合わせた主解析では、3年間の総合認知機能スコアの変化量(SD単位)は、対照群が-0.202(95%信頼区間[CI]:-0.258~-0.145)であったのに対し、介入群は-0.200(-0.256~-0.144)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:0.002、95%CI:-0.077~0.081、p=0.96)。 一方、事前に規定された感度分析では、3年後の認知機能の変化量に関して、認知機能低下のリスクが高いARICコホートは低リスクの新規コホートに比べ、聴覚介入の効果が有意に高かった(pinteraction=0.010)。また、全コホートで使用された分析パラメータを変えた別の感度分析では、主要エンドポイントの結果に実質的な変化はなかった。 両群とも、予想外の有害事象や、この試験に起因する重大な有害事象の報告はなかった。 著者は、「認知機能低下のリスクが高い難聴の高齢者に聴覚介入を行うと、3年以内の認知機能低下を抑制できる可能性がある」とまとめ、「これらの知見を統合すると、難聴は、認知症の予防の取り組みにおいて、とくに重要な世界的な公衆衛生の対象となる可能性が示唆される」と指摘している。

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人工骨頭置換術の骨セメント、抗菌薬1剤含有vs.高用量2剤含有/Lancet

 大腿骨頸部内側骨折で人工骨頭置換術を受ける60歳以上の患者において、高用量抗菌薬2剤含有骨セメントを使用しても深部手術部位感染の発生率は減少しなかった。英国・Northumbria Healthcare NHS Foundation TrustのNickil R. Agni氏らが、同国の26施設で実施した無作為化比較試験「WHiTE 8試験」の結果を報告した。股関節骨折の人工骨頭置換術では、深部手術部位感染のリスクを減らすため抗菌薬含有骨セメントが使用されているが、最近登場した高用量抗菌薬2剤含有骨セメントの使用に関しては議論の的となっていた。Lancet誌2023年7月15日号掲載の報告。無作為化後90日以内の深部手術部位感染の発生を比較 研究グループは、人工骨頭置換術を予定している60歳以上の転位型大腿骨頸部内側骨折患者を、セメント40g当たりゲンタマイシン0.5gを含有する骨セメント群(標準治療群)と、セメント40g当たりゲンタマイシン1gおよびクリンダマイシン1gを含有する骨セメント群(高用量抗菌薬2剤含有骨セメント群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。患者および評価者は盲検化された。 120日後に患者(または主たる介護人)に電話インタビューを行うとともに、手術記録、抗菌薬の詳細、画像診断報告等を含む医療記録からアウトカムに関するデータを入手した。 主要アウトカムは、120日時点のデータ入手に同意が得られた患者集団における、無作為化後90日以内の深部手術部位感染(米国疾病予防管理センターの定義による)であった。副次アウトカムは、120日時点における死亡率、抗菌薬の使用状況、健康関連QOLなどであった。抗菌薬1剤含有と2剤含有で、有意差なし 2018年8月17日~2021年8月5日の間に、4,936例が標準治療群(2,453例)または高用量抗菌薬2剤含有骨セメント群(2,483例)に無作為に割り付けられた。追跡終了日は2022年1月2日。 無作為化後90日以内の深部手術部位感染の発生は、標準治療群では主要アウトカム解析対象の2,183例中38例(1.7%)に、高用量抗菌薬2剤含有骨セメント群では2,214例中27例(1.2%)に認められた。 補正オッズ比は1.43(95%信頼区間[CI]:0.87~2.35、p=0.16)で、両群に有意差はなかった。

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solanezumab、前臨床期アルツハイマー病の進行を遅延せず/NEJM

