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産後受診時の心血管健康カウンセリング、減少傾向に/JAMA

 出産をした成人女性において、妊娠前の心血管健康(cardiovascular health、CVH)の不良と有害な妊娠アウトカム(APO)は、その後の心血管疾患(CVD)の重大なリスク因子となる。産後受診は、リスクを有する人のCVHに関する診療の機会となるが、CVHカウンセリングを受けていたのは約60%であったことが、米国・ノースウェスタン大学のNatalie A. Cameron氏らによる調査で明らかにされた。また、5年の調査対象期間(2016~20年)に、わずかだが減少していたという。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。2016~20年にカウンセリングを受けた割合と予測因子、傾向を調査 研究グループは、米国疾病予防管理センター(CDC)が行う住民ベースのサーベイ(全国から代表者を抽出して実施)のPregnancy Risk Assessment Monitoring System(PRAMS)から、2016~20年のデータを連続断面解析し、自己申告による産後受診時のCVHカウンセリングを受けた割合と予測因子および傾向を調べた。 主要解析には、出産後4~6週に受診し、CVHカウンセリングを受けた、自己申告による妊娠前のCVDリスク因子(肥満症、糖尿病、高血圧)およびAPO(妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、早産)に関するデータが入手できた16万7,705人(重み付け調整計871万4,459人)を包含した。 自己申告による産後CVHカウンセリング(健康的な食事、運動、妊娠中に増加した体重を減らすためのカウンセリングと定義)を受けた割合(/100人、年間年齢補正後)を全体およびCVDリスク因子数別(妊娠前リスク因子またはAPOが0、1、2以上で定義)で算出。2016~20年のCVHカウンセリングの傾向を、年平均変化率(APC)で評価した。 データをプールし、年齢、教育、加入保険(産後)、出産年で補正後、CVDリスク因子の有無で比較するため、カウンセリングの率比(RR)を算出して評価した。リスクなし群とあり群との差はわずかで、いずれも年々減少 2016~20年に自己申告に基づく産後CVHカウンセリングを受けた割合は、CVDリスク因子なし群で56.2/100人から52.8/100人に減少していた(APC:-1.4%[95%信頼区間[CI]:-1.8~-1.0/年])。リスク因子が1つあり群では58.5/100人から57.3/100人に減少(-0.7%[-1.3~-0.1/年])、リスク因子が2つ以上群では61.9/100人から59.8/100人に減少していた(-0.8%[-1.3~-0.3/年])。 カウンセリングを受けたとの報告はリスク因子なし群と比べて、リスク因子1つの群(RR:1.05[95%CI:1.04~1.07])、リスク因子2つ以上の群(1.11[1.09~1.13])いずれもわずかな増大にとどまった。

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飲酒時のウコンの効果は?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第240回

飲酒時のウコンの効果は? Unsplashより使用コロナ禍も落ち着き、飲み会が増えてきたかもしれません。学会でも懇親会が催されることが増えました。さて、久しぶりにアルコールを飲むと「大丈夫だろうか」と健康が気になるところです。医学的にエビデンスがあるのかないのかよくわからないけど、ウコンを飲んでいるという人もいるかもしれません。Zhao HL, et al.Negative effects of curcumin on liver injury induced by alcohol.Phytother Res. 2012 Dec;26(12):1857-1863.この研究は、クルクミンがアルコールを摂取したマウスの肝臓にどのような影響を与えるか調べたものです。クルクミンは、ウコンに含まれるポリフェノールの一種で、これが肝臓によいとされています。マウスに対してクルクミンとエタノール(アルコール)を注射し、肝臓の組織を顕微鏡で観察したところ、クルクミンがエタノールによる肝障害を保護するどころか、むしろ悪化させている可能性が指摘されました。あれ? 真逆の結果です。ウコンはCMで放送されるくらいですから、その効果を支持する報告はもちろんたくさんあります。飲酒前のウコンの有効性を検証した研究では、クルクミンを摂取した場合にアセトアルデヒド濃度の上昇が抑制され、もともとγ-GTPが高い人に対しても肝臓の逸脱酵素の数値を改善させる効果があると報告されています1)。相反する結果もありますから、もしかすると、ヒトを1,000人ずつくらい集めてウコンの効果を比較しても、統計学的な差を生むほどの効果はないのかもしれません。何かしらのサプリメントでアルコール性肝障害を予防するくらいなら、飲み会の席で、目の前にある1杯のアルコールを減らしたほうが効果的かもしれません。まあ、それを言ってしまうとこの話はおしまいなのですが。世の中に「効果がある」と謳われている健康食品の多くは、大規模な臨床試験を行われていないことが問題で、日常的に密接に関わるものなので、もう少し検討してほしいなあと思っています。マウスに対する10の効果がヒトに対しても10であると捉えられていて、1つ1つの事象が飛躍の積み重ねになっている健康食品もあります。1)Shimatsu A, et al. Clinical application of “Curcumin”, a multi-functional substance. Anti-Aging Med. 2012;9:75-83.

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学校でのコロナ感染対策、マスクとワクチン完全接種が有用

 学校の生徒と職員を対象に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の学校内での感染リスクについて、2年間の接触追跡データに基づいた調査が、米国・マサチューセッツ総合病院のSandra B. Nelson氏らの研究チームによって行われた。その結果、学校生活において、マスクの使用状況やワクチン接種状況、校内の活動や地域の社会的状況など、感染リスクが高くなる要因が明らかになった。JAMA Health Forum誌2023年8月4日号に掲載の報告。 本調査は、マサチューセッツ州の幼稚園から中等教育までの学校を対象に、2020年秋~21年春学期(F20/S21、従来株の優勢期)および2021年秋学期(F21、デルタ株の優勢期)の2つの期間にわたって行われた。F20/S21は70校3万3,000人以上、F21は34校1万8,000人以上が参加した。学校内でSARS-CoV-2に2次感染した割合をSAR(Secondary Attack Rate)と定義した。SARは検査によって確認された値で算出した。感染と関連する可能性のある要因(学年、マスクの着用、曝露した場所、ワクチン接種歴、社会的脆弱性指数[SVI]など)について、ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・F20/S21期での学校関連SARは2.2%、F21期での学校関連SARは2.8%となり、両期間ともに低かった。・F20/S21期では、昼食時(未調整SAR:11.1%)、初発症例者と接触者の両方がマスクを着用していない(11.7%)、学校内での至近距離での接触(18.2%)の場合に、SARが有意に高かった。・F21期では、高学年や職員よりも低学年(未調整SAR:4.6%)、教室内での曝露(3.4%)、接触者がTTSプログラム(毎日の迅速抗原検査)に参加していない場合や、接触者がワクチン接種未完了(5.3%)もしくは未接種(3.6%)、および指標症例が未接種(3.5%)である場合に、SARが有意に高かった。社会的脆弱性指数(SVI)スコアが高いほどSARも高かった(8.0%)。・多変量解析では、F20/S21期において、マスクの着用は、マスクを着用しない場合と比較して、伝播のオッズが低かった(オッズ比[OR]:0.12、95%信頼区間[CI]:0.04~0.40、p<0.001)。・F21期では、教室内の曝露は、教室外の曝露と比較して、伝播のオッズが高かった(OR:2.47、95%CI:1.07~5.66、p=0.02)。ワクチンを完全に接種した接触者は、未接種と比較して、オッズが低かった(OR:0.04、95%CI:0.00~0.62、p<0.001)。・F20/S21期とF21期の両期間とも、SVIスコアが高い地区ほど、伝播のオッズが高かった。 著者らは本結果について、「SVIスコアの高い低所得地域では、教室の密度が高くなる可能性があり、感染リスクが高くなることが示された。感染リスクの高い地域には、感染対策のためのリソースをより多く配分することで、健康と教育の格差を減少させることができるかもしれない」としている。