 前臨床期のアルツハイマー病患者において、solanezumabはプラセボと比較し、約4.5年間で認知機能低下を遅延しなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のReisa A. Sperling氏らが、米国、日本、カナダおよびオーストラリアの67施設で実施した無作為化比較試験「Anti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer's Disease:A4試験」の結果を報告した。アルツハイマー病の異なる病期において、さまざまな形態のアミロイドを標的とするモノクローナル抗体の臨床試験が行われているが、結果はまちまちである。solanezumabは、可溶性のアミロイドβ単量体を標的としていた。NEJM誌オンライン版2023年7月17日号掲載の報告。solanezumab vs.プラセボで240週後の複合的認知機能尺度(PACC)スコアを比較 研究グループは、65~85歳で、臨床的認知症尺度(CDR)の全般的スコアが0(スコア範囲:0[認知機能障害なし]~3[重度認知症])、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが25以上(スコア範囲:0~30、スコアが低いほど認知機能の低下を示す)、ウエクスラー記憶検査の論理的記憶の遅延再生(LMDR)スコアが6~18(スコア範囲:0~25、スコアが低いほど思い出される詳細が少ない)、および18F-florbetapir PETで脳内にアミロイドを認める前臨床期アルツハイマー病を有する人を登録し、solanezumab(最大1,600mgを4週ごとに静脈内投与)群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、複合的認知機能尺度であるPreclinical Alzheimer Cognitive Composite(PACC)スコア(4種の認知機能検査のzスコアの合計、スコアが高いほど認知機能が良好)の240週後の変化であった。PACCスコアの変化量に有意差なし 適格基準を満たした1,169例が、solanezumab群(578例)およびプラセボ群(591例)に無作為化された。平均年齢は72歳、女性が約60%で、75%に認知症の家族歴があった。 240週時におけるPACCスコアのベースラインからの補正後平均変化量は、solanezumab群-1.43、プラセボ群-1.13、補正後平均群間差は-0.30(95%信頼区間[CI]:-0.82~0.22、p=0.26)であった。 脳アミロイドPET画像では、アミロイドはsolanezumab群で平均11.6センチロイド、プラセボ群で19.3センチロイド増加した。 浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA)は各群とも1%未満であった。微小出血またはヘモジデリン沈着症を伴うARIAは、solanezumab群で29.2%、プラセボ群で32.8%に発現した。

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(後編)【言葉は噂をするために生まれたの!?(統語機能)】

今回のキーワード意味記憶入れ子構造(ワーキングメモリー)前後関係エピソード記憶因果関係階層関係論理性概念化皆さんは、人類が言葉を単語ではなく複雑な文章にして話すように進化したのは噂をするためだったと聞いたら、どう思いますか? にわかには信じられないですよね。前回(中編)は、噂好きの心理の起源に迫りました。その起源とは、人類が原始の時代に集団の適応度を高めるために、フリーライダー(反社会性パーソナリティ)をあぶり出すことでした。今回は、この起源と実は関係している文法(統語機能)の起源に迫ってみましょう。どうやって文法は生まれたの?実際に、人類が言葉を単語ではなく複雑な文章にして話すように進化したのは噂をするためであったという仮説があります5)。どういうことでしょうか? ここから、文法(統語機能)の起源を3つの段階に分けて迫ってみましょう。なお、この文法がわかること(統語)に、発音ができること(発語)と言葉の意味がわかること(象徴)を合わせた3つの機能によって、私たちは言葉を流暢に話すことができます。発語と象徴の詳細については、関連記事8、関連記事9をご覧ください。(1)単文をつくる約700万年前に、チンパンジーと共通の祖先から人類は分岐したわけですが、当時から、鳴き声やしぐさによるサイン言語を使うことによって、簡単な文法でコミュニケーションをしていたことが考えられます。なぜなら、チンパンジーも鳴き声やしぐさによるサイン言語を使い、とくに鳴き声については2つまたは3つを組み合わせて発することで、たとえば服従的な挨拶をするなどのコミュニケーションをすることがわかっているからです6)。1つ目の段階は、単文をつくることです。単文とは、「主語+述語」のように、述語が1つだけの文です。そのためには、サイン言語による簡単な単語の意味を覚えている必要があります。これは、意味記憶の起源です。発達心理学的には、2歳から「パン ちょうだい」「わんわん いた」などの二語文を話します。3歳から「ママ ごはん つくる」「パパ おもちゃ とって」などの三語文になります。これらは、すべて単文です。(2)複文をつくる約300万年前に人類は部族をつくったわけですが、フリーライダーのあぶり出しのために、当時から徐々に「 『タロウがバナナを盗んだ』とパパが言ってた」「『ジロウがハナコを寝取った』とヨシコが言ってた」「『湖にライオンが来てる』とママが言ってた」などの噂をサイン言語によって伝えていたことが考えられます。主語の名前程度なら、発声の言い分けや聞き分けができていた可能性も考えられます。2つ目の段階は、複文をつくることです。複文とは、文のなかに文が入り込んでいる重複した文です。日本語で「~と言う」「~と聞いた」という伝聞表現であり、いわゆる英語の「that節」に当たります。専門的には、入れ子構造(階層構造、回帰的構造)などとも呼ばれます7,8)。これは、聴覚性のワーキングメモリーの起源です。なお、この詳細については、関連記事10の後半をご覧ください。発達心理学的には、相手の視点に立てるようになる3、4歳から「きょうあめって ママいってた」「パパがつくったごはん おいしくない」などの複文を話します。なお、相手の視点に立つことができないチンパンジーは複文をつくることができません9)。つまり、チンパンジーの知能は、人間の4歳を超えられないということです。なお、厳密には、相手の視点に立つ心理(心の理論)が始まる時期は、男児が4歳であるのに対して、女児は3歳で1歳早いです。この訳は、原始の時代の当時、男性たちが一緒に狩りに出かけて動き回っている間に、女性たちは1ヵ所にとどまって一緒に子育てをしていたからでしょう。この共同育児をスムーズにするためには、類人猿の毛づくろい(グルーミング)のような心地良さ(社会的報酬)が必要です5)。体毛を失っていった人類(とくに女性)が代わりにするようになったことが、挨拶やかけ声でお互いにリズムを取ったり、一緒に子守唄を歌ったりすることだったでしょう。さらに、「誰と誰がけんかした」「誰と誰が浮気した」などの噂話だったでしょう。そのために、男性よりも女性の方が心の理論がより早く発達するようになったと考えられます。だからこそ、現代でも、男性よりも女性の方が他愛のないおしゃべりを好み、噂好きであるという訳です。(3)文脈をつくる約20万年前に現生人類は、言葉の発音(発語)が明瞭にできるようになり、ようやく発音のバリエーションによって、あらゆることに名前をつけて世界を細かく分けることができるようになりました。さらに、この名付けとすでに進化していた入れ子構造(ワーキングメモリー)によって、いくつかのものごとの前後関係を細かくつなげて説明できるようになりました。3つ目の段階は、文脈をつくることです。文脈とは、接続詞による文と文の流れ(脈)であり、「誰が・いつ・どこで・誰と・何を・どのように」のように出来事(エピソード)がまとまっていることです。これは、エピソード記憶の起源です。発達心理学的には、4歳以降に「きょう〇〇したの。それでね○○もしたの、でもね○○だったの」などのように徐々に自分のお話(エピソードトーク)をするようになっていきます。このように、だんだん時系列でものごとを順番に考えることです。これは、時間感覚の起源です。現代に生きる私たちは、これを当たり前のようにしています。しかし、約20万年前よりも以前は、その瞬間を反射的に生きているだけで、ほとんど時間感覚はなかったでしょう。実際に、幼児が同じ話の本の読み聞かせを何度もねだるのは、親として辟易するわけですが、その訳は、幼児は大人のようにエピソード記憶の機能が完全ではないため、話の前後のつながりを覚えきれないからです。つまり、何度もねだるのは、エピソード記憶の機能を鍛えていると言えます。さらに、名付け+入れ子構造(ワーキングメモリー)によって、2つのものごとの因果関係や階層関係も説明できるようになりました。たとえば、「きょう〇〇したの、だってね○○だったから」と理由を認識することです。これは、論理性の起源です。また、「おててとあんよをあわせてからだ」「○○ちゃん(自分)とママとパパといっしょでかぞく」のように、分類し体系化することです。こうして、世界の仕組みをより理解できるようになりました。これは、概念化の起源です。なお、幼児が「なんで○○なの?」と質問攻めをする「なぜなぜ期」にも辟易しますが、これも因果関係や階層関係を知ることで概念化の機能(統語機能)を鍛えていると考えれば納得がいきます。ちなみに、1、2歳頃から「これなあに?」と質問攻めをする「なになに期」があるのは、冒頭で触れた言葉の3要素の1つである象徴機能を鍛えていると言えます。以上より、単文をつくる(意味記憶)、複文をつくる(ワーキングメモリー)、そして文脈をつくる(エピソード記憶)という心(脳)の進化の歴史を踏まえると、人類は噂をするために文法(統語機能)を進化させたという仮説に納得できるのではないでしょうか。5)ことばの起源 猿の毛づくろい、人のゴシップP8、P113:ロビン・ダンバー、青土社、20166)チンパンジーが390もの構文を使って会話をしていることが鳴き声5000回の録音から示唆される:GIGAZINE、20227)ヒトの心はどう進化したのかP220:鈴木光太郎、ちくま新書、20138)ひとのことばの起源と進化P52:池内正幸、開拓社、20109)こころと言葉P48:長谷川寿一、東京大学出版会、2008■関連記事NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子どもは言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 1ペコロスの母に会いに行く【認知症】