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2型糖尿病の肝硬変、GLP-1受容体作動薬により死亡リスク減

 肝硬変は2型糖尿病と関連していることが多いものの、肝硬変患者を対象とした2型糖尿病治療に関する研究はほとんどない。今回、台湾・Dr. Yen's ClinicのFu-Shun Yen氏らは2型糖尿病の肝硬変患者を対象にGLP-1受容体作動薬による治療の長期アウトカムを調査した。その結果、2型糖尿病の肝硬変(代償性)患者がGLP-1受容体作動薬を使用した場合、死亡、心血管イベント、非代償性肝硬変、肝性脳症、肝不全のリスクが有意に低くなることが示された。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2023年6月16日号掲載の報告。2型糖尿病の肝硬変患者はGLP-1受容体作動薬による治療で死亡リスク減 研究者らは台湾の国民健康保険研究データベースを用い、傾向スコアマッチング法により2008年1月1日~2019年12月31日のGLP-1受容体作動薬の使用者と未使用者467組を選定した。 2型糖尿病の肝硬変患者を対象にGLP-1受容体作動薬による治療の長期アウトカムを調査した主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間は、GLP-1受容体作動薬の使用者で3.28年、未使用者で3.06年だった。・それぞれの死亡率は、1,000人年当たり27.46例と55.90例だった。・多変量解析の結果、GLP-1受容体作動薬の使用者は未使用者に比べ、死亡(調整ハザード比[aHR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.32~0.69)、心血管イベント(aHR:0.6、95%CI:0.41~0.87)、非代償性肝硬変(aHR:0.7、95%CI:0.49~0.99)、肝性脳症(aHR:0.59、95%CI:0.36~0.97)、肝不全(aHR:0.54、95%CI:0.34~0.85)のリスクが低いことが示された。・GLP-1受容体作動薬の累積使用期間が長いほど、GLP-1受容体作動薬を使用しなかった場合よりもこれらのリスクが低くなった。

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子宮頸管20mm以下の妊婦、ペッサリーで胎児死亡増/JAMA

 単胎妊娠で子宮頸管長が20mm以下の妊婦に対する子宮頸管ペッサリーは、早産リスクを低下せず、胎児または新生児/乳児の死亡率が増加したことが、米国・コロンビア大学のMatthew K. Hoffman氏らによる多施設共同無作為化非盲検試験「The randomized Trial of Pessary in Singleton Pregnancies With a Short Cervix:TOPS試験」で示された。経腟超音波検査で評価した子宮頸管短縮は早産のリスク因子として確立されているが、その単胎妊娠における早産予防のための子宮頸管ペッサリーに関する研究では、これまで相反する結果が示されていた。JAMA誌2023年7月25日号掲載報告。子宮頸管ペッサリー群vs.通常ケア群に無作為化 研究グループは、2017年2月~2021年11月5日に米国の12施設において、単胎妊娠で妊娠週数16週0日~23週6日の経腟超音波検査で子宮頸管長が20mm以下であった陣痛のない妊婦を登録し、訓練を受けた医師による子宮頸管ペッサリー留置群、または通常ケア群のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付けた。自然早産歴のある妊婦は除外した。 プロゲステロン膣剤の使用、子宮頸管縫縮術を含むその後の産科ケアは、担当医の裁量に任された。 主要アウトカムは、妊娠37週0日より前の早産または胎児死亡とした。子宮頸管ペッサリー群で、胎児または新生児/乳児の死亡率が上昇 2,105例がスクリーニングを受け、適格であった1,019例のうち544例(予定症例数の64%)が、ペッサリー群(280例)または通常ケア群(264例)に無作為化された。平均年齢(±SD)は29.5±6歳、98.9%の症例がプロゲステロン膣剤の投与を受けており、ベースラインの患者背景はペッサリー群と通常ケア群で類似していた。 3回目の中間解析において、胎児または新生児/乳児死亡が高頻度にみられ、安全性の懸念と無益性のため試験は中止された。 解析対象集団(各群追跡不能の1例を除く無作為化されたすべての参加者)において、主要アウトカムのイベントは、ペッサリー群で127例(45.5%)、通常ケア群で127例(45.6%)発生した(相対リスク:1.00、95%信頼区間[CI]:0.83~1.20)。 胎児または新生児/乳児の死亡は、ペッサリー群37例(13.3%)、通常ケア群18例(6.8%)であった(相対リスク:1.94、95%CI:1.13~3.32)。

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患者へのわかりやすい説明のためにChatGPTを使う【医療者のためのAI活用術】第3回

(1)ChatGPTはわかりやすい説明に向いている患者さんに病気について十分説明したにもかかわらず、理解してもらえなかったという経験をしたことはないでしょうか。私自身、とくに研修医の頃は、病状説明の際につい専門用語を多用してしまい、患者さんが混乱してしまうという苦い経験を何度もしました。ChatGPTの強みは、目的にあった文章を効率的に生成することです。そのため、病気について専門用語を避けてわかりやすく説明することにも向いており、とくに研修医の先生や若手の医療者が重宝する活用法です。実際に、「ChatGPTを患者へのわかりやすい説明のために利用している医師は多い」と、ChatGPTに出資しているマイクロソフト社の担当者が語っています1)。注意点としては、ChatGPTは正確な情報を得るのには不向きなツールであり、説明する内容は自身の医学知識や教科書の内容と照らし合わせて調整する必要があります。また、当然ですがプロンプトを入力する際に、患者の個人情報を含まないように注意しましょう。ここでは、前回説明した「深津式プロンプト」を使用して具体例を紹介していきます。(2)箇条書きで説明するたとえば、検査の結果、甲状腺機能亢進症の診断をした患者さんに病状説明をしたいという場合、以下のようなプロンプトを使用できます。#役割あなたは、優秀な内分泌内科の医師です#命令書甲状腺機能亢進症について、患者さん向けにわかりやすく説明してください#制約条件疾患の概要、症状、検査、治療に分けて箇条書きで説明してください専門の医学用語をなるべく避け、簡単な言葉を使ってくださいすると、以下のような回答が返ってきます。ChatGPTの回答(GPT-4を使用)疾患の概要甲状腺機能亢進症は、甲状腺という首の前部にある小さな器官が、普通よりも多くの甲状腺ホルモンを作り出す状態を指します。甲状腺ホルモンは、体のエネルギーの使い方や心の働きをコントロールします。症状心臓がドキドキと早く打つ、体重が減る、神経が高ぶりやすい、イライラする、夜なかなか眠れない、手が震える、汗をよくかく、筋肉が弱くなる、便が通常より多くなる、体が常に暑く感じる検査血液検査甲状腺ホルモンの量をチェックします。甲状腺機能亢進症の場合、一般的には甲状腺ホルモンが多い状態となります。甲状腺スキャン放射性物質を使って甲状腺の大きさや形、そしてどの程度活発に働いているかをチェックします。治療薬甲状腺ホルモンの生成を抑える薬を使用します。放射線ヨード治療放射性ヨウ素を用いて甲状腺組織を破壊し、甲状腺ホルモンの生成を抑えます。手術一部または全ての甲状腺を取り除く手術を行うこともあります。手術後は、生涯にわたって甲状腺ホルモンの補充治療が必要となります。いかがでしょうか。不正確・不十分な点はありますが、的外れな回答ではないと思います。「この説明の仕方はわかりやすい」と感じた部分を実際に患者さんに説明する際に採用すると良いでしょう。(3)医師と患者の対話形式で説明するほかにも、医師と患者の対話形式で示してもらうことで、実際の場面に近い形式で参考にすることができます。以下、心房細動について説明する状況を想定して、プロンプトを作成しています。#役割あなたは、循環器内科の医師です#命令書心房細動についてわかりやすく説明してください#制約条件医師と患者の会話形式で説明してください医学用語をなるべく避け、簡単な言葉を使ってくださいすると、以下のような回答がChatGPTから得られます。ChatGPTの回答(GPT-4を使用)患者先生、心房細動って何ですか?医師心房細動は、心臓が正常に働かない状態の1つで、とくに心房と呼ばれる心臓の部分が、通常より速く、または不規則に拍動する状況を指します。心房は心臓の4つの部屋のうちの2つで、心臓の血液を送り出すためのポンプのような役割を果たしています。心房細動が起こると、このポンプがうまく機能しなくなり、心臓全体の働きが乱れます。患者それはどういう影響があるのですか?医師うまく機能しない心房は、血液が心臓内で滞りやすくなります。その結果、血液が固まり、血栓と呼ばれる塊を作る可能性があります。この血栓が血管を通って体の他の部分、とくに脳に到達すると、脳卒中のリスクが高まります。また、心房細動は体全体への血液の供給が不足することで、息切れや疲れやすさなどの症状を引き起こすことがあります。患者どうやって治療するのですか?医師心房細動の治療は主に3つの目的があります。まず、症状を改善し、生活の質を向上させること。次に、心房細動が引き起こす可能性のある合併症を防ぐこと。そして最後に、心臓のリズムを正常に戻すことです。治療法は個々の患者の状態やリスクによりますが、薬物療法、カテーテルアブレーションという手術、あるいは生活習慣の変更などが含まれます。こちらも、完璧な回答とはいえませんが、説明する際のヒントになるかもしれません。また、さらに回答を求めたい場合は、「発作性心房細動についても説明して」「続けて」などと追加で入力することが可能です。1)The New York Times. 「When Doctors Use a Chatbot to Improve Their Bedside Manner」. (2023年7月6日参照)

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NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。 DPCデータを用いて、2010年7月~2021年3月にプラチナ製剤を含む化学療法を開始した進行NSCLC患者7万5,807例を抽出した。対象患者をICI使用の有無で2群に分類し(ICI併用群7,177例、単独療法群6万8,630例)、プラチナ製剤を含む化学療法開始後6ヵ月以内のVTE、ATE、院内死亡の発生率を検討した。背景因子を調整するため、生存時間分析には傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・VTEの発生率はICI併用群1.3%(96例)、単独療法群0.97%(665例)であった。ATEの発生率はそれぞれ0.52%(38例)、0.51%(351例)であった。院内死亡率はそれぞれ8.7%(626例)、12%(8,211例)であった。・傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析の結果、ICI併用群は単独療法群と比較してVTEリスクが有意に高かったが(部分分布ハザード比[SHR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.01~1.60)、ATEリスクに有意差はみられなかった(同:0.96、0.67~1.36)。・使用したICI別に同様の解析を行った結果、ペムブロリズマブを使用した場合にVTEリスクが有意に高かったが(SHR:1.29、95%CI:1.01~1.64)、アテゾリズマブを使用した場合にはVTEリスクに有意差はみられなかった(同:0.91、0.49~1.66)。・院内死亡リスクはICI併用群が有意に低かった(ハザード比:0.67、95%CI:0.62~0.74)。

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加糖飲料を毎日摂取、肝がんリスク・肝疾患による死亡を増大/JAMA

 閉経後女性において、砂糖入り飲料の1日1杯以上摂取者は1ヵ月3杯以下の摂取者と比べ、肝がん罹患率および慢性肝疾患死亡率が高率であることが示された。一方で人工甘味料入り飲料の摂取量については、両リスク共に増大はみられなかったという。米国・サウスカロライナ大学のLonggang Zhao氏らが、約10万人規模の50~79歳の閉経後女性からなる前向きコホートを追跡し明らかにした。米国では成人の約65%が砂糖入り飲料を毎日摂取しているという。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる研究で今回示された所見を確認し、その関連性について生物学的経路を明らかにする必要がある」と述べている。JAMA誌2023年8月8日号掲載の報告。肝がんと慢性肝疾患死亡の発生率を比較 研究グループは米国40ヵ所の臨床施設で、1993~98年にWomen's Health Initiativeに登録された50~79歳の閉経後女性9万8,786例からなる前向きコホートを、2020年3月1日まで追跡した。砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料の摂取と、肝がん罹患率および慢性肝疾患死亡率との関連を調べた。 砂糖入り飲料摂取は、ベースラインで行った食品摂取頻度質問票で評価し、通常のソフトドリンクとフルーツドリンク(フルーツジュースは含まない)の合計で定義した。人工甘味料入り飲料摂取は、3年フォローアップ時に測定が行われた。 主要アウトカムは、(1)肝がん罹患率、(2)慢性肝疾(非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]、肝線維症、肝硬変、アルコール性肝疾患、慢性肝炎で定義)による死亡だった。多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、肝がん罹患率と慢性肝疾患死亡率に関するハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出。人口統計学的因子およびライフスタイル因子などの潜在的な交絡因子は補正した。追跡期間中央値20.9年、6.8%が1日1杯以上の砂糖入り飲料を摂取 追跡期間中央値20.9年間において、207例が肝がんを呈し、148例が慢性肝疾患で死亡した。ベースラインでは被験者の6.8%が1日に1杯以上の砂糖入り飲料を摂取しており、3年フォローアップ時では13.1%が1日1杯以上の人工甘味料入り飲料を摂取していた。 砂糖入り飲料摂取量が1日1杯以上の人は同摂取量が1ヵ月3杯以下の人と比べて、肝がんリスク(18.0 vs.10.3/10万人年[傾向のp=0.02]、補正後HR:1.85[95%CI:1.16~2.96]、p=0.01)、慢性肝疾患死リスク(17.7 vs7.1/10万人年[p<0.001]、1.68[1.03~2.75]、p=0.04)がいずれも有意に高かった。 一方で人工甘味料入り飲料摂取については、1日1杯以上の人は1ヵ月3杯以下の人と比べて、肝がんリスク(11.8 vs.10.2/10万人年[p=0.70]、補正後HR:1.17[95%CI:0.70~1.94]、p=0.55)、慢性肝疾患死亡リスク(7.1 vs.5.3/10万人年[p=0.32]、0.95[0.49~1.84]、p=0.88)のいずれも有意な増加がみられなかった。