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亜鉛補給でコロナ死亡率低下~メタ解析

 亜鉛の補給によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡リスクが有意に低下することが、米国・Patel College of Allopathic MedicineのSpencer Z. Rheingold氏らのメタ解析によって明らかになった。Cureus誌2023年6月10日号掲載の報告。 亜鉛は必須微量元素の1つで、炎症や感染症における免疫系の重要な調節因子であるとともに、直接的な抗ウイルス作用もあることが報告されている。COVID-19患者の予後を改善するために多くの研究グループが亜鉛補給に関する試験を実施しているが、その効果には議論の余地がある。そこで研究グループは、亜鉛を補給したCOVID-19患者と補給していないCOVID-19患者の死亡率と症状の関連についてメタ解析を行った。 2022年7~8月にPubMedline/Medline、Cochrane、Web of Science、CINAHL Completeを用いて、亜鉛補給とCOVID-19の関連を評価した試験を検索した。重複を除去した結果、1,215本の論文が検索され、これらの研究のうち5試験を死亡率のアウトカムの評価に、2試験を症状のアウトカムの評価に用いた。COVID-19患者の亜鉛摂取と死亡率や症状の関係を評価するために、リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。異質性はI2統計量を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・亜鉛を投与されたCOVID-19患者では、投与されなかったCOVID-19患者と比較して死亡リスクが有意に減少した(RR=0.63、95%CI:0.52~0.77、p=0.005)。・症状については、亜鉛を投与されたCOVID-19患者と、亜鉛を投与されなかった患者で差はなかった(RR=0.52、95%CI:0.00~2万4,315.42、p=0.578)。・亜鉛は広く入手可能であり、COVID-19患者の死亡リスクを低減する費用対効果の高い方法として有望な可能性がある。