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コロナ2価ワクチンのブースター接種、安全性が示される/BMJ

 50歳以上の成人において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する4回目ブースター接種ワクチンとしてのオミクロン株対応2価mRNAワクチンは、事前規定の27種の有害事象に関するリスク増大との関連は認められなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らによる同国の50歳以上の接種者を対象に行った試験で示された。BMJ誌2023年7月25日号掲載の報告。接種後28日間の27種の有害事象による病院受診率を評価 研究グループは2021年1月1日~2022年12月10日に、COVID-19ワクチンを3回接種した50歳以上の成人222万5,567人を対象とするコホート試験を行った。 主要アウトカムは、オミクロン株対応2価mRNAワクチンの4回目ブースター接種後28日間(主要リスク期間)の27種の有害事象による病院受診率で、同ワクチン3回目あるいは4回目接種後29日以降(参照期間)の同受診率と比較した。27種の有害アウトカムいずれも増大せず 2価mRNAワクチンの4回目接種者は、174万417人(平均年齢67.8[SD 10.7]歳)だった。 2価mRNAワクチンの4回目接種は、参照期間と比較して、主要リスク期間の全27種の有害アウトカムの統計学的に有意な増大と関連していなかった。たとえば、虚血性心イベントの発生件数は、主要リスク期間で672件、参照期間では9,992件で、発生率比は0.95(95%信頼区間[CI]:0.87~1.04)だった。 年齢や性別、ワクチンタイプに基づく解析や、別の解析手法を用いた場合でも、同様の結果が得られた。 ただし事後分析で、心筋炎のリスクが検出されたが(女性被験者では統計学的に有意に関連)、発現はまれで少数の症例に基づく所見だった。また、脳梗塞リスクの増大はみられなかった(主要リスク期間644件vs.参照期間9,687件、発生率比:0.95、95%CI:0.87~1.05)。

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統合失調症薬物治療ガイドラインの順守と治療成績との関係~EGUIDEプロジェクト

 臨床医が統合失調症薬物治療ガイドラインの推奨事項を順守することは、患者の良好なアウトカムにとって重要である。しかし、ガイドラインの順守が患者の治療アウトカムと関連しているかどうかは明らかではない。東京慈恵会医科大学の小高 文聰氏らは、統合失調症薬物療法ガイドラインへの適合度を可視化するツールindividual fitness score(IFS)計算式を開発し、統合失調症患者におけるIFS値と精神症状との関連を調査した。その結果、IFS計算式で評価した統合失調症薬物治療ガイドラインの推奨事項を順守する取り組みは、統合失調症患者の臨床アウトカム改善につながる可能性が示唆された。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2023年6月29日号の報告。 治療抵抗性統合失調症(TRS)患者47例と非TRS患者353例を対象に、IFS計算式を用いて、現在の処方がガイドラインの推奨事項に準拠しているかを評価した。IFS値と陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計スコアおよび5つの下位尺度のスコア(陽性症状、陰性症状、思考解体/認知、敵意/興奮、不安/抑うつ)との関連を調査した。さらに、一部の患者(77例)については、2年にわたる長期的なIFS値と精神症状それぞれの変化の関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・全体の統合失調症患者(400例)において、IFS値とPANSS合計スコアとの間に有意な負の相関が認められた(β=-0.18、p=0.000098)。・非TRS患者(Spearman's rho=-0.15、p=0.0044)およびTRS患者(rho=-0.37、p=0.011)のいずれにおいても、IFS値とPANSS合計スコアとの有意な負の相関が確認された。・また、非TRS患者およびTRS患者のいずれにおいても、IFS値と陰性症状、抑うつスコアなどのいくつかの因子との間に、負の相関が確認された(各々、p<0.05)。・IFS値の変化は、PANSS合計スコアおよび陽性症状、抑うつスコアの変化と負の相関が認められた(p<0.05)。

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ネモリズマブ、6~12歳のアトピー性皮膚炎にも有用

 ネモリズマブは、アトピー性皮膚炎(AD)に伴うそう痒を有し、外用薬や経口抗ヒスタミン薬で効果不十分な6~12歳の小児患者にとって、新たな治療選択肢となる可能性が示された。いがらし皮膚科東五反田院長(前NTT東日本関東病院 皮膚科部長)の五十嵐 敦之氏らが、6~12歳の日本人AD患者を対象に行った第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。ヒト化抗IL-31受容体Aモノクローナル抗体ネモリズマブは、13歳以上のAD患者において外用薬との併用でそう痒を軽減し、QOLを改善することが示されていたが、13歳未満のAD患者における有効性および安全性に関するデータは不足していた。British Journal of Dermatology誌オンライン版2023年7月31日号掲載の報告。ネモリズマブによるそう痒の改善は投与2日目から観察された 研究グループは、ADに伴う中等度~重度のそう痒を有し、外用薬や経口抗ヒスタミン薬で効果不十分な6~12歳の日本人小児患者を対象とした試験を2020年9月より実施し、外用薬との併用投与によるネモリズマブの有効性と安全性を評価した。 被験者を1対1の割合で無作為にネモリズマブ30mgを投与する群(ネモリズマブ群)またはプラセボを投与する群(プラセボ群)に割り付け、4週ごとに投与し、16週間追跡比較した。 ネモリズマブの有効性の主要エンドポイントは、かゆみスコア(範囲:0~4、点数が高いほどそう痒が重度、3点以上を効果不十分と定義)の週平均値のベースライン時から16週時までの変化とした。ネモリズマブの有効性の副次エンドポイントは、そう痒(かゆみスコアのベースライン時から2週時までの変化、16週時における1点以下の達成率など)、AD指標(Eczema area and severity index[EASI]のベースライン時から16週時までの変化など)およびQOLであった。安全性は、有害事象および臨床検査値によって評価した。 ネモリズマブの有効性と安全性を評価した主な結果は以下のとおり。・合計で89例が無作為化され試験を完了した(ネモリズマブ群45例、プラセボ群44例)。・ベースライン時のネモリズマブ群とプラセボ群の患者特性は類似していた。被験者の平均年齢(標準偏差[SD])は9.1歳(1.9)、AD平均罹病期間(SD)は8.5年(2.7)であった。・かゆみスコアのベースライン時から16週時までの変化は、ネモリズマブ群-1.3点、プラセボ群-0.5点であり、ネモリズマブ群がプラセボ群と比較して有意に改善した(最小二乗平均差:-0.8、95%信頼区間[CI]:-1.1~-0.5、p<0.0001)。・ネモリズマブによるそう痒の改善は、投与2日目から観察された。・副次エンドポイントについても、ネモリズマブ群が良好であった。・投与中止に至った有害事象は報告されなかった。また、6~12歳のAD患者における安全性プロファイルは、13歳以上のAD患者におけるものと一貫していた。

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アルツハイマー病、早発型と遅発型の臨床的特徴の違い~メタ解析

 認知症で最も一般的な病態であるアルツハイマー病は、発症年齢による比較検討が多くの研究で行われているが、その違いは明らかになっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのPaige Seath氏らは、アルツハイマー病の早発型(65歳未満、early-onset:EO-AD)と遅発型(65歳以上、late-onset:LO-AD)の臨床的特徴を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、EO-AD患者はベースライン時の認知機能、認知機能低下速度、生存期間においてLO-AD患者と異なる特徴を有しているが、それ以外の臨床的特徴は同様であることが示唆された。International Psychogeriatrics誌オンライン版2023年7月11日号の報告。 Medline、Embase、PsycINFO、CINAHLのデータベースをシステマティックに検索し、EO-AD患者とLO-AD患者における診断までの時間、認知機能スコア、1年当たりの認知機能低下、ADL、神経精神症状、QOL、生存期間を比較した研究を抽出した。変量効果モデルを用いた逆分散法により、各アウトカムへの全体的な影響の推定値を算出した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には42研究(EO-AD:5,544例、LO-AD:1万6,042例)を含めた。・EO-AD患者は、LO-AD患者と比較し、ベースライン時の認知機能が著しく低く、認知機能低下の速度が速かったが、生存期間は長かった。・EO-AD患者は、発症から診断までの期間、ADL、神経精神症状について、LO-AD患者との違いは認められなかった。・EO-AD患者とLO-AD患者のQOLの違いへの全体的な影響の推定には、データが不十分であった。 結果を踏まえて著者は、「アルツハイマー病における発症年齢の影響をより理解するため、臨床症状に焦点を当てた標準化された質問票を用いた大規模研究が必要である」としている。

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成人の胸腺摘出、全死亡・がんリスクが増加/NEJM

 胸腺摘出を受けた患者は摘出を受けなかった対照群よりも、全死因死亡およびがんリスクが高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のKameron A. Kooshesh氏らによる検討で示された。また、術前感染症、がん、自己免疫疾患を有する患者を除外した解析では、胸腺摘出は自己免疫疾患のリスクを増大すると思われる関連性もみられたという。成人における胸腺の機能は明らかになっていないが、さまざまな外科手術でルーチンに摘出が行われている。研究グループは、成人の胸腺は、免疫機能と全般的な健康の維持に必要であるとの仮説を立て、疫学的・臨床的・免疫学的解析評価で検証した。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。胸腺摘出vs.非摘出の死亡・がん・自己免疫疾患のリスクを評価 研究グループは、胸腺摘出術を受けた成人患者と人口統計学的にマッチさせた胸腺摘出術を受けずに類似の心臓胸部手術を受けた成人患者を比較し、死亡・がん・自己免疫疾患のリスクを評価した。患者サブグループで、T細胞産生量と血漿中サイトカイン濃度も比較した。 Mass General Brigham(MGB)Research Patient Data Registryを用いて、1993年1月1日~2020年3月1日にマサチューセッツ総合病院で胸腺摘出術を受けた全成人患者を特定。術後90日以内に死亡した患者、また術後5年以内に非腹腔鏡下心臓手術を受けた患者は除外した(胸腺摘出群)。同様に2000年1月1日~2019年12月31日に非腹腔鏡下で心臓手術を受けた胸腺摘出術歴のない全成人患者を特定。術後90日以内に死亡した患者、術前心不全を呈した患者、術後5年以内に2度目の心臓手術を受けた患者は除外した(対照群)。 データは2022年3月1日まで収集された。死亡の相対リスク2.9倍、がん相対リスク2.0倍 レジストリの探索で、胸腺摘出群1,470例、対照群1万6,679例が特定され、除外後にそれぞれ1,420例と6,021例が試験に包含された。このうち主要コホートは、対照とのマッチが少なくとも1つ以上あった胸腺摘出群1,146例(81%)と、その年齢・人種・性別でマッチさせた対照群1,146例で構成された。 術後5年時点で、全死因死亡率は胸腺摘出群(8.1%)が対照群(2.8%)より2倍超高く(相対リスク:2.9[95%信頼区間[CI]:1.7~4.8]、p<0.001)、がんリスクも同様に胸腺摘出群(7.4%)が対照群(3.7%)より高かった(2.0[1.3~3.2])。自己免疫疾患リスクは、主要コホート全体では実質的な群間差は認められなかったが(1.1[0.8~1.4])、術前感染症、がん、自己免疫疾患を有する患者を解析から除外すると、群間差が認められた(12.3% vs.7.9%、相対リスク:1.5[95%CI:1.02~2.2])。 追跡期間5年超の全患者(マッチした対象の有無を問わず)の解析では、全死因死亡率は、胸腺摘出群(9.0%)が米国一般集団(5.2%)よりも高く、がん死亡率も同様であった(2.3% vs.1.5%)。 T細胞産生量と血漿中サイトカイン濃度が測定された患者のサブグループ(胸腺摘出群22例、対照群19例、平均追跡期間14.2術後年[範囲:8~26])では、胸腺摘出群のほうが対照群よりもCD4+、CD8+リンパ球の新生量が少なかった。signal joint T-cell receptor excision circle(sjTREC)解析で測定した平均CD4+リンパ球数は、胸腺摘出群1,451/μg DNA vs.対照群526/μg DNAであり(p=0.009)、同平均CD8+リンパ球数はそれぞれ1,466/μg DNA vs.447/μg DNAであった(p<0.001)。血中の炎症性サイトカイン濃度も胸腺摘出群で高かった。

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双極I型障害のうつ再発予防の抗うつ薬、52週vs.8週/NEJM

 うつ病エピソードの寛解から間もない双極I型障害患者に、エスシタロプラムまたはbupropionの徐放性製剤(bupropion XL)による抗うつ薬の補助的投与を52週間継続しても、8週間の投与と比べて、あらゆる気分エピソードの再発予防について有意な有益性は得られなかった。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLakshmi N. Yatham氏らが、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。双極I型障害患者の急性うつ病の治療には抗うつ薬が用いられるが、寛解後の維持療法としての抗うつ薬の効果については十分に検討されていなかった。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。エスシタロプラムまたはbupropion XLの補助的投与の継続戦略を評価 本試験では、カナダ、韓国、インドで、うつ病エピソードから寛解して間もない双極I型障害患者を対象に、気分安定薬または第2世代抗精神病薬(あるいは両薬)に加え、エスシタロプラムまたはbupropion XLを補助的に投与する継続戦略が評価された。 研究グループは被験者を、寛解後52週間抗うつ薬治療を継続する群(52週群)または寛解後抗うつ薬の使用を漸減して8週時点でプラセボに切り替える群(8週群)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムはtime-to-event解析で評価したあらゆる気分エピソードで、軽躁(YMRSスコア16以上)、中等度うつ病(MADRSスコア20以上)、躁/うつ病(CGI-S-BDスコア4以上)、気分症状での入院、出現した気分症状に対する追加の薬物療法、MADRS自殺項目スコア4以上(スコア範囲:0~6、高スコアほど自殺リスクが高いことを示す)、自殺企図または自殺既遂で定義した。主要アウトカムイベントは、CGI-BD、YMRS、MADRSの各スコアと試験施設の研究者の評価に基づき、躁/軽躁、うつ病、混合型(躁/うつ)に分類された。 主な副次アウトカムは、躁/軽躁あるいはうつ病エピソードまでの期間などであった。 本試験は、2019年のCOVID-19パンデミックで被験者募集が低調となる中、研究費が使用期限を迎え、募集人員に達する前に打ち切りとなった。あらゆる気分エピソード、両群で有意差なし 2009~19年に計238例が適格性についての評価を受け、209例が非盲検治療フェーズに登録され、うつ病エピソードの治療としてエスシタロプラムまたはbupropion XLの補助的投与を受けた。このうちうつ病が寛解した150例と、追加で登録された27例の計177例が二重盲検フェーズに登録され、52週群に90例が、8週群に87例が割り付けられた。 52週時点で主要アウトカムイベントを有したのは、52週群28例(31%)、8週群40例(46%)で、52週群の8週群に対するあらゆる気分エピソードまでの期間に関するハザード比(HR)は0.68(95%信頼区間[CI]:0.43~1.10、log-rank検定のp=0.12)であった。 躁/軽躁のイベントは8週群の5例(6%)に対して52週群では11例(12%)が有し(HR:2.28、95%CI:0.86~6.08)、うつ病の再発は8週群35例(40%)に対して52週群は15例(17%)であった(0.43、0.25~0.75)。 有害事象の発現は、両群で同程度であった。 なお、著者は、被験者の募集が計画された規模となる前に終了したことや、被験者の大半がインドの施設で募集され、文化的・人種的および医療ケアシステムの違いから一般化可能性が低いことなどを挙げ、得られた所見は限定的だと述べている。