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紫外線量と双極性障害リスクとの関係

 太陽光には、皮膚でのビタミンD生成を促す紫外線B(UVB)が含まれている。ビタミンDは、発育中から成人の脳機能にさまざまな影響を及ぼしている。しかし、多くの人々は、冬期にビタミンD生成を行ううえで十分なUVBを受けられない地域(北緯または南緯約40度以上)で生活を行っている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、世界の大規模サンプルを用いて、双極性障害の発症年齢とビタミンD生成に十分なUVBの閾値との関連性を調査した。その結果、UVBおよびビタミンDは、双極性障害発症に重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月22日号の報告。 北半球または南半球の41ヵ国75の収集サイトより、双極I型障害患者6,972例のデータを収集した。ビタミンD生成に十分なUVBの閾値と発症年齢との関係を評価した(閾値を1ヵ月以上下回る場合、気分障害の家族歴、出生コホートを含む)。すべての係数は、p≦0.001で推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、70ヵ国582の地域で双極性障害を発症していた(平均発症年齢:25.6歳)。・ビタミンD生成に十分なUVBの閾値を1ヵ月以上下回っていた患者の割合は、34.0%であった。・UVBの閾値を1ヵ月以上下回っている地域の双極性障害患者は、発症年齢が1.66歳若かった。・本研究の限界として、患者のビタミンDレベル 、ライフスタイル、サプリメント使用に関するデータが欠如していた点が挙げられる。・双極性障害におけるUVBとビタミンDの影響については、さらなる研究が求められる。

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MIND食は認知症を予防せず/NEJM

 認知症の家族歴のある認知機能障害のない高齢者において、ベースラインから3年までの認知機能および脳MRIの変化は、MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)摂取群と軽度カロリー制限を伴う対照食摂取群で有意な差はなかった。米国・ラッシュ大学医療センターのLisa L. Barnes氏らが、米国国立老化研究所の助成を受けて実施した無作為化比較試験の結果を報告した。MIND食は、地中海食とDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧を防ぐ食事法)を混成(hybrid)させたもので、認知症リスク低下との関連が推定される食品を含むよう修正されている。観察研究から得られた知見では、食事パターンが認知機能低下の予防に効果がある可能性が示唆されているが、臨床試験のデータには限りがあった。NEJM誌オンライン版2023年7月18日号掲載の報告。3年後の認知機能と脳画像アウトカムを比較 研究グループは2017年1月~2018年4月に、シカゴおよびボストンの2施設において、アルツハイマー型認知症の家族歴があり、モントリオール認知機能検査(範囲:0~30、低いほど認知機能が低下していることを示す)のスコアが22以上、BMI値が25以上、MIND食スコア(研究者によって考案され脳の健康に不適切な食事を検出するためにデザインされた14項目の食事質問票に基づく、範囲:0~14、低いほど脳の健康に関して不適切であることを示す)が8以下の不十分な食生活をしている65歳以上の高齢者を登録し、軽度カロリー制限を伴うMIND食群、ならびに同様の軽度カロリー制限を伴う通常食(対照食)群に、1対1の割合で無作為に割り付け、3年間、食事療法を行った。全参加者は、割り付けられた食事の順守に関するカウンセリングと、減量を促進するための支援を受けた。 主要エンドポイントは、全体的な認知スコアおよび4つの認知機能ドメインの各スコアのベースラインからの変化とした。認知機能は、一般公開されている12種類の認知機能検査で評価した。各検査の素スコアは、ベースラインの平均値および標準偏差を用いてZスコアに変換し、得られたZスコアは全検査を平均して全体的な認知スコアを作成するとともに、4つのドメインの検査を平均してドメインスコアを作成した(スコアが高いほど認知能力が高いことを示す)。副次エンドポイントは、MRIで得られた脳特性(全脳容積、海馬容積など)の測定値ベースラインからの変化とした。MIND食と通常食で認知機能と脳画像転帰に有意差なし スクリーニングを受けた1,929例のうち604例が登録され、MIND食群301例、対照食群303例に割り付けられた。参加者の93.4%が試験を完遂した。 全体的な認知スコアは両群ともベースラインから3年時まで改善が認められ、3年時のベースラインからの変化(Zスコア)はMIND食群で0.205、対照食群で0.170であり、平均群間差は0.035(95%信頼区間[CI]:-0.022~0.092、p=0.23)であった。 MRIによる大脳白質高信号域、海馬容積、灰白質および白質容積の変化は、両群で同程度であった。

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