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オズウイルス感染症に気をつけろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、前回その1では、世界初のオズウイルス感染症の事例についてご紹介しました。症例を簡単に説明しますと、「茨城県在住の70代女性が、マダニ刺咬後に発熱を呈し、血小板減少、肝障害、腎障害、CK上昇、フェリチン高値、凝固障害などがみられ、最終的には心筋炎によると思われる心室細動で亡くなられてしまった」という事例でした。オズウイルスはどこにいるか?このオズウイルスですが、すでにヒトと動物について血清疫学調査が行われています1)。まず、2013~2019年にかけて山口県の猟師24人と野生動物240頭(ニホンザル40頭、イノシシ124頭、ニホンジカ76頭)から血清サンプルを採取し、猟師2人、そしてサル47.5%、イノシシ60.5%、ニホンジカ73.7%に中和抗体が確認されました。動物における陽性率の高さは驚きですね。そして、ヒトでも抗体陽性例がみつかっていることから、他にも診断されずに感染している事例が潜在しているものと推測されます。さらにこの研究では、確立したELISA法を用いて、他の都道府県のニホンザル、イノシシ、ニホンジカのオズウイルス感染も調査しています。2007~2019年に山口県、和歌山県、三重県、大分県、岐阜県、富山県、岐阜県、千葉県で捕獲された動物の血清陽性率は以下の通りでした。ニホンザル山口県47.5%、和歌山県33.3%、三重県6.3%イノシシ山口県55.8%、和歌山県34.8%、岐阜県10.5%、大分県10.3%、富山県・栃木県ともに0%ニホンジカ山口県37.8%、千葉県30%、和歌山県11.1%、岐阜県8.3%富山県、栃木県からはオズウイルスの抗体陽性の動物はみつかっていませんが、それ以外の山口県、和歌山県、三重県、岐阜県、大分県、千葉県からは割合の違いはあれど抗体陽性の動物がみつかっています。このことからは、オズウイルスは世界初の症例が報告された茨城県、そしてマダニからウイルスがみつかった愛媛県だけでなく、より広範囲に分布していると考えられます。また、元々ウイルスがみつかったマダニがタカサゴキララマダニというマダニであったことから、このタカサゴキララマダニの分布と同じく関東以南にオズウイルスも分布している可能性があります(基本的にマダニ媒介感染症の流行地域は、媒介するマダニの分布する地域に規定されます)。ということで、今後新たなオズウイルス感染症の症例がみつかる可能性は高いと考えられます。オズウイルスの検査に困ったらでは、「どのようなときにオズウイルス感染症を疑うか」について、アプローチとしては2つあると考えられます。1つはマダニ媒介感染症が疑われるけれども原因不明の場合、もう1つは原因不明の心筋炎を診た場合です。マダニ媒介感染症が疑われる場合(たとえばマダニ刺咬歴がある、フォーカス不明で肝障害を伴う発熱があるなど)は、その地域で流行しているマダニ媒介感染症、たとえばツツガムシ病、日本紅斑熱、SFTSなど保健所を介して地方衛生研究所で検査をしてもらいます。それでも診断がつかない場合は、オズウイルス感染症が鑑別に挙がってくるかもしれません。オズウイルスの検査は国立感染症研究所で行えるはずですが、お願いすれば全例検査をしてもらえるかはわかりません。参考までに、私忽那は、日本医療研究開発機構(AMED)の海老原班「新興ダニ媒介性ウイルス重症熱に対する総合的な対策スキームの構築」の分担研究において、ダニ媒介感染症が疑われるものの診断が不明な発熱患者の症例を集積し、新興ウイルスの検査や未知の病原体の探索をするためのレジストリを構築するプロジェクトを実施しています。研究班は国立感染症研究所の先生方と行っているものですので、このレジストリに登録していただき、オズウイルスの検査に回すというフローは可能ですので、疑わしい症例があればぜひ忽那までお問い合わせください。(お問い合わせ先アドレス:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp)基本的には「地方衛生研究所で検査できるマダニ媒介感染症が除外されている症例」が対象になります。時はマダニ戦国時代ッ!図2 日本国内のマダニからみつかっている新興ウイルス画像を拡大する(筆者作成)さて、オズウイルスが注目を集めていますが、実はオズウイルスだけでなく、他にもわが国にはマダニ媒介性ウイルス感染症が潜在しています。オズウイルスが、ヒトでの感染例が報告される前から存在が知られていたように、わが国のマダニから、まだヒトでの感染例が報告されていないウイルスがたくさんみつかっているのです。その1でも触れましたがSFTSの発見以降、ヒトでの感染例がみつかる前からマダニの持っているウイルスを先に調べるという手法が行われるようになりました。オズウイルス以外にも、日本国内のマダニからは、Tarumizu tick virus2)、Muko virus3)、Kabuto Mountain virus4)、Okutama tick virus5)、Mukawa virus6)などさまざまなウイルスがみつかっています。垂水…奥多摩…甲山(かぶとやま)…そう、これらはすべて日本の地名です。日本のいろんなところに、まだヒトでの感染例が報告されていないマダニ媒介ウイルス感染症が存在しているのです…ちなみにヒトでの病原性があるのかどうかについても現時点では不明です。もちろん、これ以外にも未知のマダニ媒介ウイルスも存在しているでしょう。原因不明の発熱疾患をみた場合に、こうしたマダニ媒介感染症の可能性についてもぜひ頭の片隅に置いておいていただけましたら幸いです。1)Tran NTB, et al. Emerg Infect Dis. 2022;28:436-439.2)Fujita R, et al. Virus Res. 2017;242:131-140.3)Ejiri H, et al. Arch Virol. 2015;160:2965-2977.4)Ejiri H, et al. Virus Res. 2018;244:252-261.5)Matsumoto N, et al. J Vet Med Sci. 2018;80:638-641.6)Matsuno K, et al. mSphere. 2018;3.

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英語で「難しい天秤です」は?【1分★医療英語】第93回

第93回 英語で「難しい天秤です」は?I wonder if we should stop anticoagulation given recent GI bleeding.(最近あった消化管出血を考えると、抗凝固薬をやめるべきなのか悩んでいます) It is a difficult balancing act between risks and benefits.(それはリスクとベネフィットの難しい天秤ですよね)《例文1》The decision to proceed with the surgery requires a careful balancing act.(手術に進むかの決断には注意深いバランスが必要です)《例文2》We need to think about a delicate balancing act between pain control and sedation.(疼痛コントロールと鎮静の間で繊細な天秤を考える必要があります)《解説》医療現場では、相反する2つの事実を天秤に掛け、バランスを取らなければならないことはしばしばです。治療の益と害、手術をすべきかどうか。そんなときに、「対立する2つの間でバランスを取らなければならない=難しい天秤に掛けなければならない」という状況に置かれます。そういった際、患者さんへの説明、あるいは医療者同士の議論の場で有用な表現が、この“balancing act”です。“balancing act”は、本来は「曲芸における綱渡り」を意味する言葉だそうです。綱渡りは、絶妙なバランスを取りながら綱の上を渡る曲芸。医療者にも医療上の絶妙なバランスを求められることがありますが、そのようなバランスを取って決断していくことを“balancing act”という言葉で表現し、「両立させること」「バランスを取ること」という意味を持ちます。たとえば、冒頭の会話のシチュエーションはこのような感じです。心房細動の既往があり、血栓症のリスクが高い患者に消化管出血が起こった。血栓のリスクも、出血のリスクも高く、今後の抗凝固薬をどうすべきか…。この血栓リスク、出血リスクの両者は難しい天秤だと思いますが、それらを慎重に測りながら、どこかに線引きをして決断をしなければなりません。そんなシチュエーションを表現するのに、この“It is a balancing act”は最適な表現です。一般英会話の教科書で見ることは少ないかもしれませんが、医療現場ではよく登場する表現ですので、そのまま覚えてしまうとよいでしょう。講師紹介

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第176回 バラなどの芳香と共に眠ることと記憶の改善が関連

バラなどの芳香と共に眠ることと記憶の改善が関連香りで嗅覚を刺激することで頭の働きがよくなることが先立つ試験で示されています。パーキンソン病患者70例が参加した試験では数種の香りを毎日しばし嗅ぐことで言語の流暢さが改善しました1)。50~84歳の成人91例の試験ではエッセンシャルオイル4種を毎日2回嗅ぐことで言語機能が改善し、うつ症状も緩和しました2)。認知機能低下の恐れがある高齢成人68例を募った試験では9つの香りを嗅ぐことと認知症症状の抑制の関連が示されています3)。認知症をすでに発症した患者の香りを豊かにすることも認知機能に有益なようです。認知症成人65例が参加した試験の結果、40種類の香りに毎日2回接することで記憶、うつ症状、注意、言語機能などが改善しました4)。早速実践に移せればよいですが、認知症の患者が平素に40種類の香りを毎日2回嗅ぐのはおそらく容易ではありません。認知症患者が40種類のボトルを毎日2回、すなわち80回も手にとって開け閉めして嗅ぐことはおよそ非現実的ですし、認知症でなくとも手に負えるものではなさそうです。そのような込み入った手段だと長続きしません。普段の生活の中で続けてもらうにはできるだけ容易な手段にする必要があります。そこで考え出されたのがよい香りと共に眠るというおよそ苦もなく実践できそうな手段です。香りの種類もせいぜい数種類に限定しました。それらの香りを1つずつ順繰りに毎晩寝るときに部屋に漂わせる効果を少人数の試験で検討したところ願ったりかなったりの結果が得られました。試験には記憶が損なわれていない60~85歳の男女43例が参加し、よい香りと共に眠る群とそうでない対照群に無作為に振り分けられました。よい香りと共に眠る群の20例は芳香油を2時間拡散させて眠ることを毎晩繰り返しました。同様の日課を対照群の23例は実質的に香りがしない蒸留水を使って繰り返しました。芳香は7種類で、バラ、オレンジ、ユーカリ、レモン、ペパーミント、ローズマリー、ラベンダーの芳香油が1つずつ毎晩順繰りに使われました。半年をそうして過ごしたところ、よい香りと共に眠る群では言語の学習や記憶の検査であるRey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)成績が向上しました5)。対照群のRAVLT成績は逆に悪化しました。また、老化やアルツハイマー病で支障を来す脳領域である鉤状束の機能の改善が画像検査で示されました。香りを豊かにすることは脳の調子を改善する効果的で手軽な方法となりうるようであり、より大人数の試験でその効果の検討が進むことを著者は望んでいます。どうやら香りの効果は多岐にわたり、高齢者や認知機能に限ったものではなさそうです。最近発表された試験結果ではペパーミント油の香りが心臓手術後の患者の痛みを和らげ、睡眠の質を改善したことが示されています6)。ペパーミント油の主成分であるカルボン、リモネン、メンソールが痛み緩和効果の多くを担うようであり、ペパーミントの香りを漂わせるアロマセラピーを手術後に施すことを著者は勧めています。さかのぼること20年ほど前に発表された試験結果では早産児の無呼吸を減らすバニラの香り(バニリン)の効果が認められています7)。参考1)Haehner A, et al. PLoS One. 2013;8:e61680.2)Birte-Antina W, et al. J Geriatr Psychiatry Neurol. 2017;33:212-220.3)Oleszkiewicz A, et al. Behav Neurosci. 2021;135:732-740.4)Cha H, et al. Geriatr Gerontol Int. 2022;22:5-11.5)Woo CC, et al. Front Neurosci. 2023;17:1200448.6)Maghami M, et al. BMJ Support Palliat Care. 2023 Aug 3. [Epub ahead of print] 7)Marlier L, et al. Pediatrics. 2005;115:83-88.

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転移乳がんへのT-DXd、有効性に関わる因子はあるか(DAISY)

 HER2発現レベルに従って転移乳がん患者におけるT-DXdの有効性を評価し、複数時点での腫瘍検体のバイオマーカー分析を通じて治療反応と治療耐性に関わる因子を調査することを目的とした第II相DAISY試験の結果を、フランス・Gustave RoussyのFernanda Mosele氏らがNature Medicine誌オンライン版2023年7月24日号に報告した。 参加者はベースライン時のバイオプシー結果に基づき、HER2高発現群(IHC 3+またはISH+、72例)、HER2低発現群(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+、74例)、およびHER2陰性群(IHC 0、40例)に割り付けられた。 主要評価項目は奏効率(ORR)で、副次評価項目には安全性などが含まれた。その他探索的解析として、HER2発現パターンと治療反応、T-DXdの作用機序および耐性機序が調べられた。 主な結果は以下のとおり。・ORRはHER2高発現群では70.6%(95%信頼区間[CI]:58.3~81)、HER2低発現群では 37.5%(95%CI:26.4~49.7)、HER2陰性群では29.7%(95%CI:15.9~47)だった。・HER2陰性群の患者において、ERBB2発現が中央値未満であった患者(14例中5例[35.7%]、95%CI:12.8~64.9)は、ERBB2発現が中央値を上回っていた患者(10例中3例[30%]、95%CI:6.7~65.2)と比較して奏効率に差はみられなかった。 またベースライン検体を外部の病理学者が検査した結果、15例(48%)でHER2発現が確認された。・治療中、HER2発現腫瘍(4例)では強いT-DXd反応が示された一方、HER2陰性腫瘍(3例)ではT-DXd反応がまったくまたはほとんど示されなかった(ピアソン相関係数r=0.75、p=0.053)。・ベースライン検体におけるドライバー変異には耐性と有意に関連しているものはなかった(FDR補正p>0.54)。ただし、ベースライン時の89例中6例(7%)にERBB2ヘミ接合型欠失が検出され、うち4例はT-DXdに反応がなかった。・T-DXd耐性となった検体の21例中3例(14%)にSLX4変異が検出された。・新たな安全性シグナルは確認されていない。 著者らは、HER2発現レベルはT-DXdの有効性の決定要因と言えるが、本研究ではそれ以外のメカニズムも関与している可能性が示唆されたとまとめている。

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C型肝炎にDAA治療成功も死亡率高い、その理由は/BMJ

 インターフェロンを使用せず直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療に成功したC型肝炎患者では、一般集団と比較して死亡率が高く、この過剰な死亡の主な要因は薬物や肝臓関連死であることが、英国・グラスゴー・カレドニアン大学のVictoria Hamill氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年8月2日号に掲載された。カナダと英国の3地域のコホート研究 本研究は、ブリティッシュコロンビア州(カナダ)、スコットランド(英国)、イングランド(英国)の3つの地域のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(研究資金は主に、責任著者のHamish Innes氏[グラスゴー・カレドニアン大学]が英国のMedical Research Foundationから受けたウイルス性肝炎フェローシップの報奨金が充てられた)。 対象は、インターフェロンフリーの抗ウイルス薬治療の時期(2014~19年)に、C型肝炎の治療に成功(ウイルス学的著効[SVR]を達成)した2万1,790例であった。 これらの参加者を肝疾患の重症度で、肝硬変なし(肝硬変前)、代償性肝硬変、末期肝疾患(ESLD)の3つの群に分けた(イングランドは肝硬変とESLDのみ)。追跡調査は、抗ウイルス薬治療の終了後12週の時点から開始し、死亡日または2019年12月31日に終了した。 主要アウトカムは、粗死亡率と年齢・性別標準化死亡率、および標準化死亡率比であり、年齢、性別、年度で調整した一般集団と比較した。ポアソン回帰分析で、全死因死亡率と関連する因子を同定した。3地域とも、肝疾患の重症度の上昇と共に死亡率増加 追跡期間中に1,572例(7%)が死亡した。主な死因は、薬物関連死(383例、24%)、肝不全(286例、18%)、肝がん(250例、16%)だった。 粗全死因死亡率(1,000人年当たりの死亡数)は、ブリティッシュコロンビア州が31.4(95%信頼区間[CI]:29.3~33.7)、スコットランドが22.7(20.7~25.0)、イングランドが39.6(35.4~44.3)であった。また、標準化死亡率はそれぞれ31.4(95%CI:29.3~33.7)、28.6(24.7~32.5)、38.5(34.1~42.9)だった。 全死因死亡率は、各コホートおよびすべての重症度の群において、一般集団に比べC型肝炎治療成功者でかなり高かった。たとえば、ブリティッシュコロンビア州の全死因死亡率は、肝硬変のない集団では一般集団の約3倍(標準化死亡率比:2.96、95%CI:2.71~3.23、p<0.001)、肝硬変の集団では約4倍(3.96、3.26~4.82、p<0.001)、ESLDの集団では10倍以上(13.61、11.94~15.49、p<0.001)であった。 また、スコットランドとイングランドでも同様に、疾患の重症度が上がるに従って全死因死亡率の標準化死亡率比が高くなり、いずれも有意な差が認められた(すべてのp<0.001)。 回帰分析では、高齢、最近の薬物乱用による入院、アルコール乱用による入院、併存疾患が死亡率の上昇と関連していた。 著者は、「これらの知見は、直接作用型抗ウイルス薬の効果を最大限に発揮させるためには、C型肝炎の治療が成功した後も、継続的な支援と追跡調査が必要であることを強調するものである」としている。

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出生前母体ステロイド投与、児の重篤な感染症のリスク大/BMJ

 出生前ステロイド投与1コースが行われた母親から生まれた児は、生後12ヵ月間、重篤な感染症のリスクが有意に高いことが、台湾・長庚記念病院のTsung-Chieh Yao氏らによる全国コホート研究の結果で示された。新生児の死亡率および罹患率の減少における出生前ステロイド投与の有益性が多くの研究で報告されているが、小児の重篤な感染症に対する出生前ステロイド曝露の潜在的な有害性に関するデータは乏しく、とくに地域住民を対象とした大規模なコホートに基づく厳密なエビデンスは不足していた。著者は今回の結果について、「治療を開始する前に、出生前ステロイド投与による周産期の有益性と、まれではあるが重篤な感染症の長期的リスクについて慎重に比較検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2023年8月2日号掲載の報告。生後12ヵ月以内の重篤な感染症の発生率を出生前ステロイド曝露児と非曝露児で比較 研究グループは、台湾のNational Health Insurance Research Database、Birth Reporting DatabaseおよびMaternal and Child Health Databaseを用い、2008年1月1日~2019年12月31日における台湾のすべての妊婦とその出生児を特定し解析した。 主要アウトカムは、出生前に副腎皮質ステロイド曝露があった児と非曝露児における、生後3ヵ月、6ヵ月および12ヵ月時の入院を要する重篤な感染症、とくに敗血症、肺炎、急性胃腸炎、腎盂腎炎、髄膜炎または脳炎、蜂窩織炎または軟部組織感染症、敗血症性関節炎または骨髄炎、心内膜炎の発生率で、Cox比例ハザードモデルを用い補正後ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出して評価した。 台湾において一般的な母体出生前ステロイド投与は、ベタメタゾン12mgを24時間間隔で2回筋肉内投与、またはデキサメタゾン6mgを12時間間隔で4回筋肉内投与である。すべての重篤な感染症、敗血症、肺炎、急性胃腸炎のリスクが有意に増加 解析対象は、196万545組の妊婦(単胎妊娠)とその出生児で、出生前に副腎皮質ステロイド曝露があった児が4万5,232例、非曝露児が191万5,313例であった。 生後6ヵ月において、出生前ステロイド曝露児は非曝露児と比較し、すべての重篤な感染症、敗血症、肺炎および急性胃腸炎の補正後HRが有意に高かった。補正後HRは、すべての重篤な感染症1.32(95%CI:1.18~1.47、p<0.001)、敗血症1.74(1.16~2.61、p=0.01)、肺炎1.39(1.17~1.65、p<0.001)、急性胃腸炎1.35(1.10~1.65、p<0.001)であった。 同様に、生後12ヵ月において、すべての重篤な感染症(p<0.001)、敗血症(p=0.02)、肺炎(p<0.001)、急性胃腸炎(p<0.001)の補正後HRも有意に高かった。 きょうだいをマッチさせたコホートにおいても、コホート全体で観察された結果と同様、生後6ヵ月(p=0.01)および12ヵ月(p=0.04)において敗血症のリスクが有意に高かった。

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